新規な光活性化生理活性物質、その光活性化方法、活性阻害方法およびそれを用いた光線力学療法。
【課題】 新規な光活性化生理活性物質、その光活性化方法、活性阻害方法およびそれを用いた光線力学療法を提供する。
【解決手段】 ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマの培養物の抽出物である光活性化生理活性物質、350〜500nmまたは575〜650nm波長の光を使用する当該光活性化生理活性物質の光活性化方法、一重項酸素のラジカル消去剤を使用する当該光活性化生理活性物質の活性阻害方法、および当該光活性化生理活性物質を使用する光線力学療法。
【解決手段】 ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマの培養物の抽出物である光活性化生理活性物質、350〜500nmまたは575〜650nm波長の光を使用する当該光活性化生理活性物質の光活性化方法、一重項酸素のラジカル消去剤を使用する当該光活性化生理活性物質の活性阻害方法、および当該光活性化生理活性物質を使用する光線力学療法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な光活性化生理活性物質、その光活性化方法、活性阻害方法およびそれを用いた光線力学療法に関し、詳しくは可視光線によって活性化する光活性化生理活性物質に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光線力学療法(PDT:photodynamic therapy)は光で活性が誘導される光活性化生理活性物質を利用した治療法であり、単独では何ら活性を持たない光活性化生理活性物質とその励起光の組み合わせにより行う、選択性に優れた治療法である。光線力学療法は腫瘍組織に対する選択的治療の他、ニキビなどの皮膚疾患及び表在性の種々の疾患の治療に利用されている。
【0003】
光線力学療法の歴史は古く、1903年にTappeinerらによって、エオジン色素と太陽光およびランプ光にて、腫瘍が壊死したと報告されている。それ以来、現在に至るまで光線力学療法の新たな応用と利用できる光活性化生理活性物質の開発が行なわれているが、これまでに見出されている光活性化生理活性物質のほとんどがポルフィリン誘導体あるいはその前駆物質である(特許文献1〜2)。光線力学療法は選択性に優れ、副作用が少ない等の利点を有している。また、利用する光も比較的安全な可視光線であり、紫外線のように皮膚に障害を起こす心配もない。
【特許文献1】特開平9−255682号公報
【特許文献2】特開平11−29573号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、光線力学療法の更なる有効性の追求には、利用できる光活性化生理活性物質の発見開発が必要である。
【0005】
そこで本発明の目的は、新規な光活性化生理活性物質、その光活性化方法、活性阻害方法およびそれを用いた光線力学療法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、赤潮プランクトンであるヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ(Heterocapsa circularisquama)の培養物をアルコール抽出物、更には種々のクロマトグラフィーにより精製された該抽出物が可視光線によって活性化し、溶血および細胞毒性等の生理活性を実現することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明の光活性化生理活性物質はヘテロカプサ・サーキュラリスカーマの培養物の抽出物であることを特徴とするものである。好ましくは、前記抽出物がメタノールにより抽出された抽出物であり、また、ゲルクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィーおよび液体クロマトグラフィーからなる群のうち少なくとも一つを用い精製を行った光活性化生理活性物質である。更に好ましくは、分子量が586または602である光活性化生理活性物質である。
【0008】
また、本発明の光活性化生理活性物質の光活性化方法は350〜500nmまたは575〜650nmの波長の光を使用することを特徴とするものである。更に、本発明の上記光活性化生理活性物質の活性阻害方法は一重項酸素のラジカル消去剤を使用することを特徴とするものである。なお、一重項酸素のラジカル消去剤はヒスチジンを好適に使用することができる。更にまた、本発明の光線力学療法は上記本発明の光活性化生理活性物質を使用することを特徴とするものである。
【0009】
なお、本発明の光活性化生理活性物質を生成する赤潮プランクトンであるヘテロカプサ・サーキュラリスカーマはカキなどの二枚貝に対して強い毒性を発現することが知られている。ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマは1988年高知県浦の内湾で発見され、分類学上の位置づけは以下の通りである。
【0010】
門(division):渦鞭毛植物門(DINOPHYTA)
網(class):渦鞭毛藻網(DINOPHYCEAE)
目(order):ペリディニウム目(PERIDENALES)
科(family):ペリディニウム科(PERIDINIACEAE)
属(genus):ヘトロカプサ属(Heterocapsa)
【0011】
細胞は洋梨型で、大きさは20.0μm〜28.8μm、幅は13.8μm〜20.0μmである。細胞の外形はほぼ中央部を走る構造で円錐形の上殻と半球状の下殻とに分かれている。
【0012】
渦鞭毛藻網のペリディニウム目に属する種類では、細胞表面がセルロース質の鎧板で覆われており、鎧板の上には丸い鱗片がびっしりとあり、細胞内にはピレノイドにつながった葉緑体を1個有し、楕円形で大きな核は細胞の左側に位置する。本種は、細胞鱗片の有無と形状、鎧板配列、核の形と位置、細胞外形などの特徴の組み合わせで比較的簡単に本邦周辺海域に分布する同属の他種から区別できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の光活性化生理活性物質は、比較的低分子化合物で、熱安定性にもすぐれ、光非存在下では全く活性は示さないが、可視光線によって活性化し、溶血やHeLa細胞(ヒト癌細胞)等に対する強い細胞毒性等の生理活性を実現し、光線力学療法にも有効である。その作用は光によって完全にコントロール可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態につき、具体的に説明する。
本発明の光活性化生理活性物質の生成に使用するヘテロカプサ・サーキュラリスカーマの培養に使用する培地は、好ましくは海水を主体とした一般的な海洋性プランクトン用培地であり、より好ましくは、ESM(Erd-Schreiber modified)培地である。また、培養の条件としては、光照射は好ましくは3000〜6000ルックスであり、より好ましくは4000ルックス程度である。また、温度に関しては好ましくは24〜28℃であり、より好ましくは27℃程度である。培養時間は培養条件により適宜決定することとなるが、好ましくは、3〜7日間である。
【0015】
本発明の光活性化生理活性物質のヘテロカプサ・サーキュラリスカーマの培養物からの抽出方法は特に制限されるものではないが、培養物を抽出遠心分離によりプランクトン細胞を回収し、得られた細胞から溶媒により抽出することができる。この際、用いる溶媒としては親水性を有するものであり、エタノールおよびメタノールを好適に用いることができ、特に好ましくはメタノールである。なお、抽出する際、超音波処理を行うことがより好ましい。
【0016】
得られた抽出物の精製方法は特に制限されるものではないが、不溶物を除去後、ゲルクロマトグラフィー(GC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)または液体クロマトグラフィー(HPLC)等を好適に用いることができる。各種クロマトグラフィーは市販のものにより、定法に従い精製することができる。なお、精製物を高純度にするためには、上記クロマトグラフィーを上記記載順に順次使用し、精製することが好ましい。ゲルクロマトグラフィーはSephadex LH-20を好適に使用できる。HPLCによる精製を複数回行うことより、純度を高めることが可能であり、分子量586および602の化合物を得ることができる。
【0017】
次に、本発明の光活性化方法は350〜500nm、好ましくは450nm程度、または575〜650nm、好ましくは630nm程度の波長の光を使用し、前記本発明の光活性化生理活性物質を活性化するものである。ここで、前記分子量602の化合物の光活性化には、350〜480nm、好ましくは420nm程度の波長の光を使用することができる。
【0018】
また、本発明の光活性化生理活性物質の活性阻害方法は、一重項酸素のラジカル消去剤を使用するものであるが、使用する一重項酸素のラジカル消去剤としてはヒスチジンを好適に使用することができる。これにより、本発明の光活性化生理活性物質は、光照射により、一重項酸素を産生していることが示唆される。
【0019】
更に、本発明の光線力学療法は上記本発明の光活性化生理活性物質を使用するものであり、腫瘍組織に対する選択的治療の他、ニキビなどの皮膚疾患及び表在性の種々の疾患の治療に利用することが可能となる。
【実施例】
【0020】
以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明を行う。
ESM培地の調製
ESM(Erd−Schreiber modified)培地の調製は、先ず、天然海水1000mLに対しNaNO3を120mg、10mg/mLのVitamin B1、1mg/mLのVitamin B12、0.1mg/mLのBiotin、26mg/mLのEDTA−Fe(III)、33mg/mLのEDTA−Mn(II)を夫々10μL、Trisを1g加えた後、K2HPO4を5mg加えた。次に5NのHCl溶液でpHを8.2付近に調整し、メンブランフィルター(0.45μm)で濾過し、1000mLサンボトルに移し入れオートクレーブ(121℃、15分間)で処理しESM培地とした。
【0021】
ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマの培養
三重県英虞湾で採取されたヘテロカプサ・サーキュラリスカーマを用い、培養温度は26℃、照明は白色蛍光灯を用い、照度は3000ルックスとし、照明時間は12時間明期12時間暗期のサイクルで培養を行った(三洋電機メディカシステム(株)製グロースキャビネット MLR−350H)。培養は耐熱性の100mLフラスコを用い、通気性のシリコン栓をしてオートクレーブ(121℃、15分間)で処理した後、乾燥させて使用した。先ず、フラスコに50mLずつESM培地を無菌的に分注した。培地へのヘテロカプサ・サーキュラリスカーマの植え付け方法は、約20×104cells/mLのヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ細胞浮遊液1mLをピペットを用いて無菌的に植え継いだ。なお、この際、培地を26℃に保った。
【0022】
溶血活性試験
本発明における溶血活性試験は以下の手順に従い行った。丸底96wellプレートを用い、ピペッティングによる2段階希釈をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で行い、試料に濃度勾配をつけたものを50μL/wellずつ用意した。そしてPBSで4%に調整したウサギ赤血球(日本バイオテスト研究所製)を50μLずつ加えた。なお、血液は、先ず余分な血清蛋白等を除去するためにPBSで遠心分離にて充分洗浄を行った。このプレートを、グロースキャビネットの中(3000または4000ルックス、26℃)に静置し、3〜5時間後に、4℃にて2,000rpmで5分間遠心し、上清70μLを平底96wellプレートに移した。常法によりマイクロプレートリーダー(570nmの吸光度)により溶血活性を測定した。なお、光照射を行わない実施例はアルミホイルで遮光処理を行った。また、溶血活性を測定する際、PBSのみを0%溶血、最終濃度1%Triton X−100を加えたものを100%溶血の指標とした。その他の物は相対度数で溶血活性を表した。試料によっては、試料を溶解させている溶媒を最終濃度1%に調整しコントロールとして用いた場合もある。
【0023】
α−MEM+10%FCS培地の調製
細胞培養に用いた培地であるα−MEM Medium(Alpha Modified Eagles Medium)の調製はオートクレーブ(121℃、15分間)後、室温に戻した超純水にα−MEM粉末(ICN社製)を溶解させ、核酸・抗生物質を加え、濾過滅菌(0.22μm)した。なお、組成は、α−MEMを一箱、チミジン、シチジン塩酸塩、アデノシン、グタノシンを夫々10mg、ベンジルペニシリンカリウム、硫酸ストレプトマイシンを夫々100mg、炭酸水素ナトリウムを2g、純水1000mLである。また、このα−MEM Mediumに56℃で30分間熱処理(補体不活化)した牛胎児血清(FCS)(Biochemical industries社製)を10%(v/v)添加したものをGrowth Medium(α−MEM+10%FCS)とした。
