説明

新規β−アクチンおよびRPS21プロモーター、ならびにこれらの使用方法

【課題】プロモーターなどの調節遺伝子エレメントおよびたとえば、タンパク質の発現のためにこれらを使用する。
【解決手段】新規β-アクチンおよびリボソームタンパク質S21(rpS21)プロモーターの単離ならびにこれらの使用。特に、ハムスター、ラット、およびマウスを含む齧歯類β-アクチン・プロモーター、ならびにハムスターrpS21プロモーターのためのヌクレオチド配列を特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロモーターなどの調節遺伝子エレメントおよびたとえば、タンパク質の発現のためのこれらの使用に関する。より詳細には、本発明は、β-アクチンおよびリボソームタンパク質S21遺伝子プロモーターに関する。
【0002】
本出願は、2003年6月24日に出願された米国仮特許出願第60/480,768号の優先権の利益を主張し、その全ての内容は参照として組み入れられる。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
あらゆる真核細胞遺伝子は、その遺伝子の転写を駆動する調節エレメントを含む。このような調節エレメントは、プロモーターを含み、これらは、典型的には遺伝子内のコード配列のすぐ上流に配置されている。プロモーターは、転写機構の一部である転写因子のための結合部位を提供することによって転写を調節する。プロモーターは、一般に細胞培養およびインビボでタンパク質を発現するために使用される。多くのプロモーターが公知であり、種々の発現系におけるタンパク質の発現のために使用される。プロモーターの例は、サイトメガロウイルス(CMV)最初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルス・ゲノム大ゲノム末端反復配列(RSV)、シミアンウイルス 40(SV40)プロモーター、インターフェロン遺伝子プロモーター、メタロチオネインプロモーター、およびチミジンキナーゼプロモーター、ならびにその他の、たとえばFernandez et al.(1999)Gene Expression Systems, Academic Press(非特許文献1)に記載されているものを含む。しかし、なおも、当技術分野において、高レベルの発現を生じることができ、および/または長期間発現を持続するプロモーターを提供する必要がある。
【0004】
β-アクチンは、構造タンパク質であり、原生動物から、ヒトを含む真核生物まで、通常全ての種において発現される。ヒトおよびニワトリβ-アクチン・プロモーターは、以前に記載されていた。一般に、β-アクチン・プロモーターは、広く使用されているCMVプロモーターよりも遍在性の活性を示す(Xu et al.(2001)Gene 272:149-156(非特許文献2))。ニワトリβ-アクチン・プロモーターは、ウイルスCMVおよびSV40プロモーターよりも高い活性を呈することが示されたが、これがCMVエンハンサー配列に連結されているときだけである(Xu et al., 前記(非特許文献2))。
【0005】
リボソームタンパク質S21(rpS21)は、リボソームの40Sサブユニットと会合する。ヒトrpS21遺伝子のプロモーターは、以前に同定された(GenBank(登録商標)アクセッション番号AJ250907)。大部分のリボソーム遺伝子プロモーターと同様に、これは、TATAボックスおよびCAAT配列などの従来の転写エレメントを欠いている(Smirnova et al.(2000)Bioorg. Khim. 26(5):392-396(非特許文献3))。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Fernandez et al.(1999)Gene Expression Systems, Academic Press
【非特許文献2】Xu et al.(2001)Gene 272:149-156
【非特許文献3】Smirnova et al.(2000)Bioorg. Khim. 26(5):392-396
【発明の概要】
【0007】
本発明は、以前より公知のβ-アクチン・プロモーター(たとえば、ヒトおよびニワトリなど)に対して低レベルの配列相同性を有する新規β-アクチン・プロモーターを提供する。本発明は、以前より公知のrpS21プロモーター(たとえば、ヒトおよびマウスなど)に対して低レベルの配列相同性を有する新規rpS21プロモーターをさらに提供する。
【0008】
本発明は、部分的には、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株からのβ-アクチンおよびrpS21プロモーターの発見、ならびに単離に基づいている。本発明は、部分的には、ハムスターβ-アクチン・プロモーターが、CMVプロモーターよりも有意に高い活性を有するという観察にさらに基づいている。本発明は、部分的には、rpS21プロモーターが、一定の遺伝子を発現するために使用したときに、少なくともハムスターβ-アクチン・プロモーターと同程度に活性であるという観察にさらに基づいている。本発明は、これらのプロモーターのためのヌクレオチド配列を提供し、プロモーター活性を有するヌクレオチド配列の変異体を含む。一部の態様において、本発明のβ-アクチン・プロモーターは、齧歯類、例えばハムスター、ラット、およびマウスに由来する。rpS21プロモーターは、典型的にはハムスターに由来する。
【0009】
本発明は、異種核酸に機能的に連結された本発明のβ-アクチンまたはrpS21プロモーターを含むベクターをさらに提供する。ある態様において、本発明のベクターは、たとえば治療的タンパク質またはこれらの断片などの異種発現産物をコードする異種核酸に機能的に連結されたプロモーターを含む。例示の態様において、発現産物は、酸性スフィンゴミエリナーゼ(ASM)、α-グルコシダーゼ(GAA)、または組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)である。
【0010】
本発明は、また、本発明のベクターでトランスフェクトされた宿主細胞を提供する。例示の態様において、宿主細胞は、たとえばCHO、HEK、およびBHKなどの哺乳動物細胞である。
【0011】
また、タンパク質を産生するための方法も提供される。タンパク質を産生するための方法は、たとえば以下の工程を含む:タンパク質をコードする異種核酸に機能的に連結された本発明のβ-アクチン・プロモーターおよび/またはrpS21プロモーターを含むベクターがトランスフェクトされた細胞を培養する工程、ならびにタンパク質を回収する工程。一部の態様において、異種発現産物は、分泌タンパク質であり、これは培地から回収される。例示の態様において、タンパク質は、ASM、GAA、またはtPAである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】ハムスターβ-アクチン・プロモーター(配列番号:1)とラットβ-アクチン・プロモーター(配列番号:2)とのヌクレオチド配列の部分間の整列を示し、配列番号:1の、ヌクレオチド(nt)487〜nt 893と配列番号:2のnt 1〜nt 417との間の79%の同一性を証明する。ラットβ-アクチン・プロモーター(配列番号:2)は、ハムスターβ-アクチン・プロモーターの全長にわたって67%の同一性を有する(配列番号:1)。
【図1B−1】ハムスターβ-アクチン・プロモーター(配列番号:1)とラットβ-アクチン・プロモーター(配列番号:2)とのヌクレオチド配列の部分間の整列を示し、配列番号:1のnt 1047〜nt 3006と配列番号:2のnt 546〜nt 2493との間の83%の同一性を証明する。
【図1B−2】図1B-1の続きを示す図である。
【図1B−3】図1B-2の続きを示す図である。
【図1B−4】図1B-3の続きを示す図である。
【図1B−5】図1B-4の続きを示す図である。
【図2A】ハムスターβ-アクチン・プロモーター(配列番号:1)とマウスβ-アクチン・プロモーター(配列番号:3)とのヌクレオチド配列の部分間の整列を示し、配列番号:1のnt 33〜nt 487と配列番号:3のnt 1〜nt 449との間の84%の同一性を証明する。マウスβ-アクチン・プロモーター配列(配列番号:3)は、配列番号:1のハムスターβ-アクチン・プロモーター配列の全長にわたって80%の同一性を有する。
【図2B−1】ハムスターβ-アクチン・プロモーター(配列番号:1)とマウスβ-アクチン・プロモーター(配列番号:3)とのヌクレオチド配列の部分間の整列を示し、配列番号:1のnt 996〜nt 3006と配列番号:1のnt 921〜nt 2953との間の83%の同一性を証明する。
【図2B−2】図2B-1の続きを示す図である。
【図2B−3】図2B-2の続きを示す図である。
【図2B−4】図2B-3の続きを示す図である。
【図2B−5】図2B-4の続きを示す図である。
【図3−1】ハムスターβ-アクチン・プロモーター(配列番号:1)とハムスターβ-アクチン遺伝子(Genbank(登録商標)アクセッション番号U20114;配列番号:4)とのヌクレオチド配列の部分間の整列を示し、配列番号:1のnt 1775〜nt 3006と配列番号:4のnt 1〜nt 1232との間の98%の同一性を証明する。ハムスターβ-アクチン遺伝子配列は、配列番号:1のハムスターβ-アクチンの全長にわたって40%の同一性を有する。
【図3−2】図3-1の続きを示す図である。
【図3−3】図3-2の続きを示す図である。
【図4】ハムスターβ-アクチン・プロモーター(配列番号:1)と以前より公知のヒトβ-アクチン・プロモーター(GenBank(登録商標)アクセッション番号gi28337;配列番号:5)とのヌクレオチド配列の部分間の整列を示し、配列番号:1のnt 113〜nt 148と配列番号:5のnt 38〜nt 73との間の94%の同一性、配列番号:1のnt 362〜nt 433と配列番号:5のnt 303〜nt 374との間の83%の同一性、配列番号:1のnt 1728〜nt 1764と配列番号:5のnt 1791〜nt 1830との間の90%の同一性、ならびに配列番号:1のnt 1797〜nt 1966と配列番号:5のnt 1840〜nt 2007との間の91%の同一性を証明する。ヒトβ-アクチン・プロモーター配列(配列番号:5)は、配列番号:1のハムスターβ-アクチン・プロモーター配列の全長にわたって10%の同一性を示す。
【図5】ハムスターβ-アクチン・プロモーター(配列番号:1)と以前より公知のニワトリβ-アクチン・プロモーター(GenBank(登録商標)アクセッション番号gi2170437;配列番号:6)とのヌクレオチド配列の部分間の整列を示し、配列番号:1のnt 1878〜nt 1919と配列番号:6のnt 186〜nt 227との間の83%の同一性を証明する。ニワトリβ-アクチン・プロモーター配列(配列番号:6)は、配列番号:1のハムスターβ-アクチン・プロモーター配列の全長にわたって1%の同一性を示す。
