説明

新規の自己ドープされた水溶性ポリアニリングラフト共重合体

【課題】
本発明はポルリスチレンスルホン酸主鎖にアニリン単量体グラフト化反応させてグラフト共重合されたポリアニリン重合体を含む下記構造式として表示される新規の自己ドープされた水溶性ポリアニリングラフト共重合体およびその製造方法に関する。
本発明のポリアニリングラフト共重合体は、主鎖自体がドーパントの役割と水に溶解する役割を同時に実行するという利点がある。また、主鎖がポリアニリンを枝として付けているため、ポリアニリン同士のマクロ相分離を防止でき、ドーピング・脱ドーピングがpHにより可逆的に生じるという利点を有する。
本発明によって製造された自己ドープされた水溶性伝導性ポリアニリングラフト共重合体は、電磁波遮蔽素材、帯電防止用素材、腐食防止用素材、二次電池電極物質、電気変色素子、センサなどに有用である。
【解決手段】
[構造式]
ポリ(スチレンスルホン酸グラフトアニリン)
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自己ドープされた水溶性ポリアニリングラフト共重合体およびその製造方法に関する。より具体的には、本発明はアミノスチレン(以下、‘AMS’と略記したこともある。)とジ−tert−ブチルジカルボネート(di-tert-butyl dicarbonate)(以下、‘(BOC)2’と略記したこともある。)とを反応させてtert−ブトキシカルボニル−アミノスチレン(以下、‘BOC−AMS’と略記したこともある。)を製造した後、これをスチレンスルホン酸ナトリウム(以下、‘SSNa’と略記したこともある。)と反応させてBOC−AMSとスチレンスルホン酸ナトリウムとの共重合体(以下、‘P(SSNa−co−BOC−AMS)’と略記したこともある。)を製造した後、tert−ブトキシカルボニル(以下、‘BOC’と略記したこともある。)基を除去してスチレンスルホン酸とアミノスチレンとの共重合体(以下、‘P(SSA−co−AMS)’と略記したこともある。)を製造した。その後にアニリン(以下、‘ANI’と略記したこともある。)と反応させる、新規の自己ドープされた水溶性ポリ(スチレンスルホン酸グラフトアニリン)(poly(styrene sulfonic acid-g-aniline))(以下、‘PSSA−g−PANI’と略記したこともある。)およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアニリンは、最も集中して研究されている、本質的に伝導性を有するポリマー中の1つである。
【0003】
ポリアニリンは、プロトン化ドーピング、または、酸化ドーピングによって伝導性が付与され得る。ポリアニリンは比較的安価なモノマーから高い収率で容易に合成され、その伝導性形態に優れた化学的安全性と比較的高い電気伝導性を有する(MacDiarmid, A.G. In Conjugated polymers and Related Materials, The Interconnection of Chemical and Electronic Structure; Salaneck, W.R.; Lundstrom, I.; Ranby, B., Eds.; Oxford University Press, 1993, PP 73-98)という事実はよく知られている。
【0004】
ポリアニリンは、電気、電気化学および光学的特性に優れ、二次電池、電気発光素子、電気変色素子およびセンサなどにその応用が可能である。このような応用に用いられるポリアニリンは、フィルムやコーティングで製造されて用いられなければならないために自己ドープされた性質を有し、水溶液で加工されるポリアニリンの製造法に対する必要性は非常に高い。しかし、ポリアニリンはその主鎖が固い構造を有しており、高分子鎖間の相互作用が大きいため一般的な方法としては溶液加工が不可能である。
【0005】
