新規な電極、該電極を用いた酵素センサー又は燃料電池、及び前記酵素センサー又は燃料電池を用いた電気機器、並びにポリオール分解方法
【課題】任意の基質から多段階的に還元型補酵素を生成可能な新規電極を提供すること。
【解決手段】2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素と、2-オキソ酸生成酵素と、2-オキソ酸カルボキシリアーゼと、を少なくとも含有する電極を提供する。本発明に係る電極は、酸化還元酵素である2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素と2-オキソ酸生成酵素に加え、脱炭酸酵素である2-オキソ酸カルボキシリアーゼを有するため、酸化還元酵素では反応が進行しないカルボキシル基を有する酸化生成物を、脱炭酸させ、酸化還元酵素が作用可能な物質へと変化させることができる。従って、任意の基質に対し、酸化反応と脱炭酸反応を繰り返し進行させることができるため、それに伴い、還元型補酵素を大量に生成することができる。
【解決手段】2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素と、2-オキソ酸生成酵素と、2-オキソ酸カルボキシリアーゼと、を少なくとも含有する電極を提供する。本発明に係る電極は、酸化還元酵素である2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素と2-オキソ酸生成酵素に加え、脱炭酸酵素である2-オキソ酸カルボキシリアーゼを有するため、酸化還元酵素では反応が進行しないカルボキシル基を有する酸化生成物を、脱炭酸させ、酸化還元酵素が作用可能な物質へと変化させることができる。従って、任意の基質に対し、酸化反応と脱炭酸反応を繰り返し進行させることができるため、それに伴い、還元型補酵素を大量に生成することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な電極に関する。より詳しくは、酸化還元酵素と脱炭酸酵素を含有する電極、該電極を用いた酵素センサー又は燃料電池、及び前記酵素センサー又は燃料電池を用いた電気機器、並びにポリオール分解方法に関する。
【0002】
近年、生物学的な技術を利用した電極が、燃料電池、センサーなどの分野で注目されている。
【0003】
例えば、微生物又は細胞の呼吸では、糖類、タンパク質、脂肪などから、解糖系及びトリカルボン酸回路を介して二酸化炭素を生成する過程において、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(nicotinamide adenine dinucleotide、以下「NAD+」と称する。)を還元し、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(以下「NADH」と称する。)のような電気エネルギーに変換する。
【0004】
また、光合成においては、光エネルギーを吸収することにより、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(nicotinamide adenine dinucleotide phosphate、以下「NADP+」と称する。)を還元し、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(以下「NADPH」と称する。)のような電気エネルギーに変換する。
【0005】
このように、生体代謝においては、糖類、脂肪、タンパク質等の栄養素や光エネルギーなどの化学エネルギーが電気エネルギーに変換されるため、これを利用して、電池やセンサーなどに用いることのできる電極が開発されている。
【0006】
上記の一例として、特許文献1には、微生物や細胞を利用した発電方法及び電池、並びにこれらに用いる電子メディエーターを固定化した電極が開示されている。しかし、生体代謝は、呼吸や光合成以外の経路も多様に行われるため、効率的に電気エネルギーを用いることは困難であった。
【0007】
そこで、基質特異性を有する酵素を利用して、効率的に電気エネルギーを用いることのできる電極が開発されている。特に、電極における酸化還元反応を効率的に利用できる酸化還元酵素を用いた電極の開発が進んでいる。
【0008】
例えば、特許文献2には、基板電極上に設けたポリジアルキルシロキサン膜中あるいは膜上に酸化還元酵素を固定化して成る酵素電極が、特許文献3には、酸化還元酵素を塗布した電極を有するバイオセンサが開示されている。
【0009】
前記酸化還元酵素による酸化反応では、酸化生成物とともに還元型補酵素が生成する。生成した酸化生成物を基質として更に同様の反応を複数段階行えば、反応数に応じた還元型補酵素を生成できる。しかし、酸化還元酵素だけの組み合わせでは、せいぜい数ステップ程度しか還元型補酵素の生成反応は進まない。
【0010】
例えば、特許文献4には、NAD+依存型デヒドロゲナーゼの作用によりアルコール類や糖類からNADHを生成させることを利用した燃料電池が開示されている。特許文献4中の図3に記載されているように、エタノールを基質とした場合、NAD+依存型デヒドロゲナーゼの作用により2段階の反応を経て、酢酸が生成するが、酢酸はカルボキシル基を有しており、NAD+依存型デヒドロゲナーゼでは酸化することができない。そのため、NADHとして更に電子を取り出すために、CO2になるまで完全分解するには、クエン酸回路、ペントースリン酸回路等の平衡反応を含む複数の酵素反応が回路になった複雑な反応系を用いる必要があった。
【0011】
これらの複合酵素反応には、NADHとして電子を取り出さない平衡反応(転移反応)が一つ以上あり、かつ、一連の反応が回路となっており、電子を取り出す速度が遅くなりやすいという問題があった。また、これらの回路のような生体内反応を用いる場合には、燃料となる物質もこれらの反応に関与する生体内材料に限定されるといった問題もあった。
【0012】
【特許文献1】特開2000−133297号公報
【特許文献2】特開2001−208719号公報
【特許文献3】特開2006−275923号公報
【特許文献4】特開2004−71559号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
酵素を含有する電極を用いた酵素センサーや燃料電池において、高出力化、高容量化は実用化に向けて必須な課題である。そして、近年では、生体内で実現されている、解糖系、クエン酸回路、ペントースリン酸回路、β―酸化回路、等を用いた複合酵素反応を導入することで、燃料からより高エネルギーな電子をより多く取り出し、電池としての容量を向上させるという研究が進められている。しかし、これらの複合酵素反応には、上記の通り、電子を取り出す速度が遅くなりやすく、燃料となる物質もこれらの反応に関与する生体内材料に限定されるという問題があった。
【0014】
そこで、本発明では、任意の基質(燃料)から多段階的に還元型補酵素を生成することにより、より高エネルギーな電子をより多く取り出すことが可能であり、かつ、電子を取り出す速度を向上させることが可能な新規電極を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願発明者らは、上記回路のような生体内複合酵素反応を用いなくとも、還元型補酵素として多くの電子を取り出すことのできる反応系について、鋭意研究を行った。その結果、還元型補酵素として電子を取り出さない平衡反応(転移反応)をできるだけ少なくし、基質(燃料)が代謝されて生成する代謝中間物を、還元型補酵素として電子を取り出す脱水素酵素反応と脱炭酸酵素反応の逐次反応により分解し、電子を取り出す速度を向上させる反応系を新規に見出した。
【0016】
本発明では、まず、2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素と、2-オキソ酸生成酵素と、2-オキソ酸カルボキシリアーゼと、を少なくとも含有する電極を提供する。
本発明に係る電極は、少なくとも前記の3種類の酵素を含有すればよいが、更に、ジヒドロキシエチル基酸化酵素やフォルメートデヒドロゲナーゼなどを含有させてもよい。
上記2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素の種類は特に限定されないが、一例としては、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.3、E.C.1.2.1.5)、グリコアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.21)、又はラクトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.22)を挙げることができる。
上記2-オキソ酸生成酵素の種類も特に限定されないが、一例としては、ラクテートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.27、E.C.1.1.1.28)、マレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.37)、グルコネート2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.215)、2-ヒドロキシ脂肪酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.98、E.C.1.1.1.99)、グリセレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.29)、グリオキシレートレダクターゼ(E.C.1.1.1.26)、ヒドロキシパイルベートレダクターゼ(E.C.1.1.1.81)、イソサイトレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.41)、アミノ酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.5)、アラニンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.1)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.2、E.C.1.4.1.3)、セリン2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.7)、バリンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.8)、ロイシンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.9)、グリシンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.10)、グルタミン酸シンターゼ(E.C.1.4.1.14)、トリプトファンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.19)、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.20)、アスパラギン酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.21)、2-オキソアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.23)、マレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.83)、又はタータレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.93)を挙げることができる。
前記2-オキソ酸カルボキシリアーゼの種類も特に限定されないが、一例としては、パイルベートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.1)、ヒドロキシパイルベートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.40)、2-オキソグルタレートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.71)、又は分岐鎖2-オキソ酸デカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.72)を挙げることができる。
前記ジヒドロキシエチル基酸化酵素の種類も特に限定されないが、一例としては、アルコールデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.1、E.C.1.1.1.71)、マニトール2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.67)、グリセロールデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.6)、アルデヒドレダクターゼ(E.C.1.1.1.21)、グルコネート5-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.69)、又はグリコールデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.185)、を挙げることができる。
本発明に係る電極は、酵素センサーや燃料電池に好適に用いることができる。
更に、前記酵素センサー又は前記燃料電池は、電子機器に好適に利用することができる。
本発明では、また、2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素が触媒として機能する分解工程Iと、2-オキソ酸生成酵素が触媒として機能する分解工程IIと、2-オキソ酸カルボキシリアーゼが触媒として機能する分解工程IIIと、を少なくとも含むポリオール分解方法を提供する。
本発明に係るポリオール分解方法は、少なくとも前記IからIIIの3工程を含めばよいが、更に、ジヒドロキシエチル基酸化酵素が触媒として機能する分解工程IVやフォルメートデヒドロゲナーゼが触媒として機能する分解工程Vを含んでいてもよい。
前記分解工程Iでは、下記反応式(1)によるポリオールの分解を進行させることができる。
【化1】
(Rは鎖状又は環状化合物。以下同じ。))
前記分解工程IIでは、下記反応式(2)及び/又は(3)によるポリオールの分解を進行させることができる。
【化2】
【化3】
前記分解工程IIIでは、下記反応式(4)によるポリオールの分解を進行させることができる。
【化4】
前記分解工程IVでは下記反応式(5)から(7)のいずれかの反応によるポリオールの分解を進行させることができる。
【化5】
【化6】
【化7】
前記分解工程Vでは、下記反応式(8)によるポリオールの分解を進行させることができる。
【化8】
本発明に係るポリオール分解方法では、前記分解工程IからVの少なくとも一の工程において生じた電子により、任意の酸化型補酵素Aを還元して還元型補酵素Bを生成することができる。
前記酸化型補酵素A及び還元型補酵素Bは特に限定されないが、一例としては、酸化型補酵素AとしてNAD+、前記還元型補酵素BとしてNADHを挙げることができる。
また、本発明に係るポリオール分解方法では、電子により酸化型補酵素Aを還元して還元型補酵素Bを生成する過程、および、補酵素酸化酵素により還元型補酵素から酸化型補酵素へ戻される過程において、電子メディエーターの酸化及び/又は還元も行うことができる。
【0017】
ここで、本発明に係る技術用語を説明する。本発明における「電子機器」とは、電気的に作動する機器を全て含有する。例えば、携帯電話、モバイル機器、ロボット、パーソナルコンピューター、ゲーム機器、車載機器、家庭電気製品、工業製品等の電子機器、自動車、二輪車、航空機、ロケット、宇宙船等の移動体、検査機器、ペースメーカー用の電源、バイオセンサーを含む生体内機器の電源等の医療機器、生ごみを分解し電気エネルギーを発電させるシステム等の発電システムおよびコジェネレーションシステム、等を挙げることができる。
【0018】
本発明における「ポリオール化合物」とは、分子中に官能基として水酸基が複数存在する化合物をいう。複数とは、少なくとも2つ、好ましくは3つ以上、より好ましくは4つ以上、更に好ましくは5つ以上のものをいう。水酸基の数が多いほど、酸化還元反応が多段階的に進行するため、反応の初期基質1分子あたりの還元型補酵素の生成量は高くなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る電極を用いれば、任意の基質から多段階的に還元型補酵素の生成が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0021】
<電極>
本発明に係る電極は、2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素と、2-オキソ酸生成酵素と、2-オキソ酸カルボキシリアーゼと、を少なくとも含有する。本発明に係る電極は、酸化還元酵素である2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素と2-オキソ酸生成酵素に加え、脱炭酸酵素である2-オキソ酸カルボキシリアーゼを有する。そのため、酸化還元酵素では反応が進行しないカルボキシル基を有する酸化生成物を、脱炭酸させ、酸化還元酵素が作用可能な物質へと変化させることができる。このように、本発明に係る電極を用いれば、任意の基質に対し、酸化反応と脱炭酸反応を繰り返し進行させることができるため、それに伴い、還元型補酵素を大量に生成することができる。
【0022】
本発明に係る電極は、前記3種類の酵素を少なくとも含有していれば、他の構造等は特に限定されない。例えば、導電性基材に前記3種類の酵素を公知の方法で固定化した構成とすることができる。ただし、本発明においては、酵素の固定化は必須ではない。
【0023】
前記導電性基材は、外部と電気的に接続可能な素材であれば特に限定されず、例えば、Pt、Ag、Au、Ru、Rh、Os、Nb、Mo、In、Ir、Zn、Mn、Fe、Co、Ti、V、Cr、Pd、Re、Ta、W、Zr、Ge、Hfなどの金属、アルメル、真ちゅう、ジュラルミン、青銅、ニッケリン、白金ロジウム、ハイパーコ、パーマロイ、パーメンダー、洋銀、リン青銅などの合金類、ポリアセチレン類などの導電性高分子、グラファイト、カーボンブラックなどの炭素材、HfB2、NbB、CrB2、B4Cなどのホウ化物、TiN、ZrNなどの窒化物、VSi2、NbSi2、MoSi2、TaSi2などのケイ化物、及びこれらの合材等を用いることができる。また、多孔体材料からなる骨格と、この骨格の少なくとも一部の表面を被覆する、カーボン系材料を主成分とする材料とを含む多孔体導電材料を用いることもできる。
【0024】
本発明に係る電極は、少なくとも前記の3種類の酵素を含有すればよいが、更に、ジヒドロキシエチル基酸化酵素やフォルメートデヒドロゲナーゼなどを含有させるとより好適である。
【0025】
上記2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素は、酸化により2-ヒドロキシカルボン酸の生成反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.3、E.C.1.2.1.5)、グリコアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.21)、又はラクトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.22)を挙げることができる。
【0026】
上記2-オキソ酸生成酵素は、酸化により2-オキソ酸の生成反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、ラクテートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.27、E.C.1.1.1.28)、マレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.37)、グルコネート2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.215)、2-ヒドロキシ脂肪酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.98、E.C.1.1.1.99)、グリセレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.29)、グリオキシレートレダクターゼ(E.C.1.1.1.26)、ヒドロキシパイルベートレダクターゼ(E.C.1.1.1.81)、イソサイトレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.41)、アミノ酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.5)、アラニンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.1)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.2、E.C.1.4.1.3)、セリン2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.7)、バリンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.8)、ロイシンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.9)、グリシンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.10)、グルタミン酸シンターゼ(E.C.1.4.1.14)、トリプトファンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.19)、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.20)、アスパラギン酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.21)、2-オキソアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.23)、マレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.83)、又はタータレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.93)を挙げることができる。
【0027】
前記2-オキソ酸カルボキシリアーゼは、カルボキシル基を有する化合物の脱炭酸反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、パイルベートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.1)、ヒドロキシパイルベートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.40)、2-オキソグルタレートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.71)、又は分岐鎖2-オキソ酸デカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.72)を挙げることができる。
【0028】
前記ジヒドロキシエチル基酸化酵素は、ジヒドロキシエチル基を有する化合物の酸化反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、アルコールデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.1、E.C.1.1.1.71)、マニトール2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.67)、グリセロールデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.6)、アルデヒドレダクターゼ(E.C.1.1.1.21)、グルコネート5-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.69)、又はグリコールデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.185)、を挙げることができる。
【0029】
また、本発明に係る電極は、上記の酵素に加え、酸化型補酵素および補酵素酸化酵素を含有してもよい。酸化型補酵素としては、例えば、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(nicotinamide adenine dinucleotide、以下「NAD+」と称する。)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(nicotinamide adenine dinucleotide phosphate、以下「NADP+」と称する。)フラビンアデニンジヌクレオチド(flavin adenine dinucleotide、以下「FAD+」と称する。)、ピロロキノリンキノン(pyrrollo-quinoline quinone、以下「PQQ2+」と称する。)などが挙げられる。補酵素酸化酵素としては、例えば、ジアフォラーゼ(DI)が挙げられる。
【0030】
電極では、基質(燃料)の酸化分解に伴い、上記の酸化型補酵素が、それぞれの還元型であるNADH、NADPH、FADH、PQQH2に還元され、逆に、補酵素酸化酵素により、還元型補酵素から酸化型補酵素へ戻されるという酸化還元反応が繰り返される。このとき、還元型補酵素から酸化型補酵素へ戻る際に2電子が発生する。
【0031】
更に、本発明に係る電極は、上記の酵素、酸化型補酵素、および補酵素酸化酵素に加え、電子メディエーターを含有してもよい。上記で発生した電子の電極への受け渡しをスムーズにするためである。電子メディエーターとしては、例えば、2−アミノ−3−カルボキシ−1,4−ナフトキノン(ACNQ)、ビタミンK3、2−アミノ−1,4−ナフトキノン(ANQ)、2−アミノ−3−メチル−1,4−ナフトキノン(AMNQ)、2、3−ジアミノ−1,4−ナフトキノン、オスミウム(Os)、ルテニウム(Ru)、鉄(Fe)、コバルト(Co)などの金属錯体、ベンジルビオローゲンなどのビオローゲン化合物、キノン骨格を有する化合物、ニコチンアミド構造を有する化合物、リボフラビン構造を有する化合物、ヌクレオチド−リン酸構造を有する化合物などなどが挙げられる。
【0032】
本発明に係る電極は、公知のあらゆる酵素センサーに好適に用いることができる。該酵素センサーは、本発明に係る電極を少なくとも使用できるものであれば、構造、機能などは特に制限されない。
【0033】
本発明に係る電極は、また、公知のあらゆる燃料電池に用いることができる。該燃料電池は、本発明に係る酵素電極を少なくとも使用できるものであれば、燃料の種類、構造、機能などは特に制限されない。
【0034】
本発明に係る電極は、任意の基質に対し、酸化反応と脱炭酸反応を繰り返し進行させることができるため、それに伴い、還元型補酵素を大量に生成することができる。従って、上記の酵素センサーや燃料電池に用いた場合、従来のものに比べ、大きな電流値及び電気容量を得ることが可能である。
【0035】
前記酵素センサーや燃料電池は、大きな電流値及び電気容量が得られるため、公知のあらゆる電子機器に好適に用いることができる。該電子機器は、本発明に係る酵素センサーや燃料電池を少なくとも使用できるものであれば、構造、機能等は特に限定されず、電気的に作動する機器を全て含有する。例えば、携帯電話、モバイル機器、ロボット、パーソナルコンピューター、ゲーム機器、車載機器、家庭電気製品、工業製品等の電子機器、自動車、二輪車、航空機、ロケット、宇宙船等の移動体、検査機器、ペースメーカー用の電源、バイオセンサーを含む生体内機器の電源等の医療機器、生ごみを分解し電気エネルギーを発電させるシステム等の発電システムおよびコジェネレーションシステム、等を挙げることができる。
【0036】
<ポリオール分解方法>
本発明に係るポリオール分解方法は、2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素が触媒として機能する分解工程Iと、2-オキソ酸生成酵素が触媒として機能する分解工程IIと、2-オキソ酸カルボキシリアーゼが触媒として機能する分解工程IIIと、を少なくとも含む。本発明に係るポリオール分解方法では、酸化還元酵素である2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素と2-オキソ酸生成酵素が触媒として機能する分解工程I及びIIに加え、脱炭酸酵素である2-オキソ酸カルボキシリアーゼが触媒として機能する分解工程IIIが進行する。そのため、酸化還元酵素では反応が進行しないカルボキシル基を有する酸化生成物を、脱炭酸させ、酸化還元酵素が作用可能な物質へと変化させることができる。このように、本発明に係るポリオール分解方法を用いれば、任意のポリオール化合物の分解において、酸化反応と脱炭酸反応を繰り返し進行させることができるため、それに伴い、還元型補酵素を大量に生成することができる。
【0037】
本発明に係るポリオール分解方法で分解できるポリオール化合物は、水酸基を有していれば公知のあらゆるポリオールを分解することができる。例えば、蛋白質、脂肪酸、糖質、又はその他の化合物を利用することができる。この中でも特に糖質は、食品、その残渣、発酵産物、又はバイオマスなどからの入手の容易性、価格面、汎用性、安全性、及び扱いの容易性などの観点から、より好適である。
【0038】
ここで、本発明における「糖質」とは、ポリアルコールのアルデヒド、ケトン、酸、ポリアルコール自体、これらの誘導体、又は縮合体等を含む。
【0039】
本発明に係るポリオール分解方法で好適に分解できる糖質は、多糖、オリゴ糖、二糖、単糖、及び糖脂質を含み、下記化学式9又は下記化学式10で表すことができる。より好ましくはオリゴ糖、さらに好ましくは単糖を用いることができる。
【化9】
【化10】
【0040】
化学式9で表される単糖の例としては、グルコース(n=6)、キシロース(n=5)、ガラクトース(n=6)及びマンノース(n=6)などを挙げることができる。化学式10で表される単糖の例としては、下記化学式11の一般式で表されるものがあり、具体的には、エチレングリコール(R=H)、グリセロール(R=CH2OH)、エリスリトール(R=CH(OH)CH2OH)、キシリトール(R=CH(OH)CH(OH)CH2OH)、及びソルビトール(R=CH(OH)CH(OH)CH(OH)(CH2OH))、などを挙げることができる。
【化11】
【0041】
以下、本発明に係るポリオール分解方法について、具体例を挙げながら説明する。上記化学式9で示したグルコン酸系単糖類と上記化学式10で示したグリセロール系単糖類をそれぞれ例に挙げて説明する。なお、糖質の一例として単糖類を挙げるが、本発明に係るポリオール分解方法は、多糖類、蛋白質、脂肪酸などを分解することも可能である。
【0042】
また、本発明に係るポリオール分解方法中の酸化還元反応で使用される酸化型補酵素として、「NAD+」を例に挙げて説明するが、これに限定されない。例えば、NADP+、フラビンアデニンジヌクレオチド(flavin adenine dinucleotide、以下「FAD+」と称する。)、及びピロロキノリンキノン(pyrrollo-quinoline quinone、以下「PQQ2+」と称する。)などが挙げられる。これらの酸化型補酵素は、本発明の前記酸化還元反応において、それぞれ還元型であるNADH、NADPH、FADH、及びPQQH2などに変換される。本発明に係るポリオール分解方法では、NAD+又はNADP+を用いることがより好適である。
【0043】
(1)グルコン酸系単糖類の分解
<<グルコースの分解>>
まず、グルコン酸系単糖類としてグルコースを具体例に挙げ、本発明に係るポリオール分解方法を説明する。図1は、本発明に係るポリオール分解方法を用いた分解工程を示す図である。グルコースの分解は、図1で示す通り17段階の反応からなる。
【0044】
第1反応は、グルコースが酸化還元酵素による酸化還元反応によって酸化され、グルコネートが生成する反応である。これに伴ってNAD+からNADHが生成する。前記酸化還元酵素としてはグルコースデヒドロゲナーゼ、又はグルコースオキシダーゼ、又はこれらと同様の反応をする酵素を用いることができる。
【0045】
第2反応では、グルコネートが酸化還元酵素による酸化還元反応によって酸化され、5-ケトグルコネートが生成する。これに伴ってNAD+からNADHが生成する。前記酸化還元酵素は、グルコネート-5-デヒドロゲナーゼの他、これと同様の反応をする酵素を用いることができる。
【0046】
第3反応では、5-ケトグルコネートが酸化還元酵素による酸化還元反応によって酸化され、2-, 5-ジケトグルコネートが生成する。これに伴ってNAD+からNADHが生成する。前記酸化還元酵素は、グルコネート-2-デヒドロゲナーゼの他、これと同様の反応をする酵素を用いることができる。なお、第2反応と第3反応は、順番が入れ替わって進行する場合もある。
【0047】
第4反応では、2, 5-ジケトグルコネートが酸化還元反応によって酸化され、HOOC-CO-CHOH-CHOH-CO-CHOが生成し、これに伴ってNAD+からNADHが生成する。該第4反応は、ジヒドロキシエチル基酸化酵素が触媒として機能する分解工程IVに該当し、下記反応式7の反応が進行する。
【化7】
【0048】
前記ジヒドロキシエチル基酸化酵素は、ジヒドロキシエチル基を有する化合物の酸化反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、アルコールデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.1、E.C.1.1.1.71)、マニトール2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.67)、グリセロールデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.6)、アルデヒドレダクターゼ(E.C.1.1.1.21)、グルコネート5-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.69)、又はグリコールデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.185)、を挙げることができる。
