説明

新規な殺微生物剤

一般式(I)の化合物(その置換基は、請求項1に定義されている)は、殺微生物剤として適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺微生物活性(特に殺真菌活性)のある新規なカルボキサミドに関する。本発明はさらに、これら化合物の調製に用いられる中間体と、これらの化合物を含む組成物と、農業または園芸でこれらの化合物を利用した植物への植物病原性微生物(真菌が好ましい)の感染の制御または予防にも関する。
【背景技術】
【0002】
チエニルエチルアミドと、それを殺真菌剤として利用することは、例えばWO 2008/151828に記載されている。特定の置換パターンを持つ新規なチエニルエチルアミドが殺微生物活性を有することが見いだされた。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
そこで本発明は、一般式(I)のN-アルコキシカルボキサミド:
【化1】


と、これら化合物の農業的に許容可能な塩/異性体/構造異性体/立体異性体/ジアステレオマー/鏡像異性体/互変異性体と、これら化合物のN-オキシドに関する。ただし一般式(I)において、
R1はC1〜C4アルキルまたはC1〜C4ハロアルキルであり;
R2は、水素、フルオロ、クロロのいずれかであり;
R3は水素またはC1〜C4アルキルであり;
R4とR5は、互いに独立に、水素またはC1〜C4アルキルであり;
Xは、酸素、イオウ、存在しないのいずれかであり;
R6は、Xが酸素またはイオウであるときにはC1〜C4アルキルまたはC1〜C4ハロアルキルであり、Xが存在しないときには水素であり;
R7、R8、R9は、互いに独立に、水素、ハロゲン、≡-R10のいずれかだが、R7、R8、R9のうちの少なくとも1つは水素ではなく;
R10は、水素、C1〜C6アルキル、C1〜C6ハロアルキル、C1〜C4アルコキシアルキルのいずれかである。
【0004】
置換基の定義に現われるアルキル基は、直鎖または分岐鎖が可能であり、例えばメチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、イソ-プロピル、n-ブチル、s-ブチル、イソ-ブチル、t-ブチルなどがある。アルコキシ基とアルキニル基は、ここに述べたアルキル基から誘導される。ハロゲンは、一般に、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素だが、好ましいのはフッ素、臭素、塩素である。それは、他の意味と組み合わせたハロゲン(例えばハロゲンアルキル)にも当てはまる。ハロアルキル基は、鎖の長さが炭素原子1〜4個であることが好ましい、ハロアルキルは、例えば、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、2-フルオロエチル、2クロロエチル、ペンタフルオロエチル、1,1-ジフルオロ-2,2,2-トリクロロエチル、2,2,3,3-テトラフルオロエチル、2,2,2-トリクロロエチルであり;好ましいのは、トリクロロメチル、ジフルオロクロロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ジクロロフルオロメチルである。アルコキシは、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、i-プロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、s-ブトキシ、t-ブトキシであり;好ましいのはメトキシとエトキシである。構造異性体は、例えば位置異性体、鏡像異性体、ジアステレオマーである。
【0005】
一般式(I)の好ましい化合物では、互いに独立に、
a)R1は、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、メチルのいずれかである;
b)R2は水素またはフルオロである;
d)R3は、水素、メチル、エチルのいずれかである;
e)R4は水素またはメチルである;
f)R5は水素またはメチルである;
g)R6がメチルであり;
h)Xは酸素である;
i)Xは存在せず、かつR6がメチルである;
j)R7、R8、R9は、互いに独立に、水素、クロロ、ブロモのいずれかだが、R7、R8、R9のうちの少なくとも1つは水素でない。
【0006】
一般式(I)の特に好ましい化合物は、
R1がジフルオロメチルまたはトリフルオロメチルであり;
R2が水素であり;
R3がメチルであり;
R4が水素であり;
R5がメチルであり;
Xが存在せず、かつR6が水素であるか;
Xが酸素であり、かつR6がメチルであり;
R7、R8、R9が、互いに独立に、水素またはクロロだが;R7、R8、R9のうちの少なくとも1つは水素でない化合物である。
【0007】
一般式(I)の化合物の別の好ましいグループは、一般式(Ia)の化合物:
【化2】


によって表わされる。ただしAは、A1、A2、A3
【化3】


からなるグループの中から選択され、R3、R4、R6、R7、R8、R9、Xは、上の一般式(I)で定義した通りである。
【0008】
一般式(I)の化合物の別の好ましいグループは、一般式(Ib)の化合物:
【化4】


によって表わされる。ただしAは、A1、A2、A3
【化5】


からなるグループの中から選択され、R3、R4、R6、R7、R8、R9、Xは、上の一般式(I)で定義した通りである。
【0009】
一般式(Ia)と(Ib)の好ましい化合物では、互いに独立に、
a)R3は、水素、メチル、エチルのいずれかである;
b)R4は水素またはメチルである;
c)R6はメチルである;
d)Xは酸素である;
e)Xは存在せず、かつR6がメチルである;
f)R7、R8、R9は、互いに独立に、水素、クロロ、ブロモのいずれかだが、R7、R8、R9のうちの少なくとも1つは水素でない。
【0010】
一般式(Ia)と(Ib)の特に好ましい化合物は、
R3がメチルであり;
R4が水素であり;
Xが存在せず、かつR6が水素であるか;
Xが酸素であり、かつR6がメチルであり;
R7、R8、R9が、互いに独立に、水素またはクロロだが;R7、R8、R9のうちの少なくとも1つは水素でない化合物である。
【0011】
一般式(I)の化合物の別の好ましいグループでは、置換基は以下の意味を持つ:
R1はC1〜C4ハロアルキルであり;
R2は水素またはフルオロであり;
R3は水素またはC1〜C4アルキルであり;
R4は水素またはC1〜C4アルキルであり;
R5は水素であり;
Xは酸素であるか存在せず;
R6は、Xが酸素のときはC1〜C4アルキルであり、Xが存在しないときには水素であり;
R7、R8、R9は、互いに独立に、水素またはハロゲンである。
【0012】
他の特に好ましい化合物は、一般式(F1)、(F2)、(F3)、(F4)の化合物からなるグループの中から選択される。
【化6】


【化7】

【0013】
一般式(I)の化合物は、スキーム1〜6に記載した一般的な合成経路に従って調製することができる。スキーム1、3、5では、Xは存在せず、R6は水素である。A4は、基:
【化8】


