説明

新代用骨組成物

本発明は、in vivoにおいて体液中で硬化する能力のある注入可能な代用骨塩材料組成物であって、水性液体と混合される乾燥混合物としての少なくとも1種のリン酸カルシウム成分及び少なくとも1種の硫酸カルシウム成分、及び少なくとも1種の促進剤を含み、少なくとも1種の硫酸カルシウム成分は、組成物に注入可能性を付与するために指定された粒径を有する粒子状硬化硫酸カルシウムである組成物に関する。また、本発明は、組成物から製造される代用骨塩材料並びにその方法及び使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工代用骨塩材料用の組成物並びにそれから製造される代用骨塩材料について言及する。より正確には、本発明は、in vivoにおいて体液中で硬化する能力のある注入可能な代用骨塩材料組成物であって、水性液体と混合されている乾燥混合物としての少なくとも1種のリン酸カルシウム成分及び少なくとも1種の硫酸カルシウム成分、並びに少なくとも1種の促進剤を含み、少なくとも1種の硫酸カルシウム成分は、組成物に注入可能性を付与するために特定の粒径を有する粒子状硬化硫酸カルシウムである組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
世界人口の平均余命は、最近の50年間に途方もなく伸びた。我々は、これまでよりも長く生きている。次の10年に、ヨーロッパでは20歳未満よりも60歳以上の人々の方が多くなるであろうと予測されている。より多くの人々が、年齢に関連した疾患のために医療扶助を必要とし、病院に一層の圧力をかけることであろう。
【0003】
骨は、血液に次いで2番目に一般的な移植材料である。骨欠損を修復するための最も信頼のおける方法は、自家骨、すなわち体内の別の部位から採取した骨を用いることである。しかしながら、移植片を採取する第二の手術部位で問題が発生することがある。この余分な外傷を避けるため、同種移植片、すなわち同一種の個人間の骨移植片を用いることができる。同種移植片の骨形成能は自家移植片より低く、新生骨形成速度が低いことがある。また、同種移植片の吸収速度はより高く、免疫原性応答はより大きく、レシピエントの血管再生はより少ない。また、同種移植片は、例えば、HIV及び肝炎を伝達することがあるため、ウイルスについても管理しなければならない。今日、同種移植片の使用は、骨移植及び骨欠損の修復の最も一般的な方法である。
【0004】
供給、予測できない感染の強度及び危険性の問題点を解決するため、合成代用骨が現実的な代替物になっている。したがって、合成代用骨に対する需要及びその使用は、急速に増加している。
【0005】
硫酸カルシウム半水和物、CaSO・1/2HOは、骨移植片の代用品として検討された最初の材料の一つである。1892年以来、組織による受入及び速い吸収速度を立証する研究が行われてきた。皮質下骨領域に埋め込まれた硫酸カルシウム半水和物は、骨折において通常存在する以上の有害反応を組織中で生じないことが結論付けられている。硫酸カルシウム半水和物中に成長する新生骨は、正常な骨である。硫酸カルシウム半水和物の埋め込みに起因する副作用は、隣接組織及び遠位器官で一切認められていない。
【0006】
硫酸カルシウムの最も重要な利点は、その優れた生体適合性である。欠点は、速い吸収及び低い強度であり、それらが、大きめの、又は非限局性の(non−contained)欠損における有用性を低くしており、骨折の場合には治癒は4〜6週間を超える。
【0007】
硫酸カルシウムはその溶出速度から、薬物放出用の担体として適当なものとなっている。US 5,614,206には薬物の、制御送達に有用である硫酸カルシウム半水和物のペレットが示されている。ヒト又は他の動物に埋め込むと、ペレットは、25〜45日間にわたり局所部位に持続的で制御された送達を提供する。
【0008】
一方、リン酸カルシウムが代用骨として適しているのは、それらの生物活性の特性、すなわち生きている組織に対する効果を有すること、又は生きている組織から応答を得ることのためである。それらの吸収速度は、数年までと、比較的遅い。
【0009】
リン酸カルシウムには、2つの異なるカテゴリー、すなわち、室温における水溶液からの沈殿によって得られるCaP(低温CaP)及び熱処理によって得られるCaP(高温CaP)が存在する。
【0010】
ヒドロキシアパタイト(HA)は、最も安定なリン酸カルシウムであり、骨の主要な非有機成分である。市販されている大部分の代用骨移植片は、ヒドロキシアパタイトでできている。高温処理されたヒドロキシアパタイトは、高度に結晶性であり、最も溶けにくいリン酸カルシウムである。
【0011】
ヒドロキシアパタイト及びリン酸三カルシウムは、骨欠損を埋めるため、及びインプラントコーティングとして使用される最も一般的なリン酸カルシウムである。それらの吸収速度は比較的遅く、6ヶ月から数年である。材料の表面積を増やすこと、結晶化度及び結晶完全性を下げること、並びに材料中の結晶及び粒子のサイズを減らすことにより分解速度をわずかに速めることが可能である。より速い吸収速度は、骨形成を促すのに好ましいことがある。
【0012】
しかしながら、生物学的特性及び解剖学的埋め込み部位も、インプラントの挙動及び転帰にとって重要である。ある特定の用途における生体材料の成功は、その普遍的な受入を保証するものではない。
【0013】
代用骨塩材料は、骨折部位に直接注入することができるペーストとして調製することができる。ペーストは、骨の空隙中に注入され、硬化すると、間隙の輪郭に一致し、海綿質骨を支えるインプラントが得られる。硫酸カルシウムとヒドロキシアパタイト材料は共に、骨欠損の回復及び骨折の固定に役立つ自家骨移植片の可能な代替物として幅広く検討されている。
【0014】
これに関しては、治癒部位における動きを防止するため、手術中又は手術後にできるだけ速やかに完全な安定性の得られることが重要である。このことは、骨折ばかりでなく、腫瘍摘出中に骨空洞を埋めるか、或いは骨欠損を置き換え、運動によって治癒が阻害され、新生骨の成長が妨げられる場合にもあてはまる。したがって、注入された材料は、速やかに硬化し、骨組織にしっかりと付着しなければならない。
【0015】
しかしながら、手術中又は手術後に、感染症などの合併症が発生することがある。また、空隙は、以前から感染しており、例えば、抗生物質で治療しなければならないことがある。
【0016】
硬化材料は、破骨細胞によって徐々に吸収され、新生骨によって置き換えられるように、骨と構造が類似していることも重要である。このプロセスは、硬化セメントに細孔が提供され、その細孔が栄養素を輸送し、新生骨形成を可能にする血管成長を提供することができる場合に促進されることがある。
【0017】
M.Bohner他は、The Sixth World Biomaterials Congress Transactions(15−20/5 2000)において、疎水性脂質(油)の水性リン酸カルシウムセメントペースト中エマルジョン又は水性リン酸カルシウムセメントペーストの油中エマルジョンを用いることにより、開放マクロ多孔性(open macroporous)リン酸カルシウムブロックを得るための方法を開示した。固化後、セメントブロックを、1250℃で4時間焼結した。同様に、CN 1,193,614は、ヒト硬組織を修復するための多孔性リン酸カルシウム骨セメントを示している。このセメントは、無毒性の界面活性剤か、或いは無毒性のわずかに可溶性の塩、酸性塩及びアルカリ性塩であってもよい細孔形成剤を含有する。
【0018】
しかしながら、添加物質を焼き尽くすためには、通常高温処理(>1000℃)が必要である。したがって、エマルジョン技法を用い、in vivoにおいて固化する代用骨を製造することは今のところはできない。マンニトール及びショ糖結晶をリン酸カルシウムと混合し、一方の相を溶出して固化材料に多孔性を提供する二相性代用骨ペーストを得る試みが行われてきた。細孔を得るための別の技法は、混合の間にペースト内で作られる気泡を安定化する空気連行剤の添加であり、多孔性の固化材料が得られている(Sarda他、Bioceramics 2002;218(2):335)。
【0019】
上述の代用骨塩材料の混合物に関する研究も行われてきた。US 4,619,655は、硫酸カルシウム半水和物及びリン酸カルシウムセラミック粒子を含む、好ましくはヒドロキシアパタイト、又はリン酸三カルシウム若しくはそれらの混合物からなる代用骨塩材料を開示している。この文書によれば、ヒドロキシアパタイト/硫酸カルシウム半水和物の50/50混合物からなる材料を、ラットの下顎骨に実験的に作製した欠損中に埋め込んだ場合、硫酸カルシウム半水和物は、数週間以内に完全に吸収され、結合組織によって置き換えられた。ヒドロキシアパタイトは吸収されず、最終的に、一部の粒子は、骨によって完全に取り囲まれた。したがって、硫酸カルシウム半水和物は、充填剤及びヒドロキシアパタイトを骨中に組み入れるための足場としての役割を果たしていると結論付けられた。
