説明

新規なオニウム塩

【課題】有機合成の属する分野などで要求されている反応溶媒及び電気化学の分野で要求されている電解液などとして応用可能な新規なオニウム塩を含むイミド塩を提供する。
【解決手段】 一般式(1)
【化1】


(式中のCはオニウムカチオンであり、Rf1とRfはそれぞれ同一又は互いに異なる炭素数1〜5のペルフルオロアルキル基であって、両者は直接に、あるいは酸素原子又は窒素原子を介して結合し、両者が結合している窒素原子とともに複素環を形成してもよい。Rf3は炭素数が1〜4の分岐状もしくは直鎖状ペルフルオロアルキレン基を示す)で表される含窒素ペルフルオロアルカンスルホン酸塩。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機合成分野における、反応溶媒や反応触媒、及び電気化学分野における、リチウムイオン電池や電気二重層キャパシタのイオン性液体等として応用可能な新規なオニウム塩に関する。
【背景技術】
【0002】
アンモニウムイオンやホスホニウムイオンのオニウムカチオンとそれらのカウンターイオンである、テトラフルオロボレートやヘキサフルオロフォスフェイトなどのアニオンからなるオニウム塩は、その物性(融点、電気伝導度、水や有機溶媒に対する溶解度など)が、オニウムカチオン側のアルキル基の鎖長や分子構造により、またカウンターアニオンの種類により大きく異なる物性を有することから各種分野に応用されている。
【0003】
すなわち、融点が比較的高い(100℃以上)ものは、合成化学や電気化学分野において、それぞれPTC触媒や支持電解質などとして使用され、融点が比較的低い(100℃以下)ものは、イオン性液体とも呼ばれており、特に材料化学分野で注目をあつめている。
すなわち、融点が比較的低い(100℃以下)ものは、高い熱安定性、無視できるほど低い蒸気圧、低毒性、電気化学的な特長を有することから、有機合成や抽出に用いられている揮発性有機溶媒のグリーン代替物(green alternatives)としての研究が活発に行われている(非特許文献1)。
【0004】
このようなオニウム塩としては、例えば、1,3-ジアルキルイミダゾリウム陽イオン(ジアルキル基は2つのアルキル基の鎖長が異なる非対称ジアルキル置換体を意味し、イミダゾリウム母核にアルキル置換基が置換したものを含む)、N-アルキルピリジウム陽イオン(ピリジウム母核にアルキル置換基が一個または複数個置換したものを含む)、N,N-ジアルキルピペリジウム陽イオン、N,N-ジアルキルピロリジウム陽イオン、アルキル置換基等を有する第4級アンモニウム陽イオンや4級ホスホニウム陽イオンから選ばれるオニウムカチオンとテトラフルオロボレート、ヘキサフルオロフォスフェイト、塩素化物陰イオン、ヨウ素化物陰イオン、などのハロゲン化物陰イオン、トリフルオロメタンスルホン酸陰イオンやN,N-ビストリフルオロメタンスルホン酸イミドなどの陰イオンなどから選ばれるカウンターアニオンの組み合わせからなるものが知られている。
【0005】
一般にオニウム塩は、カチオンとアニオンの組み合わせにより、新しい物性を持つイオン性液体の創製が可能であることから、イオン性液体は“Designer Solvents”とも呼ばれており、グリーンケミストリー(Green Chemistry)の概念に合致する物質として急速な研究の展開がなされている。
【0006】
しかしながら、同じ同族体(例えば、イミダゾリウム塩)でも、その物性(例えば融点、電気伝導度など)に関して、その構造からはイオン性液体になるかどうかの判断は困難であるために、その物性を調べるには、実際に合成して調べる必要がある。
【0007】
従来、組み合わせとなるイオン対の中で、陽イオンになるオニウムイオンについては多種多様のものについて検討されている。
【0008】
だが、陰イオンに関しては、ハロゲン化物陰イオン、トリフルオロメタンスルホン酸陰イオン、N,N-ビストリフルオロメタンスルホン酸イミド陰イオン(特許文献1)や、最近ではフルオロアニオン[F(HF)n- :n=2-3](非特許文献2)、ヘキサフルオロニオベート(NbF6-)やヘキサフルオロタンタレート(TlF6-)(非特許文献3)、オキシペンタフルオロタングステート(WOF5-)(非特許文献4)、モノ(ペルフルオロアルキルスルホニル)-2,3,4,5,6-五置換フェニルメタニドアニオンやビス(ペルフルオロアルキルスルホニル)-2,3,4,5,6-五置換フェニルメタニドアニオン(特許文献2)などの限定された陰イオンなどが検討されているだけであった。
【0009】
したがって、種々の用途に対応できるオニウム塩を創製するためには、あまり注意の払われてこなかった新しい陰イオンを開発し、これらをカウンターアニオンとして、従来知られてきたオニウムイオンとの新たな組み合わせによる新規なオニウム塩の開発が望まれていた。
【0010】
【特許文献1】特開2004-43407号公報
【特許文献2】特開2004-307446号公報
【非特許文献1】IonicLiquids as Green Solvents: Progress and Prospects, Ed. By R. D. Rogers, K. R.Seddon, ACS: Washington, DC, Oxford University Press (2003)
【非特許文献2】J.Fluorine Chemistry, 105, 221-2227(2000)
【非特許文献3】J.Fluorine Chemistry, 115, 133-135(2002)
【非特許文献4】J.Fluorine Chemistry, 126, 1095-1100(2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、種々の分野に対応でき、たとえば、有機合成分野においては、反応溶媒や反応触媒等として、電気化学分野でリチウムイオン電池や電気二重層キャパシタのイオン性液体等として、有用な新規なオニウム塩を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、新規なオニウム塩を調製するために、嵩高い含窒素ペルフルオロアルキル基を持つスルホン酸、及びそれらを含むイミドに着目し、これをカウンターアニオン(含窒素ペルフルオロアルカンスルホン酸、及びそれを含むイミド塩)として用いることにより、有用性の高いオニウム塩が得られることを知見し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、この出願によれば、以下の発明が提供される。
〈1〉 一般式(1)
【化1】

