説明

新規なビス(ホルミルフェニル)化合物及びそれから誘導される新規な多核体ポリフェノール化合物

【課題】感光性レジスト組成物に使用できる新規な多核体ポリフェノール化合物の中間体として有用なビス(ホルミルフェニル)を提供する。
【解決手段】下式で表されるビス(ホルミルフェニル)化合物。


(式中、R1、R2はアルキル基またはアルコキシル基を示し、R3は単環又は縮合環芳香族炭化水素基、又は単環若しくは縮合環芳香族炭化水素基を有していてもよい脂肪族飽和炭化水素基を示し、R4は水素原子又はアルキル基を示し、R5、R6は二価の脂肪族飽和炭化水素基を示し、mは0または1〜3の整数を表し、nは0または1〜3の整数を表し、kは1〜3の整数を表し、但し、kが2以上の場合、各々のフェニル基のR6、R1、nは同一であっても、異なっていてもよい。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なビス(ホルミルフェニル)化合物及びそれから誘導される新規な多核体ポリフェノール類に関し、詳しくは、分子骨格中心にエステル基又はカルボキシル基含有のエーテル基で置換されたベンゼン骨格を有し、分子両末端に同様のエーテル基が置換したホルミルフェニル基を有する新規なビス(ホルミルフェニル)化合物、及びこのようなビス(ホルミルフェニル)化合物のホルミル基にさらに各々2つのヒドロキシフェニル基が置換した多核体ポリフェノール化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、分子構造中のフェノール性水酸基を酸解離性溶解抑制基で保護されたビス(ホルミルフェニル)化合物としては、いくつかの化合物が知られており、例えば、文献1には、3つのフェノール性水酸基に各々アルコキシカルボニルメチル基が置換したフェニル環が単結合で結合したビス(ホルミルフェニル)類が記載されている。
また、文献2には、メチレンビス(サリチルアルデヒド)のフェノール性水酸基に各々アルコキシカルボニルメチル基が置換したビス(ホルミルフェニル)化合物が記載されている。
また、ビス(ホルミルフェニル)化合物のホルミル基に各々2つのヒドロキシフェニル基が結合した多核ポリフェノール化合物のフェノール性水酸基が酸解離性溶解抑制基で保護された多核ポリフェノール化合物としては、例えば、文献3には多核ポリフェノール化合物のヒドロキシル基に対し酸解離性溶解抑制基が25〜40モル%程度ランダムに置換した多核ポリフェノール化合物が記載されている。また、文献4には多核ポリフェノール化合物の基本骨格のビス(ヒドロキシフェニル)の2つのヒドロキシル基に対し酸解離性溶解抑制基が置換した多核ポリフェノール化合物が記載されている。
しかしながら、例えば感光性レジストの原料の分野においては、近年、レジストの解像度、耐熱性、コントラストの向上、特に溶解抑制基が脱離した部分のアルカリ現像液に対するアルカリ溶解性、或いはアルカリ溶解速度などの更なる改良が求められてきており、従来知られている酸解離性溶解抑制基置換の多核フェノール化合物の原料となるビス(ホルミルフェニル)化合物及び多核体ポリフェノール化合物の改良が望まれている。
【0003】
【非特許文献1】European Journal of Organic Chemistry,2000,1923-1931
【特許文献2】特開2007−39381号公報
【特許文献3】特開2006−267996号公報
【特許文献4】国際公開WO2007−034719号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来のヒドロキシル基に対し酸解離性溶解抑制基が置換した多核体ポリフェノール化合物における上述したような状況に鑑みてなされたものであって、耐熱性、溶媒等への溶解性に優れ、例えば、酸解離性溶解抑制基を導入して感光性レジストとして使用された場合において、露光等により溶解抑制基が脱離した後の、レジストのアルカリ溶解性、或いはアルカリ溶解速度に優れる新規な多核体ポリフェノール化合物を提供することを目的とする。また、そのような多核体ポリフェノール化合物の中間原料としても有用な新規なビス(ホルミルフェニル)化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するため多核体ポリフェノール化合物について、特に感光性レジスト原料とした場合のアルカリ溶解性、アルカリ溶解速度及び耐熱性の向上について鋭意検討した結果、分子骨格中心にフェノール性水酸基をエステル基又はカルボキシル基含有のエーテル基で置換したベンゼン骨格を少なくとも3つ有し、分子両末端に、少なくとも1以上のフェノール性水酸基を有するフェニル基を各々2つ有し、しかもエーテル基が単環又は縮合環芳香族炭化水素、又は単環又は縮合環芳香族炭化水素基を有していてもよい脂肪族飽和炭化水素カルボキシル基ないしアルキルエステル基である新規な多核体ポリフェノール化合物、並びにこのような多核体ポリフェノールの中間原料となりうる新規なビス(ホルミルフェニル)化合物を見出し本発明を完成した。
【0006】
即ち、本発明による新規なビス(ホルミルフェニル)化合物は、下記一般式(1)で表される。
一般式(1)
【化1】

式中、R、Rは各々独立して炭素原子数1〜8のアルキル基または炭素原子数1〜8のアルコキシル基を示し、Rは炭素原子数6〜15の単環又は縮合環芳香族炭化水素基、又は炭素原子数6〜15の単環若しくは縮合環芳香族炭化水素基を有していてもよい炭素原子数1〜8の脂肪族飽和炭化水素基を示し、Rは水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基を示し、R5、は同一であっても、異なっていてもよく、二価の炭素原子数1〜8の脂肪族飽和炭化水素基を示し、mは0または1〜3の整数を表し、nは0または1〜3の整数を表し、kは1〜3の整数を表し、但し、kが2以上の場合、各々のフェニル基のR6、1、nは同一であっても、異なっていてもよい。
【0007】
また、本発明による、今ひとつの新規な多核体ポリフェノール化合物は、下記一般式(2)で表される。
一般式(2)
【化2】

式中、R、R、R、R5、並びにk、m、nは一般式(1)のそれと同じであり、Rは水素原子又は炭素原子数1〜6の1級アルキル基又は2級アルキル基を示し、Xは下記式(3)で表されるヒドロキシフェニル基を示す。
一般式(3)
【化3】

式中、Rは炭素原子数1〜8のアルキル基又は炭素原子数1〜8のアルコキシル基を示し、aは1〜3の整数を、bは0〜4の整数を示し、但し1≦a+b≦5であり、bが2以上の場合、Rは同一でも異なっていてもよい。
【0008】
また、前記一般式(3)のヒドロキシフェニル基が下記一般式(4)で示される多核体ポリフェノール化合物は、本発明の多核体ポリフェノール化合物の好ましい態様である。
一般式(4)
【化4】