【0024】
細胞(HeLa、L929、Vero、CHO、XC、MDCK)の培養
実験に用いた細胞は、MDCK(イヌの腎臓由来細胞)、L929(マウス由来マクロファージ細胞)、XC細胞(ラットの癌細胞)、HeLa細胞(ヒトの子宮癌由来細胞)、CHO細胞(チャイニーズハムスターの子宮由来細胞)、Vero細胞(サルの腎臓由来細胞)であり、細胞はすべてATCC(American Type Culture Collection)から購入したものを使用した。細胞の培養法は、先ず、最終濃度で10%ジメチルスルホキシドおよび10%FCSが加えられたα−MEMで−80℃凍結保存されているセラムチューブ中の1.5mL細胞懸濁液を滅菌ピペットで15mL滅菌チューブに移した。このチューブにα−MEMを加え、2,000rpmで10分間の遠心をした。その上清をアスピレーターで除き、新しい培地を5mL加え細胞を分散させ、培養フラスコ(25cm3)全体に広げた後、37℃、5%CO2インキュベーターで培養を行った。24時間後、細菌等の混入がないこと、細胞がフラスコの底に付着していることを確認して培地交換あるいは継代培養を行った。継代培養法は、フラスコ中の培養液をアスピレーターで取り除き0.2%トリプシン・0.05%EDTAを含むPBS溶液を5mL培養フラスコに入れ密栓し、室温で約1分間静置後、フラスコ中の溶液を取り除き37℃、5%CO2インキュベーターで2分間静置した。その後、α−MEM+10%FCSでピペティッングし、細胞をフラスコ底面からはがした。その細胞を新しいフラスコに移し培養した。なお、細胞の保存は、凍結保存法を用いた。細胞を培養フラスコよりはがし、あらかじめ10%ジメチルスルホキシドを含むα−MEM+10%FCSに細胞を懸濁させたものを約1.5mLセラムチューブに入れ−80℃で保存した。
【0025】
細胞毒性試験
24wellプレートを用意し、200cells/well・0.5mLとなるようにα−MEM+10%FCSで調製したHeLa細胞をプレートへ0.5mLずつ入れて、37℃、5%CO2インキュベーターに静置し、細胞がプレートに付着するまで培養した。なお、プレートの中に細胞を入れると一カ所に集まるため軽く攪拌を行った。細胞数を計算するには、血球計算版(KAYAGAKI社製 EKDS・Bright−line)を用いた。α−MEM+10%FCSをアスピレーターで取り除き、1.0μg/mLに調整した試料と交換した。ピペッティングによる2段階あるいは3段階希釈をPBSで行い、試料に濃度勾配をつけたものを400μL/wellずつ用意した。
【0026】
プランクトンを培養している人工培養機の中に静置し、光処理を行った。30分後、PBSをアスピレーターで取り除き、α−MEM+10%FCSを0.5mLずつ入れ、37℃・5%CO2インキュベーターに静置し、コロニーが形成されるまで3、4日間培養した。コロニー形成を確認した後、培地を捨て1%メチレンブルーを含む50%メタノールを加え10分間静置した。その後、染色液を洗い流し、染色されたHeLa細胞のコロニー数を数えた。カウントは目視で行い、試料を入れてないものの値をコントロール(100%)とし、試料処理した場合の値を相対度数で表した。なお、48wellプレートを用いた場合は、細胞数100cells/well・0.2 mLで利用し、操作は同様の手順で行った。
【0027】
ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ細胞からのメタノール抽出法
ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマの細胞が約20×104cells/mLの状態になった時に、175mLファルコンチューブを使用し、ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマを培養液と一緒に4℃にて3,500rpmで5分間遠心し上清を捨て、ピペッティングを行い、1.5mLのエッペンチューブに回収した。それを、4℃にて15,000rpmで5分間遠心し、アスピレーターを用い、完全に上清を取り除いた。そこへ細胞浮遊液から得られた細胞ペレットに対し、1.5mLの割合でメタノールを加え、常温で1分間、ソニケーションにて細胞を破壊する。それを4℃にて15,000rpmで10分間遠心し、上清を粗抽出液とした。十分に抽出できない場合はさらにメタノールを加え、同様の操作を行った。粗抽出液の保存はエッペンチューブに入れたまま、冷凍庫に保管した。
【0028】
メタノール抽出物のゲルクロマトグラフィー(GC)
50gのSephadex LH−20をメタノールの中に入れ、3時間放置して膨潤させた。この間に溶液を攪拌してデカンテーションにより、微細な粒子をすべて取り除いた。それを真空デシケーターの中に入れ、気泡を取り除き、ゲル懸濁液をカラム(300×15mm)に注ぎ入れ、懸濁液がゆっくりと流れるようにしながら重力でゲルが沈殿するのに任せ、ゲルのカラムを作った。カラム内に気泡が入らないようにするために、ゲル量に比して2〜3倍量のメタノール(溶媒)を用いた。メタノール抽出物をカラムの上に加え、メタノールで溶出した。溶出液は1〜2.0mL/tubeにて分取した。この実験の操作は全て低温室にて行った。なお、各試験管について、吸光度(分光光度計U−2001を使用)と溶血活性(メタノールの最終濃度1.0%)を測定した。
【0029】
GC後の画分の薄層クロマトグラフィー(TLC)
本実施例おいては上昇法による一次元展開により行った。展開槽に60〜100mLの溶媒(クロロホルム:メタノール=6:1)を入れ、12時間放置し、槽内の溶媒蒸気を平衡にした。キャピラリーに試料(GCで得られた画分)を取り、試料を薄層プレート(シリカゲル)にスポットした。それを展開槽の中に立てかけ蓋を閉じて、溶媒をプレートの上端から2cm内外のところまで上昇させた。薄層プレートを展開槽から取り出し、ドラフト内で溶媒を蒸発させた。展開されたスポットをゲルごと削り取り、メタノールで抽出した。4℃にて15,000rpmで10分間遠心を行い、上清を回収した。
【0030】
TLC後の光活性化生理活性物質の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)
薄層クロマトグラフィーにより得られたものをHPLC試験液とし、逆相系高速液体クロマトグラフィー(Waters 625 LC System/486 Tunable Absorbance Detector)を用い分離し、Waters allianceを用い精製純度を測定した。
【0031】
ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ細胞の成長曲線およびメタノール抽出物の溶血活性
500mL三角フラスコに450mLのESM培地を入れ、オートクレーブ(121℃、15分間)で滅菌処理を行った。そこにヘテロカプサ・サーキュラリスカーマを細胞数100〜200cells/mLとなるように植え継いだ。次の日、細胞数をカウントした後、20mLをファルコンチューブに取り出し遠心を行った(2,000rpm、4℃、5分間)。上清をアスピレーターで取り除き、0.5mLのメタノールを加え抽出を行った。その抽出液の溶血を測定した。一日置きに同様の操作を行い、ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマの成長曲線およびそれに対する抽出液の溶血活性を調べた。その結果を図1に示した。図中、(●)はヘテロカプサ・サーキュラリスカーマの細胞数、(□)は光照射下での、(■)は暗所での溶血活性を示す。細胞の増殖と共に抽出液の溶血活性が上昇し、光がある場合にのみ活性が発現していることが分かる。また細胞が減少するとともにメタノール抽出物の溶血活性が低下した。これらの結果から、溶血活性物質は対数増殖期の後期から定常期の間に最も効率よく得られることが分かった。
【0032】
メタノール抽出物のゲルクロマトグラムおよび溶血活性
ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ細胞のメタノール抽出物をSephadex LH−20を用いて、ゲルクロマトグラフィーを行った。溶出した物について、吸光度(450nm)と各フラクションの溶血活性を測定した。その結果を図2に示した。450nmの吸光度により2つのピークを検出することができ、溶出時間の遅かったピークと溶血活性が一致し、緑色を呈していた。一方、溶血活性が認められなかった最初のピークの前半部分には血液の凝集が見られ、褐色を呈しており、後半の部分では濃い緑色を呈し溶血活性と血液の凝集は見受けられなかった。これらをもとに5つの画分に分けた。それぞれF−1、F−2、F−3、F−4、F−5とした。
【0033】
メタノール抽出物のゲルクロマトグラフィー精製物の溶血活性および細胞毒性
溶出パターンと溶血活性をもとに5個の画分に分けたF−1、F−2、F−3、F−4、F−5を96wellプレートを用い、二段階希釈を作成した後、溶血活性試験を常法により行った。その後、プランクトンを培養しているインキュベーター内で光照射(4000ルックス)を5時間行った。その結果を図3に示した。図中、(○)、(▲)、(□)、(●)、(△)は順にF−1、F−2、F−3、F−4、F−5を表す。溶血活性はF−4の画分のみ濃度依存的に見られ、その他の画分では見られなかった。また、褐色を呈しているF−2の画分は、濃度依存的に凝集作用が見られた。
【0034】
また、F−1〜F−5について24 wellプレートを用い、二段階希釈を作成しHeLa細胞に対する細胞毒性をコロニー形成阻害法より行った。その後、プランクトンを培養しているインキュベーター内で光照射(4000ルックス)を30分間行った。その結果を図4に示した。図中、(○)、(▲)、(□)、(●)、(△)は順にF−1、F−2、F−3、F−4、F−5を表す。溶血と同様にF−4の分画のみで濃度依存的に細胞に対する毒性が発現された。なお、F−4の溶血活性および細胞毒性ともに、光依存性であり、遮光下では両活性は全く発現されなかった。
【0035】
GC後の画分の薄層クロマトグラフィー(TLC)
F−4をシリカゲルプレートにおける薄層クロマトグラフィーにより、更に精製した。クロロホルム:メタノール=6:1の展開溶媒が70mL入った展開槽および、F−4をスポットしたシリカゲルプレート(MERCK社製・Silica Gel60・10×20cm・層厚0.25)を用い、上昇法により行った。その結果、Rf値が0.62、0.08、0.0に分離し、夫々を回収した。Rf値が0.62をT−2、0.08をT−1、0.0をT−0とする。
【0036】
メタノール抽出物のTLC精製物の溶血活性および細胞毒性
メタノールで抽出したT−1、T−2は、夫々300μL、700μLまで濃縮した。T−0はコントロールとして用意した。T−0、T−1、T−2を96wellプレートを用い、二段階希釈を作成し溶血活性試験を常法により行った。その後、プランクトンを培養しているインキュベーター内で光照射(4000ルックス)を5時間行った。その結果を図5に示した。図中、(○)はT−0、(△)はT−1、(□)はT−2を表す。溶血活性はT−1、T−2部分で濃度依存的に見られたが、T−2の方がより強く活性があった。コントロールとして用意したT−0には全く活性は見られなかった。
【0037】
また、T−0、T−1、T−2を24wellプレートを用い、二段階希釈を作成しHeLa細胞に対する細胞毒性をコロニー形成阻害法より行った。その後、プランクトンを培養しているインキュベーター内で光照射(4000ルックス)を30分間行った。その結果を図6に示した。図中、(●)はT−0、(▲)はT−1、(■)はT−2を表す。溶血と同様にT−1、T−2で濃度依存的に細胞に対する毒性が発現され、T−2の方がより強い毒性があった。
【0038】
TLC後のメタノール抽出物(T−2)の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)
Puresil C−18カラム(4.6×150mm)を用いてTLC後の溶血活性物質を高速液体クロマトグラフィーにて精製を行った。サンプルは溶血活性、細胞毒性ともに高い活性を示したT−2を用いた。T−2を80%メタノールとなるように超純水で調整した。なお、HPLCの溶媒は80%メタノールを使用した。結果を図7に示す。早い段階で全て溶出され、450nmで3つのピークを検出できた。それぞれピークの部分で回収し、H−1、H−2、H−3とした。
【0039】
メタノール抽出物のHPLC精製物の溶血活性および細胞毒性
H−1、H−2、H−3(80%メタノールに溶解)の部分を夫々回収し、96wellプレートを用い、二段階希釈を作成し溶血活性試験を常法により行った。プランクトンを培養しているインキュベーター内で光照射(4000ルックス)を5時間行った。その結果を図8に示した。図中、(○)はH−1、(△)はH−2、(□)はH−3を表す。H−1、H−2、H−3すべてに濃度依存的に溶血活性は見られ、その中でもH−2、H−3がH−1に比べて高い溶血活性がみられた。
【0040】
また、H−1、H−2、H−3を24wellプレートを用い、HeLa細胞に対する細胞毒性をコロニー形成阻害法より調べた。まず二段階希釈を作成し、その後、プランクトンを培養しているインキュベーター内で光照射(4000 ルックス)を30分間行った。その結果を図9に示した。図中、(●)はH−1、(▲)はH−2、(■)はH−3を表す。溶血と同様にすべてに濃度依存的に細胞に対する毒性が発現され、H−2、H−3がH−1に比べて高い細胞毒性がみられた。