最近十年余りの間、溶液加工に対する多くの研究によってかなりの進展がなされ、有機溶媒および水に溶解されるポリアニリンおよびこの加工法が開発された。ポリアニリンは強い極性ルイス塩基、例えばN−メチルピロリジノン(NMP)(前記文献参照)、N,N’−ジメチルプロピレン尿素(Tzou, K.T. and Gregory, R.V. Synth. Met. 1995,69,109)中で、または、濃い硫酸(Andreatta, A., Cao, Y., Chiang, J.C., Heeder, A.J. and Smith, P. Synth. Met. 1988,26,383)中で溶液加工することができる。より最近では、伝導性形態のポリアニリンはドデシルベンゼンスルホン酸やカンファースルホン酸などのプロトン酸ドーパント(Cao,Y.,Smith,P. and Heeder,A.J. Synth. Met. 1992,48,91)を用いて、極性、または、非極性溶媒中で加工することができる。
【0006】
また、水溶性のポリアニリンの製法についてもさまざまな方法が開発された。アルカンスルホン酸基をポリアニリンの窒素の位置に導入するか(Bergeron, J.Y., Chevalier, J.W. and Dao, Le H.J. Chem. Soc., Chem. Commun. 1990,180; Chen,S.A. and Hwang,G.W.J. Am. Chem. Soc. 1994,116,7939)、または、アニリン−N−アルキルスルホネートを合成してこれを電気化学的、または、化学的に直接重合させることにより(Kim, E.M., Lee, M.H., Moon, B.S., Lee, C. and Rhee, S.B.J. Electrochem. Soc. 1994,141,L26)、水溶性ポリアニリンを製造できることが知られている。より最近では、ジフェニルアミン−4−スルホン酸を直接重合させたり(DeArmitt, C., Armes, C.P., Winter, J., Uribe, F.A., Gottesfeld, J. and Mombourquette, C. Polymer 1993,34,158)、または、O−アミノベンジルアルコールとジフェニルアミン−4−スルホン酸とを共重合させてN−アリールスルホネートを含む水溶性伝導性ポリアニリンを製造できることも明らかになった(Nguyen, M. T.and Diaz, A.F. Macromolecules 1994,27,7003)。
【0007】
また、他の方法では、高分子酸の存在下においてアニリンを化学的酸化法で重合させれば高分子酸で複合化された水溶性ポリアニリンが製造されるということも知られている[M. Angelopoulos, N. Patel, J. M. Shaw, N. C. Labianca and S.A. Rishton, J, Vac. Sci. Technol. B11,2794(1993); K. Shannon, and J.E. Fernadez, J. Chem. Soc. Chem. Commum., 643(1994)]。
【0008】
上記の方法で製造される水溶性ポリアニリンは、重合後に生成物を反応溶媒と副産物から分離精製することは非常に困難である。即ち、溶媒で用いられた水から副産物と反応せずに残っている試薬を除去することが容易ではなく、一般的には透析を利用して精製を行うが、この場合にはポリアニリンの純度を決定することは非常に困難であり、工程上においても不合理である。さらに、所望する濃度の水溶性ポリアニリン溶液を製造するためには、過量の水を除去しなければならないという問題点がある。
【0009】
さらに、溶液加工で製造されたポリアニリンフィルムやコーティングを電気化学的な用途として用いる場合には製造されたフィルムやコーティングの電気化学的特性、即ち、可逆的な酸化還元反応性および反復回数による酸化還元安全性(寿命)などが大変重要である。このような特性を決定付ける要因のうち、最も重要なことはフィルムのイオン伝導度であり、これはすべての電気化学的な反応でイオンの拡散速度が酸化還元可逆性と寿命に大きく影響を与えるためである。酸性溶液の条件下でN−アルキルスルホン酸が置換されたポリアニリンの酸化−還元反復安全性が10万回以上になるということが発表されているが(Kim, E.M., Lee, M.H., Moon, B.S., Lee, C. and Rhee, S.B.J. Electrochem. Soc、1994,141,L26)、酸性の条件は二次電池や電気変色素子の応用には適切でない。
【0010】