式中、R、R、R10は各々独立して水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基または炭素原子数1〜8のアルコキシル基を示す。
【発明の効果】
【0009】
本発明の新規なビス(ホルミルフェニル)化合物は、ガラス転移温度が高いなどの耐熱性に優れ、また両末端のフェニル核に反応性に富むホルミル基と末端エステル基乃至カルボキシル基をもつので反応性に優れ、フェノール類との反応によって得られる種々の多核体ポリフェノール化合物の中間原料、感光性レジスト、フェノール樹脂、エポキシ樹脂の原料や改質剤或いは感熱記録材料の顕色剤原料などとして好適に利用される。
また、本発明の今ひとつの新規な多核体ポリフェノールは、中心骨格が上記ビス(ホルミルフェニル)であり、更にこれに4つのヒドロキシフェニル基が結合しているので、ガラス転移温度が高いなどの耐熱性に優れ、また、アルカリ溶解性、アルカリ溶解速度にも優れるので感光性レジスト原料として有用であり、さらに、フェノール樹脂、エポキシ樹脂の原料や改質剤などとして好適に利用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明による新規なビス(ホルミルフェニル)化合物は、上記一般式(1)で表される。
式中、R、Rは各々独立して炭素原子数1〜8のアルキル基または炭素原子数1〜8のアルコキシル基を示し、Rは炭素原子数6〜15の単環又は縮合環芳香族炭化水素基、又は炭素原子数6〜15の単環若しくは縮合環芳香族炭化水素基を有していてもよい
炭素原子数1〜8の脂肪族飽和炭化水素基を示し、Rは水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基を示し、R5、は同一であっても、異なっていてもよく、二価の炭素原子数1〜8の脂肪族飽和炭化水素基を示し、mは0または1〜3の整数を表し、nは0または1〜3の整数を表し、kは1〜3の整数を表し、但し、kが2以上の場合、各々のフェニル基のR6、1、nは同一であっても、異なっていてもよい。
【0011】
、Rにおいて、炭素原子数1〜8のアルキル基としては、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、3−メチルペンチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、3−メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、2,4−ジメチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の直鎖状、分岐鎖状又は環状の飽和炭化水素基が挙げられる。また炭素原子数1〜8のアルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、3−メチルペンチルオキシ基、シクロプロピルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、3-メチルシクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、2,4−ジメチルシクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基等の直鎖状、分岐鎖状又は環状の飽和炭化水素アルコキシル基が挙げられる。これらの中でも炭素原子数1〜4のアルキル基又は、炭素原子数1〜4のアルコキシル基が好ましく、なかでも炭素原子数1〜2のアルキル基が好ましい。
mは0または1〜3の整数を表し、好ましくは0、1または2であり、nは0または1〜3の整数を表し、好ましくは1または2である。
また、Rにおいて、フェニル核への結合位置は、結合可能な位置であれば、o-位、m-位又はp-位と任意の位置でよいが、フェニル核に結合するエーテル基に対しo-位又はp-位の内、ひとつの位置に置換していると工業的製造が容易であるので好ましい。
【0012】
また、一般式(1)において、式中、R5、は同一であっても、異なっていてもよく、二価の炭素原子数1〜8の脂肪族飽和炭化水素基を示し、好ましくは炭素原子数1〜6、より好ましくは炭素原子数1〜3であり、具体的には、例えばメチレン、1,1−エチリデン、1,1−プロピリデン、2,2−プロピリデン等のアルキリデン基、1,2−エチレン、1,2−プロピレン、1,3−プロピレン等のアルキレン基が挙げられる。
5、のフェニル核への置換位置は、エーテル基に対してo−位又はp−位が収率よく合成できる点で好ましい。kが2または3の場合の置換位置も前記同様である。
ホルミル基の置換位置は、エーテル基に対してo−位又はp−位が好ましい。
【0013】
また、一般式(1)において、式中、Rは炭素原子数6〜15の単環又は縮合環芳香族炭化水素基、又は炭素原子数6〜15の単環若しくは縮合環芳香族炭化水素基を有していてもよい炭素原子数1〜8の脂肪族飽和炭化水素基であり、Rは水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基である。
が炭素原子数6〜15の単環又は縮合環芳香族炭化水素基である場合、単環又は縮合環芳香族炭化水素基にはアルキル基が置換していてもよく、具体的には例えば、p−フェニレン、m−フェニレン、o−フェニレン、2−メチル−1,4−フェニレン、2,6−ジメチル−1,4−フェニレン、2−プロピル−1,4−フェニレンなどの単環式芳香族炭化水素基、1,5−ナフチレン、2,7−ナフチレンアントラセン−2,7−ジイル、フルオレン−2,7−ジイルなどの縮合環式芳香族炭化水素基などが挙げられる。好ましくは単環式芳香族炭化水素基である。
が炭素原子数6〜15の単環又は縮合環芳香族炭化水素基を有していてもよい炭素原子数1〜8の脂肪族炭化水素基である場合、前記芳香族炭化水素基を有していない態様の炭素原子数1〜8の2価の脂肪族飽和炭化水素基としては、炭素原子数1〜8の直鎖状又は分枝状のアルキレン基又はアルキリデン基であり、具体的には例えば、メチレン、エチレン、1,3−プロピレン、1,1−プロピリデン、1,4−ブチレン、2−メチル−1,3−プロピレン、ヘキサメチレン、1,1,2,2−テトラメチルエチレン、1,1−エチリデン、2,4−ブチレン、1,1−n−ヘキシリデン等の直鎖状、分枝状のアルキレン基またはアルキリデン基が挙げられる。
好ましくは、炭素原子数1〜4のアルキレン基又はアルキリデン基である。
【0014】
また、前記Rの炭素原子数6〜15の単環又は縮合環芳香族炭化水素基を有していてもよい炭素原子数1〜8の脂肪族飽和炭化水素基において、今ひとつの態様である芳香族炭化水素基を有する脂肪族飽和炭化水素基としては、主鎖に単環又は縮合環芳香族炭化水素基を有する炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基が好ましく、下記一般式(5)で表される。
一般式(5)

式中、R11、R13は各々独立して炭素原子数1〜8の脂肪族飽和炭化水素を示し、c、eは1または0であり、dは1であり、但し、R11+R13の合計炭素原子数は1〜8であり、c、eは共に0であることはなく、R12は炭素原子数6〜15の単環又は縮合環芳香族炭化水素基を示す。また、R12で表される炭素原子数6〜15の単環又は縮合環芳香族炭化水素基としては、Rが炭素原子数6〜15の単環又は縮合環芳香族炭化水素基である場合の、単環又は縮合環芳香族炭化水素基と同じである。
【0015】
従って、炭素原子数6〜15の単環又は縮合環芳香族炭化水素基を有する炭素原子数1〜8の脂肪族炭化水素基としては、具体的には例えば、

等があげられる。
【0016】
また、一般式(1)におけるR、或いはRが一般式(5)で表される場合のR11においては、フェニルオキシ基に結合している炭素原子は酸に安定である理由で1級又は2級の炭素原子が好ましい。
また、Rは水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基を示し、炭素原子数1〜6のアルキル基としては直鎖状又は分枝鎖状又は環状のアルキル基であり、具体的には例えば、メチル、エチル、n−ブチル、t−ブチル、sec−ブチル、イソプロピル、n−プロピル、シクロヘキシル等が挙げられる。好ましくは炭素原子数1〜4の直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基である。
【0017】
従って、一般式(1)で表されるビス(ホルミルフェニル)化合物において、フェニルオキシ基に結合したエステル置換炭化水素基、詳細には−RCOORで示されるカルボキシ炭化水素基又はアルコキシカルボニル炭化水素基としては、具体的には例えば、
カルボキシメチル基、メトキシカルボニルメチル基、カルボキシプロピル基、エトキシカルボニルプロピル基、3−メトキシカルボニル−2−メチル−1−プロピル基、メトキシカルボニルプロピル基、或いは、