を表わす。ただしその中のR1と R2は、上に一般式(I)で定義した通りである。
【0014】
【化9】

【0015】
【化10】

【0016】
【化11】

【0017】
【化12】

【0018】
【化13】

【0019】
【化14】

【0020】
一般式(I)の化合物を得るための反応は、非プロトン性の不活性な有機溶媒の中で起こさせることが好ましい。そのような溶媒は、炭化水素(例えばベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン)、塩素化された炭化水素(例えばジクロロメタン、トリクロロメタン、テトラクロロメタン、クロロベンゼン)、エーテル(例えばジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン)、ニトリル(例えばアセトニトリル、プロピオニトリル)、アミド(例えばN,N-ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、N-メチルピロリジノン)である。反応温度は-20℃〜+120℃が好ましい。一般に、反応はわずかに発熱性であるため、たいていは周囲温度で行なわせることができる。反応時間を短縮するため、または反応を開始させるため、反応混合物を、短時間、その混合物の沸点まで加熱するとよい。反応時間は、反応触媒として数滴の塩基を添加することによっても短くできる。適切な塩基は、特に、第三級アミン(例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、キヌクリジン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン、1,5-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデス-7-エン)である。しかし無機塩基である水素化物(例えば水素化ナトリウム、水素化カルシウム)、水酸化物(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)、炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム)、炭酸水素塩(例えば炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム)も塩基として使用できる。塩基はそのまま使用すること、または触媒量の相間移動触媒(例えばクラウンエーテル、その中でも特に48-クラウン-6)とともに、またはテトラアルキルアンモニウム塩とともに使用することができる。
【0021】
一般式(II)の中間体:
【化15】


(ただしR3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、Xは、上の一般式(I)で定義した通りである)は、一般式(I)の化合物を調製するために特に開発されたものであり、したがって本発明のさらに別の目的を構成する。
【0022】
一般式(II)の好ましい中間体は、一般式(IIa)と(IIb)の化合物:
【化16】


