説明

新生血管形成と関連した症状を治療および診断するためのインターロイキン−20

新生血管形成の促進のための医薬を製造するための、IL-20、またはその類縁体、活性フラグメントもしくは誘導体の使用。新生血管形成の阻害のための医薬を製造するための、IL-20のアンタゴニスト、またはその類縁体、活性フラグメントもしくは誘導体の使用。IL-20活性を分析することにより、新生血管形成を伴う疾患の症状を診断する方法。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
IL-20は、体内で血管形成(angiogenic)因子として作用する。よって本発明は、組織において新生血管形成を促進するためのIL-20、その類縁体および変異体および誘導体に関する。
【0002】
治療抗体または可溶性受容体による、あるいは小分子またはアンチセンスまたはsRNAiによる関連レセプターのブロッキングによるIL-20の阻害/中和は、腫瘍の増殖を妨害し、炎症性疾患を治療することができる。また、IL-20またはIL-20の類縁体は、外傷および虚血により引き起こされる、創傷治癒、皮膚潰瘍、または器官再生の治療のために使用することができる。
【背景技術】
【0003】
本発明は、IL-20が新生血管形成に作用を及ぼすことを発見したことに関する。US6610286は、IL-20が、血管形成に作用するIL-8に対して作用を及ぼすことを示す。しかし、IL-20自体がIL-8とは独立して血管形成に対して作用を及ぼすことを結果は示す。このため、血管形成作用の直接的なコントロールが可能である。
【0004】
異常な血管増殖は、慢性炎症および癌など多くの疾患に影響を及ぼす。たとえば、乾癬と関連した新生血管形成は、上皮細胞およびピュリティック(puritic)プラークのターンオーバーの増大の原因となる;それは、炎症細胞が傷害部位に入る通路を提供することによりクローン病の原因となる;それは、パンヌス、すなわち慢性関節リウマチにおける炎症性組織の過剰なひだの一部である;それは、子宮内膜症における腹膜内出血および糖尿病性網膜症における黄斑変性の原因である。明らかに、新生血管形成を妨害する療法または治療は、この種類の疾患の治療に価値があるはずである。
【0005】
一方、新生血管形成を促進する療法は、多くの疾患の治療に価値がある。これら因子は、幾つかの例を挙げると、CNSまたは器官(たとえば心筋層)における虚血性または外傷性傷害の後に、損傷組織を回復させるために使用してもよいし;表層膜における傷害の後に、上皮修復を促進するために使用してもよい(新生血管形成および血管新生の潜在的な意味がWO99/55869において議論される)。
【0006】
要するに、新生血管形成は、胚および胎児の発達において、黄体、子宮内膜の形成において、および創傷治癒において通常観察される。それは、糖尿病性網膜症、黄斑変性、アテローム性動脈硬化症、乾癬、慢性関節リウマチおよび腫瘍増殖などの障害に関係がある。また、新生血管形成は、子宮頸癌の初期の指標として提案される。肥満、糖尿病、そしておそらくアルツハイマー病も、新生血管形成に依存する。よって、抗新生血管形成は、言及された疾患の幾つかに効果的であり得る。
【0007】
健康な動物の成体における新生血管形成は、創傷治癒およびメスの生殖周期に限定されるため、これは、病理学的プロセス、たとえば充実性腫瘍の発生および炎症性症状、たとえば網膜症および関節炎の特異的な指標である。よって、本発明はまた、新生血管形成に関連のある疾患および障害を診断する際に有用な方法を提供する。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、第一の態様において、新生血管形成の向上により利益を受ける症状を治療するための医薬を製造するためのIL-20の使用を提供する。
【0009】
本発明は、新生血管形成の低減により利益を受ける症状を治療するための医薬を製造するためのIL-20のアンタゴニストの使用を提供する。
【0010】
また本発明は、薬学的に許容可能なキャリアおよび希釈剤とともにIL-20を含む薬学的組成物を提供する。
【0011】
また本発明は、薬学的に許容可能なキャリアおよび希釈剤とともにIL-20のアンタゴニストを含む薬学的組成物を提供する。
【0012】
また本発明は、効果的な量のIL-20を用いて、新生血管形成の必要な哺乳類を治療する方法を提供する。
【0013】
また本発明は、効果的な量のIL-20のアンタゴニストを用いて、新生血管形成の低減の必要な哺乳類を治療する方法を提供する。
【0014】
また本発明は、新生血管形成の活性を診断するための方法を提供する。
【定義】
【0015】
本発明の詳細な態様を議論する前に、本発明の主な側面に関連する特定の用語の定義を提供する。「新生血管形成(neovascularisation)」は、組織/器官における新たな血管の形成をいう。これは、「血管新生(angiogenesis)」、「血管形成(vasculogenesis)」および「重積(intussuception)」などの幾つかの異なるプロセスを含む。「血管新生」は、既に存在する血管から新たな血管が発生し始めるプロセスである。「血管形成」は、幹細胞の血管内皮細胞への分化による血管の新規(de novo)形成のプロセスである。「重積」は、間質組織を大きな「マザー」管の管腔に増殖させることにより、大きな「マザー」管が小さな「ドーター」管に分割するプロセスである。
【0016】
本発明に従って、当該技術分野の範囲において、慣用的な分子生物学、微生物学、および組換えDNA技術を採用することができる。かかる技術は、文献において十分に説明されている。たとえば、Sambrook, Fritsch & Maniatis, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York (herein “Sambrook et al., 1989”) DNA Cloning: A Practical Approach, Volumes I and II /D.N. Glover ed. 1985); Oligonucleotide Synthesis (M.J. Gait ed. 1984); Nucleic Acid Hybridization (B.D. Hames & S.J. Higgins eds (1985)); Transcription And Translation (B.D. Hames & S.J. Higgins, eds. (1984)); Animal Cell Culture (R.I. Freshney, ed. (1986)); Immobilized Cells And Enzymes (IRL Press, (1986)); B. Perbal, A Practical Guide To Molecular Cloning (1984) が参照される。
【0017】
「効果的な量」は、新生血管形成を誘導するのに充分な量を意味する。それは、投与手段、標的部位、患者の状態、治療が被検体内で行われるかまたは単離された細胞で行われるか、治療の頻度などに依存する。投与量の範囲は、1日につき体重1キログラムあたり1マイクログラム〜1000マイクログラムと通常予測される。医薬調合物および投与量の範囲を完全に議論するために、Remington´s Pharmaceutical Sciences, 18th Ed., (Mack Publishing Co., Easton, Penn., 1996)が参照される。
【0018】
本発明の文脈において、「治療(treatment)」または「治療する(treating)」は、疾患の予防、緩和、治癒または軽減をいう。本発明は、新生血管形成に関し、これはある症例では有益な効果を示すことがあるが、別の障害では望ましくないこともあるため、「治療」または「治療する」の用語は、本発明の文脈において、観察される効果の低下、並びに当該効果の誘導を指してもよい。
【0019】
本発明の文脈において、「癌」は、任意の新生物性障害を指し、たとえば細胞性障害、たとえば肉腫、癌腫、黒色腫、白血病、リンパ腫、乳房、頭頸部、卵巣、膀胱、肺、咽頭、喉頭、食道、胃、小腸、肝臓、膵臓、結腸、女性生殖器、男性生殖器、前立腺、腎臓および中枢神経系の癌である。本発明の一側面において、癌は、皮膚、前立腺、膵臓、肺、卵巣または精巣にある。本発明の文脈において、「IL-20」は、WO9927103に規定され、これは以下のものを含む:
IL-20は、152アミノ酸を含む(配列番号1):
LKTLNLGSCVIATNLQEIRNGFSDIRGSVQAKDGNIDIRILRRTESLQDTKPANRCCLLR
HLLRLYLDRVFKNYQTPDHYTLRKISSLANSFLTIKKDLRLCHAHMTCHCGEEAMKKYSQ
ILSHFEKLEPQAAVVKALGELDILLQWMEETE
またIL-20は、以下の配列(配列番号2)を含み、これはN−末端にシグナル配列を更に含む:
MKASSLAFSLLSAAFYLLWTPSTGLKTLNLGSCVIATNLQEIRNGFSDIRGSVQAKDGNI
DIRILRRTESLQDTKPANRCCLLRHLLRLYLDRVFKNYQTPDHYTLRKISSLANSFLTIK
KDLRLCHAHMTCHCGEEAMKKYSQILSHFEKLEPQAAVVKALGELDILLQWMEETE
よって「IL-20」は、上記配列を有し、本発明に記載される活性を有する、蛋白質並びに類縁体、活性断片および誘導体を含む。
【発明の説明】
【0020】
本発明は、IL-20およびIL-20のアンタゴニストの新規な使用を提供する。IL-20は、新生血管形成に直接関与する。従ってIL-20は、新生血管形成が望ましい疾患の治療に使用することができる。よって、IL-20のアンタゴニストは、新生血管形成の妨害が好ましい症状に有効である。
【0021】
新生血管形成を伴う疾患は、たとえば以下のとおりである:虚血に関連する症状、組織の移植(transplants)、皮膚、組織または器官の移植(grafting)、上皮組織の修復、子宮内膜症、種々の眼の疾患、たとえば糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、角膜移植拒絶、後水晶体線維増殖症、血管新生緑内障、ルベオーシス、黄斑変性、低酸素症、および他の異常な眼の新生血管形成、肥満、原発腫瘍の治療および癌の転移または蔓延の予防、排卵および胎盤の発達を抑制することによる出生コントロール、炎症性疾患、たとえば慢性関節リウマチ、血管の疾患、たとえばアテローム斑内の血管腫および毛細血管の増殖、心筋の血管新生、血管線維腫、斑の新生血管形成、過形成性瘢痕、たとえばケロイド。「IL-20」は、ヒト染色体1q32.2に位置するIL-20遺伝子によりコードされる4へリックスバンドルサイトカインを指し(Acc No. Q9NYY1, EMBL AF224266/AF402002/ AAF36679.1/AAK84423.1)、これは、国際特許出願No. PCT/US98/25228、公開no. WO 99/27103、1999年6月3日公開に記載され、この国際特許出願は、その全体が本願に組込まれ、配列番号2としてIL-20(“Zcyto 10”)(これはその全体が本願に組込まれる)、並びにそれを産生する方法およびそれに対する抗体および配列番号1としてIL-20をコードするポリヌクレオチド配列を、上記出願において開示する。また本発明は、IL-20ポリペプチドの使用を想定し、IL-20ポリペプチドは、本明細書で使用されるとおり、本願の上述の配列番号1および配列番号2のポリペプチドと同一の配列を備えたポリペプチドを意味すると解釈すべきであり、シグナル配列なしのペプチド配列を配列番号1として記し、シグナル配列を含むペプチド配列を配列番号2として記す。本発明は、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または95%以上を含むそれらのオーソログ(orthologs)を含む。また本発明は、配列番号2のアミノ酸残基1〜176、残基25〜151、または残基33〜176の配列に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または95%以上の配列同一性を示すアミノ酸配列を含むポリペプチドの使用を含む。パーセント同一性を決定する方法は以下に記載する。本発明のIL-20ポリペプチドは、IL-20の生物学的活性の全てまたは一部を保持しており、これによりIL-20は癌治療に有効である。ポリペプチドのあるものは、IL-20の生物学的活性より高い生物学的活性を有していてもよい。
