説明

新規キナーゼ阻害剤足場の迅速なスクリーニングおよび同定のための蛍光標識またはスピン標識キナーゼ

本発明は、キナーゼの活性化ループ中に天然に存在するか、もしくはその中に導入された、遊離チオールもしくはアミノ基を有するアミノ酸部位で、(a)その環境における極性変化に対して感受性であるチオールもしくはアミノ反応性フルオロフォア;または(b)チオール反応性スピン標識、アイソトープもしくはアイソトープ富化されたチオールもしくはアミノ反応性標識で標識されたキナーゼであって、該フルオロフォア、スピン標識、アイソトープもしくはアイソトープ富化された標識が、キナーゼの触媒活性を阻害せず、キナーゼの安定性に干渉しない、前記キナーゼに関する。本発明はさらに、本発明のキナーゼを用いてキナーゼ阻害剤をスクリーニングする方法、キナーゼ阻害剤のリガンド結合の速度および/または解離の速度を決定する方法ならびにキナーゼ阻害剤のスクリーニングにとって好適な突然変異キナーゼを作製する方法に関する。


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【特許請求の範囲】
【請求項1】
キナーゼの活性化ループ中に天然に存在するか、もしくはそこに導入された、遊離チオールもしくはアミノ基を有するアミノ酸部位で、
(a)その環境中の極性変化に対して感受性のチオールもしくはアミノ反応性フルオロフォア;または
(b)チオール反応性スピン標識、アイソトープもしくはアイソトープ富化されたチオールもしくはアミノ反応性標識、
で標識されたキナーゼであって、
前記フルオロフォア、スピン標識、アイソトープもしくはアイソトープ富化された標識が、前記キナーゼの触媒活性を阻害せず、その安定性に干渉しない、前記キナーゼ。
【請求項2】
セリン/トレオニンまたはチロシンキナーゼである、請求項1に記載のキナーゼ。
【請求項3】
p38α、MEKキナーゼ、CSK、Auroraキナーゼ、GSK-3β、cSrc、EGFR、Abl、DDR1、AKT、LCKまたは別のMAPKである、請求項1または2に記載のキナーゼ。
【請求項4】
遊離チオールまたはアミノ基を有する、標識しようとするアミノ酸が、システイン、リジン、アルギニンまたはヒスチジンである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のキナーゼ。
【請求項5】
活性化ループの外側に存在する1個以上の溶媒露出したシステインが欠失または置換された、請求項1〜4のいずれか1項に記載のキナーゼ。
【請求項6】
p38αであり、システインを配列番号1の位置172に導入し、好ましくは、配列番号1の位置119および162のシステインを別のアミノ酸と置換する、請求項3〜5のいずれか1項に記載のキナーゼ。
【請求項7】
cSrcであり、システインを配列番号2の位置157に導入し、好ましくは、配列番号2の位置27、233および246のシステインを別のアミノ酸と置換する、請求項3〜5のいずれか1項に記載のキナーゼ。
【請求項8】
チオールもしくはアミノ反応性フルオロフォアが、二置換ナフタレン化合物、クマリンに基づく化合物、ベンゾキサジアゾールに基づく化合物、ダポキシルに基づく化合物、ビオシチンに基づく化合物、フルオレセイン、スルホン化ローダミンに基づく化合物、AttoフルオロフォアもしくはLucifer Yellowまたは環境変化に対する感受性を示すその誘導体である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のキナーゼ。
【請求項9】
チオール反応性スピン標識が窒素酸化物ラジカルである、請求項1〜7のいずれか1項に記載のキナーゼ。
【請求項10】
キナーゼ阻害剤をスクリーニングする方法であって、
(a)請求項1〜9のいずれか1項に記載の遊離チオールもしくはアミノ基を有するアミノ酸部位で標識されたキナーゼを提供すること、
(b)前記蛍光もしくはスピン標識された、またはアイソトープ標識されたキナーゼと、候補阻害剤とを接触させること、
(c)励起の際に、工程(a)および工程(b)の前記蛍光標識されたキナーゼの1個以上の波長での蛍光放出シグナルもしくはスペクトルを記録すること;または
(c)'工程(a)および工程(b)の前記スピン標識もしくはアイソトープ標識されたキナーゼの電子常磁性共鳴(EPR)もしくは核磁気共鳴(NMR)スペクトルを記録すること;ならびに
(d)工程(c)で記録された1個以上の波長での蛍光放出シグナルもしくはスペクトルまたは工程(c)'で記録されたEPRもしくはNMRスペクトルを比較すること;
を含み、工程(c)で得られた前記蛍光標識されたキナーゼの少なくとも1個の波長、好ましくは最大放出での蛍光強度の差異、および/またはスペクトルにおける蛍光放出波長のシフト、または工程(c)'で得られた前記スピン標識もしくはアイソトープ標識されたキナーゼのEPRもしくはNMRスペクトルの変化が、候補阻害剤がキナーゼ阻害剤であることを示す、前記方法。