【0041】
HPLC後のメタノール抽出物のリクロマト
次に、H−1、H−2、H−3をODS C−18(4.6×250mm・Finepak SIL 300C18T−7)カラムで、再度HPLCに供し、夫々の分離を試みた。遠心式エバポレーターを用い、80%メタノールに溶けているH−1、H−2、H−3の溶媒を蒸発させ、そこへ70%アセトニトリル(超純水で調整)を同量加え夫々を溶解させた。カラム内を70%アセトニトリルで平衡化し、それぞれ700μLのH−1、H−2、H−3をインジェクトし、測定した。H−1、H−2、H−3のクロマトグラムを図10に示した。H−1は細かくピークが分かれたのに対し、H−2、H−3は溶出時間の異なった位置に大きなピークを1つずつ検出できた。H−2、H−3のピークの部分を回収し、溶血活性と細胞毒性の試料とした。なお、夫々、H2−aとH3−aとした。
【0042】
メタノール抽出物のリクロマト精製物の溶血活性および細胞毒性
H2−a、H3−a(70%アセトニトリル)を遠心式エバポレーターで、溶媒を完全に除去した。そしてH2−a、H3−aの重量を測定し、1.0mg/mLとなるようジメチルスルホキシドに溶解させた。96wellプレートを用い、二段階希釈を作成し溶血活性試験を常法により行った。光照射(4000ルックス)はプランクトンを培養しているインキュベーター内で5時間おこなった。その結果を図11に示した。図中、(○)はH2−a、(△)はH3−aを表す。H2−a、H3−aともに活性にはあまり差は見られなかったが、若干H2−aの方が高かった。
【0043】
また、H2−a、H3−aを24wellプレートを用い、HeLa細胞に対する細胞毒性をコロニー形成阻害法より調べた。まず二段階希釈を作成し、その後プランクトンを培養しているインキュベーター内で光照射(4000ルックス)を30分間行った。その結果を図12に示した。図中、(●)はH2−a、(▲)はH3−aを表す。溶血と同様にH2−a、H3−aともに濃度依存的に細胞に対する毒性が発現され、溶血活性と同様にH2−aがH3−aに比べて若干高い細胞毒性がみられた。H2−aはH3−aより溶血活性、細胞毒性ともに1.2〜1.4倍比活性が高かった。
【0044】
メタノール抽出物のリクロマト精製物の純度および分子量測定
HPLCとLC/MS(Liquid Chromatography/Mass Spectrometry)での純度測定を行った。Waters alliance (Waters2695 Sepalation Module/Waters 2996 Photodiode Array Detector)を用い、カラムはODS C−18(4.6×250 mm・Finepak SIL 300C18T−7)を使用した。H2−a、H3−aを逆相系による溶媒A(超純水で0.1%のトリフルオロ酢酸(TFA)を先に作成し、それを用いアセトニトリルを60%に調整)から溶媒B(100%アセトニトリル)へのリニアグラジエントで行った。最初は0.1%のTFAを含む60%のアセトニトリルを10分間流し、40分後に100%のアセトニトリルになるようにグラジエントを設定した。その結果を3Dのクロマトグラムとして図13に示した。X軸に溶出時間、Y軸に吸光度、Z軸に波長をとった時の3Dのクロマトグラムを解析すると、H3−aはH2−aの溶出時間と同じ所に小さいピークを確認でき、H2−aが少し含まれることが分かった。それに対しH2−aは単一なピークを検出することができ、H2−aは広範囲の波長領域で立体的単一のピークとして溶出されていた。
【0045】
また、同様の条件でLC/MSに供した。430nmの吸光度のクロマトグラムと特定のマスナンバーでのマスクロマトグラムでH2−aとH3−aをそれぞれ分析すると、H3−aはいくつかの物質が含まれてはいるがほぼ単一なものに精製されていることが分かった。それに対し、H2−aは同じ溶出時間のところでピークを確認できたことから、単一なものに精製できたことが分かった。またマススペクトルよりH2−aの分子量は602で、H3−aは586という結果になった。この分子量の差は16であることからH3−aはH2−aのデオキシ体であると推測される。H2−aとH3−aのマススペクトルの結果を図14に示した。以上の分析の結果から、H2−aは高純度に精製されたことが分かった。一方、H3−aは、わずかにH2−aと夾雑物の混入が確認された。
【0046】
MDCK、L929、XC、HeLa、CHO、Vero細胞に対する細胞毒性 MDCK(イヌの腎臓由来細胞)、L929(マウス由来マクロファージ細胞)、XC細胞(ラットの癌細胞)、HeLa細胞(ヒトの子宮癌由来細胞)、CHO細胞(チャイニーズハムスターの子宮由来細胞)、Vero細胞(サルの腎臓由来細胞)を用いH2−aの細胞毒性を検討した。H2−aを最終濃度1.0μg/mLに調整し、二段階希釈を作成した。24wellプレートに200cells/wellとなるようそれぞれの細胞を付着させ、細胞毒性をコロニー形成阻害法より行った。プランクトンを培養しているインキュベーター内で光照射(4000ルックス)を30分間行った。その結果を図15に示した。図中、(○)はMDCK、(△)はL929、(□)はXC、(●)はHeLa、(▲)はCHO、(■)はVeroを表す。細胞の種類によって毒性にはそれほど差はなかったが、Vero細胞が最も高い感受性を示した。
【0047】
HeLa細胞に対する形態変化の顕微鏡観察
35mmプラスチックディッシュに1×104cells/mLとなるようにα−MEM+10%FCSで調製したHeLa細胞を準備し、細胞が付着するまで培養した。細胞が付着したのを確認した後、H2−aを0.1μg/mLとなるようにPBSで調整したものを培養液と交換した。そこへ光を照射しながら(2000ルックス)、細胞の時間経過(0分から30分間)ごとの形態変化を顕微鏡で観察を行った。その結果を図16に示した。図中、(A)はPBS中の細胞、(B)はH2−aを含まず、ジメチルスルホキシドをPBSに0.2%となるように調整したもの、(C)はH2−aを添加し、光を照射したもの、(D)はH2−aを添加し、遮光処理したものである。これらの結果からH2−a添加のみでは全く形態変化は誘導されず、光照射がその作用発現に必須であることが分かった。H2−aの存在下で、そこへ光照射された細胞は、まずプレート面から徐々に離脱し、やがて球状化した。引き続いて細胞の膨化が起こり、その後細胞は死滅した。この様な形態変化から、細胞膜の損傷に伴う、膜透過性が影響を受けていると推測された。
【0048】
吸収スペクトルおよび各波長での溶血活性と細胞毒性
濃縮したF−4をPBSで2%となるように調整し、吸収スペクトルを測定した(200〜800nm)。比較例として使用するフェオホルバイドa(Pheophorbide a タマ生化学(株)製)は水難溶性であったため、ジメチルスルホキシドを用いて1mg/mLとなるように溶解させた。1mg/mLに調整したフェオホルバイドaをPBSで5μg/mLとなるように調整し、F−4と同様に吸収スペクトルを測定した。次にF−4とフェオホルバイドaを夫々の波長での溶血活性を調べた。溶血活性はF−4が最終濃度1%になるように赤血球とPBSを調整し、日立分光蛍光光度計(650−50)に設置した。そこへ特定の波長に調整した光源を照射した。30分後(15分に一回軽く攪拌)軽く攪拌後、1.5mLエッペンチューブに移し、4℃にて15,000rpmで1分間遠心し、上清を100μLずつ平底96wellプレートに入れ、マイクロプレートリーダーにて測定した。フェオホルバイドaも最終濃度が10μg/mLになるようにPBSで調整し、同様の操作で実験を行った。
【0049】
次に、H2−aを1.0μg/mLとなるようにPBSと混合した。分光光度計(U2001)を用い、300nm〜700nm(10nm間隔)での吸収スペクトルを測定し、H2−aの吸収スペクトルのピークとそれぞれの波長での細胞毒性を測定した。細胞毒性試験はPBSで調整(6×104cells/ml)したHeLa細胞とH2−aの最終濃度が0.5μg/mL(PBSで1.0μg/mlに調整)となるように混合し、日立分光蛍光光度計(650−50)に設置した。そこへ特定の波長に調整した光源を20分間照射した。なお、照射10分後に一回軽く攪拌した。その後、そこから5μL取り出し、あらかじめα−MEM+10%FCSを500μLの入った24wellプレートに入れ、37℃・5%CO2インキュベーターに静置しコロニーが形成されるまで培養した。コロニー形成を確認した後、染色しコロニーをカウントした。
【0050】
F−4およびフェオホルバイドaの吸収スペクトルおよび溶血活性の結果を図17に、H2−aの吸収スペクトルおよび細胞毒性の結果を図18に示した。F−4およびフェオホルバイドaとは明らかに異なる吸収スペクトルを示した。図17より、溶血活性発現波長も450nmと630nmの2カ所に存在し、フェオホルバイドaの680nmとは異なっていることが分かった。従ってF−4中の活性物質は、フェオホルバイドaの類似化合物ではないと推定された。また、図18より、高純度に精製されたH2−aでは、630nm付近の活性が消失していることから、活性波長の異なる物質が存在していたと考えられる。
【0051】
ラジカル消去剤による溶血活性および細胞毒性の阻害作用
スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、カタラーゼを用い、溶血活性と細胞毒性の阻害作用を検討した。H2−aの二段階希釈を作成し(最終濃度を10.0μg/mL)、SODは200units/mL、カタラーゼは400units/mLの最終濃度となるようPBSで調整した。その後、プランクトンを培養しているインキュベーター内で光照射(4000ルックス)を5時間行い、溶血活性試験を常法により行った。その結果を図19に示した。図中、(●)はラジカル消去剤を未添加、(△)はSOD、(□)はカタラーゼの結果を表す。SOD、カタラーゼともにH2−aの活性に阻害効果をもたらすことはなかった。
【0052】
また、24wellプレートにHeLa細胞を付着させたものを用意し、培養液をアスピレーターで取り除いた。そこへSODは200units/mL、カタラーゼは400units/mLと、最終濃度がなるようにPBSで調整したものを加え、H2−aの二段階希釈を作成した(1.0μg/mL)。HeLa細胞に対する細胞毒性をコロニー形成阻害法より行った。その後、プランクトンを培養しているインキュベーター内で光照射(4000ルックス)を30分間行った。その結果を図20に示した。図中、(●)はラジカル消去剤を未添加、(△)はSOD、(□)はカタラーゼの結果を表す。溶血活性と同様にH2−aは濃度依存的に細胞毒性を発現させ、SODとカタラーゼはH2−aの活性に阻害効果をもたらすことはなかった。
【0053】
次に、ヒスチジン(Mw=209.6)、マンニトール(Mw=182.17)、アジ化ナトリウム(Mw=65.01)の最終濃度が20mMとなるようPBSで調整したものを用い、H2−aの二段階希釈を作成し、赤血球と混合した。その後、プランクトンを培養しているインキュベーター内で光照射(4000ルックス)を5時間行い、溶血活性試験を常法により行った。その結果を図21に示した。図中、(●)はラジカル消去剤を未添加、(○)はヒスチジン、(△)はマンニトール、(□)はアジ化ナトリウムを表す。3種類のラジカル消去剤の中でヒスチジンに顕著な溶血活性の阻害効果がみられた。
【0054】
また、24wellプレートにHeLa細胞を付着させたものを用意し、培養液をアスピレーターで取り除いた。そこへヒスチジン、マンニトール、アジ化ナトリウムの最終濃度が20mMとなるようPBSで調整したもので、H2−aの二段階希釈を作成した。HeLa細胞に対する細胞毒性をコロニー形成阻害法より行った。その結果を図22に示した。図中、(●)はラジカル消去剤を未添加、(○)はヒスチジン、(△)はマンニトール、(□)はアジ化ナトリウムを表す。溶血活性と同様にヒスチジンによる明らかな阻害が認められた。これらのことから、この活性物質は光照射により、一重項酸素を産生していることが示唆された。
【0055】
H2−aの蛍光スペクトル
H2−aを2.0μg/mLとなるようにPBSと混合し、日立分光蛍光光度計(650−50)に設置した。励起波長を370nmまたは420nmに合わせ、550nm〜750nmの蛍光を測定した。得られた蛍光スペクトルを図23に示した。370nmの励起波長を当てると、650nmのところにピークを検出できた。また、420nmの励起波長の方がより高く、蛍光のピークを検出することができた。
【0056】
H2−aを添加した細胞の蛍光観察
35mmガラス付きディッシュに1×104cells/mLとなるようにα−MEM+10%FCSで調製したHeLa細胞を付着させた。そこへPBSで2.0μg/mLに調整したH2−aと培地を交換し、37℃・5%CO2インキュベーターに静置した。10分後、新しいPBSに交換し、Axiovert 200のU励起波長(UV波長)にて観察を行った。図24は得られた顕微鏡写真である。図中、(A)はコントロールとしてのPBS中の細胞、(B)はH2−aを添加した細胞である。H2−aを添加した細胞にU励起の波長をあてると、赤い蛍光が細胞の輪郭に局在していることを観察することができた。また、H2−aを添加していない細胞では全くこのような現象を観察することができず、H2−aは細胞表層に付着していることが分かった。
