説明

新規な4,4’−ジヒドロキシフェニル−ビシクロヘキセン類

4,4,4’、4’−テトラヒドロキシフェニル−ビシクロヘキサン類を、好ましくはアルカリ触媒の存在下に熱分解することにより、液晶ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン等の合成樹脂原料、表示素子、半導体等のフォトレジスト等の原料として有用な新規4,4’−ジヒドロキシフェニル−ビシクロヘキセン類を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、いずれのヒドロキシフェニル基にも、置換基がないか、又は両方のヒドロキシルフェニル基に共に低級アルキル基を有する新規な4,4’−ジヒドロキシフェニル−ビシクロヘキセン類に関する。
【背景技術】
従来、1,4−ヒドロキシフェニル置換シクロヘキセン類に関しては、例えば、ケミカルアブストラクトにカルボキシメチル基とナフチル基が置換されたもの(CAS登録番号101789−46−2)、フェニル基が置換されたもの(CAS登録番号202266−25−9)等が開示されている。
しかしながら、ビシクロヘキセン骨格を持つ、4,4’−ヒドロキシフェニル置換ビシクロヘキセン類は知られていない。
これらの4,4’−ヒドロキシフェニル置換ビシクロヘキセン類は、上述のシクロヘキセン骨格を持つ化合物よりも、融点の向上、耐熱性、耐候性等の性能の向上が期待され、それ自体、液晶ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、等の合成樹脂原料、表示素子、半導体等のフォトレジスト等の原料として有用である。
さらに、4,4’−ヒドロキシフェニル置換ビシクロヘキセン類は、種々の有用な化合物の中間体としても有用である。例えば、4,4’−ヒドロキシフェニル置換ビシクロヘキセン類のシクロヘキセン部分を脱水素することにより、4,4’−ヒドロキシフェニル置換ビフェニルとすることができ、あるいは4,4’−ヒドロキシフェニル置換ビシクロヘキセン類のシクロヘキセン部分を水素添加することにより、4,4’−ヒドロキシフェニル置換ビシクロヘキサンとすることができ、これらもまた、液晶ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、等の合成樹脂原料、表示素子、半導体等のフォトレジスト等の原料として有用性が期待できる。
【特許文献】 特開2000−34248号公報
【非特許文献】 CAS登録番号101789−46−2
CAS登録番号202266−25−9
【発明の開示】
本発明は、いずれのヒドロキシフェニル基にも置換基がないか、又は両方のヒドロキシルフェニル基に共に低級アルキル基を有する新規な4,4’−ジヒドロキシフェニル−ビシクロヘキセン類を提供することにある。
本発明による新規な4,4’−ジヒドロキシフェニル−ビシクロヘキセン類は下記一般式1で表される。

(式中、Rは炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、nは0又は1〜3の整数を示す。)
上記一般式1において、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示し、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基であり、プロピル基又はブチル基は、直鎖状でも分岐状でもよい。またnは0又は1〜3の整数を示す。
本発明による4,4’−ジヒドロキシフェニル−ビシクロヘキセン類すなわち、4,4’−ジヒドロキシフェニル−ビシクロヘキセン−3類の具体例としては、例えば、4,4’−ジ(4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキセン−3、4、4’−ジ(2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキセン−3、4、4’−ジ(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキセン−3、4、4’−ジ(3、5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキセン−3、4、4’−ジ(3、6−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキセン−3、4、4’−ジ(2、3、5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキセン−3、4、4’−ジ(2、3、6−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキセン−3、4、4’−ジ(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキセン−3、4、4’−ジ(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキセン−3、4、4’−ジ(3−nプロピル−4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキセン−3、4、4’−ジ(3−nブチル−4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキセン−3、4、4’−ジ(3−イソブチル−4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキセン−3又は4、4’−ジ(3−tブチル−4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキセン−3等を挙げることができる。
このような、本発明における一般式1で表される4,4’−ジヒドロキシフェニル−ビシクロヘキセン類は、例えば下記一般式2で表される4,4,4’、4’−テトラヒドロキシフェニル−ビシクロヘキサン類を、好ましくはアルカリ触媒の存在下に熱分解することにより得ることができる。