【図6】図6Aは、CHO-K1細胞におけるガレクチン、フェリチン、およびβ-アクチンに対するノーザンブロットを示す。代表的なmRNAは、アクチノマイシンDでの細胞の処理の0、4、8、10、および15時間後の細胞から単離した。図6Bは、ガレクチン、フェリチン、およびβ-アクチン遺伝子についての相対的mRNA発現レベルを示す。代表的なmRNAは、アクチノマイシンDでのCHO-K1細胞の処理の0、4、8、10、および15時間後の細胞から単離した。
【図7】図7Aは、以下のプロモーターについて、CHO-K1細胞における一過性トランスフェクション・アッセイ法で測定される相対的プロモーター強度を示す:CMV、ヒトEF-1、ハムスターGAPDH、ハムスターrpS21、およびハムスターβ-アクチン。代表的なプロモーターは、pDsRED-1プラスミド内の赤色蛍光タンパク質(RFP)遺伝子の上流にクローン化した。平均蛍光は、FACSによって測定した。図7Bは、以下のプロモーターについて、CHO-K1細胞における安定なトランスフェクション・アッセイ法で測定される相対的プロモーター強度を示す:CMV、ヒトEF-1、ハムスターGAPDH、ハムスターrpS21、およびハムスターβ-アクチン。代表的なプロモーターは、pDsRED-1プラスミド内の赤色蛍光タンパク質(RFP)遺伝子の上流にクローン化した。平均蛍光は、FACSによって測定した。
【図8】図8Aは、CMVプロモーターまたはハムスターβ-アクチン・プロモーターのいずれかに機能的に連結されたASM cDNAを含むベクターをトランスフェクトしたCHO-DXB11細胞の3つのプールからの、培地中の酸性スフィンゴミエリナーゼ(ASM)タンパク質の発現を示す。ASMの発現は、ASMに対する酵素活性アッセイ法で評価した。図8Bは、CMVプロモーターまたはハムスターβ-アクチン・プロモーターのいずれかに機能的に連結されたGAA cDNAを含むベクターをトランスフェクトしたCHO-DXB11細胞の3つのプールからの、培地中のα-グルコシダーゼ(GAA)タンパク質の発現を示す。GAAの発現は、GAAに対する酵素活性アッセイ法で評価した。
【図9】ハムスターβ-アクチン・プロモーターに機能的に連結されたtPA cDNAを含むベクターをトランスフェクトしたCHO-DXB11細胞のプールからの、培地中のtPAタンパク質の発現を示す。tPAの発現は、ELISAを使用して評価した。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の詳細な説明
本発明がより容易に理解されるように、一定の用語を最初に定義してある。さらなる定義は、詳細な説明の全体にわたって記載してある。
【0014】
「プロモーター」という用語は、これが機能的に連結された核酸の転写を指揮する調節エレメントをいう。プロモーターは、機能的に連結された核酸の転写の割合および効率の両方を調節することができる。また、プロモーターは、核酸のプロモーター依存的な転写を増強する(「エンハンサー」)か、または抑制する(「リプレッサー」)その他の調節エレメントに機能的に連結してもよい。「機能的に連結される」という用語は、もう一つの核酸と機能的な関係に配置された核酸をいう。プロモーターは、通常、核酸内において転写開始点の5'に(すなわち、上流に)配置されている。しかし、プロモーターは、転写開始点の3'に(すなわち、下流に)配列を含んでもよい。また、プロモーターは、機能的に連結された核酸の転写開始点の5’および3'の両方の領域を包含してもよい。
【0015】
「プロモーター活性」という用語は、これが機能的に連結された核酸の転写を開始するためのプロモーターの能力をいう。プロモーター活性は、当技術分野において公知の手順を使用して、または、実施例に記載されているように測定することができる。たとえば、プロモーター活性は、たとえばノーザンブロット法またはポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)を使用することによって転写されたmRNAの量として測定することができる。または、プロモーター活性は、たとえば、ウエスタンブロット法、ELISA、たとえばBradfordアッセイ法(Bradford(1976)Anal. Biochem., 72:248)などの比色アッセイ法、ならびにリポーター遺伝子アッセイ法、および当技術分野において公知のその他の方法を含む種々の活性アッセイ法によって、または実施例に記載したように、翻訳タンパク質産物の量として測定することができる。
【0016】
「ベクター」という用語は、別の核酸を有することができるウイルスもしくは非ウイルスの、原核生物もしくは真核生物の、デオキシリボ核酸、リボ核酸、または核酸類似体をいう。ベクターは、細胞内に核酸を有していてもよく(「宿主細胞」と称される)、その結果核酸の全てもしくは一部が転写され、または発現される。または、ベクターは、インビトロでの転写アッセイ法に使用してもよい。ベクターは、異なるウイルス、細菌、または哺乳動物の遺伝子に由来するエレメントの複合物として頻繁に組み立てられる。ベクターは、選択可能なマーカー(たとえば、抗生物質耐性遺伝子)をコードする配列、を含む種々のコードおよび非コード配列、細菌においてこれらの増殖を容易にする配列、または一定の細胞型だけに発現される1つもしくは複数の転写単位を含む。たとえば、哺乳動物発現ベクターは、細菌におけるベクターの増殖を容易にする原核生物の配列および真核細胞だけに発現される1つまたは複数の真核生物の転写ユニットの両方を含むことが多い。発現ベクターのデザインは、形質転換される宿主細胞の選択、要求されるタンパク質の発現レベル、その他などの要因に依存し得ることが当業者によって認識されるであろう。
【0017】
ベクターは、たとえば、プラスミド、ファージミド、およびウイルス・ベクターを含む。既存のプロモーターを有するベクターは、プロモーターを配列番号:1、2、3、または39に記載されるプロモーター配列またはこれらの変異体のいずれかと置換するために、当技術分野において公知の標準的な組換えDNA技術によって修飾することができる。一般に、適切なベクターは、市販されているものから選択することができ、またはこれらは、当技術分野において公知の標準的な組換えDNA技術を使用して構築することができる(たとえば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual:2nd edition, Sambrook et al., 1989 Cold Spring Harbor Laboratory Press.)を参照されたい)。
【0018】
「形質転換」および「トランスフェクション」という用語は、核酸の細胞内導入をいう。核酸は、当技術分野において公知の、または本明細書に記載されている多くの方法によって、植物もしくは動物細胞または原核細胞もしくは真核細胞に導入することができる。
【0019】
「単離された」という用語は、天然に存在しない方法で、その他の核酸配列から分離されたポリヌクレオチド配列を有する、デオキシリボ核酸、リボ核酸、または核酸の類似体をいう。単離された核酸は、当技術分野において公知の標準的な技術によって、部分的もしくは完全に化学的に、または組換えで合成され、および/または精製されていてもよい核酸を包含する。
【0020】
プロモーター配列に関して「変異体」という用語は、変異体がプロモーター活性を有することを条件として、プロモーター配列に対して全長にわたって、またはその相補鎖に対してその全長にわたって、実質的に同一であるヌクレオチド配列をいう。
【0021】
β-アクチン・プロモーターの変異体は、配列番号:1、2、もしくは3のヌクレオチド配列と同じ長さか、またはこれらが少なくとも1250ヌクレオチドの長さである限り、より短い長さであってもよい。rpS21プロモーターの変異体は、配列番号:39のヌクレオチド配列と同じ長さか、またはこれらがプロモーター活性を有する限り、より短い長さであってもよい。β-アクチン・プロモーターの変異体、例えばヒトおよびニワトリ以外の種から単離された天然に存在するβ-アクチン・プロモーターは、天然に存在することができ、またはこれらは人工的に作製することができる。配列番号:1に記載したハムスターβ-アクチン・プロモーターとこれらの変異体との間の同一性は、至適に整列させたときに、配列番号:1のnt 1〜nt 3007の全ての配列にわたって、少なくとも45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%である。同様に、配列番号:2に記載したラットβ-アクチン・プロモーターとこれらの変異体との間の同一性は、配列番号:2のnt 1〜nt 2493の全ての配列にわたって、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%である。配列番号:3のマウスβ-アクチン・プロモーターとこれらの変異体との間の同一性は、配列番号:3のnt 1〜nt 2953の全ての長さにわたって、少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%である。同様に、配列番号:39に記載したハムスターrpS21プロモーターとこれらの変異体との間の同一性は、至適に整列させたときに、配列番号:39のnt 1〜nt 1958の全長にわたって、少なくとも40%、50%、55%、60%、65%、70%、80%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%であることができる。
【0022】
β-アクチン・プロモーターの変異体は、たとえば齧歯類およびその他の哺乳動物を含むが、ヒトおよびニワトリβ-アクチン・プロモーターならびにこれらの公知の変異体を除くその他の種のβ-アクチン・プロモーターの相同分子種を含んでもよい。本発明のプロモーターの変異体は、たとえばモルモット、マーモット、ジャコウネズミ、スナネズミ、リス、シマリス、プレーリードッグ、ビーバー、ヤマアラシ、およびハタネズミなどのその他の齧歯類種においても見いだされてもよい。
【0023】
「変異体」という用語は、プロモーター活性を有する本発明の任意の1つまたは複数のプロモーターの断片をさらに包含する。β-アクチン・プロモーターの変異体は、少なくとも1250ヌクレオチドの長さである。本発明のβ-アクチン・プロモーターの変異体は、たとえば配列番号:1に記載されたハムスターβ-アクチン・プロモーターの5'切断によって誘導することができる。一部の態様において、β-アクチン・プロモーター変異体は、配列番号:1のnt 50〜nt 3000、nt 100〜nt 3000、nt 150〜nt 3000、nt 200〜nt 3000、nt 250〜nt 3000、nt 500〜nt 3000、nt 1000〜nt 3000、またはnt 1500〜nt 3000由来の配列を含む。その他の態様において、β-アクチン・プロモーター変異体は、配列番号:2に記載された配列の5'切断によって誘導されてもよく、たとえば、配列番号:2のnt 50〜nt 2490、nt 100〜nt 2490、nt 150〜nt 2490、nt 200〜nt 2490、nt 250〜nt 2490、nt 500〜nt 2490、またはnt 1000〜nt 2490を含む。また、β-アクチン・プロモーター変異体は、配列番号:3に記載された配列の5'切断によって誘導されてもよく、たとえば、配列番号:3のnt 50〜nt 2950、nt 100〜nt 2950、nt 150〜nt 2950、nt 200〜nt 2950、nt 250〜nt 2950、nt 500〜nt 2950、nt 1000〜nt 2950、またはnt 1500〜nt 2950を含む。ハムスターβ-アクチン・プロモーターのより長い断片は、たとえば配列番号:7に記載されたより長いハムスター・プロモーター・ヌクレオチド配列の5'切断によって誘導することができる。このような変異体は、たとえば、nt 50〜nt 3668、nt 100〜nt 3668、nt 150〜nt 3668、nt 200〜nt 3668、nt 250〜nt 3668、nt 500〜nt 3668、またはnt 600〜nt 3668由来の配列を含む。
