説明

断路器

【課題】断路器の絶縁性能を高めるとともに、断路部の金属容器径の縮小化を可能とする。
【解決手段】絶縁性ガスを封入した密封容器内に、アークコンタクトと、前記アークコンタクトを包囲して配置した固定側接触子と、前記固定接触子を包囲して配置したシールドと、前記固定側接触子および前記アークコンタクトに接触するとともに前記アークコンタクトとの開極に先行して前記固定側接触子から開離する可動子と、前記アークコンタクトを軸方向に前記可動子に追従させる追従手段とを備えた断路器において、前記アークコンタクトは電気的に直列に挿入されたインダクタンスを有する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変電所や開閉所等に設置される開閉装置、特にその断路器部分に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガス絶縁開閉装置を構成する断路器や遮断器などの開閉装置においては、開閉時に高周波の開閉サージが発生する可能性が高い。特に、開閉速度の比較的遅い断路器においては、開極動作中に再点弧が発生しやすい。この再点弧による発生サージは、数MHzから数十MHzと周波数が高く、その発生頻度も比較的高い。また、このような発生サージは周波数が高い急峻な過電圧であるために、断路器の絶縁性能低下の問題が生じる。
【0003】
この絶縁性能低下の原因となるサージ発生を抑制するための方法の一つとして、例えば、サージが発生する箇所の近傍に抵抗体を配置して急峻なサージ電圧の波高値を低下させることが考えられている(特許文献1参照。)。
【0004】
しかし、この方法では、断路器部分が大型化するという問題がある。この問題を解決するために、インダクタンスコイルを断路器の固定接触子部分に設け、断路器部分の大型化を防ぎつつ開閉サージ電圧の波高値を低下させる方法が考えられている(特許文献2参照。)。
【0005】
図16に、特許文献2に係る開閉装置の一実施例を示す。この開閉装置は、固定電極101に直列接続してインダクタンスコイル102を設け、インダクタンスコイル102はさらにシールド103に接続されているところに特徴がある。この構成から、可動コンタクト104がチューリップコンタクト105から開離した後は、アーク放電がシールド103からインダクタンスコイル102を経て固定電極101に流れることとなる。これにより断路器部分の大型化を防ぎつつ開閉サージ電圧の波高値を低下させることが可能となる。また、この構成では、インダクタンスコイル102には開極動作時にしか電流が流れない構造となっている。したがって、サージ低減を実現するインダクタンスの効果がサージが発生しやすい開極動作時にだけ働くようになっている。これにより効果的に高周波のサージ電圧を抑制することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平3−129615号公報
【特許文献2】特開平5−342952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記構成によれば、シールドがアークに曝されることとなる。その結果、シールドが劣化・消耗することで絶縁性の低下につながる恐れがある。
【0008】
また、この構成によれば、シールドがアークに曝されるため、該シールドに高電圧がかかることとなる。このためシールドと金属容器との間に一定の距離をとらなければ絶縁性能を保つことができない。その結果、金属容器の小型化に限界がある。
【0009】
さらに、この構成によれば、アークに曝されることによるシールドの劣化・消耗を抑えるため、シールドを溶融の少ない高価な金属材料を用いて製造する必要がある。このため製造コストがかさむという問題が生じる。
【0010】
本発明の目的は、サージ低減を実現するインダクタンスの効果が、サージが発生しやすい開極動作時にだけ働くという効果を維持しつつ、上記発明の問題点を解決することである。すなわち、断路器の絶縁性能を維持するとともに、金属容器径のさらなる縮小化および製造コストの低減を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、絶縁性ガスを封入した密封容器内に、アークコンタクトと、前記アークコンタクトを包囲して配置した固定側接触子と、前記固定側接触子を包囲して配置したシールドと、前記固定側接触子および前記アークコンタクトに接触するとともに前記アークコンタクトとの開極に先行して前記固定側接触子から開離する可動子と、前記アークコンタクトを軸方向に前記可動子に追従させる追従手段とを備えた断路器において、前記アークコンタクトは電気的に直列に挿入されたインダクタンスを有することを特徴とするものである。
