説明

新規なレジスト材料

【目的】 本発明は、遠紫外光、KrFエキシマレーザ光等に対し高い透過性を有し、これ等光源による露光や電子線、X線照射に対して高い感度を有し、耐熱性及び基板との密着性が極めて優れ、又、化学増幅作用が十分行なわれ、パターン寸法が経時変化せず、良好なパターン形状が得られる重合体を使用したポジ型のフォトレジスト材料を提供する事を目的とする。
【構成】 フェノール性水酸基を有する樹脂にイソプロペニルアルキルエーテル、2-アルコキシ−1-ブテン、イソプロペニルトリメチルシリルエーテル又はイソプロペニルベンジルエーテルを反応させて得たアルカリ難溶性樹脂と露光によりカルボン酸を発生する感光性化合物と、これ等を溶解可能な溶剤を含んで成る事を特徴とするフォトレジスト材料。

【発明の詳細な説明】
【産業上の利用分野】本発明は半導体素子等の製造に於いて用いられるフォトレジスト材料、特に300nm以下の遠紫外光、KrFエキシマレーザ光(248.4nm)等の露光エネルギー源を用いてポジ型のパターンを形成する際のレジスト材料に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、半導体デバイスの高密度集積化に伴い、微細加工、中でもフォトリソグラフィに用いられる露光装置の光源は益々、短波長化し、今ではKrFエキシマレーザ光(248.4nm)が検討されるまでになってきている。しかしながらこの波長に適したレジスト材料は未だ適当なものが見出されていない。
【0003】例えば、KrFエキシマレーザ光や遠紫外光を光源とするレジスト材料として248.4nm付近の光に対する透過性が高い樹脂と分子内にジアゾジケト基を有する感光性化合物より成る溶解阻害型のフォトレジスト材料が開発されている(例えば、特開平1- 80944号公報;特開平1-154048号公報;特開平1-155338号公報;特開平1-155339号公報;特開平1-188852号公報;Y.Taniら、SPIE's 1989 Sympo.,1086-03等)。しかし、これ等の溶解阻害型フォトレジスト材料は共通して感度が低く、高感度レジスト材料が要求される遠紫外光、KrFエキシマレーザ光用途には使用出来ない。又、近年、露光エネルギー量を低減させる方法(高感度化)として露光により発生した酸を媒体とする化学増幅型のフォトレジスト材料が提案され[H.Itoら、Polym.Eng.Sci.,23巻,1012頁(1983年)]、これに関して種々の報告がなされている(例えば、H.Itoら、米国特許 第4491628 号(1985);J.V.Crivello、米国特許 第4603101号(1986);W.R.Brunsvoltら、SPIE's 1989 Sympo.,1086-40;T.Neenanら、SPIE's 1989 Sympo.,1086-01;特開昭62- 115440号公報等)。しかしながら、これ等既存の化学増幅型フォトレジスト材料は、使用される樹脂が、例えば、ポリ(4-tertーブトキシカルボニルオキシスチレン)、ポリ(4-tert−ブトキシカルボニルオキシ−α−メチルスチレン)、ポリ(4-tert−ブトキシスチレン)、ポリ(4-tert−ブトキシ−α−メチルスチレン)等のフェノールエーテル系樹脂の場合にはいずれも耐熱性に乏しく、又、基板との密着性が不良の為現像時に膜はがれし易く、良好なパターン形状が得られないという欠点を有しており、又、カルボン酸エステル系の樹脂、例えば、ポリ(tert−ブチル−4-ビニルベンゾエイト)等の場合には芳香環に起因して248.4nm付近の光透過性が不十分であったり、ポリ(tert−ブチルメタクリレート)等の場合には樹脂の耐熱性及びドライエッチ耐性が乏しい等の問題点を夫々有している。更に、最近になって上記の欠点を改良したフォトレジスト材料としてp-tert−ブトキシカルボニルオキシスチレンとp-ヒドロキシスチレンとの共重合体を用いたフォトレジスト材料(特開平2-209977号公報)、p-テトラヒドロピラニルオキシスチレンとp-ヒドロキシスチレンとの共重合体を用いたフォトレジスト材料(特開平2-19847号公報)、p-tert−ブトキシスチレンとp-ヒドロキシスチレンとの共重合体を用いたフォトレジスト材料(特開平2-62544号公報)等が報告されている。しかしながら、これ等のフォトレジスト材料を用いてパターン形成を行った場合、露光から加熱処理までの時間経過に伴って、パターン寸法が著しく変化するので、極めて短い時間ではパターン形成が可能であるが、露光から加熱処理までに時間を要する実際の操作に於いては良好なパターン形成を望むべくもなく、実用性に乏しいという問題を抱えている。又、上記の重合体や共重合体を用いたフォトレジスト材料は共通して露光部と未露光部間のアルカリ現像液に対する溶解速度差が小さい為、解像性能が不十分である等の問題を抱えている。
【0004】又、従来の化学増幅型フォトレジスト材料に使用される露光により酸を発生する感光性化合物(以下、単に酸発生剤と略記する。)より生ずる酸はルイス酸やスルホン酸の様に強酸である。この為、半導体素子製造工程で生ずる有機アミン類やアンモニア等塩基物質の僅かな雰囲気で酸が中和され、化学増幅作用が十分に行われず、その結果パターン寸法が変化したり、良好なパターン形状が得られない等の問題が発生している。
【0005】
【発明が解決しようとする問題点】このように化学増幅型フォトレジスト材料は従来のフォトレジスト材料と比べて高感度化されたにもかかわらず、樹脂の耐熱性が乏しい、基板との密着性が不良である、248.4nm付近の光透過性が不十分である、解像性能が不十分である、或いは化学増幅作用が十分に行われない為に良好なパターン形状が得られない、経時的にパターン寸法が変化する等の問題点を有し、実用化は難しい。従って、これ等の問題点を全て改善した実用的な高感度フォトレジスト材料が渇望されている現状にある。
【0006】
【発明の目的】本発明は上記した如き状況に鑑みなされたもので、遠紫外光、KrFエキシマレーザ光等に対し高い透過性を有し、これ等光源による露光や電子線、X線照射に対して高い感度を有し、耐熱性及び基板との密着性が極めて優れ、又、化学増幅作用が十分行われ、パターン寸法が経時変化せず、良好なパターン形状が得られる重合体を使用したポジ型のフォトレジスト材料を提供する事を目的とする。
【0007】
【発明の構成】上記目的を達成する為、本発明は下記の構成よりなる。「フェノール性水酸基を有する樹脂にイソプロペニルアルキルエーテル、2-アルコキシ−1-ブテン、イソプロペニルトリメチルシリルエーテル又はイソプロペニルベンジルエーテルを反応させて得たアルカリ難溶性樹脂と、露光によりカルボン酸を発生する感光性化合物と、これ等を溶解可能な溶剤を含んで成る事を特徴とするフォトレジスト材料。」
【0008】即ち、本発明者らは上記目的を達成すべく、化学増幅作用が十分に行われ、パターン寸法が経時変化せず、良好なパターン形状が得られる重合体と酸発生剤の組合せを求めて鋭意研究を重ねた結果、フェノール性水酸基を有する樹脂にイソプロペニルアルキルエーテル、2-アルコキシ−1-ブテン、イソプロペニルトリメチルシリルエーテル又はイソプロペニルベンジルエーテルを反応させることにより得られる重合体を樹脂成分とし、露光により弱酸であるカルボン酸を発生する感光性化合物を酸発生剤として用いれば、半導体素子製造工程で生ずる有機アミン類やアンモニア等塩基物質の影響を受けず、該重合体が極めて容易に保護基を脱離してアルカリ現像液に可溶となり、該目的を達成し得る事を見い出し、本発明を完成するに至った。化学増幅型レジスト材料に弱酸のカルボン酸を利用する技術はこれ迄報告がなく、又、カルボン酸を用いる事により従来発生している諸問題が解消出来た事は驚くべきことであった。
【0009】本発明に係るアルカリ難溶性樹脂(以下、「本発明に係る重合体」と略記する。)のうちポリビニルフェノール又はポリイソプロペニルフェノールに、イソプロペニルアルキルエーテル、2-アルコキシ−1-ブテン、イソプロペニルトリメチルシリルエーテル又はイソプロペニルベンジルエーテルを反応させて得られた重合体は一般式(7)
【0010】
【化9】


