説明

新しいデンプン組成物およびベークド製品を製造する方法

本発明は、(a)アミロマルターゼ処理デンプン、(b)アミロペクチンデンプン、および(c)任意に低DEマルトデキストリンを含んでなる新しいデンプン組成物に関する。さらに本発明は、任意にレシピに必要な脂肪量を低減させた、ベークド製品を製造するための新しいデンプン組成物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、新しいデンプン組成物、この新しい組成物を使用して例えばケーキなどのベークド製品を製造する方法、そしてこの新しい方法で製造されたケーキに関する。
【0002】
[背景技術]
ケーキは長期にわたり知られており、多数の種類が作られる。ほとんどのケーキは小麦粉からできており、したがっていくらかの量のグルテンを有し、それはケーキの食感が固すぎないことを確実にするために特別な注意が必要であることを意味する。ひとたび小麦粉を添加したら、ケーキ成分はグルテン展開を避けるために可能な限り短時間混合される。これは、グルテンをできる限りかき混ぜることを目的とするパンなどの小麦粉からできた堅固な食品と著しく異なる。ケーキ用に選択される小麦粉は、自然にグルテン含量が低い、またはグルテンが弾性を生じない小麦粉であることが多い。
【0003】
典型的なケーキ成分は、小麦粉、卵、および砂糖である。任意に、化学膨脹剤、牛乳構成要素、乳化剤、塩、安定剤、水、および/または例えばバター、マーガリンおよび/または油などの脂肪が添加される。
【0004】
脂肪を添加して混合中に空気を閉じ込め、潤滑のために、しっとり感および柔らかさの観点から総体的な食感品質を改善して、完成品の構造を改善し、および/または貯蔵寿命を延長する。ケーキ中の脂肪の有益な効果は別にして、これらの成分の使用に関わるいくつかの不都合がある。
【0005】
例えばパウンドケーキ中に存在するバター/マーガリンなど、ケーキのタイプによっては脂肪含量が非常に高くなり得る。このタイプのケーキは、肥満症を引き起こし得るカロリーブースターである。
【0006】
今日の現代社会の消費者は、カロリー摂取量と身体的運動の間の不均衡に直面している。したがって過体重人口の百分率が上昇しており、ますます多くの人々が肥満になっている。WHOの数値(2003年)によれば10億人の成人が過体重であり、3億人が病的肥満である。肥満症は、心臓血管疾患、II型糖尿病などの広範囲の疾患と関係がある。したがって例えばケーキなどの食品の脂肪、砂糖、およびその他の高カロリー構成要素を置き換えることによって、カロリー摂取量を低下させる必要性の高まりは明らかである。
【0007】
さらにいくつものケーキレシピでは、製品の融解特性に寄与する飽和脂肪酸量の比較的高い脂肪が使用される。しかしこのような飽和脂肪酸の摂取はまた、心臓血管疾患の発症と直接関連付けられている。例えば典型的なパウンドケーキは100グラムのケーキあたり約24グラムの脂肪を含有し、その内約8グラムが飽和脂肪である(http://www.caloriechecker.nl、2008年)。したがって飽和脂肪酸摂取量の削減もまた所望される。
【0008】
この問題を解決する一方法は、レシピ中の脂肪(の一部)を除去することである。しかしレシピから脂肪の一部を除去した場合、生地は粘稠度が低下し、場合によっては安定性も低下する。焼かれたケーキはより小さな体積とより稠密な構造を有し、テクスチャーがはるかにぱさつき脆くなる。水分で置き換えると、粘つく「生焼け」の食感が得られる。
【0009】
例えば通常のケーキ中で、食感およびテクスチャーなどの所望のケーキ特性を改善することが本発明の目的である。少なくとも食感およびテクスチャー特性などの所望のケーキ特性を保ちながら、ケーキレシピ中の脂肪量を低下できるようにすることが本発明の別の目的である。
【0010】
脂肪代替物としてのデンプンおよび誘導体の作用は良く知られている。例えば米国特許4510166号明細書では、αアミラーゼ分解デンプンの脂肪模倣特性について記載される。米国特許5711986号明細書では、脱分枝デンプンを用いて脂肪置換が達成されている。国際公開第2008071744号パンフレットでは、アミロマルターゼ処理デンプンを使用した乳製品中の脂肪置換について記載される。しかしデンプン誘導体を使用した脂肪置換は、決して単純でも容易でもない。脂肪、ひいては脂肪代替物に対する機能的要件は、食品の品目毎に顕著に異なる。特定の品目中の脂肪の置換は予測不可能であり、試行錯誤の問題であることが多い(例えば「Fat Substitute Update」Food Technology 1990年3月,92〜97頁を参照されたい)。
【0011】
[発明の説明]
新しいデンプン組成物を使用することで、意外にも本発明の目的を達成できることが分かった。本発明に従った新しいデンプン組成物は、例えばケーキを製造する方法で使用できる。本発明に従ったデンプン組成物は、
(a)アミロマルターゼ処理デンプン、
(b)アミロペクチンデンプン、および
(c)任意に低DEマルトデキストリン
を含んでなる。
【0012】
本発明はまた、
a.アミロマルターゼ処理デンプン(構成要素(a))、
b.アミロペクチンデンプン(構成要素(b))、および
c.任意に低DEマルトデキストリン(構成要素(c))
を混合してデンプン組成物を形成するステップを含んでなる、デンプン組成物を製造する方法にも関する。
【0013】
