説明

断熱管および超電導ケーブル

【課題】断熱性に優れる断熱管およびその断熱管を具える超電導ケーブルを提供する。
【解決手段】断熱管1は、内管10iと、上記内管10iの外周を覆うように設けられる外管10oと、上記内外管10i、10oの間に配される断熱材11と、上記内外管10i、10oの間隔を保つためのスペーサ12とを具える。上記スペーサ12は、上記内管10iを囲って、上記内管10iの長手方向に複数並列するリング体12rと、上記リング体12r同士の間隔を保つ紐状体12bとを具える。そうすることで、上記スペーサ12と断熱管1の他の構成部材との接触面積を小さくしつつ上記内管10iと上記外管10oとの間隔を保つことができ、熱侵入を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱管およびその断熱管を具える超電導ケーブルに関するものである。特に、熱侵入を低減して断熱管の断熱性を改善することができる断熱管、および、その断熱管を具える超電導ケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、超電導ケーブルは、単心ケーブルコアあるいは複数本撚り合わせたケーブルコアの外側が断熱管により覆われている。例えば、特許文献1に記載の断熱管は、冷媒管(内管)と外部管(外管)との二重管から構成され、この冷媒管の外周には輻射シールド層が巻回されていて、このシールド層と外部管との間にスペーサが配置されている。このスペーサは、断面円形のパイプ状で形成されており、上記シールド層と上記外部管との間にらせん状に単数本あるいは複数本巻回して配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−126389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようなスペーサを単数本らせん状に設ける場合は、スペーサと冷媒管(内管)の外周に設けられるシールド層およびスペーサと外部管(外管)とのそれぞれの接触面積を小さくすることができる。したがって、熱伝導を低く抑えることができ、その結果、熱侵入を低減することができるので、断熱性を保つことができると考えられる。しかし、単数本のスペーサでは、内管と外管との間隔を十分に保つことが難しい。というのも、内管の周方向において、スペーサが配置されていない箇所が広範囲に存在する。そのため、そのスペーサの配置されていない箇所で断熱管の屈曲によって内管と外管とが接近して接触し易くなる。その結果、その接近箇所が外部からの熱を受け易くなるので、熱侵入を抑制することができず、断熱性を維持し難い。
【0005】
一方、上述のようなスペーサを複数本らせん状に設ける場合は、断熱管の屈曲によって内管と外管とが接触し易くなる箇所は発生し難い。というのも、複数本スペーサを設けているので、スペーサと内管および外管との接触点が多くなり、内外管の間隔を保ち易くなるためである。しかし、上記の接触点が多くなると、自ずとスペーサと断熱層や外管との接触面積が大きくなる。すなわち、外部からの熱がスペーサを介して侵入し易くなるので、結果的に熱侵入が多くなり、断熱性を維持し難い。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的の一つは、スペーサと断熱管の他の構成部材との接触面積を極力小さくしながら内外管の間隔を保つことができ、それにより断熱性を改善できる断熱管を提供することにある。
【0007】
また、本発明の別の目的は、スペーサの構成材料を削減することができる断熱管を提供することにある。
【0008】
さらに、本発明の他の目的は、上記断熱管を具える超電導ケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、スペーサの構造形態に工夫を施して、スペーサの接触面積を小さくすることで上記目的を達成する。
【0010】
本発明の断熱管は、内管と、内管の外周を覆うように設けられる外管と、その内外管の間に配される断熱材と、その内外間の間隔を保つスペーサとを具える。そして、上記スペーサは、上記内管を囲って、上記内管の長手方向に複数並列するリング体と、上記リング体同士の間隔を保つ紐状体とを具える。
【0011】
上記の構成によれば、後述する試算例に示すように、リング体で内管の外周を覆うことで、断熱管のスペーサ以外の構成部材との接触面積を小さくすることができる。そのため、内管の内側への熱侵入量または内管の内側からの熱放散量を抑制することができ、断熱管の断熱性能を向上することができる。また、リング体は内管の外周を囲っているので、内管の周方向のどの箇所においても内外管の間隔を一定に保つことができる。そのため、内外管で接触し易い箇所の発生は生じず、断熱性を改善することができる。さらに、そのリング体が内管の長手方向に複数並列していることで、長手方向全長に亘って内外管の間隔を保持することができるうえに、断熱管の全長で見た場合、リング体(スペーサ)の構成材料を削減することができる。そして、紐状体を具えることで、リング体同士の間隔を保つことができる。