によって表わされる。ただしR3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、Xは、上の一般式(I)で定義した通りである。一般式(I)の化合物に関する好ましい置換基の定義が、一般式(II)、(IIa)、(IIb)の化合物でも有効である。
【0023】
一般式(I)の化合物と、適切な場合のその互変異性体は、適切な場合には、水和物の形態で得ること、および/または他の溶媒(例えば固体形態で存在している化合物の結晶化に用いられてきた溶媒)を含むこともできる。
【0024】
本発明による一般式(I)の化合物は、実用上、植物病原性微生物(例えば真菌、細菌、ウイルス)によって引き起こされる疾患から有用な植物を保護する上で非常に有利な活性スペクトルを有することが見いだされた。
【0025】
本発明は、植物への植物病原性微生物の感染を制御または防止するため、一般式(I)の化合物を、活性成分として、植物、その植物の部分、その植物が生えている場所のいずれかに散布する操作を含む方法に関する。本発明による一般式(I)の化合物は、少ない散布量で優れた活性を示すとともに、植物によってよく許容され、環境にとって安全であることを特徴とする。この化合物は、非常に有用な治療特性、予防特性、全身特性を持つため、多数の有用な植物を保護するのに用いられる。一般式(I)の化合物は、有用なさまざまな作物またはその部分(果実、花、葉、茎、塊茎、根)に発生する病気を抑制する、またはなくすと同時に、あとから成長するこうした部分を例えば植物病原性微生物から保護するのに使用できる。
【0026】
一般式(I)の化合物を被覆剤として用い、植物増殖材料(特に種子(果実、塊茎、穀粒))や植物の挿し穂(例えばイネ)を処理したり、真菌の感染や土中に発生する植物病原性真菌から保護したりすることもできる。
【0027】
さらに、本発明による一般式(I)の化合物は、関連する分野(例えば工業材料(木や、木に関係する工業材料)の保護、食物の保管、衛生管理)で真菌を制御するのに使用できる。
【0028】
一般式(I)の化合物は、例えば以下のクラスの植物病原性真菌に対して有効である:不完全菌類(例えばボトリチス、ピリクラリア、ヘルミントスポリウム、フザリウム、セプトリア、ケルコスポラ、アルテルナリア)、担子菌類(例えばリゾクトニア、ヘミレイア、プクキニア)。さらに、この化合物は、子嚢菌類(例えばベンチュリア、エリシフェ、ポドスフェラ、モニリニア、ウンキヌラ)と卵菌類(例えばフィトフトラ、ピチウム、プラスモパラ)に対しても有効である。著しい活性が、うどん粉病菌(エリシフェ属)に対して観察されている。さらに、一般式(I)の新規な化合物は、植物病原性細菌とウイルス(例えばキサントモナス属、シュードモナス属、エルウィニア・アミロボラ、タバコモザイクウイルス)に対しても有効である。優れた活性が、アジアダイズさび病菌(ファコプソラ・パキリジ)に対して観察されている。
【0029】
本発明の範囲では、保護すべき有用な植物の典型例として、以下の植物種がある:穀類(コムギ、オオムギ、ライムギ、オートムギ、イネ、トウモロコシ、モロコシ、ならびに関連する種);ビート(サトウダイコン、飼料ビート);梨果、核果、小果実(例えばリンゴ、ナシ、プラム、モモ、アーモンド、サクランボ、イチゴ、ラズベリー、ブラックベリー);マメ類(インゲンマメ、レンズマメ、エンドウマメ、ダイズ);油性植物(セイヨウアブラナ、カラシ、ポピー、オリーブ、ヒマワリ、ココナツ、ヒマ、カカオマメ、ピーナツ);ウリ科植物(カボチャ、キュウリ、メロン);繊維植物(ワタ、アマ、アサ、ジュート);柑橘類(オレンジ、レモン、グレープフルーツ、ミカン);野菜(ホウレンソウ、レタス、アスパラガス、キャベツ、ニンジン、タマネギ、トマト、ジャガイモ、パプリカ);クスノキ科(アボカド、シナモン、ショウノウ)や;タバコ、ナッツ、コーヒー、ナス、サトウキビ、茶、コショウ、ブドウの木、ホップ、バナナ、天然ゴムの木、装飾植物。
【0030】
“有用な植物”という用語には、育種または遺伝子工学の従来法を用いた結果として除草剤(例えばブロモキシニル)やさまざまなクラスの除草剤(例えばHPPD阻害剤、ALS阻害(例えばプリミスルフロン、プロスルフロン、トリフロキシスルフロン)、EPSPS(5-エノール-ピロビル-シキメート-3-ホスフェート-シンターゼ)阻害剤、GS(グルタミンシンテターゼ)阻害剤、PPO(プロトポルフィリノーゲン-オキシダーゼ)阻害剤)に対して寛容にされた有用な植物も含まれるものとする。従来の育種法(突然変異誘発)によってイミダゾリノン(例えばイマザモクス)に対して寛容にされた作物の一例は、Clearfield(登録商標)サマーレイプ(カノラ)である。遺伝子工学の方法によって除草剤やさまざまなクラスの除草剤に対して寛容にされた作物の例としてグリホサート耐性トウモロコシとグルホシネート耐性トウモロコシのさまざまな品種があり、RoundupReady(登録商標)、Herculex I(登録商標)、LibertyLink(登録商標)の商標名で市販されている。
【0031】
“有用な植物”という用語には、組み換えDNA技術を利用することで、選択的に作用する1種類以上の毒素(例えば毒素産生細菌、特にバシラス属の細菌からの毒素)を合成できるように改変された有用な植物も含まれるものとする。
【0032】
そのような植物の例は、YieldGard(登録商標)(CrylA(b)毒素を発現するトウモロコシ品種);YieldGard Rootworm(登録商標)(CryIIIB(b1)毒素を発現するトウモロコシ品種);YieldGard Plus(登録商標)(CryA(b)毒素とCryIIIB(b1)毒素を発現するトウモロコシ品種);Starlink(登録商標)(Cry9(c)毒素を発現するトウモロコシ品種);Herculex I(登録商標)(CryIF(a2)毒素と、除草剤グルホシネートアンモニウムに対する寛容性を実現するための酵素ホスフィノトリシンN-アセチルトランスフェラーゼ(PAT)を発現するトウモロコシ品種);NuCOTN 33B(登録商標)(CryIA(c)毒素を発現するワタ品種);Bollgard I(登録商標)(CryIA(c)毒素を発現するワタ品種);Bollgard II(登録商標)(CryIA(c)毒素とCryIIA(b)毒素を発現するワタ品種);VIPCOT(登録商標)(VIP毒素を発現するワタ品種);NewLeaf(登録商標)(CryIIIA毒素を発現するジャガイモ品種);Nature-Gard(登録商標)Agrisure(登録商標)GT Advantage(GA21グリホサート寛容形質)、Agrisure(登録商標)CB Advantage(Bt11アワノメイガ(CB)形質)、 Agrisure(登録商標)RW Advantage(トウモロコシ・センチュウ形質)、Protecta(登録商標)である。
【0033】
“有用な植物”という用語には、組み換えDNA技術を利用することで、選択的な作用を有する抗病原物質(例えばいわゆる“病原関連タンパク質”(PRP、例えばヨーロッパ特許公開EP-A-0 392 225を参照のこと))を合成できるように改変された有用な植物も含まれるものとする。そのような抗病原物質と、そのような抗病原物質を合成できるトランスジェニック植物の例は、例えばヨーロッパ特許公開EP-A-0 392 225、WO 95/33818、ヨーロッパ特許公開EP-A-0 353 191によって公知である。そのようなトランスジェニック植物の生産方法は当業者に広く知られており、例えば上記の公開公報に記載されている。
【0034】
この明細書では、有用な植物の“場所”という用語に、有用な植物の植物増殖材料を播くか土の中に移すかした結果としてその有用な植物が成長している場所が含まれるものとする。そのような場所の一例は、作物が成長している畑である。
【0035】
“植物増殖材料”という用語は、植物のうちでその植物を増やすのに使用できる生殖部分(例えば種子)や、生長材料(挿し穂や塊茎(例えばジャガイモ))を意味するものとする。例として、(厳密な意味での)種子、根、果実、塊茎、球根、地下茎、植物のいろいろな部分などが挙げられよう。発芽した植物と、発芽後または土から芽を出した後に移植されることになる若い植物も挙げられる。若い植物は、移植する前に全体または一部を浸漬処理して保護するとよい。“植物増殖材料”は、種子を表わすことが好ましい。
【0036】
一般式(I)の化合物は、そのままの形態で使用できるが、従来の製剤で一般に用いられている基剤およびアジュバントとともに使用するほうが好ましい。
【0037】
したがって本発明は、植物病原性微生物を制御してその植物病原性微生物から保護するため、一般式(I)の化合物と不活性な基剤とを含む組成物に関するとともに、有用な植物への植物病原性微生物の感染を制御または防止するため、活性成分としての一般式(I)の化合物と不活性な基剤とを含む組成物を、植物、その植物の部分、その植物が生えている場所のいずれかに散布する操作を含む方法にも関する。
【0038】
この目的を実現するため、一般式(I)の化合物と不活性な基剤は、通常は、公知の方法で、乳化可能な濃縮液、被覆可能なペースト、直接スプレーできる溶液、希釈できる溶液、希釈したエマルジョン、湿潤化可能な粉末、可溶性粉末、ダスト、顆粒、カプセル(例えばポリマー物質の中に封入される)にされる。組成物のタイプと同様、散布法(例えばスプレー、噴霧、散布、ばらまき、被覆、注入)を目的と周囲環境に合わせて選択する。組成物は、さらに別のアジュバント(例えば安定剤、発泡防止剤、粘性調節剤、結合剤、粘着付与剤、肥料、微量栄養素や、植物の成長に影響を与えるそれ以外の調製物)を含むこともできる。