などがあげられる。
【0018】
従って、本発明による一般式(1)で表されるビス(ホルミルフェニル)化合物としては、好ましくは、下記一般式(6)又は下記一般式(7)で示される。
一般式(6)


(式中、R〜R、並びにk、m、nは一般式(1)のそれと同じである。)
一般式(7)

(式中、R〜R、並びにk、m、nは一般式(1)のそれと同じである。)
【0019】
上記一般式(6)又は(7)で示される化合物としては、具体的には、例えば、kが1の化合物としては、
2,6−ビス{(3−ホルミル−4−メトキシカルボニルメトキシフェニル)メチル}−4−メチル−1−メトキシカルボニルメトキシベンゼン、

2,6−ビス{(3−ホルミル−2,5−ジメチル−4−メトキシカルボニルメトキシフェニル)メチル}−4−メチル−1−メトキシカルボニルメトキシベンゼン、

kが2の化合物としては、 ビス{3−(3−ホルミル−4−メトキシカルボニルメトキシフェニル)メチル−2,5−ジメチル−4−メトキシカルボニルメトキシフェニル}メタン

【0020】
さらに、
2,6−ビス{(3−ホルミル−4−メトキシカルボニルメトキシフェニル)メチル}−4−t−ブチル−1−メトキシカルボニルメトキシベンゼン、
2,6−ビス{(3−ホルミル−5−シクロヘキシル−4−メトキシカルボニルメトキシフェニル)メチル}−4−メチル−1−メトキシカルボニルメトキシベンゼン、
2,4−ビス{(3−ホルミル−4−メトキシカルボニルメトキシフェニル)メチル}−6−メチル−1−メトキシカルボニルメトキシベンゼン、
2,6−ビス{(5−ホルミル−2−メトキシカルボニルメトキシフェニル)メチル}−4−メチル−1−メトキシカルボニルメトキシベンゼン、
2,6−ビス{1−(3−ホルミル−4−メトキシカルボニルメトキシフェニル)エチル}−4−メチル−1−メトキシカルボニルメトキシベンゼン、
2,6−ビス{1−メチル−1−(3−ホルミル−4−メトキシカルボニルメトキシフェニル)エチル}−4−メチル−1−メトキシカルボニルメトキシベンゼン、
2,6−ビス{(3−ホルミル−4−(4−メトキシカルボニルフェニル)メトキシフェニル)メチル}−4−メチル−1−(4−メトキシカルボニルフェニル)メトキシベンゼン、
2,6−ビス{(3−ホルミル−4−(4−カルボキシフェニル)メトキシフェニル)メチル}−4−メチル−1−(4−カルボキシフェニル)メトキシベンゼン、
2,6−ビス{(3−ホルミル−4−カルボキシメトキシフェニル)メチル}−4−メチル−1−カルボキシメトキシベンゼン、
2,6−ビス{(3−ホルミル−4−メトキシカルボニルメトキシフェニル)メチル}−4−メトキシ−1−メトキシカルボニルメトキシベンゼン、
2,6−ビス{(3−ホルミル−5−メトキシ−4−メトキシカルボニルメトキシフェニル)メチル}−4−メチル−1−メトキシカルボニルメトキシベンゼン、
ビス{3−(3−ホルミル−5−メチル−4−メトキシカルボニルメトキシフェニル)メチル−5−メチル−2−メトキシカルボニルメトキシフェニル}メタン、
ビス{3−(3−ホルミル−4−カルボキシメトキシフェニル)メチル−2,5−ジメチル−4−カルボキシメトキシフェニル}メタン、
などが挙げられる。
【0021】
このような本発明による上記一般式(1)で表されるビス(ホルミルフェニル)化合物は、その製造方法については特に制限はなく、例えば、下記一般式(8)で表されるビス(ヒドロキシ−ホルミルフェニル)化合物を直接原料とし、これに例えば、下記一般式(9)で表されるハロゲン化アルコキシカルボニル炭化水素を、公知のフェニルエーテル製造方法にしたがって、下記反応式(1)に示すように塩基の存在下で反応させることにより製造することができる。
【0022】
一般式(8)

式中、R,R,n,m、k並びにR,Rは一般式(1)のそれと同じである。
【0023】
一般式(9)

式中、Zはハロゲン原子を示し、Rは一般式(1)のそれと同じであり、Rは炭素原子数1〜6のアルキル基である。また、ハロゲン原子としては、塩素原子又は臭素原子が好ましい。
【0024】
反応式(1)

【0025】
上記一般式(8)で表されるビス(ヒドロキシ−ホルミルフェニル)を直接原料とし、上記一般式(9)で表されるハロゲン化アルコキシカルボニル炭化水素を、上記反応式(1)に示すように塩基の存在下で反応させることにより、本発明による前記一般式(1)で表されるビス(ホルミルフェニル)化合物を製造する方法をさらに具体的に述べると、 例えば、2,6−ビス{(3−ホルミル−4−ヒドロキシフェニル)メチル}−4−メチルフェノールを直接原料とし、ハロゲン化アルコキシカルボニル炭化水素として塩化酢酸メチルエステルを用いて、2,6−ビス{(3−ホルミル−4−メトキシカルボニルメトキシニフェル)メチル}−4−メチル−1−メトキシカルボニルメトキシベンゼンを得る場合について、下記反応式(2)に示す。
反応式(2)