(式中のCはオニウムカチオンであり、Rf1とRfはそれぞれ同一又は互いに異なる炭素数1〜5のペルフルオロアルキル基であって、両者は直接に、あるいは酸素原子又は窒素原子を介して結合し、両者が結合している窒素原子とともに複素環を形成してもよい。Rf3は炭素数が1〜4の分岐状もしくは直鎖状ペルフルオロアルキレン基を示す)で表される含窒素ペルフルオロアルカンスルホン酸塩。
〈2〉 一般式(2)
【化2】

(式中のR〜Rはそれぞれ独立に水素、アルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基であり、これらの基は置換されていてもよい。Rf1、Rf及びRf3は一般式(1)と同じである)で示される含窒素ペルフルオロアルカンスルホン酸塩。
〈3〉 一般式(3)
【化3】

(式中のR〜Rはそれぞれ独立に水素、アルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基であり、これらの基は置換されていてもよい。Rf1、Rf及びRf3は一般式(1)と同じである)で示される新規含窒素ペルフルオロアルカンスルホン酸塩。
〈4〉 一般式(4)
【化4】

(式中のR〜Rはそれぞれ独立に水素、アルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基であり、これらの基は置換されていてもよい。Rf1、Rf及びRf3は一般式(1)と同じである)で示される含窒素ペルフルオロアルカンスルホン酸塩。
〈5〉 一般式(5)
【化5】

(式中のR〜R、並びにRf1、Rf及びRf3は一般式(1)と同じである。Rfは炭素数が1〜4の直鎖状ペルフルオロアルキル基か、又はイミド塩のもう一方の構成要素である含窒素ペルフルオロアルカン基と同一であってもよい)で示される含窒素ペルフルオロアルカンスルホン酸塩。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る新規なオニウム塩は、オニウムイオン(アンモニウム、ホスホニウム等の陽イオン)とカウンターアニオン(上記含窒素ペルフルオロアルカンスルホン酸、及びそれを含むイミド塩)を組み合わせにより、異なる融点(室温で液体から、230℃以上)を持つオニウム塩であり、例えば、高融点を持つオニウム塩は、電気化学分野での支持電解質として、また低融点を持つオニウム塩は揮発性有機溶媒を用いない有機合成プロセスへの利用が期待できるなど、有機化学や電気化学の分野において工業的に極めて有用なものである。
【課題の実施の形態】
【0015】
本発明のオニウム塩は、前記一般式(1)〜(5)で示されるが、カウンターアニオンとして、下記に示される含窒素ペルフルオロアルカンスルホン酸、並びにそれを含むイミドを含有することを特徴とする。
【0016】
【化6】