最近ポリスチレンスルホン酸とオリゴエチレングリコールアクリレートとの共重合体を製造し、これをポリアニリンのドーパントとして活用して、電気的な特性を向上させた方法が発表された(H. Tsutsumi, S. Fukuzawa, M. Ishikawa, M. Morita, and Y. Matsuda, J. Electrochem. Soc.、142,L168(1995))。この場合約40回程度の充放電後にも電気的な特性は、ほぼ変化がないものと明らかになった。しかし、この場合高分子の合成が難しく、電気化学的方法で電極上にポリアニリンフィルムを製造して使用することはできるが、製造されたポリアニリン複合体は溶液加工性がない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このため、上記のような従来技術の問題点を解決してポリアニリンがプロトン化ドーピング、または、酸化ドーピングによって伝導性を付与しなくとも自己ドープされることができ、さらに、水溶液に加工が可能であり、電気化学的特性に優れたポリアニリン複合体の開発が要求されている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、下記構造式(1)と表示される新規の自己ドープされた水溶性のポリアニリングラフト共重合体およびその製造方法に関する。
[構造式1]
【化1】

【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の目的は、ポリスチレンスルホン酸の主鎖にアニリン単量体をグラフト化反応させてグラフト共重合されたポリアニリン重合体を含む自己ドープされた水溶性ポリアニリングラフト共重合体を提供するものである。
【0014】
本発明は、下記反応式1に示した通り、アミノスチレン(AMS)とジ−tert−ブチルジカルボネート(di-tert-butyl dicarbonate、(BOC)2)を反応させてtert−ブトキシカルボニル−アミノスチレン(BOC−AMS)を製造した後、これを下記反応式2に示すようにスチレンスルホン酸ナトリウム(SSNa)と反応させてBOC−AMSとスチレンスルホン酸ナトリウムの共重合体(P(SSNa−co−BOC−AMS))とを製造した後、下記反応式3に示すようにtert−ブトキシカルボニル(BOC)基を除去してスチレンスルホン酸とアミノスチレンとの共重合体(P(SSA−co−AMS))とを製造した。その後、下記反応式4のようにアニリンと反応させ、前記構造式(1)に示されるように新規の自己ドープされた水溶性・伝導性のポリアニリングラフト共重合体およびその製造方法に関する。
【0015】
[反応式1]
【化2】

【0016】
[反応式2]
【化3】

【0017】
[反応式3]
【化4】

【0018】
[反応式4]
【化5】

【0019】
全体の実験過程は、化学式として図1に示した。
【0020】
本発明のtert−ブトキシカルボニル−アミノスチレン(BOC−AMS)単量体製造方法は、以下により具体的に説明する。
【0021】
アミノスチレンは、アミノ基の非共有電子対がビニール基のパラ(para)位置に移動し、ラジカル重合を妨害して重合禁止の役割をするため、共重合に用いられない。従って、アミノスチレンで重合、または、共重合を進行させた場合、低分子量の高分子が得られ、収率が非常に低いという問題点がある。そのために、反応性を高めるために単量体に電子吸収(electron withdrawing)器を導入した。即ち、BOC−AMSを製造した。
【0022】
アミノスチレンとジ−tert−ブチルジカルボネート(di-tert-butyl dicarbonate)とをジオキサンを溶媒として用いて、水/氷の浴槽で10時間反応させた後、200mlのエチルアセテートと200mlの水の混合溶媒で有機相を分離した。分離した有機相の溶媒を水で数回洗浄した後、減圧下に吹き飛ばし、ノルマルヘキサンから再結晶方法によって白色の結晶性固体のBOC−AMSを得、収率は約40%であった。得られたBOC−AMSは、1H NMRで構造分析を実行した。δ=1.5(s、9H;−CH3)、5.1(dd、2H;=CH2)、5.6(dd、2H;=CH2)、6.6(dd、1H;=CH−)、6.7(s、1H;−NH−)、7.3(s、4H;Ar−H)。