【0012】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の発明において、前記追従手段がバネと、前記バネを可動自在に支える部材であって前記アークコンタクトと前記固定側接触子を電気的に接続するもので構成されることを特徴とする。
【0013】
また、請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記インダクタンスは導体がコイル状に巻かれたものであることを特徴とする。
【0014】
また、請求項4に係る発明は、絶縁性ガスを封入した密封容器内に、アークコンタクトと、前記アークコンタクトを包囲して配置した固定側接触子と、前記固定接触子を包囲して配置したシールドと、前記固定側接触子および前記アークコンタクトに接触するとともに前記アークコンタクトとの開極に先行して前記固定側接触子から開離する可動子と、前記アークコンタクトを軸方向に前記可動子に追従させるバネと、前記バネを可動自在に支える部材であって、前記アークコンタクトと前記固定側接触子を電気的に絶縁するもので構成される断路器において、前記バネはアークコンタクトに電気的に直列に挿入されたインダクタンスとして働くことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1乃至3の構成によれば、アークコンタクトにアークが点弧され、シールド部がアークに曝されるおそれが低減する。その結果、シールドが劣化・消耗するおそれが低減し絶縁性能の維持が可能となる。
【0016】
また、シールド部にアークが点弧するおそれを低減させ、シールドに高電圧がかかるのを防ぐことができるため、シールドと金属容器の間の距離が短くても絶縁性能を維持することが可能となる。これによって金属容器1のさらなる小型化が実現可能となる。
【0017】
また、シールド部がアークに曝されるおそれが低減するため、シールドを安価な材料であるアルミニウム等で構成することが可能となる。これによって製造コストの低減が可能となる。
【0018】
さらに、シールド部にアークを点弧しないため、シールドを絶縁材料で被覆することが可能となる。これによって更なる絶縁性の向上を実現することが可能となる。また、シールド部から金属容器までの絶縁距離をさらに短くすることが可能となり、金属容器の径を更に縮小化することが可能となる。
【0019】
請求項4の構成は、アークコンタクトとバネをそれぞれ別個に作り、互いを直列につなぎ合わせることで容易に製造することができる。これは請求項1乃至3の構成がアークコンタクト自体にコイル構造をもたせる構成であることと比べると製造の負担を低減することにつながる。したがって、請求項4の構成によれば、請求項1乃至3の構成の効果に加え、製造工数の削減および製造コストの削減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は本発明の一実施例である断路器の開極直後の状態を示す断面図である。
【図2】図2は本発明の一実施例である断路器の閉極状態を示す断面図である。
【図3】図3は本発明の一実施例である断路器の開極状態を示す断面図である。
【図4】図4は図1の断路部における拡大断面図である。
【図5】図5は図1の断路部における正面図である。図5(a)は固定側を可動側から見た正面図であり、図5(b)は可動側を固定側から見た正面図である。
【図6】図6は第1の実施形態に用いられるアークコンタクトの拡大断面図である。
【図7】図7は発生する再点弧サージ波形の一例を示す図である。
【図8】図8は実施例1に係るアークコンタクトを適用した場合に発生するサージ波形を示す図である。
【図9】図9は回路インピーダンスに対するサージ電圧の関係を示す図である。
【図10】図10は本発明におけるアークコンタクト部の電位とシールド部の電位の比較を示す図である。
【図11】図11は電極被覆の有無による絶縁破壊電圧の比較を示す図である。
【図12】図12は本発明に係る断路器の第2の実施形態を示す図である。
【図13】図13は本発明に係る断路器の第3の実施形態を示す図である。
【図14】図14は本発明に係る断路器の第4の実施形態を示す図である。
【図15】図15は第4の実施形態に用いられるアークコンタクトの拡大断面図である。
【図16】図16はシールドに直列にインダクタンスコイルを設けた従来の断路器の断路部構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0022】
