説明

断熱管及び超電導ケーブル

【課題】断熱性能に優れる断熱管、及びこの断熱管を具える超電導ケーブルを提供する。
【解決手段】断熱管1は、内管1i及び外管1oと、内管1iと外管1oとの間に配置される断熱材層20と、内管1iと外管1oとの間に所定の間隔を保持するためのスペーサ21とを具える。スペーサ21は、線状体であり、断熱材が積層された多層構造の内側断熱材層20iと、断熱材が積層された多層構造の外側断熱材層20oとの間に例えば、螺旋状に巻回されて介在されている。スペーサ21が断熱材層20の中間部に配置されることで、スペーサ21が内管1i及び外管1oに直接接触しないため、スペーサ21を介した熱伝導を抑制することができる。この断熱管1を具える超電導ケーブルは、侵入熱が低減されて、断熱性能に優れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱管、及びこの断熱管を具える超電導ケーブルに関するものである。特に、高い断熱性能を有し、生産性に優れる断熱管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
超電導ケーブルの構成部材に断熱管がある。この断熱管は、代表的には、ステンレス鋼といった金属からなるコルゲート管から構成される内管及び外管と、これら内管と外管との間の隙間を真空引きした二重構造管が挙げられる。
【0003】
上記内管と上記外管との間には、スーパーインシュレーションと呼ばれる断熱材を内管の外周に巻回して積層した断熱材層と、上記内管と上記外管との間に所定の隙間が設けられるようにするためのスペーサとが配置される(特許文献1,2参照)。スペーサは、代表的には、上記断熱材層の外周(特許文献1,2参照)、又は内管と断熱材層との間に配置される。また、特許文献1,2では、帯状のネット材に紐状体が一体化されたスペーサを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3597015号公報
【特許文献2】特許第3672650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
断熱管には、外部からの熱の侵入、或いは外部への放熱をできる限り低減して、断熱性能に優れることが望まれる。例えば、内管と外管との間の空間を大きくすることで断熱性能を高められるが、外管を大径にすることで断熱管の大型化を招く。従って、できるだけ寸法を変えることなく、侵入熱などを低減して高い断熱性能を有する断熱管の開発が望まれる。
【0006】
また、従来の断熱管に利用されているスペーサは、複雑な構成であることから、スペーサ自体の製造性の低下だけでなく、スペーサの両端部を断熱管に固定するための固定構造も複雑となり、断熱管の製造性の低下をも招く。例えば、スペーサを長尺な紐状体とし、この紐状体を内管又は断熱材層に巻回して、或いは、内管又は断熱材層に縦添えして、内管と外管との間にスペーサを配置させることが考えられる。この場合、紐状体の端部を接着テープなどの固定部材により、断熱管の端部に簡単に固定できる。しかし、紐状体をある程度大きなピッチで螺旋状に巻回した場合や複数の紐状体を離間して縦添えした場合、この配置状態を維持することが難しく、上述のようにスペーサの両端部が断熱管に固定されていても、スペーサの中間部の位置がずれる恐れがあり、別途、この中間部を固定する必要がある。一方、隣り合うターン間が接するように上記紐状体を緻密に巻いたり、接するように上記紐状体を縦添えすると、スペーサ(紐状体)の中間部を固定しなくても位置ずれや間隔の変動が生じ難いものの、断熱材とスペーサとの接触面積が大きくなり、侵入熱や放熱が多くなる傾向にある。また、紐状体を緻密に巻いたり、内管などの全周を覆うように紐状体を縦添えすると、作業性に劣り、断熱管の製造性の低下を招いたり、内管と外管との間に配置される部材が多くなり、真空引きし難くなるという問題もある。従って、簡単な構成で製造性に優れる断熱管の開発が望まれる。
【0007】
そこで、本発明の目的の一つは、簡単な構成で、断熱性能に優れる断熱管を提供することにある。
【0008】
また、本発明の別の目的は、上記断熱管を具える超電導ケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、スペーサの配置を工夫することで上記目的を達成する。