【0012】
本発明断熱管の一形態として、上記スペーサは、さらに、上記リング体と上記紐状体とが連結する連結部を具え、上記連結部は、上記リング体に上記紐状体が巻き付けられることで構成されていることが挙げられる。
【0013】
上記の構成によれば、連結部を具えることで、リング体と紐状体との位置決め、およびリング体同士の位置決めが行い易い。そして、リング体と紐状体とは、リング体に紐状体を巻き付けることで簡単に連結させることができ、リング体と紐状体の位置ずれが生じ難いので、リング体同士の間隔を保ち易くなる。
【0014】
本発明断熱管の一形態として、上記スペーサは、さらに、上記リング体と上記紐状体とが連結する連結部を具え、上記連結部は、上記リング体に上記紐状体が結び付けられることで構成されていることが挙げられる。
【0015】
上記の構成によれば、リング体と紐状体とは、リング体に紐状体を結び付けることで強固に連結することができ、リング体同士の間隔をより保ち易くなる。
【0016】
本発明断熱管の一形態として、上記スペーサは、さらに、上記リング体と上記紐状体とが連結する連結部を具え、上記連結部は、上記リング体を上記紐状体が貫通することで構成されていることが挙げられる。
【0017】
上記の構成によれば、リング体と紐状体とは、リング体に紐状体を貫通させることで簡単に両者を連結させることができる。
【0018】
本発明断熱管の一形態として、上記リング体は、フッ素樹脂で形成されていることが挙げられる。
【0019】
上記の構成によれば、フッ素樹脂はガス放出率が低いので、内外管との間を真空にした場合、内外管の間を高い真空度に保つことができる。そのため、高い断熱性を維持することができる。また、たとえ外管を介して外部からの熱侵入の影響をスペーサが受けるとしても、フッ素樹脂自体の熱伝導性が低いので断熱管の断熱性の低下を抑制し易い。さらに、フッ素樹脂は低摩擦材料であるため、内管、外管又は内外管の間に配される断熱材との摺動によるリング体又は断熱材の損傷や劣化が生じ難い。
【0020】
本発明断熱管の一形態として、上記紐状体は、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリフェニレンスルファイド、およびフッ素樹脂の中から選択される1種から形成されていることが挙げられる。
【0021】
上記の構成によれば、上記リング体同士を連結するのに十分な機械的特性を有するので、紐状体が切れることなく、紐状体とリング体同士とを連結しておくことができる。
【0022】
本発明の超電導ケーブルは、上記した本発明の断熱管と、超電導導体層を有するケーブルコアとを具える。そして、上記ケーブルコアは、上記断熱層に収納される。
【0023】
上記の構成によれば、断熱性の高い断熱管を具えているので、ケーブルコアの冷却に要するエネルギーを削減することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の断熱管は、スペーサと断熱管の他の構成部材との接触面積を極力小さくしながら内管と外管との間隔を安定して保つことができるので、断熱管の断熱性を改善することができる。また、スペーサの構成材料を削減することができる。
【0025】
本発明の超電導ケーブルは、上記した断熱性の高い断熱管を具えているので、ケーブルコアの冷却に要するエネルギーを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施形態1に係る断熱管を示す概略斜視図である。
【図2】実施形態2に係る超電導ケーブルを示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を説明する。ここでは、まず、断熱管について図1に基づいて説明し、その後、その断熱管を具える超電導ケーブルについて図2に基づいて説明する。なお、図中、同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0028】
<<断熱管>>
<実施形態1>
図1に示すように、実施形態1に係る断熱管1は、内管10iと、外管10oと、断熱材11と、スペーサ12とを具える。断熱材11とスペーサ12は内管10iと外管10oとの間に配置される。各構成の詳細を以下に示す。
【0029】
[内管、外管]
