新規なペルオキシダーゼ
【課題】過酸化水素との親和性が高く、低濃度の過酸化水素で活性を有するペルオキシダーゼを提供する。
【解決手段】下記(a)〜(d)のいずれか一つで表されることを特徴とするタンパク質:(a)特定の塩基配列からなる遺伝子によってコードされるタンパク質;(b)特定のアミノ酸配列からなるタンパク質;(c)特定の塩基配列に対して相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされ、かつ、ペルオキシダーゼ活性を有するタンパク質;(d)特定のアミノ酸配列からなるタンパク質において1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ、ペルオキシダーゼ活性を有するタンパク質。
【解決手段】下記(a)〜(d)のいずれか一つで表されることを特徴とするタンパク質:(a)特定の塩基配列からなる遺伝子によってコードされるタンパク質;(b)特定のアミノ酸配列からなるタンパク質;(c)特定の塩基配列に対して相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされ、かつ、ペルオキシダーゼ活性を有するタンパク質;(d)特定のアミノ酸配列からなるタンパク質において1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ、ペルオキシダーゼ活性を有するタンパク質。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物由来の新規なペルオキシダーゼに関し、特に、低濃度の過酸化水素で活性を有するペルオキシダーゼに関する。
【背景技術】
【0002】
ペルオキシダーゼは、動物界、植物界、微生物界に広く分布する酵素であり、過酸化水素の存在下で有機化合物を酸化する反応を触媒する酵素である。この性質を利用して、ペルオキシダーゼは、衣料用洗剤中の漂白成分や、ELISAなどの生化学的分析法用の試薬に工業的に広く使用されている(特許文献1)。
【0003】
このような工業的に使用されるペルオキシダーゼの場合、反応に必要な過酸化水素の濃度が低くて済むこと、つまり過酸化水素との親和性が高いことが望ましい。例えば、衣料用洗剤の場合、使用するペルオキシダーゼの過酸化水素との親和性が高いほど、添加する過酸化水素量が少なくて済み、製造コストを低くすることができる。また、生化学的分析用の試薬の場合、使用するペルオキシダーゼの過酸化水素との親和性が高いほど、併用できる抗体などの種類が増加し、分析対象の増大や分析感度の向上が期待できる。
【0004】
しかしながら、従来、工業的に使用されているペルオキシダーゼはいずれも過酸化水素との親和性が低く、未だ改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−234997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明は、かかる従来技術の現状に鑑み創案されたものであり、その目的は、過酸化水素との親和性が高く、低濃度の過酸化水素で活性を有するペルオキシダーゼを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために、様々な植物由来のペルオキシダーゼの過酸化水素との親和性について鋭意検討した結果、園芸植物のポーチュカ(Portulaca oleracea)が生産するペルオキシダーゼの中に過酸化水素との親和性が高いものが二種類存在することを見出し、それらの塩基配列を決定し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明の第一の側面によれば、(a)〜(d)のいずれか一つで表されることを特徴とするタンパク質が提供される:
(a)配列番号3に記載の塩基配列からなる遺伝子によってコードされるタンパク質;
(b)配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(c)配列番号3に記載の塩基配列に対して相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされ、かつ、ペルオキシダーゼ活性を有するタンパク質;
(d)配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質において1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ、ペルオキシダーゼ活性を有するタンパク質。
【0009】
また、本発明の第一の側面によれば、(a)〜(d)のいずれか一つで表されることを特徴とする遺伝子が提供される:
(a)配列番号3に記載の塩基配列からなる遺伝子;
(b)配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子;
(c)配列番号3に記載の塩基配列に対して相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ペルオキシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子;
(d)配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質において1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列に対応する塩基配列からなり、かつ、ペルオキシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子。
【0010】
本発明の第二の側面によれば、(e)〜(h)のいずれか一つで表されることを特徴とするタンパク質が提供される:
(e)配列番号7に記載の塩基配列からなる遺伝子によってコードされるタンパク質;
(f)配列番号8に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(g)配列番号7に記載の塩基配列に対して相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされ、かつ、ペルオキシダーゼ活性を有するタンパク質;
(h)配列番号8に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質において1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ、ペルオキシダーゼ活性を有するタンパク質。
【0011】
また、本発明の第二の側面によれば、(e)〜(h)のいずれか一つで表されることを特徴とする遺伝子が提供される:
(e)配列番号7に記載の塩基配列からなる遺伝子;
(f)配列番号8に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子;
(g)配列番号7に記載の塩基配列に対して相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ペルオキシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子;
(h)配列番号8に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質において1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列に対応する塩基配列からなり、かつ、ペルオキシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子。
【発明の効果】
【0012】
本発明によって提供される二種類のペルオキシダーゼは、いずれも過酸化水素との親和性が高く、低濃度の過酸化水素で活性を有するので、これらを使用した洗剤の製造コストの削減や生化学的分析の精度の向上をもたらすことが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例で使用したプライマーを示す表1である。
【図2】PRXの遠位ヒスチジン領域の塩基配列を示す表2である。
【図3】3′RACE法を示す。
【図4】5′RACE法を示す。
【図5】ポーチュラカPRXの発現パターンを示す。
【図6】ポーチュラカ根由来の過酸化水素高親和性PRXの解析を示す。
【図7】過酸化水素高親和性PRXの同定を示す。
【図8A】PoPRX1の塩基配列およびアミノ酸配列を示す。
【図8B】PoPRX2の塩基配列およびアミノ酸配列を示す。
【図8C】PoPRX3の塩基配列およびアミノ酸配列を示す。
【図8D】PoPRX4の塩基配列およびアミノ酸配列を示す。
【図8E】PoPRX5の塩基配列およびアミノ酸配列を示す。
【図9】PoPRXのアミノ酸配列解析を示す。
【図10】各PoPRXの特徴を示す表3である。
【図11】実施例3.(1)で作成した遺伝子構築物の構造を示す。
【図12A−C】PoPRX発現BY2のスクリーニングを示す。
【図12D−E】PoPRX発現BY2のスクリーニングを示す。
【図13】PoPRXのH2O2親和性評価を示す。
【図14】組換えPoPRX2の過酸化水素親和性解析を示す。
【図15】組換えPoPRX4の過酸化水素親和性解析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の二種類のペルオキシダーゼを詳細に説明する。
第一のペルオキシダーゼは、(a)配列番号3に記載の塩基配列からなる遺伝子によってコードされるタンパク質、または(b)配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であり、第二のペルオキシダーゼは、(e)配列番号7に記載の塩基配列からなる遺伝子によってコードされるタンパク質、または(f)配列番号8に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質である。これらは、いずれもスベリヒユ科の園芸植物であるポーチュラカが生産するペルオキシダーゼである。第一のペルオキシダーゼは、実施例で単離したPoPRX2に相当し、第二のペルオキシダーゼは、実施例で単離したPoPRX4に相当する。
【0015】
本発明のペルオキシダーゼは、過酸化水素の存在下で有機化合物を酸化する反応を触媒する点では従来公知のペルオキシダーゼと同様であるが、その最大の特徴は、従来公知のペルオキシダーゼに比べて低過酸化水素濃度でも反応を触媒することができる点にある。従来公知のペルオキシダーゼは、一般に2〜3mM程度の過酸化水素のミカエリス定数を有するため、4〜6mM程度の濃度の過酸化水素が触媒活性の最大反応速度を発揮するために必要であるが、本発明のペルオキシダーゼは、0.7mM程度の過酸化水素のミカエリス定数を有するため、1.4mM程度の低濃度の過酸化水素条件下でも触媒活性の最大反応速度を発揮することができる。
【0016】
本発明は、(a)配列番号3に記載の塩基配列からなる遺伝子、および(b)配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子も包含する。これらは、上記第一のペルオキシダーゼの遺伝子である。また、本発明は、(e)配列番号7に記載の塩基配列からなる遺伝子、および(f)配列番号8に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子も包含する。これらは上記第二のペルオキシダーゼの遺伝子である。
【0017】
本発明の第一のペルオキシダーゼは、上記(a)および(b)のものに限定されず、(c)配列番号3に記載の塩基配列に対して相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされ、かつ、ペルオキシダーゼ活性を有するタンパク質、または(d)配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質において1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ、ペルオキシダーゼ活性を有するタンパク質も包含する。本発明の第二のペルオキシダーゼは、上記(e)および(f)のものに限定されず、(g)配列番号7に記載の塩基配列に対して相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされ、かつ、ペルオキシダーゼ活性を有するタンパク質、または(h)配列番号8に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質において1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ、ペルオキシダーゼ活性を有するタンパク質も包含する。例えば、本発明者らの研究によれば、配列番号4に記載のアミノ酸配列の261番目のアミノ酸(Cys残基)をGly残基に置換しても、置換前のペルオキシダーゼと同様の過酸化水素のミカエリス定数(0.87mM)を示すことが確認されている。この変異型ペルオキシダーゼのアミノ酸配列を配列番号62に、塩基配列を配列番号61にそれぞれ示す。