(式中のRf1とRfそれぞれ同一又は互いに異なる炭素数1〜5のペルフルオロアルキル基であって、両者は直接に、あるいは酸素原子又は窒素原子を介して結合し、両者が結合している窒素原子とともに複素環を形成してもよい。Rf3は炭素数が1〜4の分岐状もしくは直鎖状ペルフルオロアルキレン基を示す)
【0017】
【化7】

(式中のRf1、Rf、Rfは一般式6に記載のものと同一であり、Rfは炭素数が1〜4の直鎖状ペルフルオロアルキル基か、又はイミド塩のもう一方の構成要素である含窒素ペルフルオロアルカン基を意味し、その場合に、対称でも非対称でもよい)
【0018】
(Rf1)(Rf)N-の例としては、以下のものが例示される。
【0019】
【化8】

【0020】
また、Rfの例としては、以下のものが例示される。
【0021】
【化9】

【0022】
前記含窒素ペルフルオロアルカンスルホン酸塩は、1)含窒素ペルフルオロアルカンスルホン酸フルオリドを、対応する含窒素アルカンスルホン酸クロリド・塩酸塩の電解フッ素化により合成し、次いでこれを加水分解反応によりスルホン酸とするか、又は2)対応する含窒素ペルフルオロアルカンハロゲン化物を原料として、これをスルフィニル化反応に付すことにより簡単に合成出来る。本発明で好ましく採用される方法は2)の方法である。
【0023】
本発明に係る前記一般式(1)〜(5)で示されるオニウム塩を構成するカウンターカチオンは、[C]で示されるオニウムカチオンである。
オニウムカチオンとしては、イミダゾリウム、ピペリジウム、ピリジニウム、モルホリウム、ピロリジウム、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネニウム、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセニウム等の含窒素複素環式化合物に由来するカチオン、第4級有機アンモニウムや第4級有機ホスホニウムが含まれる。
本発明で好ましく用いられるオニウムカチオンは、下記一般式で示されるイミダゾリウム由来のカチオン、第4級有機アンモニウム及び第4級有機ホスホニウムである。
【0024】
【化10】

(式中、R〜Rはそれぞれ独立に水素、アルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基であり、これらの基は置換されていてもよい。)
【0025】
【化11】

(式中、R〜Rはそれぞれ独立に水素、アルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基であり、これらの基は置換されていてもよい。)
【0026】
【化12】

(式中、R〜Rはそれぞれ独立に水素、アルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基であり、これらの基は置換されていてもよい。)
【0027】
R〜Rにおいて、アルキル基としては、メチル基、エチル基、ヒドロキシエチル基、2−クロロエチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基など炭素数30までの直鎖状、又は分岐を有するものなどが、アルケニル基としては、ビニル基、アリル基などが、アリール基としては、フェニル基、ペンタメチルフェニル基、トルイル基、キシリル基、ナフチル基などが、アラルキル基としては、ベンジル基、o-トルイルメチル基、m-トルイルメチル基、p-トルイルメチル基、2−フェニルエチル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基などが挙げられる。
【0028】
本発明に係る前記一般式(1)で占めされる含窒素ペルフルオロアルカンスルホン酸をアニオンとする新規オニウム塩は、たとえば、容易に入手が可能なオニウム塩のアニオン(ハロゲン化物陰イオン)を溶融塩形成能のある含窒素ペルフルオロアルカンスルホン酸アルカリ金属塩や含窒素ペルフルオロアルカンスルホン酸を含むイミドのアルカリ金属塩と反応させることにより容易に合成することができる。
【化13】

