説明

新規イミダゾールシラン化合物及びその製造方法並びにそれを用いる金属表面処理剤

【目的】 耐熱性に優れ、金属表面に対する防錆作用が高く、しかも金属と樹脂基板との接着性を著しく向上させることができるイミダゾールシラン化合物、その製造方法、及びそれを用いた金属表面処理剤を提供する。
【構成】 下記一般式(1)、(2)又は(3)で表されるイミダゾールシラン化合物。






(R1はH、C1〜20のアルキル基、R2はH、ビニル基、C1〜5のアルキル基、R3,R4はC1〜3のアルキル基、nは1〜3)

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、金属表面の防錆或いは接着性の改善等を行うための表面処理剤、特にはプリント回路用銅張積層板等に用いられる銅箔用表面処理剤として有用な新規なイミダゾールシラン化合物及びその製造方法、並びにその用途に関する。
【0002】
【従来の技術】プリント回路用の銅張積層板は銅箔を紙−フェノール樹脂含浸基材やガラス−エポキシ樹脂含浸基材等に加熱、加圧して積層して形成され、これをエッチングして回路網を形成し、これに半導体装置等の素子を搭載することにより電子機器用のボードが作られる。これらの過程では、基材との接着、加熱、酸やアルカリ液への浸漬、レジストインクの塗布、ハンダ付け等が行われるため、銅箔には各種の性能が要求される。たとえば、通常M面(粗化面、以下同様)と呼称されている基材と接着される側には主として基材との接着性、耐薬品性等が要求され、又M面の反対側の通常S面(光沢面、以下同様)と呼称されている側には主として耐熱性、耐湿性等が要求されている。又これらの両面には保管時に銅箔の酸化変色のないことも要求されている。これらの要求を満たすために、銅箔のM面には黄銅層形成処理(特公昭51−35711号公報、同54−6701号公報)、M、S双方の面にはクロメート処理、亜鉛または酸化亜鉛とクロム酸化物とからなる亜鉛−クロム基混合物被覆処理等(特公昭58−7077号公報)が行われている。ところで、最近銅箔のS面の耐熱性に関しては、高耐熱樹脂等の出現により、従来の200℃×30分からより高温の例えば220℃又は240℃×30分の高温条件下でも酸化変色が起こらないこと等が要求されるようになってきている。加えて、近年プリント配線板の微細化への要請がますます増大化しているが、これに伴うエッチング精度の向上に対応するためM面にはさらに低い表面粗さ(ロープロファイル)も求められている。しかし、M面の表面粗さは一方では基材との接着にあたって、アンカー効果をもたらしているので、M面に対するこのロープロファイルの要求と接着力の向上とは二律背反の関係にあり、ロープロファイル化によるアンカー効果の低減分は別の手段による接着力の向上で補償することが必要である。
【0003】また接着力の増強手段としてあるいは前記したロープロファイル化に伴う接着力の増強手段としてM面にシランカップリング剤を塗布する方法も提案されている(特公平2−19994号公報、特開昭63−183178号公報、特開平2−26097号公報)。
【0004】この種のシランカップリング剤としては、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン等が知られている[「高分子添加剤の最新技術」120〜134頁、シーエムシー、1988年1月6日発行]。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記したように最近プリント回路が緻密化しているので、使用されるプリント回路用銅箔に要求される特性はますます厳しくなっている。本発明は、こうした要請に対応できる、すなわち耐熱性に優れ、金属表面に対する防錆作用が高く、しかも金属と樹脂基板との接着性を著しく向上させることができる新規なシラン化合物、その製造方法、及びそれを用いた新規な金属表面処理剤、特に銅箔用表面処理剤を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者は、鋭意研究を進めた結果、特定のイミダゾール環を有するシラン化合物が金属表面に対し優れた防錆作用を有するとともに、金属と樹脂基板との接着性を著しく向上させることを見出した。
【0007】本発明は、かかる知見に基づきなされたものであり、その要旨は、(1)下記一般式(1)、(2)又は(3)で表される新規イミダゾールシラン化合物。
【0008】
【化3】


【0009】(ただし、一般式(1),(2)又は(3)において、R1は水素又は炭素数が1〜20のアルキル基、R2は水素、ビニル基又は炭素数が1〜5のアルキル基、R3,R4は炭素数が1〜3のアルキル基、nは1〜3)
(2)下記一般式(4)で表されるイミダゾール化合物と下記一般式(5)で表される3−グリシドキシプロピルシラン化合物とを、80〜200℃で反応されることを特徴とする請求項1記載のイミダゾールシラン化合物の製造方法。
【0010】
【化4】