【0011】[式中、R11は水素原子又はメチル基を表し、R16はメチル基又はエチル基を表し、R12は炭素数1〜6の直鎖状、分枝状又は環状のアルキル基、トリメチルシリル基又はベンジル基を表し、k及びlは夫々独立して自然数を表し(但し、0.1 ≦k/(k+l)≦0.9である。)、置換基の位置はm位又はp位を表す。]で示され、ビニルフェノールとイソピロペニルフェノールとの共重合体にイソプロペニルアルキルエーテル、2-アルコキシ−1-ブテン、イソプロペニルトリメチルシリルエーテル又はイソプロペニルベンジルエーテルを反応させて得られた本発明に係る重合体は一般式(8)
【0012】
【化10】


【0013】[式中、R12及びR16は前記と同じ。a,b,c及びdは夫々独立して自然数を表し(但し、0.1≦a/(a+b)≦0.9、0.1≦c/(c+d)≦0.9である。)、置換基の位置はm位又はp位を表す。]で示される。
【0014】一般式(7)及び(8)に於いて、R12で示される直鎖状、分枝状又は環状のアルキル基としては例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、tert−ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、n-アミル基、iso-アミル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等の炭素数1〜6の直鎖状、分枝状又は環状のアルキル基が挙げられる。
【0015】本発明に係る重合体は下記一般式(9)
【0016】
【化11】


【0017】[式中、R12及びR16は前記と同じ。]で示される、カルボン酸の作用により極めて容易に脱離する性質を持つ官能基をスチレン単位に導入した下記一般式(10)又は/及び(11)
【0018】
【化12】


【0019】
【化13】


【0020】[式中、R12及びR16は前記と同じ。]で示されるモノマー成分を含んで成る点に最大の特徴を有する。
【0021】本発明に係る重合体に於いて、上記一般式(10)又は/及び(11)で示されるモノマー成分と官能基を導入しない単なるスチレン単位であるモノマー成分の構成比は通常1:9乃至9:1であり、何れの場合も本発明のレジスト材料として使用可能であるが、重合体の耐熱性及び基板との密着性を極めて良好にする2:8乃至7:3がより好ましい。
【0022】本発明に係る重合体の具体例としては例えばp-又はm-(1-メトキシ−1-メチルエトキシ)スチレンーp-又はm-ヒドロキシスチレン重合体、p-又はm-(1-メトキシー1-メチルエトキシ)−α−メチルスチレンーp-又はm-ヒドロキシーαーメチルスチレン重合体、p-又はm-(1-エトキシー1-メチルエトキシ)スチレンーp-又はm-ヒドロキシスチレン重合体、p-又はm-(1-メトキシ−1-メチルプロポキシ)スチレン−p-又はm-ヒドロキシスチレン重合体、p-又はm-(1-エトキシ−1-メチルプロポキシ)スチレン−p-又はm-ヒドロキシスチレン重合体、p-又はm-(1-iso-プロポキシ−1-メチルプロポキシ)スチレン−p-又はm-ヒドロキシスチレン重合体、p-又はm-(1-エトキシー1-メチルエトキシ)ーαーメチルスチレンーp-又はm-ヒドロキシーαーメチルスチレン重合体、p-又はm-(1-n-プロポキシー1-メチルエトキシ)スチレンーp-又はm-ヒドロキシスチレン重合体、p-又はm-(1-n-ブトキシー1-メチルエトキシ)スチレンーp-又はm-ヒドロキシスチレン重合体、p-又はm-(1-iso-プロポキシー1-メチルエトキシ)スチレンーp-又はm-ヒドロキシスチレン重合体、p-又はm-(1-iso-ブトキシー1-メチルエトキシ)スチレンーp-又はm-ヒドロキシスチレン重合体、p-又はm-(1-tert−ブトキシー1-メチルエトキシ)スチレンーp-又はm-ヒドロキシスチレン重合体、p-又はm-(1-n-ペントキシー1-メチルエトキシ)スチレンーp-又はm-ヒドロキシスチレン重合体、p-又はm-(1-iso-アミルオキシー1-メチルエトキシ)スチレンーp-又はm-ヒドロキシスチレン重合体、p-又はm-(1-n-ヘキシルオキシー1-メチルエトキシ)スチレンーp-又はm-ヒドロキシスチレン重合体、p-又はm-(1-シクロヘキシルオキシー1-メチルエトキシ)スチレンーp-又はm-ヒドロキシスチレン重合体、p-又はm-(1-トリメチルシリルオキシ−1-メチルエトキシ)スチレンーp-又はm-ヒドロキシスチレン重合体、p-又はm-(1-トリメチルシリルオキシー1-メチルエトキシ)ーαーメチルスチレンーp-又はm-ヒドロキシーαーメチルスチレン重合体、p-又はm-(1-ベンジルオキシー1-メチルエトキシ)スチレンーp-又はm-ヒドロキシスチレン重合体、p-又はm-(1-ベンジルオキシー1-メチルエトキシ)ーαーメチルスチレンーp-又はm-ヒドロキシ−α−メチルスチレン重合体、p-又はm-(1-メトキシ−1-メチルエトキシ)スチレン−p-又はm-ヒドロキシスチレン−p-又はm-(1-メトキシ−1-メチルエトキシ)−α−メチルスチレン−p-又はm-ヒドロキシ−α−メチルスチレン重合体、p-又はm-(1-トリメチルシリルオキシ−1-メチルエトキシ)スチレン−p-又はm-ヒドロキシスチレン−p-又はm-(1-トリメチルシリルオキシ−1-メチルエトキシ)−α−メチルスチレン−p-又はm-ヒドロキシ−α−メチルスチレン重合体等が挙げられるが、勿論これ等に限定されるものではない。
【0023】本発明に係る重合体は、例えば以下の方法により容易に得ることが出来る。即ち、フェノール性水酸基を有する樹脂として、(i)市販のp-イソプロペニルフェノールを常法に従ってラジカル重合して得られたポリ(p-イソプロペニルフェノール)、(ii)市販のp-イソプロペニルフェノールと市販のp-tert−ブトキシフェノールを常法に従ってラジカル重合した後、塩酸又はp-トルエンスルホン酸等の強酸存在下、適当な有機溶剤中で加熱反応して得られたポリ(p-ヒドロキシ−αーメチルスチレンーp-ヒドロキシスチレン)又は(iii)市販のp-tert−ブトキシスチレンを常法に従ってラジカル重合した後、塩酸又はp-トルエンスルホン酸等の強酸存在下、適当な有機溶剤中で加熱反応して得られたポリ(p-ビニルフェノール)、又は市販のポリ(p-ビニルフェノール)を用い、これ等の樹脂と該樹脂に対して0.1 〜2.5 倍モルのイソプロペニルアルキルエーテル、2-アルコキシ−1-ブテン、イソプロペニルトリメチルシリルエーテル又はイソプロペニルベンジルエーテルとを微量の硫酸、リン酸、p-トルエンスルホン酸、塩化チオニル、オキシ塩化燐、無水硫酸等の存在下、1,4-ジオキサン、アセトン、テトラヒドロフラン、塩化メチレン等の有機溶剤中、通常0〜100℃、好ましくは10〜60℃で通常1〜50時間、好ましくは1〜30時間反応させた後、常法により後処理を行ない、目的とする重合体を単離する。
【0024】本発明に係る重合体の平均分子量はフォトレジスト材料として利用可能なものであれば特に限定することなく挙げられるが、好ましい範囲としては、ポリスチレンを標準とするGPC法より求めた重量平均分子量が、通常1000〜100000程度、好ましくは3000〜40000程度である。又、数平均分子量は、2000〜20000程度が好ましい。
【0025】本発明で用いられる露光によりカルボン酸を発生する感光性化合物(以下、「本発明に係る酸発生剤」と略記する。)としては、文字通り露光によりカルボン酸を発生する感光性化合物でフォトレジストパターン形状に悪影響を及ぼさないものであれば何れにても良いが、本発明に於いて特に好ましい酸発生剤としては、分子内にジアゾジケト基(−CO−C(=N2)−CO−)又はジアゾケト基(−CO−C(=N2)−)を有する、例えば下記一般式(1)〜(6)で示される化合物が挙げられる。
【0026】
【化14】


