説明

新規アゾ色素化合物

【課題】還元条件に対して安定で、生体内での影響を改善し、高い染色性および着色性を示すアゾ色素化合物およびアゾ色素を提供する。
【解決手段】下記一般式(III)で表される化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木綿、毛、もしくは合成繊維などの織物繊維、革、紙、プラスチック、または毛皮などの染色用、食品用、染毛剤用、インク用、インクジェットプリント用、レーザープリント用、コピー用、感熱転写方式画像形成用、光記録材料用、有機EL用発光材料用、レーザー用、有機半導体用、太陽電池用、蛍光プローブ用、非線形光学材料用、固体撮像管他各種フィルター用、及びカラー液晶などのディスプレイ用に使用される色素として有用なアゾ色素化合物およびアゾ色素に関する。
【背景技術】
【0002】
アゾ色素は、その高い染色性、熱や光及び洗濯に対する堅牢性、及び低い製造コストなど優れた性質を数多く有している為、古くから、木綿、毛、もしくは合成繊維などの織物繊維、革、紙、プラスチック、または毛皮などの染色用、食品用として広く使用されてきた。今日ではこれらの伝統的な用途に加え、ペイント顔料用、インク用、インクジェットプリント用、レーザープリント用、コピー用、感熱転写方式画像形成用、光記録材料用、有機EL用発光材料用、レーザー用、有機半導体用、太陽電池用、蛍光プローブ用、非線形光学材料用、固体撮像管他各種フィルター用、及びカラー液晶などのディスプレイ用、染毛剤用などに応用されており、最も幅広い範囲で使用される色素骨格である。非特許文献1にその具体的な応用例が広く記載されている。
しかし、アゾ色素は、生体内で還元的に代謝されると芳香族アミン化合物を生成することが知られており、近年、その安全性に対する懸念が指摘されている(例えば、非特許文献2参照)。そのため、生体内での影響の点も考慮し、より還元されにくいアゾ色素の開発が求められている。
また最近、環内にアゾ基を有する新規ヘテロ環化合物1,10−ヘテロジ置換ベンゾ[c]シノリン誘導体の合成が報告されているが、環形成反応のメカニズムおよび構造化学的な議論を中心とするものであった(例えば、非特許文献3参照)。
【非特許文献1】K. Hunger編、Indastrial Dyes、Chemistry, Properties, Applications、Wiley-VCH発行、2003年発行
【非特許文献2】R.K.Lynn他著、Toxicol. Appl. Pharmacol.、56巻、248頁、1980年発行
【非特許文献3】V. Benin他著、J. Org. Chem.、65巻、6388頁、2000年発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、還元条件下で安定で、生体内での影響を改善し、高い染色性および着色性を示すアゾ色素化合物およびアゾ色素を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
以下の手段により上記の課題を解決することができる。
(1) 下記一般式(I)で表される化合物。
【0005】
【化1】

[式中、Zは芳香環を形成するのに必要な原子群を表し、Zは芳香族へテロ環を形成するのに必要な原子群を表す。VおよびVは置換基を表わし、少なくとも一方の一つの基はヒドロキシ基、1〜3級アミノ基、アシルアミノ基、またはスルホンアミド基を表す。rは1〜4を表わす。sは1〜4を表わす。ZおよびZによって形成される芳香環はさらにVおよびV以外の置換基を有していてもよい。Mは対イオンを表し、mは電荷を中和するのに必要な数を表す。XおよびXは炭素原子もしくはヘテロ原子を表し、少なくとも一方はヘテロ原子である。]
(2) 前記一般式(I)で表される化合物が下記一般式(II)で表されることを特徴とする(1)記載の化合物。
【0006】
【化2】

[式中、Zは芳香族へテロ環を形成するのに必要な原子群を表す。VおよびVは置換基を表わし、少なくとも一方の一つの基はヒドロキシ基、1〜3級アミノ基、アシルアミノ基、またはスルホンアミド基である。rは1〜4を表わす。sは1〜4を表わす。前記一般式(II)で表わされる化合物はさらにVおよびV以外の置換基を有していてもよい。Mは対イオンを表し、mは電荷を中和するのに必要な数を表す。XおよびXは炭素原子もしくはヘテロ原子を表し、少なくとも一方はヘテロ原子である。]
(3) 前記一般式(I)または(II)で表される化合物が下記一般式(III)で表されることを特徴とする(1)または(2)記載の化合物。
【0007】
【化3】