【0039】
適切な基剤とアジュバントは固体でも液体でもよく、それは製剤化技術において有用な物質(天然の無機物質、再生された無機物質、溶媒、分散剤、湿潤剤、粘着付与剤、増粘剤、結合剤、肥料)である。このような基剤は、例えばWO 97/33890に記載されている。
【0040】
一般式(I)の化合物、または活性成分としての一般式(I)の化合物と不活性な基剤とを含む組成物は、別の化合物と同時に、または順番に、植物が生えている場所、または処理する植物に散布することができる。その別の化合物として、例えば肥料や、微量栄養素や、植物の成長に影響を与えるそれ以外の調製物が可能である。その別の化合物は、選択的除草剤、殺虫剤、殺真菌剤、殺菌剤、殺線虫剤、殺陸貝剤でもよく、望むのであれば、これら調製物のうちのいくつかと、従来の製剤で一般に用いられている基剤、界面活性剤、付着促進アジュバントとの混合物であってもよい。
【0041】
一般式(I)の化合物、または活性成分としての一般式(I)の化合物と不活性な基剤とを含む組成物を散布する好ましい1つの方法は、葉に付着させるというものである。付着させる頻度と付着量は、対応する病原菌の感染リスクによって異なる。しかし一般式(I)の化合物は、植物が生えている場所に液体製剤を散布することによって、またはその化合物を固体形態(例えば顆粒の形態)で土に散布すること(土への散布)によって、土から根を通して植物に浸透させること(全身作用)もできる。水田栽培のイネでは、そのような顆粒を水田に散布することができる。一般式(I)の化合物は、この殺真菌剤の液体製剤の中に種子または塊茎を浸すことによって、または固体製剤を種子または塊茎に被覆することによって付着させること(被覆)もできる。
【0042】
製剤、すなわち一般式(I)の化合物と、望むのであれば固体または液体のアジュバントとを含む組成物は、公知の方法で調製される。典型的には、その混合物を増量剤(例えば溶媒、固体基剤や、場合によっては界面活性化合物(界面活性剤))とともに混合および/または粉砕する。
【0043】
農業化学製剤は、通常は、0.1〜99重量%(0.1〜95重量%が好ましい)の一般式(I)の化合物と、99.9〜1重量%(99.8〜5重量%が好ましい)の固体または液体のアジュバントと、0〜25重量%(0.1〜25重量%が好ましい)の界面活性剤を含んでいる。
【0044】
市販の製品は濃縮液にすることが好ましいが、エンド・ユーザーは、通常は希釈した製剤を使用することになる。
【0045】
望ましい散布量は、通常は、1ヘクタール(ha)につき活性成分(a.i.)が5g〜2kgである。この量は、10g〜1kg a.i./haであることが好ましく、20g〜600g a.i./haであることが最も好ましい。種子浸漬剤として用いる場合には、好ましい付着量は、種子1kgにつき活性物質が10mg〜1gである。望む作用を得るための付着量は実験によって決定できる。その量は、例えば作用のタイプ、有用な植物の成長段階、散布(場所、時期、付着法)に依存し、これらのパラメータのために広い範囲で異なる可能性がある。
【0046】
驚くべきことに、一般式(I)の化合物は、有用な作物を植物病原性生物の攻撃から保護したり、植物病原性生物に感染した有用な作物を治療したりする方法でも利用できることが見いだされた。この方法は、グリホサートと一般式(I)の少なくとも1種類の化合物の組み合わせを、植物(ただしこの植物はグリホサートに対する抵抗力または感受性がある)またはその植物が生えている場所に散布する操作を含んでいる。
【0047】
この方法により、グリホサートなしで一般式(I)の化合物を用いる場合と比べて病気の制御を予想外に改善することができる。この方法は、一般式(I)の化合物による病気の制御を促進する上で有効である。グリホサートと一般式(I)の少なくとも1種類の化合物の混合物は、一般式(I)の化合物によって少なくとも部分的に制御される病気のスペクトルを広げることができる一方で、一般式(I)の化合物によってある程度制御されることがすでに知られている病気に対する一般式(I)の化合物の活性の増大も、観察される効果である。
【0048】
本発明の方法は、菌類界、担子菌門、サビキン綱、サビキン亜綱、サビキン目の植物病原性生物(一般にサビキンと呼ばれる)に対して特に有効である。農業に特に大きな影響のあるサビキンとして、ファコプソラ科のもの(特にファコプソラ属のもので、例えばファコプソラ・パキリジ(アジアダイズさび病菌とも呼ばれる))とプクキニア科のもの(特にプクキニア属のもので、例えば穀類で問題のある病気を起こすプクキニア・グラミニス(茎さび病菌または黒さび病菌としても知られる)や、プクキニア・レコンディタ(赤さび病菌としても知られる))がある。
【0049】
この方法の一実施態様は、有用な作物を植物病原性生物の攻撃から保護する方法および/または植物病原性生物に感染した有用な作物を治療する方法であり、この方法は、グリホサート(その塩やエステルも含む)と、その植物病原性生物に対する活性を有する一般式(I)の少なくとも1種類の化合物を、植物、その植物の一部、その植物が生えている場所のうちの少なくとも1つに散布する操作を含んでいる。
【0050】
上記の一般式(I)の化合物またはその医薬塩は、動物への微生物感染の治療および/または予防に対する有利な活性スペクトルを有する。“動物”は任意の動物が可能であり、例えば、昆虫、哺乳動物、爬虫類、魚類、両生類などが挙げられる。しかしその中で哺乳動物が好ましく、ヒトが最も好ましい。“治療”は、微生物に感染した動物に使用して、その感染の増大または広がりを減らす、または遅延させる、または停止させること、またはその感染を減らすこと、またはその感染から治癒させることを意味する。“予防”は、微生物に感染した明らかな徴候のない動物に使用して、将来のあらゆる感染を防ぐこと、または将来の感染の増大または広がりを減らしたり遅延させたりすることを意味する。
【0051】
本発明によれば、動物の微生物感染を治療および/または予防するのに用いる薬の製造への一般式(I)の化合物の利用法が提供される。医薬としての一般式(I)の化合物の利用法も提供される。動物の治療における抗微生物剤としての一般式(I)の化合物の利用法も提供される。本発明によれば、活性成分としての一般式(I)の化合物またはその医薬として許容可能な塩と、医薬として許容可能な希釈剤または基剤とを含む医薬組成物も提供される。この組成物は、動物の微生物感染の治療および/または予防に使用できる。この医薬組成物は、経口投与に適した形態(例えば錠剤、ロゼンジ、硬質カプセル、水性懸濁液、油性懸濁液、エマルジョン、分散可能な粉末、分散可能な顆粒、シロップ、エリキシル)にすることができる。あるいはこの医薬組成物は、局所塗布に適した形態(例えばスプレー、クリーム、ローション)にすることができる。あるいはこの医薬組成物は、非経口投与に適した形態(例えば注射液)にすることができる。あるいはこの医薬組成物は、吸入可能な形態(例えばエーロゾル・スプレー)にすることができる。
【0052】
一般式(I)の化合物は、動物に微生物感染を起こさせることのできるさまざまな微生物種に対して有効である可能性がある。そのような微生物種の例は、アスペルギルス症を引き起こす種(例えばアスペルギルス・フミガトゥス、アスペルギルス・フラブス、アスペルギルス・テルス、アスペルギルス・ニドゥランス、アスペルギルス・ニゲール)、ブラストミセス症を引き起こす種(例えばブラストミケス・デルマティティディス)、カンジダ症を引き起こす種(例えばカンジダ・アルビカンス、カンジダ・グラブラタ、カンジダ・トロピカリス、カンジダ・パラプシロシス、カンジダ・クルセイ、カンジダ・ルシタニアエ)、コクシジオイデス症を引き起こす種(例えばコクシジオイデス・イミティス)、クリプトコックス症を引き起こす種(例えばクリプトコックス・ネオフォルマンス)、ヒストプラスマ症を引き起こす種(例えばヒストプラスマ・カプスラトゥム)、接合真菌症を引き起こす種(例えばアブシディア・コリムビフェラ、リゾムコール・プシルス、リゾプス・アルヒズス)である。さらに別の例は、フザリウム属(フザリウム・オキシスポルム、フザリウム・ソラニ)、スケドスポリウム属(例えばスケドスポリウム・アピオスペルムム、スケドスポリウム・プロリフィカンス)である。さらに別の例は、ミクロスポルム属、トリコフィトン属、エピデルモフィトン属、ムコール属、スポロトリクス属、フィアロフォラ属、クラドスポリウム属、ペトリエリジウム属、パラコクシジオイデス属、ヒストプラズマ属である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
例示としての以下の実施例において、上に説明した本発明をより詳しく説明するが、本発明がこれらの実施例に限定されることはない。
【実施例1】
【0054】
調製例
実施例P1:3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸メトキシ[1-メチル-2-(2,4,5-トリクロロチオフェン-3-イル)エチル]アミド(化合物番号1.001)の調製:
【化17】