【0022】
本発明は、他の種に由来する対応の蛋白質およびポリヌクレオチドを包含する(「種のオーソログ」)。他の哺乳類の種、たとえばマウス、ブタ、ヒツジ、ウシ、イヌ、ネコ、ウマ、および他の霊長類に由来するIL-20ポリペプチドがとりわけ興味深い。ヒトIL-20蛋白質の種のオーソログは、慣用的なクローニング技術と組み合わせて本発明により提供される情報および構成物を用いてクローニングすることができる。ここで使用されクレームされる「ポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドであって配列番号2により規定されるもの」という用語は、このポリペプチドの対立遺伝子変異体および種のオーソログのすべてを含む。
【0023】
また本発明は、WO99/27103の配列番号2の蛋白質ポリペプチドおよびその種のオーソログと実質的に同一の単離された蛋白質ポリペプチドを提供する。「単離された」とは、天然の環境以外の状況、たとえば血液および動物組織から隔離された状況で見出される蛋白質またはポリペプチドを意味する。好ましい形態において、単離されたポリペプチドは、他のポリペプチドが実質的に存在せず、とりわけ動物由来の他のポリペプチドが存在しない。高度に精製された形態、すなわち95%以上の純度、より好ましくは99%以上の純度でポリペプチドを提供することが好ましい。「実質的に同一の」という用語は、WO99/27103の配列番号2に示される配列または種のオーソログと50%、好ましくは60%、より好ましくは少なくとも80%の配列同一性を有するポリペプチドを表すために本明細書で使用される。より好ましくは、かかるポリペプチドは、WO99/27103の配列番号2またはそのオーソログと少なくとも90%同一であり、最も好ましくは95%以上同一である。パーセント配列同一性は、慣用的な方法によって決定される。たとえば、Altschul et al., Bull. Math. Bio. 48: 603-616 (1986) およびHenikoff and Henikoff, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 10915-10919 (1992) が参照される。ポリヌクレオチド分子の配列同一性は、上記で開示されるとおり比を用いて同様の方法により決定される。
【0024】
IL-20のアンタゴニストまたはインヒビター、その類縁体、活性フラグメントまたは誘導体は、新生血管形成が有益であると考えられない疾患の治療において有効である。IL-20活性のインヒビター(アンタゴニスト)は、抗−IL-20抗体および可溶性レセプター、並びに他のペプチド剤および非ペプチド剤を含む。
【0025】
抗体は、US 6,486,301. カラム69-70 (抗体の作成(production of antibodies))に記載される方法により作成される。
【0026】
IL-20は、IL-20R1/IL-20R2へテロダイマーを介してその効果を発揮し信号を送り、IL-20R2およびIL-22R1から構成されるレセプター複合体に対するリガンドでもある(Dumoutier et al, J. Immol 167: 3545-3549, 2001; Fickenscher et al, Trends Immunol 23:89-96, 2002)。本発明は、各レセプターの可溶性部分の投与、またはたとえばWO01/46232に記載されるレセプターの複合体としての投与を含む。
【0027】
また、アンタゴニストは、小分子であってもよいし、IL-20のレセプター結合フラグメントであってもよく、これらは他の状態では不活性である。
【0028】
変異体IL-20ポリペプチドまたは実質的に同一の蛋白質およびポリペプチドは、一以上のアミノ酸の置換、欠失または付加を有するものとして特徴づけられる。これらの変化は、好ましくはマイナーな性質の変化であり、保存的アミノ酸置換(表1参照)、並びに蛋白質またはポリペプチドのフォールディングまたは活性に有意に影響を及ぼさない他の置換;典型的には1〜約30のアミノ酸の小さな欠失;および小さなアミノ末端またはカルボキシル末端の伸長、たとえばアミノ末端のメチオニン残基、約20−25残基までの小さなリンカーペプチド、または精製を容易にする小さな伸長(アフィニティータグ)、たとえばポリヒスチジントラクト、プロテインA、Nilsson et al., EMBO J. 4: 1075 (1985); Nilsson et al., Methods Enzymol. 198: 3 (1991), glutathione S transferase, Smith and Johnson, Gene 67: 31 (1988)、または他の抗原エピトープまたは結合ドメインである。一般的には、Ford et al., Protein Expression and Purification 2: 95-107 (1991)が参照される。アフィニティータグをコードするDNAは、商業的業者から入手可能である(たとえば、Pharmacia Biotech, Piscataway, NJ)。
【0029】
表1
保存的アミノ酸置換
塩基性: アルギニン
リジン
ヒスチジン
酸性: グルタミン酸
アスパラギン酸
極性: グルタミン
アスパラギン
疎水性: ロイシン
イソロイシン
バリン
芳香族: フェニルアラニン
トリプトファン
チロシン
低分子: グリシン
アラニン
セリン
トレオニン
メチオニン。
【0030】
また、本発明の蛋白質は、天然に存在しないアミノ酸残基を含むことができる。天然に存在しないアミノ酸には、以下のものが含まれるが、これらに限定されない:トランス-3-メチルプロリン、2,4-メタノプロリン、シス-4-ヒドロキシプロリン、トランス-4-ヒドロキシプロリン、Nメチルグリシン、addo−トレオニン、メチルトレオニン、ヒドロキシエチルシステイン、ヒドロキシエチルホモシステイン、ニトログルタミン、ホモグルタミン、ピペコリン酸、チアゾリジンカルボン酸、デヒドロプロリン、3-および4-メチルプロリン、3,3-ジメチルプロリン、tert-ロイシン、ノルバリン、2-アザフェニルアラニン、3-アザフェニルアラニン、4-アザフェニルアラニン、および4-フルオロフェニルアラニン。天然に存在しないアミノ酸残基を蛋白質に組み込むための幾つかの方法が、当該技術分野で知られている。たとえば、化学的にアミノアシル化されたサプレッサーtRNAを用いてノンセンス変異を抑制するインビトロシステムを採用することができる。アミノ酸を合成し、tRNAをアミノアシル化する方法は、当該技術分野で知られている。本発明のポリペプチドにおいて不可欠なアミノ酸は、位置指定突然変異誘発またはアラニンスキャニング突然変異誘発などの当該技術分野で知られている手法に従って同定することができる [Cunningham and Wells, Science 244: 1081-1085 (1989)]; Bass et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88: 4498-4502 (1991)。後者の技術では、単一アラニン変異を当該分子のすべての残基で導入し、得られた変異体分子の生物学的活性(たとえばリガンド結合およびシグナル伝達)について試験し、当該分子の活性に重大なアミノ酸残基を同定する。また、リガンド−タンパク質相互作用の部位は、核磁気共鳴、結晶学またはフォトアフィニティーラベルなどの技術により決定されるように、結晶構造の解析によっても決定することができる。たとえば、de Vos et ad., Science 255: 306-312 (1992); Smith et al., J. Mod. Biod. 224: 899-904 (1992); Wlodaver et ad., FEES Lett. 309: 59-64 (1992)が参照される。不可欠なアミノ酸の同定(identities)は、関連タンパク質を用いたホモロジー解析から推測することもできる。
【0031】
突然変異誘発およびスクリーニングの公知の方法、たとえばReidhaar Olson and Sauer, Science 241: 53-57 (1988) またはBowie and Sauer Proc. Nat1. Acad. Sci. USA 86: 2152-2156 (1989) に開示される方法を用いて、複数のアミノ酸置換を行って試験することができる。要するに、これらの著者は、ポリペプチドの二以上の位置を同時にランダム化し、機能性ポリペプチドを選択し、その後突然変異ポリペプチドの配列を決定して、各位置で許容される置換のスペクトルを決定する方法を開示する。使用可能な他の方法には、ファージディスプレイ(たとえば、Lowman et al., Biochem.30: 10832-10837 (1991); Ladner et al., U.S. Patent No. 5,223,409; Huse, WIPO Publication WO 92/06204)および領域指定突然変異誘発(Derbyshire et al., Gene 46: 145 (1986); Ner et al., DNA 7: 127 (1988))が含まれる。
【0032】
上記のとおり開示される突然変異誘発方法は、ハイスループットスクリーニング方法と組み合わせて、宿主細胞においてクローン化突然変異タンパク質の活性を検出することができる。その際の好ましいアッセイには、細胞増殖アッセイおよびバイオセンサーベースのリガンド結合アッセイが含まれ、これらは以下において説明される。活性なタンパク質またはその一部(たとえば、リガンド結合フラグメント)をコードする突然変異DNA分子を、宿主細胞から回収して、最新の装置を用いて迅速に配列決定することができる。これらの方法により、対象ポリペプチドにおける個々のアミノ酸残基の重要性を迅速に決定することが可能になり、これらの方法を未知の構造のポリペプチドに適用することができる。
【0033】
更に本発明は、種々の他のポリペプチド融合体および一以上のポリペプチド融合体を含む関連のマルチマータンパク質を提供する。たとえば、IL-20ポリペプチドは、米国特許第5,155,027号および第5,567,584号に開示されるとおり、融合体として二量体化タンパク質に調製することができる。これに関連した好ましい二量体化タンパク質には、免疫グロブリン定常領域ドメインが含まれる。免疫グロブリン−IL-20ポリペプチド融合体は、遺伝的に操作された細胞で発現させることができる。補助的ドメインをIL-20ポリペプチドに融合させて、特定の細胞、組織、または高分子(たとえばコラーゲン)をターゲットにすることができる。たとえば、IL-20ポリペプチドまたはタンパク質は、標的細胞の表面のレセプターに特異的に結合するリガンドにポリペプチドを融合させることにより、所定の細胞タイプをターゲットにすることができる。このようにして、ポリペプチドおよびタンパク質は、治療または診断目的のためにターゲットにすることができる。IL-20ポリペプチドは、二以上の部分、たとえば精製用アフィニティータグおよびターゲッティングドメインに融合させることができる。また、ポリペプチド融合体は、とりわけドメインの間に一以上の切断部位を含むことができる。Tuan et al., Connective Tissue Research 34: 1 9 (1996) が参照される。
【0034】
本発明のタンパク質は、誘導体化または別の機能性分子との連結を含む。連結は、抗体、毒素、ラジオアイソトープ、毒剤または細胞増殖抑制剤などの他の分子との化学的結合、遺伝的融合、非共有結合などとすることができる。
【0035】
上述の方法を用いて、当業者は、配列番号2と実質的に同一の種々のポリペプチドまたはその対立遺伝子変異体を調製し、野生型タンパク質の特性を保持することができる。本明細書で表現され請求される用語として「配列番号2により規定されるポリペプチド」は、当該ポリペプチドの対立遺伝子変異体および種のオーソログのすべてを含む。
【0036】
本発明のタンパク質ポリペプチド、たとえば完全長のタンパク質、タンパク質フラグメント(たとえば、リガンド結合フラグメント)、および融合体ポリペプチドは、慣用的な技術に従って、遺伝的に操作された宿主細胞で産生することができる。適切な宿主細胞は、外来性DNAで形質転換またはトランスフェクションして培養増殖することができる細胞タイプであり、細菌、真菌細胞、および高等真核生物の培養細胞が含まれる。真核生物の細胞、とりわけ多細胞生物の培養細胞が好ましい。クローン化DNA分子を操作し、外来性DNAを種々の宿主細胞に導入する技術は、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed. (Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989)、およびAusubel et al., ibidに開示される。
