断線徴候検出システム
【課題】特殊なケーブルを用いることなくケーブルに断線の徴候があるか否かを検出することが可能な断線徴候検出システムを提供する。
【解決手段】この断線徴候検出システム100は、通信ケーブル3を介して互いに通信可能に接続されるトランシーバ回路10を含むロボットコントローラ1およびトランシーバ回路20を含むエンコーダ2を備え、ロボットコントローラ1およびエンコーダ2の少なくとも一方は、通信ケーブル3上で送受信される差動信号に基づくコモンモード信号を監視するとともに、監視結果に基づいて前記通信ケーブルに断線の徴候があるか否かを検出する断線徴候検出回路13を含む。
【解決手段】この断線徴候検出システム100は、通信ケーブル3を介して互いに通信可能に接続されるトランシーバ回路10を含むロボットコントローラ1およびトランシーバ回路20を含むエンコーダ2を備え、ロボットコントローラ1およびエンコーダ2の少なくとも一方は、通信ケーブル3上で送受信される差動信号に基づくコモンモード信号を監視するとともに、監視結果に基づいて前記通信ケーブルに断線の徴候があるか否かを検出する断線徴候検出回路13を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ケーブルに断線の徴候があるか否かを検出する断線徴候検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ケーブルに断線の徴候があるか否かを検出するために用いる断線検知機能付きケーブルが知られている(たとえば、特許文献1参照)。この断線検知機能付きケーブルは、線心と、屈曲寿命の異なる複数の素線とにより構成されている。この断線検知機能付きケーブルが繰り返し屈曲される場合、複数の素線が屈曲寿命の短い順に断線していくことによってケーブル全体の抵抗値が段階的に変化する。この場合、ケーブル全体の抵抗値の変化を測定することにより、ケーブルに断線の徴候があるか否かを段階的に検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−299608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の断線検知機能付きケーブルでは、ケーブルに断線の徴候があるか否かを検出するために特殊な構造のケーブル(線心と、屈曲寿命の異なる複数の素線とからなるケーブル)を用いる必要があるという問題点がある。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、特殊なケーブルを用いることなくケーブルに断線の徴候があるか否かを検出することが可能な断線徴候検出システムを提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0006】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面による断線徴候検出システムは、通信ケーブルを介して互いに通信可能に接続される第1通信部を含む第1装置および第2通信部を含む第2装置を備え、第1装置および第2装置の少なくとも一方は、通信ケーブル上で送受信される差動信号に基づくコモンモード信号を監視するとともに、監視結果に基づいて通信ケーブルに断線の徴候があるか否かを検出する断線徴候検出部を含む。
【0007】
この一の局面による断線徴候検出システムでは、上記のように、第1装置および第2装置の少なくとも一方に、通信ケーブル上で送受信される差動信号に基づくコモンモード信号を監視するとともに、監視結果に基づいて通信ケーブルに断線の徴候があるか否かを検出する断線徴候検出部を設ける。これにより、通信ケーブルとして特殊な構造を採用しなくても、断線徴候検出部によって通信ケーブルに断線の徴候があるか否かを検出することができる。また、特殊なケーブルを用いないことにより、交換用のケーブルを容易に入手することができるので、ケーブルが断線した際にケーブルの交換を行うためにシステム全体が停止してしまう期間を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1実施形態による断線徴候検出システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態によるロボットコントローラの送受信制御回路の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1実施形態によるロボットコントローラの送受信制御回路のフレーム生成回路の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1実施形態によるロボットコントローラの送受信制御回路のフレーム生成回路により生成される送信フレームおよびサンプリング信号と遅延回路により生成されるサンプリング遅延信号との関係を示すイメージ図である。
【図5】本発明の第1実施形態によるロボットコントローラの断線徴候検出回路の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の第1実施形態によるロボットコントローラの断線徴候検出回路により通信ケーブルの断線の徴候が検出された場合におけるCPUの制御動作を説明するためのフローチャートである。
【図7】通信ケーブルの断線状態の変化を調べるために行った実験について説明するための図である。
【図8】図7に示す実験に用いた屈曲試験装置により通信ケーブルが屈曲される状態を説明するための図である。
【図9】図7に示す実験に用いたデータロガーによる測定結果を示すグラフである。
【図10】第1の状態の通信ケーブルの内部の素線の断線状態を示す模式図である。
【図11】第2の状態の通信ケーブルの内部の素線の断線状態を示す模式図である。
【図12】第3の状態の通信ケーブルの内部の素線の断線状態を示す模式図である。
【図13】第4の状態の通信ケーブルの内部の素線の断線状態を示す模式図である。
【図14】第1〜第4の状態のそれぞれの通信ケーブル上で所定のデータ信号を送受信した際におけるコモンモード信号の周波数スペクトラムを調べるために行った実験について説明するための図である。
【図15】第1の状態の通信ケーブル上で所定のデータ信号を送受信した際におけるコモンモード信号の周波数スペクトラムを示す図である。
【図16】第2の状態の通信ケーブル上で所定のデータ信号を送受信した際におけるコモンモード信号の周波数スペクトラムを示す図である。
【図17】第3の状態の通信ケーブル上で所定のデータ信号を送受信した際におけるコモンモード信号の周波数スペクトラムを示す図である。
【図18】第4の状態の通信ケーブル上で所定のデータ信号を送受信した際におけるコモンモード信号の周波数スペクトラムを示す図である。
【図19】図15〜図18に示した周波数スペクトラムのうちの2MHzの周波数成分の振幅のピーク値の変化を示すグラフである。
【図20】本発明の第2実施形態による断線徴候検出システムの構成を示すブロック図である。
【図21】本発明の第2実施形態によるロボットコントローラの送受信制御回路の構成を示すブロック図である。
【図22】本発明の第2実施形態によるロボットコントローラの送受信制御回路のフレーム生成回路の構成を示すブロック図である。
【図23】本発明の第2実施形態によるロボットコントローラの送受信制御回路のフレーム生成回路により生成される送信フレームおよびダミー出力信号と遅延回路により生成されるダミー出力遅延信号との関係を示すイメージ図である。
【図24】本発明の第2実施形態によるロボットコントローラの断線徴候検出回路の構成を示すブロック図である。
【図25】本発明の第2実施形態によるロボットコントローラの断線徴候検出回路により通信ケーブルの断線の徴候が検出された場合におけるCPUの制御動作を説明するためのフローチャートである。
【図26】本発明の第3実施形態による断線徴候検出システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
(第1実施形態)
まず、図1を参照して、本発明の第1実施形態による断線徴候検出システム100の構成について説明する。
【0011】
図1に示すように、断線徴候検出システム100は、ロボットを制御するためのロボットコントローラ1と、そのロボットを駆動するモータの位置を検出するエンコーダ2とにより構成されている。これらのロボットコントローラ1とエンコーダ2とは、一対の信号線からなる通信ケーブル3を介して互いに通信可能に接続されている。なお、ロボットコントローラ1は、本発明の「第1装置」の一例であるとともに、「ロボット制御装置」の一例である。また、エンコーダ2は、本発明の「第2装置」の一例である。
【0012】
ロボットコントローラ1は、トランシーバ回路10と、送受信制御回路11と、コモンモード信号抽出回路12と、断線徴候検出回路13と、CPU14と、表示部15とにより構成されている。また、ロボットコントローラ1には、モータ駆動部などのロボットを制御するための種々の機器(図示せず)が設けられている。なお、トランシーバ回路10は、本発明の「第1通信部」の一例である。また、断線徴候検出回路13は、本発明の「断線徴候検出部」の一例である。また、CPU14は、本発明の「制御部」の一例である。
【0013】
エンコーダ2は、トランシーバ回路20と、送受信制御回路21と、コモンモード信号抽出回路22とにより構成されている。このエンコーダ2のトランシーバ回路20、送受信制御回路21およびコモンモード信号抽出回路22は、それぞれ、ロボットコントローラ1のトランシーバ回路10、送受信制御回路11およびコモンモード信号抽出回路12と同様の構成および機能を有しているので、以下では説明を省略する。なお、トランシーバ回路20は、本発明の「第2通信部」の一例である。
【0014】
次に、図1〜図5を参照して、ロボットコントローラ1の各部の構成について説明する。
【0015】
トランシーバ回路10は、通信ケーブル3と送受信制御回路11とに接続されている。また、トランシーバ回路10は、一対の信号線からなる通信ケーブル3を介して差動信号を送受信可能なように構成されている。具体的には、トランシーバ回路10は、マンチェスター符号化方式により符号化されたデータ信号(通信フレーム(図4参照))を、4Mbpsの伝送速度で送受信可能なように構成されている。なお、一般に、通信フレームが4Mbpsの伝送速度で送受信される場合、その通信フレームを構成する送信フレームおよび受信フレームのプリアンブルは、2MHzのビット列からなる。
【0016】
送受信制御回路11は、トランシーバ回路10と断線徴候検出回路13とCPU14とに接続されている。また、送受信制御回路11は、トランシーバ回路10によるデータ信号の送受信の制御を行うように構成されている。また、送受信制御回路11は、図2に示すように、CPU14に接続されるCPUインタフェース回路16と、CPUインタフェース回路16に接続される受信制御回路17および送信制御回路18とにより構成されている。
【0017】
以下、図2および図4を参照して、送信制御回路18の構成について詳細に説明する。
【0018】
図2に示すように、送信制御回路18は、送信データメモリ180と、CRCデータ生成回路181と、フレーム生成回路182と、送信回路183と、遅延回路184とにより構成されている。
【0019】
送信データメモリ180は、CPUインタフェース回路16とCRCデータ生成回路181とフレーム生成回路182とに接続されている。また、送信データメモリ180は、トランシーバ回路10により送信される送信フレームのうちの送信データ(図4参照)が格納されるように構成されている。
【0020】
CRCデータ生成回路181は、送信データメモリ180とフレーム生成回路182とに接続されている。また、CRCデータ生成回路181は、送信データメモリ180に格納された送信データからCRC(巡回冗長検査)に基づく誤り検出を行うためのCRCデータを生成するように構成されている。
【0021】
フレーム生成回路182は、送信データメモリ180とCRCデータ生成回路181と送信回路183と遅延回路184とに接続されている。また、フレーム生成回路182は、送信データメモリ180に格納された送信データと、CRCデータ生成回路181により生成されたCRCデータとから送信フレーム(図4参照)を生成するように構成されている。また、フレーム生成回路182は、送信フレームのプリアンブルが送信される期間のみHレベルになるサンプリング信号(図4参照)を出力するように構成されている。また、フレーム生成回路182は、送信フレームの送信開始時にHレベルになる送信開始信号を出力するように構成されている。
【0022】
送信回路183は、フレーム生成回路182とトランシーバ回路10とに接続されている。また、送信回路183は、フレーム生成回路182により生成された送信フレーム(図4参照)をマンチェスター符号化方式により符号化してトランシーバ回路10に出力するように構成されている。遅延回路184は、フレーム生成回路182と、断線徴候検出回路13の後述するアナログ−デジタル変換回路132(図5参照)とに接続されている。
【0023】
また、遅延回路184は、フレーム生成回路182により生成されたサンプリング信号を断線徴候検出回路13の後述するバンドパスフィルタ130(図5参照)の時定数分遅延させたサンプリング遅延信号(図4参照)を出力するように構成されている。
【0024】
以下、図3および図4を参照して、フレーム生成回路182の構成についてさらに詳細に説明する。
【0025】
図3に示すように、フレーム生成回路182は、5つのレジスタ185と、セレクタ186と、パラレル−シリアル変換回路(P−S変換回路)187と、ステートマシン188とにより構成されている。5つのレジスタ185は、それぞれ、送信フレーム(図4参照)のプリアンブル(PRE)、スタートフラグ(SF)、送信データ(DATA)、CRCデータおよびエンドフラグ(EF)が格納されるように構成されている。セレクタ186は、ステートマシン188による制御に基づいて、レジスタ185のそれぞれに格納されたプリアンブル、スタートフラグ、送信データ、CRCデータおよびエンドフラグをこの順番で組み合わせることによって、送信フレームをパラレルデータとして出力するように構成されている。
【0026】
ステートマシン188は、セレクタ186の制御を行うとともに、送信フレームのプリアンブルが送信される期間のみHレベルになるサンプリング信号(図4参照)を出力するように構成されている。また、ステートマシン188は、送信フレームの送信開始時にHレベルになる送信開始信号を出力するように構成されている。
【0027】