【0024】
rpS21プロモーターの変異体は、配列番号:39に記載された配列の5'切断および/または3'切断によって誘導されもよい。このような変異体は、たとえば、nt 50〜nt 1958、nt 100〜nt 1958、nt 150〜nt 1958、nt 200〜nt 1958、nt 250〜nt 1958、nt 500〜nt 1958、nt 1000〜nt 1958、nt 1〜nt 1900、nt 1〜nt 1850、nt 1〜nt 1800、nt 1〜nt 1750、nt 1〜1700、nt 1〜nt 1600、またはnt 1〜nt 1500由来の配列を含む。
【0025】
ある態様において、本発明のβ-アクチン・プロモーターは、配列番号:1、2、または3に由来する少なくとも1250、1500、1550、1600、1650、1700、1750、1800、1850、1900、1950、2000、2500、または3000の隣接するひと配列のヌクレオチドを含む。また、このような配列番号:1、2、および3の隣接するひと配列は、変異体配列が、本来の配列の少なくともいくらかの機能性および配列番号:1、2、または3のそれぞれの配列に対して、低い、適度、または高いストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする能力を保持する限り、突然変異(挿入または欠失)を含んでいてもよい。β-アクチン・プロモーターの隣接するひと配列は、配列番号:1、2、3、もしくは7に記載される配列、または上記の通りのこれらの変異体のいずれかの5'切断によって誘導することができる。
【0026】
その他の態様において、本発明のrpS21プロモーターは、配列番号:39由来の少なくとも500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600、1700、1800、1850、または1900ヌクレオチドの隣接するひと配列を含む。
【0027】
本発明のβ-アクチン・プロモーター変異体は、配列番号:1、2、もしくは3に示されるβ-アクチン・プロモーター配列、またはこれらの相補物の全長にハイブリダイズし、かつ多くとも0、1、2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45%塩基対ミスマッチを有するヌクレオチド配列をさらに含む。本発明のrpS21プロモーター変異体は、配列番号:39に示されるrpS21プロモーター配列、またはその相補物の全長に対してハイブリダイズし、かつ多くとも0、1、2、3、4、5、10、15、20、30、40、45、50、55、60%塩基対ミスマッチを有するヌクレオチド配列を含む。塩基対ミスマッチの割合は、当技術分野において公知の、または本明細書に記載されている標準的な技術によって決定することができる。「異種の」という用語は、核酸について言及する際に使用されるときは、プロモーターが天然に存在するゲノムに機能的に連結された核酸以外の核酸を意味する。たとえば、「異種の」という用語は、このような核酸がハムスターβ-アクチン・プロモーターに機能的に連結されるときは、ハムスターβ-アクチン遺伝子以外の任意の核酸をいう。同様に、このような核酸がラットβ-アクチン・プロモーターに機能的に連結されるときは、「異種の」という用語は、ラットβ-アクチン遺伝子以外の任意の核酸をいう。同様に、このような核酸がマウスβ-アクチン・プロモーターに機能的に連結されるときは、「異種の」という用語は任意の核酸をいう。類似して、本用語は、また、このような核酸がハムスターrpS21プロモーターに機能的に連結されるときには、ハムスターrpS21遺伝子以外の任意の核酸をいう。
【0028】
「トランスジェニック」という用語は、本発明のプロモーターが、天然に存在するゲノム内と同じ核酸に対してもはや機能的に連結さていない遺伝的に操作された細胞を含む任意の動物をいう。「トランスジェニック」という用語は、たとえば、動物の染色体内に組み込まれた本発明のプロモーターまたはこれらの変異体をもつ細胞を含む動物を包含する。また、「トランスジェニック」という用語は、本発明のプロモーターまたはこれらの変異体を含む染色体外で複製するDNA配列をもつ細胞を含む動物を包含する。トランスジェニック動物は、齧歯類またはヒトなどの哺乳動物であってもよい。
【0029】
本発明は、部分的には、β-アクチンおよびrpS21遺伝子のための新規プロモーターの発見および単離に基づいている。特に、本発明は、ハムスター、ラット、およびマウス、ならびにハムスターrpS21プロモーターを含むが、これらに限定されない齧歯類β-アクチン・プロモーターを特徴とする。実施例に記載されているように、本発明は、本発明のβ-アクチン・プロモーターがCMVプロモーターの活性よりも高いプロモーター活性を有するという発見および実証に基づく。本発明は、ハムスターrpS21プロモーターが、一定の遺伝子を発現するために使用したときに、少なくともハムスターβ-アクチン・プロモーターと同程度に活性であるという発見にさらに基づく。
【0030】
本発明は、ハムスター、ラット、およびマウスを含む齧歯類β-アクチン・プロモーターのヌクレオチド配列、ならびにこれらの使用方法を提供する。本発明は、プロモーター活性を有するプロモーターの相同体および断片を含む本発明のプロモーターの変異体の同定および単離のための方法をさらに提供する。加えて、本発明は、ハムスターrpS21プロモーターのヌクレオチド配列、およびその使用方法を提供する。
【0031】
本発明に至る実験において、ハムスターβ-アクチン・プロモーターのゲノムクローンは、遺伝子発現連続解析(Serial Analysis of Gene Expression)または「SAGE」(Valculesco et al. (1995) Science, 270:484-487およびValculesco et al. (1987) Cell, 88: 243-251)と呼ばれる技術により、活性なプロモーターとしてこれを同定した後にCHO細胞から単離された。SAGE技術は、全ゲノムの転写プロファイリングのために使用することができる。β-アクチンは、SAGEを使用してCHO細胞において最も活性なプロモーターの一つとして同定された。これにより、CHO細胞においてβ-アクチンのためのプロモーターをクローン化するに至った。同様のアプローチをCHO細胞からのハムスターrpS21プロモーターの単離のために使用した。このアプローチは、対応するβ-アクチン・プロモーターまたはrpS21プロモーターが別のゲノムにおいても活性であることを確認するためにその他のゲノムの転写プロファイリングを作製するために使用されてもよい。このようなプロモーターは、当技術分野において公知の標準的な技術、または本明細書に記載されているものを使用してクローン化することができる。本発明のプロモーターの変異体は、配列番号:1、2、3、または39に記載される1つまたは複数のプロモーター配列に対するハイブリダイゼーションによって同定することができる。二本鎖核酸の融解温度(Tm)は、相同性が1%減少するごとに1〜1.5℃減少することが周知である(たとえば、Bonner et al. (1973) J. Mol. Biol., 81:123を参照されたい)。従って、種相同体は、たとえば、推定上のヌクレオチドを配列番号:1、2、3、もしくは39、またはこれらの変異体のヌクレオチド配列とハイブリダイズさせること、およびこのようなハイブリッドの融解温度を配列番号:1、2、3、もしくは39、またはこれらの変異体のヌクレオチド配列と相補的ヌクレオチド配列とを含むハイブリッドの融解温度と比較することによって同定することができる。次いで、塩基対ミスマッチの数を試験ハイブリッドについて算出することができる。従って、試験ハイブリッドの融解温度と配列番号:1、2、3、または39の配列のいずれか一つの推定上の相同体とを含むハイブリッド間の相違が小さいほど、推定上のヌクレオチド配列と本発明のプロモーター配列との間の相同性が高いことを示す。たとえば、モルモット、マーモット、ジャコウネズミ、スナネズミ、リス、シマリス、プレーリードッグ、ビーバー、ヤマアラシ、およびハタネズミなどのその他の齧歯類種における変異体は、本発明のプロモーターおよびこれらの変異体に対してより高い相同性を示し得る。
【0032】
ヌクレオチド配列の二本鎖のハイブリダイゼーションの効率に対して、種々の因子が影響を及ぼすことが公知である。これらは、たとえば、ヌクレオチド配列の長さ、塩濃度、および配列のG/C含量を含み得る。たとえば、DNAの長い断片のハイブリダイゼーションのために、Howley et al. (1979) J. Biol. Chem., 254:4876は、50%のDNAが相補鎖にハイブリダイズする融解温度が以下によって定義されることを決定した:

式中
Mは、一価カチオンのモル濃度であり;
(%G + %C)は、配列中のGおよびCヌクレオチドのそれぞれの分率であり;
Lは、ハイブリッドDNAの長さであり;ならびに、
Fは、ホルムアミドのモル濃度である。
【0033】
Ausubel et al. (1995) Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, sections 2, 4, および6に例示されるとおり、適切なハイブリダイゼーション条件は、最小の実験により当業者が選択することができる。加えて、ストリンジェントな条件は、Sambrook et al. (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed., Cold Spring Harbor Press, chapters 7, 9, および 11に記載されている。
【0034】