【0049】
第5反応では、HOOC-CO-CHOH-CHOH-CO-CHO が酸化還元反応によって酸化され、HOOC-CO-CHOH-CHOH-CO-COOHが生成し、これに伴ってNAD+からNADHが生成する。該第5反応は、2-オキソ酸生成酵素が触媒として機能する分解工程IIに該当し、下記反応式3の反応が進行する。
【化3】
【0050】
前記2-オキソ酸生成酵素は、酸化により2-オキソ酸の生成反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、ラクテートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.27、E.C.1.1.1.28)、マレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.37)、グルコネート2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.215)、2-ヒドロキシ脂肪酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.98、E.C.1.1.1.99)、グリセレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.29)、グリオキシレートレダクターゼ(E.C.1.1.1.26)、ヒドロキシパイルベートレダクターゼ(E.C.1.1.1.81)、イソサイトレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.41)、アミノ酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.5)、アラニンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.1)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.2、E.C.1.4.1.3)、セリン2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.7)、バリンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.8)、ロイシンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.9)、グリシンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.10)、グルタミン酸シンターゼ(E.C.1.4.1.14)、トリプトファンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.19)、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.20)、アスパラギン酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.21)、2-オキソアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.23)、マレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.83)、又はタータレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.93)を挙げることができる。
【0051】
第6反応では、HOOC-CO-CHOH-CHOH-CO-COOH が脱炭酸反応によって脱炭酸され、HOOC-CO-CHOH-CHOH-CHOが生成し、これに伴って二酸化炭素が生成する。該第6反応は、2-オキソ酸カルボキシリアーゼが触媒として機能する分解工程IIIに該当し、下記反応式4の反応が進行する。
【化4】
【0052】
なお、従来の酸化還元酵素のみを用いる方法では、前記第5反応において、酸化還元酵素が作用できないカルボキシル基を有する化合物が生成するため、第5反応で分解が止まっていた。しかし、本発明に係るポリオール分解方法では、脱炭酸酵素である2-オキソ酸カルボキシリアーゼを用いているため、第6反応以降の分解も段階的に進行させることができる。
【0053】
前記2-オキソ酸カルボキシリアーゼは、カルボキシル基を有する化合物の脱炭酸反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、パイルベートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.1)、ヒドロキシパイルベートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.40)、2-オキソグルタレートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.71)、又は分岐鎖2-オキソ酸デカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.72)を挙げることができる。
【0054】
第7反応では、HOOC-CO-CHOH-CHOH-CHOが脱炭酸反応によって脱炭酸され、CHO-CHOH-CHOH-CHOが生成し、これに伴って二酸化炭素が生成する。該第7反応は、前記第6反応と同様に、2-オキソ酸カルボキシリアーゼが触媒として機能する分解工程IIIに該当し、上記反応式4の反応が進行する。
【0055】
前記2-オキソ酸カルボキシリアーゼは、前記第6反応と同様に、カルボキシル基を有する化合物の脱炭酸反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、パイルベートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.1)、ヒドロキシパイルベートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.40)、2-オキソグルタレートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.71)、又は分岐鎖2-オキソ酸デカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.72)を挙げることができる。
【0056】
第8反応では、CHO-CHOH-CHOH-CHOが酸化還元反応によって酸化され、CHO-CHOH-CHOH-COOHが生成し、これに伴ってNAD+からNADHが生成する。該第8反応は、2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素が触媒として機能する分解工程Iに該当し、下記反応式1の反応が進行する。
【化1】
【0057】
前記2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素は、酸化により2-ヒドロキシカルボン酸の生成反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.3、E.C.1.2.1.5)、グリコアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.21)、又はラクトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.22)を挙げることができる。
【0058】
第9反応では、CHO-CHOH-CHOH-COOHが酸化還元反応によって酸化され、HOOC-CHOH-CHOH-COOHが生成し、これに伴ってNAD+からNADHが生成する。該第9反応は、第8反応と同様に、2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素が触媒として機能する分解工程Iに該当し、上記反応式1の反応が進行する。
【0059】
前記2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素は、前記第8反応と同様に、酸化により2-ヒドロキシカルボン酸の生成反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.3、E.C.1.2.1.5)、グリコアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.21)、又はラクトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.22)を挙げることができる。
【0060】
第10反応では、HOOC-CHOH-CHOH-COOHが酸化還元反応によって酸化され、HOOC-CHOH-CO-COOHが生成し、これに伴ってNAD+からNADHが生成する。該第10反応は、2-オキソ酸生成酵素が触媒として機能する分解工程IIに該当し、下記反応式2の反応が進行する。
【化2】
【0061】
前記2-オキソ酸生成酵素は、前記第5反応と同様に、酸化により2-オキソ酸の生成反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、ラクテートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.27、E.C.1.1.1.28)、マレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.37)、グルコネート2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.215)、2-ヒドロキシ脂肪酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.98、E.C.1.1.1.99)、グリセレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.29)、グリオキシレートレダクターゼ(E.C.1.1.1.26)、ヒドロキシパイルベートレダクターゼ(E.C.1.1.1.81)、イソサイトレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.41)、アミノ酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.5)、アラニンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.1)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.2、E.C.1.4.1.3)、セリン2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.7)、バリンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.8)、ロイシンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.9)、グリシンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.10)、グルタミン酸シンターゼ(E.C.1.4.1.14)、トリプトファンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.19)、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.20)、アスパラギン酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.21)、2-オキソアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.23)、マレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.83)、又はタータレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.93)を挙げることができる。
【0062】
第11反応では、HOOC-CHOH-CO-COOHが脱炭酸反応によって脱炭酸され、HOOC-CHOH-CHOが生成し、これに伴って二酸化炭素が生成する。該第11反応は、前記第6反応及び第7反応と同様に、2-オキソ酸カルボキシリアーゼが触媒として機能する分解工程IIIに該当し、上記反応式4の反応が進行する。
【0063】
前記2-オキソ酸カルボキシリアーゼは、前記第6反応及び第7反応と同様に、カルボキシル基を有する化合物の脱炭酸反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、パイルベートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.1)、ヒドロキシパイルベートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.40)、2-オキソグルタレートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.71)、又は分岐鎖2-オキソ酸デカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.72)を挙げることができる。
【0064】
第12反応では、HOOC-CHOH-CHOが酸化還元反応によって酸化され、HOOC-CHOH-COOHが生成し、これに伴ってNAD+からNADHが生成する。該第12反応は、前記第8反応及び第9反応と同様に、2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素が触媒として機能する分解工程Iに該当し、上記反応式1の反応が進行する。
【0065】
前記2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素は、前記第8反応及び第9反応と同様に、酸化により2-ヒドロキシカルボン酸の生成反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.3、E.C.1.2.1.5)、グリコアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.21)、又はラクトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.22)を挙げることができる。
【0066】
第13反応では、HOOC-CHOH-COOHが酸化還元反応によって酸化され、HOOC-CO-COOHが生成し、これに伴ってNAD+からNADHが生成する。該第13反応は、前記第10反応と同様に、2-オキソ酸生成酵素が触媒として機能する分解工程IIに該当し、上記反応式2の反応が進行する。
【0067】
前記2-オキソ酸生成酵素は、前記第5反応及び第10反応と同様に、酸化により2-オキソ酸の生成反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、ラクテートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.27、E.C.1.1.1.28)、マレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.37)、グルコネート2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.215)、2-ヒドロキシ脂肪酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.98、E.C.1.1.1.99)、グリセレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.29)、グリオキシレートレダクターゼ(E.C.1.1.1.26)、ヒドロキシパイルベートレダクターゼ(E.C.1.1.1.81)、イソサイトレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.41)、アミノ酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.5)、アラニンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.1)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.2、E.C.1.4.1.3)、セリン2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.7)、バリンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.8)、ロイシンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.9)、グリシンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.10)、グルタミン酸シンターゼ(E.C.1.4.1.14)、トリプトファンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.19)、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.20)、アスパラギン酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.21)、2-オキソアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.23)、マレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.83)、又はタータレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.93)を挙げることができる。
【0068】
第14反応では、HOOC-CO-COOHが脱炭酸反応によって脱炭酸され、HOOC-CHOが生成し、これに伴って二酸化炭素が生成する。該第14反応は、前記第6反応、第7反応及び第11反応と同様に、2-オキソ酸カルボキシリアーゼが触媒として機能する分解工程IIIに該当し、上記反応式4の反応が進行する。
【0069】
前記2-オキソ酸カルボキシリアーゼは、前記第6反応、第7反応及び第11反応と同様に、カルボキシル基を有する化合物の脱炭酸反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、パイルベートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.1)、ヒドロキシパイルベートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.40)、2-オキソグルタレートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.71)、又は分岐鎖2-オキソ酸デカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.72)を挙げることができる。
【0070】
第15反応では、HOOC-CHOが酸化還元反応によって酸化され、HOOC-COOHが生成し、これに伴ってNAD+からNADHが生成する。該第15反応は、前記第5反応と同様に、2-オキソ酸生成酵素が触媒として機能する分解工程IIに該当し、上記反応式3の反応が進行する。
【0071】
前記2-オキソ酸生成酵素は、前記第5反応、第10反応及び第13反応と同様に、酸化により2-オキソ酸の生成反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、ラクテートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.27、E.C.1.1.1.28)、マレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.37)、グルコネート2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.215)、2-ヒドロキシ脂肪酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.98、E.C.1.1.1.99)、グリセレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.29)、グリオキシレートレダクターゼ(E.C.1.1.1.26)、ヒドロキシパイルベートレダクターゼ(E.C.1.1.1.81)、イソサイトレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.41)、アミノ酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.5)、アラニンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.1)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.2、E.C.1.4.1.3)、セリン2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.7)、バリンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.8)、ロイシンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.9)、グリシンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.10)、グルタミン酸シンターゼ(E.C.1.4.1.14)、トリプトファンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.19)、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.20)、アスパラギン酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.21)、2-オキソアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.23)、マレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.83)、又はタータレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.93)を挙げることができる。
【0072】
第16反応では、HOOC-COOHが脱炭酸反応によって脱炭酸され、HCOOHが生成し、これに伴って二酸化炭素が生成する。該第16反応は、前記第6反応、第7反応、第11反応及び第14反応と同様に、2-オキソ酸カルボキシリアーゼが触媒として機能する分解工程IIIに該当し、上記反応式4の反応が進行する。
【0073】
前記2-オキソ酸カルボキシリアーゼは、前記第6反応、第7反応、第11反応及び第14反応と同様に、カルボキシル基を有する化合物の脱炭酸反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、パイルベートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.1)、ヒドロキシパイルベートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.40)、2-オキソグルタレートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.71)、又は分岐鎖2-オキソ酸デカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.72)を挙げることができる。
【0074】
第17反応では、HCOOHが酸化還元反応によって酸化され、二酸化炭素が生成し、これに伴ってNAD+からNADHが生成する。該第17反応は、フォルメートデヒドロゲナーゼが触媒として機能する分解工程Vに該当し、下記反応式8の反応が進行する。
【化8】
【0075】
該17反応では、フォルメートデヒドロゲナーゼの他、これと同様の反応をする酵素を用いることができる。
【0076】
以上のように、本発明に係るポリオール分解方法を用いたグルコースの分解では、2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素が触媒として機能する分解工程Iと、2-オキソ酸生成酵素が触媒として機能する分解工程IIと、2-オキソ酸カルボキシリアーゼが触媒として機能する分解工程IIIと、が順不同に繰り返される。
【0077】
そして、グルコースが二酸化炭素にまで分解される過程で全17段階の反応が起こり、そのうち12の反応でNADHが生成する。即ち、グルコース1分子から12分子のNADHが生成する。一方、従来からの酸化還元酵素のみで行うポリオール分解方法では、反応は上記第5反応までしか進行しないので、グルコース1分子からNADHは5分子しか生成しない。従って、本願発明に係るポリオール分解方法を用いれば、従来のポリオール分解方法に比べ、大量のNADHを生成することができる。
【0078】
(2)グリセロール系単糖類の分解
<<グリセロール(CH2OH-CHOH-CH2OH)の分解>>
グリセロール系単糖類としてグリセロール(CH2OH-CHOH-CH2OH)を具体例に挙げ、本発明に係るポリオール分解方法を説明する。図2は、図1とは異なる実施形態であるポリオール分解方法を用いた分解工程を示す図である。
【0079】
グリセロールの分解は、図2で示す通り9段階の反応からなる。ただし、水酸基若しくはアルデヒド基に対する酸化還元酵素の選択性によって、反応経路にバリエーションが生ずる可能性がある(図2中経路A、B、及びC参照)。しかし、どの経路で反応が進んでも、酵素反応の順序が前後するだけであり、同一の酵素で基質を分解し、還元型補酵素を生成できるので実質的な差異はない。ここでは、経路Aを例に挙げて説明する。
【0080】
第1反応では、グリセロール(CH2OH-CHOH-CH2OH)が酸化還元反応によって酸化され、グリセロアルデヒド(CH2OH-CHOH-CHO)が生成し、これに伴ってNAD+からNADHが生成する。該第1反応は、ジヒドロキシエチル基酸化酵素が触媒として機能する分解工程IVに該当し、下記反応式6の反応が進行する。
【化6】
【0081】
前記ジヒドロキシエチル基酸化酵素は、ジヒドロキシエチル基を有する化合物の酸化反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、アルコールデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.1、E.C.1.1.1.71)、マニトール2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.67)、グリセロールデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.6)、アルデヒドレダクターゼ(E.C.1.1.1.21)、グルコネート5-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.69)、又はグリコールデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.185)、を挙げることができる。
【0082】
第2反応では、グリセロアルデヒド(CH2OH-CHOH-CHO)が酸化還元反応によって酸化され、グリセレート(CH2OH-CHOH-COOH)が生成し、これに伴ってNAD+からNADHが生成する。該第2反応は、2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素が触媒として機能する分解工程Iに該当し、下記反応式1の反応が進行する。
【化1】
【0083】
前記2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素は、酸化により2-ヒドロキシカルボン酸の生成反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.3、E.C.1.2.1.5)、グリコアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.21)、又はラクトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.22)を挙げることができる。
【0084】
第3反応では、グリセレート(CH2OH-CHOH-COOH)が酸化還元反応によって酸化され、ヒドロキシパイルベート(CH2OH-CO-COOH)が生成し、これに伴ってNAD+からNADHが生成する。該第3反応は、2-オキソ酸生成酵素が触媒として機能する分解工程IIに該当し、下記反応式2の反応が進行する。
【化2】
【0085】
前記2-オキソ酸生成酵素は、酸化により2-オキソ酸の生成反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、ラクテートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.27、E.C.1.1.1.28)、マレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.37)、グルコネート2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.215)、2-ヒドロキシ脂肪酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.98、E.C.1.1.1.99)、グリセレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.29)、グリオキシレートレダクターゼ(E.C.1.1.1.26)、ヒドロキシパイルベートレダクターゼ(E.C.1.1.1.81)、イソサイトレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.41)、アミノ酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.5)、アラニンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.1)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.2、E.C.1.4.1.3)、セリン2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.7)、バリンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.8)、ロイシンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.9)、グリシンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.10)、グルタミン酸シンターゼ(E.C.1.4.1.14)、トリプトファンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.19)、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.20)、アスパラギン酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.21)、2-オキソアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.23)、マレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.83)、又はタータレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.93)を挙げることができる。
【0086】
第4反応では、ヒドロキシパイルベート(CH2OH-CO-COOH)が脱炭酸反応によって脱炭酸され、グリコアルデヒド(CH2OH-CHO)が生成し、これに伴って二酸化炭素が生成する。該第4反応は、2-オキソ酸カルボキシリアーゼが触媒として機能する分解工程IIIに該当し、下記反応式4の反応が進行する。
【化4】
【0087】
なお、従来の酸化還元酵素のみを用いる方法では、前記第3反応において、酸化還元酵素が作用できないカルボキシル基を有する化合物が生成するため、前記第3反応で分解が止まっていた。しかし、本発明に係るポリオール分解方法では、脱炭酸酵素である2-オキソ酸カルボキシリアーゼを用いているため、第4反応以降の分解も段階的に進行させることができる。
【0088】
前記2-オキソ酸カルボキシリアーゼは、カルボキシル基を有する化合物の脱炭酸反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、パイルベートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.1)、ヒドロキシパイルベートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.40)、2-オキソグルタレートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.71)、又は分岐鎖2-オキソ酸デカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.72)を挙げることができる。
【0089】
第5反応では、グリコアルデヒド(CH2OH-CHO)が酸化還元反応によって酸化され、グリコレート(CH2OH-COOH)が生成し、これに伴ってNAD+からNADHが生成する。該第5反応は、前記第2反応と同様に、2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素が触媒として機能する分解工程Iに該当し、上記反応式1の反応が進行する。