パラレル−シリアル変換回路187は、セレクタ186により出力されたパラレルデータとしての送信フレームをシリアルデータに変換して出力するように構成されている。
【0028】
図1に示すように、コモンモード信号抽出回路12は、通信ケーブル3と断線徴候検出回路13とに接続されている。また、コモンモード信号抽出回路12は、一対の信号線からなる通信ケーブル3上で送受信される差動信号に基づくコモンモード信号を抽出するように構成されている。また、コモンモード信号抽出回路12は、抵抗R1、抵抗R2および抵抗R3により構成されている。なお、抵抗R1および抵抗R2の一方端は、通信ケーブル3を構成する一対の信号線のそれぞれに接続されている。また、抵抗R1および抵抗R2の他方端は、抵抗R3の一方端に接続されている。また、抵抗R3の他方端は、シグナルグラウンドSGに接続されているとともに、コンデンサC1を介してフレームグラウンドFGに接続されている。
【0029】
第1実施形態では、断線徴候検出回路13は、コモンモード信号抽出回路12と送受信制御回路11とCPU14とに接続されている。また、断線徴候検出回路13は、通信ケーブル3上で送受信される差動信号に基づくコモンモード信号を監視するとともに、監視結果に基づいて通信ケーブル3に断線の徴候があるか否かを検出するように構成されている。具体的には、断線徴候検出回路13は、ロボットコントローラ1とエンコーダ2との間でデータ通信が行われる際に通信ケーブル3上で送受信されるデータ信号(通信フレーム(図4参照))のプリアンブル期間におけるコモンモード信号の基本周波数成分の振幅を監視するように構成されている。なお、上記したように、第1実施形態の通信ケーブル3上で送受信される通信フレームのプリアンブルは、2MHzのビット列からなるので、そのプリアンブル期間におけるコモンモード信号の基本周波数は2MHzである。
【0030】
ここで、断線徴候検出回路13に通信ケーブル3の断線の徴候を検出させるためには、通信ケーブル3上で送受信される差動信号のコモンモード信号の基本周波数成分、および、その基本周波数の奇数倍の周波数を有する複数の高調波成分のうちの少なくとも1つを監視させればよいことが後述する本願発明者の実験により判明している。また、これら複数の周波数成分のうちで振幅値の変化の幅が最も大きいのは基本周波数成分であることが後述する本願発明者の実験により判明している。また、通信ケーブル3は、断線していない第1の状態と、断線している一方実質的に通信に使用可能な第2の状態と、断線していることにより実質的に通信に使用不可能な第3の状態と、断線していることにより略完全に通信に使用不可能な第4の状態とにこの順番で断線状態に向かって変化することが後述する本願発明者の実験により判明している。
【0031】
また、第1実施形態では、断線徴候検出回路13は、通信ケーブル3上で送受信されるデータ信号のプリアンブル期間におけるコモンモード信号の基本周波数成分の振幅のピーク値が予め設定されたしきい値を上回る場合に、通信ケーブル3に断線の徴候があると検出するように構成されている。このしきい値は、メーカまたはユーザにより断線徴候検出回路13の後述する判定レジスタ134(図5参照)に設定されるように構成されている。
【0032】
また、第1実施形態では、通信ケーブル3が第3の状態(断線していることにより実質的に通信に使用不可能な状態)になる前に断線徴候検出回路13が通信ケーブル3に断線の徴候があると検出することが可能なように上記しきい値が設定されている。なお、このしきい値を10mV以上50mV未満の値に設定すれば、通信ケーブル3が第3の状態になる前に通信ケーブル3に断線の徴候があると断線徴候検出回路13に検出させることができることが後述する本願発明者の実験により判明している。
【0033】
以下、図5を参照して、断線徴候検出回路13の詳細な構成について説明する。
【0034】
図5に示すように、断線徴候検出回路13は、バンドパスフィルタ(BPF)130と、整流回路131と、アナログ−デジタル変換回路132と、判定器133とにより構成されている。なお、判定器133は、判定レジスタ134と、比較器135とにより構成されている。
【0035】
バンドパスフィルタ130は、コモンモード信号抽出回路12と整流回路131とに接続されている。また、バンドパスフィルタ130は、コモンモード信号抽出回路12により出力されたコモンモード信号から基本周波数成分(第1実施形態では、2MHzの周波数成分)を抽出して整流回路131に出力するように構成されている。整流回路131は、バンドパスフィルタ130とアナログ−デジタル変換回路132とに接続されている。
【0036】
また、整流回路131は、バンドパスフィルタ130により出力されたコモンモード信号の基本周波数成分を整流してアナログ−デジタル変換回路132に出力するように構成されている。
【0037】
アナログ−デジタル変換回路132は、送受信制御回路11の遅延回路184(図2参照)に接続されるとともに、比較器135に接続されている。また、アナログ−デジタル変換回路132は、整流回路131により整流されたアナログデータとしてのコモンモード信号の基本周波数成分をデジタルデータに変換して比較器135に出力するように構成されている。なお、アナログ−デジタル変換回路132は、送受信制御回路11の遅延回路184により出力されるサンプリング遅延信号(図4参照)が入力されるイネーブル端子ENを有している。これにより、アナログ−デジタル変換回路132は、サンプリング遅延信号がHレベルの期間において上記変換処理を行う一方、サンプリング遅延信号がLレベルの期間において上記変換処理を停止するように構成されている。
【0038】
比較器135は、判定レジスタ134に接続されるとともに、CPU14に接続されている。この判定レジスタ134には、ユーザの設定に基づいて、通信ケーブル3に断線の徴候があるか否かの検出の基準となるしきい値(たとえば、30mV)が格納されている。比較器135は、アナログ−デジタル変換回路132により出力されたデジタルデータとしてのコモンモード信号の基本周波数成分の振幅のピーク値と、判定レジスタ134に格納された上記しきい値とを比較するように構成されている。また、比較器135は、上記コモンモード信号の基本周波数成分の振幅のピーク値が判定レジスタ134に格納されたしきい値を上回る場合に、CPU14に対してHレベルの断線徴候検出信号を送信するように構成されている。
【0039】
図1に示すように、CPU14は、送受信制御回路11と断線徴候検出回路13と表示部15とに接続されている。また、CPU14は、断線徴候検出回路13により通信ケーブル3の断線の徴候が検出された場合に、通信ケーブル3に断線の徴候があることを表示部15に表示してユーザに対して通知する制御を行うように構成されている。具体的には、CPU14は、断線徴候検出回路13の判定器133(図5参照)からHレベルの断線徴候検出信号が入力された場合に、通信ケーブル3に断線の徴候があることを表示部15に表示させる制御を行うように構成されている。表示部15は、CPU14に接続されている。この表示部15は、たとえばLEDやLCDなどからなる。
【0040】
次に、図5を参照して、本発明の第1実施形態による断線徴候検出システム100により通信ケーブル3の断線の徴候が検出される際における断線徴候検出回路13の動作について説明する。
【0041】
まず、第1実施形態では、通信ケーブル3に断線の徴候があるか否か判断の基準となるしきい値が予めユーザにより判定レジスタ134に設定されている。
【0042】
次に、コモンモード信号抽出回路12(図1参照)により出力されたコモンモード信号がバンドパスフィルタ130に入力される。第1実施形態では、このコモンモード信号は、ロボットコントローラ1とエンコーダ2との間でデータ通信が行われる際に通信ケーブル3上で送受信される通信フレーム(図4参照)のプリアンブル期間におけるコモンモード信号である。そして、上記コモンモード信号の2MHzの周波数成分(第1実施形態のコモンモード信号の基本周波数成分)がバンドパスフィルタ130により抽出される。
【0043】
次に、バンドパスフィルタ130により抽出された上記コモンモード信号の2MHzの周波数成分が整流回路131により整流される。そして、整流回路131により整流された上記コモンモード信号の2MHzの周波数成分が、アナログ−デジタル変換回路132によりデジタルデータに変換される。なお、このアナログ−デジタル変換回路132は、送受信制御回路11の遅延回路184(図2参照)により出力されるサンプリング遅延信号(図4参照)がHレベルである期間のみ動作する。
【0044】
次に、判定器133の比較器135により、アナログ−デジタル変換回路132により出力された上記コモンモード信号の2MHzの周波数成分の振幅値が判定レジスタ134に格納されたしきい値を上回っているか否かが比較される。そして、アナログ−デジタル変換回路132により出力された上記コモンモード信号の基本周波数成分の振幅値が判定レジスタ134に格納されたしきい値を上回る場合に、比較器135によりHレベルの断線徴候検出信号がCPU14に出力される。これにより、通信ケーブル3の断線の徴候が検出される。
【0045】
次に、図6を参照して、本発明の第1実施形態による断線徴候検出回路13により通信ケーブル3の断線の徴候が検出された場合におけるCPU14の制御フローについて説明する。
【0046】
まず、図6に示すように、ステップS1において、断線徴候検出回路13からHレベルの断線徴候検出信号が入力されたか否かが判断される。ステップS1においては、断線徴候検出回路13からHレベルの断線徴候検出信号が入力されるまでこの判断が繰り返される。そして、断線徴候検出回路13からHレベルの断線徴候検出信号が入力された場合に、ステップS2に進む。次に、ステップS2において、通信ケーブル3に断線の徴候があることを表示部15に表示させる処理が行われる。そして、処理を終了する。
【0047】
次に、図7〜図13を参照して、通信ケーブル3の断線状態の変化を調べるために行った実験について説明する。
【0048】
本実験では、図7に示すような屈曲試験装置4を用いて、一対の信号線からなる通信ケーブル3の左右方向約90度の屈曲動作(図8参照)を繰り返し行った。なお、この時、通信ケーブル3の一方端部において、その通信ケーブル3を構成する一対の信号線を互いにショートさせた。また、通信ケーブル3の他方端部において、その通信ケーブル3を構成する一対の信号線のうちの一方端(点V1とする)を、抵抗R0を介して5Vの電源に接続するとともに、他方端(点V2とする)を、抵抗R0を介して0Vの電源に接続した。そして、V1−V2間の電圧値をデータロガー5を用いて測定するとともに、その時の通信ケーブル3が通信に使用可能であるか否かを調査した。
【0049】
図9は、上記データロガー5によるV1−V2間の電圧値の測定結果である。図9に示すように、通信ケーブル3が約100万回屈曲されるまでの期間において、V1−V2間の電圧値は0Vであった。この期間における通信ケーブル3の内部の状態をX線を用いて観測すると、図10のような状態(第1の状態)であった。
【0050】
この第1の状態では、図10に示すように、通信ケーブル3の内部の素線3aが全く断線していなかった。また、この第1の状態では、問題なく通信ケーブル3を通信に使用することが可能であった。
【0051】
また、図9に示すように、通信ケーブル3が約100万回屈曲された後、約120万回屈曲されるまでの期間において、V1−V2間の電圧値は、0Vと0Vよりも少し大きい電圧値との間を振動していた。この期間における通信ケーブル3の内部の状態をX線を用いて観測すると、図11のような状態(第2の状態)であった。この第2の状態では、図11に示すように、通信ケーブル3の内部の素線3aに断線が発生していた一方、素線3aの断線した部分同士が略接触していた。また、この第2の状態では、通信ケーブル3を通信に使用することが実質的に可能であった。
【0052】
また、図9に示すように、通信ケーブル3が約120万回屈曲された後、約150万回屈曲されるまでの期間において、V1−V2間の電圧値は、0Vと5Vとの間を振動していた。この期間における通信ケーブル3の内部の状態をX線を用いて観測すると、図12のような状態(第3の状態)であった。この第3の状態では、図12に示すように、上記第2の状態よりも通信ケーブル3の内部の素線3aの断線状態が進行していた。また、この第3の状態では、素線3aの断線した部分間の距離が離れていた。また、この第3の状態では、通信ケーブル3を通信に使用した場合に通信エラーが頻発した。すなわち、この第3の状態では、通信ケーブル3を通信に使用することが実質的に不可能であった。
【0053】
また、図9に示すように、通信ケーブル3が約150万回屈曲された以降の期間において、V1−V2間の電圧値は、5Vと5Vよりも少し小さい電圧値との間を振動していた。この期間における通信ケーブル3の内部の状態をX線を用いて観測すると、図13のような状態(第4の状態)であった。この第4の状態では、図13に示すように、通信ケーブル3の内部の素線3aが略完全に断線していた。また、この第4の状態では、素線3aの断線した部分間の距離が上記第3の状態よりも離れていた。また、この第4の状態では、通信ケーブル3を通信に使用することが略完全に不可能であった。
【0054】
以上により、通信ケーブル3が、断線していない第1の状態と、断線している一方実質的に通信に使用可能な第2の状態と、断線していることにより実質的に通信に使用不可能な第3の状態と、断線していることにより略完全に通信に使用不可能な第4の状態とにこの順番で断線状態に向かって変化することが分かった。
【0055】
次に、図14〜図19を参照して、第1〜第4の状態のそれぞれの通信ケーブル3上で所定のデータ信号を送受信した際におけるコモンモード信号の周波数スペクトラムを調べるために行った実験について説明する。
【0056】
本実験では、まず、図14に示すように、トランシーバ回路60と、送受信制御回路61と、コモンモード信号抽出回路62とを備えるロボットコントローラ6と、トランシーバ回路70と、送受信制御回路71と、コモンモード信号抽出回路72を備えるエンコーダ7とを準備した。そして、ロボットコントローラ6のトランシーバ回路60とエンコーダ7のトランシーバ回路70とを、上記第1〜第4の状態のそれぞれの通信ケーブル3を用いて接続した。なお、トランシーバ回路60およびトランシーバ回路70は、上記第1実施形態によるトランシーバ回路10と同様の構成および機能を有している。また、送受信制御回路61および送受信制御回路71は、上記第1実施形態による送受信制御回路11と同様の構成および機能を有している。また、コモンモード信号抽出回路62およびコモンモード信号抽出回路72は、上記第1実施形態によるコモンモード信号抽出回路12と同様の構成および機能を有している。また、ロボットコントローラ6には、モータ駆動部などのロボットを制御するための種々の機器(図示せず)が設けられている。