【0010】
本発明の断熱管は、内管及び外管と、上記内管と上記外管との間に配置される断熱材層と、上記内管と上記外管との間に所定の間隔を保持するためのスペーサとを具える。上記断熱材層は、断熱材が積層された多層構造の内側断熱材層と、断熱材が積層された多層構造の外側断熱材層とを具える。そして、上記スペーサは、線状体であり、上記内側断熱材層と上記外側断熱材層との間に介在されている。上記スペーサは、代表的には、螺旋状に巻回されて、又は縦添えされて介在される。
【0011】
上記構成によれば、多層構造の断熱材層の中間部にスペーサが配置されているため、スペーサが内管や外管に直接接触しない。また、上記内側断熱材層と上記外側断熱材層とでスペーサが挟持され、螺旋状に巻回した状態や縦添えした状態が当該両断熱材層により保持されることから、スペーサを緻密に巻回したり、接するように複数本のスペーサを縦添えする必要が無く、スペーサを離間した状態とすることができる。そのため、上記構成によれば、スペーサと断熱材層との接触面積を低減でき、スペーサを介して侵入熱が内管内の収容物に伝わったり、内管の収容物の熱がスペーサを介して外部に放出されることを効果的に防止でき、優れた断熱性能を有することができる。
【0012】
更に、上記構成によれば、スペーサが線状体であることから、スペーサ自体の生産性に優れる。かつ、上記構成によれば、上述のようにスペーサを螺旋状に巻回した状態や縦添えした状態が上記両断熱材層により保持される。この構成により、上述のようにスペーサ間を離す場合にもスペーサの中間部を別途固定する必要がなく、この点からも断熱管の生産性に優れる。特に、スペーサを螺旋状に巻回した形態は、縦添えする場合よりもスペーサの配置が容易であり、断熱管の生産性に更に優れる。また、上記構成によれば、線状のスペーサを螺旋状に巻回した形態や縦添えに配置した形態とすることで、スペーサの端部を断熱管に接着テープなどで容易に固定でき、この点からも断熱管の生産性に優れる。更に、上記構成によれば、例えば、一層の断熱材とスペーサとを交互に積層した形態とするのではなく、多層の断熱材層を複数具える形態とすることで、工程数が少なく、この点からも断熱管の生産性に優れる。
【0013】
加えて、上記構成によれば、スペーサの配置位置が従来の断熱管と異なるものの、従来の断熱管と同等の大きさとすることができる。更に、上記構成によれば、上述のようにスペーサを離間した形態にできるため、内管と外管との間に配置される部材を低減することができ、例えば、真空引きなどの作業性にも優れる。
【0014】
本発明の一形態として、上記内側断熱材層における断熱材の積層数と、上記外側断熱材層における断熱材の積層数とが等しい形態が挙げられる。
【0015】
上記内側断熱材層及び上記外側断熱材層のそれぞれについて、断熱材の積層数は適宜選択することができ、両断熱材層の積層数が異なった形態とすることができる。例えば、外側断熱材層の積層数を内側断熱材層の積層数よりも多くすることで、スペーサをより確実に固定できる。或いは、内側断熱材層の積層数を外側断熱材層の積層数よりも多くすることで、スペーサを介した熱伝導をより低減することができる。これに対して、上述のように両断熱材層の積層数を等しくすると、スペーサの位置の固定、及び侵入熱や放熱の低減効果の双方を得ることができて好ましい。
【0016】
上記本発明断熱管は、超電導ケーブルの構成部材に好適に利用することができる。即ち、本発明の超電導ケーブルとして、上記本発明断熱管を具え、かつ超電導導体層を有し、上記断熱管の内管内に収納されるケーブルコアを具えるものが挙げられる。
【0017】
上記本発明超電導ケーブルは、本発明断熱管を具えることで、侵入熱を低減することができ、高い断熱性能を有する。そのため、本発明超電導ケーブルは、例えば、上記内管内に充填されて、上記超電導導体層を冷却する冷媒を所定の温度に維持するエネルギーを低減することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明断熱管は、断熱性能に優れる。本発明超電導ケーブルは、本発明断熱管を具えることで、侵入熱が低減され、冷媒の温度維持に必要なエネルギーを低減できると期待される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、実施形態1の断熱管の要素を模式的に示す縦断面図である。