【0090】
前記2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素は、前記第2反応と同様に、酸化により2-ヒドロキシカルボン酸の生成反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.3、E.C.1.2.1.5)、グリコアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.21)、又はラクトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.22)を挙げることができる。
【0091】
第6反応では、グリコレート(CH2OH-COOH)が酸化還元反応によって酸化され、グリオキシレート(OHC-COOH)が生成し、これに伴ってNAD+からNADHが生成する。該第6反応は、前記第3反応と同様に、2-オキソ酸生成酵素が触媒として機能する分解工程IIに該当し、上記反応式2の反応が進行する。
【0092】
前記2-オキソ酸生成酵素は、前記第3反応と同様に、酸化により2-オキソ酸の生成反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、ラクテートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.27、E.C.1.1.1.28)、マレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.37)、グルコネート2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.215)、2-ヒドロキシ脂肪酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.98、E.C.1.1.1.99)、グリセレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.29)、グリオキシレートレダクターゼ(E.C.1.1.1.26)、ヒドロキシパイルベートレダクターゼ(E.C.1.1.1.81)、イソサイトレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.41)、アミノ酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.5)、アラニンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.1)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.2、E.C.1.4.1.3)、セリン2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.7)、バリンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.8)、ロイシンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.9)、グリシンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.10)、グルタミン酸シンターゼ(E.C.1.4.1.14)、トリプトファンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.19)、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.20)、アスパラギン酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.21)、2-オキソアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.23)、マレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.83)、又はタータレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.93)を挙げることができる。
【0093】
第7反応では、グリオキシレート(OHC-COOH)が酸化還元酵素によって酸化され、オキサレート(HOOC-COOH)が生成し、これに伴ってNAD+からNADHが生成する。該第7反応は、2-オキソ酸生成酵素が触媒として機能する分解工程IIに該当し、下記反応式3の反応が進行する。
【化3】
【0094】
前記2-オキソ酸生成酵素は、前記第3反応及び第6反応と同様に、酸化により2-オキソ酸の生成反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、ラクテートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.27、E.C.1.1.1.28)、マレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.37)、グルコネート2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.215)、2-ヒドロキシ脂肪酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.98、E.C.1.1.1.99)、グリセレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.29)、グリオキシレートレダクターゼ(E.C.1.1.1.26)、ヒドロキシパイルベートレダクターゼ(E.C.1.1.1.81)、イソサイトレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.41)、アミノ酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.5)、アラニンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.1)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.2、E.C.1.4.1.3)、セリン2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.7)、バリンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.8)、ロイシンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.9)、グリシンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.10)、グルタミン酸シンターゼ(E.C.1.4.1.14)、トリプトファンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.19)、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.20)、アスパラギン酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.21)、2-オキソアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.23)、マレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.83)、又はタータレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.93)を挙げることができる。
【0095】
第8反応では、オキサレート(HOOC-COOH)が脱炭酸反応によって脱炭酸され、フォルメート(HCOOH)が生成し、これに伴って二酸化炭素が生成する。該第8反応は、前記第4反応と同様に、2-オキソ酸カルボキシリアーゼが触媒として機能する分解工程IIIに該当し、上記反応式4の反応が進行する。
【0096】
前記2-オキソ酸カルボキシリアーゼは、前記第4反応と同様に、カルボキシル基を有する化合物の脱炭酸反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、パイルベートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.1)、ヒドロキシパイルベートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.40)、2-オキソグルタレートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.71)、又は分岐鎖2-オキソ酸デカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.72)を挙げることができる。
【0097】
第9反応では、フォルメート(HCOOH)が酸化還元酵素によって酸化され、二酸化炭素が生成し、これに伴ってNAD+からNADHが生成する。該第9反応は、フォルメートデヒドロゲナーゼが触媒として機能する分解工程Vに該当し、下記反応式8の反応が進行する。
【化8】
【0098】
該第9反応では、フォルメートデヒドロゲナーゼの他、これと同様の反応をする酵素を用いることができる。
【0099】
以上、グリセロールが二酸化炭素にまで分解される過程で全9段階の反応が起こり、そのうち7の反応でNADHが生成する。即ち、グリセロール1分子から7分子のNADHが生成する。一方、従来からの酸化還元酵素のみで行うポリオール分解方法では、反応は上記第3反応までしか進行しないので、グリセロール1分子からNADHは3分子しか生成しない。従って、本願発明に係るポリオール分解方法を用いれば、従来のポリオール分解方法に比べ、大量のNADHを生成することができる。
【0100】
<<エチレングリコール(CH2OH-CH2OH)の分解>>
グリセロール系単糖類としてエチレングリコール(CH2OH-CH2OH)を具体例に挙げ、本発明に係るポリオール分解方法を説明する。図3は、図1及び図2とは異なる実施形態であるポリオール分解方法を用いた分解工程を示す図である。
【0101】
エチレングリコールの分解は、図3で示す通り6段階の反応からなる。ただし、水酸基若しくはアルデヒド基に対する酸化還元酵素の選択性によって、反応経路にバリエーションが生ずる可能性がある(図3中経路A及びB参照)。しかし、どの経路で反応が進んでも、酵素反応の順序が前後するだけであり、同一の酵素で基質を分解し、還元型補酵素を生成できるので実質的な差異はない。ここでは経路Aを例に挙げて説明する。
【0102】
第1反応では、エチレングリコール(CH2OH-CH2OH)が酸化還元反応によって酸化され、グリコアルデヒド(CH2OH-CHO)が生成し、これに伴ってNAD+からNADHが生成する。該第1反応は、ジヒドロキシエチル基酸化酵素が触媒として機能する分解工程IVに該当し、下記反応式6の反応が進行する。
【化6】
【0103】
前記ジヒドロキシエチル基酸化酵素は、ジヒドロキシエチル基を有する化合物の酸化反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、アルコールデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.1、E.C.1.1.1.71)、マニトール2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.67)、グリセロールデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.6)、アルデヒドレダクターゼ(E.C.1.1.1.21)、グルコネート5-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.69)、又はグリコールデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.185)、を挙げることができる。
【0104】
グリコアルデヒド(CH2OH-CHO)以降の反応は、図3に示す通り、前記グリセロールを使用した場合と同様の反応で分解することが可能である。従って、エチレングリコールが二酸化炭素にまで分解される過程で全6段階の反応が起こり、そのうち5の反応でNADHが生成する。即ち、エチレングリコール1分子から5分子のNADHが生成する。一方、従来からの酸化還元酵素のみで行うポリオール分解方法では、反応は上記第4反応までしか進行しないので、グリセロール1分子からNADHは4分子しか生成しない。従って、本願発明に係るポリオール分解方法を用いれば、従来のポリオール分解方法に比べ、多くのNADHを生成することができる。
【0105】
<<エリスリトール(CH2OH-CHOH-CHOH-CH2OH)の分解>>
グリセロール系単糖類としてエリスリトール(CH2OH-CHOH-CHOH-CH2OH)、を具体例に挙げ、本発明に係るポリオール分解方法を説明する。図4は、図1、図2及び図3とは異なる実施形態であるポリオール分解方法を用いた分解工程を示す図である。
【0106】
第1反応では、エリスリトール(CH2OH-CHOH-CHOH-CH2OH)が酸化還元反応によって酸化され、CH2OH-CHOH-CHOH-CHOが生成し、これに伴ってNAD+からNADHが生成する。該第1反応は、ジヒドロキシエチル基酸化酵素が触媒として機能する分解工程IVに該当し、下記反応式6の反応が進行する。
【化6】
【0107】
前記ジヒドロキシエチル基酸化酵素は、ジヒドロキシエチル基を有する化合物の酸化反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、アルコールデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.1、E.C.1.1.1.71)、マニトール2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.67)、グリセロールデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.6)、アルデヒドレダクターゼ(E.C.1.1.1.21)、グルコネート5-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.69)、又はグリコールデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.185)、を挙げることができる。
【0108】
第2反応では、CH2OH-CHOH-CHOH-CHOが酸化還元反応によって酸化され、CH2OH-CHOH-CHOH-COOHが生成し、これに伴ってNAD+からNADHが生成する。該第2反応は、2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素が触媒として機能する分解工程Iに該当し、下記反応式1の反応が進行する。
【化1】
【0109】
前記2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素は、酸化により2-ヒドロキシカルボン酸の生成反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.3、E.C.1.2.1.5)、グリコアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.21)、又はラクトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.22)を挙げることができる。
【0110】
第3反応では、CH2OH-CHOH-CHOH-COOHが酸化還元反応によって酸化され、CH2OH-CHOH-CO-COOHが生成し、これに伴ってNAD+からNADHが生成する。該第3反応は、2-オキソ酸生成酵素が触媒として機能する分解工程IIに該当し、下記反応式2の反応が進行する。
【化2】
【0111】
前記2-オキソ酸生成酵素は、酸化により2-オキソ酸の生成反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、ラクテートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.27、E.C.1.1.1.28)、マレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.37)、グルコネート2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.215)、2-ヒドロキシ脂肪酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.98、E.C.1.1.1.99)、グリセレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.29)、グリオキシレートレダクターゼ(E.C.1.1.1.26)、ヒドロキシパイルベートレダクターゼ(E.C.1.1.1.81)、イソサイトレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.41)、アミノ酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.5)、アラニンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.1)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.2、E.C.1.4.1.3)、セリン2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.7)、バリンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.8)、ロイシンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.9)、グリシンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.10)、グルタミン酸シンターゼ(E.C.1.4.1.14)、トリプトファンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.19)、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.20)、アスパラギン酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.21)、2-オキソアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.23)、マレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.83)、又はタータレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.93)を挙げることができる。
【0112】
第4反応では、CH2OH-CHOH-CO-COOHが脱炭酸反応によって脱炭酸され、グリセロアルデヒド(CH2OH-CHOH-CHO)が生成し、これに伴って二酸化炭素が生成する。該第4反応は、2-オキソ酸カルボキシリアーゼが触媒として機能する分解工程IIIに該当し、下記反応式4の反応が進行する。
【化4】
【0113】
なお、従来の酸化還元酵素のみを用いる方法では、前記第3反応において、酸化還元酵素が作用できないカルボキシル基を有する化合物が生成するため、前記第3反応で分解が止まっていた。しかし、本発明に係るポリオール分解方法では、脱炭酸酵素である2-オキソ酸カルボキシリアーゼを用いているため、第4反応以降の分解も段階的に進行させることができる。
【0114】
前記2-オキソ酸カルボキシリアーゼは、カルボキシル基を有する化合物の脱炭酸反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、パイルベートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.1)、ヒドロキシパイルベートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.40)、2-オキソグルタレートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.71)、又は分岐鎖2-オキソ酸デカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.72)を挙げることができる。
【0115】
グリセロアルデヒド(CH2OH-CHOH-CHO)以降の反応は、図4に示す通り、前記グリセロールを使用した場合と同様の反応で分解することが可能である。従って、エリスリトールが二酸化炭素にまで分解される過程で全12段階の反応が起こり、そのうち9の反応でNADHが生成する。即ち、エリスリトール1分子から9分子のNADHが生成する。一方、従来からの酸化還元酵素のみで行うポリオール分解方法では、反応は上記第3反応までしか進行しないので、エリスリトール1分子からNADHは3分子しか生成しない。従って、本願発明に係るポリオール分解方法を用いれば、従来のポリオール分解方法に比べ、大量のNADHを生成することができる。
【0116】
<<キシリトール(CH2OH-CHOH-CHOH-CHOH-CH2OH)の分解>>
グリセロール系単糖類としてキシリトール(CH2OH-CHOH-CHOH-CHOH-CH2OH)を具体例に挙げ、本発明に係るポリオール分解方法を説明する。前記エリスリトールの分解で用いた図4を用いて説明する。
【0117】
第1反応では、キシリトール(CH2OH-CHOH-CHOH-CHOH-CH2OH)が酸化還元反応によって酸化され、CH2OH-CHOH-CHOH-CHOH-CHOが生成し、これに伴ってNAD+からNADHが生成する。該第1反応は、ジヒドロキシエチル基酸化酵素が触媒として機能する分解工程IVに該当し、下記反応式6の反応が進行する。
【化6】
【0118】
前記ジヒドロキシエチル基酸化酵素は、ジヒドロキシエチル基を有する化合物の酸化反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、アルコールデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.1、E.C.1.1.1.71)、マニトール2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.67)、グリセロールデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.6)、アルデヒドレダクターゼ(E.C.1.1.1.21)、グルコネート5-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.69)、又はグリコールデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.185)、を挙げることができる。
【0119】
第2反応では、CH2OH-CHOH-CHOH-CHOH-CHOが酸化還元反応によって酸化され、CH2OH-CHOH-CHOH-CHOH-COOHが生成し、これに伴ってNAD+からNADHが生成する。該第2反応は、2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素が触媒として機能する分解工程Iに該当し、下記反応式1の反応が進行する。
【化1】
【0120】
前記2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素は、酸化により2-ヒドロキシカルボン酸の生成反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.3、E.C.1.2.1.5)、グリコアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.21)、又はラクトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.22)を挙げることができる。
【0121】
第3反応では、CH2OH-CHOH-CHOH-CHOH-COOHが酸化還元反応によって酸化され、CH2OH-CHOH-CHOH-CO-COOHが生成し、これに伴ってNAD+からNADHが生成する。該第3反応は、2-オキソ酸生成酵素が触媒として機能する分解工程IIに該当し、下記反応式2の反応が進行する。
【化2】
【0122】
前記2-オキソ酸生成酵素は、酸化により2-オキソ酸の生成反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、ラクテートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.27、E.C.1.1.1.28)、マレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.37)、グルコネート2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.215)、2-ヒドロキシ脂肪酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.98、E.C.1.1.1.99)、グリセレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.29)、グリオキシレートレダクターゼ(E.C.1.1.1.26)、ヒドロキシパイルベートレダクターゼ(E.C.1.1.1.81)、イソサイトレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.41)、アミノ酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.5)、アラニンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.1)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.2、E.C.1.4.1.3)、セリン2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.7)、バリンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.8)、ロイシンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.9)、グリシンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.10)、グルタミン酸シンターゼ(E.C.1.4.1.14)、トリプトファンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.19)、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.20)、アスパラギン酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.21)、2-オキソアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.23)、マレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.83)、又はタータレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.93)を挙げることができる。
【0123】
第4反応では、CH2OH-CHOH-CHOH-CO-COOHが脱炭酸反応によって脱炭酸され、CH2OH-CHOH-CHOH-CHOが生成し、これに伴って二酸化炭素が生成する。該第4反応は、2-オキソ酸カルボキシリアーゼが触媒として機能する分解工程IIIに該当し、下記反応式4の反応が進行する。
【化4】
【0124】
なお、従来の酸化還元酵素のみを用いる方法では、前記第3反応において、酸化還元酵素が作用できないカルボキシル基を有する化合物が生成するため、前記第3反応で分解が止まっていた。しかし、本発明に係るポリオール分解方法では、脱炭酸酵素である2-オキソ酸カルボキシリアーゼを用いているため、第4反応以降の分解も段階的に進行させることができる。
【0125】
前記2-オキソ酸カルボキシリアーゼは、カルボキシル基を有する化合物の脱炭酸反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、パイルベートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.1)、ヒドロキシパイルベートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.40)、2-オキソグルタレートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.71)、又は分岐鎖2-オキソ酸デカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.72)を挙げることができる。
【0126】
CH2OH-CHOH-CHOH-CHO以降の反応は、図4に示す通り、前記エリスリトールを使用した場合と同様の反応で分解することが可能である。従って、キシリトールが二酸化炭素にまで分解される過程で全15段階の反応が起こり、そのうち11の反応でNADHが生成する。即ち、キシリトール1分子から11分子のNADHが生成する。一方、従来からの酸化還元酵素のみで行うポリオール分解方法では、反応は上記第3反応までしか進行しないので、キシリトール1分子からNADHは3分子しか生成しない。従って、本願発明に係るポリオール分解方法を用いれば、従来のポリオール分解方法に比べ、大量のNADHを生成することができる。
【0127】
<<ソルビトール(CH2OH-CHOH-CHOH-CHOH-CHOH-CH2OH)の分解>>
グリセロール系単糖類としてソルビトール(CH2OH-CHOH-CHOH-CHOH-CHOH-CH2OH)を具体例に挙げ、本発明に係るポリオール分解方法を説明する。前記エリスリトール及びキシリトールの分解で用いた図4を用いて説明する。
【0128】
第1反応では、ソルビトール(CH2OH-CHOH-CHOH-CHOH-CHOH-CH2OH)が酸化還元反応によって酸化され、CH2OH-CHOH-CHOH-CHOH-CHOH-CHOが生成し、これに伴ってNAD+からNADHが生成する。該第1反応は、ジヒドロキシエチル基酸化酵素が触媒として機能する分解工程IVに該当し、下記反応式6の反応が進行する。
【化6】
【0129】
前記ジヒドロキシエチル基酸化酵素は、ジヒドロキシエチル基を有する化合物の酸化反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、アルコールデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.1、E.C.1.1.1.71)、マニトール2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.67)、グリセロールデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.6)、アルデヒドレダクターゼ(E.C.1.1.1.21)、グルコネート5-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.69)、又はグリコールデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.185)、を挙げることができる。
【0130】
第2反応では、CH2OH-CHOH-CHOH-CHOH-CHOH-CHOが酸化還元反応によって酸化され、CH2OH-CHOH-CHOH-CHOH-CHOH-COOHが生成し、これに伴ってNAD+からNADHが生成する。該第2反応は、2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素が触媒として機能する分解工程Iに該当し、下記反応式1の反応が進行する。
【化1】
【0131】
前記2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素は、酸化により2-ヒドロキシカルボン酸の生成反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.3、E.C.1.2.1.5)、グリコアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.21)、又はラクトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.22)を挙げることができる。
【0132】
第3反応では、CH2OH-CHOH-CHOH-CHOH-CHOH-COOHが酸化還元反応によって酸化され、CH2OH-CHOH-CHOH-CHOH-CO-COOHが生成し、これに伴ってNAD+からNADHが生成する。該第3反応は、2-オキソ酸生成酵素が触媒として機能する分解工程IIに該当し、下記反応式2の反応が進行する。
【化2】
【0133】
