説明

新聞印刷用紙

【課題】軽量でかつ白色度および不透明度が高い新聞印刷用紙を提供する。
【解決手段】紫色顔料、青色顔料、紫色染料、および青色染料から選ばれる一つ以上を含有する新聞印刷用紙であって、新聞印刷用紙のJIS P 8150の方法によって測定される紙の色相が、紫外線を含む測定においてb値が、−10以上4未満であり、白色度が60%以上であり、JIS P 8149の方法によって測定される不透明度が88%以上である、新聞印刷用紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新聞印刷用紙に関し、特に軽量(低坪量)で高白色なオフセット輪転機用の新聞印刷用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省資源、物流コストの削減、紙ごみの減量などの社会要請により、紙は脱墨パルプの高配合や軽量化が望まれており、中でも新聞、雑誌においては、増頁を目的とした軽量化の指向が非常に強い。しかし、紙の軽量化が紙品質に与える弊害は大きく、特に新聞用紙においては、印刷した文字等の裏抜けに係わる重要な要求品質である不透明度の低下は大きな問題の一つである。
【0003】
また、新聞用紙においては印刷の高速化、カラー化、自動化などの時代要請から、印刷方式は凸版印刷方式からオフセット印刷方式への転換が急速に進んでおり、軽量でありながら大量かつ高速のオフセット輪転機での印刷適性も重要である。さらに、広告ページのカラー化、ビジュアル化等に対応するため、鮮明な画像が強く求められるようになっている。そのため、新聞用紙には、軽量化の要望だけでなく、不透明度及び白色度が高く、かつインキ着肉性の良好な用紙の開発の要望が高まっている。また、近年、新聞社ではコスト削減を目的として、これまで外注していた広告チラシや別刷り印刷物等を自製化する傾向にある。そのため、通常の新聞用紙と同じ印刷作業性を持ちながら、カラー面の見栄えが良い新聞用紙が望まれている。広告チラシや別刷り印刷物の図柄は、通常の新聞用紙の図柄と異なり、4色の濃い網点の重ね部やベタ印刷の重ね部などが多く、顧客が自動車メーカー、ファッションブランドメーカー等の場合、不透明度、白色度、及びインキ着肉性に関して更に高水準のレベルを要求される場合が多い。
【0004】
このような背景から、広告用チラシや別刷り用印刷物等には、その見栄えの良さから白色度60%以上の高白色のものが望まれるが、白色度が高くなるにつれて透けやすくなり、不透明度が低下して印刷面裏面への裏抜けが悪化する問題がある。そこで、通常の新聞用紙よりも坪量を高くして使用されることが多くなっている。
【0005】
一方、新聞用紙は軽量かつ嵩高く、高い不透明度が要求されるため、原料パルプとして、砕木パルプ、リファイナー砕木パルプ、サーモメカニカルパルプといったリグニン含有量が多い機械パルプが高率配合されており、そのため白色度は低い。従って、この新聞用紙の白色度を向上する手段としては、前記の機械パルプに限らず、配合する原料パルプの漂白を強化することが挙げられる。新聞用紙の主要な原料パルプである脱墨パルプの白色度を向上させる技術としては、例えば、新聞、上質古紙を脱墨処理するに際し、高白色度、且つ残インキ、未離解インキ数の少ない印刷用脱墨パルプを得ることを課題として、過酸化水素、NaOH、珪酸ソーダ、脱墨剤の1種以上を添加してニーディングし、漂白し、フローテーションを、この順序で2回または3回繰り返す技術が開示されている(特許文献1参照)。
【0006】
また、印刷古紙、特に新聞古紙より得られた脱墨パルプを更に漂白することにより得られる高白色度古紙パルプの製造を課題として、印刷古紙を脱墨して得られた古紙脱墨パルプを更に漂白する工程において、古紙パルプを脱水し、25%以上のパルプ濃度で酸化型漂白剤として過酸化水素を混合後、ソーキングし、更に還元型漂白剤としてホルムアミジンスルフィン酸を使用して漂白する技術が開示されている(特許文献2参照)。
【0007】
更に、新聞古紙由来でありながらも漂白後の白色度の安定性が高く、且つバージンパルプと遜色のない上質紙グレードの強度を有し、排水からの環境負荷は極力抑えた方法で漂白パルプを提供する技術の提供を課題として、新聞古紙を主体とした古紙原料を、離解、脱水し、この原料を蒸解した後、酸素による脱リグニン処理を行い、次いで脱インキ処理し、更に多段漂白する技術が開示されている(特許文献3参照)。
【0008】
しかし、このような原料パルプの漂白を進める技術では、漂白設備の設置や増強が必要であり、しかも漂白により白色度は向上するが、リグニン等の着色物質が除かれるため、光の吸収能力が低下し、不透明度が低下するという問題があり、印刷後の裏抜けの低下が懸念される。
【0009】
白色度と不透明度を共に向上させる方法として、高白色度の填料の紙中含有率を増加させることも効果的であると考えられるが、新聞用紙の紙中填料率を高くすると、紙の強度低下が起こるだけではなく、紙層中に十分に固定させることができず、印刷時、特にオフセット印刷時の湿し水によって容易に紙層内から浸みだし易く、ブランケットパイリングの問題を引き起こす。
【0010】
填料自体の白色度及び不透明度を高めることも検討されており、主に酸性抄紙法で使用される填料ではインキ吸収性が高いホワイトカーボン、水和珪酸(特許文献4、5、6参照)などの珪酸物質などの技術が挙げられるが、紙力低下や粉落ちなどを考慮すると、これらの紙中填料率には限界があるため、抄造される新聞用紙の裏抜けを完全には解消できなかった。
【0011】
中性抄紙法では填料として炭酸カルシウムを使用する技術(特許文献7参照)があるが、裏抜けを抑えるためには紙中填料率を高くする必要があった。また、二酸化チタン−炭酸カルシウム複合物を填料として使用する技術(特許文献8参照)があるが、高価な二酸化チタンを原料とするため実用的ではない。
【0012】
また、蛍光増白剤と水溶性接着剤を含む表面処理剤を塗布し、特定の層に高い蛍光増白度を与えることにより、白色度の低下がなく、優れた不透明度を有し、かつ優れたカラー印刷適性を兼ね備えたオフセット印刷用新聞用紙の技術がある(特許文献9参照)。しかし、蛍光増白剤では見た目の白色度は高くなるが実際の白色度は向上しない。
