説明

新しい医療用製品

本発明は、創傷治療材料及び創傷治癒特性を有するポリペプチドを含む創傷治療用製品を提供する。1つの実施態様では、創傷治療材料は、アルギン酸塩、非晶質ハイドロゲル、シートハイドロゲル、ハイドロファイバー、発泡体、及びそれらの混合物を含むか又はそれから成る。更なる実施態様では、創傷治癒特性を有するポリペプチドは、LL−37などのカテリシジンである。本発明は、本発明の製品を用いる創傷の治療方法を更に提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、創傷治療用製品及びその使用に関する。特に、本発明は慢性創傷治療用の改良された製品を提供する。
【背景技術】
【0002】
非治癒性慢性創傷は、その患者、ヘルスケア専門家、及び医療制度にとっての課題である。それらは、多くの人々のクオリティ・オブ・ライフを著しく損なう。集中治療が求められ、そして生産性喪失及び医療費に関して多大な負担をもたらす。従って、慢性創傷治療の研究は極めて重要である。
【0003】
創傷治癒は、組織の完全性及び機能の回復を最も有利に導く動的経路である。慢性創傷は、正常な修復過程が妨害される場合に起こる。創傷治癒の生物学を理解することにより、医師は創傷が存在する組織環境を最適化することができる。
【0004】
治癒経路は創傷の瞬間に始まる。創傷治癒は、凝固、炎症、基質及びマトリックス合成、血管新生、線維増殖、上皮化、創傷収縮、及びリモデリングを含む過程の蓄積の結果である。これらの複雑な重複過程は、治癒の3期:炎症期、増殖期、及び成熟期、に最も良く系統立てられる。
【0005】
慢性創傷
上記の創傷治癒過程は、急性及び慢性の両創傷に適用し得る。しかしながら、後者の場合には逐次過程が乱されている。創傷が規則正しい時宜を得た修復過程を経由して進行し、そして解剖学的及び機能的完全性の持続的回復をもたらす場合に、それは急性創傷と呼ばれる。逆に、慢性創傷は通常の段階的過程をたどって進行できない創傷である。その結果、治癒過程は遷延しそして不完全となり、完全性回復の欠如を来たす。
【0006】
慢性創傷は、特定の因子が標準的なコントロールされた炎症期又は細胞増殖期の障害を引き起こす場合に起きる。多くの因子が創傷治癒遅延に寄与し得る。最も一般的なものとしては、創傷感染;組織低酸素;反復性外傷;残屑及び壊死組織の存在などの局所的原因;並びに糖尿病、栄養不良、免疫不全、及び特定の薬剤の使用などの全身的原因が含まれる。
【0007】
創傷感染は、創傷治癒遅延の最も一般的な理由である可能性が高い。全ての創傷は細菌に汚染されている。創傷が感染しているかどうかは宿主の免疫能力及び細菌接種サイズによって決定される。標準的な宿主防御及び十分な創面清掃で、創傷は100,000(105)微生物/g組織のレベルを有すると考えられ、それでも治癒に成功し得る。しかしながら、この数字を超えたところで創傷が感染する可能性がある。
【0008】
軟部組織蜂巣炎は、新しい肉芽組織及び組織増殖因子を分解する組織プロテアーゼを誘導することにより、そしてコラーゲン沈着を遅延させることにより炎症期を遷延させる。急性創傷と対照的に、慢性損傷によって引き起こされる滲出液は、プロテアーゼ活性を上昇させ、増殖因子活性を低下させ、そして炎症性サイトカインのレベルを上昇させている。従って、感染は、炎症から創傷の成熟への増殖までの正常な進行における、多くの過程を妨害することにより治癒を妨げる。
【0009】
組織潅流は、動脈閉塞又は血管収縮、低血圧、低体温、及び末梢静脈鬱血により障害され得る。創傷酸素圧低下は、コラーゲンの産生を遅らせることにより創傷治癒を遅延させ得る。膠原線維架橋結合は、成熟コラーゲンを合成するためにプロリン及びリジンのハイドロキシル化に酸素が必要なことから、組織酸素圧が40mmHgに低下すると不足し始める。白血球の酸化的リン酸化殺菌活性は正常組織酸素レベルなしでは非常に妨げられることから、創傷低酸素も細菌感染し易い。これらの因子は極力是正しなければならない。
【0010】
例えば、動脈閉塞性疾患に因る低酸素は、血管形成又はバイパス移植術によって改善し得る。患者には、動脈血管収縮を引き起こす喫煙を停止することを勧告すべきである。必要に応じて心臓機能又は必要な血液量を向上させるために、低血圧又は低体温患者は適切に回復させなければならない。静脈鬱滞は、一般的に静脈還流を改善させるために圧縮衣料で処置される。貧血は、ヘマトクリット値が15%より大きく、そして患者が正常血液量である限り、治癒に対して不利ではない。十分な酸素圧は直接創傷治癒の奏功と相関することから、酸素圧の最適化はいずれのタイプの全創傷患者においても必須である。
【0011】
活力喪失組織は細菌に増殖培地を与えることから治癒を障害し、感染の可能性を増加させる。死組織も、線維芽細胞又はケラチン細胞の創傷への移動を阻止するエンドトキシンを滲出させる。縫合材料などの異物は、創傷が本来慢性の場合には残屑のカテゴリーにも分類される。絹縫合糸の存在は、感染を誘発するのに必要な細菌数を10,000倍減少させる。従って、全ての壊死組織及び残屑の創面清掃は、外科的手段で又は酵素剤若しくは創傷包帯を用いて行われようと、創傷治癒の達成に重要である。
【0012】
創傷を有する患者の基礎全身性疾患は、創傷が時宜を得て治癒する可能性を劇的に低下させ得る。糖尿病がその古典的な例である。創傷治癒は、炎症期又は増殖期の障害に因りしばしば遅延する。好中球及びマクロファージは、それらのグリコシル化が食細胞機能に対して抑制的であるために、コントロールされた創傷の細菌量を適切に維持することができない。このように感染は炎症期を遷延させる。赤血球がグリコシル化(ヘモグロビンA1cレベルで測定)によって影響を受ける場合、それらは可撓性が少なくなり、微小血管血球凝集及び虚血に至る。低い組織酸素圧は、前述のように細胞増殖及びコラーゲン合成を障害する。
【0013】
栄養不良は、線維芽細胞増殖及び新血管形成の速度低下を引き起こし、そして細胞及び液性免疫の両方を障害する。創傷部位、特に新しい肉芽組織内では高い代謝活性率が存在する。それらの活性に必要な栄養素が与えられない場合、組織の健康状態は弱い。タンパク質、及びメチオニン、プロリン、グリシン、リジンなどのそれらのアミノ酸ビルディングブロックは、正常細胞機能及び皮膚創傷の修復に必須である。リノレン酸及びリノール酸は食事で供給しなければならず、それらが必須脂肪酸と呼ばれる理由である。
【0014】
それらは細胞膜の重要な成分であり、そして炎症を媒介するプロスタグランジンの供給源であることから、必須脂肪酸の欠乏は創傷治癒障害を引き起こす。ビタミンC又はKの欠乏は、それぞれ壊血病又は凝固障害をもたらす。カルシウム、鉄、銅、亜鉛、及びマンガンを含むミネラルは、治癒過程に必要なタンパク質の合成における生体反応の補因子として作用させるために、創傷環境に送達しなければならない。診断が栄養不良に起因する創傷治癒障害である場合には、患者が適切なタンパク質及びエネルギー(カロリー)摂取を受けていることを確認しなければならない。特殊なビタミン及びミネラルサプリメントは、必要な栄養素の急速な回復に必須となり得る。
【0015】
最終的に、幾つかの薬剤は、創傷治癒に有害なことが証明されている。コルチコステロイドはあらゆるレベルで炎症を抑制し、それによりこの治癒時期を鈍化させる。ビタミンAはステロイドのマイナスの効果を逆転させ、そしてコルチコステロイド療法を中止できない全ての慢性創傷患者に対して、局所及び全身適用で適応される。アスピリン及びインドメタシンなどの非ステロイド性抗炎症薬はアラキドン酸カスケードを妨害し、治癒計画の特定のプライマリーメディエータの解明を妨げる。加えて、これらは血小板の作用及び血小板凝集を阻害するように作用し、その結果創傷の最初から治癒過程を妨害する。
【0016】
慢性創傷の治療
従来の創傷治療用製品は、主として織布及び不織布スポンジなどの低技術のガーゼ系包帯から構成され、包帯及び非粘着性包帯に適合する。それらは、特定の創傷管理環境下に有効であるものの、業界及び商業的関心は、広範囲の新しい高度創傷治療用製品及び市場に登場する予定の治療法に向けられている。
【0017】
高度創傷治療セグメントは、3つの主要カテゴリーに分類される広範囲の本質的に異なる技術を包含する(非特許文献1を参照):
(i) 湿潤創傷治癒包帯(ハイドロゲル、親水コロイド、アルギン酸塩、
発泡体及び透明フィルム);
(ii) 創傷に銀などの物質を送達する抗菌包帯;
(iii)代用皮膚、再生医療製品及び成長因子などの生物学的製剤。
【0018】
加えて、陰圧創傷治療法(NPWT)などの創傷治癒用具の数の増大が顕著になりつつある。領域としては、酸素療法、電気刺激;低レベルレーザ療法(LLLT)、超音波治療及び蛆虫療法など種々の他の治療法も含まれる。
【0019】
4.1兆USドルのグローバル高度創傷治療セグメントは、10%/年の2ケタ成長率の最も急速に成長している分野である。この成長は、加齢人口、世界的な糖尿病発生率の上昇及び堅調な技術の進歩、並びにそれらの従来のカウンターパートよりも臨床的に効率的で費用効果が高い製品の着実な前進によるものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】Ovington et al., 2007, Clinics in Dermatology 25:33-38
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
それ故に、創傷の治療及び管理のための改良された医療用製品開発のニーズが続いている。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の第1の態様では、創傷治療材料及び創傷治癒特性を有するポリペプチドを含む創傷治療用製品が提供される。
【0023】
「創傷治療用製品」としては、創傷部位に適用した場合、創傷治癒過程を補助し(例えば、促進し)、及び/又は創傷感染を防止することができる製品及び用具が含まれる。例えば、創傷治療用製品は、上皮再生を促進し、及び/又は創傷上皮及び/又は創傷間質を治癒することができる。1つの実施態様では、創傷治療用製品は、非溶解メカニズムを介して上皮及び/又は間質細胞の増殖を促進することができる可能性がある。
【0024】
「創傷治療材料」としては、下記に詳述する創傷治療用製品などを含む創傷治療用に好適な実質的非毒性材料が含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の創傷治療用製品の1つの実施態様では、創傷治療材料は創傷滲出液を吸収することができる。
【0026】
創傷治療材料は、アルギン酸塩、非晶質ハイドロゲル、シートハイドロゲル、ハイドロファイバー(hydrofibres)、発泡体、及びそれらの混合物から選択し得る。
【0027】
創傷滲出液を吸収することができる更なる創傷治療材料は、親水コロイド、コラーゲン系材料、ヒアルロン酸系材料、デキストラノマー、デキストリノマー/カデキソマー及び酸化再生セルロースを含む。
【0028】
例えば、創傷治療材料は、アルギン酸塩を含むか又はそれから成ってよい。そのような創傷治療材料を含む創傷治療用製品は、一般的に乾式不織布(又は「フェルト」)、凍結乾燥シート、リボン又はロープの形態で与えられ、そして高滲出性創傷を治療するのに特に好適である。
【0029】
市販の典型的なアルギン酸塩は、Suprasorb(登録商標) (Sammons Preston, USAから市販)及びKaltostat(登録商標) (ConvaTec, UKから市販)を含む。
【0030】