【0020】
「Combined Orthopaedic Research Societies Meeting」、9月28−30、1998、Hamamatsu、Japanで発表された研究も、硫酸カルシウム半水和物とヒドロキシアパタイトの混合物に関する追加テストを示している。この研究によれば、ヒドロキシアパタイト粒子と硫酸カルシウム半水和物の組合せは、インプラント材料の容易な置き換えを可能にし埋め込み中及び埋め込み後の周囲組織中へのヒドロキシアパタイト粒子の移動を防ぐ粘性を有していた。諸実験から、硫酸カルシウム半水和物は、比較的短時間で吸収され、ヒドロキシアパタイト粒子と共に容易に操作され、骨折治癒のプロセスを妨害しないことが分かった。
【0021】
WO 9100252は、約10〜45分以内に血液中で硬化することができる組成物を示している。この組成物は、少量の硫酸カルシウム二水和物と共に本質的には硫酸カルシウム半水和物を含む。有機及びヒドロキシアパタイトなどの無機材料も組成物中に含めることができる。硬化後、ヒドロキシアパタイトの粒子は、硫酸カルシウムセメント内に得られる。硫酸カルシウムセメントは、4週間以内に水性体液によって容易に溶出され、ヒドロキシアパタイトの固形粒子を残す。
【0022】
同様に、硫酸カルシウムセメント内のこのようなヒドロキシアパタイトの粒子は、WO 9117722に示された方法によって得られる。動物インプラントとして使用するためのこの組成物は、硫酸カルシウム半水和物、リン酸カルシウム、及び硫酸ナトリウムを含む。リン酸カルシウムは、ヒドロキシアパタイトであり、硫酸ナトリウムは、血液又は他の体液の存在下でこの組成物が使用されることを可能にする。
【0023】
WO 200205861には、代用骨塩材料として有用である注入可能な組成物が示されている。この組成物の乾燥粉末は、硫酸カルシウム半水和物、リン酸カルシウム、及び少なくとも1種の促進剤を含む。水性体液と接触すると、この組成物は、手術中に硬化し、骨折断片運動の早期コントロールが同時に起こる。骨梁より高い機械的強度を有する安定で持続的なインプラントが得られ、インプラントは、成長中の骨のために多孔性並びに不規則な構造を時間とともに獲得する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
本発明の目的は、注入可能であり、手術中にin vivoにおいて体液中で硬化し、機械的強度の高い安定で持続的なインプラントを1年にわたって提供する代用骨塩材料用の組成物であって、サイズ及び形成を制御することができる多孔性構造が得られる組成物を提供することである。
【0025】
本発明の別の目的は、骨粗鬆症の骨における欠損を埋めるため、及び実質的に海綿状の骨における骨折をさらに固定するためのこのような改良された代用骨塩組成物であって、送達時に高粘度の欠点を示さない組成物を提供することである。
【0026】
本発明の他の目的は、低侵襲手術手技と合わせて使用することができ、in situにおいて硬化することができ、任意の欠損構造の安定性をもたらす代用骨塩組成物を提供することである。
【0027】
本発明のさらに別の目的は、優れた生体適合性並びに好ましい生物学的及び流体力学的特性を有する代用骨塩組成物を提供することである。
【0028】
本発明のさらに他の目的は、生体分解性であり、特性に有意な低下を受けることなく照射又はガスにより滅菌することができる代用骨塩組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0029】
これらの目的を達成するため、本発明による注入可能な組成物には、請求項1に記載の特徴が与えられている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明によれば、in vivoにおいて体液中で硬化する能力を有する代用骨塩材料用の注入可能な組成物が提供される。注入可能な組成物は、乾燥混合物としての少なくとも1種のリン酸カルシウム成分及び少なくとも1種の硫酸カルシウム、及び乾燥混合物と混合された水性液体を含む。少なくとも1種の硫酸カルシウム成分は、100μm未満である直径を有する粒子状硬化硫酸カルシウムであり、組成物の注入可能性は保証されている。組成物は、少なくとも1種の促進剤も含む。
【0031】
粒子状硬化硫酸カルシウムの粒径は、組成物を注入可能にするのに十分小さなサイズに適合している。粒子状硬化硫酸カルシウムの適当な粒径は、1〜50μm、好ましくは1〜10μmである。このことは、約1〜2mm又はそれ以下の直径を有する針を通して組成物を注入することができることを意味している。
【0032】
粒子状硬化硫酸カルシウムは、注入可能な組成物の乾燥混合物の60重量%まで、好ましくは10〜40重量%を占めていなければならない。
【0033】
粒子状硬化硫酸カルシウムは、硫酸カルシウム二水和物(セッコウ)であることが好ましい。
【0034】
本発明による組成物の注入可能性は、いくつかの方法でさらに改善することができる。本発明の組成物にpHを低下させる成分を添加し、その注入可能性を高めることができる。そのようなpHを低下させる成分は、例えば、アスコルビン酸又はクエン酸である。これらの酸は、0.1〜5重量%、好ましくは0.5〜2重量%の量で組成物の滅菌液体又は滅菌粉末に入れられる。
【0035】
組成物の注入可能性をさらに改善するための別の方法は、生物学的に適合性の油を添加することである。この場合、油の濃度は、0.01〜5重量%、好ましくは0.1〜2重量%でなければならない。油は、滅菌粉末と混合するか、或いは組成物の滅菌水性液体に入れることができる。本発明の組成物において使用するのに適当な油は、ビタミンEである。ビタミンEは、α−トコフェロールであることが好ましい。
【0036】
本発明の主な態様は、粒子状硬化硫酸カルシウムが、固化した後に代用骨塩材料からゆっくりと放出される少なくとも1種の添加物を含むことができることである。添加物は、非水溶性であっても水溶性であってもよい。非水溶性添加物の例は、ビタミンEである。
【0037】
しかしながら、添加物は、水溶性であることが好ましい。水溶性添加物は、いくつかの機能を有することがある。例えば、抗酸化剤、ビタミン、ホルモン、抗生物質、細胞増殖抑制剤、ビスホスホン酸塩、成長因子、又はタンパク質であってよい。少なくとも1種の水溶性添加物は、骨誘導化合物及び/又は骨代謝回転を低下させる化合物などの骨形成を誘導、刺激及び/又は加速する物質であることが有利である。
【0038】
骨形成を刺激及び/加速する適当な骨誘導物質は、成長因子及びホルモンである。局所に作用する成長因子及びそれらの誘導体が好ましい。
【0039】
骨、腱又は軟骨に関連して自家性で有効である成長因子を用いることが好ましい。そのような成長因子は、例えば、形質転換成長因子(TGF β3)、骨形成タンパク質(BMP−2)、PTHrP、オステオプロテグリン(OPG)、インディアンヘッジホッグ、RANKL、塩基性線維芽細胞、インスリン様成長因子(IgF1)、血小板由来成長因子、及び血管成長因子である。これらの内因的に産生される成長因子は、骨成長を加速するため、単一主体としてか、或いは成長因子混合物として組み合わせた添加物として使用される。したがって、内因的に産生される生物活性分子は、骨形成を誘導する物質として使用されることが好ましい。
【0040】
他の骨刺激化合物の例は、副甲状腺ホルモン及びそれらの誘導体、エストロゲン、プロゲステロン、アンドロゲン、テストステロン、カルシトニン、ソマトメジン、及びオキシトシンであり、自家性であることが好ましいが、当技術分野内で知られている手順に従って製造することもできる。
【0041】
エナメル基質タンパク質であるアメリン(amelin)−1、アメリン−2及びアメロブラスチンも、粒子状硫酸カルシウム中の添加物として入れることができ、これらは、自家性であるか、或いは他の種から抽出され、又は他の種由来の組織若しくは細胞によって産生され、又は合成的に製造されるか、或いは他の生細胞若しくは生物体によって産生される。
【0042】
同様に、コレステロールを低下させる化合物であるスタチンも、骨形成を誘導、刺激及び/又は加速するために入れることができる。
【0043】
適当な骨分解抑制剤の例は、ビスホスホン酸塩、オステオカルシン、オステオネクチン及びそれらの誘導体であり、本発明の組成物及び得られる代用品の粒子状硫酸カルシウム中の添加物として入れることができる。
【0044】