【0013】
不透明度を維持したまま白色度を高める方法としては、新聞用紙の原紙に、白色度や不透明度の高い顔料を接着剤とともに塗工する技術があり、微塗工新聞用紙が実用化されている。例えば、従来の塗工用顔料と特定の芳香族ビニル−共役ジエン系共重合体ラテックス主成分とする塗被組成物を両面あたり0.3〜6.0g/m塗工する技術(特許文献10参照)、針状顔料及び平均吸油量が65cc/100g以上の顔料を含有する塗工層を両面で1.0から12g/m設ける技術(特許文献11参照)、二酸化チタンを含有する塗工層を両面で0.2〜3.0g/m設ける技術(特許文献12参照)、顔料あたりカオリンを50〜100重量部含有する塗工層を両面当たり2.0〜8.0g/m設けるコールドオフセット型高速輪転機用の新聞用紙の技術(特許文献13参照)等がある。しかし、この顔料塗工タイプのオフセット印刷用新聞用紙においては、白色度と隠蔽性が極めて高い二酸化チタン以外の顔料を含有する塗工層を設ける場合、十分な白色度と不透明度を得るには塗工量を多くする必要があり、この分、原紙の坪量が下がると新聞用紙の紙力が低下し、印刷時、特に高速新聞輪転機での印刷時には紙力が不足して紙切れなどのトラブルが生じる。これを避けるために原紙の坪量を下げることが困難であり、結果的に実用化させている顔料塗工タイプの新聞用紙は高坪量となっている。二酸化チタンを含有する塗工層を設ける場合には坪量の増加は少なくてすむが、二酸化チタンは高価であり製造コストが増大するという問題がある。
【0014】
【特許文献1】特開平06-049792号公報
【特許文献2】特開平11-315487号公報
【特許文献3】特開2000-027085号公報
【特許文献4】特許第2666638号公報
【特許文献5】特許第2960001号公報
【特許文献6】特許第3026933号公報
【特許文献7】特許第2889159号公報
【特許文献8】特開2001-240765号公報
【特許文献9】特開2002-069896号公報
【特許文献10】特許第2896377号公報
【特許文献11】特許第2504819号公報
【特許文献12】特開2000-054287号公報
【特許文献13】特開2003-286686号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
以上の状況から、白色度及び不透明度が高く裏抜けが良好で、かつ軽量なオフセット印刷用新聞用紙が望まれており、特にオフセット輪転機での印刷が可能な高白色新聞用紙が望まれている。そこで、本発明の課題は、軽量でかつ白色度および不透明度が高い新聞印刷用紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、新聞印刷用紙を構成する成分の中に、紫、青の色を有する色材をいずれか1種以上含有させることにより、白色度が高く、高不透明度の新聞印刷用紙が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0017】
詳しくは、本発明は、紫色顔料、青色顔料、紫色染料、および青色染料から選ばれる一つ以上を含有する新聞印刷用紙であって、新聞印刷用紙のJIS P 8150の方法によって測定される紙の色相が、紫外線を含む測定においてb値が、−10以上4未満であり、白色度が60%以上であり、JIS P 8149の方法によって測定される不透明度が88%以上であることを特徴とする新聞印刷用紙に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、軽量でありながら白色度が高く、かつ不透明度に優れる品質の新聞印刷用紙が得られるという顕著な効果を奏する。特に、本発明の新聞印刷用紙は見た目の白さが強く、機器で測定する白色度よりも白さが際立って見える。また、軽量でありながらオフセット印刷時の裏抜けが少なく、インキ着肉性が良好な優れた品質の新聞印刷用紙が得られるという顕著な効果を奏する。本発明によれば、特に、オフセット輪転機用の新聞印刷用紙として高白色新聞用紙が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】L色相系における色材添加後の色相の変化
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の新聞印刷用紙は、顔料と接着剤とを主成分とする顔料塗工層、接着剤を主成分とするクリア塗工層(以下、本明細書において、サイズプレス層ということがある)のうちいずれか1層以上を設ける(以下、本明細書において、顔料塗工層とクリア塗工層を併せて「塗工層」ということがある。)。新聞印刷用紙とは、基紙(以下、本明細書において、「原紙」または「原紙層」ということがある)からなるか、または、該基紙上の片面あるいは両面に少なくとも一層の塗工層を有する新聞印刷用紙である。
【0021】
本発明によって得られる新聞印刷用紙は、例えば、コールドオフセット印刷やヒートオフセット印刷などの平版印刷、グラビア印刷などの凹版印刷、凸版印刷などの印刷方式で印刷することができる。
【0022】
色材
本発明においては、新聞印刷用紙に、色材を含有させる。本発明において色材とは、白色以外の有色の顔料または染料をいう。顔料とは、水や油や有機溶剤などに不溶または難溶性または分散状態で存在する白色あるいは有色の粉体であり、無機と有機のものがある。本発明においては、無機、有機いずれのものでも良い。染料とは、可視光線を選択吸収または反射して固有の色を持つ有機色素のうち、適当な染色法により繊維や顔料等に染着するものをいい、溶媒(水や有機溶剤など)に可溶である。本発明においては、原紙層については、主に有色の染料を用い、クリア塗工、顔料塗工層については、主に、耐光性に優れ、紙の経時による変色・着色を防止するという観点から有色の顔料を使用することが好ましい。ただし、クリア塗工の場合は有色染料の使用も好ましい。
【0023】
[色材(顔料)]