或いはまた、創傷治療材料は、非晶質ハイドロゲルを含むか又はそれから成ってよい。そのような創傷治療材料を含む創傷治療用製品は、主として粘性ゲル(例えば、チューブ又は他の塗布器中の)の形態で与えられ、そして非滲出性創傷の治療に特に好適である。
【0031】
好適な非晶質ゲルは、合成ポリマー、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール、ポロキサマーブロックコポリマー等;半合成ポリマー、例えば、カルボキシメチルセルロース、ハイドロキシエチルセルロース、ハイドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、メチルハイドロキシプロピルセルロース及びエチルハイドロキシエチルセルロース等を含むセルロースエーテル;天然ゴム、例えば、アラビアゴム、カラギーナン、キトサン、ペクチン、澱粉、キサンタンゴム等;及びアルギン酸塩から成る群から選択される1つ又はそれ以上のハイドロゲル形成ポリマーを含んでもよい。
【0032】
そのようなハイドロゲル形成ポリマーは、水性及び非水性溶媒に溶解してもよい。典型的な水性溶媒は、水、生理食塩水、緩衝液、水/プロピレングリコールを含み、そして典型的非水性溶媒は、グリセロール、プロピレングリコール及びポリエチレングリコールを含む。
【0033】
ポロキサマータイプのブロックコポリマー、即ち、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールブロックを用いることも有利である。水に分散した特定のポロキサマーは熱可塑性である:室温でそれらは低粘性であるが、高温では顕著な粘度増加を示し、体温でゲル形成をもたらす。それによって、相対的に温熱創傷空隙に投与された医薬製剤の接触時間は延長し、その結果ポリペプチドなどの取り込み物質の効果を改善し得る。
【0034】
市販の典型的なハイドロゲルは、Intrasite(登録商標) (Smith & Nephew, UKから市販)及びNormigel(R) (Moelnlycke Health Care AB, Swedenから市販)を含む。
【0035】
加えて、創傷治療材料は、シートハイドロゲルを含むか又はそれから成ってよい。非晶質ハイドロゲルを有するものとして、そのような創傷治療材料は非滲出性創傷の治療用に特に好適である。
【0036】
好適なシートハイドロゲルは、合成ポリマー、例えば、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール、ポロキサマーブロックコポリマー等;半合成ポリマー、例えば、カルボキシメチルセルロース、ハイドロキシエチルセルロース、ハイドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、メチルハイドロキシプロピルセルロース及びエチルハイドロキシエチルセルロース等を含むセルロースエーテル;天然ゴム、例えば、アラビアゴム、カラギーナン、キトサン、ペクチン、澱粉、キサンタンガム等;及びアルギン酸塩から成る群から選択される、1つ又はそれ以上のハイドロゲル形成ポリマーを含んでもよい。そのようなハイドロゲル形成ポリマーは、上述の水性及び非水性溶媒に溶解してもよい。
【0037】
市販の典型的なシートハイドロゲルは、Elastogel(登録商標)(Southwest Technologies Inc., USAから市販)及びSuprasorb(登録商標)G (Sammons Preston, USAから市販)を含む。
【0038】
更なる選択肢として、創傷治療材料は、ハイドロファイバーを含むか又はそれから成ってよい。そのような創傷治療材料を含む創傷治療用製品は、一般的に乾式不織布、凍結乾燥シート、又はリボン若しくはロープの形態で与えられ、そして軽度から重度の滲出性創傷又は乾性及び湿潤部位を有する創傷に使用するのに特に好適である。
【0039】
好適なハイドロファイバーは、カルボキシメチルセルロースを含むか又はそれから成ってよく、そしてAquacel(登録商標)(ConvaTec, UKから市販)を含む。
【0040】
更なる選択肢として、創傷治療材料は、Allevyn製品系列(Smith&Nephew, United Kingdomから市販)などの、ポリウレタンフォームを含むか又はそれから成ってよい。
【0041】
本発明の創傷治療用製品の更なる主要成分は、創傷治癒特性を有するポリペプチドである。
【0042】
「創傷治癒特性を有するポリペプチド」には、創傷治癒過程を補助し(例えば、促進し)、及び/又は創傷感染を防止することができるポリペプチドが含まれる。例えば、創傷治療用製品は、上皮再生を促進し、及び/又は創傷上皮及び/又は創傷間質を治癒させることができる可能性がある。1つの実施態様では、ポリペプチドは、非溶解メカニズムを介して上皮及び/又は間質細胞の移動及び/又は増殖を促進することができる可能性がある。
【0043】
当然のことながら、創傷治癒特性を有するそのようなポリペプチドは、本発明の創傷治療用製品の機能において主要な又は補助的役割を有することができる。
【0044】
「ポリペプチド」には、その薬学的に許容される塩及び誘導体が含まれる。例えば、好適な薬学的に許容される塩は、対イオンの酢酸塩、炭酸塩、リン酸塩、硫酸塩、トリフルオロ酢酸塩及び塩化物を含有する塩を含む。好適な薬学的に許容される誘導体は、エステル及びアミドを含む。
【0045】
1つの実施態様では、創傷治癒特性を有するポリペプチドは、カテリシジン、又は元のカテリシジンの創傷治癒活性の少なくとも一部を保持するそのフラグメント、変異体又は融合体である。
【0046】
例えば、カテリシジンは、ヒトカチオン性抗菌タンパク質(hCAP18;登録番号NP_004336及びAAH55089)及びそのC末端ペプチドLL−37、PR39、プロフェニン及びインドリシジンから成る群から選択することができる。
【0047】
ヒトでの唯一の公知のカテリシジンである、ヒトカテリシジン抗菌タンパク質hCAP18は、LL−37(Gudmundsson et al., 1996, Eur J Biochem 1238:325-32; Zanetti et al., 1995, FEBS Lett 374:1-5)と呼ばれる保存カテリンドメイン及び可変C末端から成る。ホロタンパク質の細胞外タンパク質分解プロセシングは、宿主細胞に対して広域抗菌活性並びに効果を有するLL−37ペプチドを遊離し(Gudmundsson et al., 1995, Proc Natl Acad Sci USA 92:7085-9; Agerberth et al., 1995, Proc Natl Acad Sci USA 92:195-99) 、そのうちのあるものは、Gタンパク質結合受容体、ホルミルペプチド受容体様1(FPRL1)により媒介される(Yang et al., 2000, J Exp Med 192:1069-74; Koczulla et al., 2003, J Clin Invest 111:1665-72)。ヒトCAP18は、白血球中に存在し (Cowland et al., 1995, FEBS Lett 368:173-76)、そしてそれが固有のバリア保護の役割に一致して炎症(Cowland et al., 1995, FEBS Lett 368:173-76; Frohm et al., 1997, J Biol Chem 272:15258-63)及び傷害(Dorschner et al., 2001, J Invest Dermatol 117:91-97; Heilborn et al., 2003, J Invest Dermatol 120:379-89)と連合してアップ・レギュレーションされ、皮膚及び他の上皮に発現する。
【0048】
1つの実施態様では、創傷治癒特性を有するポリペプチドは、ヒトLL−37であり、そのアミノ酸配列は下記の配列番号1:
LLGDFFRKSKEKIGKEFKRIVQRIKDFLRNLVPRTES
[配列番号1]
で示される。
【0049】
従って、創傷治癒特性を有するポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を含むか又はそれから成ってよい。
【0050】
本明細書で使用される用語「アミノ酸」は、基準の20の遺伝的にコードされたアミノ酸及び「D」体(天然の「L」体に比べて)でのそれらの対応する立体異性体、ω−アミノ酸及び他の天然アミノ酸、特殊アミノ酸(例えば、α,α−ジ置換アミノ酸、N−アルキルアミノ酸等)及び化学的誘導体化アミノ酸を含む(下記を参照)。
【0051】
しかしながら、好ましくは、ポリペプチド、又はそのフラグメント、変異体、融合体又は誘導体は、L−アミノ酸を含むか又はそれから成ってよい。
【0052】
「アラニン」又は「Ala」又は「A」などのように、1つのアミノ酸が具体的に列挙される場合、この用語は他に明記されない限りL−アラニン及びD−アラニンの両方を意味する。他の特殊アミノ酸も、所望の機能特性がポリペプチドにより保持されている限り、本発明の製品に使用されるポリペプチドの好適な成分であり得る。表示されたペプチドでは、必要に応じて、各コード化アミノ酸残基は、既存アミノ酸の慣用名に対応して単一文字記号により表わされる。
【0053】
これに代わる実施態様では、創傷治癒特性を有するポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列の生物活性フラグメント、変異体、融合体又は誘導体である。
【0054】
「生物活性」は、フラグメント、変異体、融合体又は誘導体が、配列番号1のアミノ酸配列の創傷治癒特性の少なくとも一部を保持することを意味する。例えば、フラグメント、変異体、融合体又は誘導体は、上皮再生及び/又は創傷上皮及び/又は創傷間質を強化するLL−37の能力の少なくとも一部を保持し得る。そのような創傷治癒特性の保持は、業界で周知の方法を用いて決定することができる(国際公開公報第2004/067025号に開示されているように。この文献は、参照することにより本明細書に組み入れられている)。
【0055】
1つの実施態様では、創傷治癒特性を有するポリペプチドは、配列番号1の少なくとも10の隣接アミノ酸、例えば、配列番号1の少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35又は36個の隣接アミノ酸を含むか又はそれから成る、LL−37の生物活性フラグメントである。従って、このフラグメントは、配列番号1のN末端(即ち、左)から少なくとも10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35又は36個の隣接アミノ酸を含み得る。
【0056】
従って、創傷治癒特性を有するポリペプチドは、LL−36、LL−35、LL−34、LL−33、LL−32、LL−31、LL−30、LL−29、LL−28、LL−27、LL−26、LL−25、LL−24、LL−23、LL−22、LL−21及びLL−20から成る群から選択される、LL−37のフラグメントを含むか又はそれから成ってよい。
【0057】
本発明の第1の態様の他の実施態様では、創傷治癒特性を有するポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列の変異体を含むか又はそれから成ってよい。
【0058】
ポリペプチドの「変異体」には、保持又は非保持のいずれであれ、挿入、欠失及び置換が含まれる。例えば、変異ポリペプチドは非天然変異体であってよい。
【0059】
変異体は、配列番号1又はそのフラグメントのアミノ酸配列と少なくとも50%の同一性、例えば、少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、又は少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を有することが、特に好ましい。
