説明

新規アザインデノクリセン誘導体および有機発光素子

【課題】高効率、高輝度、かつ高寿命である有機発光素子とそれを実現できる新規有機化合物を提供する。
【解決手段】下記一般式で示されるアザインデノクリセン誘導体およびこれらをアザインデノクリセン誘導体を有する有機化合物層とを少なくとも有する有機発光素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,アザインデノクリセン骨格を有する新規有機化合物およびそれを有機発光素子用材料として有する有機発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子は、電極間に蛍光性又は燐光性有機化合物を含む薄膜を挟持させて、各電極から電子及びホール(正孔)を注入することにより、蛍光性又は燐光性化合物の励起子を生成させ、この励起子が基底状態に戻る際に放射される光を利用する素子である。有機発光素子における最近の進歩は著しく、その特徴は低印加電圧で高輝度、発光波長の多様性、高速応答性、薄型、軽量の発光デバイス化の可能性であることから、広汎な用途への可能性を示唆している。
【0003】
しかしながら、現状では更なる高輝度の光出力あるいは高変換効率が必要である。また、長時間の使用による経時変化や酸素を含む雰囲気気体や湿気などによる劣化等の耐久性の面で未だ多くの問題がある。さらにはフルカラーディスプレイ等への応用を考えた場合、色純度の良い青、緑、赤色発光が必要となるが、これらの問題に関してまだ十分でない。
【0004】
また、特許文献1にはアザナフトフルオランテン誘導体化合物を緑色発光材料として使用していることが記載されている。そして緑色より長波の発光材料に限定されていることがその骨格から起因していえる。
【特許文献1】特開2000−311786号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述したような従来技術の問題点を解決するためになされたものである。本発明の目的は、極めて純度のよい発光色相を呈し、高効率で高輝度、高寿命の光出力を有する新規化合物及び該化合物を用いた有機発光素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
よって本発明は、下記一般式[1]で示されることを特徴とするアザインデノクリセン誘導体を提供する。
【0007】
【化1】

【0008】
(一般式[1]において、X乃至Xは環を構成する置換基Rを有する炭素原子または窒素原子を示す。Rは水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換の複素環基、置換あるいは無置換の縮合多環芳香族基、置換あるいは無置換の縮合多環複素環基から選ばれる基を表わす。ただし、X乃至Xの少なくとも一つは窒素原子を表す。また、置換基Rを有する炭素原子が複数存在する場合、Rは互いに独立して同じであっても異なっていてもよい。
【0009】
乃至R10は水素原子、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアルケニル基、置換あるいは無置換のアルキニル基、置換あるいは無置換のアリール基,置換あるいは無置換の複素環基、置換あるいは無置換の縮合多環芳香族基、置換あるいは無置換の縮合多環複素環基から選ばれる基を表わし、R乃至R10はそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。)
また、本発明は下記一般式[2]で示されるアザインデノクリセン誘導体を提供する。
【0010】
【化2】

【0011】
(一般式[2]において、X乃至Xは環を構成する置換基Rを有する炭素原子または窒素原子を示す。Rは水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換の複素環基、置換あるいは無置換の縮合多環芳香族基、置換あるいは無置換の縮合多環複素環基から選ばれる基を表わす。ただし、X乃至Xの少なくとも一つは窒素原子を表す。また、置換基Rを有する炭素原子が複数存在する場合、Rは互いに独立して同じであっても異なっていてもよい。
【0012】
乃至RおよびR乃至R10は水素原子、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアルケニル基、置換あるいは無置換のアルキニル基、置換あるいは無置換のアリール基,置換あるいは無置換の複素環基、置換あるいは無置換の縮合多環芳香族基、置換あるいは無置換の縮合多環複素環基から選ばれる基を表わし、R乃至RおよびR乃至R10は同じであっても異なっていてもよい。Yは単結合または、置換あるいは無置換のアルカン、置換あるいは無置換のアルケン、置換あるいは無置換のアルキン、、置換あるいは無置換の芳香族化合物、置換あるいは無置換の複素環化合物、置換あるいは無置換の縮合多環芳香族化合物、置換あるいは無置換の縮合多環複素環化合物のいずれかから誘導されるn価の連結基を表す。nは2以上4以下の整数を表す。)
また本発明は、陽極と陰極と、前記陽極と前記陰極の間に配置されている有機化合物層を有する有機発光素子において、前記有機化合物層は、一般式[1]および[2]のいずれかに記載の化合物を少なくとも1種含むことを特徴とする有機発光素子を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明により新規なアザインデノクリセン誘導体を提供することが出来る。そしてアザインデノクリセン骨格を有する化合物(アザインデノクリセン誘導体)を含有する有機発光素子は、低い印加電圧で高輝度な発光が得られ、耐久性にも優れている。
【0014】
特にこのアザインデノクリセン骨格を有する化合物を発光層のゲストに用いた有機発光素子は、適切な分子修飾によって発光ピークが430nm以上460nm以下を示す極めて純度のよい青色発光色相を呈す。そしてこの有機発光素子は、低い印加電圧で高輝度な発光が得られ、耐久性にも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に関して詳細に説明する。
【0016】
まず、本発明のアザインデノクリセン誘導体について説明する。
【0017】
本発明のアザインデノクリセン誘導体は、上記一般式[1]で示されることを特徴とするが、一般式[1]中のX乃至Xは環を構成する置換基Rを有する炭素原子または窒素原子を示し、X乃至Xの少なくとも一つは窒素原子を表す。また、Rは以下のいずれかであることが好ましい。
(水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換の複素環基、置換あるいは無置換の縮合多環芳香族基、置換あるいは無置換の縮合多環複素環基から選ばれる基)
また、一般式[1]中のR乃至R10は以下のいずれかであることが好ましい。ただし、R乃至R10はそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。
(水素原子、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアルケニル基、置換あるいは無置換のアルキニル基、、置換あるいは無置換のアリール基,置換あるいは無置換の複素環基、置換あるいは無置換の縮合多環芳香族基、置換あるいは無置換の縮合多環複素環基から選ばれる基)
好ましくは、一般式[1]中のRが置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換の縮合多環芳香族基、置換あるいは無置換の縮合多環複素環基から選ばれるものである。
【0018】
また、他の例としては、下記一般式[2]で示される化合物が挙げられる。
【0019】
【化3】