適切なアミロマルターゼ処理デンプンは、本明細書に参照として援用する欧州特許第0932444号明細書で開示される。欧州特許第0932444号明細書では、α−1,4、α−1,4グルカノトランスフェラーゼ(α−1,4、α−1,4グルコシルトランスフェラーゼ、アミロマルターゼまたはEC2.4.1.25)の製造、ならびにα−1,4、α−1,4グルコシルトランスフェラーゼ活性を有する酵素のデンプンに対する作用について記載される。「α−1,4、α−1,4グルカノトランスフェラーゼ」、「α−1,4、α−1,4グルコシルトランスフェラーゼ」、および「アミロマルターゼ」は、本明細書中で同義的に使用される。この酵素はデンプンを分解しないが、アミロースをアミロペクチンに再付着させる。
【0014】
得られる生成物は、3%(w/w)を超える水溶液中でゲルを形成する。これらのゲルは本質的に微粒子であるが、常態ではガムおよびその他の親水コロイドと関連付けられる食感を有し、酸分解またはアミラーゼ分解または脱分枝デンプン生成物のゲルとは異なる。アミロマルターゼ処理デンプンのゲルは、およそ70℃で熱可逆性である。「アミロマルターゼ処理デンプン」、「アミロマルターゼ転換デンプン」、および「アミロマルターゼ変性デンプン」は、本明細書中で同義的に使用され、デンプンがアミロマルターゼ活性によって変性されていることを意味する。転換が60〜75℃で起きる場合、好ましくは粘度を低下させる手段が酵素的転換(または変性または処理)に続き得る。所望の粘度低下を達成した後、転換を停止し得る(欧州特許第0932444号明細書参照)。有利にはアミロマルターゼ処理デンプンは、脱分枝酵素で処理されない。脱分岐酵素処理がアミラーゼ断片を含んでなるデンプン製品をもたらすのに対し、本アミロマルターゼ処理デンプンは、添加される脱分岐酵素活性によって形成されるアミラーゼ断片を含まない。
【0015】
アミロマルターゼ処理デンプン製造の一例は、欧州特許第0932444号明細書に記載される。アミロマルターゼ処理デンプンは、ジャガイモデンプンの水中懸濁液から調製し得る(19〜20%w/w)。デンプンを溶解するために、この懸濁液を150〜160℃でジェット調理する。製品を真空内で70℃に冷却する。フラッシュ冷却が好ましい選択肢である。例えば6N HSOを使用して、pHを6.2に調節する。次にアミロマルターゼ(2ATU/gデンプン)を添加した。溶液を70℃で2〜20時間撹拌した。次に溶液を130℃で例えば1〜20秒の短時間ジェット調理し、例えばデンマーク国のAnhydroからのCompactモデル噴霧乾燥機を使用して噴霧乾燥した。
【0016】
アミロマルターゼ処理デンプン(構成要素(a))は、あらゆる種類のアミロース含有デンプンから製造し得る。それは例えばジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプンまたはタピオカデンプンであり得る。高アミロペクチンによる高アミロースデンプン配合物のアミロマルターゼ処理は、本発明の一部であると理解される。それはまた高アミロースデンプンと称されるデンプンからも製造し得る。良く知られている例は、緑豆デンプン、エンドウマメデンプン、高アミロースコーンデンプン、しわエンドウマメデンプンなどのマメ科デンプンである。さらにジャガイモなどの遺伝改変植物からの高アミロースレベルのデンプンが知られている。好ましくはデンプンは、ジャガイモデンプンである。適切なアミロマルターゼ処理ジャガイモデンプンの一例は、オランダ国のAvebeからのEtenia(商標)である。
【0017】
好ましくは本発明に従った組成物は、少なくとも5重量%のアミロマルターゼ処理デンプンを含んでなる(重量%は、構成要素(a)、(b)、および(c)の総乾燥物質重量を基準とする)。より好ましくは、本発明は少なくとも7または10重量%のアミロマルターゼ処理デンプンを含んでなる。一般に本発明に従った組成物は、最高90重量%のアミロマルターゼ処理デンプンを含んでなる。好ましくは本発明に従った組成物は、最高80、最高70、最高60または最高50重量%のアミロマルターゼ処理デンプンを含んでなる。より好ましくは本発明に従った組成物は、最高30重量%のアミロマルターゼ処理デンプン、最も好ましくは最高20重量%のアミロマルターゼ処理デンプンを含んでなる。ここで構成要素(a)、(b)、および(c)の重量%は、構成要素(a)、(b)、および(c)の総重量に対する重量%である。例えば構成要素(d)などの追加的構成要素を添加する場合、構成要素(a)、(b)、(c)、および(d)の総重量は100%よりも高くなる。構成要素(d)などの追加的構成要素の重量%は、構成要素(a)、(b)、および(c)の総重量と比較して示される。
【0018】
アミロペクチンデンプン(構成要素(b))は、もちトウモロコシ、もち米、もち大麦、もちソルガム、もち小麦、およびタピオカやジャガイモなどの根茎および塊茎デンプンのもち性品種などの良く知られている原料に由来し得る。
【0019】
アミロペクチンは、1,000,000以上の平均重合度を有する非常に大型の高度に分枝した分子からなる。商業的に最も重要なデンプンタイプ、すなわちトウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、小麦デンプン、およびタピオカデンプンは、15〜30重量%のアミロースを含有する。本発明に従ったアミロペクチンデンプンは、本明細書で少なくとも95%のアミロペクチンを含有するアミロペクチンデンプンと定義される。
【0020】