図1乃至図3は本発明の一実施例である断路器を示す断面図である。図1は断路器の開極直後の状態を示し、図2は断路器の閉極状態を示し、図3は断路器の開極状態を示す。図4は図1の断路部における拡大断面図である。また、図5(a)は断路部の固定側を可動側から見た正面図であり、図5(b)は断路部の可動側を固定側から見た正面図である。図6はアークコンタクトの拡大断面図である。
【0023】
実施例1の断路器は、金属容器1、可動子2、アークコンタクト3A、バネ4、固定側接触子5a、可動側接触子5b、固定側シールド6a、可動側シールド6b、固定側導体7、可動側筒状導体8、絶縁スペーサ10a、10b、操作ロッド12、支持枠15A、高電圧導体17a、17b、中心導体18a、18bで構成される。
【0024】
密閉容器1には、乾燥空気、SF6ガスなどの絶縁媒体が封入されている。また、密閉容器1内には、絶縁スペーサ10a、10bによって密閉容器1から電気的に絶縁した状態で高電圧導体17a、17bが支持されている。
【0025】
絶縁スペーサ10aの中心導体18aには、固定側導体7を介して固定側接触子5aが取り付けられている。この固定側接触子5aは、その先端の内側が可動接触子2の外側と接するように配置される。この固定側接触子5aの外周部には、電界緩和シールド6aが配置されている。この電界緩和シールドは、アルミニウム等の導電金属で作られ、その周りにエポキシ系の絶縁材料等で被覆が施されている。また、この固定側接触子5aの内側には、支持枠15Aおよびアークコンタクト3Aを支持するバネ4が取り付けられている。アークコンタクト3Aの先端部に位置するアーク点弧部21は、開極直前において可動子2のみと接触し通電するよう、開極状態において固定側接触子5aの先端部から突出するように構成される。
【0026】
一方、絶縁スペーサ10bの中心導体18bには、可動側筒状導体8を介して可動側接触子5bが支持されている。この可動接触子5bの外周部には、電界緩和シールド6bが配置されている。この電界緩和シールドは、固定側の電界緩和シールド6aと同様に構成される。可動子2は、固定側接触子5aと可動側接触子5b間を開閉可能に橋絡している。この可動子2は、その軸線上を開閉動作するように絶縁操作ロッド12の一端側、つまり自由端側に接触連結されている。この絶縁操作ロッド12の他端側には、気密を保持しながら密封容器1外に導出した回転軸19が連結されている。また、この回転軸19には図示しない操作器が連結されている。
【0027】
実施例1においては、高周波サージの発生を抑制するために、アークコンタクト3Aの一部をインダクタンスとなるコイル形状で構成している。このアークコンタクトの詳細を図6に示す。図6のアークコンタクトは、アークが点弧するアーク点弧部21と、コイルを形成するコイル部22と、支持枠15Aと電気的に接触する接触部23と、これらそれぞれをコイルの巻き線内部で支持する支持絶縁部24とで構成される。アーク点弧時には、電流は、アーク点弧部21、コイル部22、接触部23を通じて支持枠15Aと固定側導体7に流れるため、それぞれが電気的に接続されている必要がある。
【0028】
アーク点弧部21のアークにさらされる部分は、アークによる消耗を抑えるため、銅にタングステン、クロムなどを添加した耐アーク性の合金を用いるのが好ましい。一方、コイル部22や接触部23は、サージ発生時に電流を流す必要があるため、例えば、銅、アルミニウム又はこれらの合金などの良導電性の金属材料で構成される。また、支持絶縁部24は、上記各要素を支持するためにFRP材やエポキシ樹脂などの強度が十分な絶縁材で構成される。
【0029】
以下、実施例1の動作について説明する。図2は断路器の閉極状態を示し、図3は断路器の開極状態を示している。また、図1は断路器の開極直後の状態を示している。
【0030】
図2に示す閉極状態では、可動子2がアークコンタクト3Aおよび固定側接触子5aと接している。この場合、固定側導体7と可動側筒状導体8の間には、固定側接触子5a、可動子2、および可動側接触子5bを介して電流が流れる。アークコンタクト3Aのコイル部22には系統電流は殆ど流れないので、インダクタンスによるロスは非常に少ない。
【0031】
一方、図1に示す開極直後の状態では、以下に示すように、固定側接触子5aには電流が流れず、アークコンタクト3Aを介して電流が流れる。開極動作では、可動子2が図2の閉極状態から、操作ロッド12が時計回りに回転するのに応じて、絶縁スペーサ10b方向に摺動する。このとき、アークコンタクト3Aは、支持枠15A沿いにバネ4により押し出されることで、金属容器1の絶縁スペーサ10b方向に可動子2と一体になって移動する。可動子2がさらに移動すると、固定側接触子5aと可動子2の接触が外れ、可動子2がアークコンタクト3Aのみと接触する状態となる。