【0027】[式中、R1は水素原子、シクロアルキル基、フェニル基、アルキル置換フェニル基又はアルコキシ置換フェニル基を表し、R2は−(O)p−R3−(O)p−{但し、R3は−(CH2n
【0028】
【化15】


【0029】又は
【化16】


【0030】(但し、nは1〜5の整数を表し、qは0又は1〜5の整数を表す。)を表し、pは0又は1を表す。}を表し、mは1〜5の整数を表す。]
【0031】
【化17】


【0032】[式中、R4及びR4'は夫々独立して炭素数1〜8のアルキル基又はR5−(CH2r−{但し、R5はシクロアルキル基、フェニル基、アルキル置換フェニル基又はアルコキシ置換フェニル基を表し、又、R4とR4'とが互いに結合してメチレン鎖を形成していても良く、rは0又は1〜5の整数を表す。)を表す。]
【0033】
【化18】


【0034】[式中、R6及びR7は夫々独立して炭素数1〜10のアルキル基、ベンジル基又はフェネチル基を表す。]
【0035】
【化19】


【0036】[式中、R8は−C(CH32−又は−(O−CO)z−R9−(CO−O)z −{但し、R9は−(CH2x−(但し、xは0又は1〜5の整数を表す。)、−(CH2y−R10−(CH2y−{但し、R10はフェニレン基又はシクロヘキシレン基を表し、yは0又は1〜5の整数を表す。)を表し、zはO又は1を表す。}を表す。]
【0037】
【化20】


【0038】[式中、R13及びR14は夫々独立して水素原子、フェニル基、アルキル置換フェニル基又はアルコキシ置換フェニル基を表し、g及びhは夫々独立して1〜5の整数を表す。]
【0039】
【化21】


【0040】[式中、R15は水素原子、アルキル基又はアルコキシ基を表す。]
本発明に係る酸発生剤の具体例としては、例えば3,8-ビスージアゾー2,4,7,9-デカンテトラオン、1,4-ビス(4-ジアゾー3,5-ジオキソヘキシル)ベンゼン、1,2-ビス(2-ジアゾー1,3-ジオキソブチルオキシ)エタン、ビス(2-ジアゾー1,3-ジオキソブチルオキシ)メタン、1,4-ビス(2-ジアゾー1,3-ジオキソブチルオキシ)シクロヘキサン、3-ジアゾー2,4-ペンタンジオン、3-ジアゾー1-フェニルー2,4-ペンタンジオン、4-ジアゾー1,7-ジフェニルー3,5-ヘプタンジオン、1,7-ビス(p-トリル)ー4-ジアゾ−3,5-ヘプタンジオン、3-ジアゾー1,5-ジシクロヘキシルー2,4-ペンタンジオン、1-ジアゾ−2,6-ジオキソシクロヘキサン、5-ジアゾー2,2-ジメチルー1,3-ジオキサンー4,6-ジオン、5-ジアゾー2-エチルー2-メチルー1,3-ジオキサンー4,6-ジオン、5-ジアゾー2-メチルー2-(2-フェネチル)ー1,3-ジオキサンー4,6-ジオン、5-ジアゾー2,2-ジベンジルー1,3-ジオキサンー4,6-ジオン、2,2-ビス(3-ジアゾー4-オキソシクロヘキシル)プロパン、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸 ジ(3-ジアゾー4-オキソシクロヘキシル)、マロン酸ジ(3-ジアゾー4-オキソシクロヘキシル)、1-ジアゾ−2-テトラロン、1-ジアゾ−5-メトキシ−2-テトラロン、3-ジアゾ−4-フェニル−2-ブタノン、3-ジアゾ−4-(4-トリル)−2-ブタノン、3-ジアゾ−4-(4-メトキシフェニル)−2-ブタノン、3-ジアゾ−4-(3-トリル)−2-ブタノン、2-ジアゾ−1,5-ジフェニル−3-ペンタノン、1,5-ビス(4-トリル)−2-ジアゾ−3-ペンタノン、1,5-ビス(4-メトキシフェニル)−2-ジアゾ−3-ペンタノン等が挙げられるがこれ等に限定されるものではない事は言うまでもない。
【0041】本発明で用いられる溶剤としては、本発明に係る重合体と本発明に係る酸発生剤の両者を溶解可能なものであれば何れでも良いが、通常は 200〜300nm付近に吸収を有しないものがより好ましく用いられる。
【0042】具体的にはメチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸 2-エトキシエチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、N-メチルー2-ピロリドン、シクロヘキサノン、2-ヘキサノン、メチルエチルケトン、1,4-ジオキサン、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル又はジエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられるが、勿論これ等に限定されるものではない。
【0043】本発明に係る重合体と酸発生剤との、ポジ型レジスト材料に於ける混合比としては、重合体1重量に対して酸発生剤は0.01〜0.5重量、好ましく0.03〜0.3重量付近が挙げられる。又、本発明のレジスト材料中の溶剤の量としては、本発明に係る重合体と酸発生剤とを溶解した結果得られるポジ型レジスト材料を基板上に塗布する際に支障をきたさない量であれば特に限定される事なく挙げられるが、通常重合体1重量に対して1〜20重量、好ましくは1.5〜6重量付近が挙げられる。
【0044】本発明のフォトレジスト材料は、通常、重合体、酸発生剤、溶剤の三成分を主たる構成成分とするが、必要に応じて染料や界面活性剤等を添加する等は任意である。
【0045】本発明のフォトレジスト材料を用いてパターン形成を行う場合に用いられる現像液としては、本発明に係る重合体のアルカリ溶液に対する溶解性に応じて、未露光部は殆ど溶解させず、露光部は溶解させるような適当な濃度のアルカリ溶液を選択すれば良く、通常0.01〜20%の範囲から選択される。又、使用されるアルカリ溶液としては、例えばテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)、コリン、トリエタノールアミン等の有機アミン類、例えばNaOH、KOH 等の無機アルカリ類を含む溶液が挙げられる。
【0046】本発明のフォトレジスト材料を用いてパターン形成を行うには、例えば以下の如く行えば良い。
【0047】本発明に係る化合物を含むレジスト材料をシリコンウェハー等の基板の上に厚みが0.5〜2μm程度となるように塗布し、(3層の上層として用いる場合には0.1〜0.5μm程度)、これをオーブン中で70〜130 ℃、10〜30分間、若しくはホットプレート上で70〜130℃、1〜2分間プレベークする。次いで、目的のパターンを形成する為のマスクを上記のレジスト膜上にかざし、300nm以下の遠紫外光を露光量(exposure dose )1〜100mJ/cm2程度となるように照射した後、ホットプレート上で70〜150℃、1〜2分間ベークする。更に、0.1〜5%テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)水溶液等の現像液を用い、0.5〜3分程度、浸漬法、パドル(puddle)法、スプレー法等の常法により現像すれば、基板上に目的のポジ型パターンが形成される。
【0048】本発明に係る重合体は、上記した如く一般式(9)で示される官能基を有する事に起因して、従来の同様の目的で使用される重合体に比して、アルカリ現像液に対し極めて溶解し難い反面、露光により生成したカルボン酸の存在で特異的に、且つ容易に官能基を脱離してアルカリ可溶性になり易い性質を有しており、その結果、露光部と未露光部間のアルカリ現像液に対する溶解速度差を極めて大きく出来、高解像性能の達成が可能である。又、本発明に係る重合体は前記の官能基を有するスチレン単位の他にヒドロキシスチレン単位を含んで成る事に起因して、耐熱性を有し、ドライエッチ耐性を有し、且つ基板との密着性にも優れている。
【0049】本発明に係る一般式(1)、(2)、(3)、(4)、(5)又は(6)で示される酸発生剤は露光又は照射により弱酸のカルボン酸が生成するが、現在迄報告されている酸発生剤が露光等により生成した強酸に起因してアミン等の微量雰囲気中でもパターン形成に影響を受け易いのに比して全く影響されず、その結果、経時的にもパターン寸法は安定化出来る。更に分子内に露光等により漂白可能なジアゾ基を有している事に起因して、短波長化に伴い顕著になった定在波の影響を低減出来るという大きな利点を有している。
【0050】本発明に係るフォトレジスト材料はKrFエキシマレーザ光はもとより、電子線やX線照射でもカルボン酸が発生し、化学増幅作用することが確認されている。従って、本発明のフォトレジスト材料は化学増幅法を利用して低露光量の遠紫外光、KrFエキシマレーザ光(248.4nm)や電子線或いはX線照射法によりパターン形成可能なフォトレジスト材料である。
【0051】
【作 用】本発明の作用について具体例で説明すると、先ず、KrFエキシマレーザ光、遠紫外光等で露光された部位は例えば下記式1又は式2で示される光反応に従って酸が発生する(一般式(1)、(2)又は(3)で示される酸発生剤の場合は式1で示される光反応に従って、また一般式(4)、(5)又は(6)で示される酸発生剤の場合は式2で示される光反応に従って夫々酸が発生する。)。
【0052】
【式1】


