説明

新聞用紙

【課題】填料をパルプ繊維間へ緻密に充填することにより、パルプ繊維間への填料固着性が高く優れた不透明度及び吸油性を備え、印刷時の紙紛発生が少なく印刷作業性に優れ、加えて紙粉落ちが少なく製造工程におけるマシン系内の汚れを低減するとともに、マシンの操業性を向上させることができる新聞用紙の提供を目的とするものである。
【解決手段】本発明は、パルプを主原料とし、填料を内添する新聞用紙であって、上記填料として、製紙スラッジを主原料として得られる再生粒子を含有し、この再生粒子として体積平均粒子径aを有する再生粒子Aと、体積平均粒子径aより大きい体積平均粒子径bを有する再生粒子Bとが用いられていることを特徴とする。上記再生粒子Aの体積平均粒子径aが1μm以上3μm未満であり、上記再生粒子Bの体積平均粒子径bが3μm以上10μm以下であるとよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新聞用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、新聞用紙の不透明度や強度等の向上を目的として、太い繊維を有する機械パルプ等のバージンパルプを原料パルプに加えることが多用されている。しかし、環境問題に配慮した資源のリサイクルが求められている近年では、一度頒布された新聞や雑誌等を回収して得られる古紙パルプを高い比率で再利用することが望まれているため、新聞用紙の原料に上記バージンパルプを用いることは上記リサイクル性に反することとなる。一方、再生紙の普及に伴って、古紙パルプは繰り返し再利用されるため、再利用過程における古紙パルプの破断は避けられず、微細繊維が多く強度も低下している。このような古紙パルプを新聞用紙に高配合させることは、上記リサイクル性は満たすものの、紙の強度、不透明度、吸油性等の印刷適性の低下を招き、印刷時の裏抜けや隠蔽性を低下させるとともに印面のかすれや網点の欠落、見栄えが低下する等の不都合を生じやすい。
【0003】
また、製紙業界では、新聞用紙の軽量化に伴う不透明度対策として、填料又は灰分量を増量することで新聞用紙の不透明度を向上させることが試みられている。このような填料としては、例えば、ホワイトカーボン又は炭酸カルシウム等が一般的に用いられている。しかしながら、上記填料の単なる増量では不透明度の向上が頭打ちになるとともに、新聞用紙の強度の低下や紙粉が増加するという問題が生じる。
【0004】
従って、これらの不都合を改善するための一案として、填料の内添方法が改良されている。填料を内添させた紙の製造方法としては、例えば、タルク、クレー又はカオリンにホワイトカーボンを併用して新聞用紙を製造する技術が提案されている(例えば、特許第2960001号公報等参照)。これらの新聞用紙に用いられるホワイトカーボンは、珪酸ソーダを硫酸で中和して得られる微細なものであり、従来のホワイトカーボン粒子より粒径が小さいため光の散乱性が良好で、新聞用紙の不透明性を向上させることができる。
【0005】
また、別の技術としては、主填料としてホワイトカーボンと炭酸カルシウムとを用い、原子吸光分析における灰分の割合が9:1〜5:5になるようにこれらの主填料を含有する新聞用紙が提案されている(例えば、特開2002−201590号公報等参照)。これらの新聞用紙は安価な炭酸カルシウムを使用し、ホワイトカーボンの歩留りが良好なpH6〜8で処理することで、低いコストで製造することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許2960001号公報
【特許文献2】特開2002−201590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来技術で得られる新聞用紙は填料とパルプ繊維との間に空隙が多く存在し、この空隙を光が透過するため不透明度や吸油性等の新聞用紙の印刷特性が十分とは言えない。また、上記従来技術では、パルプ繊維間への填料の固着性が充分ではないため紙粉が発生しやすく、填料の歩留りが悪い等の不都合が存在する。このようにパルプ繊維間への固着性が充分ではない填料は、抄紙からこぼれ落ちて紙粉となりマシン系内に蓄積し、マシンの定期的な清掃作業が必要となるため、操業効率の低下を招来する。
【0008】
本発明は、これらの不都合に鑑みてなされたものであり、パルプ繊維間の空隙に填料を緻密に充填し、パルプ繊維間への填料固着性を高めることにより、新聞用紙の不透明度及び吸油性を向上させて印刷適性を高めることができ、印刷時の紙紛発生が少なく印刷作業性に優れ、また、填料の優れた歩留まり性により、紙粉落ちを低減させてマシン系内の汚れを軽減し、マシン操業性を向上させることができる新聞用紙の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためになされた発明は、
パルプを主原料とし、填料を内添する新聞用紙であって、
上記填料として、製紙スラッジを主原料として得られる再生粒子を含有し、
この再生粒子として、
体積平均粒子径aを有する再生粒子Aと、
体積平均粒子径aより大きい体積平均粒子径bを有する再生粒子Bと
が用いられていることを特徴とする。
【0010】
当該新聞用紙は、内添する填料として再生粒子A及び再生粒子Bを用い、この再生粒子Aが体積平均粒子径aを有し、再生粒子Bが体積平均粒子径aより大きい体積平均粒子径bを有していることから、再生粒子Bでは埋められないパルプ繊維間の空隙に粒径の小さな再生粒子Aが入り込み、パルプ繊維間の空隙や紙表面の凹凸がより緻密に埋められることで、不透明度及び吸油性が高く印刷特性に優れる新聞用紙を得ることができる。更に、このような2種類の体積平均粒子径を有する再生粒子がパルプ繊維間の空隙を隙間なく埋めることにより充填構造が強化され、再生粒子の固着性が向上し、紙粉落ちが減少する。その結果、填料の歩留りが向上し原料コストが削減される。また、紙粉落ちが減少することにより、抄紙工程におけるマシン系内の汚れが低減し、清掃回数が減りマシンの稼働効率を向上させることができる。
【0011】
当該新聞用紙に用いられる上記再生粒子の体積平均粒子径aとしては1μm以上3μm未満が好ましく、また、体積平均粒子径bとしては3μm以上10μm以下が好ましい。再生粒子の体積平均粒子径に、このような2種類の分布を持たせることにより、パルプ繊維間の空隙にこれら大小の再生粒子がより緻密に充填され、不透明度及び吸油性が高く印刷特性に優れる新聞用紙を得ることができる。また、パルプ繊維間の空隙にこれらの再生粒子が緻密に充填され再生粒子の歩留りが向上することで原料コストが低減され、さらに清掃回数が減ることによるマシンの稼働効率も向上する。
【0012】
上記2種類の再生粒子の配合割合としては、再生粒子B100質量部に対し、再生粒子Aが100質量部以上500質量部以下が好ましい。2種類の再生粒子の配合割合を上記範囲とすることで、再生粒子Bでは埋めきれない空隙に、サイズの小さな再生粒子Aが入り込みパルプ繊維間の空隙がより緻密に充填され、不透明度及び吸油性が高く印刷特性に優れる新聞用紙が得られる。また、再生粒子の歩留りが向上することで、原料コストが削減され、清掃回数が減ることによるマシンの稼働効率も向上する。
【0013】
上記再生粒子Bは、製紙スラッジを主原料として、脱水、乾燥、燃焼及び粉砕工程を経て得られる再生粒子にシリカを複合させたシリカ複合再生粒子であるとよい。再生粒子Bは再生粒子Aよりも大きな体積平均粒子径bを有するため、再生粒子にシリカを複合させたシリカ複合再生粒子を用いることが好ましく、このシリカ複合再生粒子は、元来ポーラスな再生粒子の表面を多孔質形状のシリカで被覆したものであることから比表面積が大きく、高い光散乱性を有し、吸油度が高いため、不透明度及び吸油性の高い新聞用紙を得ることができる。
【0014】
当該新聞用紙はさらにカチオン性ポリマーを含有するとよい。カチオン性ポリマーは、いわゆる歩留り向上剤の一種であり、パルプ繊維及び填料表面の負電荷を中和してフロックを生成する作用を有する。このようなカチオン性ポリマーを含有させることで当該新聞用紙における再生粒子の歩留りをさらに向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
当該新聞用紙は、パルプ繊維間への填料の固着性が高く、不透明度及び吸油性に優れ、印刷時の紙粉の発生が少ないことから高い印刷特性を有する。また、当該新聞用紙は、抄紙工程における紙粉落ちが少ないためマシンの清掃回数が減り、マシンの稼働効率を向上させることができる。また、当該新聞用紙は、再生粒子の歩留りが優れるため製造コストを削減することができる。その結果、当該新聞用紙は、高い不透明度及び吸油性が求められる高速のオフセット輪転印刷用の新聞用紙として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に好適に用いられる再生粒子の製造設備の概要図である。