【0037】
本発明に従って上述のとおりcDNAを請求する場合、請求されるものは、センス鎖、アンチセンス鎖、およびセンス鎖とアンチセンス鎖をそれぞれ水素結合によりアニールさせた二本鎖のDNAであると理解されることを認識されたい。また、本発明のポリペプチドをコードし、上記cDNAによりコードされるメッセンジャーRNA(mRNA)も請求される。メッセンジャーRNA(mRNA)は、各チミンヌクレオチド(T)がウラシルヌクレオチド(U)に置換されたことを除いて、上述されるものと同じコドンを用いてポリペプチドをコードする。
【0038】
IL-20ポリペプチドを宿主細胞の分泌経路に向けるためには、(リーダー配列、プレプロ配列またはプレ配列としても知られる)分泌シグナル配列を発現ベクターに提供する。分泌シグナル配列は、当該タンパク質のものであってもよいし、別の分泌タンパク質(たとえばtPA)に由来してもよいし、またはデノボ合成されたものであってもよい。分泌シグナル配列は、正しいリーディングフレームにおいてIL-20 DNA配列に連結される。分泌シグナル配列は、対象ポリペプチドをコードするDNA配列の5’に通常位置するが、ある種のシグナル配列は、対象DNA配列の他の場所に位置してもよい(たとえば、Welch et al., U.S. Patent No. 5,037,743; Holland et al., U.S.Patent No. 5,143,830参照)。
【0039】
また本発明は、IL-20ポリペプチドの化学的修飾を含む。化学的修飾は、選択された側鎖または末端残基と反応することが可能な有機系薬剤による共有結合修飾を含む。かかる修飾の例は、上述の配列番号1または2のアミノ酸配列に関して、ある位置の一以上のアミノ酸残基に親油性置換基を結合させることである。配列番号2のアミノ酸配列に関して、当該位置のアミノ酸残基は、任意のアミノ酸残基であってもよく、当該位置に天然に存在するアミノ酸残基だけではない。一つの態様において、リジンに親油性置換基を結合する。IL-20のリジンの一つ以上を、本出願に記載されるとおり誘導体とすることができる。配列番号1に関して、リジンは以下のとおり位置する:
K2、K32、K51、K72、K84、K96、K97、K116、K117、K127、K136
【0040】
好ましい態様は、アミノ酸置換基がループ領域にあることである:
ループ: C9VIAT13
ループ: K32DGNIDIRI40
ループ: L47QDT50
ループ: Q75TP77
ループ: A104HMTCHC110
【0041】
好ましい態様において、リジンは、ループ領域、たとえばK2、K32にある。他の好ましい態様において、更なるリジンが置換されるか、当該配列に挿入されるか、またはN末端もしくはC末端に付加され、その後必要に応じて誘導体化される。挿入の好ましい領域は、タンパク質の全体的活性に悪影響を及ぼさない場所である。好ましい領域はループ領域である。
【0042】
IL-20ペプチドの欠失類縁体は、N末端に、
−シグナル配列またはシグナル配列の一部の欠失:MKASSLAFSLLSAAFYLLWTPSTG
を含み、更にN末端に以下の欠失を含む:
−Lの欠失
−LKの欠失
−LKTの欠失
−LKTLの欠失
−LKTLNの欠失
−LKTLNLの欠失
−LKTLNLGの欠失
−LKTLNLGSの欠失
−LKTLNLGSCの欠失
−LKTLNLGSCVの欠失
−LKTLNLGSCVIの欠失
−LKTLNLGSCVIAの欠失
−LKTLNLGSCVIATの欠失
−LKTLNLGSCVIATNの欠失。
【0043】
IL-20ペプチドの欠失類縁体は、C末端に以下の欠失を含む。
【0044】
−ELDILLQWMEETEの欠失
−LDILLQWMEETEの欠失
−DILLQWMEETEの欠失
−ILLQWMEETEの欠失
−LLQWMEETEの欠失
−LQWMEETEの欠失
−QWMEETEの欠失
−WMEETEの欠失
−MEETEの欠失
−EETEの欠失
−ETEの欠失
−TEの欠失
−Eの欠失。
【0045】
N末端およびC末端の切捨て(truncation)は、同時に起こってもよい。
【0046】
「親油性置換基」の用語は、4-40炭素原子を含むことと、20℃における水溶解度が、約0.1 mg/100 ml水〜約250 mg/100 ml水の範囲、たとえば約0.3 mg/100 ml水〜約75 mg/100 ml水の範囲であることにより特徴づけられる。たとえば、オクタン酸(C8)は、20℃における水溶解度が68 mg/100 mlであり、デカン酸(C10)は、20℃における水溶解度が15 mg/100 mlであり、オクタデカン酸(C18)は、20℃における水溶解度が0.3 mg/100 mlである。
【0047】
IL-20誘導体の満足な長期作用プロフィールを得るためには、IL-20部分に結合する親油性置換基は、一例として4-40炭素原子、たとえば8-25炭素原子を含む。親油性置換基は、親油性置換基のカルボキシル基を介して、IL-20のアミノ基に結合することができ、当該カルボキシル基は、親油性置換基が結合しているアミノ酸のアミノ基とアミド結合を形成する。別の方法として、親油性置換基のアミノ基がアミノ酸のカルボキシル基とアミド結合を形成する方法で、親油性置換基が前記アミノ酸に結合してもよい。更なるオプションとして、親油性置換基は、エステル結合を介してIL-20部分に結合してもよい。正式には、エステルは、IL-20部分のカルボキシル基と置換基になるもののヒドロキシル基との反応、またはIL-20部分のヒドロキシル基と置換基になるもののカルボキシル基との反応により形成することができる。更に別の方法として、親油性置換基は、IL-20部分の第一級アミノ基に導入されるアルキル基とすることができる。
【0048】
本発明の一つの態様において、IL-20誘導体は、IL-20ポリペプチドに結合した一つの親油性置換基のみを有する。
【0049】
本発明の一つの態様において、親油性置換基は4〜40の炭素原子を含む。
【0050】
本発明の一つの態様において、親油性置換基は8〜25の炭素原子を含む。
【0051】
本発明の一つの態様において、親油性置換基は12〜20の炭素原子を含む。
【0052】
本発明の一つの態様において、親油性置換基は、親油性置換基のカルボキシル基がアミノ酸残基のアミノ基とアミド結合を形成する方法でアミノ酸残基に結合する。
【0053】
本発明の一つの態様において、親油性置換基はLys残基に結合する。IL-20のリジンの一つ以上を、本出願に記載されるとおり誘導体とすることができる。配列番号1に関して、リジンは以下のとおり位置する:
K2、K32、K51、K72、K84、K96、K97、K116、K117、K127、K136
【0054】
好ましい態様は、アミノ酸置換基がループ領域にあることである:
ループ: C9VIAT13
ループ: K32DGNIDIRI40
ループ: L47QDT50
ループ: Q75TP77
ループ: A104HMTCHC110
【0055】
好ましい態様において、リジンは、ループ領域、たとえばK2、K32にある。他の好ましい態様において、更なるリジンが置換されるか、当該配列に挿入されるか、またはN末端もしくはC末端に付加され、その後必要に応じて誘導体化される。挿入の好ましい領域は、タンパク質の全体的活性に悪影響を及ぼさない場所である。好ましい領域はループ領域である。
【0056】
本発明の一つの態様において、親油性置換基は、親油性置換基のアミノ基がアミノ酸残基のカルボキシル基とアミド結合を形成する方法で、アミノ酸残基に結合する。
【0057】
本発明の一つの態様において、親油性置換基は、スペーサーを介してIL-20ペプチドに結合する。
【0058】
本発明の一つの態様において、スペーサーは、1〜7個のメチレン基、たとえば2個のメチレン基を有する非分枝アルカンα,ω−ジカルボン酸基であり、当該スペーサーは、IL-20ペプチドのアミノ基と親油性置換基のアミノ基との間に架橋を形成する。
【0059】
本発明の一つの態様において、スペーサーは、Cys残基を除くアミノ酸残基、またはジペプチドである。適切なスペーサーの例には、β−アラニン、ガンマ−アミノ酪酸(GABA)、γ−グルタミン酸、コハク酸、Lys、GluまたはAsp、またはジペプチド、たとえばGly-Lysが挙げられる。スペーサーがコハク酸であるとき、その一方のカルボキシル基が、アミノ酸残基のアミノ基とアミド結合を形成し、もう一方のカルボキシル基が親油性置換基のアミノ基とアミド結合を形成することができる。スペーサーがLys、GluまたはAspであるとき、そのカルボキシル基が、アミノ酸残基のアミノ基とアミド結合を形成し、そのアミノ基が親油性置換基のカルボキシル基とアミド結合を形成することができる。スペーサーとしてLysを使用するとき、更なるスペーサーがLysのε−アミノ基と親油性置換基との間に挿入される場合があってもよい。一つの態様において、かかる更なるスペーサーは、Lysのε−アミノ基および親油性置換基に存在するアミノ基とアミド結合を形成するコハク酸である。別の態様において、かかる更なるスペーサーは、Lysのε−アミノ基とアミド結合を形成し、親油性置換基に存在するカルボキシル基と別のアミド結合を形成するGluまたはAspであり、すなわち親油性置換基は、Nε−アシル化リジン残基である。
【0060】
本発明の一つの態様において、スペーサーは、β−アラニン、ガンマ−アミノ酪酸(GABA)、γ−グルタミン酸、Lys、Asp、Glu、Asp含有ジペプチド、Glu含有ジペプチド、またはLys含有ジペプチドから選択される。本発明の一つの態様において、スペーサーはβ−アラニンである。本発明の一つの態様において、スペーサーはガンマ−アミノ酪酸(GABA)である。本発明の一つの態様において、スペーサーはγ−グルタミン酸である。
【0061】
本発明の一つの態様において、元のIL-20ペプチドのカルボキシル基は、スペーサーのアミノ基とアミド結合を形成し、アミノ酸またはジペプチドのスペーサーのカルボキシル基は、親油性置換基のアミノ基とアミド結合を形成する。
【0062】
本発明の一つの態様において、元のIL-20ペプチドのアミノ基は、スペーサーのカルボキシル基とアミド結合を形成し、スペーサーのアミノ基は、親油性置換基のカルボキシル基とアミド結合を形成する。
【0063】
本発明の一つの態様において、親油性置換基は、部分的またな完全に水素化されたシクロペンタノフェナトレン(cyclopentanophenathrene)骨格を含む。
【0064】
本発明の一つの態様において、親油性置換基は直鎖または分枝のアルキル基である。本発明の一つの態様において、親油性置換基は直鎖または分枝の脂肪酸のアシル基である。
【0065】
本発明の一つの態様において、親油性置換基のアシル基は、CH3(CH2)nCO-(nは4〜38である)を含む基、たとえばCH3(CH2)6CO-、CH3(CH2)8CO-、CH3(CH2)10CO-、CH3(CH2)12CO-、CH3(CH2)14CO-、CH3(CH2)16CO-、CH3(CH2)18CO-、CH3(CH2)20CO-およびCH3(CH2)22CO-から選択される。
【0066】
本発明の一つの態様において、親油性置換基は、直鎖または分枝アルカンα,ω−ジカルボン酸のアシル基である。
【0067】
本発明の一つの態様において、親油性置換基のアシル基は、HOOC(CH2)mCO-(mは4〜38である)を含む基、たとえばHOOC(CH2)14CO-、HOOC(CH2)16CO-、HOOC(CH2)18CO-、HOOC(CH2)20CO-およびHOOC(CH2)22CO-から選択される。
【0068】
本発明の一つの態様において、親油性置換基は、式CH3(CH2)p((CH2)qCOOH)CHNH-CO(CH2)2CO-(pおよびqは整数であり、p+qは8〜40、たとえば12〜35の整数である)の基である。
【0069】
本発明の一つの態様において、親油性置換基は、式CH3(CH2)rCO-NHCH(COOH)(CH2)2CO-(rは10〜24の整数である)の基である。
【0070】
本発明の一つの態様において、親油性置換基は、式CH3(CH2)sCO-NHCH((CH2)2COOH)CO-(sは8〜24の整数である)の基である。
【0071】
本発明の一つの態様において、親油性置換基は、式COOH(CH2)tCO-(tは8〜24の整数である)の基である。.