前記2-オキソ酸生成酵素は、酸化により2-オキソ酸の生成反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、ラクテートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.27、E.C.1.1.1.28)、マレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.37)、グルコネート2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.215)、2-ヒドロキシ脂肪酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.98、E.C.1.1.1.99)、グリセレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.29)、グリオキシレートレダクターゼ(E.C.1.1.1.26)、ヒドロキシパイルベートレダクターゼ(E.C.1.1.1.81)、イソサイトレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.41)、アミノ酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.5)、アラニンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.1)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.2、E.C.1.4.1.3)、セリン2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.7)、バリンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.8)、ロイシンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.9)、グリシンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.10)、グルタミン酸シンターゼ(E.C.1.4.1.14)、トリプトファンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.19)、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.20)、アスパラギン酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.21)、2-オキソアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.23)、マレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.83)、又はタータレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.93)を挙げることができる。
【0134】
第4反応では、CH2OH-CHOH-CHOH-CHOH-CO-COOHが脱炭酸反応によって脱炭酸され、CH2OH-CHOH-CHOH-CHOH-CHOが生成し、これに伴って二酸化炭素が生成する。該第4反応は、2-オキソ酸カルボキシリアーゼが触媒として機能する分解工程IIIに該当し、下記反応式4の反応が進行する。
【化4】
【0135】
なお、従来の酸化還元酵素のみを用いる方法では、前記第3反応において、酸化還元酵素が作用できないカルボキシル基を有する化合物が生成するため、前記第3反応で分解が止まっていた。しかし、本発明に係るポリオール分解方法では、脱炭酸酵素である2-オキソ酸カルボキシリアーゼを用いているため、第4反応以降の分解も段階的に進行させることができる。
【0136】
前記2-オキソ酸カルボキシリアーゼは、カルボキシル基を有する化合物の脱炭酸反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、パイルベートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.1)、ヒドロキシパイルベートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.40)、2-オキソグルタレートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.71)、又は分岐鎖2-オキソ酸デカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.72)を挙げることができる。
【0137】
CH2OH-CHOH-CHOH-CHOH-CHO以降の反応は、図4に示す通り、前記キシトールを使用した場合と同様の反応で分解することが可能である。従って、ソルビトールが二酸化炭素にまで分解される過程で全18段階の反応が起こり、そのうち14の反応でNADHが生成する。即ち、ソルビトール1分子から14分子のNADHが生成する。一方、従来からの酸化還元酵素のみで行うポリオール分解方法では、反応は上記第3反応までしか進行しないので、ソルビトール1分子からNADHは3分子しか生成しない。従って、本願発明に係るポリオール分解方法を用いれば、従来のポリオール分解方法に比べ、大量のNADHを生成することができる。
【0138】
以上、グリセロール系単糖類の分解反応をまとめると図5のように概略化することができる。図5で示す通り、最初にジヒドロキシエチル基酸化酵素が触媒として機能する分解工程IVが行われる。そして、フォルメートに分解されるまで、2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素が触媒として機能する分解工程Iと、2-オキソ酸生成酵素が触媒として機能する分解工程IIと、2-オキソ酸カルボキシリアーゼが触媒として機能する分解工程IIIと、が何度も繰り返される。最後にフォルメートデヒドロゲナーゼが触媒として機能する分解工程Vが行われる。
【0139】
従来からの酸化還元酵素のみで行うポリオール分解方法では、カルボキシル基を酸化できないため、図5中分解工程II(第3反応)で反応が止まってしまう。しかし、本発明に係るポリオール分解方法では、脱炭酸酵素である2-オキソ酸カルボキシリアーゼを用いているため、再度、酸化還元酵素で酸化可能な物質に変化させ、フォルメートに分解されるまで、分解工程Iと分解工程IIを繰り返すことができる。従って、本願発明に係るポリオール分解方法を用いれば、従来のポリオール分解方法に比べ、大量のNADHを生成することができる。
【0140】
ここで、図6は、グリセロール系単糖類の分解反応、及び該分解反応を利用し得る反応の概要図である。図6中経路Aに示す通り、グルコン酸系単糖類であるグルコース、マンノース、及びキシロースは、アルデヒドレダクターゼによって、それぞれソルビトール、マンニトール、キシリトールに変換されることが公知である。従って、グルコン酸系単糖類は、前記(1)で示したグルコン酸系単糖類の分解工程としてだけでなく、グリセロール系単糖類の分解工程を経て分解することもできる。
【0141】
また、図6中経路Bに示す通り、グルコースは、グルコースデヒドロゲナーゼ、グルコン酸-2-デヒドロゲナーゼ、及びグルコン酸-5-デヒドロゲナーゼによる一連の反応により2,5-ジケトグルコン酸に変換されることが公知である。そして、2,5-ジケトグルコン酸は、グリセロール系の反応で分解を受け、NADHを生成することが可能である。従って、グルコン酸系単糖類のうち、グルコースは2通りの経路でグリセロール系の反応に合流することが可能である。
【0142】
なお、図6中経路Bの2-ケトグルコン酸(CH2OH-CHOH-CHOH-CHOH-CO-COOH)から、グルコン酸-5-デヒドロゲナーゼによる2,5-ジケトグルコン酸(CH2OH-CO-CHOH-CHOH-CO-COOH)への第0反応は、ジヒドロキシエチル基酸化酵素が触媒として機能する分解工程IVに該当し、下記反応式5の反応が進行する。
【化5】
【0143】
以上示した通り、本発明に係るポリオール分解方法では、クエン酸回路等の生体内複合酵素反応を用いなくとも、途中で反応が停止することなく、ポリオールが二酸化炭素に分解されるまで反応を進めることが可能である。それに伴い、還元型補酵素を大量に得ることができる。
【0144】
本発明に係るポリオール分解方法を、酵素電極における反応に用いれば、大量に発生する還元型補酵素から電子メディエーターを介して大量の電子の受け渡しが可能である。
【0145】
酵素電極では、まず、生成した還元型補酵素がジアフォラーゼ(DI)等の補酵素酸化酵素により酸化型補酵素に戻される(酸化)際に、電子メディエーターの酸化体に電子を受け渡し、電子メディエーターを還元体にする。そして、電子メディエーターの還元体が電極に電子を受け渡し、電子メディエーターは酸化体へ戻るといった反応が繰り返される。この時、本発明に係るポリオール分解方法を用いれば、大量の還元型補酵素が生成できるため、非常に高い電流値及び電気容量を得ることが可能である。
【実施例1】
【0146】
実施例1では、本発明に係るポリオール分解方法を用いてグリセロールを分解する場合、各反応において還元型補酵素が生成するか否かを確認した。用いた酵素を表1に示す。
【0147】
【表1】
【0148】
酸化型・還元型補酵素の定量はHPLCを用いて行った。分析には、SPD-10AVP紫外/可視分光検出器、SCL-10AVPシステムコントローラー、SIL−10ADVPオートサンプラーを備えた、高速液体クロマトグラフシステム(島津製作所株式会社製)を使用した。移動層として 10 mmol/L リン酸緩衝液(pH 2.6)、カラムとしてODS-80Tm(東ソー株式会社製)、カラム温度 40℃、流速 1.0 mL/min、測定波長260 nmで行った。
【0149】
各酵素の活性は、以下の方法により測定した。
【0150】
(1)アルデヒドレダクターゼ活性
0.10 mol/L キシロースと 2.1 mmol/L NAD+を含む0.1 mol/L トリス-塩酸 緩衝液 (pH 8.0) に、アルデヒドレダクターゼを添加し、25℃における吸光度340nmの単位時間当たりの増加を測定することによりNADHの生成量を算出した。1分間に1μモルのNADHを生成する酵素量を1ユニットと定義した。
【0151】
(2)アルコールデヒドロゲナーゼ活性
1.0 mol/L エタノールと 0.83 mmol/L NAD+を含む10 mmol/L リン酸緩衝液 (pH 8.8) に、アルコールデヒドロゲナーゼを添加し、25℃における吸光度340nmの単位時間当たりの増加を測定することによりNADHの生成量を算出した。1分間に1μモルのNADHを生成する酵素量を1ユニットと定義した。
【0152】
(3)アルデヒドデヒドロゲナーゼ活性
0.10 mol/L アセトアルデヒドと 2.1 mmol/L NAD+を含む0.1 mol/Lトリス-塩酸緩衝液 (pH 8.0) に、アルデヒドデヒドロゲナーゼを添加し、25℃における吸光度340nmの単位時間当たりの増加を測定することによりNADHの生成量を算出した。1分間に1μモルのNADHを生成する酵素量を1ユニットと定義した。
【0153】
(4)ラクテートデヒドロゲナーゼ活性
1.8 mmol/L パイルベートと 0.20 mmol/L NADHを含む0.1 mmol/Lトリス-塩酸緩衝液 (pH 7.8) に、アルデヒドデヒドロゲナーゼを添加し、25℃における吸光度340nmの単位時間当たりの減少を測定することによりNAD+の生成量を算出した。1分間に1μモルのNADHを消費する酵素量を1ユニットと定義した。
【0154】
(5)パイルベートデカルボキシラーゼ
340 mmol/L ピルビン酸、110 mmol/L NADH、3.5 Unit/mLのアルコールデヒドロゲナーゼ を含んだ190 mmol/L クエン酸緩衝液(pH 6.0)に、パイルベートデカルボキシラーゼ を添加し、25℃における吸光度340nmの単位時間当たりの減少を測定することによりNAD+の生成量を算出した。1分間に1μモルのNAD+を生成する酵素量を1ユニットと定義した。
【0155】
(6)フォルメートデヒドロゲナーゼ
0.3 mol/L ギ酸と 1.0 mg/mL NAD+を基質として含む、80 mmol/L リン酸緩衝液(pH 8.8)に、フォルメートデヒドロゲナーゼを添加し、30℃における吸光度340nmの単位時間当たりの増加量を測定することによりNADHの生成量を計算した。1分間に1μモルのNADHを生成する酵素量を1ユニットと定義した。
【0156】
グリセロールの分解における各反応(図2第1から第9反応参照)の反応条件を表2から表8に示す。
【0157】
【表2】
【0158】
【表3】
【0159】
【表4】
【0160】
【表5】
【0161】
【表6】
【0162】
【表7】
【0163】
【表8】
【0164】
上記表2から8の各反応において生成する還元型酵素NADHをHPLCで解析した結果、全ての反応でNADHの生成が確認できた。反応途中のNADHの生成量を分光光度計で解析した結果を図7から図13に示す。
【0165】
図7から図13に示す通り、グリセロールの分解反応は、二酸化炭素に分解されるまで進行し、酸化還元反応を伴う反応では、全て還元型補酵素NADHの生成が確認できた。従って、実施例1では、グリセロール系単糖類の分解において、本発明に係るポリオール分解方法を用いれば、多段階的に反応が進行し、それに伴いNADHが多段階的に生成することが分かった。
【実施例2】
【0166】
実施例2では、本発明に係るポリオール分解方法を用いてエチレングリコールを分解する場合、各反応において還元型補酵素が生成するか否かを確認した。用いた酵素を表9に示す。酸化型・還元型補酵素の定量は、実施例1と同様の方法で行った。
【0167】
【表9】
【0168】
エチレングリコールの分解における各反応(図3第1から第6反応参照)の反応条件を表10から表14に示す。
【0169】
【表10】
【0170】
【表11】
【0171】
【表12】
【0172】
【表13】
【0173】
【表14】
【0174】
上記表10から14の各反応において生成する還元型酵素NADHをHPLCで解析した結果、全ての反応でNADHの生成が確認できた。反応途中のNADHの生成量を分光光度計で解析した結果を図14から図18に示す。
【0175】
図14から図18に示す通り、エチレングリコールの分解反応は、二酸化炭素に分解されるまで進行し、酸化還元反応を伴う反応では、全て還元型補酵素NADHの生成が確認できた。従って、実施例2では、実施例1と同様に、グリセロール系単糖類の分解において、本発明に係るポリオール分解方法を用いれば、多段階的に反応が進行し、多段階的にNADHが生成することが分かった。
【実施例3】
【0176】
実施例3では、エリスリトール、キシリトール、及びソルビトールがアルデヒドデヒドロゲナーゼ又はアルデヒドレダクターゼの基質となり得るか否かを確認した。具体的には、アルコールデヒドロゲナーゼ、及びアルデヒドレダクターゼを各基質に作用させ、NADHの生成量を比較検討した。反応条件を表15に示す。
【0177】
【表15】
【0178】
結果を表16に示す。各相対値は、アルコールデヒドロゲナーゼをエチレングリコールに作用させたときのNADHの生成量を100%としたときの相対値で示した。
【0179】
【表16】
【0180】
表16に示す通り、エチレングリコール及びグリセロールは、アルコールデヒドロゲナーゼによる酸化を受けてNADHを生成した。また、グリセロール、エリスリトール、キシリトール、及びソルビトールは、アルコールデヒドロゲナーゼよりむしろアルデヒドレダクターゼによる作用を受けやすいことが分かった。
【0181】
実施例3では、下記化学式11で表されるポリオール化合物が、本発明に係るポリオール分解方法で分解できることが分かった。
【化11】
【0182】
また、グルコース、マンノース、キシロースのような糖類は、アルデヒドレダクターゼの作用により、それぞれソルビトール、マンニトール、キシリトールに変換されることが公知であるため、下記化学式9で表されるポリオール化合物も本発明に係るポリオール分解方法で分解できることが分かった。
【化9】
【0183】
実施例1から3の結果を総合すると、本発明に係るポリオール分解方法を用いれば、グリセロール系単糖類やグルコン酸系単糖類などのポリオール化合物の分解工程において、多段階的に還元型補酵素を大量に生成できることが分かった。
【実施例4】
【0184】
実施例4では、グルコースの分解反応が段階的に進むにつれて、反応電子数がどのように変化するかを調べた。具体的には、図19に示すプロト電池を作成し、基質をグルコースとした場合の分解時間毎の電流の変化、及び反応電子数を求めた。電池中の溶液の組成を表17に示す。なお、測定溶液および希釈溶液は、0.1Mリン酸ナトリウム水溶液(pH7、IS(イオン強度)=0.3)を用いた。
【0185】
【表17】
【0186】
(1)第1反応〜第2反応
グルコースを分解する場合の第1反応(図1参照)のみ進行させる場合と、第1反応から第2反応(図1参照)まで進行させる場合の反応電子数を比較した。
【0187】
電流値の測定結果を図20に示す。また、図20の測定結果より反応電子数を計算し、その結果を表18に示す。この結果から、Gn5DHを追加した系において、追加していない系と比較して、理想的に電気容量がほぼ2倍となることが分かる。
【0188】
【表18】
【0189】
(2)第1反応〜第3反応
グルコースを分解する場合の第1反応〜第2反応(図1参照)まで進行させる場合と、第1反応から第3反応まで進行させる場合の反応電子数を比較した。
【0190】
(1)と同様に、電流値を測定し、図20と同様の方法で反応電子数を計算した。結果を表19に示す。
【0191】
【表19】
【0192】
(3)第1反応〜第5反応
グルコースを分解する場合の第1反応〜第3反応(図1参照)まで進行させる場合と、第1反応から第5反応まで進行させる場合の反応電子数を比較した。
【0193】
(1)、(2)と同様に、電流値を測定し、図20と同様の方法で反応電子数を計算した。結果を表20に示す。
【0194】
【表20】
【0195】
以上の結果より、グルコースの分解反応が段階的に進むにつれて、実際の反応電子数が増加することが確認できた。即ち、ポリオールの分解反応が進行すればするほど、反応電子数も増加することが確認できた。従って、実施例4の結果により、ポリオールの分解反応が第6反応以降も進行すればするほど、反応電子数も増加することが示唆された。
【実施例5】
【0196】
実施例5では、グルコースを分解する場合の第1反応(図1参照)のみ進行させる場合と、第1反応から第2反応(図1参照)まで進行させる場合の実際の電流値を比較した。
【0197】
本実施例における電極上の反応の概略を図21に示す。グルコース分解反応により生成したNADHを脱水素酵素であるジアフォラーゼ(DI)が酸化し、電子メディエーターであるACNQの酸化体に電子を受け渡して還元体にする。そして、ACNQの還元体が電極へ電子を受け渡し、酸化体へと戻る。この時ジアフォラーゼ(DI)に酸化されたNADHは、NAD+へ戻り、グルコースの分解反応で再利用される。
【0198】
測定条件を表21に、電池中の溶液の組成を表22に示す。グルコース分解反応によるNADHの生成速度が律速段階になるように組成を調整した。
【0199】
【表21】
【0200】
【表22】
【0201】
測定結果を図22に示す。図22に示す通り、グルコースの分解において第1反応(図1参照)のみ進行させる場合に比べ、第1反応から第2反応(図1参照)まで進行させる場合は、実際の定常電流値が約2倍になることが確認できた。このことから、Gn5DHを追加した系において、追加していない系と比較して、理想的に、NADHの分解速度が約2倍となっていることが分かる。即ち、ポリオールの分解反応が進行するほど、実際の電流値も増加することが確認できた。従って、実施例5の結果により、ポリオールの分解反応が第3反応以降も進行すればするほど、実際の電流値も増加することが示唆された。
【実施例6】
【0202】
実施例6では、GDH及びGn5DHを多孔質カーボン電極に固定化した状態で、実施例5と同様に、グルコースを分解する場合の第1反応(図1参照)のみ進行させる場合と、第1反応から第2反応(図1参照)まで進行させる場合の実際の電流値を比較した。
【0203】
実施例6で使用したこの酵素/補酵素/電子メディエーター固定化電極1〜3は次のようにして作製した。
まず、以下のようにして各種の溶液(1)〜(5)を調製した。溶液調製用の緩衝溶液としては、0.1Mリン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)緩衝溶液(pH7、IS(イオン強度)=0.3)を用いた。
【0204】
(1)GDH/DI酵素緩衝溶液
ジアフォラーゼ(DI(E.C.1.6.99)、天野エンザイム株式会社製)を10〜100mg秤量し、上記の緩衝溶液0.2mLに溶解させた(溶液(1)’)。酵素を溶解させる緩衝溶液は直前まで8℃以下に冷蔵されていたものが好ましく、酵素緩衝溶液もできるだけ8℃以下で冷蔵保存しておくことが好ましい。GDH(NAD依存型(E.C.1.1.1.47)、 天野エンザイム製)を5〜30mg秤量し、上記の緩衝溶液0.3mLに溶解させた。この溶液に溶液(1)’を20μL加え、よく混合してGDH/DI酵素緩衝溶液(1)とした。
【0205】
(2)NADH緩衝溶液
NADH(シグマアルドリッチ製、N−8129)を50〜100mg秤量し、緩衝溶液0.1mLに溶解させ、NADH緩衝溶液(2)とした。
【0206】
(3)ANQアセトン溶液
2−アミノ−1,4−ナフトキノン(ANQ)(合成品)を50〜100mg秤量し、アセトン溶液1mLに溶解させ、ANQアセトン溶液(3)とした。
【0207】
(4)PLL水溶液
ポリ−L−リシン臭化水素酸塩(PLL)(Wako製、164−16961)を適量秤量し、2wt%となるようにイオン交換水に溶解させ、PLL水溶液(4)とした。
【0208】
(5)PAAcNa水溶液
ポリアクリル酸ナトリウム(PAAcNa)(アルドリッチ製、041−00595)を適量秤量し、0.022wt%となるようにイオン交換水に溶解させ、PAAcNa水溶液(5)とした。
【0209】
上記のようにして作製した溶液(1)〜(3)を下記の表23で示す量ずつ採取して混合した。この混合液を、マイクロシリンジを用いて、電極材としてカーボンフェルト電極(東レ製、商品名トレカマット、1.0×1.0cm2、厚さ2mm)、上に塗布した後、適宜乾燥を行い、酵素/補酵素/電子メディエーター塗布電極を作製した。
【0210】
【表23】
【0211】
<電極1>
上記の酵素/補酵素/電子メディエーター塗布電極上にPLL水溶液(4)およびPAAcNa水溶液(5)を下記の表24で示す量塗布した後、適宜乾燥を行い、酵素/補酵素/電子メディエーター固定化電極1を作製した。
【0212】
【表24】
【0213】
<電極2、電極3>
上記の酵素/補酵素/電子メディエーター塗布電極上にGnL緩衝溶液(1U/μL)、Gn5DH緩衝溶液(1.2U/μL)を下記の表25に示すように適宜塗布乾燥を行った。その後PLL水溶液(4)およびPAAcNa水溶液(5)を上記の表24で示す量塗布した後、適宜乾燥を行い、酵素/補酵素/電子メディエーター固定化電極2、電極3を作製した。
【0214】
【表25】
【0215】
測定結果を図23及び図24に示す。図23及び図24に示す通り、グルコースの分解において第1反応(図1参照)のみ進行させる場合(電極1)に比べ、第1反応から第2反応(図1参照)まで進行させる場合(電極3)は、実際の定常電流値が理想値に近い約1.8倍になることが確認できた。即ち、酵素を多孔質カーボン電極に固定化した場合であっても、ポリオールの分解反応が進行するほど、実際の電流値も増加することが確認できた。従って、実施例6の結果により、酵素を電極に固定化した場合にも、ポリオールの分解反応が第3反応以降も進行すればするほど、実際の電流値も増加することが示唆された。なお、電極2では、電流値の増加は観測されなかった。この多孔質カーボン電極においては、加水分解酵素であるGnL(グルコノラクトナーゼ)が必要であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0216】
本発明に係る電極を用いれば、任意の基質に対し、酸化反応と脱炭酸反応を繰り返し進行させることができるため、それに伴い、還元型補酵素を大量に生成することができる。従って、酵素センサーや燃料電池に用いた場合、従来のものに比べ、大きな電流値及び電気容量を得ることが可能である。
【0217】
前記酵素センサーや燃料電池は、大きな電流値及び電気容量が得られるため、従来、適用が難しいと考えられていたあらゆる電子機器に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0218】
【図1】本発明に係るポリオール分解方法を用いたグルコースの分解工程を示す図である。
【図2】本発明に係るポリオール分解方法を用いたグリセロールの分解工程を示す図である。
【図3】本発明に係るポリオール分解方法を用いたエチレングリコールの分解工程を示す図である。
【図4】本発明に係るポリオール分解方法を用いたエチレングリコール、グリセロール、エリスリトール、キシリトール、及びソルビトールの分解工程を示す図である。
【図5】本発明に係るポリオール分解方法を用いたグリセロール系単糖類の分解工程を示す図である。
【図6】本発明に係るポリオール分解方法用いたポリオール化合物の分解工程を示す図である。
【図7】実施例1において、グリセロール分解の第1反応時のNADHの生成量を示す図面代用グラフである。
【図8】実施例1において、グリセロール分解の第2反応時のNADHの生成量を示す図面代用グラフである。
【図9】実施例1において、グリセロール分解の第3反応時のNADHの生成量を示す図面代用グラフである。
【図10】実施例1において、グリセロール分解の第4〜5反応時のNADHの生成量を示す図面代用グラフである。
【図11】実施例1において、グリセロール分解の第6反応時のNADHの生成量を示す図面代用グラフである。
【図12】実施例1において、グリセロール分解の第7反応時のNADHの生成量を示す図面代用グラフである。
【図13】実施例1において、グリセロール分解の第8〜9反応時のNADHの生成量を示す図面代用グラフである。
【図14】実施例2において、エチレングリコール分解の第1反応時のNADHの生成量を示す図面代用グラフである。
【図15】実施例2において、エチレングリコール分解の第2反応時のNADHの生成量を示す図面代用グラフである。
【図16】実施例2において、エチレングリコール分解の第3反応時のNADHの生成量を示す図面代用グラフである。
【図17】実施例2において、エチレングリコール分解の第4反応時のNADHの生成量を示す図面代用グラフである。
【図18】実施例2において、エチレングリコール分解の第5〜6反応時のNADHの生成量を示す図面代用グラフである。
【図19】実施例4で用いたプロト電池の摸式図である。
【図20】実施例4(1)において、グルコース分解工程の第1反応から第2反応の電流値を示す図面代用グラフである。
【図21】実施例5における電極上の反応の概略を摸式的に示す図である。
【図22】実施例5において、グルコース分解工程の第1反応から第2反応の電流値を示す図面代用グラフである。
【図23】実施例6において、グルコース分解工程の第1反応から第2反応の時間に対する電流値を示す図面代用グラフである。
【図24】実施例6において、グルコース分解工程の第1反応から第2反応の電位に対する電流値を示す図面代用グラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な電極に関する。より詳しくは、酸化還元酵素と脱炭酸酵素を含有する電極、該電極を用いた酵素センサー又は燃料電池、及び前記酵素センサー又は燃料電池を用いた電気機器、並びにポリオール分解方法に関する。
【0002】
近年、生物学的な技術を利用した電極が、燃料電池、センサーなどの分野で注目されている。
【0003】
例えば、微生物又は細胞の呼吸では、糖類、タンパク質、脂肪などから、解糖系及びトリカルボン酸回路を介して二酸化炭素を生成する過程において、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(nicotinamide adenine dinucleotide、以下「NAD+」と称する。)を還元し、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(以下「NADH」と称する。)のような電気エネルギーに変換する。
【0004】
また、光合成においては、光エネルギーを吸収することにより、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(nicotinamide adenine dinucleotide phosphate、以下「NADP+」と称する。)を還元し、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(以下「NADPH」と称する。)のような電気エネルギーに変換する。
【0005】
このように、生体代謝においては、糖類、脂肪、タンパク質等の栄養素や光エネルギーなどの化学エネルギーが電気エネルギーに変換されるため、これを利用して、電池やセンサーなどに用いることのできる電極が開発されている。
【0006】
上記の一例として、特許文献1には、微生物や細胞を利用した発電方法及び電池、並びにこれらに用いる電子メディエーターを固定化した電極が開示されている。しかし、生体代謝は、呼吸や光合成以外の経路も多様に行われるため、効率的に電気エネルギーを用いることは困難であった。
【0007】
そこで、基質特異性を有する酵素を利用して、効率的に電気エネルギーを用いることのできる電極が開発されている。特に、電極における酸化還元反応を効率的に利用できる酸化還元酵素を用いた電極の開発が進んでいる。
【0008】
例えば、特許文献2には、基板電極上に設けたポリジアルキルシロキサン膜中あるいは膜上に酸化還元酵素を固定化して成る酵素電極が、特許文献3には、酸化還元酵素を塗布した電極を有するバイオセンサが開示されている。
【0009】
前記酸化還元酵素による酸化反応では、酸化生成物とともに還元型補酵素が生成する。生成した酸化生成物を基質として更に同様の反応を複数段階行えば、反応数に応じた還元型補酵素を生成できる。しかし、酸化還元酵素だけの組み合わせでは、せいぜい数ステップ程度しか還元型補酵素の生成反応は進まない。
【0010】
例えば、特許文献4には、NAD+依存型デヒドロゲナーゼの作用によりアルコール類や糖類からNADHを生成させることを利用した燃料電池が開示されている。特許文献4中の図3に記載されているように、エタノールを基質とした場合、NAD+依存型デヒドロゲナーゼの作用により2段階の反応を経て、酢酸が生成するが、酢酸はカルボキシル基を有しており、NAD+依存型デヒドロゲナーゼでは酸化することができない。そのため、NADHとして更に電子を取り出すために、CO2になるまで完全分解するには、クエン酸回路、ペントースリン酸回路等の平衡反応を含む複数の酵素反応が回路になった複雑な反応系を用いる必要があった。
【0011】
これらの複合酵素反応には、NADHとして電子を取り出さない平衡反応(転移反応)が一つ以上あり、かつ、一連の反応が回路となっており、電子を取り出す速度が遅くなりやすいという問題があった。また、これらの回路のような生体内反応を用いる場合には、燃料となる物質もこれらの反応に関与する生体内材料に限定されるといった問題もあった。
【0012】
【特許文献1】特開2000−133297号公報
【特許文献2】特開2001−208719号公報
【特許文献3】特開2006−275923号公報
【特許文献4】特開2004−71559号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
酵素を含有する電極を用いた酵素センサーや燃料電池において、高出力化、高容量化は実用化に向けて必須な課題である。そして、近年では、生体内で実現されている、解糖系、クエン酸回路、ペントースリン酸回路、β―酸化回路、等を用いた複合酵素反応を導入することで、燃料からより高エネルギーな電子をより多く取り出し、電池としての容量を向上させるという研究が進められている。しかし、これらの複合酵素反応には、上記の通り、電子を取り出す速度が遅くなりやすく、燃料となる物質もこれらの反応に関与する生体内材料に限定されるという問題があった。
【0014】
そこで、本発明では、任意の基質(燃料)から多段階的に還元型補酵素を生成することにより、より高エネルギーな電子をより多く取り出すことが可能であり、かつ、電子を取り出す速度を向上させることが可能な新規電極を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本願発明者らは、上記回路のような生体内複合酵素反応を用いなくとも、還元型補酵素として多くの電子を取り出すことのできる反応系について、鋭意研究を行った。その結果、還元型補酵素として電子を取り出さない平衡反応(転移反応)をできるだけ少なくし、基質(燃料)が代謝されて生成する代謝中間物を、還元型補酵素として電子を取り出す脱水素酵素反応と脱炭酸酵素反応の逐次反応により分解し、電子を取り出す速度を向上させる反応系を新規に見出した。
【0016】
本発明では、まず、2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素と、2-オキソ酸生成酵素と、2-オキソ酸カルボキシリアーゼと、を少なくとも含有する電極を提供する。
本発明に係る電極は、少なくとも前記の3種類の酵素を含有すればよいが、更に、ジヒドロキシエチル基酸化酵素やフォルメートデヒドロゲナーゼなどを含有させてもよい。
上記2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素の種類は特に限定されないが、一例としては、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.3、E.C.1.2.1.5)、グリコアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.21)、又はラクトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.22)を挙げることができる。
