説明

断熱材およびこれを備えた冷凍機器

【課題】断熱特性を向上させると共に可撓性を大きくし且つ吸音効果を向上させた断熱材およびこれを備えた冷凍機器(ヒートポンプ給湯機・空気調和機・冷凍冷蔵ショーケースの冷凍機・冷蔵庫・車両用冷凍機器等)を提供することを目的とする。
【解決手段】ガラス繊維でわた状の素材から成る無機繊維(グラスウール)18a集合体とPET製等のバインダ繊維18cと繊維製品をリサイクルして原料に近い形のわたに戻した有機繊維(反毛)18bとを所定の割合で混合し、所定の厚さ寸法及び密度で積み重ねられて上記バインダ繊維によって一体化された断熱材およびこれを備えた冷凍機器とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱材およびこれを備えた冷凍機器に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍機器の圧縮機や熱交換器は、不必要に熱を逃がさないようにして熱エネルギーを有効に利用するために、断熱材で覆ったものがある。
【0003】
例えば、ヒートポンプ給湯機は、冷凍サイクルユニットを運転してお湯を沸かす機器においては圧縮機及び水冷媒熱交換器(冷凍サイクル中の高温冷媒と水を熱交換する熱交換器)の外周を断熱材で覆い熱を逃がさない、及び圧縮機の出す運転音を低減する工夫がなされている。この種断熱材の例には特許文献1に示すものがある。
【0004】
即ち、特許文献1に示された断熱材は、無機繊維(グラスウールを実施例で用いている)を加圧し、圧縮成形した芯材をガスバリア性を有する金属製薄板若しくは金属製フィルムの外被材で覆い、内部を真空状態とした真空断熱材である。この真空断熱材の表面には、水冷媒熱交換器と接触する部分を覆いガスバリア性を保つための保護部材を設けている。
【0005】
この真空断熱材は、断熱効果が非常に良いことは周知されている。
【0006】
また、特許文献2には、圧縮機から発せられる騒音を吸音する吸音断熱材,薄肉の真空断熱材,圧縮機の揺れを緩和する防振材を積層して構成した複合断熱材で圧縮機を覆うことにより、真空断熱材で断熱厚さを抑えながら圧縮機からの放熱を抑制でき、圧縮機回りのスペースを有効利用することが提案されている。
【0007】
尚、フェノールホルムアルデヒドレジンを架橋構造とした難燃繊維と、反毛(反毛とは、衣類,布,繊維集合体、をリサイクルして得た繊維)と、をバインダ繊維を用いて結着させた断熱材を用いることが考えられるが、上記難燃繊維は、耐熱性は良いが充分な吸音効果が得られず、且つコスト高となり、製品適用が難しいことがわかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−54183号公報
【特許文献2】特開2007−192440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に示された断熱材は、グラスウール等より成る無機繊維を金属製薄板若しくは金属製フィルムの外被材内に収納した後に真空減圧して圧縮成形され断熱材であるので可撓性が小さく、大きく塑性加工することは破損の虞があるため困難である。
【0010】
また、外被材が金属製薄板若しくは金属製フィルムであり、しかもガスバリア性を有することから、吸音効果を得られない。
【0011】
上記難燃繊維とバインダ繊維と反毛から成る断熱材であると、難燃繊維が柔らかいため空間が出来難い。このため、充分な吸音効果が得られない。また難燃繊維は断熱材とした場合にコストが高くなる。
【0012】
本発明は、断熱特性を向上させると共に可撓性を大きくし且つ吸音効果を向上させた断熱材およびこれを備えた冷凍機器(ヒートポンプ給湯機・空気調和機・冷凍冷蔵ショーケースの冷凍機・冷蔵庫・車両用冷凍機器等)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記目的を達成するために、不定形な形状の無機繊維と、不定形な形状の有機繊維と、上記無機繊維集合体及び上記有機繊維の軟化温度よりも低い温度で溶融するバインダ繊維とを備え、これ等の繊維が所定の割合で混合され、所定の厚さ寸法及び密度で積み重ねられて上記バインダ繊維によって一体化されて成る断熱材である。