本発明の一つの態様において、親油性置換基は、式NHCH(COOH)(CH2)4NH-CO(CH2)uCH3(uは8〜18の整数である)の基である。
【0072】
本発明の一つの態様において、親油性置換基は、式NHCH(COOH)(CH2)4NH-COCH((CH2)2COOH)NH-CO(CH2)wCH3(wは10〜16の整数である)の基である。
【0073】
本発明の一つの態様において、親油性置換基は、式NHCH(COOH)(CH2)4NH-CO(CH2)2CH(COOH)NH-CO(CH2)xCH3(xは10〜16の整数である)の基である。
【0074】
本発明の一つの態様において、親油性置換基は、式NHCH(COOH)(CH2)4NH-CO(CH2)2CH(COOH)NHCO(CH2)yCH3(yは0または1〜22の整数である)の基である。
【0075】
本発明の一つの態様において、親油性置換基はN−リトコロイルである。
【0076】
本発明の一つの態様において、親油性置換基はN−コロイルである。
【0077】
本発明の一つの態様において、IL-20誘導体は一つの親油性置換基を有する。本発明の一つの態様において、IL-20誘導体は二つの親油性置換基を有する。本発明の一つの態様において、IL-20誘導体は三つの親油性置換基を有する。本発明の一つの態様において、IL-20誘導体は四つの親油性置換基を有する。
【0078】
また本発明の方法は、化学的に修飾されたIL-20組成物を使用することを想定し、ここでIL-20ポリペプチドはポリマーと結合している。実例のIL-20ポリペプチドは、機能的な膜貫通ドメインを欠損する可溶性ポリペプチド、たとえば成熟IL-20ポリペプチドである。典型的には、ポリマーは、IL-20コンジュゲートが水性環境(たとえば生理的環境)で沈殿しないように水溶性である。適切なポリマーの例は、単一の反応性基、たとえばアシル化のための活性なエステル、またはアルキル化のためのアルデヒドを有するように改変されたものである。このようにして、重合度をコントロールすることができる。反応性アルデヒドの例は、ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒド、またはそのモノ-(C1-C10)アルコキシ、またはアリールオキシ誘導体である(たとえばHarris, et al., U.S. Patent No. 5,252,714参照)。ポリマーは、分枝であっても非分枝であってもよい。更に、ポリマーの混合物を使用して、IL-20コンジュゲートを作成することができる。
【0079】
治療のために使用されるIL-20コンジュゲートは、薬学的に許容される水溶性ポリマー部分を含むことができる。適切な水溶性ポリマーには、ポリエチレングリコール(PEG)、モノメトキシ-PEG、モノ-(C1-C10)アルコキシ-PEG、アリールオキシ-PEG、ポリ-(N-ビニルピロリドン)PEG、トレシルモノメトキシPEG、PEGプロピオンアルデヒド、bis-スクシニミジルカーボネートPEG、プロピレングリコールホモポリマー、ポリプロピレンオキシド/エチレンオキシド共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール(たとえばグリセロール)、ポリビニルアルコール、デキストラン、セルロース、または他の炭水化物ベースのポリマーが含まれる。適切なPEGは、約600〜約60,000の分子量、たとえば、5,000、12,000、20,000および25,000の分子量を有する。IL-20コンジュゲートは、かかる水溶性ポリマーの混合物を含むこともできる。
【0080】
二つのアミノ酸配列の間のパーセンテージ配列同一性は、タンパク質およびDNAアラインメントの両方に有効なNeedelman-Wunschアラインメントにより決定される。タンパク質アラインメントについて、使用されるデフォルトスコアリングマトリクスはBLOSUM50であり、ギャップの最初の残基のペナルティーは-12であるが、ギャップの追加の残基のペナルティーは-2である。アラインメントは、FASTAパッケージバージョンv20u6のAlignソフトウェアを用いて作成してもよい(W.R. Pearson and D.J. Lipman (1988), "Improved Tools for Biological Sequence Analysis", PNAS 85: 2444-2448; およびW.R. Pearson (1990) "Rapid and Sensitive Sequence Comparison with FASTP and FASTA", Methods in Enzymology, 183: 63-98)。
【0081】
一つの態様において、本発明で使用されるポリペプチドは、単離されたポリペプチドである。別の態様において、本発明で使用されるポリヌクレオチドは、単離されたポリヌクレオチドである。
【0082】
本発明のポリペプチドを、>80%純度、より好ましくは>90%純度、更に好ましくは>95%純度、とりわけ好ましくは薬学的に純粋な状態、すなわち汚染高分子(特に他のタンパク質および核酸)に対して99.9%以上純粋であり、感染性および発熱性薬剤が存在しない状態に精製することが好ましい。好ましくは、精製されたポリペプチドは、他のポリペプチド、特に動物由来の他のポリペプチドが実質的に存在しない。
【0083】
細胞を培養するために使用される培地は、宿主細胞を増殖させるのに適した任意の慣用的な培地、たとえば適切な補充物質を含有する最少培地または天然培地とすることができる。適切な培地は、商業的業者から入手可能であるが、あるいは公表された配合(たとえばAmerican Type Culture Collectionのカタログ)に従って調製してもよい。培地は、当該技術分野で知られている手法を用いて調製される(たとえば、細菌および酵母に対する参考文献; Bennett, J.W. and LaSure, L., editors, More Gene Manipulations in Fungi, Academic Press, CA, 1991を参照)。
【0084】
ポリペプチドが栄養培地に分泌される場合、培地から直接回収することができる。ポリペプチドが分泌されない場合、細胞溶解物から回収することができる。ポリペプチドは、遠心分離または濾過により宿主細胞を培地から分離することを含む慣用的な手法で、培地から回収することができる。
【0085】
ポリペプチドは、当該ポリペプチドに特異的な当該技術分野で公知の方法を用いて検出することができる。これらの検出方法には、特異的抗体の使用、酵素生成物の形成、または酵素基質の消失を含んでもよい。たとえば、酵素アッセイを使用して、ポリペプチドの活性を測定してもよい。
【0086】
得られたポリペプチドは、当該技術分野で公知の方法により回収することができる。たとえば、ポリペプチドは、遠心分離、濾過、抽出、スプレー乾燥、蒸発、または沈殿析出を含むがこれらに限定されない慣用的な手法により、栄養培地から回収してもよい。
【0087】
本発明のポリペプチドは、当該技術分野において公知の種々の手法により精製することができ、たとえば、クロマトグラフィー(たとえば、イオン交換、アフィニティー、疎水性、等電点クロマトグラフィー、およびサイズ排除)、電気泳動法(たとえば、プレパレイティブ等電点電気泳動)、ディファレンシャル溶解度(たとえば、硫安沈殿)、SDS-PAGE、または抽出(たとえば、Protein Purification, J.-C. Janson and Lars Ryden, editors, VCH Publishers, New York, 1989を参照)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0088】
本発明の製造方法において、細胞は、当該技術分野で公知の方法を用いてポリペプチドの産生に適した栄養培地で培養される。たとえば、細胞は、振盪フラスコ培養、小規模、または大規模発酵(連続的、バッチ、供給−バッチ、またはソリッドステート発酵)により、実験室用または工業用発酵槽において、適切な培地中、ポリペプチドの発現および/または単離を可能にする条件下で培養することができる。培養は、炭素および窒素源および無機塩を含む適切な栄養培地中で、当該技術分野で公知の手法を用いて行われる。
【0089】
IL-20アンタゴニストは、可溶性レセプター、抗体、ペプチドまたは低分子である。アンタゴニストは、IL-20レセプター複合体またはIL-20に対して作用し、レセプターに対するアンタゴニストとして機能するか、またはIL-20もしくはレセプターに結合し、IL-20のレセプターに対する作用を妨害する。本発明の一側面において、アンタゴニストは、IL-20に対する抗体である。本発明の別の側面において、アンタゴニストは可溶性レセプターである。可溶性レセプターは、たとえばWO 01/46261、WO 01/46232、WO 02/22153またはWO 02/72607 (ZymoGenetics) に記載される。
【0090】
IL-20は、他の新生血管形成促進化合物(たとえばVEGF、酸性または塩基性FGF、PDGF、MMP’s)との併用療法においてアゴニストとして投与してもよい。
【0091】
IL-20アンタゴニストは、新生血管形成を低減する他の化合物との併用療法で投与してもよい。かかる化合物の例は、たとえばTNFおよびIFN−アルファ、酸性または塩基性線維芽細胞増殖因子(FGF)の血管新生活性を阻害または中和することができる抗体、VEGFのアンタゴニストまたは他の上皮細胞増殖阻害剤、または肝細胞増殖因子(HGH)、組織因子、プロテインC、またはプロテインSの凝固活性を阻害または中和することができる抗体(WO 91/01753)、または一以上の慣用的な治療剤、たとえばアルキル化剤、葉酸アンタゴニスト、核酸代謝の代謝拮抗物質、抗生物質、ピリミジン類縁体、5-フルオロウラシル、プリンヌクレオシド、アミン、アミノ酸、トリアゾールヌクレオシド、またはコルチコステロイドである。かかる他の薬剤は、投与される組成物中に存在させてもよいし、別々に投与されてもよい。またこの治療は、放射線医学療法、たとえば放射性物質の照射または投与と更に併用してもよい。
【0092】
本発明の他の態様において、IL-20アンタゴニストは、細胞外マトリクス溶解剤の阻害剤、たとえばMMP’sの阻害剤(MMP=メタロプロテイナーゼ)、チューブリン結合剤、カルシウムフラックス阻害剤、COX-2阻害剤、IFN−ガンマおよびIP-10のアップレギュレーター、インテグリン結合および生存シグナルの阻害剤、またはナトリウム−水素イオン阻害剤と併用して投与してもよい。
【0093】
本発明の他の態様において、腫瘍の血管新生は、併用療法で攻撃され、たとえば、新生血管形成を妨害するためにIL-20のアンタゴニストを投与し、その後、たとえばTNFを単独で、または更なる作用因子と組合せて並行して投与し、更なる作用因子は、たとえばヘレグリン(heregulin)、抗ヘレグリン抗体、D−因子、インターロイキン−1、インターロイキン−2、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)または微小血管凝固を促進する薬剤、たとえば抗プロテインC抗体、抗プロテインS抗体、C4b結合タンパク質、熱または照射である。腫瘍に対する治療効果は、慣用的なマトリクススクリーニングによりモニターすることができる。他の態様において、FGFまたは血小板由来増殖因子(PDGF)アンタゴニスト、たとえばFGFまたは抗PDGF中和抗体が、IL-20アンタゴニストと併用して患者に投与される。創傷治癒または所望の新生血管形成の期間に、治療を中断してもよい。
【0094】
本発明の一つの側面において、腫瘍細胞の新生血管形成を妨害するため−転移を妨害するためのIL-20のアンタゴニストは、後述の一以上の療法と併用される。
【0095】
I.腫瘍細胞の死またはウイルス感染細胞の死を誘導する薬剤
a)慣用的な化学療法
b)放射線療法
c)モノクローナル抗体
d)細胞周期コントロール/アポトーシス調節剤
e)増殖因子およびシグナル伝達調整剤
f)腫瘍血管形成の阻害剤(血管新生阻害剤、抗血管新生薬)
g)ウイルスターゲッティング(腫瘍細胞を破壊するための組換えウイルスの使用)
h)抗ウイルス剤
i)ホルモン剤
II.腫瘍細胞またはウイルス感染細胞に対して免疫応答を増強する薬剤
j)免疫系活性化剤
k)抗アネルギー薬剤を含む免疫系阻害剤(たとえば、免疫シグナルを阻害して免疫応答をダウンレギュレートする薬剤)
l)治療ワクチン
III.腫瘍増殖、転移またはウイルス感染細胞の蔓延を妨害する薬剤
m)インテグリン、細胞接着分子調整剤
n)抗転移予防剤
o)内皮細胞調整剤
IV.体内ワクチン接種
V.組織因子アンタゴニストおよび凝固カスケードに影響を及ぼす他の因子
p)抗第Xa因子、抗第IIa因子阻害剤、抗フィブリノゲン剤
q)ペンタサッカリドなど
VI.免疫抑制/免疫調整剤
r)T−リンパ球ホーミングに対して影響を及ぼす薬剤、たとえばFTY-720
s)カルシノイリン阻害剤
t)TOR阻害剤。
【0096】
動物の新生血管形成活性の診断および検出に使用するために、プローブまたは抗体を、検出可能なシグナルを産生する部分、すなわち放射性ヌクレオチド、酵素、コントラクト剤または蛍光発色団で標識する。標識された二次抗体または他の標識された二次薬剤を使用することもできる。プローブまたは抗体は、患者に投与して、慣用的なスキャニング方法によりインビボで検出することができ、あるいは、バイオプシーおよび組織サンプルにおいてインビトロで使用することができる。