【0060】
2つのポリペプチド間のパーセント配列同一性は、好適なコンピュータープログラム、例えば、ウィスコンシン大の遺伝的計算グループのGAPプログラムを用いて決定することができ、そして当然のことながら、パーセント同一性は、その配列が最適に配列しているポリペプチドと関連付けて計算される。
【0061】
アラインメントは、或いはまた、クラスタルW(Clustal W)プログラム (Thompson et al., 1994, Nuc. Acid Res. 22:4673-4680、この文献の関連する開示内容は、参照することにより本明細書に組み入れられている)を用いて実施してもよい。
【0062】
使用されるパラメータは、以下の通りである:
高速対合アラインメント・パラメータ:K−組(用語)サイズ;1、ウィンドウサイズ;5、ギャップ・ペナルティ;3、トップ対角線の数;5.得点法:xパーセント。
多重アラインメント・パラメータ:ギャップ・オープン・ペナルティ;10、ギャップ拡張ペナルティ;0.05。
得点マトリックス:BLOSUM。
【0063】
或いはまた、BESTFITプログラムを、局所配列アラインメントを決定するために使用してもよい。
【0064】
業界で周知のタンパク質工学及び部位特異的変異誘発の方法を用いて、変異体を作製してもよい(実施例を参照、分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning: a Laboratory Manual)、3rd edition, Sambrook & Russell, 2001, Cold Spring Harbor Laboratory Presを参照。この文献の関連する開示内容は、参照することにより本明細書に組み入れられている)。
【0065】
本発明の第1の態様の更なる他の実施態様では、製品は、その一部がLL−37のアミノ酸配列に対応する融合タンパク質、又はその生物活性フラグメント若しくは変異体を含むか又はそれから成る。
【0066】
タンパク質又はポリペプチドの「融合体」には、他のいずれかのポリペプチドに融合したポリペプチドが包含される。例えば、該ポリペプチドは、該ポリペプチドの精製を促進するために、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)又はタンパク質Aなどのポリペプチドに融合し得る。そのような融合体の例は、当業者に周知である。同様に、該ポリペプチドは、His6などのオリゴヒスチジンタグに、又は公知のMycタグエピトープなどの抗体によって認識されるエピトープに融合し得る。該ポリペプチドのいずれのフラグメント、変異体又は誘導体への融合も、本発明の範囲に含まれる。当然のことながら、望ましい性質、即ち、抗癌活性を保持する融合体(又は変異体又は誘導体)が好ましい。また、融合体が本明細書に記載の方法の使用に好適な場合、特に好ましい。
【0067】
例えば、融合体は、本発明の該ポリペプチドに望ましい特徴を与える更なる部分を含んでもよい;例えば、その部分は、ポリペプチドを検出又は単離し、又はポリペプチドの細胞取り込みを促進するのに有用であり得る。この部分は、例えば、当業者に周知のビオチン部分、放射性部分、蛍光部分、例えば、小分子蛍光団又は緑色蛍光タンパク質(GFP)蛍光団であり得る。この部分は免疫原性タグ、例えば、当業者に周知のMycタグであってよく、又は当業者に周知のポリペプチドの細胞取り込みを促進できる親油性分子又はポリペプチド・ドメインであってよい。
【0068】
当業者には当然のことながら、ポリペプチド、又はそのフラグメント、変異体、その融合体若しくは誘導体は、修飾又は誘導体化される1つ又はそれ以上のアミノ酸を含んでよい。
【0069】
1つ又はそれ以上のアミノ酸の化学誘導体は、官能性側鎖との反応によって得ることができる。そのような誘導体化分子は、例えば、遊離アミノ基が誘導体化されて、アミン塩酸塩、p−トルエンスルホニル基、カルボキシベンゾキシ基、t−ブチルオキシカルボニル基、クロロアセチル基又はホルミル基を形成するそれらの分子を含む。遊離カルボキシル基は誘導体化されて、塩、メチル及びエチルエステル又は他のタイプのエステル及びヒドラジドを形成し得る。遊離ハイドロキシル基は、誘導体化されてO−アシル又はO−アルキル誘導体を形成し得る。また化学誘導体として、20の基準アミノ酸の天然アミノ酸誘導体を含むそれらのペプチドも含まれる。例えば:4−ハイドロキシプロリンはプロリンと置換し得る;5−ハイドロキシリジンはリジンと置換し得る;3−メチルヒスチジンはヒスチジンと置換し得る;ホモセリンはセリンとオルニチンはリジンと置換し得る。誘導体は、また、必要活性が維持される限り1つ又はそれ以上の付加又は欠失を含有するペプチドを含む。他に含まれる修飾は、アミド化、アミノ末端アシル化(例えば、アセチル化又はチオグリコール酸アミド化)、末端カルボキシルアミド化(例えば、アンモニア又はメチルアミンによる)、及び同様の末端修飾である。
【0070】
当業者には更に当然のことながら、ペプチド模倣化合物も有用であり得る。従って、「ポリペプチド」には、創傷治療活性を示すペプチド模倣化合物が含まれる。用語「ペプチド模倣薬」は、治療薬として特定のポリペプチドの立体配座及び望ましい特徴を模倣する化合物を意味する。
【0071】
例えば、本明細書に記載のポリペプチドは、アミノ酸残基がペプチド(−CO−NH−)結合により連結している分子だけでなく、ペプチド結合が反転している分子をも含む。このようなレトロ−インベルソペプチド模倣薬は、業界で周知の方法、例えば、Meziere et al. (1997) J. Immunol. 159, 3230-3237に記載の方法を用いて作製することができ、ここで、この文献の関連する開示内容は、参照することにより本明細書に組み入れられている。この方法は、骨格に関与する変化を含み、そして側鎖の配向性に関係しない擬ペプチド作製を包含する。CO−NHペプチド結合の代わりにNH−CO結合を含有するレトロ−インバースペプチドは、タンパク質分解に遥かに抵抗性である。或いはまた、本発明のポリペプチドは、1つ又はそれ以上のアミノ酸残基が、従来のアミド結合の代わりに−γ(CH2NH)−結合によって連結する、ペプチド模倣化合物であってよい。
【0072】
更に別の実施態様では、アミノ酸残基の炭素原子間にスペーシングを保持する適切なリンカー部分を使用するならば、ペプチド結合は完全に省略してもよく;リンカー部分が、ペプチド結合として実質的に同じ電荷分布及び実質的に同じ平面性を有するならば、特に好ましい。
【0073】
当然のことながら、ポリペプチドは、外部タンパク質分解消化に対する感受性を減らすのを補助するために、例えば、アミド化によりN−又はC−末端で適宜ブロックされてもよい。
【0074】
D−アミノ酸及びN−メチルアミノ酸などの種々の非コード化又は修飾アミノ酸も、哺乳動物ペプチドを修飾するために使用されている。加えて、推定される生物活性立体配座は、環化などの共有結合修飾、又はラクタムの取り込み若しくは他のタイプの架橋により安定化し得るが、例えば、Veber et al., 1978, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 75:2636 and Thursell et al., 1983, Biochem. Biophys. Res. Comm. 111:166を参照されたい。ここで、この文献の関連する開示内容は、参照することにより本明細書に組み入れられている。
【0075】
多くの合成戦略の中での共通のテーマは、ペプチドベースの骨格への特定の環状部分の導入である。環状部分はペプチド構造の立体配座空間を制限し、そしてこのことは、頻繁に特定の生物受容体に対するペプチドの親和性増加をもたらす。この戦略の更なる利点は、ペプチドへの環状部分の導入も、また、細胞ペプチダーゼに対し低下した感受性を有するペプチドをもたらし得ることである。
【0076】
従って、好ましいポリペプチドは、末端システインアミノ酸を含む。このようなポリペプチドは、末端システインアミノ酸中のメルカプチド基のジスルフィド結合形成により、ヘテロデチック(heterodetic)な環状型で、又は末端アミノ酸間のアミドペプチド結合形成によるホモデチック(homodetic)な形態で存在し得る。上記のように、N−及びC−末端システイン間でのジスルフィド又はアミド結合を介した小分子ペプチドの環化は、タンパク質分解を減少させそして高い親和性化合物を誘導し得る構造の剛性を増加させることにより、直鎖状ペプチドでときどき認められる親和性及び半減期の問題を回避し得る。ジスルフィド結合により環化したポリペプチドは、タンパク質分解に依然として感受性を有する遊離アミノ及びカルボキシ末端を有するが、一方でN−末端アミンとC−末端カルボキシル間のアミド結合の形成により環化したポリペプチドは、それ故もはや遊離アミノ又はカルボキシ末端を含有しない。従って、本発明のペプチドは、C−N結合か又はジスルフィド結合によって連結し得る。
【0077】
本発明は、ペプチドの環化方法によって決して限定されるものではなく、その環状構造は、任意の好適な合成方法によって得られるペプチドをも包含し得る。従って、ヘテロデチック結合は、ジスルフィド、アルキレン又はスルフィド架橋を介する形成を含んでもよいが、これに限定されるものではない。ジスルフィド、スルフィド及びアルキレン架橋を含む環状ホモデチックペプチド及び環状ヘテロデチックペプチドの合成法は、米国特許第5643872号に開示されている。環化法の他の例は、米国特許第6008058号にて論じられ開示されている。ここで、これらの文献の関連する開示内容は、参照することにより本明細書に組み入れられている。
【0078】
環状安定化ペプチド模倣化合物の合成の更なる方法は、閉環メタセシス(RCM)である。この方法は、ペプチド前駆体を合成し、そしてそれをRCM触媒と接触させて配座が制約されたペプチドを生成する工程を含む。好適なペプチド前駆体は、2つ又はそれ以上の不飽和C−C結合を含有し得る。この方法は、固相ペプチド合成法を用いて実施し得る。この実施態様では、固相担体に固定した前駆体をRCM触媒と接触させ、次いで生成物を固相担体から切断して配座が制約されたペプチドを生成する。
【0079】
D. H. Rich in Protease Inhibitors, Barrett and Selveson, eds., Elsevier (1986;
この文献の関連する開示内容は、参照することにより本明細書に組み入れられている)により開示されている別の方法は、酵素阻害剤の設計における遷移状態アナログ・コンセプトの応用を介して、ペプチド模倣体を設計するものである。例えば、スタライン(staline)の第2級アルコールが、ペプシン基質の切断しやすいアミド結合の4面体遷移状態によく似ていることは公知である。
【0080】
要約すれば、公知のように末端修飾は、プロテイナーゼ消化により感受性を低下させ、従って、溶液中、特にプロテアーゼが存在すると考えられる生体液中のペプチドの半減期を延長するのに有用である。ポリペプチド環化も、また、有用な修飾であり、環化によって形成される安定な構造の故に、そして環状ペプチドで認められる生物活性の観点から好ましい。
【0081】
それ故、1つの実施態様では、ポリペプチド、又はそのフラグメント、変異体、融合体若しくは誘導体は環状である。しかしながら、好ましい実施態様では、ポリペプチド、又はそのフラグメント、変異体、融合体若しくは誘導体は直鎖状である。
【0082】