さらに、骨の代謝に影響を及ぼす他の物質を粒子状硬化硫酸カルシウム成分中に入れ、得られる人工代用骨塩材料からゆっくり放出させることができる。このような物質には、カルシフェロール、カルシトリオール、並びに他のDビタミン及びそれらの誘導体が含まれる。これらの化合物は、カルシウム代謝及び体内における正常な骨の石灰化の調節に役立つばかりでなく無機リンの利用にも影響を及ぼす。天然若しくは合成的に製造されるプロスタグランジン、プロスタグランジンの前駆体若しくは代謝産物、プロスタグランジン類縁体若しくは内因性のプロスタグランジン産生を誘導若しくは阻害する、又はプロスタグランジン代謝を誘導若しくは阻害する化合物、又は前駆体の産生若しくは活性なプロスタグランジン代謝産物のさらなる代謝に影響を及ぼす化合物も入れることができる。リドカイン−HCl、ブピバカイン−HCl、及びケトロラクトロメタミンなどの鎮痛剤も、代用骨塩材料から遊離される添加物として使用することができる。
【0045】
このような添加物は、注入から6〜8週間以内に代用骨塩材料から放出されることが好ましい。これは、代用骨塩材料における粒子状硫酸カルシウムの溶出を制御することによって行うことができ、溶出速度は、硫酸カルシウム粒子のサイズ及び形態に左右される。
【0046】
水溶性の添加物は、抗感染性物質、すなわち、侵入する外来性生物に対する静作用又は殺作用のある化合物であってもよい。そのような化合物には、病原性及び/又は感染性微生物、例えばブドウ球菌に対して作用する天然抗生物質並びに他の半合成及び合成抗菌性又は静菌性化合物が含まれる。骨感染症用抗生物質の例は、テトラサイクリン−HCl、バンコマイシン、トブラマイシン、ゲンタマイシン、及びセファロスポリンである。シス−プラチン、イホスファミド、メトトレキセート、ドキソルビシン−HCl、三酸化ヒ素、及びレチノイド又はそれらの誘導体などの細胞増殖抑制剤も、添加物として使用することができる。同様に、添加物は、抗ウイルス性化合物、抗真菌性化合物、結核菌静菌性若しくは結核菌殺菌性化合物又は抗寄生虫性化合物であってよい。
【0047】
粒子状硫酸カルシウムに入れることができる水溶性添加物は、非イオン性X線造影剤であってもよい。
【0048】
適当なそのような作用剤は、従来型の水溶性非イオン性X線造影剤、すなわち、少なくともトリヨード置換されている1個又は数種の芳香核を有するヨウ化芳香族化合物である。このような作用剤は、US 5,695,742に示されており、CAS(Chemical Abstract Service)登録番号31112−62−6(メトリザミド)、同60166−93−0(イオパミドール)、同78649−41−9(イオメプロール)、同73334−07−3(イオプロミド)、同877771−40−2(イオベルソール)、同66108−95−0(イオヘキソール)、同89797−00−2(イオペントール)、同107793−72−6(イオキシラン)、同99139−49−8(II−1)、同75751−89−2(イオグラミド(iogulamide))、同63941−73−1(イオグルコール)、同63941−74−2(イオグルカミド(ioglucamide))、同56562−79−9(イオグルニド)、同76984−84−0(MP−7011)、同64965−50−0(MP−7012)、同77111−65−0(MP−10007)、同79944−49−3(VA−7−88)、同79944−51−7(EP 033426にも示されている)、同79211−10−2(イオシミド)、同79211−34−0(イオシビドール(iocibidol))、同103876−29−5(EP 0177414にも示されている)、同141660−63−1(イオフラトール)、同92339−11−2(イオジキサノール)、同79770−24−4(イオトロール(iotrol))、同71767−13−0(イオタスル)、同81045−33−2(イオデコール(iodecol))、同143200−04−8(WO 92/086にも示されている)、同143199−77−3(WO 92/08691にも示されている)、同143200−00−4(WO 92/08691にも示されている)、同78341−84−1(US 4348377にも示されている)、同122731−47−9(EP 0308364にも示されている)、同122731−49−1(EP 0308364にも示されている)、同99139−65−8(WO 85/01727にも示されている)、同99139−62−5(WO 85/01727にも示されている)、及び同78341−84−1(EP 0023992にも示されている)を含む。
【0049】
他のそのようなX線造影剤は、US 5,447,711に示されており、イオトロラン、イオクサグレート(ioxaglate)、イオデシモール、及びイオサルコールを含む。他の適当な造影剤は、イオツサル(iotusal)、イオキシラン、及びイオフロタール(iofrotal)である。
【0050】
イオヘキソール、イオジキサノール、イオベルソール、イオパミドール、及びイオトロランなどのX線造影剤は、非イオン性で、低い重量モル浸透圧濃度(osmomolality)を有することが好ましい。
【0051】
例えば、イオヘキソール(C1926)は、X線造影剤として有利に使用することができる。この物質は、骨形成に影響を及ぼさず、骨における良好な生体適合性を有する。医学では様々な目的に使用される。例えば、腎不全患者に使用して、腎臓による血漿クリアランス速度を測定することができる。
【0052】
非イオン性X線造影剤を粒子状硫酸カルシウムに含まれる水溶性添加物とする本発明の組成物は、それ自体でX線造影剤として使用することができる。本発明による組成物により付加的なX線効果が得られるのは、そのセラミック成分のX線造影能が利用されるからである。組成物中に少なくとも1種の水溶性非イオン性X線造影剤を含めることは、高X線密度(x−ray dense)代用骨の元々のX線密度を高める。したがって、その他に、硫酸バリウム及び二酸化ジルコニウムなどのセラミック造影剤を本発明による注入可能な組成物に入れる必要はない。このような固いセラミック粒子は、代用骨からはがれた場合、関節を摩耗するであろう。関節では、物理的損傷を引き起こし、最後に炎症反応につながるであろう。
【0053】
したがって、本発明の組成物は、水溶性非イオン性X線造影剤を含む場合、関節に隣接して注入することができ、得られる人工代用骨塩材料は、関節と連絡している骨欠損に使用することができる。このような用途には、骨軟骨性関節欠損並びに関節が関わる骨折又は骨欠損の修復が含まれる。
【0054】
さらに、例えば、注入組成物を局在化させ、人体又は動物体における本発明の組成物の埋め込み後に治癒プロセスを追跡するため、二重のX線密度の起源をさらに活用することができる。水溶性非イオン性X線造影剤を含む得られた人工代用骨塩材料が成長する骨によって置き換えられる場合、水溶性作用剤は、ゆっくりと消失するであろう。その結果、X線密度が次第に減少し、それをモニターすることができる。
【0055】
粒子状硬化硫酸カルシウムは、本発明に従って粉末状リン酸カルシウム成分と混合され、続いて代用骨塩材料中でリン酸カルシウムセメントに硬化される。
【0056】
用語「リン酸カルシウムセメント」は、粉末又は粉末の混合物の反応生成物についての公認された定義を指し(S.E.Gruninger、C.Siew、L.C Chow、A.O′Young、N.K.Tsao、W.E.Brown、J.Dent.Res.63(1984)200)、水又は水溶液と混合してペーストとした後、室温又は体温近くの温度で沈殿の形成を伴って反応し、1種又は複数のリン酸カルシウムの結晶を含有し、沈殿内の結晶の絡み合いによって固化する。したがって、代用骨塩材料用の本発明の注入可能な組成物においてペーストとして用いられる粉末状リン酸カルシウムの1種又は複数の成分に基づき、固化反応中に様々なリン酸カルシウム生成物(リン酸カルシウムセメント)を得ることができる。
【0057】
本発明による注入可能な組成物において、少なくとも1種のリン酸カルシウム成分は、少なくとも1種の促進剤の影響下にあって水性液体と反応した場合、リン酸カルシウムセメントに硬化(固化)する能力のある粉末状リン酸カルシウムである。水性液体は、乾燥混合物1グラム当たり0.1〜2ml、好ましくは0.2〜0.7ml含まれていなければならない。水性液体は、この硬化反応のみに十分な量で提供することができる。
【0058】
水性液体は、蒸留水、及び/又は1種又は数種の無機及び/又は有機塩を含む溶液であってよい。
【0059】
これらの条件下で、代用骨塩材料用の注入可能な組成物に関する主な必要条件は満たされ、すなわち、混合手順の開始から1〜5分の間に骨に注入できるような粘度を有していなければならない。さらに、初期固化時間は、5〜25分以内であり、注入可能な組成物にとっての必須条件である。
【0060】
代用骨塩材料用の注入可能な組成物の少なくとも1種のリン酸カルシウム成分は、ヒドロキシアパタイト(HA)に硬化されることが好ましい。ヒドロキシアパタイト、すなわち沈降ヒドロキシアパタイト(PHA)又はカルシウム欠乏ヒドロキシアパタイト(CDHA)を形成するこれらの反応は、3つのグループに分類することができる。第一のグループは、水溶液における加水分解プロセスによってヒドロキシアパタイトに転換されるリン酸カルシウムからなる(式1〜5)。