アミロペクチンデンプンは、好ましくは根茎または塊茎デンプンから得られる。ジャガイモ塊茎から単離されるジャガイモデンプン顆粒は、通常約20%のアミロースおよび80%のアミロペクチン(乾燥物質の重量%)を含有する。しかし顆粒結合デンプンシンターゼ(GBSS)酵素をコーディングする遺伝子の発現が排除または抑制された、栽培ジャガイモ植物種が知られている。これはGBSS酵素の合成の阻止または制限をもたし、それによってジャガイモ根茎中で(乾燥物質で)95重量%を超えるアミロペクチンからなるデンプン顆粒が形成される。これら特定遺伝子の発現の排除または抑制は、GBSS酵素の生成の阻止または制限をもたらす。これらの遺伝子の排除は、欧州特許第0799837B1号明細書に記載されるようなジャガイモ植物材料の遺伝的改変によって、または劣性突然変異によって実現し得る。その例は、GBSS遺伝子の劣性突然変異を通じてデンプンが実質的にアミロペクチンのみを含有する、ジャガイモのアミロースフリー変異体(amf)である。この突然変異技術については、とりわけJ.H.M.Hovenkamp−Hermelinkら,「Isolation of amylose−free starch mutant of the potato(Solanum tuberosum L.)」,Theor.Appl.Gent.,(1987年),75:217〜221頁、およびE.Jacobsenら,「Introduction of an amylose−free(amf),mutant−into breeding of cultivated potato,Solanum tuberosum L.」,Euphytica,(1991年):53:247〜253頁に記載される。好ましい本発明の実施態様では、アミロペクチンデンプンは、(乾燥物質で)95重量%を超えるアミロペクチンからなるデンプン顆粒を含有するジャガイモ塊茎から得られる。もち性穀物デンプンとは対照的に、アミロペクチン−ジャガイモデンプンは、生成物に特定の特徴を与える化学結合リン酸基を含有する。
【0021】
アミロペクチンデンプン生成のその他の選択肢は、化学、物理または酵素的処理によるデンプン中のアミロースの分離または変性である。
【0022】
本発明のなおもより好ましい実施態様では、アミロペクチンデンプンはアルファ化される(冷膨潤性)。当業者はデンプンをどのようにしてアルファ化するのかを知っている。
【0023】
技術分野で良く知られているエステル化、エーテル化、架橋、分解などの些細な変性は、本発明に組み込まれるものと理解される。
【0024】
適切なアミロペクチンジャガイモデンプンの例は、例えばオランダ国AvebeからのEliane(商標)C100、Eliane(商標)EZ100、およびEliane(商標)100などのElianeデンプンである。
【0025】
好ましくは、本発明に従った組成物は、少なくとも10重量%のアミロペクチンデンプンを含んでなる(重量%は構成要素(a)、(b)、および(c)の総乾燥物質重量を基準にする)。より好ましくは本発明に従った組成物は、少なくとも30、少なくとも40または少なくとも50重量%のアミロペクチンデンプンを含んでなる。好ましくは本発明に従った組成物は、最高95重量%のアミロペクチンデンプンを含んでなる。より好ましくは本発明に従った組成物は、最高93重量%のアミロペクチンデンプンを含んでなる。なおもより好ましくは、本発明に従った組成物は最高90重量%アミロペクチンデンプンを含んでなる。最も好ましくは本発明に従った組成物は、最高85、最高80、最高70または最高60重量%のアミロペクチンデンプンを含んでなる。
【0026】
任意に本発明に従った組成物は、低DEマルトデキストリン(構成要素(c))を含有し得る。デキストロース当量(DE)は、乾燥重量を基準にしてデキストロースとして計算されるシロップ中の還元糖の百分率と定義される。低DEマルトデキストリンは、好ましくは0.1〜10、より好ましくは1〜8のDEを有する、あらゆる低DEマルトデキストリンであり得る。適切な低DEマルトデキストリンの一例は、オランダ国AvebeからのPaselli SA2である。
【0027】
好ましくは本発明に従った組成物は、少なくとも1重量%の低DEマルトデキストリンを含んでなる(重量%は、構成要素(a)、(b)、および(c)の総乾燥物質重量を基準にする)。より好ましくは本発明に従った組成物は、少なくとも1.5、少なくとも4または少なくとも6重量%の低DEマルトデキストリンを含んでなる。好ましくは本発明に従った組成物は、最高60重量%の低DEマルトデキストリンを含んでなる。より好ましくは本発明に従った組成物は、最高50重量%の低DEマルトデキストリンを含んでなる。最も好ましくは本発明に従った組成物は、最高40、最高30、最高20または最高10重量%の低DEマルトデキストリンを含んでなる。
【0028】
マルトデキストリンの使用は、ケーキをふやけさせることなくケーキの含水能力を改善し得る。さらに低DEマルトデキストリンを添加することで、脂肪結晶を模倣し得るより多くの微結晶が添加される。
【0029】
低DEマルトデキストリンは、例えばプルランまたはイソアミラーゼを使用したデンプンの脱分枝によって、またはαアミラーゼと脱分岐酵素の組み合わせによって調製し得る。ここでもデンプンの些細な変性は本発明の一部であるものと理解される。
【0030】
好ましい本発明の実施態様に従って、本発明に従った組成物は、上で示した選択内であって、合計100重量%のこれらの3つの構成要素を与えるあらゆる組成物に組み合わせ得る、一定量のアミロマルターゼ処理アミロペクチンデンプン(a)、アミロペクチンデンプン(b)、および低DEマルトデキストリン(c)を含んでなる。
【0031】
例えば本発明の好ましい一実施態様では、デンプン組成物は、