本発明の第1の態様で使用するポリペプチド、又はそのフラグメント、変異体、融合体若しくは誘導体の製造方法は、業界で周知である。ポリペプチド、又はそのフラグメント、変異体、融合体若しくは誘導体が組み換えポリペプチドであるか又はそれを含むことは、都合がよい。
【0083】
従って、ポリペプチド、又はそのフラグメント、変異体、融合体若しくは誘導体をコードする核酸分子(又はポリヌクレオチド)は、適切な宿主及びそれから得られるポリペプチド中に発現し得る。そのような組み換えポリペプチドの好適な製造方法は、業界で周知である(例えば、Sambrook & Russell, 2000, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Third Edition, Cold Spring Harbor, New Yorkを参照。この文献の関連する開示内容は、参照することにより本明細書に組み入れられている)。
【0084】
簡潔にいえば、発現ベクターは、適切な宿主中で、核酸分子によりコードされるポリペプチドを発現することができる核酸分子を含んで構築され得る。
【0085】
ポリペプチドは、また、ウサギ網状赤血球溶解物又は小麦胚芽溶解物(Promegaから市販)などのような、市販のインビトロ翻訳システムを用いて、インビトロで生成することもできる。好ましくは、翻訳システムはウサギ網状赤血球溶解物である。翻訳システムがTNT転写−翻訳システム (Promega)などのような翻訳システムに連結していることは、都合がよい。このシステムは、翻訳と同じ反応において、コードするDNAポリヌクレオチドから好適なmRNA転写物を生成するという利点を有する。
【0086】
本発明は、また、上記創傷治癒ポリペプチドの薬学的に許容される酸又は塩基付加塩を含む製品をも含む。本発明において有用な、前述の塩基性化合物の薬学的に許容される酸付加塩を製造するために使用される酸は、とりわけ、非毒性酸付加塩、即ち、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、過リン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、クエン酸水素塩、酒石酸塩、酸性酒石酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、サッカラート、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩及びパモン酸塩[即ち、1,1’−メチレン−ビス−(2−ハイドロキシ−3−ナフトエ酸)]塩などの、薬理学的に許容されるアニオンを含有する塩を形成する酸である。
【0087】
薬学的に許容される塩基付加塩も、また、ポリペプチドの薬学的に許容される塩の形態を生産するために使用し得る。本質的に酸性である本発明の化合物の薬学的に許容される塩基との塩を製造するための試薬として使用し得る化学塩基は、そのような化合物と非毒性の塩基塩を形成するものである。このような非毒性塩基塩は、とりわけ、アルカリ金属カチオン(例えば、カリウム及びナトリウム)及びアルカリ土類金属カチオン(例えば、カルシウム及びマグネシウム)、アンモニウムなどのそのような薬理学的に許容されるカチオンから由来するもの、又はN−メチルグルカミン(メグルミン)などの水溶性アミン付加塩、並びに低級アルカノールアンモニウム及び薬学的に許容される有機アミンとの他の塩基塩を含むが、それらに限定されない。
【0088】
従って、本発明の製品では、LL−37又はそのフラグメントは、酢酸塩の形態で使用し得る。
【0089】
当業者には当然のことながら、創傷治癒特性を有するポリペプチドは、創傷治療材料と混合され又は適用される前に、PBS又はエタノールなどの任意の好適な媒体/緩衝液中で最初に製剤化され得る。
【0090】
本発明の創傷治療用製品の1つの実施態様では、創傷治療材料対創傷治癒特性を有するポリペプチドの質量比は、10:1以上、例えば、30:1、100:1、1,000:1、2,000:1、5,000:1、10,000:1以上、又は50,000:1より大きい。例えば、創傷治療材料対創傷治癒特性を有するポリペプチドの質量比は、10,000:1以上である。
【0091】
本発明の典型的な創傷治療用製品は、以下の成分の組み合わせを含み又はそれから成ってよい:
(a)創傷治療材料はポリウレタンフォームを含むか又はそれから成り、そして創傷治癒特性を有するポリペプチドはLL−37である;
(b)創傷治療材料は親水コロイド包帯を含み又はそれから成り、そして創傷治癒特性を有するポリペプチドはLL−37である;
(c)創傷治療材料はアルギン酸塩フェルト、メチルセルロースゲルを含むか又はそれから成り、そして創傷治癒特性を有するポリペプチドはLL−37である;
(d)創傷治療材料はメチルセルロースゲルを含むか又はそれから成り、そして創傷治癒特性を有するポリペプチドはLL−37である;そして、
(e)創傷治療材料はアカシアハイドロゲル(アラビアゴム)を含むか又はそれから成り、そして創傷治癒特性を有するポリペプチドはLL−37である。
【0092】
1つの特定の実施態様では、創傷治療用製品は、LL−37(又はそのフラグメント)と二重層形成脂質(例えば、ガラクトリピドなど)との複合体を含まない。
【0093】
本発明の第1の態様の更なる実施態様では、創傷治療用製品は、例えば、デフェンシン、グラミシジンS、マゲイニン、セクロピン、ヒスタチン、ヒファンシン(hyphancin)、シンナマイシン(cinnamycin)、ブルホリン1(burforin 1)、パラシン1(parasin 1)及びプロタミン、並びに元のタンパク質の抗菌活性の少なくとも一部を保持するそのフラグメント、変異体及び融合体から成る群から選択される抗菌ポリペプチドを更に含む。
【0094】
本発明の創傷治療用製品の更なる実施態様では、創傷治癒特性を有するポリペプチド(例えば、LL−37など)は、使用時に徐々に放出される。例えば、創傷治療用製品に含まれる創傷治癒特性を有するポリペプチドの50%未満、例えば、40%、30%、20%、10%又は5%未満が、使用の最初の24時間以内に放出し得る。放出速度は以下の実施例に記載の方法を用いて測定し得る。
【0095】
本発明の創傷治療用製品は、使用する構成材料及び製品の用途によって多くの種々の形態を取り得る。しかしながら、一般的には、製品は包帯の形態で提供される。例えば、製品は、ポリウレタンフォーム、乾式不織布シート、凍結乾燥シート、固体ゲルシート、リボン、ロープ及び粘性ゲルの形態を取り得る。
【0096】
使用の前に、創傷治療用製品は殺菌して微生物不浸透性容器の中に包装する必要がある。例えば、創傷治療用製品はチューブ又は他の適切な無菌の塗布器に保存し得る。
【0097】
滅菌は、無菌製造及び/又は照射による最終(即ち、製造後)殺菌などのような、業界で周知の技術を用いて達成し得る。
【0098】
当業者には当然のことながら、本発明の創傷治療用製品は、湿潤創傷環境を維持するのに好適であり得る。従って、本製品は、創傷に湿気を加えるか又は創傷から湿気を取り除くことができる創傷治療材料を含むことができる。
【0099】
創傷治療用製品が、創傷環境において微生物増殖を防止し、根絶し、低減させるかさもなければ減少させることができることが有利である。
【0100】
当然のことながら、本発明の創傷治療用製品は、身体の種々部位の創傷に適合するようにサイズ及び形状を有することができる。例えば、創傷治療用製品は、実質的に平面(即ち、フラット)、凹面、凸面等の創傷包帯表面を与えるような、形状を有することができる。
【0101】
従って、本発明の創傷治療用製品は、20mm以下、例えば、10mm、8mm、6mm、5mm、4mm、3mm、2mm又は1mm以下の厚み(平均又は最大)を有して、実質的に平面(即ち、フラット)であってよい。
【0102】
本発明の第1の態様の特別の実施態様では、創傷治療用製品は、創傷治癒特性を有するポリペプチドを含有するフィルムが、創傷面側に貼り付けられた創傷治療材料の層を含むか又はそれから成る。
【0103】
例えば、創傷治療材料層は、ポリウレタンフォーム包帯、親水コロイドシート包帯、ハイドロゲルシート又は非水性ゲルシートを含むか又はそれから成ってよい。創傷治療材料層が創傷滲出液を吸収することができることが有利である。
【0104】
創傷治癒特性を有するポリペプチドを含有する、典型的な創傷治療用製品のフィルム成分は、創傷治療材料層の表面に直接貼り付け得る。或いはまた、フィルムは、1つ又はそれ以上の介在層又はフィルムを介在させて間接的に貼り付けることができる(下記を参照)。
【0105】
一般的に、フィルムは、フィルム形成材料及び創傷治癒特性を有するポリペプチドを含む。フィルム、また、可塑剤及び着色剤などの更なる成分を含んでもよい。
【0106】
合成ポリマー、澱粉及び多糖類などの好適なフィルム形成材料は、業界で周知である。例えば、フィルムは、水性ポリマー・マトリックス、セルロース誘導体、アクリル酸コポリマー、ゴム、多糖類及びポリ乳酸ポリマーから形成し得る。
好ましくは、フィルムは水溶性である。
【0107】
フィルム組成は、特異的な制御可能な溶出速度を与えるために選択し得る。例えば、フィルムは1時間未満、例えば、30分、20分、10分又は5分未満の溶出時間(創傷上で又は水中で測定)を有してよい。溶出時間は適切なフィルム形成材料の選択により制御し得る;例えば、多糖類は高速溶出(<10秒)を与えることができ、ハイドロキシプロピルメチルセルロースは中速溶出速度(約30秒)を与えることができるが、一方コーンスターチは低速溶出(>2分)を与えることができる。
【0108】
一般的に、フィルムは、1mm以下の厚さ、例えば、0.8mm、0.6mm、0.4mm、0.2mm、0.1mm又は0.05mm以下の厚さである。
【0109】
創傷治癒特性を有するポリペプチドは、フィルム内に均一に分布し得る(例えば、ポリペプチドは、フィルム層を形成する前に水性ポリマー・マトリックスなどのフィルム形成材料に添加してもよい)。
【0110】
典型的な創傷治療用製品のフィルム成分は、創傷治療材料層の創傷面側のすべて又は適切な部分を覆い得る。従って、フィルムは、創傷治療材料層の片面の表面積の少なくとも30%、例えば、表面積の少なくとも50%、60%、70%、80%、90%又は100%を覆い得る。
【0111】
フィルムは、創傷治療材料層の露出周辺部位によって囲まれる創傷治療材料層の中央部を覆うことが都合がよい。
【0112】
1つの実施態様では、フィルムは穿孔されている。フィルムの穿孔は、創傷治療材料上の創傷治癒特性を有するポリペプチドの逆流を減少させ防止することができることから、滲出性創傷に特に有用である。従って、穿孔は、最初に創傷滲出液を創傷治療材料に吸収させることを可能にし、その後にLL−37が創傷部位へと可溶性フィルムから徐々に出現し得る。
【0113】
穿孔の程度及び穿孔のサイズは、創傷治癒性能に対して最適化し得る。例えば、穿孔は、フィルム表面積の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%以上を占めることができる。個々の穿孔は、少なくとも0.1mm2、例えば、少なくとも0.2mm2、0.5mm2、1mm2、2mm2、5mm2、又はそれ以上の平均サイズを有することができる。
【0114】
1つの実施態様では、創傷治癒特性を有するポリペプチドを含有するフィルムは、介在層を経て創傷治療材料層に間接的に貼り付けられる。介在層は、好ましくは創傷治癒特性を有するポリペプチドを含有するフィルムよりも低い溶出速度を有する。例えば、介在層は5分より大きい、例えば、10分、20分、30分又は60分より大きい溶出時間(創傷上で又は水中で測定)を有してもよい。