内管10iと外管10oは、両管の間に断熱空間を形成し、内管10iの内部を流通する流体を外管10oの外部と熱的に隔絶するための長尺管である。本例では、内管10i、外管10oのいずれも、長手方向に螺旋形状の凹凸を形成したステンレス製のコルゲート管である。螺旋形状の凹凸を有するコルゲート管であれば、後述するスペーサ12を内外管10i、10oの間の空間に配置した場合、この空間を真空引きする排気経路を形成しやすい。また、上記コルゲート管は、蛇腹形状の凹凸を形成していてもかまわない。内管10iの内部を流れる流体は、極低温から高温まで幅広い温度のものが用いられる。例えば、液体窒素、液体水素、液体酸素、液体ヘリウム、液化天然ガス、水素ガス、ヘリウムガス、蒸気、湯などが挙げられる。
【0030】
内管10iと外管10oの形状は、コルゲート管以外にも、屈曲の必要がない場合や断熱管1の使用距離が短い場合、直線区間用として、長手方向に凹凸がないストレート管が利用できる。
【0031】
内管10iと外管10oの材質は、ステンレス以外にも、可撓性と強度を具えたアルミ等の金属が利用できる。
【0032】
内管10iと外管10oの厚さは、内管10iの内部を流通する流体の内圧に耐えられる厚さとする。但し、内管10iと外管10oの厚さが異なっていてもよい。例えば、内管10iには直接流体圧力が作用するため、内管10iの厚みを外管10oの厚みより厚くし、内管10iの耐圧性を確保しつつ外管10oを軽量化することが挙げられる。
【0033】
[断熱材]
内管10iと外管10oとの間には、断熱管1の内部からの輻射熱の放散および外部からの輻射熱の侵入をそれぞれ遮断して、断熱管1の断熱性を高めるために断熱材11が設けられている。この断熱材11の具体例としては、帯状の樹脂フィルムの一面又は両面にアルミニウムを蒸着した帯状材と、合成繊維からなるメッシュ構造材とを積層した積層材のいわゆるスーパーインシュレーション(商品名)が挙げられる。
【0034】
この断熱材11の配置形態として、内管10iの外周に、その全面を覆うように巻回することが好ましい。特に、内管10iの凹凸構造(螺旋)に沿って断熱材11を巻回するとよい。螺旋に沿って断熱材11を巻回することで、内管10iの外周全周に対して密に巻き易い。なお、上記断熱材11を配置する手段としては、内管10iの長手方向に沿うように設けてもよい。
【0035】
また、この断熱材11を配置する位置は、本例では、内管10iの直上に配置しているが、内管10iと外管10oとの間に配置されていればよく、他の配置でも構わない。例えば、内管10iの直上に後述するスペーサ12を配置して、そのスペーサ12と外管10oとの間に断熱材11を配置したり、内周側断熱材と外周側断熱材との間に挟むようにスペーサ12を配置したりするようにしてもよい。
【0036】
[スペーサ]
上記内管10iと外管10oとの間(本例では断熱材11と外管10oの間)には、内管10iと外管10o、具体的には断熱材11(内管10i)と外管10o(断熱材11)との間隔を保つためのスペーサ12が配置されている。このスペーサ12は、断熱材11(内管10i)の外周を囲って、上記断熱管1の軸方向(長手方向)に複数並列するリング体12rと、このリング体12r同士の間隔を保つための紐状体12bとから構成されている。さらに、スペーサ12は、このリング体12rと紐状体12bとを連結する連結部12cを具えている。以下に、各構成について示す。
【0037】
(リング体)
リング体12rは、実質的に内管10iと外管10oとの間隔を保つ役割を担う部材である。本例では、横断面形状が円形の線状体でリング体12rを構成しており、この線状体の断面積と断面形状は長手方向に一様である。円形断面の線状体でリング体12rを構成することで、断熱材11(内管10i)や外管10o(断熱材11)との接触を線接触にすることができ、接触面積を小さくすることができる。
【0038】
このリング体12rを構成する線状体の断面形状は、多角形などの非円形、あるいは環状を成すものでもかまわない。多角形断面の線状体であれば、その頂点に相当する箇所の稜線で断熱管1の他の部材と線接触することができる。環状断面の線状体であれば、線状体を中空体とでき、リング体12rを構成する線状体の外形が一定なら、断面積をより小さくすることができる。その結果、より効果的に断熱管1の内外の熱伝導を低減することができる。
【0039】
このリング体12rの周方向沿いの形態は、線状体の途中に継ぎ目がない構成と、継ぎ目がある構成が挙げられる。前者は、樹脂成形にて継ぎ目のないリング体12rを形成したり、予め円筒材を形成しておき、この円筒材を細い間隔で輪切りしたりすることで得ることができる。後者は、線状体を曲げて、その端部同士をテープや接着剤などで接合してリング状にすることで得られる。
【0040】