【0053】
【式2】


【0054】露光工程に続いて加熱処理すると下記式3の反応式に従って本発明に係る重合体の特定の官能基(式3では、1-メトキシー1-メチルエトキシ基として例示。)がカルボン酸により化学変化を受けてフェノール性水酸基となりアルカリ可溶性となって、現像の際、現像液に溶出してくる。
【0055】
【式3】


【0056】他方、未露光部は酸が発生しない為、加熱処理しても化学変化は起こらず、かえって基板との密着性強化の目的で用いた重合体の親水性基部位を酸発生剤がアルカリ現像液の浸潤から保護するような作用が発現する。この様に本発明のフォトレジスト材料を用いてパターン形成を行った場合には露光部と未露光部との間でアルカリ現像液に対して大きな溶解度差を生じ、しかも未露光部の重合体が基板に対して強い密着性を有している為、現像時に膜剥がれを引き起こさず、その結果、良好なコントラストを有したポジ型のパターンが形成される。又、前記式3で示されるように露光で発生した酸は触媒的に作用する為、露光は必要な酸を発生させるだけで良く、露光エネルギー量の低減が可能となる。
【0057】以下に実施例、製造例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれ等により何等制約を受けるものではない。
【0058】
【実施例】
製造例1. ポリ[p-(1-メトキシ−1-メチルエトキシ)スチレンーp-ヒドロキシスチレン]の合成(1)p-tert−ブトキシスチレン17.6gに触媒量の2,2'-アゾビスイソブチロニトリルを添加してトルエン溶剤中、窒素気流下、80℃で6時間重合反応させた。反応液を冷却後、メタノール中に注入、晶析させ、析出晶を濾取、メタノール洗浄、減圧乾燥してポリ(p-tert−ブトキシスチレン)15.5gを白色粉末晶として得た。得られた重合体はGPC測定(ポリスチレン標準)した結果、重量平均分子量(Mw)約 10000、数平均分子量(Mn)約5500であった。
【0059】(2)上記(1)で得たポリ(p-tert−ブトキシスチレン)15.0gを1,4-ジオキサンに溶解させ、濃塩酸10mlを加えて撹拌還流を4時間行い、冷却後、反応液を水中に注入、晶析させ、析出晶を濾取、水洗、減圧乾燥してポリ(p-ヒドロキシスチレン) 9.7gを白色粉末晶として得た。
【0060】(3)上記(2)で得たポリ(p-ヒドロキシスチレン) 4.0g及び2-メトキシ−1-プロペン4.8gを1,4-ジオキサンとピリジンの混合液35mlに溶解させ、これに触媒量のクロルスルホン酸を添加し、室温で20時間撹拌反応させた。反応後、反応液を水中に注入、晶析させ、析出晶を濾取、水洗、減圧乾燥してポリ[p-(1-メトキシー1-メチルエトキシ)スチレンーp-ヒドロキシスチレン]4.1gを白色粉末晶として得た。得られた重合体のp-1-メトキシー1-メチルエトキシスチレン単位とp-ヒドロキシスチレン単位の構成比は 1HNMR測定により約1:1であった。重量平均分子量 約 10000(GPC法:ポリスチレン標準)。
【0061】製造例2. ポリ[p-(1-メトキシー1-メチルエトキシ)スチレンーp-ヒドロキシスチレン]の合成製造例1の(2)で得たポリ(p-ヒドロキシスチレン)4.0g及び2-メトキシー1-プロペン3.6gを1,4-ジオキサン35mlに溶解させ、これにオキシ塩化燐1滴を添加し、室温で20時間撹拌反応させた。反応後、反応液を製造例1の(3)と同様にして処理し、ポリ[(p-1-メトキシー1-メチルエトキシ)スチレンーp-ヒドロキシスチレン]4.0gを白色粉末晶として得た。得られた重合体のp-1-メトキシー1-メチルエトキシスチレン単位とp-ヒドロキシスチレン単位の構成比は1HNMR測定により約4:6であった。 重量平均分子量 約 9000(GPC法:ポリスチレン標準)。
【0062】製造例3. ポリ[p-(1-エトキシ−1-メチルエトキシ)スチレン−p-ヒドロキシスチレン]の合成(1)無水コハク酸24.0gとピリジン19.0gを混合し、70℃に加温し、同温度で2,2-ジエトキシプロパン26.4gを滴下した後、80℃で2時間撹拌還流した。反応後、常圧蒸留しbp.62〜66℃留分の2-エトキシ−1-プロペン10.3gを無色油状物として得た。
1HNMR δppm(重クロロホルム):1.30(3H,t,J=7Hz ,メチル)、1.82(3H,s,メチル)、3.71(2H,q,J=7Hz ,メチレン)、3.82(2H,d,J=3Hz,メチレン)。
【0063】(2)製造例1の(2)で得たポリ(p-ヒドロキシスチレン)4.0g及び上記(1)で得た2-エトキシ−1-プロペン 2.5gを用いて製造例2と同様に反応及び後処理を行い、ポリ[p-(1-エトキシ−1-メチルエトキシ)スチレン−p-ヒドロキシスチレン]3.8gを白色粉末晶として得た。得られた重合体のp-1-エトキシ−1-メチルエトキシスチレン単位とp-ヒドロキシスチレン単位の構成比は1HNMR測定により約 35:65であった。 重量平均分子量 約 11000(GPC法:ポリスチレン標準)。
【0064】製造例4. ポリ[p-(1-メトキシ−1-メチルプロポキシ)スチレン−p-ヒドロキシスチレン]の合成(1)メチルエチルケトン54.1g(0.75モル)とオルトギ酸メチル58.6g(0.79モル)をメタノール50ml中に溶解させ、触媒量のp-トルエンスルホン酸を添加して室温で5日間反応させた。反応液に28%ナトリウムメトキシドのメタノール溶液を加えてアルカリ性とし、メタノールを留去した後、残渣を蒸留しbp.105〜108℃留分のメチルエチルケトンジメチルアセタール68.0gを無色油状物として得た。次いでメチルエチルケトンジメチルアセタール67gに少量のp-トルエンスルホン酸を添加し、加熱撹拌しながら蒸留を行い、留分を希水酸化カリウム水溶液で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を濾去し、濾液を蒸留しbp.67〜68℃留分の2-メトキシ−1-ブテン19.4gを無色油状物として得た。
1HNMR δppm(重クロロホルム):1.05(3H,t,メチル)、2.05(2H,q,メチレン)、3.45(3H,s,メトキシ)、3.70(2H,d,J=7Hz ,メチレン)。
【0065】(2)市販のポリ(p-ヒドロキシスチレン)[丸善石油化学製、商品名 マルカリンカーM、重量平均分子量 約 20000]4.0gと上記(1)で得た2-メトキシ−1-ブテン 2.8gを用いて製造例2と同様に反応及び後処理を行い、ポリ[p-(1-メトキシ−1-メチルプロポキシ)スチレン−p-ヒドロキシスチレン]4.0gを微黄色粉末晶として得た。得られた重合体のp-1-メトキシ−1-メチルプロポキシスチレン単位とp-ヒドロキシスチレン単位の構成比は1HNMR測定により約4:6であった。
【0066】製造例5. ポリ[p-(1-ベンジルオキシ−1-メチルエトキシ)スチレン−p-ヒドロキシスチレン]の合成市販のポリ(p-ヒドロキシスチレン)4.0gと市販のイソプロペニルベンジルエーテル[東京化成品]4.2gを用いて製造例2と同様に反応及び後処理を行い、ポリ[p-(1-メトキシ−1-メチルプロポキシ)スチレン−p-ヒドロキシスチレン]4.1gを微黄色粉末晶として得た。得られた重合体のp-1-ベンジルオキシ−1-メチルエトキシスチレン単位とp-ヒドロキシスチレン単位の構成比は 1HNMR測定により約4:6であった。
【0067】製造例6. ポリ[p-(1-トリメチルシリルオキシ−1-メチルエトキシ)スチレン−p-ヒドロキシスチレン]の合成市販のポリ(p-ヒドロキシスチレン)4.0gと市販のイソプロペニルトリメチルシリルエーテル[ALDRICH CHEMICAL Co.Inc.]3.7gを用いて製造例2と同様に反応及び後処理を行い、ポリ[p-(1-トリメチルシリルオキシ−1-メチルエトキシ)スチレン−p-ヒドロキシスチレン]3.8gを微黄色粉末晶として得た。得られた重合体のp-1-トリメチルシリルオキシ−1-メチルエトキシスチレン単位とp-ヒドロキシスチレン単位の構成比は1HNMR測定により約3:7であった。