【0026】
反応式(2)で例示される製造方法においては、ビス(ヒドロキシ−ホルミルフェニル)化合物に、ジメチルホルムアミド等の反応溶媒中、炭酸カリウムのような塩基の存在下に、ハロゲン化アルコキシカルボニル炭化水素を反応させればよい。
用いられる塩基としては、有機塩基或いは無機塩基いずれも使用することができるが、有機塩基としては、好ましくは例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド等のヒドロキシ4級アミン類、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン(DBUと略称)などが挙げられる。
また、無機塩基としては、好ましくは例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化リチウム等の水素化アルカリ金属類、t−ブトキシカリウムのようなアルコキシアルカリ金属類などが挙げられる。
このような塩基の添加量としては、一般式(8)で表されるビス(ヒドロキシ−ホルミルフェニル)化合物1モルに対して通常、(2+k)モル倍〜1.5×(2+k)モル倍の範囲、好ましくは1.15×(2+k)モル倍〜1.35×(2+k)モル倍の範囲である。ここでkは前記一般式(8)中のk値である。
【0027】
反応に際し用いられる溶媒は、好ましくは例えば、ジオキサン、THFのようなエーテル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド類のようなアミド類、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチレンホスホン酸アミド、ピリジン、4−メチルピリジン、N−メチルピロリドン等のアミン類等、或いはこれらの混合物を挙げることができる。
使用する溶媒の量は、反応容積率等の観点から、通常、原料のビス(ヒドロキシ−ホルミルフェニル)化合物1重量部に対し、1重量倍〜10重量倍の範囲、好ましくは2〜5重量倍の範囲である。
また、必要に応じて、エーテル化反応を促進するためにヨウ化カリウム等のアルカリ金属ヨウ化物、銅、塩化銅のような銅化合物、相間移動触媒等の反応促進添加剤を添加しても良い。
反応に際し、反応原料の仕込み方法、順序には制限はないが、通常、一般式(8)で表されるビス(ヒドロキシ−ホルミルフェニル)化合物と塩基を混合してオキシ塩とした後、その混合液に一般式(9)で表されるハロゲン化アルコキシカルボニル炭化水素類を加える方法が、収率が良い理由で好ましい。
反応は、通常、温度20℃〜150℃の範囲、好ましくは50℃〜80℃の範囲で、数時間、例えば、2〜20時間、行なえばよい。また、反応圧力は通常、微減圧〜微加圧の範囲、好ましくは常圧程度である。
反応終了後、例えば、反応混合物に適宜の有機溶剤、例えば、トルエン、シクロヘキサン等と水とを加え、洗浄し、分液し、必要に応じて、有機層を酸水溶液で洗浄、中和し、有機層から溶剤を留出させ除去し、残渣にメタノールのような脂肪族低級アルコールや、必要に応じて、トルエン等の芳香族炭化水素類やメチルエチルケトン等の脂肪族ケトン類を加えて、晶析させ、又はこれらの洗浄溶剤を留出させ除去することによって、本発明の目的物である一般式(1)で表されるビス(ホルミルフェニル)化合物を得ることができる。
【0028】
また、一般式(1)で表されるビス(ホルミルフェニル)化合物において、Rが水素原子である場合の、エーテル基がカルボキシ炭化水素オキシ置換体を得るのは、その製造方法については特に制限されないが、例えば、上記、得られたビス(ホルミルフェニル)化合物の内、Rが1級又は2級アルキル基であるアルコキシカルボニル炭化水素基(−RCOOR)置換体を無溶媒又は溶媒中、アルカリの存在下に加水分解して、容易にカルボキシ炭化水素基(−RCOOH)置換体を得ることができる。
例えば、下記反応式(3)に示すように、上記反応式(2)で得られた2,6−ビス{(3−ホルミル−4−メトキシカルボニルメトキシフェニル)メチル}−4−メチル−1−メトキシカルボニルメトキシベンゼンを、無溶媒又は溶媒中、アルカリの存在下に加水分解すると2,6−ビス{(3−ホルミル−4−カルボキシメトキシフェニル)メチル}−4−メチル−1−カルボキシメトキシベンゼンを得ることができる。
【0029】
反応式(3)

【0030】
上記反応式(3)で例示される、Rが水素原子である場合のビス(ホルミルフェニル)化合物の製造方法においては、公知のエステル基の加水分解反応と同様に、一般式(1)においてRがアルキル基である場合のビス(ホルミルフェニル)化合物のアルコキシカルボニル炭化水素基(−RCOOR)のRが1級アルキル基であると加水分解反応が容易であるので好ましい。
従って、このようなビス(ホルミルフェニル)化合物を水酸化ナトリウムやテトラメチルアンモニウムヒドロキシド等のアルカリ水溶液で加水分解することにより容易に一般式(1)において、Rが水素原子である場合のカルボキシ炭化水素置換体を得ることができる。
【0031】
加水分解反応に用いられるアルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機の強アルカリ水溶液、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド等の有機の強アルカリ水溶液が好ましく、そのアルカリ濃度は5〜50%の範囲、好ましくは10〜30%の範囲である。用いられるアルカリの量は、原料のビス(ホルミルフェニル)化合物1モルに対して通常、2モル倍〜6モル倍の範囲、好ましくは2モル倍〜4モル倍の範囲である。反応温度は、通常、0〜100℃の範囲、好ましくは20〜60℃の範囲である。このような反応条件において、反応は、通常0.5〜10時間程度で終了する。
反応終了後、必要に応じて水と分離する溶剤を加えて洗浄し、油層を除去する。その後、水と分離する溶剤及び酸を加えてアルカリ水溶液及び目的物のアルカリ塩を中和した後、水層を除去して得られた油層から前述のような公知の方法に従って、反応生成物を精製し、また、必要に応じて、高純度品を得ることもできる。
また、直接原料である上記一般式(8)で表されるビス(ヒドロキシ−ホルミルフェニル)化合物は、目的物であるビス(ホルミルフェニル)化合物に対応した直接原料のビス(ヒドロキシ−ホルミルフェニル)化合物に対応するビス(ヒドロキシフェニル)化合物を、例えば、下記反応式(4)に示すように、トリフルオロ酢酸等の酸の存在下にヘキサメチレンテトラミンと反応させ、次いで反応生成物を加水分解させることにより、或いは、下記反応式(5)に示すように、ビス(ヒドロキシフェニル)化合物をメチロール化した後、トリフルオロ酢酸等の酸の存在下にヘキサメチレンテトラミンと反応させ、次いで反応生成物を加水分解させることにより容易に得ることができる。
また、下記反応式(6)に示すようにジ(ヒドロキシメチル)フェノール類とヒドロキシベンズアルデヒド類をリン酸、トリフルオロ酢酸等の酸触媒存在下で反応させることにより得ることができる。
なお、式中、R、Rは各々独立して炭素原子数1〜8のアルキル基または炭素原子数1〜8のアルコキシル基を示し、R5、は同一であっても、異なっていてもよく、二価の炭素原子数1〜8の脂肪族飽和炭化水素基を示し、mは0または1〜3の整数を表し、nは0または1〜3の整数を表し、kは1〜3の整数を表し、但し、kが2以上の場合、各々のフェニル基のR6、1、nは同一であっても、異なっていてもよい。
【0032】
反応式(4)

【0033】
反応式(5)

【0034】
反応式(6)

【0035】
このような、一般式(8)で表されるビス(ヒドロキシ−ホルミルフェニル)化合物としては、具体的には、例えば、
2,6−ビス{(3−ホルミル−4−ヒドロキシフェニル)メチル}−4−メチル−1−ヒドロキシベンゼン

2,6−ビス{(3−ホルミル−2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル}−4−メチル−1−ヒドロキシベンゼン