【0057】
H2−aによるHeLa細胞の核変化の蛍光観察
H2−aによるHeLa細胞の核変化の蛍光観察をヘキスト染色法により行った。先ず、35mmガラスディッシュに1×104cells/mLとなるようにα−MEM+10%FCSで調製したHeLa細胞を準備し、細胞が付着するまで培養した。細胞が付着しているのを確認後、PBSでH2−aを0.1μg/mLとなるように調整したものと培地を交換した。5分間インキュベーターで静置した後、新しいPBSと交換し、人工気象機の中で4000ルックスの光を当てた。次に、α−MEM+10%FCSと交換し、5%・CO2インキュベーターに静置した。3時間後、α−MEM+10%FCSで150倍に薄めたHoechst 33342 solution(1.0 mg/mL H2O)を加え、5%・CO2インキュベーターに静置した。10分後、倒立型顕微鏡(Axiovert 200)のDAPI励起光で蛍光観察を行った。細胞にH2−aの処理を行わないものをコントロールとし、ジメチルスルホキシドを0.2%溶かしたもの、H2−aを細胞に添加し、その後遮光処理を行ったものも同じ操作を行った。図25は得られた顕微鏡写真である。図中、(A)は通常の培養条件下の細胞、(B)は光照射を行った0.2%ジメチルスルホキシドを添加した細胞、(C)は光照射、H2−aを添加した細胞、(D)は遮光処理、H2−aを添加した細胞である。0.2%ジメチルスルホキシドとH2−aを添加し、その後、遮光処理したものは両者ともコントロールと同様に核に変化はなかった。H2−aを添加し光を照射したものには、核が膨張している様子が確認できた。
【0058】
H2−aの結合時間およびその時の細胞毒性
24wellプレートの半数のwellには20×104cells/wellとなるよう、また半数のwellには200cells/wellとなるようHeLa細胞を付着させ、PBSで最終濃度1.0μg/mLに調整したH2−aを時間経過ごとに添加した。なお、20×104cells/wellのものは蛍光強度の測定に、200cells/wellのものは細胞毒性の測定に使用した。次に、新しいPBSでウォッシングを行った。蛍光強度を測定するwellには、SDSを1mL加え、ピペッティングで細胞を融解後、420nmの励起波長で蛍光強度を測定した。また細胞毒性の測定するwellではその時間経過ごとの毒性をコロニー染色法で測定した(光処理は4000ルックス、30分間)。その結果を図26に示した。素早く細胞表層に付着しているのが蛍光強度と細胞毒性で確認でき、さらに付着する量は時間とともに増加する傾向にあった。また、5分間のインキュベーションで細胞を完全に死滅させる量のH2−aが結合していることが分かった。
【0059】
H2−aの結合後の時間による変化
24wellプレートの半数のwellには20×104cells/wellとなるよう、また半数のwllには200cells/wellとなるようHeLa細胞を付着させ、PBSで最終濃度1.0μg/mLに調整したH2−aを添加し、37℃・5%CO2インキュベーターに静置した。30分後に、PBSでウォッシングを行い、蛍光強度を測定する20×104cells/wellのwellには、SDSを1mL加え、ピペッティングで細胞を融解後、420nmの励起波長で蛍光強度を測定した。また、200cells/wellのwellでは30分間のインキュベーションの後、PBSを培地に交換し、それぞれ決められた時間、さらに37℃・5%CO2インキュベーターでインキュベーションを行った。一定時間インキュベーションを行ったものの毒性をコロニー染色法で測定した(光処理は4000ルックス、30分間)。その結果を図27に示した。蛍光強度と細胞毒性は時間とともに低下するという結果になり、2時間までは細胞に対する毒性は強く発現されるが、3時間ほどで毒性は半分に低下することが分かった。
【0060】
H2−aの毒性が発現される時間
24wellプレートに300cells/wellとなるようにα−MEM+10%FCSで調製したHeLa細胞を付着させた。光照射の時間を異なるようにするため、一定時間経過ごとに0.5μg/mL、1.0μg/mLにPBSで調整したH2−aを培養液と交換した。光処理は4000ルックスで行い、すべての処理を終え0.5mLのα−MEM+10%FCSと交換し、37℃・5%CO2インキュベーターに静置しコロニーが形成されるまで培養を行った。コロニー形成を確認後、染色液で固定しカウントを行った。その結果を図28に示した。図中、(▲)は0.5μg/mL、(●)は1.0μg/mLの結果である。溶血活性とは異なり、かなり早い段階で細胞に対する毒性が発現した。またH2−aの濃度によって毒性の発現する時間は異なり、濃度が高いほど早く毒性が発現した。
【0061】
H2−aの活性の継続時間
H2−aを1.0μg/mLにPBSにより調整しガラス試験管に入れ、プランクトンを培養している人工気象機の中に静置した。30分間光処理(4000ルックス)を行い、300cells/wellとなるようにα−MEM+10%FCSで調製したHeLa細胞を付着させた24wellプレートに、一定時間経過ごとに添加した。すべての処理を終えた後、37℃・5%CO2インキュベーターに静置した。30分後、PBSをアスピレーターで取り除きα−MEM+10%FCSを0.5mLずつ入れ、37℃・5%CO2インキュベーターに静置しコロニーが形成されるまで培養を行った。コロニー形成を確認後、染色液で固定しカウントを行った。その結果を図29に示した。30分光処理を行ったH2−aは活性化した状態にあると思われるが、その活性が継続する時間は極めて短いものだった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の光活性化生理活性物質は、活性が強く発現される波長が460nmと630nmであることから、これまで光線力学療法に利用されているポリフィリン化合物とは異なる物質であり、光線力学療法に利用できる新規な光活性化生理活性物質として幅広い応用が考えられる。一方、本物質の原料となる赤潮プランクトンは海水を主体とする安価な培地での大量培養が容易であり、将来的な量産も実行し易い。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマの成長曲線およびそれに対する抽出液の溶血活性を示すグラフである。
【図2】ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ細胞のメタノール抽出物のゲルクロマトグラムと溶血活性を示すグラフである。
【図3】ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ細胞のメタノール抽出物のゲルクロマトグラフィー精製物の溶血活性を示すグラフである。
【図4】ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ細胞のメタノール抽出物のゲルクロマトグラフィー精製物の細胞毒性を示すグラフである。
【図5】ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ細胞のメタノール抽出物のTLC精製物の溶血活性を示すグラフである。
【図6】ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ細胞のメタノール抽出物のTLC精製物の細胞毒性を示すグラフである。
【図7】ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ細胞のメタノール抽出物(T−2)のクロマトグラムである。
【図8】ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ細胞のメタノール抽出物のHPLC精製物の溶血活性を示すグラフである。
【図9】ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ細胞のメタノール抽出物のHPLC精製物の細胞毒性を示すグラフである。
【図10】ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ細胞のメタノール抽出物のクロマトグラムである。
【図11】ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ細胞のメタノール抽出物のリクロマト精製物の溶血活性を示すグラフである。
【図12】ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ細胞のメタノール抽出物のリクロマト精製物の細胞毒性を示すグラフである。
【図13】ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ細胞のメタノール抽出物のリクロマト精製物の3Dのクロマトグラムである。
【図14】ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ細胞のメタノール抽出物のマススペクトルである。
【図15】ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ細胞のメタノール抽出物(H2−a)の各細胞に対する細胞毒性
【図16】ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ細胞のメタノール抽出物(H2−a)によるHeLa細胞の形態変化を表す顕微鏡写真である。
【図17】ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ細胞のメタノール抽出物(F−4)のゲルクロマトグラフィー精製物およびフェオホルバイド aの吸収スペクトルおよび溶血活性を示すグラフである。
【図18】ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ細胞のメタノール抽出物(H2−a)の吸収スペクトルおよび細胞毒性を示すグラフである。
【図19】スーパーオキシドジスムターゼ、カタラーゼによる溶血活性の阻害作用を示すグラフである。
【図20】スーパーオキシドジスムターゼ、カタラーゼによる細胞毒性の阻害作用を示すグラフである。
【図21】ヒスチジン、マンニトール、アジ化ナトリウムによる溶血活性の阻害作用を示すグラフである。
【図22】ヒスチジン、マンニトール、アジ化ナトリウムによる細胞毒性の阻害作用を示すグラフである。
【図23】ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ細胞のメタノール抽出物(H2−a)の蛍光スペクトルである。
【図24】ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ細胞のメタノール抽出物(H2−a)を添加したHeLa細胞の蛍光顕微鏡写真である。
【図25】ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ細胞のメタノール抽出物(H2−a)を添加したHeLa細胞の核変化を示す蛍光顕微鏡写真である。
【図26】ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ細胞のメタノール抽出物(H2−a)とHeLa細胞との結合時間に対する蛍光強度および細胞毒性の関係を示すグラフである。
【図27】ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ細胞のメタノール抽出物(H2−a)とHeLa細胞との結合後の時間に対する蛍光強度および細胞毒性の関係を示すグラフである。
【図28】ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ細胞のメタノール抽出物(H2−a)を添加したHeLa細胞への光照射時間と細胞毒性の関係を示すグラフである。
【図29】ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ細胞のメタノール抽出物(H2−a)の活性化後のHeLa細胞に添加するまでの時間と細胞毒性の関係を示すグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な光活性化生理活性物質、その光活性化方法、活性阻害方法およびそれを用いた光線力学療法に関し、詳しくは可視光線によって活性化する光活性化生理活性物質に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光線力学療法(PDT:photodynamic therapy)は光で活性が誘導される光活性化生理活性物質を利用した治療法であり、単独では何ら活性を持たない光活性化生理活性物質とその励起光の組み合わせにより行う、選択性に優れた治療法である。光線力学療法は腫瘍組織に対する選択的治療の他、ニキビなどの皮膚疾患及び表在性の種々の疾患の治療に利用されている。
【0003】
光線力学療法の歴史は古く、1903年にTappeinerらによって、エオジン色素と太陽光およびランプ光にて、腫瘍が壊死したと報告されている。それ以来、現在に至るまで光線力学療法の新たな応用と利用できる光活性化生理活性物質の開発が行なわれているが、これまでに見出されている光活性化生理活性物質のほとんどがポルフィリン誘導体あるいはその前駆物質である(特許文献1〜2)。光線力学療法は選択性に優れ、副作用が少ない等の利点を有している。また、利用する光も比較的安全な可視光線であり、紫外線のように皮膚に障害を起こす心配もない。
