説明

新聞巻取紙およびその評価方法

【課題】傾斜紙庫で新聞巻取紙を取り扱う場合でも、紙層の剥離や断紙等の発生を防ぐことができる新聞巻取紙、および剥離や断紙等が発生する可能性を簡便に評価することができる新聞巻取紙の評価方法を提供する。
【解決手段】傾斜紙庫に格納した互いに隣接する新聞巻取紙が接触面において摩擦によって剥離し難いように、紙の厚さ方向にみた繊維の配列が新聞巻取紙の自由端側表面から巻取り方向に向かって埋没するように配列させる。
新聞巻取紙を形成する新聞用紙の紙面に粘着性物質を接着させた状態から該粘着性物質を上方に引き剥がし、紙の縦方向(MD方向)に沿って該新聞用紙の紙面に紙層の剥離を生じさせ、剥離長を測定し評価を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新聞巻取紙および新聞巻取紙の評価方法、就中、傾斜紙庫で取扱う際に剥離や断紙を起こすことがない新聞巻取紙およびその評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
新聞印刷工場では、納入された新聞巻取紙を印刷する前に、一時的に紙庫に保管し、順次搬出・使用される。紙庫には、床が水平である水平紙庫、新聞巻取紙が自重で転がるよう床を傾斜させた傾斜紙庫、多段式のラックに新聞巻取紙を1本ずつ格納する立体紙庫等がある。
図1は新聞巻取紙を傾斜紙庫に保管している状態を示す概略図である。
傾斜紙庫には斜面に沿って複数の新聞巻取紙が並べられ、斜面の最下方に位置するもの、つまり、搬出口に最も近い位置にあるものから順次搬出コンベア等に乗せられて輪転機に送られるようになっている。
そして、最下方に位置するものが搬出された後に傾斜紙庫に残った新聞巻取紙は斜面を利用して自重で転がり、傾斜面の途中に設置されたストッパーによって停止する。
この時、斜面には複数本の新聞巻取紙が保管されており、一本搬出する毎に、その上方に位置する複数の新聞巻取紙は互いに接触しながら転がり降りることになり、かつ、図1に矢印で示すように接触面における隣り合う新聞巻取紙同士は上から押されながら互いに擦れ合い、転がり降りることになる。
このため、新聞巻取紙同士が互いに接している部分には、上から押されることによる剪断力或いは擦れ合うことによる摩擦力や引張り力等、複雑な負荷がかかり、紙面に紙層の剥離が生じたり、甚だしきは紙が切断してしまう断紙に至ることさえある。
しかも、近年、新聞用紙においては、紙継ぎ回数を減少させるために新聞巻取紙の連数を増加させる傾向にあり、その重量も増加している。そのため新聞巻取紙同士の接触面に加わる摩擦力や剪断力は益々が大きくなり、傾斜紙庫における新聞巻取紙の紙層の剥離や断紙の発生頻度は上がっている。特に印刷から配達までのスピードが求められる新聞においては印刷工程におけるトラブルは致命傷になり、かかるトラブルの多発は是が非でも避けなければならない。
【0003】
このため、従来より種々の対策が提案されている。例えば、新聞用紙の原料に摩擦係数上昇剤を内添し紙同士の摩擦係数を調整して新聞巻取紙の衝突による破れを防止する方法(特許文献1)、ワインダーテンションを調整し新聞巻取紙の巻取端部でのバラケやロール(新聞巻取紙)同士の衝突時の破れが生じないように巻き硬さを調整する方法(特許文献2)等が提案されている。
また、新聞用紙の紙面に粘着異物が存在すると新聞巻取紙が互いに接触した時、粘着異物を起点とした剥離が発生する。粘着異物を除去する方法として、古紙脱墨パルプ(DIP)の製造時に粘着異物除去剤を加える方法(特許文献3)、DIP製造時に高密度化剤と凝集剤を加える方法(特許文献4)等も提案されている。
更に、新聞用紙の表面にシリカゾルまたはコロイダルシリカを主体とする無機系表面処理剤を塗工して粘着異物を被覆する方法(特許文献5)も提案されている。
しかし、何れの方法によっても依然として傾斜紙庫における剥離等の発生を完全に抑えることはできていないのが実態である。
【0004】
前述した通り、傾斜紙庫における紙層の剥離や断紙対策として従来から行われてきた、薬品の添加による紙同士の摩擦係数の調整(特許文献1)や、巻き硬さの調整(特許文献2)による新聞巻取紙同士の衝突時の断紙の防止、或いは、紙面の粘着異物の除去(特許文献3、4)や無機系表面処理剤で粘着異物を被覆すること(特許文献5)による対策の効果には限界があったことから、傾斜紙庫における剥離や断紙等の発生原因には新聞巻取紙同士の接触面にかかる複雑な負荷は勿論、新聞巻取紙自体の性状も影響しているのではないかと推測した。