本発明の色材としての顔料は、青色または紫色であるものから1種以上を使用でき、青色の顔料としては、例えば、EMT−ブルーDS−18 東洋インキ製造(株)社製などが挙げられ、紫色の顔料としては、例えば、SAバイオレットC12896 御国色素(株)社製などが挙げられる。顔料は、青色単独、紫色単独、両者併用しても良いが、不透明度を向上するには、紫色の顔料を使用することが好ましい。また、本発明においては、必要に応じて、黒、赤、黄などの、青、紫以外の色材を添加しても良い。
【0024】
青色顔料・紫色顔料としては、無機顔料および有機顔料のいずれも使用できる。青色顔料の具体例としては、例えば、ウルトラマリン、アズライト、プロシアブルー(紺青)、群青、スマルト、コバルトブルー(アルミン酸コバルト)、セルリアンブルー(錫酸コバルト)、コバルトクロムブルー、コバルト・アルミ・珪素酸化物、コバルト・亜鉛・珪素酸化物、マンガンブルー、フタロシアニンが挙げられる。また、紫色顔料の具体例としては、例えば、コバルトバイオレット(砒酸コバルト、燐酸コバルト、コバルト・リチウム・燐酸化物、含水燐酸アンモニウムコバルト、ホウ酸コバルトなど)、紫群青、酸化鉄紫、マンガンバイオレット、ミネラルバイオレットなどの無機顔料、インジゴイド系、キナクリドン系、オキサジン系、アントラキノン系、カルボニウム系、キサンテン系の有機顔料が挙げられる。
【0025】
本発明の好ましい態様において、青・紫の顔料を一定量含有することによって色相を後述する範囲とすることにより、新聞印刷用紙の表面色を青白くし、見た目の白さを増強すると共に、不透明度を向上させ、印刷時の裏抜けを防止することができる。
【0026】
本発明における青色および紫色の顔料とは、印刷用紙に含有させたときに、印刷用紙をそれぞれの色にする色材である。各々の色材を添加すると、図1に示す方向へ紙の色相を変化させることができる。図1は、L表色系をもとに、本発明の色材を含有しない紙と、含有させた後の紙の色相の変化を示したものである。色相を、a値の(+)方向を0°、(−)方向を180°b値(+)方向を90°、(−)方向を270°として表記した場合、添加前の紙を原点ゼロの位置とすると、青色の色材を添加すると、「青味」と図1に示してある210°以上280°未満の部分に添加後の紙の色相が変化し、紫色の色材を添加すると、「紫味」と図1に示してある280°以上335°未満の部分に添加後の紙の色相が変化するということを表している。
【0027】
[色材(顔料)の含有量]
本発明における紫色顔料および/または青色顔料の含有量は特に限定されないが、これらの顔料の合計が、新聞印刷用紙1mあたり、0.05〜3.5mgであることが好ましく、0.1mg〜2.0mgであることがより好ましい。一般に、前記量が0.05mgより少ないと、顔料による光の吸収が少ないため、不透明度に寄与する隠蔽性が不足するので好ましくない。また、一般に、前記量が3.5mgより多いと、顔料による光の吸収量が多く、不透明度向上に大きく寄与するものの、色相が0点から大きく外れ、白色とは感じられなくなるため、好ましくない。顔料の含有量は、上記範囲内で、原料あるいは原紙などの白色度により適宜調節できる。本発明において数値範囲はその端点を含む。
【0028】
また、後述するとおり、本発明においては原紙中に染料を含有させて色相を調整できるが、この場合は、原紙層以外の印刷用紙の層に含有される紫・青色顔料の合計量は、0.05mg〜2.5mg/mであることが好ましく、0.05〜2.0mg/mがより好ましい。
【0029】
[色材(染料)]
本発明では、青色、紫色、または赤色染料を使用できる。青色の染料としては、例えば、アイゼンベーシックペーパーブルーRHリキッド 保土ヶ谷化学工業(株)社製などが挙げられ、赤色の染料としては、例えば、アストラフロキシンGリキッド ケミラ社製などが挙げられる(いずれも塩基性染料)。
【0030】
染料には直接染料、酸性染料、塩基性染料、建染染料、分散染料、反応染料などのタイプがあるが、セルロース系繊維に良く用いられる染料としては塩基性染料、直接染料、建染染料が挙げられる。塩基性染料は、イオン間のクーロン力、水素結合、ファン・デル・ワールス力などにより被染色物に結合し、直接染料は、水素結合、ファン・デル・ワールス力などで被染色物に結合する。中でも染着力が大きく、色調が鮮やかな塩基性染料が好ましい。塩基性染料としては、アゾ染料、ジフェニルおよびトリフェニルメタン染料、アジン染料、オキサジン染料、チアジン染料などが挙げられる。また、直接染料としては、ジトリジン、ジアニシジンからのアゾ染料などが挙げられる。建染染料としてはインジゴ・チオインジゴ系、アントラキノン系、フタロシアニン系に分類されものが挙げられる。
【0031】
青・紫色染料は、青・紫色顔料と同様の作用により、新聞印刷用紙の色相を特定の範囲とし、新聞印刷用紙の表面色の見た目の白さを増強すると共に、不透明度を向上させ、印刷時の裏抜けを防止する。一方、赤色染料は、若干ではあるがb値を下げる効果がある。また青色染料だけではa値がマイナス方向にシフトする、すなわち色相が緑にシフトすることがあるので、赤色染料は、これを抑制して、a値を−1以上7以下の範囲にしやすくする。
【0032】
本発明においては、青色、紫色、または赤色染料を単独で使用してもよく、これらを併用してもよい。しかしながら、不透明度を高めるという観点からは、青色染料を使用することが好ましい。また、原紙層は、必要に応じて、黒、黄などの、青、赤以外の色材を含んでいてもよい。
【0033】
[色材(顔料及び染料)の含有量]
色材の合計量は、各層に含まれる青色顔料および紫色顔料、並びに青色染料および紫色染料の量を合計して求められる。例えば、新聞印刷用紙が、原紙層、サイズプレス層からなる場合、下式によって求められる。
【0034】
【数1】

【0035】
[色材が含有される層]
本発明の色材は、新聞刷用紙のいずれの層に含有されていてもよい。好ましい態様において、本発明の顔料を、新聞印刷用紙を構成する層のいずれか1層に存在させることによって、比較的簡便に新聞印刷用紙を製造することができる。
【0036】
