説明

新規アリール化合物

【課題】高度に制御された、機能性材料又は高分子担持触媒などの原料として有用な、互いに異なる2つの特性基を有する新規アリール化合物の提供。
【解決手段】下記式(1)で示され、XとXで示される特性基が互いに異なることを特徴とする新規アリール化合物。


〔式中、X及びXは、それぞれ独立に、ハロゲン−B(OQ、等からなる群から一つずつ選ばれる互いに異なる特性基を表す。(ここにQは炭化水素基であり、2つのQは同一でも異なっていてもよく、また互いに結合して環を形成していてもよい。)Yは、窒素原子等を表し、Jはアリーレン基を表し、nは0以上の整数を表す。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は互いに異なる2つの特性基を有する新規アリール化合物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アリール化合物は、その電子的特性、立体的特性から、有機EL材料、導電性高分子材料などの機能性材料、触媒反応配位子などの原料として有用であることが知られている(特許文献1〜3参照)。
【0003】
近年、高分子発光材料等の開発において、アリール化合物に特性基を導入して反応させることにより、アリール化合物を高分子化合物に組み込むことが行われている(非特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2004−292782公開特許公報
【特許文献2】特開2003−147347公開特許公報
【特許文献3】特開2003−155476公開特許公報
【非特許文献1】Organic Electronics 2003、4、49-59
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のアリール化合物は、導入された特性基が一つであるために、高分子化合物の末端構造又は側鎖構造となってしまうという問題があった。あるいは、アリール化合物に導入された特性基が2つ以上あり、高分子化合物の主鎖構造として導入することはできても、それらの特性基が同一であるために、反応性に有意差が得られないといった理由から、高分子化合物中での向き、位置、導入される数、シーケンス長などの高度な構造を、必ずしも十分に制御することが難しいという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、高度に構造制御された、有機EL材料、導電性高分子材料などの機能性材料、又は高分子担持触媒などの原料として有用な、互いに異なる2つの特性基を有する新規アリール化合物を提供することにある。
【0007】
本化合物は、互いに異なる2つの特性基の各種化学反応における反応性の違いを利用することにより、その構造を高度に制御した高分子化合物、又は低分子化合物に容易に誘導することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、互いに異なる2つの特性基を有する新規アリール化合物を見出し、本発明を完成した。
【0009】
即ち本発明は、下記式(1)で示され、XとXで示される特性基が互いに異なる新規アリール化合物を提供するものである。
【0010】

【0011】
〔式中、X及びXは、それぞれ独立に、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、−OSO、−B(OQ、−Si(OQ、−Sn(Q、Z(Z)m、金属アセチリド基、末端アセチレン基からなる群から一つずつ選ばれる互いに異なる特性基を表す。(ここにQは置換基を有してもよい炭化水素基であり、Qは水素原子、又は置換基を有してもよい炭化水素基であり、2つのQは同一でも異なっていてもよく、また互いに結合して環を形成していてもよい。Qは置換基を有してもよい炭化水素基であり、3つのQは同一であっても異なっていてもよい。Qは置換基を有してもよい炭化水素基であり、3つのQは同一であっても異なっていてもよい。Zは金属原子又は金属イオンであり、Zはカウンターアニオンであり、mは0以上の整数を表す。)Ar、及びArはそれぞれ独立にアリーレン基を表し、Arはアリール基を表す。Ar、Ar、及びArは互いに置換基を介して、又は直接結合してもよい。Yは、窒素原子、炭素原子、ホウ素原子、ケイ素原子に必要に応じて水素原子又は炭化水素基が付加した3価の原子団を表し、Jはアリーレン基を表し、nは0以上の整数を表す。J、Y、及びArがそれぞれ複数存在する場合、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。〕
【発明の効果】
【0012】
本発明の、互いに異なる2つの特性基を有する新規アリール化合物は、高度に構造制御された有機EL材料、導電性高分子材料などの機能性材料、触媒反応配位子などの原料として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の互いに異なる2つの特性基を有する新規アリール化合物は上記式(1)で示される構造を有する。
【0014】
前記式中X及びXで示される特性基における、Q、Q、Q、及びQで表される基における炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ノニル基、ドデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基、ドコシル基等の炭素数1〜50程度のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロノニル基、シクロドデシル基、ノルボニル基、アダマンチル基等の炭素数3〜50程度の環状飽和炭化水素基;エテニル基、プロペニル基、3−ブテニル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、2−ヘキセニル基、2−ノネニル基、2−ドデセニル基等の炭素数2〜50程度のアルケニル基;フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−プロピルフェニル基、4−イソプロピルフェニル基、4−ブチルフェニル基、4−t−ブチルフェニル基、4−ヘキシルフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−アダマンチルフェニル基、4−フェニルフェニル基等の炭素数6〜50程度のアリール基;フェニルメチル基、1−フェニレンエチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニル−1−プロピル基、1−フェニル−2−プロピル基、2−フェニル−2−プロピル基、1−フェニル−3−プロピル基、1−フェニル−4−ブチル基、1−フェニル−5−ペンチル基、1−フェニル−6−ヘキシル基等の炭素数7〜50程度のアラルキル基が挙げられる。該炭化水素基としては、炭素数1〜20の炭化水素基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜12の炭化水素基であり、さらに好ましくは炭素数1〜8の炭化水素基である。
【0015】
−OSOにおけるQは置換基を有してもよい炭化水素基であり、炭化水素基としては、前記の炭化水素基が挙げられ、置換基としては、例えばフッ素原子及びニトロ基が挙げられる。
−OSOで示される基としては、アルキルスルホネート基、アリールスルホネート基、アリールアルキルスルホネート基などが例示され、アルキルスルホネート基としては、メタンスルホネート基、エタンスルホネート基、トリフルオロメタンスルホネート基などが例示され、アリールスルホネート基としては、ベンゼンスルホネート基、p−トルエンスルホネート基、p−ニトロベンゼンスルホネート基、o−ニトロベンゼンスルホネート基などが例示され、アリールアルキルスルホネート基としてはベンジルスルホネート基などが例示される。好ましくはトリフルオロメタンスルホネート基、ベンゼンスルホネート基、p−トルエンスルホネート基、及びp−ニトロベンゼンスルホネート基が挙げられ、さらに好ましくは、トリフルオロメタンスルホネート基が挙げられる。
【0016】
−B(OQにおけるQは水素原子、又は置換基を有してもよい炭化水素基であり、2つのQは同一でも異なっていてもよく、また互いに結合して環を形成していてもよい。炭化水素基としては、前記の炭化水素基が挙げられ、アルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、及びノニル基がより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、及びヘキシル基がさらに好ましい。環を形成する場合には、2つのQからなる二官能性の炭化水素基として、1,2−エチレン基、1,1,2,2−テトラメチル−1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基、2,2−ジメチルー1,3−プロピレン基、及び1,2−フェニレン基が好ましい。置換基としては、例えばアミノ基が挙げられる。
−B(OQで示される基としては、下記式で示される基が例示される。