即ち、例えば、新聞巻取紙は紙庫に保管している間に紙が空気中の水分を吸収して表面に吸湿皺等が発生する可能性がある。この吸湿皺等によって部分的かつ微妙な凸凹が発生した新聞巻取紙を傾斜紙庫で取扱う場合、皺等で部分的に盛り上がった箇所があると、そこに集中的に力が加わり、大きな摩擦力や引張り力が加わり剥離や断紙が発生するのではないかと推測した。
【0005】
【特許文献1】特開平5−25794号
【特許文献2】特開2005−133262号
【特許文献3】特開2003−20584号
【特許文献4】特開2002−201579号
【特許文献5】特開2001−64894号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、傾斜紙庫にて新聞巻取紙を取扱う場合にも剥離や断紙等の発生を防ぐことができる新聞巻取紙、および剥離等が発生する可能性を簡便に評価することができる新聞巻取紙の評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の新聞巻取紙は、隣接する新聞巻取紙が接触面において摩擦によって繊維の端部が引き起こされて剥離し難いように、紙の厚さ方向に見た繊維の配列が新聞巻取紙の自由端側表面から巻取り方向に向かって埋没するように配列させたものである。
また、本発明は、新聞巻取紙を形成する新聞用紙の紙面に粘着性物質を接着させ、該粘着性物質を、新聞巻取紙の自由端側から固定端側へ向かう方向に引き剥がしたときの剥離長lと、固定端側から自由端側へ向かう方向に引き剥がしたときの剥離長mを、l>mとなるようにし、好ましくはm/lが1/3以下となるようにしたもの、また、剥離長mが60mm以下となるようにしたものである。加えて、前記粘着性物質を接着させる紙面が、抄紙工程においてワイヤーパートからプレスパートに新聞用紙が移動する際にワイヤーに接する面となるように巻き取るとさらに好ましい。
更に、本発明の新聞巻取紙の評価方法は、新聞巻取紙の紙面における剥離の発生を評価する方法であって、新聞巻取紙を形成する新聞用紙の紙面に粘着性物質を接着させた状態から該粘着性物質を上方に引き剥がし、紙の縦方向(MD方向)に沿って該新聞用紙の紙面に紙層の剥離を生じさせ、剥離長を測定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の新聞巻取紙によれば、傾斜紙庫において新聞巻取紙の剥離や断紙の発生を抑えることができる。
また、本発明の新聞巻取紙の評価方法によれば、新聞巻取紙の剥離や断紙の発生の可能性を簡単かつ直接的に評価できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明の新聞巻取紙は、剥離や断紙の防止効果を向上させたものであるが、本発明の新聞巻取紙を説明する前に、新聞用紙の性質について簡単に説明する。
【0010】
図4は、新聞用紙を抄造するツインワイヤーを備えた抄紙機の概略説明図の一例である。新聞用紙は、パルプを主原料とする紙料から形成されるのであるが、図4に示すように、まず、ワイヤーパートにおいて紙料と水が混合されたパルプスラリーが、スライスから一対の網(ワイヤー)によって形成されるニップ部Nに噴き付けられる。すると、対向する面間に紙料を挟んだ状態で一対のワイヤーが走行するので、紙料はワイヤーの表面に沿って連続するシート状に形成される。形成されたパルプシート(湿紙)は、プレスパートにおいて脱水され、次いでドライヤーパートにおいて乾燥される。その後、表面に塗工液を塗工、乾燥し、続いてカレンダーパートにて表面の平滑性、紙厚等の調整が行われ、処理されたシートはリールパートにてスプールロールに巻き取られて親巻きとなる。
そして、一旦スプールロールに巻き取られた親巻きはワインダーパートで目的の幅に切断され、客先に応じた巻径に巻取り所定の新聞巻取紙に仕上げられる。
【0011】
そして、一般的に紙は、横軸にスライスから噴出するパルプスラリーの速度(J)を抄紙機のワイヤー速度(W)で除したJ/W比を、縦軸に紙の縦方向(抄紙機上での紙の進行方向、以下MD方向という)の引張り強度(T)を横方向(MD方向と直行する方向、以下CD方向という)の引張り強度(Y)で除したT/Yをとった場合、図3に示すように、ランダム点(R)を境にしてT/Y比が大きくなることが知られている。