低いストリンジェンシー・ハイブリダイゼーション条件の非限定の例は、以下の通りである。DNA含有フィルターを35%のホルムアミド、5×SSC、50mM トリス-HCl(pH 7.5)、5mM EDTA、0.1% PVP、0.1% Ficoll(商標)、1% BSA、および500μg/ml 変性サーモン精液DNAを含む溶液中で40℃において6時間前処理する。ハイブリダイゼーションは、以下の修飾と同じ溶液中で行う:0.02% PVP、0.02% Ficoll(商標)、0.2% BSA、100μg/ml サーモン精液DNA、10%(wt/vol)デキストラン硫酸、および5〜20×106 32P-ラベルしたプローブを使用する。フィルターを、ハイブリダイゼーション混合物中で40℃において18〜20時間インキュベートし、次いで2×SSC、25mM トリス-HCl(pH 7.4)、5mM EDTA、および0.1% SDSを含む溶液中で55℃において1.5時間洗浄する。洗浄溶液を新たな溶液と置換して、60℃でさらに1.5時間インキュベートする。フィルターを乾燥状態に吸い取り、オートラジオグラフィーのために曝露する。当技術分野において周知のその他の低ストリンジェンシー条件を使用してもよい(たとえば、クロス種ハイブリダイゼーションのために使用されるもの)。
【0035】
高いストリンジェンシー・ハイブリダイゼーション条件の非限定の例は、以下の通りである。DNA含有フィルターを6×SSC、50mM トリス-HCl(pH 7.5)、1mM EDTA、0.02% PVP、0.02% Ficoll(商標)、0.02% BSA、および500μg/ml 変性サーモン精液DNAを含む緩衝液中で65℃において8時間〜一晩行う。フィルターを100μg/mlの変性サーモン精液DNAおよび5〜20×106cpmの32Pラベルされたプローブを含むプレハイブリダイゼーション混合物中で65℃において48時間ハイブリダイズさせる。フィルターの洗浄は、2×SSC、0.01% PVP、0.01% Ficoll(商標)、および0.01% BSAを含む溶液中で37℃において1時間行う。これを、続いて0.1×SSC中で50℃において45分間洗浄する。
【0036】
適度なストリンジェンシー・ハイブリダイゼーション条件の非限定の例は、5×SSC、0.5% SDS、1.0mM EDTA(pH 8.0)中でフィルターを予洗;42℃で50% ホルムアミド、6×SSCにおけるハイブリダイゼーション;および60℃で0.5×SSC、0.1% SDS中でのフィルターの洗浄を含む。
【0037】
また、本発明のプロモーターの変異体は、推定上の変異体のヌクレオチド配列と配列番号:1、2、3、もしくは39に記載した配列、またはこれらの相補鎖との間のパーセント同一性によって同定することができる。パーセント同一性は、たとえば目視検査によって、または当技術分野において公知の種々のコンピュータプログラムを使用することによって、または実施例に記載されているように決定してもよい。たとえば、2つのヌクレオチド配列のパーセント同一性は、Devereux et al.(1984)Nucl. Acids. Res., 12:387によって記載され、University of Wisconsin Genetics Computer Group (UWGCG)から入手可能なGAPコンピュータプログラムを使用して配列情報を比較することによって決定することができる。また、パーセント同一性はTatusova et al. (1999) FEMS Microbiol. Lett., 174:247によって記載された、BLAST(登録商標)プログラム(www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST)を使用して2つのヌクレオチド配列を整列させることによって決定することができる。たとえば、BLAST(登録商標)プログラムを使用するヌクレオチド配列の整列については、デフォルト設定は、以下の通りである:マッチに対するリワード(reward)は2であり、ミスマッチに対するペナルティー(penalty)は-2であり、オープンギャップ(open gap)およびエクステンションギャップ(extension gap)ペナルティーは、それぞれ5および2であり、ギャップ x ドロップオフ(dropoff)は50であり、エクスペクト(expect)は10であり、ワード・サイズ(word size)は11であり、ならびにフィルターはオフである。
【0038】
配列同一性によって同定される本発明のプロモーターは、たとえば、ラットおよびマウスβ-アクチン・プロモーターについて配列番号:2および3に記載される配列を含み、それぞれ配列番号:1に記載したハムスターβ-アクチン・プロモーター配列のnt 1〜nt 3007に対して67%および80%の同一性を示す。さらなる変異体も、本明細書に記載されている種々の技術および当技術分野において公知のものを使用して容易に同定することができる。
【0039】
ハムスターβ-アクチン・プロモーター(配列番号:1)と公知のβ-アクチン・プロモーターとの間のパーセント同一性は、記載されているように決定することができる。たとえば、配列番号:1を、BLAST(登録商標)配列整列をデフォルト・パラメーターで使用して、ヒトβ-アクチン・プロモーター(配列番号:5)と比較するときに、配列番号:1の全長にわたって約10%の同一性のみを示す。同様に、配列番号:1をニワトリβ-アクチン・プロモーター(配列番号:6)と比較するときに、配列番号:1の全長にわたって約1%の同一性のみを示す。このような低レベルの相同性のため、ヒトおよびニワトリβ-アクチン・プロモーターは、配列番号:1のハムスターβ-アクチン・プロモーター配列の変異体であるとは考えられない。さらに、配列番号:1の3'部分は、ハムスターβ-アクチン遺伝子配列の5'部分に対して有意な相同性を示す(GenBank(登録商標)アクセッション番号U20114;配列番号:4)。特に、図3にて図示したとおり、配列番号:4の最初の1232ヌクレオチドは、配列番号:1の3'部分と98%の同一性を示す。この同一性は、ハムスターβ-アクチン遺伝子の最初のイントロン領域にある。全体的に、配列番号:4は、配列番号:1の全長にわたって40%の同一性のみを示す。さらにまた、配列番号:4またはこれらの断片について、何もプロモーター活性は記載されていなかった。
【0040】
BLAST(登録商標)配列整列をデフォルト・パラメーターで使用して、以前より公知のヒトrpS21プロモーター(GenBank(登録商標)アクセッション番号AJ250907のnt 1〜2344)と配列番号:39のハムスターrpS21プロモーターとのnt 1〜1958の間には、何ら相同性が検出されない。配列番号:39のハムスターrpS21プロモーターとマウスrpS21遺伝子(GenBank(登録商標)アクセッション番号NT_039212)にわたるマウス・ゲノムDNAとの間で非常に低レベルの相同性が検出される。マウス配列内には2つの相同領域がある。第1は、配列番号:39のnt 1775〜nt 1945である(172ntのうちの137マッチ)。第2は、配列番号:39のnt 580〜nt 851である(274ntのうちの208マッチ)。これらの2つの相同領域は、ハムスター配列(配列番号:39)において923ntによって、およびマウス・ゲノム配列(NT_039212)において1745ntによって分離される。
【0041】
従って、いくつかの態様において、プロモーター活性を有する単離されたプロモーターまたはこれらの変異体は、配列番号:39のnt 1775〜nt 1945、および/または配列番号:39のnt 580〜nt 851に記載されたヌクレオチド配列を含む。任意に、このようなプロモーターまたは変異体は、nt 852〜nt 1774に記載された配列番号:39の全てまたは一部をさらに含む。
【0042】
配列番号:1、2、3、もしくは39に記載のヌクレオチド配列、またはこれらの変異体は、配列番号:1、2、3、もしくは39に記載された配列、またはこれらの変異体の1つまたは複数の配列にハイブリダイズするゲノム配列の単離のためにゲノムライブラリーをスクリーニングするためのプローブとして使用することができる。
【0043】
本発明に従ったプロモーターまたはこれらの変異体は、これが発現する異種核酸に対して機能的に連結される。プロモーターは、単独で、またはたとえばエンハンサーおよびリプレッサーなどのその他の調節エレメントと共に使用することができる。または、このようなプロモーターは、宿主細胞または動物のゲノムに組み込んで、これにより宿主内での内因性遺伝子を発現することができる。本発明によるプロモーターは、異種核酸の発現のためにベクターにおいて使用することができる。ある態様において、異種核酸は、治療的タンパク質をコードする。治療的タンパク質の例は、α-グルコシダーゼ、酸性スフィンゴミエリナーゼ、インスリン、組織プラスミノーゲンアクチベーター、甲状腺刺激ホルモン、エリスロポエチン、グルコセレブロシダーゼ、α-ガラクトシダーゼ、および種々の抗体を含むが、これらに限定されない。抗体の例は、たとえば、TGF-β-1、2、および3などのTGFーβファミリーのメンバーに結合する抗体を含むが、これに限定されない。
【0044】
本発明は、本発明のプロモーターまたはプロモーター活性を有するこれらの変異体を含むベクターをさらに提供する。一部の態様において、本発明のベクターは、プロモーターの下流に異種核酸の挿入のための適切な制限酵素部位を含む。このような制限酵素部位は、単一の制限酵素のための制限部位を含んでもよく、またはこれは、多くの異なる異種核酸の挿入を容易にするために、種々の制限酵素のための制限部位を含んでいてもよい。また、本発明に従ったベクターは、異種核酸を挿入するための部位の下流にポリアデニル化配列を含んでもよい。また、本発明のプロモーターを含むベクターは、細菌複製のための原核生物DNAエレメント、および細菌細胞におけるベクターの増殖および選択のための抗生選択マーカー、ならびにたとえば、終結シグナルなどの転写物のプロセシングを制御するさらなるDNAエレメントを含んでいてもよい。ベクターは、宿主細胞の外側にタンパク質を直接分泌するためのDNA配列をさらに含んでもよい。
【0045】
ある態様において、本発明のプロモーター配列を含むベクターは、二シストロン(bicistronic)ベクターである。二シストロン・ベクターは、2つの核酸が単一の転写物を産生するように転写することができるようにデザインされる。このような転写物は、通常、1つのタンパク質に翻訳される第1の部分および第2のタンパク質に翻訳される第2の部分を含む。1つのタンパク質は、治療的タンパク質などの関心対象のタンパク質であることができ、第2のタンパク質は選択可能なマーカーとして使用してもよい。二シストロン・ベクターは、通常プロモーターおよび内部リボソーム導入部位または2つの核酸間に配置されたIRESを含む。これにより、単一の二シストロンmRNAとして2つの核酸を転写することができる。このように、本発明のβ-アクチン・プロモーターまたはこれらの変異体と、2つの異種核酸間のIRESとを含むベクターを構築することができる。本発明のβ-アクチン・プロモーターまたはこれらの変異体を含む二シストロン・ベクターは、たとえば酸性スフィンゴミエリナーゼまたはα-グルコシダーゼなどの治療的タンパク質を発現させるために、リポーター遺伝子とともに使用することができる。
【0046】