【0018】
また、本発明の第一のペルオキシダーゼの遺伝子は、(c)配列番号3に記載の塩基配列に対して相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ペルオキシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、または(d)配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質において1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列に対応する塩基配列からなり、かつ、ペルオキシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子も包含する。本発明の第二のペルオキシダーゼの遺伝子は、(g)配列番号7に記載の塩基配列に対して相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ペルオキシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、または(h)配列番号8に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質において1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列に対応する塩基配列からなり、かつ、ペルオキシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子も包含する。これは、タンパク質をコードする遺伝子の塩基配列の一部に変異が生じたり、またその結果としてタンパク質のアミノ酸配列の一部に変異が生じても、機能的には同等のタンパク質であることが多いからである。また、本発明のペルオキシダーゼの遺伝子を、由来生物以外の宿主生物(大腸菌など)に組込んで本発明のペルオキシダーゼを発現させる場合、発現効率向上のため、宿主生物のコドンユーセージに合わせて塩基配列を変更することもあるからである。
【0019】
上記(c)のタンパク質をコードする遺伝子および上記(g)のタンパク質をコードする遺伝子は、それぞれ配列番号3または7に記載の塩基配列に対して相補的な塩基配列またはその一部をプローブとしてコロニー又はプラークハイブリダイゼーションを行うことにより得ることができる。なお、本明細書において用いる用語「ストリンジェントな条件」は、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいい、例えば、ある塩基配列と60%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上の相同性を有するDNAのみが特異的にハイブリダイズする条件であることができる。ストリンジェントな条件はハイブリダイゼーション溶液の塩濃度、温度等を調節することにより作り出すことができる。
【0020】
ハイブリダイゼーションの手順としては、先ず目的の遺伝子源から得たDNA(染色体DNA又はcDNA)のライブラリーを作製する。そのライブラリーをプレート上で培養し、生育したコロニー等をニトロセルロース等の膜に移し取り、変性処理によりDNAを膜に固定する。この膜を32P等で標識したプローブ(配列番号3もしくは7の塩基配列又はその一部)を含む溶液中で保温し、膜上のDNAとプローブとの間でハイブリダイゼーションを行う。ハイブリダイゼーションはストリンジェントな条件下、例えば6×SSC、1% SDS、100μg/mlのサケ精子DNA、5×デンハルツを含む溶液中で65℃で20時間行う。ハイブリダイゼーション後、非特異的に吸着したプローブを洗い流し、オートラジオグラフィー等によりプローブとハイブリッド形成したクローンを同定する。この操作をハイブリッド形成したクローンが単一になるまで繰り返す。こうして得られたクローンの中には目的の遺伝子が挿入されている。
【0021】
ハイブリダイゼーションによって得られた遺伝子がペルオキシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子であるかどうかは、例えば、得られた遺伝子をタバコ植物細胞に導入して形質転換体を作成し、この形質転換体を培養して酵素タンパク質を生成させ、この酵素タンパク質を精製して過酸化水素の存在下で有機化合物に添加して酸化物の生成をクロマトグラフィーなどで測定することによって確認することができる。
【0022】
また、上記(d)のタンパク質をコードする遺伝子および上記(h)のタンパク質をコードする遺伝子は、例えばサイトダイレクテドミュータジェネシスキット(タカラバイオ製)や、QuickChange Site−DirectedMutagenesis Kit(STRATAGENE製)などの市販のキットやPCR法を利用して配列番号3または7に記載の塩基配列を改変することによって得ることができる。得られた遺伝子がペルオキシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子であるかどうかは、ハイブリダイゼーションによって得られた遺伝子の場合と同様の方法で確認することができる。
【0023】
本発明のペルオキシダーゼの製造は、その遺伝子を適当なベクターに挿入して組換えベクターを調製し、この組換えベクターで適当な宿主細胞を形質転換して形質転換体を調製し、この形質転換体を培養することによって容易に行うことができる。
【0024】
ベクターとしては、原核および/または真核細胞の各種宿主細胞内で複製保持または自律増殖できるものであれば特に限定されず、プラスミドベクターおよびファージベクター、ウィルスベクター等が包含される。組換えベクターの調製は、常法に従って行えばよく、例えば、これらのベクターに、本発明のペルオキシダーゼの遺伝子を適当な制限酵素およびリガーゼ、あるいは必要に応じてさらにリンカーもしくはアダプターDNAを用いて連結することにより容易に行うことができる。また、Taqポリメラーゼのように増幅末端に一塩基を付加するようなDNAポリメラーゼを用いて増幅作製した遺伝子断片であれば、TAクローニングによるベクターへの接続も可能である。
また、宿主細胞としては、従来公知のものが使用可能であり、組換え発現系が確立しているものであれば特に制限されないが、好ましくは大腸菌、枯草菌、放線菌、麹菌、酵母といった微生物ならびに昆虫細胞、動物細胞、高等植物細胞などが挙げられ、より好ましくは高等植物細胞が挙げられ、特に好ましくはタバコ植物細胞が挙げられる。形質転換体の調製は、常法に従って行えばよい。
【0025】
得られた形質転換体を、その宿主細胞に応じた適当な培養条件で一定期間培養すれば、組込まれた遺伝子から本発明のペルオキシダーゼが発現されて、形質転換体中に蓄積する。
【0026】
形質転換体中に蓄積した本発明のペルオキシダーゼは、未精製のまま使用することができるが、精製したものを使用しても良い。この精製方法としては、従来公知のものが使用可能であり、例えば、培養後の形質転換体あるいはその培養物を適当な緩衝液中でホモジナイズし、超音波処理や界面活性剤処理等により細胞抽出液を得、そこから蛋白質の分離精製に常套的に利用される分離技術を適宜組み合わせることにより行うことができる。このような分離技術としては、塩析、溶媒沈澱法等の溶解度の差を利用する方法、透析、限外濾過、ゲル濾過、非変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)などの分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーなどの荷電を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動などの等電点の差を利用する方法などが挙げられるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。なお、実施例の記載は純粋に発明の理解のためのみに挙げるものであり、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。
【0028】
材料および方法
1.使用植物、菌株、ベクター
(1)使用植物
Portulaca oleracea(ポーチュラカ)
Nicotiana tabacum(タバコ)
Nicotiana tabacum L.cv.Bright Yellow2(タバコ培養細胞)(以下、BY2と称する)
【0029】
(2)使用菌株
Escherichia coli
DH5α deoR,endA1,gyrA96,hsdR17(rk−mk+),
recA1,relA1,supE44,thi−1,
Δ(lacZYA−argF)U169,φ80lacZΔM15,
F−,λ−M15,F−,λ−
Agrobacterium tumefaciens
EHA105 Cmr
carrying the trans−acting
virulence functions necessary
to facilitate the transfer of
the T−DNA region of binary
vectors of plants
【0030】
(3)使用ベクター
Plasmid vector
pBluescriptII SK− ampr,lacZ
pUC18 and 19 ampr,lacZ
pBI121 Kmr
【0031】
2.培地
(1)大腸菌用培地
(i)LB培地
Bacto−tryptone 10g/l,Bacto−yeast extract 5g/l,NaCl 10g/l
平板培地に、15g/lの精製寒天粉末を加えた。オートクレーブ後、必要に応じて、濾過滅菌した抗生物質(アンピシリン100mg/l、カナマイシン50mg/l)を加えた。
【0032】
(ii)2×YT培地
Bacto−tryptone 16g/l,Bacto−yeast extract 10g/l,NaCl 5g/l
平板培地に、15g/lの精製寒天粉末を加えた。オートクレーブ後、必要に応じて、濾過滅菌した抗生物質(アンピシリン100mg/l、カナマイシン50mg/l)を加えた。
【0033】
(iii)SOB培地
Bacto−triptone 20g/l,Bacto−yeast extract 5g/l,NaCl 0.584g/l,KCl 0.186g/l
オートクレーブ後、濾過滅菌した1M MgSO4,1M MgCl2を1lに対して10mlずつ加えた。
【0034】
(2)植物体用培地
(i)MS基本培地
必要に応じて植物ホルモンのNAAおよびBAを以下に示す量だけ加え、KOHでpH5.8に調整した後、3g/lのゲランガムを加えた。オートクレーブ後、必要に応じてカルベニシリン250mg/ml、カナマイシン100mg/mlを加えて用いた。
【0035】
(ii)BY2用培地
KOHでpH5.7に調整した後、オートクレーブして用いた。
平板培地を、pH5.7に調整した後、ゲランガム3g/lを加えた。オートクレーブ後、必要に応じてカルベニシリン250mg/l、カナマイシン100mg/lを加えて用いた。
【0036】
(3)アグロバクテリウム用培地
(i)YEB培地
Bacto−peptone 5g/l,Beaf extract 5g/l,Yeast extract 1g/l,Sucrose 5g/l,MgSO4・7H2O0.5g/l KOHでpH7.0に調整した後、オートクレーブして用いた。必要に応じて、濾過滅菌したカナマイシン50mg/l、クロラムフェニコール10mg/lを加えた。
【0037】
(ii)YEP培地
Bacto−peptone 10g/l,Yeast extract 10g/l,NaCl 5g/l
KOHでpH7.0に調整した後、オートクレーブして用いた。
【0038】
3.実験試薬
実験試薬は特に指定のない限り、和光純薬工業またはナカライテスクのものを用いた。制限酵素、修飾酵素は、東洋紡、タカラバイオ、ニッポンジーン、ファルマシア、シグマ、NEB、またはBRLのものをそれぞれの説明書に従って使用した。
【0039】
4.大腸菌からのプラスミド調製
大腸菌からのプラスミドDNA調製は、添付のマニュアルに従い、MagExtractor(東洋紡)を用いて行った。
【0040】
5.アガロースゲルを用いたDNAの電気泳動
泳動ゲルは、TAE bufferにアガロースゲルを融解させたものを使用した。試料にGel−Loading bufferを1/10量加え、ゲルのウェルに注入した。泳動装置は、Mupid−α(コスモ・バイオ)を用い、1×TAE buffer中、定電圧100Vで行った。泳動後、エチジウムブロマイド0.5μg/mlを含むTAE buffer中でゲルを染色し、トランスイルミネーター上で観察した。