【図2】本発明に好適に用いられる再生粒子の製造設備の第2燃焼炉の模式的概要図である。(a)は第2燃焼炉の模式的縦断面図、(b)は第2燃焼炉の内面の模式的展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、適宜図面を参照しつつ本発明の実施の形態を詳説する。
【0018】
本発明の新聞用紙は、パルプを主原料とし、再生粒子A及び再生粒子Bを含有する。また、必要に応じてシリカ複合再生粒子又はカチオン性ポリマー等を含有してもよい。以下に、これらについて説明する。
【0019】
<パルプ>
当該新聞用紙の主原料となるパルプは公知のものでよく、その種類及び組み合わせは適宜設定できる。具体的には、古紙パルプ又はバージンパルプ、もしくはこれらの併用が挙げられる。
【0020】
上記古紙パルプは、いずれの原料由来の古紙パルプでも良いが、例えば、茶古紙、クラフト封筒古紙、雑誌古紙、新聞古紙、チラシ古紙、オフィス古紙、段ボール古紙、上白古紙、ケント古紙、模造古紙、地券古紙等から製造される離解古紙パルプ、離解・脱墨古紙パルプ(DIP)又は離解・脱墨・漂白古紙パルプ等が挙げられる。
【0021】
これらの古紙パルプの中でも、新聞古紙又は雑誌古紙由来の古紙パルプが好ましく、これらを併用することがより好ましい。なぜなら、かかる新聞古紙又は雑誌古紙由来の古紙パルプは、古紙の回収率が高く、古紙パルプを構成する原料パルプ種や填料類が各製紙メーカーで近似しており、構成成分の変動が少ないからである。中でも、新聞用紙には古紙パルプが既に50%以上配合されており機械パルプやクラフトパルプの含有量が少ない点、また、各種バージンパルプが用いられていても一度抄紙されることで、そのパルプ性状が均質化されている点において、新聞古紙由来の古紙パルプがさらに好ましい。
【0022】
上記バージンパルプはいずれの原料由来のバージンパルプでも良いが、例えば、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹半晒クラフトパルプ(LSBKP)、針葉樹半晒クラフトパルプ(NSBKP)、広葉樹亜硫酸パルプ又は針葉樹亜硫酸パルプ等の化学パルプ;ストーングランドパルプ(SGP)、加圧ストーングランドパルプ(TGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、砕木パルプ(GP)又はサーモメカニカルパルプ(TMP)等の機械パルプ;ケナフ、麻、葦又は竹等の非木材繊維を原料として化学的もしくは機械的に製造されたパルプ等が挙げられる。
【0023】
これらのバージンパルプの中でも、新聞用紙の嵩の低下を補完することができる機械パルプ(MP)が好ましく、新聞用紙の強度及び古紙から得られる古紙パルプの調整に好適なサーモメカニカルパルプ(TMP)がより好ましい。
【0024】
これらのパルプの中でも、古紙パルプを主成分とすることが省資源化の観点からも特に好ましい。
【0025】
当該新聞用紙の主原料であるパルプに含まれる古紙パルプ含有量の上限としては90質量%が好ましく、また、古紙パルプ含有量の上記下限としては60質量%が好ましく、70質量%がより好ましく、80質量%がさらに好ましい。該新聞用紙の主原料であるパルプに含まれる古紙パルプの含有量を上記範囲とすることで、資源の有効利用等の環境性に配慮しつつ、強度及び嵩の調整が容易で、インキ着肉性等の印刷適性に優れた当該新聞用紙を得ることができる。
【0026】
<再生粒子>
当該新聞用紙は、填料として再生粒子Aと再生粒子Bとを含有し、この再生粒子A及び再生粒子Bは、以下に説明する体積平均粒子径が異なっていればよく、その素材は同種でも異種でもよい。ここで「填料」とは、紙の不透明度、白色度又は平滑性等を向上させるために添加される充填剤であり、その原料としては、例えばクレイ(白土)、タルク(滑石)、炭酸カルシウム、二酸化チタン又は水酸化アルミニウム等が挙げられる。また、「再生粒子」とは、主原料として製紙スラッジを、好ましくは古紙処理設備の脱墨工程においてパルプ繊維から分離される填料又は顔料を含んだ脱墨フロスを主原料に用い、前記主原料を脱水、乾燥、燃焼及び粉砕工程を経て再資源化したものを意味する。また、上記「製紙スラッジ」とは、抄紙工程でワイヤーを通過して流出した固形分、パルプ化工程での洗浄過程で発生した固形分を含む排水から回収した固形分、排水処理工程において沈殿又は浮上作用等を利用した固形分分離装置により分離、回収した固形分、古紙処理工程で除去された固形分等の各種スラッジが混在したものを意味する。
【0027】
上記再生粒子Aは体積平均粒子径aを有する。かかる体積平均粒子径aの上限としては3μm未満が好ましく、2.5μmがより好ましい。また、上記体積平均粒子径aの下限としては1μmが好ましい。再生粒子Aの体積平均粒子径aを上記範囲とすることで、再生粒子Bでは埋められない小さな空間を充填することができる。従って、パルプ繊維間の空隙が密に充填されるため、当該新聞用紙は高い不透明度及び吸油性を備えることができる。また、このような体積平均粒子径aを有する再生粒子Aを用いることで空隙への固着性が高まるため、製造工程において一度固着した粒子がこぼれ落ちる現象、すなわち紙粉の発生量を減少させることができる。結果として、マシン系内の汚れが低減するため清掃回数が減りマシンの操業性を向上させることができる。再生粒子Aの体積平均粒子径aが上記上限を超えると、小さな空隙の中に入り込むことができず固着性が低下し、不透明度及び吸油性の低下を招来するため好ましくない。逆に、再生粒子Aの体積平均粒子径aが上記下限より小さいと、この空隙に対して粒子径が小さすぎて空隙を通り抜けてしまい固着性が低下するため好ましくない。一方、粒子径が上記上限より小さいと光散乱作用が低下するため、固着しても不透明度の向上へ寄与せず、また、固着力が弱く落ちやすいため製造工程において脱落しやすく製造工程におけるマシン系内の紙粉の発生を招来しマシンの操業性を低下させる恐れがあるため好ましくない。
【0028】
上記再生粒子Bは体積平均粒子径bを有し、この体積平均粒子径bは上記体積平均粒子径aよりも大きい。かかる体積平均粒子径bの上限としては10μmが好ましく、7μmがより好ましい。また、上記体積平均粒子径bの下限としては3μmが好ましく、5μmがより好ましい。上記体積平均粒子径bが上記下限より小さいと、パルプ繊維の空隙を通過してしまい固着率が低下するため好ましくない。逆に、再生粒子Bの体積平均粒子径bが上記上限を超えると、パルプ繊維の空隙に入り込めず固着が困難となるため好ましくない。
【0029】
このように、体積平均粒子径a及びbを上記範囲とすることにより、粒径の大きい再生粒子Bが入り込めない小さな隙間に粒径の小さな再生粒子Aが入り込み固着することであらゆるサイズの空隙が緻密に充填され、不透明度及び吸油性が高く印刷特性に優れた当該新聞用紙が得られる。
【0030】
上記再生粒子A及びBの配合割合としては、要求される充填率等を考慮して適宜決めればよく特に制限されないが、例えば、再生粒子B100質量部に対する再生粒子Aの配合量の上限としては500質量部が好ましく、400質量部がより好ましく、350質量部がさらに好ましい。また、再生粒子Aの上記配合量の下限としては100質量部が好ましく、200質量部がより好ましく、250質量部がさらに好ましい。このように再生粒子A及びBの配合割合を上記範囲とすることでパルプ繊維間の空隙が2種類の再生粒子によって緻密に充填され、新聞用紙は優れた印刷特性を有することができる。
【0031】
また、上記再生粒子A及びBの合計添加量の上限としては、原料パルプに対して固形分換算で9質量%が好ましく、7質量%がより好ましい。また、上記合計添加量の下限としては2質量%が好ましく、3質量%がより好ましい。合計添加量が上記下限より小さいとパルプ繊維間の空隙に対する再生粒子の量が不足し、充填されない空隙が多く残ることで充分な不透明度及び吸油性が得られないため好ましくない。逆に、合計添加量が上記上限を超えると、パルプ繊維間の空隙に対する再生粒子の量が多すぎるため、製造工程又は印刷工程において脱落する填料が増え、紙粉発生の原因となるため好ましくない。
【0032】