【0097】
薬学的組成物
また本発明は、有効成分として、本発明の化合物(ポリペプチド、抗体、可溶性レセプター、小分子またはポリヌクレオチド)の少なくとも一つまたはその薬学的に許容可能な塩を含む薬学的組成物に関し、通常、かかる組成物は、薬学的に許容可能なキャリア、界面活性剤または希釈剤も含有する。本発明の薬学的組成物は、記載されるとおり他の化合物との組合せを含むこともできる。
【0098】
本発明の化合物を含む薬学的組成物は、慣用的な技術により、たとえばRemington: The Science and Practise of Pharmacy, 19th Ed., 1995に記載されるとおり調製され得る。組成物は、慣用的な形態、たとえばカプセル、錠剤、エアロゾル、液剤または懸濁剤で存在し得る。
【0099】
薬学的組成物は、任意の適切なルート、たとえば経口、直腸、鼻、肺、局所(頬および舌下を含む)、経皮、槽内、腹腔内、膣および非経口(皮下、筋内、髄腔内、静脈内および皮内を含む)ルートによる投与のために固有に製剤化され得る。好ましいルートは、治療される被検体の全身症状および年齢、治療される症状の性質、および選択される有効成分に依存することが認識される。投与ルートは、適切または所望の作用部位に活性化合物を効果的に輸送する任意のルートであり得る。
【0100】
経口投与のための薬学的組成物は、固体投与形態、たとえば硬質または軟質カプセル、錠剤、トローチ、糖衣錠、ピル、ロゼンジ、粉剤および顆粒剤を含む。適切な場合、腸溶性コーティングなどのコーティングを用いて調製することができ、あるいは、当該技術分野で周知の方法に従って持続性または長期放出など、有効成分の放出が制御されるように製剤化することができる。
【0101】
経口投与のための液体投与形態は、液剤、エマルジョン、水性または油性懸濁剤、シロップおよびエリキシルを含む。
【0102】
非経口投与のための薬学的組成物は、水系または非水系無菌注射溶液、分散液、懸濁液またはエマルジョン、並びに使用前に無菌注射溶液または懸濁液に再構成される無菌パウダーを含む。蓄積注射調合物も、本発明の範囲内であると想定される。
【0103】
他の適切な投与形態は、坐剤、スプレー、軟膏、クリーム、ゲル、吸入剤、皮膚パッチ、移植片などを含む。
【0104】
典型的な経口投与量は、一日につき約0.001〜約100 mg/kg体重の範囲であり、たとえば一日につき約0.01〜約50 mg/kg体重であり、たとえば一日につき約0.05〜約10 mg/kg体重が、1回以上の投薬、たとえば1〜3回の投薬で投与される。正確な投与量は、IL-20またはIL-20模倣物の性質、並びに選択した薬剤の組合せ、投与の頻度および様式、治療される被検体の性別、年齢、体重および一般的症状、治療される症状の性質および重症度および治療すべき任意の合併症、および当業者に明らかな他の因子に依存する。
【0105】
調合物は、当業者に公知の方法により単位投与量形態で簡便に提供され得る。一日につつき1回以上、たとえば一日につき1〜3回の経口投与のための典型的な単位投与量形態は、0.05〜約1000 mg、たとえば約0.1〜約500 mg、たとえば約0.5 mg〜約200 mg含有し得る。
【0106】
非経口ルート、たとえば静脈内、髄腔内、筋内および類似の投与については、典型的な用量は、経口投与で使用される用量の約半分のオーダーである。
【0107】
ポリペプチドまたは小分子の塩は、当該化合物が固体または結晶の形態であるときにとりわけ関連がある。
【0108】
非経口投与については、本発明の化合物の液剤を、必要に応じて、無菌水溶液、水性プロピレングリコールまたはゴマ油またはピーナッツ油中の併用薬剤と一緒に使用してもよい。かかる水溶液は、必要な場合には適切に緩衝化すべきであり、充分な食塩水またはグルコースを用いてまず液体希釈剤を等張にすべきである。水溶液は、静脈内、筋内、皮下および腹腔内投与に特に適している。使用される無菌水性媒質は、当業者に公知の標準的技術によりすべて容易に利用可能である。
【0109】
適切な薬学的キャリアは、不活性な固体希釈剤または充填剤、無菌水溶液および種々の有機溶媒を含む。固体キャリアの例は、ラクトース、白土、スクロース、シクロデキストリン、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸およびセルロースの低級アルキルエーテルが挙げられる。液体キャリアの例は、シロップ、ピーナッツ油、オリーブ油、リン脂質、脂肪酸、脂肪酸アミン、ポリオキシエチレンおよび水が挙げられる。同様に、キャリアまたは希釈剤は、当該技術分野で公知の任意の持続性放出材料、たとえばモノステアリン酸グリセリンまたはジステアリン酸グリセリンを、単独で、またはワックスと混合して含んでいてもよい。
【0110】
本発明の化合物と薬学的に許容可能なキャリアを組合せることにより形成される薬学的組成物は、その後、開示される投与ルートに適した種々の投薬形態で容易に投与される。調合物は、薬学の分野で公知の方法により単位投与量形態で簡便に提供され得る。
【0111】
鼻内投与のために、調製物は、エアロゾル適用のための液体キャリア、とりわけ水性キャリア中に溶解または懸濁された本発明の化合物を含有し得る。キャリアは、添加剤、たとえば可溶化剤、たとえばプロピレングリコール、界面活性剤、吸収促進剤、たとえばレシチン(ホスファチジルコリン)またはシクロデキストリン、または保存剤、たとえばパラベンを含有していてもよい。
【0112】
経口投与に適した本発明の化合物の調合物は、それぞれが所定の量の有効成分を含有する別個のユニット、たとえばカプセルまたは錠剤として提供されてもよく、これは適切な賦形剤を含んでいてもよい。更に、経口投与可能な調合物は、粉剤または顆粒剤、水系または非水系液体中の液剤または懸濁剤、または水中油または油中水液体エマルジョンの形態であってもよい。
【0113】
経口用を意図した組成物は、任意の公知の方法に従って調製することができ、かかる組成物は、薬学的に洗練された味のよい調製物を提供するために、甘味剤、香味剤、着色剤、および保存剤から成る群より選択される一以上の薬剤を含有してもよい。錠剤は、錠剤の製造に適した非毒性の薬学的に許容可能な賦形剤と混合して有効成分を含有し得る。これら賦形剤は、たとえば、不活性な希釈剤、たとえば炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウム;粒状化および粉状化剤、たとえばコーンスターチまたはアルギン酸;結合剤、たとえばスターチ、ゼラチンまたはアカシア;および潤滑剤、たとえばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸およびタルクであり得る。錠剤は被覆されていなくてもよいし、あるいは胃腸管での崩壊および吸収を遅らせることにより長期間にわたって持続性作用を提供するように公知の技術により被覆されていてもよい。たとえば、モノステアリン酸グリセリンまたはジステアリン酸グリセリンなどの時間遅延物質を使用することができる。また、米国特許第4,356,108号; 第4,166,452号; および第4,265,874号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載される技術により錠剤を被覆して、放出制御のために浸透性治療錠剤を形成してもよい。
【0114】
また、経口用調合物は、不活性な固体希釈剤、たとえば炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリンと有効成分が混合された硬質ゼラチンカプセルとして提供されてもよいし、あるいは水または油媒質、たとえばピーナッツ油、流動パラフィン、またはオリーブ油と有効成分が混合された軟質ゼラチンカプセルとして提供されてもよい。
【0115】
水性懸濁剤は、水性懸濁剤の製造に適した賦形剤と混合して本発明の化合物を含有し得る。かかる賦形剤は、懸濁化剤、たとえばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴムおよびアカシアゴムであり;分散または湿潤剤は、天然に存在するホスファチド、たとえばレシチン、または酸化アルキレンと脂肪酸との縮合生成物、たとえばステアリン酸ポリオキシエチレン、または酸化エチレンと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物、たとえばヘプタデカエチレンオキシセタノール、または酸化エチレンと脂肪酸およびヘキシトールに由来する部分エステルとの縮合生成物、たとえばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビトール、または酸化エチレンと脂肪酸および無水ヘキシトールに由来する部分エステルとの縮合生成物、たとえばモノオレイン酸ポリエチレンソルビタンであり得る。水性懸濁剤は、一以上の着色剤、一以上の香味剤、および一以上の甘味剤、たとえばスクロースまたはサッカリンを含有していてもよい。
【0116】
油性懸濁剤は、植物油、たとえばラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油もしくはココナッツ油、または鉱油、たとえば流動パラフィン中に有効成分を懸濁することにより調合され得る。油性懸濁剤は、増粘剤、たとえば蜜蝋、固形パラフィンまたはセチルアルコールを含有していてもよい。甘味剤、たとえば上述のもの、および香味剤は、味のよい経口調製物を提供するために添加してもよい。これら組成物は、抗酸化剤、たとえばアスコルビン酸の添加により保存され得る。
【0117】
水の添加により水性懸濁剤を調製するのに適した分散可能な粉剤および顆粒剤は、分散または湿潤剤、懸濁化剤、および一以上の保存剤と混合して活性な化合物を提供する。適切な分散または湿潤剤および懸濁化剤は、既述のものにより例示される。追加の賦形剤、たとえば甘味、香味および着色剤を存在させてもよい。
【0118】
本発明の化合物の薬学的組成物は、水中油エマルジョンの形態であってもよい。油相は、植物油、たとえばオリーブ油またはラッカセイ油、または鉱油、たとえば流動パラフィン、またはその混合物であり得る。適切な乳化剤は、天然に存在するゴム、たとえばアカシアゴムまたはトラガカントゴム、天然に存在するホスファチド、たとえばダイズ、レシチン、および脂肪酸と無水ヘキシトールに由来するエステルまたは部分エステル、たとえばモノオレイン酸ソルビタン、および前記部分エステルと酸化エチレンとの縮合生成物、たとえばモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタンであり得る。エマルジョンは、甘味及び香味剤を含有していてもよい。
【0119】
シロップおよびエリキシルは、甘味剤、たとえばグリセロール、プロピレングリコール、ソルビトールまたはスクロースとともに調合され得る。かかる調合物は、粘滑薬、保存剤、および香味および着色剤を含有していてもよい。薬学的組成物は、無菌の注射可能な水性または油性懸濁液の形態であってもよい。この懸濁液は、上述の適切な分散または湿潤剤および懸濁化剤を用いて、公知の方法に従って調合され得る。無菌の注射可能な調製物は、非毒性の非経口的に許容可能な希釈剤または溶媒中の無菌の注射可能な溶液または懸濁液であり得、たとえば1,3-ブタンジオール中の溶液である。許容される賦形剤および溶媒のうち、使用可能なものは、水、リンガー溶液、および等張塩化ナトリウム溶液である。加えて、無菌の固定油が、溶媒または懸濁媒質として慣用的に使用される。この目的のために、任意の無菌性(bland)固定油が、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを用いて使用され得る。加えて、オレイン酸などの脂肪酸が、注射可能なものの調製において使用される。
【0120】
組成物は、本発明の化合物の直腸投与のために坐剤の形態であってもよい。これら組成物は、通常の温度で固体であるが直腸の温度で液体であるために直腸で溶解し薬剤を放出する適切な非刺激性賦形剤と薬剤とを混合することにより調製することができる。かかる物質は、たとえばカカオバターおよびポリエチレングリコールを含む。
【0121】
局所使用について、本発明の化合物を含有するクリーム、軟膏、ゼリー、懸濁溶液などが想定される。本願の目的のため、局所適用は、口内洗浄剤およびうがい薬を含む。
【0122】
本発明の化合物は、リポソームデリバリーシステムの形態、たとえば小さな単層小胞、大きな単層小胞、および多層小胞で投与されてもよい。リポソームは、種々のリン脂質、たとえばコレステロール、ステアリルアミン、またはホスファチジルコリンから形成され得る。
【0123】
加えて、本発明の化合物の幾つかは、水または一般的な有機溶媒と溶媒化合物を形成し得る。かかる溶媒化合物もまた、本発明の範囲内に包含される。
【0124】
固体キャリアを経口投与のために使用する場合、調製物を錠剤化してもよいし、硬質ゼラチンカプセル中にパウダーまたはペレット形態で配置してもよいし、あるいはトローチまたはロゼンジの形態にすることもできる。固体キャリアの量は、大きく変動するが、通常約25 mg〜約1 gである。液体キャリアを使用する場合、調製物は、シロップ、エマルジョン、軟質ゼラチンカプセルまたは無菌の注射可能な液体、たとえば水系または非水系液体懸濁液または溶液の形態であり得る。