TAE bufferおよびGel−Loading bufferの組成を以下に示す。
TAE buffer:40mM Tris−acetate,1mM EDTA
Gel−Loading buffer:0.25% Bromophenol blue,0.25% Xylene cyanol,40%(w/v)Glycerol
【0041】
6.アガロースゲルからのDNAの回収
目的のDNA断片を含むアガロースゲルをメスで切り出し、エッペンドルフチューブに入れ、MinElute Gel Extraction kit(250)(QIAGEN)を使用し、添付のプロトコールに従ってDNA断片を回収した。
【0042】
7.大腸菌の形質転換
(1)コンピテントセルの調製
コンピテントセルは、Inoueらの方法(Inoue et al.,1990)に従い調製した。大腸菌のシングルコロニーを5mlのLB培地に滅菌済みの楊枝を用いて植菌し、37℃で1晩培養した。この大腸菌培養液のうち、2mlを坂口フラスコ内の200mlのSOB培地に植菌し、660nmにおける濁度が0.4−0.8になるまで室温で振盪培養した(25−30℃、200rpm)。培養液を氷中で5分間冷却後、遠心分離(3000rpm,10min,4℃;BECKMAN JLA−10,500ローター)により集菌して上清を捨て、冷却したTB bufferを1/3量(67ml)加えて穏やかに懸濁してから、10分間氷中に静置した。遠心分離(3000rpm,10min,4℃;BECKMAN JLA−10,500ローター)により集菌して上清を捨て、再び冷却したTB bufferを16ml加えて穏やかに懸濁した。続いて7%(約1.2ml)となるようにDMSOをゆっくり混ぜながら加えた後、10分間氷中に静置した。氷上で100μlずつエッペンドルフチューブに分注し、直ちに液体窒素で凍結させ、−80℃で保存した。
TB bufferの組成を以下に示す。
TB buffer:10mM PIPES,15mM CaCl2・2H2O,
250mM KCl,55mM MnCl2・2H2O
【0043】
(2)形質転換
コンピテントセルを氷中で解凍後、コンピテントセルの1/10量以下(1−20μl)のDNA溶液を加え、氷中に30分間静置した。42℃に30秒間置き、直ちに氷中に戻して2分間静置した後500μlの2×YT培地を加え、37℃で1時間振盪培養した。スピンダウンして上清を大部分除き、残った培地に菌体を懸濁して適当な抗生物質を含むLB寒天培地上に広げ、37℃で1晩培養した。
【0044】
8.PCR
PCR反応は、rTaq DNA Polymerase,KOD DNA Polymerase(東洋紡)およびPhusion(FINNZYMES)を用い、添付のプロトコールに従い、目的遺伝子が増幅する条件で行った。使用したプライマーを表1に示す。
【0045】
9.ポーチュラカのペルオキシダーゼ(以下PRXと称する)遺伝子の単離
(1)RNAの調製
ポーチュラカ組織からのRNA抽出は、Rneasy Plant Mini Kit(QIAGEN)を用いて、添付のマニュアルに従って行った。ゲノムDNAを除去するため、抽出したtotalRNAをDNase I(Roche)で処理した。totalRNA25μl、10×incubation Buffer(100mM NaCl,60mM MgCl,10mM CaCl2,400mM Tris−HCl pH7.9)5μl、DNaseI(10U/μl)2μl、RNase Inhibitor(40U/μl)1μl、滅菌したジエチルピロカーボネート(DEPC)水17μlを混合し、37℃で30分間、保温した。酵素を失活させるため、フェノールクロロホルム抽出を2回、クロロホルム抽出を1回行った。エタノール沈殿を行い、沈殿を10μlの滅菌DEPC水に溶解した。
【0046】
(2)RNAの電気泳動
調製したtotalRNAが分解されていないかどうかを確認するため、電気泳動を行った。RNAサンプル5μlにRNAと等量のホルムアミドを加え、65℃で5分間熱処理し、氷上で5分間静置した。Gel−Loading bufferを1/10量、エチジウムブロマイド(500mg/ml)を2μl加えた。1%アガロースゲルおよびTAEバッファーを用いて電気泳動を行った。
【0047】
(3)3′RACE法
種々のPRX遺伝子間に高度に保存された遠位ヒスチジン領域に相当する塩基配列を、遺伝子特異的プライマーとして使用した(表2)。ポーチュラカ根から調製したRNAを出発材料として3′RACE法(図3)を行った。なお、逆転写酵素として、Transcriptor First Strand cDNA Synthesis kid(Roche)を用いた。
【0048】
(4)塩基配列の決定
Big Dye,Terminator v1.1 Cycle sequencing kit(Appplied Biosystems)を用いて、添付のプロトコールに従って反応を行った。蛍光シグナルの解析には、3100 Genetic Analyzer(Perkin Elmer)を用いた。
【0049】
(5)5′RACE法
3′RACE法により明らかになった塩基配列情報を基に、5′末端にリン酸化修飾したGene Specific Primer(GSP)を設計した。ポーチュラカ根から調製したRNAを出発材料として5′RACE(図4)を行った。各PRX遺伝子の増幅は、根から調製したRNAをGSPで逆転写し、S PrimerとAS PrimerでPCRすることにより行った。使用したPrimerは、表1に示している。
【0050】
10.RT−PCR
ポーチュラカの各器官から調製したcDNAを鋳型にし、目的の遺伝子が増幅するPrimer Setと条件でPCRを行った。また、内部標準としてユビキチン遺伝子の特異的プライマーを用いた。
【0051】
11.遺伝子構築物の作成
各PRX遺伝子を発現させるための構築物を作成した。翻訳エンハンサーであるADH 5’UTR(Satoh et al.,2003)をNtADH−F primerとADH−NsiI−R primerを用いて増幅し、末端を平滑化した後、pUC 118のHincIIギャップに挿入した。得られたプラスミドをNsiIとBamHIで切断した後、T4 DNA polymerase(東洋紡)で平滑化し、アルカリフォスファターゼを用いて脱リン酸化した。各PRX遺伝子ORFを、表1に示す各ORF−FプライマーおよびORF−Rプライマーを用いて増幅し、末端を平滑化した上記ベクターに挿入してADH 5’UTRと各PRXのORFを融合した。各ADH 5’UTR融合PRXを、XbaIとSacIを用いてpBI121(Clontech社)に挿入し、CaMV 35SプロモーターおよびNOSターミネーターに連結した。
【0052】
12.植物培養細胞の形質転換
(1)アグロバクテリウムの形質転換
(i)コンピテントセルの作製
アグロバクテリウムの単一コロニーを5mlのYEB培地に植菌し、28℃で1晩振盪培養した。この培養液を、500mlのYEP培地に植菌し、600nmにおける濁度が0.5になるまで28℃で振盪培養した。培養液を遠心分離(5000rpm,10min,4℃;BECKMAN JLA−10,500ローター)により集菌して上清を捨て、菌体を洗浄するため500mlの滅菌水を加えて懸濁し、再度遠心分離(5000rpm,10min,4℃;BECKMAN JLA−10,500ローター)により集菌して上清を捨てた。この操作を2回繰り返した後、沈殿に20mlの冷却した滅菌10%Glycerolを加えて懸濁した。ナルゲンチューブに移し遠心分離(5000rpm,10min,4℃ BECKMAN JA−20ローター)により集菌して上清を捨てた。沈殿に3mlの冷却した滅菌10%Glycerolを加えて懸濁し、40μlずつエッペンドルフチューブに分注して、液体窒素で凍結させてから−80℃で保存した。
【0053】
(ii)形質転換
コンピテントセルを氷中で解凍した後、1〜2μlのDNA溶液を加え、氷令した2mmキュベットに移した。エレクトロポレーター(BIO RAD、Gene Pulser)により電気パルス(2.5KV、25μF、400Ω)を与え、DNAを導入した。1mlのSOC培地を加え、28℃で1時間振盪培養した後、スピンダウンして上清を大部分除き、残った培地に菌体を懸濁して適当な抗生物質を含むLB寒天培地上に広げ、28℃で2晩培養した。
【0054】
(2)タバコ培養細胞の形質転換
BY2細胞の形質転換は、An(An,1985)の方法に従って行った。カナマイシン100mg/lを含む5mlのLB培地で28℃、2晩培養したアグロバテリウム培養液100μlと、培養4日目のタバコ培養細胞懸濁液5−10mlをシャーレに入れてよく混ぜ、25℃で2晩、暗所下で静置して共存培養した。アグロバクテリウムを除くため、シャーレの中の培養液を15mlの遠心管に移して遠心(1000rpm,5min,4℃;BECKMAN GS−6KR centrifuge)し、上清を取り除いた。新しい改変LS培地を入れて遠心分離(1000rpm,5min,4℃;BECKMAN GS−6KR centrifuge)し、細胞を洗浄した。この操作を4回繰り返し、アグロバクテリウムを除いた培養細胞をカナマイシン100mg/lの入った改変LS寒天培地に播種し、25℃で暗黒下に静置して培養した。約2−3週間後にカルス化した細胞を新しいプレートに移植し、増殖しているクローンを選択した。カナマイシン100mg/lを加えた改変LS培地30ml移し、継代培養を行った。
【0055】
13.タンパク質の調製
(1)ポーチュラカタンパク質サンプルの調製
無菌培養したポーチュラカの各器官(根、茎、葉、花)を液体窒素で冷やしながら乳鉢で粉末状にし、湿重量1gあたり1mlの抽出バッファーを添加した。ボルテックスした後、氷上に20分間静置した。15,000rpm,4℃で20分間遠心し、上清を回収した。
抽出バッファーの組成を以下に示す。
抽出バッファー;1mM DTT,1mM PMSF,10mM KH2PO4 pH6.0 at20℃
【0056】
(2)BY2細胞タンパク質サンプルの調製
ろ紙を用いて培養液と細胞を分離した。細胞8gに20mlの抽出バッファーを添加し、氷上で超音波破砕(10秒間ON/10秒間OFF、Total 8分間)し、9,000rpm,4℃で30分間遠心し、回収した上清をサンプルとした。
【0057】
(3)培養液タンパク質のサンプルの調製
ポーチュラカの水耕培養液およびBY2細胞の培養液を、9,000rpm,4℃で30分間遠心し、上清を回収した。限外濾過カラム(Amicon Ultra−15 10,000MWCO,MILLIPORE社)に回収した上清を入れ、9,000rpm,4℃で90分間遠心し濃縮し、培養液サンプルとした。
【0058】
(4)タンパク質の定量
タンパク質の定量は、Bradfordの方法(Bradford,1976)に従って行った。適当量の水で希釈したタンパク質溶液10μlとタンパク質定量試薬500μlを48ウェルプレートに入れてよく混合し、Abs 595nmでの吸光度を測定した。Bovine Serum Albumin(BSA)を用いて検量線を作成し、これに基づいてサンプルのタンパク質濃度を求めた。
【0059】
14.PRXの解析
(1)等電点電気泳動
BIO−RADのモデル111ミニセルを用いて行った。PAGEゲルサポートフィルムの疎水面をガラスプレートに密着させた後、キャスティングプレートにのせた。モノマー−アンフォライト溶液および触媒溶液を混合し、サポートフィルムとキャスティングプレートのすき間に流し込み、蛍光灯光下で45分間重合させた。作製したゲルに試料および、IEFスタンダード(BIO−RAD,catalog No.161−0310)を塗布した。泳動槽の電極を蒸留水で湿らせ、ゲル面を下にしてセットした。定電圧で、100V 15分間、200V 15分間、450V 60分間泳動した。
モノマー−アンフォライト溶液および触媒溶液の組成を以下に示す。
モノマー−アンフォライト溶液(ゲル一枚分):
dH2O 2.75ml
24.25%(w/v)acrylamide− 1.0ml
0.75%(W/V)bis
25% glycerol 1.0ml
Bio−Lyte 3/10 Ampholyte,40% 0.25ml
(BIO−RAD,catalog No.163−1112)
触媒溶液:
10%(w/v)ammonium 27.5μl
persulfate
0.1%(w/v)riboflavin− 25.0μl
5’−phosphate
TEMED 1.5μl
【0060】
(2)ペルオキシダーゼ活性染色
等電点電気泳動後のゲルを活性染色液に浸し、過酸化水素の濃度を適宜変えて加え、室温で軽く振とうした。バンドを確認後、蒸留水ですすぎ、ハイブリバックに入れゲルをスキャニングした。
活性染色溶液の組成を以下に示す。