上記再生粒子は、カルシウム、シリカ及びアルミニウムを酸化物換算で30〜82:5〜40:13〜30の質量割合で含むことが好ましく、40〜60:25〜40:18〜25の質量割合で含むことがより好ましい。このようにカルシウム、シリカ及びアルミニウムを上記割合で含有することにより、再生粒子の比重を軽くし、過度の水溶液吸収を抑えることができ、脱水工程における脱水性が良好となる。上記各成分の質量割合は、例えば、堀場製作所製のX線マイクロアナライザー(型番:E−MAX・S−2150)を用いて加速電圧(15KV)にて元素分析を行うことにより算出することができる。
【0033】
再生粒子に含まれる上記カルシウム、シリカ及びアルミニウムの質量割合を上記割合に調整する方法としては、例えば、脱墨フロスの原料構成を調整する方法や、乾燥、分級及び焼成工程において出所が明確な塗工フロスや調整工程フロスをスプレー等で含有させる方法、又は焼却炉スクラバー石灰を含有させる方法が挙げられる。具体的に、再生粒子に含まれる上記カルシウムの調整方法としては、例えば、中性抄紙系の排水スラッジ又は塗工紙製造工程の排水スラッジを用いればよく、上記シリカの調整方法としては、例えば、不透明度向上剤としてホワイトカーボン等が多量に配合されている新聞用紙製造系の排水スラッジを用いればよく、また、上記アルミニウムの調整方法としては、例えば、酸性抄紙系等の硫酸バンドが使用されている抄紙系の排水スラッジや、タルクの多い上質紙抄造工程における排水スラッジを適宜用いればよい。
【0034】
<再生粒子の製造方法>
(脱水工程)
上記再生粒子A及びBは、主原料として製紙スラッジを、好ましくは、古紙パルプを製造する古紙処理設備の脱墨工程においてパルプ繊維から分離された脱墨フロスを主原料として、これらを脱水、乾燥、燃焼及び粉砕することで得られる。上記再生粒子は、従来一般的に填料として使用される炭酸カルシウム、タルク、クレーとは構成成分及び形状が異なり不透明性に優れるため、当該新聞用紙の不透明度及び吸油性を高め、填料の添加量を低減することができる。上記再生粒子の製造方法は、例えば、特許第4087431号公報に記載の製法等を適宜用いることができるが、さらに好適な製法例を、図1を参照しつつ以下に説明する。
【0035】
上記再生粒子の主原料10となる脱墨フロスは、一般的には95〜98質量%程度の水分を含有しているため凝集剤を加えてフロックを形成させ脱水処理を行う。脱水処理は、1段でも複数段でも構わないが、フロックを固化させると後の炭化工程において炭化ムラが生じる原因になるため、複数段で脱水し、水分率を25〜45質量%、好適には30〜40質量%程度とすることが好ましい。脱水後の水分率が、上記下限未満では脱水に必要なコストが大きくなり、逆に上記上限を超える水分率では、次の乾燥工程で必要となるコストが大きくなるうえに乾燥後の粒度がバラつく原因となるため好ましくない。
【0036】
かかる脱水後の原料は、粉砕機(または解砕機)により平均粒子径が3mm以上40mm以下の粒子径に揃えることが好ましい。なお、原料の粒子径は均一であることが好ましい。上記平均粒子径が3mm未満では過燃焼になりやすく、一方で、40mmを超えると原料芯部まで均一に熱処理し難いため好ましくない。なお、上記平均粒子径及び粒子径の割合は、JIS−Z8801−2:2000に基づいて測定した値である。
【0037】
また、上記脱水処理後の脱墨フロスは造粒することが好ましく、さらには造粒物の粒度を均一に揃える分級を行うことがより好ましい。なお造粒は、通常の造粒設備を適宜使用することができ、例えば、回転式、攪拌式、押出式等の造粒設備が挙げられる。
【0038】
(有機成分の熱処理工程)
上記脱水工程で得られた脱水物は続いて燃焼工程に送られる。しかし、燃焼工程の前段に、製紙スラッジ中の有機成分を熱処理(好ましくは、酸素濃度0.2〜20%雰囲気下で、熱処理温度200℃〜300℃で熱処理)する有機成分の熱処理工程を設けることが好ましく、製紙スラッジを300℃〜550℃の燃焼温度で燃焼(好ましくは、酸素濃度0.2〜20%雰囲気下で燃焼)する第1燃焼工程と、この第1燃焼工程で得られる製紙スラッジを再燃焼する第2燃焼工程とを含む少なくとも2段階以上の燃焼工程とすることが好ましい。
【0039】
本発明者らの知見によれば、製紙スラッジ中に含まれる各種有機成分(有機物)には、220℃近傍で発熱量のピークをもつアクリル系物質等からなる有機分、320℃近傍で発熱量のピークをもつセルロース等からなる有機分、420℃近傍で発熱量のピークをもつスチレン系物質等からなる有機分が含まれており、200℃〜300℃で熱分解される有機分を燃焼させる際に発火・過剰燃焼が生じ燃焼制御が困難となることで、白色度が低下するのみならず、いわゆる硬質物質であるCaAlSiO(ゲーレナイト)及びCaAlSi(アノーサイト)からなる硬質物質の生成を招来することを見出し、燃焼工程の前段で熱処理することで、これらの高発熱量成分を予め製紙スラッジ中から除去することができ、この処理により製紙用の填料として必要な特性を備えた再生粒子を安定して製造することができることを見出した。中でも、製紙スラッジの発熱量の減少率が20〜70%になる様に熱処理除去して上記成分を除去することで、第1燃焼工程や第2燃焼工程での過燃焼によって生成する上記CaAlSiO(ゲーレナイト)及びCaAlSi(アノーサイト)の生成を2.0質量%以下とすることがより好ましい。
【0040】
上記有機成分の熱処理工程において用いる装置は特に限定がなく、例えば、直接加熱型ロータリーキルン、間接加熱型ロータリーキルン、気流乾燥機、流動層乾燥機、振動流動乾燥機、回転・通気回転乾燥機(サイクロン)等を適宜用いることができる。中でも、熱効率が高く操業が容易な点で直接加熱型ロータリーキルンが好ましい。
【0041】
(燃焼工程)
上記熱処理された脱墨フロスは続いて燃焼工程に送られる。燃焼工程は、例えば、ロータリーキルン、流動床炉、浮遊炉、ストーカ炉等、通常用いる焼却炉を適宜使用することができる。中でも、焼成温度のコントロール及び焼成度合いの微調整が容易な点で熱風炉や電気炉等を用いた間接加熱による燃焼方法が好ましい。
【0042】
燃焼工程は、1段階とすることもできるが、少なくとも2段階以上が好ましく、連続する設備により行うことがより好ましい。このように、少なくとも燃焼工程を2段階以上として連続して行うことで、有機物の燃焼ムラが生じにくく均一な燃焼が可能となる。本発明においては、先の第1燃焼を内熱キルン炉14で行い、後の第2燃焼を外熱キルン炉32で行う2段階の燃焼工程としている。
【0043】
上記第1燃焼炉14の炉内温度の上限としては550℃が好ましく、510℃がより好ましい。また、上記炉内温度の下限としては300℃が好ましく、400℃がより好ましい。このように炉内温度を上記範囲とすることで、420℃近傍で発熱量のピークをもつスチレン系物質等の有機分を充分に熱分解し、燃焼しがたい残カーボンの生成を抑えることができる。また、第1燃焼炉14内に吹き込む熱風は酸素濃度として0.2容量%〜20容量%が好ましい。
【0044】
上記第2燃焼炉32の炉内温度の上限としては800℃が好ましく、750℃がより好ましい。また、上記炉内温度の下限としては550℃が好ましく、600℃がより好ましい。第1燃焼炉14で燃焼しきれなかった残留有機物、特に残カーボンを燃焼させるために、第2燃焼炉32の炉内温度は第1燃焼炉14の炉内温度よりも高温とすることが好ましい。燃焼温度が550℃未満では、残留有機物の燃焼が不十分であり、一方、燃焼温度が800℃を越える場合は、粒子が硬くなるという問題が生じやすいため好ましくない。第2燃焼炉32内の酸素濃度は5容量%〜20容量%が好ましく、10容量%〜20容量%がより好ましい。また、第2燃焼炉32内での滞留時間(燃焼時間)は60分以上が好ましく、60分〜240分がより好ましく、90分〜150分が更に好ましく、120分〜150分が特に好ましい。このように、第2燃焼炉での滞留時間(燃焼時間)を上記範囲とすることで残カーボンを効率的に燃焼させることができる。
【0045】
上記燃焼工程内の酸素濃度は、燃焼工程のバーナー等によって消費されることで低下するが、空気等の酸素含有ガスを適宜送風し、あるいは排気することで、必要な酸素濃度を維持又は調節すればよい。また、酸素含有ガスを送風し、あるいは排気することで、燃焼工程内の温度を細かく調節することができ、再生粒子をムラなく均一に燃焼することができる。
【0046】