5Ca(HPO)・HO→Ca(POOH+7HPO+4H
(1)
5CaHPO・2HO→Ca(POOH+2HPO+9H
(2)
5Ca(PO・5HO→8Ca(POOH+6HPO+17H
(3)
5Ca(PO+3HO→3Ca(POOH+HPO
(4)
3Ca(POO+3HO→2Ca(POOH+Ca(OH)
(5)

【0061】
沈降ヒドロキシアパタイトは、4.2を超えるpHで最も溶解性の低いリン酸カルシウムである。このことは、このpH範囲で水溶液中に存在するその他のリン酸カルシウムは溶解する傾向があり、PHAが生成物として沈殿することを意味する。この加水分解プロセス(Ca(OH)−HPO−HO)は、反応が進行するにつれて過飽和が減少するため、極めて遅い。
【0062】
副生成物を形成することなく加水分解プロセスを介してアパタイトと反応することができる唯一のリン酸カルシウムは、α−リン酸三カルシウムであり(式6)、この反応で形成されるアパタイトは、カルシウム欠乏ヒドロキシアパタイトである。

3α−Ca(PO+HO→Ca(HPO(POOH
(6)

【0063】
ヒドロキシアパタイト、すなわち沈降ヒドロキシアパタイト(PHA)又はカルシウム欠乏ヒドロキシアパタイト(CDHA)への反応の第二のグループは、TTCPと他のリン酸カルシウムの組合せである。TTCPは、Ca/P比が1.67以上である唯一のリン酸カルシウムである。したがって、この物質を、Ca/P比がより低い他のリン酸カルシウムと混合し、副生成物として酸又は塩基を生成することなくPHA又はCDHAを得ることができる。理論的に、PHAより酸性の任意のリン酸カルシウムをTTCPと直接反応させ、以下の化学反応に従ってHA又はCDHAを生成させることができる。

7Ca(POO+2Ca(HPO・HO→6Ca(POOH+3H
(7)
2Ca(POO+Ca(HPO)・HO→Ca(HPO)(POOH+2H
(8)
Ca(POO+CaHPO・2HO→Ca(POOH+2H
(9)
3Ca(POO+6CaHPO・2HO→2Ca(HPO)(POOH+13H
(10)
Ca(POO+CaHPO→Ca(POOH
(11)
3Ca(POO+6CaHPO→2Ca(HPO)(POOH+H
(12)
3Ca(POO+Ca(PO・5HO→4Ca(POOH+4H
(13)
3Ca(POO+3Ca(PO・5HO→4Ca(HPO)(POOH+14H
(14)
Ca(POO+2Ca(PO+HO→Ca(POOH
(15)

【0064】
式(7)及び(8)では、中間反応生成物としてDCPDが生成するが、反応終了時にはPHA又はCDHAとなる。反応(13)、(14)、及び(15)は、すべて極めて遅い。しかしながら、式(9)〜(12)を用いることにより、室温又は体温及び中性pHにおいて時間とともに固化および硬化するセメントを製造することが可能である。
【0065】
Ca/P比が1.67未満であるリン酸カルシウムの混合物を用いることにより、最終的な硬化生成物としてPHAを生成させることも可能である。これは、TTCPの代わりにCa(OH)又はCaCOなどの追加カルシウム源を用いることにより行われる。一例は、反応β−TCP+DCPD+CaCO→PHAである。DCPDとCaCOの間の反応から最初に形成されるPHAの結晶は、β−TCP粒子間の結合剤としての役割を果たす。DCPDが消費された場合、反応は、残った炭酸カルシウムとβ−TCPの間で続き、PHAが生成する。しかしながら、最後のプロセスは、セメントの機械的強度に対する有害な効果を有しているようである。
【0066】
水性液体と反応した場合に、リン酸カルシウムセメントに硬化する能力のある粉末状の少なくとも1種のリン酸カルシウム成分は、リン酸四カルシウム(TTCP)、リン酸一カルシウム一水和物(MCPM)、リン酸二カルシウム二水和物(DCPD)、無水リン酸二カルシウム(DCPA)、リン酸二カルシウム(DCP)、リン酸三カルシウム(TCP)、又はリン酸八カルシウム(OCP)である。リン酸カルシウムは、α−リン酸三カルシウムであることが好ましい。
【0067】
粉末状の少なくとも1種のリン酸カルシウム成分は、リン酸カルシウム成分及び硫酸カルシウム成分を含む乾燥混合物の40〜98重量%、好ましくは60〜90重量%を占めていなければならない。
【0068】
粉末状リン酸カルシウム成分は、注入後15分以内に許容できる特性の代用骨を提供するため、限られた量の利用可能な水により素早く硬化されなければならない。この成分のリン酸カルシウムセメントへの硬化反応は、本発明による組成物によって制御され、強度が約30MPaの代用骨塩材料として18時間以内に固化させることができる。
【0069】
これは、様々な方法で行うことができる。本発明の好ましい実施形態において、水溶性添加物は、水性液体と反応した場合に粉末状リン酸カルシウムをリン酸カルシウムセメントに硬化させるための促進剤である。このような促進剤は、リン酸塩、例えばリン酸水素二ナトリウム(NaHPO)であってよい。in vivoにおける硬化反応の速度は、リン酸塩の量を全組成物の0.01と10重量%の間で変化させることによって変えることができ、塩は、粒子状硬化硫酸カルシウム中に入れられ、続いてそこからゆっくりと放出される。
【0070】
また、リン酸塩を水性液体に溶かすことができる。この場合、促進剤は、0.1〜10重量%、好ましくは1〜5重量%の濃度で水性液体中に存在しなければならない。
【0071】
粉末状リン酸カルシウム成分のリン酸カルシウムセメントへの反応は、本発明の組成物に促進剤として硬化粒子状リン酸カルシウムセメントを添加することによって加速することもできる。硬化リン酸カルシウムセメントは、ヒドロキシアパタイト(HA)、沈降ヒドロキシアパタイト(PHA)であるか、好ましくはカルシウム欠乏ヒドロキシアパタイト(CDHA)、若しくはそれらの混合物であってもよい。1.5〜2のCa/P比を有していなければならない。促進剤としての粒子状リン酸カルシウムセメントは、20μm未満、好ましくは10μm未満である粒径を有し、水性液体と反応するリン酸カルシウムの0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%を占めていなければならない。
【0072】
リン酸カルシウムのリン酸カルシウムセメントへの反応を加速する様々な方法は、別々に、或いは組み合わせて使用することができる。
【0073】
したがって、硬化反応を、高強度材料に固化するために約18時間続くようにすることができる。この時間の間に、すでに硬化した硫酸塩は、インプラントに初期強度を付与し、リン酸カルシウム成分の高強度材料への固化反応が完了した場合に、最終強度が得られるであろう。人工代用骨塩材料は、3〜4年間安定性を維持するであろう。
【0074】
硫酸カルシウム二水和物の各粒子は、大量の硫酸塩結晶を含有している。人工代用骨塩材料が体内で吸収される場合、血液中の水は、硬化硫酸塩セラミックの結晶を最終的に溶かし、その中の任意の添加物を放出するであろう。注目すべきは、この反応が、リン酸カルシウム成分のリン酸カルシウムセメントへの硬化反応に比べて桁違いに遅いことである。
【0075】
硫酸塩結晶に結合している添加物は、体液が時間とともに代用骨塩材料と接触する場合に、in vivoにおいて硫酸カルシウムと一緒に放出される。したがって、細孔形成は、硬化代用骨における少なくとも1種の添加物の制御可能な持続放出と同時に起こり、in vivoにおける有利な特性を有する。水溶性添加物は、放出されて溶け、作用部位において効果的にそれらの効果を発揮する。
【0076】
したがって、細孔、空孔及び空洞は、硫酸塩が分解するにつれて徐々に形成し、裂孔の様に振る舞い、高強度材料の最終的に固化および硬化したインプラントは、正常骨のように見えるであろう。細長い粒子が好ましい。その結果、血液と代用骨塩材料中の大部分の硬化硫酸塩粒子との間の接触が得られ、6〜12ヶ月以内に溶出される。
【0077】
また、各結晶間の距離を小さくするため、単一結晶の凝集体としての粒子を使用することができる。このような粒子は、粒子状硫酸カルシウム半水和物で提供することができる。この場合、硫酸カルシウム半水和物のβ型でなくα型が好ましいのは、機械的強度を増すためばかりでなく、結晶サイズのためでもある。
【0078】
水溶性並びに非水溶性添加物は、調製の間に粒子状硬化硫酸カルシウム中に入れることができる。すなわち、水溶液中の適当な濃度の水溶性添加物を、硫酸カルシウム半水和物と混合し、セッコウを生成物とする反応を行わせる。