【0023】
本発明のtert−ブトキシカルボニル−アミノスチレン(BOC−AMS)とスチレンスルホン酸ナトリウムとの共重合体製造方法は、以下により具体的に説明する。
【0024】
前記BOC−AMSをスチレンスルホン酸ナトリウムとラジカル重合方法によって、共重合体であるP(SSNa−co−BOC−AMS)を製造した。スチレンスルホン酸ナトリウム5gとBOC−AMS0.5gと、AIBN0.1gと、を60mlのジメチルスルホキシド(以下DMSO)に溶解した後、N2ガスの雰囲気、80℃で15時間、重合した。得られた溶液は、アセトンに滴下して沈殿させて、濾過した。得られた共重合体を、アセトンで数回洗浄した後、24時間の間60℃で真空乾燥した。前述の通り、FT−IRと1H NMRで、BOC−AMSの構造分析を実行した。
【0025】
本発明のPSSA−g−PANIの製造方法は、以下により具体的に説明する。
【0026】
P(SSNa−co−BOC−AMS)のtert−ブトキシカルボニル(BOC)基を除去し、Na+をH+でイオン交換反応をさせるために、P(SSNa−co−BOC−AMS)0.8gを1M塩酸水溶液30mlに30℃で1時間反応させ、P(SSA−co−AMS)を得た。それから、溶液の温度を0℃に下げた。
【0027】
P(SSA−co−AMS)にアニリンをグラフト共重合させるために、0.2gのアニリンをP(SSA−co−AMS)溶液に0.5時間の間攪拌しながら、添加した。そして、20ml過硫酸アンモニウム(0.49g)/塩酸水溶液(1M)を0℃で滴下した。6時間反応させて濃い緑色の水溶液を得た。得られた溶液を分子量3500未満の物質を濾過する半透膜で透析して、精製した。
【0028】
本発明で得られたPSSA−g−PANIは、構造分析のためにFT−IRと1H NMRを行い、図2、図3に示した。
【0029】
前もってP(SSNa−co−BOC−AMS)を塩酸水溶液で1時間くらい反応させた場合、BOC基の特性吸収ピークである1718,1539,1369cm-1に現れるピークがほぼ消えて、2618cm-1に現れるNH3+ストレッチングピークが大きく生じるのを図2(b)から確認することができる。即ち、塩酸水溶液でBOC基の除去が容易になされることを示している。逆に、PSSA−g−PANIのFT−IRスペクトラムの場合、NH3+ストレッチングピークが消えることによって(図2(c))、主鎖の−NH3+Cl-でアニリンのグラフト共重合が起きたとのことを定性的に確認できる。また、図3に示す1H NMRスペクトラムも図1で図式的に示す構造を証明している。
【0030】
前記PSSA−g−PANIとの比較のためにPSSA/PANIブレンド(blend)を製造し、その特性の差を示した。PSSA/PANIブレンドの製造は、PSSA−g−PANIの製造方法と同一に製造され、差異点は主鎖として用いられたP(SSNa−co−BOC−AMS)の代わりにPSSNaを用いたということである。PSSA−g−PANIは、水溶液やアンモニア水溶液(1M)で完全に溶解している状態として存在するが、ブレンドの場合、水溶液で分散状態で存在してアンモニア水溶液で脱ドープされながらポリアニリン同士が固まって沈殿する。このような図式を図4に示している。グラフト共重合体の場合、アンモニア水溶液上で脱ドーピングが生じても、化学結合に連結されているため、ポリアニリンのマクロ相分離が生じ得なかった。またPSSA−g−PANIはアンモニア水を除去すれば紫色から本来の濃い緑色に戻り、再ドーピングが生じて、このようなドーピング・脱ドーピングは、外部ドーパントがなくともpHによって可逆的に生じた。
【0031】
伝導度の測定のためにパウダーサンプルをプレスで圧縮させ、ペレット形態で作り、4端子法によって伝導度を測定した。常温電気伝導度がPSSA−g−PANIとPSSA/PANIブレンドとは、各々1.2×10-1S/cmと7.7×10-2S/cmであって差異がある。
【0032】