なお、上記製造方法においては、再生粒子の原料として不適切な異物を除去することが好ましく、例えば、古紙パルプ製造工程の脱墨工程に至る前段階のパルパー、スクリーン又はクリーナー工程等で砂、プラスチック及び金属等の異物を除去することが好ましい。特に鉄分は酸化により再生填料の白色度低下の原因となるため、鉄分の混入をできるだけ避け、選択的に取り除くことが好ましい。具体的には、各工程で用いるマシン等の表面を鉄以外の素材で設計又はライニングすることで、マシン使用時の磨滅等により鉄分が系内に混入することを防止するとともに、更に、乾燥・分級設備内等に磁石等の高磁性体を設置して選択的に鉄分を除去すること等が挙げられる。
【0047】
上記再生粒子の粒径を本発明の目的とする体積平均粒子径a又は体積平均粒子径bに揃える方法は、公知の粉砕及び分級手段を適宜使用すればよい。また、目的とする再生粒子に不適当な粗大粒子凝集体や微小粒子は、再生粒子の製造工程にフィードバックして再利用してもよい。
【0048】
(分級工程)
上記製造方法で得られる再生粒子は、個々の粒子が幾つか集まって凝集した再生粒子凝集体を形成しており、ランチュウの肉瘤状のような不定形な形をしている。得られた再生粒子凝集体は、公知の粉砕方法により体積平均粒子径を1〜10μmにまで粉砕して粒子径を調整することが好ましい。体積平均粒子径が1μmよりも小さいと歩留りが悪く抄紙機系内において異物化しやすいため好ましくなく、10μmよりも大きいと地合が悪化したり、強度(引張強度や引裂強度)が低下する可能性があるため好ましくない。再生粒子の上記粒子径は、レーザー解析式粒度分布測定装置「SALD−2200型」島津製作所社製により測定した体積平均粒子径である。このように再生粒子が、不定形性と適度な体積平均粒子径とを有することで、不透明度及び吸油性を向上させ、新聞用紙の紙厚を出しやすくすることができる。
【0049】
<シリカ複合再生粒子>
当該新聞用紙に用いられる再生粒子Bは、主原料として製紙スラッジを、好ましくは、脱墨フロスを主原料として、脱水、乾燥、燃焼及び粉砕工程を経て得られた再生粒子にシリカを複合させたシリカ複合再生粒子であることが好ましい。このように、シリカを再生粒子の表面に複合させることで、再生粒子の有するカチオン性とシリカの有するアニオン性により繊維間結合を適度に阻害し、得られる新聞用紙の嵩を高くすることができる。また、シリカを複合させることにより填料としての白色度を向上させることができる。この白色度向上により白紙不透明度は低下する傾向が生じるものの、高い吸油量を有するシリカ複合再生粒子を用いることで、新聞印刷用の吸収乾燥型印刷インキを新聞用紙表面で保持乾燥できるため、軽量な新聞用紙の印刷不透明度をさらに向上させることができる。また、上記シリカ複合再生粒子は、元来ポーラスな再生粒子の表面をシリカで複合したものであることから比表面積が大きく、これを内添用の填料として使用することで、白色度及び不透明度に優れ、嵩高い紙を得ることができる。本発明では、上記再生粒子Bとしてシリカ複合再生粒子を用いることで、体積平均粒子径の異なる再生粒子を組み合わせることによる上述した不透明度の向上効果だけでなく、シリカ複合再生粒子の持つ不透明性と吸油性が相乗効果として加わり、より印刷特性の優れた新聞用紙を得ることができる。
【0050】
上記シリカ複合再生粒子に含まれるシリカは、天然に産出するシリカではなく、何らかの化学反応による合成シリカであれば特に制限なく使用できる。このような合成シリカとしては、例えば、コロイダルシリカ、シリカゲル又は無水シリカ等が挙げられる。これらの合成シリカは、高比表面積、ガス吸着能の高さ、微細性、細孔への浸透力及び吸着力の大きさ、付着性の高さ、又は高吸油性などの優れた特性を有する。これらの合成シリカのうち、例えば、コロイダルシリカとは、ケイ酸化合物から不純分を除去して無水ケイ酸ゾルとし、pH及び濃度を調整してゾルを安定化させた、球状、連鎖状、不定形等の形状を有する非晶質シリカを意味する。またシリカゲルとは、ケイ酸ナトリウムを無機酸で分解することによって得られる含水ケイ酸を意味する。また無水シリカとは、四塩化ケイ素の加水分解によって得られるものを意味する。これらのシリカは一種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0051】
上記シリカ複合再生粒子はカルシウム、シリカ(珪素)およびアルミニウムの割合を、酸化物換算で30〜80:10〜50:7〜20(質量%)とすることが好ましい。これは、堀場製作所製のX線マイクロアナライザー(型番:E−MAX・S−2150)を用いて、加速電圧(15KV)にて元素分析を行い酸化物換算することで算出することができる。
【0052】
シリカ複合再生粒子に含まれる上記シリカ成分の割合は、再生粒子の体積平均粒子径及びその元素構成に依存するが、再生粒子の表面にシリカ成分を析出させた後の酸化物換算でのシリカの比率を上記範囲とすることで、このシリカ複合再生粒子を用いた新聞用紙の印刷不透明度を向上させることができる。中でも、上記シリカ成分の割合を41.0〜49.0質量%とすることが好ましく、42.0〜48.0質量%とすることがより好ましい。上記シリカ成分の割合が10.0質量%未満では、シリカの析出が不十分となり、目的とする吸油量及び不透明度が得られず、一方、上記シリカ成分の割合が50.0質量%を超えると微細なシリカ粒子が過度に析出することで、吸油量及び不透明度の低下を招来するため好ましくない。
【0053】
上記シリカ複合再生粒子の吸油量としては50〜180ml/100gが好ましい。このようにシリカ複合再生粒子の吸油量を上記範囲とすることで、当該填料を内添填料として使用した場合、当該填料が紙層中に含浸されるインクのビヒクル分や有機溶剤等を吸収することにより、用紙の印刷不透明度が低下するのを抑制し、また、同時にインク乾燥性やニジミを防止する効果が得られる。上記吸油量が50ml/100g未満の場合には上記効果が十分に得られず、むしろシリカ複合再生粒子がインクの吸収・乾燥性を阻害する傾向が生じるため好ましくない。また、上記吸油量が180ml/100gを超える場合は、インクの吸収性が高いためインクの沈みこみ、いわゆる発色性が劣る問題が生じるため好ましくない。
【0054】
シリカ複合再生粒子の上記吸油量は、後述するシリカ複合再生粒子の製造方法におけるシリカ複合工程の反応温度、添加時間、保留時間、pH、粘度、用いる再生粒子の燃焼手段、粒子径などにより適宜調整可能であるが、例えば、シリカ複合工程において10,000Å以下の細孔容積が0.5〜1.5cc/gとなるように調整することで、高い吸油量を示し、紙の不透明度を向上できるシリカ複合再生粒子を得ることができ、このシリカ複合再生粒子を含有した当該新聞用紙は高い不透明度を得ることができる。
【0055】
また、上記シリカ複合再生粒子は、填料の表面がシリカで被覆されているためワイヤー(網部)の磨耗を低減でき、ワイヤーの寿命を延ばすことができる。紙に内添する填料の粒子が硬いと抄紙機のワイヤーを傷つけやすくなり、ワイヤー寿命を縮めるため好ましくないが、上記シリカ複合再生粒子はワイヤーの磨耗を低減することができるためワイヤーの寿命を延長させることができる。
【0056】
<シリカ複合再生粒子の製造方法>
上記再生粒子の表面にシリカを複合させる方法としては、例えば、特許第3907688号公報又は特許第4087431号公報に記載の方法等を適宜用いることができる。但し、より不透明性に優れたシリカ複合再生粒子が得られる点で、以下の製造方法が好ましい。
【0057】
当該新聞用紙に用いるシリカ複合再生粒子の製造方法としては、上記製造方法で得られた再生粒子を、珪酸アルカリ水溶液に添加・分散してスラリーとし、撹拌しながら50℃〜100℃の温度範囲で鉱酸を添加する方法が好ましい。中でも、少なくとも2段階に分けて鉱酸を添加してシリカ複合の反応を行うことがより好ましい。以下に、この製造方法について詳述する。
【0058】
上記シリカ複合再生粒子の製造方法に用いる再生粒子の体積平均粒子径は1.0μm〜10.0μmが好ましい。なお、この再生粒子の粒子径は、レーザー解析式粒度分布測定装置「SALD−2200型」島津製作所社製により測定した体積平均粒子径である。用いる再生粒子の粒子径が1.0μmよりも小さいと、シリカ複合時に十分な粒度が得られないおそれがあるほか、シリカを複合させる際にガラス状に目詰まりするおそれがあるため好ましくない。一方、上記体積平均粒子径が10.0μmよりも大きいと、シリカ複合再生粒子の粒子径が大きくなりパルプ繊維間の空隙に入り込めず、新聞用紙の不透明性を低下させる原因となるため好ましくない。
【0059】