【0017】
−Si(OQにおけるQは置換基を有してもよい炭化水素基であり、3つのQは同一であっても異なっていてもよい。炭化水素基としては、前記の炭化水素基が挙げられ、アルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、及びノニル基がより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、及びヘキシル基がさらに好ましい。置換基としては、例えばアミノ基、及びアルコキシ基が挙げられる。
−Si(OQで示される基としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリ(n−ブチルオキシ)シリル基、及びトリ(メトキシメチルオキシ)シリル基が挙げられる。
【0018】
−Sn(QにおけるQは置換基を有してもよい炭化水素基であり、3つのQは同一であっても異なっていてもよい。炭化水素基としては、前記の炭化水素基が挙げられ、アルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、及びノニル基がより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、及びヘキシル基がさらに好ましい。置換基としては、例えばアミノ基、及びアルコキシ基が挙げられる。
−Sn(Qで示される基としては、例えば、トリ(n−ブチル)スズ基、及びトリフェニルスズ基が挙げられる。
【0019】
(Z)mにおけるZは金属原子又は金属イオン、Zはカウンターアニオン、mは0以上の整数である。Zとしては、具体例としてLi,Na,K,Rb,Cs,Be,Mg,Ca,Sr,Ba,Al,Ga,In,Tl,Pb,Sc,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Y,Zr,Nb,Mo,Tc,Ru,Rh,Ag,Cd,La,Ce,Sm,Eu,Hf,Ta,W,Re,Os,Ir,Pt,Au,Hg等の原子又はイオンを挙げることができる。好ましくはLi,Na,K,Rb,Cs,Be,Mg,Ca,Sr,Ba,Al,Ga,In,Tl,Pb,Sc,Ti,Cu,Zn,Y,Zr,Ag,及びHgであり、より好ましくはLi,Na,K,Rb,Cs,Be,Mg,Ca,In,Tl,Pb,Cu,Zn,Zr,Ag,及びHgであり、さらに好ましくはLi,Na,K,Mg,Ca,Cu,及びZnである。
【0020】
としては、通常、ブレンステッド酸の共役塩基が使用され、具体例としては、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、炭酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボーレートイオン、ヘキサフルオロホスフェイトイオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、プロピオン酸イオン、安息香酸イオン、水酸化物イオン、酸化物イオン、メトキシドイオン、エトキシドイオン等が挙げられる。好ましくは塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、炭酸イオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、プロピオン酸イオン、及び安息香酸イオンであり、より好ましくは塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、プロピオン酸イオン、及び安息香酸イオンであり、さらに好ましくは塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、酢酸イオン、及びトリフルオロ酢酸イオンである。
【0021】
mとしては、上記一般式(1)で表される芳香族化合物として電気的に中性となるように決定される。なおX1、又はX2がZ(Z)mの場合、つまり上記一般式(I)で表される芳香族化合物が下記一般式(1−1)、又は(1−2)で表される場合において、


(Z)m部分を+1価として、下記一般式(1−1b)、又は(1−2b)