【0115】
当然のことながら、介在層も、また、穿孔されていてよい(フィルムと同様に)。場合により、介在層の穿孔はフィルムの穿孔と合致している(即ち、整列している)。しかしながら、代わりに、介在層の穿孔はフィルムの穿孔と食い違っていてもよい。
【0116】
上記の創傷治療用製品設計の典型的な実施態様は、以下の製品を含む:
(a)LL−37を含有する非穿孔水溶性フィルムが創傷と接触する側に貼り付けられたポリウレタンフォーム包帯を含む、創傷滲出液を吸収することができる創傷治療用製品;
(b)LL−37を含有する穿孔水溶性フィルムが創傷と接触する側に貼り付けられたウレタンフォーム包帯を含む、創傷滲出液を吸収することができる創傷治療用製品;
(c)フィルムが、非穿孔水溶性介在層(フィルムより低い溶出速度を有する)を経てポリウレタンフォーム包帯に間接的に貼り付けられる、(a)又は(b)の創傷治療用製品;及び
(d)フィルムが、穿孔水溶性介在層(フィルムより低い水溶性を有する)を経てポリウレタンフォーム包帯に間接的に貼り付けられる、(a)又は(b)の創傷治療用製品。
そのような創傷治療用製品設計の例を、図7に示す。
【0117】
本発明の第2の態様は、創傷治療において詳述した創傷治療用製品の使用を提供する。そのような製品は、慢性創傷、例えば、静脈性潰瘍、糖尿病性潰瘍及び褥瘡の治療に特に適している。
【0118】
一般的に、創傷治療用製品は創傷の表面に直接適用される。場合により、二次的な従来の包帯が創傷治療用製品の最上部に適用されてもよい。更に、ある場合には、透過性の非付着性包帯が創傷と創傷治療用製品間に適用されてもよい。
【0119】
当然のことながら、本発明の製品は、治癒過程を補助しそして感染を防止するために、一定の間隔で創傷上で交換する必要がある。
【0120】
本発明の第3の態様は、創傷を上記に詳述した創傷治療用製品と接触させることを含む、創傷の治療方法を提供する。
【0121】
本発明の第4の態様は、創傷治療材料及び創傷治癒特性を有するポリペプチドを組み合わせることを含む、創傷治療用製品の製造方法を提供する。その方法は、ポリペプチドが創傷治療材料全体に分散するように、創傷治療材料及びポリペプチドを混合することを含む;これは創傷治療材料の製造前か又は製造中に行ってもよい。或いはまた、創傷治癒特性を有するポリペプチドは、そのような創傷治療材料が製造された後に、創傷治療材料の露出表面に適用し得る。更に別な選択肢では、創傷治癒特性を有するポリペプチドを含むフィルムが、創傷治療材料に貼り付けられ又は適用される。
【0122】
例えば、アルギン酸塩創傷治療材料を含む創傷治療用製品の場合、創傷治癒特性を有するポリペプチドは、創傷治療材料の製造前、製造時又は製造後に添加してもよい。従って、創傷治癒ポリペプチドは、不織布シートの場合には紡糸(例えば、湿式紡糸)工程の前に、又は凍結乾燥シートの場合には凍結乾燥工程の前に添加してもよい。或いはまた、創傷治癒特性を有するポリペプチドの水溶液又は非水溶液を、創傷治療材料の製造後に適用した後、乾燥工程(場合により凍結乾燥又は真空乾燥であってよい)を行うことができる。
【0123】
ハイドロファイバー創傷治療材料に基づく、そして創傷治癒特性を有するポリペプチドを含む創傷治療用製品の場合には、創傷治療材料の出発成分が異なっても、これらはアルギン酸塩創傷治療材料に基づく創傷治療用製品について上述したのと同様の方法で製造することができる。
【0124】
非晶質ハイドロゲル創傷治療材料に基づく、そして創傷治癒特性を有するポリペプチドを含む創傷治療用製品の場合には、これらは紡糸又は乾燥を含まないむしろ直接的な方法で製造することができる:ポリペプチド(場合により2重層形成脂質に複合体化)は、ゲル形成ポリマー及び溶媒を混合しハイドロゲルを形成する間又はその後に、単純に添加することができる。
【0125】
ハイドロゲル創傷治療材料に基づく、そして創傷治癒特性を有するポリペプチドを含む創傷治療用製品の場合には、これらは、また、むしろ直接的な方法で製造することができる:ポリペプチド(場合により2重層形成脂質に複合体化)は、ゲル形成ポリマー及び溶媒を混合する間又はその後に、しかし常にこの混合物が、熱硬化、架橋又は他の過程によりハイドロゲルシートを形成する前に、添加することができる。
【0126】
多重層包帯(例えば、図7に示すようなもの)に基づく創傷治療用製品の場合には、創傷治癒特性を有するポリペプチドを含有するフィルムを別々に作成し、次いで創傷治療材料層に適用してもよい。或いはまた、このフィルムは、スプレー・コーティング、スクリーン印刷/ローラーコート・キッシング、超音波噴霧及び他の業界公知の技術により、創傷治療材料層上に製造し得る。
【0127】
最後に、本発明の第5の態様は、上記に定義した創傷治療材料、及び上記に定義し創傷治療特性を有するポリペプチドを含む、創傷治療キットを提供する。
【0128】
本発明の好ましい態様は、以下の図を参照しながら、以下の非限定的な実施例の中で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】PUフォームからのLL−37の水溶液又はエタノール溶液の放出 PBS又はエタノールに溶解したLL−37は、25μgLL−37/cm2の濃度でPUフォームに吸収された。1×1cm片の各製剤はカットされ、PBS(3ml)を含有するガラスバイアルに入れ、そして攪拌下に24時間インキュベートした。種々の時点(10、20、45,120分、及び24時間)で、試料(100μl)を採取し、そして溶液中に放出されたLL−37の量をELISAで評価した。結果を、溶液中に放出されたLL−37(%)で表す。
【図2】市販創傷治療包帯からのLL−37の放出 PBSに溶解したLL−37(100μg/ml、250μl)を、種々の市販創傷治療用製品(〜1cm2)の最上部に添加した。材料を乾燥し、そしてPBS−1%BSA(3ml)中で24時間インキュベーションした後、LL−37の放出を評価した。結果を、溶液中に放出されたLL−37(%)で表す。
【図3】乾燥及び再水和ゲルからPBS−1%BSA中へのLL−37の放出 LL−37(100μg/ml)の水溶液を、5%K−カラギーナン、1%メチルセルロース、5%アラビアゴム、及び1.6%ハイドロキシプロピル(HP)セルロースと混合した。既知量のゲルをガラス表面にコーティングし、そして乾燥した後1%BSA含有PBS(3ml)で再水和した。ゲルから放出されたLL−37の量をELISAにより評価し、そして結果を、1%BSA含有PBS(3ml)で再水和した溶液中に放出されたLL−37(%)で表した。
【図4】種々のゲル:LL−37比から成る乾燥及び再水和メチルセルロースゲルからのLL−37の放出 LL−37(100μg/ml)の水溶液を種々の量の1%メチルセルロースと混合して、種々の質量:質量比(300:1、30:1、及び3:1)を得た。対照として、LL−37をゲルの不存在下(0:1)で使用した。既知量のゲルをガラス表面にコーティングし、そして乾燥した後1%BSA含有PBS(3ml)で再水和した。ゲルから放出されたLL−37の量をELISAにより評価し、そして結果を1%BSA含有PBS(3ml)で再水和した溶液中に放出されたLL−37(%)で表した。
【図5】種々の放出試料へのヒトPBMCの走化性 ヒトPBMCをFicollを用いて新鮮血から分離し、そしてRPMI−1%BSA中に再懸濁した。細胞(5×105細胞/ml)を、PBS−1%BSA中で放出試料(150μl)へ向かって1.5時間移動できるようにした。次いで全ての移動細胞を採取し、DNAを蛍光色素で染色し、そして蛍光を評価した。各条件について4回繰り返して測定し、そして結果を標準偏差を付けて平均相対蛍光単位(RFU)で表した。LL−37を含まない対照試料は白バーで表示した。完全な試料コードは表1を参照されたい。*印は、対応する負の対照を用いた場合、両側不等分散t−検定を用いてp<0.05を表す。バーの数値は、ELISAで測定したLL−37の濃度(ng/ml)を表す。
【図6】種々の放出試料へのヒトPBMCの走化性 ヒトPBMCをFicollを用いて新鮮血から分離し、そしてRPMI−1%BSAに再懸濁した。走化性分析は、図5に記載のように実施した。LL−37を含まない対照試料は白バーで表示した。完全試料コードは表1を参照されたい。*印は、対応する負の対照を用いた場合、両側不等分散t−検定を用いてp<0.05を表す。バーの数値は、ELISAで測定したLL−37の濃度(ng/ml)を表す。
【図7A】本発明の創傷治療用製品の典型的な実施態様 (A)片側に貼り付けられたLL−37を含有する水溶性フィルムを有する創傷治療材料層(例えば、PUフォームなど)を含む簡便包帯の平面図と側面図。 註:包帯は原寸通りの縮尺で描かれていない(例えば、フィルム厚さは誇張されている)。
【図7B】本発明の創傷治療用製品の典型的な実施態様 (B)フィルム層が穿孔されている(A)の簡便包帯の改良タイプの平面図と側面図。フィルムの穿孔を介する創傷治療材料による最初の創傷滲出液の吸収と、その後に続くフィルムからのLL−37の放出を示す概念図。 註:包帯は原寸通りの縮尺で描かれていない(例えば、穿孔サイズは誇張されている)。
【図7C】本発明の創傷治療用製品の典型的な実施態様 (C)フィルム層が、LL−37を含有するフィルムよりも遅い溶出速度を有する介在塗膜層を介して創傷治療材料層に貼り付けられている、(A)の簡便包帯の更なる改良タイプの平面図と側面図。
【0130】
〔実施例1〕
LL−37の製剤化、種々の用具からのその放出の評価、及びその生物活性の評価
はじめに
LL−37は、カテリシジンと呼ばれるヒト抗菌ペプチドの唯一の一員である。LL−37は、種々の細胞型及び組織(Durr, Sudheendra et al. 2006)に発現するヒトhCAP18タンパク質に由来する。広範囲の抗菌スペクトルを呈する以外に、LL−37は宿主防御において広範な役割を果たし、そしてまた創傷治癒特性を有する(Kai-Larsen and Agerberth 2008及び国際公開公報第2004/067025号を参照)。
【0131】
本発明の1つの実施態様では、難治性又は開放創を患っているヒトで使用される第3種医療用具が提供される。この医療用具は、合成的に製造されたLL−37含有製剤でコーティング/含浸/プリントされた包帯から構成することができる。
【0132】
材料及び方法
LL−37の製剤化
ポリウレタンフォームへのLL−37の吸収
LL−37をエタノール又はPBSに溶解し、そして懸濁液(1ml)を2×2cm片のポリウレタン(PU)フォーム(Brightwake, Kirkby-in-Ashfield, United Kingdom)上に滴下した。試料は、もはや減量が記録し得なくなるまで室温で乾燥させた。特に断りのない限り、100μg/mlのLL−37溶液を使用し、そして25μg/cm2のLL−37濃度にした。
【0133】
また、LL−37を、2×2cmPUフォーム上へ適用する前に種々の賦形剤と混合した。PBSに溶解したLL−37を乾燥したガラクトリピドに加え、そして得られた分散液を1時間激しく振盪した。ガラクトリピド濃度は0.2%(w/w)であった。水に溶解したLL−37を、水中25%ポロキサマー(Lutrol F127)から成る予備成形ゲルに加えた。得られた約1gの混合物を、約60℃で約10分間加熱してアルコールを蒸発させた。次いで、この製剤を2×2cm片のPUへスパチュラで塗布した。水を含む製剤の場合には、PUフォームを室温で少なくとも24時間乾燥した。
【0134】
市販創傷治療用製品上/中へのLL−37の適用/吸収