【0068】製造例7. 3,8-ビスージアゾー2,4,7,9-デカンテトラオンの合成(1)アジ化ナトリウム22.5g(0.35モル)を少量の水に溶解させた後、90%含水エタノール130mlで希釈した。次いで10〜25℃でp-トルエンスルホニルクロライド60g(0.32モル)を溶解させたエタノール溶液を滴下後、室温下 2.5時間反応させた。次いで反応液を減圧濃縮し、残渣油状物を数回水洗した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を濾去し、p-トルエンスルホニルアジド50.7gを無色油状物として得た。
1HNMR δppm(重クロロホルム):2.43(3H,s,メチル)、7.24(2H,d,J=8Hz,芳香環 3-H,5-H )、7.67(2H,d,J=8Hz,芳香環 2-H,6-H )。IR(Neat)νcm-1:2120(-N3)。
【0069】(2)60%水素化ナトリウム15gを含む乾燥テトラヒドロフラン溶液200mlに、窒素気流中、攪拌下、2,4-ペンタンジオン37.5gを含む乾燥テトラヒドロフラン溶液100mlを、−5〜0℃で滴下した。滴下終了後、同温度で更に20分間撹拌し、次いでこれに同温度でn-ブチルリチウムの1.6M n-ヘキサン溶液250mlを滴下した。更にこれに塩化第1銅5.63gを-10℃以下で加え、−5〜0℃で45分間撹拌した。得られた懸濁液にヨウ素47.6gを含むエチルエーテル溶液250mlを0〜5℃で滴下し、次いでこれを室温で7時間撹拌反応させた後、一夜放置した。反応液を希塩酸中に注入し、酢酸エチルで抽出( 200ml×3)し、分取した有機層を水洗(200ml×3)、無水硫酸マグネシウムで乾燥の後、減圧濃縮した。次いで得られた残渣をカラム分離[充填剤:ワコーゲル C-200(和光純薬工業(株)製、商品名)、溶離液:塩化メチレン]により単離した後、シクロヘキサンより再結晶して2,4,7,9-デカンテトラオン8.2gを黄色鱗片状晶として得た。本品は1HNMR測定より、ケト型とエノール型の1:1の混合物であった。mp.62.7〜64℃。1HNMR δppm(重クロロホルム):2.02(6H,s,メチル×2)、2.67(4H,s,メチレン×2)、3.64(2H,s,メチレン)、5.53(2H,s,水酸基及びメチン)。
IR(KBr錠)νcm-1:1630(C=O)。
【0070】(3)上記(2)で得られた2,4,7,9-デカンテトラオン 7.9g及びピペリジン 6.9gを含むクロロホルム溶液200mlに、上記(1)で得たp-トルエンスルホニルアジド15.8gを含むクロロホルム溶液50mlを30〜35℃で滴下し、次いで同温度で2時間撹拌反応させた。反応終了後、反応液を濃縮し、得られた残渣をカラム分離[充填剤:ワコーゲル C-200、溶離液:塩化メチレン/酢酸エチル=4/1 (V/V)]により精製して3,8-ビス−ジアゾー2,4,7,9-デカンテトラオン2.5gを黄色結晶として得た。mp.79〜82.5℃。
1HNMR δppm(重クロロホルム):2.41(6H,s,メチル×2)、3.11(4H,s,メチレン×2)。
IR(KBr錠)νcm-1:2110(CN2)、1640(C=O)。
UV(アセトニトリル溶液 )λmax:229.9nm(ε=35400)。
元素分析値(C101044
計算値(%):炭素 48.00 、水素 4.03、窒素 22.39 。
実測値(%):炭素 48.30 、水素 3.97、窒素 22.33 。
【0071】製造例8. 3-ジアゾー1-フェニルー2,4-ペンタンジオンの合成(1)フェニル酢酸エチル 600g(3.66モル)とアセトン70.7g(1.22モル)を仕込み、これに10〜40℃で金属ナトリウム28g(1.22原子)をゆっくり加えた。更に30〜40℃で1時間撹拌して溶解させた後、70〜80℃で 4.5時間反応させた。反応後、水1200mlを注入し希塩酸を滴下して中和し、次いでクロロホルム抽出した。分取したクロロホルム層を水洗した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を濾別し、溶剤留去して得た残渣の赤褐色油状物515gを減圧蒸留しbp.142〜146℃/15mmHg留分の1-フェニルー2,4-ペンタンジオン53.2gを無色油状物として得た。
【0072】(2)上記(1)で得た1-フェニルー2,4-ペンタンジオン36.2g(0.21モル)を塩化メチレン500mlに溶解し、ピペリジン17.5g(0.21モル)を加えた後、0〜5℃で製造例7の(1)で得たp-トルエンスルホニルアジド44.5g(0.23モル)を滴下し、更に同温度で1時間反応させた。反応液を希水酸化カリウム水溶液で洗浄後水洗し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。乾燥剤を濾別し、溶剤留去後、残渣油状物をカラム分離[充填剤:ワコーゲル C-200、溶離液:n-ヘキサン/酢酸エチル=10/1(V/V)]して3-ジアゾー1-フェニルー2,4-ペンタンジオン33.0gを橙赤色粘稠油状物として得た。
1HNMR δppm(重クロロホルム):2.36(3H,s,メチル)、4.00(2H,s,メチレン)、7.23(5H,s,芳香環)。
IR(Neat)νcm-1:2140(CN2)、1660(C=O)。
元素分析値(C111022
計算値(%):炭素 65.34、水素 4.98、窒素 13.85。
実測値(%):炭素 65.55、水素 4.87、窒素 13.88。
【0073】製造例9. 4-ジアゾー1,7-ジフェニルー3,5-ヘプタンジオンの合成(1)60%水素化ナトリウム17gを乾燥シクロヘキサン 200mlに懸濁させ、これに20〜25℃で2,4-ペンタンジオン37g(0.37モル)の乾燥シクロヘキサン溶液を滴下し、同温度で40分間撹拌反応させた。次いでN,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミン91.8gを注入後−5〜0℃でn-ブチルリチウムの1.6M n-ヘキサン溶液337gを滴下し更に室温迄昇温し24時間反応させた。次いでこの反応液に0〜5℃で塩化ベンジル93.7gを滴下し、一夜放置した後、希塩酸中に注入した。静置、分液して有機層を分取し、数回水洗した後無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を濾去し、溶剤留去し、残渣の赤色油状物79gを減圧蒸留してbp.185〜190℃/0.4mmHg留分の1,7-ジフェニルー3,5-ヘプタンジオン23.5gを淡黄色油状物として得た。
【0074】(2)上記(1)で得た1,7-ジフェニルー3,5-ヘプタンジオン16.6g(60ミリモル)を塩化メチレン120mlに溶解しピペリジン5.1g(60ミリモル)を加えた後、0〜5℃で製造例7の(1)で得たp-トルエンスルホニルアジド12.4g(63ミリモル)を滴下し、更に同温度で2時間撹拌反応させた。反応液を希水酸化カリウム水溶液で洗浄後、数回水洗し無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を濾去し、溶剤留去し、残渣の赤橙色油状物19gをカラム分離[充填剤:ワコーゲル C-200、溶離液:塩化メチレン]して4-ジアゾー1,7-ジフェニルー3,5-ヘプタンジオン8.0gを微黄色結晶として得た。mp.62.5〜64.0℃。
1HNMR δppm(重クロロホルム):2.97(8H,s,メチレン×4)、7.20(10H ,s,芳香環×2)。
IR(KBr錠)νcm-1:2120(CN2)、1650(C=O)。
元素分析値(C191822
計算値(%):炭素 74.49、水素 5.92、窒素 9.14。