前記PSSA−g−PANIの温度に伴う伝導度は、温度が増加するのにともない増加するが、約148℃で減少する傾向を見せた。温度を再び常温に下げて、温度を上げながら伝導度を測定すれば初めての伝導度よりは低い値を有するが、温度に伴う増加傾向を見せながら、同じように、148℃で伝導度の減少を見せた。148℃での伝導度の減少は、スルホン酸の分解に起因し、スルホン酸の分解により脱ドーピングが生じながら、伝導度が減少するようになる。従って二番目の熱を加える時に現れる伝導度は、分解されずに残っているドープされたスルホン酸によって現れる伝導度である。このような熱による脱ドーピング温度は、チェーングループで熱安全性を与えるためにベンゼンリングを導入した水溶性ポリアニリンの場合に比べて本発明のPSSA−g−PANIが熱的に安定であるということを示す。(M.Y. Hua, Y.N. Su, S.A. Chen, Polymer 2000,41,813)。
【0033】
前記PSSA−g−PANIのUV−Visスペクトラムを図6に示した。水溶液に溶かした場合、420nmと770nmでポラロン(polaron)バンド移転による吸収ピークが観察される。このような吸収ピークの波長はドープされたポリアニリンに現れる波長で、前記PSSA−g−PANIが自己ドープされていることを直接的に示す。また、アンモニア水溶液に溶かした場合550nmで大きい吸収ピークが観察され、このようなピークはポリアニリンのキノイド(quinoid)リングのπ−π*移転によるピークと知られてい、アンモニア水溶液状態で脱ドーピングが生じたことを示す。
【0034】
前記PSSA−g−PANIは、余分の水を除去するために高真空で24時間以上乾燥させた後にも水とDMSOに完全に溶解し、チンダル(tyndall)効果などが観察されなかった。
【実施例】
【0035】
以下、実施例をもって本発明をより具体的に説明するが、これらは本発明の具体的な例であるだけで、本発明を限定するものではない。
【0036】
[実施例1]
水溶性自己ドープされたポリアニリングラフト共重合体合成(主鎖(backbone)の分子量変化)
スチレンスルホン酸ナトリウム5gとBOC−AMS0.5gとを60mlのジメチルスルホキシド(DMSO)に溶かした後、0.01〜0.2gのAIBNを開始剤として用いて、80℃で15時間撹拌した。得られた溶液は過量のアセトンに徐々に滴下して、沈殿物を得た。得られた共重合体はアセトンに数回洗浄した後、24時間の間60℃で真空乾燥した。得られた共重合体はMALDI−TOF質量分析方法で質量を分析した結果、1000〜百万程度の分子量を有するランダム(random)共重合体であることを確認した。
【0037】
[実施例2]
水溶性自己ドープされたポリアニリングラフト共重合体合成(グレフチングの長さの変化)
スチレンスルホン酸ナトリウム5gとBOC−AMS0.5gとを60mlのDMSOに溶解した後、0.1gのAIBNを開始剤として用いて80℃で15時間撹拌した。得られた溶液は過量のアセトンに徐々に滴下して、沈殿物を得た。得られた共重合体はアセトンに数回洗浄した後、24時間の間60℃で真空乾燥した。アニリングラフト化反応は、温度を0℃に下げた後、アニリン/PSSA−co−AMSのモル比を100〜0.1まで変化させながら、アニリン+PSSA−co−AMSの量は、1gに合わせて30ml水溶液に30分間溶解させた後、酸化剤として過硫酸アンモニウムを用いて重合を進行させた。この時、酸化剤とアニリンの当量は1:1に合わせて実験した。
【0038】
得られたグラフト共重合体においてアニリンの反復単位の個数は実験条件により平均1個〜400個まで長さが変化し、アニリンの反復単位の個数が20個以上になれば水に溶解しなかった。アニリンの反復単位の個数が大きくなればなるほど、水溶性反応に参如するスルホン酸基の個数が減少しながら、溶解度が下がる。
【0039】
[実施例3]
水溶性自己ドープされたポリアニリングラフト共重合体合成(グレフチングのサイトの密度変化)
スチレンスルホン酸ナトリウム5gとBOC−AMS0.05〜0.2gとを60mlのDMSOに溶かした後、0.1gのAIBNを開始剤として用いて、80℃で15時間撹拌した。得られた溶液は過量のアセトンに徐々に滴下して、沈殿物を得た。得られた共重合体はアセトンに数回洗浄した後、24時間の間60℃で真空乾燥した。得られた共重合体は1H NMRによって分析した結果、反応物でのBOC−AMSの含有量と生成物(共重合体)でのBOC−AMSの含有量が約一致するのを確認した。
【0040】
[実施例4]
水溶性自己ドープされたポリアニリングラフト共重合体合成(pH変化)