これはJ/W比を加減した場合、ランダム点(R)を境にしてMD方向への繊維の配向が進み、繊維配向比が大きくなるのが主因と考えられる。
即ち、J/W比がランダム点(R)を境にして大きくなっても小さくなってもMD方向の引張り強度は増加する。
また、この時、繊維(パルプ)の向きを紙の厚さ方向に見た場合、J/Y比がランダム点(R)より大きくなると、ワイヤー速度(W)に対するパルプスラリー速度(J)が大きくなるのでニップ部Nに押し付けられた紙料はワイヤーに面する部分がワイヤーとの摩擦で引き留められ、紙の内部の紙料が下流に向かって押される押し地合となるため、繊維(パルプ)は図5(A)に示すように表面から下流側中央に向かって埋没するように配列する。(以下、MD方向の繊維と区別するため、紙の厚さ方向に見た繊維の並びを「配列」と言う)
逆に、J/Y比がランダム点(R)より小さくなると、ワイヤー速度(W)に対するパルプスラリー速度(J)が小さくなるので、ニップ部Nにおいて紙料はワイヤーに面する部分がワイヤーとの摩擦で引っ張られ、紙の内部の紙料が上流に向かって引き止められる引き地合となるため、繊維パルプは図5(B)に示すように表面から上流側中央に向かって埋没するように配列することになる。
【0012】
本発明者らは、繊維パルプの向きを紙の厚さ方向に見た場合の繊維配列と剥離の関係に着眼した。
前述した如く、例えば図5(A)のように繊維が配列している場合、新聞巻取紙を形成する新聞用紙1の紙面において、図中矢印Aの方向に力が加わると、繊維が起き上がるように力が加わるため、次々と連鎖的に繊維が起き上がり紙面から離脱されるので剥離が生じやすく、剥離が生じた場合の剥離長も長くなる。
一方、新聞用紙1の紙面において、図中矢印Bの方向に力が加わると、繊維はその軸方向に引っ張られるだけであり、連鎖的に繊維が紙面から離脱する現象が生じないので、剥離は生じ難く、剥離が発生した場合の剥離長も短くなる。
この剥離長は短くなれば剥離の発生が断紙につながる可能性が低くなり、この傾向は、繊維配列の程度が大きくなるほど強く現れる。
【0013】
一般的に、新聞巻取紙は、新聞巻取紙の巻取り方向(新聞巻取紙の自由端側から固定端側へ向かう方向)に回転しながら転がり降りるように傾斜紙庫に保管されている(図1参照)。
従って、本発明は、隣接する新聞巻取紙が接触面において摩擦によって繊維の端部が引き起こされて剥離し難いように、紙の厚さ方向に見た繊維の配列が新聞巻取紙の自由端(新聞巻取紙の巻取りの最終端)側表面から巻取り方向に向かって埋没するように繊維を配列させたことを特徴としている。
そして、繊維を新聞巻取紙の自由端側表面から巻取り方向に向かって埋没するように配列させるためにはJ/W比、パルプスラリーの噴出し角度等を調整する。
従って、抄紙機で抄造した紙は一旦スプールロールで親巻きにされ、ワインダーで巻き戻す形となるので、通常、紙の裏面が巻取紙の外面となり、抄紙工程における下流に位置する部分が巻取紙の自由端となるので、紙料がワイヤーに面する部分でワイヤーとの摩擦で引っ張られ、紙の内部の紙料が上流に向かって引き止められる引き地合となるように抄造する。
勿論、巻き替え等により新聞巻取紙の自由端と固定端を逆転させる場合は予め繊維が押し地合となるようにJ/W比、パルプスラリーの噴出し角度等を調整する。
ここで、抄紙工程においてワイヤーパートからプレスパートに新聞用紙が移動する際にワイヤーに接する面を新聞用紙の裏面といい、その反対面、つまり、プレスパートに移動する際にフェルトに接する面を表面という。図4の場合、No.2ワイヤーに接する面を裏面、No.1ワイヤーに接する面を表面という。
【0014】
また、本発明では、前記繊維の配列の度合いによって剥離強度や引張り強度が変化するので、繊維の配列の度合いを調整する。
図2に示すように、新聞巻取紙を形成する新聞用紙1の紙面に例えば粘着テープ等のような片面又は両面に粘着剤の層を有する粘着性物質10を接着させた状態から、この粘着性物質10を上方に引き剥がし、MD方向に沿って新聞用紙1の紙面に紙層の剥離を生じさせた場合、新聞巻取紙の自由端側から固定端側へ向かう方向に剥離を生じさせたときの剥離長をl、新聞巻取紙の固定端側から自由端側へ向かう方向に剥離を生じさせたときの剥離長をmとしたとき、l>mとなるような繊維配列となるようにしており、かつ、その繊維配列は、好ましくはm/lが1/3以下であることが望ましい。