本発明による4,4’−ジヒドロキシフェニル−ビシクロヘキセン類の製造のための出発原料である上記一般式2で表される4,4,4’、4’−テトラヒドロキシフェニル−ビシクロヘキサン類としては、具体的には、例えば4,4,4’、4’−テトラ(4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキサン、4,4,4’、4’−テトラ(2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキサン、4,4,4’、4’−テトラ(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキサン、4,4,4’、4’−テトラ(3、5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキサン、4,4,4’、4’−テトラ(3、6−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキサン、4,4,4’、4’−テトラ(2、3、5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキサン、4,4,4’、4’−テトラ(2、3、6−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキサン、4,4,4’、4’−テトラ(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキサン、4,4,4’、4’−テトラ(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキサン4,4,4’、4’−テトラ(3−nプロピル−4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキサン、4,4,4’、4’−テトラ(3−イソブチル−4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキサン、4,4,4’、4’−テトラ(3−tブチル−4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキサン等を挙げることができる。
上記一般式2で表される4,4,4’、4’−テトラヒドロキシフェニル−ビシクロヘキサン類は、例えば、特開2000−34248号公報に記載されているように、酸触媒の存在下に、4,4’−ビシクロヘキサノンと置換フェノール類を反応させることにより容易に得ることができる。
上記一般式2で表される4,4,4’、4’−テトラヒドロキシフェニル−ビシクロヘキサン類の熱分解は、触媒の不存在下に行ってもよいが、好ましくは、アルカリ触媒の存在下に行われる。このアルカリ触媒としては、特に、限定されるものではないが、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩、ナトリウムフェノキシド、カリウムフェノキシド等のアルカリ金属フェノキシド、水酸化マグネシウム又は水酸化バリウム等のアルカリ土類金属水酸化物等を挙げることができる。これらの中では、特に、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムが好ましく用いられる。
このように、アルカリ触媒を用いる場合は、アルカリ触媒は、4,4,4’、4’−テトラヒドロキシフェニル−ビシクロヘキサン類100重量部に対して、通常、0.01〜30重量部、好ましくは0.1〜15重量部の範囲で用いられる。触媒の使用形態は、特に制限はないが、仕込み操作が容易である点から、好ましくは、10〜50重量%の水溶液として用いられる。
上記4,4,4’、4’−テトラヒドロキシフェニル−ビシクロヘキサン類の熱分解は、出発原料である4,4,4’、4’−テトラヒドロキシフェニル−ビシクロヘキサン類及び/又は目的物である4,4’−ジヒドロキシフェニル−ビシクロヘキセン類の融点が高いので、熱分解温度において、その液状性の改善を図るため、さらには、生成した目的物の熱重合を防止するために、好ましくは、反応溶媒の存在下に行われる。
上記溶媒としては、熱分解温度において不活性であり、しかも、反応混合物から溜出しない溶媒であれば、特に限定されるものではないが、例えば、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール等のポリエチレングリコール類、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール類、グリセリン等の多価アルコール類が用いられる。
また、市販の有機熱媒体である「サームエス」(新日鉄化学株式会社製)又は「SK−OIL」(綜研化学株式会社製)等も用いられる。
このような溶媒は、用いるヒドロキシフェニル置換シクロヘキシリデンビスフェノール類100重量部に対して、通常、20〜2000重量部、好ましくは、100〜800重量部の範囲で用いられる。
4,4,4’、4’−テトラヒドロキシフェニル−ビシクロヘキサン類の熱分解は、通常、150〜300℃の範囲、好ましくは、180〜250℃の範囲の温度で行われる。
熱分解温度が低すぎるときは、反応温度が遅すぎ、他方、熱分解温度が高すぎるときは、望ましくない副反応が多くなるからである。また、熱分解の反応圧力は、特に限定されるものではないが、通常、常圧乃至減圧下の範囲であり、例えば、1〜760mmHgゲージの範囲、好ましくは、10〜50mmHgゲージの範囲である。
このような反応条件において、4,4,4’、4’−テトラヒドロキシフェニル−ビシクロヘキサン類の熱分解は、通常、1〜6時間程度で終了する。熱分解反応は、例えば、分解反応によって生成するアルキルフェノール類の溜出がなくなった時点をその終点とすることができる。
好ましい態様によれば、例えば、反応容器にヒドロキシフェニル置換シクロヘキシリデンビスフェノール類トテトラエチレングリコール等の溶媒を仕込み、温度190〜220℃、圧力10〜50mmHgゲージで3〜6時間程度、分解反応によって生成したアルキルフェノール類を溜去しながら、撹拌することによって行われる。このようにして、4,4,4’、4’−テトラヒドロキシフェニル−ビシクロヘキサン類を熱分解することによって本発明による4,4’−ヒドロキシフェニル置換ビシクロヘキセン類を、通常、90%程度の反応収率にて得ることができる。本発明の目的生成物の4,4’−ヒドロキシフェニル置換ビシクロヘキセン類は、それ自体、液晶ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン等の合成樹脂の原料又は表示素子、半導体等のフォトレジスト等の原料として有用性が期待される。さらに、本発明による4,4’−ヒドロキシフェニル置換ビシクロヘキセン類は、種々の有用な化合物の中間体としても有用である。例えば、4,4’−ヒドロキシフェニル置換ビシクロヘキセン類のシクロヘキセン部分を脱水素することにより、4,4”−ヒドロキシフェニル置換ビフェニルとすることができ、あるいは、4,4’−ヒドロキシフェニル置換ビシクロヘキセン類のシクロヘキセン部分を水素添加することにより、4,4”−ヒドロキシフェニル置換ビシクロヘキサンとすることができ、これらも、また、液晶ポリエステル、ポリカーボネート又はポリウレタン等の合成樹脂原料、表示素子又は半導体等のフォトレジスト等の原料として有用性が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明を実施例により、さらに詳しく説明する。
参考例1
4,4,4’、4’−テトラ(4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキサン(式3の化合物)の合成;
フェノール209.4g、ドデシルメルカプタン2.4g及びメタノール18.9gを反応容器(1L容量の4つ口フラスコ)に仕込み、反応容器内を窒素置換した。次いで、撹拌下に、塩化水素ガスを吹き込みながら、温度40℃において、4,4’−ビシクロヘキサノン24.2gとフェノール24.2gをメタノール24.2gに溶解した溶液を、3時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに、同温度で、撹拌下に、17時間反応を行った。
反応終了後、反応終了混合液に、75%リン酸水溶液2.5g、次いで16%水酸化ナトリウム水溶液111.8gを加えてPH6に中和した。中和後の溶液に、加温下にメチルイソブチルケトン92.7gと水75.1gの混合溶液を加え、冷却して晶析、次いで濾過、乾燥を行い、純度91.3%(高速液体クロマトグラフィー分析による)の4,4,4’、4’−テトラ(4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキサン63.3gを淡赤白色固体として得た。
原料4,4’−ビシクロヘキサノンに対する収率は89.6モル%であった.