本発明の色材である紫色顔料、青色顔料、紫色染料、青色染料は、原紙中に含有しても良いし、サイズプレス液中に含有しても良いし、顔料塗工層を設けた新聞印刷用紙であれば、顔料塗工層に含有しても良い。また、原紙層および/または塗工層が2層以上の場合、いずれかの層に含有しても良いし、すべての層に含有しても良い。製造しやすいという観点からは、原紙層に含有している方が好ましい。原紙の両面に同一の層(例えば両面に設けられた塗工層)が存在する場合、1の層に色材が存在するとは、前記の両面の塗工層が色材を含むこと、あるいは両面の塗工層のうち、1の塗工層が色材を含むことをいう。
【0037】
一般に新聞印刷用紙は、必要に応じて、澱粉やポリアクリルアミド、ポリビニルアルコールなどの水溶性高分子バインダーの水溶液(サイズプレス液)が原紙上に塗工されてクリア(透明)塗工層が設けられる。そのため、本発明の新聞印刷用紙には、原紙の片面または両面に、クリア塗工層と顔料塗工層のいずれかまたは両方の層を設けてよい。
【0038】
したがって、一つの態様において、本発明の新聞印刷用紙は、原紙層と顔料塗工層を有する塗工紙であり、色材が、原紙層と顔料塗工層の両方または一方に存在する。また別の態様において、本発明の新聞印刷用紙は、原紙層、クリア塗工層、顔料塗工層を有する新聞印刷用紙であり、色材が、原紙層、クリア塗工層、顔料塗工層から選ばれる1つの層または複数の層に存在する。さらに別の態様において、本発明の新聞印刷用紙は、原紙層とクリア塗工層を有する新聞印刷用紙であり、色材が、原紙層とクリア塗工層の両方または一方に存在する。
【0039】
不透明度および白色度は紙表層あるいは紙層内部での光の反射と紙層内における吸収により影響される。JIS P 8149に定められた不透明度は同一試料において、単一シート視感反射率R0の固有視感反射率R∞に対する比率で表した値であり、塗工紙のZ軸方向(厚み方向)において紫・青色顔料がいずこに存在していてもほとんど影響されない。一方、JIS P 8148に定められた白色度は測定される反射率に変化がないように十分な枚数を重ねた試料の反射率(固有反射率)であるため、最外層に含まれる顔料により影響を受ける。このため、紫・青色顔料が複数の層に存在する場合、最外層である塗工層に存在する顔料の比率を高くすることによって効率よく本発明の効果を得ることができる。しかしながら、最外層である塗工層に紫・青色顔料を多く含む場合、青白さが強くなり見た目の白さが低下する場合がある。
【0040】
また、原紙に含まれる脱墨パルプの割合が高い場合は、脱墨パルプに由来する機械パルプ等が多く含まれているので、新聞印刷用紙の不透明度は高いが、そのままでは黄ばんだ色となってしまう。このため、本発明においては、原紙層に紫・青色顔料および/または、青色染料、紫色染料、または赤色染料などの有色染料を含有しても良い。このようにすることで、過度の青白さを抑制でき、また機械パルプを多く含むことに起因する、黄ばんだ色を効率的に抑制することができ、高い不透明度と高い白色度を達成できるので好ましい。
【0041】
新聞印刷用紙の製造
本発明の新聞印刷用紙は公知の方法により製造することができる。例えば、本発明の新聞印刷用紙は、以下に記載する抄紙原料をワイヤーパートにて抄紙し、次いでプレスパート、プレドライヤーパートに供して基紙を製造することができ、次いでコーターパートにて後述する塗工液を基紙上に塗工した後、アフタードライヤーパート、カレンダーパート、リールパート、ワインダーパートなどに供して製造することができる。また、抄紙原料をワイヤーパートにて抄紙し、次いでプレスパート、プレドライヤーパートに供して原紙を製造し、その原紙上に顔料塗工層を設けたり、水溶性高分子(バインダー)をクリア塗工して製造することができる。
【0042】
[原紙]
本発明の新聞印刷用紙は少なくとも原紙層を有する。本発明に用いる原紙は、単層抄きであっても多層抄きであってもよい。本発明の原紙が多層構造を有している場合、原紙を構成する複数の層のいずれか1層以上に色材を含有させればよい。色材を原紙層に存在させるためには、紫色顔料および/または青色顔料または、青色染料、紫色染料、または赤色染料などの有色染料を含有する抄紙原料から原紙を抄紙すればよい。本発明の原紙の製法は特に制限されず、公知の原料を用いて公知の方法によることができる。
【0043】
本発明においては、原紙またはサイズプレス層に青色染料、紫色染料、または赤色染料を含有させてもよい。これらの染料を原紙層に存在させるためには、これらの染料を含有する抄紙原料から原紙を抄紙すればよい。前述のとおり、染料は繊維や顔料等に染着するので、原紙を染色しやすい。また、染料は経時による変色を引き起こすことがあるが、最内層の原紙層に染料を含有させることで、このような変色を抑制できる。さらに、本発明において多くの脱墨パルプを用いる場合、仮に染料による変色が起こっても、見た目の白色度の低下がそれほど大きくならない。原紙層は、前記染料、紫・青色顔料のいずれかを含有してもよいし、前記染料と紫・青色顔料との双方を含有してもよい。
【0044】
したがって、一つの態様において本発明の新聞印刷用紙は、原紙層が前記染料を含み、他の層が紫・青色顔料または紫・青色染料を含む新聞印刷用紙である。また別の態様において本発明の新聞印刷用紙は、原紙層が前記染料と紫・青色顔料とを含み、他の層が紫・青色顔料または紫・青色染料を含む新聞印刷用紙である。
【0045】
新聞印刷用紙における前記染料の含有量、または色材の量は、紫・青色顔料と同様にして求められる。
【0046】
本発明においては、前記染料および/または紫・青色顔料によって、原紙の色相を、JIS P 8150の方法による紫外線を含む測定においてb値が−10以上4未満、より好ましくは−6.0以上−0.5未満に調整すると、より本発明の効果を奏しやすい。したがって、色相が上記範囲に調整された原紙とこの原紙の上に設けられた塗工層等を含む新聞印刷用紙は、新聞印刷用紙における紫・青色顔料の使用量を低減させても、優れた白色度、不透明度を有する。
【0047】