【0057】
ここで、ロボットコントローラ6とエンコーダ7との間で上記第1実施形態のプリアンブルと同様の波形パターンの差動信号(基本周波数は2MHz)の送受信を行った。そして、ロボットコントローラ6のコモンモード信号抽出回路62にスペクトラムアナライザ8を接続して、上記第1〜第4のそれぞれの状態の通信ケーブル3上で送受信される差動信号に基づくコモンモード信号の周波数スペクトラムを測定した。
【0058】
図15、図16、図17および図18は、それぞれ、上記第1、第2、第3および第4の状態の通信ケーブル3を用いてロボットコントローラ6とエンコーダ7とを接続した場合におけるスペクトラムアナライザ8の測定結果を示した図である。図15〜図18に示すように、第1の状態から第4の状態へと通信ケーブル3の断線状態が進むにつれて、コモンモード信号の基本周波数成分(2MHzの周波数成分)、および、その基本周波数の奇数倍の周波数を有する高調波成分(6MHzの周波数成分および10MHzの周波数成分)の振幅のピーク値が上昇した。また、これらの周波数成分のうち、振幅のピーク値の上昇幅が最も大きいのは、コモンモード信号の基本周波数成分である2MHzの周波数成分であった。
【0059】
ここで、図19は、上記図15〜図18に示した周波数スペクトラムのうちの2MHzの周波数成分の振幅のピーク値の変化を表すグラフである。図19に示すように、通信ケーブル3が第1の状態から第2の状態になると、振幅値が約10mVに上昇した。また、通信ケーブル3が第2の状態から第3の状態になると、振幅値が上昇して約50mVになった。また、通信ケーブル3が第3の状態から第4の状態になると、振幅値がさらに上昇した。
【0060】
以上により、通信ケーブル3の断線の徴候を検出するには、通信ケーブル3上で送受信される差動信号のコモンモード信号の基本周波数成分(2MHzの周波数成分)、および、その基本周波数の奇数倍の周波数を有する複数の高調波成分(6MHzの周波数成分および10MHzの周波数成分)のうちの少なくとも1つの振幅値の変化を監視すればよいということが分かった。また、これら複数の周波数成分のうちで振幅値の変化の幅が最も大きいのは基本周波数成分であるということが分かった。また、通信ケーブル3が第3の状態になる前に通信ケーブル3の断線の徴候を検出するには、上記コモンモード信号の基本周波数成分の振幅のピーク値が10mV以上50mV未満の値であるか否かを確認すればよいということが分かった。
【0061】
第1実施形態では、上記のように、ロボットコントローラ1に、通信ケーブル3上で送受信される差動信号に基づくコモンモード信号を監視するとともに、監視結果に基づいて通信ケーブル3に断線の徴候があるか否かを検出する断線徴候検出回路13を設ける。これにより、通信ケーブル3に特殊な構造を採用しなくても、断線徴候検出回路13によって通信ケーブル3に断線の徴候があるか否かを検出することができる。その結果、特殊な通信ケーブル3を用いることなく通信ケーブル3に断線の徴候があるか否かを検出することができる。また、特殊な通信ケーブル3を用いないことにより、交換用の通信ケーブル3を容易に入手することができるので、通信ケーブル3が断線した際に通信ケーブル3の交換を行うためにシステム全体が停止してしまう期間を短くすることができる。また、通信ケーブル3の断線の徴候を検出する専用の機器を通信路(通信ケーブル3)の途中に設ける場合と異なり、通信路の両端におけるインピーダンスの整合を乱すことなく、通信ケーブル3に断線の徴候があるか否かを検出することができる。
【0062】
また、第1実施形態では、上記のように、断線徴候検出回路13を、通信ケーブル3上で送受信される差動信号に基づくコモンモード信号の基本周波数成分の振幅を監視するとともに、監視結果に基づいて通信ケーブル3に断線の徴候があるか否かを検出するように構成する。これにより、振幅の変化の幅の大きいコモンモード信号の基本周波数成分を用いて通信ケーブル3の断線の徴候の検出を行うことができるので、通信ケーブル3に断線の徴候があるか否かを容易に検出することができる。
【0063】
また、第1実施形態では、上記のように、ロボットコントローラ1のCPU14を、断線徴候検出回路13により通信ケーブル3の断線の徴候が検出された場合に、通信ケーブル3に断線の徴候があることをユーザに対して通知する制御を行うように構成する。これにより、通信ケーブル3に断線の徴候があることをユーザが容易に認識することができる。
【0064】
また、第1実施形態では、上記のように、ロボットコントローラ1に表示部15を設ける。また、CPU14を、断線徴候検出回路13により通信ケーブル3の断線の徴候が検出された場合に、通信ケーブル3に断線の徴候があることを表示部15に表示してユーザに対して通知する制御を行うように構成する。これにより、通信ケーブル3に断線の徴候があることをユーザが容易に視覚的に認識することができる。
【0065】
また、第1実施形態では、上記のように、断線徴候検出回路13を、通信ケーブル3上で送受信される差動信号に基づくコモンモード信号の振幅のピーク値が予め設定されたしきい値を上回る場合に、通信ケーブル3に断線の徴候があると検出するように構成する。これにより、通信ケーブル3に断線の徴候があるか否かを予め設定されたしきい値により確実に検出することができる。
【0066】
また、第1実施形態では、上記のように、通信ケーブル3が、断線していない第1の状態と、断線している一方実質的に通信に使用可能な第2の状態と、断線していることにより実質的に通信に使用不可能な第3の状態と、断線していることにより略完全に通信に使用不可能な第4の状態とにこの順番で断線状態に向かって変化する場合に、通信ケーブル3が第3の状態になる前に断線徴候検出回路13が通信ケーブル3に断線の徴候があると検出することが可能なようにしきい値を設定する。これにより、通信ケーブル3が実質的に通信に使用不可能な状態になる前に通信ケーブル3に断線の徴候があることを検出することができるので、通信ケーブル3が実質的に通信に使用不可能な状態になる前に交換用の通信ケーブル3を準備することができる。その結果、通信ケーブル3が実質的に通信に使用不可能な状態になることによりシステム全体が停止してしまう期間をより短くすることができる。
【0067】
また、第1実施形態では、上記のように、断線徴候検出回路13を、ロボットコントローラ1とエンコーダ2との間でデータ通信が行われる際に通信ケーブル3上で送受信されるデータ信号のプリアンブル期間におけるコモンモード信号を監視するとともに、監視結果に基づいて通信ケーブル3に断線の徴候があるか否かを検出するように構成する。これにより、通信ケーブル3に断線の徴候があるか否かを検出する専用の信号を用いる場合と異なり、データ通信が行われる際に通信ケーブル3上で送受信されるデータ信号を用いることにより、容易に、通信ケーブル3に断線の徴候があるか否かを検出することができる。また、データ通信が行われる際(ロボットの通常稼動中)に通信ケーブル3に断線の徴候があるか否かを検出することができるので、通信ケーブル3に断線の徴候があるか否かを検出するためにロボットの稼動を停止して点検などを行う必要がない。
【0068】
(第2実施形態)
次に、図20〜図25を参照して、本発明の第2実施形態による断線徴候検出システム200について説明する。この第2実施形態では、1つのロボットコントローラ1aと6つのエンコーダ2とにより構成されている。なお、ロボットコントローラ1aは、本発明の「第1装置」の一例であるとともに、「ロボット制御装置」の一例である。
【0069】
本発明の第2実施形態による断線徴候検出システム200は、図20に示すように、1つのロボットコントローラ1aと6つのエンコーダ2とにより構成されている。これら1つのロボットコントローラ1aと6つのエンコーダ2とは、6つの通信ケーブル3により互いに通信可能に接続されている。
【0070】
ロボットコントローラ1aは、トランシーバ回路10と、送受信制御回路11aと、コモンモード信号抽出回路12と、断線徴候検出回路13aと、CPU14aと、表示部15とにより構成されている。これらのトランシーバ回路10、送受信制御回路11a、コモンモード信号抽出回路12および断線徴候検出回路13aは、上記6つの通信ケーブル3に対応するように6つずつ設けられている。なお、断線徴候検出回路13aは、本発明の「断線徴候検出部」の一例である。また、CPU14aは、本発明の「制御部」の一例である。
【0071】
6つのトランシーバ回路10は、それぞれ、対応する通信ケーブル3と、対応する送受信制御回路11aとに接続されている。また、6つの送受信制御回路11aは、対応するトランシーバ回路10と、対応する断線徴候検出回路13aと、CPU14aとに接続されている。図21に示すように、送受信制御回路11aは、CPU14に接続されるCPUインタフェース回路16と、CPUインタフェース回路16に接続される受信制御回路17aおよび送信制御回路18aとにより構成されている。この受信制御回路17aは、受信フレーム(図23参照)の受信が完了した際に受信完了信号を出力するように構成されている。以下、図21〜図23を参照して、送信制御回路18aの構成について詳細に説明する。
【0072】
図21に示すように、送信制御回路18aは、送信データメモリ180と、CRCデータ生成回路181と、フレーム生成回路182aと、送信回路183と、遅延回路184aとにより構成されている。フレーム生成回路182aは、送信データメモリ180と、CRCデータ生成回路181と、送信回路183と、遅延回路184aと、受信制御回路17aとに接続されている。また、フレーム生成回路182aは、受信制御回路17aにより出力された受信完了信号が入力された場合に、後述する送信イネーブル信号と、ダミー出力信号とを出力するように構成されている。
【0073】
遅延回路184aは、フレーム生成回路182aと、断線徴候検出回路13aの後述するアナログ−デジタル変換回路132a(図24参照)とに接続されている。また、遅延回路184aは、フレーム生成回路182aにより生成されたダミー出力信号(図23参照)を断線徴候検出回路13aの後述するバンドパスフィルタ130の時定数分遅延させたダミー出力遅延信号(図23参照)を生成してアナログ−デジタル変換回路132aに出力するように構成されている。以下、図22および図23を参照して、フレーム生成回路182aの構成についてさらに詳細に説明する。
【0074】
図22に示すように、フレーム生成回路182aは、5つのレジスタ185と、セレクタ186と、パラレル−シリアル変換回路(P−S変換回路)187と、ステートマシン188と、ダミー出力信号生成回路189と、セレクタ190と、OR素子191とにより構成されている。ダミー出力信号生成回路189は、ステートマシン188に接続されている。また、ダミー出力信号生成回路189は、受信制御回路17aにより出力された受信完了信号が入力された場合(受信フレームの受信が完了された場合(図23参照))に、Hレベルのダミー出力信号を出力するように構成されている。また、ダミー出力信号生成回路189は、ステートマシン188により出力された送信開始信号がHレベルである場合(送信フレームの送信が開始された場合(図23参照))に、ダミー出力信号をLレベルにするように構成されている。
【0075】
セレクタ190は、ダミー出力信号生成回路189により出力されたダミー出力信号がHレベルの場合に、セレクタ186により出力された送信フレーム(図23参照)のうちのプリアンブルのみを抽出するように構成されている。OR素子191は、ステートマシン188により出力された送信開始信号とダミー出力信号生成回路189により出力されたダミー出力信号との論理和をとるように構成されている。この送信開始信号とダミー出力信号との論理和が、上記した送信イネーブル信号である。
【0076】
すなわち、第2実施形態では、ロボットコントローラ1aとエンコーダ2との間でデータ通信が行われていない期間において、通信ケーブル3上で上記プリアンブルと同一の波形パターンおよび同一の周波数(2MHz)を有するダミー信号が送受信されるように構成されている。
【0077】
また、第2実施形態では、6つの断線徴候検出回路13aは、それぞれ、対応する通信ケーブル3上で送受信されるダミー信号に基づくコモンモード信号を監視するとともに、監視結果に基づいて、対応する通信ケーブル3に断線の徴候があるか否かを検出するように構成されている。以下、図24を参照して、断線徴候検出回路13aの詳細な構成について説明する。
【0078】
図24に示すように、断線徴候検出回路13aは、バンドパスフィルタ130と、整流回路131と、アナログ−デジタル変換回路132aと、判定器133とにより構成されている。なお、判定器133は、判定レジスタ134と、比較器135とにより構成されている。
【0079】
アナログ−デジタル変換回路132aは、送受信制御回路11aの遅延回路184a(図21参照)により出力されるダミー出力遅延信号(図23参照)が入力されるイネーブル端子ENを有している。これにより、アナログ−デジタル変換回路132は、ダミー出力遅延信号がHレベルの期間において上記変換処理を行う一方、ダミー出力遅延信号がLレベルの期間において上記変換処理を停止するように構成されている。
【0080】
図20に示すように、CPU14aは、6つの送受信制御回路11aと6つの断線徴候検出回路13aと表示部15とに接続されている。また、CPU14aは、6つの断線徴候検出回路13aにより断線徴候検出回路13aに対応する通信ケーブル3の断線の徴候が検出された場合に、その通信ケーブル3に断線の徴候があることを表示部15に表示してユーザに対して通知する制御を行うように構成されている。具体的には、CPU14aは、6つの断線徴候検出回路13aのそれぞれの判定器133からHレベルの断線徴候検出信号が入力された場合に、その断線徴候検出回路13aに対応する通信ケーブル3に断線の徴候があることを表示部15に表示させる制御を行うように構成されている。
【0081】
なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0082】
また、本発明の第2実施形態による断線徴候検出システム200により通信ケーブル3の断線の徴候が検出される際における断線徴候検出回路13aの動作についても、アナログ−デジタル変換回路132aの動作条件以外は上記第1実施形態と同様である。このアナログ−デジタル変換回路132aは、送受信制御回路11aの遅延回路184aにより出力されたダミー出力遅延信号(図23参照)がHレベルの期間において動作する。