上記シリカ複合再生粒子の製造方法に用いる珪酸アルカリ水溶液は、特に限定されないが、例えば、入手に容易である点で珪酸ナトリウム溶液(3号水ガラス)が望ましい。珪酸アルカリ溶液の濃度は水溶液中の珪酸分(SiO換算)として3〜10質量%が好ましい。珪酸アルカリ溶液の濃度が10質量%を超えると、形成される再生粒子とシリカの複合粒子は無機微粒子・シリカ複合凝集体ではなく、再生粒子がホワイトカーボンで被覆されてしまい、芯材となる再生粒子の多孔性、光学的特性が発揮されなくなってしまうため好ましくない。一方、上記濃度が3質量%未満では複合粒子中のシリカ成分が低下し、シリカが被覆された再生粒子が形成しにくくなってしまうため好ましくない。
【0060】
再生粒子を珪酸アルカリ水溶液に添加及び分散してスラリーを調製する場合のスラリー濃度は8〜14質量%が好ましい。スラリー濃度を上記範囲に調整することで、形成されるシリカ複合再生粒子の粒径をコントロールすると同時に再生粒子とシリカの組成比率を調整することができる。
【0061】
また、上記再生粒子に対する珪酸アルカリ水溶液の固形分比としては100:5〜100:20が好ましい。再生粒子に対する珪酸アルカリ水溶液の固形分比が100:5より少ないと得られるシリカ複合再生粒子表面のシリカの析出が低くなり不透明性の向上効果が低いため好ましくない。一方、上記固体分比が100:20を超えると、得られるシリカ複合再生粒子の吸油量が増加してインクの吸収性が高くなるためインクの沈みこみ、いわゆる発色性が劣る問題が生じるため好ましくない。
【0062】
再生粒子を珪酸アルカリ水溶液に添加する際の珪酸アルカリ水溶液の温度としては、特に制限されない。上記温度は、例えば50℃以上とすることもできるし、再生粒子添加後に加熱することもできる。中でも、珪酸アルカリ水溶液を予め50℃以上に加温した状態で再生粒子を添加すると、加温によって流動性が向上するため、スラリーを容易に均質化できるため好ましい。また、上記以外にも再生粒子を添加して均質化したスラリーを調製した後に加熱撹拌してもよい。熱源としては、公知の熱源を適宜利用すればよく、例えば、工場内の生蒸気(例えば、13kg/cm、120℃)を吹き込むことにより、昇温時間の短縮及び生産効率の向上が図れる。
【0063】
上記シリカ複合再生粒子の製造方法に用いる鉱酸としては、例えば、希硫酸、希塩酸、希硝酸等の鉱酸の希釈液等が挙げられるが、価格及びハンドリングが容易な点で希硫酸が好ましい。鉱酸の濃度としては、例えば、希硫酸を使用する場合は4〜10N程度の濃度が好ましい。希硫酸の濃度が4N未満では反応の進行が遅く、一方、上記濃度が10Nを超えると、局部的な反応が生じて得られるシリカ複合再生粒子が不定形になったり偏在したりするため好ましくない。また、鉱酸の添加量が多いほど短時間でシリカが析出するので、目的とする条件に合わせて添加速度を適宜調整すればよい。しかし、芯材として用いる再生粒子は、カルシウム、アルミニウム、シリカを構成元素として含有しているため、過度の濃度の鉱酸添加は再生粒子の変質を生じる恐れがあるため好ましくない。
【0064】
上記鉱酸の添加方法としては、1段階でも良いが、2段階以上で添加することが望ましい。
【0065】
鉱酸の添加を1段階で行う場合は、pHが1低下するのに鉱酸の添加時間が40分以上となるように添加量を設定することが好ましい。
【0066】
鉱酸の添加を2段階で行う場合は、各段階における鉱酸の添加量を均等にすることが均質なシリカ複合が得られる点で好ましい。また、第1段階目の添加(珪酸アルカリ水溶液に対して鉱酸が20〜50%の中和率となるまでの添加)後に、5分〜20分程度の保留時間を作りシリカ複合反応に保留状態を設けることで、再生粒子の表面に均質にシリカを複合させ、更なる第2段階目の鉱酸添加により、さらにシリカの積層複合化を促進させ、再生粒子表面に、より均一にシリカを複合することができる。
【0067】
上記第1段階目の鉱酸の添加にかかる時間が10分〜45分となるように鉱酸の添加量を設定することが、再生粒子の表面にシリカを均等に複合させる点において好ましい。第2段階目以上で鉱酸を添加する場合も、鉱酸の添加にかかる時間を、pHが1低下するのに10〜120分程度となるように鉱酸の添加量を設定することが、均質にシリカを複合させる点で好ましい。
【0068】
上記鉱酸を添加する際の反応温度は、例えば、スラリーの温度として50〜100℃が好ましく、50〜98℃がより好ましい。上記反応温度はシリカの生成、結晶成長速度及び形成されたシリカ複合再生粒子の力学的強度に影響を及ぼす。上記反応温度が50℃未満ではシリカの生成・成長速度が生じないか又は遅く、シリカ複合再生粒子のシリカ複合性に劣り、シリカが充分に複合し難く、填料内添紙の抄造時に生じる剪断力でシリカ複合が壊れやすいため好ましくない。一方、上記反応温度が100℃を超えると、水系反応であるためオートクレーブを使用しなければならず反応工程が複雑になってしまうため好ましくない。しかも、上記反応温度が100℃を超えると、過度に反応が進み、緻密なシリカ複合再生粒子形態となり、得られるシリカ複合再生粒子の不透明度が低下するため好ましくない。
【0069】
また、上記鉱酸を2段階で添加する際の反応温度は、第1段階目の鉱酸添加時のスラリー温度が50℃〜75℃であり、第2段階目以降の鉱酸添加時のスラリー温度が少なくとも第1段階目よりも10℃以上昇温させることが好ましい。具体的には、例えば、第1段階目のスラリー液温を50℃〜75℃、続く第2段階目のスラリー液温を70℃以上〜100℃とし、反応の最終段階で、スラリー液温を90℃以上で98℃以下とすることが挙げられる。このように上記温度範囲とすることで、より均質なシリカ複合再生粒子を得ることができる。
【0070】
上記シリカ複合再生粒子の製造方法において、最終反応液のpHは8.0〜11.0が好ましく、8.3〜10.0がより好ましく、8.5〜9.0がさらに好ましい。上記pHが8.0未満となるまで鉱酸を添加すると、再生粒子に含まれるカルシウム成分が水酸化カルシウムに変化しやすくなり、得られるシリカ複合再生粒子の粒子径が過度に低下したり、形状が不均質になり、紙への歩留り低下や紙粉の発生、十分な不透明性が得られ難くなるため好ましくない。一方、上記pHが11.0を超えると、珪酸アルカリと鉱酸の反応が鈍り、再生粒子の表面にシリカが複合し難くなり、十分な不透明性が得られ難くなるため好ましくない。
【0071】
上記製造方法により得られるシリカ複合再生粒子の体積平均粒子径の上限としては、シリカと複合させる再生粒子の粒子径にもよるが、10μmが好ましく、7μmがより好ましい。一方、上記体積平均粒子径の下限としては1.7μmが好ましく、3μmがより好ましい。シリカ複合再生粒子の粒子径が1.7μm未満では、シリカ複合の効果が十分に発現できず、吸油量及び不透明度の向上効果が得難く、一方、10μmを超えると、パルプ繊維同士が相互に作り出す網目構造の目のサイズと比して大きくなるため、この部分に入り込んで固着することが困難となるため好ましくない。
【0072】
上記製造方法においては、未反応ゾーンを作らないために、例えば、撹拌羽根を逆転させて乱流を生じさせる、又は邪魔板を撹拌槽内に設ける等の撹拌手段を適宜採用することが好ましい。
【0073】
上記シリカ複合再生粒子の製造方法によって、再生粒子の表面に粒子径10〜20nm(走査型電子顕微鏡による実測の粒子径)のシリカゾル粒子が形成される。このシリカゾル粒子の粒子径は、反応時の撹拌条件、鉱酸の添加条件などによりコントロールすることができる。
【0074】
従来は内添する微細粒子の全細孔による細孔容積が吸油量や不透明度の指標とされていた知見を越えて、本発明者等は、実質の吸油性は無機微粒子の細孔容積だけでなく、無機微粒子の粒子間に油を保持する能力にも影響されることを知見している。その結果、本発明にて好適に用いることができるシリカ複合再生粒子においては、細孔半径が10,000オングストローム以下であることが好ましい。
【0075】
上記製造方法によって得られるシリカ複合再生粒子の細孔容積の上限は、水銀圧入式ポロシメーター(テルモ社製「PASCAL 140/240」)を用いた測定値で、10,000Å以下の領域の細孔容積として1.5cc/gが好ましく、1.45cc/gがより好ましく、1.35cc/gがさらに好ましい。一方、上記細孔容積の下限は0.5cc/gが好ましく、0.68cc/gがより好ましく、0.70cc/gがさらに好ましい。上記細孔容積が0.5cc/g未満では、十分な吸油量の発現が得られず、一方、1.5cc/gを超えると吸油量の向上が見られるものの、不透明度の低下が生じやすい点でそれぞれ好ましくない。
【0076】
<ホワイトカーボン>