一方、色相が上記範囲外の原紙を用いる場合、所望の白色度を得るためには、塗工層等に含まれる紫・青色顔料の量を多くする必要がある。このため、銘柄抄き変え時に塗工液中の顔料が配管内に残りやすくなり、操業ロスが大きくなりやすい。しかし、色相が上記範囲内の原紙を用いると、このようなことを回避できる。さらに、色相が前記範囲外の原紙を用い、主として原紙層以外の層によって所望の白色度に色相を調整する場合は、新聞印刷用紙の青味が強くなりすぎたときに、見た目の白さの低下や白色度が低下する可能性があり調整が比較的難しいという傾向がある。しかしながら、色相が上記範囲にある原紙を用いると、このようなことを回避しやすい。
【0048】
また、原紙の色相が上記範囲内の原紙であっても、b値が比較的低めの原紙を用いると塗工層等に含まれる紫・青色顔料の量が少なくても所望の色相を得られるため、上記操業ロスなどがより起こりにくい。
【0049】
原紙層のa値は、印刷用紙の白色度や不透明度には大きく寄与しないため、特に限定されないが、通常は、−3以上7未満が好ましく、−3以上5未満がより好ましく、−1以上3未満がさらに好ましい。前記範囲を外れると、新聞印刷用紙の色が白に見えなくなってしまうことがあるため好ましくない。
【0050】
原紙中の前記染料の添加量は特に限定されないが、例えば、全パルプの絶乾重量を基準として、塩基性染料は0.0005〜0.01重量%、直接染料は0.001〜0.05重量%とすることができる。
【0051】
[坪量]
本発明の新聞印刷用紙は、坪量が55g/m未満、好ましくは、坪量が30g/m以上、53g/m未満の軽量のものである。坪量が30g/m未満では所望の白色度および不透明度が得られず、55g/m以上では軽量化とはいい難い。本発明における新聞印刷用紙では、白色度が60%以上および不透明度が88%以上とすることができる。
【0052】
[原料パルプ]
本発明に用いられる原料パルプとしては、特に制限されず従来から新聞用紙の原料パルプとして使用されてパルプを使用でき、例えば、化学パルプ(NBKP、LBKP等)、針葉樹機械パルプ(GP、CGP、RGP、PGW等)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、古紙パルプ(DIP)などの1種または2種以上を使用することができる。中でも、サーモメカニカルパルプが好ましい。本発明の新聞用紙は、カラー化、ビジュアル化などにより印刷面感に優れることが求められ、そのため高い平滑度も必要であるが、原料として機械パルプを用いて抄紙した紙は密度が低く、カレンダー処理を行うと密度の低い部分にカレンダー効果が強く発現しやすく、光沢ムラを生じることがある。これに対し、サーモメカニカルパルプは他のパルプに比べて密度が低く、比散乱係数が高いことから、他のパルプに比べ高い不透明度を得ることができる。
【0053】
[填料]
本発明の新聞用紙に含有される填料としては、特に制限されず製紙分野で公知のものを使用でき、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物、ホワイトカーボン、クレー、無定形シリカ、タルク、二酸化チタン等を、1種または2種以上使用することができる。また、製紙スラッジや脱墨フロス等を原料とした再生填料も使用することができる。中でも、安価でかつ光学特性に優れていることから、軽質炭酸カルシウムが好ましい。
【0054】
特に本発明においては、紙の不透明度や白色度を比較的低コストで向上させることができるため、炭酸カルシウムを内添填料として配合することが好ましい。不透明度や白色度を高めるという観点から、本発明の紙は、顔料塗工層を設けない場合、炭酸カルシウム含量が5重量%以上であることが好ましく、6重量%以上であることがより好ましく、7重量%以上であることがさらに好ましい。顔料塗工層を設けた場合は、原紙の炭酸カルシウム含量が5重量%以上であることが好ましく、6重量%以上であることがより好ましく、7重量%以上であることがさらに好ましい。
【0055】
軽質炭酸カルシウムとしては、形状がロゼッタ型、紡錘型、柱状型が好ましい。また、平均粒子径は0.1〜20μm、比表面積は3〜20m/gが好ましい。この範囲であることにより、高配合しても印刷時に紙粉堆積が少なく、紙中灰分を高くすることが可能となるため、印刷時の裏抜けを改善することができる。
【0056】
本発明において、填料の配合量は、少なすぎると得られる用紙の白色度と不透明度の向上が十分ではないため、前記軽質炭酸カルシウムを含有し、紙中灰分が15固形分重量%以上となるように添加することが好ましい。
【0057】
通常、DIPによって持ち込まれる灰成分の中には、炭酸カルシウムの割合が多くを占める場合が多いが、DIPには炭酸カルシウム以外の灰成分も多く含まれ、その割合は新聞古紙、雑誌古紙等の古紙種類や回収状況等により異なるため、品質変動の要因になる。また、灰成分はトナーや異物を含有し、紙面ダートや紙面欠陥の原因となる場合もある。本発明では、DIP由来の灰分を填料として利用することも行うが、DIP中の灰成分を洗浄工程である程度洗い出し、新たにフレッシュな填料として炭酸カルシウムや軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物等を、用紙の紙中灰分が上記の範囲になるように添加する。また、填料の添加量は多すぎても紙力が低下する問題などがあるため、所望の品質に応じて配合すればよいが、20固形分重量%以下程度が適当である。
【0058】
[内添薬品]
更に必要に応じて、内添薬品として、無機凝結剤(バンド等)、有機系凝結剤、乾燥紙力剤(ポリアクリルアミド、カチオン化澱粉等)、湿潤紙力剤(ポリアミドアミンエピクロロヒドリン等)、内添サイズ剤(ロジンエマルジョン、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸等)、歩留り向上剤、消泡剤、スライムコントロール剤、嵩高剤等を適宜添加することができる。
【0059】
[抄紙系]
本発明の新聞印刷用紙は、中性抄紙法で抄造されることが望ましい。酸性抄紙法により製造される酸性紙に対して、中性紙は保存性に優れるとともに、DIPを増配することもできる。集荷された古紙は通常、アルカリ性の薬品のもとで処理されDIPが製造されるため、酸性抄紙の条件下ではDIPに含まれる炭酸カルシウムのカルシウムイオンが硫酸バンドと反応し石膏(硫酸カルシウム)となって析出する問題があり、酸性抄紙でDIPを多量に使用することは難しい。また、中性抄紙によれば、古紙パルプ由来の炭酸カルシウムを有効利用し省資源化を図ることができる。