【特許文献1】特開平9−255682号公報
【特許文献2】特開平11−29573号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、光線力学療法の更なる有効性の追求には、利用できる光活性化生理活性物質の発見開発が必要である。
【0005】
そこで本発明の目的は、新規な光活性化生理活性物質、その光活性化方法、活性阻害方法およびそれを用いた光線力学療法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、赤潮プランクトンであるヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ(Heterocapsa circularisquama)の培養物をアルコール抽出物、更には種々のクロマトグラフィーにより精製された該抽出物が可視光線によって活性化し、溶血および細胞毒性等の生理活性を実現することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明の光活性化生理活性物質はヘテロカプサ・サーキュラリスカーマの培養物の抽出物であることを特徴とするものである。好ましくは、前記抽出物がメタノールにより抽出された抽出物であり、また、ゲルクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィーおよび液体クロマトグラフィーからなる群のうち少なくとも一つを用い精製を行った光活性化生理活性物質である。更に好ましくは、分子量が586または602である光活性化生理活性物質である。
【0008】
また、本発明の光活性化生理活性物質の光活性化方法は350〜500nmまたは575〜650nmの波長の光を使用することを特徴とするものである。更に、本発明の上記光活性化生理活性物質の活性阻害方法は一重項酸素のラジカル消去剤を使用することを特徴とするものである。なお、一重項酸素のラジカル消去剤はヒスチジンを好適に使用することができる。更にまた、本発明の光線力学療法は上記本発明の光活性化生理活性物質を使用することを特徴とするものである。
【0009】
なお、本発明の光活性化生理活性物質を生成する赤潮プランクトンであるヘテロカプサ・サーキュラリスカーマはカキなどの二枚貝に対して強い毒性を発現することが知られている。ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマは1988年高知県浦の内湾で発見され、分類学上の位置づけは以下の通りである。
【0010】
門(division):渦鞭毛植物門(DINOPHYTA)
網(class):渦鞭毛藻網(DINOPHYCEAE)
目(order):ペリディニウム目(PERIDENALES)
科(family):ペリディニウム科(PERIDINIACEAE)
属(genus):ヘトロカプサ属(Heterocapsa)
【0011】
細胞は洋梨型で、大きさは20.0μm〜28.8μm、幅は13.8μm〜20.0μmである。細胞の外形はほぼ中央部を走る構造で円錐形の上殻と半球状の下殻とに分かれている。
【0012】
渦鞭毛藻網のペリディニウム目に属する種類では、細胞表面がセルロース質の鎧板で覆われており、鎧板の上には丸い鱗片がびっしりとあり、細胞内にはピレノイドにつながった葉緑体を1個有し、楕円形で大きな核は細胞の左側に位置する。本種は、細胞鱗片の有無と形状、鎧板配列、核の形と位置、細胞外形などの特徴の組み合わせで比較的簡単に本邦周辺海域に分布する同属の他種から区別できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の光活性化生理活性物質は、比較的低分子化合物で、熱安定性にもすぐれ、光非存在下では全く活性は示さないが、可視光線によって活性化し、溶血やHeLa細胞(ヒト癌細胞)等に対する強い細胞毒性等の生理活性を実現し、光線力学療法にも有効である。その作用は光によって完全にコントロール可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態につき、具体的に説明する。
本発明の光活性化生理活性物質の生成に使用するヘテロカプサ・サーキュラリスカーマの培養に使用する培地は、好ましくは海水を主体とした一般的な海洋性プランクトン用培地であり、より好ましくは、ESM(Erd-Schreiber modified)培地である。また、培養の条件としては、光照射は好ましくは3000〜6000ルックスであり、より好ましくは4000ルックス程度である。また、温度に関しては好ましくは24〜28℃であり、より好ましくは27℃程度である。培養時間は培養条件により適宜決定することとなるが、好ましくは、3〜7日間である。
【0015】
本発明の光活性化生理活性物質のヘテロカプサ・サーキュラリスカーマの培養物からの抽出方法は特に制限されるものではないが、培養物を抽出遠心分離によりプランクトン細胞を回収し、得られた細胞から溶媒により抽出することができる。この際、用いる溶媒としては親水性を有するものであり、エタノールおよびメタノールを好適に用いることができ、特に好ましくはメタノールである。なお、抽出する際、超音波処理を行うことがより好ましい。
【0016】
得られた抽出物の精製方法は特に制限されるものではないが、不溶物を除去後、ゲルクロマトグラフィー(GC)、薄層クロマトグラフィー(TLC)または液体クロマトグラフィー(HPLC)等を好適に用いることができる。各種クロマトグラフィーは市販のものにより、定法に従い精製することができる。なお、精製物を高純度にするためには、上記クロマトグラフィーを上記記載順に順次使用し、精製することが好ましい。ゲルクロマトグラフィーはSephadex LH-20を好適に使用できる。HPLCによる精製を複数回行うことより、純度を高めることが可能であり、分子量586および602の化合物を得ることができる。
【0017】
次に、本発明の光活性化方法は350〜500nm、好ましくは450nm程度、または575〜650nm、好ましくは630nm程度の波長の光を使用し、前記本発明の光活性化生理活性物質を活性化するものである。ここで、前記分子量602の化合物の光活性化には、350〜480nm、好ましくは420nm程度の波長の光を使用することができる。
【0018】
また、本発明の光活性化生理活性物質の活性阻害方法は、一重項酸素のラジカル消去剤を使用するものであるが、使用する一重項酸素のラジカル消去剤としてはヒスチジンを好適に使用することができる。これにより、本発明の光活性化生理活性物質は、光照射により、一重項酸素を産生していることが示唆される。
【0019】
更に、本発明の光線力学療法は上記本発明の光活性化生理活性物質を使用するものであり、腫瘍組織に対する選択的治療の他、ニキビなどの皮膚疾患及び表在性の種々の疾患の治療に利用することが可能となる。
【実施例】
【0020】
以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明を行う。
ESM培地の調製
ESM(Erd−Schreiber modified)培地の調製は、先ず、天然海水1000mLに対しNaNO3を120mg、10mg/mLのVitamin B1、1mg/mLのVitamin B12、0.1mg/mLのBiotin、26mg/mLのEDTA−Fe(III)、33mg/mLのEDTA−Mn(II)を夫々10μL、Trisを1g加えた後、K2HPO4を5mg加えた。次に5NのHCl溶液でpHを8.2付近に調整し、メンブランフィルター(0.45μm)で濾過し、1000mLサンボトルに移し入れオートクレーブ(121℃、15分間)で処理しESM培地とした。
【0021】
ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマの培養
三重県英虞湾で採取されたヘテロカプサ・サーキュラリスカーマを用い、培養温度は26℃、照明は白色蛍光灯を用い、照度は3000ルックスとし、照明時間は12時間明期12時間暗期のサイクルで培養を行った(三洋電機メディカシステム(株)製グロースキャビネット MLR−350H)。培養は耐熱性の100mLフラスコを用い、通気性のシリコン栓をしてオートクレーブ(121℃、15分間)で処理した後、乾燥させて使用した。先ず、フラスコに50mLずつESM培地を無菌的に分注した。培地へのヘテロカプサ・サーキュラリスカーマの植え付け方法は、約20×104cells/mLのヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ細胞浮遊液1mLをピペットを用いて無菌的に植え継いだ。なお、この際、培地を26℃に保った。
【0022】
溶血活性試験
本発明における溶血活性試験は以下の手順に従い行った。丸底96wellプレートを用い、ピペッティングによる2段階希釈をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で行い、試料に濃度勾配をつけたものを50μL/wellずつ用意した。そしてPBSで4%に調整したウサギ赤血球(日本バイオテスト研究所製)を50μLずつ加えた。なお、血液は、先ず余分な血清蛋白等を除去するためにPBSで遠心分離にて充分洗浄を行った。このプレートを、グロースキャビネットの中(3000または4000ルックス、26℃)に静置し、3〜5時間後に、4℃にて2,000rpmで5分間遠心し、上清70μLを平底96wellプレートに移した。常法によりマイクロプレートリーダー(570nmの吸光度)により溶血活性を測定した。なお、光照射を行わない実施例はアルミホイルで遮光処理を行った。また、溶血活性を測定する際、PBSのみを0%溶血、最終濃度1%Triton X−100を加えたものを100%溶血の指標とした。その他の物は相対度数で溶血活性を表した。試料によっては、試料を溶解させている溶媒を最終濃度1%に調整しコントロールとして用いた場合もある。
【0023】
α−MEM+10%FCS培地の調製
細胞培養に用いた培地であるα−MEM Medium(Alpha Modified Eagles Medium)の調製はオートクレーブ(121℃、15分間)後、室温に戻した超純水にα−MEM粉末(ICN社製)を溶解させ、核酸・抗生物質を加え、濾過滅菌(0.22μm)した。なお、組成は、α−MEMを一箱、チミジン、シチジン塩酸塩、アデノシン、グタノシンを夫々10mg、ベンジルペニシリンカリウム、硫酸ストレプトマイシンを夫々100mg、炭酸水素ナトリウムを2g、純水1000mLである。また、このα−MEM Mediumに56℃で30分間熱処理(補体不活化)した牛胎児血清(FCS)(Biochemical industries社製)を10%(v/v)添加したものをGrowth Medium(α−MEM+10%FCS)とした。
【0024】
細胞(HeLa、L929、Vero、CHO、XC、MDCK)の培養
実験に用いた細胞は、MDCK(イヌの腎臓由来細胞)、L929(マウス由来マクロファージ細胞)、XC細胞(ラットの癌細胞)、HeLa細胞(ヒトの子宮癌由来細胞)、CHO細胞(チャイニーズハムスターの子宮由来細胞)、Vero細胞(サルの腎臓由来細胞)であり、細胞はすべてATCC(American Type Culture Collection)から購入したものを使用した。細胞の培養法は、先ず、最終濃度で10%ジメチルスルホキシドおよび10%FCSが加えられたα−MEMで−80℃凍結保存されているセラムチューブ中の1.5mL細胞懸濁液を滅菌ピペットで15mL滅菌チューブに移した。このチューブにα−MEMを加え、2,000rpmで10分間の遠心をした。その上清をアスピレーターで除き、新しい培地を5mL加え細胞を分散させ、培養フラスコ(25cm3)全体に広げた後、37℃、5%CO2インキュベーターで培養を行った。24時間後、細菌等の混入がないこと、細胞がフラスコの底に付着していることを確認して培地交換あるいは継代培養を行った。継代培養法は、フラスコ中の培養液をアスピレーターで取り除き0.2%トリプシン・0.05%EDTAを含むPBS溶液を5mL培養フラスコに入れ密栓し、室温で約1分間静置後、フラスコ中の溶液を取り除き37℃、5%CO2インキュベーターで2分間静置した。その後、α−MEM+10%FCSでピペティッングし、細胞をフラスコ底面からはがした。その細胞を新しいフラスコに移し培養した。なお、細胞の保存は、凍結保存法を用いた。細胞を培養フラスコよりはがし、あらかじめ10%ジメチルスルホキシドを含むα−MEM+10%FCSに細胞を懸濁させたものを約1.5mLセラムチューブに入れ−80℃で保存した。
【0025】
細胞毒性試験
24wellプレートを用意し、200cells/well・0.5mLとなるようにα−MEM+10%FCSで調製したHeLa細胞をプレートへ0.5mLずつ入れて、37℃、5%CO2インキュベーターに静置し、細胞がプレートに付着するまで培養した。なお、プレートの中に細胞を入れると一カ所に集まるため軽く攪拌を行った。細胞数を計算するには、血球計算版(KAYAGAKI社製 EKDS・Bright−line)を用いた。α−MEM+10%FCSをアスピレーターで取り除き、1.0μg/mLに調整した試料と交換した。ピペッティングによる2段階あるいは3段階希釈をPBSで行い、試料に濃度勾配をつけたものを400μL/wellずつ用意した。
