説明

新規ニトロレダクターゼ酵素基質

本発明は、ニトロレダクターゼ活性の検出のための酵素基質としての、以下の式(I)の化合物:


[式中、
・W、W、W及びWは、独立にH、Br、Cl、F、I、アルキル、アルコキシ、チオメチル、ペルフルオロアルキル、ニトロ、シアノ、カルボキシル(そのエステルまたはアミドを含む)またはそれらの任意の組合せである。
・n=0、1または2。
・UはN又はNRであり且つVはCZN又はNRであるか、またはVはN又はNRであり且つUはCZであり、RはH、アルキル、アラルキル、アリール、アルカノイル又はアルキルスルホニルである。
・Z、Z、Z、Z、Z及びZは独立にH、Br、Cl、F、I、アルキル、アリール、アルコキシ、ペルフルオロアルキル、ニトロ、シアノ、カルボキシル、スルホニル(カルボキシルまたはスルホニルのエステルまたはアミドを含む)である。]
及びその塩類の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニトロレダクターゼ活性の検出のための新規な酵素基質に関する。これらの基質は、特に微生物学、生化学、免疫学、分子生物学、組織学などの物理化学的信号を産生している酵素的還元の工程を含む適用に使うことができる。
【0002】
現在、微生物検出用に非常に多数の培地が存在する。この検出は、特に検出することが要求される微生物の酵素に特異的な基質の特定の使用に基づく場合がある。一般に、酵素の合成基質は、基質と、標的酵素によるその代謝の生成物とが異なる生理化学的性質を有しており、それらを区別でき、且つ基質の全部または一部が酵素によって生成物に変換されたかどうかが評価できる方法で形成される。例えば、酵素の代謝産物は、発色性又は蛍光性であってもよい。したがって、細菌の場合、基質の選択によって、反応があるかどうかに従い、微生物の性質を特徴づけることができる。ニトロレダクターゼ活性は、特に細菌のグループ、属または種を同定するために用いる場合がある。さらに、例えばそれらの増殖に又はこの増殖の阻害に関連づけられた、微生物の還元性代謝を監視するために用いる場合がある。
【0003】
ニトロ芳香族化合物を還元するいくつかの細菌の能力は長年知られていた。Asnis(1957)は、p−ニトロ安息香酸を還元することができた大腸菌抽出物由来のフラビンタンパク質の分離を報告している。この報告以降、ニトロアリール・レダクターゼ活性が生物のさまざまな種類で同定されている。これは、シュードモナスの種(Won et al.1974)及びノカルジア属(Villanueva 1964)のような絶対好気性菌、クロストリジウムの種(Ancermaier & Simon 1983)及びベーヨネラ属(McCormick et al.1976)のような絶対嫌気性菌、又は菌類(Masuda & Ozaki 1993)及び真核生物寄生虫(Douch 1975)を含む。
細菌のニトロアリールレダクターゼによって還元されることが可能であると明示されている基質の範囲がある。これらは特にp−ニトロ安息香酸、p−ニトロフェノール、p−ニトロアニリン及び2,4,6−トリニトロトルエンのようなニトロ芳香族化合物である(McCormick et al.1976)。
【0004】
通常は、ニトロレダクターゼ酵素活性の検出は、基質又は補因子の消失を監視するような間接的な方法によって実施される。例えば、Kitamura et al.(1983)は、大腸菌抽出物による他のニトロ芳香族化合物の範囲及びメチルp−ニトロベンゾアートの還元を研究している。しかしながら、この方法は、あまり感度が高くなく、不均一培地での検出に適していない。また、ニトロアリールレダクターゼ活性の直接的検出のためのニトロクマリンに基づいて蛍光発生基質を記載する出願WO00/28073を挙げることができる。そのため、このタイプのニトロ芳香族化合物は、還元後に、容易に検出可能である極めて蛍光性の化合物を産生することができる。しかしながら、この基質は、不均一な培地での検出にあまり適していない。
【0005】
本発明は、従って、微生物の検出を可能にしているニトロレダクターゼ基質を改良することを提案するものである。既存の基質と比較して、これらの新規な基質は合成が容易であり、それらは反応培地に拡散にしない色を産生するので、微生物の検出用のゲル培地に特に使われる場合がある。加えて、本発明の化合物が同時にニトロレダクターゼ活性と培地のpHの変化が生じる代謝を同時に呈する微生物の検出を可能にするという点で、本発明は当分野の技術を改良することに寄与する。