【発明の効果】
【0014】
断熱特性を向上させると共に可撓性が大きく且つ吸音効果の大きな断熱材およびこれを備えた冷凍機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態のヒートポンプ給湯機の構成を示す概略図である。
【図2】図1のヒートポンプ給湯機における貯湯運転から湯水使用時の給湯運転及びその後のタンク貯湯運転を示すフロー図である。
【図3】本実施形態のヒートポンプ給湯機におけるヒートポンプユニットの上面板を外した平面図である。
【図4】本実施形態の断熱材の製作工程を説明する図である。
【図5】本実施形態の断熱材の優位性を説明する図である。
【図6】本実施形態の断熱材で図3の水冷媒熱交換器を包んだ状態を示す斜視図である。
【図7】本実施形態の断熱材で、図3の圧縮機を包んだ状態を示す斜視図である。
【図8】冷凍機器の断熱材に使われる真空断熱材の芯材を説明する図である。
【図9】無機繊維と有機繊維とバインダ繊維が、点接触により積層された状態の部分拡大概略図である。
【図10】混合された各繊維の状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下本発明の実施形態を図1〜図10に基づいて説明する。
本実施形態は、発明の目的を達成するのみならず、真空断熱材製作時に生じる真空断熱材の芯材の端材(廃材)および衣類等の織物や布などで廃棄されるものをも反毛に加工して発明の目的に沿う断熱材の素材に有効利用するようにした最良の実施形態である。
【0017】
先ず、図1に示すヒートポンプ給湯機は、ヒートポンプ冷媒回路の構成部品を収納したヒートポンプユニット30と、貯湯タンク9及び給湯回路構成部品を収納をた貯湯ユニット40、及び運転制御手段50で構成されている。
【0018】
そして、ヒートポンプ冷媒回路は圧縮機1,水冷媒熱交換器2に配置された冷媒側伝熱管2a,2b,減圧装置3,空気熱交換器4を、それぞれ冷媒配管を介して順次接続して構成されており、その中に炭酸ガス(CO2)冷媒が封入され、冷凍サイクルを構成している。
【0019】
而して、圧縮機1はPWM制御,電圧制御(例えばPAM制御)及びこれらの組み合わせ制御により、低速(例えば700回転/分)から高速(例えば7000回転/分)まで回転数制御ができる。
【0020】
また、水冷媒熱交換機2は冷媒側伝熱管2a,2b及び給水側伝熱管2c,2dを備えており、冷媒側伝熱管2a,2bと給水側伝熱管2c,2dとの間で熱交換を行うように構成されている。
【0021】
尚、水冷媒熱交換器2は冷媒側伝熱管2a及び給水側伝熱管2cからなる熱交換部材群2e(図3参照)と冷媒側伝熱管2b及び給水側伝熱管2dからなる熱交換部材群2f(図3参照)の2系路から構成されている。
【0022】
減圧装置3としては一般に電動膨張弁が使用され、水冷媒熱交換器2を経て送られてくる中温高圧冷媒を減圧し、蒸発し易い低圧冷媒として空気熱交換器4へ送る。また、減圧装置3は冷媒回路の絞り量を変えてヒートポンプ冷媒回路内の冷媒循環量を調節する働きや、冬期低温時にヒートポンプ運転して空気熱交換器4に着霜した場合、前記絞り量を全開にして中温冷媒を空気熱交換器4に多量に送って霜を溶かす除霜装置の役目も行う。
【0023】
空気熱交換器4は送風ファン5の回転により外気を取入れ空気と冷媒との熱交換を行い、外気から熱を吸収する役目を行う。
【0024】
貯湯ユニット40は貯湯,タンク給湯などを行うための水循環回路を備えて構成されている。
【0025】
貯湯回路はタンク沸上げ運転によって貯湯タンク9に高温水を貯めるための水回路で、貯湯タンク9,タンク循環ポンプ14,給水側伝熱管2c,2d,貯湯タンク9が水配管を介して順次接続され構成されている。
【0026】
タンク給湯回路は、給水金具6,減圧弁7,給水水量センサ8,貯湯タンク9,湯水混合弁11,出湯金具12が水配管を介して順次接続され構成されている。
【0027】
なお、給水金具6は水道などの給水源に接続され、出湯金具12は台所蛇口13などに接続されている。