スルホン化用フラスコの中で、実施例P2のc)で調製した171mg(0.62ミリモル)のアミンと、94mg(0.93ミリモル)のトリエチルアミンを10mlの塩化メチレンに溶かした。次に、139mg(0.72ミリモル)の3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸クロリドと10mlの塩化メチレンの混合物を撹拌しながら周囲温度でゆっくりと添加した。周囲温度にて24時間にわたって撹拌した後、ウォーター・ジェット真空の中で溶媒を蒸発させ、残留物をシリカゲル上のカラム・クロマトグラフィによって精製した(溶離液:酢酸エチル/ヘプタン 1:2)。得られた油(254mg)をヘプタンからの再結晶化によってさらに精製した。収量:198mg(理論値の74%)の白色の結晶;融点70〜72℃。
【0055】
実施例P2:O-メチル-N-[1-メチル-2-(2,4,5-トリクロロチオフェン-3-イル)エチル]ヒドロキシルアミン(化合物番号7.001)の調製:
a)2,3,5-トリクロロ-4-((E/Z)-2-ニトロプロペニル)チオフェンの調製
【化18】


15.1g(0.07モル)の2,4,5-トリクロロチオフェン-3-カルバルデヒドと、36g(0.48モル)のニトロエタンと、12.9g(0.167モル)の酢酸ナトリウムと、100mlの酢酸を含む混合物を撹拌しながら6時間にわたって85℃の温度に加熱した。この混合物を冷却した後、600mlのt-ブチルメチルエーテルで希釈し、有機相を水で5回洗浄した。乾燥させて溶媒を蒸発させた後、残留物をカラム・クロマトグラフィによって精製した(溶離液:t-ブチルメチルエーテル/ヘプタン 1:50〜1:10)。収量:10.9g(理論値の57%)の茶色の油。1H-NMR (CDCl3):2.25/s/3H、7.61/s/1H(E異性体またはZ異性体)。
【0056】
b)1-(2,4,5-トリクロロチオフェン-3-イル)プロパン-2-オンの調製
【化19】


スルホン化用フラスコの中で、0.5g(1.83ミリモル)の2,3,5-トリクロロ-4-((E/Z)-2-ニトロプロペニル)チオフェンを、2mlの水と6mlのメタノールの混合物の中に溶かした。次に0.23g(4.1ミリモル)のFe粉末を添加してから30秒間撹拌した後、1.2mlの濃塩化水素水溶液を添加した。周囲温度にて1時間にわたって再び撹拌した後、231mgのFe粉末と1.2mlの濃塩化水素水溶液を添加し、この混合物を75℃の温度にて2時間にわたって撹拌した。同量のFe粉末と塩化水素溶液を再び添加した後、この混合物を75℃の温度にてさらに5時間にわたって撹拌した。薄層クロマトグラフィによって出発材料が完全に消失したことがわかったため、この混合物を120mlの酢酸エチルで希釈した。次に、得られた混合物を水で3回処理し、有機相を分離して乾燥させ、ウォーター・ジェット真空の中で溶媒を蒸発させると、粗材料が得られた。この粗材料をカラム・クロマトグラフィによって精製した(溶離液:酢酸エチル/ヘプタン 1:4)。収量:349mg(理論値の78%)のわずかに茶色の油。1H-NMR (CDCl3):2.23/s/3H、3.71/s/2H。
【0057】
c)1-(2,4,5-トリクロロチオフェン-3-イル)プロパン-2-オン O-メチルオキシム(E/Z異性体混合物)の調製:
【化20】


スルホン化用フラスコの中で、306mg(1.26ミリモル)のプロパン-2-オンを4mlのメタノールに溶かした。次に131mg(1.57ミリモル)のO-メチルヒドロキシルアミンヒドロクロリドを添加し、そのしばらくあとに125mg(1.57ミリモル)のピリジンを添加した。得られた混合物を周囲温度にて16時間にわたって撹拌した後、75mlの酢酸エチルで希釈した。有機相を水で3回洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ウォーター・ジェット真空の中で溶媒を蒸発させると、粗材料が得られた。この粗材料(343mgのオレンジ色の油)は、さらに化学的に変換するのに十分な純度のE/Z混合物であった。1H-NMR (CDCl3):1.70/d/3H 少量の異性体、1.79/s/3H 主要な異性体、3.49/s/2H 主要な異性体、3.70/s/2H 少量の異性体、3.87/s/3H 主要な異性体、3.89/s/3H 少量の異性体。
【0058】
d)O-メチル-N-[1-メチル-2-(2,4,5-トリクロロチオフェン-3-イル)エチル]ヒドロキシルアミン(化合物番号7.001)の調製:
【化21】