2(CaSO・1/2HO)+3HO→2(CaSO・2HO)+熱
(16)

【0079】
セッコウの構造は、Ca2+と強力に結合している代替SO2−イオンの層及び水分子のシートからなり、添加物は、粒子状硫酸カルシウムの硫酸塩結晶に結合するであろう。
【0080】
硫酸カルシウム半水和物を使用する場合、水溶性添加物は、調製の間に粒子状硫酸カルシウム中に同様に入れられる。この場合、セッコウを粉砕し、約75%の水が蒸発するまで加熱してCaSO・1/2HOを得る。しかしながら、下式に従い、硫酸カルシウム半水和物の2種類の知られている型(α及びβ)が別々に製造される。


2(CaSO・2HO)→2(CaSO・1/2HO)+3H
(17)

α型は、電解質の存在下で熱水的にセッコウを脱水することによって得られる。β型は、100℃以上の温度で水大気中、セッコウを脱水することによって製造される。したがって、これらの反応が起きるときに水溶液中の適当な濃度の水溶性添加物を存在させる。
【0081】
同様に、水溶性添加物は、同様の方法で静電相互作用により粒子状硬化硫酸カルシウムの残留結晶水に付着するであろう。
【0082】
硫酸カルシウム半水和物を製造する好ましい方法は、その中に入れられた水溶性添加物を有するすでに調製された粒子状二水和物を利用することである。この場合、粉砕したセッコウを、例えばオートクレーブ中で必要な熱処理を行うと、粒子状硫酸カルシウムとして使用することができる結晶が製造される。
【0083】
水溶性添加物は、硫酸カルシウム半水和物に変換されることになっている粒子状硫酸カルシウム中に入れられている場合には熱安定性でなければならない。
【0084】
本発明による注入可能な組成物を調製するためには、効率的な混合システムが利用できなければならない。混合は、従来のセメント混合システムで行うことができ、組成物は、好都合な送達システムにより注入される。混合容器は、水性成分を粉末成分中に吸引することができるタイプであることが好ましい(ドイツ特許第4,409,610号)。このPrepack(商標)システムは、柔軟性のあるホイル袋に予め包装された成分と組み合わせて送達するための密閉混合システムである。他の混合装置、例えば、送達シリンダーに適合させることができる互いにつながった2つの軟らかい袋も使用することができることは言うまでもない。
【0085】
リン酸カルシウム成分の硬化反応を妨害し、手術中に埋め込まれた材料の初期機械的強度の低下を招くことがある組成物中の気泡形成は、減圧の条件下、例えば、真空中で本発明の組成物を混合することによって防ぐことができる。しかしながら、大気圧も使用することができる。組成物の乾燥混合物は、滅菌水性液体と混合される前に照射によって滅菌されることが好ましい。
【0086】
硬化代用骨塩材料は、適当な形状、例えば、インプラントの接続及び/又は疾患の治療などを可能にする少なくとも1種を含むペレット又はボールとして予め加工することができる。これに関して、水溶性添加物は生物活性剤であることが好ましい。
【0087】
一方、硬化硫酸カルシウムは、骨成長にも適している特定のサイズを有する粒子に加工、例えば、粉砕される大きなブロックとして例えば製造される。これらのブロックの形状は、本発明にとって全く重要でない。
【0088】
本発明は、本発明による組成物から製造される代用骨塩材料にも関する。このようなインプラントは、硬化した後で動物体又は人体に導入することができる。
【0089】
本発明の組成物、又は代用骨塩材料それ自体は、骨折治癒、歯科用インプラント、及び他の状況における異質材料のインプラントなどの多種多様な用途に使用することができる。そのような状況は、骨折、骨切り術などの、補綴又は他の異質材料の接着、補綴修正手術、形成手術、再建手術、又は整容手術のために間隙又は骨空隙若しくは既存の骨空洞を埋めることを含む。
【0090】
いずれにしても、組成物並びに代用骨塩材料は、歯周病を治療するための、又は支持的基質タンパク質又は局所作用性成長誘導因子などの、歯周病のための他の治療選択肢と組み合わせるための歯ポケット及び/又は分岐部(bifurcatures)における局所使用に適している。
【0091】
同様に、それらを、支持組織の成長にとって重要であるコラーゲン又は他の支持体と一緒に使用することができる。
【0092】
注入可能な組成物は、成形可能でもあることから、上顎洞、前頭洞、篩骨洞、又は球状洞(spheroidal sinuses)を埋め、上顎洞を介する歯インプラントとピン又はスクリュー又はニードルとの接続などのスクリュー、ニードルなどの接続を可能にするために使用することができる。
【0093】
さらに、注入可能な組成物を用い、骨折の内固定又は外固定に利用される整形用スクリュー、ピン又はニードルの除去によって引き起こされる骨格欠損を埋めることができる。そのような時、添加物として抗生物質を組成物中に入れることが好ましい。
【0094】
また、注入可能な組成物をエキスパンダーと一緒に用い、組成物又は組成物が充填されているエキスパンダーの導入前に取り外される膨張式バルーン若しくは金属エキスパンダー、又は組成物が充填されているか、或いは代用骨塩材料に接続されているステントなどの材料を挿入するための空間を作り出すことができる。
【0095】
したがって、本発明は、ヒト又はヒト以外の動物対象において支持組織に代用骨を埋め込む方法であって、代用骨塩材料用の注入可能な組成物は、前記組織に導入され、in vivoにおいて体液中で硬化する能力を有する前記注入可能な組成物は、
水性液体、
粒子状硫酸カルシウムの少なくとも1種の硫酸カルシウム成分、及び
少なくとも1種の促進剤の影響下にあって前記水性液体と反応した場合、リン酸カルシウムセメントに硬化する能力のある粉末状リン酸カルシウムの少なくとも1種のリン酸カルシウム成分を含み、
前記水性液体は、前記硬化反応のみにとって十分である量で提供され、
前記少なくとも1種のリン酸カルシウム成分及び前記少なくとも1種の硫酸カルシウム成分は、乾燥混合物として提供される方法にも関する。
【0096】
例えば、脊椎又は指関節、脊椎関節、肩関節などの関節に関して本発明の組成物又は代用骨塩材料自体を利用する場合、機器による、又は機器によらない非侵襲的又は侵襲的注入手術を実施することができる。
【0097】
上述の用途との関連で使用することができる本発明の別の実施形態は、生物活性剤による同時全身治療を合わせた組成物の局所注入を含む。このような全身治療は、単回治療又は持続的治療として行うことができる。適当な生物活性剤は、骨形成を誘導、刺激及び/又は加速するか、或いは骨分解を阻害する上述の水溶性添加物、例えば、副甲状腺ホルモン、成長因子又はスタチンなどの骨誘導剤(bone inducing agents)である。同様に、全身治療は、ビスホスホン酸塩などの骨代謝を阻害する薬剤について適用することができる。
【0098】
したがって、本発明は、ヒト又はヒト以外の動物対象において支持組織に関連する障害を予防的又は治療的に処置する方法であって、前記対象に対し、
水性液体、
粒子状硫酸カルシウムの少なくとも1種の硫酸カルシウム成分、及び
少なくとも1種の促進剤の影響下にあって前記水性液体と反応した場合、リン酸カルシウムセメントに硬化する能力のある粉末状リン酸カルシウムの少なくとも1種のリン酸カルシウム成分
を含むin vivoにおいて体液中で硬化する能力のある代用骨塩材料用の組成物を提供することを含み、
前記水性液体は、前記硬化反応のみにとって十分である量で提供され、
前記少なくとも1種のリン酸カルシウム成分及び前記少なくとも1種の硫酸カルシウム成分は、乾燥混合物として提供され、
予防的又は治療的量の少なくとも1種の生物活性剤を全身的かつ同時に投与することを含む方法にも関する。
【0099】
しかしながら、本発明の好ましい実施形態は、障害の対応する局所治療又は予防を含み、注入可能な組成物は、生物活性剤を含む。この実施形態は、ヒト又はヒト以外の動物対象において支持組織に関連する障害を予防的又は治療的に処置する方法であって、前記対象に対し、
水性液体、
粒子状硫酸カルシウムの少なくとも1種の硫酸カルシウム成分、及び
少なくとも1種の促進剤の影響下にあって前記水性液体と反応した場合、リン酸カルシウムセメントに硬化する能力のある粉末状リン酸カルシウムの少なくとも1種のリン酸カルシウム成分
を含むin vivoにおいて体液中で硬化する能力のある代用骨塩材料用の組成物を提供することを含み、
前記水性液体は、前記硬化反応のみにとって十分である量で提供され、
前記少なくとも1種のリン酸カルシウム成分及び前記少なくとも1種の硫酸カルシウム成分は、乾燥混合物として提供され、
前記粒子状硫酸カルシウム中に含まれ、それからゆっくりと放出される予防的又は治療的量の少なくとも1種の水溶性生物活性剤を同時に投与することを含む方法を含む。
【0100】
この方法は、例えば、細菌によって引き起こされる骨髄炎などの筋骨格系における感染症又は侵襲の局所治療に特に有用である。したがって、例えば、胸骨切開術、歯科用インプラント、再建手術、外傷手術、癌手術、整容手術、及び口顎部手術において、複合型の支持又は骨誘導治療及び骨格感染症の予防を得ることができる。
【0101】
この方法は、筋骨格腫瘍、例えば、腫瘍阻害剤による局所治療の可能性を同時に与える支持材料による治療を必要とする乳癌又は前立腺癌からの椎骨における転移におけるような細胞増殖抑制剤による局所治療にも有用である。さらに、腫瘍疾患などの疾患における照射の臨床効果を増強する薬剤と一緒に局所的に使用することができる。
【0102】
また、この方法は、骨吸収を阻害するか、或いは骨形成を刺激する薬剤と共に局所及び支持治療に使用することができる。
【実施例】
【0103】
次に、本発明を包含するために注意深く選択された以下の実施例を参照することにより、本発明をさらに説明し、かつ例示する。したがって、これらの実施例は、決して本発明を限定していると解釈すべきではない。
【0104】
(実施例1)
X線造影剤の持続放出。
ヒドロキシアパタイト40重量%及び非イオン性X線造影剤イオヘキソール5重量%(イオヘキソール12.1g/粒子100g)が予めドープされた粒子状硬化硫酸カルシウム60重量%を含有する本発明による組成物を調製した。
【0105】
等張緩衝液における硫酸カルシウムベースの材料からのイオヘキソールの放出をin vitroにおいて追跡した。結果を図1に示す。
【0106】
1日目からの放出は、その日の全放出である。合計で、94%を超えるドープされた薬剤が放出された。
【0107】
(実施例2)
抗生物質の持続放出。
ヒドロキシアパタイト80重量%及び2種類の異なる濃度(3及び6重量%)の抗生物質硫酸ゲンタマイシンが予めドープされた粒子状硬化硫酸カルシウム20重量%を含有する本発明による組成物を調製した。
【0108】
等張緩衝液における硫酸カルシウムベースの材料からのゲンタマイシンの放出をin vitroにおいて追跡した。結果を図2に示す。
【0109】
放出は、ゲンタマイシン3重量%(*)より6重量%(□)で速かった。
【0110】
上記のように2種類の異なるゲンタマイシン濃度で予めドープされた硬化硫酸カルシウムの粒子のみからのゲンタマイシンの放出を比較した。
【0111】
等張緩衝液における硫酸カルシウム粒子からのゲンタマイシンの放出をin vitroにおいて追跡した。結果を図3に示す。
【0112】
(実施例3)
in vivoにおける注入。
100μm未満の粒径分布を有する本発明による組成物を調製した。
【0113】
組成物は、狭い子ブタの骨梁チャンネル(trabecular bone channel)並びにヒト死体の脊椎中に首尾良く注入され、in situにおいて固化した。
【0114】
顕微鏡写真は、組成物が骨のマイクロチャンネルに入り込んで浸透し、200〜300μm以下のサイズを有することを示している。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】