【実施例1】
4,4’−ジ(4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキセン−3(式4の化合物)の合成;
上記参考例1で得られた4,4,4’、4’−テトラ(4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキサン(純度91.3%)63.3g(0.112モル)、テトラエチレングリコール212gとを反応容器(1L容量の4つ口フラスコ)に仕込み、反応容器内を窒素置換した後、これに48%水酸化ナトリウム水溶液3.9g(0.0468モル)を添加し、反応容器内圧を約3.0Kpaの減圧とし、温度203℃において、3時間、熱分解反応を行った。
溜出物が溜出しなくなった時点を熱分解反応の終点とした。反応終了後、得られた反応混合物に純水41.8gと50%酢酸水溶液を加えて、PH6程度に中和して、スラリー液を得た。
このようにして得られた上記スラリー液にメタノール83gを加え、晶析し、次いで濾過を行って、淡黄色固体37.3gを得た。次いで、300mlの4つ口フラスコに、得られた淡黄色固体37.3gと水149.4gを仕込み、窒素置換した後、温度82℃において、2時間撹拌した後、スラリー液を冷却、濾過、次いで乾燥を行い、純度97.4%(高速液体クロマトグラフィー分析による)の4,4‘−ジ(4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキセン−3、29.9gを淡黄色粉体として得た。
原料4,4,4’、4’−テトラ(4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキサンに対する収率は73.4モル%であった。
融点:318℃(示差熱分析法)
分子量:347(M+H)(質量分析法)
プロトンNMR(400MHz、溶媒 DMSO−d)