[式中、VおよびVは置換基を表わし、少なくとも一方の一つの基はヒドロキシ基、1〜3級アミノ基、アシルアミノ基、またはスルホンアミド基を表す。rは1〜4を表わす。前記一般式(III)で表わされる化合物はさらにVおよびV以外の置換基を有していてもよい。Mは対イオンを表し、mは電荷を中和するのに必要な数を表す。]
(4)(1)〜(3)のいずれか1項に記載の化合物からなるアゾ色素。
【発明の効果】
【0008】
本発明のアゾ色素化合物は、還元条件に対しても安定であるため生体内での影響を改善し、高い染色性および着色性を示し、さらには低い製造コストを実現するものである。さらに、この化合物は色素としての効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明において、特定の部分を「基」と称した場合には、当該部分はそれ自体が置換されていなくても、一種以上の(可能な最多数までの)置換基で置換されていてもよいことを意味する。例えば、「アルキル基」とは置換または無置換のアルキル基を意味する。
したがって、本発明の化合物に置換する置換基は、特に断りのない限り、どのような置換基でもよく、下記のWで表わされる置換基でもよい。
【0010】
Wで示される置換基としては、特に制限は無いが、例えば、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、複素環基(ヘテロ環基と言ってもよい)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基を含む)、アンモニオ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルもしくはアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルもしくはアリールスルフィニル基、アルキルもしくはアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールもしくはヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基(-B(OH)2)、ホスファト基(-OPO(OH)2)、スルファト基(-OSO3H)、その他の通常の置換基、が例として挙げられる。
【0011】
さらに詳しくは、Wの例としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基[直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基を表す。それらは、アルキル基(好ましくは炭素原子数1〜30のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2−エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素原子数3〜30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素原子数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素原子数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、さらに環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。
【0012】
以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)はこのような概念のアルキル基を表すが、さらにアルケニル基、アルキニル基も含むこととする。]、アルケニル基[直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。それらは、アルケニル基(好ましくは炭素原子数2〜30の置換または無置換のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素原子数3〜30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素原子数3〜30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素原子数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)を包含するものである。]、アルキニル基(好ましくは、炭素原子数2〜30の置換または無置換のアルキニル基、例えば、エチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニル基)、アリール基(好ましくは炭素原子数6〜30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル)、
【0013】
複素環基(好ましくは5または6員の置換もしくは無置換の、芳香族もしくは非芳香族の複素環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、ベンゼン環等と縮合していてもよく、さらに好ましくは、炭素原子数3〜30の5もしくは6員の芳香族の複素環基である。例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル、なお、1−メチル−2−ピリジニオ、1−メチル−2−キノリニオのようなカチオン性の複素環基でもよい。)、シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは、炭素原子数1〜30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシ)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素原子数6〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ)、シリルオキシ基(好ましくは、炭素原子数3〜20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)、
【0014】
ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素原子数2〜30の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素原子数2〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素原子数7〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ)、カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素原子数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシ)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素原子数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシ)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素原子数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ)、
【0015】
アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素原子数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素原子数6〜30の置換もしくは無置換のアリールアミノ基、例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N-メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ)、アンモニオ基(好ましくはアンモニオ基、炭素原子数1〜30の置換もしくは無置換のアルキル、アリール、ヘテロ環が置換したアンモニオ基、例えば、トリメチルアンモニオ、トリエチルアンモニオ、ジフェニルメチルアンモニオ)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素原子数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素原子数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素原子数1〜30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ、例えば、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素原子数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ)、
【0016】
アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素原子数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ、p-クロロフェノキシカルボニルアミノ、m-n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ)、スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素原子数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ)、アルキルもしくはアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素原子数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ、炭素原子数6〜30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ基、例えば、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノ)、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素原子数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオ)、アリールチオ基(好ましくは炭素原子数6〜30の置換もしくは無置換のアリールチオ基、例えば、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオ)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素原子数2〜30の置換または無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ)、
【0017】
スルファモイル基(好ましくは炭素原子数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N−フェニルカルバモイル)スルファモイル)、スルホ基、アルキルもしくはアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素原子数1〜30の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、炭素原子数6〜30の置換または無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニル)、アルキルもしくはアリールスルホニル基(好ましくは、炭素原子数1〜30の置換または無置換のアルキルスルホニル基、炭素原子数6〜30の置換または無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル)、アシル基(好ましくはホルミル基、炭素原子数2〜30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素原子数7〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、炭素原子数4〜30の置換もしくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基、例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル、2−ピリジルカルボニル、2−フリルカルボニル)、
【0018】
アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素原子数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素原子数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル)、カルバモイル基(好ましくは、炭素原子数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイル基、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)、アリールもしくはヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素原子数6〜30の置換もしくは無置換のアリールアゾ基、炭素原子数3〜30の置換もしくは無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ)、イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素原子数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノ)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素原子数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニル)、
【0019】
ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素原子数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素原子数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノ)、ホスフォ基、シリル基(好ましくは、炭素原子数3〜30の置換もしくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル)、ヒドラジノ基(好ましくは炭素原子数0〜30の置換もしくは無置換のヒドラジノ基、例えば、トリメチルヒドラジノ)、ウレイド基(好ましくは炭素原子数0〜30の置換もしくは無置換のウレイド基、例えばN,N−ジメチルウレイド)、が挙げられる。
【0020】
また、2つのWが共同して環(芳香族、または非芳香族の炭化水素環、または複素環。これらは、さらに組み合わされて多環縮合環を形成することができる。例えばベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、トリフェニレン環、ナフタセン環、ビフェニル環、ピロール環、フラン環、チオフェン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、インドリジン環、インドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、イソベンゾフラン環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、キノキサリン環、キノキサゾリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナントロリン環、チアントレン環、クロメン環、キサンテン環、フェノキサチイン環、フェノチアジン環、フェナジン環、が挙げられる。)を形成することもできる。
【0021】
上記の置換基Wの中で、水素原子を有するものは、これを取り去りさらに上記の基で置換されていてもよい。そのような置換基の例としては、−CONHSO2−基(スルホニルカルバモイル基、カルボニルスルファモイル基)、−CONHCO−基(カルボニルカルバモイル基)、−SO2NHSO2−基(スルフォニルスルファモイル基)、が挙げられる。より具体的には、アルキルカルボニルアミノスルホニル基(例えば、アセチルアミノスルホニル)、アリールカルボニルアミノスルホニル基(例えば、ベンゾイルアミノスルホニル基)、アルキルスルホニルアミノカルボニル基(例えば、メチルスルホニルアミノカルボニル)、アリールスルホニルアミノカルボニル基(例えば、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル)が挙げられる。
【0022】
本発明の一般式(I)で表される化合物について説明する。
【化4】