(a)5〜90重量%のアミロマルターゼ処理デンプン
(b)10〜95重量%のアミロペクチンデンプン
(c)0〜60重量%の低DEマルトデキストリン
を含んでなり、重量%は構成要素(a)、(b)、および(c)の総重量に対する重量%である。
【0032】
本発明に従ったデンプン組成物は、例えば成分の調合、同時噴霧−乾燥、同時ドラム乾燥、凝集および乾燥混合などのいくつかの方法によって生成し得る。
【0033】
本発明の第2の態様では、本発明はケーキなどのベークド製品中における新しいデンプン組成物の使用に関する。本発明に従った組成物は、レシピに0.3〜5重量%の量で添加し得る。好ましくは添加量は0.5〜2重量%、より好ましくは0.7〜1重量%である。
【0034】
普通のケーキ中で、例えばクラム構造および/または体積などの所望のケーキ特性を改善することが本発明の目的である。少なくとも食感およびテクスチャー特性などの所望のケーキ特性を維持しながら、ケーキレシピ中の脂肪量を減らせるようにすることが、本発明の別の目的である。
【0035】
脂肪は、一般に有機溶剤に可溶性であって大部分が水に溶けない広範な化合物群からなる。化学的に脂肪は、一般にグリセロールと脂肪酸のトリエステルである。脂肪はそれらの構造および組成物次第で、通常の室温で固体または液体のどちらであってもよい。「油」、「脂肪」、および「脂質」という言葉は、全て脂肪に言及するために使用されるが、「油」が通常の室温で液体の脂肪に言及するために通常使用されるのに対し、「脂肪」は通常の室温で固体の脂肪に言及するために通常使用される。「脂質」は、その他の関連物質に加えて、液体および固形脂肪の双方に言及するために使用される(出典:ウィキペディア)。本明細書中では、「脂肪」および「油」という表現は同義的に使用される。
【0036】
本発明は、例えばパウンドケーキやバターケーキなどの油分の多いケーキ(shortened cake)を含み、および例えばスポンジケーキ、ビスケットケーキ、ルラード、ジェノワーズ、およびシフォンケーキなどの気泡ケーキを含む全タイプのケーキを網羅する。
【0037】
本発明に従った組成物は脂肪を置き換えるのに使用し得て、それはまたスポンジケーキなど無脂肪ケーキのテクスチャーおよび食感を増大させるのにも使用し得る。本発明に従った組成物をケーキレシピで使用すると、所望のさくさく感を保ちながらより滑らかなテクスチャーのケーキが得られる。
【0038】
スポンジケーキは、小麦粉、砂糖、および卵(および任意に化学膨脹剤、牛乳構成要素、乳化剤、塩、および安定剤)ベースのソフトケーキの一種である。唯一存在する脂肪は卵黄からのものであり、それは時折卵白とは別に添加される。それはその他のタイプのケーキおよびデザートのベースとして使用されることが多い。基本のスポンジケーキは、卵と砂糖が軽質でクリーム状になるまでそれらを一緒に泡立て、次に小麦粉を注意深くふるいにかけて混ぜ込むことによって作られる(良好な膨張のためには、卵混合物中に取り込まれた空気で十分であり得るが、小麦粉に少量のベーキングパウダーを混合してもよい)。時折、卵黄を最初に砂糖と一緒に泡立てる一方、後から混ぜ合せるために卵白を別に泡立てる。次に混合物を選択されたケーキ型に注ぎ入れて焼く。混合物は調理後に冷める前は、依然として可撓性である。これによってスイスロールのような変種の創出が可能になる。この基本レシピはマドレーヌなどの多数のおやつおよびプディングで使用される。
【0039】
パウンドケーキは伝統的に各1ポンドの小麦粉、バター/マーガリン、卵、および砂糖から調製され、任意に化学膨脹剤、牛乳構成要素、乳化剤、塩、および安定剤が補われる。
【0040】
シフォンケーキでは、バター/マーガリンが油によって置換されている。パウンドまたはスポンジケーキと比較して、砂糖および卵黄含量は低減されており、卵白含量は増大されている。
【0041】
本発明に従って可能な低減脂肪量は、ケーキのタイプ毎に異なる。当業者は、ケーキレシピ中に通常存在する脂肪量を知っている。
【0042】
一般に脂肪量の低減は、少なくとも10%に達し得る。より好ましくは脂肪量の低減は、少なくとも20%達し得て、なおもより好ましくは低減は少なくとも30%に達し得る。使用される脂肪量の少なくとも50%の低減さえも達成し得ることが示されている。意外にも本発明に従った組成物を使用することで、パン類製造業者は少なくともケーキの生地粘度、テクスチャー、および食感を保てることが発見された。
【0043】
少なくとも保つと言う用語は、特質が保たれるかまたは改善されることを示すために、本明細書で使用される。
【0044】
特質が保たれ、改善されまたは劣化するかどうかの測定は、一般に、本発明に従った組成物を含有しないオリジナルレシピで生地および/またはケーキを調製し、本発明に従った組成物と任意により少ない脂肪とを含有するレシピで別の生地および/またはケーキを調製して、特定の特質を比較することで測定される。両者の特性が実質的に同一であれば特質は保たれ、それらが互いに異なれば改善または劣化が起きている。下記で言及される全特性について、測定法、ならびにどのような場合に特質が改善されたと見なし得るのかが提示される。
【0045】
生地粘度は、International Association of Cereal Chemistry(ICC)およびAmerican Association of Cereal Chemistry(AACC 54−2,ICC 115)に従って、標準法によりファリノグラフを用いて測定し得る。
【0046】