本発明は、プロモーター活性を有する本発明のβ-アクチンおよびrpS21プロモーターの変異体の同定のためのアッセイ法をさらに提供する。たとえば、本発明のプロモーターまたはこれらの変異体は、リポーター遺伝子の上流で適切なベクター内に挿入され、リポーター遺伝子の発現は、プロモーター活性の決定因子として使用される。たとえば、プロモーター活性を有する本発明のプロモーターの変異体の同定のために、このような変異体は、リポーター遺伝子の上流にクローン化される。リポーター遺伝子は、視覚的に検出可能なシグナルを生じる反応を触媒する酵素をコードしてもよい。このようなリポーター遺伝子の例は、β-ガラクトシダーゼおよびルシフェラーゼを含む。その他のリポーター遺伝子の例は、アルカリホスファターゼ、ノパリン・シンターゼ、オクトピン・シンターゼ、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼを含む。下記に記載した実施例では、Discosoma striata赤色蛍光タンパク質(RFP)をコードするリポーター遺伝子を、プロモーター活性を測定するために使用している。しかし、当業者は、プロモーター活性を決定するために任意の適切なリポーター遺伝子およびアッセイ技術を使用することができる。プロモーターからのリポーター遺伝子の発現は、インビトロでの発現系においてアッセイしてもよく、またはこれは、細胞内で(たとえば、インビボで)あってもよい。
【0047】
本発明は、異種遺伝子に機能的に連結されたプロモーターを含む本発明のベクターをトランスフェクトされた宿主細胞をさらに提供する。このような宿主細胞は、原核細胞または真核細胞であることができる。宿主細胞は、培養液中の細胞であることができ、または動物内に存在することができる。培養液中の宿主細胞の例は、HeLa細胞、CHO細胞、NSO、HEK細胞、BHK細胞、NIH-3T3、MDCK細胞、およびCOS細胞を含むが、これらに限定されない。実施例に記載されているように、培養液中の宿主細胞は、懸濁液において、またはマイクロキャリア上のいずれかで培養することができる。
【0048】
本発明の核酸を宿主細胞に導入するために多くの適切な方法を使用することができる。本発明のプロモーター配列を含むベクターは、原核生物または真核生物細胞のいずれかに導入することができる。真核細胞への核酸の導入のために使用してもよい技術の例は、たとえば、リン酸カルシウム沈殿、DEAE-デキストラントランスフェクション、電気穿孔法、リポソームを媒介したトランスフェクション、ウイルス・ベクターを使用する形質導入などを含む。
【0049】
本発明のプロモーターを使用してタンパク質を産生するために、多くの適切な発現系を使用することができる。このような発現系の1つは、異種核酸に機能的に連結された本発明のプロモーターまたはこれらの変異体を含むベクターに導入されたジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子を使用する。または、DHFR欠損細胞を発現のために使用する場合、DHFRを発現する発現ベクターを宿主細胞に同時トランスフェクトすることができる。メトトレキセート(MTX)(必須酵素DHFRの競合阻害剤)の濃度を増大してトランスフェクション細胞に適用すると、DHFRの高発現レベルの細胞だけが生存する。メトトレキセート・レベルをさらに増大するにつれ、DHFR遺伝子のコピー数を増幅する細胞だけが生存する。このような方法で、プロモーターを含むベクターのコピー数を増大することによって、異種核酸の発現増加を達成し、これによりタンパク質産生の増大に至る。第2の発現系は、異種核酸に機能的に連結された本発明のプロモーターまたはこれらの変異体を含むベクターに導入されたグルタミンシンセターゼ(GS)遺伝子を使用する。タンパク質産生の増大に至るベクターのコピー数を増大するために、GSの競合阻害剤、たとえばメチオニンスルホキシミン(MSX)の添加が使用される。
【0050】
本発明のプロモーターを使用してタンパク質を発現するために、任意の適切な原核生物または真核生物発現系を使用することができる。発現系の例は、植物、バキュロウイルス、酵母、細菌、ショウジョウバエ、哺乳動物、および無細胞発現系を含むが、これらに限定されない。発現ベクターを哺乳動物、細菌、酵母、昆虫、および植物細胞に導入するための標準的な方法は、たとえば、Ausubel(1995), 前記によって提供される。
【0051】
ある態様において、本発明のプロモーターおよびこれらの変異体は、遺伝子治療法において使用される。たとえば、本発明のプロモーターまたはこれらの変異体は、これが関心対象の遺伝子に機能的に連結されるようにウイルスまたは非ウイルス遺伝子治療ベクターにクローン化される。プロモーターは、ベクターが被検者、たとえばヒト患者に送達されたときに、治療的タンパク質をコードする遺伝子の発現を駆動する。
【0052】
以下の実施例は、本発明の例示の態様を提供する。当業者であれば、当技術分野において、本発明の趣旨および範囲を変更することなく行ってもよい多数の修飾および変更を認識するであろう。このような修飾および変更は、本発明の範囲内に包含される。本実施例は、本発明をいかなる形であれ限定しない。
【実施例】
【0053】
以下は、引き続く実施例に使用される材料および方法を記載する。
【0054】
A. CHO-K1細胞の培養
CHO-K1細胞は、American Type Culture Collection(Manassas, VA)(ATCC番号CRL-9618)から得た。細胞は、10%のドナー子ウシ血清(DCS)(Invitrogen)を補った925細胞培養培地中で、15g/LのDE-52マイクロキャリア(Whatman, Kent, UK)を含む250mlの撹拌培養で培養した。細胞は、20〜40%のO2および5%のCO2のオーバーレイを使用して37℃で維持し、約60rpmで6日間撹拌した。血清の存在下における細胞培養に続いて、培養を毎日80%(v/v)の無血清925培地での置換に供した。細胞は、細胞からRNAを抽出する前に、無血清培地中で11日間培養した。mRNA半減期の決定のために、7 mg/LのアクチノマイシンDを無血清相内で培養液に添加した。
【0055】
B. RNA抽出および解析
RNAは、Promega(Madison, WI)からのRNAgentsキットを使用してCHO-K1細胞から単離した。遺伝子発現は、ノーザンブロッティングによって解析した。ノーザンブロット解析のために、5μgのRNAをNorthernMax(登録商標)-Glyキット(Ambion, Austin, TX)を使用して変性グリコキサール(glycoxal)/ジメチルスルホキシド・ゲル上での電気泳動法によって分離した。その後、RNAをナイロン膜(Schleicher & Schuell, Dassel, Germany)に転写した。ブロットは、PCRによって増幅した以下の遺伝子プローブでプローブした:ガレクチン(GenBank(登録商標)アクセッション番号M96676、nt 14-383);β-アクチン(Genbank(登録商標)アクセッション番号U20114、nt 238-381);EF-1(GenBank(登録商標)アクセッション番号D00522、nt 7-192);rpS21(GenBank(登録商標)アクセッション番号X79059、nt 68-340);フェリチン(GenBank(登録商標)アクセッション番号M99692、nt 182-303)、または市販されているグリセリルデヒド3-ホスフェート・デヒドロゲナーゼ(GAPDH)断片(Ambion、Austin、TX)。それぞれのPCR産物をランダムプライミングによって放射標識した。各々の遺伝子の増幅のために使用するPCRプライマーを表1に一覧表を記載してある。
【0056】
【表1】

【0057】
C. CHO-K1細胞のトランスフェクション
一過性トランスフェクションのために、CHO-K1細胞を10%のウシ胎児血清(FBS)(Invitrogen)を含む925培地において6-ウェル・プレート上にまいた。細胞は、Lipofectamine(商標)(Invitrogen)を使用してトランスフェクションする前に、50〜75%のコンフルエンシーまで培養した。pDsRED-1プラスミド(Clontech, Palo Alto, CA)を、トランスフェクション細胞を同定するために使用する細胞表面CD20マーカーをコードするpSV40-CD20プラスミドと同時トランスフェクトした。このpDsRED-1プラスミドは、Discosoma striata赤色蛍光タンパク質(RFP)をコードし、その発現をFACSによって検出することができる。トランスフェクションは、製造業者の説明書に従って行った。簡潔には、細胞を無血清Opti-MEM(商標)培地(Invitrogen)中で16時間、脂質-DNA複合体と共にインキュベートした。培地を10%のFBSを含む925培地で置換して、細胞をトランスフェクション48時間後に回収した。
【0058】
D. 蛍光標示式細胞分取解析
FACS解析のために、1×106細胞は、トリプシン処理し、2%のFBSを含む冷却PBSで洗浄した。その後、細胞を氷上で30分間、FITCラベルした抗CD20抗体(Pharmingen, San Diego, CA)と共にインキュベートした。次いで、細胞を2%のFBSを含む冷却PBSと洗浄し、1mlの冷却PBS/2%のFBS中に再懸濁した。FACS解析は、FACSCalibur(商標)(BD Biosciences, San Diego, CA)を使用して行った。プロモーター強度を評価するために、これらの赤色蛍光タンパク質平均蛍光強度について全てのCD20-ポジティブ・イベントを評価した。
【0059】
E. ASMアッセイ法
酸性スフィンゴミエリナーゼ(ASM)をコードするベクターをトランスフェクトした細胞からの培地を、12.5mMの濃度の合成基質2-(N-ヘキサデカノイルアミノ)-4-ニトロフェニルホスホリルコリン(Calbiochem, San Diego, CA)の0.1mM 酢酸亜鉛、0.25mg/ml ウシ血清アルブミン(BSA)、および0.15% Tween 20を含む250mM 酢酸ナトリウム、pH 5.5溶液と共に37℃でインキュベートした。反応を50%のエタノールを含む0.2M グリシン-NaOHを添加することによって停止した。ASMの活性または量は、415nmで光学濃度を測定することによって、比色アッセイ法を使用して産生される2-(N-ヘキサデカノイルアミノ)-4-ニトロフェノラートの量によって測定した。
【0060】
F. GAAアッセイ法
α-グルコシダーゼ(GAA)をコードするベクターをトランスフェクトした細胞からの培地を、40mMの濃度の合成基質p-ニトロフェニル-D-a-グルコピラノシド(Sigma, St. Louis, MO)の0.1% ウシ血清アルブミン(BSA)を含む50mM 酢酸ナトリウム(pH 4.3)溶液と共に37℃でインキュベートした。反応を0.3M グリシン(pH 10.6)を添加することによって停止した。GAAの活性または量は、400nmで光学濃度を測定することによって比色アッセイ法を使用して産生されるp-ニトロフェニルの量によって測定した。
【0061】
実施例1:CHO-K1細胞におけるβ-アクチン・プロモーターの同定
連続解析遺伝子発現(SAGE)を、無血清の灌流された撹拌培養中で培養したCHO-K1細胞の全ての転写プロフィールを解析するために使用した。
【0062】