【0011】(ただし、一般式(4),(5)において、R1は水素又は炭素数が1〜20のアルキル基、R2は水素、ビニル基又は炭素数が1〜5のアルキル基、R3,R4は炭素数が1〜3のアルキル基、nは1〜3)及び(3)前記1記載の一般式(1)、(2)又は(3)で表されるイミダゾールシラン化合物の少なくとも1種を有効成分とする金属表面処理剤。
【0012】(4)前記1記載の一般式(1)、(2)又は(3)で表されるイミダゾールシラン化合物の少なくとも1種を有効成分とする銅箔用表面処理剤にある。
【0013】以下に本発明をさらに詳細に説明する。
【0014】上記一般式(1)、(2)又は(3)におけるR1は、水素又は炭素数が1〜20のアルキル基であるが、特には合成の容易性から水素、メチル基、エチル基、ウンデシル基、ヘプタデシル基等が好適である。R2は水素、ビニル基又は炭素数が1〜5のアルキル基であるが、特には合成の容易性から水素、メチル基、ビニル基等が好適である。R3又はR4は炭素数が1〜3のアルキル基であるが、特には合成の容易性からメチル基、エチル基が好適である。またnは1〜3である。
【0015】本発明の上記イミダゾールシラン化合物(1)、(2)又は(3)は、一般式(4)で表されるイミダゾール化合物と一般式(5)で表される3−グリシドキシプロピルシラン化合物とを、80〜200℃で反応させることにより製造することができる。その反応を式で示すと次のようになる。
【0016】
【化5】


