説明

新規な二枚貝用餌料及びその調製方法

【課題】二枚貝の成育に有効であり、かつ安価で大量生産することが可能な二枚貝用餌料を提供することを目的とする。
【解決手段】アマノリ属海藻、特にアマノリ属のスサビノリを細胞壁分解酵素で処理することにより得られるスフェロプラストを、二枚貝用餌料の原料として配合する。スフェロプラストに加え、更に粉末油脂を添加することにより、不足しがちな脂質を補うことができるので、望ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スサビノリのプロトプラスト調製法を簡略化した新規なスフェロプラストの調製法、及び該スサビノリのスフェロプラストを含有する新規な二枚貝用餌料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
二枚貝は分類学上「軟体動物門 二枚貝綱 二枚貝類」に分類され、左右がほぼ同形の貝殻を持つ動物である。二枚貝は海底の砂や泥の中、あるいは岩礁などに固着して棲息している。例えばハマグリ、アサリ、シジミ、カキ、ホタテ、ムール貝等、食品用の貝類が有名である。
【0003】
現在二枚貝の養殖はカキやホタテ等のように自然の海の植物プランクトンを利用して行われるのが普通で、養殖漁場は海上であり、陸上で二枚貝の養殖が行われている例はほとんど無い。養殖漁場が海面である為、生産量は台風や大雨等の自然災害に左右され、取揚げ出荷の時期もシケ等の海況に影響される部分が大きく、計画生産・出荷は容易でない。また、養殖場が天然の海であるため、一度病気が発生すると、大きく漁場を移動する以外に感染を防止する方法が無く、防疫の面からも問題が多い。陸上で二枚貝の養殖が行われない理由の第一は、未だ二枚貝用の適切な人工餌料が無いことである。もし二枚貝用の適切な人工餌料が有れば、陸上での養殖が可能となり、天候の良し悪しにかかわらず計画生産、計画出荷が可能となり、防疫面でも色々な対策を講じやすい。
【0004】
また、市場に流通している二枚貝のうち、アサリやウバガイ(ホッキガイ)等のように砂泥中に生息している貝は出荷前に砂出しの為に無投餌で畜養を行っているが、その畜養期間中に肉が痩せるのが大きな問題となっている。もし、二枚貝の適切な人工餌料が有れば、畜養期間中にも投餌することができ、その結果として砂が無く、しかも肉が痩せていない貝が出荷できるようになる。
【0005】
更に、二枚貝の種苗生産にはナンノクロロプシスやワムシの培養用に市販されている淡水クロレラ等が利用できない為、キートセロス、パブロバ、イソクリシス等数種の植物プランクトンを人為的に培養して用いているが、長期間安定して高濃度で培養することが難しく、担当者は非常な苦労を強いられている。この点に着目して、近年培養したキートセロス(Chaetoceros calcitrans、Chaetoceros gracilis)を濃縮した製品も市販されるようになったが、非常に高価である為、大量に使用されるには至っていない。ましてや成貝の養殖や畜養などに使用できる状況にない。
【0006】
アマノリ属のスサビノリは日本における代表的な養殖海藻で、年間約40万トン生産されており、入手は容易である。また、栄養成分も表1(スサビノリの成分(乾物換算値))に示すように海藻の中では蛋白質に富み、多くの動物にとって必須アミノ酸であるイソロイシン(Ileu)、ロイシン(Leu)、リジン(Lys)、メチオニン(Met)、フェニルアラニン(Phe)、スレオニン(Thr)、トリプトファン(Trp)、バリン(Val)、ヒスチジン(His)、アルギニン(Arg)等の含量が多い。更に二枚貝も含まれる軟体動物には豊富に含まれているタウリン(Tau)も多く(約1000mg/100g乾物)含まれている。
【0007】
ビタミン類ではA、K等の脂溶性ビタミン、B1、B2、ナイアシン、葉酸、B12、C等の水溶性ビタミン、ミネラル類ではK、Mg、P、Fe等が多く含まれている。更に、脂肪酸組成では陸上動物においても海産動物においても重要な生理活性を有しているエイコサペンタエン酸(EPA、20:5、n=3)が占める割合が高い。
【表1】

【0008】