【0083】
次に、図25を参照して、本発明の第2実施形態による断線徴候検出回路13aにより通信ケーブル3の断線の徴候が検出された場合におけるCPU14aの制御フローについて説明する。
【0084】
まず、図25に示すように、ステップS11において、6つの断線徴候検出回路13aのうちのいずれかからHレベルの断線徴候検出信号が入力されたか否かが判断される。ステップS11においては、6つの断線徴候検出回路13aのうちのいずれかからHレベルの断線徴候検出信号が入力されるまでこの判断が繰り返される。そして、6つの断線徴候検出回路13aのうちのいずれかからHレベルの断線徴候検出信号が入力された場合に、ステップS12に進む。次に、ステップS12において、Hレベルの断線徴候検出信号を出力した断線徴候検出回路13aに対応する通信ケーブル3に断線の徴候があることを表示部15に表示させる処理が行われる。そして、処理を終了する。
【0085】
第2実施形態では、上記のように、ロボットコントローラ1aとエンコーダ2との間でデータ通信が行われていない期間において、通信ケーブル3上で一定の周波数を有するダミー信号を送受信するように構成する。また、断線徴候検出回路13aを、ダミー信号に基づくコモンモード信号を監視するとともに、監視結果に基づいて通信ケーブル3に断線の徴候があるか否かを検出するように構成する。これにより、ロボットコントローラ1aとエンコーダ2との間でデータ通信が行われない比較的長期間に渡る監視結果に基づいて、通信ケーブル3に断線の徴候があるか否かを検出することができるので、通信ケーブル3に断線の徴候があるか否かをより確実に検出することができる。なお、一般に、ロボットコントローラとエンコーダとが複数の通信ケーブルを介して接続されている状態において、データ通信が行われているケーブル以外のケーブル上で何らの信号も送受信しない場合では、隣接するケーブル間で干渉が起こるという問題(クロストーク)が生じる。ここで、第2実施形態のように、ロボットコントローラ1aとエンコーダ2との間でデータ通信が行われていない期間において、通信ケーブル3上で一定の周波数を有するダミー信号を送受信すれば、上記クロストークが生じることにより断線徴候検出システム100が誤動作するのを抑制することができる。
【0086】
また、第2実施形態では、上記のように、ロボットコントローラ1aのトランシーバ回路10とエンコーダ2のトランシーバ回路20とを、6つの通信ケーブル3により通信可能に接続する。また、断線徴候検出回路13aを、6つの通信ケーブル3に対応するように6つ設ける。また、6つの断線徴候検出回路13aを、それぞれ、対応する通信ケーブル3上で送受信されるダミー信号に基づくコモンモード信号を監視するとともに、監視結果に基づいて、対応する通信ケーブル3に断線の徴候があるか否かを検出するように構成する。これにより、6つの断線徴候検出回路13aにより、それらに対応する6つの通信ケーブル3のそれぞれに断線の徴候があるか否かを容易に検出することができる。
【0087】
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0088】
(第3実施形態)
次に、図26を参照して、本発明の第3実施形態による断線徴候検出システム300について説明する。この第3実施形態では、ロボットコントローラ1とエンコーダ2とにより構成された上記第1実施形態と異なり、ロボットコントローラ1とティーチングペンダント9とにより構成されている。ここで、ティーチングペンダント9は、ロボットに動作を教示するための装置である。なお、ティーチングペンダント9は、本発明の「第2装置」の一例であるとともに、「教示装置」の一例である。
【0089】
図26に示すように、本発明の第3実施形態による断線徴候検出システム300は、ロボットコントローラ1とティーチングペンダント9とにより構成されている。これらのロボットコントローラ1とティーチングペンダント9とは、一対の信号線からなる通信ケーブル3を介して互いに通信可能に接続されている。
【0090】
ティーチングペンダント9は、トランシーバ回路90と、送受信制御回路91と、コモンモード信号抽出回路92と、断線徴候検出回路93と、CPU94と、表示部95とにより構成されている。これらのトランシーバ回路90、送受信制御回路91、コモンモード信号抽出回路92、断線徴候検出回路93、CPU94および表示部95は、それぞれ、ロボットコントローラ1のトランシーバ回路10、送受信制御回路11、コモンモード信号抽出回路12、断線徴候検出回路13、CPU14および表示部15と同様の構成および機能を有している。
【0091】
なお、第3実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0092】
また、第3実施形態の断線徴候検出システム300により通信ケーブル3の断線の徴候が検出される際におけるティーチングペンダント9の断線徴候検出回路93の動作については、上記第1実施形態の断線徴候検出システム100により通信ケーブル3の断線の徴候が検出される際におけるロボットコントローラ1の断線徴候検出回路13の動作と同様である。
【0093】
また、第3実施形態によるティーチングペンダント9の断線徴候検出回路93により通信ケーブル3の断線の徴候が検出された場合におけるCPU94の制御フローについても、上記第1実施形態によるロボットコントローラ1のCPU14の制御フロー(図6参照)と同様である。
【0094】
第3実施形態では、上記のように、ロボットコントローラ1およびティーチングペンダント9の両方に、それぞれ、断線徴候検出回路13および断線徴候検出回路93を設ける。これにより、通信ケーブル3に断線の徴候があるか否かを、ロボットコントローラ1側だけでなくティーチングペンダント9側においても検出することができる。その結果、通信ケーブル3に断線の徴候があるか否かをより確実に検出することができる。また、断線徴候検出回路13および断線検出回路93により通信ケーブル3の断線の徴候を検出することによって、通信ケーブル3が完全に断線する前に交換用の通信ケーブル3を準備することができる。これにより、通信ケーブル3が完全に断線して通信に使用不可能な状態になることによりシステム全体が停止してしまう期間を短くすることができる。
【0095】
なお、第3実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0096】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0097】
たとえば、上記第1〜第3実施形態では、通信ケーブル上で送受信される差動信号に基づくコモンモード信号の振幅を監視することにより、通信ケーブルに断線の徴候があるか否かを検出する例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、通信ケーブル上で送受信される差動信号に基づくコモンモード信号の振幅以外を監視することにより、通信ケーブルに断線の徴候があるか否かを検出してもよい。
【0098】
また、上記第1〜第3実施形態では、通信ケーブル上で送受信される差動信号に基づくコモンモード信号の基本周波数成分の振幅を監視することにより、通信ケーブルに断線の徴候があるか否かを検出する例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、通信ケーブル上で送受信される差動信号に基づくコモンモード信号の基本周波数成分、および、その基本周波数の奇数倍の周波数を有する高調波成分のうちの少なくとも1つの振幅を監視することにより、通信ケーブルに断線の徴候があるか否かを検出すればよい。
【0099】
また、上記第1〜第3実施形態では、通信ケーブルに断線の徴候があることを表示部に表示してユーザに通知する例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、通信ケーブルに断線の徴候があることを音声によりユーザに通知するようにしてもよい。また、上記第1〜第3実施形態では、ロボットコントローラの内部に表示部を設け、その表示部を用いて通信ケーブルに断線の徴候があることを表示する例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、ロボットコントローラに表示部を有する装置を接続して、その表示部を有する装置を用いて通信ケーブルに断線の徴候があることを表示してもよい。
【0100】
また、上記第2実施形態では、ロボットコントローラを6つのエンコーダに接続する例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、ロボットコントローラを5つ以下のエンコーダに接続してもよいし、7つ以上のエンコーダに接続してもよい。
【0101】
また、上記第3実施形態では、断線徴候システムを、通信ケーブルを介して接続された表示部を有するロボットコントローラおよび表示部を有するティーチングペンダントにより構成する例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、断線徴候システムを、たとえば、通信ケーブルを介して接続された表示部を有するロボットコントローラおよび表示部を有するPC(Personal Computer)により構成してもよい。
【符号の説明】
【0102】
1、1a ロボットコントローラ(第1装置、ロボット制御装置)
2 エンコーダ(第2装置)
3 通信ケーブル
9 ティーチングペンダント(第2装置、教示装置)
10 トランシーバ回路(第1通信部)
13、13a、93 断線徴候検出回路(断線徴候検出部)
14、14a、94 CPU(制御部)
15、95 表示部
20、90 トランシーバ回路(第2通信部)
100、200、300 断線徴候検出システム
【技術分野】
【0001】
この発明は、ケーブルに断線の徴候があるか否かを検出する断線徴候検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ケーブルに断線の徴候があるか否かを検出するために用いる断線検知機能付きケーブルが知られている(たとえば、特許文献1参照)。この断線検知機能付きケーブルは、線心と、屈曲寿命の異なる複数の素線とにより構成されている。この断線検知機能付きケーブルが繰り返し屈曲される場合、複数の素線が屈曲寿命の短い順に断線していくことによってケーブル全体の抵抗値が段階的に変化する。この場合、ケーブル全体の抵抗値の変化を測定することにより、ケーブルに断線の徴候があるか否かを段階的に検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−299608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の断線検知機能付きケーブルでは、ケーブルに断線の徴候があるか否かを検出するために特殊な構造のケーブル(線心と、屈曲寿命の異なる複数の素線とからなるケーブル)を用いる必要があるという問題点がある。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、特殊なケーブルを用いることなくケーブルに断線の徴候があるか否かを検出することが可能な断線徴候検出システムを提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0006】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面による断線徴候検出システムは、通信ケーブルを介して互いに通信可能に接続される第1通信部を含む第1装置および第2通信部を含む第2装置を備え、第1装置および第2装置の少なくとも一方は、通信ケーブル上で送受信される差動信号に基づくコモンモード信号を監視するとともに、監視結果に基づいて通信ケーブルに断線の徴候があるか否かを検出する断線徴候検出部を含む。
【0007】
この一の局面による断線徴候検出システムでは、上記のように、第1装置および第2装置の少なくとも一方に、通信ケーブル上で送受信される差動信号に基づくコモンモード信号を監視するとともに、監視結果に基づいて通信ケーブルに断線の徴候があるか否かを検出する断線徴候検出部を設ける。これにより、通信ケーブルとして特殊な構造を採用しなくても、断線徴候検出部によって通信ケーブルに断線の徴候があるか否かを検出することができる。また、特殊なケーブルを用いないことにより、交換用のケーブルを容易に入手することができるので、ケーブルが断線した際にケーブルの交換を行うためにシステム全体が停止してしまう期間を短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1実施形態による断線徴候検出システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態によるロボットコントローラの送受信制御回路の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1実施形態によるロボットコントローラの送受信制御回路のフレーム生成回路の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1実施形態によるロボットコントローラの送受信制御回路のフレーム生成回路により生成される送信フレームおよびサンプリング信号と遅延回路により生成されるサンプリング遅延信号との関係を示すイメージ図である。
【図5】本発明の第1実施形態によるロボットコントローラの断線徴候検出回路の構成を示すブロック図である。
【図6】本発明の第1実施形態によるロボットコントローラの断線徴候検出回路により通信ケーブルの断線の徴候が検出された場合におけるCPUの制御動作を説明するためのフローチャートである。
【図7】通信ケーブルの断線状態の変化を調べるために行った実験について説明するための図である。
【図8】図7に示す実験に用いた屈曲試験装置により通信ケーブルが屈曲される状態を説明するための図である。
【図9】図7に示す実験に用いたデータロガーによる測定結果を示すグラフである。
【図10】第1の状態の通信ケーブルの内部の素線の断線状態を示す模式図である。
【図11】第2の状態の通信ケーブルの内部の素線の断線状態を示す模式図である。
【図12】第3の状態の通信ケーブルの内部の素線の断線状態を示す模式図である。
【図13】第4の状態の通信ケーブルの内部の素線の断線状態を示す模式図である。