(式中、Rf1、Rf、Rfは一般式(1)に記載のものと同一であり、Mはアルカリ金属、又は1価に相当するアルカリ土類金属である。[C]はオニウムカチオンであり、Xはハロゲン原子である)
【0029】
その際、用いられる溶媒は、ベンゼン、トルエン、THF、DMF、ジエチルエーテル、アセトニトリル、ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルム、及びその他の有機溶媒または水から適宜選択される。反応温度は通常-20℃から溶媒の還流温度、好ましくは−10℃から30℃の範囲内で適宜選択される。反応に要する時間は反応温度や仕込みの量によっても異なるが、通常は10分から5時間、好ましくは20分から1時間の範囲内で適宜選択される。副生する金属ハロゲン化物は蒸留水で水洗することにより容易に除去することが出来る。
【0030】
本発明に係る前記一般式(2)〜(5)で示される新規なオニウム塩の代表的な化合物の融点を表1及び表2に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
新規な1,3−ジアルキルイミダゾリウム塩(A〜E)の融点は、いずれも100℃以下であり、イオン性液体に求められている融点の範囲内にある。同じ、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム同族体でも、カウンターアニオンの違いにより、ペルフルオロ[2-(N,N-ジメチルアミノ)エタンスルホニウム](化合物C)の場合には融点が54-55℃の固体、ペルフルオロ(1,3-ジメチルアミノモルホリノメタンスルホニウム) (化合物D)では、室温ではゼリー状の化合物、トリフルオロメタンスルホニル・ペルフルオロ(モルホリノメタンタンスルホニル)イミジウム(化合物E)では室温では液体化合物で、異なる融点を示している。これらは、アセトンやアルコールには可溶であるが、水に不溶又は難溶性であり、イオン性液体として合成溶媒や触媒、あるいは電気化学的な応用へも期待できる。
【0033】
【表2】

【0034】
新規な第4有機オニウム(アンモニウム及びホスホニウム)塩(F〜J)の融点は、化合物Fの場合を除き、いずれも高融点(200℃以上)を示している。カウンターアニオンとして、同じペルフルオロモルホリノメタンスルホニウムを用いた場合でも、テトラアルキルアンモニウム塩において、アルキル基がテトラブチル基(化合物F)の場合には比較的低い融点(72-73℃)を示すが、テトラエチル基(化合物G)の場合には、融点は233-234℃と高い融点を示している。これらはアセトンやアルコールには可溶であるが、水に不溶又は難溶性であり、有機化学分野で使用される合成溶媒や触媒、或いは電気化学分野での支持電解質などへの応用が期待できる。
【実施例】
【0035】
次に、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら規制されるものではない。
【0036】
実施例1
テトラエチルアンモニウムペルフルオロ(モルホリノメタンスルホナート)の合成
1)ペルフルオロ(モルホリノメタンスルホン酸ナトリウム)の合成
原料として用いたペルフルオロ[N-(ヨウ化メチル)モルホリホリン]は、モルホリノ酢酸メチルの電解フッ素化反応により得られた粗製のペルフルオロ(モルホリノ酢酸フルオリド)とヨウ化リチウムとの反応により合成した。
容量が200mlのナスフラスコに、混合溶媒(15mlの水と5mLのアセトニトリル)、亜二チオン酸(7.1g)、重炭酸ナトリウム(3.40g)を仕込み、次いでこの中にフルオロカーボン12.6g{この中にペルフルオロ[N-(ヨウ化メチル)モルホリホリン] 8.1gを含む}を滴下し、磁気撹拌しながら55℃で10時間反応を行った。反応後、白い鱗片状の固体を分離した後で、ロータリーエバポレーターで溶媒を除去し、更に反応生成物を蒸発乾固したところ、白色の固体(15.3g)が得られた。これを酢酸エチルで抽出、溶媒を除去してクリーム色固体(8.0g)を得た。このものを再び40mlの酢酸エチルに溶解し、6mlの食塩水(10%)で2回洗浄し、酢酸エチルを除去、乾燥させたところ、白色の固体が6.14g得られた。この化合物の19F-NMRにより分析したところ、大部分がペルフルオロ(モルホリホリノメタンスルフィン酸ナトリウム)であり、他に、ペルフルオロ(モルホリホリノメタンスルホン酸ナトリウム)も少量混在(混合比;96:4)していた。
次に、上記の反応により得られたペルフルオロ(モルホリノメタンスルフィン酸ナトリウム)を過酸化水素水で酸化することによりペルフルオロ(モルホリノメタンスルホン酸ナトリウム)へ変換した。
容量が100mlのナスフラスコに、粗製のペルフルオロ(モルホリノメタンスルフィン酸ナトリウム)(6.14g)、30%過酸化水素水15mlと酢酸1mlを仕込み、76〜103℃で7時間反応させた。反応物をビーカーに移して、ホットプレートで蒸発乾固したところ、白色の固体が6.10g得られた。この化合物を19F-NMRにより分析したところ、ペルフルオロ(モルホリホリノメタンスルフィン酸ナトリウム)は完全に酸化されて、ペルフルオロ(モルホリホリノメタンスルホン酸ナトリウム)になっていた。
ペルフルオロ(モルホリホリノメタンスルフィン酸ナトリウム)及びペルフルオロ(モルホリホリノメタンスルホン酸ナトリウム)は文献未載の新規化合物である。それらの19F-NMRデータは次の通リである。
【0037】
【化14】