これまでに海藻を用いた魚介類用の餌料およびその製造法に関して、幾つかの提案がなされてきた。例えば、海藻類および/または卵類を含有し、かつ飼料粒子が10μm通過80%以上であることを特徴とする二枚貝用飼料(特許文献1)、海藻にアルテロモナス属の海洋細菌を作用させて一定の粒度組成のデトリタスにまで分解させ、その海藻デトリタスを魚介類用飼料に応用する技術(特許文献2)、海藻類を糖質分解酵素で単細胞性の粒子に変換するとともに乳酸菌及び/又は酵母により発酵させて調製した海藻デトリタスを魚介類用飼料に応用する技術(特許文献3)などが挙げられる。
【0009】
しかしながら特許文献1は、アオサ又はワカメを原料中に15質量%程度含有させる態様を示しているものの、他の一部の飼料原料との代替が可能であることを示しているに過ぎない。特許文献2は、コンブ又はアオサのデトリタスを調製し、アサリ幼生に摂食させた例が示されているものの、7日間という短期間に、アサリがそれを摂食したことを確認したに過ぎず、アサリの生育・栄養状態等に関しては何ら解析を行っていない。また特許文献3は、ワカメのデトリタスを調製し、アコヤガイ稚貝を12日間にわたる飼育試験を行った例が記されているものの、Chaetoceros飼料に対して34%の飼料効率を実現するに留まっている。
【特許文献1】特開平8-140588号公報
【特許文献2】特許第2772772号公報
【特許文献3】特開2002-101826号公報
【非特許文献1】荒木利芳:プロトプラスト単離技術、水産学シリーズ113、有用海藻のバイオテクノロジー、62-72、能登正浩編、恒星社厚生閣、1997
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記背景技術を考慮し、本発明においては、二枚貝の成育に有効であり、かつ安価で大量生産することが可能な二枚貝用餌料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
自然界では二枚貝は主として植物プランクトンを摂食して成長・再生産を行っているため、海藻類を二枚貝が摂餌できる大きさにし、充分消化吸収できるように細胞膜を除去すれば良いのではないかと考えた。課題を解決するための手段は、以下の通りである。
(1) 海藻のスフェロプラストを含有することを特徴とする、二枚貝用餌料。
(2) 海藻がスサビノリであることを特徴とする、前記(1)に記載の二枚貝用餌料。
(3) 二枚貝が、水管を有しない二枚貝及び水管を有する二枚貝で構成されることを特徴とする、前記(1)又は(2)に記載の二枚貝用餌料。
(4) 水管を有しない二枚貝がホタテ、水管を有する二枚貝がアサリであることを特徴とする、前記(3)に記載の二枚貝用餌料。
(5) ビタミン混合物が添加されることを特徴とする、前記(1)から(4)のいずれかに記載の二枚貝用餌料。
(6) 粉末油脂が添加されることを特徴とする、前記(1)から(5)のいずれかに記載の二枚貝用餌料。
(7) 粉末油脂の添加量が2.5〜10質量%であることを特徴とする、前記(6)に記載の二枚貝用餌料。
(8) 粉末油脂の添加量が5質量%であることを特徴とする、前記(7)に記載の二枚貝用餌料。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、ホタテ・アサリ等の二枚貝用餌料を安価で大量生産することが可能となり、また左記二枚貝用餌料を、ビタミン混合あるいは粉末油脂の添加により二枚貝に投餌することにより、栄養学的な欠陥を補充することが可能となり、二枚貝用餌料として有効である。更に生産者、消費者ともに大きな利益を得られるばかりでなく、二枚貝の陸上養殖という新しい事業が開拓できる可能性が有る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
<海藻の利用>
海藻には色々な種類があるが、二枚貝用餌料の原料として考えると、大量入手が容易で、栄養成分の組成が優れていることが最低限必要である。また、二枚貝が摂食する餌の大きさは2〜100μmφ、より好ましくは5〜50μmφであることから、海藻を構成する細胞をひとつひとつバラバラにしたプロトプラスト、あるいは数個程度の細胞が付着した大きさのスフェロプラストにまで分解してやらなければならない。よって、プロトプラストあるいはスフェロプラストの調製法が確立されている海藻であることも必要である。