当該新聞紙はさらにその他の填料を含有することができる。その他の填料としては、例えば、クレイ(白土)、タルク(滑石)、炭酸カルシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム又はホワイトカーボン等が挙げられる。中でも、ホワイトカーボンが好ましい。ホワイトカーボンは、そのポーラスな凝集構造によって、当該新聞用紙の不透明度、平滑度、印刷適性及び白色度をより向上させることができる。ホワイトカーボンの含有量の上限としては4質量%が好ましく、3質量%がより好ましい。一方、上記含有量の下限としては、0.5質量%が好ましく、1質量%がより好ましい。ホワイトカーボンの含有量が上記下限より小さいと、パルプ繊維間の空隙を埋めきることができず、新聞用紙の不透明度の向上機能が低いものとなり好ましくない。逆に、ホワイトカーボンの含有量が上記上限を超えると、パルプ繊維同士で形成される空隙のサイズに対して、ホワイトカーボンの量が多すぎるために、空隙間に確実に埋め込まれることができず、製造及び使用中に脱落する填料が多くなるおそれがあるため好ましくなく、また、ホワイトカーボンの含有量が多すぎると、相対的にパルプ繊維の含有量が低下してパルプ繊維間の強度が低下し、紙自体の強度が低下することとなるため好ましくない。
【0077】
<カチオン性ポリマー>
また、当該新聞紙はカチオン性ポリマーをさらに含有しているとよい。カチオン性ポリマーは、いわゆる歩留り向上剤の一種であり、パルプ繊維及び填料表面の負電荷を中和して小さなフロックを生成する作用を有する。当該新聞用紙の抄紙工程において、このようなカチオン性ポリマーを配合することにより再生粒子の歩留り性を向上させることができる。
【0078】
上記カチオン性ポリマーとは、水溶性のポリマーであってポリマー分子内にカチオン基を含有し、パルプへの添加使用時にカチオン性を示すものであれば特に制限はない。このようなカチオン性ポリマーとしては、例えば、カチオン性ポリアクリルアミド、ポリアクリレートポリアルキレンポリアミン複合体、カチオン性ポリアミン樹脂、カチオン性ポリアミンポリアミド樹脂、カチオン変性澱粉、スチレンアクリル系樹脂、カチオン性熱硬化性樹脂等を挙げることができる。
【0079】
上記カチオン性ポリマーの添加量の上限としては、パルプ固形分に対し純分で800ppmが好ましく、700ppmがより好ましい。一方、上記添加量の下限としては200ppmが好ましく、400ppmがより好ましい。カチオン性ポリマーの添加量が上記範囲より小さいと、再生粒子、シリカ複合再生粒子等の歩留まり向上の効果が得られ難くなり、逆に、カチオン性ポリマーの添加量が上記範囲を超えると、地合いが悪化するおそれがあるため好ましくない。
【0080】
上記カチオン性ポリマーの重量平均分子量の上限としては、1600万が好ましく、1200万がより好ましい。一方、重量平均分子量の下限としては800万が好ましく、850万がより好ましい。カチオン性ポリマーの重量平均分子量が800万未満であると、カチオン性ポリマーを用いた効果が充分に発現されず、一方、1600万より大きくても、所望の効果の向上があまり望めず、コスト高となる恐れがあるため好ましくない。このようなカチオン性ポリマーを抄紙工程に用いることにより、再生粒子の歩留り効果が向上し、結果として、当該新聞用紙の不透明度、紙の強度又は濾水性が向上される。
【0081】
上記カチオン性ポリマーの添加場所は、原料パルプをマシンチェストで配合後、種箱、第1ファンポンプ、クリーナーへ送り、次の第2ファンポンプへ供給される前の段階であって、本発明で用いる填料を添加した後が填料の歩留まり向上の面から好ましい。体積平均粒子径の異なる再生粒子を組み合わせパルプ繊維の隙間を埋めることによる不透明度及び吸油性向上効果に加え、上記カチオン性ポリマーを用いることで填料歩留りが向上し、当該新聞用紙の光散乱性が向上すると共に光透過性が低減され優れた印刷特性を付与することができる。
【0082】
<新聞用紙>
当該新聞用紙は、上述した再生粒子又はホワイトカーボン等の填料の添加量を調整することにより、当該新聞用紙に含まれる灰分を調整することができる。当該新聞用紙における、JIS−P8251に記載の「紙、板紙及びパルプ−灰分試験方法」に準拠して測定した525℃での灰化後の灰分率の上限は15質量%が好ましく、13質量%がより好ましい。一方、上記灰分率の下限は6質量%が好ましく、7質量%がより好ましい。このように当該新聞用紙における灰分率を上記範囲とすることで、当該新聞用紙は高い不透明度及び吸油性を備えることができる。灰分が上記下限より小さいと不透明度が低くなり好ましくなく、逆に、灰分が上記上限を超えると不透明度は高くなるものの、パルプ繊維間の密着性が低下し、紙の強度の低下に繋がるため好ましくない。当該新聞用紙において灰分は上記再生粒子A及びBの添加量にて調整することができる。
【0083】
また、当該新聞用紙の灰分のうち、ケイ素を40質量%以上60質量%以下(酸化物換算)、カルシウムを20質量%以上40質量%(酸化物換算)以下の割合で含有することが好ましい。当該新聞用紙の灰分中に、ケイ素及びカルシウムが上記範囲で含有されることにより、当該新聞用紙は輪転印刷において好適なインク吸着性を発揮し、高い不透明度を実現することができる。ケイ素及びカルシウムの含有量が上記範囲未満であると、インク吸着性及び不透明度が低下するため好ましくない。なお、上記灰分に含まれる上記各成分は、例えば、灰分0.2gをエネルギー分散型X線分析装置(型番ENERGY EX−250、(株)堀場製作所)(50倍)にて分析することで測定することができる。
【0084】
当該新聞用紙の坪量は、軽量化、例えば高速輪転印刷における紙質強度の確保、印刷不透明度の確保という点から、JIS−P8124に記載の「坪量測定方法」に準拠して測定した数値の下限として38g/mが好ましく、40g/mがより好ましく、一方、上記上限としては48g/m以下が好ましく、46g/m以下がより好ましい。上記坪量が上記下限未満では、例えば高速オフセット輪転印刷機における強度確保が困難であるため好ましくなく、一方、上記上限を超えると紙の重量が増加し、近年の軽量化及び省資源に逆行することとなるため好ましくない。
【0085】
当該新聞用紙の白色度は、読者の眼精疲労をきたさないように、JIS−P8148に測定した場合の数値で53%以上が好ましく、54〜58%がさらに好ましい。かかる白色度が53%未満であると印刷前の白紙外観が低下する恐れがあるだけでなく、オフセット印刷後、特にカラー印刷後の印刷物の見映えが低下する恐れがあるため好ましくない。
【0086】
当該新聞用紙の不透明度は、印刷時の裏抜けが発生し難いという点から不透明度はより高いものが望ましく、例えば、JIS−P8149に記載の「紙及び板紙−不透明度試験方法(紙の裏当て)−拡散照明法」に準拠して測定した数値の上限として96%が好ましく、95%がより好ましい。一方、上記不透明度の下限として90%が好ましく、93%がより好ましい。不透明度が上記下限未満であると裏抜けが生じやすくなるため好ましくなく、一方、不透明度が上記上限を超えると必要な填料が増大し、その結果、パルプ繊維間の密着性が低下して新聞用紙の強度が低下するため好ましくない。再生粒子Aと再生粒子Bとを組み合わせることで、パルプ繊維の隙間を埋めるように再生粒子A及び再生粒子Bが抄紙されることに加え、填料歩留りが向上し、光散乱性が上がると共に光透過性が下がるため、当該新聞用紙は極めて高い不透明度を得ることができる。
【0087】
当該新聞用紙の印刷不透明度は、印刷時の裏抜けが発生し難いという点から、印刷不透明度はより高いものが望ましく、例えば、後述する印刷不透明度試験方法に準拠して測定した数値の下限として90%が好ましく、92%がより好ましい。また、不透明度の上記上限としては、95%が好ましく、94%がより好ましい。印刷不透明度が上記下限未満であると裏抜けが生じやすくなるため好ましくなく、一方、印刷不透明度が上記上限を超えると、必要な填料が増大し、その結果パルプ繊維間の密着性が低下して新聞用紙の強度の低下を招来し、紙表面からの填料の脱落によって印刷時の紙紛が増加するだけでなく、製造工程におけるマシン系内の汚れを招来し操業性を悪化させるため好ましくない。再生粒子Aと再生粒子Bとを組み合わせることで、パルプ繊維の隙間を埋めるように再生粒子A及び再生粒子Bが抄紙され、これらの填料歩留りが向上し、光散乱性が上がると共に光透過性が下がるため、当該新聞用紙は極めて高い印刷不透明度を得ることができる。
【0088】