【0020】
(上記一般式[2]において、X乃至Xは環を構成する置換基Rを有する炭素原子または窒素原子を示す。Rは水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換の複素環基、置換あるいは無置換の縮合多環芳香族基、置換あるいは無置換の縮合多環複素環基から選ばれる基を表わす。ただし、X乃至Xの少なくとも一つは窒素原子を表す。また、置換基Rを有する炭素原子が複数存在する場合、Rは互いに独立して同じであっても異なっていてもよい。R乃至RおよびR乃至R10は水素原子、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアルケニル基、置換あるいは無置換のアルキニル基、、置換あるいは無置換のアリール基,置換あるいは無置換の複素環基、置換あるいは無置換の縮合多環芳香族基、置換あるいは無置換の縮合多環複素環基から選ばれる基を表わし、R乃至RおよびR乃至R10は同じであっても異なっていてもよい。Yは単結合または、置換あるいは無置換のアルカン、置換あるいは無置換のアルケン、置換あるいは無置換のアルキン、、置換あるいは無置換の芳香族化合物、置換あるいは無置換の複素環化合物、置換あるいは無置換の縮合多環芳香族化合物、置換あるいは無置換の縮合多環複素環化合物のいずれかから誘導されるn価の連結基を表す。。nは2以上4以下の整数を表す。)
本発明のアザインデノクリセン誘導体は有機発光素子用材料として使用できる。その中で、発光層用として使用する場合、発光層において単独で用いること、及びドーパント(ゲスト)材料、ホスト材料のいずれの目的でも使用でき、高効率発光し、長い期間高輝度を保ち、通電劣化が小さい素子を得ることができる。本発明の一般式[1]や[2]で示されるアザインデノクリセン誘導体は、好ましくはホストとゲストとを有する発光層において、ゲストとして用いることが好ましい。
【0021】
なお本発明の一般式[1]や[2]で示されるアザインデノクリセン誘導体は、有機発光素子用材料として使用できるが、発光層のほかに例えば電子輸送層や電子注入層としても用いることが出来る。
【0022】
発光層が、キャリア輸送性のホスト材料とゲストからなる場合、発光にいたる主な過程は、以下のいくつかの過程からなる。
1.発光層内での電子・ホールの輸送。
2.ホストの励起子生成。
3.ホスト分子間の励起エネルギー伝達。
4.ホストからゲストへの励起エネルギー移動。
それぞれの過程における所望のエネルギー移動や、発光はさまざまな失活過程と競争でおこる。
【0023】
EL素子の発光効率を高めるためには、発光中心材料そのものの発光量子収率が大きいことが重要であることは言うまでもない。しかしながら、ホスト−ホスト間、あるいはホスト−ゲスト間のエネルギー移動が如何に効率的にできるかも大きな問題となる。また、通電による発光劣化は今のところ原因は明らかではないが、少なくとも発光中心材料そのもの、または、その周辺分子による発光材料の環境変化に関連したものと想定される。
【0024】
そこで本発明者らは種々の検討を行い、一般式[1]及び[2]で表されるアザインデノクリセン誘導体を、特に発光層のホストまたはゲストに用いた素子が高効率発光し、長い期間高輝度を保ち、通電劣化が小さいことを見出した。
【0025】
一般式[1]及び[2]で表されるアザインデノクリセン誘導体を、特に発光層のゲストに用いることが好ましいことは先に述べたが、このアザインデノクリセン誘導体は発光層のホストとして用いても良い。
【0026】
本発明のアザインデノクリセン誘導体は高いガラス転移温度を有するため、有機EL素子の高耐久化を期待する事が出来る。即ち、本発明のアザインデノクリセン誘導体は膜化させた場合、結晶化を防ぐことが出来る。これはアザインデノクリセン誘導体は含窒素芳香族複素環を有するからであり、その結果安定な非晶質膜性を有する。
【0027】
また、本発明の一般式[1]及び[2]で表されるアザインデノクリセン誘導体は電気陰性度の高い原子を縮環芳香環構造中に有している。そのため還元電位が高く電子受容性が大きい。
【0028】
そのため有機発光素子を構成する層のうち、本発明の一般式[1]及び[2]で表されるアザインデノクリセン誘導体は発光層に用いられるだけでなく、電子輸送層や電子注入層に用いることが出来、特に電子輸送層に用いることも好ましい。
【0029】
前記一般式[1]及び[2]で表されるアザインデノクリセン誘導体のR及びR乃至R10及びYの選択により還元電位をコントロールすることで電子移動度を調節することが可能となる。
【0030】
これにより、種々のホスト材料との組み合わせにより一般式[1]及び[2]で表されるアザインデノクリセン誘導体のR及びR乃至R10及びYを適切に選択することで、駆動電圧が低く長い期間高輝度を保ち、通電劣化の減少を可能にすることを見出した。
【0031】
また、高効率の光出力を有する有機電解発光素子を提供するためには、有機電解発光素子に用いる発光材料の量子収率を高めることが不可欠である。主に縮合多環芳香族に窒素原子を導入した場合、導入する位置によっては三重項のn−π*軌道がTnレベル(nは1以上)の軌道となり、このn−π*軌道(三重項)がS1軌道とエネルギー的に近接している場合、S1軌道からn−π*軌道へのエネルギー失活が起こりやすく、発光材料の量子収率の低下が引き起こりやすい。しかし、窒素原子を導入する位置及び分子骨格に導入する置換基の種類を適切に選択することによって、n−π*軌道(三重項)とS1軌道とのエネルギー差を大きくし量子収率の低下を改善することができる。分子軌道計算により、窒素原子を導入する位置をシュミレーションし、量子収率を高く維持できる分子骨格の設計により前記一般式[1]で示されるX及びXの位置に窒素原子を導入することがより好ましい。
【0032】
さらに窒素原子を導入する位置のみならず分子骨格に導入する置換基の位置及び種類を適切に設計することにより、分子振動が制御された発光スペクトルの単分散化及び半値幅を減少させることが可能であり色純度のよい発光材料を提供することができる。
【0033】
本発明は、以上の考察のもとに分子設計し発明がなされたものである。
【0034】
上記一般式[1]及び[2]において、R及びR乃至R10で表される置換あるいは未置換のアルキル基としては、以下に示すものが挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0035】
メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−デシル基、iso−プロピル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、iso−ペンチル基、ネオペンチル基、tert−オクチル基、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2−フルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、パーフルオロエチル基、3−フルオロプロピル基、パーフルオロプロピル基、4−フルオロブチル基、パーフルオロブチル基、5−フルオロペンチル基、6−フルオロヘキシル基、クロロメチル基、トリクロロメチル基、2−クロロエチル基、2,2,2−トリクロロエチル基、4−クロロブチル基、5−クロロペンチル基、6−クロロヘキシル基、ブロモメチル基、2−ブロモエチル基、ヨードメチル基、2−ヨードエチル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、4−フルオロシクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基、ベンジル基、2−フェニルエチル基、2−フェニルイソプロピル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基、2−(1−ナフチル)エチル基、2−(2−ナフチル)エチル基、9−アントリルメチル基、2−(9−アントリル)エチル基、2−フルオロベンジル基、3−フルオロベンジル基、4−フルオロベンジル基、2―クロロベンジル基、3−クロロベンジル基、4−クロロベンジル基、2―ブロモベンジル基、3−ブロモベンジル基、4−ブロモベンジル基等。
【0036】
R及びR乃至R10で表されるアルケニル基として、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0037】
R及びR乃至R10で表されるアルキニル基として、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0038】
R及びR乃至R10で表される置換あるいは無置換のアリール基としては、以下に示すものが挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0039】
フェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、2,6−ジエチルフェニル基、メシチル基、4−tert−ブチルフェニル基、ビフェニル基、4−ピリジルフェニル基等。
【0040】
R及びR乃至R10で表される置換あるいは未置換の複素環基としては、以下に示すものが挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0041】
ピリジル基、ピロリル基、ビピリジル基、メチルピリジル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、ピリダジニル基、ターピロリル基、チエニル基、ターチエニル基、プロピルチエニル基、フリル基オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基等。
【0042】
R及びR乃至R10で表される置換あるいは無置換の縮合多環芳香族基としては、以下に示すものが挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0043】
ナフチル基、アセナフチレニル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、アセフェナントリレニル基、アセアントリレニル基、クリセニル基、ジベンゾクリセニル基、ベンゾアントリル基、ジベンゾアントリル基、ナフタセニル基、ピセニル基、ペンタセニル基、フルオレニル基、9,9−ジヒドロアントリル基、トリフェニレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、ベンゾ[k]フルオランテニル基等。
【0044】
R及びR乃至R10で表される置換あるいは無置換の縮合多環複素環基としては、以下に示すものが挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0045】
キノリル基、イソキノリル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、ベンゾフリル基、イソベンゾフリル基、ジベンゾフリル基、キノキサリニル基、ナフチリジニル基、キナゾリニル基、フェナントリジニル基、インドリジニル基、フェナジニル基、カルバゾリル基、アクリジニル基、フェナジニル基、ジアザフルオレニル基、アザフルオレニル基、アザフルオランテニル基、アザベンゾフルオランテニル基等。
【0046】
上記置換基がさらに有しても良い置換基としては、以下に示すものが挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0047】
メチル基、エチル基、プロピル基、tert−ブチル基などのアルキル基、フェニル基、ビフェニル基などのアリール基、チエニル基、ピロリル基、などの複素環基、シアノ基、ニトロ基等。
【0048】
また、上記一般式[2]において、Yは、単結合、または置換あるいは無置換のアルカン、置換あるいは無置換のアルケン、アルキン、置換あるいは無置換の芳香族化合物、置換あるいは無置換の複素環化合物、置換あるいは無置換の縮合多環芳香族環化合物、及び置換あるいは無置換の縮合多環複素環化化合物のいずれかから誘導されるn価の連結基を表す。
【0049】
Yで表される置換あるいは無置換のアルカンから誘導される連結基として、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基等が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0050】
Yで表される置換あるいは無置換のアルケンから誘導される連結基として、ビニレン基、プロピニレン基、ブチニレン基等が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0051】
Yで表される置換あるいは無置換の芳香族化合物から誘導される連結基として、フェニレン基、ビフェニレン基等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0052】
Yで表される置換あるいは無置換の複素環化合物から誘導される連結基として、ピリジニレン基、ビピリジニレン基等が挙げられる、がこれらに限定されるものではない。
【0053】
Yで表される縮合多環芳香族環化合物から誘導される連結基として、フルオレニレン基、ビフルオレニレン基、ナフチレン基、アンスリレン基、クリセニレン基等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0054】
Yで表される縮合多環複素環化合物から誘導される連結基として、アザフルオレニレン基、ジアザフルオレニレン基、ナフチリジニレン基等が挙げられる、がこれらに限定されるものではない。
【0055】
上述した連結基が有してもよい置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、tert−ブチル基等のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基等のアリール基、チエニル基、ピロリル基等の複素環基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0056】
以下、本発明のアザインデノクリセン誘導体の具体的な構造式を示す。但し、これらは代表例を例示しただけで、本発明は、これに限定されるものではない。
[化合物例1]
【0057】
【化4】