【0028】
なお、出湯金具12からは、洗面や風呂湯張り回路(図示せず)などにも給湯できる。
【0029】
次に、運転制御手段50は、ヒートポンプ冷媒回路の運転・停止並びに圧縮機1の回転数制御を行うと共に、減圧装置3の冷媒絞り量調整他の冷凍サイクル運転制御,湯水混合弁11などを制御することにより給湯運転などを行う。
【0030】
また、運転制御手段50は、冬期低温時、高温(例えば90℃)で貯湯する場合は、周囲温度や給水温度が低く加熱負荷が大きいため高回転数(例えば3000〜4000回転/分)とし、夏期は逆に加熱負荷が小さいため一般的貯湯温度(約65℃)で比較的低速(例えば1000〜2000回転/分)とするなどの最適運転制御手段を有している。
【0031】
更に、ヒートポンプ給湯機には、貯湯タンク9の貯湯温度や貯湯量を検知するためのタンクサーミスタや各部の冷媒温度や水温を検知する各部サーミスタ、及び圧縮機1の吐出圧力を検知する圧力センサ等(いずれも図示せず)が設けられ、各検出信号は運転制御手段50に入力されるように構成されている。運転制御手段50はこれらの信号に基づいて各機器を制御する。
【0032】
次に、本実施形態のヒートポンプ給湯機の運転動作について、図1のヒートポンプ冷媒回路及び貯湯回路,給湯回路と図2のフロー図の実施形態に基づいて説明する。図2は、夜中の貯湯運転から翌日の給湯使用終了までの1日の運転動作の実施形態を示すフロー図である。
【0033】
運転制御手段50は、毎日の給湯使用量を記憶学習して翌日の給湯使用量を推定し、夜間の貯湯温度及び貯湯量を決定すると共に、上記貯湯量が電気料金の夜間割引時間(例えば23時〜7時)内に沸き上がるように貯湯運転開始時刻を設定する学習制御手段を有している。
【0034】
上記設定時刻になると貯湯運転を開始する。即ち、図1におけるヒートポンプを運転すると共にタンク循環ポンプ14を運転し、水冷媒熱交換器2で高温冷媒と貯湯タンク9から循環されるタンク貯湯水とで熱交換して貯湯タンク9内の水を高温水に沸き上げる(ステップ61)。以下図2のフロー図のステップ61からステップ71に従って運転されるものであるが、断熱材には直接関係ないため、詳細説明を省略する。
【0035】
次に図3において、図3はヒートポンプユニット30の上面板を外した状態の平面図である。ヒートポンプユニット30の箱体15は略長方形をしており、背面及び左側面には空気熱交換器4が設置され、これに対向してファンモータ16により回転するファン5が設置されている。箱体15は仕切り板17によって左右に仕切られている。仕切り板17によって区切られた右側の空間は、圧縮機1や水冷媒熱交換器2が収容される収容室Sであり、この収容室Sは、一般的に機械室と呼ばれている。前記水冷媒熱交換器2はこの収容室Sの前方側に設置され、圧縮機1は後方側に設置されている。
【0036】
また、上記水冷媒熱交換器2は、一端部から他端部に向かって冷媒を流通させるように構成されるものであり、図には示してないが、各端部が上下に位置するように配置されるものである。即ち、水冷媒熱交換器2は両端の鉛直方向と一致させて、起立させた状態で収容室S内に配置される。
【0037】
また、水冷媒熱交換器2は隣接して配置される複数の熱交換部材2g,2h,2i,2j,2k,2lから構成される。図3に示す水冷媒熱交換器2では、6個の熱交換部材2g〜2lが用いられている。各熱交換部材2g〜2lは、冷媒側伝熱管2aと給水側伝熱管2cとを重ねてそれぞれコイル状に巻いて形成されており、概略円筒状を有する。
【0038】
また、複数の熱交換部材2g〜2lは複数の熱交換部材群2e,2fに区分して設けられている。具体的には、6個の熱交換部材2g〜2lは、3個ずつ2つの熱交換部材群2e,2fに区分されている。各熱交換部材群2e,2fは、各熱交換部材2g〜2i,2j〜2lをそれぞれ対向させて配置されている。ところで、各熱交換部材群2e,2fは、同時に運転されるものであっても良く、いずれか一方のみ運転されるものであっても良い。
【0039】