【0060】
[抄紙機]
抄紙機は特に制限されず製紙分野で公知のものを使用でき、両面脱水機構を有しているギャップフォーマー、ハイブリッドフォーマー、オントップフォーマーなどが望ましいが、これに限定されるものではない。
【0061】
[クリア塗工]
本発明の新聞印刷用紙は、上記のようにして抄紙された原紙に、オフマシンまたはオンマシンにてクリア塗工することができる。クリア塗工とは、顔料を含む塗工液を用いる顔料(ピグメント)塗工に対し、顔料を含まない塗工液を塗工することをいう。クリア塗工は、ピグメント塗工に比べて少ない塗工量で原紙表面をカバーすることが可能であり、得られる新聞用紙の密度も厚さも小さく抑えながら、オフセット印刷適性に優れた新聞用紙とすることができる。
【0062】
クリア塗工用の塗液の主成分としては、表面強度を高める水溶性高分子物質、吸水抵抗性を付与する表面サイズ剤等の表面処理剤を挙げることができ、これらを混合したものでもよい。
【0063】
水溶性高分子物質としては、例えば、澱粉、酵素変性澱粉、熱化学変性澱粉、酸化澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉(例えば、ヒドロキシエチル化澱粉など)、カチオン化澱粉などの澱粉類、ポリビニルアルコール、完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、カルボキシル変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコール、末端アルキル変性ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール類、ポリアクリルアミド、カチオン性ポリアクリルアミド、アニオン性ポリアクリルアミド、両性ポリアクリルアミドなどのポリアクリルアミド類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロースなどのセルロース誘導体、スチレンブタジエン共重合体、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリル酸エステルなどが挙げられる。これらは、単独、または2種類以上混合して用いられる。
【0064】
表面サイズ剤としては、スチレン−マレイン酸系共重合体樹脂、スチレン−アクリル酸系共重合体樹脂、α−オレフィン−マレイン酸系共重合体樹脂、アクリル酸エステル−アクリル酸系共重合体樹脂、カチオン性サイズ剤、アルキルケテンダイマー系サイズ剤などが挙げられるがこれらに制限されるものではない。また、中性抄紙の場合は、カチオン性表面サイズ剤が好ましく用いられる。このようなカチオン性表面サイズ剤としては特に限定されないが、例えば、WO2005/003457号公報、特開2005-105488号公報、特開2005-248338号公報、特開2006-16712号公報、特開2006-16713号公報、特開2006-97179号公報、特開2006-152510号公報、特開2006-161259号公報、特開2006-322093号公報等に記載のカチオン性表面サイズ剤が挙げられる。また、本件出願人が出願中である特願2005-223106、特願2005-312381、特願2006-17607等に記載のカチオン性表面サイズ剤が挙げられる。中でも特に、WO2005/003457号公報、特開2005-016712号公報、特開2005-016713号公報、特開2006-097179号公報などに記載されているカチオン性のスチレン系表面サイズ剤が好ましい。
【0065】
塗工液には必要に応じて、分散剤、可塑剤、pH調製剤、消泡剤、保水剤、防腐剤、接着剤、着色染料、紫外線防止剤等の各種助剤を適宜配合してもよい。
【0066】
クリア塗工液の固形分濃度は、組成や塗工方式等により適宜調整されるが、通常5〜15重量%程度である。
塗工装置としては、ブレードコーター、ゲートロールコーター、サイズプレスコータ、ロッドメタリングサイズプレスなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。中でもゲートロールコーター、ロッドメタリングサイズプレスが好ましい。
塗工量は、水溶性高分子物質は固形分で0.05〜2g/m、表面サイズ剤は固形分で0.01〜0.2g/m程度である。
【0067】
[カレンダー処理]
カレンダー処理方式としては、高温ソフトニップカレンダー、シューカレンダーなどが望ましいがこれに限定されるものではない。特に、高温ソフトニップカレンダーを使用した場合、用紙の密度差に起因するベタ印刷部の着肉ムラを抑制することが可能となり好ましい。処理温度は80〜200℃、線圧は25〜500kN/m程度である。
【0068】
[顔料塗工]
本発明の新聞印刷用紙は、顔料塗工により顔料塗工層を設けることもできる。本発明の新聞印刷用紙における顔料塗工層は、単層であっても多層であってもよい。本発明の顔料塗工層が多層構造を有している場合、顔料塗工層を構成する複数の層のいずれか1層以上に紫色顔料および/または青色顔料を含有させればよい。紫色顔料および/または青色顔料を顔料塗工層に存在させるためには、紫色顔料および/または青色顔料を含有する塗料を用いて顔料塗工を行えばよい。本発明において塗工方法は特に制限されず、公知の原料を用いて公知の方法によることができる。もちろん、本発明においては、このような顔料塗工を施さなくてもよい。顔料塗工を施した場合、紙の灰分は、顔料塗工層に含まれる無機物により高くなるため、本発明のある態様において、10重量%〜50重量%程度が好ましく、20重量%〜45重量%程度がより好ましい。
【0069】
本発明の新聞印刷用紙は、以上のように得られた原紙上に、顔料と接着剤を主成分とする塗工液を塗工・乾燥して塗工層を設けることができる。塗工は、原紙の表面片面でも両面でも良いが、カールしない、表裏の物性が異ならないということから、両面塗工が好ましい。
