説明

断熱箱体および冷蔵庫

【課題】発泡断熱材の漏れ等の課題を抑えつつ、側板に凹凸の少ない意匠性の優れた断熱箱体を提供する。
【解決手段】外箱2のうち互いに対向する各側板2bの内面にそれぞれ上下方向にジグザグ状に配管されて連結された凝縮パイプ7と、凝縮パイプ7のうちジグザグ状のパイプの直線部分を各側板2bの内面に貼り付けて固定する金属製テープ8と、外箱2内に嵌め込まれた内箱5と、外箱2と内箱5との間に充填された発泡断熱材6と、外箱2と凝縮パイプ7との間に設置された離型板9とを備え、凝縮パイプ7の直線部分のパイプと金属製テープ8とにより形成される空間を外箱2と離型板9との間の隙間を介して外部と繋がるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外気温に応じて変化する内部圧力によって生じる外箱の側板の変形を防止する断熱箱体および冷蔵庫に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の冷蔵庫の凝縮パイプは、金属製テープによってパイプの直管部の端から外箱の底板を通り、発泡断熱材より下方の側板まで貼り付けられている。その金属製テープとパイプおよび外箱の間には、発泡断熱材より外部へと繋がる空間が形成されている。これにより、外気温に応じて変化する断熱箱体の内部圧力によって生じる側板の変形を防止している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−265474号公報(第2頁、 図1−2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した従来の技術では、凝縮パイプを底板から下方に延出させるための切欠きが凝縮パイプの折り返しの数だけ設ける必要がある。このため、組立時に凝縮パイプを切欠きに嵌め込む作業が多くなり、発泡断熱材の漏れ防止のためのシール材も必要となり、作業性の効率低下、コスト高となる。また、切欠きが増えることで発泡断熱材の漏れの問題も発生しやすくなるという課題もある。さらに、底板の下で凝縮パイプを折り返さなければならないため、底板より下の空間が必要となり、底板より下の高さが高くなる。
【0005】
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたもので、作業性の悪化、コストの増加、発泡断熱材の漏れ等の課題を抑えつつ、側板に凹凸の少ない意匠性の優れた断熱箱体および冷蔵庫を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る断熱箱体は、前面開口の外箱と、外箱のうち互いに対向する各側板の内面にそれぞれ上下方向にジグザグ状に配管されて連結された凝縮パイプと、凝縮パイプのうちジグザグ状のパイプの直線部分を各側板の内面に貼り付けて固定するテープと、外箱内に嵌め込まれた前面開口の内箱と、外箱と内箱との間に充填された発泡断熱材と、外箱と凝縮パイプの間に設置された所定の板とを備え、凝縮パイプの直線部分のパイプとテープとにより形成される空間を外箱と所定の板との間の隙間を介して外部と繋がるようにした。
【発明の効果】
【0007】
本発明においては、凝縮パイプの直線部分のパイプとテープとにより形成される空間を外箱と所定の板との間の隙間を介して外部と繋がるようにしたので、外気温や圧力変化による空間内の空気の膨張・収縮を抑えることが可能になり、このため、外箱の側板に発生する凹凸を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態に係る冷蔵庫の断熱箱体の構成を示す斜視図である。
【図2】実施の形態の断熱箱体における外箱の天板と側板および凝縮パイプの平面図である。
【図3】実施の形態の断熱箱体における離型板に凝縮パイプが貼り付けられた状態を示す断面図である。
【図4】実施の形態の断熱箱体における右側の側板を幅方向に切断して示す部分断面図である。
【図5】実施の形態の断熱箱体における右側の側板を長手方向に切断して示す部分断面図である。
【図6】実地形態の他の形態を示す離型板の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の断熱箱体を冷蔵庫に適用した実施の形態について図1乃至図6を用いて説明する。
図1は本発明の実施の形態に係る冷蔵庫の断熱箱体の構成を示す斜視図である。