【図2】図2は、実施形態2の超電導ケーブルを模式的に示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。図において同一符号は、同一名称物を示す。
【0021】
(実施形態1)
<断熱管の構成>
以下、図1を参照して実施形態1の断熱管1を説明する。なお、図1は、断熱管の縦断面において上半分のみを示すが、実際には、上半分と同様な構成の下半分が存在する。
【0022】
断熱管1は、内管1iと、内管1iの外周に配置される外管1oとを具える二重構造管である。内管1iと外管1oとの間には、断熱材を巻回してなる断熱材層20と、両管1i,1oの間に所定の間隔を保持するためのスペーサ21とを具える。この断熱管1は、断熱が望まれるような流体(通常、室温よりも低温、或いは室温よりも高温のもの)が内管1i内に充填され、当該流体を保持したり、流通したりする際に利用される。この断熱管1の特徴とするところは、断熱材層20の形態及びスペーサ21の配置位置にある。以下、より詳細に説明する。
【0023】
内管1i及び外管1oはいずれも全長に亘って、コルゲート加工が施されたステンレス鋼製のコルゲート管であり、屈曲可能な可撓性を有する。ここでは、内管1i及び外管1oの山高さ(コルゲートの山部と谷部との間の距離。凹溝の深さ)及びコルゲートのピッチ(隣り合う山部間の距離)を等しくしている。つまり、両管1i,1oは、波形及び位相が等しい形状である。両管1i,1oは、コルゲート加工が施されていないフラット管とすることができる。両管1i,1oの構成材料は、ステンレス鋼の他、アルミニウムやその合金などの金属が挙げられる。上記金属は、耐食性に優れることから、種々の流体の保持や輸送を行う断熱管1の構成材料に適する。また、両管1i,1oの材質を異ならせることもできる。
【0024】
内管1i及び外管1oの厚さは適宜選択することができる。但し、内管1iの厚さは、上述のようにその内部に充填或いは流通される流体の圧力に耐え得るように調整する。外管1oは、断熱管1を屈曲したとき、内管1iより大きな張力が加わるため、当該張力に耐え得るように外管1oの厚さを適宜調整する。また、両管1i,1oの厚さを異ならせることもできる。例えば、両管1i,1oの材質を等しくする場合、内管1iの厚さを外管1oの厚さよりも厚くすると、上記流体の圧力が高くなっても、破損し難く好ましい。
【0025】
内管1iと外管1oとの間に配置される断熱材層20は、断熱材を積層させた多層構造であり、適宜な層数で一纏まりとし、このような纏まりを複数具える構成である。具体的には、内管1i側に配置される内側断熱材層20iと、外管1o側に配置される外側断熱材層20oとを具える。両断熱材層20i,20oはいずれも、多層構造であり、同じ層数としている。
【0026】
断熱材層20を構成する断熱材は、種々の材質からなる帯状材を好適に利用することができる。代表的には、帯状の樹脂フィルムの一面又は両面にアルミニウムを蒸着した基材と、合成繊維からなるメッシュ構造材とを積層した積層材、所謂スーパーインシュレーションが挙げられる。樹脂フィルムの構成樹脂は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)が挙げられる。合成繊維は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)といったフッ素樹脂やナイロンといったポリアミド系樹脂などの樹脂繊維、ガラス繊維が挙げられる。公知の断熱材を適宜利用することができる。
【0027】
上記断熱材層20は、上述した帯状の断熱材を螺旋状に巻回する、或いは縦添えすることで形成することができる。このような断熱材層20を具えることで、内管1i内への輻射熱の侵入や内管1i内からの輻射熱の放散を防ぎ、断熱管1の断熱性能を向上することができる。ここでは、内側断熱材層20i及び外側断熱材層20oはいずれも、上記断熱材を螺旋状に巻回して形成している。螺旋状に巻回することで、断熱管1が長尺な場合でも、多層構造の断熱材層20を容易に形成することができる。
【0028】