ケミカルシフト(ppm:外部標準CF3C(O)OH基準/溶媒:CD3C(O)CD3)
(1) -7.5(s)
(2) -11.5(triplet)
(3) -21.5(quintet)

カップリングコンスタント(Hz)
(2)−(3)=14.1

ペルフルオロ(モルホリホリノメタンスルフィン酸ナトリウム)の19F-NMRデータは次の通リである。
【0038】
【化15】

ケミカルシフト(ppm:外部標準CF3C(O)OH基準/溶媒:CD3C(O)CD3)
(1) -7.5(s)
(2) -11.5(triplet)
(3) -21.5(quintet)

カップリングコンスタント(Hz)
(2)−(3)=14.1
【0039】
2)テトラエチルアンモニウムペルフルオロ(モルホリノメタンスルホナート)の合成
ペルフルオロ(モルホリノメタンスルホン酸ナトリウム) 0.5g(1.3mmol)、テトラエチルアンモニウムクロリド0.22g(1.3mmol)と蒸留水7mlを混合し、室温で一昼夜撹拌した。反応後、塩化メチレン50mlに溶解し、有機層を分離して、イオン交換水20mlで2回洗浄、硫酸マグネシウムで乾燥した。次いで、溶媒を除去、真空ラインにより乾燥したところ白色の粉末が0.27g得られた。19F-NMRの分析により、このものはテトラエチルアンモニウムペルフルオロ(モルホリノメタンスルホナート)であり、融点233〜234℃を持つ固体であった(収率39%)。
以下に、テトラエチルアンモニウムペルフルオロ(モルホリノメタンスルホナート)の19F-NMRスペクトルデータを示す。
【0040】
【化16】

ケミカルシフト(ppm:外部標準CF3C(O)OH基準/溶媒:CD3C(O)CD3)
(1) -8.5(s)
(2) -12.4(triplet)
(3) -6.5(quintet)

カップリングコンスタント(Hz)
(2)−(3)=17-20
【0041】
実施例2
テトラブチルアンモニウムペルフルオロ(モルホリノメタンスルホナート)の合成
テトラエチルアンモニウムクロリドの代わりにテトラブチルアンモニウムブロミドを使用した以外は、実施例1と同様の方法で反応を行い、テトラブチルアンモニウムペルフルオロ(モルホリノメタンスルホナート)を得た(収率74%)。テトラブチルアンモニウムペルフルオロ(モルホリノメタンスルホナート)は融点72〜73℃を持つ固体であった。
以下に、テトラブチルアンモニウムペルフルオロ(モルホリノメタンスルホナート)の19F-NMRスペクトルデータを示す。
【0042】
【化17】

ケミカルシフト(ppm:外部標準CF3C(O)OH基準/溶媒:CD3C(O)CD3)
(1) -8.4(s)
(2) -12.3(triplet)
(3) -6.3(quintet)

カップリングコンスタント(Hz)
(2)−(3)=17-20

【0043】
実施例3
1−エチル−3−メチルイミダゾリウムペルフルオロ(モルホリノメタンスルホナート)の合成
実施例1と同様の方法で1−エチル−3−メチルイミダゾリウムブロミドとペルフルオロ(モルホリノメタンスルホン酸ナトリウム)を反応することにより、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムペルフルオロ(モルホリノメタンスルホナート)を得た(収率41%)。
1−エチル−3−メチルイミダゾリウムペルフルオロ(モルホリノメタンスルホナート)は融点93〜94℃を持つ固体であった。
以下に得られた、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムペルフルオロ(モルホリノメタンスルホナート)の19F-NMRスペクトルデータを示す。