で示される部分を−1価としてみなし、Z(Z)m部分と残りの部分とはイオン結合しているとみなした方が好ましい。
(Z)mで示される原子団としては、ハロゲン化亜鉛基、アルカリ金属原子、ハロゲン化アルカリ土類金属基などが例示される。ハロゲン化亜鉛基としては、塩化亜鉛基、臭化亜鉛基、ヨウ化亜鉛基などが例示され、好ましくは塩化亜鉛基、及び臭化亜鉛基が挙げられる。アルカリ金属原子としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどが例示され、好ましくは、リチウム、及びナトリウムが挙げられる。ハロゲン化アルカリ土類金属基としては、塩化マグネシウム基、臭化マグネシウム基、ヨウ化マグネシウム基、塩化カルシウム基、臭化カルシウム基、ヨウ化カルシウム基などが例示される。好ましくは、塩化マグネシウム基、臭化マグネシウム基、及びヨウ化マグネシウム基が挙げられる。
【0022】
金属アセチリド基としては、銅アセチリド基、亜鉛アセチリド基、塩化マグネシウムアセチリド基、臭化マグネシウムアセチリド基、ヨウ化マグネシウムアセチリド基、トリ−n−ブチルスズアセチリド基などが例示される。
【0023】
前記式中Xで示される特性基としては、中でも、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、−OSO、−B(OQ、−Si(OQ、−Sn(Q、及びZ(Z)mが好ましく、より好ましくは、ハロゲン原子、及び−OSOが挙げられ、さらに好ましくは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、トリフルオロメタンスルホネート基、ベンゼンスルホネート基、p−トルエンスルホネート基、及びp−ニトロベンゼンスルホネート基が挙げられ、さらにより好ましくは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、トリフルオロメタンスルホネート基が挙げられ、さらにより好ましくは、塩素原子、臭素原子、及びトリフルオロメタンスルホネート基が挙げられる。
【0024】
前記式中Xで示される特性基としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、−OSO、−B(OQ、−Si(OQ、−Sn(Q、Z(Z)m、金属アセチリド基、及び末端アセチレン基が好ましく、より好ましくは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、−OSO、−B(OQ、トリメトキシシリル基、トリ(n−ブチルオキシ)シリル基、トリ(n−ブチル)スズ基、トリフェニルスズ基、及びZ(Z)mが挙げられ、さらに好ましくは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、トリフルオロメタンスルホネート基、ベンゼンスルホネート基、p−トルエンスルホネート基、p−ニトロベンゼンスルホネート基、−B(OQ、トリメトキシシリル基、トリ(n−ブチルオキシ)シリル基、トリ(n−ブチル)スズ基、トリフェニルスズ基、及びZ(Z)mが挙げられ、さらにより好ましくは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、トリフルオロメタンスルホネート基、ベンゼンスルホネート基、p−トルエンスルホネート基、p−ニトロベンゼンスルホネート基、−B(OQ、トリメトキシシリル基、トリ(n−ブチルオキシ)シリル基、トリ(n−ブチル)スズ基、トリフェニルスズ基、ハロゲン化亜鉛基、アルカリ金属原子、及びハロゲン化アルカリ土類金属基が挙げられ、中でもさらにより好ましくは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、トリフルオロメタンスルホネート基、ベンゼンスルホネート基、p−トルエンスルホネート基、p−ニトロベンゼンスルホネート基、−B(OQ、トリメトキシシリル基、トリ(n−ブチルオキシ)シリル基、トリ(n−ブチル)スズ基、トリフェニルスズ基、ハロゲン化亜鉛基、及びハロゲン化アルカリ土類金属基が挙げられる。
【0025】