このリング体12rの厚み(リング体12rの内径と外径の差)と幅(リング体の軸方向における線状体の幅)は、それぞれ、内管10iと外管10oとの間隔を所望の間隔に保つことができる程度を有することが好ましい。具体的には、上記厚みは、1〜5mm、上記幅は、1〜5mmであることが好ましい。上記の範囲であれば、内管10iと外管10oとの接触面積を小さくしつつ、内管10iと外管10oとの間隔を保つことができるので、熱侵入を低減することができ、断熱性に優れたものとすることができる。
【0041】
また、このリング体12rの材質は、フッ素樹脂などのガス放出率が低く、熱伝導性が低い材質から形成されていることが好ましい。例えば、本例では、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から形成されたものを使用するが、上記のようにガス放出率が低い材質を用いることで、内外管10i、10oの間を真空にして断熱性を高める際、高い真空度を保つことができる。つまり、高い真空度を保つことで、断熱管1の断熱性が高い状態で維持することができる。また、上記のフッ素樹脂の他に、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)などの繊維強化プラスチック(FRP)、なども利用することができる。
【0042】
そして、このリング体12rを設ける箇所は、断熱管1の屈曲の有無に関わらず、断熱管1の全長に亘って内外管10i、10oの間隔を保てるような位置に、内管10i(断熱材11)の外周を囲うようにして配置することが必要である。そのために、各リング体12r同士の間隔(リングピッチ)とリング体12rの数を適宜選択するとよい。
【0043】
(紐状体)
紐状体12bは、リング体12r同士を所定の間隔に保持された状態に連結する役割を担う部材である。本例では、ポリエステルの細線で紐状体12bを構成している。ポリエステルの細線であれば、後述する連結部12cが容易に形成でき、かつ断熱管1の製造から使用の各段階にわたって損傷・切断しにくい。
【0044】
紐状体12bの太さは、この紐状体12b自体は熱侵入の要因とならない程度の外径を有していることが好ましい。特に、この太さはリング体12rを構成する線状体よりも細いことが好ましい。具体的には、直径0.5mm以下、あるいは、リング体12rを構成する線状体の太さに対して、5〜15%程度の太さを有していることが好適である。
【0045】
紐状体12bの材質は、上記リング体12rに巻き付けたり、結び付けたりすることができる可撓性、リング体12r同士の間隔を保ってリング体12rと連結しても切れたりしない程度の強度を有することが必要である。また、その他の紐状体12bの構成材料として、ポリエステルの他に、ポリアミド(PA)、ポリエチレン(PE)、ポリウレタン(PU)、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、フッ素樹脂、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)、および炭素繊維強化プラスチック(CFRP)などが挙げられる。
【0046】
紐状体12bの本数は、少なくとも1本あればよく、複数本用いることが好ましい。紐状体12bを複数本用いた場合、紐状体12bに各リング体12r同士を同軸上に保持する機能も持たせることができる。
【0047】
紐状体12bの配置は、内管10iの長手方向に沿うように行うことが好ましい。本例では、内管10iの外側に縦添えした合計4本の紐状体12bを内管10iの周方向に等間隔で配置している。そして、各紐状体12bの途中の複数箇所は、後述する連結部12cによって各リング体12rに連結されている。紐状体12bが複数本の場合、内管10i(断熱材11)の周方向に等間隔に並列配置するとよい。例えば2本の場合は、内管10iの外周の対向位置に、3本以上の場合、断熱管1の横断面を見た場合に、各紐状体12bを正多角形の頂点に相当する位置に配置するとよい。
【0048】
(連結部)
上記リング体12rと上記紐状体12bとを連結する連結部12cは、本例では、上記リング体12rに上記紐状体12bの途中を巻き付けることで構成されている。この巻き付けは、簡易な連結部12cの構成手段である。リング体12rには、紐状体12bを巻き付け易くするために切れ込みを入れておいてもよい。例えば、紐状体12bの直径が嵌る程度で、リング体12rを構成する線状体の外周に及ぶ環状溝などが挙げられる。この切れ込みに紐状体12bを巻き付けることで、リング体12rと紐状体12bとの位置関係がずれ難くなる。紐状体12bを巻き付ける際には、紐状体12bを一周分だけ巻き付けてもよいし、それ以上でもかまわない。
【0049】