また新聞用紙の密度は、JIS P 8118に記載の「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」に記載の方法に準拠して測定した数値として0.56〜0.70g/cm3が好ましい。かかる密度が0.56g/cm3未満であると紙質強度が低下して高速輪転印刷における断紙の原因になる恐れや、紙粉が発生するという問題が生じる恐れがあるため好ましくない。一方、密度が0.70g/cm3を超えると、印刷後の裏抜けが生じやすくなり、剛度が低下して印刷作業性も低下する恐れがあるため好ましくない。
【0089】
<新聞用紙の製造方法>
当該新聞紙の製造方法としては、従来公知の製造方法を適宜使用すればよい。具体的には、例えば、必要に応じて染料や歩留り剤等を添加したパルプスラリーを調製して公知の抄紙機によって抄紙した後、新聞用紙の表裏面に表面サイズ剤を塗工し、さらに必要に応じてカレンダー装置に通紙して、加圧及び平滑化処理等を施して当該新聞用紙を製造すればよい。
【0090】
上記表面サイズ剤としては、例えば、酸化澱粉、エーテル化澱粉、エステル化澱粉、酵素変性澱粉、カチオン化澱粉、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルアルコール(PVA)、スチレン/アクリル酸共重合体、スチレン/(メタ)アクリル酸共重合体(なお、(メタ)アクリル酸は、「アクリル酸、及び/またはメタクリル酸」を意味する。)、スチレン/(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン/マレイン酸共重合体、スチレン/マレイン酸半エステル共重合体、スチレン/マレイン酸エステル共重合体等、ポリアクリルアミド等の水溶性高分子、ロジン、トール油とフタル酸等のアルキド樹脂ケン化物、石油樹脂とロジンのケン化物等のアニオン性低分子化合物、イソジアネート系ポリマー等のカチオン性ポリマーなどが挙げられ、これらは単独で又は同時に用いることができる。これらのサイズ剤を添加することにより、コールドセット型オフセットインキのビヒクル分が素早く吸収され、輪転機の高速化や両面カラー用タワープレス機の使用によって印刷インキ量が増加しても、充分な吸収乾燥性が発現され、また、填料が確実に繊維に固着されるため、填料の脱落を防止し、優れた印刷不透明度、印刷適性等を確保することができる。これらの表面サイズ剤の中でも、水溶性高分子が好ましく、澱粉がより好ましい。
【0091】
上記表面サイズ剤として用いられる澱粉としては、従来から使用されている化工澱粉が好適に例示され、例えば、次亜塩素酸ナトリウム等による酸化反応によって、低分子量化及び分子中へのカルボキシル基、アルデヒド基、カルボニル基等の導入とを行った澱粉等が挙げられる。
【0092】
上記表面サイズ剤として用いられる澱粉の重量平均分子量としては、30万〜300万が好ましい。かかる重量平均分子量を有する澱粉は、用紙表面の被覆性に加え、インキ成分を用紙表面に留めつつ、溶媒成分を紙中に取り込んで吸収乾燥性を向上させることができる。また、澱粉の粘度(10%)としては、30×10−3Pa・s以下が好ましく、15×10−3〜25×10−3Pa・sがより好ましい。かかる粘度を有する澱粉は、粘度が高いことから紙中に浸透せずに紙表面に留まることができ、填料の固着性を向上させて填料の脱落を防止し、当該新聞用紙の不透明度を高めることができる。
【0093】
また、サイズ性を更に向上させ、オフセット輪転印刷におけるインキとの相性、及び填料の脱落防止効果の点から、スチレン系ポリマーを澱粉と併用することが好ましい。表面サイズ剤として、酸化澱粉とスチレン系ポリマーを用いると、澱粉を均一に塗工でき、表面強度を向上させ、填料の脱落を防止できる。酸化澱粉とスチレン系サイズ剤の配合比としては、固形分で酸化澱粉100部に対しスチレン系サイズ剤10〜15部が好ましい。スチレン系サイズが10部を下回ると、紙のサイズ性及び表面強度の向上が充分に得られにくく、15部を上回ると、コスト高となったり、不透明度やインキ乾燥性の低下を招く恐れがあるため好ましくない。
【0094】
上記スチレン系ポリマーとしては、例えば、スチレン/アクリル酸共重合体、スチレン/(メタ)アクリル酸共重合体(なお、(メタ)アクリル酸は、「アクリル酸、及び/またはメタクリル酸」を意味する。)、スチレン/(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン/マレイン酸共重合体、スチレン/マレイン酸半エステル共重合体、スチレン/マレイン酸エステル共重合体等が例示される。
【0095】
上記表面サイズ剤の固形分塗工量としては、片面あたり0.1g/m以上1.0g/m以下が好ましく、0.2g/m以上0.75g/m以下が特に好ましい。表面サイズ剤の塗工量が上記下限より小さいと、充分な被膜性が得られず、表面強度を充分に向上させにくいため好ましくない。一方、表面サイズ剤の塗工量が上記上限を超えると、塗布設備周辺に表面サイズ剤を含んだ塗工液のミストが多量に発生し、周辺機器を汚損するとともに、汚れに起因する断紙、用紙の欠陥が生じる恐れがあるため好ましくない。
【0096】
上記表面サイズ剤の塗工手段としては、特に限定されず、例えば、トランスファロールコーター、エアドクタコーター、ブレードコーター、ロッドコーター等が挙げられる。これらのコーターの中でも、トランスファロールコーター方式の塗布装置が好ましく、ゲートロールコーターが特に好ましい。フィルムトランスファー方式による塗工、特にゲートロールによる塗工は、他の塗工方法とは異なり、低塗工量でも当該新聞用紙表面に被覆性の高い層の形成に好適であり、また塗工液に急激なせん断力がかからないので、循環使用する塗工液の安定性に優れ、高速で均質な被膜を得ることができるため好ましい。
【0097】
さらに、当該新聞用紙には、スーパーカレンダー、グロスカレンダー、ソフトカレンダー等のカレンダー設備で平坦化処理を施すことも可能である。かかるカレンダー設備による平坦化処理を施すことで、当該新聞用紙の印刷適性をさらに向上することができる。カレンダー設備としては、特に限定されないが、古紙パルプの配合割合が高い当該新聞用紙においては、低ニップ圧で同一緊度であり、高い平滑性ひいては軽量化及びカラー印刷適性に優れるソフトカレンダーが好ましい。
【実施例】
【0098】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳説するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例に示す「部」または「%」は、特に断らない限り「質量部」または「質量%」をそれぞれ示し、「体積平均粒子径」は、島津製作所社製のレーザー解析式粒度分布測定装置「SALD−2200型」により測定した。
【0099】
<再生粒子の製造>
脱墨フロス(古紙パルプを製造する古紙処理工程由来)を主原料として用い、これらの混合物を脱水工程終了後の水分率が35質量%となるように脱水し、図1及び図2の製造設備により、有機成分の熱処理工程(280℃、酸素濃度12容量%)、第1燃焼工程(400℃、酸素濃度12容量%)及び第2燃焼工程(680℃、酸素濃度12容量%)を経た後、湿式粉砕処理を施して再生粒子凝集体を得た。
【0100】
上記有機成分の熱処理工程において用いた内熱キルンは、本体が横置きで中心軸周りに回転する内熱キルン炉であり、この内熱キルン炉一端の原料供給口から脱墨フロス等の原料を供給するとともに熱風を吹き込む並流方式を採用した。また、上記第1燃焼工程及び第2燃焼工程において用いた内熱キルンは、本体が横置きで中心軸周りに回転する内熱キルン炉であり、第2燃焼工程において用いた外熱キルン炉は、内部に平行リフターを有する外熱電気方式のキルン炉を採用した。第1燃焼工程の燃焼温度は、1次燃焼炉出口の温度を測定し、第2燃焼工程の燃焼温度は2次燃焼炉の出口温度を測定した。酸素濃度は、1次燃焼炉の出口酸素濃度及び2次燃焼炉の出口酸素濃度をそれぞれ測定した。
【0101】
得られた上記再生粒子凝集体を、セラミックボールミルを用いて湿式粉砕処理し、さらに分級して各再生粒子を得た(製造例1〜5)。各再生粒子の体積平均粒子径を以下の表1に示す。
【0102】
【表1】

【0103】
<シリカ複合再生粒子の製造>
上記製造例2の再生粒子(体積平均粒子径2μm)をスラリー溶液(スラリー濃度20質量%)とし、珪酸アルカリ水溶液である38質量%濃度の珪酸ナトリウム溶液(3号水ガラス)と上記スラリー溶液(スラリー濃度20質量%)とを、再生粒子と珪酸アルカリの固形分比が100:5となるように混合し、さらに希釈水を加え、珪酸アルカリと再生粒子からなるスラリーを反応開始濃度(スラリー濃度11質量%)となるように調製後、加熱撹拌して、スラリーの液温を55℃に調製した。反応開始時のpHは10.7であった。次に、鉱酸として希硫酸(7N)を22分かけて珪酸アルカリ中和率が33%となるまで撹拌しながら添加して1次反応を行った。更に、スラリーの液温が93℃になるまで加熱撹拌した後10分間保持した。その後、希硫酸(7N)をpHが8.5になるまで45分かけて添加し、シリカ複合再生粒子を得た。得られたシリカ複合再生粒子の体積平均粒子径は5μmであった(製造例8)。