18は本実施形態のフェルト状断熱材である。このフェルト状断熱材18は、上記圧縮機1を断熱吸音する目的で設けられている。換云すると、このフェルト状断熱材18には吸音効果があり、圧縮機1が出す音を吸音し、外部(使用者に届く音)に出る音を小さくする効果があると云うことである。また、このフェルト状断熱材18は水冷媒熱交換器2にも設けられている。具体的には、上記圧縮機1を囲むように設けられ、水冷媒熱交換器2を構成する各熱交換部群2e,2fを囲み、保温及び吸音(圧縮機1の場合)するように設けられている。
【0040】
以下、上記フェルト状断熱材18に付いて、図4を用いて説明する。
図4の製作工程図からも分るように、上記フェルト状断熱材18は、無機繊維集合体(実施例はグラスウール)18a,有機繊維(実施例は反毛)18b,バインダ繊維18cとを混合し、加熱・加圧成形し、可撓性のある断熱材とした。
【0041】
次に、上記フェルト状断熱材18を構成するグラスウール18a,バインダ繊維18c,反毛18bに付いて説明する。
【0042】
先ず、ここで云うグラスウールはガラス繊維のわた状の素材であり、現在建築物における断熱材として広く用いられている他、吸音材としてもスピーカーや、防音室の吸音材として広く用いられている。また、グラスウールは断熱性・防火性にも優れており、アスベストの代替材として広く使われている。そして、このグラスウールは建築物や自動車の窓に使われた廃ガラスが主な原料で、溶かしたガラスを火災法、遠心法などでわた状の繊維にして作られている。このグラスウール(原綿)は、最近では冷蔵庫やヒートポンプ給湯機等の断熱材として多く用いられるようになった真空断熱材の芯材に使われている。
【0043】
上記真空断熱材用芯材として用いられているグラスウール(原綿)は、例えば、厚みが約100mm,幅が500mmあるロール上に巻かれた原綿から必要寸法を切り出して用いている。
【0044】
尚、上記真空断熱材用芯材は、これを複数枚重ね合せ、加圧成形して袋に入れ、この状態で真空減圧することによって厚さ10mm前後の真空断熱材を製造している。厚さ3mm位のものは、厚みが約100mmのグラスウール(原綿)を1枚で作成され、厚さ20mmの場合は、必要な繊維密度に応じて4〜7枚を重ねて作成する。
【0045】
図8に示す芯材の破線部は、上記真空断熱材製作時に必要寸法を切り出した際に廃材となる端材を示す。本実施形態は、発明の目的を達成するのみならず、上記廃材(端材)および上記反毛をも有効利用するようにした最良の実施形態である。
【0046】
次に、バインダ繊維に付いて、バインダ繊維18c(実施例はPET)にはポリエステル系合成繊維が多く用いられる。このポリエステル系合成繊維はグリコールとジカルボン酸の重縮合物あるいは、オキシカルボン酸の重縮合物のようなポリエステルを紡糸して得られる合成繊維である。このものは機械的強さが大きく、耐久性があり、ヤング率が大きいので、ナイロンより風合が優れている等の性質を備えている。
【0047】
実施例で用いた有機繊維18bは、衣類,布,繊維等をリサイクルして得る繊維(反毛)を用いた。通常、この反毛18bは回転ドラムの針状突起部材を数段階に変え、上記衣類,布等を針で掻きむしるようにして開繊してリサイクルした不定形の形状の繊維若しくは不定形の形状の繊維をわた状にしたものである。この不定形の形状の繊維の中には、糸状のものが混入している開繊レベルでもよい。
【0048】
上記した無機繊維(グラスウール)18a集合体,バインダ繊維18c,反毛18bとでフェルト状断熱材18を作る工程を図4において説明する。無機繊維集合体18aは、用途に応じてセラミック繊維や炭素繊維なども考えられる。
【0049】
図において、上記素材はステップ81で開繊機に投入して開繊する。ここでは各種素材が上記針状突起部材やノコギリ刃状の突起部材等により細かく開繊することによって、不定形の形状の繊維若しくは不定形の形状の繊維の集合したわた状にされる。
【0050】
開繊された各種素材は、ステップ82で計量し、その後ステップ83の混合機にかけられる。ここでは、開繊した上記各素材を所定の混合比率に混ぜると共にふんわりとしたわた状にする。
【0051】