SAGEにおける最初の工程は、標準的な技術を使用してCHO-K1細胞から単離されたmRNAからの二本鎖DNAの合成を含む。その後、cDNAを、アンカリング酵素とも呼ばれ、かつ大部分の転写物を少なくとも一回切断すると思われる制限エンドヌクレアーゼNlaIIIで切断した。それぞれの切断されたcDNAの3'部分をストレプトアビジン・ビーズに結合することによって単離した。次いで、cDNAプールを半分に分けて、II型制限エンドヌクレアーゼ部位(たとえば、FokI)を含むリンカーに対する制限部位のアンカーを介してライゲートした。II型制限エンドヌクレアーゼは、これらの非対称認識部位から20塩基対までの間隔をおいた定義された距離で切断する。II型酵素は、典型的にはタギング酵素と呼ばれている。タギング酵素とのライゲーション産物の切断により、cDNAの短い部分と共にリンカーの放出を生じる。アンカリングおよびタギング酵素の組み合わせにより、遺伝子に独特の10塩基対タグを生じる。
【0063】
このアプローチを使用して、それぞれの遺伝子のための配列タグを、最も3'のNlaIII部位、続く独特の10bp配列によって表した。タグを公知の遺伝子に割り当てることができない例では、SAGEライブラリーcDNAをSAGEタグおよび共通に使用されるM13フォワード・プライマー(GTTTTCCCAGTCACGAC、配列番号:18)を使用してPCR増幅した。その後、PCR産物をpCR2.1ベクター(Invitrogen)にクローン化し、標準的な技術を使用してシーケンスした。遺伝子の同定は、GenBank(登録商標)において公知の配列に対するPCR産物の配列の相同性に基づいた(www.ncbi.nlm.nih.gov/genbank)。
【0064】
これらのマウスおよび/またはラット対応物に対するヌクレオチド配列のBLAST(登録商標)整列(www.ncbi.nlm.nih.gov/blast)を行ってタグが由来する遺伝子を同定した。この解析において同定された16個の最も豊富なタグのうち(表2)、全ての、しかし一つのタグについて遺伝子を同定した。これらの15個の同定された遺伝子のうち、5つはミトコンドリア起源であり、3つは核反復因子であった。それぞれの細胞にこれらの遺伝子の複数コピーが存在するものは、SAGE出力においてこれらを大量に生じる可能性が高かった。このような配列は、さらなる評価について考慮しなかった。
【0065】
【表2】

【0066】
このアプローチを使用して、CHO-K1細胞において最も活性な4つの遺伝子のプロモーターを同定した。これらのプロモーターは:β-アクチン、リボソームタンパク質S21(rpS21)、伸長因子1(EF-1)、およびグリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)であった。CHO-K1細胞における高レベルのこれらのmRNAは、これらのそれぞれのプロモーターのプロモーター活性に、またはmRNAの生得的安定性のいずれかに起因する。SAGE解析は、遺伝子のmRNAについて全体の定常状態レベルの定量化を提供するが、これは、mRNAの高発現の機序として遺伝子のプロモーター活性とmRNAの安定性との間を区別しない。2つの可能性の間を区別するために、mRNAの半減期を測定した。簡潔には、候補遺伝子の発現を、アクチノマイシンDでの細胞の処理に続いて、多様な時点での撹拌培養におけるCHO-K1細胞のノーザンブロット解析によって評価した。
【0067】
最初に、rpS21、GAPDH、およびEF-1遺伝子を解析して、比較的安定なmRNAを有し、8時間よりも大きい半減期をもつことを全てにおいて見いだした。これらの結果は、これらのmRNAのより高い存在量が、mRNAのより高い安定性により生じ、それぞれのプロモーターがより高い活性を必要としないことを示唆した。
【0068】
ガレクチン、フェリチン、およびβ-アクチンの半減期を、アクチノマイシンDでの処理の0、4、8、10、および15時間後に、上記の通りノーザンブロット解析によってmRNAを測定した。代表的ノーザンブロットを図6Aに示してある。相対的mRNAレベルを図6Bに視覚的に表してある。これらのデータは、ガレクチンおよびフェリチンの両方が8時間を超える半減期を有したが、β-アクチンmRNAがより迅速に代謝回転されて約6時間の半減期を持つことを示す。従って、全体の定常状態mRNAレベルに対するプロモーター強度の相対寄与は、CHO-K1細胞におけるその他の候補よりもβ-アクチンについてより大きかった。従って、これらの条件下で、β-アクチン・プロモーターは、強力なプロモーターとして特徴づけることができる。
【0069】
実施例2:ハムスターβ-アクチンおよびrpS21プロモーターの単離および特徴付け
実施例1に記載した結果を考慮して、最も高い存在量(rpS21)をもつ候補および最も迅速なmRNA代謝回転(β-アクチン)のものをさらなる研究のために選択した。ハムスターβ-アクチンおよびrpS21プロモーターのゲノムDNAを単離するために、λ FIX II CHO-K1ゲノムライブラリー(Stratagene, LaJolla, CA)をスクリーニングした。
【0070】
β-アクチンおよびrpS21ゲノムクローンを単離するために、大腸菌菌種XL1-Blue MRA(P2)を10mMの硫酸マグネシウムおよび0.2%のマルトースを含むLB培地中で培養した。細菌細胞をペレットにし、600nmで0.5の吸光度の読みで、10mMの硫酸マグネシウムに再懸濁した。ライブラリーからの約1,000,000のファージを37℃で15分間細菌細胞と共にインキュベートした。融解したアガロースをファージ/細菌混合物に添加し、細菌を寒天を含むBioAssayプレート(Nunc, Rochester, NY)上に重ねた。上層アガロースを硬化し、続いてプレートを逆にして30℃で一晩培養した。その後、プレートを冷却し、Genescreen Plus(商標)ナイロンフィルター(Perkin Elmer Life Sciences, Wellesley, MA)で2回重ね合わせた。ナイロンフィルターを1.5Mの塩化ナトリウムと0.1Mの水酸化ナトリウム中で2分間変性させ、その後中和した。フィルターをUV架橋して、プローブした。
【0071】
ハムスターβ-アクチン・プロモーターの単離のために使用するプローブは、β-アクチン遺伝子(GenBank(登録商標)アクセッション番号U20114のうちのnt 238-381)の5'末端からのランダムなPCRに由来した。ハムスターrpS21プロモーターの単離のために使用するプローブは、配列番号:12および13に記載されたプライマーを使用するPCRに由来した。β-アクチンおよびrpS21プロモーターの両方に対してハイブリダイズさせるファージは、標準的な技術を使用して精製した。ファージ可溶化液から単離されたファージ由来のDNAをクロロホルム、フェノール、フェノール/クロロホルム(1:1)、および最後にクロロホルムで連続抽出することによって精製した。
【0072】
ハムスターβ-アクチン遺伝子プロモーターの単離のために、エタノール沈殿に続いて、DNAをβ-アクチン・ハムスター遺伝子の5'部分の部位を有した制限酵素で消化し、ゲノムライブラリーをスクリーニングするために使用した同じプローブを使用するサザンブロット法に供した。
【0073】
このアプローチを使用して、約7kbのAvrII断片および約5.5kbのSalI断片を作製し、その両方をプローブにハイブリダイズさせた。その後、これらをpBluescript II KSプラスミド(Stratagene)にクローン化した。7kbのAvrII断片は、ATCC参照番号PTA-5309を有し、2003年7月3日にAmerican Tissue Culture Collection, P.O.Box 1549, Manassas, VA 20108, U.S.Aに寄託した。
【0074】
AvrIIおよびSalI断片を含むプラスミドをSfoIで消化し、β-アクチン遺伝子のオープンリーディングフレームの一部を含んだ断片の3'末端を除去した。次いで、これらの断片をpDsRED-1プラスミド(Clontech)にクローン化し、pDsRED-Avr(6.5kb)およびpDsRED-Avr(5.1kb)と呼ばれる構築物を作製した。β-アクチン遺伝子のイントロン1の全てを含む構築物を作製するために、以下のプライマーを使用してPCRを行った:

【0075】
PCR断片は、2つの産物を生じた:約7kbの予測された産物とより小さな予想外の3kbの産物。これらのPCR産物を両方ともpDsRED-1プラスミド(Clontech)にクローン化し、構築物pDsRED-Avr(1)-7およびpDsRED-Avr(1)-3を作製した。
【0076】
pDsRED-1プラスミド(Clontech)にクローン化されたβ-アクチン・ハムスター・プロモーターの各々の断片をCHO-K1細胞にトランスフェクトした。各々のハムスターβ-アクチン・プロモーター断片の相対的プロモーター強度を上記の通りにFACSを使用して測定した。活性アッセイ法の結果を以下に要約してある。
【0077】
nt-1970〜nt+1037に及ぶβ-アクチン・プロモーターのAvr(1)-3断片は、最高のプロモーター活性を示した。nt-6000からnt+1037に及ぶAvr(1)-7断片は、Avr(1)-3によって示される活性の47%の活性を示した。Avr(6.5Kb)、Sal(5.1Kb)、アクチン(3kb)、およびアクチン-P(2.8kb)断片は、それぞれAvr(1)-3の断片と比較して、2%、2%、2%、および0%のプロモーター活性だけを示した。
【0078】
その後、Avr(1)-3断片をシーケンスし、配列を配列番号:に1記載してある。加えて、Avr(1)3の5'の上流の660nt領域もシーケンスした。nt-2622〜nt+1037までのこのより長い配列を配列番号:7に記載してある。
【0079】
rpS21プロモーターの単離のために、ハイブリダイズするファージからのDNAの単離に続いて、DNAを以下のプライマーを使用するPCRによって増幅した:

PCR産物をベクターPCR2.1(Invitrogen)にクローン化し、その後シーケンスした。ハムスターrpS21プロモーターのヌクレオチド配列を配列番号:39に記載してある。プロモーターは、クローニング部位に隣接するEcoRI部位を使用して切除し、pDsRED1-1ベクター(Clontech)にクローン化した。2kbのハムスターrpS21プロモーター配列は、ATCC参照番号PTA-6149を有し、American Tissue Culture Collection, P.O. Box 1549, Manassas, VA 20108, U.S.Aに2005年8月5日に寄託した。
【0080】
実施例3:ハムスターβ-アクチンとCMVプロモーターの機能比較
Avr(1)-3のプロモーター活性をCMV最初期プロモーター(Invitrogen)およびヒトEF-1プロモーター(Invivogen)のものと比較した。
【0081】
CHO-K1細胞を、それぞれRFP遺伝子に機能的に連結されたAvr(1)-3、CMV最初期プロモーター上流、またはヒトEF-1プロモーターのいずれかを含むpDsRED-1プラスミドで一過性にトランスフェクトした。RFPの発現は、トランスフェクション48時間後にFACSによって評価した。
【0082】