上記2-オキソ酸生成酵素の種類も特に限定されないが、一例としては、ラクテートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.27、E.C.1.1.1.28)、マレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.37)、グルコネート2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.215)、2-ヒドロキシ脂肪酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.98、E.C.1.1.1.99)、グリセレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.29)、グリオキシレートレダクターゼ(E.C.1.1.1.26)、ヒドロキシパイルベートレダクターゼ(E.C.1.1.1.81)、イソサイトレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.41)、アミノ酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.5)、アラニンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.1)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.2、E.C.1.4.1.3)、セリン2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.7)、バリンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.8)、ロイシンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.9)、グリシンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.10)、グルタミン酸シンターゼ(E.C.1.4.1.14)、トリプトファンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.19)、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.20)、アスパラギン酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.21)、2-オキソアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.23)、マレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.83)、又はタータレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.93)を挙げることができる。
前記2-オキソ酸カルボキシリアーゼの種類も特に限定されないが、一例としては、パイルベートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.1)、ヒドロキシパイルベートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.40)、2-オキソグルタレートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.71)、又は分岐鎖2-オキソ酸デカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.72)を挙げることができる。
前記ジヒドロキシエチル基酸化酵素の種類も特に限定されないが、一例としては、アルコールデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.1、E.C.1.1.1.71)、マニトール2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.67)、グリセロールデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.6)、アルデヒドレダクターゼ(E.C.1.1.1.21)、グルコネート5-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.69)、又はグリコールデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.185)、を挙げることができる。
本発明に係る電極は、酵素センサーや燃料電池に好適に用いることができる。
更に、前記酵素センサー又は前記燃料電池は、電子機器に好適に利用することができる。
本発明では、また、2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素が触媒として機能する分解工程Iと、2-オキソ酸生成酵素が触媒として機能する分解工程IIと、2-オキソ酸カルボキシリアーゼが触媒として機能する分解工程IIIと、を少なくとも含むポリオール分解方法を提供する。
本発明に係るポリオール分解方法は、少なくとも前記IからIIIの3工程を含めばよいが、更に、ジヒドロキシエチル基酸化酵素が触媒として機能する分解工程IVやフォルメートデヒドロゲナーゼが触媒として機能する分解工程Vを含んでいてもよい。
前記分解工程Iでは、下記反応式(1)によるポリオールの分解を進行させることができる。
【化1】
(Rは鎖状又は環状化合物。以下同じ。))
前記分解工程IIでは、下記反応式(2)及び/又は(3)によるポリオールの分解を進行させることができる。
【化2】
【化3】
前記分解工程IIIでは、下記反応式(4)によるポリオールの分解を進行させることができる。
【化4】
前記分解工程IVでは下記反応式(5)から(7)のいずれかの反応によるポリオールの分解を進行させることができる。
【化5】
【化6】
【化7】
前記分解工程Vでは、下記反応式(8)によるポリオールの分解を進行させることができる。
【化8】
本発明に係るポリオール分解方法では、前記分解工程IからVの少なくとも一の工程において生じた電子により、任意の酸化型補酵素Aを還元して還元型補酵素Bを生成することができる。
前記酸化型補酵素A及び還元型補酵素Bは特に限定されないが、一例としては、酸化型補酵素AとしてNAD+、前記還元型補酵素BとしてNADHを挙げることができる。
また、本発明に係るポリオール分解方法では、電子により酸化型補酵素Aを還元して還元型補酵素Bを生成する過程、および、補酵素酸化酵素により還元型補酵素から酸化型補酵素へ戻される過程において、電子メディエーターの酸化及び/又は還元も行うことができる。
【0017】
ここで、本発明に係る技術用語を説明する。本発明における「電子機器」とは、電気的に作動する機器を全て含有する。例えば、携帯電話、モバイル機器、ロボット、パーソナルコンピューター、ゲーム機器、車載機器、家庭電気製品、工業製品等の電子機器、自動車、二輪車、航空機、ロケット、宇宙船等の移動体、検査機器、ペースメーカー用の電源、バイオセンサーを含む生体内機器の電源等の医療機器、生ごみを分解し電気エネルギーを発電させるシステム等の発電システムおよびコジェネレーションシステム、等を挙げることができる。
【0018】
本発明における「ポリオール化合物」とは、分子中に官能基として水酸基が複数存在する化合物をいう。複数とは、少なくとも2つ、好ましくは3つ以上、より好ましくは4つ以上、更に好ましくは5つ以上のものをいう。水酸基の数が多いほど、酸化還元反応が多段階的に進行するため、反応の初期基質1分子あたりの還元型補酵素の生成量は高くなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る電極を用いれば、任意の基質から多段階的に還元型補酵素の生成が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0021】
<電極>
本発明に係る電極は、2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素と、2-オキソ酸生成酵素と、2-オキソ酸カルボキシリアーゼと、を少なくとも含有する。本発明に係る電極は、酸化還元酵素である2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素と2-オキソ酸生成酵素に加え、脱炭酸酵素である2-オキソ酸カルボキシリアーゼを有する。そのため、酸化還元酵素では反応が進行しないカルボキシル基を有する酸化生成物を、脱炭酸させ、酸化還元酵素が作用可能な物質へと変化させることができる。このように、本発明に係る電極を用いれば、任意の基質に対し、酸化反応と脱炭酸反応を繰り返し進行させることができるため、それに伴い、還元型補酵素を大量に生成することができる。
【0022】
本発明に係る電極は、前記3種類の酵素を少なくとも含有していれば、他の構造等は特に限定されない。例えば、導電性基材に前記3種類の酵素を公知の方法で固定化した構成とすることができる。ただし、本発明においては、酵素の固定化は必須ではない。
【0023】
前記導電性基材は、外部と電気的に接続可能な素材であれば特に限定されず、例えば、Pt、Ag、Au、Ru、Rh、Os、Nb、Mo、In、Ir、Zn、Mn、Fe、Co、Ti、V、Cr、Pd、Re、Ta、W、Zr、Ge、Hfなどの金属、アルメル、真ちゅう、ジュラルミン、青銅、ニッケリン、白金ロジウム、ハイパーコ、パーマロイ、パーメンダー、洋銀、リン青銅などの合金類、ポリアセチレン類などの導電性高分子、グラファイト、カーボンブラックなどの炭素材、HfB2、NbB、CrB2、B4Cなどのホウ化物、TiN、ZrNなどの窒化物、VSi2、NbSi2、MoSi2、TaSi2などのケイ化物、及びこれらの合材等を用いることができる。また、多孔体材料からなる骨格と、この骨格の少なくとも一部の表面を被覆する、カーボン系材料を主成分とする材料とを含む多孔体導電材料を用いることもできる。
【0024】
本発明に係る電極は、少なくとも前記の3種類の酵素を含有すればよいが、更に、ジヒドロキシエチル基酸化酵素やフォルメートデヒドロゲナーゼなどを含有させるとより好適である。
【0025】
上記2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素は、酸化により2-ヒドロキシカルボン酸の生成反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.3、E.C.1.2.1.5)、グリコアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.21)、又はラクトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.22)を挙げることができる。
【0026】
上記2-オキソ酸生成酵素は、酸化により2-オキソ酸の生成反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、ラクテートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.27、E.C.1.1.1.28)、マレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.37)、グルコネート2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.215)、2-ヒドロキシ脂肪酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.98、E.C.1.1.1.99)、グリセレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.29)、グリオキシレートレダクターゼ(E.C.1.1.1.26)、ヒドロキシパイルベートレダクターゼ(E.C.1.1.1.81)、イソサイトレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.41)、アミノ酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.5)、アラニンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.1)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.2、E.C.1.4.1.3)、セリン2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.7)、バリンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.8)、ロイシンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.9)、グリシンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.10)、グルタミン酸シンターゼ(E.C.1.4.1.14)、トリプトファンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.19)、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.20)、アスパラギン酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.21)、2-オキソアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.23)、マレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.83)、又はタータレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.93)を挙げることができる。
【0027】
前記2-オキソ酸カルボキシリアーゼは、カルボキシル基を有する化合物の脱炭酸反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、パイルベートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.1)、ヒドロキシパイルベートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.40)、2-オキソグルタレートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.71)、又は分岐鎖2-オキソ酸デカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.72)を挙げることができる。
【0028】
前記ジヒドロキシエチル基酸化酵素は、ジヒドロキシエチル基を有する化合物の酸化反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、アルコールデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.1、E.C.1.1.1.71)、マニトール2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.67)、グリセロールデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.6)、アルデヒドレダクターゼ(E.C.1.1.1.21)、グルコネート5-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.69)、又はグリコールデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.185)、を挙げることができる。
【0029】
また、本発明に係る電極は、上記の酵素に加え、酸化型補酵素および補酵素酸化酵素を含有してもよい。酸化型補酵素としては、例えば、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(nicotinamide adenine dinucleotide、以下「NAD+」と称する。)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(nicotinamide adenine dinucleotide phosphate、以下「NADP+」と称する。)フラビンアデニンジヌクレオチド(flavin adenine dinucleotide、以下「FAD+」と称する。)、ピロロキノリンキノン(pyrrollo-quinoline quinone、以下「PQQ2+」と称する。)などが挙げられる。補酵素酸化酵素としては、例えば、ジアフォラーゼ(DI)が挙げられる。
【0030】
電極では、基質(燃料)の酸化分解に伴い、上記の酸化型補酵素が、それぞれの還元型であるNADH、NADPH、FADH、PQQH2に還元され、逆に、補酵素酸化酵素により、還元型補酵素から酸化型補酵素へ戻されるという酸化還元反応が繰り返される。このとき、還元型補酵素から酸化型補酵素へ戻る際に2電子が発生する。
【0031】
更に、本発明に係る電極は、上記の酵素、酸化型補酵素、および補酵素酸化酵素に加え、電子メディエーターを含有してもよい。上記で発生した電子の電極への受け渡しをスムーズにするためである。電子メディエーターとしては、例えば、2−アミノ−3−カルボキシ−1,4−ナフトキノン(ACNQ)、ビタミンK3、2−アミノ−1,4−ナフトキノン(ANQ)、2−アミノ−3−メチル−1,4−ナフトキノン(AMNQ)、2、3−ジアミノ−1,4−ナフトキノン、オスミウム(Os)、ルテニウム(Ru)、鉄(Fe)、コバルト(Co)などの金属錯体、ベンジルビオローゲンなどのビオローゲン化合物、キノン骨格を有する化合物、ニコチンアミド構造を有する化合物、リボフラビン構造を有する化合物、ヌクレオチド−リン酸構造を有する化合物などなどが挙げられる。
【0032】
本発明に係る電極は、公知のあらゆる酵素センサーに好適に用いることができる。該酵素センサーは、本発明に係る電極を少なくとも使用できるものであれば、構造、機能などは特に制限されない。
【0033】
本発明に係る電極は、また、公知のあらゆる燃料電池に用いることができる。該燃料電池は、本発明に係る酵素電極を少なくとも使用できるものであれば、燃料の種類、構造、機能などは特に制限されない。
【0034】
本発明に係る電極は、任意の基質に対し、酸化反応と脱炭酸反応を繰り返し進行させることができるため、それに伴い、還元型補酵素を大量に生成することができる。従って、上記の酵素センサーや燃料電池に用いた場合、従来のものに比べ、大きな電流値及び電気容量を得ることが可能である。
【0035】
前記酵素センサーや燃料電池は、大きな電流値及び電気容量が得られるため、公知のあらゆる電子機器に好適に用いることができる。該電子機器は、本発明に係る酵素センサーや燃料電池を少なくとも使用できるものであれば、構造、機能等は特に限定されず、電気的に作動する機器を全て含有する。例えば、携帯電話、モバイル機器、ロボット、パーソナルコンピューター、ゲーム機器、車載機器、家庭電気製品、工業製品等の電子機器、自動車、二輪車、航空機、ロケット、宇宙船等の移動体、検査機器、ペースメーカー用の電源、バイオセンサーを含む生体内機器の電源等の医療機器、生ごみを分解し電気エネルギーを発電させるシステム等の発電システムおよびコジェネレーションシステム、等を挙げることができる。
【0036】
<ポリオール分解方法>
本発明に係るポリオール分解方法は、2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素が触媒として機能する分解工程Iと、2-オキソ酸生成酵素が触媒として機能する分解工程IIと、2-オキソ酸カルボキシリアーゼが触媒として機能する分解工程IIIと、を少なくとも含む。本発明に係るポリオール分解方法では、酸化還元酵素である2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素と2-オキソ酸生成酵素が触媒として機能する分解工程I及びIIに加え、脱炭酸酵素である2-オキソ酸カルボキシリアーゼが触媒として機能する分解工程IIIが進行する。そのため、酸化還元酵素では反応が進行しないカルボキシル基を有する酸化生成物を、脱炭酸させ、酸化還元酵素が作用可能な物質へと変化させることができる。このように、本発明に係るポリオール分解方法を用いれば、任意のポリオール化合物の分解において、酸化反応と脱炭酸反応を繰り返し進行させることができるため、それに伴い、還元型補酵素を大量に生成することができる。
【0037】
本発明に係るポリオール分解方法で分解できるポリオール化合物は、水酸基を有していれば公知のあらゆるポリオールを分解することができる。例えば、蛋白質、脂肪酸、糖質、又はその他の化合物を利用することができる。この中でも特に糖質は、食品、その残渣、発酵産物、又はバイオマスなどからの入手の容易性、価格面、汎用性、安全性、及び扱いの容易性などの観点から、より好適である。
【0038】
ここで、本発明における「糖質」とは、ポリアルコールのアルデヒド、ケトン、酸、ポリアルコール自体、これらの誘導体、又は縮合体等を含む。
【0039】
本発明に係るポリオール分解方法で好適に分解できる糖質は、多糖、オリゴ糖、二糖、単糖、及び糖脂質を含み、下記化学式9又は下記化学式10で表すことができる。より好ましくはオリゴ糖、さらに好ましくは単糖を用いることができる。
【化9】
【化10】
【0040】
化学式9で表される単糖の例としては、グルコース(n=6)、キシロース(n=5)、ガラクトース(n=6)及びマンノース(n=6)などを挙げることができる。化学式10で表される単糖の例としては、下記化学式11の一般式で表されるものがあり、具体的には、エチレングリコール(R=H)、グリセロール(R=CH2OH)、エリスリトール(R=CH(OH)CH2OH)、キシリトール(R=CH(OH)CH(OH)CH2OH)、及びソルビトール(R=CH(OH)CH(OH)CH(OH)(CH2OH))、などを挙げることができる。
【化11】
【0041】
以下、本発明に係るポリオール分解方法について、具体例を挙げながら説明する。上記化学式9で示したグルコン酸系単糖類と上記化学式10で示したグリセロール系単糖類をそれぞれ例に挙げて説明する。なお、糖質の一例として単糖類を挙げるが、本発明に係るポリオール分解方法は、多糖類、蛋白質、脂肪酸などを分解することも可能である。
【0042】
また、本発明に係るポリオール分解方法中の酸化還元反応で使用される酸化型補酵素として、「NAD+」を例に挙げて説明するが、これに限定されない。例えば、NADP+、フラビンアデニンジヌクレオチド(flavin adenine dinucleotide、以下「FAD+」と称する。)、及びピロロキノリンキノン(pyrrollo-quinoline quinone、以下「PQQ2+」と称する。)などが挙げられる。これらの酸化型補酵素は、本発明の前記酸化還元反応において、それぞれ還元型であるNADH、NADPH、FADH、及びPQQH2などに変換される。本発明に係るポリオール分解方法では、NAD+又はNADP+を用いることがより好適である。
【0043】
(1)グルコン酸系単糖類の分解
<<グルコースの分解>>
まず、グルコン酸系単糖類としてグルコースを具体例に挙げ、本発明に係るポリオール分解方法を説明する。図1は、本発明に係るポリオール分解方法を用いた分解工程を示す図である。グルコースの分解は、図1で示す通り17段階の反応からなる。
【0044】
第1反応は、グルコースが酸化還元酵素による酸化還元反応によって酸化され、グルコネートが生成する反応である。これに伴ってNAD+からNADHが生成する。前記酸化還元酵素としてはグルコースデヒドロゲナーゼ、又はグルコースオキシダーゼ、又はこれらと同様の反応をする酵素を用いることができる。
【0045】
第2反応では、グルコネートが酸化還元酵素による酸化還元反応によって酸化され、5-ケトグルコネートが生成する。これに伴ってNAD+からNADHが生成する。前記酸化還元酵素は、グルコネート-5-デヒドロゲナーゼの他、これと同様の反応をする酵素を用いることができる。
【0046】
第3反応では、5-ケトグルコネートが酸化還元酵素による酸化還元反応によって酸化され、2-, 5-ジケトグルコネートが生成する。これに伴ってNAD+からNADHが生成する。前記酸化還元酵素は、グルコネート-2-デヒドロゲナーゼの他、これと同様の反応をする酵素を用いることができる。なお、第2反応と第3反応は、順番が入れ替わって進行する場合もある。
【0047】
第4反応では、2, 5-ジケトグルコネートが酸化還元反応によって酸化され、HOOC-CO-CHOH-CHOH-CO-CHOが生成し、これに伴ってNAD+からNADHが生成する。該第4反応は、ジヒドロキシエチル基酸化酵素が触媒として機能する分解工程IVに該当し、下記反応式7の反応が進行する。
【化7】
【0048】
前記ジヒドロキシエチル基酸化酵素は、ジヒドロキシエチル基を有する化合物の酸化反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、アルコールデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.1、E.C.1.1.1.71)、マニトール2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.67)、グリセロールデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.6)、アルデヒドレダクターゼ(E.C.1.1.1.21)、グルコネート5-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.69)、又はグリコールデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.185)、を挙げることができる。
【0049】
第5反応では、HOOC-CO-CHOH-CHOH-CO-CHO が酸化還元反応によって酸化され、HOOC-CO-CHOH-CHOH-CO-COOHが生成し、これに伴ってNAD+からNADHが生成する。該第5反応は、2-オキソ酸生成酵素が触媒として機能する分解工程IIに該当し、下記反応式3の反応が進行する。
【化3】
【0050】
前記2-オキソ酸生成酵素は、酸化により2-オキソ酸の生成反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、ラクテートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.27、E.C.1.1.1.28)、マレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.37)、グルコネート2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.215)、2-ヒドロキシ脂肪酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.98、E.C.1.1.1.99)、グリセレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.29)、グリオキシレートレダクターゼ(E.C.1.1.1.26)、ヒドロキシパイルベートレダクターゼ(E.C.1.1.1.81)、イソサイトレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.41)、アミノ酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.5)、アラニンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.1)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.2、E.C.1.4.1.3)、セリン2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.7)、バリンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.8)、ロイシンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.9)、グリシンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.10)、グルタミン酸シンターゼ(E.C.1.4.1.14)、トリプトファンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.19)、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.20)、アスパラギン酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.21)、2-オキソアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.23)、マレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.83)、又はタータレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.93)を挙げることができる。
【0051】
第6反応では、HOOC-CO-CHOH-CHOH-CO-COOH が脱炭酸反応によって脱炭酸され、HOOC-CO-CHOH-CHOH-CHOが生成し、これに伴って二酸化炭素が生成する。該第6反応は、2-オキソ酸カルボキシリアーゼが触媒として機能する分解工程IIIに該当し、下記反応式4の反応が進行する。
【化4】
【0052】
なお、従来の酸化還元酵素のみを用いる方法では、前記第5反応において、酸化還元酵素が作用できないカルボキシル基を有する化合物が生成するため、第5反応で分解が止まっていた。しかし、本発明に係るポリオール分解方法では、脱炭酸酵素である2-オキソ酸カルボキシリアーゼを用いているため、第6反応以降の分解も段階的に進行させることができる。
【0053】
前記2-オキソ酸カルボキシリアーゼは、カルボキシル基を有する化合物の脱炭酸反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、パイルベートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.1)、ヒドロキシパイルベートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.40)、2-オキソグルタレートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.71)、又は分岐鎖2-オキソ酸デカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.72)を挙げることができる。
【0054】
第7反応では、HOOC-CO-CHOH-CHOH-CHOが脱炭酸反応によって脱炭酸され、CHO-CHOH-CHOH-CHOが生成し、これに伴って二酸化炭素が生成する。該第7反応は、前記第6反応と同様に、2-オキソ酸カルボキシリアーゼが触媒として機能する分解工程IIIに該当し、上記反応式4の反応が進行する。
【0055】
前記2-オキソ酸カルボキシリアーゼは、前記第6反応と同様に、カルボキシル基を有する化合物の脱炭酸反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、パイルベートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.1)、ヒドロキシパイルベートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.40)、2-オキソグルタレートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.71)、又は分岐鎖2-オキソ酸デカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.72)を挙げることができる。
【0056】
第8反応では、CHO-CHOH-CHOH-CHOが酸化還元反応によって酸化され、CHO-CHOH-CHOH-COOHが生成し、これに伴ってNAD+からNADHが生成する。該第8反応は、2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素が触媒として機能する分解工程Iに該当し、下記反応式1の反応が進行する。
【化1】
【0057】
前記2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素は、酸化により2-ヒドロキシカルボン酸の生成反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.3、E.C.1.2.1.5)、グリコアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.21)、又はラクトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.22)を挙げることができる。
【0058】
第9反応では、CHO-CHOH-CHOH-COOHが酸化還元反応によって酸化され、HOOC-CHOH-CHOH-COOHが生成し、これに伴ってNAD+からNADHが生成する。該第9反応は、第8反応と同様に、2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素が触媒として機能する分解工程Iに該当し、上記反応式1の反応が進行する。
【0059】
前記2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素は、前記第8反応と同様に、酸化により2-ヒドロキシカルボン酸の生成反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.3、E.C.1.2.1.5)、グリコアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.21)、又はラクトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.22)を挙げることができる。
【0060】
第10反応では、HOOC-CHOH-CHOH-COOHが酸化還元反応によって酸化され、HOOC-CHOH-CO-COOHが生成し、これに伴ってNAD+からNADHが生成する。該第10反応は、2-オキソ酸生成酵素が触媒として機能する分解工程IIに該当し、下記反応式2の反応が進行する。
【化2】
【0061】