【0032】
さらに可動子2が絶縁スペーサ10b方向に移動すると、アークコンタクト3Aは、支持枠15Aの端部で係止する。さらに可動子2が移動すると、図1に示すようにアークコンタクト3Aと可動子2の接触が外れてアークが点弧する状態となる。
【0033】
図4に可動子2の左端が固定側シールド6aの右端まで変位した状態を示す。この状態では、アーク点弧部21と可動子2の先端との間隙dが可動子2と固定側シールド6aとの間隙Dよりも小さくなるように設定されている。このような寸法関係にしておけば、アークは小さい間隙dに生じ、固定側シールド6aと可動子2の間に生ずることはない。したがって、アーク電流は専らアーク点弧部21からコイル部22に流れるので、コイル部22のインダクタンスにより、アークに起因するサージ電圧の波高値は抑制される。
【0034】
図1の状態からさらに可動子2が絶縁スペーサ10b方向に移動し、アークコンタクト3Aと可動子2間の絶縁距離が十分に広がると、放電が発生しない状態となり電流が遮断される。これにより図3に示す開極状態となる。
【0035】
図7はインダクタンスを有しない通常のアークコンタクトを使用した場合に発生する再点弧サージ波形の一例を示す図である。縦軸は電圧(p.u.)、横軸は経過時間(ns)を表す。この図は、サージ発生時に数MHz以上の高周波電圧が発生していることを示している。発生する電圧のピーク値は回路条件に依存するが、最大で運転電圧の約2.5倍の電圧が発生する場合がある。
【0036】
図8に、実施例1に係るアークコンタクトを適用した場合に発生するサージ波形を示す。縦軸は電圧(p.u.)、横軸は経過時間(ns)を表す。図8は、本発明のアークコンタクトを適用した以外は、図7と同じ回路条件で発生したサージ波形を示している。
【0037】
図8と図7にそれぞれ示されたサージ波形を比較すると、アークコンタクトが有するインダクタンスの効果により、図8の波形は穏やかなものとなっている。つまり、サージの波頭の振動波形が減衰することで、断路器の開極動作時に発生する過電圧を抑制して絶縁性能の低下を防ぐことが可能であることが分かる。
【0038】
図9は、回路インピーダンスに対するサージ電圧の関係を示している。縦軸はサージ電圧(p.u.)、横軸はインピーダンス(Ω)を表す。図9から分かるように、インピーダンスを70Ω以上にすれば、サージ電圧を2p.u.以下にすることができ、インピーダンスを200Ω以上にすれば、サージ電圧を1.5p.u.以下にすることができる。なお、2p.u.は対地電圧波高値が運転電圧の2倍であることを意味する。つまり、アークコンタクトに適用するインダクタンスのインピーダンスを高くすることでサージ電圧を低減させることが可能である。
【0039】
以上述べたように、実施例1に係る断路器は、アークコンタクト3Aの一部をインダクタンスとなるコイル形状で構成しており、アークコンタクト3Aには開極動作時にしか電流が流れない構造となっている。これにより、サージ低減を実現するインダクタンスの効果が、サージが発生しやすい開極動作時にだけ働くようになっている。したがって、効果的に高周波のサージ電圧を抑制することが可能となる。
【0040】
また、コイル形状をアークコンタクト3Aに配置しているため、サージを抑制する機構を他に設ける場合に比べて、断路器を大型化することなくサージ低減効果を実現し、絶縁性能を確保することが可能となる。
【0041】
さらに、本願の発明は、以下に述べる点においても前述の特開平5−342952号公報に係るシールドに直列にインダクタンスコイルを設ける発明(以下、従来例という。)と比べ有利な効果を奏する。
【0042】
図10は、本発明におけるアークコンタクト部の電位とシールド部の電位の比較を示す図である。縦軸はそれぞれの部位にかかる電位(p.u.)、横軸はインピーダンス(Ω)を表す。インピーダンスが100Ωと仮定すると、アークコンタクト電位は約1.75p.u.であるのに対し、シールド電位は約1.3p.u.となる。また、インピーダンスが200Ωと仮定すると、アークコンタクト電位は約1.5p.u.であるのに対し、シールド電位は約1.25p.u.となる。
【0043】
すなわち、アークが発生するアークコンタクト部に比べてシールド部の電位は大きく低下することになる。特に再点弧時には高周波サージが発生するため電圧降下は顕著になる。アークコンタクト部はシールド部の内側に存在するため、アークコンタクト部の電位が高くても、インダクタンス分だけシールド電位は低くなる。そのシールド部と対地間の絶縁性能を確保することで高電圧部と対地(接地)との絶縁性能を満足することができる。