【0058】
上記一般式[3]において、
:ビフェニル基、ターフェニル基などのアリール基
乃至R及びR乃至R10:水素原子あるいはメチル基、ターシャリーブチル基などのアルキル基
である化合物例
乃至R及びR乃至R10は同じであっても異なっていてもよい
【0059】
【化5】

【0060】
[化合物例2]
【0061】
【化6】

【0062】
上記一般式[3]において、
:ナフチル基、フルオレニル基などの3環以下の縮合多環基
乃至R及びR乃至R10:水素原子あるいはメチル基、ターシャリーブチル基などのアルキル基あるいはフェニル基などのアリール基
である化合物例
乃至R及びR乃至R10はそれぞれ同じでも異なっていてもよい
【0063】
【化7】

【0064】
【化8】

【0065】
【化9】

【0066】
[化合物例3]
【0067】
【化10】

【0068】
上記一般式[3]において、
:フルオランテニル基、ベンゾフルオランテニル基などの4環以上6環以下の縮合多環基
乃至R及びR乃至R10:水素原子あるいはメチル基、ターシャリーブチル基などのアルキル基あるいはフェニル基などのアリール基
である化合物例
乃至R及びR乃至R10はそれぞれ同じでも異なっていてもよい
【0069】
【化11】

【0070】
【化12】

【0071】
【化13】

【0072】
【化14】

【0073】
[化合物例4]
【0074】
【化15】

【0075】
上記一般式[3]において、
:キノリル基、アザフルオレニル基などの3環以下の縮合複素環基
乃至R及びR乃至R10:水素原子あるいはメチル基、ターシャリーブチル基などのアルキル基あるいはフェニル基などのアリール基
である化合物例
乃至R及びR乃至R10はそれぞれ同じでも異なっていてもよい
【0076】
【化16】

【0077】
【化17】

【0078】
【化18】

【0079】
【化19】

【0080】
【化20】

【0081】
[化合物例5]
【0082】
【化21】

【0083】
上記一般式[3]において、
:アザフルオランテニル基、アザベンゾフルオレニル基などの4環以上5環以下の縮合複素環基
乃至R及びR乃至R10:水素原子あるいはメチル基、ターシャリーブチル基などのアルキル基あるいはフェニル基などのアリール基
乃至R及びR乃至R10はそれぞれ同じでも異なっていてもよい
【0084】
【化22】

【0085】
【化23】

【0086】
【化24】

【0087】
[化合物例6]
【0088】
【化25】

【0089】
上記一般式[4]において、
Y:フェニレン基、ビフェニレン基などのアリール基から誘導される2価以上4価以下の連結基
乃至R及びR乃至R10:水素原子あるいはメチル基、ターシャリーブチル基などのアルキル基またはフェニル基などのアリール基
【0090】
【化26】

【0091】
【化27】

【0092】
【化28】

【0093】
[化合物例7]
【0094】
【化29】

【0095】
上記一般式[4]において、
Y:ナフチレン基、アンスリレン基、フルオレニレン基などの縮合多環芳香族から誘導される2価以上の連結基
乃至R及びR乃至R10:水素原子あるいはメチル基、ターシャリーブチル基などのアルキル基またはフェニル基などのアリール基
【0096】
【化30】