前記2-オキソ酸生成酵素は、前記第5反応と同様に、酸化により2-オキソ酸の生成反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、ラクテートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.27、E.C.1.1.1.28)、マレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.37)、グルコネート2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.215)、2-ヒドロキシ脂肪酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.98、E.C.1.1.1.99)、グリセレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.29)、グリオキシレートレダクターゼ(E.C.1.1.1.26)、ヒドロキシパイルベートレダクターゼ(E.C.1.1.1.81)、イソサイトレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.41)、アミノ酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.5)、アラニンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.1)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.2、E.C.1.4.1.3)、セリン2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.7)、バリンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.8)、ロイシンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.9)、グリシンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.10)、グルタミン酸シンターゼ(E.C.1.4.1.14)、トリプトファンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.19)、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.20)、アスパラギン酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.21)、2-オキソアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.23)、マレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.83)、又はタータレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.93)を挙げることができる。
【0062】
第11反応では、HOOC-CHOH-CO-COOHが脱炭酸反応によって脱炭酸され、HOOC-CHOH-CHOが生成し、これに伴って二酸化炭素が生成する。該第11反応は、前記第6反応及び第7反応と同様に、2-オキソ酸カルボキシリアーゼが触媒として機能する分解工程IIIに該当し、上記反応式4の反応が進行する。
【0063】
前記2-オキソ酸カルボキシリアーゼは、前記第6反応及び第7反応と同様に、カルボキシル基を有する化合物の脱炭酸反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、パイルベートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.1)、ヒドロキシパイルベートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.40)、2-オキソグルタレートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.71)、又は分岐鎖2-オキソ酸デカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.72)を挙げることができる。
【0064】
第12反応では、HOOC-CHOH-CHOが酸化還元反応によって酸化され、HOOC-CHOH-COOHが生成し、これに伴ってNAD+からNADHが生成する。該第12反応は、前記第8反応及び第9反応と同様に、2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素が触媒として機能する分解工程Iに該当し、上記反応式1の反応が進行する。
【0065】
前記2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素は、前記第8反応及び第9反応と同様に、酸化により2-ヒドロキシカルボン酸の生成反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.3、E.C.1.2.1.5)、グリコアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.21)、又はラクトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.22)を挙げることができる。
【0066】
第13反応では、HOOC-CHOH-COOHが酸化還元反応によって酸化され、HOOC-CO-COOHが生成し、これに伴ってNAD+からNADHが生成する。該第13反応は、前記第10反応と同様に、2-オキソ酸生成酵素が触媒として機能する分解工程IIに該当し、上記反応式2の反応が進行する。
【0067】
前記2-オキソ酸生成酵素は、前記第5反応及び第10反応と同様に、酸化により2-オキソ酸の生成反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、ラクテートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.27、E.C.1.1.1.28)、マレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.37)、グルコネート2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.215)、2-ヒドロキシ脂肪酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.98、E.C.1.1.1.99)、グリセレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.29)、グリオキシレートレダクターゼ(E.C.1.1.1.26)、ヒドロキシパイルベートレダクターゼ(E.C.1.1.1.81)、イソサイトレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.41)、アミノ酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.5)、アラニンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.1)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.2、E.C.1.4.1.3)、セリン2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.7)、バリンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.8)、ロイシンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.9)、グリシンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.10)、グルタミン酸シンターゼ(E.C.1.4.1.14)、トリプトファンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.19)、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.20)、アスパラギン酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.21)、2-オキソアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.23)、マレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.83)、又はタータレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.93)を挙げることができる。
【0068】
第14反応では、HOOC-CO-COOHが脱炭酸反応によって脱炭酸され、HOOC-CHOが生成し、これに伴って二酸化炭素が生成する。該第14反応は、前記第6反応、第7反応及び第11反応と同様に、2-オキソ酸カルボキシリアーゼが触媒として機能する分解工程IIIに該当し、上記反応式4の反応が進行する。
【0069】
前記2-オキソ酸カルボキシリアーゼは、前記第6反応、第7反応及び第11反応と同様に、カルボキシル基を有する化合物の脱炭酸反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、パイルベートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.1)、ヒドロキシパイルベートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.40)、2-オキソグルタレートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.71)、又は分岐鎖2-オキソ酸デカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.72)を挙げることができる。
【0070】
第15反応では、HOOC-CHOが酸化還元反応によって酸化され、HOOC-COOHが生成し、これに伴ってNAD+からNADHが生成する。該第15反応は、前記第5反応と同様に、2-オキソ酸生成酵素が触媒として機能する分解工程IIに該当し、上記反応式3の反応が進行する。
【0071】
前記2-オキソ酸生成酵素は、前記第5反応、第10反応及び第13反応と同様に、酸化により2-オキソ酸の生成反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、ラクテートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.27、E.C.1.1.1.28)、マレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.37)、グルコネート2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.215)、2-ヒドロキシ脂肪酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.98、E.C.1.1.1.99)、グリセレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.29)、グリオキシレートレダクターゼ(E.C.1.1.1.26)、ヒドロキシパイルベートレダクターゼ(E.C.1.1.1.81)、イソサイトレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.41)、アミノ酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.5)、アラニンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.1)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.2、E.C.1.4.1.3)、セリン2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.7)、バリンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.8)、ロイシンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.9)、グリシンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.10)、グルタミン酸シンターゼ(E.C.1.4.1.14)、トリプトファンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.19)、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.20)、アスパラギン酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.21)、2-オキソアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.23)、マレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.83)、又はタータレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.93)を挙げることができる。
【0072】
第16反応では、HOOC-COOHが脱炭酸反応によって脱炭酸され、HCOOHが生成し、これに伴って二酸化炭素が生成する。該第16反応は、前記第6反応、第7反応、第11反応及び第14反応と同様に、2-オキソ酸カルボキシリアーゼが触媒として機能する分解工程IIIに該当し、上記反応式4の反応が進行する。
【0073】
前記2-オキソ酸カルボキシリアーゼは、前記第6反応、第7反応、第11反応及び第14反応と同様に、カルボキシル基を有する化合物の脱炭酸反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、パイルベートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.1)、ヒドロキシパイルベートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.40)、2-オキソグルタレートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.71)、又は分岐鎖2-オキソ酸デカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.72)を挙げることができる。
【0074】
第17反応では、HCOOHが酸化還元反応によって酸化され、二酸化炭素が生成し、これに伴ってNAD+からNADHが生成する。該第17反応は、フォルメートデヒドロゲナーゼが触媒として機能する分解工程Vに該当し、下記反応式8の反応が進行する。
【化8】
【0075】
該17反応では、フォルメートデヒドロゲナーゼの他、これと同様の反応をする酵素を用いることができる。
【0076】
以上のように、本発明に係るポリオール分解方法を用いたグルコースの分解では、2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素が触媒として機能する分解工程Iと、2-オキソ酸生成酵素が触媒として機能する分解工程IIと、2-オキソ酸カルボキシリアーゼが触媒として機能する分解工程IIIと、が順不同に繰り返される。
【0077】
そして、グルコースが二酸化炭素にまで分解される過程で全17段階の反応が起こり、そのうち12の反応でNADHが生成する。即ち、グルコース1分子から12分子のNADHが生成する。一方、従来からの酸化還元酵素のみで行うポリオール分解方法では、反応は上記第5反応までしか進行しないので、グルコース1分子からNADHは5分子しか生成しない。従って、本願発明に係るポリオール分解方法を用いれば、従来のポリオール分解方法に比べ、大量のNADHを生成することができる。
【0078】
(2)グリセロール系単糖類の分解
<<グリセロール(CH2OH-CHOH-CH2OH)の分解>>
グリセロール系単糖類としてグリセロール(CH2OH-CHOH-CH2OH)を具体例に挙げ、本発明に係るポリオール分解方法を説明する。図2は、図1とは異なる実施形態であるポリオール分解方法を用いた分解工程を示す図である。
【0079】
グリセロールの分解は、図2で示す通り9段階の反応からなる。ただし、水酸基若しくはアルデヒド基に対する酸化還元酵素の選択性によって、反応経路にバリエーションが生ずる可能性がある(図2中経路A、B、及びC参照)。しかし、どの経路で反応が進んでも、酵素反応の順序が前後するだけであり、同一の酵素で基質を分解し、還元型補酵素を生成できるので実質的な差異はない。ここでは、経路Aを例に挙げて説明する。
【0080】
第1反応では、グリセロール(CH2OH-CHOH-CH2OH)が酸化還元反応によって酸化され、グリセロアルデヒド(CH2OH-CHOH-CHO)が生成し、これに伴ってNAD+からNADHが生成する。該第1反応は、ジヒドロキシエチル基酸化酵素が触媒として機能する分解工程IVに該当し、下記反応式6の反応が進行する。
【化6】
【0081】
前記ジヒドロキシエチル基酸化酵素は、ジヒドロキシエチル基を有する化合物の酸化反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、アルコールデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.1、E.C.1.1.1.71)、マニトール2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.67)、グリセロールデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.6)、アルデヒドレダクターゼ(E.C.1.1.1.21)、グルコネート5-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.69)、又はグリコールデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.185)、を挙げることができる。
【0082】
第2反応では、グリセロアルデヒド(CH2OH-CHOH-CHO)が酸化還元反応によって酸化され、グリセレート(CH2OH-CHOH-COOH)が生成し、これに伴ってNAD+からNADHが生成する。該第2反応は、2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素が触媒として機能する分解工程Iに該当し、下記反応式1の反応が進行する。
【化1】
【0083】
前記2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素は、酸化により2-ヒドロキシカルボン酸の生成反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.3、E.C.1.2.1.5)、グリコアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.21)、又はラクトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.22)を挙げることができる。
【0084】
第3反応では、グリセレート(CH2OH-CHOH-COOH)が酸化還元反応によって酸化され、ヒドロキシパイルベート(CH2OH-CO-COOH)が生成し、これに伴ってNAD+からNADHが生成する。該第3反応は、2-オキソ酸生成酵素が触媒として機能する分解工程IIに該当し、下記反応式2の反応が進行する。
【化2】
【0085】
前記2-オキソ酸生成酵素は、酸化により2-オキソ酸の生成反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、ラクテートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.27、E.C.1.1.1.28)、マレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.37)、グルコネート2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.215)、2-ヒドロキシ脂肪酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.98、E.C.1.1.1.99)、グリセレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.29)、グリオキシレートレダクターゼ(E.C.1.1.1.26)、ヒドロキシパイルベートレダクターゼ(E.C.1.1.1.81)、イソサイトレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.41)、アミノ酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.5)、アラニンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.1)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.2、E.C.1.4.1.3)、セリン2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.7)、バリンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.8)、ロイシンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.9)、グリシンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.10)、グルタミン酸シンターゼ(E.C.1.4.1.14)、トリプトファンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.19)、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.20)、アスパラギン酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.21)、2-オキソアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.23)、マレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.83)、又はタータレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.93)を挙げることができる。
【0086】
第4反応では、ヒドロキシパイルベート(CH2OH-CO-COOH)が脱炭酸反応によって脱炭酸され、グリコアルデヒド(CH2OH-CHO)が生成し、これに伴って二酸化炭素が生成する。該第4反応は、2-オキソ酸カルボキシリアーゼが触媒として機能する分解工程IIIに該当し、下記反応式4の反応が進行する。
【化4】
【0087】
なお、従来の酸化還元酵素のみを用いる方法では、前記第3反応において、酸化還元酵素が作用できないカルボキシル基を有する化合物が生成するため、前記第3反応で分解が止まっていた。しかし、本発明に係るポリオール分解方法では、脱炭酸酵素である2-オキソ酸カルボキシリアーゼを用いているため、第4反応以降の分解も段階的に進行させることができる。
【0088】
前記2-オキソ酸カルボキシリアーゼは、カルボキシル基を有する化合物の脱炭酸反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、パイルベートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.1)、ヒドロキシパイルベートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.40)、2-オキソグルタレートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.71)、又は分岐鎖2-オキソ酸デカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.72)を挙げることができる。
【0089】
第5反応では、グリコアルデヒド(CH2OH-CHO)が酸化還元反応によって酸化され、グリコレート(CH2OH-COOH)が生成し、これに伴ってNAD+からNADHが生成する。該第5反応は、前記第2反応と同様に、2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素が触媒として機能する分解工程Iに該当し、上記反応式1の反応が進行する。
【0090】
前記2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素は、前記第2反応と同様に、酸化により2-ヒドロキシカルボン酸の生成反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.3、E.C.1.2.1.5)、グリコアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.21)、又はラクトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.22)を挙げることができる。
【0091】
第6反応では、グリコレート(CH2OH-COOH)が酸化還元反応によって酸化され、グリオキシレート(OHC-COOH)が生成し、これに伴ってNAD+からNADHが生成する。該第6反応は、前記第3反応と同様に、2-オキソ酸生成酵素が触媒として機能する分解工程IIに該当し、上記反応式2の反応が進行する。
【0092】
前記2-オキソ酸生成酵素は、前記第3反応と同様に、酸化により2-オキソ酸の生成反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、ラクテートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.27、E.C.1.1.1.28)、マレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.37)、グルコネート2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.215)、2-ヒドロキシ脂肪酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.98、E.C.1.1.1.99)、グリセレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.29)、グリオキシレートレダクターゼ(E.C.1.1.1.26)、ヒドロキシパイルベートレダクターゼ(E.C.1.1.1.81)、イソサイトレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.41)、アミノ酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.5)、アラニンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.1)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.2、E.C.1.4.1.3)、セリン2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.7)、バリンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.8)、ロイシンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.9)、グリシンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.10)、グルタミン酸シンターゼ(E.C.1.4.1.14)、トリプトファンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.19)、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.20)、アスパラギン酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.21)、2-オキソアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.23)、マレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.83)、又はタータレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.93)を挙げることができる。
【0093】
第7反応では、グリオキシレート(OHC-COOH)が酸化還元酵素によって酸化され、オキサレート(HOOC-COOH)が生成し、これに伴ってNAD+からNADHが生成する。該第7反応は、2-オキソ酸生成酵素が触媒として機能する分解工程IIに該当し、下記反応式3の反応が進行する。
【化3】
【0094】
前記2-オキソ酸生成酵素は、前記第3反応及び第6反応と同様に、酸化により2-オキソ酸の生成反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、ラクテートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.27、E.C.1.1.1.28)、マレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.37)、グルコネート2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.215)、2-ヒドロキシ脂肪酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.98、E.C.1.1.1.99)、グリセレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.29)、グリオキシレートレダクターゼ(E.C.1.1.1.26)、ヒドロキシパイルベートレダクターゼ(E.C.1.1.1.81)、イソサイトレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.41)、アミノ酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.5)、アラニンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.1)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.2、E.C.1.4.1.3)、セリン2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.7)、バリンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.8)、ロイシンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.9)、グリシンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.10)、グルタミン酸シンターゼ(E.C.1.4.1.14)、トリプトファンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.19)、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.20)、アスパラギン酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.21)、2-オキソアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.23)、マレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.83)、又はタータレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.93)を挙げることができる。
【0095】
第8反応では、オキサレート(HOOC-COOH)が脱炭酸反応によって脱炭酸され、フォルメート(HCOOH)が生成し、これに伴って二酸化炭素が生成する。該第8反応は、前記第4反応と同様に、2-オキソ酸カルボキシリアーゼが触媒として機能する分解工程IIIに該当し、上記反応式4の反応が進行する。
【0096】
前記2-オキソ酸カルボキシリアーゼは、前記第4反応と同様に、カルボキシル基を有する化合物の脱炭酸反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、パイルベートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.1)、ヒドロキシパイルベートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.40)、2-オキソグルタレートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.71)、又は分岐鎖2-オキソ酸デカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.72)を挙げることができる。
【0097】
第9反応では、フォルメート(HCOOH)が酸化還元酵素によって酸化され、二酸化炭素が生成し、これに伴ってNAD+からNADHが生成する。該第9反応は、フォルメートデヒドロゲナーゼが触媒として機能する分解工程Vに該当し、下記反応式8の反応が進行する。
【化8】
【0098】