19F-NMRデータ
【0044】
【化18】

ケミカルシフト(ppm:外部標準CF3C(O)OH基準/溶媒:CD3C(O)CD3)
(1) -8.4(s)
(2) -12.4(triplet)
(3) -6.5(quintet)

カップリングコンスタント(Hz)
(2)−(3)=17
【0045】
実施例4
テトラエチルアンモニウムペルフルオロ(N,N-ジメチルアミノメタンスルホナート)の合成
ペルフルオロ(モルホリノメタンスルホン酸ナトリウム)の代わりにペルフルオロ(N,N-ジメチルアミノメタンスルホン酸カリウム)を使用した以外は、実施例1と同様の方法で反応を行い、テトラエチルアンモニウムペルフルオロ(N,N-ジメチルアミノメタンスルホナート)を得た(収率28%)。
テトラエチルアンモニウムペルフルオロ (N,N-ジメチルアミノメタンスルホナート)は融点219〜223℃を持つ固体であった。
以下に得られた、テトラエチルアンモニウムペルフルオロ(N,N-ジメチルアミノメタンスルホナート)の19F-NMRスペクトルデータを示す。

19F-NMRデータ
【0046】
【化19】

ケミカルシフト(ppm:外部標準CF3C(O)OH基準/溶媒:CD3C(O)CD3)
(1) 26.5(triplet)
(2) -7.0(quintet)

カップリングコンスタント(Hz)
(1)−(2)=14-17
【0047】
実施例5
1−エチル−3−メチルイミダゾリウムペルフルオロ[2-(N,N-ジメチルアミノ)エタンスルホナート)の合成
ペルフルオロ(モルホリノメタンスルホン酸ナトリウム)の代わりにペルフルオロ[2-(N,N-ジメチルアミノ)エタンスルホン酸ナトリウム]を使用した以外は、実施例2と同様の方法で反応を行い、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムペルフルオロ[2-(N,N-ジメチルアミノ)エタンスルホナート)を得た(収率55%)。
1−エチル−3−メチルイミダゾリウムペルフルオロ[2-(N,N-ジメチルアミノ)エタンスルホナート)は融点61〜62℃を持つ固体であった。
以下に、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムペルフルオロ[2-(N,N-ジメチルアミノ)エタンスルホナート)の19F-NMRスペクトルデータを示す。

19F-NMRデータ
【0048】
【化20】

ケミカルシフト(ppm:外部標準CF3C(O)OH基準/溶媒:CD3C(O)CD3)
(1) 25.9(triplet-triplet)
(2) -11.0(heptet)
(3) -36.5(heptet)

カップリングコンスタント(Hz)
(1)−(2)=14-17
(1)−(3)=8.5

【0049】
実施例6
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムペルフルオロ[2-(N,N-ジメチルアミノ)エタンスルホナート)の合成
1−エチル−3−メチルイミダゾリウムブロミドの代わりに1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムブロミドを使用した以外は、実施例4と同様の方法で反応を行い、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムペルフルオロ[2-(N,N-ジメチルアミノ)エタンスルホナート)を得た(収率57%)。
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムペルフルオロ[2-(N,N-ジメチルアミノ)エタンスルホナート)は融点54〜55℃を持つ固体であった。
以下に、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムペルフルオロ[2-(N,N-ジメチルアミノ)エタンスルホナート)の19F-NMRスペクトルデータを示す。

19F-NMRデータ
【0050】
【化21】

ケミカルシフト(ppm:外部標準CF3C(O)OH基準/溶媒:CD3C(O)CD3)
(1) 25.9(triplet-triplet)
(2) -11.0(heptet)
(3) -36.5(heptet)

カップリングコンスタント(Hz)
(1)−(2)=14-17
(1)−(3)=8.5
【0051】
実施例7
ベンジル・トリメチルアンモニウムペルフルオロ(モルホリノメタンタンスルホナート)の合成
テトラエチルアンモニウムクロリドの代わりにベンジル・トリメチルアンモニウムクロリドを使用した以外は、実施例1と同様の方法で反応を行い、ベンジル・トリメチル・アンモニウムペルフルオロ(モルホリノメタンタンスルホナート)を得た(収率59%)。
ベンジル・トリメチルアンモニウムペルフルオロ(モルホリノメタンタンスルホナート)は融点160-161℃を持つ固体であった。
以下に、ベンジル・トリメチルアンモニウムペルフルオロ(モルホリノメタンタンスルホナート)の19F-NMRスペクトルデータを示す。