実測値(%):炭素 74.55、水素 5.88、窒素 9.23。
【0075】製造例10. 1-ジアゾ−2-テトラロンの合成ナトリウムエトキシド4.68gをエタノール150mlに溶解し、これに2-テトラロン5.0g(34ミリモル)のエタノール(10ml)溶液を0℃で滴下した。次いで製造例7の(1)で得たp-トルエンスルホニルアジド6.9g(35ミリモル)を−15℃で滴下した後、−15〜−5℃で3時間撹拌反応した。反応液を冷水350ml中に注入し、塩化メチレンで抽出( 250ml×2)、水洗(200ml)し無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を濾去し、溶剤留去し、残渣の赤紫色結晶5.2gをカラム分離[充填剤:ワコーゲル C-200、溶離液:n-ヘキサン/塩化メチレン=7/1→5/1→3/1(V/V)]して1-ジアゾ−2-テトラロン2.3gを橙色結晶として得た。mp.41.5〜43.5℃。
1HNMR δppm(重クロロホルム):2.67(2H,t,J=6Hz ,3-メチレン)、3.02(2H,t,J=6Hz ,4-メチレン)、6.96〜7.29(4H,m,芳香環)。
IR(KBr錠)νcm-1:2090(CN2)、1646(C=O)。
【0076】製造例11. 2-ジアゾ−1,5-ジフェニル−3-ペンタノンの合成(1)1,5-ジフェニル−1,4-ペンタジエン−3-オン50.9g(0.217モル)をテトラヒドロフラン350mlに溶解し、5%パラジウム炭素(5.6g)存在下、常温常圧接触還元を行った。反応後、触媒を濾去、溶剤留去し、残渣を減圧蒸留しbp.160〜162℃/0.4mmHg 留分の1,5-ジフェニル−3-ペンタノン25.5gを微黄色油状物として得た。
1HNMR δppm(重クロロホルム):2.65(4H,t,J=8Hz ,メチレン×2)、2.85(4H,t,J=8Hz ,メチレン×2)、7.11〜7.27(10H ,m,芳香環)。
IR(Neat)νcm-1:1705(C=O)。
【0077】(2)ナトリウムメトキシド6gをエチルエーテル80mlに懸濁させ、これに上記(1)で得た1,5-ジフェニル−3-ペンタノン24g(0.1モル)とギ酸メチル6.7g(0.11モル)の混合物を1〜2℃で滴下し、更に同温度で1時間撹拌した。室温で一夜放置した後、冷水300ml中に注入、分液して得た水層を5%硫酸でpH1とし、エチルエーテル抽出(100ml×3)し、エーテル層を水洗(100ml×2)、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を濾去し、溶剤留去して残渣の2-ホルミル−1,5-ジフェニル−3-ペンタノン12.7gを微黄色油状物として得た。本品は1HNMR測定よりケト体とエノール体が約1:1の混合物であった。
1HNMR δppm(重クロロホルム):2.58(2H,t,J=5Hz ,メチレン)、2.79(2H,t,J=5Hz ,メチレン)、3.13(d,J=8Hz ,ケト型メチレン)、3.43(s,エノール型メチレン)、3.77(t,J=8Hz ,ケト型メチン)、7.00〜7.29(10H ,m,芳香環)、7.74(d,J=8Hz ,エノール型メチン)、9.55(s,アルデヒド)、15.00 (bs,水酸基)。
IR(Neat)νcm-1:1700(C=O)、1630(C=O)。
【0078】(3)上記(2)で得た2-ホルミル−1,5-ジフェニル−3-ペンタノン12.2g(46ミリモル)を塩化メチレン95mlに溶解し、5℃以下でトリエチルアミン8.5g(82ミリモル)を滴下した。次いで製造例7の(1)で得たp-トルエンスルホニルアジド9g(46ミリモル)を10℃以下で滴下し、5〜10℃で1.5時間撹拌反応した。反応液を希水酸化カリウム水溶液で洗浄し、水洗、乾燥した後、溶剤留去し残渣の橙色油状物13.2gをカラム分離[充填剤:ワコーゲル C-200;溶離液:n-ヘキサン/塩化メチレン=7/1→4/1→2/1(V/V)]して2-ジアゾ−1,5-ジフェニル−3-ペンタノン 9.6gを淡黄色油状物として得た。
1HNMR δppm(重クロロホルム):2.77(2H,t,J=8Hz ,メチレン)、2.98(2H,t,J=8Hz ,メチレン)、3.63(2H,s,メチレン)、7.13〜7.30(10H ,m,芳香環)。
IR(Neat)νcm-1:2060(CN2)、1625(C=O)。
【0079】製造例12. 1,7-ビス(4-トリル)−4-ジアゾ−3,5-ヘプタンジオンの合成製造例9の(1)の塩化ベンジルに代えて塩化p-メチルベンジル635.4gを用いて製造例9の(1)、(2)及び(3)と同様に実施し、得られた油状物をエタノールから結晶化させて1,7-ビス(4-トリル)−4-ジアゾ−3,5-ヘプタンジオン103gを微黄色プリズム晶として得た。 mp.45.6〜46.8℃。
1HNMR δppm(重クロロホルム):2.31(6H,s,メチル×2)、2.88〜3.05(8H,m,メチレン×4)、7.10(8H,s,芳香環×2)。
IR(KBr錠)νcm-1:2100(CN2)、1660(C=O)。
【0080】製造例13. 1,7-ビス(4-メトキシフェニル)−4-ジアゾ−3,5-ヘプタンジオンの合成製造例9の(1)の塩化ベンジルに代えて塩化p-メトキシベンジル 133gを用いて製造例9の(1)、(2)及び(3)と同様に実施し、得られた油状物をカラム分離[充填剤:ワコーゲル C-200 ;溶離液:塩化メチレン]して1,7-ビス(4-メトキシフェニル)−4-ジアゾ−3,5-ヘプタンジオン50.7gを黄色粘稠油状物として得た。
1HNMR δppm(重クロロホルム):2.87〜3.03(8H,m,メチレン×4)、3.78(6H,s,メチル×2)、6.82(4H,d,J=8.6Hz ,芳香環3-H,5-H ×2)、7.13(4H,d,J=8.6Hz ,芳香環2-H,6-H ×2)。
IR(Neat)νcm-1:2900、2100(CN2)、1650(C=O)。
【0081】製造例14. 2,2-ビス(3-ジアゾー4-オキソシクロヘキシル)プロパンの合成(1)2,2-ビス(p-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン12.1g(50ミリモル)及びピリジン8.3g(0.11モル)をジメチルスルホキシド180ml及びベンゼン180mlに溶解し、これにジシクロヘキシルカルボジイミド62g(0.30モル)及びトリフルオロ酢酸 6.3g(55ミリモル)を順次、添加し室温で6時間撹拌反応した。室温で一夜放置後、水500mlを注入し、酢酸エチル抽出(200ml×2)し、有機層を水洗(500ml×6)した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を濾別し、溶剤留去し残渣の粗結晶30gをカラム分離[充填剤:ワコーゲル C-200(和光純薬工業(株)製、商品名)、溶離液:n-ヘキサン/酢酸エチル=10/1→5/1(V/V)]により精製して2,2-ビス(4-オキソシクロヘキシル)プロパン 5.5gを白色結晶として得た。 mp.163.0〜165.5 ℃。
1HNMR δppm(重クロロホルム):0.86(6H,s,メチル基×2)、1.43〜1.58(4H,m,シクロヘキサン環)、1.74〜1.86(2H,m,シクロヘキサン環)、2.04〜2.16(4H,m,シクロヘキサン環)、2.25〜2.47(8H,m,シクロヘキサン環メチレン×2)。