次いで、ステップ84で、上記混合した繊維を、所定の速度で動くベルトコンベア上に自由落下させて、所定の厚みに降り積もらせる。この際には、ベルトコンベアの下方からベルトコンベアに設けられた微細な網状の隙間から空気を吸引している。これによって、吸引した空気の流れと一緒に自由落下させた繊維が空気と共に均一な厚さに吸引されて、密度が高くなりシート状になる。このシート状になったものを、例えば2層に積層して所定の厚さにする。
【0052】
上記2層に積層されたシートは、ステップ85で加熱・加圧する成形機に入り、所定の温度で所定時間加熱される。この加熱によりバインダ繊維18cの表面が溶け、3者を結着し、ステップ86で放熱冷却して断熱材が完成する。これによって、大きさの混在していたグラスウール18aの粉状の小さいものが落下する粉落ち現象や、短い繊維が飛散する繊維飛びを防止できるようになる。
【0053】
上記加熱温度は、実施例ではガラス繊維が軟化しない300℃未満で、有機繊維に化学繊維(樹脂繊維)が混ざっていたとしても溶融しない温度で、バインダ繊維が溶融する温度以上でバインダ繊維の表面が溶融する所定時間過熱した。実施例では、100℃で表面が溶融する繊維を用い、150℃で90秒加熱してバインダ繊維の表面が良好に溶融した。尚、この加熱温度及び時間は、材料の温度や加熱炉周囲の空気温度,コンベアの温度、その他の状況により変える必要がある。
【0054】
図5は本実施形態のフェルト状断熱材18の優位性を説明する図である。
先ず、比較品には、A:無機繊維(グラスウール)18a集合体の単体,B:無機繊維(グラスウール)18a集合体(+)バインダ繊維18c,C:無機繊維(グラスウール)18a集合体(+)バインダ繊維18c(+)反毛18b,D:難燃繊維(+)バインダ繊維18c(+)反毛18b,E:真空断熱材(芯材が無機繊維(グラスウール)18a集合体)とし、評価項目としては、吸音効果,断熱効果,製品への適用性,コスト等を挙げ、上記比較品を評価した。
【0055】
尚、上記グラスウール18aとバインダ繊維18cと反毛18bとの材料比率をグラスウール18a約50wt%,バインダ繊維18c約30wt%,反毛18b約20wt%としている。上記比率とするのは、各種比率で混合したフェルト状断熱材18を作り、ヒートポンプ給湯機に組み込み、断熱吸音試験を行った所、上記比率が最も良いことが判ったためである。
【0056】
図9は無機繊維と有機繊維とバインダ繊維が、点接触により積層された状態の部分拡大概略図。図10は混合された各繊維の状態を示す概略図であり、断熱材の一部を指でつまんで千切ったものを概略図として描いたものである。図10の太い線は、開繊しきれずに糸の状態で残っているものである。
【0057】
吸音効果を得られた要因としては、有機繊維(反毛)18bから無機繊維(グラスウール)18a集合体の比率を上げることにより、無機繊維(グラスウール)18a集合体はガラス繊維でわた状の素材が、図9に示す通り点接触により積層されること、及び図10に示す通り繊維が直線的ではなく不定形の形状であるため、繊維と繊維の接触が点接触の数が多くなって線接触することを大幅に低減できる。これによって、接触面積が小さくなり、繊維と繊維の間の直接的な熱伝導を少なくできると共に吸音に効果的な小さな空隙が多く形成される。
【0058】
更には、無機繊維(グラスウール)18a集合体と反毛(有機繊維)18bは材質の異なる繊維であるため、個々の材質の固有の振動周波数が混合により互いの固有の振動周波数で振動しようとするのを打ち消し合う。これによって、圧縮機やモータなどからの振動・運転騒音などによる共振及び振動の伝達が低減して、音が低減する。また、各繊維間に小さな空隙が多く形成されることによって、吸音効果が向上する。効果的に吸音するには、断熱材を取り付ける機器の騒音周波数に合わせて、その周波数を吸音するのに適した繊維の材質(素材そのものの固有の振動周波数)と、空隙の大きさや空隙の断面形状を決めるように繊維の点接触のピッチ及び線の外径などを選定するとより効果的である。
【0059】