【図14】第1〜第4の状態のそれぞれの通信ケーブル上で所定のデータ信号を送受信した際におけるコモンモード信号の周波数スペクトラムを調べるために行った実験について説明するための図である。
【図15】第1の状態の通信ケーブル上で所定のデータ信号を送受信した際におけるコモンモード信号の周波数スペクトラムを示す図である。
【図16】第2の状態の通信ケーブル上で所定のデータ信号を送受信した際におけるコモンモード信号の周波数スペクトラムを示す図である。
【図17】第3の状態の通信ケーブル上で所定のデータ信号を送受信した際におけるコモンモード信号の周波数スペクトラムを示す図である。
【図18】第4の状態の通信ケーブル上で所定のデータ信号を送受信した際におけるコモンモード信号の周波数スペクトラムを示す図である。
【図19】図15〜図18に示した周波数スペクトラムのうちの2MHzの周波数成分の振幅のピーク値の変化を示すグラフである。
【図20】本発明の第2実施形態による断線徴候検出システムの構成を示すブロック図である。
【図21】本発明の第2実施形態によるロボットコントローラの送受信制御回路の構成を示すブロック図である。
【図22】本発明の第2実施形態によるロボットコントローラの送受信制御回路のフレーム生成回路の構成を示すブロック図である。
【図23】本発明の第2実施形態によるロボットコントローラの送受信制御回路のフレーム生成回路により生成される送信フレームおよびダミー出力信号と遅延回路により生成されるダミー出力遅延信号との関係を示すイメージ図である。
【図24】本発明の第2実施形態によるロボットコントローラの断線徴候検出回路の構成を示すブロック図である。
【図25】本発明の第2実施形態によるロボットコントローラの断線徴候検出回路により通信ケーブルの断線の徴候が検出された場合におけるCPUの制御動作を説明するためのフローチャートである。
【図26】本発明の第3実施形態による断線徴候検出システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
(第1実施形態)
まず、図1を参照して、本発明の第1実施形態による断線徴候検出システム100の構成について説明する。
【0011】
図1に示すように、断線徴候検出システム100は、ロボットを制御するためのロボットコントローラ1と、そのロボットを駆動するモータの位置を検出するエンコーダ2とにより構成されている。これらのロボットコントローラ1とエンコーダ2とは、一対の信号線からなる通信ケーブル3を介して互いに通信可能に接続されている。なお、ロボットコントローラ1は、本発明の「第1装置」の一例であるとともに、「ロボット制御装置」の一例である。また、エンコーダ2は、本発明の「第2装置」の一例である。
【0012】
ロボットコントローラ1は、トランシーバ回路10と、送受信制御回路11と、コモンモード信号抽出回路12と、断線徴候検出回路13と、CPU14と、表示部15とにより構成されている。また、ロボットコントローラ1には、モータ駆動部などのロボットを制御するための種々の機器(図示せず)が設けられている。なお、トランシーバ回路10は、本発明の「第1通信部」の一例である。また、断線徴候検出回路13は、本発明の「断線徴候検出部」の一例である。また、CPU14は、本発明の「制御部」の一例である。
【0013】
エンコーダ2は、トランシーバ回路20と、送受信制御回路21と、コモンモード信号抽出回路22とにより構成されている。このエンコーダ2のトランシーバ回路20、送受信制御回路21およびコモンモード信号抽出回路22は、それぞれ、ロボットコントローラ1のトランシーバ回路10、送受信制御回路11およびコモンモード信号抽出回路12と同様の構成および機能を有しているので、以下では説明を省略する。なお、トランシーバ回路20は、本発明の「第2通信部」の一例である。
【0014】
次に、図1〜図5を参照して、ロボットコントローラ1の各部の構成について説明する。
【0015】
トランシーバ回路10は、通信ケーブル3と送受信制御回路11とに接続されている。また、トランシーバ回路10は、一対の信号線からなる通信ケーブル3を介して差動信号を送受信可能なように構成されている。具体的には、トランシーバ回路10は、マンチェスター符号化方式により符号化されたデータ信号(通信フレーム(図4参照))を、4Mbpsの伝送速度で送受信可能なように構成されている。なお、一般に、通信フレームが4Mbpsの伝送速度で送受信される場合、その通信フレームを構成する送信フレームおよび受信フレームのプリアンブルは、2MHzのビット列からなる。
【0016】
送受信制御回路11は、トランシーバ回路10と断線徴候検出回路13とCPU14とに接続されている。また、送受信制御回路11は、トランシーバ回路10によるデータ信号の送受信の制御を行うように構成されている。また、送受信制御回路11は、図2に示すように、CPU14に接続されるCPUインタフェース回路16と、CPUインタフェース回路16に接続される受信制御回路17および送信制御回路18とにより構成されている。
【0017】
以下、図2および図4を参照して、送信制御回路18の構成について詳細に説明する。
【0018】
図2に示すように、送信制御回路18は、送信データメモリ180と、CRCデータ生成回路181と、フレーム生成回路182と、送信回路183と、遅延回路184とにより構成されている。
【0019】
送信データメモリ180は、CPUインタフェース回路16とCRCデータ生成回路181とフレーム生成回路182とに接続されている。また、送信データメモリ180は、トランシーバ回路10により送信される送信フレームのうちの送信データ(図4参照)が格納されるように構成されている。
【0020】
CRCデータ生成回路181は、送信データメモリ180とフレーム生成回路182とに接続されている。また、CRCデータ生成回路181は、送信データメモリ180に格納された送信データからCRC(巡回冗長検査)に基づく誤り検出を行うためのCRCデータを生成するように構成されている。
【0021】
フレーム生成回路182は、送信データメモリ180とCRCデータ生成回路181と送信回路183と遅延回路184とに接続されている。また、フレーム生成回路182は、送信データメモリ180に格納された送信データと、CRCデータ生成回路181により生成されたCRCデータとから送信フレーム(図4参照)を生成するように構成されている。また、フレーム生成回路182は、送信フレームのプリアンブルが送信される期間のみHレベルになるサンプリング信号(図4参照)を出力するように構成されている。また、フレーム生成回路182は、送信フレームの送信開始時にHレベルになる送信開始信号を出力するように構成されている。
【0022】
送信回路183は、フレーム生成回路182とトランシーバ回路10とに接続されている。また、送信回路183は、フレーム生成回路182により生成された送信フレーム(図4参照)をマンチェスター符号化方式により符号化してトランシーバ回路10に出力するように構成されている。遅延回路184は、フレーム生成回路182と、断線徴候検出回路13の後述するアナログ−デジタル変換回路132(図5参照)とに接続されている。
【0023】
また、遅延回路184は、フレーム生成回路182により生成されたサンプリング信号を断線徴候検出回路13の後述するバンドパスフィルタ130(図5参照)の時定数分遅延させたサンプリング遅延信号(図4参照)を出力するように構成されている。
【0024】
以下、図3および図4を参照して、フレーム生成回路182の構成についてさらに詳細に説明する。
【0025】
図3に示すように、フレーム生成回路182は、5つのレジスタ185と、セレクタ186と、パラレル−シリアル変換回路(P−S変換回路)187と、ステートマシン188とにより構成されている。5つのレジスタ185は、それぞれ、送信フレーム(図4参照)のプリアンブル(PRE)、スタートフラグ(SF)、送信データ(DATA)、CRCデータおよびエンドフラグ(EF)が格納されるように構成されている。セレクタ186は、ステートマシン188による制御に基づいて、レジスタ185のそれぞれに格納されたプリアンブル、スタートフラグ、送信データ、CRCデータおよびエンドフラグをこの順番で組み合わせることによって、送信フレームをパラレルデータとして出力するように構成されている。
【0026】
ステートマシン188は、セレクタ186の制御を行うとともに、送信フレームのプリアンブルが送信される期間のみHレベルになるサンプリング信号(図4参照)を出力するように構成されている。また、ステートマシン188は、送信フレームの送信開始時にHレベルになる送信開始信号を出力するように構成されている。
【0027】
パラレル−シリアル変換回路187は、セレクタ186により出力されたパラレルデータとしての送信フレームをシリアルデータに変換して出力するように構成されている。
【0028】
図1に示すように、コモンモード信号抽出回路12は、通信ケーブル3と断線徴候検出回路13とに接続されている。また、コモンモード信号抽出回路12は、一対の信号線からなる通信ケーブル3上で送受信される差動信号に基づくコモンモード信号を抽出するように構成されている。また、コモンモード信号抽出回路12は、抵抗R1、抵抗R2および抵抗R3により構成されている。なお、抵抗R1および抵抗R2の一方端は、通信ケーブル3を構成する一対の信号線のそれぞれに接続されている。また、抵抗R1および抵抗R2の他方端は、抵抗R3の一方端に接続されている。また、抵抗R3の他方端は、シグナルグラウンドSGに接続されているとともに、コンデンサC1を介してフレームグラウンドFGに接続されている。
【0029】
第1実施形態では、断線徴候検出回路13は、コモンモード信号抽出回路12と送受信制御回路11とCPU14とに接続されている。また、断線徴候検出回路13は、通信ケーブル3上で送受信される差動信号に基づくコモンモード信号を監視するとともに、監視結果に基づいて通信ケーブル3に断線の徴候があるか否かを検出するように構成されている。具体的には、断線徴候検出回路13は、ロボットコントローラ1とエンコーダ2との間でデータ通信が行われる際に通信ケーブル3上で送受信されるデータ信号(通信フレーム(図4参照))のプリアンブル期間におけるコモンモード信号の基本周波数成分の振幅を監視するように構成されている。なお、上記したように、第1実施形態の通信ケーブル3上で送受信される通信フレームのプリアンブルは、2MHzのビット列からなるので、そのプリアンブル期間におけるコモンモード信号の基本周波数は2MHzである。
【0030】
ここで、断線徴候検出回路13に通信ケーブル3の断線の徴候を検出させるためには、通信ケーブル3上で送受信される差動信号のコモンモード信号の基本周波数成分、および、その基本周波数の奇数倍の周波数を有する複数の高調波成分のうちの少なくとも1つを監視させればよいことが後述する本願発明者の実験により判明している。また、これら複数の周波数成分のうちで振幅値の変化の幅が最も大きいのは基本周波数成分であることが後述する本願発明者の実験により判明している。また、通信ケーブル3は、断線していない第1の状態と、断線している一方実質的に通信に使用可能な第2の状態と、断線していることにより実質的に通信に使用不可能な第3の状態と、断線していることにより略完全に通信に使用不可能な第4の状態とにこの順番で断線状態に向かって変化することが後述する本願発明者の実験により判明している。
【0031】
また、第1実施形態では、断線徴候検出回路13は、通信ケーブル3上で送受信されるデータ信号のプリアンブル期間におけるコモンモード信号の基本周波数成分の振幅のピーク値が予め設定されたしきい値を上回る場合に、通信ケーブル3に断線の徴候があると検出するように構成されている。このしきい値は、メーカまたはユーザにより断線徴候検出回路13の後述する判定レジスタ134(図5参照)に設定されるように構成されている。
【0032】
また、第1実施形態では、通信ケーブル3が第3の状態(断線していることにより実質的に通信に使用不可能な状態)になる前に断線徴候検出回路13が通信ケーブル3に断線の徴候があると検出することが可能なように上記しきい値が設定されている。なお、このしきい値を10mV以上50mV未満の値に設定すれば、通信ケーブル3が第3の状態になる前に通信ケーブル3に断線の徴候があると断線徴候検出回路13に検出させることができることが後述する本願発明者の実験により判明している。
【0033】
以下、図5を参照して、断線徴候検出回路13の詳細な構成について説明する。
【0034】
図5に示すように、断線徴候検出回路13は、バンドパスフィルタ(BPF)130と、整流回路131と、アナログ−デジタル変換回路132と、判定器133とにより構成されている。なお、判定器133は、判定レジスタ134と、比較器135とにより構成されている。
【0035】
バンドパスフィルタ130は、コモンモード信号抽出回路12と整流回路131とに接続されている。また、バンドパスフィルタ130は、コモンモード信号抽出回路12により出力されたコモンモード信号から基本周波数成分(第1実施形態では、2MHzの周波数成分)を抽出して整流回路131に出力するように構成されている。整流回路131は、バンドパスフィルタ130とアナログ−デジタル変換回路132とに接続されている。
【0036】
また、整流回路131は、バンドパスフィルタ130により出力されたコモンモード信号の基本周波数成分を整流してアナログ−デジタル変換回路132に出力するように構成されている。
【0037】
アナログ−デジタル変換回路132は、送受信制御回路11の遅延回路184(図2参照)に接続されるとともに、比較器135に接続されている。また、アナログ−デジタル変換回路132は、整流回路131により整流されたアナログデータとしてのコモンモード信号の基本周波数成分をデジタルデータに変換して比較器135に出力するように構成されている。なお、アナログ−デジタル変換回路132は、送受信制御回路11の遅延回路184により出力されるサンプリング遅延信号(図4参照)が入力されるイネーブル端子ENを有している。これにより、アナログ−デジタル変換回路132は、サンプリング遅延信号がHレベルの期間において上記変換処理を行う一方、サンプリング遅延信号がLレベルの期間において上記変換処理を停止するように構成されている。
【0038】