生地粘度が改善されているのかまたは劣化しているのかどうかは、例えば脂肪含有量が低減され、脂肪が同重量の水および本発明に従った組成物によって置換されている、本発明に従った組成物を用いて調製された生地と、脂肪含有量が低減され、脂肪が同一重量の水によって置換されている、本発明に従った組成物なしで調製された生地とを比較することで測定し得る。双方の生地で生地粘度が同一であれば、それは保たれている。生地粘度が増大していれば、それは改善されている。
【0047】
見かけの密度は、予め定められた体積の生地を秤量することで測定できる。それが低下していれば、見かけの密度は改善されている。
【0048】
ケーキのクラム柔らかさは、熟練した試験パン職人によって経験的に評価され、または当該技術分野で知られているようなテクスチャー分析器(例えばTAXT2)の使用によって測定される。実際は、クラムの堅さは、当業者に知られているように測定される。焼成後24時間以内に測定されたクラム柔らかさは、初期クラム柔らかさと称される。焼成後24時間を超えるクラム柔らかさは貯蔵時クラム柔らかさと称され、貯蔵寿命を判定する基準でもある。初期クラム柔らかさが増大すればそれは改善されている。貯蔵時クラム柔らかさが増大すればそれは改善されている。
【0049】
クラム孔均質性は、熟練した試験パン職人によって経験的に、または当該技術分野で知られているようなデジタル画像分析によって評価できる(例えば英国ウォリントンのアップルトンのCalibre Control International LtdからのC−cell)。孔の大きさの偏差が小さければ、クラムはより均質であると称される。孔の大きさの偏差がより小さくなれば、特質が改善されている。
【0050】
クラム孔径は、当該技術分野で知られているようなデジタル画像分析を使用して評価できる(例えば英国ウォリントンのアップルトンのCalibre Control International LtdからのC−cell)。平均クラム孔径が低下すれば、特質は改善されている。好ましくは、同時に同一ケーキ体積が保たれる場合にこれが該当する。
【0051】
ケーキの貯蔵寿命は、ケーキの弾力を経時的に判断することで測定できる。これは当業者に知られているようにクラム柔らかさを測定する方法の一部であり、それによって当該技術分野で知られているようなテクスチャー分析器(例えば英国のStable Micro Systems LtdからのTAXT2)の使用によって、ケーキの弛緩もまた測定される。
【0052】
所与のケーキ体積は、当該技術分野で知られているような超音波またはレーザー検出を使用して、自動化パン体積分析器(例えばスウェーデン国VikenのTexVol Instruments ABからのBVM−3)によって測定できる。体積が増大していれば、特質は改善されている。代案としては同一サイズ焼き型内での焼成後のケーキ高さは、ケーキ体積の指標である。ケーキ高さが増大すれば、ケーキ体積は増大している。
【0053】
生地のエマルジョン安定性は、ケーキ高さの判定およびケーキ構造の視覚的分析によって判定できる。ケーキ高さが低下していれば、生地のエマルジョン安定性は低下している。ケーキ構造がより緻密であれば、生地のエマルジョン安定性は低下している。
【0054】
第3の態様では、本発明は、
a.少なくとも
i.砂糖、
ii.小麦粉、
iii.卵、および
iv.本発明に従った組成物
を添加することでケーキの生地を調製するステップと、
b.生地を適切な焼き型に入れるステップと、
c.ケーキを焼くステップ
を含んでなる、ケーキを調製する方法に関する。
【0055】
本発明に従った組成物の成分は、別々にまたはプレミックスとして生地に添加し得る。
【0056】
上述の方法に従って、脂肪量が低減されているケーキ、および脂肪が低減されていないケーキの双方を調製し得る。
【0057】
別の態様では本発明は、
少なくとも
i.砂糖、
ii.小麦粉、
iii.卵、および
iv.本発明に従ったデンプン組成物
を添加するステップを含んでなるケーキ生地を調製する方法に関する。
【0058】
本発明に従った組成物の成分は、別々にまたはプレミックスとして生地に添加し得る。
【0059】
例えば以下のようなケーキ成分を合わせるいくつかの方法がある。
・クリーミング法:クリーミングバターおよび砂糖を共にクリーム状にしてから、残りの成分を徐々に添加する。
・溶解および混合:乾燥成分を共に混合し、次に溶解バターとその他の液体を添加して完全なケーキにする。
・「全て同時に混合」:乾燥成分およびショートニングをフードプロセッサに入れて、液体を徐々に添加する。
・スポンジケーキ製造:卵および砂糖を泡立て、小麦粉を注意深く混ぜ込む。この方法では脂肪は使用されない。
ケーキの全成分が混合されたら、混合物はケーキ生地と称される。
【0060】
本発明に従った組成物は、ケーキ製造の様々な段階において添加し得る。
【0061】
本発明の一実施態様では、本発明に従った組成物は生地の調製中に添加される。
【0062】
本発明の全ての態様に適用し得る好ましい実施態様では、ケーキの製造において、カルシウム、酵母抽出物、ホスホリパーゼA、リパーゼおよび/またはアミログルコシダーゼからなる群から選択される化合物の少なくとも1つが、本発明に従った組成物とさらに組み合わせられる。
【0063】
ケーキは普通のケーキ、すなわち普通の量の脂肪を含んでなるケーキ、または脂肪を含まないケーキ、またはレシピ中の脂肪量が低減されているケーキのいずれかであることができる。当業者は、普通のケーキ中にいかなる量の脂肪が存在するかを知っており、その量はケーキのタイプに左右される。
【0064】