参考例2
4、4、4’、4’−テトラ(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキサンの合成(式5の化合物);
参考例1において、フェノール209.4g、メタノール18.9gに替えてO−クレゾール177.6g、メタノール23.5gを、4,4’−ビシクロヘキサノン24.2gとフェノール24.2gをメタノール24.2gに溶解した溶液に替えて4,4’−ビシクロヘキサノン38.9gとO−クレゾール38.9gをメタノール15.7gに溶解した溶液を使用した以外は、参考例1と同様にして反応,中和、晶析、ついで濾過を行い、4、4、4’、4’−テトラ(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキサン235.5gを白色固体(溶媒で湿潤した未乾燥品)として得た。
原料4、4’−ビシクロヘキサノンに対する収率は86.5モル%であった。

【実施例2】
4,4’−ジ(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキセン−3の合成(式6の化合物);
上記参考例2で得られた4、4、4’、4’−テトラ(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキサン235.5g、テトラエチレングリコール256.9g及び48%水酸化ナトリウム水溶液2.7gを反応容器(1L容量4ツ口フラスコ)に仕込み、反応容器内を窒素置換した後、反応容器内圧を約3Kpaの減圧とし、温度198℃で2時間30分熱分解反応を行った。
反応終了後、得られた反応混合物に純水128gと50%酢酸水溶液を加えて、PH6程度に中和して、スラリーを得た。
このようにして得られた上記スラリー液にメタノール202gを加え、晶析し、次いで濾過を行って、淡赤黄色固体を69.4gを得た。
次いで、500mlの四つ口フラスコに、得られた淡赤黄色固体69.4gと水277gを仕込み、実施例1と同様にして、純度98.0%(高速液体クロマトグラフィー分析による)の4,4’−ジ(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキセン−3、51.5gを淡黄灰白色固体として得た。原料の4、4、4’、4’−テトラ(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキサンに対する収率は77.2モル%であった(原料の4、4’−ビシクロヘキサノンに対する収率は66.8モル%)。
融点:227℃(示差熱分析法)
分子量:375(M+H)(質量分析法)
プロトンNMR分析(400MHz、溶媒 DMSO−d)

参考例3
4、4、4’、4’−テトラ(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキサンの合成(式7の化合物);
参考例1において、フェノール209.4g、メタノール18.9に替えてO−イソプロピルフェノール236.8g、メタノール23.7gを、4,4’−ビシクロヘキサノン24.2gとフェノール24.2gをメタノール24.2gに溶解した溶液に替えて4,4’−ビシクロヘキサノン39.0gとO−イソプロピルフェノール39.0gをメタノール15.8gに溶解した溶液を使用した以外は、参考例1と同様にして反応,中和、晶析、ついで濾過を行い、4、4、4’、4’−テトラ(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキサン175.9gを白色固体(溶媒で湿潤した未乾燥品)として得た。
原料4、4’−ビシクロヘキサノンに対する収率は78.7モル%であった。