また、断熱効果を得られた要因としても、無機繊維(グラスウール)18a集合体はガラス繊維でわた状の素材が点接触により積層された構造であるため、空隙が多く形成されること、及び無機繊維(グラスウール)18a集合体は開繊及び繊維を混合すること等によって、不定形の形状になり、空隙が細かく分断される。しかも、図10に示す通り、繊維が上記不定形の形状であることにより、繊維が複雑に交差したり、開繊及び繊維を混合により比較的短い繊維になっていたりするため、熱の伝導は遮断され、熱伝導性が低減し断熱効果が得られる。このようなことから、用途に応じて材料の混合比率,長さ,太さ等を変更してもよい。
【0060】
尚、本実施形態で用いた繊維の線径は、無機繊維(グラスウール)18aが約4μm、反毛(有機繊維)18bが10〜20μm位が混在、バインダ繊維18cが約10μmである。
【0061】
この評価結果は図5に示す通りで、本実施形態のC:無機繊維(グラスウール)18a集合体(+)バインダ繊維18c(+)反毛18bが総合して良いことが判った。
【0062】
この種、断熱材を製品に組み込む必要がある市販製品には、冷蔵庫,空気調和機,ヒートポンプ給湯機,カーエアコン等がある。
【0063】
しかしながら上記何れの製品でも性能向上だけでなく、コスト低減も重要な課題であり、評価項目が○でないと製品への適用は難かしい。この点、本実施形態の無機繊維(グラスウール)18a集合体(+)バインダ繊維18c(+)反毛18bは廃材の使用を可としている点からも、全て○となり、他の比較品より優れていることが判る。
【0064】
尚、無機繊維(グラスウール)18a集合体の材料比率は、用途により変更しても良い。断熱吸音効果を更に上げたい場合は、反毛18bを除いてグラスウール18aとバインダ繊維18cの材料比率をグラスウール18a約80wt%,バインダ約20wt%とすることもできるが、上記グラスウール18aの材料比率を上げると、粉落ち,飛散が発生し作業環境を悪化させてしまう場合があるため、限定はしないが、リサイクル繊維等による包み込みや、飛散防止剤の塗布等により粉落ち,飛散を防止する場合もある。
【0065】
また、使用箇所により強度を優先させたい場合は、材料比率をグラスウール18a約20wt%,バインダ約30wt%,反毛18b約50wt%とする等、用途に応じて材料比率を変更してもよい。
【0066】
更には、上記B:無機繊維(グラスウール)18a集合体(+)バインダ繊維18cは、バインダ繊維18cと成り得る特性の材質の反毛18bを用いた場合は、繊維は2種類であるが、上記C:無機繊維(グラスウール)18a集合体(+)バインダ繊維18c(+)反毛18bの断熱材の構成であり、同等の効果が得られることから本実施形態の断熱材である。
【0067】
尚、比較品E:真空断熱材は冷蔵庫の断熱材としては代るものがない程、有効なものであるが、アルミニウム等の薄板を外被材としている関係上、吸音効果,製品への適用と云う面で本実施形態品のフェルト状断熱材より劣ることが判る。即ち、本実施形態のフェルト状断熱材18は、圧縮機1及び水冷媒熱交換器の保温、及び防音を目的として開発されるものであるためにフェルト状断熱材18を、圧縮機1及び水冷媒熱交換器を直接、覆う必要があるため、真空断熱材を断熱材とした時、作業時或いは使用中、上記アルミニウム製の外被材を損傷してしまう可能性が大であるためここへの適用は難しい。
【0068】
次に図6,図7をもって、上記工程を経て作られたフェルト状断熱材を利用して、ヒートポンプ給湯機の圧縮機1,水冷媒熱交換器2を覆い、断熱効果、及び防音効果を得る際の具体的断熱シールに付いて説明する。
【0069】
尚、図6,図7は本実施形態の断熱材で図3に示す圧縮機1及び水冷媒熱交換器2を包んだ状態を示す斜視図である。図から分かるように可撓性を有するフェルト状断熱材18は袋状に予め成形され、圧縮機1,水冷媒熱交換器2をその袋内にスッポリと納めるようにした。このようにすることにより、水冷媒熱交換器2部においては、外気の影響を少なくし冷凍サイクル中の高温ガスにより水配管中の水を効率良く加熱することができる。
【0070】
圧縮機1に用いた場合には、上記フェルト状断熱材18で保温されることは勿論、圧縮機1自体の発する騒音も吸音されて、低騒音となる。また、遮音効果も得る場合は、重量のある材質で且つ貫通孔の無い部材を重ねて用いると良い。
【0071】