PBSに溶解したLL−37(100μg/ml、250μl)を、〜1cm2の種々の市販創傷治療用製品:Duoderm (Convatec)、 Mepilex (Moelnlycke Health care)、Melolin (Smith&Nephew)、 Alginate Felt and Hydrocoll (AG Hartmann) の最上部に添加した (LL−37溶液(わずか50μl)を加えた)。これらの材料は室温で18時間、続いて37℃で2時間乾燥した。各試料から放出されたLL−37を、PBS(3ml)又は1%BSAを含むPBSを加えることにより24時間試験した。
【0135】
ガラス表面へ塗布したLL−37溶液及びゲル形成賦形剤の混合物の蒸発
LL−37の水溶液(100μg/ml)を、1.6%ハイドロキシプロピル(HP)セルロース(Apoteket, Stockholm, Sweden)、5%K−カラギーナン(Sigma, Stockholm, Sweden)、1%メチルセルロース(Apoteket)、5%アラビアゴムGO0020(Scharlau)と混合した。既知量のゲルをガラス表面へコーティングし、そして室温で24時間、続いて37℃で3時間乾燥した。その後、ゲルを再水和し、そしてPBS(3ml)又は1%BSAを含むPBSを各バイアルに添加後、LL−37の放出を検討した。
【0136】
種々の用具からのLL−37の放出
コーティングしたPUフォームからLL−37を放出させるために、1×1cm試料をカットし、そして各試料に存在するLL−37の量を算出するために秤量した。各PUフォーム試料をPBS(3ml)を含む15mlのガラスバイアルに入れ、そして6rpmの一定振盪により室温で所定時間インキュベートした。種々の時間間隔(10、20、45、120分、及び24時間)で、放出試料(100μl)を分析用に取り、そして新しいPBS(100μl)で置換した。放出試料は、分析まで通常4℃で24時間保存した。
【0137】
LL−37を含有するゲルでコーティングしたガラスからLL−37を放出させるために、PBS(3ml)を各バイアルに加え、試料を24時間後に採取し、そして上述の試料と同じように処理した。
【0138】
LL−37を含有する市販創傷治療用製品からLL−37を放出させるために、PBS(3ml)を各バイアルに加え、試料を24時間後に採取し、そして上述の試料と同じように処理した。
放出を、放出液体中のLL−37の総量を試料中の負荷LL−37量で除して算出した。
【0139】
医療用具から放出されたヒトLL−37の検出及び定量
LL−37は、Lindgreen and colleagues (Lindgreen 2004)で開発されたプロトコールに基づいて、酵素免疫吸着法(ELISA)を用いて検出し、定量した。中等度結合能力の96ウェルプレート(Greiner Bio-one, Frickenhausen Germany)に、コーティング緩衝液(0.1M重炭酸イオン緩衝液、pH9.0、200μl)中の5μg/mlウサギIgG抗LL−37抗体(Agrisera, Vannas, Sweden)を、2〜8℃で18〜24時間コーティングした。プレートを洗浄緩衝液(0.01Mリン酸緩衝液、pH7.2、0.145MのNaCl、及び0.2%のTween20、200μl)で3回洗浄し、ブロッキング溶液(0.5MTris−HCl中1%ウシ血清アルブミン[BSA、Sigma]、pH7.5、200μl)でブロックし、そして上記のように洗浄した。LL−37標準(6.25〜2、000ng/ml)及び試料(50μl)を二重に各ウェルに加え、続いて希釈緩衝液(0.01MのPBS、0.145MのNaCl、0.1%のTween20、及び0.1%のBSA、150μl)を添加した。プレートを2〜8℃で18〜24時間インキュベートした。洗浄後、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(POD)結合メンドリIgY及び抗LL−37(希釈緩衝液で1/200倍に希釈)(Agrisera)(200μl)を加えた。連続振盪しながら室温で5時間インキュベーションした後試料を洗浄し、呈色試薬A(100μl)及び呈色試薬B(TMB)(R&D Systems, Abingdon, United Kingdom)(100μl)を加えることにより30分間現像した。1Mの硫酸(50μl)の添加により反応を停止し、そして吸光度を、解析用のSoftMax Proソフトウェア (Molecular Devices)を搭載したVERSAmaxマイクロリーダーを用いて450nm(OD450nm)で直ちに読み取った。
【0140】
ヒト末梢血単球細胞の分離
末梢血単球細胞(PBMC)を、Ficoll-Paque Plus(GE Healthcare, Uppsala, Sweden)遠心分離により静脈血(K2EDTAで採集)から分離した。簡潔にいえば、血液(30〜50ml)を、室温のCa2+/Mg2+−フリーリン酸緩衝液生理食塩水(PBS、Invitrogen, Merelbeke, Belgium)で2回希釈し、そして希釈血液(30ml)をFicoll-Paque Plus(15ml)の最上部に層状にした。340g、室温で30分遠心分離した後、単核細胞に対応するバンドを吸引し、そしてPBSで2回洗浄した後グルタマックス(glutamax)を含有するRPMI1640培地(Invitrogen)に再懸濁し、更に100U/mlペニシリン(Invitrogen)、100μg/mlストレプトマイシン(Invitrogen)、及び1%ウシ血清アルブミン(BSASigma, Stockholm, Sweden)を補充した。
【0141】
走化性分析
走化性を、メーカー使用説明書に従い、3μmの膜挿入物(Millipore, Solna, Stockholm)を付けたQCM(登録商標)走化性96ウェルプレートを用いて分析した。簡潔にいえば、化学走化性試験試料(150μl)を各ウェルの低部チャンバーに分配し、細胞懸濁液(5×105又は1×106細胞/ml)(100μl)を上部チャンバーに分配した。インターロイキン−8(IL−8、R&D Systems)を陽性対照(10及び100ng/ml)として用い、そしてRPMI−1%BSA又はPBS−1%BSAを陰性対照として用いて、ランダム移動を評価した。化学走化性試料を、RPMI−1%BSAか又はPBS中で調製し、次いで1%BSAを補充した。37℃及び5%CO2で1.5又は3時間インキュベーション後、メーカー使用説明書に従い、低部チャンバー及び挿入物から移動細胞を回収した。細胞を溶解し、そして緑色蛍光色素(CyQuant GR dye, Molecular Probes)を用いて室温で15分間染色した。細胞溶解産物(150μl)を96ウェル平底不透明マイクロプレート(PerkinElmer, Upplands Vasby, Sweden)に移し、そして蛍光を、Wallac 1420蛍光プレートリーダー (Perkin Elmer)を用いて485/535nm(測定時間:1.0秒)で読み取った。各条件につき4回繰り返して実施した。結果は、平均相対蛍光単位(RFU)として表し、又はバックグラウンドRFUを差し引いた後、適切な負対照の平均RFUで各試料の平均RFUを除することにより走化性指数に変換した。
【0142】
試薬
ヒトカテリシジン抗菌ペプチドLL−37(バッチ990/37/A及び1013)(LLGDFFRKSKEKIGKEFKRIVQRIKDFLRNLVPRTES[配列番号1])を、ポリペプチドラボラトリーA/S(Hillerod, Denmark)から得た。特に断りのない限り、バッチ1013を全ての製剤実験に使用し、一方、バッチ990/37/AをELISA用の標準曲線を作成するために使用した。ペプチドは1×PBS中1mg/mlに再構成し、等分し、そして使用まで−20℃で保存した。
【0143】
LL−37の製剤化
LL−37は水溶液又は非水溶液として、そして種々の担体に吸収させるか又はゲルと混合して調製した。
LL−37溶液(PBS又はエタノール)をPUフォームに吸収させる場合、PUフォームの変化は肉眼では検出されず、そしてLL−37の溶解に使用した液体は、すべて室温で2〜3日後に容易に除去された。
LL−37は、Duoderm及びhydrocollを除くすべての市販創傷治療用製品に吸収することができた。Hydrocollでは、より小容量のLL−37溶液を使用しなければならなかったが、それは試料の表面で成功裏に乾燥され、膜上に塩様スポットを残した。アルギン酸塩試料は乾燥後硬くなったが、他の2つの材料は形状が変化しなかった。
全てのゲルは、沈殿形成もなく(目視検査)LL−37と混合することができた。
【0144】
LL−37は、ポリウレタンフォーム及び市販創傷治療包帯から放出し得る
最初にPBS、エタノール、又はガラクトリピド中のLL−37の製剤化後、PUフォームからのLL−37の放出を評価した。LL−37(25μg)を含有する1×1cm片の各PUフォームを、振盪条件下にPBS(3ml)中でインキュベートし、そして試料を種々の時点(10、20、45、120分、及び24時間)で採取して、ELISAによりLL−37の存在を測定した。図1に示された結果は、ペプチドをPBS又はエタノール中で製剤化した場合、LL−37の迅速放出がPUフォームから生じたことを示す。放出は、24時間インキュベーション後に最大の30%に達した。LL−37をガラクトリピド(エタノール又はPBS溶液)又はポロキサマー(Lutrol)中で製剤化した場合、それぞれ検出されないか又は低い(1%)放出が認められた(データは示していない)。
市販創傷治療包帯に適用した場合、PBS中で製剤化したLL−37も、また、放出することができた(図2)。最大の放出は、Hydrocoll製品(24時間後に25%放出)から認められ、これは他の包帯(25μg/cm2)に比べてLL−37(5μg/cm2)を含有した。他の包帯、即ち、Alginate Felt、Mepilex、及びMelodinは、それぞれ約10、5、及び2%のLL−37を放出した。
【0145】
LL−37は、乾燥及び再水和ゲル形成賦形剤から放出し得る
LL−37の水溶液(100μg/ml)を種々のゲル形成製品と混合し、ガラス表面上にコーティングして、乾燥し、続いてPBS(3ml)中で24時間再水和した。各再水和ゲル中のLL−37の存在をELISAで評価した。結果を図3に示す。 種々の量のLL−37が種々のゲルから放出されたが、メチルセルロースによるゲルは、最大のLL−37(32%)を放出することを可能とした。
ゲル量がLL−37放出の効率に影響を及ぼすかどうかを評価するために、種々のゲル:LL−37比を用いてガラスバイアルにコーティングした実験を実施した(図4)。この場合は、メチルセルロースゲルを使用した。対照として、LL−37単独(0:1)をガラスバイアルで乾燥した。乾燥ゲルを1%BSAを含有するPBS(3ml)で再水和した後、LL−37の存在をELISAで測定した。驚くべきことに、ゲル量が高くなるほど、LL−37の高い放出が得られた(殆ど20%の放出)ことは、LL−37溶液へのゲルの添加は有害ではなく、実際に用具/担体(ここではガラス)からのその放出に有利に働くことを示唆した。従って、メチルセルロースの添加は、放出実験前にLL−37をPBSに加えて乾燥する場合と比較して、固体担体からのLL−37の放出を増加させた。
【0146】
LL−37の放出はその生物活性を保持する
種々の用具から一旦放出されたLL−37の機能性を、LL−37のヒト細胞誘引能を評価する走化性分析を用いて評価した。走化性は、炎症細胞の補充が正常な創傷治癒過程の早期に起こるので、創傷治癒を研究するための重要かつ適切な機能となる(Shai and Maibach 2005)。加えて、LL−37は、走化性能を含む種々の生物活性を示す(Kai-Larsen and Agerberth 2008)。