図7Aに示したとおり、Avr(1)-3をトランスフェクトした細胞において、β-アクチン・プロモーター配列(配列番号:1)は、CMVまたはEF-1プロモーターのいずれかと比較して高レベルのRFP発現を示した。特に、発現は、CMVプロモーターとよりもAvr(1)-3で約2倍高かった。
【0083】
この観察された発現プロフィールが、安定なトランスフェクタントにおいて維持可能であるかどうかを決定するために、トランスフェクトされたCHO-K1細胞をG418(商標)で2週間選択した。次いで、細胞の生存プールにおけるRFPの発現を評価した。図7Bに図示するように、一過性トランスフェクション細胞と同様に、最高のRFP発現は、Avr(1)-3、配列番号:1に記載されたβ-アクチン・プロモーター配列をトランスフェクトした細胞において観察した。
【0084】
実施例4:BHK-21およびHEK293細胞におけるハムスターβ-アクチン・プロモーターの活性
ハムスターβ-アクチン・プロモーターの活性は、実施例3に記載されているように安定なトランスフェクション・アッセイ法を使用して、BHK-21(ATCC番号CCL 10)およびHEK293(ATCC No.CRL-1573)細胞におけるCMVプロモーターのものと比較した。以前にCHO-K1細胞において見られたように、CMVプロモーター(表3)の代わりにβ-アクチン・プロモーターを使用するときに、BHK-21細胞におけるRFPの発現が有意に高かった。HEK293細胞において、ハムスターβ-アクチン・プロモーターは、CMVプロモーターのものとおおよそ同レベルでRFPの発現を生じた。
【0085】
【表3】

【0086】
実施例5:ラットおよびマウスβ-アクチン・プロモーター
配列番号:1に記載されたハムスターβ-アクチン・プロモーター配列の潜在的相同体について、公的に利用できるヌクレオチド配列のデータベースを、デフォルト設定を使用して検索した。
【0087】
β-アクチン・ハムスター遺伝子の5'部分(GenBank(登録商標)アクセッション番号U21104;配列番号:4)は、ハムスターβ-アクチン・プロモーター配列の3'部分に対して98%の同一性を示す。しかし、この相同性は、配列番号:1に記載されたハムスターβ-アクチン・プロモーター配列の全長にわたって40%だけである。この部分について、プロモーター活性はわかっていない。
【0088】
以前より公知のβ-アクチン・プロモーター:ヒト(GenBank(登録商標)アクセッション番号gi28337A)およびニワトリ(GenkBank(登録商標)アクセッション番号gi2170437)を、デフォルト設定を使用するBLAST(登録商標)プログラムでの相同性の決定のためにハムスターβ-アクチン・プロモーターと共に整列させた。ヒトおよびニワトリβ-アクチン・プロモーター配列は、ハムスターβ-アクチン・プロモーター(配列番号:1)に対してそれぞれ10%および1%の同一性だけを有した。
【0089】
ラット(Rattus norvegcus)ゲノム超コンティグ(GenBank(登録商標)アクセッション番号NW_042778)は、配列番号:1の全長にわたって67%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むものとして、ラット・ゲノムの第12染色体上で同定された。
【0090】
同様に、配列番号:1の全長にわたって80%の同一性を有するコンティグ(GenBank(登録商標)アクセッション番号NT_039324)は、マウス(Mus musculus)ゲノムの第5染色体上で同定された。
【0091】
ハムスター遺伝子配列、ならびにそれぞれ、ヒト、ニワトリ、ラット、およびマウスからのβ-アクチン・プロモーターとのハムスターβ-アクチン・プロモーター配列(配列番号:1)の配列の整列を図3、4、5、1、および2に示してある。
【0092】
実施例6:ラットおよびマウスβ-アクチン・プロモーター活性
それぞれ配列番号:2および3に記載したラットおよびマウス・プロモーター配列をpDsRED-1プラスミド(Clontech)にクローン化した。また、CMVプロモーターをpDsRED-1プラスミドのRFP遺伝子の上流にクローン化する。これらのプラスミドをCHO-K1細胞、または別の細胞株にトランスフェクトした。RFPの発現は、トランスフェクション48時間後にFACSによって評価する。
【0093】
ラットまたはマウスβ-アクチン・プロモーターをトランスフェクトした細胞は、同様の条件下でCMVプロモーターよりも高いRFP発現を示すと思われる。
【0094】
実施例7:ハムスターβ-アクチン・プロモーターを使用するタンパク質の発現
ハムスターβ-アクチン・プロモーターの活性をさらに評価するために、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)選択およびメトトレキセート(MTX)の増幅を利用する発現系を使用した。SV40初期プロモーターの制御下のDHFR遺伝子に加えて3kbのハムスターβ-アクチン・プロモーター(配列番号:1)を含むように、ベクターpGZ6はpCLHAXSV2DHFRプラスミドに由来した。pCLHAXSV2DHFRプラスミドは、Cole et al.(1993) Biotechnology, 11:1014〜1024によって以前に記載されている。簡潔には、pCLHAXSV2DHFRベクター内のメタルチオニン(MT)プロモーターをβ-アクチン・プロモーターと置換してpGZ6ベクターを作製した。関心対象の2つの治療的タンパク質、酸性スフィンゴミエリナーゼ(ASM)およびα-グルコシダーゼ(GAA)のためのcDNAを、ハムスターβ-アクチン・プロモーターに機能的に連結した。ASM cDNAは、IMAGE(商標)コンソーシアム(GenBank(登録商標)アクセッション番号AI587087)を介して得た。GAAのためのcDNAは、New York University School of MedicineでDr. Martinuikから得た。ASMおよびGAA cDNAのヌクレオチド配列は、それぞれ配列番号:37および38に記載してある。同様に、2つのcDNAを、同じDHFR発現カセットを含むベクター内のCMVプロモーターの下流にもクローン化した。DHFR欠損CHO-K1細胞株DXB11は、両セットの発現ベクターで3回トランスフェクトした。20nM MTXを含むヌクレオチド欠損培地中での選択の2週後、不均一な細胞のクローン化されていないプールをPBSで洗浄し、無血清培地へ移した。24時間後に、培地中のASMまたはGAAのレベルを測定した。
【0095】
このような実験の結果は、図8Aおよび8Bにおいて証明される。安定なプール内のハムスターβ-アクチン・プロモーターから産生されるASMのレベルは、CMVプロモーターでよりも2〜15倍高く、GAAプールの場合、2〜5倍高かった。
【0096】
β-アクチン・プロモーターが長期のタンパク質発現を持続する能力を評価するために、安定なプールをさらに使用した。典型的には、タンパク質の産業的産生のためには、選択工程の数および/またはMTXの濃度を増大することを含むプロセスを介して、より高い遺伝子コピー数をもつ細胞を選択することによって高発現が達成される。より高い発現を、β-アクチン・プロモーター(配列番号:1)でのこのストラテジーを経て達成することができるかどうかを決定するために、最初に20nM MTXで選択したASMプールを10倍高レベルのMTX(200nM)で2週間選択することによって増幅した。表4に要約したとおり、3回試験したβ-アクチン・プールのうちの2つは、開始20nMプールと比較して増幅後にASMの2〜3倍大きなレベルを示した。対照的に、試験したCMVプールのうちの1つだけが、これを導き出した20nMプールよりも高いレベルを示した。2つのプロモーターのいずれかで作製された6つのASMプールの中で、最も高い発現のβ-アクチン・プールは、CMVプロモーターで作製された最も高い発現プールで得られるASMの6倍の量を生じた。これは、少なくとも試験した条件下において、ハムスターβ-アクチン・プロモーターは、CMVプロモーターよりも優れていることを証明する。
【0097】
【表4】

【0098】
別の実験において、ハムスターβ-アクチン・プロモーターを、血餅を溶解するために患者に使用する血栓溶解薬である組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)タンパク質を発現するために使用した。ハムスターβ-アクチン・プロモーターがtPA遺伝子に機能的に連結されたpGZ6-tPA発現ベクターをCHO-DXB11細胞にトランスフェクトした。200nM MTXを含むヌクレオチド欠損培地中での増殖によって、安定なトランスフェクタントを選択した。次いで、生じるクローン化されていない細胞のプールを、導入遺伝子コピー数を増幅するために500nM MTXに供した。この細胞のプールをMTXから除去して、広げて、1リットルの撹拌培養中のCytopore(商標) 2マイクロキャリア上にまいた。細胞を血清含有培地中で7日間培養した。次の4日間に、毎日80%を無血清培地と交換することによって血清を除去した。次いで、培地収集を15日にわたって収集し、市販されているELISAキット(TintElize(登録商標)tPAキット, Biopool International, Inc., Ventura, CA)を使用してtPA発現について解析した。この実験の図9にて図示するように、ハムスターβ-アクチン・プロモーターの使用により、1日約30mg/Lの濃度でtPA発現を生じた。この結果は、その他のプロモーターを使用して4〜8日後に約30〜40mg/LのtPAが産生されたという最近発表された報告と比べて遜色がない(Senger et al.(2003)Biotechnology Progress 19:1199-1209;Dowd et al.(2000)Biotechnology Progress 16:786-794)。
【0099】
実施例8:ハムスターβ-アクチン・プロモーターを使用する抗体の産生
TGF-βファミリー・メンバーに対する抗体を産生するために、抗TGF-β抗体軽鎖または抗TGF-β抗体重鎖のいずれかをコードする核酸を、2つの別々のpGZ6発現ベクターにおいて、ハムスターβ-アクチン・プロモーターの下流にクローン化する。
【0100】
両方の発現ベクターをDHFR欠損CHO-K1細胞株DXB11にトランスフェクトする。MTXを含むヌクレオチド欠損培地における選択の2週後、軽鎖および重鎖の両方を含む抗TGF-β抗体のレベルを培地において測定する。
【0101】
実施例9:ハムスターrpS21プロモーターを使用するタンパク質の発現
CHO-DXB11細胞における発現について、ハムスターrpS21プロモーター活性をハムスターβ-アクチン・プロモーター活性と比較した。配列番号:39(pGZ31C-GAA)のハムスターrpS21プロモーターまたは配列番号:1のハムスターβ-アクチン・プロモーター(pGZ61C-GAA)のいずれかに機能的に連結されたヒトα-グルコシダーゼ(rhGAA)を含む発現ベクターをCHO-DXB11細胞にトランスフェクトした。いずれの場合においても、rhGAA遺伝子は、内部リボソーム導入部位(IRES)配列を介して細胞表面マーカー(CD20)をコードする遺伝子に連結した。ヌクレオチド欠損培地中において0.2μM MTXでの細胞の選択の後、細胞をCD20に対するFITC抱合抗体でラベルし、高発現クローンをFACSによって選別した。選択された細胞を96ウェル・プレートにまき、rhGAA発現の評価のために増殖させた。ハムスターrpS21プロモーターについて38クローンを解析し、ハムスターβ-アクチン・プロモーターについて29クローンを解析した。表5は、両プロモーターについて、生じるクローンにおける発現範囲の分布を示す。