19F-NMRデータ
【0052】
【化22】

ケミカルシフト(ppm:外部標準CF3C(O)OH基準/溶媒:CD3C(O)CD3)
(1) -8.4(s)
(2) -12.3(triplet)
(3) -6.4(quintet)

カップリングコンスタント(Hz)
(2)−(3)=17-20
【0053】
実施例8
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムペルフルオロ(1,6-ジメチルモルホリノメタンタンスルホナート)の合成
ペルフルオロ[2-(N,N-ジメチルアミノ)エタンスルホン酸ナトリウムの代わりにペルフルオロ(1,6-ジメチルモルホリノメタンスルホン酸カリウム)を使用した以外は、実施例5と同様の方法で反応を行い、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムペルフルオロ(1,6-ジメチルモルホリノメタンタンスルホナート)を得た(収率66%)。
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムペルフルオロ(1,6-ジメチルモルホリノメタンタンスルホナート)は室温では薄い黄色のゼリー様化合物であった。
以下に、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムペルフルオロ(1,6-ジメチルモルホリノメタンタンスルホナート)(Cis-体/Trans-体の混合比=1:0.51)の19F-NMRスペクトルデータを示す。

19F-NMRデータ
【0054】
【化23】

ケミカルシフト(ppm:外部標準CF3C(O)OH基準/溶媒:CD3C(O)CD3)

Cis-体
(1) -2.6(multiplet)
(2) -49.4(multiplet)
(3) 1.4,-16.7 J(AB)=209Hz
(4) -5.7(multiplet)

Trans-体
(1) -2.2(multiplet)
(2) -44.9(multiplet)
(3) 5.1,-14.4 J(AB)=198Hz
(4) 1.8,-10.4 J(AB)=215Hz
【0055】
実施例9
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム トリフルオロメタンスルホニル・ペルフルオロ(モルホリノメタンタンスルホニル)イミドの合成
ペルフルオロ[2-(N,N-ジメチルアミノ)エタンスルホン酸ナトリウムの代わりにトリフルオロメタンスルホニル・ペルフルオロ(モルホリノメタンタンスルホニル)イミドリチウム塩を使用した以外は、実施例5と同様の方法で反応を行い、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホニル・ペルフルオロ(モルホリノメタンタンスルホニル)イミドを得た(収率84%)。
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホニル・ペルフルオロ(モルホリノメタンタンスルホニル)イミドは室温では、薄い黄色透明の液体であった。
なお、トリフルオロメタンスルホニル・ペルフルオロ(モルホリノメタンタンスルホニル)イミドリチウム塩の合成は、次のようにして行った。
トリフルオロメタンスルホニル・ペルフルオロ(モルホリノメタンタンスルホニル)イミドリチウム塩の合成
二口フラスコ(容量50ml)に、トリフルオロメタンスルホンアミド1.13g(7.6mmol)、ペルフルオロモルホリノメタンスルホン酸フルオリド2.90g(8.0mmol)、およびトリエチルアミン20mlを仕込んで、70℃で20時間磁気撹拌を行った。反応後、真空ラインで揮発成分を取り除いた後、40mlの塩化メチレンに溶解し、等量の水で振り混ぜて、水に可溶な成分を取り除いた後、塩化メチレン層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、更にロータリーエバポレーターで溶媒を除去したところ、粘ちゅう液体が3.66g得られた。
次いで、10ml硫酸を加えて、減圧蒸留を行ったところ、トリフルオロメタンスルホニル・ペルフルオロ(モルホリノメタンタンスルホニル)イミドが薄い黄色の透明な液体として得られた(1.77g、沸点:65-69℃/65mmHg、収率:47%)。
対応するリチウム塩は、イミド1.6g(3.3mmol)を3mlのエーテルに溶解し、これに等モルの炭酸リチウムを添加することにより合成した。粗生成物を蒸発乾固の後で、塩化メチレンで洗浄、濾過、乾燥することにより、リチウム塩の精製生成を行った(1.29g、収率:79%)。
【0056】
以下に、新規化合物として得られたトリフルオロメタンスルホニル・ペルフルオロ(モルホリノメタンタンスルホニル)イミドリチウム塩、並びに1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホニル・ペルフルオロ(モルホリノメタンタンスルホニル)イミドの19F-NMRスペクトルデータを示す。