尚、上記発明は実施形態のヒートポンプ給湯機に限定されるものではなく、冷蔵庫,空気調和機,カーエアコン等の冷凍機器の熱源機(熱交換器,圧縮機等)及び周囲部へ適用できる。
【0072】
本実施形態は以上説明した如き構成を有するものであるから次の効果が得られる。即ち、ガラス繊維でわた状の素材から成る無機繊維(グラスウール)18a集合体とPET製(ポリエチレンテレフタレート−−−ポリエステル繊維)のバインダ繊維18cと繊維製品をリサイクルして原料に近い形のわた状にした反毛18bとを所定の割合で混合し、それを所定の厚さ寸法・密度に積層した後、加熱・加圧成形して作った断熱材である。
【0073】
これにより、グラスウール18a単品で作った断熱材よりも吸音効果が大きく断熱効果も得られ、且つ粉落ち,繊維飛びをなくし、コスト面でも低くして製品への適用を容易にした断熱材が得られる。
【0074】
また、不定形な形状の無機繊維18aが、直線状以外の不定形な形状に製造した無機繊維や、繊維の製造過程で生じる所定品質外の無機繊維或いは断熱材の端部を切り落とした端材を開繊して不定形に変形した無機繊維を用いる。或いは、これらに外力若しくは加熱して所定の変形をさせた無機繊維を含むもののいずれであっても同様の性能が得られる。
【0075】
また、不定形な形状の有機繊維が、断熱材の用途に合わせた品質の原料で直線状以外の不定形な形状に製造した有機繊維や、繊維の製造過程で生じる所定品質外の有機繊維、或いは織物や不織布などの製造過程で生じる所定品質外の繊維製品や繊維製品のリサイクル材を開繊して不定形に変形した有機繊維、若しくはこれらに外力若しくは加熱して所定の変形をさせた有機繊維を含むもののいずれであっても同様の性能が得られる。
【0076】
また、不定形な形状の無機繊維と不定形な形状の有機繊維との材料比率は、無機繊維集合体が多いことにより、バインダ繊維により繊維を結合する際の熱の影響を受けても繊維と繊維とが確実に点接触を実現できる。これによって、断熱性能を向上できると共に可撓性が大きく且つ吸音効果の大きな断熱材を提供できる。
【0077】
また、グラスウール18aとバインダ繊維18cと反毛18bとの材料比率をグラスウール18a約50wt%,バインダ繊維18c約30wt%,反毛18b約20wt%とした断熱材である。これにより、無機繊維(グラスウール)18a集合体単体で作った断熱材よりも、吸音効果・断熱効果の大きなものが得られ、且つ製品への組み込み時に、無機繊維(グラスウール)18a集合体の粉落ち,繊維飛びのない、断熱材を得られる。特にこの断熱材をヒートポンプ給湯機などの冷凍機器に組み込んだ時の、他の断熱材との組み合せよりも、吸音効果・断熱効果が向上することを実験により確認している。
【0078】
また、グラスウール18aとバインダ繊維18cと反毛18bとはミキサー(混合機)で開繊繊維が所定の混合比率で均一に分散し混合した断熱材である。これにより、バインダ繊維18cが部分的に集中することを防止でき、無機繊維(グラスウール)18a集合体と反毛18bに結着して、製品への組み込み時、無機繊維(グラスウール)18a集合体の粉落ち,繊維飛びを防止した断熱材およびこれを備えた冷凍機器が得られる。
【0079】
また、シート状に作られた断熱材を袋状とし、この袋を利用して冷凍機器の熱源機(水冷媒熱交換器,圧縮機等)を包んだ断熱材を備えた冷凍機器である。これにより、熱交換器,圧縮機等の断熱効果,吸音効果が簡単且つ確実に得られる断熱材及びこれを備えた冷凍機器が得られる。
【0080】
また、冷凍機器に用いる真空断熱材を作る際に用いるバインダを含まない無機繊維集合体(芯材)の材料取りした後に残る無機繊維集合体の端材を、前記断熱材の一部に使用した断熱材である。これにより、真空断熱材を作る際に発生する端材を廃棄処分しないので、廃棄費用が不要となり、コスト的にも有利な断熱材が得られる。
【0081】
上記最良の実施形態では、有機繊維18bに反毛18bを用いてコストも低減できるようにしたが、将来的にはコストが高くなる可能性もあり、又は性能を均一化する等のニーズによっては、反毛18bを用いる必要はない。
【0082】