【0102】
【表5】

【0103】
別々の実験において、CHO-DXB11細胞においてASMを発現するために、ハムスターrpS21プロモーターを使用した。rpS21プロモーターの活性をβ-アクチンおよびCMVプロモーターの両方の活性と比較した。実施例7において論議したとおり、CHO-DXB11細胞を3回トランスフェクトし、200nM MTXで直接選択するか、または最初に20nM MTXで選択し、次いで200nM MTXで2週間増幅させた。記載したとおり、ASMのレベルを培地において測定した。トランスフェクトされなかった細胞におけるASM発現は、検出不可能であった。
【0104】
表6に要約したとおり、全3つのrpS21プールは、これを誘導した開始20nMプールと比較して、増幅の後に2〜3倍高いレベルのASMを示した。さらに、産生されるASMのレベルは、CMVプロモーターで産生されるレベル(実施例7)よりも高かった。
【0105】
【表6】

【0106】
200nM MTXでの直接のプールの選択で産生されるASM発現のレベルを表7に要約してある。
【0107】
【表7】

【0108】
200nM MTXでハムスターrpS21プロモーターから産生されるASMのレベルは、CMVプロモーターでのものよりも平均して約1〜2倍高かった。一方では、β-アクチン・プロモーターから産生されるASMレベルは、CMVプロモーターでのものよりも平均して約3〜4倍高かった。従って、rpS21プロモーターは、GAAを発現するために使用するときに、少なくともβ-アクチン・プロモーターと同程度活性であるが、ASMを発現するために使用するときは、β-アクチン・プロモーターよりも低い活性を示した。しかし、両プロモーターは、CMVプロモーターよりも活性であった。
【0109】
本明細書は、本明細書に参照として組み入れられる明細書の中で引例された参照の教示を考慮して、最も完全に理解される。明細書の範囲内の態様は、本発明の態様の具体例を提供し、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきでない。当業者であれば、多くのその他の態様が本発明により包含されることを容易に認識するであろう。全ての引用した刊行物および特許、ならびに本開示においてアクセッション番号またはデータベース参照番号によって同定した配列は、これらの全体が参照として組み入れられる。参照として組み入れられる材料が、本願明細書と矛盾し、または不一致である範囲では、本明細書は、いずれのこのような材料にも取って代わる。本明細書において、任意の参照の引用は、このような参照が本発明に対する従来技術であることの承認ではない。
【0110】
特に明記しない限り、請求の範囲を含む本明細書において使用される成分の数、細胞培養、治療条件、その他を表す全ての数は、全ての例において「約」という用語によって修飾されているものと理解される。従って、特に明記しない限り、数のパラメーターは、近似値であり、本発明によって得ようとする所望の特性に非常に依存する。特に明記しない限り、一連のエレメントに先行する「少なくとも」という用語は、一連のあらゆるエレメントをいうことが理解される。当業者であれば、ルーチン試験だけを使用して、本明細書に記載された本発明の特定の態様に対する多くの均等物を認識し、または確認することができる。このような均等物は、請求の範囲によって包含されることが企図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号:1、2、および3に記載されるヌクレオチド配列、またはプロモーター活性を有するこれらの変異体から選択される単離された齧歯類β-アクチン・プロモーター。
【請求項2】
配列番号:1に記載された単離されたハムスターβ-アクチン・プロモーター・ヌクレオチド配列、またはプロモーター活性を有するこれらの変異体。
【請求項3】
配列番号:2に記載された単離されたラットβ-アクチン・プロモーター・ヌクレオチド配列、またはプロモーター活性を有するこれらの変異体。
【請求項4】
配列番号:3に記載された単離されたマウスβ-アクチン・プロモーター・ヌクレオチド配列、またはプロモーター活性を有するこれらの変異体。
【請求項5】
配列番号:1に記載されたヌクレオチド配列を含む単離された核酸、またはプロモーター活性を有するこれらの変異体。
【請求項6】
配列番号:2に記載されたヌクレオチド配列を含む単離された核酸、またはプロモーター活性を有するこれらの変異体。
【請求項7】
配列番号:1のプロモーター、またはプロモーター活性を有するこれらの変異体を含むベクター。
【請求項8】
配列番号:2のプロモーター、またはプロモーター活性を有するこれらの変異体を含むベクター。
【請求項9】
配列番号:3のプロモーター、またはプロモーター活性を有するこれらの変異体を含むベクター。
【請求項10】
プロモーターが異種核酸に機能的に連結されている、請求項7〜9のいずれか一項記載のベクター。
【請求項11】
異種核酸が治療的タンパク質をコードする、請求項10記載のベクター。
【請求項12】
治療的タンパク質が、酸性スフィンゴミエリナーゼ、α-グルコシダーゼ、および組織プラスミノーゲンアクチベーターから選択される、請求項11記載のベクター。
【請求項13】
請求項7〜12のいずれか一項記載のベクターをトランスフェクトした宿主細胞。
【請求項14】
細胞がCHO細胞である、請求項13記載の宿主細胞。
【請求項15】
以下の工程を含むタンパク質を産生する方法:
(a)タンパク質をコードする核酸分子に機能的に連結されたハムスターβ-アクチン・プロモーター、またはこれらの変異体を含むベクターをトランスフェクトした細胞を培養する工程;および、
(b)タンパク質を回収する工程。
【請求項16】
タンパク質が抗体である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
抗体がTGF-βファミリー・メンバーに結合する、請求項16記載の方法。
【請求項18】
タンパク質が治療的タンパク質である、請求項15記載の方法。
【請求項19】
治療的タンパク質が、酸性スフィンゴミエリナーゼ、α-グルコシダーゼ、および組織プラスミノーゲンアクチベーターから選択される、請求項18記載の方法。
【請求項20】
請求項1〜6のいずれか一項記載のプロモーターを含むトランスジェニック動物。
【請求項21】
動物が哺乳動物である、請求項20記載のトランスジェニック動物。
【請求項22】
配列番号:39に記載されたヌクレオチド配列を有する単離されたrpS21プロモーター、またはプロモーター活性を有するこれらの変異体。
【請求項23】
配列番号:39に記載されたヌクレオチド配列、またはプロモーター活性を有するこれらの変異体を含むベクター。
【請求項24】
ヌクレオチド配列が異種核酸に機能的に連結されている、請求項23記載のベクター。
【請求項25】
異種核酸が治療的タンパク質をコードする、請求項24記載のベクター。
【請求項26】
治療的タンパク質がα-グルコシダーゼまたは酸性スフィンゴミエリナーゼである、請求項25記載のベクター。
【請求項27】
請求項23〜26のいずれか一項記載のベクターをトランスフェクトした宿主細胞。
【請求項28】
細胞がCHO細胞である、請求項27記載の宿主細胞。
【請求項29】
以下の工程を含むタンパク質を産生する方法:
(a)タンパク質をコードする核酸分子に機能的に連結されたハムスターrpS21プロモーター、またはこれらの変異体を含むベクターをトランスフェクトした細胞を培養する工程;および、
(b)タンパク質を回収する工程。
【請求項30】
タンパク質が抗体である、請求項29記載の方法。
【請求項31】
タンパク質が治療的タンパク質である、請求項29記載の方法。
【請求項32】
治療的タンパク質がα-グルコシダーゼまたは酸性スフィンゴミエリナーゼである、請求項31記載の方法。
【請求項33】
請求項22記載のプロモーターを含むトランスジェニック動物。
【請求項34】
動物が哺乳動物である、請求項33記載のトランスジェニック動物。
【請求項35】
ATCC参照番号PTA-5309下で寄託されたヌクレオチド配列を有する単離されたβ-アクチン・プロモーター。
【請求項36】
ATCC参照番号下___で寄託されたヌクレオチド配列を有する、単離されたrpS21プロモーター。

【図1A】
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【図1B−1】
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【図1B−2】
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【図1B−3】
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【図1B−4】
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【図1B−5】
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【図2A】
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【図2B−1】
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【図2B−2】
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【図2B−3】
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【図2B−4】
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【図2B−5】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図3−3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−19525(P2011−19525A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202719(P2010−202719)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【分割の表示】特願2006−517171(P2006−517171)の分割
【原出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(500034653)ジェンザイム・コーポレーション (37)
【Fターム(参考)】