ケーキの典型的な成分は、小麦粉、卵および砂糖である。卵相は、全卵から、または0〜100%の卵白および100〜0%の卵黄の範囲の卵白と卵黄との混合物からなってもよい。卵製品は、液体または噴霧乾燥物であり得て、塩または砂糖を含有し得る。任意に、ベーキングパウダー、塩、水、(例えばPGEおよびモノグリセリドなどの)乳化剤、(例えばパウンドケーキおよびマフィンのために)マーガリン、バターおよび/または油が添加される。これらの成分は、ケーキ成分および/または生地の一部であり得る。
【0065】
親水コロイドまたは変性デンプンなどの水結合を改善する構成要素もまた使用し得る。
【0066】
任意に、バニラ抽出物、ココア粉末または酵母抽出物などの着香剤も添加し得る。適切な酵母抽出物の一例は、ナトリウム非含有乾燥物質を基準にして少なくとも30%w/w5’のリボヌクレオチドを含んでなる、酵母抽出物である。
【0067】
本発明の全ての態様に適用し得る、好ましい本発明の実施態様では、塩化ナトリウム非含有乾燥物質を基準にして少なくとも30%w/wの5’−リボヌクレオチド、好ましくは少なくとも34%w/w、少なくとも38%w/w、少なくとも40%w/wまたは少なくとも42%w/w、より好ましくは少なくとも44%w/w、少なくとも46%w/w、少なくとも48%w/wまたは少なくとも50%w/wの5’−リボヌクレオチドを含んでなる酵母抽出物が使用される。このような酵母抽出物の使用はケーキの味を改善するだけでなく、その使用時に生地粘度が改善されることから意外な乳化効果も有することが分かった。
【0068】
本発明の文脈で、「5’−リボヌクレオチド」という語句はRNA分解中に形成される5’−リボヌクレオチド一リン酸、すなわち5’−グアニン一リン酸(5’−GMP)、5’−ウラシル一リン酸(5’−UMP)、5’−シトシン一リン酸(5’−CMP)、5’−アデニン一リン酸(5’−AMP)、の総量を指し、5’−AMPは部分的にまたは完全に5’−一リン酸塩イノシン(5’−IMP)に転換されていてもよい。例えば塩化ナトリウム非含有乾燥物質を基準にして30%w/wの5’−リボヌクレオチドを含んでなる酵母抽出物中では、5’−GMP、5’−UMP、5’−CMP、5’−AMPおよび5’−IMPの総量は、塩化ナトリウム非含有乾燥物質を基準にして30%w/wである。
【0069】
好ましい実施態様ではケーキ成分または生地中で酵母抽出物が使用され、5’−GMPに5’−IMPを加えた総量は、塩化ナトリウム非含有乾燥物質を基準にして、少なくとも15%w/w、好ましくは少なくとも17%w/w、少なくとも19%w/w、少なくとも20%w/wまたは少なくとも21%w/w、より好ましくは少なくとも22%w/w、少なくとも23%w/w、少なくとも24%w/wまたは少なくとも25%w/wである。5’−リボヌクレオチドが生じるRNAの構成の結果、5’−GMPおよび5’−IMPはこの実施態様中に常にほぼ等量で存在する。
【0070】
本発明の文脈では特に断りのない限り、5’−リボヌクレオチドの重量百分率の計算はその二ナトリウム塩六水和物を基準にする。全ての百分率は、塩化ナトリウム非含有乾燥物質を基準にして計算される。本発明では「塩化ナトリウム非含有乾燥物質」という語句は、重量百分率の計算において、存在するあらゆる塩化ナトリウム重量が組成物から除外されるという事実を指す。組成物中の塩化ナトリウムの測定および上述の計算は、当業者に知られている方法によって実施し得る。塩化ナトリウム非含有酵母抽出物の乾燥物質を基準にした重量百分率で40%w/wの5’−リボヌクレオチドを含んでなり、その20%がw/w5’−GMPに5’−IMPを加えた酵母抽出物の一例は、Maxarite(登録商標)Deliteの商標の下にオランダ国のDSM Food Specialtiesから販売される。
【0071】
酵母抽出物は、塩化ナトリウム非含有乾燥物質を基準にして少なくとも30%w/wの5’−リボヌクレオチドを含んでなる、酵母抽出物を生じるあらゆる方法によって調製されてもよい。
【0072】
酵母抽出物は、加水分解または自己消化によって得られてもよい。加水分解酵母抽出物を生じる方法は当該技術分野で知られており、例えば国際公開第88/05267号パンフレットを参照されたい。別の実施態様では例えば国際公開第2005/067734号パンフレットに記載されるように、酵母抽出物は自己分解によって得られる。
【0073】
ケーキ成分に追加的酵素を添加することが可能である。このような酵素の例は、真菌α−アミラーゼ、細菌アミラーゼ、抗老化アミラーゼ(例えばマルトース生成αアミラーゼ)、アミログルコシダーゼのようなデンプン分解酵素と、リパーゼ、ガラクトリパーゼのような脂肪分解酵素と、エンドプロテアーゼおよびエキソプロテアーゼ(カルボキシ−およびアミノペプチダーゼ)のようなタンパク質分解酵素と、酸化還元酵素(オキシダーゼなど)と、架橋酵素(トランスグルタミナーゼなど)である。
【0074】
好ましい実施態様では、ケーキ製造工程中にアミログルコシダーゼが添加される。アミログルコシダーゼは生地粘度に好ましい効果を与え、よりきめ細かいクラム構造をもたらすことが分かっている。さらにアミログルコシダーゼは、ケーキの味に対する甘味効果がある。
【0075】