本実施形態に係る断熱材は、不定形な形状の無機繊維18aと、不定形な形状の有機繊維18bと、上記無機繊維集合体及び上記有機繊維18bの軟化温度よりも低い温度で溶融するバインダ繊維18cとを備え、これ等の繊維は、所定の割合で混合され且つ、所定の厚さ寸法及び密度で積み重ねられて上記バインダ繊維18cによって一体化された断熱材を特徴としている。このように、不定形な形状の繊維であることによって、繊維と繊維とが確実に点接触することを実現して、断熱性能を向上できると共に可撓性が大きく且つ吸音効果の大きな断熱材を提供できる。
【0083】
更に、不定形な形状の繊維にリサイクル材の反毛を用いる場合は、反毛を作成する際の開繊によって不定形な形状の繊維になるため、不定形な形状の繊維を作成するための加工を省略することが可能となる。
【符号の説明】
【0084】
1 圧縮機
2 水冷媒熱交換器
3 減圧装置
4 空気熱交換器
5 送風ファン
6 給水金具
7 減圧弁
8 給水水量センサ
9 貯湯タンク
11 湯水混合弁
12 出湯金具
13 台所蛇口
14 タンク循環ポンプ
15 箱体
16 ファンモータ
17 仕切り板
18 フェルト状断熱材
18a 無機繊維(グラスウール)
18b 有機繊維(反毛)
18c バインダ繊維
30 ヒートポンプユニット
40 貯湯ユニット
50 運転制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不定形な形状の無機繊維と、不定形な形状の有機繊維と、上記無機繊維集合体及び上記有機繊維の軟化温度よりも低い温度で溶融するバインダ繊維とを備え、これ等の繊維は、所定の割合で混合され且つ、所定の厚さ寸法及び密度で積み重ねられて上記バインダ繊維によって一体化されたものであることを特徴とする断熱材。
【請求項2】
不定形な形状の無機繊維が、直線状以外の不定形な形状に製造した無機繊維や、繊維の製造過程で生じる所定品質外の無機繊維或いは断熱材の端部を切り落とした端材を開繊して不定形に変形した無機繊維、或いはこれらに外力若しくは加熱して所定の変形をさせた無機繊維を含むことを特徴とする請求項1記載の断熱材。
【請求項3】
不定形な形状の有機繊維が、断熱材の用途に合わせた品質の原料で直線状以外の不定形な形状に製造した有機繊維や、繊維の製造過程で生じる所定品質外の有機繊維、或いは織物や不織布などの製造過程で生じる所定品質外の繊維製品や繊維製品のリサイクル材を開繊して不定形に変形した有機繊維、若しくはこれらに外力若しくは加熱して所定の変形をさせた有機繊維を含むことを特徴とする請求項1記載の断熱材。
【請求項4】
不定形な形状の無機繊維と不定形な形状の有機繊維との材料比率は、無機繊維集合体が多いことを特徴とする請求項1記載の断熱材。
【請求項5】
無機繊維がグラスウールであり、このグラスウールと有機繊維とバインダ繊維との材料比率を、グラスウール約50wt%,有機繊維約20wt%,バインダ繊維約30wt%、としたことを特徴とする請求項1記載の断熱材。
【請求項6】
無機繊維と有機繊維とバインダ繊維とは、ミキサー(混合機)で混合して各繊維を分散したことを特徴とする請求項1記載の断熱材。
【請求項7】
不定形な形状の無機繊維と、不定形な形状の有機繊維と、上記無機繊維集合体及び上記有機繊維の軟化温度よりも低い温度で溶融するバインダ繊維とを備え、これ等の繊維は、所定の割合で混合され且つ、所定の厚さ寸法及び密度で積み重ねられて上記バインダ繊維によって一体化された断熱材であり、この断熱材を袋状とし、この袋状の断熱材で冷凍機器の熱源機を覆ったことを特徴とする冷凍機器。
【請求項8】
バインダを含まない無機繊維集合体から所定寸法に材料取りして切り落とされた端材を開繊した無機繊維を、前記断熱材の一部に使用したことを特徴とする請求項1記載の断熱材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−104474(P2013−104474A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248185(P2011−248185)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】