【0017】(上記式中、R1は水素又は炭素数が1〜20のアルキル基、R2は水素、ビニル基又は炭素数1〜5のアルキル基、R3及びR4は炭素数1〜3のアルキル基、nは1〜3を表す)上記一般式(4)で表されるイミダゾール化合物として好ましいのは、イミダゾール、2−アルキルイミダゾール、2,4−ジアルキルイミダゾール、4−ビニルイミダゾール等である。これらのうちとくに好ましいのは、イミダゾール;2−アルキルイミダゾールとしては、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール;また、2,4−ジアルキルイミダゾールとしては、2−エチル−4−メチルイミダゾール等を挙げることができる。又上記一般式(5)で表される3−グリシドキシプロピルシラン化合物は、3−グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、3−グリシドキシプロピルジアルコキシアルキルシラン、3−グリシドキシプロピルアルコキシジアルキルシランであり、これらのうちとくに好ましいものを挙げれば、3−グリシドキシプロピルトリアルコキシシランとしては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、また3−グリシドキシプロピルジアルコキシアルキルシランとしては、3−グリシドキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−グリシドキシプロピルアルコキシジアルキルシランとしては、3−グリシドキシプロピルエトキシジメチルシラン等である。
【0018】上記イミダゾール化合物と3−グリシドキシプロピルシラン化合物との反応は、80〜200℃の温度に加熱したイミダゾール化合物に0.1〜10モル倍量の3−グリシドキシプロピルシラン化合物を滴下させながら行うと良く、反応時間は5分〜2時間程度で十分である。この反応は特には溶媒を必要とはしないが、クロロホルム、ジオキサン、メタノール、エタノール等の有機溶剤を反応溶媒として用いてもよい。尚、この反応は、水分を嫌うので、水分が混入しないように、乾燥した窒素、アルゴン等の水分を含まない気体の雰囲気下で行うことが好ましい。
【0019】この反応において、上記一般式(1)、(2)及び(3)で示したイミダゾールシラン化合物は混合物の状態で得られるが、これらの化合物は、溶解度の差を利用する方法、カラムクロマトグラフィー等の既知の手段により精製され、単離されうる。尚、金属表面処理剤として用いる場合は、これらのイミダゾールシラン化合物は必ずしも単離する必要はなく、混合物のまま用いることが簡便で好ましい。なお、生成物中の各成分組成は、一般に一般式(1):同(2):同(3)=(40〜80):(10〜30):(5〜40)(液体クロマトグラフィーで分析したときの面積比)である。
【0020】上記イミダゾールシラン化合物を金属表面処理剤として用いる場合、その対象金属には特に制限はない。たとえば銅、亜鉛及びこれらの合金等の表面処理剤として有用である。しかし、銅の表面処理剤として用いることが好適であり、特にはプリント回路用銅張積層板等に用いられる銅箔の表面処理剤として用いると本発明の効果を十分に発揮することができる。この銅箔には銅箔の表面を粗面化処理したもの、銅箔に黄銅層形成処理したもの、クロメート処理したもの、亜鉛−クロム基混合物被覆処理したもの等も包含される。
【0021】上記イミダゾールシラン化合物は、少なくともその一種をそのまま直接金属表面に塗布してもよいが、水、メタノール、エタノール等のアルコール類、更には、アセトン、酢酸エチル、トルエン等の溶剤で0.001〜20重量%になるように希釈し、この液に金属を浸漬させる方法で塗布することが簡便で好ましい。尚、このイミダゾールシラン化合物は単独で用いてもよいが、複数のイミダゾールシラン化合物を混合して用いてもよく、また他の防錆剤、或いは、カップリング剤等と混合して用いてもよい。
【0022】
【実施例】
イミダゾールシラン化合物の合成1(イミダゾール化合物と3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランとの反応)
実施例1イミダゾール3.4g(0.05mol)を95℃で融解し、アルゴン雰囲気下で撹拌しながら、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン11.8g(0.05mol)を30分間かけて滴下した。滴下終了後、さらに95℃の温度で1時間反応させた。
【0023】反応生成物は透明な橙色の粘稠な液体(以下「混合成分1」という)として得られた。
【0024】この生成物は透明な橙色の粘性液体で数週間以上ゲル化せず安定であった。また水、アルコール、クロロホルム等に可溶であり、液体クロマトグラフィー及びゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより3成分の混合物であることを確認した。
【0025】又、この一部を採取して、1H−NMRで分析した結果、>NHピークは完全に消失しており、反応は完全に進行していた。又IRよりOH基の伸縮振動のピークも確認され、これからも上記した反応が進行したことがわかった(図1、2)。
【0026】上記反応生成物7.5gにクロロホルム4mlを添加して当該生成物を溶解し、次いで、これをテトラヒドロフラン150ml中に注いだ。析出物をろ過して除去した後、溶媒を留去し粘性液体4.3gを得た。これを液体クロマトグラフィー及びゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定した結果、単成分(以下「化合物1」という)であることが確認された。
【0027】化合物1及び混合成分1について1H−NMR、IR、MSスペクトル分析を行った。(混合成分1の1H−NMRスペクトルを図1に同IRスペクトルを図2、又化合物1の1H−NMRスペクトルを図3に、同IRスペクトルを図4に示す。)この結果を次に示した。
【0028】(化合物1)
1H−NMR(CDCl3,δppm);0.4〜0.7(m,2H)、1.5〜1.8(m,2H)、2.9〜4.3(m,13H)、6.93(s,1H)、6.95(s,1H)、7.44(s,1H)
IR(neat,cm‐1);2940〜2840(νCH)、1090、810(νSiOMe
MS;272(M+)
(混合成分)
1H−NMR(CDCl3,δppm);0.4〜0.7(m,2H)、1.4〜1.7(m,2H)、3.0〜4.3(m,14.8H)、6.8〜7.0(m,2H)、7.3(s,1H)、7.2〜7.5(m,1H)
IR(neat,cm‐1);3500〜3000(νOH)、2940〜2840(νCH)、1090、820(νSiOMe
これらの結果から、上記化合物1は上記一般式(2)においてR1,R2が水素、R3がメチル、nが3である下記式(2−1)の構造を有し、混合成分1には式(2−1)の化合物の他、下記式(1−1)及び(3−1)の構造を有する化合物が混合していることが分かった。そして、この3成分の混合組成比はエタノール/ヘキサン溶媒、液体クロマトグラフィーで分析したときの面積比でおよそ式(1−1):(2−1):(3−1)=45:22:33であった。
【0029】
【化6】


【0030】実施例2〜7実施例1のイミダゾールに代えて、表1に示したイミダゾール化合物を使用し、又、反応温度を表1に示した反応温度とした以外は実施例1と同様に反応を行った。
【0031】
【表1】