【0023】
およびXはそれぞれ独立に炭素原子またはヘテロ原子を表し、 XまたはXの少なくとも一方はヘテロ原子を表す。好ましくはXがヘテロ原子である。ヘテロ原子として好ましくは窒素原子、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、テルル原子、リン原子、ケイ素原子、及びホウ素原子であり、より好ましくは窒素原子、硫黄原子、酸素原子、及びセレン原子であり、特に好ましくは窒素原子である。
【0024】
は芳香環を形成するのに必要な原子群を表し、Zは芳香族へテロ環を形成するのに必要な原子群を表す。本発明において、芳香環とは、特に断りのない限り、芳香族炭素環または芳香族ヘテロ環を意味する。
によって形成される芳香族炭素環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン、フェナントレン、及び以下に説明する芳香族ヘテロ環が縮環したベンゼン環などが挙げられる。
によって形成される芳香族ヘテロ環としては5、6、7、または8員の芳香族ヘテロ環などが挙げられる。Zによって形成される芳香族ヘテロ環として好ましくは、5または6員の含窒素ヘテロ環である。5または6員の含窒素ヘテロ環とは、いかなる5または6員の含窒素ヘテロ環でもよく、また、さらにベンゼン環や他のヘテロ環が縮環して多環複素環構造をとっていてもよい。
【0025】
によって形成される芳香族ヘテロ環としては5、6、7、または8員の芳香族ヘテロ環などが挙げられる。Z及びZによって形成される芳香族ヘテロ環として好ましくは、5または6員の含窒素ヘテロ環である。5または6員の含窒素ヘテロ環とは、如何なる5または6員の含窒素ヘテロ環でもよく、また、さらにベンゼン環や他のヘテロ環が縮環して多環複素環構造をとっていてもよい。
【0026】
およびZによって形成される芳香族ヘテロ環に含まれるヘテロ原子として好ましくは、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、セレン原子、テルル原子、リン原子、ケイ素原子、及びホウ素原子であり、より好ましくは、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、及びセレン原子であり、さらに好ましくは、窒素原子、硫黄原子、及び酸素原子であり、特に好ましくは窒素原子、及び硫黄原子である。
【0027】
これらの芳香族複素環として好ましいものは具体的には、フラン環、ピロール環、チオフェン環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、チアジアゾール環、オキサジアゾール環、ピラン環、ジオキサン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、チアジアジン環、オキサジアジン環、オキサトリアゾール環、チアトリアゾール環、インドリジン環、及び、これらにベンゾ縮環したベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾトリアゾール環、ベンゾチアジアゾール環、ベンゾオキサジアゾール環、ピラノン環、ピリリウム環、トリアジン環、テトラジン環、インドール環、キノリジン環、キノリン環、フタラジン環、キノキサリン環、イソキノリン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、フェナントロリン環、アクリジン環、及び、プリン、プテリジン等が挙げられる。
【0028】
これらの複素環には、いかなる置換基が置換していても縮環していてもよく、置換基としては前述のWが挙げられる。また、複素環に含まれる3級窒素原子が置換されて4級窒素となってもよい。なお、複素環の別の互変異性構造を書くことができるどのような場合も、化学的に等価であり、本発明に包含される。
【0029】
は置換基を表わし、Zにより形成される芳香環に置換していることが好ましい。rは置換基Vの数を表わし、好ましくは1〜4の数であり、より好ましくは1〜3の数であり、1〜2が特に好ましい。Vは置換基を表わし、Zにより形成される芳香環に置換していることが好ましい。sは置換基Vの数を表わし、好ましくは1〜4の数であり、より好ましくは1〜3の数であり、1〜2が特に好ましい。
およびVは、少なくとも一方の一つの基が置換していることが好ましい。
およびVのうち少なくとも一方の一つの基は次に示すW1で表される置換基であることが好ましく、W1以外の置換基は、前述のWで述べた置換基が例としてあげられる。
およびVで表わされる置換基の組み合わせとして、VおよびVで表わされる置換基が次に示す置換基W1またはW2から選択されることが好ましく、置換基Vが置換基W1であるとき置換基Vが置換基W2であることが好ましく、置換基Vが置換基W2であるとき置換基Vが置換基W1であることが好ましい。
【0030】
W1はヒドロキシ基、1〜3級アミノ基、アシルアミノ基、又はスルホンアミド基を表す。具体的には、プロトンが解離若しくは非解離のヒドロキシ基、アミノ(NH2)基、炭素原子数1〜60のアルキルもしくはアリールアミノ基(例えば、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、ブチルアミノ、オクチルアミノ、ドデシルアミノ、ベンジルアミノ、フェニルアミノ、ナフチルアミノ)、炭素原子数2〜60のジアルキル若しくはジアリールアミノ基(例えば、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジブチルアミノ、ジオクチルアミノ、ジドデシルアミノ、ジベンジルアミノ、N−ブチル−N−エチルアミノ、N−メチル−N−エチルアミノ、N−メチル−N−ベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、ジナフチルアミノ、N−(4−トリル)−N−フェニルアミノ)、炭素原子数6〜60のN−アルキル−N-アリールアミノ基(例えば、N−メチル−N−フェニルアミノ)、炭素原子数2〜10のアシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ、n−ブタンアミド、オクタノイルアミノ、ベンゾイルアミノ、ニコチンアミド)、炭素原子数1〜60のスルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド、4−ブタンスルホンアミド、8−オクタンスルホンアミド、p−トルエンスルホンアミド、ペンタフルオロベンゼンスルホンアミド、クロロベンゼンスルホンアミド)が挙げられる。尚、これらは更に置換基W等の置換基を有していてもよい。
【0031】
W1として好ましくは、プロトンが解離もしくは非解離のヒドロキシ基、アミノ(NH2)基、炭素原子数1〜20のアルキルもしくはアリールアミノ基(例えば、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、ブチルアミノ、オクチルアミノ、ドデシルアミノ、ベンジルアミノ、フェニルアミノ、ナフチルアミノ)、炭素原子数2〜20のジアルキルもしくはジアリールアミノ基(例えば、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジブチルアミノ、ジオクチルアミノ、ジドデシルアミノ、ジベンジルアミノ、N−ブチル−N−エチルアミノ、N−メチル−N−エチルアミノ、N−メチル−N−ベンジルアミノ、ジフェニルアミノ、ジナフチルアミノ、N−(4−トリル)−N−フェニルアミノ)、炭素原子数6〜20のN−アルキル−N-アリールアミノ基(例えば、N−メチル−N−フェニルアミノ)、炭素原子数2〜10のアシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ、n−ブタンアミド、オクタノイルアミノ、ベンゾイルアミノ、ニコチンアミド)、炭素原子数1〜20のスルホンアミド基(例えば、メタンスルホンアミド、4−ブタンスルホンアミド、8−オクタンスルホンアミド、p−トルエンスルホンアミド、ペンタフルオロベンゼンスルホンアミド、クロロベンゼンスルホンアミド)が挙げられる。
【0032】