前記X及びXで示される特性基の組み合わせとしては、好ましくは、塩素原子と臭素原子、塩素原子とヨウ素原子、塩素原子と−OSO、塩素原子と−B(OQ、塩素原子と−Si(OQ、塩素原子と−Sn(Q、塩素原子とZ(Z)m、塩素原子と金属アセチリド基、塩素原子と末端アセチレン基、臭素原子とヨウ素原子、臭素原子と−OSO、臭素原子と−B(OQ、臭素原子と−Si(OQ、臭素原子と−Sn(Q、臭素原子とZ(Z)m、臭素原子と金属アセチリド基、臭素原子と末端アセチレン基、ヨウ素原子と−OSO、ヨウ素原子と−B(OQ、ヨウ素原子と−Si(OQ、ヨウ素原子と−Sn(Q、ヨウ素原子とZ(Z)m、ヨウ素原子と金属アセチリド基、ヨウ素原子と末端アセチレン基、−OSOと−B(OQ、−OSOと−Si(OQ、−OSOと−Sn(Q、−OSOとZ(Z)m、−OSOと金属アセチリド基、及び−OSOと末端アセチレン基の組み合わせが挙げられ、より好ましくは、塩素原子と臭素原子、塩素原子とヨウ素原子、塩素原子と−OSO、塩素原子と−B(OQ、塩素原子と−Si(OQ、塩素原子と−Sn(Q、塩素原子とZ(Z)m、臭素原子とヨウ素原子、臭素原子と−OSO、臭素原子と−B(OQ、臭素原子と−Si(OQ、臭素原子と−Sn(Q、臭素原子とZ(Z)m、ヨウ素原子と−OSO、ヨウ素原子と−B(OQ、ヨウ素原子と−Si(OQ、ヨウ素原子と−Sn(Q、ヨウ素原子とZ(Z)m、−OSOと−B(OQ、−OSOと−Si(OQ、−OSOと−Sn(Q、及び−OSOとZ(Z)mの組み合わせが挙げられ、さらにより好ましくは、塩素原子と臭素原子、塩素原子とヨウ素原子、塩素原子と−OSO、塩素原子と−B(OQ、塩素原子とZ(Z)m、臭素原子とヨウ素原子、臭素原子と−OSO、臭素原子と−B(OQ、臭素原子とZ(Z)m、ヨウ素原子と−OSO、ヨウ素原子と−B(OQ、ヨウ素原子とZ(Z)m、−OSOと−B(OQ、及び−OSOとZ(Z)mの組み合わせが挙げられ、さらにより一層好ましくは、塩素原子と臭素原子、塩素原子とヨウ素原子、塩素原子と−OSO、塩素原子と−B(OQ、臭素原子とヨウ素原子、臭素原子と−OSO、臭素原子と−B(OQ、ヨウ素原子と−OSO、ヨウ素原子と−B(OQ、及び−OSOと−B(OQの組み合わせが挙げられ、特に好ましくは、塩素原子と−B(OQ、塩素原子と臭素原子、臭素原子とヨウ素原子、臭素原子と−OSO、臭素原子と−B(OQ、ヨウ素原子と−B(OQ、及び−OSOと−B(OQの組み合わせが挙げられる。
【0026】
前記X及びXで示される特性基の組み合わせとしては、XとX、XとX、又はXとXとが互いに反応して結合を生成するものが好ましく、XとXとが互いに反応して結合を生成するものがより好ましい。
【0027】
また、XとXとが互いに反応して結合を生成するものの中では、XとX、XとXとが互いに反応して結合を生成しないものがより好ましい。
【0028】
Ar、Ar、及びJで示されるアリーレン基とは、芳香族炭化水素から、水素原子2個を除いた原子団であり、縮合環を持つもの、独立したベンゼン環又は縮合環2個以上が直接結合したものも含まれる。アリーレン基は置換基を有していてもよい。
置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、フッ素原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基が挙げられ、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、置換アミノ基、フッ素原子、ニトロ基、シアノ基が挙げられ、より好ましくは、アルキル基、アリール基、アリールアルキル基が挙げられる。
アリーレン基における置換基は、置換基同士が互いに結合して環を形成していてもよい。
アリーレン基における置換基を除いた部分の炭素数は通常6〜60程度であり、好ましくは6〜20である。また、アリーレン基の置換基を含めた全炭素数は、通常6〜100程度である。
アリーレン基としては、フェニレン基(例えば、下式1〜3)、ナフタレンジイル基(下式4〜13)、アントラセン−ジイル基(下式14〜19)、ビフェニル−ジイル基(下式20〜25)、フルオレン−ジイル基(下式36〜38)、ターフェニル−ジイル基(下式26〜28)、縮合環化合物基(下式29〜35)などが例示される。
【0029】