【0125】
本発明の化合物は、かかる治療を必要とする哺乳類、とりわけヒトに投与され得る。かかる哺乳類は、動物、家畜動物(たとえば家庭用ペット)および非家畜動物(たとえば野生動物)の両方を含む。
【0126】
本発明の化合物を含有する薬学的組成物は、一日または一週間につき1回以上投与され、簡便には食事時間に投与され得る。かかる薬学的組成物の効果的な量は、臨床上有意な効果を提供する量である。かかる量は、治療すべき特定の症状、患者の年齢、体重および一般的健康状態、および当業者に明らかな他の因子にある程度依存する。
【0127】
一つの態様において、本発明は、新生血管形成を促進するのに効果的な量の本発明の化合物を含む本発明の薬学的組成物に関する。
【0128】
別の態様において、本発明は、新生血管形成を阻害するのに効果的な量の本発明の化合物を含む本発明の薬学的組成物に関する。
【0129】
簡便な一日の投与量は、1-1000マイクログラム/kg/日の範囲とすることができる。別の態様において、5-500マイクログラム/kg/日とすることができる。被検体の体重が治療の間に変化した場合、化合物の用量は、それに従って調整されなければならない。本発明は、特別な態様において以下のものを提供する。
【0130】
本発明の別の目的は、IL-20、その類縁体または誘導体を含む、または必要に応じて0.1 mg/ml〜100 mg/mlの濃度で存在する本明細書に記載の任意の他の化合物とともにそれを含む、pH 2.0〜10.0の薬学的調合物を提供することである。この調合物は、更に、バッファーシステム、保存剤、等張剤、キレート剤、安定化剤および界面活性剤を含んでいてもよい。本発明の一つの態様において、薬学的調合物は、水性調合物、すなわち水を含む調合物である。かかる調合物は、典型的には液剤または懸濁剤である。本発明の更なる態様において、薬学的調合物は、水性液剤である。「水性調合物」の用語は、少なくとも50 %w/wの水を含む調合物と規定される。同様に、「水性液剤」の用語は、少なくとも50 %w/wの水を含む液剤と規定され、「水性懸濁剤」の用語は、少なくとも50 %w/wの水を含む懸濁剤と規定される。
【0131】
別の態様において、薬学的調合物は、凍結乾燥された調合物であり、それに医者または患者が使用前に溶媒および/または希釈剤を添加する。
【0132】
別の態様において、薬学的調合物は、事前に再溶解することなく使用可能な状態にある、乾燥された(たとえばフリーズ乾燥またはスプレー乾燥された)調合物である。
【0133】
更なる側面において、本発明は、IL-20または任意の他の上述の化合物の水性液剤およびバッファーを含む薬学的調合物であって、前記化合物が、0.1 mg/ml以上または上述の濃度、好ましくは0.5 mg/ml-50 mg/mlの濃度で存在し、前記調合物が約2.0〜約10.0のpHを有するものに関する。好ましいpHは、3.0〜約8.0である。特に好ましい範囲は、4.0〜6.0であり、たとえば4.0-4.5、4.5-5.0、5.0-5.5および5.5-6.0である。
【0134】
本発明の別の態様において、調合物のpHは、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9.0、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9、および10.0から成るリストより選択される。
【0135】
本発明の更なる態様において、バッファーは、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸、グリシルグリシン、ヒスチジン、グリシン、リジン、アルギニン、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸ナトリウム、およびトリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタン、ビシン(bicine)、トリシン(tricine)、リンゴ酸、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸、酒石酸、アスパラギン酸またはその混合物から成る群より選択される。これら具体的なバッファーの各々が、本発明の択一的な態様を構成する。
【0136】
本発明の更なる態様において、調合物は、薬学的に許容可能な抗菌性保存剤を更に含む。本発明の更なる態様において、保存剤は、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、p-ヒドロキシ安息香酸メチル、p-ヒドロキシ安息香酸プロピル、2-フェノキシエタノール、p-ヒドロキシ安息香酸ブチル、2-フェニルエタノール、ベンジルアルコール、クロロブタノール、およびチオメルサール、ブロノポール(bronopol)、安息香酸、イミドウレア(imidurea)、クロロヘキシジン(chlorohexidine)、デヒドロ酢酸ナトリウム、クロロクレゾール、p-ヒドロキシ安息香酸エチル、塩化ベンゼトニウム、クロルフェネシン(3p-クロルフェノキシプロパン-1,2-ジオール)またはその混合物から成る群より選択される。本発明の更なる態様において、保存剤は、0.1 mg/ml〜20 mg/mlの濃度で存在する。本発明の更なる態様において、保存剤は、0.1 mg/ml〜5 mg/mlの濃度で存在する。本発明の更なる態様において、保存剤は、5 mg/ml〜10 mg/mlの濃度で存在する。本発明の更なる態様において、保存剤は、10 mg/ml〜20 mg/mlの濃度で存在する。これら具体的な保存剤の各々が、本発明の択一的な態様を構成する。薬学的組成物における保存剤の使用は、当業者に周知である。便宜的に、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th edition, 1995が参照される。
【0137】
本発明の更なる態様において、調合物は等張剤を更に含む。本発明の更なる態様において、等張剤は、塩(たとえば塩化ナトリウム)、糖または糖アルコール、アミノ酸(たとえばL-グリシン、L-ヒスチジン、アルギニン、リジン、イソロイシン、アスパラギン酸、トリプトファン、トレオニン)、アルジトール(たとえばグリセロール(グリセリン)、1,2-プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール)、ポリエチレングリコール(たとえばPEG400)、またはその混合物から成る群より選択される。任意の糖、たとえばモノ、ジ、またはポリサッカリド、または水溶性グルカン、たとえば、フルクトース、グルコース、マンノース、ソルボース、キシロース、マルトース、ラクトース、スクロース、トレハロース、デキストラン、プルラン、デキストリン、シクロデキストリン、可溶性デンプン、ヒドロキシエチルデンプンおよびカルボキシメチルセルロース−Naが使用され得る。一つの態様において、糖添加剤はスクロースである。糖アルコールは、少なくとも一つの−OH基を有するC4−C8炭化水素と定義され、たとえばマンニトール、ソルビトール、イノシトール、ガラクチトール、ズルシトール、キシリトール、およびアラビトールが含まれる。一つの態様において、糖アルコール添加剤はマンニトールである。上述の糖または糖アルコールは、個別にまたは組み合わせて使用され得る。糖または糖アルコールは、液体調製物中で可溶性であり、本発明の方法を用いて達成される安定化効果に悪影響を及ぼさない限り、使用量に決まった制限はない。一つの態様において、糖または糖アルコールの濃度は、約1 mg/ml〜約150 mg/mlである。本発明の更なる態様において、等張剤は、1 mg/ml〜50 mg/mlの濃度で存在する。本発明の更なる態様において、等張剤は、1 mg/ml〜7 mg/mlの濃度で存在する。本発明の更なる態様において、等張剤は、8 mg/ml〜24 mg/mlの濃度で存在する。本発明の更なる態様において、等張剤は、25 mg/ml〜50 mg/mlの濃度で存在する。これら具体的な等張剤の各々は、本発明の択一的な態様を構成する。薬学的組成物における等張剤の使用は、当業者に周知である。便宜的に、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th edition, 1995が参照される。
【0138】
本発明の更なる態様において、調合物は、キレート剤を更に含む。本発明の更なる態様において、キレート剤は、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、クエン酸、およびアスパラギン酸の塩、およびその混合物から選択される。本発明の更なる態様において、キレート剤は、0.1 mg/ml〜5 mg/mlの濃度で存在する。本発明の更なる態様において、キレート剤は、0.1 mg/ml〜2 mg/mlの濃度で存在する。本発明の更なる態様において、キレート剤は、2 mg/ml〜5 mg/mlの濃度で存在する。これら具体的なキレート剤の各々は、本発明の択一的な態様を構成する。薬学的組成物におけるキレート剤の使用は、当業者に周知である。便宜的に、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th edition, 1995が参照される。
【0139】
本発明の更なる態様において、調合物は、安定化剤を更に含む。薬学的組成物における安定化剤の使用は、当業者に周知である。便宜的に、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th edition, 1995が参照される。
【0140】
より詳細には、本発明の組成物は、安定な液体薬学的組成物であり、当該組成物の治療的に活性な成分は、液体薬学的調合物中に保存の間におそらく凝集物の形成を示すポリペプチドを含む。「凝集物の形成」とは、結果としてオリゴマーの形成に至るポリペプチド分子の間の物理的相互作用を意図し、オリゴマーは可溶性のままであってもよいし、当該溶液から沈殿する大きな可視的凝集物であってもよい。「保存の間」とは、一旦調製された液体薬学的組成物または調合物が被検体にすぐに投与されないことを意図する。むしろ、組成物は、調製後に、液体形態、凍結状態、または液体形態もしくは被検体への投与に適した他の形態にその後再構成するための乾燥形態に、保存用にパッケージ化される。「乾燥形態」とは、液体の薬学的組成物または調合物が、フリーズ乾燥(すなわち凍結乾燥;たとえばWilliams and Polli (1984) J. Parenteral Sci. Technol. 38: 48-59参照)、スプレー乾燥(Masters (1991) in Spray-Drying Handbook (5th ed; Longman Scientific and Technical, Essez, U.K.), pp. 491-676; Broadhead et al. (1992) Drug Devel. Ind. Pharm. 18: 1169-1206; and Mumenthaler et al. (1994) Pharm. Res. 11:12-20参照)、またはエア乾燥(Carpenter and Crowe (1988) Cryobiology 25:459-470; and Roser (1991) Biopharm. 4: 47-53)の何れかにより乾燥されることを意図する。液体薬学的組成物の保存の間のポリペプチドによる凝集物の形成は、当該ポリペプチドの生物学的活性に悪影響を及ぼし、その結果、薬学的組成物の治療効果が失われる。更に、ポリペプチドを含有する薬学的組成物を輸液システムを用いて投与する場合、凝集物の形成は、管、膜、またはポンプの閉塞などの他の問題を引き起こし得る。
【0141】
本発明の薬学的組成物は、当該組成物の保存の間のポリペプチドによる凝集物の形成を減少させるのに充分な量のアミノ酸ベースを更に含んでいてもよい。「アミノ酸ベース」とは、アミノ酸またはアミノ酸の組合せを意図し、ここで任意の所定のアミノ酸は、遊離の塩基の形態またはその塩の形態の何れかで存在する。アミノ酸の組合せを使用する場合、アミノ酸の全てが遊離の塩基の形態で存在してもよいし、全てがその塩の形態で存在してもよいし、幾つかはその遊離の塩基の形態で存在するがその他はその塩の形態で存在してもよい。一つの態様において、本発明の組成物の調製に使用するアミノ酸は、荷電した側鎖を有するもの、たとえばアルギニン、リジン、アスパラギン酸、およびグルタミン酸である。特定のアミノ酸(たとえばグリシン、メチオニン、ヒスチジン、イミダゾール、アルギニン、リジン、イソロイシン、アスパラギン酸、トリプトファン、トレオニンおよびその混合物)の任意の立体異性体(すなわち、L、D、またはDL異性体)またはこれら立体異性体の組合せは、当該特定のアミノ酸がその遊離の塩基の形態またはその塩の形態の何れかで存在する限り、本発明の薬学的組成物に存在してもよい。一つの態様において、L-立体異性体が使用される。本発明の組成物は、これらアミノ酸の類縁体とともに調合されてもよい。「アミノ酸の類縁体」とは、本発明の液体薬学的組成物の保存の間のポリペプチドによる凝集物の形成を減少させる所望の効果を引き起こす天然存在のアミノ酸の誘導体を意図する。適切なアルギニン類縁体には、たとえばアミノグアニジン、オルニチンおよびN-モノエチルL-アルギニンが挙げられ、適切なメチオニン類縁体には、エチオニンおよびブチオニンが挙げられ、適切なシステイン類縁体にはS-メチル-L-システインが挙げられる。他のアミノ酸のように、アミノ酸の類縁体は、遊離の塩基の形態またはその塩の形態の何れかで組成物に組み込まれる。本発明の更なる態様において、アミノ酸またはアミノ酸の類縁体は、蛋白質の凝集を妨害または遅延させるのに充分な濃度で使用される。