ここで、二重構造管は、曲げられたり、自重により、内管が外管に対して偏った状態になったり、内管と外管とが局所的に接触したりすることがある。内管と外管との間が狭くなる、特に内管と外管とが接触すると、外管の外部からの熱が内管内に侵入したり、内管内の熱が外管の外部に放出されたりして、断熱管の断熱性能が低下する。このような内管と外管との接触を防止する、つまり、両管の間に所定の間隔(少なくともスペーサの大きさに応じた間隔)を維持するために内管1iと外管1oとの間にスペーサ21が介在される。
【0029】
ここでは、スペーサ21は、上記所定の間隔を保持できる十分な大きさ(断面積)を有する1本の連続した長い線状体である。断面形状は、代表的には円形状が挙げられるが特に問わない。矩形状や三角形状、楕円状などの種々の断面形状を選択することができる。スペーサ21の構成材料は、熱伝導率が小さく、内管1iと外管1oとに押圧されたときの力に耐え得る機械的強度を具える材料を利用することができる。具体的な構成材料は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)といったフッ素樹脂、ナイロンといったポリアミド系樹脂、ガラス繊維、ガラス繊維などの繊維を含有する繊維強化プラスチック(GFRP)などが挙げられる。
【0030】
内管1iと外管1oとの間の間隔保持との機能からすれば、スペーサ21は、内管と断熱材層との間や、断熱材層と外管との間に配置させることができる。これに対して、断熱管1では、多層の断熱材層20の途中にスペーサ21を介在させた構成である。ここでは、スペーサ21は、上記内側断熱材層20iと外側断熱材層20oとの間に螺旋状に巻回され、スペーサ21間に適宜な隙間が設けられた状態で介在されている。このような断熱管1は、内管1iの外周に断熱材を多層に巻回して内側断熱材層20iを形成した後、内側断熱材層20iの外周に、線状のスペーサ21を適宜なピッチで螺旋状に巻回し、このスペーサ21の外周に、更に断熱材を多層に巻回して外側断熱材層20oを形成することで製造することができる。
【0031】
上記構成により、断熱管1は、スペーサ21が内管1i,外管1oに接触することが無く、スペーサ21を介して侵入熱が内管1iに伝えられたり、内管1iからの熱がスペーサ21を介して外部に伝えられることを防止でき、高い断熱性能を有する。また、スペーサ21は、螺旋状に巻回された状態が外側断熱材層20oにより固定され、スペーサ21の位置がずれ難い。従って、断熱管1が曲げられたり、自重により内管1iが外管1oに偏った状態になっても、内管iと外管1oとの間にスペーサ21が確実に介在し、両管1i,1oの間に所定の間隔が設けられた状態を十分に維持することができる。そのため、断熱管1は、両管1i,1oが局所的に接触することを防止でき、例えば、熱侵入を効果的に低減できる。
【0032】
その他、内管1iに導入される上記流体の温度は、流体の種類や断熱管1の用途によって異なり、数K〜数十K程度といった極低温から、数百K程度といった高温までの幅広い温度が用いられる。上記流体が所望の温度に維持されるように、断熱管1は、内管1iと外管1oとの間を真空引きして真空層を具える形態とすることができる。真空層の真空度は適宜選択することができる。真空度が高いほど、断熱性能を高められる。なお、真空引きされた内管及び外管は、真空状態が保持されるように密閉される。
【0033】
<試験例>
上記構成を具える断熱管1の断熱性能を調べた。試験に使用した断熱管1の仕様は、以下の通りである。
【0034】
[内管・外管]
材質:ステンレス鋼製のコルゲート管
内管の外径:110mm、外管の内径:140mm、両管の山高さ:4mm、両管のコルゲートのピッチ:20mm、断熱管の全長:1m
[断熱材層]
材質:市販のスーパーインシュレーション
内側断熱材層の積層数:5層、外側断熱材層の積層数:5層
[スペーサ]
材質:ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)
断面形状が円形状(直径:3mm)の線状体
巻き付けピッチ:1000mm
[真空層]
内管と外管との間を真空引きして、真空層を具える形態とした。
真空度:1×10-6Pa
【0035】