図1において、冷蔵庫の断熱箱体1は、前面開口の外箱2と、外箱2内に嵌め込まれた前面開口の内箱5と、外箱2の下部の内面に設けられた離型板9(所定の板)と、外箱2の側板2bおよび離型板9に跨って配管された冷凍サイクル装置の凝縮パイプ7と、外箱2と内箱5の間の空間に充填発泡された発泡断熱材6とで構成されている。
【0010】
外箱2は、薄板の鋼鈑により一体成型された天板2aおよび両側の側板2bと、その背面に取り付けられた鋼鈑製の後ろ板4と、天板2aと対向する底部を閉塞する鋼鈑製の底板3とで構成されている。底板3は、奧側において上方に折り曲げられて後方に傾斜し、所定の高さで離型板9および後ろ板4の各面に対して直角に接するように折り曲げられている。この段差部分により形成された外側の空間は、冷蔵庫の機械室11として用いられている。機械室11には、冷凍サイクル装置の圧縮機10などが収納されている。内箱5は、合成樹脂により成型され、冷蔵庫の例えば冷凍室、冷蔵室、野菜室など用途に応じた各部屋の内壁として形成されている。
【0011】
前述した離型板9は、外箱2の側板2bの幅方向に延びて後部側の上端が上方に突出する略L字状の鋼板により形成され、各側板2bの下部の内面に互い対向して設けられている。この離型板9は、側板2bに対し、上端部が凝縮パイプ7と重なり合うように、また、下端部が底板3より下方に延出するように設けられている。離型板9は、側板2bとの間に発泡断熱材6が流入しない程度の僅かな隙間(図1には図示せず)があり、完全に密着された状態で取り付けられていない。
【0012】
凝縮パイプ7は、例えば銅管など1本の金属製のパイプよりなり、外箱2の側板2bおよび離型板9に接触するように上下方向にジグザグ状に配管され、各一端は底板3の幅方向の両端に設けられた半円状の切欠き(図示せず)を通って機械室11に入り、各他端は外箱2の天板2aを通るパイプと連結されている。この凝縮パイプ7のうち、外箱2の側板2b側の直線部分のパイプは、金属製テープ8(例えばアルミテープ)によって側板2bおよび離型板9に貼り付けられている。前述の切欠きには、発泡断熱材6を充填する前に、その断熱材6の漏れを防止するシール材が施されている。
【0013】
次に、断熱箱体1の組立について図2、図3を用いて説明する。
図2は実施の形態の断熱箱体における外箱の天板と側板および凝縮パイプの平面図、図3は実施の形態の断熱箱体における離型板に凝縮パイプが貼り付けられた状態を示す断面図である。なお、図2は門型形状にする前の状態を示している。
先ず、図2に示すように、一体成型された平板形状の側板2bの下部に離型板9を取り付ける。この場合、離型板9は、側板2bの内面に接しているだけで、完全に密着された状態で取り付けられていない。そのため、側板2bと離型板9との間には、僅かな隙間12(図3参照)が生じている。また、離型板9は、底板3より下方に延びているため、その隙間12は外部と繋がっている状態となっている。
【0014】
次に、凝縮パイプ7を側板2bの内面に配置する。その場合、凝縮パイプ7の下端が離型板9上に跨るように凝縮パイプ7を配置する。そして、そのように配置した凝縮パイプ7のうち直線部分のパイプに離型板9を跨るように金属製テープ8を貼り付け、凝縮パイプ7を側板2bおよび離型板9に固定する。金属製テープ8で凝縮パイプ7を固定した際、図3に示すように、金属製テープ8はテント状の形状となり、凝縮パイプ7との間に空間13が形成される。この空間13は、金属製テープ8が離型板9上まで貼り付けられているため、側板2bと離型板9との間の隙間12を介して外部と繋がることになる。
【0015】
天板2aおよび側板2bに凝縮パイプ7を取り付けた後は、凝縮パイプ7が内側になるように、側板2bを天板2aとの境目から折り曲げて門型形状にし、その門型形状の背面側に後ろ板4を取り付け、底部に底板3を組み入れて前面開口の外箱2を形成する。その後は、成型された内箱5を外箱2内に嵌め込んで一つの箱体が形成される。
【0016】
次に、発泡断熱材6の充填について説明する。
前述したように、発泡断熱材6の充填前の箱体は、内箱5の内面に沿った形状の内ジグと、天板2aおよび側板2b、底板3、後ろ板4が外方の4方向から外ジグとにより支持された状態で外箱2と内箱5との間に、発泡断熱材6が充填される。その際に、その断熱材6の発泡圧力により、内箱5および外箱2の各面に大きな圧力が加わるが、内ジグと外ジグで支持されているため、箱体の変形を抑えることができる。発泡断熱材6によって、外箱2と内箱5は一体となり、断熱箱体1が構成される。
【0017】
次に、発泡断熱材6の充填後の断熱箱体1内部の状態について図4を用いて説明する。
図4は実施の形態の断熱箱体における右側の側板を幅方向に切断して示す部分断面図である。