比較器135は、判定レジスタ134に接続されるとともに、CPU14に接続されている。この判定レジスタ134には、ユーザの設定に基づいて、通信ケーブル3に断線の徴候があるか否かの検出の基準となるしきい値(たとえば、30mV)が格納されている。比較器135は、アナログ−デジタル変換回路132により出力されたデジタルデータとしてのコモンモード信号の基本周波数成分の振幅のピーク値と、判定レジスタ134に格納された上記しきい値とを比較するように構成されている。また、比較器135は、上記コモンモード信号の基本周波数成分の振幅のピーク値が判定レジスタ134に格納されたしきい値を上回る場合に、CPU14に対してHレベルの断線徴候検出信号を送信するように構成されている。
【0039】
図1に示すように、CPU14は、送受信制御回路11と断線徴候検出回路13と表示部15とに接続されている。また、CPU14は、断線徴候検出回路13により通信ケーブル3の断線の徴候が検出された場合に、通信ケーブル3に断線の徴候があることを表示部15に表示してユーザに対して通知する制御を行うように構成されている。具体的には、CPU14は、断線徴候検出回路13の判定器133(図5参照)からHレベルの断線徴候検出信号が入力された場合に、通信ケーブル3に断線の徴候があることを表示部15に表示させる制御を行うように構成されている。表示部15は、CPU14に接続されている。この表示部15は、たとえばLEDやLCDなどからなる。
【0040】
次に、図5を参照して、本発明の第1実施形態による断線徴候検出システム100により通信ケーブル3の断線の徴候が検出される際における断線徴候検出回路13の動作について説明する。
【0041】
まず、第1実施形態では、通信ケーブル3に断線の徴候があるか否か判断の基準となるしきい値が予めユーザにより判定レジスタ134に設定されている。
【0042】
次に、コモンモード信号抽出回路12(図1参照)により出力されたコモンモード信号がバンドパスフィルタ130に入力される。第1実施形態では、このコモンモード信号は、ロボットコントローラ1とエンコーダ2との間でデータ通信が行われる際に通信ケーブル3上で送受信される通信フレーム(図4参照)のプリアンブル期間におけるコモンモード信号である。そして、上記コモンモード信号の2MHzの周波数成分(第1実施形態のコモンモード信号の基本周波数成分)がバンドパスフィルタ130により抽出される。
【0043】
次に、バンドパスフィルタ130により抽出された上記コモンモード信号の2MHzの周波数成分が整流回路131により整流される。そして、整流回路131により整流された上記コモンモード信号の2MHzの周波数成分が、アナログ−デジタル変換回路132によりデジタルデータに変換される。なお、このアナログ−デジタル変換回路132は、送受信制御回路11の遅延回路184(図2参照)により出力されるサンプリング遅延信号(図4参照)がHレベルである期間のみ動作する。
【0044】
次に、判定器133の比較器135により、アナログ−デジタル変換回路132により出力された上記コモンモード信号の2MHzの周波数成分の振幅値が判定レジスタ134に格納されたしきい値を上回っているか否かが比較される。そして、アナログ−デジタル変換回路132により出力された上記コモンモード信号の基本周波数成分の振幅値が判定レジスタ134に格納されたしきい値を上回る場合に、比較器135によりHレベルの断線徴候検出信号がCPU14に出力される。これにより、通信ケーブル3の断線の徴候が検出される。
【0045】
次に、図6を参照して、本発明の第1実施形態による断線徴候検出回路13により通信ケーブル3の断線の徴候が検出された場合におけるCPU14の制御フローについて説明する。
【0046】
まず、図6に示すように、ステップS1において、断線徴候検出回路13からHレベルの断線徴候検出信号が入力されたか否かが判断される。ステップS1においては、断線徴候検出回路13からHレベルの断線徴候検出信号が入力されるまでこの判断が繰り返される。そして、断線徴候検出回路13からHレベルの断線徴候検出信号が入力された場合に、ステップS2に進む。次に、ステップS2において、通信ケーブル3に断線の徴候があることを表示部15に表示させる処理が行われる。そして、処理を終了する。
【0047】
次に、図7〜図13を参照して、通信ケーブル3の断線状態の変化を調べるために行った実験について説明する。
【0048】
本実験では、図7に示すような屈曲試験装置4を用いて、一対の信号線からなる通信ケーブル3の左右方向約90度の屈曲動作(図8参照)を繰り返し行った。なお、この時、通信ケーブル3の一方端部において、その通信ケーブル3を構成する一対の信号線を互いにショートさせた。また、通信ケーブル3の他方端部において、その通信ケーブル3を構成する一対の信号線のうちの一方端(点V1とする)を、抵抗R0を介して5Vの電源に接続するとともに、他方端(点V2とする)を、抵抗R0を介して0Vの電源に接続した。そして、V1−V2間の電圧値をデータロガー5を用いて測定するとともに、その時の通信ケーブル3が通信に使用可能であるか否かを調査した。
【0049】
図9は、上記データロガー5によるV1−V2間の電圧値の測定結果である。図9に示すように、通信ケーブル3が約100万回屈曲されるまでの期間において、V1−V2間の電圧値は0Vであった。この期間における通信ケーブル3の内部の状態をX線を用いて観測すると、図10のような状態(第1の状態)であった。
【0050】
この第1の状態では、図10に示すように、通信ケーブル3の内部の素線3aが全く断線していなかった。また、この第1の状態では、問題なく通信ケーブル3を通信に使用することが可能であった。
【0051】
また、図9に示すように、通信ケーブル3が約100万回屈曲された後、約120万回屈曲されるまでの期間において、V1−V2間の電圧値は、0Vと0Vよりも少し大きい電圧値との間を振動していた。この期間における通信ケーブル3の内部の状態をX線を用いて観測すると、図11のような状態(第2の状態)であった。この第2の状態では、図11に示すように、通信ケーブル3の内部の素線3aに断線が発生していた一方、素線3aの断線した部分同士が略接触していた。また、この第2の状態では、通信ケーブル3を通信に使用することが実質的に可能であった。
【0052】
また、図9に示すように、通信ケーブル3が約120万回屈曲された後、約150万回屈曲されるまでの期間において、V1−V2間の電圧値は、0Vと5Vとの間を振動していた。この期間における通信ケーブル3の内部の状態をX線を用いて観測すると、図12のような状態(第3の状態)であった。この第3の状態では、図12に示すように、上記第2の状態よりも通信ケーブル3の内部の素線3aの断線状態が進行していた。また、この第3の状態では、素線3aの断線した部分間の距離が離れていた。また、この第3の状態では、通信ケーブル3を通信に使用した場合に通信エラーが頻発した。すなわち、この第3の状態では、通信ケーブル3を通信に使用することが実質的に不可能であった。
【0053】
また、図9に示すように、通信ケーブル3が約150万回屈曲された以降の期間において、V1−V2間の電圧値は、5Vと5Vよりも少し小さい電圧値との間を振動していた。この期間における通信ケーブル3の内部の状態をX線を用いて観測すると、図13のような状態(第4の状態)であった。この第4の状態では、図13に示すように、通信ケーブル3の内部の素線3aが略完全に断線していた。また、この第4の状態では、素線3aの断線した部分間の距離が上記第3の状態よりも離れていた。また、この第4の状態では、通信ケーブル3を通信に使用することが略完全に不可能であった。
【0054】
以上により、通信ケーブル3が、断線していない第1の状態と、断線している一方実質的に通信に使用可能な第2の状態と、断線していることにより実質的に通信に使用不可能な第3の状態と、断線していることにより略完全に通信に使用不可能な第4の状態とにこの順番で断線状態に向かって変化することが分かった。
【0055】
次に、図14〜図19を参照して、第1〜第4の状態のそれぞれの通信ケーブル3上で所定のデータ信号を送受信した際におけるコモンモード信号の周波数スペクトラムを調べるために行った実験について説明する。
【0056】
本実験では、まず、図14に示すように、トランシーバ回路60と、送受信制御回路61と、コモンモード信号抽出回路62とを備えるロボットコントローラ6と、トランシーバ回路70と、送受信制御回路71と、コモンモード信号抽出回路72を備えるエンコーダ7とを準備した。そして、ロボットコントローラ6のトランシーバ回路60とエンコーダ7のトランシーバ回路70とを、上記第1〜第4の状態のそれぞれの通信ケーブル3を用いて接続した。なお、トランシーバ回路60およびトランシーバ回路70は、上記第1実施形態によるトランシーバ回路10と同様の構成および機能を有している。また、送受信制御回路61および送受信制御回路71は、上記第1実施形態による送受信制御回路11と同様の構成および機能を有している。また、コモンモード信号抽出回路62およびコモンモード信号抽出回路72は、上記第1実施形態によるコモンモード信号抽出回路12と同様の構成および機能を有している。また、ロボットコントローラ6には、モータ駆動部などのロボットを制御するための種々の機器(図示せず)が設けられている。
【0057】
ここで、ロボットコントローラ6とエンコーダ7との間で上記第1実施形態のプリアンブルと同様の波形パターンの差動信号(基本周波数は2MHz)の送受信を行った。そして、ロボットコントローラ6のコモンモード信号抽出回路62にスペクトラムアナライザ8を接続して、上記第1〜第4のそれぞれの状態の通信ケーブル3上で送受信される差動信号に基づくコモンモード信号の周波数スペクトラムを測定した。
【0058】
図15、図16、図17および図18は、それぞれ、上記第1、第2、第3および第4の状態の通信ケーブル3を用いてロボットコントローラ6とエンコーダ7とを接続した場合におけるスペクトラムアナライザ8の測定結果を示した図である。図15〜図18に示すように、第1の状態から第4の状態へと通信ケーブル3の断線状態が進むにつれて、コモンモード信号の基本周波数成分(2MHzの周波数成分)、および、その基本周波数の奇数倍の周波数を有する高調波成分(6MHzの周波数成分および10MHzの周波数成分)の振幅のピーク値が上昇した。また、これらの周波数成分のうち、振幅のピーク値の上昇幅が最も大きいのは、コモンモード信号の基本周波数成分である2MHzの周波数成分であった。
【0059】
ここで、図19は、上記図15〜図18に示した周波数スペクトラムのうちの2MHzの周波数成分の振幅のピーク値の変化を表すグラフである。図19に示すように、通信ケーブル3が第1の状態から第2の状態になると、振幅値が約10mVに上昇した。また、通信ケーブル3が第2の状態から第3の状態になると、振幅値が上昇して約50mVになった。また、通信ケーブル3が第3の状態から第4の状態になると、振幅値がさらに上昇した。
【0060】
以上により、通信ケーブル3の断線の徴候を検出するには、通信ケーブル3上で送受信される差動信号のコモンモード信号の基本周波数成分(2MHzの周波数成分)、および、その基本周波数の奇数倍の周波数を有する複数の高調波成分(6MHzの周波数成分および10MHzの周波数成分)のうちの少なくとも1つの振幅値の変化を監視すればよいということが分かった。また、これら複数の周波数成分のうちで振幅値の変化の幅が最も大きいのは基本周波数成分であるということが分かった。また、通信ケーブル3が第3の状態になる前に通信ケーブル3の断線の徴候を検出するには、上記コモンモード信号の基本周波数成分の振幅のピーク値が10mV以上50mV未満の値であるか否かを確認すればよいということが分かった。
【0061】
第1実施形態では、上記のように、ロボットコントローラ1に、通信ケーブル3上で送受信される差動信号に基づくコモンモード信号を監視するとともに、監視結果に基づいて通信ケーブル3に断線の徴候があるか否かを検出する断線徴候検出回路13を設ける。これにより、通信ケーブル3に特殊な構造を採用しなくても、断線徴候検出回路13によって通信ケーブル3に断線の徴候があるか否かを検出することができる。その結果、特殊な通信ケーブル3を用いることなく通信ケーブル3に断線の徴候があるか否かを検出することができる。また、特殊な通信ケーブル3を用いないことにより、交換用の通信ケーブル3を容易に入手することができるので、通信ケーブル3が断線した際に通信ケーブル3の交換を行うためにシステム全体が停止してしまう期間を短くすることができる。また、通信ケーブル3の断線の徴候を検出する専用の機器を通信路(通信ケーブル3)の途中に設ける場合と異なり、通信路の両端におけるインピーダンスの整合を乱すことなく、通信ケーブル3に断線の徴候があるか否かを検出することができる。
【0062】
また、第1実施形態では、上記のように、断線徴候検出回路13を、通信ケーブル3上で送受信される差動信号に基づくコモンモード信号の基本周波数成分の振幅を監視するとともに、監視結果に基づいて通信ケーブル3に断線の徴候があるか否かを検出するように構成する。これにより、振幅の変化の幅の大きいコモンモード信号の基本周波数成分を用いて通信ケーブル3の断線の徴候の検出を行うことができるので、通信ケーブル3に断線の徴候があるか否かを容易に検出することができる。
【0063】
また、第1実施形態では、上記のように、ロボットコントローラ1のCPU14を、断線徴候検出回路13により通信ケーブル3の断線の徴候が検出された場合に、通信ケーブル3に断線の徴候があることをユーザに対して通知する制御を行うように構成する。これにより、通信ケーブル3に断線の徴候があることをユーザが容易に認識することができる。
【0064】
また、第1実施形態では、上記のように、ロボットコントローラ1に表示部15を設ける。また、CPU14を、断線徴候検出回路13により通信ケーブル3の断線の徴候が検出された場合に、通信ケーブル3に断線の徴候があることを表示部15に表示してユーザに対して通知する制御を行うように構成する。これにより、通信ケーブル3に断線の徴候があることをユーザが容易に視覚的に認識することができる。
【0065】
また、第1実施形態では、上記のように、断線徴候検出回路13を、通信ケーブル3上で送受信される差動信号に基づくコモンモード信号の振幅のピーク値が予め設定されたしきい値を上回る場合に、通信ケーブル3に断線の徴候があると検出するように構成する。これにより、通信ケーブル3に断線の徴候があるか否かを予め設定されたしきい値により確実に検出することができる。
【0066】