上記連結部12cの他の構成としては、リング体12rに紐状体12bの途中を結び付けることや、リング体12rに紐状体12bを貫通させることが挙げられる。この結び付けによる連結部12cは、紐状体12bの種々の結び方により構成でき、リング体12r同士の間隔をより確実に保持できる。また、貫通による連結部12cは、例えば紐状体12bの先に付けた針でリング体12rを刺し通し、孔あけと貫通を同時に行って構成できる。そして、貫通して連結部12cを構成する場合、少なくともスペーサ12の両端に位置するリング体12rに対しては、紐状体12bの抜け止めを設けることが好ましい。抜け止めは、紐状体12bを玉結びしたり、紐状体12bにストッパーを取り付けたりするなどして、紐状体12bの途中に貫通孔を通らない太径部を設けることで容易に形成できる。また、スペーサ12の両端以外のリング体12rでは、その貫通孔の前後で紐状体12bに太径部を設けることで、各リング体12rの間隔をより確実に保持できる。
【0050】
さらに、上記巻き付け、結び付け、貫通の3つの連結部12cの各構成が複数の連結部12cに対して適宜な組み合わせで混在されて構成されていてもよい。この場合は、例えば、両端のリング体12rと紐状体12bは結び付け、両端以外のリング体12rと紐状体12bは、巻き付けまたは貫通とすることなどが挙げられる。そして、連結部12cのさらに別の構成としては、接着テープや接着剤を用いてリング体12rと紐状体12bの両者を連結させることも挙げられる。
【0051】
[スペーサの形成方法および配置方法]
上記スペーサ12を内管10i(断熱材11)と外管10oとの間に配置する方法として、上記リング体12rが継ぎ目なく形成されている場合は、まず、一対のリング体12rを所定の間隔をあけて紐状体12bで連結する。次に、一対のリング体12rの一方と所定の間隔をあけて、別のリング体12rも紐状体12bで連結する。以下、順次同様に紐状体12bでリング体12rを連結することを繰り返し、リング体12r同士の間隔を所望の間隔に保ったスペーサ12を形成する。そして、各リング体12rを、内管10i(断熱材11)の一端側から嵌めて順次他端側に移行させ、内管10iの長手方向に各リング体12rが所定の間隔で並列されるようにすることでスペーサ12を内管10iの外周に配置する。
【0052】
また、リング体12rが、直線状の線状体を曲げて端部同士を接合することで形成される場合は、まず、線状体を互いが平行になるように並列させる。その際、線状体同士の間隔は所望の間隔となるように配置する。次に、その線状体と直交するように所定本数の紐状体を配置して、線状体と連結させる。その際、上述したように連結部12cを形成するとよい。それによって、連結した線状体と紐状体とで網状体が形成される。続いて、その網状体の線状体部分を内管10i(断熱材11)の外周に巻回する。そして、線状体の端部同士をテープや接着剤などで接合することで、リング体12rの形成とスペーサ12の配置とを同時に行うようにしてもよい。
【0053】
(その他)
以上ように内管10iと外管10oとの間に断熱材11とスペーサ12を配置した後、内管10iと外管10oとの間は真空引きされ、真空状態に保たれる。この内管10iと外管10oとの間を真空にすることにより、断熱管1の断熱性をより高めている。
【0054】
[作用効果]
上述した実施形態に係る断熱管によれば、以下の効果を奏する。
【0055】
(1)スペーサの主要構成要素であるリング体の断面を円形としているため、スペーサと断熱管の他の構成部材とを線接触とすることができるので、接触面積小さくすることができる。その結果、スペーサを介して外部からの熱侵入を低減することができ、断熱管の断熱性を改善することができる。
【0056】
(2)リング体が内管の長手方向に複数並列していることで、断熱管の全長に亘って内管と外管との間隔を保つことができる。そして、断熱管の全長で見た場合、リング体(スペーサ)の構成材料を削減することができる。
【0057】
(3)リング体同士を紐状体で連結しているので、リング体同士の間隔を保つことができる。
【0058】
<<超電導ケーブル>>
<実施形態2>
次に、図2を用いて、実施形態2に係る本発明超電導ケーブル2の全体構成の一例を説明する。図2に示す超電導ケーブル2は、断熱管1と、ケーブルコア20とを具える。断熱管1は、実施形態1に係る断熱管1である。そして、その断熱管1に、ケーブルコア20が収納されている。本例では、その断熱管1に、3心のコアを一括して収納する3心一括型超電導ケーブルを示す。以下、その超電導ケーブル2の構成を説明する。なお、断熱管1の構成については、説明を省略する。
【0059】
[ケーブルコア]
各ケーブルコア20は、中心から順に、フォーマ21、超電導導体層22、電気絶縁層23、超電導シールド層24を具える。これらの各層のうち、超電導導体層22と超電導シールド層24には超電線材30が用いられる。
【0060】
(フォーマ(芯材))