【0030】

【0031】

【0032】

【0033】


(式中、Rは水素原子、又は、前記アリーレン基が有してもよい置換基を表す。複数存在するRは同一でも互いに異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。)
【0034】
Ar、及びArで示されるアリーレン基としては、フェニレン基(式1〜3)、ナフタレン−ジイル基(式4〜13)、ビフェニレン基(式20〜25)、ターフェニレン基(式26〜28)、及びフルオレン−ジイル基(式36〜38)が好ましく、フェニレン基(式1〜3)、ナフタレン−ジイル基(式4〜13)、及びビフェニレン基(式20〜25)がより好ましく、フェニレン基(式1〜3)がさらに好ましく、1,4−フェニレン基(式1)が特に好ましい。
【0035】
Jで示されるアリーレン基としては、フェニレン基(式1〜3)、ナフタレン−ジイル基(式4〜13)、ビフェニレン基(式20〜25)、ターフェニレン基(式26〜28)、及びフルオレン−ジイル基(式36〜38)が好ましく、フェニレン基(式1〜3)、ナフタレン−ジイル基(式4〜13)、及びビフェニレン基(式20〜25)がより好ましく、フェニレン基(式1〜3)、及びビフェニレン基(式20〜25)がさらに好ましく、1,4−フェニレン基(式1)、及び1,4−ビフェニレン基(式20)が特に好ましい。
【0036】
Arで示されるアリール基とは、芳香族炭化水素から、水素原子1個を除いた原子団であり、縮合環を持つもの、独立したベンゼン環又は縮合環2個以上が直接又はビニレン等の基を介して結合したものも含まれる。アリール基は置換基を有していてもよい。
置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、フッ素原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、ニトロ基、及びシアノ基が挙げられ、好ましくはアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、置換アミノ基、フッ素原子、ニトロ基、及びシアノ基が挙げられ、より好ましくはアルキル基、アリール基、及びアリールアルキル基が挙げられる。
アリール基としては、前記Ar、Ar、及びJで示されるアリーレン基に、水素原子1個が結合したものが例示される。アリール基における置換基を除いた部分の炭素数は通常6〜60程度であり、好ましくは6〜20である。Arで示されるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、及びフルオレニル基が好ましく、フェニル基、及びナフチル基がさらにより好ましく、フェニル基が特に好ましい。
【0037】
Ar、Ar、及びArは互いに置換基を介して、又は直接結合してもよい。
【0038】
Yで示される、窒素原子、炭素原子、ホウ素原子、又はケイ素原子に必要に応じて水素原子又は炭化水素基が付加した3価の原子団としては、例えば、N、CH、CQ、B、SiH、SiQなどが例示される。(ここに、Qは置換基を有してもよい炭化水素基を表し、Qは置換基を有してもよい炭化水素基を表す。)好ましくは、N、B、CH、及びSiHが挙げられ、より好ましくはN、B、及びCHが挙げられ、さらに好ましくはNが挙げられる。
【0039】
は置換基を有してもよい炭化水素基であり、炭化水素基としては、前記の炭化水素基が挙げられ、置換基としては、アルコキシル基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、フッ素原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、ニトロ基、及びシアノ基が挙げられる。
【0040】
は置換基を有してもよい炭化水素基であり、炭化水素基としては、前記の炭化水素基が挙げられ、置換基としては、アルコキシル基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、フッ素原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、ニトロ基、及びシアノ基が挙げられる。
【0041】
式(1)、(1−1)、(1−2)、(1−1b)、及び(1−2b)におけるnは0以上の整数を表し、その上限は特に限定されず、本発明の化合物がポリマー、オリゴマーとなる場合も含まれる。nで表される整数の上限としては、本発明の化合物を各種反応に用いることを考えた場合、有機溶媒へ溶解することが好ましく、nは10000以下の整数であることが好ましく、1000以下の整数であることがより好ましく、100以下の整数であることがさらにより好ましく、10以下の整数であることが特に好ましい。合成のしやすさの観点から考えた場合、nは0又は1であることが中でも特に好ましい。
【0042】
式(1)で示される化合物としては、以下の式(2)、(3)、及び(4)で示される化合物が好ましく例示される。


(式中、R’は水素原子、又は、炭素数1〜20のアルキル基を表す。複数存在するR’は同一でも互いに異なっていてもよい。)
【0043】
前記式(1)で示される本発明の化合物を各種反応に用いる場合、本発明の化合物は有機溶媒に希釈された状態で各種反応に用いることが好ましい。該有機溶媒としては、本発明の化合物を0.1wt%以上溶解し得るものであれば特に限定されないが、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン等の塩素系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール等のエーテル系溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−へプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン等の脂肪族炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、ベンゾフェノン、アセトフェノン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート、安息香酸メチル、酢酸フェニル等のエステル系溶媒、エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシエタン、プロピレングリコール、ジエトキシメタン、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、グリセリン、1,2−ヘキサンジオール等の多価アルコール及びその誘導体、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール等のアルコール系溶媒、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒、及びN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒が好ましく例示される。なかでも、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アニソール、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、エチレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジメトキシエタン、プロピレングリコール、ジエトキシメタン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、シクロヘキサノール、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、及びN,N−ジメチルホルムアミドがより好ましく、クロロホルム、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、ジメトキシエタン、ジメチルスルホキシド、及びN,N−ジメチルホルムアミドがさらに好ましい。また、これらの有機溶媒は、単独で、又は複数組み合わせて用いることができる。
【0044】
前記式(1)で示される本発明の化合物の純度は、本発明の化合物を原料として用いる各種反応の要求純度によって異なる。本発明の化合物を各種反応に供する際に、反応の結果得られる各種化合物の純度を下げることになる、X、及びXで示される、反応に関与する特性基が同一である下記一般式(2)、及び(3)


(式中、X、X、Ar、Ar、Ar、Y、J、及びnは前記と同一の意味を表す。)で示される化合物の含量が、本発明の化合物に対して40モル%以下であることが好ましく、より好ましくは、20モル%以下であり、さらに好ましくは、10モル%以下であり、さらにより好ましくは、5モル%以下であり、中でもさらにより好ましくは1モル%以下である。本発明の化合物を原料として用いる各種反応の要求純度が上記以上に高い場合は、もちろん、それを満たすものであることが好ましい。
【0045】
前記式(1)で示される本発明の化合物は例えば、公知の方法により、下記式(4)