【0082】(2)ナトリウムメトキシド2.2g(40ミリモル)をエチルエーテル30mlに懸濁させ、これに上記(1)で得た2,2-ビス(4-オキソシクロヘキシル)プロパン3.3g(18.2ミリモル)とギ酸メチル3.3g(54.6ミリモル)の混合液を0〜5℃で滴下し、同温度で2時間、次いで室温で2時間撹拌反応させた。反応液を室温で一夜放置し、水300mlを注入後、分液して得た水層に濃塩酸を加えてpH1〜2とし、酢酸エチル抽出(150ml×1)した。分取した有機層を水洗(200ml×3)し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、溶剤留去して得られた残渣4.5gをカラム分離[充填剤:ワコーゲル C-200、溶離液:n-ヘキサン/酢酸エチル=10/1→5/1(V/V)]により精製して2,2-ビス(3-ホルミルー4-オキソシクロヘキシル)プロパン2.3gを微黄色油状物として得た。
1HNMR δppm(重クロロホルム):0.88(6H,s,メチル×2)、1.26〜1.43(2H,m,シクロヘキサン環)、1.58〜1.72(2H,m,シクロヘキサン環)、1.86〜1.94(2H,m,シクロヘキサン環)、2.03〜2.18(2H,m,シクロヘキサン環)、2.28〜2.50(6H,m,シクロヘキサン環)、8.59(2H,d,J= 5.5Hz,シクロヘキサン環メチン×2)、 14.32(2H,bs,アルデヒド×2)。
【0083】(3)上記(2)で得た2,2-ビス(3-ホルミルー4-オキソシクロヘキシル)プロパン1.6g(5.4ミリモル)及びトリエチルアミン1.2g(12ミリモル)を塩化メチレン60mlに溶解させ、これに製造例7の(1)で得たp-トルエンスルホニルアジド2.6g(13.2ミリモル)を0〜5℃で滴下し、同温度で3時間撹拌反応した。反応液を水200ml中に注入し、塩化メチレン抽出(50ml×3)し、有機層を水洗(150ml×3)し、無水硫酸マグネシウムで乾燥、溶剤留去し、残渣をカラム分離[充填剤:ワコーゲル C-200、溶離液:n-ヘキサン/酢酸エチル=10/1→5/1(V/V)]により精製して2,2-ビス(3-ジアゾー4-オキソシクロヘキシル)プロパン600mgを淡黄色油状物として得た。
1HNMR δppm(重クロロホルム):0.91(6H,t,J= 5.5Hz,メチル×2)、1.41〜1.57(2H,m,シクロヘキサン環)、1.66〜1.82(2H,m,シクロヘキサン環)、1.92〜1.98(2H,m,シクロヘキサン環)、2.18〜2.32(2H,m,シクロヘキサン環)、2.48〜2.68(6H,m,シクロヘキサン環)。
IR(Neat)νcm-1:3190、3000、2130(CN2)、1620(C=O)。
【0084】製造例15. 5-ジアゾー2,2-ジメチルー1,3-ジオキサンー4,6-ジオンの合成2,2-ジメチルー1,3-ジオキサンー4,6-ジオン11.6g(81ミリモル)及びトリエチルアミン8.4g(83ミリモル)をエタノール40mlに溶解させ、これに製造例7の(1)で得たp-トルエンスルホニルアジド16g(81ミリモル)を−15〜−10℃で滴下し、同温度で1時間撹拌反応した。析出晶を−10℃で濾取し、粗結晶15g(wet)をエタノールより再結晶して5-ジアゾー2,2-ジメチルー1,3-ジオキサンー4,6-ジオン8.5gを微黄色結晶として得た。 mp.93.0〜94.0℃。
1HNMR δppm(重クロロホルム):1.79(6H,s,メチル×2)。
IR(KBr錠)νcm-1:2165(CN2)、1710(C=O)。
【0085】製造例16. 3-ジアゾー2,4-ペンタンジオンの合成2,4-ペンタンジオン12g(120ミリモル)及びトリエチルアミン12g(120ミリモル)をエチルエーテル60mlに溶解し、これに製造例7の(1)で得たp-トルエンスルホニルアジド26g(130ミリモル)を0〜5℃で滴下し、同温度で1.5時間撹拌反応した。反応液を水洗(100ml×3)、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、溶剤留去し残渣14.5gの油状物をカラム分離[充填剤:ワコーゲル C-200、溶離液:n-ヘキサン/塩化メチレン=3/1→1/1→1/3(V/V)]により精製して3-ジアゾー2,4-ペンタンジオン7.3gを微黄色油状物として得た。
1HNMR δppm(重クロロホルム):2.44(6H,s,メチル×2)。
IR(Neat)νcm-1:2110(CN2)、1645(C=O)。
【0086】製造例17. 5-ジアゾ−2-メチル−2-(2-フェネチル)−1,3-ジオキサン−4,6-ジオンの合成(1)マロン酸56.7g(0.55モル)と無水酢酸73mlの混合液に5〜10℃で濃硫酸2mlを滴下し、同温度で20分撹拌後、4-フェニル−2-ブタノン105g(0.7モル)を15〜20℃で滴下し、更に同温度で15時間撹拌した。反応液を水中に注入し、クロロホルム抽出、クロロホルム層を分取し水洗後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤を濾去後、溶剤留去し残渣の淡褐色結晶を含水アセトンから再結晶して2-メチル−2-(2-フェネチル)−1,3-ジオキサン−4,6-ジオン68.0gを白色粉末晶として得た。 mp.63.0 〜65.0℃。
1HNMR δppm(重クロロホルム):1.74(3H,s,メチル)、2.03〜2.44(2H,m,メチレン)、2.60〜3.02(2H,m,メチレン)、3.58(2H,s,メチレン)、7.16(5H,s,芳香環)。
IR(KBr錠)cm-1:1750(C=O)。
【0087】(2)上記(1)で得た2-メチル−2-(2-フェネチル)−1,3-ジオキサン−4,6-ジオン67g(0.29モル)をエタノールに溶解し、−15〜−10℃でトリエチルアミン32gを滴下した後、同音度で製造例7の(1)で得たp-トルエンスルホニルアジド61g(0.3モル)を滴下した。同温度で45分間撹拌後、塩化メチレン抽出し、分取した有機層を水洗、無水マグネシウムで乾燥した。乾燥剤濾去し、溶剤留去し残渣の赤色油状物をカラム分離[充填剤:ワコーゲルC-200 ;溶離液:n-ヘキサン/酢酸エチル=10/1→5/1→3/1(V/V)]して5-ジアゾ−2-メチル−2-(2-フェネチル)−1,3-ジオキサン−4,6-ジオン44.0gを黄色結晶として得た。mp.50.5〜51.0℃。
1HNMR δppm(重クロロホルム):1.74(3H,s,メチル)、2.04〜2.47(2H,m,メチレン)、2.60〜3.02(2H,m,メチレン)、7.16(5H,s,芳香環)。
IR(KBr錠)cm-1:2180(CN2)、1695(C=O)。
【0088】実施例1.下記の組成から成るレジスト材料を調製し、後述する如くしてパターン形成を行った。
ポリ[p-(1-メトキシー1-メチルエトキシ)スチレンーp-ヒドロキシスチレン] (製造例1の重合体) 6.0g 3,8-ビスージアゾー2,4,7,9-デカンテトラオン (製造例7の酸発生剤) 0.9g ジエチレングリコールジメチルエーテル 13.1g図1を用いて上記レジスト材料を使用したパターン形成方法を説明する。半導体基板等1上に上記レジスト材料2を回転塗布し、90℃、90秒間ホットプレートでソフトベーク後、1.0μmの膜厚のレジスト材料膜を得た(図1R>1a)。次に248.4nmのKrFエキシマレーザ光3をマスク4を介して選択的に露光した(図1b)。そして 110℃、90秒間ホットプレートでベーク後、アルカリ現像液(2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液)で60秒間現像することにより、レジスト材料2の露光部のみを溶解除去し、ポジ型パターン2aを得た(図1R>1c)。
【0089】得られたポジ型パターンは0.25μmラインアンドスペースの解像性を有しており、この時の露光量は約45mJ/cm2であった。又、本レジスト材料を用いて露光した後、8時間放置してから加熱処理(ベーク)し現像した結果、0.25μmラインアンドスペースが全く問題なく解像された。
【0090】実施例2〜11表1の各組成から成るレジスト材料を調製し、夫々のレジスト材料を用いて実施例1と同様にパターン形成を行った。結果を表2に示す。
【0091】
【表1】