【請求項11】
キナーゼ阻害剤のリガンド結合の速度および/または結合もしくは解離の速度を決定する方法であって、
(a)請求項1〜9のいずれか1項に記載の蛍光標識されたキナーゼと、様々な濃度の阻害剤とを接触させること;または
(a)'阻害剤に結合した請求項1〜9のいずれか1項に記載の蛍光標識されたキナーゼと、様々な濃度の未標識キナーゼとを接触させること;
(b)励起の際に、各濃度の前記蛍光標識されたキナーゼの1個以上の波長での蛍光放出シグナルまたはスペクトルを記録すること;
(c)工程(b)で記録された1個以上の波長での蛍光放出シグナルまたはスペクトルから、各濃度の速度定数を決定すること;または
(c1)工程(b)で記録された1個以上の波長での蛍光放出シグナルもしくはスペクトルから、各濃度の阻害剤に関するKdを決定すること;または
(c2)工程(b)で記録された1個以上の波長での蛍光放出シグナルもしくはスペクトルから、各濃度の未標識キナーゼに関するKaを決定すること;
(d)工程(b)で得られた異なる濃度の阻害剤に関するシグナルもしくはスペクトルから工程(c)で決定された速度定数からkonを直接決定すること、および/またはkoffを外挿すること;または
(d)'工程(b)で得られた異なる濃度の未標識キナーゼに関するシグナルもしくはスペクトルから工程(c)で決定された速度定数からkoffを直接決定すること、および/またはkonを外挿すること;ならびに
(e)必要に応じて、工程(d)もしくは(d)'で得られたkonおよびkoffから、Kdおよび/またはKaを算出すること、
を含む、前記方法。
【請求項12】
キナーゼ阻害剤の解離または結合を決定する方法であって、
(a)請求項1〜9のいずれか1項に記載のスピン標識もしくはアイソトープ標識されたキナーゼと、異なる濃度の阻害剤とを接触させること;または
(a)'阻害剤に結合した請求項1〜9のいずれか1項に記載のスピン標識もしくはアイソトープ標識されたキナーゼと、異なる濃度の未標識キナーゼとを接触させること;
(b)各濃度の阻害剤および/もしくは未標識キナーゼについて、前記スピン標識もしくはアイソトープ標識されたキナーゼのEPRもしくはNMRスペクトルを記録すること;ならびに
(c)異なる濃度の阻害剤について、工程(b)で記録されたEPRもしくはNMRスペクトルからKdを決定すること;または
(c)'異なる濃度の未標識キナーゼについて、工程(b)で記録されたEPRもしくはNMRスペクトルからKaを決定すること、
を含む、前記方法。
【請求項13】
キナーゼ阻害剤のスクリーニングにとって好適な突然変異キナーゼを作製する方法であって、
(a)存在する場合、活性化ループの外側の目的のキナーゼ中に存在する遊離チオールもしくはアミノ基を有する溶媒露出したアミノ酸または活性化ループ内の好適でない位置に遊離チオールもしくはアミノ基を有するアミノ酸を、遊離チオールもしくはアミノ基を有さないアミノ酸と置換すること;
(b)遊離チオールもしくはアミノ基を有するアミノ酸が活性化ループ中に存在しない場合、目的の前記キナーゼの活性化ループ中のアミノ酸を、遊離チオールもしくはアミノ基を有するアミノ酸に突然変異させること;
(c)目的のキナーゼを、その環境における極性変化に対して感受性のチオールもしくはアミノ反応性フルオロフォア、チオール反応性スピン標識、アイソトープもしくはアイソトープ富化されたチオールもしくはアミノ反応性標識を用いて標識すること、ここで該フルオロフォア、スピン標識、アイソトープもしくはアイソトープ富化された標識がキナーゼの触媒活性を阻害せず、および/もしくはキナーゼの安定性に干渉しないようにする;
(d)工程(c)で得られたキナーゼと、該キナーゼの公知の阻害剤とを接触させること;ならびに
(e)励起の際に、工程(c)および(d)の前記蛍光標識されたキナーゼの1個以上の波長での蛍光放出シグナルもしくはスペクトルを記録すること、または
(e)'工程(c)および(d)の前記スピン標識されたキナーゼのEPRもしくはNMRスペクトルを記録すること;
(f)工程(e)で記録された蛍光放出スペクトルまたは工程(e)'で記録されたEPRもしくはNMRスペクトルを比較すること;
を含み、工程(e)で得られた前記蛍光標識されたキナーゼの少なくとも1個の波長、好ましくは、最大放出での蛍光強度の差異、および/またはスペクトル中の蛍光放出波長のシフト、または工程(e)'で得られた前記スピン標識もしくはアイソトープ標識されたキナーゼのEPRもしくはNMRスペクトルの変化が、該キナーゼがキナーゼ阻害剤のスクリーニングにとって好適であることを示す、前記方法。
【請求項14】
キナーゼ阻害剤が、キナーゼのATP結合部位に隣接するアロステリック部位に部分的または完全に結合する、請求項10〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