【0036】
さらに、
2,6−ビス{(3−ホルミル−4−ヒドロキシフェニル)メチル}−4−t−ブチル−1−ヒドロキシベンゼン、
2,6−ビス{(3−ホルミル−5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)メチル}−4−メチル−1−ヒドロキシベンゼン、
2,4−ビス{(3−ホルミル−4−ヒドロキシフェニル)メチル}−6−メチル−1−ヒドロキシベンゼン、
2,6−ビス{(5−ホルミル−2−ヒドロキシフェニル)メチル}−4−メチル−1−ヒドロキシベンゼン、
2,6−ビス{1−(3−ホルミル−4−ヒドロキシフェニル)エチル}−4−メチル−1−ヒドロキシベンゼン、
2,6−ビス{1−メチル−1−(3−ホルミル−4−ヒドロキシフェニル)エチル}−4−メチル−1−ヒドロキシベンゼン、
2,6−ビス[(3-ホルミル-4-ヒドロキシフェニル)メチル]-4-エチル−1−ヒドロキシベンゼン、
2,6−ビス[(3-ホルミル-4-ヒドロキシフェニル)メチル]-4-イソプロピル−1−ヒドロキシベンゼン、
2,6−ビス[(3-ホルミル-4-ヒドロキシフェニル)メチル]-4-n-ブチル−1−ヒドロキシベンゼン、
2,6−ビス[(3-ホルミル-4-ヒドロキシフェニル)メチル]-4-n-プロピル−1−ヒドロキシベンゼン、
2,6−ビス[(5-ホルミル-2-ヒドロキシフェニル)メチル]-4-エチル−1−ヒドロキシベンゼン、
2,6−ビス[(3-ホルミル-4-ヒドロキシフェニル)メチル]-4-シクロペンチル−1−ヒドロキシベンゼン、
2,6−ビス[(2-ホルミル-4-ヒドロキシフェニル)メチル]-4-シクロペンチル−1−ヒドロキシベンゼン、
2,6−ビス[(3-ホルミル-4-ヒドロキシフェニル)メチル]-4-シクロヘキシル−1−ヒドロキシベンゼン、
2,6−ビス[(3-ホルミル-2-ヒドロキシフェニル)メチル]-4-シクロヘキシル−1−ヒドロキシベンゼン、
2,6−ビス[(2-ホルミル-4-ヒドロキシフェニル)メチル]-4-シクロヘキシル−1−ヒドロキシベンゼン、
ビス{3−(3−ホルミル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル}メタン、ビス{3−(3−ホルミル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル}メタン、
などが挙げられる。
【0037】
次に、上記ビス(ホルミルフェニル)化合物から誘導されてもよい、本発明における今ひとつの新規な化合物である多核体ポリフェノール化合物は下記一般式(2)で表される。
一般式(2)
【化2】

式中、R、R、R、R5、並びにk、m、nは一般式(1)のそれと同じであり、Rは水素原子又は炭素原子数1〜6の1級アルキル基又は2級アルキル基を示し、Xは下記一般式(3)で表されるヒドロキシフェニル基を示す。
一般式(3)
【化3】

式中、Rは炭素原子数1〜8のアルキル基又は炭素原子数1〜8のアルコキシル基を示し、aは1〜3の整数を、bは0〜4の整数を示し、但し1≦a+b≦5であり、bが2以上の場合、Rは同一でも異なっていてもよい。
【0038】
また、前記一般式(3)のヒドロキシフェニル基において、好ましいヒドロキシフェニル基は下記一般式(4)で示される。
一般式(4)
【化4】

式中、R、R、R10は各々独立して水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基または炭素原子数1〜8のアルコキシル基を示す。
【0039】
上記一般式(3)に於いて、式中、Rは炭素原子数1〜8のアルキル基または炭素原子数1〜8のアルコキシル基を表し、上記一般式(4)に於いて、式中、R、R、R10は、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基又は炭素原子数1〜8のアルコキシル基を表し、炭素原子数1〜8のアルキル基または炭素原子数1〜8のアルコキシル基としては、具体的には、一般式(1)のRのそれと同じである。
また、一般式(3)において、b=3即ちRが3置換以下で、a=1即ち、水酸基が1置換であって、水酸基のm−位の少なくとも一つが未置換である場合、水酸基に対しp−位でホルミル基と結合しうる置換基が合成上好ましい。また、b=4即ちRが4置換の場合は、水酸基に対しo−位でホルミル基と結合しうる置換基が合成上好ましい。
【0040】
従って、上記、一般式(3)乃至一般式(4)で表される置換フェニル基としては、具体的には例えば、水酸基が一つのものとして、4−ヒドロキシフェニル基、3−メチル−4−ヒドロキシフェニル基、2−メチル−4−ヒドロキシフェニル基、2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル基、3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル基、2,3、5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル基、3−エチル−4−ヒドロキシフェニル基、3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル基、3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル基、3−t−ブチル−6−メチル−4−ヒドロキシフェニル基、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル基、3−sec−ブチル−4−ヒドロキシフェニル基、3−t−オクチル−4−ヒドロキシフェニル基、3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル基、3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル基、2−メチル−5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル基、5−メチル−2−ヒドロキシフェニル基、4,6-ジメチル−2−ヒドロキシフェニル基、3,4,6−トリメチル−2−ヒドロキシフェニル基、3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル基、5−t−オクチル−2−ヒドロキシフェニル基、3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル基、5−メトキシ−2−ヒドロキシフェニル基、3−n−ヘキシルオキシ−4−ヒドロキシフェニル基、3−n−オクチルオキシ−4−ヒドロキシフェニル基、5−ブトキシ−2−ヒドロキシフェニル基などが挙げられる。
【0041】
また、水酸基が2つ乃至3つのものとして、2,4−ジヒドロキシフェニル基、3,4−ジヒドロキシフェニル基、2−メチル−4,5−ジヒドロキシフェニル基、3−メチル−4,5−ジヒドロキシフェニル基、5−メチル−2,4−ジヒドロキシフェニル基、2,3,4−トリヒドロキシフェニル基などが挙げられる。
【0042】
従って、一般式(2)で表される多核体フェノール化合物としては、好ましくは、下記一般式(10)又は下記一般式(11)で示される。
一般式(10)

(式中、R〜R、X並びにk、m、nは一般式(2)のそれと同じである。)
一般式(11)

(式中、R〜R、X並びにk、m、nは一般式(2)のそれと同じである。)
【0043】
上記一般式(10)又は(11)で示される多核体ポリフェノール化合物としては、具体的には例えば、kが1の化合物としては、
2,6−ビス[{3−ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−4−カルボキシメトキシフェニル}メチル]−4−メチル−1−カルボキシメトキシベンゼン、

2,6−ビス[{3−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−4−カルボキシメトキシフェニル}メチル]−4−メチル−1−カルボキシメトキシベンゼン、

2,6−ビス[{3−ビス(2−メチル−5−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−4−カルボキシメトキシフェニル}メチル]−4−メチル−1−カルボキシメトキシベンゼン、

kが2の化合物としては、
ビス[3−{3−ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−4−カルボキシメトキシフェニル}メチル−2,5−ジメチル−4−カルボキシメトキシフェニル]メタン、