【図2】

【図3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥混合物としての少なくとも1種のリン酸カルシウム成分及び少なくとも1種の硫酸カルシウム成分、前記乾燥混合物と混合される水性液体、及び少なくとも1種の促進剤を含み、前記少なくとも1種のリン酸カルシウム成分は、前記少なくとも1種の促進剤の影響下にあって前記水性液体と反応した場合、リン酸カルシウムセメントに硬化する能力のある粉末状リン酸カルシウムである、in vivoにおいて体液中で硬化する能力のある代用骨塩材料用の注入可能な組成物であって、前記少なくとも1種の硫酸カルシウム成分は、100μm未満である粒径を有する粒子状硬化硫酸カルシウムであることを特徴とする注入可能な組成物。
【請求項2】
前記粒子状硬化硫酸カルシウムは、1〜10μmの粒径を有することを特徴とする請求項1に記載の注入可能な組成物。
【請求項3】
前記粒子状硬化硫酸カルシウムは、硫酸カルシウム二水和物(セッコウ)であることを特徴とする請求項1に記載の注入可能な組成物。
【請求項4】
前記粒子状硬化硫酸カルシウムは、前記乾燥混合物の60重量%まで、好ましくは10〜40重量%を占めることを特徴とする請求項1に記載の注入可能な組成物。
【請求項5】
前記粒子状硬化硫酸カルシウムは、少なくとも1種の非水溶性添加物をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の注入可能な組成物。
【請求項6】
前記非水溶性添加物は、ビタミンEであることを特徴とする請求項1に記載の注入可能な組成物。
【請求項7】
前記粒子状硬化硫酸カルシウムは、少なくとも1種の水溶性添加物をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の注入可能な組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1種の水溶性添加物は、骨形成を誘導、刺激及び/又は加速するか、或いは骨分解を阻害する物質であることを特徴とする請求項7に記載の注入可能な組成物。
【請求項9】
前記誘導性物質は、内因的に産生される生物活性分子であることを特徴とする請求項7に記載の注入可能な組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1種の水溶性添加物は、抗感染性物質であることを特徴とする請求項7に記載の注入可能な組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1種の水溶性添加物は、細胞増殖抑制剤であることを特徴とする請求項7に記載の注入可能な組成物。
【請求項12】
前記少なくとも1種の水溶性添加物は、非イオン性X線造影剤であることを特徴とする請求項7に記載の注入可能な組成物。
【請求項13】
前記非イオン性X線造影剤は、イオヘキソールであることを特徴とする請求項12に記載の注入可能な組成物。
【請求項14】
前記少なくとも1種の水溶性添加物は、前記水性液体と反応した場合に前記粉末状リン酸カルシウムを前記リン酸カルシウムセメントに硬化させるための促進剤であることを特徴とする請求項7に記載の注入可能な組成物。
【請求項15】
前記促進剤は、リン酸水素二ナトリウム(NaHPO)であることを特徴とする請求項14に記載の注入可能な組成物。
【請求項16】
前記リン酸水素二ナトリウムは、前記組成物の0.01〜10重量%を占めることを特徴とする請求項15に記載の注入可能な組成物。
【請求項17】
前記粉末状の少なくとも1種のリン酸カルシウム成分は、リン酸四カルシウム(TTCP)、リン酸一カルシウム一水和物(MCPM)、リン酸二カルシウム二水和物(DCPD)、無水リン酸二カルシウム(DCPA)、リン酸二カルシウム(DCP)、リン酸三カルシウム(TCP)、及びリン酸八カルシウム(OCP)を含む群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の注入可能な組成物。
【請求項18】
前記リン酸三カルシウムは、α−リン酸三カルシウムであることを特徴とする請求項17に記載の注入可能な組成物。
【請求項19】
前記粉末状の少なくとも1種のリン酸カルシウム成分は、前記乾燥混合物の40〜98重量%、好ましくは60〜90重量%を占めることを特徴とする請求項1に記載の注入可能な組成物。
【請求項20】
前記水性液体は、蒸留水及び/又は1種又は数種の無機及び/又は有機塩を含む溶液を含むことを特徴とする請求項1に記載の注入可能な組成物。
【請求項21】
前記少なくとも1種の促進剤は、前記水性液体に溶解していることを特徴とする請求項1に記載の注入可能な組成物。
【請求項22】
前記少なくとも1種の促進剤は、リン酸水素二ナトリウム(NaHPO)であることを特徴とする請求項1に記載の注入可能な組成物。
【請求項23】
前記少なくとも1種の促進剤は、粒子状リン酸カルシウムセメントであることを特徴とする請求項1に記載の注入可能な組成物。
【請求項24】
前記粒子状リン酸カルシウムセメントは、1.5〜2のCa/P比を有することを特徴とする請求項23に記載の注入可能な組成物。
【請求項25】
前記少なくとも1種の促進剤は、前記水性液体の0.1〜10重量%、好ましくは1〜5重量%を占めることを特徴とする請求項22又は23に記載の注入可能な組成物。
【請求項26】
前記水性液体は、前記乾燥混合物1グラムあたり0.1〜2ml、好ましくは0.2〜0.7mlを占めることを特徴とする請求項1に記載の注入可能な組成物。
【請求項27】
前記粒子状リン酸カルシウムセメントは、ヒドロキシアパタイト(HA)、沈降ヒドロキシアパタイト(PHA)、若しくはカルシウム欠乏ヒドロキシアパタイト(CDHA)、又はそれらの混合物であることを特徴とする請求項23に記載の注入可能な組成物。
【請求項28】
前記ヒドロキシアパタイトは、沈降ヒドロキシアパタイト(PHA)であることを特徴とする請求項27に記載の注入可能な組成物。
【請求項29】
前記粒子状リン酸カルシウムセメントは、20μm未満、好ましくは10μm未満の粒径を有することを特徴とする請求項23に記載の注入可能な組成物。
【請求項30】
前記粒子状リン酸カルシウムセメントは、前記リン酸カルシウム成分の0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%を占めることを特徴とする請求項23に記載の注入可能な組成物。
【請求項31】
生物学的に適合する油をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の注入可能な組成物。
【請求項32】
前記生物学的に適合する油は、ビタミンEであることを特徴とする請求項31に記載の注入可能な組成物。
【請求項33】
pHを低下させる成分をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の注入可能な組成物。
【請求項34】
前記pHを低下させる成分は、アスコルビン酸又はクエン酸であることを特徴とする請求項33に記載の注入可能な組成物。