また、第1実施形態では、上記のように、通信ケーブル3が、断線していない第1の状態と、断線している一方実質的に通信に使用可能な第2の状態と、断線していることにより実質的に通信に使用不可能な第3の状態と、断線していることにより略完全に通信に使用不可能な第4の状態とにこの順番で断線状態に向かって変化する場合に、通信ケーブル3が第3の状態になる前に断線徴候検出回路13が通信ケーブル3に断線の徴候があると検出することが可能なようにしきい値を設定する。これにより、通信ケーブル3が実質的に通信に使用不可能な状態になる前に通信ケーブル3に断線の徴候があることを検出することができるので、通信ケーブル3が実質的に通信に使用不可能な状態になる前に交換用の通信ケーブル3を準備することができる。その結果、通信ケーブル3が実質的に通信に使用不可能な状態になることによりシステム全体が停止してしまう期間をより短くすることができる。
【0067】
また、第1実施形態では、上記のように、断線徴候検出回路13を、ロボットコントローラ1とエンコーダ2との間でデータ通信が行われる際に通信ケーブル3上で送受信されるデータ信号のプリアンブル期間におけるコモンモード信号を監視するとともに、監視結果に基づいて通信ケーブル3に断線の徴候があるか否かを検出するように構成する。これにより、通信ケーブル3に断線の徴候があるか否かを検出する専用の信号を用いる場合と異なり、データ通信が行われる際に通信ケーブル3上で送受信されるデータ信号を用いることにより、容易に、通信ケーブル3に断線の徴候があるか否かを検出することができる。また、データ通信が行われる際(ロボットの通常稼動中)に通信ケーブル3に断線の徴候があるか否かを検出することができるので、通信ケーブル3に断線の徴候があるか否かを検出するためにロボットの稼動を停止して点検などを行う必要がない。
【0068】
(第2実施形態)
次に、図20〜図25を参照して、本発明の第2実施形態による断線徴候検出システム200について説明する。この第2実施形態では、1つのロボットコントローラ1aと6つのエンコーダ2とにより構成されている。なお、ロボットコントローラ1aは、本発明の「第1装置」の一例であるとともに、「ロボット制御装置」の一例である。
【0069】
本発明の第2実施形態による断線徴候検出システム200は、図20に示すように、1つのロボットコントローラ1aと6つのエンコーダ2とにより構成されている。これら1つのロボットコントローラ1aと6つのエンコーダ2とは、6つの通信ケーブル3により互いに通信可能に接続されている。
【0070】
ロボットコントローラ1aは、トランシーバ回路10と、送受信制御回路11aと、コモンモード信号抽出回路12と、断線徴候検出回路13aと、CPU14aと、表示部15とにより構成されている。これらのトランシーバ回路10、送受信制御回路11a、コモンモード信号抽出回路12および断線徴候検出回路13aは、上記6つの通信ケーブル3に対応するように6つずつ設けられている。なお、断線徴候検出回路13aは、本発明の「断線徴候検出部」の一例である。また、CPU14aは、本発明の「制御部」の一例である。
【0071】
6つのトランシーバ回路10は、それぞれ、対応する通信ケーブル3と、対応する送受信制御回路11aとに接続されている。また、6つの送受信制御回路11aは、対応するトランシーバ回路10と、対応する断線徴候検出回路13aと、CPU14aとに接続されている。図21に示すように、送受信制御回路11aは、CPU14に接続されるCPUインタフェース回路16と、CPUインタフェース回路16に接続される受信制御回路17aおよび送信制御回路18aとにより構成されている。この受信制御回路17aは、受信フレーム(図23参照)の受信が完了した際に受信完了信号を出力するように構成されている。以下、図21〜図23を参照して、送信制御回路18aの構成について詳細に説明する。
【0072】
図21に示すように、送信制御回路18aは、送信データメモリ180と、CRCデータ生成回路181と、フレーム生成回路182aと、送信回路183と、遅延回路184aとにより構成されている。フレーム生成回路182aは、送信データメモリ180と、CRCデータ生成回路181と、送信回路183と、遅延回路184aと、受信制御回路17aとに接続されている。また、フレーム生成回路182aは、受信制御回路17aにより出力された受信完了信号が入力された場合に、後述する送信イネーブル信号と、ダミー出力信号とを出力するように構成されている。
【0073】
遅延回路184aは、フレーム生成回路182aと、断線徴候検出回路13aの後述するアナログ−デジタル変換回路132a(図24参照)とに接続されている。また、遅延回路184aは、フレーム生成回路182aにより生成されたダミー出力信号(図23参照)を断線徴候検出回路13aの後述するバンドパスフィルタ130の時定数分遅延させたダミー出力遅延信号(図23参照)を生成してアナログ−デジタル変換回路132aに出力するように構成されている。以下、図22および図23を参照して、フレーム生成回路182aの構成についてさらに詳細に説明する。
【0074】
図22に示すように、フレーム生成回路182aは、5つのレジスタ185と、セレクタ186と、パラレル−シリアル変換回路(P−S変換回路)187と、ステートマシン188と、ダミー出力信号生成回路189と、セレクタ190と、OR素子191とにより構成されている。ダミー出力信号生成回路189は、ステートマシン188に接続されている。また、ダミー出力信号生成回路189は、受信制御回路17aにより出力された受信完了信号が入力された場合(受信フレームの受信が完了された場合(図23参照))に、Hレベルのダミー出力信号を出力するように構成されている。また、ダミー出力信号生成回路189は、ステートマシン188により出力された送信開始信号がHレベルである場合(送信フレームの送信が開始された場合(図23参照))に、ダミー出力信号をLレベルにするように構成されている。
【0075】
セレクタ190は、ダミー出力信号生成回路189により出力されたダミー出力信号がHレベルの場合に、セレクタ186により出力された送信フレーム(図23参照)のうちのプリアンブルのみを抽出するように構成されている。OR素子191は、ステートマシン188により出力された送信開始信号とダミー出力信号生成回路189により出力されたダミー出力信号との論理和をとるように構成されている。この送信開始信号とダミー出力信号との論理和が、上記した送信イネーブル信号である。
【0076】
すなわち、第2実施形態では、ロボットコントローラ1aとエンコーダ2との間でデータ通信が行われていない期間において、通信ケーブル3上で上記プリアンブルと同一の波形パターンおよび同一の周波数(2MHz)を有するダミー信号が送受信されるように構成されている。
【0077】
また、第2実施形態では、6つの断線徴候検出回路13aは、それぞれ、対応する通信ケーブル3上で送受信されるダミー信号に基づくコモンモード信号を監視するとともに、監視結果に基づいて、対応する通信ケーブル3に断線の徴候があるか否かを検出するように構成されている。以下、図24を参照して、断線徴候検出回路13aの詳細な構成について説明する。
【0078】
図24に示すように、断線徴候検出回路13aは、バンドパスフィルタ130と、整流回路131と、アナログ−デジタル変換回路132aと、判定器133とにより構成されている。なお、判定器133は、判定レジスタ134と、比較器135とにより構成されている。
【0079】
アナログ−デジタル変換回路132aは、送受信制御回路11aの遅延回路184a(図21参照)により出力されるダミー出力遅延信号(図23参照)が入力されるイネーブル端子ENを有している。これにより、アナログ−デジタル変換回路132は、ダミー出力遅延信号がHレベルの期間において上記変換処理を行う一方、ダミー出力遅延信号がLレベルの期間において上記変換処理を停止するように構成されている。
【0080】
図20に示すように、CPU14aは、6つの送受信制御回路11aと6つの断線徴候検出回路13aと表示部15とに接続されている。また、CPU14aは、6つの断線徴候検出回路13aにより断線徴候検出回路13aに対応する通信ケーブル3の断線の徴候が検出された場合に、その通信ケーブル3に断線の徴候があることを表示部15に表示してユーザに対して通知する制御を行うように構成されている。具体的には、CPU14aは、6つの断線徴候検出回路13aのそれぞれの判定器133からHレベルの断線徴候検出信号が入力された場合に、その断線徴候検出回路13aに対応する通信ケーブル3に断線の徴候があることを表示部15に表示させる制御を行うように構成されている。
【0081】
なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0082】
また、本発明の第2実施形態による断線徴候検出システム200により通信ケーブル3の断線の徴候が検出される際における断線徴候検出回路13aの動作についても、アナログ−デジタル変換回路132aの動作条件以外は上記第1実施形態と同様である。このアナログ−デジタル変換回路132aは、送受信制御回路11aの遅延回路184aにより出力されたダミー出力遅延信号(図23参照)がHレベルの期間において動作する。
【0083】
次に、図25を参照して、本発明の第2実施形態による断線徴候検出回路13aにより通信ケーブル3の断線の徴候が検出された場合におけるCPU14aの制御フローについて説明する。
【0084】
まず、図25に示すように、ステップS11において、6つの断線徴候検出回路13aのうちのいずれかからHレベルの断線徴候検出信号が入力されたか否かが判断される。ステップS11においては、6つの断線徴候検出回路13aのうちのいずれかからHレベルの断線徴候検出信号が入力されるまでこの判断が繰り返される。そして、6つの断線徴候検出回路13aのうちのいずれかからHレベルの断線徴候検出信号が入力された場合に、ステップS12に進む。次に、ステップS12において、Hレベルの断線徴候検出信号を出力した断線徴候検出回路13aに対応する通信ケーブル3に断線の徴候があることを表示部15に表示させる処理が行われる。そして、処理を終了する。
【0085】
第2実施形態では、上記のように、ロボットコントローラ1aとエンコーダ2との間でデータ通信が行われていない期間において、通信ケーブル3上で一定の周波数を有するダミー信号を送受信するように構成する。また、断線徴候検出回路13aを、ダミー信号に基づくコモンモード信号を監視するとともに、監視結果に基づいて通信ケーブル3に断線の徴候があるか否かを検出するように構成する。これにより、ロボットコントローラ1aとエンコーダ2との間でデータ通信が行われない比較的長期間に渡る監視結果に基づいて、通信ケーブル3に断線の徴候があるか否かを検出することができるので、通信ケーブル3に断線の徴候があるか否かをより確実に検出することができる。なお、一般に、ロボットコントローラとエンコーダとが複数の通信ケーブルを介して接続されている状態において、データ通信が行われているケーブル以外のケーブル上で何らの信号も送受信しない場合では、隣接するケーブル間で干渉が起こるという問題(クロストーク)が生じる。ここで、第2実施形態のように、ロボットコントローラ1aとエンコーダ2との間でデータ通信が行われていない期間において、通信ケーブル3上で一定の周波数を有するダミー信号を送受信すれば、上記クロストークが生じることにより断線徴候検出システム100が誤動作するのを抑制することができる。
【0086】
また、第2実施形態では、上記のように、ロボットコントローラ1aのトランシーバ回路10とエンコーダ2のトランシーバ回路20とを、6つの通信ケーブル3により通信可能に接続する。また、断線徴候検出回路13aを、6つの通信ケーブル3に対応するように6つ設ける。また、6つの断線徴候検出回路13aを、それぞれ、対応する通信ケーブル3上で送受信されるダミー信号に基づくコモンモード信号を監視するとともに、監視結果に基づいて、対応する通信ケーブル3に断線の徴候があるか否かを検出するように構成する。これにより、6つの断線徴候検出回路13aにより、それらに対応する6つの通信ケーブル3のそれぞれに断線の徴候があるか否かを容易に検出することができる。
【0087】
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0088】
(第3実施形態)
次に、図26を参照して、本発明の第3実施形態による断線徴候検出システム300について説明する。この第3実施形態では、ロボットコントローラ1とエンコーダ2とにより構成された上記第1実施形態と異なり、ロボットコントローラ1とティーチングペンダント9とにより構成されている。ここで、ティーチングペンダント9は、ロボットに動作を教示するための装置である。なお、ティーチングペンダント9は、本発明の「第2装置」の一例であるとともに、「教示装置」の一例である。
【0089】
図26に示すように、本発明の第3実施形態による断線徴候検出システム300は、ロボットコントローラ1とティーチングペンダント9とにより構成されている。これらのロボットコントローラ1とティーチングペンダント9とは、一対の信号線からなる通信ケーブル3を介して互いに通信可能に接続されている。
【0090】
ティーチングペンダント9は、トランシーバ回路90と、送受信制御回路91と、コモンモード信号抽出回路92と、断線徴候検出回路93と、CPU94と、表示部95とにより構成されている。これらのトランシーバ回路90、送受信制御回路91、コモンモード信号抽出回路92、断線徴候検出回路93、CPU94および表示部95は、それぞれ、ロボットコントローラ1のトランシーバ回路10、送受信制御回路11、コモンモード信号抽出回路12、断線徴候検出回路13、CPU14および表示部15と同様の構成および機能を有している。
【0091】
なお、第3実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0092】
また、第3実施形態の断線徴候検出システム300により通信ケーブル3の断線の徴候が検出される際におけるティーチングペンダント9の断線徴候検出回路93の動作については、上記第1実施形態の断線徴候検出システム100により通信ケーブル3の断線の徴候が検出される際におけるロボットコントローラ1の断線徴候検出回路13の動作と同様である。
【0093】
また、第3実施形態によるティーチングペンダント9の断線徴候検出回路93により通信ケーブル3の断線の徴候が検出された場合におけるCPU94の制御フローについても、上記第1実施形態によるロボットコントローラ1のCPU14の制御フロー(図6参照)と同様である。
【0094】