活性染色溶液:
A液:50mM Tris−HCl(pH7.5),150mM NaCl
B液:0.3%(w/v)4−クロロ−1−ナフトール,85%(v/v)メタノール
使用直前に、A液とB液を4:1の割合で混合し活性染色溶液とした。
【0061】
(3)PRX活性測定
ピロガロールの酸化によって生じるプルプロガリン(420nmに吸収極大を持つ)を、DU640 SPECTROPHOTOMETER(BECKMAN)を用いて定量し、PRX活性を測定した。溶液1Uの定義はpH6.0、20℃において20秒間でピロガロールから1mgのプルプロガリンを生成する酵素量とする。下記の反応溶液を混合した後、420nmの吸光度を30秒間隔で10分間測定した。また、過酸化水素の終濃度が1mM、0.2mM、0.04mMの条件で測定を行い、ミカエリス定数(Km値)を算出した。
反応溶液
100mM KH2PO4(pH6.0 at20℃) 0.32ml
5.0%ピロガロール 0.32ml
過酸化水素 0.16ml
PRX溶液(in 100mM KH2PO4 0.1ml
pH6.0 at20℃)
D.W. 2.1ml
【0062】
実験
1.ポーチュラカPRX(以下PoPRXと称する)の特徴づけ
(1)ポーチュラカにおけるPRXの発現解析
PoPRXの基礎的知見を得るために、等電点電気泳動およびPRX活性染色によってポーチュラカの根・茎・葉・花における発現パターン解析を行った(図5)。複数のバンド(根−6個)が存在した(図5のA)。根特異的発現を示す中性アイソザイムが存在することがわかった。また、ポーチュラカを無菌水耕培養し、培地に分泌されたPRXを調べたところ、培地中に、分泌されている主なアイソザイムは、約4.5のpIを有する酸性アイソザイムであることがわかった(図5のB)。
【0063】
(2)PoPRXの活性測定
ポーチュラカの根から分泌されるPRXがH2O2高親和性であるかどうかを確認するために、ピロガロールを用いた酵素活性測定を行った。異なるH2O2濃度条件下で活性測定を行い、ミカエリス定数(Km値)を算出した(図6)。その結果、ピロガロールの酸化重合反応におけるH2O2のKm値は約0.69mMであることがわかった。
【0064】
(3)H2O2高親和性PRXの同定
ポーチュラカの根においてH2O2に対する高い親和性を有するPRXアイソザイムを特定するため、H2O2濃度が10mM、1.7mM、0.28mM、0.046mM、0 mMの条件で活性染色を行った(図7)。タバコPRXや、他のPoPRXアイソザイムは、H2O2濃度の減少に伴ってPRX活性が減少しているが、pI約4.5の酸性PRXは低H2O2濃度(0.046mM)下でも活性を維持していることから、pI約4.5の酸性PRXは高いH2O2親和性を有することがわかった。
【0065】
2.PoPRXの遺伝子単離
これまでの解析結果から、ポーチュラカは、H2O2との親和性が高いPRXアイソザイムを有することがわかった。そこで次に、PoPRXの各アイソザイムをコードする遺伝子を取得し、それぞれのPoPRXアイソザイムの機能解析を行った。cDNAを単離する方法として、RACE(rapid amplification of cDNA ends)法を用いた。
【0066】
第一段階である3′RACE法では、種々のPRX遺伝子間に高度に保存された遠位ヒスチジン領域に相当する塩基配列を、遺伝子特異的プライマーとして使用した(図3,表2)。根から調製したRNAを鋳型として3′RACE法を行ったところ、5種類のPRX遺伝子断片PoPRX1〜PoPRX5が得られた。続いて、5′RACE法により各PoPRXのcDNA5’側の塩基配列情報を取得した(図4,表1)。根から調製したRNAをGSPで逆転写し、S PrimerとAS PrimerでPCRした。
【0067】
得られたcDNA塩基配列およびアミノ酸配列を図8A〜8Eに記す。また、各PoPRXのアミノ酸配列とセイヨウワサビPRX C1aアイソザイムのアミノ酸配列との相同性比較解析結果を図9に示す。各PoPRXのアミノ酸配列中には、PRXの立体構造構築に必要なシステイン残基−8箇所と、ヘムとの結合に必要なヒスチジン残基−2箇所が保存されている。また、PSORT(WWW Server;http://psort.nibb.ac.jp)を用いて解析を行ったところ、いずれのPoPRXにも分泌シグナルペプチドが存在することが確認された。また、小胞輸送経路に入ったタンパク質の一次配列上にN−X−S/T(X;PまたはQ以外のアミノ酸)という配列が存在するとN−結合型糖鎖の付加が行われるが、いずれのPoPRXにもN結合型糖鎖付加配列が存在した。また、PoPRX4および5は、C末端に液胞輸送シグナルを有すると推定された。PoPRX2は、既知のPRXよりもN末端のアミノ酸が多いことがわかった。また、遺伝子解析ソフトGenetyx(株式会社ゼネティックス)を用いて、各成熟型PoPRXの等電点を予測したところ、PoPRX1,2および4が酸性アイソザイムであると予測された。各PoPRXの特徴は表3にまとめられる。
【0068】
3.形質転換体BY2を用いたPOPRXの酵素活性評価
【0069】
(1)遺伝子組換えBY2の作成
取得した各PRXを翻訳エンハンサーであるADH 5’UTR(Satoh et al.,2003)と融合した。各ADH5’UTR融合PRXを、バイナリーベクターpBI121に挿入し、CaMV35Sプロモーターおよびnosターミネーターの間に連結した(図11)。各コンストラクトをアグロバクテリウム法によりBY2(タバコ培養細胞)に導入した。得られたカナマイシン耐性カルスから可溶性タンパク質を調製し、等電点電気泳動およびPRX活性染色を行って、クローン選抜を行った。その結果、PoPRX1,2および4については各PRXに由来するバンドが確認された(図12)ので、高発現クローン(PoPRX1は#10,#13、PoPRX2は#5,#8、PoPRX4は#3,#11)を液体培養にて継代培養した。PoPRX3および5に関しては、導入したPRXに特異的なバンドが検出できなかったので、今後の解析はPRX1、2および4を用いて行った。
【0070】
(2)PoPRXのH2O2親和性評価
H2O2親和性を評価するため、各PoPRX発現BY2細胞からタンパク質を調製し、等電点電気泳動で分離後、0.05mMおよび0.8mMのH2O2濃度下でPRX活性染色を行った(図13)。その結果、PoPRX1およびBY2内在性PRXは、H2O2濃度0.8mMの方が0.05mMより明らかにバンドが濃いが、PoPRX2および4は、H2O2濃度0.8mMでのバンドの濃さとH2O2濃度0.05mMでのバンドの濃さはあまり変わらないことがわかった。このことから、PoPRX2および4はPoPRX1およびBY2内在性PRX2と比べて高いH2O2親和性を有することが明らかになった。
【0071】
4.組換えPoPRX2および4の過酸化水素Km値の算出
PoPRX2および4を分泌生産するBY2細胞の培養液を、限外ろ過フィルター(Amicon Ultra 10,000 MWCO,ミリポア)を用いて濃縮した後、Trisバッファー(1mM CaCl2,1mM PMSF,100mM Tris−HCL pH6.0)へのバッファー交換を行った。陽イオン交換カラム(SP Sepharose Fast Flow,Pharmacia Biotech)にサンプルを通し、BY2の内在性PRX(塩基性アイソザイム)を除去して組換えPoPRX2および4を粗精製した(図14A、図15A)。これらのサンプルを用いて、異なる濃度の過酸化水素存在下で活性測定を行った(図14B,図15B)。また、Lineweaver−Burk plotを作成して、過酸化水素のKm値を算出した。その結果、PoPRX2は約0.72mM、PoPRX4は約1.2mMの過酸化水素のKm値を有することがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明のペルオキシダーゼは、低濃度の過酸化水素で活性を有するので、洗剤の漂白成分や生化学分析用の試薬などの様々な工業用途に極めて有用である。
【0073】
【配列表フリーテキスト】
【0074】
配列番号1は、PoPRX1の塩基配列を示す。
配列番号2は、PoPRX1のアミノ酸配列を示す。
配列番号3は、PoPRX2の塩基配列を示す。
配列番号4は、PoPRX2のアミノ酸配列を示す。
配列番号5は、PoPRX3の塩基配列を示す。
配列番号6は、PoPRX3のアミノ酸配列を示す。
配列番号7は、PoPRX4の塩基配列を示す。
配列番号8は、PoPRX4のアミノ酸配列を示す。
配列番号9は、PoPRX5の塩基配列を示す。
配列番号10は、PoPRX5のアミノ酸配列を示す。
配列番号11〜58は、実施例で使用したプライマーの配列を示す。
配列番号59は、PRXの遠位ヒスチジン領域のコンセンサス配列を示す。
配列番号60は、HRP C1aのアミノ酸配列を示す。
配列番号61は、変異型PoPRX2の塩基配列を示す。
配列番号62は、変異型PoPRX2のアミノ酸配列を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物由来の新規なペルオキシダーゼに関し、特に、低濃度の過酸化水素で活性を有するペルオキシダーゼに関する。
【背景技術】
【0002】
ペルオキシダーゼは、動物界、植物界、微生物界に広く分布する酵素であり、過酸化水素の存在下で有機化合物を酸化する反応を触媒する酵素である。この性質を利用して、ペルオキシダーゼは、衣料用洗剤中の漂白成分や、ELISAなどの生化学的分析法用の試薬に工業的に広く使用されている(特許文献1)。
【0003】
このような工業的に使用されるペルオキシダーゼの場合、反応に必要な過酸化水素の濃度が低くて済むこと、つまり過酸化水素との親和性が高いことが望ましい。例えば、衣料用洗剤の場合、使用するペルオキシダーゼの過酸化水素との親和性が高いほど、添加する過酸化水素量が少なくて済み、製造コストを低くすることができる。また、生化学的分析用の試薬の場合、使用するペルオキシダーゼの過酸化水素との親和性が高いほど、併用できる抗体などの種類が増加し、分析対象の増大や分析感度の向上が期待できる。
【0004】
しかしながら、従来、工業的に使用されているペルオキシダーゼはいずれも過酸化水素との親和性が低く、未だ改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−234997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明は、かかる従来技術の現状に鑑み創案されたものであり、その目的は、過酸化水素との親和性が高く、低濃度の過酸化水素で活性を有するペルオキシダーゼを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために、様々な植物由来のペルオキシダーゼの過酸化水素との親和性について鋭意検討した結果、園芸植物のポーチュカ(Portulaca oleracea)が生産するペルオキシダーゼの中に過酸化水素との親和性が高いものが二種類存在することを見出し、それらの塩基配列を決定し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明の第一の側面によれば、(a)〜(d)のいずれか一つで表されることを特徴とするタンパク質が提供される:
(a)配列番号3に記載の塩基配列からなる遺伝子によってコードされるタンパク質;
(b)配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(c)配列番号3に記載の塩基配列に対して相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされ、かつ、ペルオキシダーゼ活性を有するタンパク質;
(d)配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質において1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ、ペルオキシダーゼ活性を有するタンパク質。
【0009】
また、本発明の第一の側面によれば、(a)〜(d)のいずれか一つで表されることを特徴とする遺伝子が提供される:
(a)配列番号3に記載の塩基配列からなる遺伝子;
(b)配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子;
(c)配列番号3に記載の塩基配列に対して相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ペルオキシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子;