アニリングラフト化反応は、温度を0℃に下げた後、0.2gのアニリンを0.8gのPSSA−co−AMSが溶解している30ml塩酸水溶液に30分間溶解した後、酸化剤として過硫酸アンモニウム(0.49g)を用いて重合を進行させた。塩酸水溶液の濃度は0.1〜2Mまで変化させながら、実験した。この時、酸化剤とアニリンの当量は1:1に合わせて実験した。6時間の間反応させ、濃い緑色の水溶液を得た。
【0041】
[実施例5]
電気化学重合による水溶性自己ドープされたポリアニリングラフト共重合体合成
P(SSNa−co−BOC−AMS)試料を白金電極上にスピンコーティングした。ポテンショスタット(EG&G273A)を用い、電極にあらかじめきめたポテンシャルを適用して、P(SSNa−co−BOC−AMS)にアニリンを、電気化学重合によって重合させた。この電気分解で、ディスク−タイプの白金作業電極(直径1cm)と、プレート−タイプの白金反対電極と、及び基準電極として水性の塩化ナトリウムによって飽和させたカロメル電極(SCE)からなる標準3−電極電池を使用した。また、1.0Mの水性の塩化水素をDMF/水の混合溶媒中で電解液として使用した。アニリンを前記 電解液に添加した後、1時間の間N2 ガスを除去した。また、ポテンシャルの範囲は−0.2〜1.0V(vs。SCE)であり、スキャンイング(scanning)の速度は50mV/secであった。
【0042】
[実施例6]
水溶性自己ドープされたポリアニリングラフト共重合体合成(透析などの複雑な工程をなくした簡単な方法)
前記実験方法で透析実験を行わなければならない理由は、重合が終了すれば得られるグラフト共重合体は水に溶解していながら、アセトンで沈殿された時、アセトンに溶解しない酸化剤と反応副産物などがそのまま残っているため、不純物精製過程として透析実験を行った。重合が終了し、反応溶媒内にグラフト共重合体のみ沈殿され、残りの物質は溶媒内に溶解しているのであれば得ようとする生成物をフィルタリングを介して得ることができるという点に着眼して、共溶媒を用いる方法を見つけた。本実験ではアセトニトリルと水の共溶媒とを用い、さまざまな実験を介してアセトニトリル/水(8:2)の比率が最も理想的な倍率であることを見つけ出した。前記共溶媒ではグラフト共重合体の前駆体のP(SSNa−co−BOC−AMS)、その他酸化剤とモノマーも完全に溶解するが、先立って合成されたPSSA−g−PANIは溶解しなかった。
【0043】
P(SSNa−co−BOC−AMS)0.8gをアセトニトリル/1M塩酸水溶液(8:2)30mlに溶かした後、30℃で1時間の間反応させた。温度を0℃に下げて、アニリン0.2gを添加した後、30分間撹拌した。20mlの前記共溶媒にAPS0.49gを溶かした後、徐々にアニリン溶液に滴下させた。0℃で温度を保持しながら、6時間の間撹拌した。反応が終わった後、フィルタリングしたところ、PSSA−g−PANIだけフィルタ紙上に残り、残りはすべて通り抜けた。アセトンで数回洗った後、得られたグラフト共重合体は真空オーブンによって30℃で24時間の間乾燥させた。余分な水分を完全に除去した後、水に溶かして完全に水に溶解させた。
【0044】
アニリン重合は、有機溶媒内では重合が進行されない。従って有機溶媒と水の共溶媒とを用いることにより合成に成功し、その比率を適切に合わせて、グラフト共重合体のみ沈殿されている比率を見つけたのである。
【産業上の利用可能性】
【0045】
上記のように製造された自己ドープされながら水に溶解するポリアニリン共重合体は、主鎖自体がドーパントの役割と水に溶解する役割とを同時に行うという利点がある。さらに、主鎖が分枝ポリアニリンを有するため、ポリアニリン同士のマクロ相分離を防止でき、ドーピング・脱ドーピングがpHにより可逆的に生じるという利点を有する。本発明によって製造された自己ドープされた水溶性ポリアニリングラフト共重合体は、電磁波遮蔽素材、帯電防止用素材、腐食防止用素材、二次電池電極物質、電気変色素子、センサ、機能性フィルムなどに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】ポリ(スチレンスルホン酸グラフトアニリン)(poly(styrene sulfonic acid-g-aniline))の合成の模式図である。