【0044】
更に、
2,6−ビス[{3−ビス(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−4−カルボキシメトキシフェニル}メチル]−4−メチル−1−カルボキシメトキシベンゼン、
2,6−ビス[{3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチル−4−カルボキシメトキシフェニル}メチル]−4−メチル−1−カルボキシメトキシベンゼン、
2,6−ビス[{3−ビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−4−カルボキシメトキシフェニル}メチル]−4−シクロヘキシル−1−カルボキシメトキシベンゼン、
2,6−ビス[{3−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−4−カルボキシメトキシフェニル}メチル]−3,4−ジメチル−1−カルボキシメトキシベンゼン、
2,6−ビス[{3−ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−4−メトキシカルボニルメトキシフェニル}メチル]−4−メチル−1−メトキシカルボニルメトキシベンゼン、
2,4−ビス[{3−ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−4−カルボキシメトキシフェニル}メチル]−6−メチル−1−カルボキシメトキシベンゼン、
ビス[3−{3−ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−5−メチル−2−カルボキシメトキシフェニル}メチル−5−メチル−2−カルボキシメトキシフェニル]メタン、
2,6−ビス[{3−ビス(2−メチル−4,5−ジヒドロキシフェニル)メチル−2,5−ジメチル−4−カルボキシメトキシフェニル}メチル]−4−メチル−1−カルボキシメトキシベンゼン、
2,6−ビス[{3−ビス(2−メチル−4,5−ジヒドロキシフェニル)メチル−2,
5−ジメチル−4−(4−カルボキシフェニル)メトキシフェニル}メチル]−4−メチル−1−(4−カルボキシフェニル)メトキシベンゼン、
2,6−ビス[{3−ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−4−カルボキシメトキシフェニル}メチル]−4−メトキシ−1−カルボキシメトキシベンゼン、
2,6−ビス[{3−ビス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)メチル−4−カルボキシメトキシフェニル}メチル]−4−メチル−1−カルボキシメトキシベンゼン、
ビス[3−{3−ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−5−メチル−4−カルボキシメトキシフェニル}メチル−5−メチル−2−カルボキシメトキシフェニル]メタン、
ビス[3−{3−ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−4−メトキシカルボニルメトキシフェニル}メチル−2,5−ジメチル−4−メトキシカルボニルメトキシフェニル]メタン
などが挙げられる。
【0045】
このような上記一般式(1)で表されるビス(ホルミルフェニル)化合物から誘導されてもよい、本発明における今ひとつの新規な化合物である上記一般式(2)で表される多核体ポリフェノール化合物は、その製造方法は特に限定されるものではないが、好ましくは、例えば、下記反応式(7)において2,6−ビス{(3−ホルミル−4−メトキシカルボニルメトキシフェニル)メチル}−4−メチル−1−メトキシカルボニルメトキシベンゼンと、2,5−ジメチルフェノールの反応について例示するよう、本発明の一般式(1)で表されるビス(ホルミルフェニル)化合物を直接原料とし、酸触媒の存在下でフェノール類と反応させることにより得ることができる。
【0046】
反応式(7)

【0047】
上記例示反応式におけるフェノール類において、一般式(2)におけるXで示される一般式(3)で表されるフェノール類としては、フェニル核に置換した水酸基に対し、フェニル核のo−位又はp−位の少なくとも一つが未置換である必要がある。詳しくは、アルキル基及び/又はアルコキシル基の置換基数が3以下で、水酸基数が1である場合は水酸基に対してp−位が未置換のフェノール類が合成上好ましく、アルキル基及び/又はアルコキシ基の置換基数が4の場合は水酸基のo−位が未置換であるフェノール類が合成上好ましい。
【0048】
このようなフェノール類として、具体的には例えば、水酸基が一つのものとして、フェノール、o−クレゾール、p−クレゾール、m−クレゾール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,5−キシレノール、2,3,6−トリメチルフェノール、2,3,5−トリメチルフェノール、2−シクロヘキシル−5−メチルフェノール、2−シクロヘキシルフェノール、2−エチルフェノール、2−t−ブチルフェノール、2−t−ブチル−5−メチルフェノール、2,4−キシレノール、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェノール、2−sec−ブチルフェノール、2−n−オクチルフェノール、2−t−オクチルフェノール、4−t−オクチルフェノール、2−イソプロピルフェノール、2−t−ブチル−4−メチルフェノール、2−メトキシフェノール、2−メチル−5−メトキシフェノール、4−ブトキシフェノール、2−n−ヘキシルオキシフェノー
ル、2−n−オクチルオキシフェノール等が、又、水酸基が2以上のものとして、レゾルシン、カテコール、4−メチルカテコール、3−メチルカテコール、2−メチルレゾルシノール、4−メチルレゾルシノール、ピロガロール等が挙げられる。
【0049】
上記反応式(7)で例示したように、ビス(ホルミルフェニル)化合物とフェノール類との反応において、用いるフェノール類の量はビス(ホルミルフェニル)化合物1モル部に対し、使用するフェノール類により好ましい添加量範囲は異なるが、通常、4〜20モル部の範囲、好ましくは4.5〜10モル部の範囲で用いられる。
また、反応溶媒は用いてもよく、また、用いなくてもよい。しかしながら、ビス(ホルミルフェニル)化合物に対するフェノール類のモル比が小さいか、又はフェノール類の融点が高く撹拌が困難な場合には溶媒を用いることが好ましい。用いられる反応溶媒としては、例えば、メタノール、ブタノール等の低級脂肪族アルコール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メチルイソブチルケトン等の脂肪族ケトン類又はこれらの混合溶媒が挙げられる。好ましくは低級脂肪族アルコール類であり、また、カテコールやレゾルシン等の融点が高くかつ水への溶解度が大きいフェノール類を用いる場合は水を反応溶媒にすることができる。
このような溶媒は、特に制限はないが、通常、用いるフェノール類に対して0.5重量倍〜10重量倍の範囲、好ましくは0.5重量倍〜2重量倍の範囲で用いられる。
【0050】
上記反応式(7)において例示される製造方法において、酸触媒としては、反応混合液に溶解する酸が好ましく、従って、無機酸、有機スルホン酸やカルボン酸等の有機酸で、強酸から中程度の強さの酸が用いられる。具体的には、例えば、35%塩酸、塩化水素ガス、硫酸、リン酸等の無機酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸等の有機酸が挙げられる。このような酸触媒の使用量は酸の強さ等により好ましい範囲は異なるが、通常、フェノール類に対して1重量%〜50重量%の範囲で用いられる。
【0051】
反応は、通常、温度0℃〜100℃の範囲、好ましくは20℃〜60℃の範囲において、空気中、より好ましくは窒素等の不活性ガス雰囲気中、攪拌しながら、通常、1〜20時間程度行えばよい。
上記製造方法においては、公知の方法に従って、反応によって生成する多核フェノール化合物を必要に応じて分離精製することができる。
そこで、反応終了後、得られた反応液に水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ水を加えて、酸を中和し、次いで水層を分離除去するために必要に応じてトルエン、キシレン、メチルイソブチルケトン又はエーテル等の水と分離可能な溶媒を加え、その後、水層を分離すると共に油層を水洗し、得られた油層から、必要に応じて溶媒や未反応原料のフェノール類を留出させ、除去した後、これに溶媒を添加し、晶析又は沈析濾別することによって、結晶性或いは非結晶性の固体を得る。必要に応じて、更に高純度物として取り出すために、同様の晶析又は沈析操作を1回〜複数回行ってもよい。
また、得られた目的生成物が低沸点溶媒との付加物結晶(アダクト結晶)の場合には、減圧下、100〜200℃程度で付加物結晶を分解し、溶媒を除去して精製することができる。
さらに、反応生成物の目的とする多核フェノール化合物が上記晶析或いは沈析での取り出しが困難な場合は、カラム分離で取り出し及び精製を行うこともでき、或いはまた、上記精製工程において化合物が溶解した油層から溶媒を蒸留等で留出させ除去することにより樹脂状物又は樹脂状の組成物として取り出すこともできる。
【0052】
また、前記一般式(2)で表される多核体ポリフェノール化合物において、Rが水素原子である場合の、エーテル基がカルボキシ炭化水素基置換体(−RCOOH)を得るには、その製造方法については特に制限されないが、例えば、前記したビス(ホルミルフェニル)化合物の場合と同様の方法で、水酸化ナトリウムやテトラメチルアンモニウムヒドロキシド等のアルカリ水溶液でエステル加水分解することにより、例えば、下記反応式(8)に例示するように多核体ポリフェノール化合物のアルコキシカルボニル炭化水素基(−RCOOR)のRが1級アルキル基又は2級アルキル基であるアルコキシカルボニル炭化水素基置換体(−RCOOR)から容易にカルボキシ炭化水素基置換体(−RCOOH)を得ることができる。
加水分解反応終了後、必要に応じて水と分離する溶剤を加えて洗浄し、油層を除去する。
その後、水と分離する溶剤及び酸を加えてアルカリ水溶液及び目的物のアルカリ塩を中和した後、水層を除去して得られた油層から前述のような公知の方法に従って目的物の取り出し及び精製を行うことができる。
また、一般式(1)で表されるビス(ホルミルフェニル)化合物のアルコキシカルボニル炭化水素基(−RCOOR)のRが3級アルキル基である場合は、下記反応式(9)に例示するように、このようなビス(ホルミルフェニル)化合物とフェノール類との前記した反応において、アルコキシカルボニル炭化水素基置換体(−RCOOR)のR即ち3級アルキル基が脱離し、フェノール類との反応と同時にカルボキシ炭化水素基置換体(−RCOOH)が生成し、カルボキシ炭化水素基置換体(−RCOOH)をもつ多核ポリフェノールを得ることができる。
あるいは、一般式(1)においてRが水素原子であるビス(ホルミルフェニル)化合物とフェノール類とを反応させても得ることができる。
【0053】
反応式(8)