(d)配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質において1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列に対応する塩基配列からなり、かつ、ペルオキシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子。
【0010】
本発明の第二の側面によれば、(e)〜(h)のいずれか一つで表されることを特徴とするタンパク質が提供される:
(e)配列番号7に記載の塩基配列からなる遺伝子によってコードされるタンパク質;
(f)配列番号8に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(g)配列番号7に記載の塩基配列に対して相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされ、かつ、ペルオキシダーゼ活性を有するタンパク質;
(h)配列番号8に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質において1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ、ペルオキシダーゼ活性を有するタンパク質。
【0011】
また、本発明の第二の側面によれば、(e)〜(h)のいずれか一つで表されることを特徴とする遺伝子が提供される:
(e)配列番号7に記載の塩基配列からなる遺伝子;
(f)配列番号8に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子;
(g)配列番号7に記載の塩基配列に対して相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ペルオキシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子;
(h)配列番号8に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質において1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列に対応する塩基配列からなり、かつ、ペルオキシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子。
【発明の効果】
【0012】
本発明によって提供される二種類のペルオキシダーゼは、いずれも過酸化水素との親和性が高く、低濃度の過酸化水素で活性を有するので、これらを使用した洗剤の製造コストの削減や生化学的分析の精度の向上をもたらすことが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例で使用したプライマーを示す表1である。
【図2】PRXの遠位ヒスチジン領域の塩基配列を示す表2である。
【図3】3′RACE法を示す。
【図4】5′RACE法を示す。
【図5】ポーチュラカPRXの発現パターンを示す。
【図6】ポーチュラカ根由来の過酸化水素高親和性PRXの解析を示す。
【図7】過酸化水素高親和性PRXの同定を示す。
【図8A】PoPRX1の塩基配列およびアミノ酸配列を示す。
【図8B】PoPRX2の塩基配列およびアミノ酸配列を示す。
【図8C】PoPRX3の塩基配列およびアミノ酸配列を示す。
【図8D】PoPRX4の塩基配列およびアミノ酸配列を示す。
【図8E】PoPRX5の塩基配列およびアミノ酸配列を示す。
【図9】PoPRXのアミノ酸配列解析を示す。
【図10】各PoPRXの特徴を示す表3である。
【図11】実施例3.(1)で作成した遺伝子構築物の構造を示す。
【図12A−C】PoPRX発現BY2のスクリーニングを示す。
【図12D−E】PoPRX発現BY2のスクリーニングを示す。
【図13】PoPRXのH2O2親和性評価を示す。
【図14】組換えPoPRX2の過酸化水素親和性解析を示す。
【図15】組換えPoPRX4の過酸化水素親和性解析を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の二種類のペルオキシダーゼを詳細に説明する。
第一のペルオキシダーゼは、(a)配列番号3に記載の塩基配列からなる遺伝子によってコードされるタンパク質、または(b)配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であり、第二のペルオキシダーゼは、(e)配列番号7に記載の塩基配列からなる遺伝子によってコードされるタンパク質、または(f)配列番号8に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質である。これらは、いずれもスベリヒユ科の園芸植物であるポーチュラカが生産するペルオキシダーゼである。第一のペルオキシダーゼは、実施例で単離したPoPRX2に相当し、第二のペルオキシダーゼは、実施例で単離したPoPRX4に相当する。
【0015】
本発明のペルオキシダーゼは、過酸化水素の存在下で有機化合物を酸化する反応を触媒する点では従来公知のペルオキシダーゼと同様であるが、その最大の特徴は、従来公知のペルオキシダーゼに比べて低過酸化水素濃度でも反応を触媒することができる点にある。従来公知のペルオキシダーゼは、一般に2〜3mM程度の過酸化水素のミカエリス定数を有するため、4〜6mM程度の濃度の過酸化水素が触媒活性の最大反応速度を発揮するために必要であるが、本発明のペルオキシダーゼは、0.7mM程度の過酸化水素のミカエリス定数を有するため、1.4mM程度の低濃度の過酸化水素条件下でも触媒活性の最大反応速度を発揮することができる。
【0016】
本発明は、(a)配列番号3に記載の塩基配列からなる遺伝子、および(b)配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子も包含する。これらは、上記第一のペルオキシダーゼの遺伝子である。また、本発明は、(e)配列番号7に記載の塩基配列からなる遺伝子、および(f)配列番号8に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子も包含する。これらは上記第二のペルオキシダーゼの遺伝子である。
【0017】
本発明の第一のペルオキシダーゼは、上記(a)および(b)のものに限定されず、(c)配列番号3に記載の塩基配列に対して相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされ、かつ、ペルオキシダーゼ活性を有するタンパク質、または(d)配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質において1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ、ペルオキシダーゼ活性を有するタンパク質も包含する。本発明の第二のペルオキシダーゼは、上記(e)および(f)のものに限定されず、(g)配列番号7に記載の塩基配列に対して相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされ、かつ、ペルオキシダーゼ活性を有するタンパク質、または(h)配列番号8に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質において1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ、ペルオキシダーゼ活性を有するタンパク質も包含する。例えば、本発明者らの研究によれば、配列番号4に記載のアミノ酸配列の261番目のアミノ酸(Cys残基)をGly残基に置換しても、置換前のペルオキシダーゼと同様の過酸化水素のミカエリス定数(0.87mM)を示すことが確認されている。この変異型ペルオキシダーゼのアミノ酸配列を配列番号62に、塩基配列を配列番号61にそれぞれ示す。
【0018】
また、本発明の第一のペルオキシダーゼの遺伝子は、(c)配列番号3に記載の塩基配列に対して相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ペルオキシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、または(d)配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質において1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列に対応する塩基配列からなり、かつ、ペルオキシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子も包含する。本発明の第二のペルオキシダーゼの遺伝子は、(g)配列番号7に記載の塩基配列に対して相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ペルオキシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子、または(h)配列番号8に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質において1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列に対応する塩基配列からなり、かつ、ペルオキシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子も包含する。これは、タンパク質をコードする遺伝子の塩基配列の一部に変異が生じたり、またその結果としてタンパク質のアミノ酸配列の一部に変異が生じても、機能的には同等のタンパク質であることが多いからである。また、本発明のペルオキシダーゼの遺伝子を、由来生物以外の宿主生物(大腸菌など)に組込んで本発明のペルオキシダーゼを発現させる場合、発現効率向上のため、宿主生物のコドンユーセージに合わせて塩基配列を変更することもあるからである。
【0019】
上記(c)のタンパク質をコードする遺伝子および上記(g)のタンパク質をコードする遺伝子は、それぞれ配列番号3または7に記載の塩基配列に対して相補的な塩基配列またはその一部をプローブとしてコロニー又はプラークハイブリダイゼーションを行うことにより得ることができる。なお、本明細書において用いる用語「ストリンジェントな条件」は、いわゆる特異的なハイブリッドが形成され、非特異的なハイブリッドが形成されない条件をいい、例えば、ある塩基配列と60%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、さらに好ましくは97%以上、さらに好ましくは98%以上、さらに好ましくは99%以上の相同性を有するDNAのみが特異的にハイブリダイズする条件であることができる。ストリンジェントな条件はハイブリダイゼーション溶液の塩濃度、温度等を調節することにより作り出すことができる。
【0020】
ハイブリダイゼーションの手順としては、先ず目的の遺伝子源から得たDNA(染色体DNA又はcDNA)のライブラリーを作製する。そのライブラリーをプレート上で培養し、生育したコロニー等をニトロセルロース等の膜に移し取り、変性処理によりDNAを膜に固定する。この膜を32P等で標識したプローブ(配列番号3もしくは7の塩基配列又はその一部)を含む溶液中で保温し、膜上のDNAとプローブとの間でハイブリダイゼーションを行う。ハイブリダイゼーションはストリンジェントな条件下、例えば6×SSC、1% SDS、100μg/mlのサケ精子DNA、5×デンハルツを含む溶液中で65℃で20時間行う。ハイブリダイゼーション後、非特異的に吸着したプローブを洗い流し、オートラジオグラフィー等によりプローブとハイブリッド形成したクローンを同定する。この操作をハイブリッド形成したクローンが単一になるまで繰り返す。こうして得られたクローンの中には目的の遺伝子が挿入されている。
【0021】
ハイブリダイゼーションによって得られた遺伝子がペルオキシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子であるかどうかは、例えば、得られた遺伝子をタバコ植物細胞に導入して形質転換体を作成し、この形質転換体を培養して酵素タンパク質を生成させ、この酵素タンパク質を精製して過酸化水素の存在下で有機化合物に添加して酸化物の生成をクロマトグラフィーなどで測定することによって確認することができる。
【0022】
また、上記(d)のタンパク質をコードする遺伝子および上記(h)のタンパク質をコードする遺伝子は、例えばサイトダイレクテドミュータジェネシスキット(タカラバイオ製)や、QuickChange Site−DirectedMutagenesis Kit(STRATAGENE製)などの市販のキットやPCR法を利用して配列番号3または7に記載の塩基配列を改変することによって得ることができる。得られた遺伝子がペルオキシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子であるかどうかは、ハイブリダイゼーションによって得られた遺伝子の場合と同様の方法で確認することができる。