発泡断熱材6の充填により構成された断熱箱体1においては、内箱5と外箱2との間に設けられた凝縮パイプ7及び金属製テープ8、離型板9に発泡断熱材6が密着する。そのため、本来ならば凝縮パイプ7と金属テープ8の間の空間13が発泡断熱材により密閉された状態となるが、外箱2と離型板9との間には発泡断熱材6が流入しないため、その間には隙間12が残る。この隙間12と空間13は、金属製テープ8が離型板9に乗り上げている状態となっているため互いに連通し、さらに、その空間13は、隙間12を介して外部と繋がった状態となっている。
【0018】
次に、断熱箱体1に形成された隙間12と空間13による作用について図5を用いて説明する。
図5は実施の形態の断熱箱体における右側の側板を長手方向に切断して示す部分断面図である。
外箱2と内箱5内に発泡断熱材6を充填しているときや外気温の上昇により断熱箱体1内の圧力が上がった場合、空間13内の空気は金属製テープ8によって覆われている外箱2と離型板9との間の隙間12を通って外部へ流出し、圧力による空間13内の空気膨張を抑える。また、外気温の低下により断熱箱体1内の圧力が下がった場合、外気が外箱2と離型板9との間の隙間12を通って空間13内に流入し、圧力による空間13内の空気収縮を抑える。
【0019】
以上のように実施の形態においては、側板2bの下部に完全に密着しない状態で離型板9を取り付け、上下方向にジグザグ上に配管された凝縮パイプ7の下端が離型板9上に跨るように凝縮パイプ7を配置し、凝縮パイプ7のうち直線部分のパイプに離型板9を跨るように金属製テープ8を貼り付けて空間13を形成するようにした。これにより、側板2bと離型板9の間の隙間12と空間13とが連通し、このため、発泡断熱材6充填時や外気温の変化に応じた断熱箱体1内の圧力による空間13内の空気の膨張・収縮により外箱2の変形(凹凸)を抑えることができる。
また、従来では、凝縮パイプ7の折り返しの数だけ設けなければならなかった切欠きが不要となり、このため、組立作業が容易となり、切欠きの数による発泡断熱材6の漏れを抑えることが可能になり、高コストを低減でき、これにより意匠性に優れた断熱箱体を容易に製造できる。
【0020】
実施の形態では、離型板9は、外箱2の側板2bの幅方向に延びて後部側の上端が上方に突出する略L字状の鋼板により形成されていることを述べたが、これに限定されるものではない。例えば図6に示すように、離型板9を凝縮パイプ7の配管形状に合わせて変更することが可能である。
【符号の説明】
【0021】
1 断熱箱体、2 外箱、2a 天板、2b 側板、3 底板、4 後ろ板、5 内箱、6 発泡断熱材、7 凝縮パイプ、8 金属製テープ、9 離型板、10 圧縮機、
11 機械室、12 隙間、13 空間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面開口の外箱と、
前記外箱のうち互いに対向する各側板の内面にそれぞれ上下方向にジグザグ状に配管されて連結された凝縮パイプと、
前記凝縮パイプのうちジグザグ状のパイプの直線部分を各側板の内面に貼り付けて固定するテープと、
前記外箱内に嵌め込まれた前面開口の内箱と、
前記外箱と前記内箱との間に充填された発泡断熱材と、
前記外箱と前記凝縮パイプとの間に設置された所定の板とを備え、
前記凝縮パイプの直線部分のパイプと前記テープとにより形成される空間を前記外箱と前記所定の板との間の隙間を介して外部と繋がるようにしたことを特徴とする断熱箱体。
【請求項2】
前記所定の板は、下端が前記外箱の底板より下方にあり、ジグザグ状の凝縮パイプの下端部が載り上げられ、かつ前記テープが貼られる位置に設置されていることを特徴とする請求項1記載の断熱箱体。
【請求項3】
前記外箱の底板の幅方向の両端に切欠きを設け、前記凝縮パイプの両端を前記切欠きを通して外部に出ていることを特徴とする請求項1又は2記載の断熱箱体。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の断熱箱体を備えたことを特徴とする冷蔵庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−117479(P2011−117479A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−273152(P2009−273152)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】