反応式(9)

【実施例】
【0054】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0055】
実施例1:(ビス(ホルミルフェニル)化合物の合成)
2,6−ビス{(3−ホルミル−4−メトキシカルボニルメトキシフェニル)メチル}−4−メチル−1−メトキシカルボニルメトキシベンゼンの合成;
2,6−ビス{(3−ホルミル−4−ヒドロキシフェニル)メチル}−4−メチルフェノール188.2g(0.5mol)を2リッター容量の4つ口フラスコに仕込み、N−メチルピロリドン470.0gを加えて溶解させた。これを50℃まで昇温した後、よう化カリウム28.3g(0.04mol)、炭酸カリウム241.8g(1.76mol)を加えて1時間攪拌した。次いで65℃まで昇温し、そこにクロロ酢酸メチル292.7g(2.69mol)を2時間かけて滴下し、70℃でさらに3時間攪拌を行った。反応終了後、水300.0g、メチルイソブチルケトン600.0gを加えて60℃で撹拌を行い、水層を抜き取り、さらに水300.0g加えて同様の操作で水洗、分液を3回行った。
得られた油層を減圧下、70℃において溶媒を留去させ、高速液体クロマトグラフィーによる純度が78.0%(area%)の液体240.1gを得た。
一部をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製を行い、液体クロマトグラフィー質量分析及びNMR分析を行った結果、目的物であることを確認した。
【0056】
分子量(液体クロマトグラフィー質量分析法/大気圧化学イオン化法) :593(M+H)+
プロトンNMR分析(400MHz、溶媒:DMSO―d6、標準物質:テトラメチルシラン)

【0057】
【表1】

【0058】
実施例2:(多核体ポリフェノール化合物の合成)
2,6−ビス[{3−ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−4−カルボキシメトキシフェニル}メチル]−4−メチル−1−カルボキシメトキシベンゼンの合成;
2,5−キシレノール244.0g(2.0mol)、メタノール135.4gおよび35%塩酸水97.6gを2リッター容量の4つ口フラスコに仕込み、これに実施例1で得られたビス(ホルミルフェニル)化合物237.0g(0.4mol)をメタノール153.0gで希釈した溶液を温度40℃で2.5時間かけて攪拌下に滴下し、さらに温度50℃で16時間攪拌下に反応を行った。
反応終了後、これに16%水酸化ナトリウム水溶液270.0gを加えて中和し、常圧で濃縮して、溶媒325.9gを除去した。得られた残液にメチルイソブチルケトン800g、水400gを加えて、撹拌下に70℃まで昇温した後、10分間静置し、水層を除去し、得られた油層に水400gを加え、同様の操作で水洗、分液を行った。
その後、得られた油層に25%テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド水溶液1005gを加えて、撹拌下に70℃で30分加水分解を行ったのち、油層(上層)を抜き取った。得られた水層に温度50℃においてメチルイソブチルケトン910.0gと35%塩酸水溶液288.0gを加えて中和した。ついで、水層を除去し、水400gを加えて撹拌下70℃に昇温した後、水層を除去した。得られた油層を減圧で濃縮して溶媒788.1gを除去し、残液にアセトン197.8g、トルエン 397.8gを順に添加(アセトン添加時に結晶が析出)した。そのスラリー液を、冷却ついでろ過して粗結晶302.4gを得た。
得られた粗結晶をメチルイソブチルケトン834.6g、メチルエチルケトン834.6gに溶解させ、減圧で濃縮を行い溶媒1309.1gを除去し(途中で結晶が析出)、そこにトルエン471.9gを添加した。
それを冷却、ろ過して、得られた結晶を減圧下120℃で乾燥し、高速液体クロマトグラフィーによる純度が95.5%(area%)の淡黄色粉末の目的物221.3gを得た。
原料ビス(ホルミルフェニル)化合物に対する収率は50.3%であった。
【0059】
ガラス転移温度;128.1℃(示差走査熱量測定、 peaktop)
分子量(液体クロマトグラフィー質量分析法/大気圧化学イオン化法) :1002(M−H)
プロトンNMR分析(400MHz、溶媒:DMSO-d6、標準物質:テトラメチルシラン)