スルホン化用フラスコの中で、299mg(1.1ミリモル)の1-(2,4,5-トリクロロチオフェン-3-イル)プロパン-2-オン O-メチルオキシムを3.5mlの酢酸に溶かし、得られた混合物を15℃の温度まで冷却した。次に138mg(2.2ミリモル)のシアノホウ水素化ナトリウムを添加し、得られた反応混合物を周囲温度にて7時間にわたって撹拌した。次にこの混合物を20mlの水で注意深く希釈し、4Nの水酸化ナトリウム溶液をゆっくりと16ml添加することによってpHを約10に調節した。この混合物を酢酸エチルで3回抽出し、1つにまとめた有機相を水で2回洗浄した。乾燥させて溶媒を蒸発させた後、残留物をカラム・クロマトグラフィによって精製した(溶離液:酢酸エチル/ヘプタン 1:9)。収量:304mg(理論値の100%)の無色の液体(NMRのデータについては表9参照)。
【0059】
実施例P3:3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸メトキシ[2-メトキシ-1-メチル-2-(2,4,5-トリクロロチオフェン-3-イル)エチル]アミド(化合物1.016)の調製:
【化22】


スルホン化用フラスコの中で、スキーム2に概略を示した方法に従って調製した257mg(0.6ミリモル)の3-ジフルオロメチル-1-メチル-1H-ピラゾール-4-カルボン酸メトキシ-[2-メトキシ-1-メチル-2-(2,4,5-ジクロロチオフェン-3-イル)エチル]アミド(化合物1.037)を2.5mlの酢酸に溶かした。次に、5%の塩素(0.72ミリモル)を含む1.02gの酢酸溶液を冷却下(氷浴)でゆっくりと添加した。この混合物を16時間にわたって撹拌した後、5%の塩素を含む0.26gの酢酸溶液を再び添加し、72時間にわたって撹拌を続けた。次にこの混合物を12mlの水で希釈し、4Nの水酸化ナトリウム水溶液を14ml添加することによってわずかに塩基性のpHに調節した。次に水相を酢酸エチルで3回抽出した。有機相を乾燥させ、ウォーター・ジェット真空の中で溶媒を蒸溜して除去すると、粗生成物が得られた(270mgの油)。この粗材料をシリカゲル上のカラム・クロマトグラフィによって精製した(溶離液:酢酸エチル/ヘプタン/塩化メチレン 1:1:1)。収量:179mg(理論値の64%)の白色の結晶;融点113〜116℃、ジアステレオマー比18:1。
【0060】
表1〜3:一般式(Ia)の化合物:
本発明を、以下の表1〜3に示した一般式(Ia)の好ましい個々の化合物によってさらに説明する。特徴のデータを表9に示す。
【化23】

【0061】
一般式(Ia)の化合物において、Aは、A1、A2、A3
【化24】


からなるグループの中から選択される。
【0062】
以下の表Yに続く表1〜3のそれぞれには、一般式(Ia)においてR3、R4、R5、X、R7、R8、R9が表Yに示したものであり、Aがその表1〜3に示したものである37種類の化合物が含まれている。したがって表1は、Yが1でAが表1に示したものであるときの表Yに対応し、表2は、Yが2でAが表2に示したものであるときの表Yに対応し、表3も同様である。
【0063】
以下の表1〜3では、“Me”はメチルであり、“Et”はエチルである。
【0064】
【表1】


【表2】

【0065】
表1は、一般式(Ia)においてAがA1
【化25】


であり、R3、R4、R6、X、R7、R8、R9が表Yに定義したものである37種類の化合物を提供する。
【0066】
例えば化合物(1.001)は以下の構造を有する。
【化26】

【0067】
表2は、AがA2
【化27】


であり、R3、R4、R6、X、R7、R8、R9が表Yに定義したものである37種類の化合物を示提供する。
【0068】
例えば化合物(2.002)は以下の構造を有する。
【化28】

【0069】
表3は、AがA3
【化29】


であり、R3、R4、R6、X、R7、R8、R9が表Yに定義したものである37種類の化合物を提供する。
【0070】
表4〜6:一般式(Ib)の化合物:
本発明を、以下の表4〜6に示した一般式(Ib)の好ましい個々の化合物によってさらに説明する。特徴のデータを表9に示す。
【化30】


一般式(Ib)の化合物において、Aは、A1、A2、A3
【化31】


からなるグループの中から選択される。
【0071】
表4〜6のそれぞれには、一般式(Ib)においてR3、R4、R5、X、R7、R8、R9が表Yに示したものであり、Aが対応する表4〜6に示したものである37種類の化合物が含まれている。したがって表4は、Yが4でAが表4に示したものであるときの表Yに対応し、表5は、Yが5でAが表5に示したものであるときの表Yに対応し、表6も同様である。
【0072】
表4は、AがA1
【化32】


であり、R3、R4、R6、X、R7、R8、R9が表Yに定義したものである37種類の化合物を提供する。
【0073】
例えば化合物(4.001)は以下の構造を有する。
【化33】

【0074】
表5は、AがA2
【化34】


であり、R3、R4、R6、X、R7、R8、R9が表Yに定義したものである37種類の化合物を提供する。
【0075】
例えば化合物(5.002)は以下の構造を有する。
【化35】