比較として、スペーサの配置位置を異ならせた以外の点は、上記実施形態1の断熱管1と同様の仕様の比較断熱管を用意した。比較断熱管では、内管の外周に断熱材を10層積層して多層構造の断熱材層を形成し、この断熱材層(積層数:10層)の外周に、実施形態1と同様に、線状のスペーサを螺旋状に巻回した。
【0036】
用意した長さ1mの短尺な断熱管はいずれも、両端を封止すると共に、内管内に液体窒素(77K)を充填した。この密閉した各断熱管を室温(20℃程度)に配置して、内管から発生した気体(蒸発ガス(主として窒素ガス))の蒸発量を市販のガス流量計により測定し、この蒸発量から各断熱管の侵入熱(W)を演算により求めた。また、侵入熱から熱伝導率:(侵入熱)/(断熱管の長さ)を求めた。
【0037】
その結果、従来の断熱管と同様に、多層構造の断熱材層の外周にスペーサが配置され、スペーサの外周に断熱材層を有していない比較断熱管は、熱伝導率が約1.7W/mであった。これに対し、実施形態1の断熱管1は、約1.1W/mであり、比較断熱管に比べて侵入熱を約35%低減できて断熱性能に優れることが確認された。
【0038】
<効果>
上述のように、多層構造の断熱材層20の中間部にスペーサ21が介在された断熱管1は、侵入熱を低減することができ、断熱性能に優れる。また、スペーサ21が線状体であることで、スペーサ21自身を容易に製造できる上に、スペーサ21の両端部を断熱管1に容易に固定できるため、断熱管1も容易に製造できる。従って、断熱管1は、生産性にも優れる。更に、断熱管1は、内側断熱材層20iと外側断熱材層20oとでスペーサ21が挟持され、螺旋状に巻回した状態が十分に維持されることから、スペーサ21の固定部材が別途不要であり、この点からも生産性に優れる。また、断熱管1は、スペーサ21が螺旋状に巻回された形態であり、スペーサ21の配置が容易であり、この点からも生産性に優れる。その上、一纏まりの断熱材層のみを具え、この断熱材層の外周にスペーサが配置された従来の断熱管と同様な要素で断熱管1は構成されている。そのため、断熱管1は、従来の断熱管と実質的に同じ寸法とすることができながら、優れた断熱性能を有することができる。
【0039】
(実施形態2)
上述した実施形態1の断熱管1は、例えば、超電導ケーブルの構成部材に好適に利用することができる。以下、図2を参照して、実施形態2の超電導ケーブル10を説明する。
【0040】
超電導ケーブル10は、断熱管12と、この断熱管12の内部に収納される三心のケーブルコア11とを具える。断熱管12は、内管12iと外管12oとを具える二重構造管であり、この断熱管12として、両管12i,12o内に上述した断熱材層20及びスペーサ21を具える実施形態1の断熱管を具える。以下、超電導ケーブル10の各構成を詳細に説明する。
【0041】
各ケーブルコア11は、代表的には、中心から順にフォーマ111、超電導導体層112、電気絶縁層113、外側超電導層114、常電導層115、保護層116を具える。超電導導体層112及び外側超電導層114には、超電導体が用いられる。
【0042】
フォーマ111は、超電導導体層112の支持体や事故電流(短絡電流)の流路に利用されることから銅やアルミニウムなどの常電導材料から構成された中実体や中空体が利用される。より具体的には、例えば、エナメルなどの絶縁被覆を具える複数の金属線を撚り合わせた撚り線や金属パイプが挙げられる。中空体は、その内部を後述する冷媒の流路にすることができる。常電導層115も事故電流の流路に利用される部分であり、銅テープなどを巻回した構成が挙げられる。
【0043】
超電導導体層112及び外側超電導層114は、例えば、酸化物超電導体を具えるテープ状線材、代表的にはBi2223系超電導テープ線(Ag-Mnシース線)を螺旋状に巻回して形成した単層構造又は多層構造が挙げられる。その他、RE123系薄膜線材(RE:希土類元素、例えばY、Ho、Nd、Sm、Gdなど)も超電導導体層112や外側超電導層114の構成材料に利用できる。外側超電導層114は、例えば、交流送電の場合:磁気遮蔽層、直流送電の場合:帰路導体に利用される。保護層115は、この外側超電導層114の保護層として機能し、クラフト紙などを巻回した構成が挙げられる。
【0044】
電気絶縁層113は、クラフト紙などの絶縁紙テープや、クラフト紙とプラスチックとを複合した半合成絶縁テープ、例えば、住友電気工業株式会社製PPLP(登録商標)といったテープ状の絶縁性材料を巻回した構成が挙げられる。