【0097】
【化31】

【0098】
【化32】

【0099】
【化33】

【0100】
次に、本発明の有機発光素子について詳細に説明する。
【0101】
本発明の有機発光素子は、陽極及び陰極からなる一対の電極と、この一対の電極間に挟持される(配置される)少なくとも1層の有機化合物層とからなる。この有機化合物層が本発明に係る有機化合物を少なくとも1種含む。また、陽極及び陰極のいずれかが透明又は半透明である。
【0102】
以下、図面を参照しながら本発明の有機発光素子についてより詳細に説明する。
【0103】
図1は、本発明の有機発光素子における第一の実施形態を示す断面図である。図1の有機発光素子10は、基板1上に、陽極2、発光層3及び陰極4が順次設けられている。この有機発光素子10は、有機化合物層として例えば発光層3が、ホール輸送能、エレクトロン輸送能及び発光性の性能を全て有する化合物で構成されている場合に有用である。また有機化合物層として例えば発光層3が、ホール輸送能、エレクトロン輸送能及び発光性の性能のいずれかの特性を有する化合物を混合して構成される場合に有用である。
【0104】
図2は、本発明の有機発光素子における第二の実施形態を示す断面図である。図2の有機発光素子20は、基板1上に、陽極2、ホール輸送層5、電子輸送層6及び陰極4が順次設けられている。この有機発光素子20は、ホール輸送性及び電子輸送性のいずれかを備える発光性の化合物と電子輸送性のみ又はホール輸送性のみを備える有機化合物とを組み合わせて用いる場合に有用である。また、有機発光素子20は、ホール輸送層5又は電子輸送層6が発光層を兼ねている。
【0105】
図3は、本発明の有機発光素子における第三の実施形態を示す断面図である。図3の有機発光素子30は、図2の有機発光素子20において、ホール輸送層5と電子輸送層6との間に発光層3を挿入したものである。この有機発光素子30は、キャリア輸送と発光の機能を分離したものであり、ホール輸送性、電子輸送性、発光性の各特性を有した有機化合物を適宜組み合わせて用いることができる。このため、極めて材料選択の自由度が増すとともに、発光波長を異にする種々の有機化合物が使用できるので、発光色相の多様化が可能になる。さらに、中央の発光層3にキャリアあるいは励起子を有効に閉じこめて有機発光素子30の発光効率の向上を図ることも可能になる。
【0106】
図4は、本発明の有機発光素子における第四の実施形態を示す断面図である。図4の有機発光素子40は、図3の有機発光素子30において、陽極2とホール輸送層5との間にホール注入層7を設けたものである。この有機発光素子40は、ホール注入層7を設けたことにより、陽極2とホール輸送層5との間の密着性が改善され、又はホールの注入性が改善されるので低電圧化に効果的である。
【0107】
図5は、本発明の有機発光素子における第五の実施形態を示す断面図である。図5の有機発光素子50は、図3の有機発光素子30において、ホール又は励起子(エキシトン)が陰極4側に抜けることを阻害する層(ホール/エキシトンブロッキング層8)を、発光層3と電子輸送層6との間に挿入したものである。イオン化ポテンシャルの非常に高い化合物をホール/エキシトンブロッキング層8として用いることにより、有機発光素子50の発光効率が向上する。
【0108】
ただし、図1乃至図5はあくまでごく基本的な素子構成であり、本発明の有機発光素子の構成はこれらに限定されるものではない。例えば、電極と有機層界面に絶縁性層を設ける、接着層あるいは干渉層を設ける、ホール輸送層がイオン化ポテンシャルの異なる2層から構成される等多様な層構成をとることができる。
【0109】
本発明の有機発光素子は、図1乃至図5のいずれの形態でも使用することができる。
【0110】
本発明の有機発光素子は、好ましくは、発光層3、電子輸送層6又はホール輸送層7が上記のアザインデノクリセン誘導体を少なくとも一種類含有する。より好ましくは、発光層3が含有する。また、発光層3は、好ましくは、ホストとゲストとから構成される。
【0111】
上記のアザインデノクリセン誘導体を、発光層を構成する有機発光素子用材料として使用する場合、単独で使用したり、ドーパント(ゲスト)材料又はホスト材料として使用したりすることができる。
【0112】
発光層が、キャリア輸送性のホストとゲストからなる場合、発光にいたる主な過程は、以下のいくつかの過程からなる。
1.発光層内での電子・ホールの輸送。
2.ホストの励起子生成。
3.ホスト分子間の励起エネルギー伝達。
4.ホストからゲストへの励起エネルギー移動。
【0113】
それぞれの過程における所望のエネルギー移動や、発光はさまざまな失活過程と競争で起こる。
【0114】
有機発光素子の発光効率を高めるためには、発光中心材料そのものの発光量子収率が大きいことは言うまでもない。しかしながら、ホスト−ホスト間、あるいはホスト−ゲスト間のエネルギー移動が如何に効率的にできるかも大きな問題となる。また、通電による発光劣化は今のところ原因は明らかではないが、少なくとも発光中心材料そのもの、又は、その周辺分子による発光材料の環境変化に関連したものと想定される。
【0115】
そこで、前記一般式[1]及び[2]で示されるアザインデノクリセン誘導体を、特に発光層のホスト又はゲストとして用いると、有機発光素子の色純度がよくなり、発光効率がよくなり、長い期間高輝度を保持し、通電劣化が小さくなる。
【0116】
前記一般式[1]及び[2]で示されるアザインデノクリセン化合物をホストとして使用する場合、その含有量は、発光層を構成する材料の全重量に対して20重量%乃至99.9重量%である。
【0117】
前記一般式[1]及び[2]で示されるアザインデノクリセン化合物をドーパント(ゲスト)として使用する場合、ホスト材料に対するドーパントの濃度は0.01重量%乃至80重量%、好ましくは1重量%乃至40重量%である。ドーパント材料はホスト材料からなる層全体に均一に含まれてもよく、濃度勾配を有して含まれてもよい。またある領域に部分的に含ませることでドーパント材料を含まないホスト材料層の領域があってもよい。
【0118】
さらに、ホスト材料のエネルギーギャップはドーパントのエネルギーギャップより広いほうが好ましい。
【0119】
本発明の有機発光素子は、特に発光層を構成する材料として、一般式[1]及び[2]で示されるインデノクリセン誘導体を用いる。また、このアザインデノクリセン誘導体に加えて、必要に応じてこれまで知られている低分子系及びポリマー系のホール輸送性材料、発光性材料あるいは電子輸送性材料等を一緒に使用してもよい。
【0120】
以下にこれらの化合物例を挙げる。
【0121】
正孔(ホール)注入輸送性材料としては、陽極からのホールの注入を容易にし、また注入されたホールを発光層に輸送する優れたモビリティを有することが好ましい。正孔注入輸送性能を有する低分子及び高分子系材料としては、トリアリールアミン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、オキサゾール誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、及びポリ(ビニルカルバゾール)、ポリ(シリレン)、ポリ(チオフェン)、その他導電性高分子が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0122】