W1としてより好ましくはプロトンが解離もしくは非解離のヒドロキシ基、アミノ(NH2)基、炭素原子数1〜18の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素原子数2〜18の置換もしくは無置換のジアルキルもしくはジアリールアミノ基、炭素原子数1〜18の置換もしくは無置換のアシルアミノ基、炭素原子数1〜18の置換もしくは無置換のスルホンアミド基が挙げられ、さらに好ましくは、プロトンが解離もしくは非解離のヒドロキシ基、アミノ(NH2)基、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、ブチルアミノ、オクチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジ(2-ヒドロキシエチル)アミノ、ジオクチルアミノ、ジドデシルアミノ、ジベンジルアミノ、N−ブチル−N−エチルアミノ、N−メチル−N−エチルアミノ、N−メチル−N−ベンジルアミノ、アセチルアミノ、n−ブタンアミド、ニコチンアミド、メタンスルホンアミド、4−ブタンスルホンアミド、8−オクタンスルホンアミド、p−トルエンスルホンアミド、ペンタフルオロベンゼンスルホンアミド、クロロベンゼンスルホンアミドが挙げられる。
【0033】
W1として特に好ましくはプロトンが解離もしくは非解離のヒドロキシ基、ジメチルアミノ基、メタンスルホンアミド、4−ブタンスルホンアミド、p−トルエンスルホンアミド、ペンタフルオロベンゼンスルホンアミド基が挙げられる。
【0034】
W2はニトロ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルもしくはアリールスルホニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、カルボキシル基、ヘテロ環オキシ基、アンモニオ基、アルキル及びアリールスルフィニル基、スルホ基、アルキルもしくはアリールスルホニル基、アシル基、アリールもしくはヘテロ環アゾ基を表す。具体的には、ニトロ基、シアノ基、アルケニル基(炭素原子数2〜10が好ましく、例えば、ビニル、アリル、オレイル)、アリール基(炭素原子数6〜20が好ましく、例えば、フェニル、p−トリル、ナフチル)、アシル基(炭素原子数1〜20が好ましく、例えば、アセチル、ベンゾイル、ブタノイル、4−クロロベンゾイル)、スルホニル基(炭素原子数1〜20が好ましく、例えば、メタンスルホニル、ブタンスルホニル、トルエンスルホニル)、アルキルもしくはアリールスルフィニル基(炭素原子数1〜20が好ましく、例えば、メチルスルホキシド、フェニルスルホキシド、4−クロロフェニルスルホキシド、4−ニトロフェニルスルホキシド)、カルバモイル基(炭素原子数1〜10が好ましく、例えば、N,N−ジメチルカルバモイル)、スルファモイル基(炭素原子数0〜10が好ましく、例えば、N,N−ジメチルスルファモイル)、スルホ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(炭素原子数2〜20が好ましく、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(炭素原子数6〜20が好ましく、例えば、フェニルオキシカルボニル、p−トリルオキシカルボニル、ナフチルオキシカルボニル、p−クロロフェニルオキシカルボニル)、複素環基(炭素原子数0〜20が好ましく、好ましくは、環構成のヘテロ原子として窒素原子、酸素原子、イオウ原子から選択されるものであって、ヘテロ原子以外に炭素原子をも環構成原子として含むものがさらに好ましく、好ましくは環員数3〜8、より好ましくは5〜6であり、例えば、前述のWで示した基)、尚、上記はさらに置換基W等の置換基を有していてもよい。
【0035】
W2として好ましくは、ニトロ基、シアノ基、アリール基(炭素原子数6〜20が好ましく、例えば、フェニル、p−トリル、ナフチル)、アシル基(炭素原子数1〜20が好ましく、例えば、アセチル、ベンゾイル、ブタノイル、4−クロロベンゾイル)、スルホニル基(炭素原子数1〜20が好ましく、例えば、メタンスルホニル、ブタンスルホニル、トルエンスルホニル)、アルキルもしくはアリールスルフィニル基(炭素原子数1〜20が好ましく、例えば、メチルスルホキシド、フェニルスルホキシド、4−クロロフェニルスルホキシド、4−ニトロフェニルスルホキシド)、カルバモイル基(炭素原子数1〜10が好ましく、例えば、N,N−ジメチルカルバモイル)、スルファモイル基(炭素原子数0〜10が好ましく、例えば、N,N−ジメチルスルファモイル)、アルコキシカルボニル基(炭素原子数2〜20が好ましく、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(炭素原子数6〜20が好ましく、例えば、フェニルオキシカルボニル、p−トリルオキシカルボニル、ナフチルオキシカルボニル、p−クロロフェニルオキシカルボニル)である。
【0036】
W2としてより好ましくはニトロ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基(炭素原子数2〜20が好ましく、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(炭素原子数6〜20が好ましく、例えば、フェニルオキシカルボニル、p−トリルオキシカルボニル、ナフチルオキシカルボニル、p−クロロフェニルオキシカルボニル)、アルキルもしくはアリールスルホニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、アシル基を表す。
【0037】
W2として特に好ましくはシアノ基、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、フェニルオキシカルボニル、p−トリルオキシカルボニル、ナフチルオキシカルボニル、p−クロロフェニルオキシカルボニル、メチルスルホニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、アシル基である。
【0038】
およびZによって形成される芳香族へテロ環上には、VまたはVで表される置換基以外にも他の置換基を有していてもよい。これらの置換基としては前述のWで表される置換基などが挙げられる。
【0039】
は化合物分子の電荷を中和するために必要な陽イオンまたは陰イオンを表す。陰イオンは無機陰イオンあるいは有機陰イオンのいずれであってもよく、ハロゲン陰イオン(例えばフッ素イオン、塩素イオン、ヨウ素イオン)、置換アリ−ルスルホン酸イオン(例えばp−トルエンスルホン酸イオン、p−クロルベンゼンスルホン酸イオン)、アリ−ルジスルホン酸イオン(例えば1,3−ベンゼンジスルホン酸イオン、1,5−ナフタレンジスルホン酸イオン、2,6−ナフタレンジスルホン酸イオン)、アルキル硫酸イオン(例えばメチル硫酸イオン)、硫酸イオン、チオシアン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ピクリン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオンが挙げられる。さらに、イオン性ポリマーを用いてもよい。また、CO2-、SO3-は、対イオンとして水素イオンを持つときはCO2H、SO3Hと表記することも可能である。典型的な陽イオンとしては水素イオン(H)、アルカリ金属イオン(例えばナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン)、アルカリ土類金属イオン(例えばカルシウムイオン)などの無機陽イオン、アンモニウムイオン(例えば、アンモニウムイオン、テトラアルキルアンモニウムイオン、トリエチルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、エチルピリジニウムイオン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセニウムイオン)などの有機イオンが挙げられる。
【0040】
は電荷を中和するために必要な陽イオン又は陰イオンの数を表す。mは、中和を必要としないときは0でよく、0〜10の数が好ましく、0〜5の数がより好ましい。
【0041】
次に、本発明の一般式(II)で表される化合物について説明する。
【化5】