【0026】
プランクトンを培養している人工培養機の中に静置し、光処理を行った。30分後、PBSをアスピレーターで取り除き、α−MEM+10%FCSを0.5mLずつ入れ、37℃・5%CO2インキュベーターに静置し、コロニーが形成されるまで3、4日間培養した。コロニー形成を確認した後、培地を捨て1%メチレンブルーを含む50%メタノールを加え10分間静置した。その後、染色液を洗い流し、染色されたHeLa細胞のコロニー数を数えた。カウントは目視で行い、試料を入れてないものの値をコントロール(100%)とし、試料処理した場合の値を相対度数で表した。なお、48wellプレートを用いた場合は、細胞数100cells/well・0.2 mLで利用し、操作は同様の手順で行った。
【0027】
ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ細胞からのメタノール抽出法
ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマの細胞が約20×104cells/mLの状態になった時に、175mLファルコンチューブを使用し、ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマを培養液と一緒に4℃にて3,500rpmで5分間遠心し上清を捨て、ピペッティングを行い、1.5mLのエッペンチューブに回収した。それを、4℃にて15,000rpmで5分間遠心し、アスピレーターを用い、完全に上清を取り除いた。そこへ細胞浮遊液から得られた細胞ペレットに対し、1.5mLの割合でメタノールを加え、常温で1分間、ソニケーションにて細胞を破壊する。それを4℃にて15,000rpmで10分間遠心し、上清を粗抽出液とした。十分に抽出できない場合はさらにメタノールを加え、同様の操作を行った。粗抽出液の保存はエッペンチューブに入れたまま、冷凍庫に保管した。
【0028】
メタノール抽出物のゲルクロマトグラフィー(GC)
50gのSephadex LH−20をメタノールの中に入れ、3時間放置して膨潤させた。この間に溶液を攪拌してデカンテーションにより、微細な粒子をすべて取り除いた。それを真空デシケーターの中に入れ、気泡を取り除き、ゲル懸濁液をカラム(300×15mm)に注ぎ入れ、懸濁液がゆっくりと流れるようにしながら重力でゲルが沈殿するのに任せ、ゲルのカラムを作った。カラム内に気泡が入らないようにするために、ゲル量に比して2〜3倍量のメタノール(溶媒)を用いた。メタノール抽出物をカラムの上に加え、メタノールで溶出した。溶出液は1〜2.0mL/tubeにて分取した。この実験の操作は全て低温室にて行った。なお、各試験管について、吸光度(分光光度計U−2001を使用)と溶血活性(メタノールの最終濃度1.0%)を測定した。
【0029】
GC後の画分の薄層クロマトグラフィー(TLC)
本実施例おいては上昇法による一次元展開により行った。展開槽に60〜100mLの溶媒(クロロホルム:メタノール=6:1)を入れ、12時間放置し、槽内の溶媒蒸気を平衡にした。キャピラリーに試料(GCで得られた画分)を取り、試料を薄層プレート(シリカゲル)にスポットした。それを展開槽の中に立てかけ蓋を閉じて、溶媒をプレートの上端から2cm内外のところまで上昇させた。薄層プレートを展開槽から取り出し、ドラフト内で溶媒を蒸発させた。展開されたスポットをゲルごと削り取り、メタノールで抽出した。4℃にて15,000rpmで10分間遠心を行い、上清を回収した。
【0030】
TLC後の光活性化生理活性物質の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)
薄層クロマトグラフィーにより得られたものをHPLC試験液とし、逆相系高速液体クロマトグラフィー(Waters 625 LC System/486 Tunable Absorbance Detector)を用い分離し、Waters allianceを用い精製純度を測定した。
【0031】
ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ細胞の成長曲線およびメタノール抽出物の溶血活性
500mL三角フラスコに450mLのESM培地を入れ、オートクレーブ(121℃、15分間)で滅菌処理を行った。そこにヘテロカプサ・サーキュラリスカーマを細胞数100〜200cells/mLとなるように植え継いだ。次の日、細胞数をカウントした後、20mLをファルコンチューブに取り出し遠心を行った(2,000rpm、4℃、5分間)。上清をアスピレーターで取り除き、0.5mLのメタノールを加え抽出を行った。その抽出液の溶血を測定した。一日置きに同様の操作を行い、ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマの成長曲線およびそれに対する抽出液の溶血活性を調べた。その結果を図1に示した。図中、(●)はヘテロカプサ・サーキュラリスカーマの細胞数、(□)は光照射下での、(■)は暗所での溶血活性を示す。細胞の増殖と共に抽出液の溶血活性が上昇し、光がある場合にのみ活性が発現していることが分かる。また細胞が減少するとともにメタノール抽出物の溶血活性が低下した。これらの結果から、溶血活性物質は対数増殖期の後期から定常期の間に最も効率よく得られることが分かった。
【0032】
メタノール抽出物のゲルクロマトグラムおよび溶血活性
ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ細胞のメタノール抽出物をSephadex LH−20を用いて、ゲルクロマトグラフィーを行った。溶出した物について、吸光度(450nm)と各フラクションの溶血活性を測定した。その結果を図2に示した。450nmの吸光度により2つのピークを検出することができ、溶出時間の遅かったピークと溶血活性が一致し、緑色を呈していた。一方、溶血活性が認められなかった最初のピークの前半部分には血液の凝集が見られ、褐色を呈しており、後半の部分では濃い緑色を呈し溶血活性と血液の凝集は見受けられなかった。これらをもとに5つの画分に分けた。それぞれF−1、F−2、F−3、F−4、F−5とした。
【0033】
メタノール抽出物のゲルクロマトグラフィー精製物の溶血活性および細胞毒性
溶出パターンと溶血活性をもとに5個の画分に分けたF−1、F−2、F−3、F−4、F−5を96wellプレートを用い、二段階希釈を作成した後、溶血活性試験を常法により行った。その後、プランクトンを培養しているインキュベーター内で光照射(4000ルックス)を5時間行った。その結果を図3に示した。図中、(○)、(▲)、(□)、(●)、(△)は順にF−1、F−2、F−3、F−4、F−5を表す。溶血活性はF−4の画分のみ濃度依存的に見られ、その他の画分では見られなかった。また、褐色を呈しているF−2の画分は、濃度依存的に凝集作用が見られた。
【0034】
また、F−1〜F−5について24 wellプレートを用い、二段階希釈を作成しHeLa細胞に対する細胞毒性をコロニー形成阻害法より行った。その後、プランクトンを培養しているインキュベーター内で光照射(4000ルックス)を30分間行った。その結果を図4に示した。図中、(○)、(▲)、(□)、(●)、(△)は順にF−1、F−2、F−3、F−4、F−5を表す。溶血と同様にF−4の分画のみで濃度依存的に細胞に対する毒性が発現された。なお、F−4の溶血活性および細胞毒性ともに、光依存性であり、遮光下では両活性は全く発現されなかった。
【0035】
GC後の画分の薄層クロマトグラフィー(TLC)
F−4をシリカゲルプレートにおける薄層クロマトグラフィーにより、更に精製した。クロロホルム:メタノール=6:1の展開溶媒が70mL入った展開槽および、F−4をスポットしたシリカゲルプレート(MERCK社製・Silica Gel60・10×20cm・層厚0.25)を用い、上昇法により行った。その結果、Rf値が0.62、0.08、0.0に分離し、夫々を回収した。Rf値が0.62をT−2、0.08をT−1、0.0をT−0とする。
【0036】
メタノール抽出物のTLC精製物の溶血活性および細胞毒性
メタノールで抽出したT−1、T−2は、夫々300μL、700μLまで濃縮した。T−0はコントロールとして用意した。T−0、T−1、T−2を96wellプレートを用い、二段階希釈を作成し溶血活性試験を常法により行った。その後、プランクトンを培養しているインキュベーター内で光照射(4000ルックス)を5時間行った。その結果を図5に示した。図中、(○)はT−0、(△)はT−1、(□)はT−2を表す。溶血活性はT−1、T−2部分で濃度依存的に見られたが、T−2の方がより強く活性があった。コントロールとして用意したT−0には全く活性は見られなかった。
【0037】
また、T−0、T−1、T−2を24wellプレートを用い、二段階希釈を作成しHeLa細胞に対する細胞毒性をコロニー形成阻害法より行った。その後、プランクトンを培養しているインキュベーター内で光照射(4000ルックス)を30分間行った。その結果を図6に示した。図中、(●)はT−0、(▲)はT−1、(■)はT−2を表す。溶血と同様にT−1、T−2で濃度依存的に細胞に対する毒性が発現され、T−2の方がより強い毒性があった。
【0038】
TLC後のメタノール抽出物(T−2)の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)
Puresil C−18カラム(4.6×150mm)を用いてTLC後の溶血活性物質を高速液体クロマトグラフィーにて精製を行った。サンプルは溶血活性、細胞毒性ともに高い活性を示したT−2を用いた。T−2を80%メタノールとなるように超純水で調整した。なお、HPLCの溶媒は80%メタノールを使用した。結果を図7に示す。早い段階で全て溶出され、450nmで3つのピークを検出できた。それぞれピークの部分で回収し、H−1、H−2、H−3とした。
【0039】
メタノール抽出物のHPLC精製物の溶血活性および細胞毒性
H−1、H−2、H−3(80%メタノールに溶解)の部分を夫々回収し、96wellプレートを用い、二段階希釈を作成し溶血活性試験を常法により行った。プランクトンを培養しているインキュベーター内で光照射(4000ルックス)を5時間行った。その結果を図8に示した。図中、(○)はH−1、(△)はH−2、(□)はH−3を表す。H−1、H−2、H−3すべてに濃度依存的に溶血活性は見られ、その中でもH−2、H−3がH−1に比べて高い溶血活性がみられた。
【0040】
また、H−1、H−2、H−3を24wellプレートを用い、HeLa細胞に対する細胞毒性をコロニー形成阻害法より調べた。まず二段階希釈を作成し、その後、プランクトンを培養しているインキュベーター内で光照射(4000 ルックス)を30分間行った。その結果を図9に示した。図中、(●)はH−1、(▲)はH−2、(■)はH−3を表す。溶血と同様にすべてに濃度依存的に細胞に対する毒性が発現され、H−2、H−3がH−1に比べて高い細胞毒性がみられた。
【0041】
HPLC後のメタノール抽出物のリクロマト
次に、H−1、H−2、H−3をODS C−18(4.6×250mm・Finepak SIL 300C18T−7)カラムで、再度HPLCに供し、夫々の分離を試みた。遠心式エバポレーターを用い、80%メタノールに溶けているH−1、H−2、H−3の溶媒を蒸発させ、そこへ70%アセトニトリル(超純水で調整)を同量加え夫々を溶解させた。カラム内を70%アセトニトリルで平衡化し、それぞれ700μLのH−1、H−2、H−3をインジェクトし、測定した。H−1、H−2、H−3のクロマトグラムを図10に示した。H−1は細かくピークが分かれたのに対し、H−2、H−3は溶出時間の異なった位置に大きなピークを1つずつ検出できた。H−2、H−3のピークの部分を回収し、溶血活性と細胞毒性の試料とした。なお、夫々、H2−aとH3−aとした。
【0042】
メタノール抽出物のリクロマト精製物の溶血活性および細胞毒性
H2−a、H3−a(70%アセトニトリル)を遠心式エバポレーターで、溶媒を完全に除去した。そしてH2−a、H3−aの重量を測定し、1.0mg/mLとなるようジメチルスルホキシドに溶解させた。96wellプレートを用い、二段階希釈を作成し溶血活性試験を常法により行った。光照射(4000ルックス)はプランクトンを培養しているインキュベーター内で5時間おこなった。その結果を図11に示した。図中、(○)はH2−a、(△)はH3−aを表す。H2−a、H3−aともに活性にはあまり差は見られなかったが、若干H2−aの方が高かった。
【0043】
また、H2−a、H3−aを24wellプレートを用い、HeLa細胞に対する細胞毒性をコロニー形成阻害法より調べた。まず二段階希釈を作成し、その後プランクトンを培養しているインキュベーター内で光照射(4000ルックス)を30分間行った。その結果を図12に示した。図中、(●)はH2−a、(▲)はH3−aを表す。溶血と同様にH2−a、H3−aともに濃度依存的に細胞に対する毒性が発現され、溶血活性と同様にH2−aがH3−aに比べて若干高い細胞毒性がみられた。H2−aはH3−aより溶血活性、細胞毒性ともに1.2〜1.4倍比活性が高かった。
【0044】
メタノール抽出物のリクロマト精製物の純度および分子量測定