【0014】
これらの理由からアマノリ属のスサビノリを供試海藻として選択することにした。なお、本試験ではスサビノリを選択したが、入手が容易で栄養成分が優れていて、プロトプラストの調製法が確立されている海藻であれば何でも良く、特にスサビノリに限定されるものではない。
【0015】
<スフェロプラストの調製法>
前述のようにスサビノリプロトプラストの調製法は荒木によって確立されている(非特許文献1)が、完全なプロトプラストにまで調製しようとするとコストが非常に高く、回収率も低く、実用的でない。二枚貝が食べられる餌料の大きさからして、プロトプラストではなく、スフェロプラストでも良いのではないかと考え、荒木のプロトプラスト調製法を簡略化したスサビノリのスフェロプラスト調製法を考案した。左記調製法の概要を図1に示す。なお、本法はプロトプラストの調製法よりもかなり安価で、回収率も高いことが明らかとなった。
【0016】
<スサビノリスフェロプラストの調製例>
約500gのスサビノリをカミソリなどで細切する。細切したスサビノリを1000ユニットのβ-1,4-マンナナーゼ(新日本化学)、50ユニットのアガラーゼ(ヤクルト薬品工業)および50ユニットのβ-1,3−キシラナーゼ(ヤクルト薬品工業)を1Lの海水に溶解した酵素液に投入し、20℃で20時間穏やかに撹拌する。その後、2000Gで20分間遠心分離し、沈下物を回収して凍結乾燥する。このようにして得られた乾燥物をスフェロプラストの乾燥物として二枚貝の飼育試験に用いた。なお、乾燥法には凍結乾燥法、スプレードライ法、低温送風乾燥法等色々があるが、栄養成分の熱変成をもたらさない程度の低温乾燥法であれば、いずれの方法でも良い。
【0017】
なお、乾燥物の方が保存性や取り扱いなどは楽であるが、後述のように餌料を二枚貝に投与する場合には、ミキサーで海水とともにホモジナイズするので、餌料の製造コスト、つまり経済性を優先させるのであれば、遠心分離後のスフェロプラスト濃縮物をそのまま使用しても良い。
【0018】
<スサビノリスフェロプラストを二枚貝用餌料に使用する態様>
海藻スフェロプラストを飼料又は餌料に使用する場合、特に二枚貝用の餌料として使用する場合には脂質及びビタミンを適宜補足するのが望ましく、通常は二枚貝用餌料の総重量に対し粉末油脂を2.5〜10質量%、望ましくは、並びにビタミンを1.0〜10質量%の範囲で配合するのが望ましい。なお、前記二枚貝用餌料は、ハマグリ、アサリ、シジミ、カキ、ホタテ、ムール貝等の二枚貝に適用可能であり、特に限定されない。
【実施例1】
【0019】
以下、スサビノリのスフェロプラストを使用した二枚貝の飼育例を紹介する。
[ホタテ稚魚の飼育]
表2に試験区と3種類の試験餌料の組成を示す。なお、試験区1は対照区(無投餌)である。スサビノリには豊富にビタミン類が含まれているが、未だ二枚貝のビタミン要求量が明らかにされていない事とスサビノリに限らず海藻一般には脂質が少なく、二枚貝用餌料としてはカロリーが不足する可能性がある事等から、スフェロプラストにビタミン混合と油脂を添加した区を設けた。それぞれの試験餌料はそれぞれの原料を混合した後、餌料の輸送・保存時にそれぞれの原料が分離しないように、コーヒーミルを用いて約30秒間粉砕して微粉にした。なお、この調製には必ずコーヒーミルを用いる必要は無く、処理中に加熱することが無く、しかも短時間で微粉にできる粉砕機であればどのような機種でも良い。
【表2】

【0020】
貝の飼育条件は以下の通りである。
飼育期間:2003年9月11日〜10月11日
場所:北海道野付郡別海町走古丹別海漁業協同組合ニシン種苗センター
供試貝:約0.5g/個のホタテ稚貝を1区当たり約200個体(199〜207)
飼育水槽:20L容プラスチック角型水槽にプラスチック製の丸型網籠を入れ、これにホタテ稚貝を収容。網籠の上端は水槽より約20cm高い(この大きさのホタテ稚貝はわずかな刺激で活発に遊泳し、水槽のみでは外に飛び出してしまうので、それを防ぐために水面より約20cm高くしてある)。水槽の端から砂濾過海水を流し、更にエアストーン1個を用いて通気し、溶存酸素を確保。排水は水槽からのオーバーフローによる(図2(a)及び(b))。