【請求項35】
前記pHを低下させる成分は、0.01〜5重量%、好ましくは0.1〜2重量%を占めることを特徴とする請求項33に記載の注入可能な組成物。
【請求項36】
前記乾燥混合物は、無菌性であることを特徴とする請求項1に記載の注入可能な組成物。
【請求項37】
請求項1から36までのいずれか一項に記載の組成物から製造される代用骨塩材料。
【請求項38】
注入可能な代用骨塩材料を製造する方法であって、請求項1から36までのいずれか一項に記載の組成物を、密閉混合及び送達システムにおいて、好ましくは減圧条件下で混合する方法。
【請求項39】
X線造影剤としての請求項12又は13に記載の人工代用骨塩材料用の組成物の使用。
【請求項40】
前記X線造影剤は、注入組成物の局在化並びに骨欠損及び骨折の治癒をモニターするための手段として使用される請求項39に記載の使用。
【請求項41】
前記X線造影剤は、関節に隣接して適用される請求項39に記載の使用。
【請求項42】
ヒト又はヒト以外の動物対象において支持組織に関連する障害を予防的又は治療的に処置する方法であって、前記対象に対し、
水性液体、
粒子状硫酸カルシウムの少なくとも1種の硫酸カルシウム成分、及び
少なくとも1種の促進剤の影響下にあって前記水性液体と反応した場合、リン酸カルシウムセメントに硬化する能力のある粉末状リン酸カルシウムの少なくとも1種のリン酸カルシウム成分、
を含むin vivoにおいて体液中で硬化する能力のある代用骨塩材料用の組成物を提供することを含み、
前記水性液体は、前記硬化反応のみにとって十分である量で提供され、
前記少なくとも1種のリン酸カルシウム成分及び前記少なくとも1種の硫酸カルシウム成分は、乾燥混合物として提供され、
予防的又は治療的量の少なくとも1種の生物活性剤を全身的かつ同時に投与することを含む方法。
【請求項43】
ヒト又はヒト以外の動物対象において支持組織に関連する障害を予防的又は治療的に処置する方法であって、前記対象に対し、
水性液体、
粒子状硫酸カルシウムの少なくとも1種の硫酸カルシウム成分、及び
少なくとも1種の促進剤の影響下にあって前記水性液体と反応した場合、リン酸カルシウムセメントに硬化する能力のある粉末状リン酸カルシウムの少なくとも1種のリン酸カルシウム成分、
を含むin vivoにおいて体液中で硬化する能力のある代用骨塩材料用の組成物を提供することを含み、
前記水性液体は、前記硬化反応のみにとって十分である量で提供され、
前記少なくとも1種のリン酸カルシウム成分及び前記少なくとも1種の硫酸カルシウム成分は、乾燥混合物として提供され、
前記粒子状硫酸カルシウム中に含まれ、それからゆっくりと放出される予防的又は治療的量の少なくとも1種の水溶性生物活性剤を同時に投与することを含む方法。
【請求項44】
ヒト又はヒト以外の動物対象において支持組織に関連する障害を予防的又は治療的に処置する方法であって、前記対象に対し、ゆっくりと放出される予防的又は治療的量の少なくとも1種の水溶性生物活性剤を封入体として含む粒子状硫酸カルシウムをその中に有する予め形成された硬化リン酸カルシウムセメントの代用骨塩材料を提供することを含む方法。
【請求項45】
ヒト又はヒト以外の動物対象において支持組織に代用骨を埋め込む方法であって、代用骨塩材料用の注入可能な組成物を、前記組織に導入し、in vivoにおいて体液中で硬化する能力を有する前記注入可能な組成物は、
水性液体、
粒子状硫酸カルシウムの少なくとも1種の硫酸カルシウム成分、及び
少なくとも1種の促進剤の影響下にあって前記水性液体と反応した場合、リン酸カルシウムセメントに硬化する能力のある粉末状リン酸カルシウムの少なくとも1種のリン酸カルシウム成分を含み、
前記水性液体は、前記硬化反応のみにとって十分である量で提供され、
前記少なくとも1種のリン酸カルシウム成分及び前記少なくとも1種の硫酸カルシウム成分は、乾燥混合物として提供される方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工代用骨塩材料用の乾燥混合物組成物であって、
a)リン酸カルシウムセメントに硬化する能力を有する少なくとも1種のリン酸カルシウム成分、
b)少なくとも1種の硫酸カルシウム成分、
c)前記硫酸カルシウム成分に含まれ、それと結合している少なくとも1種の添加物、及び、場合により、
d)少なくとも1種の促進剤
を含む乾燥混合物組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1種の硫酸カルシウム成分は、硬化硫酸カルシウム、好ましくは硫酸カルシウム二水和物、及び/又は硫酸カルシウム半水和物、好ましくはそのα型である請求項1に記載の乾燥混合物組成物。
【請求項3】
前記硫酸カルシウム成分は、100μm未満、好ましくは1〜50μm、最も好ましくは1〜10μmである粒径を有する上記請求項のいずれか一項に記載の乾燥混合物組成物。
【請求項4】
前記硬化硫酸カルシウムは、前記組成物の60重量%まで、好ましくは10〜40重量%を占める上記請求項のいずれか一項に記載の乾燥混合物組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種のリン酸カルシウム成分は、リン酸四カルシウム(TTCP)、リン酸一カルシウム一水和物(MCPM)、リン酸二カルシウム二水和物(DCPD)、無水リン酸二カルシウム(DCPA)、リン酸二カルシウム(OCP)、リン酸三カルシウム(TCP)、及びリン酸八カルシウム(OCP)を含む群から選択され、α−リン酸三カルシウムであることが好ましい上記請求項のいずれか一項に記載の乾燥混合物組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1種のリン酸カルシウム成分は、リン酸カルシウム成分及び硫酸カルシウム成分を含む前記乾燥混合物の40〜98重量%、好ましくは60〜90重量%を占める上記請求項のいずれか一項に記載の乾燥混合物組成物。
【請求項7】
前記添加物は、水溶性であり、骨形成を誘導、刺激及び/又は加速する物質、好ましくは骨誘導化合物、又は骨代謝回転を低下させる化合物又は骨分解を阻害する化合物であり、前記誘導性物質は、内因的に産生される生物活性分子、好ましくはホルモン又は成長因子若しくはそれらの誘導体及びスタチン;抗酸化剤;ビタミン;細胞増殖抑制剤;タンパク質;鎮痛薬;抗ウイルス、抗真菌又は結核菌静菌性/結核菌殺菌性化合物;抗寄生虫化合物;天然抗生物質並びに半合成及び合成抗菌性又は静菌性化合物:非イオン性X線造影剤;抗感染性物質;天然若しくは合成的に製造されるプロスタグランジン、プロスタグランジンの前駆体若しくは代謝産物、プロスタグランジン類縁体又は内因性のプロスタグランジン産生を誘導若しくは阻害する、又はプロスタグランジン代謝を誘導若しくは阻害する化合物、又は前駆体の産生若しくは活性なプロスタグランジン代謝産物のさらなる代謝に影響を及ぼす化合物である上記請求項のいずれか一項に記載の乾燥混合物組成物。
【請求項8】
前記ホルモンは、副甲状腺ホルモン及びそれらの誘導体、エストロゲン、プロゲステロン、アンドロゲン、テストステロン、カルシトニン、ソマトメジン、及びオキシトシンであり、自家性であることが好ましい請求項7に記載の乾燥混合物組成物。