【0044】
一方、従来例においてはアークが直接シールドに点弧するため、シールド電位が高周波サージの発生電位となる。したがって、シールドと対地間の絶縁性能を十分に確保する必要がある。
【0045】
以上より、実施例1に係る断路器は、従来例に比べシールドにかかる電位を低減することが可能となり、絶縁性能が確保される。また、シールド部から金属容器までの絶縁距離を短くすることが可能となり、金属容器の径を縮小することが可能となる。このため、従来例と比べ金属容器1のさらなる小型化が可能となる。
【0046】
また、実施例1に係る断路器は、シールドにアークを点弧しないためシールドを安価な導電材料であるアルミニウム等で構成することが可能になる。一方、シールドにアークを点弧させる従来例の場合は、安価な導電材料であるアルミニウム等でシールドを構成することはできず、溶融の少ない高価な金属材料を用いる必要がある。したがって、実施例1に係る断路器は、従来例と比べて製造コストを低減することが可能となる。
【0047】
さらに、実施例1に係る断路器は、シールド部にアークを点弧しないため、シールド部を絶縁部材で被覆することが可能となる。一方、従来例の場合、シールド部を絶縁部材で被覆しても、シールドがアークに曝されるため被覆が溶けてしまい短期間に被覆の効果が失われる。
【0048】
図11は電極被覆の有無による絶縁破壊電圧の比較を示す図である。ここでは被覆材料としてエポキシ系の絶縁材料を用い、厚さ数百μmの絶縁被覆を施している。図11からわかるように被覆がある場合には被覆がない場合に比べて絶縁破壊電圧が約20%上昇している。つまり、図1のシールド6a、6bに絶縁被覆がある場合には絶縁被覆がない場合と比べて極間距離および対地間距離を約20%低減させることが可能である。
【0049】
実施例1に係る断路器は、この点においても従来例と比べ絶縁性の向上を実現することが可能である。また、シールド部から金属容器までの絶縁距離を更に短くすることが可能となる。したがって金属容器の径を更に縮小することが可能となる。
【実施例2】
【0050】
以下に、本発明に係る断路器の第2の実施形態を図12に基づいて説明する。なお、図1との同等物には同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0051】
図12は、実施例2に係る断路器の固定側の拡大断面図である。この構成は、アークコンタクト部にコイルを設けず、アークコンタクト3Bと固定側導体7の間にコイルバネ16を設け、このコイルバネ16に電流が流れるような構成としたことを特徴とする。すなわち、サージ発生時にコイルバネ16に電流を流すことにより、サージ低減効果となるインダクタンスとして機能させる構成を特徴とする。
【0052】
この場合、アークコンタクト3Bを軸方向に可動させるための支持枠15Bは電流が流れないように絶縁材で構成する。開極動作時において固定側導体7と可動側筒状導体8の間には、コイルバネ16、アークコンタクト3B、可動子2、可動側接触子5bに電流が流れることになる。これにより発生するサージを低減することが可能となる。
【0053】
実施例2に係る構成は、アークコンタクト3Bとコイルバネ16をそれぞれ別個に作り、互いを直列につなぎ合わせることで製造することができる。すなわち、実施例2に係る構成は、アークコンタクト自体がコイル構造を有する実施例1の構成と比べて容易に製造することが可能となる。したがって、実施例1の構成の効果に加え、製造コストの削減、製造工数の削減という効果が生じる。
【実施例3】
【0054】
以下に、本発明に係る断路器の第3の実施形態を図13に基づいて説明する。なお、図1との同等物には同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0055】
図13に示す実施例3の構成は、実施例2の構成と比べると、支持枠15Bを省いてアークコンタクト3Cがコイルバネ16だけで支えられる構造となっているところに特徴がある。
【0056】
支持枠15Bを省くことで実施例3に係るアークコンタクト3Cとコイルバネ16をあわせた長さを実施例2に係るアークコンタクト3Bの長さとほぼ同じにすることができる。これによって実施例3に係る構成は実施例2に係る構成に比べ、アークコンタクト3C、固定側接触子5a、固定側シールド6aそれぞれの長さを短くすることが可能となる。その結果、タンクの軸方向の長さを短くすることが可能となる。