水温:水温調整は行わない。なお、水温は14.8℃から17.1℃の範囲で変動し、平均は16.1℃(自記水温計によって測定)。
投餌:1日に3gの試験餌料を2回に分けて投餌(午前に1.5g、午後に1.5g)。投餌時には通水を止め、通気のみ行う。投餌時間は1回2時間(1日に4時間)とし、2時間経過後、通水を再開。
【0021】
投餌は、試験餌料を正確に秤量し、ミキサーのカップへ入れ、適切量の海水をカップに入れ、30秒間ミキシングを行い、止水通気状態の飼育水槽へ入れ、2時間摂餌させた後、通水を再開するという手順で行った。なお、今回は設備の関係で止水状態にて投餌を行ったが、通水に一定量の割合で試験餌料を混合し、流水状態で常時摂餌可能にするのが望ましいと考えられる。
【0022】
飼育結果は表3に示す。貝の活力、生残率、肉体重比等の測定方法は下記の通りである。
活力:飼育試験終了時に各区の貝の開閉状態(頻度他)を観察するとともに、網籠の端を軽くたたいて刺激を与えた時の貝の遊泳状態(遊泳個体数やスピード他)を見て判断した。
生残率:飼育試験終了時に全個体メスで開殻して生死を調べ、生残率を求めた。
肉体重比:各区50個体を無作為に選択し、ペーパータオルで水気を切って総体重を測定した。その後、メスで開殻して肉を取り出し、50個体分まとめて総肉重量を測定した。両値から肉体重比を求めた。
総肉重量:各区の総貝重量と肉体重比を乗じて求めた。
増肉量:飼育試験終了時と開始時の総肉重量の差である。
【表3】

貝の活力は無投餌区が低く、投餌区が高かった。なかでも粉末油脂添加区が高かった。
【0023】
生残率は逆に無投餌区が高く、投餌区が低かった。これは無投餌区の貝に活力が無く、貝の開閉が緩慢で、刺激を受けた時の遊泳個体も少なかったことにより、お互いの咬み合い(開殻している貝の中に遊泳している貝が入り込み、両者とも死んでしまう)が少なかったことによる。投餌区間では、わずかではあるがスフェロプラストにビタミン混合あるいは粉末油脂を添加した区の方が高かった。肉体重比は無投餌区で小さく、投餌区で大きかった。投餌区間の比較では、スフェロプラスト単独区よりビタミン混合添加区が大きく、更に粉末油脂添加区の方が大きかった。
【0024】
増肉量は無投餌区では負の値を示しており、貝が飼育開始時より痩せていることが判る。投餌区はいずれの区もプラスの値を示しており、飼育試験開始時より成長している。スフェロプラストへのビタミン混合の添加にも効果が認められるが、粉末油脂の添加効果の方が著しく大きかった。
【実施例2】
【0025】
[アサリ成貝の飼育−1]
前項のホタテ稚貝同様、アサリ成貝でも飼育試験を行った。
試験区、試験餌料および飼育条件はホタテ稚貝と同じであるが、供試貝は平均体重約23g/個のアサリ成貝で、各区20個体ずつ用いた。
飼育試験終了時の貝の活力は、水管の状態、貝をつついた時の閉殻のスピード、取揚時に出水管より吹き出す水の状態などで判断した。
肉体重比の測定には全ての貝を用い、個体別に調べた。なお、アサリの場合はホタテ稚貝と違って殻内に海水を相当量含んでいたので、肉を取り出して金網で水を切った後、肉重量を測定した。飼育結果は表4に示した。
【表4】

【0026】
生残率はホタテ稚貝と違って、全ての区で100%であったが、これはアサリ成貝は遊泳することが無く、従ってお互いに咬み合いをすることもないことによる。貝の活力、肉体重比、増肉量等の結果は全てホタテ稚貝の結果と同じ傾向を示した。すなわち、無投餌区は活力が無く、肉体重比も小さく、飼育期間中に貝は痩せていた。一方、投餌区では活力が有り、肉体重比も大きく、貝は成長していたが、スフェロプラストへの添加効果はビタミン混合よりも粉末油脂の方が著しく大きかった。なお、飼育試験終了日の前日に、供試貝を採取した場所と同じ場所から試験貝とほぼ同じ程度の大きさの天然アサリを採取し、試験貝と同じ方法で肉体重比を求めた。その結果、天然貝の肉体重比は投餌区より小さく、スサビノリのスフェロプラストはアサリの餌料として優れていることが判った。
【実施例3】
【0027】
[アサリ成貝の飼育−2.粉末油脂の至適添加量]
前項のアサリ成貝の飼育試験で、スサビノリスフェロプラストには油(粉末油脂)の添加が必須で、その添加効果は非常に大きい事が証明できた。よって、本試験では、スフェロプラストへの粉末油脂の添加量を数段階に設定した餌料を作成し、これらの餌料でアサリ成貝を飼育し、粉末油脂の至適添加量を求めた。