19F-NMRデータ
【0057】
【化24】

ケミカルシフト(ppm:外部標準CF3C(O)OH基準/溶媒:CD3C(O)CD3)
(1) -8.7(s)
(2) -13.0(triplet)
(3) -7.1(quintet)
(4) -1.2(s)

カップリングコンスタント(Hz)
(2)−(3)=17-20
19F-NMRデータ
【0058】
【化25】

ケミカルシフト(ppm:外部標準CF3C(O)OH基準/溶媒:CD3C(O)CD3)
(1) -8.6(s)
(2) -12.9(triplet)
(3) -7.0(quintet)
(4) -1.2(s)

カップリングコンスタント(Hz)
(2)−(3)=17-20
【0059】
実施例10
ベンジル・トリフェニルホスホニウムペルフルオロ(ピロリジノメタンスルホナート)の合成
ベンジル・トリメチルアンモニウムクロリドの代わりにベンジル・トリフェニルホスホニウムクロリドを使用し、又ペルフルオロ(モルホリノメタンタンスルホン酸カリウム) の代わりにペルフルオロ(ピロリジノメタンスルホン酸カリウム)を用い、更に反応時間に2日間を採用した以外は、実施例8と同様の方法で反応を行い、相当するオニウム塩としてベンジル・トリフェニルホスホニウム ペルフルオロ(ピロリジノメタンスルホナート)を得た(収率79%)
ベンジル・トリフェニルホスホニウムペルフルオロ(ピロリジノメタンスルホナート)は融点149-151℃を持つ固体であった。
以下に、新規に得られたベンジル・トリフェニルホスホニウムペルフルオロ(ピロリジノメタンスルホナート)の19F-NMRスペクトルデータを示す。

19F-NMRデータ
【0060】
【化26】

ケミカルシフト(ppm:外部標準CF3C(O)OH基準/溶媒:CD3C(O)CD3)
(1) -55.5(s)
(2) -12.3(triplet)
(3) -7.4(quintet)

カップリングコンスタント(Hz)
(2)−(3)=11-14


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

(式中の[C]はオニウムカチオンであり、Rf1とRfはそれぞれ同一又は互いに異なる炭素数1〜5のペルフルオロアルキル基であって、両者は直接に、あるいは酸素原子又は窒素原子を介して結合し、両者が結合している窒素原子とともに複素環を形成してもよい。Rf3は炭素数が1〜4の分岐状もしくは直鎖状ペルフルオロアルキレン基を示す)で表される含窒素ペルフルオロアルカンスルホン酸塩。
【請求項2】
一般式(2)
【化2】

(式中のR〜Rはそれぞれ独立に水素、アルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基であり、これらの基は置換されていてもよい。Rf1、Rf及びRf3は一般式(1)と同じである)で示される含窒素ペルフルオロアルカンスルホン酸塩。
【請求項3】
一般式(3)
【化3】

(式中のR〜Rはそれぞれ独立に水素、アルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基であり、これらの基は置換されていてもよい。Rf1、Rf及びRf3は一般式(1)と同じである)で示される新規含窒素ペルフルオロアルカンスルホン酸塩。
【請求項4】
一般式(4)
【化4】

(式中のR〜Rはそれぞれ独立に水素、アルキル基、アルケニル基、アリール基又はアラルキル基であり、これらの基は置換されていてもよい。Rf1、Rf及びRf3は一般式(1)と同じである)で示される含窒素ペルフルオロアルカンスルホン酸塩。
【請求項5】
一般式(5)
【化5】

(式中のR〜R、並びにRf1、Rf及びRf3は一般式(1)と同じである。Rfは炭素数が1〜4の直鎖状ペルフルオロアルキル基か、又はイミド塩のもう一方の構成要素である含窒素ペルフルオロアルカン基と同一であってもよい)で示される含窒素ペルフルオロアルカンスルホン酸塩。

【公開番号】特開2007−326821(P2007−326821A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−160582(P2006−160582)
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】