【図2】(a)はスチレンスルホン酸ナトリウムとジ−tert−ブチルジカルボネート−アミノスチレンとの共重合体(P(SSNa−co−BOC−AMS))、(b)はスチレンスルホン酸とアミノスチレンの共重合体(P(SSA−co−AMS))、そして(c)はポリ(スチレンスルホン酸グラフトアニリン)のFT−IRスペクトラムを示す。
【図3】(a)はスチレンスルホン酸ナトリウムとジ−tert−ブチルジカルボンネート−アミノスチレンとの共重合体、(b)はスチレンスルホン酸とアミノスチレンとの共重合体、そして(c)はポリ(スチレンスルホン酸グラフトアニリン)の1H NMRスペクトラムを示す。
【図4】(a)はポリ(スチレンスルホン酸グラフトアニリン)とポリスチレンスルホン酸/ポリアニリンブレンドのドープされた状態と脱ドープされた状態を図式的に示し、(b)はポリ(スチレンスルホン酸グラフトアニリン)が脱ドープされながら経る構造的変化を模式的に示す。
【図5】PSSA−g−PANIの温度に伴う伝導度の変化を示す。(a)は常温で160℃以上まで温度を上げながら、測定した伝導度であり、(b)は再び常温に温度を下げ、160℃以上まで温度を上げて測定した伝導度である。
【図6】PSSA−g−PANIの(a)水溶液状態で自己ドープされた状態と(b)1Mのアンモニア水溶液状態で脱ドープされた状態の紫外・可視吸収スペクトラムを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造式(I)で示したポリアニリングラフト共重合体。
[構造式I]
【化1】

【請求項2】
前記ポリアニリングラフト共重合体でアニリンの反復単位の個数は、1〜400個であることを特徴とする請求項1記載のポリアニリングラフト共重合体。
【請求項3】
前記ポリアニリングラフト共重合体でアニリンの反復単位の個数は4〜32個であることを特徴とする請求項1記載のポリアニリングラフト共重合体。
【請求項4】
前記ポリアニリングラフト共重合体が自己ドープされた水溶性であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のポリアニリングラフト共重合体。
【請求項5】
前記ポリアニリングラフト共重合体は、プロトン化ドーピング、または、酸化ドーピング処理をすることなく、4端子法の電気伝導度が1.0×10〜1.2×10-4S/cmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のポリアニリングラフト共重合体。
【請求項6】
下記構造式(II)で示したポリ(スチレンスルホン酸−co−アミノスチレン)(P(SSA−co−AMS))ランダム共重合体をアニリンと反応させ、前記構造式(I)のポリアニリングラフト共重合体を製造する方法。
(構造式II)
【化2】

[構造式IIでnは1〜5000、mは1〜1000である]
【請求項7】
前記構造式(II)のスチレンスルホン酸とアミノスチレンとの共重合体(P(SSA−co−AMS))は、下記反応式(1)のアミノスチレン(AMS)とジ−tert−ブチルジカルボネート(di-tert-butyl dicarbonate、(BOC)2)とを反応させてtert−ブトキシカルボニル−アミノスチレン(BOC−AMS)を製造し;
下記反応式(2)のtert−ブトキシカルボニル−アミノスチレン(BOC−AMS)とスチレンスルホン酸ナトリウム(SSNa)とを反応させ、tert−ブトキシカルボニル−アミノスチレン(BOC−AMS)とスチレンスルホン酸ナトリウムとの共重合体(P(SSNa−co−BOC−AMS))を製造した後;
下記反応式(3)のtert−ブトキシカルボニル(BOC)を除去して、ポリ(スチレンスルホン酸−co−アミノスチレン)(P(SSA−co−AMS))を製造することを特徴とする請求項6に記載のポリアニリングラフト共重合体の製造方法。
[反応式(1)]
【化3】

[反応式(2)]
【化4】

[反応式(3)]
【化5】

【請求項8】
前記ポリ(スチレンスルホン酸−co−アミノスチレン)(P(SSA−co−AMS))の分子量は、MALDI−TOF質量分析方法によると、1.0x103〜1.0x106であることを特徴とする請求項6記載のポリアニリングラフト共重合体の製造方法。
【請求項9】