【0104】
以上の手段を踏襲しながら、再生粒子と珪酸アルカリの固形分比、反応開始時の再生粒子と珪酸アルカリの濃度、1次反応での珪酸アルカリ中和率、反応終了pH、希硫酸の添加速度や量を適宜変更調製して、製造例6、7、9、10、11のシリカ複合再生粒子をそれぞれ得た。得られた各シリカ複合再生粒子の体積平均粒子径を以下の表2に示す。なお、スラリーの撹拌は公知のミキサーを使用し、スラリーのpHは堀場製作所製のpH計にて測定し、反応温度は公知の温度計にてそれぞれ測定した。
【0105】
【表2】

【0106】
<新聞用紙の作製>
(実施例1)
針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)5質量%、新聞古紙からなる脱墨パルプ(NDIP)85質量%、及びサーモメカニカルパルプ(TMP)10質量%を配合し、レファイナーでフリーネスを120mL C.S.F(JIS−P8121に準拠)に調整したパルプスラリーを得た。このパルプスラリーに、前述した製造例2の再生粒子及び製造例8のシリカ複合再生粒子を0.5:1の割合で添加し、硫酸バンドでpHを6〜7に調整後、次いで、絶乾パルプに対し固形分で600ppmのカチオン性ポリマー(BASFジャパン株式会社製「ポリミンPR8150」)を添加して、ツインワイヤー抄紙機で坪量42g/mの基紙を得た。更に、表面サイズ剤として酸化澱粉とスチレン系ポリマー(星光PMC株式会社製「SS2712」)を固形分で酸化澱粉100部に対しスチレン系ポリマーが15部になるよう混合し、水を加えて濃度を調整した後、乾燥質量で片面あたり0.5g/m(両面で1.0g/m)となるように上記基紙に塗工して実施例1の新聞用紙を得た。
【0107】
(実施例2、3)
再生粒子の添加割合(再生粒子A:Bの質量比)を変更したこと以外は上記実施例1と同様にして、実施例2、3の新聞用紙を得た。
【0108】
(実施例4、5)
カチオン性ポリマーの添加量を変更したこと以外は上記実施例3と同様にして、実施例4、5の新聞用紙を得た。
【0109】
(実施例6)
ホワイトカーボン(体積平均粒子径18μm エリエールペーパーケミカル社製)を添加したこと以外は上記実施例3と同様にして、実施例6の新聞用紙を得た。
【0110】
(実施例7)
カチオン性ポリマーを添加しなかったこと以外は上記実施例3と同様にして、実施例7の新聞用紙を得た。
【0111】
(実施例8〜21)
再生粒子の種類、添加割合及び合計添加量を変更したこと以外は上記実施例1と同様にして、実施例8から21の新聞用紙を得た。
【0112】
(比較例1、2)
再生粒子の種類及び添加割合を変更したこと以外は上記実施例1と同様にして、比較例1、2の新聞用紙を得た。
【0113】
(比較例3)
再生粒子の替わりにホワイトカーボン(体積平均粒子径18μm エリエールペーパーケミカル社製)を用いたこと以外は上記実施例1と同様にして、比較例3の新聞用紙を得た。
【0114】
【表3】

【0115】
〔品質評価〕
上記、実施例1〜21及び比較例1〜3で得られた各新聞用紙の品質について、以下の項目を測定し、その作業性を評価した。結果を以下の表4に示す。
(1)坪量
坪量はJIS−P8124に記載の「坪量測定方法」に準拠して測定した。
【0116】
(2)灰分
灰分はJIS−P8251(2003)に記載の「紙、板紙及びパルプ−灰分試験方法−525℃燃焼法」に準拠して測定した。
【0117】
(3)印刷不透明度
印刷不透明度はJAPAN TAPPI No.45に準拠して測定した。
【0118】
(4)不透明度
不透明度はJIS−P8149に記載の「紙及び板紙−不透明度試験方法(紙の裏当て)−拡散照明法」に準拠して測定した。
【0119】
(5)白色度
白色度はJIS−P8148に記載の「紙、板紙及びパルプ−ISO白色度(拡散青色光反射率)の測定方法」に準拠して測定した。
【0120】
(6)密度
密度はJIS−P8124に記載の「紙及び板紙−坪量測定方法」及びJIS−P 8118に記載の「紙及び板紙−厚さ及び密度の試験方法」に準拠して測定した。
【0121】
(7)作業性
作業性はオフセット輪転印刷機(型番:LITHOPIA BTO−4、三菱重工業(株)製)を使用して50連巻きの新聞用紙にて印刷を行い、ブランケット非画像部における紙粉の発生・堆積の有無を目視にて観察し、以下の評価基準に基づいて評価した。
(評価基準)
◎:紙粉の発生が全く認められない。
○:紙粉の発生がわずかに認められるがブランケット上での堆積は全く認められない。
△:紙粉の発生が認められ、ブランケット上に堆積している。
×:ブランケット上での紙粉の堆積が著しい。
【0122】
【表4】

【0123】
上記表3に示す填料の「合計添加量」及び「添加量」は絶乾パルプトンあたりの填料の固形分添加量(kg(固形分)/パルプトン)をそれぞれ示す。
【0124】
上記実施例1〜21の各新聞用紙は、いずれも高い印刷不透明度を有し、作業性も良好で、オフセット輪転印刷用の新聞用紙として優れた印刷特性を有していることが分かる。特に、再生粒子の体積平均粒子径及び添加量を調整することで当該新聞用紙の品質が大きく左右されることが確認され、2種類の再生粒子の体積平均粒子径の一方が1μm以上3μm未満であり、また他方が3μm以上10μm以下であるときは、極めて高い印刷特性を発揮できることが示された。また填料の添加量を調整することで新聞用紙中の灰分を調整することができ、灰分が増加すると不透明度は上がり、灰分が8.8〜15%の時は紙粉の発生が少ないなど当該新聞用紙の作業性が優れていることが分かる。
【0125】
一方、比較例1〜2の新聞用紙は、2種類の再生粒子の体積平均粒子径が同じであるためパルプ繊維間の空隙を緻密に充填できず、新聞用紙の不透明度が不十分である。また、比較例3の新聞用紙は、2種類の異なった体積粒子径を有する再生粒子を含んでおらず、ホワイトカーボンの体積粒子径が大きいためパルプ繊維間の空隙を緻密に充填できず、新聞用紙の不透明度が不十分であり、また、紙面からの填料の脱落により印刷作業性も悪いことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明の新聞用紙は、例えば、高速でのオフセット輪転印刷等に好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0127】
10…原料、12…貯槽、14…第1燃焼炉(内熱キルン炉)、20…熱風発生炉、22…再燃焼室、26…熱交換器、28…誘引ファン、30…煙突、31…外熱ジャケット、32…第2燃焼炉(外熱キルン炉)、34…冷却機、36…粒径選別機、42…熱処理炉(内熱キルン炉)、43…熱風発生炉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプを主原料とし、填料を内添する新聞用紙であって、
上記填料として、製紙スラッジを主原料として得られる再生粒子を含有し、
この再生粒子として、
体積平均粒子径aを有する再生粒子Aと、
体積平均粒子径aより大きい体積平均粒子径bを有する再生粒子Bと
が用いられていることを特徴とする新聞用紙。
【請求項2】
上記体積平均粒子径aが1μm以上3μm未満であり、体積平均粒子径bが3μm以上10μm以下である請求項1に記載の新聞用紙。
【請求項3】
上記再生粒子B100質量部に対する再生粒子Aの含有量が100質量部以上500質量部以下である請求項1又は請求項2に記載の新聞用紙。
【請求項4】
上記再生粒子Bが、再生粒子にシリカを複合させて得られるシリカ複合再生粒子である請求項1、請求項2又は請求項3に記載の新聞用紙。
【請求項5】
さらに、カチオン性ポリマーを含有する請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の新聞用紙。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−144470(P2011−144470A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5361(P2010−5361)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】