で示される化合物を合成した後に、以下の(方法A)〜(方法F)により、又はそれらを組み合わせることにより合成することができる。
【0046】
(方法A)臭素、N−ブロモスクシンイミド、N−ヨードスクシンイミド、一塩化ヨウ素等により、必要に応じて酸触媒を用いて、モノハロゲン化した後に、さらに同様の反応で別のハロゲン原子を導入し、特性基の組み合わせが、ハロゲン−ハロゲン体となる化合物を合成する方法
【0047】
(方法B)臭素、N−ブロモスクシンイミド、N−ヨードスクシンイミド、一塩化ヨウ素等により、必要に応じて酸触媒を用いて、ジハロゲン化した後に、n−BuLi、金属Na等により、モノアルカリ金属化し、特性基の組み合わせが、ハロゲン−アルカリ金属体となる化合物を合成する方法
【0048】
(方法C)臭素、N−ブロモスクシンイミド、N−ヨードスクシンイミド、一塩化ヨウ素等により、必要に応じて酸触媒を用いて、ジハロゲン化した後に、Mg、MgBr、ZnCl等によりモノハロゲン化アルカリ土類金属化し、特性基の組み合わせが、ハロゲン−ハロゲン化アルカリ土類金属体となる化合物を合成する方法
【0049】
(方法D)特性基の組み合わせが、ハロゲン−アルカリ金属体、又は、ハロゲン−ハロゲン化アルカリ土類金属体となる化合物に、水、塩酸等を作用させてモノハロゲン体を得て、それを、臭素、N−ブロモスクシンイミド、N−ヨードスクシンイミド、一塩化ヨウ素等により、必要に応じて酸触媒を用いて、別のハロゲン原子を導入し、特性基の組み合わせが、ハロゲン−ハロゲン体となる化合物を合成する方法
【0050】
(方法E)特性基の組み合わせが、ハロゲン−アルカリ金属体、又は、ハロゲン−ハロゲン化アルカリ土類金属体となる化合物に、ホウ酸トリメチル等を作用させた後に加水分解してホウ酸化することにより、特性基の組み合わせが、ハロゲン−ホウ酸体となる化合物を合成する方法
【0051】
(方法F)特性基の組み合わせが、ハロゲン−アルカリ金属体、又は、ハロゲン−ハロゲン化アルカリ土類金属体となる化合物に、2−イソプロポキシ−4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン等を作用させて、ホウ酸エステル化することにより、特性基の組み合わせが、ハロゲン−ホウ酸エステル体となる化合物を合成する方法
【0052】
前記式(1)により示される本発明の化合物は、XとXで示される特性基が互いに異なることを利用して、高度に構造制御された、化合物、重合体等に誘導することが可能である。
【0053】
例えば、前記式(1)おけるX及びXの組み合わせとして、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子から選ばれるハロゲン原子と−B(OQ、ハロゲン原子と−Si(OQ、ハロゲン原子と−Sn(Q、ハロゲン原子とZ(Z)m、ハロゲン原子と金属アセチリド基、ハロゲン原子と末端アセチレン基、−OSOと−B(OQ、−OSOと−Si(OQ、−OSOと−Sn(Q、−OSOとZ(Z)m、−OSOと金属アセチリド基、又は−OSOと末端アセチレン基の組合せとすることで、公知の反応により、XとXが互いに反応して結合した重合物を製造することができる。
【0054】
また、ハロゲン原子とハロゲン原子、ハロゲン原子と−OSO、ハロゲン原子と−B(OQ、ハロゲン原子と−Si(OQ、ハロゲン原子と−Sn(Q、ハロゲン原子とZ(Z)m、ハロゲン原子と金属アセチリド基、ハロゲン原子と末端アセチレン基、−OSOと−OSO、−OSOと−B(OQ、−OSOと−Si(OQ、又は−OSOと−Sn(Q、−OSOとZ(Z)m、−OSOと金属アセチリド基、−OSOと末端アセチレン基の組合せとし、さらにそれらの特性基のうちのどちらかのみとの反応性を有する化合物を反応条件を適宜選択して反応させることにより、X、及びXがそれぞれ、異なる基に変換された化合物を得ることが可能である。
【実施例】
【0055】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
(LC分析法)
測定機器:島津LC−10AVp
測定条件:Kaseisorp LC−ODS 2000−3、φ4.6μm×100mm;
A液:蒸留水、B液:アセトニトリル
グラジエント
B液:60%→(10min)→100%→(10min)→100%
サンプル濃度:1.0mg/mL(THF溶液)
注入量:1μL
検出波長:254nm
カラム温度:40℃
(NMR測定)
NMR測定は、化合物を重水素化クロロホルム、又は重水素化テトラヒドロフラン溶液として、バリアン社製INOVA300核磁気共鳴装置を用い室温で行った。
【0057】
合成例1
<4−t−ブチル−2,6−ジメチルブロモベンゼンの合成>


不活性雰囲気下で、500mlの3つ口フラスコに酢酸225gを入れ、5−t−ブチル−m−キシレン24.3gを加えた。続いて臭素31.2gを加えた後、15〜20℃で3時間反応させた。
反応液を水500mlに加え析出した沈殿をろ過した。水250mlで2回洗浄し、白色の固体34.2gを得た。
H−NMR(300MHz/CDCl):
δ(ppm)=1.3〔s,9H〕、2.4〔s,6H〕、7.1〔s,2H〕
MS(FD)M 241
【0058】
<N,N−ジフェニル−N−(4−t−ブチル−2,6−ジメチルフェニル)−アミンの合成>