式中のZで表わされる原子群、VおよびVで表される置換基、rおよびsの数、Mで表わされる対イオン、mで表わされる数、ならびにXおよびXで表わされる原子は、一般式(I)で説明したものと同様であることが好ましい。
式中、Zは芳香族へテロ環を形成するのに必要な原子群であることが好ましい。VおよびVは置換基を表わし、少なくとも一方の一つの基はヒドロキシ基、1〜3級アミノ基、アシルアミノ基、またはスルホンアミド基であることが好ましい。rは置換基Vの数を表わし1〜4が好ましく、1〜3がより好ましく、1〜2が特に好ましい。sは置換基Vの数を表わし1〜4が好ましく、1〜3がより好ましく、1〜2が特に好ましい。前記一般式(II)で表わされる化合物はさらにVおよびV以外の置換基を有していてもよい。Mは対イオンを表し、mは電荷を中和するのに必要な数であり0〜10の数が好ましく、0〜5の数がより好ましい。XおよびXは炭素原子もしくはヘテロ原子であり、少なくとも一方はヘテロ原子である。
【0042】
次に、本発明の一般式(III)で表される化合物について説明する。
【化6】

式中のVおよびVで表される置換基、rの数、Mで表わされる対イオン、mで表わされる数は、一般式(I)で説明したものと同様であることが好ましい。
式中、VおよびVは置換基を表わし、少なくとも一方の一つの基はヒドロキシ基、1〜3級アミノ基、アシルアミノ基、またはスルホンアミド基であることが好ましい。rは置換基Vの数を表わし1〜4が好ましく、1〜3がより好ましい、1〜2が特に好ましい。前記一般式(III)で表わされる化合物はさらにVおよびV以外の置換基を有していてもよい。Mは対イオンを表し、mは電荷を中和するのに必要な数であり0〜10の数が好ましく、0〜5の数がより好ましい。
なお、一般式(I)、(II)、または(III)で表わされる化合物は、アゾ色素として好ましく用いることができ、それぞれ一般式(I)、(II)、または(III)で表わされるアゾ色素とすることができる。
【0043】
一般式(I)、(II)、および(III)中の分子内アゾ結合は、アミノ基を有するビ(ヘテロ)アリール化合物を分子内アゾカップリングする方法(例えば、V. Benin他著、J. Org. Chem.の65巻、6388頁(2000年発行)の記載に準じて形成する方法)、ビ(ヘテロ)アリール化合物上のアミノ基と含窒素化合物を反応させて形成する方法(例えば、酸の存在下で亜硝酸塩と反応させて形成する方法)などにより形成することができる。前記アミノ基を有するビ(ヘテロ)アリール化合物の合成方法は、置換基VおよびVを有する目的の化合物の構造に応じて定めることができる。
前記置換基VおよびVはどの反応過程で導入してもよいが、前記分子内アゾカップリングを行う前に導入することが好ましい。反応過程の初期または途中で導入する場合は置換基を適宜に保護、脱保護して目的の構造を有する化合物を得ることができる。
【0044】
次に、本発明の化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、化学式中のEtはエチル基を表わす。
【0045】
【化7】