【0060】
【表2】

参考例1:(原料ビス(ヒドロキシ−ホルミルフェニル)化合物の合成)
ビス[3−(3−ホルミル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル]メタンの合成;
サリチルアルデヒド146.4g(1.2mol)と75%リン酸水溶液146.4gを容量1Lの4つ口フラスコに仕込み、フラスコ内を窒素置換した後、ビス(2,5−ジメチル−3−ヒドロキシメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン63.3g(0.2mol)を60℃で5時間かけて撹拌下に添加し反応を行った。その後、60℃で4時間撹拌下に反応を続けたところ、反応途中で結晶が析出した。
反応終了後、反応液にメチルイソブチルケトン10.0g、トルエン100.0gを加えて25℃まで冷却して、析出した結晶を濾別し、結晶状生成物83.4gを得た。
次いで、得られた生成物とメチルエチルケトン140.0g、メチルイソブチルケトン260.0gおよび水80.0gを容量1Lの4つ口フラスコに仕込み、60℃まで昇温して溶解後、静置して水層を除去した。 得られた油層を65℃、減圧下で加熱して溶媒328.1gを留去し、トルエン80.0gを加えて、結晶を析出させた。その後、25℃まで冷却して、ろ過し、結晶状生成物29.7gを得た。
上記得られた生成物とメチルイソブチルケトン75.0gを容量1Lの4つ口フラスコに仕込み、撹拌下60℃まで昇温した後、このスラリー溶液を25℃まで冷却した。 その後、ろ過、乾燥して目的物である淡黄色粉末13.0g(高速液体クロマトグラフィーによる純度91.1%)を得た。原料のヒドロキシメチル置換ビスフェノールに対する収率は12.4%であった。
1H-NMR(400MHz) 溶媒:DMSO―d6 標準物質:テトラメチルシラン

【表3】

実施例3:(ビス(ホルミルフェニル)化合物の合成)
ビス{3−(3−ホルミル−4−メトキシカルボニルメトキシフェニル)メチル−2,5−ジメチル−4−メトキシカルボニルメトキシフェニル}メタンの合成;
参考例1で得られたビス(ホルミルフェノール)化合物12.6g(2.4×10-2 mol)とN−メチルピロリドン31.5gを容量500mlの4つ口フラスコに仕込み溶解した後、フラスコ内を窒素置換した。この溶液を50℃まで昇温後、よう化カリウム1.9g(1.1×10-2mol)、炭酸カリウム16.6g(0.12mol)を加えて1時間攪拌した。
次いで60℃まで昇温させ、そこにクロロ酢酸メチル20.8g(0.19mol)を2時間30分かけて撹拌下に滴下し反応を行った。さらに60℃で6時間撹拌下に反応を続けた。
反応終了後、反応液にメチルイソブチルケトン64.0g、水20gを加えて撹拌後、静置して水層を除去した。得られた油層に水20.0g加えて同様の操作で水洗及び水層の除去を3回行った。
得られた油層を減圧下70℃で加熱して溶媒を留去し、粘性のある液体(高速液体クロマトグラフィーによる純度87.5%) 19.1gを得た。得られた液体が下記化学式で示される目的化合物であることを液体クロマトグラフィー質量分析及びNMR分析により確認した。
また、原料のビス(ホルミルフェノール)化合物に対する収率は、97.9%であった。

実施例4:(多核体ポリフェノール化合物の合成)
ビス[3−{3−ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル−4−カルボキシメトキシフェニル}メチル−2,5−ジメチル−4−カルボキシメトキシフェニル]メタンの合成;
2,5−キシレノール14.3g(0.12mol)、メタノール14.3gを容量500mlの4つ口フラスコに仕込み溶解し、フラスコ内を窒素置換した後、35%塩酸水5.7gを加え、そこに実施例3で得られたビス(ホルミルフェニル)化合物19.1g(2.35×10-2mol)をトルエン15.0gで希釈した溶液を40℃で1.5時間かけて撹拌下に滴下し反応を行った。その後、50℃でさらに21時間撹拌下に反応を行った。
反応終了後、反応液に25%テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド水溶液19.6gを加えて中和し、常圧で加熱し溶媒30.6gを留去させた。
そこにメチルイソブチルケトン57.0g、水30.0gを加えて、撹拌下70℃まで昇温後、静置して水層を除去した。得られた油層に水30.0gを加え、同様の操作で水洗、水層の除去を行った。得られた油層に25%テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド水溶液59.8gを加えて、60℃で1時間攪拌して加水分解反応を行い、静置して上層を除去した後、得られた水層とメチルイソブチルケトン42.0gを50℃で混合し、撹拌下35%塩酸水溶液17.2gを加えた後、静置して水層を除去した。
得られた油層に水50.0g加えて撹拌下に70℃まで昇温した後、水層を除去し得られた油層を減圧下で加熱して溶媒を除去して、赤褐色固体23.0gを得た。
ついで、得られた固体をメチルイソブチルケトン30gに溶解させ、トルエン500.0g中に滴下して再沈殿を行い析出した固体をろ過、乾燥して淡黄色粉末状の目的物20.4g(高速液体クロマトグラフィーによる純度89.8%)を得た。原料のビス(ホルミルフェニル)化合物に対する収率は71.8%であった。
ガラス転移温度:151.7℃(DSC)
分子量:1208.4(M−H)(液体クロマトグラフィー質量分析法/大気圧化学イオン化法)
1H-NMR(400MHz) 溶媒:DMSO―d6 標準物質:テトラメチルシラン

【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】

で表されるビス(ホルミルフェニル)化合物。
(式中、R、Rは各々独立して炭素原子数1〜8のアルキル基または炭素原子数1〜8のアルコキシル基を示し、Rは炭素原子数6〜15の単環又は縮合環芳香族炭化水素基、又は炭素原子数6〜15の単環若しくは縮合環芳香族炭化水素基を有していてもよい炭素原子数1〜8の脂肪族飽和炭化水素基を示し、Rは水素原子又は炭素原子数1〜6のアルキル基を示し、R5、は同一であっても、異なっていてもよく、二価の炭素原子数1〜8の脂肪族飽和炭化水素基を示し、mは0または1〜3の整数を表し、nは0または1〜3の整数を表し、kは1〜3の整数を表し、但し、kが2以上の場合、各々のフェニル基のR6、1、nは同一であっても、異なっていてもよい。)
【請求項2】
下記一般式(2)
【化2】

で表される多核体ポリフェノール化合物。
(式中、R、R、R、R5、並びにk、m、nは一般式(1)のそれと同じであり、Rは水素原子又は炭素原子数1〜6の1級アルキル基又は2級アルキル基を示し、Xは下記一般式(3)で表されるヒドロキシフェニル基を示す。)
一般式(3)
【化3】

(式中、Rは炭素原子数1〜8のアルキル基又は炭素原子数1〜8のアルコキシル基を示し、aは1〜3の整数を、bは0〜4の整数を示し、但し1≦a+b≦5であり、bが2以上の場合、Rは同一でも異なっていてもよい。)
【請求項3】
前記一般式(3)のヒドロキシフェニル基が下記一般式(4)で示される請求項2に記載の多核体ポリフェノール化合物。
一般式(4)
【化4】

(式中、R、R、R10は各々独立して水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基または炭素原子数1〜8のアルコキシル基を示す。)

【公開番号】特開2009−149594(P2009−149594A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−118798(P2008−118798)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(000243272)本州化学工業株式会社 (44)
【Fターム(参考)】