発光性材料としては、上記のインデノクリセン誘導体の他に、以下に示す化合物が挙げられる。具体的には、多環縮合芳香族化合物(例えばナフタレン誘導体、フェナントレン誘導体、フルオレン誘導体、ピレン誘導体、テトラセン誘導体、コロネン誘導体、クリセン誘導体、ペリレン誘導体、9,10−ジフェニルアントラセン誘導体、ルブレン等)、キナクリドン誘導体、アクリドン誘導体、クマリン誘導体、ピラン誘導体、ナイルレッド、ピラジン誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、スチルベン誘導体、有機金属錯体(例えば、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム等の有機アルミニウム錯体、有機ベリリウム錯体)及びポリ(フェニレンビニレン)誘導体、ポリ(フルオレン)誘導体、ポリ(フェニレン)誘導体、ポリ(チエニレンビニレン)誘導体、ポリ(アセチレン)誘導体等の高分子誘導体が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0123】
電子注入輸送性材料としては、陰極からの電子の注入を容易にし、注入された電子を発光層に輸送する機能を有するものから任意に選ぶことができる。また、ホール輸送材料のキャリア移動度とのバランス等を考慮し選択される。電子注入輸送性能を有する材料としては、オキサジアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、チアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、ピラジン誘導体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、ペリレン誘導体、キノリン誘導体、キノキサリン誘導体、フルオレノン誘導体、アントロン誘導体、フェナントロリン誘導体、有機金属錯体等が挙げられるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
【0124】
次に本発明の有機発光素子を構成するその他の部材について説明する。
【0125】
陽極材料としては、仕事関数がなるべく大きなものがよい。例えば、金、白金、銀、銅、ニッケル、パラジウム、コバルト、セレン、バナジウム、タングステン等の金属単体又はこれらの合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫インジウム(ITO),酸化亜鉛インジウム等の金属酸化物が使用できる。また、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリフェニレンスルフィド等の導電性ポリマーも使用できる。これらの電極物質は単独で用いてもよいし、複数併用してもよい。また、陽極は一層構成でもよく、多層構成でもよい。
【0126】
一方、陰極材料としては、仕事関数の小さなものがよい。例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、インジウム、ルテニウム、チタニウム、マンガン、イットリウム、銀、鉛、錫、クロム等の金属単体が挙げられる。また、これらの金属を組み合わせて合金にしてもよい。例えば、リチウム−インジウム、ナトリウム−カリウム、マグネシウム−銀、アルミニウム−リチウム、アルミニウム−マグネシウム、マグネシウム−インジウム等の合金が使用できる。また、酸化錫インジウム(ITO)等の金属酸化物の利用も可能である。これらの電極物質は単独で用いてもよいし、複数併用してもよい。また、陰極は一層構造でもよく、多層構造でもよい。
【0127】
本発明の有機発光素子で用いる基板としては、特に限定するものではないが、金属製基板、セラミックス製基板等の不透明性基板、ガラス、石英、プラスチックシート等の透明性基板が用いられる。また、基板にカラーフィルター膜、蛍光色変換フィルター膜、誘電体反射膜等を用いて発色光をコントロールすることも可能である。
【0128】
尚、作製した素子に対して、酸素や水分等との接触を防止する目的で保護層あるいは封止層を設けることもできる。保護層としては、ダイヤモンド薄膜、金属酸化物、金属窒化物等の無機材料膜、フッ素樹脂、ポリパラキシレン、ポリエチレン、シリコーン樹脂、ポリスチレン樹脂等の高分子膜、さらには、光硬化性樹脂等が挙げられる。また、ガラス、気体不透過性フィルム、金属等をカバーし、適当な封止樹脂により素子自体をパッケージングすることもできる。
【0129】
本発明の素子は、基板上に薄膜トランジスタ(TFT)を作製し、それに接続して作製することも可能である。
【0130】
また、素子の光取り出し方向に関しては、ボトムエミッション構成(基板側から光を取り出す構成)及び、トップエミッション(基板の反対側から光を取り出す構成)のいずれも可能である。
【0131】
本発明の有機発光素子において、インデノクリセン化合物を含有する層及びその他の有機化合物からなる層は、以下に示す方法により形成される。一般には真空蒸着法、イオン化蒸着法、スパッタリング、プラズマを用いて作製する。特に、真空蒸着法や溶液塗布法等によって形成した層は、結晶化等が起こりにくく経時安定性に優れているので好ましい。
【0132】
また、適当な溶媒に溶解させて公知の塗布法(例えば、スピンコーティング、ディッピング、キャスト法、LB法、インクジェット法等)により薄膜を形成してもよい。特に塗布法で成膜する場合は、適当な結着樹脂と組み合わせて膜を形成することもできる。
【0133】
上記結着樹脂としては、広範囲な結着性樹脂より選択できる。例えば、ポリビニルカルバゾール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリスルホン樹脂、尿素樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらは単独又は共重合体ポリマーとして1種又は2種以上混合してもよい。さらに必要に応じて、公知の可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を併用してもよい。
【実施例】
【0134】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明していくが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0135】
<実施例1>[例示化合物No.304の製造方法]
本発明の例示化合物304は、例えば以下に説明するような方法により製造できる。
(1)中間体化合物1の合成
まずはじめに、クリセンを出発原料に用い、非特許文献Tetrahedron Letters 1992,33,1675に記載の合成法を参考に、下記反応式[1]で示される方法で、中間体化合物1を得た。
【0136】
【化34】