本発明の全ての態様に応用し得る別の好ましい実施態様では、例えばリパーゼまたはホスホリパーゼAなどの脂肪分解酵素が、ケーキ製造工程で添加される。意外にも脂肪分解酵素を添加することは、生地のエマルジョン安定性を増大させることが分かった。適切な脂肪分解酵素の例は、Cakezyme(商標)(オランダ国のDSM Food Specialtiesから入手できるホスホリパーゼA2)、Bakezyme(登録商標)L80,000(オランダ国のDSM Food Specialtiesから入手できるR.オリゼー(R.oryzae)リパーゼ)またはLipopan(登録商標)50(デンマーク国のNovozymesから入手できるT.ラヌギノサス(T.lanuginosus)リパーゼ)である。追加的利点は、これによってモノ−および/またはジグリセリド(E471)、および脂肪酸(E475)ポリグリセロールエステルなどの化学乳化剤構成要素を低減できることである。リパーゼは、小麦粉1kgあたり0.5〜5重量%の投入量で添加し得る。
【0076】
本発明の全ての態様に応用し得る本発明の一実施態様では、本発明に従った組成物および任意の追加的成分がケーキミックス中に存在する。本発明に従ったデンプン組成物の成分は、ケーキミックス成分に別々にまたはプレミックスとして添加し得る。ケーキミックスは便利であることから、家庭で使用されることが多い。ほとんどのケーキミックスは、ボール内でパッケージ内容物を卵および油に添加して2、3分混合することだけを要する。これで混合物をすぐに焼き型に注いで焼き上げることできる。
【0077】
本発明の全ての態様に応用し得る好ましい本発明の実施態様では、本発明に従った組成物との併用で、さらにカルシウム、酵母抽出物、親水コロイド、ホスホリパーゼA2、リパーゼおよび/またはアミログルコシダーゼからなる群から選択される化合物の少なくとも1つが使用され、または生地に添加される。これらの化合物のいずれか1つの組み合わせもまた可能である。本発明に従ったケーキは参照ケーキと非常に良く似ているが、重量単位あたりはるかに低いカロリーを有する。
【0078】
[実施例1]
以下からパウンドケーキを調製した。600gの全卵液、600gのバター(高脂肪)または420gのバターと160または180グラムの水(低脂肪ケーキ)、1200gの市販ケーキミックス(Damco)、7.5gの塩、3.6gのプロピオン酸カルシウム、および20グラムの以下のデンプン混合物:アミロマルターゼ処理デンプンのみを含有するデンプンミックスA;1部のアミロマルターゼ処理デンプン、5部の高アミロースジャガイモデンプン、および4部の低DEマルトデキストリンを含有するデンプンミックスB。
【0079】
フラットビーターミキサーが備わっているHobart内において速度2で2分間混合して、バターを溶解した。次にデンプンミックスを除くその他全成分を添加して、速度1で4分間混合した。デンプンミックスを添加した後、速度1で2分間、速度2で2分間混合した。ケーキ型に420gの生地を充填して、150/155℃で60分間焼いた。デンプン添加なしの低脂肪製品の生地粘度は許容できないほど低く、デンプン混合物の添加があれば粘度は参照ケーキよりも低かったが、なおも許容可能であった。
【0080】
ケーキの中央でケーキの高さを測定した。参照ケーキの高さを100%と定義した。デンプンミックスを添加した製品の高さは参照に匹敵し、デンプンミックスなしの低脂肪製品は高さが実質的により低かった。クラム硬さおよび弾性は、技術分野で知られている手順によってテクスチャー分析器を使用して、2.0cmの厚さでケーキの中央をカットした2片のスライスで測定した。結果を表1に示す。サンプル1は全脂参照ケーキ、サンプル2はデンプンミックスA添加低脂肪製品、サンプル3はデンプンミックスB添加低脂肪製品、およびサンプル4は追加デンプンミックスなしの低脂肪ケーキである。
【0081】
【表1】



【0082】
少人数のパネルの専門家によってケーキを官能的に評価した。参照(サンプル1)は、ぱさついているが脂っこい食感があり最も乾燥しているとみなされた。さらなるデンプン添加なしの低脂肪参照(サンプル4)は、クリーミー感が最もなく水っぽかった。デンプンがあれば(サンプル2および3)、こくがありしっとりしており、より凝集性のテクスチャーが観察された。これらの2つの内、1ヶ月を経た後にさえ残るさらにクリーミーな口当たりから、サンプル3がより好ましかった。さらにこの製品(サンプル3)の柔らかさは、参照ケーキと比較して1ヶ月にわたって相対的に改善された。
【0083】
[実施例2]
別の実験ではパウンドケーキを実施例1と同様であるが、下の表に記載される追加のリパーゼ(Cakezyme(商標)、オランダ国DelftのDSM Food Specialties)もまた含有し、デンプンミックスCが1部のアミロマルターゼ処理デンプンおよび1部の高アミロペクチンデンプンの混合物であるわずかに異なる組成で調製した。デンプンミックスAおよびデンプンミックスBは、実施例1と同一である。
【0084】
【表2】



【0085】
20℃において標準速度で5分間撹拌しながら、高速粘度アナライザー(RVA)を使用して生地粘度を測定した。生地粘度の測定値として初期粘度を上の表の最下行に示すが、値には少なくとも1Pa.sのマージンがある。ケーキ生地粘度は高含水量に左右されたが、一連のデンプン内ではいかなる実質的な差も見られなかった。
【0086】
これらのケーキに官能性評価を実施した。試験には、42人の訓練されていない平均的味覚の持ち主が参加した。各個人は5種のバラエティから3種の製品を与えられ、それらをa)乾燥−湿潤、b)滑らか、クリーミー、およびフレッシュ感に相当する「smeuieg」、およびc)最初の一口の硬さについて評価するように依頼された。スコアを合計して、結果を統計学的に分析した。差が11.5ポイントを超える場合にのみ、この差は統計的に有意である。表2にスコアを示す。
【0087】