【0045】
上記ケーブルコア11を収納する断熱管12は、超電導導体層112や外側超電導層114を超電導状態に維持するための冷媒(代表的には液体窒素)が内管12i内に充填され、内管12iと各ケーブルコア11との間の空間は、冷媒流路13として機能する。外管12oの上には、ポリ塩化ビニルといった耐食性に優れる防食層14を具える。
【0046】
断熱管12は、外部からの侵入熱などによって上記冷媒の温度が上昇し、超電導導体層112や外側超電導層114が超電導状態から常電導状態に移行するなどの問題を防止するために、真空層を具えて外部からの侵入熱を抑制する。また、断熱管12では、上記真空層に加えて、上述のように断熱材層20を具えると共に、スペーサ21を具える。
【0047】
上記超電導ケーブル10は、断熱管12を具えることで侵入熱を低減することができ、断熱性能に優れる。従って、超電導ケーブル10は、例えば、上記冷媒を所定の温度に維持するために必要なエネルギーを低減でき、エネルギー効率の向上に寄与することができる。また、断熱管12は、上述のように容易に製造することができることから、超電導ケーブル10の生産性をも向上することができる。
【0048】
上述した実施形態は、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能であり、本発明の範囲は上述した構成に限定されるものではない。例えば、断熱管については、内側断熱材層及び外側断熱材層の積層数をそれぞれ異ならせた形態、内側断熱材層及び外側断熱層に加えて別の単層又は多層の断熱材層及びスペーサを具えて、単層又は多層の断熱材層とスペーサとを交互に積層させた形態、スペーサを複数具える形態、少なくとも1本のスペーサを離間して縦添えした形態としたり、超電導ケーブルについては一心のケーブルコアを具える単心ケーブルとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明断熱管は、外部との断熱が望まれる各種の流体(液体窒素、液体空気、液体酸素、液体水素、液化石油ガス(LPG)、湯水など)の輸送管や収納管、その他、超電導ケーブルの構成部材に好適に利用することができる。本発明超電導ケーブルは、送電線路の構成部材に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 断熱管 1i 内管 1o 外管
20 断熱材層 20i 内側断熱材層 20o 外側断熱材層 21 スペーサ
10 超電導ケーブル 11 ケーブルコア 12 断熱管 12i 内管
12o 外管 13 冷媒流路 14 防食層
111 フォーマ 112 超電導導体層 113 電気絶縁層 114 外側超電導層
115 常電導層 116 保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内管及び外管と、前記内管と前記外管との間に配置される断熱材層と、前記内管と前記外管との間に所定の間隔を保持するためのスペーサとを具える断熱管であって、
前記断熱材層は、断熱材が積層された多層構造の内側断熱材層と、断熱材が積層された多層構造の外側断熱材層とを具え、
前記スペーサは、線状体であり、前記内側断熱材層と前記外側断熱材層との間に介在されていることを特徴とする断熱管。
【請求項2】
前記内側断熱材層における断熱材の積層数と、前記外側断熱材層における断熱材の積層数とが等しいことを特徴とする請求項1に記載の断熱管。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の断熱管と、
超電導導体層を有し、前記断熱管の内管内に収納されるケーブルコアとを具えることを特徴とする超電導ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−220506(P2011−220506A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−93191(P2010−93191)
【出願日】平成22年4月14日(2010.4.14)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】