【0070】
また、顔料塗工する場合、本発明の塗工層に用いる紫・青色顔料以外の顔料としては、顔料としてはカオリン、クレー、エンジニアードカオリン、デラミネーテッドクレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、二酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、珪酸、珪酸塩、コロイダルシリカ、サチンホワイト等の無機顔料;プラスチックピグメント等の有機顔料を適宜選択して使用できる。本発明においては、これらの顔料を紫・青色顔料と区別するために「白色顔料」ということがある。
【0071】
本発明で使用する接着剤(バインダー)について、特に制限はなく、例えば、好ましい接着剤として、スチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系、エチレン・酢酸ビニル系、ブタジエン・メチルメタクリレート系、酢酸ビニル・ブチルアクリレート系等の各種共重合およびポリビニルアルコール、無水マレイン酸共重合体、アクリル酸・メチルメタクリレート系共重合体等の合成系接着剤;カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白等の蛋白質類;酸化澱粉、陽性澱粉、尿素燐酸エステル化澱粉、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉などのエーテル化澱粉、デキストリン等の澱粉類;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等のセルロース誘導体等の通常の塗工紙用接着剤1種類以上を適宜選択して使用することができる。
【0072】
接着剤としてはスチレン・ブタジエン系ラテックス、ポリビニルアルコール等の合成接着剤;澱粉類、セルロース誘導体等を便宜選択して使用できる。顔料と接着剤の割合は公用の範囲で使用することができる。
【0073】
本発明で用いる塗工液には、顔料と接着剤の他に、必要に応じて、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤などの各種助剤を適宜使用できる。
【0074】
[塗工液の調整]
本発明において、塗工液の調製方法は特に限定されず、コータの種類によって適宜調整できる。ブレード方式のコータを用いる場合は、塗工液の固形分濃度は40〜70重量%が好ましく、より好ましくは60〜70重量%である。塗工液粘度は60rpmで測定したB型粘度が500〜2000mPa・sの範囲であることが好ましい。
【0075】
[塗工方法・塗工機]
本発明においては、通常用いられるコータであればいずれを用いても良い。オンマシンコータでもオフマシンコータでも良く、オンマシンコータであれば、サイズプレスコータ、ゲートロースコータなどのロールコータ、ブレードコータ、ブレードメタリングサイズプレスコータなどのコータを使用できる。塗工速度は、特に限定されないが、現在の技術ではブレードコーターでは500〜1800m/分、サイズプレスコータでは500〜3000m/分が好ましい。
【0076】
本発明における塗工液の塗工量は、片面あたり固形分で2〜15g/mが好ましく、5〜12g/mがより好ましく、5〜10g/mがさらに好ましい。本発明においては、塗工量が少なくても、より不透明度を向上させる効果が発揮できる。
【0077】
本発明において、湿潤塗工層を乾燥させる方法に制限はなく、例えば蒸気過熱シリンダ、加熱熱風エアドライヤ、ガスヒータードライヤ、電気ヒータードライヤ、赤外線ヒータードライヤ等各種の方法が単独もしくは併用して用いることができる。
【0078】
本発明においては、紙表面にカレンダー処理を施すこともできるが、カレンダー装置の種類と処理条件は特に限定はなく、金属ロールから成る通常のカレンダーやソフトニップカレンダー、高温ソフトニップカレンダーなどの公用の装置を適宜選定し、品質目標値に応じて、これらの装置の制御可能な範囲内で条件を設定すればよい。
新聞印刷用紙
[灰分]
本発明の新聞印刷用紙の灰分は8重量%以上であることが好ましい。特に、灰分が10重量%以上であることが好ましく、12重量%以上がより好ましく、15重量%以上がさらに好ましい。灰分の上限は特にないが、紙の強度や操業性を考慮すると、40重量%以下であることが好ましい。
【0079】
一般に灰分は、紙に含まれる無機物の量を示すため、基本的に紙中に含まれる填料の量を反映する。紙の灰分は、紙料に添加されるフレッシュな填料に由来するものと、DIP(古紙パルプ、脱墨パルプ)などのパルプ原料によって持ち込まれるもので構成される。DIPによって持ち込まれる灰分としては、炭酸カルシウムが比較的多いが、炭酸カルシウム以外の無機成分も含まれ、炭酸カルシウムと他の無機成分との割合は、新聞古紙や雑誌古紙などの古紙の種類や回収状況などによって異なる。本発明において灰分は、JIS P 8251に規定される紙および板紙の灰分試験方法に準拠し、燃焼温度を525±25℃に設定した方法で測定される。
【0080】
新聞印刷用紙の灰分が5重量%より少ないと不透明度が十分に向上しないことがある。
【0081】
[色相]
本発明の印刷用紙の色相は、JIS P 8150に規定される紫外線を含む測定においてb値が−10以上4未満であるが、b値が−6以上−1未満であることがより好ましい。このようにb*値を比較的低くすることによって、新聞印刷用紙の見た目の白さを増強できるとともに、不透明度を向上させ、印刷時の裏抜けを防止することができる。また、同測定におけるa値は、印刷用紙の白色度や不透明度には大きく寄与しないため、特に限定されないが、通常は、−3以上7未満が好ましく、−3以上5未満がより好ましく、−1以上3未満がさらに好ましい。前記範囲を外れると、印刷用紙の色が白に見えなくなってしまうことがあるため好ましくない。
【0082】
[不透明度]
本発明の新聞印刷用紙の不透明度は88%以上が好ましく、90%以上がより好ましい。
【0083】
[白色度]