また、図2に示すように例えば粘着テープ等のように片面又は両面に粘着剤の層を有する、幅18mmの粘着性物質10を接着させた状態から、この粘着性物質10を上方に引き剥がし、MD方向に沿って新聞用紙1の紙面に紙層の剥離を生じさせた場合、新聞巻取紙の自由端側から固定端側へ向かう方向に剥離を生じさせたときの剥離長をl、新聞巻取紙の固定端側から自由端側へ向かう方向に剥離を生じさせたときの剥離長をmとしたとき、l>mとなるような繊維配列を有する新聞巻取紙であり、且つmが60mm以下となるような繊維配列としている。
【0015】
なお、m/lが1/3以下となるように繊維配列を調整する場合も、剥離長mが60mmとなるように繊維配列を調整する場合も、新聞用紙1の裏面が新聞巻取紙の外面となるよう新聞用紙1を巻き取ることが好ましい。それは、紙料がワイヤーパートからプレスパートに移動するまでの間、No.1ワイヤーに接する面(表面)では繊維がワイヤーに固定されておらず、繊維の乱れが生じるのに対し、No.2ワイヤーに接する面(裏面)ではワイヤー面に繊維が固定されており、繊維配列が安定しているためである。
【0016】
つぎに、新聞巻取紙の評価方法を図2に基づいて説明する。
まず、図2に示すように、新聞巻取紙を形成する新聞用紙1において新聞巻取紙の外面に位置する紙面に粘着テープ等の粘着性物質10をMD方向に沿って貼り付ける。
ついで、粘着性物質10における新聞用紙1の固定端側の一端10Bを新聞用紙1の紙面から上方に引き剥がす。このとき、新聞用紙1が粘着性物質10とともに持ち上げられないように固定しておく。
すると、新聞用紙1の紙面には、粘着性物質10の一端10Bから他端10Aに向かって紙層の剥離が発生する(図2(A))。
そして、剥離が生じた部分において、図2(A)におけるP2点からP1点までの長さを測定すれば、新聞用紙1の剥離長mを測定することができる。
【0017】
この方法によれば、新聞巻取紙の剥離に対する耐久性を、簡単かつ直接的に評価できる。そして、印刷時に新聞巻取紙にかかる摩擦力の方向に沿った評価となるので、より現実に即した剥離評価方法であるといえる。
なお、剥離長mを同じ紙面で複数回測定し、その平均値を使用して評価すれば、より評価精度を高めることができる。
【0018】
つぎに、粘着性物質10をMD方向に沿って再び新聞用紙1の同じ紙面に貼り付け、今度は、粘着性物質10における新聞用紙1の自由端側の一端10Aを新聞用紙1の紙面から上方に引き剥がす。このとき、新聞用紙1が粘着性物質10とともに持ち上げられないように固定しておく。すると、新聞用紙1の紙面には、粘着性物質10の一端10Aから他端10Bに向かって紙層の剥離が発生するから、剥離が生じた部分において、図2(B)におけるP2点からP1点までの長さを測定すれば、新聞用紙1の剥離長lを測定することができる。
最後に剥離長mと剥離長lの比率を算出する。
【0019】
この場合には、一方向だけから剥離を生じさせた剥離長によって評価する場合に比べて粘着性物質等に起因した評価の誤差を相殺できるので、剥離や断紙に対する新聞巻取紙の耐久性の評価精度をより高めることができる。
とくに、剥離長mおよび剥離長lをそれぞれ複数回測定し、各剥離長m、lの平均値を使用して剥離長mと剥離長lの比率を算出すれば、より評価精度を高めることができる。
【実施例】
【0020】
J/W比、パルプスラリーがワイヤーに噴き付けられる角度等を操作して、紙面の繊維配列を押し地合又は引き地合にし、繊維配列の程度を調整した新聞用紙を抄造した。そして、ワインダーパートにて幅、巻径を調整した新聞巻取紙を得た。ここで、抄紙工程における新聞用紙の下流に位置する部分が新聞巻取紙の自由端となる場合を順巻き、上流に位置する部分が新聞巻取紙の自由端となる場合を逆巻きとする。また、新聞巻取紙の外面は新聞用紙の裏面にしたものと表面にしたもの両方を用意した。そして、上記の新聞巻取紙の評価方法によって算出される、剥離長の比m/l及び剥離長mと実際の剥離発生との関係を比較した。その結果を図6の表1に示す。
実際の剥離発生の評価は、新聞巻取紙を納入し剥離発生率が2.5%未満の場合を合格とし剥離発生率が2.5%以上の場合を不合格とした。
なお、本実施例において、本発明による剥離評価は、新聞巻取紙を形成する新聞用紙の紙面を評価している。
【0021】