【0076】
表6は、AがA3
【化36】


であり、R3、R4、R6、X、R7、R8、R9が表Yに定義したものである37種類の化合物を提供する。
【0077】
【表3】


【表4】

【0078】
表7(Z=7)に、一般式(IIa):
【化37】


の32種類の化合物(アミン中間体)を記載してある。その物理的データは表9に示す。
【0079】
表8(Z=8)に、一般式(IIb):
【化38】


の32種類の化合物(アミン中間体)を記載してある。その物理的データは表9に示す。
【0080】
表9:特徴のデータ:
表9は、表1〜8の化合物に関して選択した融点とNMRデータを示している。特に断わらない限り、CDCl3をNMR測定のための溶媒として用いる。溶媒の混合物が存在している場合には、それを例えばCDCl3/d6-DMSOとして示す。あらゆるケースのすべての特徴のデータを示すつもりはない。
【0081】
表9と以下の説明全体を通じ、温度は摂氏で表わす。“NMR”は、核磁気共鳴スペクトルを意味する。MSは、質量スペクトルを表わす。“%”は、対応する濃度が他の単位で示されていない限り重量%である。以下の略号をこの明細書全体で用いる:
m.p.=融点
b.p.=沸点
s=一重項
br=ブロード
d=二重項
dd=二重の二重項
t=三重項
q=四重項
m=多重項
ppm=百万分率
LC/MS法A:ウォーターズ社のAQ質量分析器(単一四極子質量分析器)の装置パラメータ:
イオン化法:エレクトロスプレー
極性:陽(陰)イオン
キャピラリ(kV)3.00、コーン(V)30.00(AIDA:45V)、抽出器(V)2.00、供給源の温度(℃)100、脱溶媒和温度(℃)250、コーン・ガス流(リットル/時)50、脱溶媒和ガス流(リットル/時)400
質量の範囲:100〜900Da(LC8非極性:150〜1000Da)
アジレント社のHP 1100 HPLC:溶媒脱ガス装置、四元ポンプ(ZCQ)/二元ポンプ(ZDQ)、加熱したカラム区画、ダイオード-アレイ検出器。
カラム:Phenomenex Gemini C18、3μm、粒径110オングストローム、30×3mm、
温度:60℃
DAD波長範囲(nm):200〜500
溶媒の勾配:
A=水+0.05%HCOOH
B=アセトニトリル/メタノール(4:1、v:v)+0.04%HCOOH
時間 A% B% 流量(ml/分)
0.00 95.0 5.0 1.700
2.00 0.0 100.0 1.700
2.80 0.0 100.0 1.700
2.90 95.0 5.0 1.700
3.00 95.0 5.0 1.700
【0082】
【表5】


【表6】

【0083】
一般式(I)の化合物に関する製剤の例:
【表7】


このような濃縮液を水で希釈することによって望む任意の濃度のエマルジョンを調製することができる。
【0084】
【表8】


このような濃縮液を水で希釈することによって望む任意の濃度のエマルジョンを調製することができる。
【0085】
【表9】


これらの溶液は微小液滴の形態で用いるのが適している。
【0086】
【表10】

【0087】
新規な化合物をジクロロメタンに溶かし、その溶液を基剤の表面にスプレーした後、真空下での蒸溜によって溶媒を除去する。
【0088】
【表11】

【0089】
そのまま使用できるダストは、全成分を密に混合することによって得られる。
【0090】
【表12】

【0091】
全成分を混合し、得られた混合物を適切なミルの中で完全に粉砕すると、湿潤化可能な粉末が得られる。それを水で希釈して望む濃度の懸濁液にすることができる。
【0092】
【表13】