【0142】
本発明の更なる態様において、治療剤として作用するポリペプチドが、酸化を受けやすい少なくとも一のメチオニン残基を含むポリペプチドである場合、メチオニン(または他の硫黄を含むアミノ酸またはアミノ酸類縁体)が、メチオニン残基のメチオニンスルホキシドへの酸化を阻害するために添加され得る。「阻害」とは、メチオニンの酸化された種の経時的な蓄積が極僅かであることを意図する。メチオニンの酸化の阻害により、適切な分子形態でのポリペプチドの保持が高まる。メチオニンの任意の立体異性体(L、D、またはDL異性体)またはその組合せを使用することができる。添加される量は、メチオニンスルホキシドの量が監督官庁に許容されるようにメチオニン残基の酸化を阻害するのに充分な量とすべきである。典型的には、この量は、当該組成物が、約10%〜約30%以下のメチオニンスルホキシドを含有することを意味する。一般に、これは、メチオニン残基に対して添加されるメチオニンの比が、約1:1〜約1000:1、たとえば10:1〜約100:1の範囲になるようにメチオニンを添加することにより達成することができる。
【0143】
本発明の更なる態様において、調合物は、高分子量ポリマーまたは低分子化合物のグループから選択される安定剤(stabilizer)を更に含む。本発明の更なる態様において、安定剤は、ポリエチレングリコール(たとえばPEG3350)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、カルボキシ−/ヒドロキシセルロースまたはその誘導体(たとえばHPC、HPC-SL、HPC-LおよびHPMC)、シクロデキストリン、硫黄含有物質、たとえばモノチオグリセロール、チオグリコール酸および2−メチルチオエタノール、および種々の塩(たとえば塩化ナトリウム)から選択される。これら具体的な安定剤の各々は、本発明の択一的な態様を構成する。
【0144】
薬学的組成物は、含有される治療的に活性なポリペプチドの安定性を更に高める追加の安定化剤(stabilizing agent)を含んでいてもよい。本発明に特に興味深い安定化剤は、メチオニンおよびEDTA(これらは当該ポリペプチドをメチオニン酸化に対して保護する)、および非イオン系界面活性剤(これは当該ポリペプチドを凍結−融解に関連した凝集または機械的剪断に対して保護する)を含むがこれらに限定されない。
【0145】
本発明の更なる態様において、調合物は界面活性剤を更に含む。本発明の更なる態様において、界面活性剤は以下から選択される:洗剤、エトキシ化ヒマシ油、ポリグリコール化グリセリド、アセチル化モノグリセリド、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンブロック重合体(たとえば、ポロキサマー、たとえばPluronic(登録商標)F68、ポロキサマー188および407、Triton X-100)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンおよびポリエチレン誘導体、たとえばアルキル化およびアルコキシ化誘導体(tweens、たとえばTween-20、Tween-40、Tween-80およびBrij-35)、モノグリセリドまたはそのエトキシ化誘導体、ジグリセリドまたはそのポリオキシエチレン誘導体、アルコール、グリセロール、レクチンおよびリン脂質(たとえば、ホスファチジルセリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ジホスファチジルグリセロールおよびスフィンゴミエリン)、リン脂質の誘導体(たとえば、ジパルミトイルホスファチジン酸)およびリゾリン脂質(たとえば、パルミトイルリゾホスファチジル-L-セリンおよびエタノールアミン、コリン、セリンまたはトレオニンの1-アシル-sn-グリセロ-3-リン酸エステル)およびリゾホスファチジルおよびホスファチジルコリンのアルキル、アルコキシル(アルキルエステル)、アルコキシ(アルキルエーテル)−誘導体、たとえばリゾホスファチジルコリンのラウロイルおよびミリストイル誘導体、ジパルミトイルホスファチジルコリン、および極性先端基の改変、すなわちコリン、エタノールアミン、ホスファチジン酸、セリン、トレオニン、グリセロール、イノシトール、および正電荷のDODAC、DOTMA、DCP、BISHOP、リゾホスファチジルセリンおよびリゾホスファチジルトレオニン、およびグリセロリン脂質(たとえばケファリン)、グリセロ糖脂質(たとえばガラクトピラノシド)、スフィンゴ糖脂質(たとえばセラミド、ガングリオシド)、ドデシルホスホコリン、鶏卵リゾレシチン、フシジン酸誘導体(たとえば、タウロ−ジヒドロフシジン酸ナトリウムなど)、長鎖脂肪酸およびその塩C6-C12(たとえばオレイン酸およびカプリル酸)、アクリルカルニチンおよび誘導体、リジン、アルギニンまたはヒスチジンのNα−アシル化誘導体、またはリジンまたはアルギニンの側鎖アシル化誘導体、リジン、アルギニンまたはヒスチジンと中性または酸性アミノ酸との任意の組合せを含むジペプチドのNα−アシル化誘導体、中性アミノ酸と二つの荷電アミノ酸との任意の組合せを含むトリペプチドのNα−アシル化誘導体、DSS(ドキュセートナトリウム、CAS登録no[577-11-7]、ドキュセートカルシウム、CAS登録no[128-49-4]、ドキュセートカリウム、CAS登録no[7491-09-0]、SDS(ドデシル硫酸ナトリウムまたはラウリル硫酸ナトリウム)、カプリル酸ナトリウム、コール酸またはその誘導体、胆汁酸およびその塩およびグリシンまたはタウリンコンジュゲート、ウルソデオキシコール酸、コール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、N−ヘキサデシル−N,N−ジメチル−3−アンモニオ−1−プロパンスルホネート、陰イオン性(アルキル−アリール−スルホネート)一価の界面活性剤、両性イオン性界面活性剤(たとえばN−アルキル−N,N−ジメチルアンモニオ−1−プロパンスルホネート、3−コールアミド−1−プロピルジメチルアンモニオ−1−プロパンスルホネート)、陽イオン性界面活性剤(第四級アンモニウム塩基)(たとえば、セチル−トリメチルアンモニウムブロマイド、セチルピリジニウムクロライド)、非イオン性界面活性剤(たとえば、ドデシルβ−D−グルコピラノシド)、ポロキサミン(たとえばテトロニックス(Tetronic’s))(これは、エチレンジアミンに酸化プロピレンおよび酸化エチレンを連続して添加することに由来する四官能性ブロック共重合体である)、あるいは界面活性剤はイミダゾリン誘導体のグループから選択されてもよく、またはその混合物であってもよい。これら具体的な界面活性剤の各々は、本発明の択一的な態様を構成する。
【0146】
薬学的組成物における界面活性剤の使用は、当業者に周知である。便宜的に、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th edition, 1995が参照される。
【0147】
本発明のペプチド薬学的調合物に、他の成分が存在し得ることが考えられる。かかる追加の成分には、湿潤剤、乳化剤、抗酸化剤、増量剤、張度調整剤、キレート剤、金属イオン、油性賦形剤、タンパク質(ヒト血清アルブミン、ゼラチンまたはタンパク質)および双性イオン(たとえば、アミノ酸、たとえばベタイン、タウリン、アルギニン、グリシン、リジンおよびヒスチジン)が含まれる。かかる追加の成分は、当然、本発明の薬学的調合物の全体的安定性に悪影響を及ぼしてはいけない。
【0148】
本発明のIL-20または上述の任意の他の化合物を含有する薬学的組成物は、かかる治療を必要とする患者に対して、幾つかの部位、たとえば局所部位、たとえば皮膚および粘膜部位、吸収をバイパスする部位、たとえば動脈、静脈、心臓における投与、吸収を伴う部位、たとえば皮膚、皮膚下、筋肉、または腹部における投与で投与され得る。
【0149】
本発明の薬学的組成物の投与は、かかる治療を必要とする患者に対して、幾つかの投与ルート、たとえば舌、舌下、頬、口内、経口、胃腸、鼻、肺、たとえば細気管支および肺胞またはその組合せの経由、表皮、皮膚、経皮、膣、直腸、眼、たとえば結膜、尿管、および腸管外を経由し得る。
【0150】
本発明の組成物は、幾つかの投与形態、たとえば液剤、懸濁剤、エマルジョン、ミクロエマルジョン、マルチプルエマルジョン、泡、軟膏(salve)、ペースト、硬膏、軟膏(ointment)、錠剤、コート錠剤、リンス、カプセル、たとえば硬質ゼラチンカプセルおよび軟質ゼラチンカプセル、坐剤、直腸カプセル、ドロップ、ゲル、スプレー、パウダー、エアロゾル、吸入剤、点眼剤、眼軟膏、眼リンス、膣ペッサリー、膣リング、膣軟膏、注射液、インサイチュ・トランスフォーミング液、たとえばインサイチュ・ゲル化、インサイチュ・セッティング、インサイチュ・沈殿、インサイチュ・結晶化、輸液、およびインプラントで投与され得る。
【0151】
本発明の組成物は、IL-20または上述の任意の他の化合物の安定性を更に高めるため、バイオアベイラビリティーを高めるため、溶解度を高めるため、副作用を減少させるため、当業者に周知の時間療法を達成するため、患者のコンプライアンスまたはその任意の組合せを高めるために、たとえば共有結合、疎水的および静電的相互作用を介して、薬剤キャリア、薬剤デリバリーシステムおよび高度薬剤デリバリーシステムに複合化してもよいし、結合してもよい。キャリア、薬剤デリバリーシステムおよび高度薬剤デリバリーシステムの例には、以下のものが含まれるがこれらに限定されない:ポリマー、たとえばセルロースおよび誘導体、多糖類、たとえばデキストランおよび誘導体、デンプンおよび誘導体、ポリ(ビニルアルコール)、アクリレートおよびメタクリレートポリマー、ポリ乳酸およびポリグリコール酸およびそのブロック共重合体、ポリエチレングリコール、キャリアタンパク質、たとえばアルブミン、ゲル、たとえばサーモゲル化システム、たとえば当業者に周知のブロック共重合システム、ミセル、リポソーム、ミクロスフェア、ナノ粒子、液晶およびその分散液、脂質−水システムにおける相挙動について当業者に周知のL2相およびその分散液、ポリマーミセル、マルチプルエマルジョン、自己乳化、自己ミクロ乳化、シクロデキストリンおよびその誘導体、およびデンドリマー。
【0152】
本発明の組成物は、たとえば、当業者に周知のデバイスである定量吸入器、ドライパウダー吸入器および噴霧器を用いて、IL-20または上述の任意の他の化合物の肺投与のための固体、半固体、パウダーおよび溶液を調合する際に有用である。
【0153】
本発明の組成物は、制御型、持続型、長期型、遅延型、および低速型放出薬剤デリバリーシステムの調合においてとりわけ有用である。より詳細には、組成物は、当業者に周知の腸管外制御型放出および持続型放出システム(両システムにより投与回数が何倍にも減少する)の調合において有用であるが、これに限定されない。更に好ましくは、制御型放出および持続型放出システムが皮下に投与される。本発明の範囲を限定するものではないが、有用な制御型放出システムおよび組成物の例は、ヒドロゲル、油性ゲル、液晶、ポリマーミセル、ミクロスフェア、ナノ粒子である。
【0154】
本発明の組成物に有用な制御型放出システムをつくる方法には、結晶化、凝縮、共結晶化、沈殿、共沈殿、乳化、分散、高圧ホモジナイゼーション、カプセル化、スプレー乾燥、ミクロカプセル化、コアセルベーション、相分離、ミクロスフェアをつくるための溶媒蒸発、押出および超臨界流体プロセスが含まれるがこれらに限定されない。一般的には、Handbook of Pharmaceutical Controlled Release (Wise, D.L., ed. Marcel Dekker, New York, 2000) and Drug and the Pharmaceutical Sciences vol. 99: Protein Formulation and Delivery (MacNally, E.J., ed. Marcel Dekker, New York, 2000) が参照される。
【0155】
腸管外投与は、シリンジ、必要に応じてペンのようなシリンジを用いて、皮下、筋内、腹腔内または静脈内注射により行うことができる。あるいは、腸管外投与は、輸液ポンプにより行うことができる。更なるオプションは、鼻または肺スプレーの形態の、IL-20または上述の任意の他の化合物を投与するための溶液または懸濁液の組成物である。更なるオプションとして、IL-20または上述の任意の他の化合物を含有する薬学的組成物を、たとえば針なし注射により、またはパッチから、必要に応じてイオン導入パッチから、経皮投与に適合させることができ、または粘膜経由の投与、たとえば舌経由の投与に適合させることができる。
【0156】
「安定化調合物」の用語は、物理的安定性の増大した、化学的安定性の増大した、または物理的および化学的安定性の増大した調合物を指す。
【0157】