HPLCとLC/MS(Liquid Chromatography/Mass Spectrometry)での純度測定を行った。Waters alliance (Waters2695 Sepalation Module/Waters 2996 Photodiode Array Detector)を用い、カラムはODS C−18(4.6×250 mm・Finepak SIL 300C18T−7)を使用した。H2−a、H3−aを逆相系による溶媒A(超純水で0.1%のトリフルオロ酢酸(TFA)を先に作成し、それを用いアセトニトリルを60%に調整)から溶媒B(100%アセトニトリル)へのリニアグラジエントで行った。最初は0.1%のTFAを含む60%のアセトニトリルを10分間流し、40分後に100%のアセトニトリルになるようにグラジエントを設定した。その結果を3Dのクロマトグラムとして図13に示した。X軸に溶出時間、Y軸に吸光度、Z軸に波長をとった時の3Dのクロマトグラムを解析すると、H3−aはH2−aの溶出時間と同じ所に小さいピークを確認でき、H2−aが少し含まれることが分かった。それに対しH2−aは単一なピークを検出することができ、H2−aは広範囲の波長領域で立体的単一のピークとして溶出されていた。
【0045】
また、同様の条件でLC/MSに供した。430nmの吸光度のクロマトグラムと特定のマスナンバーでのマスクロマトグラムでH2−aとH3−aをそれぞれ分析すると、H3−aはいくつかの物質が含まれてはいるがほぼ単一なものに精製されていることが分かった。それに対し、H2−aは同じ溶出時間のところでピークを確認できたことから、単一なものに精製できたことが分かった。またマススペクトルよりH2−aの分子量は602で、H3−aは586という結果になった。この分子量の差は16であることからH3−aはH2−aのデオキシ体であると推測される。H2−aとH3−aのマススペクトルの結果を図14に示した。以上の分析の結果から、H2−aは高純度に精製されたことが分かった。一方、H3−aは、わずかにH2−aと夾雑物の混入が確認された。
【0046】
MDCK、L929、XC、HeLa、CHO、Vero細胞に対する細胞毒性 MDCK(イヌの腎臓由来細胞)、L929(マウス由来マクロファージ細胞)、XC細胞(ラットの癌細胞)、HeLa細胞(ヒトの子宮癌由来細胞)、CHO細胞(チャイニーズハムスターの子宮由来細胞)、Vero細胞(サルの腎臓由来細胞)を用いH2−aの細胞毒性を検討した。H2−aを最終濃度1.0μg/mLに調整し、二段階希釈を作成した。24wellプレートに200cells/wellとなるようそれぞれの細胞を付着させ、細胞毒性をコロニー形成阻害法より行った。プランクトンを培養しているインキュベーター内で光照射(4000ルックス)を30分間行った。その結果を図15に示した。図中、(○)はMDCK、(△)はL929、(□)はXC、(●)はHeLa、(▲)はCHO、(■)はVeroを表す。細胞の種類によって毒性にはそれほど差はなかったが、Vero細胞が最も高い感受性を示した。
【0047】
HeLa細胞に対する形態変化の顕微鏡観察
35mmプラスチックディッシュに1×104cells/mLとなるようにα−MEM+10%FCSで調製したHeLa細胞を準備し、細胞が付着するまで培養した。細胞が付着したのを確認した後、H2−aを0.1μg/mLとなるようにPBSで調整したものを培養液と交換した。そこへ光を照射しながら(2000ルックス)、細胞の時間経過(0分から30分間)ごとの形態変化を顕微鏡で観察を行った。その結果を図16に示した。図中、(A)はPBS中の細胞、(B)はH2−aを含まず、ジメチルスルホキシドをPBSに0.2%となるように調整したもの、(C)はH2−aを添加し、光を照射したもの、(D)はH2−aを添加し、遮光処理したものである。これらの結果からH2−a添加のみでは全く形態変化は誘導されず、光照射がその作用発現に必須であることが分かった。H2−aの存在下で、そこへ光照射された細胞は、まずプレート面から徐々に離脱し、やがて球状化した。引き続いて細胞の膨化が起こり、その後細胞は死滅した。この様な形態変化から、細胞膜の損傷に伴う、膜透過性が影響を受けていると推測された。
【0048】
吸収スペクトルおよび各波長での溶血活性と細胞毒性
濃縮したF−4をPBSで2%となるように調整し、吸収スペクトルを測定した(200〜800nm)。比較例として使用するフェオホルバイドa(Pheophorbide a タマ生化学(株)製)は水難溶性であったため、ジメチルスルホキシドを用いて1mg/mLとなるように溶解させた。1mg/mLに調整したフェオホルバイドaをPBSで5μg/mLとなるように調整し、F−4と同様に吸収スペクトルを測定した。次にF−4とフェオホルバイドaを夫々の波長での溶血活性を調べた。溶血活性はF−4が最終濃度1%になるように赤血球とPBSを調整し、日立分光蛍光光度計(650−50)に設置した。そこへ特定の波長に調整した光源を照射した。30分後(15分に一回軽く攪拌)軽く攪拌後、1.5mLエッペンチューブに移し、4℃にて15,000rpmで1分間遠心し、上清を100μLずつ平底96wellプレートに入れ、マイクロプレートリーダーにて測定した。フェオホルバイドaも最終濃度が10μg/mLになるようにPBSで調整し、同様の操作で実験を行った。
【0049】
次に、H2−aを1.0μg/mLとなるようにPBSと混合した。分光光度計(U2001)を用い、300nm〜700nm(10nm間隔)での吸収スペクトルを測定し、H2−aの吸収スペクトルのピークとそれぞれの波長での細胞毒性を測定した。細胞毒性試験はPBSで調整(6×104cells/ml)したHeLa細胞とH2−aの最終濃度が0.5μg/mL(PBSで1.0μg/mlに調整)となるように混合し、日立分光蛍光光度計(650−50)に設置した。そこへ特定の波長に調整した光源を20分間照射した。なお、照射10分後に一回軽く攪拌した。その後、そこから5μL取り出し、あらかじめα−MEM+10%FCSを500μLの入った24wellプレートに入れ、37℃・5%CO2インキュベーターに静置しコロニーが形成されるまで培養した。コロニー形成を確認した後、染色しコロニーをカウントした。
【0050】
F−4およびフェオホルバイドaの吸収スペクトルおよび溶血活性の結果を図17に、H2−aの吸収スペクトルおよび細胞毒性の結果を図18に示した。F−4およびフェオホルバイドaとは明らかに異なる吸収スペクトルを示した。図17より、溶血活性発現波長も450nmと630nmの2カ所に存在し、フェオホルバイドaの680nmとは異なっていることが分かった。従ってF−4中の活性物質は、フェオホルバイドaの類似化合物ではないと推定された。また、図18より、高純度に精製されたH2−aでは、630nm付近の活性が消失していることから、活性波長の異なる物質が存在していたと考えられる。
【0051】
ラジカル消去剤による溶血活性および細胞毒性の阻害作用
スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、カタラーゼを用い、溶血活性と細胞毒性の阻害作用を検討した。H2−aの二段階希釈を作成し(最終濃度を10.0μg/mL)、SODは200units/mL、カタラーゼは400units/mLの最終濃度となるようPBSで調整した。その後、プランクトンを培養しているインキュベーター内で光照射(4000ルックス)を5時間行い、溶血活性試験を常法により行った。その結果を図19に示した。図中、(●)はラジカル消去剤を未添加、(△)はSOD、(□)はカタラーゼの結果を表す。SOD、カタラーゼともにH2−aの活性に阻害効果をもたらすことはなかった。
【0052】
また、24wellプレートにHeLa細胞を付着させたものを用意し、培養液をアスピレーターで取り除いた。そこへSODは200units/mL、カタラーゼは400units/mLと、最終濃度がなるようにPBSで調整したものを加え、H2−aの二段階希釈を作成した(1.0μg/mL)。HeLa細胞に対する細胞毒性をコロニー形成阻害法より行った。その後、プランクトンを培養しているインキュベーター内で光照射(4000ルックス)を30分間行った。その結果を図20に示した。図中、(●)はラジカル消去剤を未添加、(△)はSOD、(□)はカタラーゼの結果を表す。溶血活性と同様にH2−aは濃度依存的に細胞毒性を発現させ、SODとカタラーゼはH2−aの活性に阻害効果をもたらすことはなかった。
【0053】
次に、ヒスチジン(Mw=209.6)、マンニトール(Mw=182.17)、アジ化ナトリウム(Mw=65.01)の最終濃度が20mMとなるようPBSで調整したものを用い、H2−aの二段階希釈を作成し、赤血球と混合した。その後、プランクトンを培養しているインキュベーター内で光照射(4000ルックス)を5時間行い、溶血活性試験を常法により行った。その結果を図21に示した。図中、(●)はラジカル消去剤を未添加、(○)はヒスチジン、(△)はマンニトール、(□)はアジ化ナトリウムを表す。3種類のラジカル消去剤の中でヒスチジンに顕著な溶血活性の阻害効果がみられた。
【0054】
また、24wellプレートにHeLa細胞を付着させたものを用意し、培養液をアスピレーターで取り除いた。そこへヒスチジン、マンニトール、アジ化ナトリウムの最終濃度が20mMとなるようPBSで調整したもので、H2−aの二段階希釈を作成した。HeLa細胞に対する細胞毒性をコロニー形成阻害法より行った。その結果を図22に示した。図中、(●)はラジカル消去剤を未添加、(○)はヒスチジン、(△)はマンニトール、(□)はアジ化ナトリウムを表す。溶血活性と同様にヒスチジンによる明らかな阻害が認められた。これらのことから、この活性物質は光照射により、一重項酸素を産生していることが示唆された。
【0055】
H2−aの蛍光スペクトル
H2−aを2.0μg/mLとなるようにPBSと混合し、日立分光蛍光光度計(650−50)に設置した。励起波長を370nmまたは420nmに合わせ、550nm〜750nmの蛍光を測定した。得られた蛍光スペクトルを図23に示した。370nmの励起波長を当てると、650nmのところにピークを検出できた。また、420nmの励起波長の方がより高く、蛍光のピークを検出することができた。
【0056】
H2−aを添加した細胞の蛍光観察
35mmガラス付きディッシュに1×104cells/mLとなるようにα−MEM+10%FCSで調製したHeLa細胞を付着させた。そこへPBSで2.0μg/mLに調整したH2−aと培地を交換し、37℃・5%CO2インキュベーターに静置した。10分後、新しいPBSに交換し、Axiovert 200のU励起波長(UV波長)にて観察を行った。図24は得られた顕微鏡写真である。図中、(A)はコントロールとしてのPBS中の細胞、(B)はH2−aを添加した細胞である。H2−aを添加した細胞にU励起の波長をあてると、赤い蛍光が細胞の輪郭に局在していることを観察することができた。また、H2−aを添加していない細胞では全くこのような現象を観察することができず、H2−aは細胞表層に付着していることが分かった。
【0057】
H2−aによるHeLa細胞の核変化の蛍光観察
H2−aによるHeLa細胞の核変化の蛍光観察をヘキスト染色法により行った。先ず、35mmガラスディッシュに1×104cells/mLとなるようにα−MEM+10%FCSで調製したHeLa細胞を準備し、細胞が付着するまで培養した。細胞が付着しているのを確認後、PBSでH2−aを0.1μg/mLとなるように調整したものと培地を交換した。5分間インキュベーターで静置した後、新しいPBSと交換し、人工気象機の中で4000ルックスの光を当てた。次に、α−MEM+10%FCSと交換し、5%・CO2インキュベーターに静置した。3時間後、α−MEM+10%FCSで150倍に薄めたHoechst 33342 solution(1.0 mg/mL H2O)を加え、5%・CO2インキュベーターに静置した。10分後、倒立型顕微鏡(Axiovert 200)のDAPI励起光で蛍光観察を行った。細胞にH2−aの処理を行わないものをコントロールとし、ジメチルスルホキシドを0.2%溶かしたもの、H2−aを細胞に添加し、その後遮光処理を行ったものも同じ操作を行った。図25は得られた顕微鏡写真である。図中、(A)は通常の培養条件下の細胞、(B)は光照射を行った0.2%ジメチルスルホキシドを添加した細胞、(C)は光照射、H2−aを添加した細胞、(D)は遮光処理、H2−aを添加した細胞である。0.2%ジメチルスルホキシドとH2−aを添加し、その後、遮光処理したものは両者ともコントロールと同様に核に変化はなかった。H2−aを添加し光を照射したものには、核が膨張している様子が確認できた。
【0058】
H2−aの結合時間およびその時の細胞毒性
24wellプレートの半数のwellには20×104cells/wellとなるよう、また半数のwellには200cells/wellとなるようHeLa細胞を付着させ、PBSで最終濃度1.0μg/mLに調整したH2−aを時間経過ごとに添加した。なお、20×104cells/wellのものは蛍光強度の測定に、200cells/wellのものは細胞毒性の測定に使用した。次に、新しいPBSでウォッシングを行った。蛍光強度を測定するwellには、SDSを1mL加え、ピペッティングで細胞を融解後、420nmの励起波長で蛍光強度を測定した。また細胞毒性の測定するwellではその時間経過ごとの毒性をコロニー染色法で測定した(光処理は4000ルックス、30分間)。その結果を図26に示した。素早く細胞表層に付着しているのが蛍光強度と細胞毒性で確認でき、さらに付着する量は時間とともに増加する傾向にあった。また、5分間のインキュベーションで細胞を完全に死滅させる量のH2−aが結合していることが分かった。