【請求項9】
前記成長因子は、形質転換成長因子(TGF β3)、骨形成タンパク質、PTHrP、オステオプロテグリン(OPG)、インディアンヘッジホッグ、RANKL、塩基性線維芽細胞、インスリン様成長因子(IgF1)、血小板由来成長因子、及び血管成長因子であり、内因的に産生されることが好ましい請求項7に記載の乾燥混合物組成物。
【請求項10】
前記タンパク質は、エナメル基質タンパク質であるアメリン−1、アメリン−2及びアメロブラスチンであり、これらは、自家性であるか、或いは他の種から抽出され、又は他の種の組織若しくは細胞によって産生され、又は合成的に製造されるか、或いは他の生細胞若しくは生物体によって産生される請求項7に記載の乾燥混合物組成物。
【請求項11】
前記骨分解抑制剤は、ビスホスホン酸塩、オステオカルシン、オステオネクチン及びそれらの誘導体である請求項7に記載の乾燥混合物組成物。
【請求項12】
前記ビタミンは、カルシフェロール、カルシトリオール、他のDビタミン及びそれらの誘導体である請求項7に記載の乾燥混合物組成物。
【請求項13】
前記鎮痛薬は、リドカイン−HCl、ブピバカイン−HCl、及びケトロラクトロメタミンである請求項7に記載の乾燥混合物組成物。
【請求項14】
前記抗生物質は、テトラサイクリン−HCl、バンコマイシン、トブラマイシン、ゲンタマイシン、及びセファロスポリンである請求項7に記載の乾燥混合物組成物。
【請求項15】
前記細胞増殖抑制剤は、シス−プラチン、イホスファミド、メトトレキセート、ドキソルビシン−HCl、三酸化ヒ素、及びレチノイド又はそれらの誘導体である請求項7に記載の乾燥混合物組成物。
【請求項16】
前記非イオン性造影剤は、イオヘキソール、イオジキサノール、イオベルソール、イオパミドール、又はイオトロラン、好ましくはイオヘキソールである請求項7に記載の乾燥混合物組成物。
【請求項17】
前記添加物は、非水溶性、好ましくは生物学的に適合する油、より好ましくはビタミンE、最も好ましくはα−トコフェロールである請求項1から6までに記載の乾燥混合物組成物。
【請求項18】
前記促進剤は、前記乾燥混合物組成物の0.01〜10重量%の量であることが好ましいリン酸水素二ナトリウム(NaHPO)、及び/又は硬化リン酸カルシウムセメント、好ましくはヒドロキシアパタイト(HA)、沈降ヒドロキシアパタイト(PHA)、若しくはカルシウム欠乏ヒドロキシアパタイト(CDHA)、又はそれらの混合物であり、1.5〜2のCa/P比及び20μm未満、好ましくは10μm未満の粒径を有することが好ましい上記請求項のいずれか一項に記載の乾燥混合物組成物。
【請求項19】
前記硬化リン酸カルシウムセメントは、前記リン酸カルシウム成分の0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%を占める請求項18に記載の乾燥混合物組成物。
【請求項20】
前記少なくとも1種の促進剤は、前記少なくとも1種の添加物に相当し、前記硫酸カルシウム成分中に含まれ、それに結合している請求項18及び19に記載の乾燥混合物組成物。
【請求項21】
pHを低下させる成分、好ましくはアスコルビン酸又はクエン酸を、0.01〜5重量%、好ましくは0.1〜2重量%の量でさらに含む上記請求項のいずれか一項に記載の乾燥混合物組成物。
【請求項22】
無菌性である上記請求項のいずれか一項に記載の乾燥混合物組成物。
【請求項23】
ヒト又はヒト以外の動物に投与される代用骨塩組成物であって、請求項1から22までのいずれか一項に記載の乾燥混合物組成物を含み、これに水性液体が添加されており、前記少なくとも1種のリン酸カルシウム成分は、硬化反応を起こし、かつ/又はリン酸カルシウムセメントに硬化している組成物。
【請求項24】
前記水性液体は、蒸留水及び/又は1種又は数種の無機及び/又は有機塩を含む溶液を含み、前記乾燥混合物組成物1グラムあたり0.1〜2ml、好ましくは0.2〜0.7mlを占める請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記リン酸カルシウムセメントは、ヒドロキシアパタイト(HA)、沈降ヒドロキシアパタイト(PHA)、若しくはカルシウム欠乏ヒドロキシアパタイト(CDHA)、又はそれらの混合物、好ましくは沈降ヒドロキシアパタイト(PHA)である請求項23及び24に記載の組成物。
【請求項26】
前記促進剤は、0.1〜10重量%、好ましくは1〜5重量%の濃度で水性液体に溶かされる請求項23から25までのいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
人工代用骨塩材料用の請求項1から22までに記載の乾燥混合物組成物又は請求項23から26までに記載の組成物の使用。
【請求項28】
前記組成物の局在化並びに骨欠損及び骨折の治癒をモニターするためのX線造影剤としての請求項1から22までに記載の乾燥混合物組成物又は請求項23から26までに記載の組成物の使用。
【請求項29】
前記X線造影剤は、関節に隣接して適用される請求項28に記載の使用。
【請求項30】
ヒト又はヒト以外の動物対象において支持組織に関連する障害の予防的又は治療的処置の方法であって、前記対象に対する、好ましくは注入による予防的又は治療的量の前記少なくとも1種の添加物を含む請求項23から26までに記載の組成物の局所投与を含み、前記添加物は、前記組成物からゆっくりと放出され、場合により、予防的又は治療的量の少なくとも1種の生物活性剤、好ましくは前記添加物のうち少なくとも1種を全身的かつ/又は同時に投与することを含む方法。
【請求項31】
支持組織に関連する障害の前記予防的又は治療的処置は、骨折治癒;骨折、骨格欠損、及び骨切り術に関連する歯科用インプラント及び異質材料のインプラントの挿入;脊椎又は関節、好ましくは指関節、脊椎関節及び肩関節に関連する機器によらない非侵襲的又は侵襲的注入手術;補綴修正手術;形成手術;再建手術;整容手術;胸骨切開術;外傷手術;癌手術;口顎部手術;歯周病;上顎洞、前頭洞、篩骨洞及び球状洞の充填;膨張式バルーン若しくは金属エキスパンダー用の空間形成;及び筋骨格系における感染症又は侵襲、好ましくは細菌によって引き起こされた骨髄炎を含む請求項30に記載の方法。
【請求項32】
ヒト又はヒト以外の動物対象において支持組織に代用骨を埋め込む方法であって、請求項23から26までに記載の組成物は、好ましくは注入によって前記組織に導入される方法。

【公表番号】特表2006−519082(P2006−519082A)
【公表日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−507949(P2006−507949)
【出願日】平成16年3月5日(2004.3.5)
【国際出願番号】PCT/SE2004/000328
【国際公開番号】WO2004/078223
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(504235621)ボーン サポート アクチボラゲット (4)
【Fターム(参考)】