【0023】
本発明のペルオキシダーゼの製造は、その遺伝子を適当なベクターに挿入して組換えベクターを調製し、この組換えベクターで適当な宿主細胞を形質転換して形質転換体を調製し、この形質転換体を培養することによって容易に行うことができる。
【0024】
ベクターとしては、原核および/または真核細胞の各種宿主細胞内で複製保持または自律増殖できるものであれば特に限定されず、プラスミドベクターおよびファージベクター、ウィルスベクター等が包含される。組換えベクターの調製は、常法に従って行えばよく、例えば、これらのベクターに、本発明のペルオキシダーゼの遺伝子を適当な制限酵素およびリガーゼ、あるいは必要に応じてさらにリンカーもしくはアダプターDNAを用いて連結することにより容易に行うことができる。また、Taqポリメラーゼのように増幅末端に一塩基を付加するようなDNAポリメラーゼを用いて増幅作製した遺伝子断片であれば、TAクローニングによるベクターへの接続も可能である。
また、宿主細胞としては、従来公知のものが使用可能であり、組換え発現系が確立しているものであれば特に制限されないが、好ましくは大腸菌、枯草菌、放線菌、麹菌、酵母といった微生物ならびに昆虫細胞、動物細胞、高等植物細胞などが挙げられ、より好ましくは高等植物細胞が挙げられ、特に好ましくはタバコ植物細胞が挙げられる。形質転換体の調製は、常法に従って行えばよい。
【0025】
得られた形質転換体を、その宿主細胞に応じた適当な培養条件で一定期間培養すれば、組込まれた遺伝子から本発明のペルオキシダーゼが発現されて、形質転換体中に蓄積する。
【0026】
形質転換体中に蓄積した本発明のペルオキシダーゼは、未精製のまま使用することができるが、精製したものを使用しても良い。この精製方法としては、従来公知のものが使用可能であり、例えば、培養後の形質転換体あるいはその培養物を適当な緩衝液中でホモジナイズし、超音波処理や界面活性剤処理等により細胞抽出液を得、そこから蛋白質の分離精製に常套的に利用される分離技術を適宜組み合わせることにより行うことができる。このような分離技術としては、塩析、溶媒沈澱法等の溶解度の差を利用する方法、透析、限外濾過、ゲル濾過、非変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)などの分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーなどの荷電を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動などの等電点の差を利用する方法などが挙げられるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。なお、実施例の記載は純粋に発明の理解のためのみに挙げるものであり、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。
【0028】
材料および方法
1.使用植物、菌株、ベクター
(1)使用植物
Portulaca oleracea(ポーチュラカ)
Nicotiana tabacum(タバコ)
Nicotiana tabacum L.cv.Bright Yellow2(タバコ培養細胞)(以下、BY2と称する)
【0029】
(2)使用菌株
Escherichia coli
DH5α deoR,endA1,gyrA96,hsdR17(rk−mk+),
recA1,relA1,supE44,thi−1,
Δ(lacZYA−argF)U169,φ80lacZΔM15,
F−,λ−M15,F−,λ−
Agrobacterium tumefaciens
EHA105 Cmr
carrying the trans−acting
virulence functions necessary
to facilitate the transfer of
the T−DNA region of binary
vectors of plants
【0030】
(3)使用ベクター
Plasmid vector
pBluescriptII SK− ampr,lacZ
pUC18 and 19 ampr,lacZ
pBI121 Kmr
【0031】
2.培地
(1)大腸菌用培地
(i)LB培地
Bacto−tryptone 10g/l,Bacto−yeast extract 5g/l,NaCl 10g/l
平板培地に、15g/lの精製寒天粉末を加えた。オートクレーブ後、必要に応じて、濾過滅菌した抗生物質(アンピシリン100mg/l、カナマイシン50mg/l)を加えた。
【0032】
(ii)2×YT培地
Bacto−tryptone 16g/l,Bacto−yeast extract 10g/l,NaCl 5g/l
平板培地に、15g/lの精製寒天粉末を加えた。オートクレーブ後、必要に応じて、濾過滅菌した抗生物質(アンピシリン100mg/l、カナマイシン50mg/l)を加えた。
【0033】
(iii)SOB培地
Bacto−triptone 20g/l,Bacto−yeast extract 5g/l,NaCl 0.584g/l,KCl 0.186g/l
オートクレーブ後、濾過滅菌した1M MgSO4,1M MgCl2を1lに対して10mlずつ加えた。
【0034】
(2)植物体用培地
(i)MS基本培地
必要に応じて植物ホルモンのNAAおよびBAを以下に示す量だけ加え、KOHでpH5.8に調整した後、3g/lのゲランガムを加えた。オートクレーブ後、必要に応じてカルベニシリン250mg/ml、カナマイシン100mg/mlを加えて用いた。
【0035】
(ii)BY2用培地
KOHでpH5.7に調整した後、オートクレーブして用いた。
平板培地を、pH5.7に調整した後、ゲランガム3g/lを加えた。オートクレーブ後、必要に応じてカルベニシリン250mg/l、カナマイシン100mg/lを加えて用いた。
【0036】
(3)アグロバクテリウム用培地
(i)YEB培地
Bacto−peptone 5g/l,Beaf extract 5g/l,Yeast extract 1g/l,Sucrose 5g/l,MgSO4・7H2O0.5g/l KOHでpH7.0に調整した後、オートクレーブして用いた。必要に応じて、濾過滅菌したカナマイシン50mg/l、クロラムフェニコール10mg/lを加えた。
【0037】
(ii)YEP培地
Bacto−peptone 10g/l,Yeast extract 10g/l,NaCl 5g/l
KOHでpH7.0に調整した後、オートクレーブして用いた。
【0038】
3.実験試薬
実験試薬は特に指定のない限り、和光純薬工業またはナカライテスクのものを用いた。制限酵素、修飾酵素は、東洋紡、タカラバイオ、ニッポンジーン、ファルマシア、シグマ、NEB、またはBRLのものをそれぞれの説明書に従って使用した。
【0039】
4.大腸菌からのプラスミド調製
大腸菌からのプラスミドDNA調製は、添付のマニュアルに従い、MagExtractor(東洋紡)を用いて行った。
【0040】
5.アガロースゲルを用いたDNAの電気泳動
泳動ゲルは、TAE bufferにアガロースゲルを融解させたものを使用した。試料にGel−Loading bufferを1/10量加え、ゲルのウェルに注入した。泳動装置は、Mupid−α(コスモ・バイオ)を用い、1×TAE buffer中、定電圧100Vで行った。泳動後、エチジウムブロマイド0.5μg/mlを含むTAE buffer中でゲルを染色し、トランスイルミネーター上で観察した。
TAE bufferおよびGel−Loading bufferの組成を以下に示す。
TAE buffer:40mM Tris−acetate,1mM EDTA
Gel−Loading buffer:0.25% Bromophenol blue,0.25% Xylene cyanol,40%(w/v)Glycerol
【0041】
6.アガロースゲルからのDNAの回収
目的のDNA断片を含むアガロースゲルをメスで切り出し、エッペンドルフチューブに入れ、MinElute Gel Extraction kit(250)(QIAGEN)を使用し、添付のプロトコールに従ってDNA断片を回収した。
【0042】
7.大腸菌の形質転換
(1)コンピテントセルの調製
コンピテントセルは、Inoueらの方法(Inoue et al.,1990)に従い調製した。大腸菌のシングルコロニーを5mlのLB培地に滅菌済みの楊枝を用いて植菌し、37℃で1晩培養した。この大腸菌培養液のうち、2mlを坂口フラスコ内の200mlのSOB培地に植菌し、660nmにおける濁度が0.4−0.8になるまで室温で振盪培養した(25−30℃、200rpm)。培養液を氷中で5分間冷却後、遠心分離(3000rpm,10min,4℃;BECKMAN JLA−10,500ローター)により集菌して上清を捨て、冷却したTB bufferを1/3量(67ml)加えて穏やかに懸濁してから、10分間氷中に静置した。遠心分離(3000rpm,10min,4℃;BECKMAN JLA−10,500ローター)により集菌して上清を捨て、再び冷却したTB bufferを16ml加えて穏やかに懸濁した。続いて7%(約1.2ml)となるようにDMSOをゆっくり混ぜながら加えた後、10分間氷中に静置した。氷上で100μlずつエッペンドルフチューブに分注し、直ちに液体窒素で凍結させ、−80℃で保存した。
TB bufferの組成を以下に示す。
TB buffer:10mM PIPES,15mM CaCl2・2H2O,
250mM KCl,55mM MnCl2・2H2O
【0043】
(2)形質転換
コンピテントセルを氷中で解凍後、コンピテントセルの1/10量以下(1−20μl)のDNA溶液を加え、氷中に30分間静置した。42℃に30秒間置き、直ちに氷中に戻して2分間静置した後500μlの2×YT培地を加え、37℃で1時間振盪培養した。スピンダウンして上清を大部分除き、残った培地に菌体を懸濁して適当な抗生物質を含むLB寒天培地上に広げ、37℃で1晩培養した。
【0044】
8.PCR
PCR反応は、rTaq DNA Polymerase,KOD DNA Polymerase(東洋紡)およびPhusion(FINNZYMES)を用い、添付のプロトコールに従い、目的遺伝子が増幅する条件で行った。使用したプライマーを表1に示す。
【0045】
9.ポーチュラカのペルオキシダーゼ(以下PRXと称する)遺伝子の単離
(1)RNAの調製
ポーチュラカ組織からのRNA抽出は、Rneasy Plant Mini Kit(QIAGEN)を用いて、添付のマニュアルに従って行った。ゲノムDNAを除去するため、抽出したtotalRNAをDNase I(Roche)で処理した。totalRNA25μl、10×incubation Buffer(100mM NaCl,60mM MgCl,10mM CaCl2,400mM Tris−HCl pH7.9)5μl、DNaseI(10U/μl)2μl、RNase Inhibitor(40U/μl)1μl、滅菌したジエチルピロカーボネート(DEPC)水17μlを混合し、37℃で30分間、保温した。酵素を失活させるため、フェノールクロロホルム抽出を2回、クロロホルム抽出を1回行った。エタノール沈殿を行い、沈殿を10μlの滅菌DEPC水に溶解した。
【0046】
(2)RNAの電気泳動
調製したtotalRNAが分解されていないかどうかを確認するため、電気泳動を行った。RNAサンプル5μlにRNAと等量のホルムアミドを加え、65℃で5分間熱処理し、氷上で5分間静置した。Gel−Loading bufferを1/10量、エチジウムブロマイド(500mg/ml)を2μl加えた。1%アガロースゲルおよびTAEバッファーを用いて電気泳動を行った。
【0047】
(3)3′RACE法
種々のPRX遺伝子間に高度に保存された遠位ヒスチジン領域に相当する塩基配列を、遺伝子特異的プライマーとして使用した(表2)。ポーチュラカ根から調製したRNAを出発材料として3′RACE法(図3)を行った。なお、逆転写酵素として、Transcriptor First Strand cDNA Synthesis kid(Roche)を用いた。
【0048】
(4)塩基配列の決定
Big Dye,Terminator v1.1 Cycle sequencing kit(Appplied Biosystems)を用いて、添付のプロトコールに従って反応を行った。蛍光シグナルの解析には、3100 Genetic Analyzer(Perkin Elmer)を用いた。
【0049】
(5)5′RACE法