「乾燥⇔湿潤」属性のスコアは「滑らか、フレッシュ、クリーミー」属性と同様であるが、製品が湿潤になりすぎると、それはもはや滑らか、フレッシュ、クリーミーでなくなり、べたついて飲み込みにくくなる。したがって双方の属性は、異なる官能性の側面を表す。これらは参考製品が、その他の全製品に比べて顕著により乾燥していることを示唆する。「滑らか、クリーミー、フレッシュ」の属性は参照とデンプンミックスB+リパーゼ(サンプル番号4)との間のみで有意に異なり、参照とデンプンミックスAおよびリパーゼ(サンプル番号3)との間でほぼ有意である。この属性について、その他の差ははより小さく、したがってさらに有意でない。
【0088】
「最初の一口の硬さ」の属性は、参照(サンプル番号1)と、デンプンミックスB+リパーゼ添加(サンプル番号4)と、リパーゼのみ添加(サンプル番号2)との間で有意差を示す。
【0089】
総体的にデンプンミックスB添加製品が、特にクリーミー感の属性において最良の官能特性を有することは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)アミロマルターゼ処理デンプン、
(b)アミロペクチンデンプン、および
(c)任意に低DEマルトデキストリン
を含んでなる、デンプン組成物
【請求項2】
前記アミロマルターゼ処理デンプンがジャガイモデンプンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記アミロペクチンデンプンがジャガイモデンプンである、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記アミロペクチンデンプン(b)がα化されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
(a)アミロマルターゼ処理デンプン、
(b)アミロペクチンデンプン、および
(c)任意に低DEマルトデキストリン
を混合してデンプン組成物を形成するステップを含んでなる、デンプン組成物を製造する方法。
【請求項6】
前記アミロマルターゼ処理デンプンがジャガイモデンプンである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記アミロペクチンデンプンがジャガイモデンプンである、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記アミロペクチンデンプン(b)がα化される、請求項5〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物、または請求項5〜8のいずれか一項に記載の方法によって得られるデンプン組成物のベークド製品の製造における使用。
【請求項10】
前記ベークド製品がケーキである、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
レシピ中で使用される脂肪量が低減される、請求項9または10に記載の使用。
【請求項12】
脂肪量が少なくとも10%w/w低減され、好ましくは脂肪量が少なくとも20%w/w低減され、なおもより好ましくは脂肪量が少なくとも30%w/w低減され、最も好ましくは脂肪量が少なくとも50%w/w低減される、請求項9〜11のいずれか一項に記載の使用。
【請求項13】
(a)少なくとも
i.砂糖、
ii.小麦粉、
iii.卵、および
iv.請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物または請求項5〜8のいずれか一項に記載の方法によって得られるデンプン組成物
を添加することにより、前記ケーキの生地を調製するステップと、
(b)前記生地を適切な焼き型に入れるステップと、
(c)前記ケーキを焼くステップ
を含んでなるケーキを調製する方法。
【請求項14】
前記生地が酵母抽出物をさらに含んでなる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記酵母抽出物が塩化ナトリウム非含有酵母抽出物乾燥物質を基準にして30%w/wの5’−リボヌクレオチドを含んでなり、好ましくは前記酵母抽出物中の5’−GMPに5’−IMPを加えた総量が、塩化ナトリウム非含有酵母抽出物乾燥物質を基準にして少なくとも15%w/w、好ましくは少なくとも17%w/w、19%w/w、20%w/wまたは21%w/w、より好ましくは少なくとも22%w/w、23%w/w、24%w/wまたは25%w/wである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記生地が脂肪分解酵素をさらに含んでなる、請求項13〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
請求項13〜16のいずれか一項に記載の方法によって、または請求項9〜12のいずれか一項に記載の使用によって得られるケーキ。

【公表番号】特表2011−529696(P2011−529696A)
【公表日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−521533(P2011−521533)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【国際出願番号】PCT/EP2009/059800
【国際公開番号】WO2010/015554
【国際公開日】平成22年2月11日(2010.2.11)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】