【0032】反応生成物は、いずれも透明な橙色の粘稠な液体として得られた。生成物は実施例1と同様、1H−NMRとIRにより同定し、それぞれ前記一般式(1),(2)及び(3)に対応する構造を有する混合物であることを確認した。
【0033】次に、以上生成したイミダゾールシラン(混合成分1〜7および化合物1)を銅箔の表面処理剤として評価した。評価方法は以下の通りである。
【0034】耐熱性試験電解銅箔(厚さ75μm、4.5×4.5cm)をアセトンで脱脂し、3%の硫酸水溶液で洗浄した。この銅箔の光沢面に、前記で得られた化合物1及び混合成分1〜7のイミダゾールシラン化合物をそれぞれ6重量%の濃度になるようにメタノールに溶解し、この溶液をスピンコーターで塗布し、0.3μmのイミダゾールシラン化合物の薄膜を作成し、これを試験片とした。
【0035】この試験片をそれぞれ、180℃、200℃、220℃、240℃の温度の恒温槽に30分間入れて、加熱処理した。比較のため、上記イミダゾールシラン化合物に代えて、シランカップリング剤として市販されている3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(以下単に「エポキシシラン」と言う)の10重量%メタノール溶液を同様に0.3μm塗布した銅箔及び何も塗布しない銅箔(以下「ブランク」とする)について同様に加熱処理した。加熱後の変色の程度で耐熱性を評価し、結果を表2に示した。
【0036】耐湿性試験上記耐熱性試験と同様にしてイミダゾールシラン、エポキシシランを塗布した試験片及ブランクを温度80℃、湿度95%の恒温槽に24時間入れ、変色の程度で耐湿性を評価した。この結果も表2に併せて示した。
【0037】接着性試験電解銅箔(33μm)の粗化面に黄銅層を形成後、亜鉛又は酸化亜鉛とクロム酸化物との亜鉛−クロム基混合物をめっき被覆した銅箔(25×25cm)を、イミダゾールシランの0.4重量%メタノール溶液に浸漬した。これをクリップで吊り下げ、余分な液を落とした後、100℃の乾燥器中で、5分間乾燥した。そして前記銅箔の粗化面をガラス繊維クロスにエポキシ樹脂を含浸させた基材に接着し、JIS C 6481に規定する方法により常態ピール強度を測定した。比較のため、イミダゾールシランの代わりにエポキシシランを用いて同様の処理を行ったもの及び浸漬処理を行わないものについても同様の方法で接着性を試験した。この結果も表2に併せて示した。
【0038】
【表2】


【0039】(注)耐熱性、耐湿性試験;5:変色なし、4:わずかに変色3:少し変色、2:橙色または黄色に変色、1:黒褐色に変色実施例8〜10イミダゾールシラン化合物の合成2(イミダゾール化合物と3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランとの反応)表3に示したイミダゾール化合物を使用し、3−グリシドキシプロピルシラン化合物を3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランとし、表3に示した反応温度で実施例1と同様の反応をした。
【0040】
【表3】


【0041】反応生成物は、いずれも透明な橙色の粘稠な液体として得られた。生成物は実施例1と同様、1H−NMRとIRにより同定し、それぞれ前記一般式(1)、(2)及び(3)に対応する構造を有する混合物であることを確認した。
【0042】以上生成したイミダゾールシラン(混合成分8〜10)を銅箔の表面処理剤として実施例1〜7の方法と同様の方法で光沢面について耐熱性、耐湿性、粗化面について接着性を評価した。結果を表4に示した。
【0043】
【表4】


【0044】耐熱性、耐湿性試験;5:変色なし、4:わずかに変色、3:少し変色、2:橙色または黄色に変色、1:黒褐色に変色実施例11〜14イミダゾールシラン化合物の合成3(イミダゾール化合物と3−グリシドキシプロピルジメトキシメチルシランとの反応)表5に示したイミダゾール化合物を使用し、3−グリシドキシプロピルシラン化合物を3−グリシドキシプロピルジメトキシメチルシランとし、表5に示した反応温度で実施例1と同様の反応をした。
【0045】
【表5】


【0046】反応生成物は、いずれも透明な橙色の粘稠な液体として得られた。生成物は実施例1と同様1H−NMRとIRにより同定し、それぞれ前記一般式(1)、(2)及び(3)に対応する構造を有する混合物であることを確認した。
【0047】図5は生成物混合成分11の1H−NMRスペクトル、図6は同IRスペクトルである。
【0048】これらの分析の結果を示すと、1H−NMR(CDCl3 δppm)
−0.2(s,3H)、0.1〜0.4(m,2H)、1.1〜1.4(m,2H)、2.9〜3.3(m,8H)、3.6〜3.9(m,3H)、6.6(s,1H)、6.7(s,1H)
7.1(s,1H)、7.2(s,1H)
IR(neat,cm-1
3600〜3000(νOH)、2940〜2830(νCH)、1260(δCH(SiMe))、1090,815(νSiOMe)、780((νSiC(SiMe))
以上生成したイミダゾールシラン(混合成分11〜14)を銅箔の表面処理剤として実施例1〜7の方法と同様の方法で光沢面について耐熱性、粗化面について接着性を評価した。結果を表6に示した。
【0049】
【表6】