3′RACE法により明らかになった塩基配列情報を基に、5′末端にリン酸化修飾したGene Specific Primer(GSP)を設計した。ポーチュラカ根から調製したRNAを出発材料として5′RACE(図4)を行った。各PRX遺伝子の増幅は、根から調製したRNAをGSPで逆転写し、S PrimerとAS PrimerでPCRすることにより行った。使用したPrimerは、表1に示している。
【0050】
10.RT−PCR
ポーチュラカの各器官から調製したcDNAを鋳型にし、目的の遺伝子が増幅するPrimer Setと条件でPCRを行った。また、内部標準としてユビキチン遺伝子の特異的プライマーを用いた。
【0051】
11.遺伝子構築物の作成
各PRX遺伝子を発現させるための構築物を作成した。翻訳エンハンサーであるADH 5’UTR(Satoh et al.,2003)をNtADH−F primerとADH−NsiI−R primerを用いて増幅し、末端を平滑化した後、pUC 118のHincIIギャップに挿入した。得られたプラスミドをNsiIとBamHIで切断した後、T4 DNA polymerase(東洋紡)で平滑化し、アルカリフォスファターゼを用いて脱リン酸化した。各PRX遺伝子ORFを、表1に示す各ORF−FプライマーおよびORF−Rプライマーを用いて増幅し、末端を平滑化した上記ベクターに挿入してADH 5’UTRと各PRXのORFを融合した。各ADH 5’UTR融合PRXを、XbaIとSacIを用いてpBI121(Clontech社)に挿入し、CaMV 35SプロモーターおよびNOSターミネーターに連結した。
【0052】
12.植物培養細胞の形質転換
(1)アグロバクテリウムの形質転換
(i)コンピテントセルの作製
アグロバクテリウムの単一コロニーを5mlのYEB培地に植菌し、28℃で1晩振盪培養した。この培養液を、500mlのYEP培地に植菌し、600nmにおける濁度が0.5になるまで28℃で振盪培養した。培養液を遠心分離(5000rpm,10min,4℃;BECKMAN JLA−10,500ローター)により集菌して上清を捨て、菌体を洗浄するため500mlの滅菌水を加えて懸濁し、再度遠心分離(5000rpm,10min,4℃;BECKMAN JLA−10,500ローター)により集菌して上清を捨てた。この操作を2回繰り返した後、沈殿に20mlの冷却した滅菌10%Glycerolを加えて懸濁した。ナルゲンチューブに移し遠心分離(5000rpm,10min,4℃ BECKMAN JA−20ローター)により集菌して上清を捨てた。沈殿に3mlの冷却した滅菌10%Glycerolを加えて懸濁し、40μlずつエッペンドルフチューブに分注して、液体窒素で凍結させてから−80℃で保存した。
【0053】
(ii)形質転換
コンピテントセルを氷中で解凍した後、1〜2μlのDNA溶液を加え、氷令した2mmキュベットに移した。エレクトロポレーター(BIO RAD、Gene Pulser)により電気パルス(2.5KV、25μF、400Ω)を与え、DNAを導入した。1mlのSOC培地を加え、28℃で1時間振盪培養した後、スピンダウンして上清を大部分除き、残った培地に菌体を懸濁して適当な抗生物質を含むLB寒天培地上に広げ、28℃で2晩培養した。
【0054】
(2)タバコ培養細胞の形質転換
BY2細胞の形質転換は、An(An,1985)の方法に従って行った。カナマイシン100mg/lを含む5mlのLB培地で28℃、2晩培養したアグロバテリウム培養液100μlと、培養4日目のタバコ培養細胞懸濁液5−10mlをシャーレに入れてよく混ぜ、25℃で2晩、暗所下で静置して共存培養した。アグロバクテリウムを除くため、シャーレの中の培養液を15mlの遠心管に移して遠心(1000rpm,5min,4℃;BECKMAN GS−6KR centrifuge)し、上清を取り除いた。新しい改変LS培地を入れて遠心分離(1000rpm,5min,4℃;BECKMAN GS−6KR centrifuge)し、細胞を洗浄した。この操作を4回繰り返し、アグロバクテリウムを除いた培養細胞をカナマイシン100mg/lの入った改変LS寒天培地に播種し、25℃で暗黒下に静置して培養した。約2−3週間後にカルス化した細胞を新しいプレートに移植し、増殖しているクローンを選択した。カナマイシン100mg/lを加えた改変LS培地30ml移し、継代培養を行った。
【0055】
13.タンパク質の調製
(1)ポーチュラカタンパク質サンプルの調製
無菌培養したポーチュラカの各器官(根、茎、葉、花)を液体窒素で冷やしながら乳鉢で粉末状にし、湿重量1gあたり1mlの抽出バッファーを添加した。ボルテックスした後、氷上に20分間静置した。15,000rpm,4℃で20分間遠心し、上清を回収した。
抽出バッファーの組成を以下に示す。
抽出バッファー;1mM DTT,1mM PMSF,10mM KH2PO4 pH6.0 at20℃
【0056】
(2)BY2細胞タンパク質サンプルの調製
ろ紙を用いて培養液と細胞を分離した。細胞8gに20mlの抽出バッファーを添加し、氷上で超音波破砕(10秒間ON/10秒間OFF、Total 8分間)し、9,000rpm,4℃で30分間遠心し、回収した上清をサンプルとした。
【0057】
(3)培養液タンパク質のサンプルの調製
ポーチュラカの水耕培養液およびBY2細胞の培養液を、9,000rpm,4℃で30分間遠心し、上清を回収した。限外濾過カラム(Amicon Ultra−15 10,000MWCO,MILLIPORE社)に回収した上清を入れ、9,000rpm,4℃で90分間遠心し濃縮し、培養液サンプルとした。
【0058】
(4)タンパク質の定量
タンパク質の定量は、Bradfordの方法(Bradford,1976)に従って行った。適当量の水で希釈したタンパク質溶液10μlとタンパク質定量試薬500μlを48ウェルプレートに入れてよく混合し、Abs 595nmでの吸光度を測定した。Bovine Serum Albumin(BSA)を用いて検量線を作成し、これに基づいてサンプルのタンパク質濃度を求めた。
【0059】
14.PRXの解析
(1)等電点電気泳動
BIO−RADのモデル111ミニセルを用いて行った。PAGEゲルサポートフィルムの疎水面をガラスプレートに密着させた後、キャスティングプレートにのせた。モノマー−アンフォライト溶液および触媒溶液を混合し、サポートフィルムとキャスティングプレートのすき間に流し込み、蛍光灯光下で45分間重合させた。作製したゲルに試料および、IEFスタンダード(BIO−RAD,catalog No.161−0310)を塗布した。泳動槽の電極を蒸留水で湿らせ、ゲル面を下にしてセットした。定電圧で、100V 15分間、200V 15分間、450V 60分間泳動した。
モノマー−アンフォライト溶液および触媒溶液の組成を以下に示す。
モノマー−アンフォライト溶液(ゲル一枚分):
dH2O 2.75ml
24.25%(w/v)acrylamide− 1.0ml
0.75%(W/V)bis
25% glycerol 1.0ml
Bio−Lyte 3/10 Ampholyte,40% 0.25ml
(BIO−RAD,catalog No.163−1112)
触媒溶液:
10%(w/v)ammonium 27.5μl
persulfate
0.1%(w/v)riboflavin− 25.0μl
5’−phosphate
TEMED 1.5μl
【0060】
(2)ペルオキシダーゼ活性染色
等電点電気泳動後のゲルを活性染色液に浸し、過酸化水素の濃度を適宜変えて加え、室温で軽く振とうした。バンドを確認後、蒸留水ですすぎ、ハイブリバックに入れゲルをスキャニングした。
活性染色溶液の組成を以下に示す。
活性染色溶液:
A液:50mM Tris−HCl(pH7.5),150mM NaCl
B液:0.3%(w/v)4−クロロ−1−ナフトール,85%(v/v)メタノール
使用直前に、A液とB液を4:1の割合で混合し活性染色溶液とした。
【0061】
(3)PRX活性測定
ピロガロールの酸化によって生じるプルプロガリン(420nmに吸収極大を持つ)を、DU640 SPECTROPHOTOMETER(BECKMAN)を用いて定量し、PRX活性を測定した。溶液1Uの定義はpH6.0、20℃において20秒間でピロガロールから1mgのプルプロガリンを生成する酵素量とする。下記の反応溶液を混合した後、420nmの吸光度を30秒間隔で10分間測定した。また、過酸化水素の終濃度が1mM、0.2mM、0.04mMの条件で測定を行い、ミカエリス定数(Km値)を算出した。
反応溶液
100mM KH2PO4(pH6.0 at20℃) 0.32ml
5.0%ピロガロール 0.32ml
過酸化水素 0.16ml
PRX溶液(in 100mM KH2PO4 0.1ml
pH6.0 at20℃)
D.W. 2.1ml
【0062】
実験
1.ポーチュラカPRX(以下PoPRXと称する)の特徴づけ
(1)ポーチュラカにおけるPRXの発現解析
PoPRXの基礎的知見を得るために、等電点電気泳動およびPRX活性染色によってポーチュラカの根・茎・葉・花における発現パターン解析を行った(図5)。複数のバンド(根−6個)が存在した(図5のA)。根特異的発現を示す中性アイソザイムが存在することがわかった。また、ポーチュラカを無菌水耕培養し、培地に分泌されたPRXを調べたところ、培地中に、分泌されている主なアイソザイムは、約4.5のpIを有する酸性アイソザイムであることがわかった(図5のB)。
【0063】
(2)PoPRXの活性測定
ポーチュラカの根から分泌されるPRXがH2O2高親和性であるかどうかを確認するために、ピロガロールを用いた酵素活性測定を行った。異なるH2O2濃度条件下で活性測定を行い、ミカエリス定数(Km値)を算出した(図6)。その結果、ピロガロールの酸化重合反応におけるH2O2のKm値は約0.69mMであることがわかった。
【0064】
(3)H2O2高親和性PRXの同定
ポーチュラカの根においてH2O2に対する高い親和性を有するPRXアイソザイムを特定するため、H2O2濃度が10mM、1.7mM、0.28mM、0.046mM、0 mMの条件で活性染色を行った(図7)。タバコPRXや、他のPoPRXアイソザイムは、H2O2濃度の減少に伴ってPRX活性が減少しているが、pI約4.5の酸性PRXは低H2O2濃度(0.046mM)下でも活性を維持していることから、pI約4.5の酸性PRXは高いH2O2親和性を有することがわかった。
【0065】
2.PoPRXの遺伝子単離
これまでの解析結果から、ポーチュラカは、H2O2との親和性が高いPRXアイソザイムを有することがわかった。そこで次に、PoPRXの各アイソザイムをコードする遺伝子を取得し、それぞれのPoPRXアイソザイムの機能解析を行った。cDNAを単離する方法として、RACE(rapid amplification of cDNA ends)法を用いた。
【0066】
第一段階である3′RACE法では、種々のPRX遺伝子間に高度に保存された遠位ヒスチジン領域に相当する塩基配列を、遺伝子特異的プライマーとして使用した(図3,表2)。根から調製したRNAを鋳型として3′RACE法を行ったところ、5種類のPRX遺伝子断片PoPRX1〜PoPRX5が得られた。続いて、5′RACE法により各PoPRXのcDNA5’側の塩基配列情報を取得した(図4,表1)。根から調製したRNAをGSPで逆転写し、S PrimerとAS PrimerでPCRした。
【0067】
得られたcDNA塩基配列およびアミノ酸配列を図8A〜8Eに記す。また、各PoPRXのアミノ酸配列とセイヨウワサビPRX C1aアイソザイムのアミノ酸配列との相同性比較解析結果を図9に示す。各PoPRXのアミノ酸配列中には、PRXの立体構造構築に必要なシステイン残基−8箇所と、ヘムとの結合に必要なヒスチジン残基−2箇所が保存されている。また、PSORT(WWW Server;http://psort.nibb.ac.jp)を用いて解析を行ったところ、いずれのPoPRXにも分泌シグナルペプチドが存在することが確認された。また、小胞輸送経路に入ったタンパク質の一次配列上にN−X−S/T(X;PまたはQ以外のアミノ酸)という配列が存在するとN−結合型糖鎖の付加が行われるが、いずれのPoPRXにもN結合型糖鎖付加配列が存在した。また、PoPRX4および5は、C末端に液胞輸送シグナルを有すると推定された。PoPRX2は、既知のPRXよりもN末端のアミノ酸が多いことがわかった。また、遺伝子解析ソフトGenetyx(株式会社ゼネティックス)を用いて、各成熟型PoPRXの等電点を予測したところ、PoPRX1,2および4が酸性アイソザイムであると予測された。各PoPRXの特徴は表3にまとめられる。
【0068】
3.形質転換体BY2を用いたPOPRXの酵素活性評価
【0069】
(1)遺伝子組換えBY2の作成