【0059】
H2−aの結合後の時間による変化
24wellプレートの半数のwellには20×104cells/wellとなるよう、また半数のwllには200cells/wellとなるようHeLa細胞を付着させ、PBSで最終濃度1.0μg/mLに調整したH2−aを添加し、37℃・5%CO2インキュベーターに静置した。30分後に、PBSでウォッシングを行い、蛍光強度を測定する20×104cells/wellのwellには、SDSを1mL加え、ピペッティングで細胞を融解後、420nmの励起波長で蛍光強度を測定した。また、200cells/wellのwellでは30分間のインキュベーションの後、PBSを培地に交換し、それぞれ決められた時間、さらに37℃・5%CO2インキュベーターでインキュベーションを行った。一定時間インキュベーションを行ったものの毒性をコロニー染色法で測定した(光処理は4000ルックス、30分間)。その結果を図27に示した。蛍光強度と細胞毒性は時間とともに低下するという結果になり、2時間までは細胞に対する毒性は強く発現されるが、3時間ほどで毒性は半分に低下することが分かった。
【0060】
H2−aの毒性が発現される時間
24wellプレートに300cells/wellとなるようにα−MEM+10%FCSで調製したHeLa細胞を付着させた。光照射の時間を異なるようにするため、一定時間経過ごとに0.5μg/mL、1.0μg/mLにPBSで調整したH2−aを培養液と交換した。光処理は4000ルックスで行い、すべての処理を終え0.5mLのα−MEM+10%FCSと交換し、37℃・5%CO2インキュベーターに静置しコロニーが形成されるまで培養を行った。コロニー形成を確認後、染色液で固定しカウントを行った。その結果を図28に示した。図中、(▲)は0.5μg/mL、(●)は1.0μg/mLの結果である。溶血活性とは異なり、かなり早い段階で細胞に対する毒性が発現した。またH2−aの濃度によって毒性の発現する時間は異なり、濃度が高いほど早く毒性が発現した。
【0061】
H2−aの活性の継続時間
H2−aを1.0μg/mLにPBSにより調整しガラス試験管に入れ、プランクトンを培養している人工気象機の中に静置した。30分間光処理(4000ルックス)を行い、300cells/wellとなるようにα−MEM+10%FCSで調製したHeLa細胞を付着させた24wellプレートに、一定時間経過ごとに添加した。すべての処理を終えた後、37℃・5%CO2インキュベーターに静置した。30分後、PBSをアスピレーターで取り除きα−MEM+10%FCSを0.5mLずつ入れ、37℃・5%CO2インキュベーターに静置しコロニーが形成されるまで培養を行った。コロニー形成を確認後、染色液で固定しカウントを行った。その結果を図29に示した。30分光処理を行ったH2−aは活性化した状態にあると思われるが、その活性が継続する時間は極めて短いものだった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の光活性化生理活性物質は、活性が強く発現される波長が460nmと630nmであることから、これまで光線力学療法に利用されているポリフィリン化合物とは異なる物質であり、光線力学療法に利用できる新規な光活性化生理活性物質として幅広い応用が考えられる。一方、本物質の原料となる赤潮プランクトンは海水を主体とする安価な培地での大量培養が容易であり、将来的な量産も実行し易い。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマの成長曲線およびそれに対する抽出液の溶血活性を示すグラフである。
【図2】ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ細胞のメタノール抽出物のゲルクロマトグラムと溶血活性を示すグラフである。
【図3】ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ細胞のメタノール抽出物のゲルクロマトグラフィー精製物の溶血活性を示すグラフである。
【図4】ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ細胞のメタノール抽出物のゲルクロマトグラフィー精製物の細胞毒性を示すグラフである。
【図5】ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ細胞のメタノール抽出物のTLC精製物の溶血活性を示すグラフである。
【図6】ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ細胞のメタノール抽出物のTLC精製物の細胞毒性を示すグラフである。
【図7】ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ細胞のメタノール抽出物(T−2)のクロマトグラムである。
【図8】ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ細胞のメタノール抽出物のHPLC精製物の溶血活性を示すグラフである。
【図9】ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ細胞のメタノール抽出物のHPLC精製物の細胞毒性を示すグラフである。
【図10】ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ細胞のメタノール抽出物のクロマトグラムである。
【図11】ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ細胞のメタノール抽出物のリクロマト精製物の溶血活性を示すグラフである。
【図12】ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ細胞のメタノール抽出物のリクロマト精製物の細胞毒性を示すグラフである。
【図13】ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ細胞のメタノール抽出物のリクロマト精製物の3Dのクロマトグラムである。
【図14】ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ細胞のメタノール抽出物のマススペクトルである。
【図15】ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ細胞のメタノール抽出物(H2−a)の各細胞に対する細胞毒性
【図16】ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ細胞のメタノール抽出物(H2−a)によるHeLa細胞の形態変化を表す顕微鏡写真である。
【図17】ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ細胞のメタノール抽出物(F−4)のゲルクロマトグラフィー精製物およびフェオホルバイド aの吸収スペクトルおよび溶血活性を示すグラフである。
【図18】ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ細胞のメタノール抽出物(H2−a)の吸収スペクトルおよび細胞毒性を示すグラフである。
【図19】スーパーオキシドジスムターゼ、カタラーゼによる溶血活性の阻害作用を示すグラフである。
【図20】スーパーオキシドジスムターゼ、カタラーゼによる細胞毒性の阻害作用を示すグラフである。
【図21】ヒスチジン、マンニトール、アジ化ナトリウムによる溶血活性の阻害作用を示すグラフである。
【図22】ヒスチジン、マンニトール、アジ化ナトリウムによる細胞毒性の阻害作用を示すグラフである。
【図23】ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ細胞のメタノール抽出物(H2−a)の蛍光スペクトルである。
【図24】ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ細胞のメタノール抽出物(H2−a)を添加したHeLa細胞の蛍光顕微鏡写真である。
【図25】ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ細胞のメタノール抽出物(H2−a)を添加したHeLa細胞の核変化を示す蛍光顕微鏡写真である。
【図26】ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ細胞のメタノール抽出物(H2−a)とHeLa細胞との結合時間に対する蛍光強度および細胞毒性の関係を示すグラフである。
【図27】ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ細胞のメタノール抽出物(H2−a)とHeLa細胞との結合後の時間に対する蛍光強度および細胞毒性の関係を示すグラフである。
【図28】ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ細胞のメタノール抽出物(H2−a)を添加したHeLa細胞への光照射時間と細胞毒性の関係を示すグラフである。
【図29】ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマ細胞のメタノール抽出物(H2−a)の活性化後のHeLa細胞に添加するまでの時間と細胞毒性の関係を示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマの培養物の抽出物であることを特徴とする光活性化生理活性物質。
【請求項2】
前記抽出物がメタノールにより抽出された抽出物である請求項1記載の光活性化生理活性物質。
【請求項3】
ゲルクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィーおよび液体クロマトグラフィーからなる群のうち少なくとも一つを用い精製を行った請求項1または2記載の光活性化生理活性物質。
【請求項4】
分子量が586または602である請求項1〜3のうちいずれか一項記載の光活性化生理活性物質。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれか一項記載の光活性化生理活性物質の光活性化方法であって、350〜500nmまたは575〜650nm波長の光を使用することを特徴とする光活性化方法。
【請求項6】
請求項1〜4のうちいずれか一項記載の光活性化生理活性物質の活性阻害方法であって、一重項酸素のラジカル消去剤を使用することを特徴とする活性阻害方法。
【請求項7】
前記一重項酸素のラジカル消去剤がヒスチジンである請求項6記載の活性阻害方法。
【請求項8】
請求項1〜4のうちいずれか一項記載の光活性化生理活性物質を使用することを特徴とする光線力学療法。
【請求項1】
ヘテロカプサ・サーキュラリスカーマの培養物の抽出物であることを特徴とする光活性化生理活性物質。
【請求項2】
前記抽出物がメタノールにより抽出された抽出物である請求項1記載の光活性化生理活性物質。
【請求項3】
ゲルクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィーおよび液体クロマトグラフィーからなる群のうち少なくとも一つを用い精製を行った請求項1または2記載の光活性化生理活性物質。
【請求項4】
分子量が586または602である請求項1〜3のうちいずれか一項記載の光活性化生理活性物質。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれか一項記載の光活性化生理活性物質の光活性化方法であって、350〜500nmまたは575〜650nm波長の光を使用することを特徴とする光活性化方法。
【請求項6】
請求項1〜4のうちいずれか一項記載の光活性化生理活性物質の活性阻害方法であって、一重項酸素のラジカル消去剤を使用することを特徴とする活性阻害方法。
【請求項7】
前記一重項酸素のラジカル消去剤がヒスチジンである請求項6記載の活性阻害方法。
【請求項8】
請求項1〜4のうちいずれか一項記載の光活性化生理活性物質を使用することを特徴とする光線力学療法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図16】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図16】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2006−137683(P2006−137683A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−326540(P2004−326540)
【出願日】平成16年11月10日(2004.11.10)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月10日(2004.11.10)
【出願人】(503360115)独立行政法人科学技術振興機構 (1,734)
【Fターム(参考)】
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