幾つかの放出試料(表1)について、1.5時間インキュベーション後のそれらのPBMC(5×105細胞/ml)誘引能を評価した。
【0147】
【表1】

【0148】
図5に表わされる結果は、PBS中のLL−37によりコーティングしたPUフォーム又はLL−37と混合したアラビアゴムから放出された試料が、それぞれ非処理PU又は非修飾アラビアゴムから放出された試料に比べて、より多くのPBMCを顕著に誘引することを示す。LL−37含有ポロキサマー(Lutrol)をコーティングしたPUフォームは走化性活性の増加傾向を示した。しかしながら、その増加は有意ではなかった(p=0.054)。この結果は、LL−37をコーティングしたフォーム又は製剤化したゲルは、LL−37を懸濁液として放出し得ること、そして放出されたペプチドがその生物活性を保持することを示す。
【0149】
これらの結果を確認し、そしてドナー特異的結果を除外するために、異なるドナー由来の血液を用いて第2の実験を実施した。この場合、PBS中のLL−37が吸収されている(25μgLL−37/cm2)2つのPUフォームからの放出を評価した(図6)。1つの試料は高い量のLL−37(4,500ng/ml)を含有することが知られているので、その試料の希釈(1/4)についてもその化学走化性能を評価した。
【0150】
結論
結果は、生物活性LL−37が、含水溶液と接触することにより、予め負荷し乾燥した包帯から放出され得ることを示す。更に、包帯からの生物活性LL−37の放出は、3μmのサイズの細孔を通して活性移動することによって本明細書に例示したように、白血球の機能を強化する。
【0151】
参考文献
Carretero, M., M. J. Escamez, et al. (2008), 「ヒトカテリシジンLL−37のインビトロ及びインビボ創傷治癒促進活性」(“In vitro and in vivo wound healing-promoting activities of human cathelicidin LL-37” ), J. Invest. Dermatol., 128(1): 223-36。
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epithelial cell-derived cathelicidin, utilizes formyl peptide receptor-like 1 (FPRL1) as a receptor to chemoattract human peripheral blood neutrophils, monocytes, and T cells”), J. Exp. Med., 192(7): 1069-74。
Durr, U. H., U. S. Sudheendra, et al. (2006),「LL−37、抗菌ペプチドのカテリシジンファミリーの唯一のヒトメンバー」(“LL-37, the only human member of the cathelicidin family of antimicrobial peptides”), Biochim. Biophys. Acta, 1758(9): 1408-25。
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Kai-Larsen, Y. and B. Agerberth (2008), 「宿主防御における多機能ペプチドLL−37の役割」(“The role of the multifunctional peptide LL-37 in host defense”), Front Biosci 13: 3760-7。
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18/LL−37は、ホルミルペプチド受容体様1及びP2X7の活性化を経て好中球アポトーシスを抑制する」(“An antimicrobial cathelicidin peptide, human CAP18/LL-37, suppresses neutrophil apoptosis via the activation of formyl-peptide receptor-like 1 and P2X7”), J. Immunol., 176(5): 3044-52。
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Sieber, V. K., W. R. Otto, et al. (1995), 「培養皮膚等価物を用いて評価した創傷包帯材料の細胞毒性」(“Cytotoxicity of wound dressing materials assessed using cultured skin equivalents”), Burns, 21(4): 249-54。
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
創傷治療材料及び創傷治癒特性を有するポリペプチドを含む、創傷治療用製品。
【請求項2】
創傷治癒特性を有するポリペプチドがLL−37である、請求項1に記載の創傷治療用製品。
【請求項3】
創傷治療材料が、アルギン酸塩、非晶質ハイドロゲル、シートハイドロゲル、ハイドロファイバー、発泡体、親水コロイド、コラーゲン系材料、ヒアルロン酸系材料、デキストラノマー、デキストリノマー/カデキソマー及び酸化再生セルロース、並びにそれらの混合物から成る群から選択される、請求項1又は2に記載の創傷治療用製品。
【請求項4】
創傷治療材料がアルギン酸塩を含むか又はそれから成る、請求項3に記載の創傷治療用製品。
【請求項5】
乾式不織布シート、凍結乾燥シート、リボン又はロープの形態の、請求項4に記載の創傷治療用製品。
【請求項6】
創傷治療用製品が高滲出性創傷治療用である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の創傷治療用製品。
【請求項7】
創傷治療材料が非晶質ハイドロゲルを含むか又はそれから成る、請求項3に記載の創傷治療用製品。
【請求項8】
請求項7に記載の創傷治療用製品であって、ハイドロゲルが、合成ポリマー、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール、ポロキサマーブロックコポリマー等;半合成ポリマー、例えば、カルボキシメチルセルロース、ハイドロキシエチルセルロース、ハイドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、メチルハイドロキシプロピルセルロース及びエチルハイドロキシエチルセルロース等を含むセルロースエーテル;天然ゴム、例えば、アラビアゴム、カラギーナン、キトサン、ペクチン、澱粉、キサンタンガム等;及びアルギン酸塩から成る群から選択される1つ又はそれ以上のハイドロゲル形成ポリマーを含む創傷治療用製品。
【請求項9】
1つ又はそれ以上のハイドロゲル形成ポリマーが水性溶媒に溶解している、請求項8に記載の創傷治療用製品。
【請求項10】
水性溶媒が水、生理食塩水、緩衝液及び水/プロピレングリコールから成る群から選択される、請求項9に記載の創傷治療用製品。
【請求項11】
1つ又はそれ以上のハイドロゲル形成ポリマーが非水溶媒に溶解している、請求項8に記載の創傷治療用製品。
【請求項12】
非水溶媒がグリセロール、プロピレングリコール及びポリエチレングリコールから成る群から選択される、請求項11に記載の創傷治療用製品。
【請求項13】
ハイドロゲルが粘性ゲルである、請求項7〜12のいずれか1項に記載の創傷治療用製品。
【請求項14】
ハイドロゲルがチューブ又は塗布器に収容される、請求項7〜13のいずれか1項に記載の創傷治療用製品。
【請求項15】
創傷治療用製品が非滲出性創傷の治療用である、請求項7〜14のいずれか1項に記載の創傷治療用製品。
【請求項16】
創傷治療材料がシートハイドロゲルを含むか又はそれから成る、請求項3に記載の創傷治療用製品。
【請求項17】
請求項16に記載の創傷治療用製品であって、ハイドロゲルが、合成ポリマー、例えば、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール、ポロキサマーブロックコポリマー等;半合成ポリマー、例えば、カルボキシメチルセルロース、ハイドロキシエチルセルロース、ハイドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、メチルハイドロキシプロピルセルロース及びエチルハイドロキシエチルセルロース等を含むセルロースエーテル;天然ゴム、例えば、アラビアゴム、カラギーナン、キトサン、ペクチン、澱粉、キサンタンガム等;及びアルギン酸塩から成る群から選択される1つ又はそれ以上のハイドロゲル形成ポリマーを含む創傷治療用製品。
【請求項18】
ハイドロゲルがメチルセルロースを含むか又はそれから成る、請求項16又は17に記載の創傷治療用製品。
【請求項19】
ハイドロゲルがアラビアゴムを含むか又はそれから成る、請求項16又は17に記載の創傷治療用製品。
【請求項20】
創傷治療材料が親水コロイド包帯を含むか又はそれから成る、請求項16又は17に記載の創傷治療用製品。
【請求項21】
創傷治療用製品が非滲出性創傷の治療用である、請求項16〜20のいずれか1項に記載の創傷治療用製品。
【請求項22】
創傷治療材料がハイドロファイバーを含むか又はそれから成る、請求項3に記載の創傷治療用製品。
【請求項23】
ハイドロファイバーがカルボメチルセルロースを含むか又はそれから成る、請求項22に記載の創傷治療用製品。
【請求項24】
創傷治療材料が発泡体を含むか又はそれから成る、請求項2に記載の創傷治療用製品。
【請求項25】
発泡体がポリウレタンを含むか又はそれから成る、請求項24に記載の創傷治療用製品。
【請求項26】
請求項1〜25のいずれか1項に記載の創傷治療用製品であって、創傷治癒特性を有するポリペプチドが、カテリシジン、又は元のカテリシジンの創傷治癒特性の少なくとも一部を保持するそのフラグメント、変異体若しくは融合体である創傷治療用製品。
【請求項27】
請求項26に記載の創傷治療用製品であって、カテリシジンが、ヒトカチオン性抗菌タンパク質(hCAP18)及びそのC末端ペプチドLL−37、PR39、プロフェニン及びインドリシジンから成る群から選択される創傷治療用製品。
【請求項28】
請求項26又は27に記載の創傷治療用製品であって、創傷治癒特性を有するポリペプチドが、LL−37、又はLL−37の創傷治癒特性の少なくとも一部を保持するそのフラグメント、変異体若しくは融合体である創傷治療用製品。
【請求項29】
創傷治癒特性を有するポリペプチドが、LL−36、LL−35、LL−34、LL−33、LL−32、LL−31、LL−30、LL−29、LL−29、LL−27、LL−26、LL−25、LL−24、LL−23、LL−22、LL−21及びLL−20から成る群から選択されるLL−37のフラグメントであるか又はそれを含む、請求項28に記載の創傷治療用製品。
【請求項30】
創傷治癒特性を有するポリペプチドが酢酸塩である、請求項28又は29に記載の創傷治療用製品。
【請求項31】
創傷治癒特性を有するポリペプチドがPBS又はエタノール中で製剤化される、請求項1〜30のいずれか1項に記載の創傷治療用製品。
【請求項32】