不活性雰囲気下で、300mlの3つ口フラスコに脱気した脱水トルエン100mlを入れ、ジフェニルアミン16.9g、及び4−t−ブチル−2,6−ジメチルブロモベンゼン25.3gを加えた。続いてトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム0.92g、及びt−ブトキシナトリウム12.0g、を加えた後、トリ(t−ブチル)ホスフィン1.01gを加えた。その後、100℃で7時間反応させた。
反応液を飽和食塩水にあけ、トルエン100mlで抽出した。トルエン層を希塩酸、飽和食塩水で洗浄後、溶媒を留去して黒色の固体を得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/クロロホルム 9/1)で分離精製し、白色の固体30.1gを得た。
H−NMR(300MHz/CDCl):δ(ppm)=1.3〔s,9H〕、2.0〔s,6H〕、6.8〜7.3〔m,10H〕
【0059】
<N,N−ビス(4−ブロモフェニル)−N−(4−t−ブチル−2,6−ジメチルフェニル)−アミンの合成>


不活性雰囲気下で、1000mlの3つ口フラスコに脱水N,N−ジメチルホルムアミド333ml、及びヘキサン166mlを入れ、上記のN,N−ジフェニル−N−(4−t−ブチル−2,6−ジメチルフェニル)−アミン29.7gを溶解した後、遮光及び氷浴下でN−ブロモスクシンイミド33.6g/N,N−ジメチルホルムアミド溶液100mlを滴下し、一昼夜反応させた。
反応液を200mlまで減圧濃縮し、水1000mlに加え、析出した沈殿をろ過した。さらに得られた結晶をDMF/エタノールで2回再結晶して白色固体23.4gを得た。
H−NMR(300MHz/CDCl):
δ(ppm)=1.3〔s,9H〕、2.0〔s,6H〕、6.8〔d,2H〕、7.1〔s,2H〕、7.3〔d,2H〕、
MS(APCI(+)):M 488
【0060】
(化合物Dの合成)


アルゴン雰囲気下、1Lフラスコに化合物C(20.0g、0.041mol)を仕込み、アルゴンガスでフラスコ内を置換した後、テトラヒドロフラン(脱水溶媒)(80mL)、及びジエチルエーテル(脱水溶媒)(400mL)を仕込み、攪拌溶解した後に、ドライアイス−メタノールバスで−78℃に冷却した中へ、n−BuLiのヘキサン溶液(1.54M、29.3mL、1.1MR)を30分かけて滴下した。−78℃で1時間保温した後、n−BuLiのヘキサン溶液(1.54M、2.6mL、0.1MR)を5分かけて滴下した。さらに、−78℃で50分保温した後に、再度、n−BuLiのヘキサン溶液(1.54M、1.3mL、0.05MR)を5分かけて滴下した。さらに−78℃で1時間保温した後に、30分かけて−30℃まで昇温し、反応マスに蒸留水(200mL)を加え、攪拌後分液した。得られた油層を蒸留水(200mL)で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムにより乾燥し濃縮することにより油状物を得た(20.3g)。得られた油状物をシクロヘキサン/クロロホルム=40/1(v/v)の混合溶媒を展開溶媒とするシリカゲルカラムで精製することにより、化合物D(6.8g、収率40%、LC面百値99.9%)を油状物として得た。
H−NMR(300MHz、CDCl):δ1.32(s,9H),2.00(s,6H),6.81−6.98(m,5H),7.09(s,2H),7.16−7.27(m,4H)
LC/MS(APPI(+)):M 407
【0061】
実施例1
(化合物Eの合成)


アルゴン雰囲気下、500mLフラスコに、化合物D(14.46g、0.0354mol))、及びN−ヨードスクシンイミド(9.56g、0.0425mol、1.2MR)を仕込み、アルゴンガスでフラスコ内を置換した後、N,N−ジメチルホルムアミド(脱水溶媒)(145mL)を仕込み、攪拌溶解した後に、室温で、トリフルオロ酢酸(2.42g、0.0212mol、0.6MR)を仕込んだ。反応マスを50℃に昇温し、5時間保温した後に、得られたスラリー状の反応マスを室温まで冷却した。別途、蒸留水(145mL)と飽和亜硫酸ナトリウム水溶液(29mL)の混合溶液を調製した中へ、反応マスを加えた。トルエン(370g)で抽出し、蒸留水(145mL×2回)で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮することにより、クリーム色の固体(19.9g)を得た。得られた固体を酢酸エチル(60g)に懸濁させ、70℃で加熱溶解した中へ、メタノール(400g)を滴下し、室温まで放冷した後、ろ取、乾燥することにより、化合物E(15.1g、収率80%、LC面百値99.9%)を白色粉末として得た。
H−NMR(300MHz、CDCl):δ1.32(s,9H),1.99(s,6H),6.72(d,2H),6.84(d,2H),7.09(s,2H),7.28(d,2H),7.45(d,2H)
LC/MS(APPI(+)):M 533.0
【0062】
実施例2
(化合物Fの合成)