該第9反応では、フォルメートデヒドロゲナーゼの他、これと同様の反応をする酵素を用いることができる。
【0099】
以上、グリセロールが二酸化炭素にまで分解される過程で全9段階の反応が起こり、そのうち7の反応でNADHが生成する。即ち、グリセロール1分子から7分子のNADHが生成する。一方、従来からの酸化還元酵素のみで行うポリオール分解方法では、反応は上記第3反応までしか進行しないので、グリセロール1分子からNADHは3分子しか生成しない。従って、本願発明に係るポリオール分解方法を用いれば、従来のポリオール分解方法に比べ、大量のNADHを生成することができる。
【0100】
<<エチレングリコール(CH2OH-CH2OH)の分解>>
グリセロール系単糖類としてエチレングリコール(CH2OH-CH2OH)を具体例に挙げ、本発明に係るポリオール分解方法を説明する。図3は、図1及び図2とは異なる実施形態であるポリオール分解方法を用いた分解工程を示す図である。
【0101】
エチレングリコールの分解は、図3で示す通り6段階の反応からなる。ただし、水酸基若しくはアルデヒド基に対する酸化還元酵素の選択性によって、反応経路にバリエーションが生ずる可能性がある(図3中経路A及びB参照)。しかし、どの経路で反応が進んでも、酵素反応の順序が前後するだけであり、同一の酵素で基質を分解し、還元型補酵素を生成できるので実質的な差異はない。ここでは経路Aを例に挙げて説明する。
【0102】
第1反応では、エチレングリコール(CH2OH-CH2OH)が酸化還元反応によって酸化され、グリコアルデヒド(CH2OH-CHO)が生成し、これに伴ってNAD+からNADHが生成する。該第1反応は、ジヒドロキシエチル基酸化酵素が触媒として機能する分解工程IVに該当し、下記反応式6の反応が進行する。
【化6】
【0103】
前記ジヒドロキシエチル基酸化酵素は、ジヒドロキシエチル基を有する化合物の酸化反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、アルコールデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.1、E.C.1.1.1.71)、マニトール2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.67)、グリセロールデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.6)、アルデヒドレダクターゼ(E.C.1.1.1.21)、グルコネート5-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.69)、又はグリコールデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.185)、を挙げることができる。
【0104】
グリコアルデヒド(CH2OH-CHO)以降の反応は、図3に示す通り、前記グリセロールを使用した場合と同様の反応で分解することが可能である。従って、エチレングリコールが二酸化炭素にまで分解される過程で全6段階の反応が起こり、そのうち5の反応でNADHが生成する。即ち、エチレングリコール1分子から5分子のNADHが生成する。一方、従来からの酸化還元酵素のみで行うポリオール分解方法では、反応は上記第4反応までしか進行しないので、グリセロール1分子からNADHは4分子しか生成しない。従って、本願発明に係るポリオール分解方法を用いれば、従来のポリオール分解方法に比べ、多くのNADHを生成することができる。
【0105】
<<エリスリトール(CH2OH-CHOH-CHOH-CH2OH)の分解>>
グリセロール系単糖類としてエリスリトール(CH2OH-CHOH-CHOH-CH2OH)、を具体例に挙げ、本発明に係るポリオール分解方法を説明する。図4は、図1、図2及び図3とは異なる実施形態であるポリオール分解方法を用いた分解工程を示す図である。
【0106】
第1反応では、エリスリトール(CH2OH-CHOH-CHOH-CH2OH)が酸化還元反応によって酸化され、CH2OH-CHOH-CHOH-CHOが生成し、これに伴ってNAD+からNADHが生成する。該第1反応は、ジヒドロキシエチル基酸化酵素が触媒として機能する分解工程IVに該当し、下記反応式6の反応が進行する。
【化6】
【0107】
前記ジヒドロキシエチル基酸化酵素は、ジヒドロキシエチル基を有する化合物の酸化反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、アルコールデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.1、E.C.1.1.1.71)、マニトール2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.67)、グリセロールデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.6)、アルデヒドレダクターゼ(E.C.1.1.1.21)、グルコネート5-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.69)、又はグリコールデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.185)、を挙げることができる。
【0108】
第2反応では、CH2OH-CHOH-CHOH-CHOが酸化還元反応によって酸化され、CH2OH-CHOH-CHOH-COOHが生成し、これに伴ってNAD+からNADHが生成する。該第2反応は、2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素が触媒として機能する分解工程Iに該当し、下記反応式1の反応が進行する。
【化1】
【0109】
前記2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素は、酸化により2-ヒドロキシカルボン酸の生成反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.3、E.C.1.2.1.5)、グリコアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.21)、又はラクトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.22)を挙げることができる。
【0110】
第3反応では、CH2OH-CHOH-CHOH-COOHが酸化還元反応によって酸化され、CH2OH-CHOH-CO-COOHが生成し、これに伴ってNAD+からNADHが生成する。該第3反応は、2-オキソ酸生成酵素が触媒として機能する分解工程IIに該当し、下記反応式2の反応が進行する。
【化2】
【0111】
前記2-オキソ酸生成酵素は、酸化により2-オキソ酸の生成反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、ラクテートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.27、E.C.1.1.1.28)、マレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.37)、グルコネート2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.215)、2-ヒドロキシ脂肪酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.98、E.C.1.1.1.99)、グリセレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.29)、グリオキシレートレダクターゼ(E.C.1.1.1.26)、ヒドロキシパイルベートレダクターゼ(E.C.1.1.1.81)、イソサイトレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.41)、アミノ酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.5)、アラニンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.1)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.2、E.C.1.4.1.3)、セリン2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.7)、バリンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.8)、ロイシンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.9)、グリシンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.10)、グルタミン酸シンターゼ(E.C.1.4.1.14)、トリプトファンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.19)、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.20)、アスパラギン酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.21)、2-オキソアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.23)、マレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.83)、又はタータレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.93)を挙げることができる。
【0112】
第4反応では、CH2OH-CHOH-CO-COOHが脱炭酸反応によって脱炭酸され、グリセロアルデヒド(CH2OH-CHOH-CHO)が生成し、これに伴って二酸化炭素が生成する。該第4反応は、2-オキソ酸カルボキシリアーゼが触媒として機能する分解工程IIIに該当し、下記反応式4の反応が進行する。
【化4】
【0113】
なお、従来の酸化還元酵素のみを用いる方法では、前記第3反応において、酸化還元酵素が作用できないカルボキシル基を有する化合物が生成するため、前記第3反応で分解が止まっていた。しかし、本発明に係るポリオール分解方法では、脱炭酸酵素である2-オキソ酸カルボキシリアーゼを用いているため、第4反応以降の分解も段階的に進行させることができる。
【0114】
前記2-オキソ酸カルボキシリアーゼは、カルボキシル基を有する化合物の脱炭酸反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、パイルベートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.1)、ヒドロキシパイルベートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.40)、2-オキソグルタレートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.71)、又は分岐鎖2-オキソ酸デカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.72)を挙げることができる。
【0115】
グリセロアルデヒド(CH2OH-CHOH-CHO)以降の反応は、図4に示す通り、前記グリセロールを使用した場合と同様の反応で分解することが可能である。従って、エリスリトールが二酸化炭素にまで分解される過程で全12段階の反応が起こり、そのうち9の反応でNADHが生成する。即ち、エリスリトール1分子から9分子のNADHが生成する。一方、従来からの酸化還元酵素のみで行うポリオール分解方法では、反応は上記第3反応までしか進行しないので、エリスリトール1分子からNADHは3分子しか生成しない。従って、本願発明に係るポリオール分解方法を用いれば、従来のポリオール分解方法に比べ、大量のNADHを生成することができる。
【0116】
<<キシリトール(CH2OH-CHOH-CHOH-CHOH-CH2OH)の分解>>
グリセロール系単糖類としてキシリトール(CH2OH-CHOH-CHOH-CHOH-CH2OH)を具体例に挙げ、本発明に係るポリオール分解方法を説明する。前記エリスリトールの分解で用いた図4を用いて説明する。
【0117】
第1反応では、キシリトール(CH2OH-CHOH-CHOH-CHOH-CH2OH)が酸化還元反応によって酸化され、CH2OH-CHOH-CHOH-CHOH-CHOが生成し、これに伴ってNAD+からNADHが生成する。該第1反応は、ジヒドロキシエチル基酸化酵素が触媒として機能する分解工程IVに該当し、下記反応式6の反応が進行する。
【化6】
【0118】
前記ジヒドロキシエチル基酸化酵素は、ジヒドロキシエチル基を有する化合物の酸化反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、アルコールデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.1、E.C.1.1.1.71)、マニトール2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.67)、グリセロールデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.6)、アルデヒドレダクターゼ(E.C.1.1.1.21)、グルコネート5-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.69)、又はグリコールデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.185)、を挙げることができる。
【0119】
第2反応では、CH2OH-CHOH-CHOH-CHOH-CHOが酸化還元反応によって酸化され、CH2OH-CHOH-CHOH-CHOH-COOHが生成し、これに伴ってNAD+からNADHが生成する。該第2反応は、2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素が触媒として機能する分解工程Iに該当し、下記反応式1の反応が進行する。
【化1】
【0120】
前記2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素は、酸化により2-ヒドロキシカルボン酸の生成反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.3、E.C.1.2.1.5)、グリコアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.21)、又はラクトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.22)を挙げることができる。
【0121】
第3反応では、CH2OH-CHOH-CHOH-CHOH-COOHが酸化還元反応によって酸化され、CH2OH-CHOH-CHOH-CO-COOHが生成し、これに伴ってNAD+からNADHが生成する。該第3反応は、2-オキソ酸生成酵素が触媒として機能する分解工程IIに該当し、下記反応式2の反応が進行する。
【化2】
【0122】
前記2-オキソ酸生成酵素は、酸化により2-オキソ酸の生成反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、ラクテートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.27、E.C.1.1.1.28)、マレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.37)、グルコネート2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.215)、2-ヒドロキシ脂肪酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.98、E.C.1.1.1.99)、グリセレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.29)、グリオキシレートレダクターゼ(E.C.1.1.1.26)、ヒドロキシパイルベートレダクターゼ(E.C.1.1.1.81)、イソサイトレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.41)、アミノ酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.5)、アラニンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.1)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.2、E.C.1.4.1.3)、セリン2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.7)、バリンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.8)、ロイシンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.9)、グリシンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.10)、グルタミン酸シンターゼ(E.C.1.4.1.14)、トリプトファンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.19)、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.20)、アスパラギン酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.21)、2-オキソアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.23)、マレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.83)、又はタータレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.93)を挙げることができる。
【0123】
第4反応では、CH2OH-CHOH-CHOH-CO-COOHが脱炭酸反応によって脱炭酸され、CH2OH-CHOH-CHOH-CHOが生成し、これに伴って二酸化炭素が生成する。該第4反応は、2-オキソ酸カルボキシリアーゼが触媒として機能する分解工程IIIに該当し、下記反応式4の反応が進行する。
【化4】
【0124】
なお、従来の酸化還元酵素のみを用いる方法では、前記第3反応において、酸化還元酵素が作用できないカルボキシル基を有する化合物が生成するため、前記第3反応で分解が止まっていた。しかし、本発明に係るポリオール分解方法では、脱炭酸酵素である2-オキソ酸カルボキシリアーゼを用いているため、第4反応以降の分解も段階的に進行させることができる。
【0125】
前記2-オキソ酸カルボキシリアーゼは、カルボキシル基を有する化合物の脱炭酸反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、パイルベートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.1)、ヒドロキシパイルベートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.40)、2-オキソグルタレートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.71)、又は分岐鎖2-オキソ酸デカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.72)を挙げることができる。
【0126】
CH2OH-CHOH-CHOH-CHO以降の反応は、図4に示す通り、前記エリスリトールを使用した場合と同様の反応で分解することが可能である。従って、キシリトールが二酸化炭素にまで分解される過程で全15段階の反応が起こり、そのうち11の反応でNADHが生成する。即ち、キシリトール1分子から11分子のNADHが生成する。一方、従来からの酸化還元酵素のみで行うポリオール分解方法では、反応は上記第3反応までしか進行しないので、キシリトール1分子からNADHは3分子しか生成しない。従って、本願発明に係るポリオール分解方法を用いれば、従来のポリオール分解方法に比べ、大量のNADHを生成することができる。
【0127】
<<ソルビトール(CH2OH-CHOH-CHOH-CHOH-CHOH-CH2OH)の分解>>
グリセロール系単糖類としてソルビトール(CH2OH-CHOH-CHOH-CHOH-CHOH-CH2OH)を具体例に挙げ、本発明に係るポリオール分解方法を説明する。前記エリスリトール及びキシリトールの分解で用いた図4を用いて説明する。
【0128】
第1反応では、ソルビトール(CH2OH-CHOH-CHOH-CHOH-CHOH-CH2OH)が酸化還元反応によって酸化され、CH2OH-CHOH-CHOH-CHOH-CHOH-CHOが生成し、これに伴ってNAD+からNADHが生成する。該第1反応は、ジヒドロキシエチル基酸化酵素が触媒として機能する分解工程IVに該当し、下記反応式6の反応が進行する。
【化6】
【0129】
前記ジヒドロキシエチル基酸化酵素は、ジヒドロキシエチル基を有する化合物の酸化反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、アルコールデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.1、E.C.1.1.1.71)、マニトール2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.67)、グリセロールデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.6)、アルデヒドレダクターゼ(E.C.1.1.1.21)、グルコネート5-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.69)、又はグリコールデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.185)、を挙げることができる。
【0130】
第2反応では、CH2OH-CHOH-CHOH-CHOH-CHOH-CHOが酸化還元反応によって酸化され、CH2OH-CHOH-CHOH-CHOH-CHOH-COOHが生成し、これに伴ってNAD+からNADHが生成する。該第2反応は、2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素が触媒として機能する分解工程Iに該当し、下記反応式1の反応が進行する。
【化1】
【0131】
前記2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素は、酸化により2-ヒドロキシカルボン酸の生成反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.3、E.C.1.2.1.5)、グリコアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.21)、又はラクトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.22)を挙げることができる。
【0132】
第3反応では、CH2OH-CHOH-CHOH-CHOH-CHOH-COOHが酸化還元反応によって酸化され、CH2OH-CHOH-CHOH-CHOH-CO-COOHが生成し、これに伴ってNAD+からNADHが生成する。該第3反応は、2-オキソ酸生成酵素が触媒として機能する分解工程IIに該当し、下記反応式2の反応が進行する。
【化2】
【0133】
前記2-オキソ酸生成酵素は、酸化により2-オキソ酸の生成反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、ラクテートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.27、E.C.1.1.1.28)、マレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.37)、グルコネート2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.215)、2-ヒドロキシ脂肪酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.98、E.C.1.1.1.99)、グリセレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.29)、グリオキシレートレダクターゼ(E.C.1.1.1.26)、ヒドロキシパイルベートレダクターゼ(E.C.1.1.1.81)、イソサイトレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.41)、アミノ酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.5)、アラニンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.1)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.2、E.C.1.4.1.3)、セリン2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.7)、バリンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.8)、ロイシンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.9)、グリシンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.10)、グルタミン酸シンターゼ(E.C.1.4.1.14)、トリプトファンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.19)、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.20)、アスパラギン酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.21)、2-オキソアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.23)、マレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.83)、又はタータレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.93)を挙げることができる。
【0134】
第4反応では、CH2OH-CHOH-CHOH-CHOH-CO-COOHが脱炭酸反応によって脱炭酸され、CH2OH-CHOH-CHOH-CHOH-CHOが生成し、これに伴って二酸化炭素が生成する。該第4反応は、2-オキソ酸カルボキシリアーゼが触媒として機能する分解工程IIIに該当し、下記反応式4の反応が進行する。
【化4】
【0135】
なお、従来の酸化還元酵素のみを用いる方法では、前記第3反応において、酸化還元酵素が作用できないカルボキシル基を有する化合物が生成するため、前記第3反応で分解が止まっていた。しかし、本発明に係るポリオール分解方法では、脱炭酸酵素である2-オキソ酸カルボキシリアーゼを用いているため、第4反応以降の分解も段階的に進行させることができる。
【0136】
前記2-オキソ酸カルボキシリアーゼは、カルボキシル基を有する化合物の脱炭酸反応を触媒し得る酵素であれば、その種類は特に限定されない。一例としては、パイルベートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.1)、ヒドロキシパイルベートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.40)、2-オキソグルタレートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.71)、又は分岐鎖2-オキソ酸デカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.72)を挙げることができる。
【0137】
CH2OH-CHOH-CHOH-CHOH-CHO以降の反応は、図4に示す通り、前記キシトールを使用した場合と同様の反応で分解することが可能である。従って、ソルビトールが二酸化炭素にまで分解される過程で全18段階の反応が起こり、そのうち14の反応でNADHが生成する。即ち、ソルビトール1分子から14分子のNADHが生成する。一方、従来からの酸化還元酵素のみで行うポリオール分解方法では、反応は上記第3反応までしか進行しないので、ソルビトール1分子からNADHは3分子しか生成しない。従って、本願発明に係るポリオール分解方法を用いれば、従来のポリオール分解方法に比べ、大量のNADHを生成することができる。
【0138】
以上、グリセロール系単糖類の分解反応をまとめると図5のように概略化することができる。図5で示す通り、最初にジヒドロキシエチル基酸化酵素が触媒として機能する分解工程IVが行われる。そして、フォルメートに分解されるまで、2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素が触媒として機能する分解工程Iと、2-オキソ酸生成酵素が触媒として機能する分解工程IIと、2-オキソ酸カルボキシリアーゼが触媒として機能する分解工程IIIと、が何度も繰り返される。最後にフォルメートデヒドロゲナーゼが触媒として機能する分解工程Vが行われる。
【0139】
従来からの酸化還元酵素のみで行うポリオール分解方法では、カルボキシル基を酸化できないため、図5中分解工程II(第3反応)で反応が止まってしまう。しかし、本発明に係るポリオール分解方法では、脱炭酸酵素である2-オキソ酸カルボキシリアーゼを用いているため、再度、酸化還元酵素で酸化可能な物質に変化させ、フォルメートに分解されるまで、分解工程Iと分解工程IIを繰り返すことができる。従って、本願発明に係るポリオール分解方法を用いれば、従来のポリオール分解方法に比べ、大量のNADHを生成することができる。
【0140】
ここで、図6は、グリセロール系単糖類の分解反応、及び該分解反応を利用し得る反応の概要図である。図6中経路Aに示す通り、グルコン酸系単糖類であるグルコース、マンノース、及びキシロースは、アルデヒドレダクターゼによって、それぞれソルビトール、マンニトール、キシリトールに変換されることが公知である。従って、グルコン酸系単糖類は、前記(1)で示したグルコン酸系単糖類の分解工程としてだけでなく、グリセロール系単糖類の分解工程を経て分解することもできる。
【0141】
また、図6中経路Bに示す通り、グルコースは、グルコースデヒドロゲナーゼ、グルコン酸-2-デヒドロゲナーゼ、及びグルコン酸-5-デヒドロゲナーゼによる一連の反応により2,5-ジケトグルコン酸に変換されることが公知である。そして、2,5-ジケトグルコン酸は、グリセロール系の反応で分解を受け、NADHを生成することが可能である。従って、グルコン酸系単糖類のうち、グルコースは2通りの経路でグリセロール系の反応に合流することが可能である。
【0142】
なお、図6中経路Bの2-ケトグルコン酸(CH2OH-CHOH-CHOH-CHOH-CO-COOH)から、グルコン酸-5-デヒドロゲナーゼによる2,5-ジケトグルコン酸(CH2OH-CO-CHOH-CHOH-CO-COOH)への第0反応は、ジヒドロキシエチル基酸化酵素が触媒として機能する分解工程IVに該当し、下記反応式5の反応が進行する。
【化5】
【0143】
以上示した通り、本発明に係るポリオール分解方法では、クエン酸回路等の生体内複合酵素反応を用いなくとも、途中で反応が停止することなく、ポリオールが二酸化炭素に分解されるまで反応を進めることが可能である。それに伴い、還元型補酵素を大量に得ることができる。
【0144】
本発明に係るポリオール分解方法を、酵素電極における反応に用いれば、大量に発生する還元型補酵素から電子メディエーターを介して大量の電子の受け渡しが可能である。
【0145】
酵素電極では、まず、生成した還元型補酵素がジアフォラーゼ(DI)等の補酵素酸化酵素により酸化型補酵素に戻される(酸化)際に、電子メディエーターの酸化体に電子を受け渡し、電子メディエーターを還元体にする。そして、電子メディエーターの還元体が電極に電子を受け渡し、電子メディエーターは酸化体へ戻るといった反応が繰り返される。この時、本発明に係るポリオール分解方法を用いれば、大量の還元型補酵素が生成できるため、非常に高い電流値及び電気容量を得ることが可能である。
【実施例1】
【0146】
実施例1では、本発明に係るポリオール分解方法を用いてグリセロールを分解する場合、各反応において還元型補酵素が生成するか否かを確認した。用いた酵素を表1に示す。
【0147】
【表1】
【0148】
酸化型・還元型補酵素の定量はHPLCを用いて行った。分析には、SPD-10AVP紫外/可視分光検出器、SCL-10AVPシステムコントローラー、SIL−10ADVPオートサンプラーを備えた、高速液体クロマトグラフシステム(島津製作所株式会社製)を使用した。移動層として 10 mmol/L リン酸緩衝液(pH 2.6)、カラムとしてODS-80Tm(東ソー株式会社製)、カラム温度 40℃、流速 1.0 mL/min、測定波長260 nmで行った。
【0149】
各酵素の活性は、以下の方法により測定した。
【0150】
(1)アルデヒドレダクターゼ活性
0.10 mol/L キシロースと 2.1 mmol/L NAD+を含む0.1 mol/L トリス-塩酸 緩衝液 (pH 8.0) に、アルデヒドレダクターゼを添加し、25℃における吸光度340nmの単位時間当たりの増加を測定することによりNADHの生成量を算出した。1分間に1μモルのNADHを生成する酵素量を1ユニットと定義した。