創傷治療材料対創傷治癒特性を有するポリペプチドの質量比が10:1以上、例えば、30:1、100:1、1,000:1、2,000:1、5,000:1、10,000:1以上、又は50,000:1より大きい、請求項1〜31のいずれか1項に記載の創傷治療用製品。
【請求項33】
創傷ケア材料対創傷治癒特性を有するポリペプチドの質量比が30:1以上である、請求項32に記載の創傷治療用製品。
【請求項34】
創傷治療材料がメチルセルロースゲルを含むか又はそれから成る、請求項32又は33に記載の創傷治療用製品。
【請求項35】
創傷治癒特性を有するポリペプチドがLL−37である、請求項32又は33に記載の創傷治療用製品。
【請求項36】
創傷治療材料がポリウレタンフォームを含むか又はそれから成り、そして創傷治癒特性を有するポリペプチドがLL−37である、請求項1〜35のいずれか1項に記載の創傷治療用製品。
【請求項37】
創傷治療材料が親水コロイド包帯を含むか又はそれから成り、そして創傷治癒特性を有するポリペプチドがLL−37である、請求項1〜35のいずれか1項に記載の創傷治療用製品。
【請求項38】
創傷治療材料がアルギン酸塩フェルトを含むか又はそれから成り、そして創傷治癒特性を有するポリペプチドがLL−37である、請求項1〜35のいずれか1項に記載の創傷治療用製品。
【請求項39】
創傷治療材料がメチルセルロースゲルを含むか又はそれから成り、そして創傷治癒特性を有するポリペプチドがLL−37である、請求項1〜35のいずれか1項に記載の創傷治療用製品。
【請求項40】
創傷治療材料がアラビアゴムハイドロゲルを含むか又はそれから成り、そして創傷治癒特性を有するポリペプチドがLL−37である、請求項1〜35のいずれか1項に記載の創傷治療用製品。
【請求項41】
抗菌ポリペプチドを更に含む、請求項1〜40のいずれか1項に記載の創傷治療用製品。
【請求項42】
抗菌ポリペプチドが、デフェンシン、グラミシジンS、マゲイニン、セクロピン、ヒスタチン、ヒファンシン、シンナマイシン、ブルホリン1、パラシン1及びプロタミン、及び元のタンパク質の抗菌活性の少なくとも一部を保持するそのフラグメント、変異体及び融合体から成る群から選択される、請求項41に記載の創傷治療用製品。
【請求項43】
創傷治癒特性を有するポリペプチドが使用時に徐々に放出される、請求項1〜42のいずれか1項に記載の創傷治療用製品。
【請求項44】
創傷治療用製品に含有される創傷治癒特性を有するポリペプチドの50%未満、例えば、40%、30%、20%、10%又は5%未満が、使用の最初の24時間以内に放出される、請求項43に記載の創傷治療用製品。
【請求項45】
乾式不織布シート、凍結乾燥シート、固体ゲルシート、リボン、ロープ、発泡体及び粘性ゲルの形態の、請求項1〜44のいずれか1項に記載の創傷治療用製品。
【請求項46】
創傷治療用製品が無菌であり、そして微生物非透過性容器に包装される、請求項1〜45のいずれか1項に記載の創傷治療用製品。
【請求項47】
微生物非透過性容器がチューブ又は他の塗布器である、請求項46に記載の創傷治療用製品。
【請求項48】
創傷治療用製品が湿潤創傷環境を維持するためのものである、請求項1〜47のいずれか1項に記載の創傷治療用製品。
【請求項49】
創傷環境に湿気を加えるための、請求項48に記載の創傷治療用製品。
【請求項50】
創傷環境から湿気を取り除くための、請求項48に記載の創傷治療用製品。
【請求項51】
創傷治療用製品が創傷環境において微生物増殖を防止し、根絶させ、低減させるかさもなければ減少させることができる、請求項1〜50のいずれか1項に記載の創傷治療用製品。
【請求項52】
創傷治療用製品が上皮再生を強化し、及び/又は、創傷上皮及び/又は創傷間質を治癒することができる、請求項1〜51のいずれか1項に記載の創傷治療用製品。
【請求項53】
創傷治療用製品が上皮及び/又は間質細胞の増殖及び/又は移動を非溶解メカニズムを介して強化することができる、請求項1〜52のいずれか1項に記載の創傷治療用製品。
【請求項54】
創傷治療用製品が創傷部位に適合するサイズ及び形状を有する、請求項1〜53のいずれか1項に記載の創傷治療用製品。
【請求項55】
創傷治療用製品が実質的に平面(即ち、フラット)である、請求項1〜54のいずれか1項に記載の創傷治療用製品。
【請求項56】
20mm以下、例えば、10mm、8mm、6mm、5mm、4mm、3mm、2mm又は1mm以下の厚さを有する、請求項55に記載の創傷治療用製品。
【請求項57】
創傷治癒特性を有するポリペプチドを含有するフィルムが創傷面側に貼り付けられた創傷治療材料層を含む、請求項1〜56のいずれか1項に記載の創傷治療用製品。
【請求項58】
創傷治療材料層がポリウレタンフォーム包帯、親水コロイドシート包帯、ハイドロゲルシート又は非水性ゲルシートを含むか又はそれから成る、請求項57に記載の創傷治療用製品。
【請求項59】
創傷治療材料層が創傷滲出液を吸収することができる、請求項57又は58に記載の創傷治療用製品。
【請求項60】
フィルムが創傷治療材料層の表面に直接貼り付けられる、請求項57〜59のいずれか1項に記載の創傷治療用製品。
【請求項61】
フィルムが1つ又はそれ以上の介在層を介して創傷治療材料層の創傷面側に間接的に貼り付けられる、請求項57〜59のいずれか1項に記載の創傷治療用製品。
【請求項62】
フィルムが水溶性である、請求項57〜61のいずれか1項に記載の創傷治療用製品。
【請求項63】
フィルムが、1mm以下の厚さ、例えば、0.8mm、0.6mm、0.4mm、0.2mm、0.1mm又は0.05mm以下の厚さである、請求項57〜62のいずれか1項に記載の創傷治療用製品。
【請求項64】
フィルムが創傷治療材料層の片面の一部(全体ではなく)を覆う、請求項57〜63のいずれか1項に記載の創傷治療用製品。
【請求項65】
フィルムが、創傷治療材料層の露出した周辺領域によって囲まれる創傷治療材料層の中央部を覆う、請求項64に記載の創傷治療用製品。
【請求項66】
フィルムが穿孔されている、請求項57〜65のいずれか1項に記載の創傷治療用製品。
【請求項67】
介在層が好ましくは創傷治癒特性を有するポリペプチドを含有するフィルムより低い溶出速度を有する、請求項61に記載の創傷治療用製品。
【請求項68】
1つ又はそれ以上の介在層が穿孔されている、請求項61又は67に記載の創傷治療用製品。
【請求項69】
介在層の穿孔がフィルムの穿孔と合致している(即ち、整列している)、請求項68に記載の創傷治療用製品。
【請求項70】
介在層の穿孔がフィルムの穿孔と互い違いになっている、請求項68に記載の創傷治療用製品。
【請求項71】
請求項57〜70のいずれか1項に記載の創傷治療用製品であって、以下の製品:
(a)LL−37を含有する非穿孔水溶性フィルムが創傷と接触する側に貼り付けられたポリウレタンフォーム包帯を含む、創傷滲出液を吸収することができる創傷治療用製品;
(b)LL−37を含有する穿孔された水溶性フィルムが創傷と接触する側に貼り付けられたウレタンフォーム包帯を含む、創傷滲出液を吸収することができる創傷治療用製品;
(c)フィルムが、非穿孔水溶性介在層(フィルムより低い溶出速度を有する)を介してポリウレタンフォーム包帯に間接的に貼り付けられている(a)又は(b)の創傷治療用製品;及び
(d)フィルムが、穿孔された水溶性介在層(フィルムより低い水溶性を有する)を介してポリウレタンフォーム包帯に間接的に貼り付けられている(a)又は(b)の創傷治療用製品;
から選択される創傷治療用製品。
【請求項72】
創傷の治療における、請求項1〜71のいずれか1項に記載の創傷治療用製品の使用。
【請求項73】
創傷が慢性創傷である、請求項72に記載の使用。
【請求項74】
慢性創傷が静脈性潰瘍、糖尿病性潰瘍及び褥瘡を含む群から選択される、請求項73に記載の使用。
【請求項75】
創傷治療用製品が創傷の表面に直接適用される、請求項72〜74のいずれか1項に記載の使用。
【請求項76】
請求項1〜71のいずれか1項に記載の創傷治療用製品と創傷を接触させることを含む、創傷を治療する方法。
【請求項77】
創傷治療材料及び創傷治癒特性を有するポリペプチドを組み合わせることを含む、請求項1〜71のいずれか1項に記載の製品を製造する方法。
【請求項78】
ポリペプチドが創傷治療材料全体に分散するように、創傷治療材料及び創傷治癒特性を有するポリペプチドを混合することを含む、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
創傷治癒特性を有するポリペプチドを創傷治療材料の露出表面に適用することを含む、請求項77に記載の方法。
【請求項80】
創傷治癒特性を有するポリペプチドが、創傷治療材料の製造前、製造時又は製造後に添加される、アルギン酸塩創傷治療材料を含む創傷治療用製品を製造するための請求項77に記載の方法。
【請求項81】
創傷治癒特性を有するポリペプチドを創傷治療材料の製造後に適用し、その後に乾燥工程が続く、アルギン酸塩創傷治療材料を含む創傷治療用製品を製造するための請求項77に記載の方法。
【請求項82】
創傷治癒特性を有するポリペプチドが創傷治療材料の製造前又は製造時に添加される、ハイドロファイバー創傷治療材料を含む創傷治療用製品を製造するための請求項77に記載の方法。
【請求項83】
創傷治癒特性を有するポリペプチドを創傷治療材料の製造後に適用し、その後に乾燥工程が続く、ハイドロファイバー創傷治療材料を含む創傷治療用製品を製造するための請求項77に記載の方法。
【請求項84】
創傷治癒特性を有するポリペプチドが、ゲル形成ポリマー及び溶媒を混合しハイドロゲルを形成する間又はその後に添加される、非晶質ハイドロゲル創傷治療材料を含む創傷治療用製品を製造するための請求項77に記載の方法。
【請求項85】
創傷治癒特性を有するポリペプチドが、ゲル形成ポリマー及び溶媒を混合する間又はその後に、しかしハイドロゲルシートの形成前に添加される、ハイドロゲルシート創傷治療材料を含む創傷治療用製品を製造するための請求項77に記載の方法。
【請求項86】
創傷治癒特性を有するポリペプチドを含有するフィルムを創傷治療材料層の片側に適用することを含む、請求項77に記載の方法。
【請求項87】
請求項1〜25のいずれか1項に記載の創傷治療材料、及び請求項26〜41のいずれか1項に記載の創傷治癒特性を有するポリペプチドを含む、創傷治療キット。
【請求項88】
実質的に説明及び図で本明細書に記載した通りの、創傷治療用製品。
【請求項89】
実質的に説明及び図で本明細書に記載した通りの、請求項1〜71のいずれか1項に記載の創傷治療用製品の使用。
【請求項90】
実質的に説明及び図で本明細書に記載した通りの、創傷を治療する方法。
【請求項91】
実質的に説明及び図で本明細書に記載した通りの、請求項1〜71のいずれか1項に記載の創傷治療用製品を製造する方法。
【請求項92】
実質的に説明及び図で本明細書に記載した通りの、創傷治療キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【公表番号】特表2010−531189(P2010−531189A)
【公表日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−514105(P2010−514105)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【国際出願番号】PCT/GB2008/002192
【国際公開番号】WO2009/001087
【国際公開日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【出願人】(505285087)リポペプチド・アクチエボラーグ (7)
【Fターム(参考)】