本発明の新聞印刷用紙の白色度は60%以上が好ましく、65%以上がより好ましい。
【0084】
[密度]
本発明の新聞印刷用紙の密度は0.5〜0.80g/cmが好ましく、0.60〜0.70g/cmがより好ましい。
【実施例】
【0085】
以下、本発明を実施例及び比較例をあげてより具体的に説明するが、当然のことながら、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の部および%は特に断りのない限り重量部および重量%を示す。
【0086】
<評価方法>
実施例、比較例で得られた新聞用紙について、23℃、50%RHの条件下で調湿後、以下の項目について評価を行った。その結果を表1に示す。
(ア)坪量:JIS P 8124に準じて測定した。
(イ)紙厚、密度:JIS P 8118に準じて測定した。
(ウ)紙中灰分:JIS P 8251に準じて測定した。
(エ)白色度:JIS P 8148に準じて測定した。
(オ)不透明度:JIS P 8138に準じて測定した。
【0087】
(カ)裏抜けの評価
東芝オフセット輪転機を用い、、印刷速度700rpmで4色印刷(墨・藍・紅・黄)を行い、1万部印刷時の墨ベタ面を裏面から目視して、次の基準で評価した。
【0088】
東芝オフセット輪転機を用い
◎:全く問題なし
○:問題なし
△:やや裏抜けが見られる
×:裏抜けが目立つ
【0089】
<新聞用紙の製造>
[実施例1]
原料パルプとして、LKP(ろ水度CSF=400ml、白色度86%)、新聞晒DIP(ろ水度CSF=230ml、白色度67%)、、NKP(ろ水度CSF=570ml、白色度82%)を45:45:10の配合割合で混合したパルプスラリーに、填料として軽質炭酸カルシウム(平均粒子径4.3μm、白色度95%)を目標紙中灰分が19重量%となるように添加し、色材として青色染料であるアイゼンベーシックバイオレット64(保土ヶ谷化学工業(株))、赤色染料としてアストラフロキシンGリキッド(ケミラ社製)を添加し、ギャップフォーマ型抄紙機を用いて抄速1000m/分で、坪量が52g/mになるように新聞用紙原紙を抄造した。次いでオンマシンのゲートロールコーターにて、ヒドロキシエチル化デンプンを塗工量がフェルト面、ワイヤー面ともに0.5g/mとなるように塗布し、さらにオンマシンの高温ソフトニップカレンダーにて、密度0.69g/cmとなるように処理を行い、新聞印刷用紙を得た。
【0090】
[実施例2]
オンマシンのゲートロールコーターにて、ヒドロキシエチル化デンプンおよび前記ヒドロキシエチル化デンプン100部に対して、色材として紫色顔料(SAバイオレットC12896 御国色素(株)社製)0.03部を添加した以外は、実施例1と同様にして新聞印刷用紙を得た。
【0091】
[比較例1]
原料パルプとして、新聞晒DIP(ろ水度CSF=230ml、白色度67%)、TMP(ろ水度CSF=80ml、白色度72%)、NKP(ろ水度CSF=570ml、白色度82%)を25/45/30の配合割合で混合したパルプスラリーに、填料として軽質炭酸カルシウム(平均粒子径4.3μm、白色度95%)を目標紙中灰分が11重量%となるように添加し、色材として青色染料であるアイゼンベーシックバイオレット64(保土ヶ谷化学工業(株))、赤色染料としてアストラフロキシンGリキッド(ケミラ社製)を添加し、ギャップフォーマ型抄紙機を用いて抄速1000m/分で、坪量が52g/mになるように新聞用紙原紙を抄造した。次いでオンマシンのゲートロールコーターにて、ヒドロキシエチル化デンプンを塗工量がフェルト面、ワイヤー面ともに0.5g/mとなるように塗布し、さらにオンマシンの高温ソフトニップカレンダーにて、密度0.65g/cmをなるように処理を行い、新聞印刷用紙を得た。
【0092】
【表1】

【0093】
表から明らかなように、青色顔料、紫色顔料、青色染料、紫色染料のいずれかを1種類以上含有する本発明の新聞印刷用紙は、高い白色度と高い不透明度を併せ持ち、印刷時、特にオフセット印刷時の裏抜けが目立たず、色彩再現幅が広い、優れた新聞印刷用紙である。一方、色相が本発明の範囲を満たさない比較例は、見た目の白さ、印刷時の裏抜け等の点で本発明の実施例に劣っていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫色顔料、青色顔料、紫色染料、および青色染料から選ばれる一つ以上を含有する新聞印刷用紙であって、新聞印刷用紙のJIS P 8150の方法によって測定される紙の色相が、紫外線を含む測定においてb値が、−10以上4未満であり、白色度が60%以上であり、JIS P 8149の方法によって測定される不透明度が88%以上である、新聞印刷用紙。
【請求項2】
前記新聞印刷用紙の坪量が、55g/m以下である、請求項1に記載の新聞印刷用紙。
【請求項3】
填料として、軽質炭酸カルシウムを含有することを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の新聞印刷用紙。
【請求項4】
紙中灰分が15固形分重量%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の新聞印刷用紙。
【請求項5】
クリア塗工後に高温ソフトニップカレンダーにて処理されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の新聞印刷用紙。
【請求項6】
顔料塗工後に高温ソフトニップカレンダーにて処理されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の新聞印刷用紙。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2012−132134(P2012−132134A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287427(P2010−287427)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【Fターム(参考)】