【0046】
【化8】

【0047】
本発明の化合物が分子内に不斉炭素原子を複数有する場合、同一構造に対して複数の立体異性体が存在するが、本発明では全ての立体異性体を含むものであり、複数の立体異性体のうち1つであっても、数種を混合物として用いてもよい。
【0048】
本発明の化合物は、木綿、毛、もしくは合成繊維などの織物繊維、革、紙、プラスチック、または毛皮などの染色用、食品用、染毛剤用、インク用、インクジェットプリント用、レーザープリント用、コピー用、感熱転写方式画像形成用、光記録材料用、有機EL用発光材料用、レーザー用、有機半導体用、太陽電池用、蛍光プローブ用、非線形光学材料用、固体撮像管他各種フィルター用、及びカラー液晶などのディスプレイ用として好適に用いることができる。
【実施例】
【0049】
以下に本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
例示化合物8を以下のスキーム1のとおり合成した。
【0050】
【化9】


(A)化合物8−aの合成
m-ニトロフェニルヒドラジン硫酸塩75gにエタノール240mlを加え攪拌下、トリエチルアミン55mlを添加した。この液を加熱還流し、これにエトキシメチレンマロノニトリル76gのエタノール50ml溶液を滴下した。滴下終了後、3時間加熱還流攪拌した。その後、反応液を全量で150mlぐらいになるまで減圧濃縮した。濃縮された反応液を水冷し、得られた結晶を濾取、乾燥することで化合物8−aを63.6g(収率75%)得た。
【0051】
(B)化合物8−bの合成
鉄粉104g、塩化アンモニウム11.4g、水85gを混合し、外温100℃で10分攪拌した。これに2-プロパノ−ル850mlを加え、加熱還流攪拌しながら、化合物8−a、81.8gをゆっくりと30分かけて分割添加した。添加終了後さらに加熱還流を1時間した。反応液をセライトで熱時濾過した後、濾液を減圧濃縮し、これに水を加え、室温で3時間放置した。析出した結晶を濾取し、メタノールでかけ洗いした結晶を乾燥することで化合物8−b、を60g(収率84%)得た。
【0052】
(C)化合物8−cの合成
化合物8−b、30gをジメチルアセトアミド150mlに室温で溶解させ、これにα-ピコリン18.5ml添加した後、外温0℃に冷却した。内温10℃以下に保ちながら、メタンスルホニルクロリド13.2gをゆっくり滴下した。添加終了後、室温で3時間攪拌した。反応液を、攪拌した氷水1Lと酢酸5mlの混合液にゆっくり注ぎ、そのまま1時間攪拌した。結晶を濾取、乾燥することで、化合物8−cを36.7g(収率87%)得た。
(D)化合物8の合成
【0053】
化合物8−c、14gをリン酸60mlに加温溶解させた後、塩-氷水バスで内温0℃になるまで冷却攪拌する。内温0℃で攪拌下、亜硝酸ナトリウム4.2gを固体のまま、ゆっくり加えた。この温度でさらに0.5時間攪拌した後、反応液を水500mlに注ぎ、析出した結晶を濾取した。結晶をメタノール70mlに加え、トリエチルアミン3mlを加え攪拌することで溶解させ、ゴミとり濾過後、濾液に攪拌下酢酸7mlを加えたところ結晶が析出した。結晶を濾取し、メタノールでかけ洗いし、結晶を乾燥することにより、化合物8を9.1g(収率63%)得た。融点は283〜285℃であった。
化合物8のDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)中の吸収λmax(吸収極大波長)は461.6nmであり、ε max(モル最大吸光係数)は3.26×104cm-1M-1であった。さらに、NMRスペクトルは下記のとおりであった。
1H NMR (300MHz, DMSO-d)δ(ppm):3.33(3H, s) 7.68〜7.72(1H, dd, J=8Hz,1.0Hz) 8.16〜8.17(1H, d, J=1.0Hz) 8.67〜8.74(1H, d, J=8Hz) 9.01(1H, s) 11.40(1H, broad)
【0054】
(実施例2)
例示化合物11を以下のスキーム2のとおり合成した。
【0055】
【化10】

(A)化合物11−aの合成
化合物8−b、4.0gをピリジン30mlに溶解させ、外温0℃に冷却しながら、パラトルエンスルホニルクロリド(スキーム2中ではパラトルエンスルホニル基を「Ts」と表示)4.2gをゆっくり分割添加した。添加終了後、室温で3時間攪拌した。反応液に1M塩酸水と酢酸エチルを加え酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウム乾燥、濃縮したのち、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することで、化合物11−aを5.29g(収率75%)得た。
(B)化合物11の合成
化合物11−a、5.29gをリン酸80mlに加温溶解させた後、塩-氷水バスで内温0℃になるまで冷却攪拌する。内温0℃で攪拌下、亜硝酸ナトリウム1.14gを固体のまま、ゆっくり加えた。この温度でさらに0.5時間攪拌した後、反応液を水500mlに注ぎ、析出した結晶を濾取した。結晶をメタノール70mlに加え、トリエチルアミン3mlを加え攪拌することで溶解させ、ゴミとり濾過後、濾液に攪拌下酢酸7mlを加えたところ結晶が析出した。結晶を濾取し、メタノールでかけ洗いし、結晶を乾燥することにより、化合物11を3.09g(収率57%)得た。融点は266〜269℃であった。
化合物11のDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)にDBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン)を3滴添加した溶液中の吸収λmax(吸収極大波長)は462.8nmであり、ε max(モル最大吸光係数)は3.30×104cm-1M-1であった。この色素は、図1の吸収スペクトルのとおり(横軸は吸収波長を示し、縦軸は吸光度を示す)、色相が良好であった。さらに、NMRスペクトルは下記のとおりであった。
1H NMR (300MHz, DMSO-d)δ(ppm):2.33(3H, s) 6.67(2H, s) 7.41〜7.44(2H, d, J=8Hz) 7.64〜7.67(1H, m) 7.85〜7.88(2H, d, J=8Hz) 8.07(1H, s) 8.64〜8.67(1H, d, J=8Hz) 8.98(1H, s)
【0056】
(実施例3)
例示化合物12を以下のスキーム3のとおり合成した。
【0057】
【化11】