【0093】
細かく粉砕した活性成分をアジュバントとともに密に混合すると、濃縮懸濁液が得られる。それを水で希釈することによって望む希釈度の懸濁液を得ることができる。このような希釈液をスプレーしたり、注いだり、浸漬したりすることにより、生きている植物と植物増殖材料を処理したり、微生物の感染から保護したりすることができる。
【0094】
生物学的実施例:
実施例B-1:エリシフェ・グラミニスf.sp.トリティキ(コムギうどんこ病)に対する作用
【0095】
コムギの葉の切片をマルチウエル・プレート(24ウエルの形式)の寒天の上に置き、試験溶液(0.02%の活性成分)をスプレーした。乾燥後、円板状の葉にこの真菌の胞子懸濁液を接種した。適度にインキュベートした後、化合物の活性を、接種してから7日後に予防殺真菌活性として評価した。
【0096】
化合物1.001、1.004、1.012、1.016、1.019、1.036、1.037(ジアステレオマー・ペア1)、1.037(ジアステレオマー・ペア2)、2.016、2.036、2.037、3.001、3.016、3.019、3.036、3.037が、このテストで非常に優れた活性を示す(80%以上の抑制)。
【0097】
実施例B-2:コムギのプクキニア・レコンディタ(赤さび病)に対する予防作用
コムギの葉の切片をマルチウエル・プレート(24ウエルの形式)の寒天の上に置き、試験溶液(0.02%の活性成分)をスプレーした。乾燥後、円板状の葉にこの真菌の胞子懸濁液を接種した。適度にインキュベートした後、化合物の活性を、接種してから8日後に予防殺真菌活性として評価した。
【0098】
化合物1.001、1.004、1.016、1.019、1.036、1.037(ジアステレオマー・ペア1)、1.037(ジアステレオマー・ペア2)、2.036、3.001、3.016、3.019が、このテストで非常に優れた活性を示す(80%以上の抑制)。
【0099】
実施例B-3:コムギのプクキニア・レコンディタ(赤さび病)に対する治療作用
コムギの葉の切片をマルチウエル・プレート(24ウエルの形式)の寒天の上に置き、この真菌の胞子懸濁液を接種した。接種してから1日後、葉の切片に試験溶液(0.02%の活性成分)をスプレーした。適度にインキュベートした後、化合物の活性を、接種してから8日後に治療殺真菌活性として評価した。
【0100】
化合物1.001、1.004、1.016、1.019、1.036、1.037(ジアステレオマー・ペア2)、3.001が、このテストで非常に優れた活性を示す(80%以上の抑制)。
【0101】
実施例B-4:コムギのフェオスフェリア・ノドルム(ふ枯病)に対する予防作用
コムギの葉の切片をマルチウエル・プレート(24ウエルの形式)の寒天の上に置き、試験溶液(0.02%の活性成分)をスプレーした。乾燥後、円板状の葉にこの真菌の胞子懸濁液を接種した。適度にインキュベートした後、化合物の活性を、接種してから4日後に予防殺真菌活性として評価した。
【0102】
化合物1.001、1.012、1.016、1.019、1.036、2.037、3.001が、このテストで非常に優れた活性を示す(80%以上の抑制)。
【0103】
実施例B-5:オオムギのピレノフォラ・テレス(網斑病)に対する作用
オオムギの葉の切片をマルチウエル・プレート(24ウエルの形式)の寒天の上に置き、試験溶液(0.02%の活性成分)をスプレーした。乾燥後、円板状の葉にこの真菌の胞子懸濁液を接種した。適度にインキュベートした後、化合物の活性を、接種してから4日後に予防殺真菌活性として評価した。
【0104】
化合物1.001、1.012、1.016、1.019、1.036、1.037(ジアステレオマー・ペア1)、2.016、2.037、3.001、3.016、3.037が、このテストで非常に優れた活性を示す(80%以上の抑制)。
【0105】
実施例B-6:ボトリオティニア・フケリアナ/液体栽培(灰色かび病)に対する作用
低温で保管した真菌の分生子を栄養ブロスに直接混合した。試験化合物の(DMSO)溶液(0.02%の活性成分)を微量滴定プレート(96ウエルの形態)に入れた後、真菌の胞子を含むその栄養ブロスを添加した。試験プレートを24℃でインキュベートし、増殖の抑制をフォトメータで3〜4日後に調べた。
【0106】
化合物1.001、1.004、1.012、1.016、1.019、1.036、1.037(ジアステレオマー・ペア1)、1.037(ジアステレオマー・ペア2)、2.016、2.036、2.037、3.001、3.016、3.019、3.036、3.037が、このテストで非常に優れた活性を示す(80%以上の抑制)。
【0107】
実施例B-7:ミコスフェレラ・アラキディス/液体栽培(褐斑病)に対する作用
低温で保管した真菌の分生子を栄養ブロス(PDB:ジャガイモのデキストロースのブロス)に直接混合した。試験化合物の(DMSO)溶液(0.02%の活性成分)を微量滴定プレート(96ウエルの形態)に入れた後、真菌の胞子を含むその栄養ブロスを添加した。試験プレートを24℃でインキュベートし、増殖の抑制をフォトメータで6〜7日後に調べた。
【0108】
化合物1.001、1.004、1.012、1.016、1.019、1.036、1.037(ジアステレオマー・ペア1)、1.037(ジアステレオマー・ペア2)、2.016、2.036、2.037、3.001、3.016、3.019、3.036、3.037が、このテストで非常に優れた活性を示す(80%以上の抑制)。
【0109】
実施例B-8:フザリウム・クルモルム/コムギ/小穂予防(赤かび病)に対する作用:
コムギの小穂をマルチウエル・プレート(24ウエルの形式)の寒天の上に置き、試験溶液(0.02%の活性成分)をスプレーした。乾燥後、小穂にこの真菌の胞子懸濁液を接種した。適度にインキュベートした後、化合物の活性を、接種してから6日後に予防殺真菌活性として評価した。
【0110】
化合物1.001、1.004、1.016、1.019、1.037、3.001、3.019が、このテストで非常に優れた活性を示す(80%以上の抑制)。
【0111】
実施例B-9:ギッベレラ・ゼアエ(フザリウム・グラミネアルム)/コムギ/小穂予防(赤かび病)に対する作用:
コムギの小穂をマルチウエル・プレート(24ウエルの形式)の寒天の上に置き、試験溶液をスプレーした。乾燥後、小穂にこの真菌の胞子懸濁液を接種した。適度にインキュベートした後、化合物の活性を、接種してから6日後に予防殺真菌活性として評価した。
【0112】
化合物1.001、1.004、1.016、1.019、2.016が、このテストで非常に優れた活性を示す(80%以上の抑制)。
【0113】
実施例B-10:ミコスフェレラ・グラミニコラ(セプトリア・トリティキ)/液体栽培(葉枯病)に対する作用:
低温で保管した真菌の分生子を栄養ブロス(PDB:ジャガイモのデキストロースのブロス)に直接混合した。試験化合物の(DMSO)溶液を微量滴定プレート(96ウエルの形態)に入れた後、真菌の胞子を含むその栄養ブロスを添加した。試験プレートを24℃でインキュベートし、増殖の抑制をフォトメータで4日後に調べた。
【0114】
化合物1.001、1.004、1.012、1.016、1.019、1.036、1.037(ジアステレオマー・ペア1)、1.037(ジアステレオマー・ペア2)、2.016、2.036、2.037、3.001、3.016、3.019、3.036、3.037が、このテストで非常に優れた活性を示す(80%以上の抑制)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の一般式(I):
【化1】

{式中
R1はC1〜C4アルキルまたはC1〜C4ハロアルキルであり;
R2は、水素、フルオロ、クロロのいずれかであり;
R3は水素またはC1〜C4アルキルであり;
R4とR5は、互いに独立に、水素またはC1〜C4アルキルであり;
Xは、酸素、イオウであるか、又は存在せず;
R6は、Xが酸素またはイオウであるときにはC1〜C4アルキルまたはC1〜C4ハロアルキルであり、Xが存在しないときには水素であり;
R7、R8、及びR9は、互いに独立に、水素、ハロゲン、≡-R10のいずれかだが、R7、R8、R9のうちの少なくとも1つは水素ではなく;
R10は、水素、C1〜C6アルキル、C1〜C6ハロアルキル、又はC1〜C4アルコキシアルキルのいずれかである)
で表される化合物、並びにこれら化合物の農業的に許容可能な塩/異性体/構造異性体/立体異性体/ジアステレオ異性体/鏡像異性体/互変異性体及びN-オキシド。
【請求項2】
R1が、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、又はメチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R2が水素またはフルオロである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
R3が、水素、メチル、又はエチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
R4が水素またはメチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
R5が水素またはメチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
R6がメチルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
Xが酸素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
Xが存在せず、かつR6が水素である、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
以下の一般式(II):
【化2】

(式中、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、及びXは、請求項1の一般式(I)で定義した通りである)
で表される化合物。
【請求項11】
有用な植物への植物病原性微生物の感染を制御または予防する方法であって、請求項1に記載の一般式(I)の化合物、または当該化合物を活性成分として含む組成物を、その植物、またはその一部、またはその生育領域に施用する方法。
【請求項12】
請求項1に記載の化合物と、不活性な担体とを含む、植物病原性微生物の感染を制御または予防するための組成物。

【公表番号】特表2012−515717(P2012−515717A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−545736(P2011−545736)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際出願番号】PCT/EP2010/050419
【国際公開番号】WO2010/084078
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(500584309)シンジェンタ パーティシペーションズ アクチェンゲゼルシャフト (352)
【Fターム(参考)】