【0028】
試験区と試験餌料の組成を表5に示した。粉末油脂の添加量は0、2.5、5、7.5および10%とした。なお、比較の為に無投餌区も設けた。飼育期間は2003年11月5日〜12月4日、供試貝は平均体重約20g/個のアサリ成貝を各区20個体、水温は7.3℃から12.8℃の間を変動し、平均は9.8℃であった。これら以外の飼育条件ならびに飼育餌料の調製法はホタテ稚貝の飼育試験ならびに前項のアサリ成貝の飼育試験で記した内容と同じである。
【表5】

【0029】
飼育結果は表6に示す。活力は無投餌区のみが弱かったが、他の投餌区間では差がなかった。生残率は2.5%区と10%区が95%で、両区とも1個体ずつ死亡したが、死亡貝を調べると足部に大きな傷が有り、これが死因であると判断された。この傷は飼育試験開始時に干潟で供試貝を採取した時のショックで、足部を貝殻ではさんで傷を受けたものであり、供試餌料の不具合に起因するものではない。
【表6】

【0030】
肉体重比は無投餌区で明らかに低かったが、飼育水温が前回の試験より低かった為か、投餌区間では明確な差は認められなかった。しかしながら、肉部の水分含量を測定して乾物の肉体重比を求めると、無投餌区が著しく低いのは当然であるが、投餌区間でも違いが認められ、0%区と2.5%区が低く、他の3区はほとんど同じであった。
【0031】
なお、開殻時に指でさわって調べた貝肉の物性では、粉末油脂の添加量が多い7.5%区と10%区では他区より明らかに肉、特に内臓部の肉が軟らかかった。また、無投餌区の肉は7.5%と10%区よりしっかりしていたが、0%、2.5%、5%よりは多少軟らかかった。以上の結果から、二枚貝用餌料としてのスサビノリスフェロプラスト餌料への至適粉末油脂添加量は5%(餌料の脂質含量として10%)であることが証明できた。
【産業上の利用可能性】
【0032】
スサビノリのスフェロプラストは、ホタテ・アサリ等の二枚貝用餌料として有効である。スサビノリスフェロプラスト餌料を与えることにより、陸上飼育でも天然の貝より優れた成長を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】スサビノリスフェロプラスト調製法を示す。
【図2】貝の飼育装置の説明図を示す(a、b)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海藻のスフェロプラストを含有することを特徴とする、二枚貝用餌料。
【請求項2】
海藻がスサビノリであることを特徴とする、請求項1に記載の二枚貝用餌料。
【請求項3】
二枚貝が、水管を有しない二枚貝及び水管を有する二枚貝で構成されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の二枚貝用餌料。
【請求項4】
水管を有しない二枚貝がホタテ、水管を有する二枚貝がアサリであることを特徴とする、請求項3に記載の二枚貝用餌料。
【請求項5】
ビタミン混合物が添加されることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の二枚貝用餌料。
【請求項6】
粉末油脂が添加されることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の二枚貝用餌料。
【請求項7】
粉末油脂の添加量が2.5〜10質量%であることを特徴とする、請求項6に記載の二枚貝用餌料。
【請求項8】
粉末油脂の添加量が5質量%であることを特徴とする、請求項7に記載の二枚貝用餌料。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−25748(P2006−25748A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−212399(P2004−212399)
【出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【出願人】(000103840)オリエンタル酵母工業株式会社 (60)
【Fターム(参考)】