(A)化合物12−aの合成
化合物8−b、8.0gをピリジン60mlに溶解させ、外温0℃に冷却しながら、パラクロロベンゼンスルホニルクロリド9.3gをゆっくり分割添加した。添加終了後、室温で3時間攪拌した。反応液に1M塩酸水と酢酸エチルを加え酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウム乾燥、濃縮したのち、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することで、化合物12−aを11.62g(収率78%)得た。なお、NMRスペクトルは下記のとおりであった。
1H NMR (400MHz, DMSO-d)δ(ppm):6.67(2H, s) 7.11〜7.14(1H, d, J=8Hz) 7.17〜7.20(1H, d, J=8Hz) 7.25(1H, s) 7.36〜7.41(1H, t, J=8Hz) 7.64〜7.67(2H, d, J=8Hz) 7.76〜7.80(3H, m) 10.67(1H, s)
【0058】
(B)化合物12の合成
化合物12−a、11.3gをリン酸150mlに加温溶解させた後、塩-氷水バスで内温0℃になるまで冷却攪拌する。内温0℃で攪拌下、亜硝酸ナトリウム2.3gを固体のまま、ゆっくり加えた。この温度でさらに0.5時間攪拌した後、反応液を水800mlに注ぎ、析出した結晶を濾取した。結晶をメタノール200mlに加え、トリエチルアミン15mlを加え攪拌することで溶解させ、ゴミとり濾過後、濾液に攪拌下酢酸25mlを加えたところ結晶が析出した。結晶を濾取し、メタノールでかけ洗いし、結晶を乾燥することにより、化合物12を10.55g(収率90%)得た。融点は232〜236℃であった。
化合物12のDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)にDBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン)を3滴添加した溶液中の吸収λmax(吸収極大波長)は458.3nmであり、ε max(モル最大吸光係数)は3.20×104cm-1M-1であった。この色素は、図2の吸収スペクトルのとおり(横軸は吸収波長を示し、縦軸は吸光度を示す)、色相が良好であった。さらに、NMRスペクトルは下記のとおりであった。
1H NMR (300MHz, DMSO-d)δ(ppm): 7.65〜7.71(3H, m) 7.96〜7.99(2H, d, J=8Hz) 8.09(1H, s) 8.66〜8.69(2H, d, J=8Hz) 8.99(1H, s)
【0059】
(実施例4)
例示化合物13を以下のスキーム4のとおり合成した。
【0060】
【化12】

(A)化合物13−aの合成
化合物8−b、7.0gをピリジン40mlに溶解させ、外温0℃に冷却しながら、1-ブタンスルホニルクロリド5.5mlをゆっくり分割添加した。添加終了後、室温で3時間攪拌した。反応液に1M塩酸水と酢酸エチルを加え酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウム乾燥、濃縮したのち、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することで、化合物13−aを9.0g(収率100%)得た。
【0061】
(B)化合物13の合成
化合物13−a、8.5gをリン酸100mlに加温溶解させた後、塩-氷水バスで内温0℃になるまで冷却攪拌する。内温0℃で攪拌下、亜硝酸ナトリウム2.5gを固体のまま、ゆっくり加えた。この温度でさらに1時間攪拌した後、反応液を水500mlに注ぎ、析出した結晶を濾取した。結晶をメタノール100mlに加え、トリエチルアミン5mlを加え攪拌することで溶解させ、ゴミとり濾過後、濾液に攪拌下酢酸8mlを加えたところ結晶が析出した。結晶を濾取し、メタノールでかけ洗いし、結晶を乾燥することにより、化合物13を5.13g(収率60%)得た。融点は249〜251℃であった。
化合物13のDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)にDBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン)を3滴添加した溶液中の吸収λmax(吸収極大波長)は465.0nmであり、ε max(モル最大吸光係数)は3.20×104cm-1M-1であった。この色素は、図3の吸収スペクトルのとおり(横軸は吸収波長を示し、縦軸は吸光度を示す)、色相が良好であった。さらに、NMRスペクトルは下記のとおりであった。
1H NMR (300MHz, DMSO-d)δ(ppm): 0.81〜0.85(3H, t, J=7Hz) 1.31〜1.42(2H, m) 1.68〜1.76(2H, m) 3.44〜3.40(2H, t, J=7Hz) 7.69〜7.72(1H, d, J=8Hz) 8.17(1H, s) 8.71〜8.73(1H, d, J=8Hz) 9.02(1H, s) 11.37(1H, broad)
【0062】
(実施例5)
例示化合物14を以下のスキーム5のとおり合成した。
【0063】
【化13】