ポリ(スチレンスルホン酸−co−アミノスチレン)(P(SSA−co−AMS))とアニリンとのグラフト化反応は、−60〜60℃の温度で行われることを含む請求項6記載のポリアニリングラフト共重合体の製造方法。
【請求項10】
前記ポリ(スチレンスルホン酸−co−アミノスチレン)(PSSA−co−AMS)100重量部対してアニリンを1〜200部で反応させて、製造することを特徴とする請求項6記載のポリアニリングラフト共重合体の製造方法。
【請求項11】
ポリ(スチレンスルホン酸−co−アミノスチレン)(P(SSA−co−AMS))とアニリンの反応が電気化学的にグラフト重合されることを、さらに含むことを特徴とする請求項6記載のポリアニリングラフト共重合体の製造方法。
【請求項12】
前記スチレンスルホン酸ナトリウム(SSNa)単量体100重量部基準でtert−ブトキシカルボニル−アミノスチレン(BOC−AMS)単量体1〜20重量部をラディカル重合方法によって、反応させて、スチレンスルホン酸ナトリウムとtert−ブトキシカルボニル−アミノスチレン(BOC−AMS)との共重合体を重合することを特徴とする請求項7記載のポリアニリングラフト共重合体の製造方法。
【請求項13】
スチレンスルホン酸ナトリウムとtert−ブトキシカルボニル−アミノスチレン(BOC−AMS)とをジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解させた後、AIBNを開始剤として用いて、スチレンスルホン酸ナトリウムとtert−ブトキシカルボニル−アミノスチレン(BOC−AMS)との共重合体を重合することを特徴とする請求項7又は12記載のポリアニリングラフト共重合体の製造方法。
【請求項14】
アミノスチレンとジ−tert−ブチルジカルボネート(di-tert-butyl dicarbonate)とをジオキサンを溶媒として用いて、水/氷の浴槽で5〜20時間反応させてtert−ブトキシカルボニル−アミノスチレン(BOC−AMS)を製造することを特徴とする請求項7記載のポリアニリングラフト共重合体の製造方法。
【請求項15】
前記tert−ブトキシカルボニル−アミノスチレン(BOC−AMS)とスチレンスルホン酸ナトリウムとの共重合体P(SSNa−co−BOC−AMS)の溶媒としてアセトニトリル/水の混合溶媒を用いることを特徴とする請求項7記載のポリアニリングラフト共重合体の製造方法。
【請求項16】
前記電気化学重合において、作業用電極として、ポリ(スチレンスルホン酸−co−アミノスチレン)(P(SSA−co−AMS))がコーティングされた白金電極、基準電極としては標準カロメル電極、相手電極としては白金線を使用することを特徴とする請求項10記載のポリアニリングラフト共重合体の製造方法。
【請求項17】
請求項1に記載されたポリアニリングラフト共重合体を有効性分として含む帯電防止制。
【請求項18】
請求項1に記載されたポリアニリングラフト共重合体を有効性分として含む電磁波遮蔽製品。
【請求項19】
請求項1に記載されたポリアニリングラフト共重合体を有効性分として含む二次電極材料。
【請求項20】
請求項1に記載されたポリアニリングラフト共重合体を有効性分として含むコーティング膜。
【請求項21】
請求項1に記載されたポリアニリングラフト共重合体を有効性分として含むセンサ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−520570(P2007−520570A)
【公表日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−504598(P2005−504598)
【出願日】平成15年9月1日(2003.9.1)
【国際出願番号】PCT/KR2003/001779
【国際公開番号】WO2005/010072
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(503317485)ソウル ナショナル ユニバーシティー インダストリー ファウンデーション (25)
【出願人】(506026818)チェイル インダストリーズ インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】