フォーマ21は、銅やアルミニウムといった常電導材料からなる中実体や中空のパイプや、複数の素線を撚り合わせた撚り線を利用することができる。例えば、中空体を用いると、その内部を冷媒の流路にすることができる。本例では、フォーマ21は、銅素線の撚り線から構成されている。
【0061】
(超電導導体層)
超電導導体層22は、フォーマ21の外周に超電導線材30を螺旋状に巻回して形成された単層または多層構造であり、層間には、クラフト紙といった絶縁材を巻回して層間絶縁層を設けている。超電導線材30は、図2に示すように複数の超電導フィラメントが螺旋状に撚り合わされて金属マトリクス中に内蔵された構成である。ここでは、Bi2223酸化物超電導体からなる複数の超電導フィラメントが銀シース及び銀合金シースで被覆された超電導線材30を用いている。
【0062】
(電気絶縁層)
電気絶縁層23は、クラフト紙などの絶縁紙テープや、クラフト紙とプラスチックフィルムとを複合した半合成絶縁テープ、例えば、住友電気工業株式会社製PPLP(登録商標)といったテープ状の絶縁性材料を巻回した構成が挙げられる。また、電気絶縁層23の内側に内部半導電層(図示せず)、外側に外部半導電層(図示せず)を具える。
【0063】
(超電導シールド層)
超電導シールド層24は、電気絶縁層23の外周に、超電導導体層22と同様の多芯の超電導線材30(上述のBi2223系テープ線材)を螺旋状に巻回して形成された単層または多層構造であり、基本的な構成は超電導導体層22と同様である。この超電導シールド層24は、超電導導体層22に交流を通電した際、その交流とほぼ同じ大きさで逆方向の電流が誘導されることで、ケーブルの外部への磁界の発生を打ち消す作用を有する。なお、この例に示す超電導ケーブル2では、超電導シールド層24の外周に、超電導線材30を保護するために、銅といった常電導材料からなる常電導シールド層25、及び常電導シールド層25の外周にクラフト紙などからなる保護層26を具えている。なお、直流超電導ケーブルの場合、超電導導体層22を電流往路(電流復路)とすれば、この超電導シールド層24は電流復路(電流往路)となる外部超電導層として利用できる。
【0064】
[その他の構成]
上述した超電導ケーブル2は、運転時、内管10iの内部に冷媒を流すことで、上記超電導導体層22や超電導シールド層24を超電導状態に維持している。この冷媒としては、液体窒素が代表的であり、その他に、液体水素、液体ヘリウムなどを利用することができる。そして、内管10iと外管10oとの間は、真空引きされている。この内管10iと外管10oとの間を真空にすることで、断熱管1の断熱性をより高めている。また、断熱管1(外管10o)の外周には、ポリ塩化ビニルからなる防食層28を具えることで、耐食性を高めている。
【0065】
[作用効果]
上述した超電導ケーブルによれば、断熱性の高い断熱管を具えているので、ケーブルコアの冷却に要するエネルギーを削減することができる。
【0066】
<試算例>
試算例として、上述した実施形態1に係るスペーサを用いた断熱管(実施例)における熱侵入と、複数の線状体を螺旋状に配置したスペーサを用いた断熱管(比較例)における熱侵入とを比較した。具体的には、内管の外側にスペーサを配置した際におけるリング体および線状体の長さをそれぞれ試算して比較した。その際、内管とスペーサとの接触面積が、スペーサの長さにのみ依存するとみなした。なお、実施例で用いられる紐状体は、単にリング体同士を連結する機能だけで、内外管の間隔保持やスペーサ以外の他の断熱管の構成部材との接触による熱侵入には実質的に関与しないため、比較例との比較対象には含めない。
【0067】
スペーサを配置する管の外径が150mmで、その管の長さが300、500、1000mmの3種類を用意した。比較例1〜3では、そのそれぞれの管に線状体を巻き付ける際の巻き付けピッチ(螺旋ピッチ)は、それぞれ管の長さを1ピッチとした。そして、同じ螺旋ピッチで8本全ての線状体を管の周方向に等間隔に並列させた。一方で、実施例1〜3では、スペーサの機能が比較例のスペーサと等価となるようにリングピッチ(隣接するリング体同士の間隔)を選択した。このリングピッチは、上記螺旋ピッチをスペーサの巻き付け本数で割った値とした。つまり、管の長さが300mmの場合、リング体のピッチは、300/8で37.5mmとし、同様に500mmの場合のピッチを62.5mm、1000mmの場合のピッチを125mmとする。そして、それぞれのピッチでリング体を計8本、その管の長手方向に並列して配置した。その後、実施例ではリング体の全長を、比較例では、8本の線状体の全長をそれぞれ計算した。その結果を表1に示す。
【0068】
【表1】

【0069】
[結果]