本明細書で使用されるタンパク質調合物の「物理的安定性」の用語は、熱−機械的ストレスおよび/または疎水性表面および境界面などの不安定な境界面および表面との相互作用にタンパク質を晒した結果、生物学的に不活性および/または不溶性の凝集物を形成するタンパク質の傾向をいう。水性タンパク質調合物の物理的安定性は、適切な容器(たとえばカートリッジまたはバイアル)中に充填した調合物を、種々の温度で種々の期間、機械的/物理的ストレス(たとえば攪拌)に晒した後、視覚的検査および/または濁度測定することにより評価される。調合物の視覚的検査は、ダークな背景にシャープな焦点の光で行われる。調合物の濁度は、たとえば0〜3のスケールで濁度をランキングする視覚的スコアにより特徴づけられる(濁りのない調合物は視覚的スコア0に相当し、日中の光で目に見える濁りを示す調合物は視覚的スコア3に相当する)。調合物は、日中の光で目に見える濁りを示すとき、タンパク質凝集に対して物理的に不安定であると分類される。あるいは、調合物の濁度は、当業者に周知の単純な濁度測定により評価することができる。水性タンパク質調合物の物理的安定性は、タンパク質のコンフォメーション状態の分光分析薬剤またはプローブを用いることにより評価することもできる。プローブは、好ましくは、タンパク質の非天然の配座異性体に優先的に結合する小分子である。タンパク質構造の小分子分光分析プローブの一例は、チオフラビンTである。チオフラビンTは、アミロイドフィブリルの検出に広く使用される蛍光色素である。フィブリルの存在下において、おそらく他のタンパク質立体配置のように、チオフラビンTは、フィブリルタンパク質形態に結合すると、約450 nmに新たな励起極大を生じ、約482 nmにおける放射が増大する。未結合のチオフラビンTは、当該波長において実質的に蛍光を発しない。
【0158】
他の小分子は、天然の状態から非天然の状態までタンパク質の構造変化のプローブとして使用することができる。たとえば、「疎水性パッチ」プローブは、タンパク質の疎水性パッチを露出するように結合する。疎水性パッチは、天然の状態でタンパク質の三次元構造内に一般に埋め込まれているが、タンパク質がアンフォールディングまたは変性を開始すると露出するようになる。これら小分子分光分析プローブの例は、芳香族疎水性色素、たとえばアントラセン、アクリジン、フェナントロリンなどである。他の分光分析プローブは、金属−アミノ酸複合体、たとえば疎水性アミノ酸、たとえばフェニルアラニン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、およびバリンなどのコバルト金属複合体である。
【0159】
本明細書で使用されるタンパク質調合物の「化学的安定性」の用語は、天然のタンパク質構造と比較して、潜在的な生物学的能力の低下および/または潜在的な免疫原性特性の増大した化学的分解産物の形成に至る、タンパク質構造の化学的共有結合の変化をいう。種々の化学的分解産物が、天然のタンパク質のタイプおよび性質、並びにタンパク質が晒されている環境に依存して形成され得る。化学的分解を排除することは、おそらく完全に避けることはできず、当業者に周知のとおり、タンパク質の保存および使用の間に化学的分解産物の量の増大がしばしば観察される。多くのタンパク質は、脱アミドを受けやすく、そのプロセスにおいて、グルタミニルまたはアスパラギニル残基の側鎖アミド基が加水分解され、遊離のカルボン酸を形成する。他の分解経路は、高分子量の変換産物を形成し、ここでは二以上のタンパク質分子が、アミノ基転移および/またはジスルフィド相互作用を介して互いに共有結合し、共有結合したダイマー、オリゴマーおよびポリマー分解産物の形成に至る(Stability of Protein Pharmaceuticals, Ahern. T.J. & Manning M.C., Plenum Press, New York 1992)。(たとえばメチオニン残基の)酸化は、化学的分解の別の変形として言及することができる。タンパク質調合物の化学的安定性は、様々な環境条件に晒した後、種々の時点で、化学的分解産物の量を測定することにより評価することができる(分解産物の形成は、たとえば温度を上げることによりしばしば促進することができる)。個々の分解産物の量は、種々のクロマトグラフィー技術(たとえばSEC-HPLCおよび/またはRP-HPLC)を用いて、分子サイズおよび/または電荷に依存して分解産物を分離することにより決定される。
【0160】
したがって、上述のとおり、「安定化調合物」は、物理的安定性の増大した、化学的安定性の増大した、または物理的および化学的安定性の増大した調合物をいう。一般に、調合物は、有効期限に達するまで、(推奨される使用および保存条件に従って)使用および保存される間、安定でなければならない。
【0161】
本発明に従って疾患または障害の治療に使用されるコンビネーション剤と必要に応じて組み合わせた本発明の化合物は、単独で、または薬学的に許容可能なキャリアまたは賦形剤と組み合わせて、単回投与または複数回投与のいずれかで投与され得る。当該コンビネーションの調合物は、当該化合物を一つにまとめた一つの用量ユニットであってもよいし、あるいは別々の用量として調合されてもよい。本発明に従って新血管形成の治療に使用されるコンビネーション剤と必要に応じて組み合わせた本発明の化合物を含む薬学的組成物は、上述の開示されたものなど慣用的技術に従って、薬学的に許容可能なキャリアまたは希釈剤、並びに任意の他の公知のアジュバントおよび賦形剤とともに調合され得る。
【実施例】
【0162】
以下のモデルは、虚血性血管新生について有用である:PDGF-BBおよびFGF-2の組合せによる血管新生相乗作用、血管安定性、および後肢虚血の改善。Cao RH; Brakenhielm E; Pawliuk R; Wariaro D; Post MJ; Wahlberg E; Leboulch P; Cao YH Nature Medicine, Vol. 9 (5) 604-613 (2003)。
【0163】
マウスマトリゲルプラグ技術により、IL-20を1.7-170μg/mlでマトリゲルに含有させると、1週間後のヘモグロビン含量により決定されるとおり、新生血管形成が有意に増大することが示された(0.17μg/mlではそうではない)。ヘモグロビン測定の技術により明らかにされるとおり、IL-20による新生血管形成は、ゲルへのヘパリンの同時投与に依存した。しかし、組織学的検査により、IL-20は、ヘパリンの同時投与なしで、マトリゲルにおける新生血管形成を誘導できることが示された。マウス角膜モデルにより、IL-20が組織において新生血管形成を誘導できることが示された。ポリマー中のIL-20から成るペレットを埋め込むと、角膜縁から新生血管形成が起こった。評価は、埋め込みから6日後に、新規血管によりカバーされる領域を測定することにより行った。IL-20が、改良型ボイデンチャンバーアッセイにおいてHUVECに対して用量依存的な走化性効果を示すことをインビトロで我々は示した。
【0164】
マトリゲルプラグアッセイ:
10匹の動物のグループに、0.25 mlのマトリゲルを、腹部の正中線の近傍および剣状突起の後方の2つ別の部位にs.c.注射した。マトリゲルに、様々な濃度のIL-20をヘパリンあり(15 IU)またはなしで添加した。IL-20を含まないマトリゲルおよび/またはヘパリンをコントロール部位に注射した。7日後、動物をCO2で安楽死させた。マトリゲルプラグを取り出し、重さを量り、2 mlの水でホモジナイズした。その後、ヘモグロビンの量を分光測光法により測定した。あるいは、プラグをパラホルムアルデヒドにそのまま置き、固定した後、組織スライドに切断し、血管増殖の視覚的検査のためにヘマトキシリン/エオシンで染色した。
【0165】
結果:
hIL-20マトリゲルプラグを、空のコントロールゲルと共に、2種類の濃度でマウスに埋め込んだ。結果は、ゲルへのヘモグロビンの流入により測定されるとおり、hIL-20がマウスにおいて血管新生応答を誘導することを示す。実験は、ヘパリンありまたはなしで、ポジティブコントロールとしてb-FGFを含有させて行った。血管新生効果は、ヘパリンに依存していることが分かる。結果を図1に示す。
【0166】
組織学的検査により、マトリゲルにおける強力な血管形成が証明され、これは、ヘパリンの同時投与を必要としなかった。結果を図2に示す。
【0167】
マウス角膜新生血管形成アッセイ:
マウス角膜アッセイは、先に記載された手順に従って行った(Cao et al., 1999)。オスの5-6週齢のC57BI6/Jマウスの両眼に、フォン・グレーフェ白内障ナイフを用いて、角膜ミクロポケットを作成した。600 ngのhIL-20を含有するハイドロンポリマータイプNCC(IFN Sciences, New Brunswick, NJ, USA)でコートされたスクロースおよび硫酸アルミニウムのミクロペレット(0.35×0.35 mm)(Bukh Meditec, Copenhagen, Denmark)を、各ポケットに埋め込んだ。ペレットを、角膜縁から0.6-0.8 mmに置いた。埋め込み後、エリスロマイシンの眼用軟膏を各眼に適用した。ペレットの埋め込みから6日後に、細隙灯顕微鏡により検査した。環状の新生血管形成の血管長さおよび正味時間を測定した。
【0168】
結果:
図3上部は、IL-20を含有するペレットの存在が、角膜において新生血管形成を誘導したことを実証する。その応答の定量を図4に示す。IL-20を含有するペレットは、リン酸緩衝食塩水(PBS)を含有するペレットより格段に大きい応答を誘導する。
【0169】
移動アッセイ:
ヒト臍帯静脈内皮細胞の走化性挙動を、12μm孔のポリカーボネートフィルターを用いて改良型ボイデンチャンバー(Neuroprobe AP48)で観察した。細胞を上部チャンバー(800.000/ml)に置く前に24h血清を欠乏させた(HAM F-12, 2% FBS)が、下部チャンバーはHAM F-12のみ(コントロール)または種々の濃度のIL-20を含有させた。各結果は、各グループについて6ウェルを用いた2つの実験に由来する総合的な値に基く。37℃で、5% CO2含有空気中において4hインキュベーションした後、ポリカーボネートフィルターの下表面に移動した細胞数を測定した。フィルターをチャンバーから取り出し、メタノールで固定し、その後ギームザ(Giemsa)で細胞を染色した。フィルターの上表面にある細胞を糸芯で掻きとることにより除去した。顕微鏡を用いて数えることにより細胞数を求めた。
【0170】
結果:
図5は、IL-20がHUVECに対して用量依存的な走化性効果を示したことを示す。1μMのIL-20は僅かな効果しか示さなかったが、10μMのIL-20は明らかに細胞数を増大させ、このことは、IL-20が内皮細胞に対して走化性であることを示す(ANOVA, P<0.001)。このデータは、IL-20が新生血管形成に役割を果たすというインビボでの発見を裏付ける。
【図面の簡単な説明】
【0171】
【図1】図1は、マトリゲル(matrigel)におけるヘモグロビンの量のグラフ図を示す。
【図2】図2は、マトリゲル(matrigel)における血管の形成を示す組織学的検査を示す。
【図3】図3は、IL-20によるマウス角膜における新生血管形成の誘導を示す。
【図4】図4は、上記実験の定量を示す。
【図5】図5は、改良型ボイデンチャンバーアッセイにおけるHUVECに対する用量依存的な走化性効果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
新生血管形成の促進のための医薬を製造するための、IL-20、またはその類縁体、活性フラグメントもしくは誘導体の使用。
【請求項2】
新生血管形成の阻害のための医薬を製造するための、IL-20のアンタゴニスト、またはその類縁体、活性フラグメントもしくは誘導体の使用。
【請求項3】
IL-20、またはその類縁体、活性フラグメントもしくは誘導体を、薬学的に許容可能なキャリアまたは希釈剤とともに含む薬学的組成物。
【請求項4】
IL-20のアンタゴニスト、またはその類縁体、活性フラグメントもしくは誘導体を、薬学的に許容可能なキャリアまたは希釈剤とともに含む薬学的組成物。
【請求項5】
それを必要としている哺乳類に対して、効果的な量のIL-20、またはその類縁体、活性フラグメントもしくは誘導体を投与することにより、新生血管形成を促進する方法。
【請求項6】
効果的な量のIL-20のアンタゴニスト、またはその類縁体、活性フラグメントもしくは誘導体をそれを必要としている哺乳類に投与することにより、新生血管形成を阻害する方法。
【請求項7】
IL-20活性を分析することにより、新生血管形成を伴う疾患の症状を診断する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−501813(P2007−501813A)
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522895(P2006−522895)
【出願日】平成16年8月9日(2004.8.9)
【国際出願番号】PCT/DK2004/000532
【国際公開番号】WO2005/014028
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(391032071)ノボ ノルディスク アクティーゼルスカブ (148)
【氏名又は名称原語表記】NOVO NORDISK AKTIE SELSXAB
【Fターム(参考)】