【0137】
MALDI−TOF MS(マトリックス支援イオン化−飛行時間型質量分析)により、この化合物のMである304.4を確認した。
H−NMR(CDCl):δ(ppm)=9.64(s,1H),9.02(d,1H,J=8.69Hz),8.74(d,1H,J=8.69Hz),8.68−8.66(m,2H),8.22(dd,1H,J=7.78Hz,J=1.37),8.10(dd,2H,J=13.95Hz,J=8.01),8.05(dd,1H,J=8.23Hz,J=1.37),7.88(dd,1H,J=8.46Hz,J=7.09),7.81−7.77(m,1H),7.69(td,1H,J=7.43Hz,J=1.07),7.34(d,1H,J=7.78Hz,J=5.03)
中間体化合物1のトルエン溶液(1.0×10−5mol/L)のPLスペクトルを測定した結果、発光ピーク442nm、半値幅95nmの青色発光スペクトルを示した(図6)。
【0138】
(2)中間体化合物2の合成
次に、上記反応式[1]で得られた中間体化合物1を出発原料に用い、下記反応式[2]で示される方法で、中間体化合物2を得た。
【0139】
【化35】

【0140】
MALDI−TOF MS(マトリックス支援イオン化−飛行時間型質量分析)により、この化合物のMである382.4を確認した。
H−NMR(DMSO):δ(ppm)=9.53(s,1H),9.15(s,1H),8.99(dd,1H,J=9.21Hz,J=1.60),8.85(d,1H,J=8.41Hz),8.72(dd,1H,J=5.21Hz,J=1.20),8.62(dd,1H,J=7.61Hz,J=1.20),8.34−8.31(m,1H),8.30(d,1H,J=7.21Hz),7.93−7.93(m,3H),7.64(dd,1H,J=7.61Hz,J=6.21)
(3)例示化合物304の合成
上記反応式[2]で得られた中間体化合物2を出発原料に、下式[3]に示す合成法で、例示化合物304の合成を行なった。
【0141】
【化36】

【0142】
窒素雰囲気下、前記中間体化合物2 328mg(0.85mmol)と2−(7,12−ジフェニルベンゾ[k]フルオランテン−3−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン500mg(0.94mmol)、テトラキストリフェニルフォスフィンパラジウム21mg(0.019mmol)をトルエン40mL、エタノール20mL、10%炭酸ナトリウム水溶液20mLの混合溶媒に懸濁させた。この溶液を過熱還流下3時間攪拌した後、室温まで冷却し反応を停止した。有機層を分離した後、水で有機層を2回洗浄した後、メタノールを添加し、結晶を析出させ結晶をろ取した。ろ取して得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロベンゼン)で精製した後、溶媒を留去し得られた結晶にメタノールを加え分散洗浄した。さらに、分散洗浄して得られた結晶に対して、クロロベンゼンで再結晶を2回繰り返すことにより、例示化合物304を225mg得た。
【0143】
MALDI−TOF MS(マトリックス支援イオン化−飛行時間型質量分析)により、この化合物のMである706.0を確認した。
H−NMR(CDCl):δ(ppm)=9.71(s,1H),9.12(d,1H,J=8.70Hz),8.71(s,1H),8.69(d,1H,J=5.04Hz),8.53(d,1H,J=8.24Hz),8.23(dd,1H,J=8.00Hz,J=1.20),8.07(d,1H,J=6.87Hz),7.82−7.60(m,15H),7.52(d,1H,J=7.33Hz),7.47−7.43(m,2H),7.37−7.32(m,3H),7.18(t,1H,J=7.79Hz),6.79(d,1H,J=7.33Hz),6.64(d,1H,J=6.87)
例示化合物304のトルエン溶液(1.0×10−5mol/L)のPLスペクトルを測定した結果、発光ピーク458nm、半値幅61nmの青色発光スペクトルを示した(図7)。
【0144】
また、実施例1において、2−(7,12−ジフェニルベンゾ[k]−フルオランテン−3−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロランの代わりに以下の化合物を用いる以外は実施例1と同様にして、下記例示化合物を合成できる。
(例示化合物101):ビフェニル−4イル−ボロン酸
(例示化合物201):ナフタレン−2イル−ボロン酸
(例示化合物203):ナフタレン−1イル−ボロン酸
(例示化合物207):2−(9,9−ジメチル−9H−フルオレン−2−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン
(例示化合物228):4,4,5,5−テトラメチル2−イル−(9,9,9’,9’−テトラメチル−9H−9H’−2,2’−ビフルオレン−7−イル)−1,3,2−ジオキサボロラン
(例示化合物301):2−(フルオランテン−3−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン
(例示化合物310):4,4,5,5−テトラメチル−2−(ピレン−1−イル)−1,3,2−ジオキサボロラン
(例示化合物312):2−(ベンゾ[C]フェナンスレン−4−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン
(例示化合物314):2−(インデノ[1,2,3−hi]クリセン−6−イル)−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン
図4に示す構造の有機発光素子を以下に示す方法で作製した。
基板1としてのガラス基板上に、陽極2としての酸化錫インジウム(ITO)をスパッタ法にて120nmの膜厚で成膜したものを透明導電性支持基板として用いた。これをアセトン、イソプロピルアルコール(IPA)で順次超音波洗浄し、次いで純水で洗浄後乾燥した。さらに、UV/オゾン洗浄したものを透明導電性支持基板として使用した。
【0145】
正孔注入材料として下記構造式で示される化合物A1を用いて、濃度が0.1wt%のクロロホルム溶液を調製した。
【0146】
【化37】

【0147】
化合物A1
この溶液を上記のITO電極上に滴下し、最初に500RPMの回転で10秒、次に1000RPMの回転で40秒スピンコートを行い、膜を形成した。この後10分間、80℃の真空オーブンで乾燥し、薄膜中の溶剤を完全に除去し、ホール注入層7を製膜した。
次に、ホール注入層7の上にホール輸送層として下記化合物A2を真空蒸着法にて15nmの膜厚にホール輸送層5を形成した。
【0148】
【化38】

【0149】
化合物A2
その上に、例示化合物304と、以下に構造式を示す化合物A3を重量比5:95で共蒸着して30nmの発光層3を設けた。蒸着時の真空度は1.0×10−4Pa、成膜速度は0.1nm/sec以上0.2nm/sec以下の条件で製膜した。
【0150】
【化39】