【0092】
【表2】


【0093】表2から明らかな様に本発明に係るレジスト材料を用いた場合、高解像性能を有すると共に露光から加熱処理、現像まで長時間放置しても解像性能の低下は認められなかった。
【0094】比較例1〜3表3の各組成から成るレジスト材料を調製し、夫々のレジスト材料を用いて実施例1と同様にパターン形成を行った。結果を表4に示す。又、比較例1〜3の露光後15分〜30分経過して加熱処理(ポストエクスポージュアベーグ;PEB)、現像した場合のパターン結果(パターン形成不可)を図2に示す。
【0095】
【表3】


【0096】
【表4】


【0097】表4の結果から明らかな様に従来のレジスト材料では本発明に係るレジスト材料を用いた場合に比して、解像性能が劣っている。又、露光後、15分放置でもパターン寸法が変動したり、図2の様にパターン形成が不可能となった。
【0098】
【発明の効果】以上述べたことから明らかな如く、本発明のレジスト材料を300nm以下の光源、例えば遠紫外光(Deep UV)、KrFエキシマレーザ光(248.4nm)等の露光用レジスト材料として用いた場合には、極めて高い解像性能を有し、且つ露光から加熱処理までの時間経過に対して安定したパターン寸法の維持が可能な、実用的なクォーターミクロンオーダーの形状の良い微細なパターンが容易に得られる。又、本発明のレジスト材料に使用される酸発生剤は露光により酸を発生すると共に漂白作用を有している為、露光波長の短波長化に伴って顕著となる定在波の影響を緩衝する効果がある。従って本発明は、半導体産業等に於ける超微細パターンの形成にとって大きな価値を有するものである。
【0099】尚、本発明のレジスト材料は遠紫外光、KrFエキシマレーザ光を利用したパターン形成に特に効果を発揮するが、i線光、電子線、X線等を利用したパターン形成においても十分使用が可能である。
【0100】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明のレジスト材料を用いたポジ型パターン形成方法の工程断面図である。
【図2】図2は従来のレジスト材料を用いた場合のポジ型パターン形成不可の工程断面図である。
【0101】
【符号の説明】
・・・基板、 2・・・本発明のレジスト材料膜、 3・・・KrFエキシマレーザ光、4・・・マスク、 2a・・・樹脂パターン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 フェノール性水酸基を有する樹脂にイソプロペニルアルキルエーテル、2-アルコキシ−1-ブテン、イソプロペニルトリメチルシリルエーテル又はイソプロペニルベンジルエーテルを反応させて得たアルカリ難溶性樹脂と露光によりカルボン酸を発生する感光性化合物と、これ等を溶解可能な溶剤を含んで成る事を特徴とするフォトレジスト材料。
【請求項2】 アルカリ難溶性樹脂が、ポリビニルフェノールにイソプロペニルアルキルエーテル、2-アルコキシ−1-ブテン、イソプロペニルトリメチルシリルエーテル又はイソプロペニルベンジルエーテルを反応させて得られた樹脂である、請求項1に記載のフォトレジスト材料。
【請求項3】 アルカリ難溶性樹脂が、ポリイソプロペニルフェノールにイソプロペニルアルキルエーテル、2-アルコキシ−1-ブテン、イソプロペニルトリメチルシリルエーテル又はイソプロペニルベンジルエーテルを反応させて得られた樹脂である、請求項1に記載のフォトレジスト材料。
【請求項4】 アルカリ難溶性樹脂が、ビニルフェノールとイソプロペニルフェノールとの共重合体に、イソプロペニルアルキルエーテル、2-アルコキシ−1-ブテン、イソプロペニルトリメチルシリルエーテル又はイソプロペニルベンジルエーテルを反応させて得られた樹脂である請求項1に記載のフォトレジスト材料。
【請求項5】 露光によりカルボン酸を発生する感光性化合物が、分子内にジアゾジケト基(−CO−C(=N2)−CO−)又はジアゾケト基(−CO−C(=N2)−)を有する化合物である請求項1〜4の何れかに記載のフォトレジスト材料。
【請求項6】 露光によりカルボン酸を発生する感光性化合物が一般式(1)
【化1】


[式中、R1は水素原子、シクロアルキル基、フェニル基、アルキル置換フェニル基又はアルコキシ置換フェニル基を表し、R2は−(O)p−R3−(O)p −{但し、R3は−(CH2n
【化2】


又は
【化3】


(但し、nは1〜5の整数を表し、qは0又は1〜5の整数を表す。)を表し、pは0又は1を表す。}を表し、mは1〜5の整数を表す。]で示される化合物である請求項1〜4の何れかに記載のフォトレジスト材料。
【請求項7】 露光によりカルボン酸を発生する感光性化合物が一般式(2)
【化4】


[式中、R4及びR4'は夫々独立して炭素数1〜8のアルキル基又はR5−(CH2r−(但し、R5はシクロアルキル基、フェニル基、アルキル置換フェニル基又はアルコキシ置換フェニル基を表し、又、R4とR4'とが互いに結合してメチレン鎖を形成していても良く、rは0又は1〜5の整数を表す。)を表す。]で示される化合物である請求項1〜4の何れかに記載のフォトレジスト材料。
【請求項8】 露光によりカルボン酸を発生する感光性化合物が一般式(3)
【化5】


[式中、R6及びR7は夫々独立して炭素数1〜10のアルキル基、ベンジル基又はフェネチル基を表す。]で示される化合物である請求項1〜4の何れかに記載のフォトレジスト材料。
【請求項9】 露光によりカルボン酸を発生する感光性化合物が一般式(4)
【化6】


[式中、R8は−C(CH32−又は−(O−CO)z−R9−(CO−O)z−{但し、R9は−(CH2x−(但し、xはO又は1〜5の整数を表す。)、−(CH2y−R10−(CH2y−(但し、R10はフェニレン基、シクロヘキシレン基を表し、yは0又は1〜5の整数を表す。)を表し、zはO又は1を表す。}を表す。]で示される化合物である請求項1〜4の何れかに記載のフォトレジスト材料。
【請求項10】 露光によりカルボン酸を発生する感光性化合物が一般式(5)
【化7】


[式中、R13及びR14は夫々独立して水素原子、フェニル基、アルキル置換フェニル基又はアルコキシ置換フェニル基を表し、g及びhは夫々独立して1〜5の整数を表す。]で示される化合物である請求項1〜4の何れかに記載のフォトレジスト材料。
【請求項11】 露光によりカルボン酸を発生する感光性化合物が一般式(6)
【化8】


[式中、R15は水素原子、アルキル基又はアルコキシ基を表す。]で示される化合物である請求項1〜4の何れかに記載のフォトレジスト材料。
【0001】

【図1】
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【図2】
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