【0063】
(4−Bromo−phenyl)−(4−tert−butyl−2,6−dimethyl−phenyl)−[4−(4,4,5,5−tetramethyl−[1,3,2]dioxaborolan−2−yl)−phenyl]amineの合成
乾燥した四つ口フラスコにアルゴン雰囲気下、Bis−(4−bromo−phenyl)−(4−tert−butyl−2,6−dimethyl−phenyl)amine 91.89g(188.58mmol)を仕込み、脱水テトラヒドロフラン2750mLを加えて均一にした。反応溶液を−70℃に冷却し、1.54Mのn−ブチルリチウムのn−ヘキサン溶液98mL(150.9mmol)を78分かけて滴下し、そのまま65分間攪拌した。次いで、2−Isopropoxy−4,4,5,5−tetramethyl−[1,3,2]dioxaborolane 35.1g(188.65mmol)を−70℃で60分かけて滴下しそのまま1時間攪拌し、その後15〜20℃に昇温し2時間攪拌した。室温で水1Lを仕込み1時間攪拌した後、減圧濃縮によってテトラヒドロフランを留去した。濃縮した懸濁液にトルエン2Lを加え攪拌した後、油層を水層と分液した。上記3回の分液操作で得られた油層を合一し、無水硫酸ナトリウムを加え攪拌した。無水硫酸ナトリウムを濾別し、得られた濾液を減圧濃縮し白色固体113.54gを得た。この白色固体をトルエン、及びn−ヘキサンを展開液とするシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製し濃縮乾固し、黄白色固体45.5gを得た。この黄白色をテトラヒドロフラン800mLに溶解し、25℃にて蒸留水800mLを3時間かけて滴下し結晶を析出させ1時間攪拌後ろ過するという操作を7回繰り返し、得られた結晶を減圧乾燥し、目的とする(4−Bromo−phenyl)−(4−tert−butyl−2,6−dimethyl−phenyl)−[4−(4,4,5,5−tetramethyl−[1,3,2]dioxaborolan−2−yl)−phenyl]amineを白色固体として得た(収量40.2g、収率37.8%、LC面百値98.0%)。
H−NMR:1.32(s,9H),1.32(s,12H),1.98(s,6H),6.87(d,2H),6.90(d,2H),7.09(s,2H),7.28(d,2H),7.63(d,2H)
LC−MS:535.1(M+H)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示され、XとXで示される特性基が互いに異なることを特徴とする新規アリール化合物。


〔式中、X及びXは、それぞれ独立に、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、−OSO、−B(OQ、−Si(OQ、−Sn(Q、Z(Z)m、金属アセチリド基、末端アセチレン基からなる群から一つずつ選ばれる互いに異なる特性基を表す。(ここにQは炭化水素基であり、Qは水素原子、又は炭化水素基であり、2つのQは同一でも異なっていてもよく、また互いに結合して環を形成していてもよい。Qは炭化水素基であり、3つのQは同一であっても異なっていてもよい。Qは炭化水素基であり、3つのQは同一であっても異なっていてもよい。Zは金属原子又は金属イオンであり、Zはカウンターアニオンであり、mは0以上の整数を表す。)Ar、及びArはそれぞれ独立にアリーレン基を表し、Arはアリール基を表す。Ar、Ar、及びArは互いに置換基を介して、又は直接結合してもよい。Yは、窒素原子、炭素原子、ホウ素原子、又はケイ素原子に必要に応じて水素原子又は炭化水素基が付加した3価の原子団を表し、Jはアリーレン基を表し、nは0以上の整数を表す。J、Y、及びArがそれぞれ複数存在する場合、それらは互いに同一でも異なっていてもよい。〕
【請求項2】
請求項1記載のアリール化合物及び1種類以上の有機溶媒を含むことを特徴とする組成物。
【請求項3】
前記組成物中に含まれる、下記式(2)又は(3)で示される化合物の含量の合計が、前記一般式(1)で示される化合物に対して40モル%以下である、請求項2記載の組成物。


(式中、X、X、Ar、Ar、Ar、Y、J、及びnは前記と同一の意味を表す。)
【請求項4】
Yが窒素原子を表す請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物又は組成物。
【請求項5】
nが0又は1を表す、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物又は組成物。
【請求項6】
Ar、及びArが各々置換基を有してもよいフェニレン基を表し、Jが置換基を有してもよいフェニレン基又は置換基を有してもよいビフェニレン基を表し、Arが置換基を有してもよいフェニル基を表す請求項1〜5のいずれか一項に記載の化合物又は組成物。
【請求項7】
下記式(2)、(3)、又は(4)で示される請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物又は組成物。


(式中、R’は水素原子、又は、炭素数1〜20のアルキル基を表す。複数存在するR’は同一でも互いに異なっていてもよい。)

【公開番号】特開2006−342132(P2006−342132A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−171069(P2005−171069)
【出願日】平成17年6月10日(2005.6.10)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】