【0151】
更に電子輸送層6として2、9−ビス[2−(9,9‘−ジメチルフルオレニル)]−1、10−フェナントロリンを真空蒸着法にて30nmの膜厚に形成した。蒸着時の真空度は1.0×10−4Pa、成膜速度は0.1〜0.2nm/secの条件であった。
【0152】
次に、フッ化リチウム(LiF)を先ほどの有機層の上に、真空蒸着法により厚さ0.5nm形成し、更に真空蒸着法により厚さ100nmのアルミニウム膜を設け電子注入電極(陰極4)とする有機発光素子を作成した。蒸着時の真空度は1.0×10−4Pa、成膜速度は、フッ化リチウムは0.01nm/sec、アルミニウムは0.5〜1.0nm/secの条件で成膜した。
【0153】
得られた有機EL素子は、水分の吸着によって素子劣化が起こらないように、乾燥空気雰囲気中で保護用ガラス板をかぶせ、アクリル樹脂系接着材で封止した。
【0154】
この様にして得られた素子に、ITO電極(陽極2)を正極、Al電極(陰極4)を負極にして、4.2Vの印加電圧で、発光効率8.6cd/Aの青色発光が観測された。また、CIE色度はx=0.14,y=0.24の青色の発光が観測された。
【0155】
さらに、この素子に窒素雰囲気下、電流密度を100mA/cmに保ち100時間電圧を印加したところ、初期輝度8200cd/mから100時間後7350cd/mと輝度劣化は小さかった。
【図面の簡単な説明】
【0156】
【図1】本発明の有機発光素子における第一の実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の有機発光素子における第二の実施形態を示す断面図である。
【図3】本発明の有機発光素子における第三の実施形態を示す断面図である。
【図4】本発明の有機発光素子における第四の実施形態を示す断面図である。
【図5】本発明の有機発光素子における第五の実施形態を示す断面図である。
【図6】中間体化合物1のトルエン溶液(1.0×10−5mol/L)のPLスペクトルを示す図である。
【図7】例示化合物304のトルエン溶液(1.0×10−5mol/L)のPLスペクトルを示す図である。
【符号の説明】
【0157】
1 基板
2 陽極
3 発光層
4 陰極
5 ホール輸送層
6 電子輸送層
7 ホール注入層
8 ホール/エキシトンブロッキング層
10,20,30,40,50 有機発光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式[1]で示されることを特徴とするアザインデノクリセン誘導体。
【化1】

(一般式[1]において、X乃至Xは環を構成する置換基Rを有する炭素原子または窒素原子を示す。Rは水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換の複素環基、置換あるいは無置換の縮合多環芳香族基、置換あるいは無置換の縮合多環複素環基から選ばれる基を表わす。ただし、X乃至Xの少なくとも一つは窒素原子を表す。また、置換基Rを有する炭素原子が複数存在する場合、Rは互いに独立して同じであっても異なっていてもよい。
乃至R10は水素原子、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアルケニル基、置換あるいは無置換のアルキニル基、置換あるいは無置換のアリール基,置換あるいは無置換の複素環基、置換あるいは無置換の縮合多環芳香族基、置換あるいは無置換の縮合多環複素環基から選ばれる基を表わし、R乃至R10はそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。)
【請求項2】
がハロゲン原子、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換の縮合多環芳香族基、置換あるいは無置換の縮合多環複素環基で表わされる請求項1に記載のアザインデノクリセン誘導体。
【請求項3】
及びXが窒素原子であることを特徴とする請求項1乃至2のいずれか一項に記載のアザインデノクリセン誘導体。
【請求項4】
下記一般式[2]で示される構造を特徴とするアザインデノクリセン誘導体。
【化2】

(一般式[2]において、X乃至Xは環を構成する置換基Rを有する炭素原子または窒素原子を示す。Rは水素原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアリール基、置換あるいは無置換の複素環基、置換あるいは無置換の縮合多環芳香族基、置換あるいは無置換の縮合多環複素環基から選ばれる基を表わす。ただし、X乃至Xの少なくとも一つは窒素原子を表す。また、置換基Rを有する炭素原子が複数存在する場合、Rは互いに独立して同じであっても異なっていてもよい。
乃至RおよびR乃至R10は水素原子、ハロゲン原子、置換あるいは無置換のアルキル基、置換あるいは無置換のアルケニル基、置換あるいは無置換のアルキニル基、置換あるいは無置換のアリール基,置換あるいは無置換の複素環基、置換あるいは無置換の縮合多環芳香族基、置換あるいは無置換の縮合多環複素環基から選ばれる基を表わし、R乃至RおよびR乃至R10は同じであっても異なっていてもよい。
Yは単結合または、置換あるいは無置換のアルカン、置換あるいは無置換のアルケン、置換あるいは無置換のアルキン、置換あるいは無置換の芳香族化合物、置換あるいは無置換の複素環化合物、置換あるいは無置換の縮合多環芳香族化合物、置換あるいは無置換の縮合多環複素環化合物のいずれかから誘導されるn価の連結基を表す。
nは2以上4以下の整数を表す。)
【請求項5】
及びXが窒素原子であることを特徴とする請求項4に記載のアザインデノクリセン誘導体。
【請求項6】
陽極と陰極と、前記陽極と前記陰極の間に配置されている有機化合物層を有する有機発光素子において、前記有機化合物層は、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の化合物を少なくとも1種含むことを特徴とする有機発光素子。
【請求項7】
前記有機化合物層は少なくともホストとゲストから構成される発光層であり、前記一般式[1]および[2]のいずれか一方が前記ホストあるいは前記ゲストのいずれかであることを特徴とする請求項6に記載の有機発光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−111635(P2010−111635A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−286726(P2008−286726)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】