取得した各PRXを翻訳エンハンサーであるADH 5’UTR(Satoh et al.,2003)と融合した。各ADH5’UTR融合PRXを、バイナリーベクターpBI121に挿入し、CaMV35Sプロモーターおよびnosターミネーターの間に連結した(図11)。各コンストラクトをアグロバクテリウム法によりBY2(タバコ培養細胞)に導入した。得られたカナマイシン耐性カルスから可溶性タンパク質を調製し、等電点電気泳動およびPRX活性染色を行って、クローン選抜を行った。その結果、PoPRX1,2および4については各PRXに由来するバンドが確認された(図12)ので、高発現クローン(PoPRX1は#10,#13、PoPRX2は#5,#8、PoPRX4は#3,#11)を液体培養にて継代培養した。PoPRX3および5に関しては、導入したPRXに特異的なバンドが検出できなかったので、今後の解析はPRX1、2および4を用いて行った。
【0070】
(2)PoPRXのH2O2親和性評価
H2O2親和性を評価するため、各PoPRX発現BY2細胞からタンパク質を調製し、等電点電気泳動で分離後、0.05mMおよび0.8mMのH2O2濃度下でPRX活性染色を行った(図13)。その結果、PoPRX1およびBY2内在性PRXは、H2O2濃度0.8mMの方が0.05mMより明らかにバンドが濃いが、PoPRX2および4は、H2O2濃度0.8mMでのバンドの濃さとH2O2濃度0.05mMでのバンドの濃さはあまり変わらないことがわかった。このことから、PoPRX2および4はPoPRX1およびBY2内在性PRX2と比べて高いH2O2親和性を有することが明らかになった。
【0071】
4.組換えPoPRX2および4の過酸化水素Km値の算出
PoPRX2および4を分泌生産するBY2細胞の培養液を、限外ろ過フィルター(Amicon Ultra 10,000 MWCO,ミリポア)を用いて濃縮した後、Trisバッファー(1mM CaCl2,1mM PMSF,100mM Tris−HCL pH6.0)へのバッファー交換を行った。陽イオン交換カラム(SP Sepharose Fast Flow,Pharmacia Biotech)にサンプルを通し、BY2の内在性PRX(塩基性アイソザイム)を除去して組換えPoPRX2および4を粗精製した(図14A、図15A)。これらのサンプルを用いて、異なる濃度の過酸化水素存在下で活性測定を行った(図14B,図15B)。また、Lineweaver−Burk plotを作成して、過酸化水素のKm値を算出した。その結果、PoPRX2は約0.72mM、PoPRX4は約1.2mMの過酸化水素のKm値を有することがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明のペルオキシダーゼは、低濃度の過酸化水素で活性を有するので、洗剤の漂白成分や生化学分析用の試薬などの様々な工業用途に極めて有用である。
【0073】
【配列表フリーテキスト】
【0074】
配列番号1は、PoPRX1の塩基配列を示す。
配列番号2は、PoPRX1のアミノ酸配列を示す。
配列番号3は、PoPRX2の塩基配列を示す。
配列番号4は、PoPRX2のアミノ酸配列を示す。
配列番号5は、PoPRX3の塩基配列を示す。
配列番号6は、PoPRX3のアミノ酸配列を示す。
配列番号7は、PoPRX4の塩基配列を示す。
配列番号8は、PoPRX4のアミノ酸配列を示す。
配列番号9は、PoPRX5の塩基配列を示す。
配列番号10は、PoPRX5のアミノ酸配列を示す。
配列番号11〜58は、実施例で使用したプライマーの配列を示す。
配列番号59は、PRXの遠位ヒスチジン領域のコンセンサス配列を示す。
配列番号60は、HRP C1aのアミノ酸配列を示す。
配列番号61は、変異型PoPRX2の塩基配列を示す。
配列番号62は、変異型PoPRX2のアミノ酸配列を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)〜(d)のいずれか一つで表されることを特徴とするタンパク質:
(a)配列番号3に記載の塩基配列からなる遺伝子によってコードされるタンパク質;
(b)配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(c)配列番号3に記載の塩基配列に対して相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされ、かつ、ペルオキシダーゼ活性を有するタンパク質;
(d)配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質において1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ、ペルオキシダーゼ活性を有するタンパク質。
【請求項2】
下記(a)〜(d)のいずれか一つで表されることを特徴とする遺伝子:
(a)配列番号3に記載の塩基配列からなる遺伝子;
(b)配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子;
(c)配列番号3に記載の塩基配列に対して相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ペルオキシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子;
(d)配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質において1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列に対応する塩基配列からなり、かつ、ペルオキシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子。
【請求項3】
下記(e)〜(h)のいずれか一つで表されることを特徴とするタンパク質:
(e)配列番号7に記載の塩基配列からなる遺伝子によってコードされるタンパク質;
(f)配列番号8に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(g)配列番号7に記載の塩基配列に対して相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされ、かつ、ペルオキシダーゼ活性を有するタンパク質;
(h)配列番号8に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質において1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ、ペルオキシダーゼ活性を有するタンパク質。
【請求項4】
下記(e)〜(h)のいずれか一つで表されることを特徴とする遺伝子:
(e)配列番号7に記載の塩基配列からなる遺伝子;
(f)配列番号8に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子;
(g)配列番号7に記載の塩基配列に対して相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ペルオキシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子;
(h)配列番号8に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質において1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列に対応する塩基配列からなり、かつ、ペルオキシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子。
【請求項1】
下記(a)〜(d)のいずれか一つで表されることを特徴とするタンパク質:
(a)配列番号3に記載の塩基配列からなる遺伝子によってコードされるタンパク質;
(b)配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(c)配列番号3に記載の塩基配列に対して相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされ、かつ、ペルオキシダーゼ活性を有するタンパク質;
(d)配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質において1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ、ペルオキシダーゼ活性を有するタンパク質。
【請求項2】
下記(a)〜(d)のいずれか一つで表されることを特徴とする遺伝子:
(a)配列番号3に記載の塩基配列からなる遺伝子;
(b)配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子;
(c)配列番号3に記載の塩基配列に対して相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ペルオキシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子;
(d)配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質において1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列に対応する塩基配列からなり、かつ、ペルオキシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子。
【請求項3】
下記(e)〜(h)のいずれか一つで表されることを特徴とするタンパク質:
(e)配列番号7に記載の塩基配列からなる遺伝子によってコードされるタンパク質;
(f)配列番号8に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(g)配列番号7に記載の塩基配列に対して相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされ、かつ、ペルオキシダーゼ活性を有するタンパク質;
(h)配列番号8に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質において1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ、ペルオキシダーゼ活性を有するタンパク質。
【請求項4】
下記(e)〜(h)のいずれか一つで表されることを特徴とする遺伝子:
(e)配列番号7に記載の塩基配列からなる遺伝子;
(f)配列番号8に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子;
(g)配列番号7に記載の塩基配列に対して相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ペルオキシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子;
(h)配列番号8に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質において1または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列に対応する塩基配列からなり、かつ、ペルオキシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする遺伝子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図9】
【図10】
【図5】
【図6】
【図7】
【図11】
【図12A−C】
【図12D−E】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8E】
【図9】
【図10】
【図5】
【図6】
【図7】
【図11】
【図12A−C】
【図12D−E】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−183872(P2010−183872A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−30048(P2009−30048)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(504143441)国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学 (226)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(504143441)国立大学法人 奈良先端科学技術大学院大学 (226)
【Fターム(参考)】
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