キナーゼのATP結合部位に隣接するアロステリック部位に部分的または完全に結合するキナーゼ阻害剤を同定する方法であって、
(a)請求項10に記載の方法に従って阻害剤をスクリーニングすること、および
(b)工程(a)で同定された阻害剤の速度定数を決定すること、
を含み、工程(b)で決定された0.140 s-1未満の速度定数が、同定されたキナーゼ阻害剤がキナーゼのATP結合部位に隣接するアロステリック部位に部分的または完全に結合することを示す、前記方法。
【請求項16】
キナーゼを、活性化ループ中に天然に存在するかまたは活性化ループ中に導入したシステインで標識する、請求項1〜9のいずれか1項に記載のキナーゼまたは請求項10〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記キナーゼの阻害剤として同定された化合物の薬理学的特性を最適化することをさらに含む、請求項10または13〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記最適化が、前記キナーゼの阻害剤として同定された阻害剤を改変して、
a)活性スペクトル、器官特異性の改変、および/または
b)効力の改善、および/または
c)毒性の低下(治療指数の改善)、および/または
d)副作用の低下、および/または
e)治療作用の開始、作用期間の改変、および/または
f)薬物動態パラメーター(吸収、分布、代謝および排出)の改変、および/または
g)物理化学パラメーター(溶解性、吸湿性、色、味、臭い、安定性、状態)の改変、および/または
h)一般的特異性、器官/組織特異性の改善、および/または
i)適用形態および経路の最適化、
を、
a. カルボキシル基のエステル化、または
b. カルボン酸によるヒドロキシル基のエステル化、または
c. ヒドロキシル基の、例えば、リン酸、ピロリン酸もしくは硫酸もしくはヘミコハク酸へのエステル化、または
d. 製薬上許容し得る塩の形成、または
e. 製薬上許容し得る複合体の形成、または
f. 薬理学的に活性なポリマーの合成、または
g. 親水性部分の導入、または
h. 芳香酸もしくは側鎖上での置換基の導入/交換、置換基パターンの変化、または
i. イソスターもしくはバイオイソスター部分の導入による改変、または
j. 相同化合物の合成、または
k. 分枝側鎖の導入、または
l. アルキル置換基の環式類似体への変換、または
m. ヒドロキシル基のケタール、アセタールへの誘導体化、または
n. アミド、フェニルカルバメートへのN-アセチル化、または
o. Mannich塩基、イミンの合成、または
p. ケトンもしくはアルデヒドのSchiff塩基、オキシム、アセタール、ケタール、エノールエステル、オキサゾリジン、チアゾリジンへの形質転換、
またはその組合せにより達成することを含む、請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図12−3】
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【図12−4】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16−1】
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【図16−2】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30−1】
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【図30−2】
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【図31】
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【図32】
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【公表番号】特表2011−528560(P2011−528560A)
【公表日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−519082(P2011−519082)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際出願番号】PCT/EP2009/005364
【国際公開番号】WO2010/009886
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(596070445)マックス−プランク−ゲゼルシャフト ツール フォーデルング デル ヴィッセンシャフテン エー.ヴェー. (13)
【Fターム(参考)】