【0064】
(A)化合物14−aの合成
化合物8−b、8.0gをピリジン40mlに溶解させ、外温0℃に冷却しながら、1-オクタンスルホニルクロリド9.4gをゆっくり分割添加した。添加終了後、室温で3時間攪拌した。反応液に1M塩酸水と酢酸エチルを加え酢酸エチルで抽出し、有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウム乾燥、濃縮したのち、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することで、化合物14−aを10.66g(収率71%)得た。なお、NMRスペクトルは下記のとおりであった。
1H NMR (400MHz, DMSO-d)δ(ppm): 0.81〜0.87(3H, t, J=7Hz) 1.15〜1.27(8H, m) 1.27〜1.36(2H, m) 1.62〜1.70(2H, m) 3.10〜3.16(2H, t, J=7Hz) 6.70(2H, broad) 7.17〜7.24(2H, m) 7.33(1H, s) 7.43〜7.48(1H, t, J=8Hz) 7.78(1H, s) 10.03(1H, s)
(B)化合物14の合成
化合物14−a、10.2gをリン酸150mlに加温溶解させた後、塩-氷水バスで内温0℃になるまで冷却攪拌する。内温0℃で攪拌下、亜硝酸ナトリウム2.06gを固体のまま、ゆっくり加えた。この温度でさらに1時間攪拌した後、反応液を水600mlに注ぎ、析出した結晶を濾取した。結晶をメタノール300mlに加え、トリエチルアミン12mlを加え攪拌することで溶解させ、ゴミとり濾過後、濾液に攪拌下酢酸20mlを加えたところ結晶が析出した。結晶を濾取し、メタノールでかけ洗いし、結晶を乾燥することにより、化合物14を9.04g(収率86%)得た。融点は197〜201℃であった。
化合物14のDMF(N,N−ジメチルホルムアミド)にDBU(1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン)を3滴添加した溶液中の吸収λmax(吸収極大波長)は465.5nmであり、ε max(モル最大吸光係数)は2.75×104cm-1M-1であった。この色素は、図4の吸収スペクトルのとおり(横軸は吸収波長を示し、縦軸は吸光度を示す)、色相が良好であった。
【0065】
(試験例)
以下の方法で還元試験を行った。
本発明の例示化合物1、8、11、12、13、及び14、並びに下記比較化合物A、B、及びCをそれぞれメタノール−水中、ハイドロサルファイトナトリウム5当量と混合し、室温で48時間攪拌した。
【0066】
【化14】

【0067】
【化15】

【0068】
【化16】

反応液をLC/MSで分析したところ、比較化合物Aの場合、比較化合物Aは95%以上消失し、スキーム6に示す還元生成物1A、および還元生成物2Aが生成していた。同様に、比較化合物Bの場合、比較化合物Bは95%以上消失し、スキーム6に示す還元生成物3Bおよび還元生成物4Bが生成していた。一方、例示化合物1、8、11、12、13、及び14の場合、全く同じ条件で処理しても各例示化合物は100%残存していた。また、比較化合物Cも同じ条件で100%残存していたが、この化合物は可視域に吸収を示さなかった。
【0069】
【化17】

さらに、化学物質の変異原性評価の際に代謝酵素として通常使用されるS-9MIXに48時間以上曝した場合にも、比較化合物AおよびBが還元されたのに対し、本発明の例示化合物1、8、11、12、13、及び14は還元されないことが確認できた。
上記の試験結果より本発明の化合物が還元条件下において安定性が極めて高いことが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】例示化合物11の吸収スペクトルである。
【図2】例示化合物12の吸収スペクトルである。
【図3】例示化合物13の吸収スペクトルである。
【図4】例示化合物14の吸収スペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される化合物。
【化1】


[式中、Zは芳香環を形成するのに必要な原子群を表し、Zは芳香族へテロ環を形成するのに必要な原子群を表す。VおよびVは置換基を表わし、少なくとも一方の一つの基はヒドロキシ基、1〜3級アミノ基、アシルアミノ基、またはスルホンアミド基を表す。rは1〜4を表わす。sは1〜4を表わす。ZおよびZによって形成される芳香環はさらにVおよびV以外の置換基を有していてもよい。Mは対イオンを表し、mは電荷を中和するのに必要な数を表す。XおよびXは炭素原子もしくはヘテロ原子を表し、少なくとも一方はヘテロ原子である。]
【請求項2】
前記一般式(I)で表される化合物が下記一般式(II)で表されることを特徴とする請求項1記載の化合物。
【化2】

[式中、Zは芳香族へテロ環を形成するのに必要な原子群を表す。VおよびVは置換基を表わし、少なくとも一方の一つの基はヒドロキシ基、1〜3級アミノ基、アシルアミノ基、またはスルホンアミド基である。rは1〜4を表わす。sは1〜4を表わす。前記一般式(II)で表わされる化合物はさらにVおよびV以外の置換基を有していてもよい。Mは対イオンを表し、mは電荷を中和するのに必要な数を表す。XおよびXは炭素原子もしくはヘテロ原子を表し、少なくとも一方はヘテロ原子である。]
【請求項3】
前記一般式(I)または(II)で表される化合物が下記一般式(III)で表されることを特徴とする請求項1または2記載の化合物。
【化3】

[式中、VおよびVは置換基を表わし、少なくとも一方の一つの基はヒドロキシ基、1〜3級アミノ基、アシルアミノ基、またはスルホンアミド基を表す。rは1〜4を表わす。前記一般式(III)で表わされる化合物はさらにVおよびV以外の置換基を有していてもよい。Mは対イオンを表し、mは電荷を中和するのに必要な数を表す。]
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物からなるアゾ色素。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−169239(P2006−169239A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−335001(P2005−335001)
【出願日】平成17年11月18日(2005.11.18)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】