表1に示すように、線状体を螺旋状に配置した比較例1〜3は、線状体の全長が実施例1〜3におけるリング体の全長よりも長くなっている。つまり、スペーサとスペーサ以外の断熱管の構成部材との接触面積は、この全長に依存するから、リング体を用いた実施例1〜3の方が、前記接触面積を小さくすることができ、熱侵入が低減される。そのうえ、上記全長が短いということは、スペーサの構成材料を削減することもできる。
【0070】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、スペーサのリング体と紐状体の役割を実施形態1と逆にしてもよい。
【0071】
その場合、例えば細線からなるリング体と、円形断面の線状体からなる紐状体とで構成する。それに伴い、紐状体が実質的に内管と外管との間隔を保つ役割を担い、リング体は、その紐状体の間隔を保つ役割を担う。このとき、リング体と紐状体の寸法もそれぞれ逆にする。具体的には、紐状体の厚みは、1〜5mm、幅は、1〜5mmが好ましく、リング体は、直径0.5mm以下あるいは、紐状体を構成する線状体の太さに対して、5〜15%程度の太さを有していることが好ましい。そして、内管の長手方向に沿うように設けられる紐状体で内管と外管の間隔を保つように、内管(断熱材)の周方向に8本の紐状体を等間隔(断熱管を横断面で見ると正八角形の頂点に相当する位置)に配置する。また、連結部は、紐状体にリング体を構成する細線を巻き付けることで構成する。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の断熱管は、外部との断熱が望まれる各種の流体の輸送管や収納管、その他、超電導ケーブルの構成部材に好適に利用することができる。また本発明の超電導ケーブルは、送電線路の構成部材に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0073】
1 断熱管 2 超電導ケーブル
10i 内管 10o 外管
11 断熱材
12 スペーサ 12r リング体 12b 紐状体 12c 連結部
20 ケーブルコア
21 フォーマ 22 超電導導体層 23 電気絶縁層
24 超電導シールド層 25 常電導シールド層 26 保護層
28 防食層
30 超電導線材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内管と、前記内管の外周を覆うように設けられる外管と、前記内外管の間に配される断熱材と、前記内外管の間隔を保つためのスペーサとを具える断熱管であって、
前記スペーサは、
前記内管を囲って、前記内管の長手方向に複数並列するリング体と、
前記リング体同士の間隔を保つ紐状体と、
を具えることを特徴とする断熱管。
【請求項2】
さらに、前記スペーサは、前記リング体と前記紐状体とを連結する連結部を具え、
前記連結部は、前記リング体に前記紐状体が巻き付けられることで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の断熱管。
【請求項3】
さらに、前記スペーサは、前記リング体と前記紐状体とを連結する連結部を具え、
前記連結部は、前記リング体に前記紐状体が結び付けられることで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の断熱管。
【請求項4】
さらに、前記スペーサは、前記リング体と前記紐状体とを連結する連結部を具え、
前記連結部は、前記リング体を前記紐状体が貫通することで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の断熱管。
【請求項5】
前記リング体は、フッ素樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の断熱管。
【請求項6】
前記紐状体は、ポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリフェニレンスルファイド、およびフッ素樹脂の中から選択される1種から形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の断熱管。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の断熱管と、
前記断熱管に収納され、超電導導体層を有するケーブルコアとを具えることを特徴とする超電導ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−231917(P2011−231917A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105789(P2010−105789)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】