第3実施形態では、上記のように、ロボットコントローラ1およびティーチングペンダント9の両方に、それぞれ、断線徴候検出回路13および断線徴候検出回路93を設ける。これにより、通信ケーブル3に断線の徴候があるか否かを、ロボットコントローラ1側だけでなくティーチングペンダント9側においても検出することができる。その結果、通信ケーブル3に断線の徴候があるか否かをより確実に検出することができる。また、断線徴候検出回路13および断線検出回路93により通信ケーブル3の断線の徴候を検出することによって、通信ケーブル3が完全に断線する前に交換用の通信ケーブル3を準備することができる。これにより、通信ケーブル3が完全に断線して通信に使用不可能な状態になることによりシステム全体が停止してしまう期間を短くすることができる。
【0095】
なお、第3実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0096】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0097】
たとえば、上記第1〜第3実施形態では、通信ケーブル上で送受信される差動信号に基づくコモンモード信号の振幅を監視することにより、通信ケーブルに断線の徴候があるか否かを検出する例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、通信ケーブル上で送受信される差動信号に基づくコモンモード信号の振幅以外を監視することにより、通信ケーブルに断線の徴候があるか否かを検出してもよい。
【0098】
また、上記第1〜第3実施形態では、通信ケーブル上で送受信される差動信号に基づくコモンモード信号の基本周波数成分の振幅を監視することにより、通信ケーブルに断線の徴候があるか否かを検出する例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、通信ケーブル上で送受信される差動信号に基づくコモンモード信号の基本周波数成分、および、その基本周波数の奇数倍の周波数を有する高調波成分のうちの少なくとも1つの振幅を監視することにより、通信ケーブルに断線の徴候があるか否かを検出すればよい。
【0099】
また、上記第1〜第3実施形態では、通信ケーブルに断線の徴候があることを表示部に表示してユーザに通知する例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、通信ケーブルに断線の徴候があることを音声によりユーザに通知するようにしてもよい。また、上記第1〜第3実施形態では、ロボットコントローラの内部に表示部を設け、その表示部を用いて通信ケーブルに断線の徴候があることを表示する例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、ロボットコントローラに表示部を有する装置を接続して、その表示部を有する装置を用いて通信ケーブルに断線の徴候があることを表示してもよい。
【0100】
また、上記第2実施形態では、ロボットコントローラを6つのエンコーダに接続する例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、ロボットコントローラを5つ以下のエンコーダに接続してもよいし、7つ以上のエンコーダに接続してもよい。
【0101】
また、上記第3実施形態では、断線徴候システムを、通信ケーブルを介して接続された表示部を有するロボットコントローラおよび表示部を有するティーチングペンダントにより構成する例を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、断線徴候システムを、たとえば、通信ケーブルを介して接続された表示部を有するロボットコントローラおよび表示部を有するPC(Personal Computer)により構成してもよい。
【符号の説明】
【0102】
1、1a ロボットコントローラ(第1装置、ロボット制御装置)
2 エンコーダ(第2装置)
3 通信ケーブル
9 ティーチングペンダント(第2装置、教示装置)
10 トランシーバ回路(第1通信部)
13、13a、93 断線徴候検出回路(断線徴候検出部)
14、14a、94 CPU(制御部)
15、95 表示部
20、90 トランシーバ回路(第2通信部)
100、200、300 断線徴候検出システム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信ケーブルを介して互いに通信可能に接続される第1通信部を含む第1装置および第2通信部を含む第2装置を備え、
前記第1装置および前記第2装置の少なくとも一方は、前記通信ケーブル上で送受信される差動信号に基づくコモンモード信号を監視するとともに、監視結果に基づいて前記通信ケーブルに断線の徴候があるか否かを検出する断線徴候検出部を含む、断線徴候検出システム。
【請求項2】
前記断線徴候検出部は、前記差動信号に基づくコモンモード信号の基本周波数成分、および、前記差動信号に基づくコモンモード信号の基本周波数の奇数倍の周波数を有する複数の高調波成分のうちの少なくとも1つの振幅を監視するとともに、監視結果に基づいて前記通信ケーブルに断線の徴候があるか否かを検出するように構成されている、請求項1に記載の断線徴候検出システム。
【請求項3】
前記断線徴候検出部は、前記差動信号に基づくコモンモード信号の基本周波数成分の振幅を監視するとともに、監視結果に基づいて前記通信ケーブルに断線の徴候があるか否かを検出するように構成されている、請求項2に記載の断線徴候検出システム。
【請求項4】
前記断線徴候検出部は、前記差動信号に基づくコモンモード信号の振幅のピーク値が予め設定されたしきい値を上回る場合に、前記通信ケーブルに断線の徴候があると検出するように構成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の断線徴候検出システム。
【請求項5】
前記通信ケーブルは、断線していない第1の状態と、断線している一方実質的に通信に使用可能な第2の状態と、断線していることにより実質的に通信に使用不可能な第3の状態と、断線していることにより略完全に通信に使用不可能な第4の状態とにこの順番で断線状態に向かって変化するように構成されており、
前記通信ケーブルが前記第3の状態になる前に前記断線徴候検出部が前記通信ケーブルに断線の徴候があると検出することが可能なように前記しきい値が設定されている、請求項4に記載の断線徴候検出システム。
【請求項6】
前記第1装置および前記第2装置の少なくとも一方は、前記断線徴候検出部により前記通信ケーブルの断線の徴候が検出された場合に、前記通信ケーブルに断線の徴候があることをユーザに対して通知する制御を行う制御部をさらに含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の断線徴候検出システム。
【請求項7】
前記第1装置および前記第2装置の少なくとも一方は、前記制御部に加えて表示部をさらに含み、
前記制御部は、前記断線徴候検出部により前記通信ケーブルの断線の徴候があると検出された場合に、前記通信ケーブルに断線の徴候があることを前記表示部に表示してユーザに対して通知する制御を行うように構成されている、請求項6に記載の断線徴候検出システム。
【請求項8】
前記断線徴候検出部は、前記第1装置と前記第2装置との間でデータ通信が行われる際に前記通信ケーブル上で送受信されるデータ信号のプリアンブル期間におけるコモンモード信号を監視するとともに、監視結果に基づいて前記通信ケーブルに断線の徴候があるか否かを検出するように構成されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の断線徴候検出システム。
【請求項9】
前記第1装置と前記第2装置との間でデータ通信が行われていない期間は、前記通信ケーブル上で一定の周波数を有するダミー信号が送受信されるように構成されており、
前記断線徴候検出部は、前記ダミー信号に基づくコモンモード信号を監視するとともに、監視結果に基づいて前記通信ケーブルに断線の徴候があるか否かを検出するように構成されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の断線徴候検出システム。
【請求項10】
前記第1装置の前記第1通信部と前記第2装置の前記第2通信部とは、複数の通信ケーブルにより通信可能に接続されており、
前記断線徴候検出部は、前記複数の通信ケーブルに対応するように複数設けられており、
前記複数の断線徴候検出部は、それぞれ、対応する通信ケーブル上で送受信される前記ダミー信号に基づくコモンモード信号を監視するとともに、監視結果に基づいて前記対応する通信ケーブルに断線の徴候があるか否かを検出するように構成されている、請求項9に記載の断線徴候検出システム。
【請求項11】
前記第1装置および前記第2装置の両方が、前記断線徴候検出部を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の断線徴候検出システム。
【請求項12】
前記第1装置は、ロボットを制御するためのロボット制御装置であり、前記第2装置は、前記ロボットを駆動するモータの位置を検出するためのエンコーダ、または、前記ロボット制御装置を教示するための教示装置である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の断線徴候検出システム。
【請求項1】
通信ケーブルを介して互いに通信可能に接続される第1通信部を含む第1装置および第2通信部を含む第2装置を備え、
前記第1装置および前記第2装置の少なくとも一方は、前記通信ケーブル上で送受信される差動信号に基づくコモンモード信号を監視するとともに、監視結果に基づいて前記通信ケーブルに断線の徴候があるか否かを検出する断線徴候検出部を含む、断線徴候検出システム。
【請求項2】
前記断線徴候検出部は、前記差動信号に基づくコモンモード信号の基本周波数成分、および、前記差動信号に基づくコモンモード信号の基本周波数の奇数倍の周波数を有する複数の高調波成分のうちの少なくとも1つの振幅を監視するとともに、監視結果に基づいて前記通信ケーブルに断線の徴候があるか否かを検出するように構成されている、請求項1に記載の断線徴候検出システム。
【請求項3】
前記断線徴候検出部は、前記差動信号に基づくコモンモード信号の基本周波数成分の振幅を監視するとともに、監視結果に基づいて前記通信ケーブルに断線の徴候があるか否かを検出するように構成されている、請求項2に記載の断線徴候検出システム。
【請求項4】
前記断線徴候検出部は、前記差動信号に基づくコモンモード信号の振幅のピーク値が予め設定されたしきい値を上回る場合に、前記通信ケーブルに断線の徴候があると検出するように構成されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の断線徴候検出システム。
【請求項5】
前記通信ケーブルは、断線していない第1の状態と、断線している一方実質的に通信に使用可能な第2の状態と、断線していることにより実質的に通信に使用不可能な第3の状態と、断線していることにより略完全に通信に使用不可能な第4の状態とにこの順番で断線状態に向かって変化するように構成されており、
前記通信ケーブルが前記第3の状態になる前に前記断線徴候検出部が前記通信ケーブルに断線の徴候があると検出することが可能なように前記しきい値が設定されている、請求項4に記載の断線徴候検出システム。
【請求項6】
前記第1装置および前記第2装置の少なくとも一方は、前記断線徴候検出部により前記通信ケーブルの断線の徴候が検出された場合に、前記通信ケーブルに断線の徴候があることをユーザに対して通知する制御を行う制御部をさらに含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の断線徴候検出システム。
【請求項7】
前記第1装置および前記第2装置の少なくとも一方は、前記制御部に加えて表示部をさらに含み、
前記制御部は、前記断線徴候検出部により前記通信ケーブルの断線の徴候があると検出された場合に、前記通信ケーブルに断線の徴候があることを前記表示部に表示してユーザに対して通知する制御を行うように構成されている、請求項6に記載の断線徴候検出システム。
【請求項8】
前記断線徴候検出部は、前記第1装置と前記第2装置との間でデータ通信が行われる際に前記通信ケーブル上で送受信されるデータ信号のプリアンブル期間におけるコモンモード信号を監視するとともに、監視結果に基づいて前記通信ケーブルに断線の徴候があるか否かを検出するように構成されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の断線徴候検出システム。
【請求項9】
前記第1装置と前記第2装置との間でデータ通信が行われていない期間は、前記通信ケーブル上で一定の周波数を有するダミー信号が送受信されるように構成されており、
前記断線徴候検出部は、前記ダミー信号に基づくコモンモード信号を監視するとともに、監視結果に基づいて前記通信ケーブルに断線の徴候があるか否かを検出するように構成されている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の断線徴候検出システム。
【請求項10】
前記第1装置の前記第1通信部と前記第2装置の前記第2通信部とは、複数の通信ケーブルにより通信可能に接続されており、
前記断線徴候検出部は、前記複数の通信ケーブルに対応するように複数設けられており、
前記複数の断線徴候検出部は、それぞれ、対応する通信ケーブル上で送受信される前記ダミー信号に基づくコモンモード信号を監視するとともに、監視結果に基づいて前記対応する通信ケーブルに断線の徴候があるか否かを検出するように構成されている、請求項9に記載の断線徴候検出システム。
【請求項11】
前記第1装置および前記第2装置の両方が、前記断線徴候検出部を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の断線徴候検出システム。
【請求項12】
前記第1装置は、ロボットを制御するためのロボット制御装置であり、前記第2装置は、前記ロボットを駆動するモータの位置を検出するためのエンコーダ、または、前記ロボット制御装置を教示するための教示装置である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の断線徴候検出システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2012−103027(P2012−103027A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249506(P2010−249506)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】
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