【0050】耐熱性、耐湿性試験;5:変色なし、4:わずかに変色、3:少し変色、2:橙色または黄色に変色、1:黒褐色に変色実施例15〜17イミダゾールシラン化合物の合成4(イミダゾール化合物と3−グリシドキシプロピルエトキシジメチルシランとの反応)表7に示したイミダゾール化合物を使用し、3−グリシドキシプロピルシラン化合物を3−グリシドキシプロピルエトキシジメチルシランとし、表7に示した反応温度で実施例1と同様の反応を行った。
【0051】
【表7】


【0052】反応生成物は、いずれも透明な橙色の粘稠な液体として得られた。生成物は実施例1と同様1H−NMRとIRにより同定し、それぞれ前記一般式(1)、(2)及び(3)に対応する構造を有する混合物であることを確認した。
【0053】又、実施例15で得られた生成物の組成比は式(1):式(2):式(3)=73:19:8(THF溶媒ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で分析したときの面積比)であった。
【0054】図7は生成物混合成分15の1H−NMRスペクトル、図8は同IRのスペクトルである。これらの分析結果を示すと、1H−NMR(CDCl3 δppm)
0〜0.1(m,6H)、0.4〜0.7(m,2H)、1.1〜1.3(m,3H)、1.4〜1.7(m,2H)、3.2〜3.5(m,4H)、3.6〜3.7(q,2H)、3.9〜4.2(m,3H)、6.9(s,1H)、7.0(s,1H)
7.3(s,1H)、7.5(s,1H)
IR(neat,cm-1
3500〜3000(νOH)、2950〜2850(νCH)、1255[δCH(SiMe)]、1110,1090(νSiOEt)、805,780[νSiC(SiMe)]
以上生成したイミダゾールシラン(混合成分15〜17)を銅箔の表面処理剤として実施例1〜7の方法と同様の方法で光沢面の耐熱性を評価した。結果を表8に示した。
【0055】
【表8】


【0056】耐熱性、耐湿性試験;5:変色なし、4:わずかに変色、3:少し変色、2:橙色または黄色に変色、1:黒褐色に変色以上の結果から本発明の化合物が、金属の表面処理剤として耐熱性、耐湿性(防錆作用)、接着向上作用等に優れていることがわかる。
【0057】
【発明の効果】本発明の新規なイミダゾールシラン化合物は金属表面処理剤、特に銅箔用表面処理剤として有用なもので、耐熱性及び防錆作用に優れ、しかも金属と樹脂基板との接着性を著しく向上させることができるという効果を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】混合成分1の1H−NMRスペクトル
【図2】同IRスペクトル
【図3】化合物1(式(2−1))の1H−NMRスペクトル
【図4】同IRスペクトル
【図5】混合成分11の1H−NMRスペクトル
【図6】同IRスペクトル
【図7】混合成分15の1H−NMRスペクトル
【図8】同IRスペクトル

【特許請求の範囲】
【請求項1】 下記一般式(1)、(2)又は(3)で表される新規イミダゾールシラン化合物。
【化1】


(ただし、一般式(1),(2)又は(3)において、R1は水素又は炭素数が1〜20のアルキル基、R2は水素、ビニル基又は炭素数が1〜5のアルキル基、R3,R4は炭素数が1〜3のアルキル基、nは1〜3)
【請求項2】 下記一般式(4)で表されるイミダゾール化合物と下記一般式(5)で表される3−グリシドキシプロピルシラン化合物とを、80〜200℃で反応されることを特徴とする請求項1記載のイミダゾールシラン化合物の製造方法。
【化2】


(ただし、一般式(4),(5)において、R1は水素又は炭素数が1〜20のアルキル基、R2は水素、ビニル基又は炭素数が1〜5のアルキル基、R3,R4は炭素数が1〜3のアルキル基、nは1〜3)
【請求項3】 請求項1記載の一般式(1)、(2)又は(3)で表されるイミダゾールシラン化合物の少なくとも1種を有効成分とする金属表面処理剤。
【請求項4】 請求項1記載の一般式(1)、(2)又は(3)で表されるイミダゾールシラン化合物の少なくとも1種を有効成分とする銅箔用表面処理剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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