剥離長の測定は、以下の手順で行った。
新聞巻取紙よりサンプルを採取する。
18mm×100mmのメンディングテープ(住友スリーエム株式会社:製品名スコッチメンディングテープ:製品番号Cat No.810-1-18)を、サンプルの縦方向(MD方向)に沿って貼る。
サンプルとテープとの間に存在する空気を除去するために、貼り付けられたテープを、テープの色が白色から透明になるまで均一な力で押さえる。
サンプルの剥離開始点(テープの先端位置)に印を付ける。
印を付けていない方からテープを5cm程度勢いよく剥がし、サンプルに剥離を発生させる。
テープを垂直に保ったまま、さらに剥がす。この時、テープで引っ張られたサンプルが浮き上がらないように、剥離させる部分に沿って重りをのせ、サンプルを固定させる。
剥がれきった場所(図2ではP2点)から印(図2ではP1点)までの長さを測定し、記録する。
以上の作業を3回行い、測定値の平均を剥離長とする。
【0022】
図6に示すように、実施例1〜12ではすべて剥離長mは60mm以下、m/lはすべて1/3以下である。そして、剥離発生率はすべて2.5未満となっている。
一方、比較例1〜12ではすべて剥離長mは60mmよりも大きく、m/lはすべて1/3(0.33)より大きい。そして、剥離発生率はすべて2.5以上となっている。
したがって、m/lが1/3前後で、剥離の生じやすさが大きく変化していることから、剥離長mと剥離長lの比を基準とした新聞巻取紙の剥離評価が可能であり、かつ、その基準値となるm/lが(省略)1/3であることが確認できる。また、剥離長mが60mm前後で、剥離の生じやすさが大きく変化していることから、剥離長mを基準とした剥離評価が可能であり、かつ、その基準が60mmであると判断できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】傾斜紙庫に貯留されている新聞巻取紙の概略図である。
【図2】本発明の評価方法によって、紙層の剥離を生じさせた新聞用紙1の説明図であって、(A)は新聞巻取紙の固定端側から自由端側へ、(B)は新聞巻取紙の自由端側から固定端側へ剥離が生じた場合を示している。
【図3】J/W比とT/Y比の関係を表したグラフである。
【図4】新聞用紙を抄造する抄紙機の概略説明図の一例である。
【図5】抄紙工程における新聞用紙の繊維配列の説明図である。(A)は押し地合で抄造された場合を、(B)は引き地合で抄造された場合を示している。
【図6】本発明の新聞巻取紙の評価方法によって新聞巻取紙を評価した結果を表にしたものである。
【符号の説明】
【0024】
1 新聞用紙
10 粘着性物質

【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾斜紙庫に格納した互いに隣接する新聞巻取紙が接触面において摩擦によって剥離し難いように、紙の厚さ方向に見た繊維の配列が新聞巻取紙の自由端側表面から巻取り方向に向かって埋没するように配列させた
ことを特徴とする新聞巻取紙。
【請求項2】
新聞巻取紙を形成する新聞用紙の紙面に粘着性物質を接着させ、該粘着性物質を、新聞巻取紙の自由端側から固定端側へ向かう方向に引き剥がしたときの剥離長lと、固定端側から自由端側へ向かう方向に引き剥がしたときの剥離長mを、l>mとなるようにしたことを特徴とする新聞巻取紙。ただし、l、mはともに新聞巻取紙の外面に位置する紙面において測定した値である。
【請求項3】
m/lが1/3以下となるようにした
ことを特徴とする請求項2記載の新聞巻取紙。
【請求項4】
剥離長mが60mm以下となるようにした
ことを特徴とする請求項2記載の新聞巻取紙。
【請求項5】
前記粘着性物質を接着させる紙面が、抄紙工程においてワイヤーパートからプレスパートに新聞用紙が移動する際にワイヤーに接する面である
ことを特徴とする請求項2〜4いずれか記載の新聞巻取紙。
【請求項6】
新聞巻取紙を形成する新聞用紙の紙面に粘着性物質を接着させた状態から該粘着性物質を上方に引き剥がし、紙の縦方向(MD方向)に沿って該新聞用紙の紙面に紙層の剥離を生じさせ、剥離長を測定する
ことを特徴とする新聞巻取紙の評価方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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