【実施例3】
4,4’−ジ(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキセン−3の合成(式8の化合物);
上記参考例3で得られた4、4、4’、4’−テトラ(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキサン175.9g、テトラエチレングリコール175.9g及び48%水酸化ナトリウム水溶液2.9gを反応容器(1L容量4ツ口フラスコ)に仕込み、反応容器内を窒素置換した後、反応容器内圧を約3Kpaの減圧とし、温度198℃で3時間40分熱分解反応を行った。反応終了後、得られた反応混合物に純水140gと50%酢酸水溶液を加えて、PH6程度に中和して、スラリー液を得た。
このようにして得られた上記スラリー液にトルエン141gを加え、60℃に昇温して結晶を溶解し、次いでこれを水洗した後、水層を分離して、目的物を含む油層を得た。得られた油層にメチルイソブチルケトンと水を加えて、洗浄し、その後、水層を分液して、再度油層を得た。得られた油層を冷却し、析出した結晶を濾過、乾燥して、純度98.3%(高速液体クロマトグラフィー分析による)の淡黄色固体39.2gを得た。
原料の4、4、4’、4’−テトラ(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキサンに対する収率は56.7モル%であった(原料4、4’−ビシクロヘキサノンに対する収率は44.6モル%)。
融点:165℃(示差熱分析法)
分子量:431(M+H)(質量分析法)
プロトンNMR分析(400MHz、溶媒 DMSO−d)

参考例4
4、4、4’、4’−テトラ(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキサンの合成(式9の化合物);
参考例1において、フェノール209.4g、メタノール18.9に替えて2,6−キシレノール352.6g、メタノール35.3gを、4,4’−ビシクロヘキサノン24.2gとフェノール24.2gをメタノール24.2gに溶解した溶液に替えて4,4’−ビシクロヘキサノン66.7gと2.6−キシレノール66.7gをメタノール31.4gに溶解した溶液を使用した以外は、参考例1と同様にして反応,中和、晶析、ついで濾過を行い、4、4、4’、4’−テトラ(3、5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキサン295.1gを白色固体(溶媒で湿潤した未乾燥品)として得た。原料4、4’−ビシクロヘキサノンに対する収率は95.1モル%であった。

【実施例4】
4,4’−ジ(3、5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキセン−3の合成(式10の化合物);
上記参考例4で得られた4、4、4’、4’−テトラ(3、5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキサン295.1g、テトラエチレングリコール401.5g及び48%水酸化ナトリウム水溶液5.0gを反応容器(2L容量4ツ口フラスコ)に仕込み、反応容器内を窒素置換した後、反応容器内圧を約3Kpaの減圧とし、温度199℃で2時間30分熱分解反応を行った。反応終了後、得られた反応混合物に純水200gと50%酢酸水溶液を加えて、PH6程度に中和して、スラリーを得た。
このようにして得られた上記スラリー液にメタノール332gを加え、晶析し、次いで濾過を行って、黄色固体を131.2gを得た。
次いで、1000mlの四つ口フラスコに、得られた黄色固体131.2gと水524gを仕込み、実施例1と同様にして、純度98.9%(高速液体クロマトグラフィー分析による)の4,4’−ジ(3、5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキセン−3、112.3gを黄色固体として得た。原料の4、4、4’、4’−テトラ(3、5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ビシクロヘキサンに対する収率は84.5モル%であった(原料4、4’−ビシクロヘキサノンに対する収率は80.4モル%)。
融点:233℃(示差熱分析法)
分子量:403(M+H)(質量分析法)
プロトンNMR分析(400MHz、溶媒 DMSO−d)

【産業上の利用可能性】
本発明の新規4,4’−ヒドロキシフェニル置換ビシクロヘキセン類は、いずれのヒドロキシフェニル基にも置換基がないか、又は両方のヒドロキシルフェニル基に共に低級アルキル基を有し、且つシクロヘキセン骨格を持つ1,4−ヒドロキシフェニル置換シクロヘキセン類化合物よりも、融点の向上、耐熱性、耐候性等の性能の向上が期待される。また、それ自体、液晶ポリエステル、ポリカーボネート又はポリウレタン等の合成樹脂原料、表示素子、半導体等のフォトレジスト等の原料又は種々の有用な化合物の中間体としても有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式1で表される4,4’−ジヒドロキシフェニル−ビシクロヘキセン類。
(式中、Rは炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、nは0又は1〜3の整数を示す。)


【国際公開番号】WO2004/035513
【国際公開日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【発行日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−544963(P2004−544963)
【国際出願番号】PCT/JP2003/013222
【国際出願日】平成15年10月16日(2003.10.16)
【出願人】(000243272)本州化学工業株式会社 (44)
【Fターム(参考)】