【0151】
(2)アルコールデヒドロゲナーゼ活性
1.0 mol/L エタノールと 0.83 mmol/L NAD+を含む10 mmol/L リン酸緩衝液 (pH 8.8) に、アルコールデヒドロゲナーゼを添加し、25℃における吸光度340nmの単位時間当たりの増加を測定することによりNADHの生成量を算出した。1分間に1μモルのNADHを生成する酵素量を1ユニットと定義した。
【0152】
(3)アルデヒドデヒドロゲナーゼ活性
0.10 mol/L アセトアルデヒドと 2.1 mmol/L NAD+を含む0.1 mol/Lトリス-塩酸緩衝液 (pH 8.0) に、アルデヒドデヒドロゲナーゼを添加し、25℃における吸光度340nmの単位時間当たりの増加を測定することによりNADHの生成量を算出した。1分間に1μモルのNADHを生成する酵素量を1ユニットと定義した。
【0153】
(4)ラクテートデヒドロゲナーゼ活性
1.8 mmol/L パイルベートと 0.20 mmol/L NADHを含む0.1 mmol/Lトリス-塩酸緩衝液 (pH 7.8) に、アルデヒドデヒドロゲナーゼを添加し、25℃における吸光度340nmの単位時間当たりの減少を測定することによりNAD+の生成量を算出した。1分間に1μモルのNADHを消費する酵素量を1ユニットと定義した。
【0154】
(5)パイルベートデカルボキシラーゼ
340 mmol/L ピルビン酸、110 mmol/L NADH、3.5 Unit/mLのアルコールデヒドロゲナーゼ を含んだ190 mmol/L クエン酸緩衝液(pH 6.0)に、パイルベートデカルボキシラーゼ を添加し、25℃における吸光度340nmの単位時間当たりの減少を測定することによりNAD+の生成量を算出した。1分間に1μモルのNAD+を生成する酵素量を1ユニットと定義した。
【0155】
(6)フォルメートデヒドロゲナーゼ
0.3 mol/L ギ酸と 1.0 mg/mL NAD+を基質として含む、80 mmol/L リン酸緩衝液(pH 8.8)に、フォルメートデヒドロゲナーゼを添加し、30℃における吸光度340nmの単位時間当たりの増加量を測定することによりNADHの生成量を計算した。1分間に1μモルのNADHを生成する酵素量を1ユニットと定義した。
【0156】
グリセロールの分解における各反応(図2第1から第9反応参照)の反応条件を表2から表8に示す。
【0157】
【表2】
【0158】
【表3】
【0159】
【表4】
【0160】
【表5】
【0161】
【表6】
【0162】
【表7】
【0163】
【表8】
【0164】
上記表2から8の各反応において生成する還元型酵素NADHをHPLCで解析した結果、全ての反応でNADHの生成が確認できた。反応途中のNADHの生成量を分光光度計で解析した結果を図7から図13に示す。
【0165】
図7から図13に示す通り、グリセロールの分解反応は、二酸化炭素に分解されるまで進行し、酸化還元反応を伴う反応では、全て還元型補酵素NADHの生成が確認できた。従って、実施例1では、グリセロール系単糖類の分解において、本発明に係るポリオール分解方法を用いれば、多段階的に反応が進行し、それに伴いNADHが多段階的に生成することが分かった。
【実施例2】
【0166】
実施例2では、本発明に係るポリオール分解方法を用いてエチレングリコールを分解する場合、各反応において還元型補酵素が生成するか否かを確認した。用いた酵素を表9に示す。酸化型・還元型補酵素の定量は、実施例1と同様の方法で行った。
【0167】
【表9】
【0168】
エチレングリコールの分解における各反応(図3第1から第6反応参照)の反応条件を表10から表14に示す。
【0169】
【表10】
【0170】
【表11】
【0171】
【表12】
【0172】
【表13】
【0173】
【表14】
【0174】
上記表10から14の各反応において生成する還元型酵素NADHをHPLCで解析した結果、全ての反応でNADHの生成が確認できた。反応途中のNADHの生成量を分光光度計で解析した結果を図14から図18に示す。
【0175】
図14から図18に示す通り、エチレングリコールの分解反応は、二酸化炭素に分解されるまで進行し、酸化還元反応を伴う反応では、全て還元型補酵素NADHの生成が確認できた。従って、実施例2では、実施例1と同様に、グリセロール系単糖類の分解において、本発明に係るポリオール分解方法を用いれば、多段階的に反応が進行し、多段階的にNADHが生成することが分かった。
【実施例3】
【0176】
実施例3では、エリスリトール、キシリトール、及びソルビトールがアルデヒドデヒドロゲナーゼ又はアルデヒドレダクターゼの基質となり得るか否かを確認した。具体的には、アルコールデヒドロゲナーゼ、及びアルデヒドレダクターゼを各基質に作用させ、NADHの生成量を比較検討した。反応条件を表15に示す。
【0177】
【表15】
【0178】
結果を表16に示す。各相対値は、アルコールデヒドロゲナーゼをエチレングリコールに作用させたときのNADHの生成量を100%としたときの相対値で示した。
【0179】
【表16】
【0180】
表16に示す通り、エチレングリコール及びグリセロールは、アルコールデヒドロゲナーゼによる酸化を受けてNADHを生成した。また、グリセロール、エリスリトール、キシリトール、及びソルビトールは、アルコールデヒドロゲナーゼよりむしろアルデヒドレダクターゼによる作用を受けやすいことが分かった。
【0181】
実施例3では、下記化学式11で表されるポリオール化合物が、本発明に係るポリオール分解方法で分解できることが分かった。
【化11】
【0182】
また、グルコース、マンノース、キシロースのような糖類は、アルデヒドレダクターゼの作用により、それぞれソルビトール、マンニトール、キシリトールに変換されることが公知であるため、下記化学式9で表されるポリオール化合物も本発明に係るポリオール分解方法で分解できることが分かった。
【化9】
【0183】
実施例1から3の結果を総合すると、本発明に係るポリオール分解方法を用いれば、グリセロール系単糖類やグルコン酸系単糖類などのポリオール化合物の分解工程において、多段階的に還元型補酵素を大量に生成できることが分かった。
【実施例4】
【0184】
実施例4では、グルコースの分解反応が段階的に進むにつれて、反応電子数がどのように変化するかを調べた。具体的には、図19に示すプロト電池を作成し、基質をグルコースとした場合の分解時間毎の電流の変化、及び反応電子数を求めた。電池中の溶液の組成を表17に示す。なお、測定溶液および希釈溶液は、0.1Mリン酸ナトリウム水溶液(pH7、IS(イオン強度)=0.3)を用いた。
【0185】
【表17】
【0186】
(1)第1反応〜第2反応
グルコースを分解する場合の第1反応(図1参照)のみ進行させる場合と、第1反応から第2反応(図1参照)まで進行させる場合の反応電子数を比較した。
【0187】
電流値の測定結果を図20に示す。また、図20の測定結果より反応電子数を計算し、その結果を表18に示す。この結果から、Gn5DHを追加した系において、追加していない系と比較して、理想的に電気容量がほぼ2倍となることが分かる。
【0188】
【表18】
【0189】
(2)第1反応〜第3反応
グルコースを分解する場合の第1反応〜第2反応(図1参照)まで進行させる場合と、第1反応から第3反応まで進行させる場合の反応電子数を比較した。
【0190】
(1)と同様に、電流値を測定し、図20と同様の方法で反応電子数を計算した。結果を表19に示す。
【0191】
【表19】
【0192】
(3)第1反応〜第5反応
グルコースを分解する場合の第1反応〜第3反応(図1参照)まで進行させる場合と、第1反応から第5反応まで進行させる場合の反応電子数を比較した。
【0193】
(1)、(2)と同様に、電流値を測定し、図20と同様の方法で反応電子数を計算した。結果を表20に示す。
【0194】
【表20】
【0195】
以上の結果より、グルコースの分解反応が段階的に進むにつれて、実際の反応電子数が増加することが確認できた。即ち、ポリオールの分解反応が進行すればするほど、反応電子数も増加することが確認できた。従って、実施例4の結果により、ポリオールの分解反応が第6反応以降も進行すればするほど、反応電子数も増加することが示唆された。
【実施例5】
【0196】
実施例5では、グルコースを分解する場合の第1反応(図1参照)のみ進行させる場合と、第1反応から第2反応(図1参照)まで進行させる場合の実際の電流値を比較した。
【0197】
本実施例における電極上の反応の概略を図21に示す。グルコース分解反応により生成したNADHを脱水素酵素であるジアフォラーゼ(DI)が酸化し、電子メディエーターであるACNQの酸化体に電子を受け渡して還元体にする。そして、ACNQの還元体が電極へ電子を受け渡し、酸化体へと戻る。この時ジアフォラーゼ(DI)に酸化されたNADHは、NAD+へ戻り、グルコースの分解反応で再利用される。
【0198】
測定条件を表21に、電池中の溶液の組成を表22に示す。グルコース分解反応によるNADHの生成速度が律速段階になるように組成を調整した。
【0199】
【表21】
【0200】
【表22】
【0201】
測定結果を図22に示す。図22に示す通り、グルコースの分解において第1反応(図1参照)のみ進行させる場合に比べ、第1反応から第2反応(図1参照)まで進行させる場合は、実際の定常電流値が約2倍になることが確認できた。このことから、Gn5DHを追加した系において、追加していない系と比較して、理想的に、NADHの分解速度が約2倍となっていることが分かる。即ち、ポリオールの分解反応が進行するほど、実際の電流値も増加することが確認できた。従って、実施例5の結果により、ポリオールの分解反応が第3反応以降も進行すればするほど、実際の電流値も増加することが示唆された。
【実施例6】
【0202】
実施例6では、GDH及びGn5DHを多孔質カーボン電極に固定化した状態で、実施例5と同様に、グルコースを分解する場合の第1反応(図1参照)のみ進行させる場合と、第1反応から第2反応(図1参照)まで進行させる場合の実際の電流値を比較した。
【0203】
実施例6で使用したこの酵素/補酵素/電子メディエーター固定化電極1〜3は次のようにして作製した。
まず、以下のようにして各種の溶液(1)〜(5)を調製した。溶液調製用の緩衝溶液としては、0.1Mリン酸二水素ナトリウム(NaH2PO4)緩衝溶液(pH7、IS(イオン強度)=0.3)を用いた。
【0204】
(1)GDH/DI酵素緩衝溶液
ジアフォラーゼ(DI(E.C.1.6.99)、天野エンザイム株式会社製)を10〜100mg秤量し、上記の緩衝溶液0.2mLに溶解させた(溶液(1)’)。酵素を溶解させる緩衝溶液は直前まで8℃以下に冷蔵されていたものが好ましく、酵素緩衝溶液もできるだけ8℃以下で冷蔵保存しておくことが好ましい。GDH(NAD依存型(E.C.1.1.1.47)、 天野エンザイム製)を5〜30mg秤量し、上記の緩衝溶液0.3mLに溶解させた。この溶液に溶液(1)’を20μL加え、よく混合してGDH/DI酵素緩衝溶液(1)とした。
【0205】
(2)NADH緩衝溶液
NADH(シグマアルドリッチ製、N−8129)を50〜100mg秤量し、緩衝溶液0.1mLに溶解させ、NADH緩衝溶液(2)とした。
【0206】
(3)ANQアセトン溶液
2−アミノ−1,4−ナフトキノン(ANQ)(合成品)を50〜100mg秤量し、アセトン溶液1mLに溶解させ、ANQアセトン溶液(3)とした。
【0207】
(4)PLL水溶液
ポリ−L−リシン臭化水素酸塩(PLL)(Wako製、164−16961)を適量秤量し、2wt%となるようにイオン交換水に溶解させ、PLL水溶液(4)とした。
【0208】
(5)PAAcNa水溶液
ポリアクリル酸ナトリウム(PAAcNa)(アルドリッチ製、041−00595)を適量秤量し、0.022wt%となるようにイオン交換水に溶解させ、PAAcNa水溶液(5)とした。
【0209】
上記のようにして作製した溶液(1)〜(3)を下記の表23で示す量ずつ採取して混合した。この混合液を、マイクロシリンジを用いて、電極材としてカーボンフェルト電極(東レ製、商品名トレカマット、1.0×1.0cm2、厚さ2mm)、上に塗布した後、適宜乾燥を行い、酵素/補酵素/電子メディエーター塗布電極を作製した。
【0210】
【表23】
【0211】
<電極1>
上記の酵素/補酵素/電子メディエーター塗布電極上にPLL水溶液(4)およびPAAcNa水溶液(5)を下記の表24で示す量塗布した後、適宜乾燥を行い、酵素/補酵素/電子メディエーター固定化電極1を作製した。
【0212】
【表24】
【0213】
<電極2、電極3>
上記の酵素/補酵素/電子メディエーター塗布電極上にGnL緩衝溶液(1U/μL)、Gn5DH緩衝溶液(1.2U/μL)を下記の表25に示すように適宜塗布乾燥を行った。その後PLL水溶液(4)およびPAAcNa水溶液(5)を上記の表24で示す量塗布した後、適宜乾燥を行い、酵素/補酵素/電子メディエーター固定化電極2、電極3を作製した。
【0214】
【表25】
【0215】
測定結果を図23及び図24に示す。図23及び図24に示す通り、グルコースの分解において第1反応(図1参照)のみ進行させる場合(電極1)に比べ、第1反応から第2反応(図1参照)まで進行させる場合(電極3)は、実際の定常電流値が理想値に近い約1.8倍になることが確認できた。即ち、酵素を多孔質カーボン電極に固定化した場合であっても、ポリオールの分解反応が進行するほど、実際の電流値も増加することが確認できた。従って、実施例6の結果により、酵素を電極に固定化した場合にも、ポリオールの分解反応が第3反応以降も進行すればするほど、実際の電流値も増加することが示唆された。なお、電極2では、電流値の増加は観測されなかった。この多孔質カーボン電極においては、加水分解酵素であるGnL(グルコノラクトナーゼ)が必要であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0216】
本発明に係る電極を用いれば、任意の基質に対し、酸化反応と脱炭酸反応を繰り返し進行させることができるため、それに伴い、還元型補酵素を大量に生成することができる。従って、酵素センサーや燃料電池に用いた場合、従来のものに比べ、大きな電流値及び電気容量を得ることが可能である。
【0217】
前記酵素センサーや燃料電池は、大きな電流値及び電気容量が得られるため、従来、適用が難しいと考えられていたあらゆる電子機器に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0218】
【図1】本発明に係るポリオール分解方法を用いたグルコースの分解工程を示す図である。
【図2】本発明に係るポリオール分解方法を用いたグリセロールの分解工程を示す図である。
【図3】本発明に係るポリオール分解方法を用いたエチレングリコールの分解工程を示す図である。
【図4】本発明に係るポリオール分解方法を用いたエチレングリコール、グリセロール、エリスリトール、キシリトール、及びソルビトールの分解工程を示す図である。
【図5】本発明に係るポリオール分解方法を用いたグリセロール系単糖類の分解工程を示す図である。
【図6】本発明に係るポリオール分解方法用いたポリオール化合物の分解工程を示す図である。
【図7】実施例1において、グリセロール分解の第1反応時のNADHの生成量を示す図面代用グラフである。
【図8】実施例1において、グリセロール分解の第2反応時のNADHの生成量を示す図面代用グラフである。
【図9】実施例1において、グリセロール分解の第3反応時のNADHの生成量を示す図面代用グラフである。
【図10】実施例1において、グリセロール分解の第4〜5反応時のNADHの生成量を示す図面代用グラフである。
【図11】実施例1において、グリセロール分解の第6反応時のNADHの生成量を示す図面代用グラフである。
【図12】実施例1において、グリセロール分解の第7反応時のNADHの生成量を示す図面代用グラフである。
【図13】実施例1において、グリセロール分解の第8〜9反応時のNADHの生成量を示す図面代用グラフである。
【図14】実施例2において、エチレングリコール分解の第1反応時のNADHの生成量を示す図面代用グラフである。
【図15】実施例2において、エチレングリコール分解の第2反応時のNADHの生成量を示す図面代用グラフである。
【図16】実施例2において、エチレングリコール分解の第3反応時のNADHの生成量を示す図面代用グラフである。
【図17】実施例2において、エチレングリコール分解の第4反応時のNADHの生成量を示す図面代用グラフである。
【図18】実施例2において、エチレングリコール分解の第5〜6反応時のNADHの生成量を示す図面代用グラフである。
【図19】実施例4で用いたプロト電池の摸式図である。
【図20】実施例4(1)において、グルコース分解工程の第1反応から第2反応の電流値を示す図面代用グラフである。
【図21】実施例5における電極上の反応の概略を摸式的に示す図である。
【図22】実施例5において、グルコース分解工程の第1反応から第2反応の電流値を示す図面代用グラフである。
【図23】実施例6において、グルコース分解工程の第1反応から第2反応の時間に対する電流値を示す図面代用グラフである。
【図24】実施例6において、グルコース分解工程の第1反応から第2反応の電位に対する電流値を示す図面代用グラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素と、
2-オキソ酸生成酵素と、
2-オキソ酸カルボキシリアーゼと、
を少なくとも含有する電極。
【請求項2】
ジヒドロキシエチル基酸化酵素をさらに含有する請求項1記載の電極。
【請求項3】
フォルメートデヒドロゲナーゼをさらに含有する請求項1又は2記載の電極。
【請求項4】
上記2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素が、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.3、E.C.1.2.1.5)、グリコアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.21)、又はラクトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.22)から選ばれ、
上記2-オキソ酸生成酵素が、ラクテートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.27、E.C.1.1.1.28)、マレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.37)、グルコネート2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.215)、2-ヒドロキシ脂肪酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.98、E.C.1.1.1.99)、グリセレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.29)、グリオキシレートレダクターゼ(E.C.1.1.1.26)、ヒドロキシパイルベートレダクターゼ(E.C.1.1.1.81)、イソサイトレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.41)、アミノ酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.5)、アラニンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.1)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.2、E.C.1.4.1.3)、セリン2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.7)、バリンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.8)、ロイシンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.9)、グリシンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.10)、グルタミン酸シンターゼ(E.C.1.4.1.14)、トリプトファンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.19)、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.20)、アスパラギン酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.21)、2-オキソアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.23)、マレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.83)、又はタータレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.93)から選ばれ、
前記2-オキソ酸カルボキシリアーゼが、パイルベートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.1)、ヒドロキシパイルベートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.40)、2-オキソグルタレートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.71)、又は分岐鎖2-オキソ酸デカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.72)、から選ばれることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電極。
【請求項5】
前記ジヒドロキシエチル基酸化酵素が、アルコールデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.1、E.C.1.1.1.71)、マニトール2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.67)、グリセロールデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.6)、アルデヒドレダクターゼ(E.C.1.1.1.21)、グルコネート5-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.69)、又はグリコールデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.185)、から選ばれることを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載の電極。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の電極を少なくとも有する酵素センサー又は燃料電池。
【請求項7】
請求項6記載の酵素センサー又は燃料電池を少なくとも有する電子機器。
【請求項8】
2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素が触媒として機能する分解工程Iと、
2-オキソ酸生成酵素が触媒として機能する分解工程IIと、
2-オキソ酸カルボキシリアーゼが触媒として機能する分解工程IIIと、
を少なくとも含むポリオール分解方法。
【請求項9】
ジヒドロキシエチル基酸化酵素が触媒として機能する分解工程IVをさらに含む請求項8記載のポリオール分解方法。
【請求項10】
フォルメートデヒドロゲナーゼが触媒として機能する分解工程Vをさらに含む請求項8又は9記載のポリオール分解方法。
【請求項11】
前記分解工程Iでは下記反応式(1)によるポリオールの分解が進行することを特徴とする請求項8から10のいずれか一項に記載のポリオール分解方法。
【化1】
(Rは鎖状又は環状化合物。以下同じ。)
【請求項12】
前記分解工程IIでは下記反応式(2)及び/又は(3)によるポリオールの分解が進行することを特徴とする請求項8から11のいずれか一項に記載のポリオール分解方法。
【化2】
【化3】
【請求項13】
前記分解工程IIIでは下記反応式(4)によるポリオールの分解が進行することを特徴とする請求項8から12のいずれか一項に記載のポリオール分解方法。
【化4】
【請求項14】
前記分解工程IVでは下記反応式(5)から(7)の少なくとも1の反応によるポリオールの分解が進行することを特徴とする請求項9から13のいずれか一項に記載のポリオール分解方法。
【化5】
【化6】
【化7】
【請求項15】
前記分解工程Vでは下記反応式(8)によるポリオールの分解が進行することを特徴とする請求項10から14のいずれか一項に記載のポリオール分解方法。
【化8】
【請求項16】
前記分解工程IからVの少なくとも1の工程において生じた電子が、任意の酸化型補酵素Aを還元して還元型補酵素Bを生じることを特徴とする請求項8から請求項15のいずれか一項に記載のポリオール分解方法。
【請求項17】
前記酸化型補酵素AがNAD+であり、前記還元型補酵素BがNADHであることを特徴とする請求項16記載のポリオール分解方法。
【請求項18】
電子メディエーターを酸化及び/又は還元する工程を含むことを特徴とする請求項8から請求項17のいずれか一項に記載のポリオール分解方法。
【請求項1】
2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素と、
2-オキソ酸生成酵素と、
2-オキソ酸カルボキシリアーゼと、
を少なくとも含有する電極。
【請求項2】
ジヒドロキシエチル基酸化酵素をさらに含有する請求項1記載の電極。
【請求項3】
フォルメートデヒドロゲナーゼをさらに含有する請求項1又は2記載の電極。
【請求項4】
上記2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素が、アルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.3、E.C.1.2.1.5)、グリコアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.21)、又はラクトアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.22)から選ばれ、
上記2-オキソ酸生成酵素が、ラクテートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.27、E.C.1.1.1.28)、マレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.37)、グルコネート2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.215)、2-ヒドロキシ脂肪酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.98、E.C.1.1.1.99)、グリセレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.29)、グリオキシレートレダクターゼ(E.C.1.1.1.26)、ヒドロキシパイルベートレダクターゼ(E.C.1.1.1.81)、イソサイトレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.41)、アミノ酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.5)、アラニンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.1)、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.2、E.C.1.4.1.3)、セリン2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.7)、バリンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.8)、ロイシンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.9)、グリシンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.10)、グルタミン酸シンターゼ(E.C.1.4.1.14)、トリプトファンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.19)、フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.20)、アスパラギン酸デヒドロゲナーゼ(E.C.1.4.1.21)、2-オキソアルデヒドデヒドロゲナーゼ(E.C.1.2.1.23)、マレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.83)、又はタータレートデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.93)から選ばれ、
前記2-オキソ酸カルボキシリアーゼが、パイルベートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.1)、ヒドロキシパイルベートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.40)、2-オキソグルタレートデカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.71)、又は分岐鎖2-オキソ酸デカルボキシラーゼ(E.C.4.1.1.72)、から選ばれることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電極。
【請求項5】
前記ジヒドロキシエチル基酸化酵素が、アルコールデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.1、E.C.1.1.1.71)、マニトール2-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.67)、グリセロールデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.6)、アルデヒドレダクターゼ(E.C.1.1.1.21)、グルコネート5-デヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.69)、又はグリコールデヒドロゲナーゼ(E.C.1.1.1.185)、から選ばれることを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載の電極。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の電極を少なくとも有する酵素センサー又は燃料電池。
【請求項7】
請求項6記載の酵素センサー又は燃料電池を少なくとも有する電子機器。
【請求項8】
2-ヒドロキシカルボン酸生成酵素が触媒として機能する分解工程Iと、
2-オキソ酸生成酵素が触媒として機能する分解工程IIと、
2-オキソ酸カルボキシリアーゼが触媒として機能する分解工程IIIと、
を少なくとも含むポリオール分解方法。
【請求項9】
ジヒドロキシエチル基酸化酵素が触媒として機能する分解工程IVをさらに含む請求項8記載のポリオール分解方法。
【請求項10】
フォルメートデヒドロゲナーゼが触媒として機能する分解工程Vをさらに含む請求項8又は9記載のポリオール分解方法。
【請求項11】
前記分解工程Iでは下記反応式(1)によるポリオールの分解が進行することを特徴とする請求項8から10のいずれか一項に記載のポリオール分解方法。
【化1】
(Rは鎖状又は環状化合物。以下同じ。)
【請求項12】
前記分解工程IIでは下記反応式(2)及び/又は(3)によるポリオールの分解が進行することを特徴とする請求項8から11のいずれか一項に記載のポリオール分解方法。
【化2】
【化3】
【請求項13】
前記分解工程IIIでは下記反応式(4)によるポリオールの分解が進行することを特徴とする請求項8から12のいずれか一項に記載のポリオール分解方法。
【化4】
【請求項14】
前記分解工程IVでは下記反応式(5)から(7)の少なくとも1の反応によるポリオールの分解が進行することを特徴とする請求項9から13のいずれか一項に記載のポリオール分解方法。
【化5】
【化6】
【化7】
【請求項15】
前記分解工程Vでは下記反応式(8)によるポリオールの分解が進行することを特徴とする請求項10から14のいずれか一項に記載のポリオール分解方法。
【化8】
【請求項16】
前記分解工程IからVの少なくとも1の工程において生じた電子が、任意の酸化型補酵素Aを還元して還元型補酵素Bを生じることを特徴とする請求項8から請求項15のいずれか一項に記載のポリオール分解方法。
【請求項17】
前記酸化型補酵素AがNAD+であり、前記還元型補酵素BがNADHであることを特徴とする請求項16記載のポリオール分解方法。
【請求項18】
電子メディエーターを酸化及び/又は還元する工程を含むことを特徴とする請求項8から請求項17のいずれか一項に記載のポリオール分解方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2009−139257(P2009−139257A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−316759(P2007−316759)
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【出願人】(000216162)天野エンザイム株式会社 (26)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【出願人】(000216162)天野エンザイム株式会社 (26)
【Fターム(参考)】
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