【0057】
また、支持枠15Bを省くことで実施例2に係る構成に比べ部品点数の削減、製造工数の削減および製造コストの削減が可能となる。
【0058】
さらに、実施例3の構成は、可動子2の先端部にアークコンタクト3Cが固定できるような窪みが設けられていてもよい。これにより、支持枠15Bを省いてもアークコンタクト3Cと可動子2が接触している間はアークコンタクト3Cを可動子2の中心軸上に確実に移動させることが可能となる。なお、窪みの形状は、その角部の電界を緩和するため任意の曲率を有する形状であることが望ましい。
【実施例4】
【0059】
以下に、本発明に係る断路器の第4の実施形態を図14に基づいて説明する。なお、図1との同等物には同一符号を付して詳細な説明を省略する。図14の構成は、アークコンタクト3Dに磁性体を設けた構造となっているところに特徴がある。
【0060】
図15は、実施例4に係る断路器のアークコンタクト3Dの拡大断面図である。このアークコンタクトは、アーク点弧部21、磁性体部25、接触部23、アーク点弧部21と接触部23つなぐ導体26で構成されている。開閉時にアーク点弧部21にアークが点弧したときには、アーク点弧部21、導体26、接触部23を通して支持枠15Cと固定側導体7に電流が流れる。
【0061】
磁性体は導体26の周りに円筒状に配置されており、導体26にサージに伴う高周波電流が流れるときにそれを熱エネルギーに変換して高周波電流を低減する。磁性体は透磁率が高いほど高周波において磁気抵抗が大きくなり、通り抜けようとする磁束が熱エネルギーに変換されることにより高周波信号を低減する。
【0062】
このような透磁率の高い材料としては鉄、フェライト、珪素鋼板などがあげられる。これらの材料をアークコンタクト部に配置することにより、実施例1乃至3で説明したようなインダクタンスと同等の効果が期待できる。
【0063】
また、実施例4に係る構成は、磁性体25を導体26の周りに円筒状に配置することで容易に製造することができる。実施例4に係る構成は、実施例1乃至3の構成と比べて製造が容易であるという効果を奏する。また、製造工数の低減を図ることが可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 金属容器
2 可動子
3A,3B,3C,3D アークコンタクト
4 バネ
5a 固定側接触子
5b 可動側接触子
6a 固定側シールド
6b 可動側シールド
7 固定側導体
8 可動側筒状導体
15A,15B,15C 支持枠
16 コイルバネ
21 アーク点弧部
22 コイル部
23 接触部
24 支持絶縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性ガスを封入した密封容器内に、
アークコンタクトと、
前記アークコンタクトを包囲して配置した固定側接触子と、
前記固定側接触子を包囲して配置したシールドと、
前記固定側接触子および前記アークコンタクトに接触するとともに前記アークコンタクトとの開極に先行して前記固定側接触子から開離する可動子と、
前記アークコンタクトを軸方向に前記可動子に追従させる追従手段とを備えた断路器において、
前記アークコンタクトは電気的に直列に挿入されたインダクタンスを有することを特徴とする断路器。
【請求項2】
前記追従手段は
バネと、
前記バネを可動自在に支える部材であって、前記アークコンタクトと前記固定側接触子を電気的に接続するもので構成されることを特徴とする、請求項1に記載の断路器。
【請求項3】
前記インダクタンスは導体がコイル状に巻かれたものであることを特徴とする、請求項1または2に記載の断路器。
【請求項4】
絶縁性ガスを封入した密封容器内に、
アークコンタクトと、
前記アークコンタクトを包囲して配置した固定側接触子と、
前記固定接触子を包囲して配置したシールドと、
前記固定側接触子および前記アークコンタクトに接触するとともに前記アークコンタクトとの開極に先行して前記固定側接触子から開離する可動子と、
前記アークコンタクトを軸方向に前記可動子に追従させるバネと、
前記バネを可動自在に支える部材であって、前記アークコンタクトと前記固定側接触子を電気的に絶縁するもので構成される断路器において、
前記バネはアークコンタクトに電気的に直列に挿入されたインダクタンスとして働くことを特徴とする断路器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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