【0006】
本発明の説明を更に続ける前に、本発明の開示を容易にするために下記の定義を与える。
「酵素基質」は、微生物、細胞又はオルガネラの直接的または間接的な検出を可能にする産物に、酵素によって変化されうる基質を意味することを意図する。ニトロレダクターゼ基質の場合、この基質は検出される酵素活性によって部分的にまたは完全に還元される硝酸官能基を特に含み、この硝酸官能基の還元が分子の特定の生理化学的性質を修飾し、この還元を監視することを可能にする。
本発明の基質はフローサイトメトリにおける使用に適しており、それは還元産物が酵素活性を発現する細胞に主として局在化されたままであるためであり、この活性を発現する細胞を特異的にカウントすること、あるいは試料の残りからそれらを分離することさえ可能である。
本発明の基質は組織酵素学における使用に適しており、それは還元産物が酵素活性を発現する細胞に主として局在化されたままであるためであり、組織内でこの活性を発現する細胞又はオルガネラを特異的に同定することが可能である。
それらの低い毒性のために、本発明の化合物は、細胞培養のニトロレダクターゼ活性を監視するために非常に適している。
本発明の化合物は、反応培地において拡散しない色または蛍光を産生するので、特に検出および/または同定培地における使用に特に適している。
【0007】
本出願において、「色」なる用語は、可視スペクトルにおける光の吸収である色、又はある波長での吸収(λex)とより高い波長での放出である蛍光(λem、λem>λex)をカバーするために使用される。本発明の基質は、塩を形成してもよく、すなわち塩化物、臭化物、ヨウ化物またはトリフルオロ酢酸塩のような塩の形態でもよい。
「pH指示薬」なる用語は、色及び/又は蛍光が培地のpHの修飾に従って変化する化学物質を意味することを目的とし、場合により前記修飾は前記培地上で増殖する微生物の代謝と関連がある。
「ニトロレダクターゼ」は、NO基を完全にまたは部分的に還元できる酵素を意味すると理解される。
「アルキル基」は、飽和炭化水素ベースの基の鎖、特にC−Cアルキル、すなわち1から6の炭素原子を含む直鎖または分枝状アルキルを意味することを目的とする。例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル及びヘキシルを挙げることができる。
「アリール基」は、芳香環、例えばC−C10芳香環、特にフェニル、ベンジル、1−ナフチルまたは2−ナフチルに由来する官能基(または置換基)を意味することを目的とする。
「カルボキシル基」は、第1の酸素原子へ二重結合により、及び第2の酸素原子(それ自体が負に荷電しているか、又は水素原子に結合している)へ単結合により結合された炭素原子から成る官能基を意味することを目的とする。分子のpK及び培地のpHに応じて、カルボキシル基はイオン化型、すなわち第2の酸素原子に結合するHを有さないで負に帯電していてもよい。反応培地は、微生物、細胞又はオルガネラの代謝の発現および/または増殖のために必要な全ての成分を含んで成る培地を意味することを目的とする。この反応培地は、フローサイトメトリ、組織酵素学、細胞培養などにおいて、又は微生物を検出及び/又は同定するための培地として使用することができる。
【0008】
「反応培地」は、固体、半固体又は液体であってもよい。固体培地なる表現は、例えばゲル化培地を意味すると理解される。寒天は微生物を培養するための微生物学の従来のゲル化剤であるが、ゼラチンまたはアガロースを使用することも可能である。たくさんの製品が市販されており、コロンビア寒天、トリプチカーゼ大豆寒天、マッコンキー寒天、サブロー寒天またはさらに一般的にはthe Handbook of Microbiological Media(CRC Press)に記載されているものである。
反応培地は、一つ以上の成分、例えばアミノ酸、ペプトン、糖質、ヌクレオチド、ミネラル、抗生物質、界面活性剤、バッファー、リン酸塩、アンモニウム塩、ナトリウム塩又は金属塩を組合せて含むことができる。
培地は、着色剤を更に含んでもよい。参考として、着色剤として、エバンスブルー、ニュートラルレッド、ヒツジの血液、ウマの血液、乳白剤(例えば酸化チタン)、ニトロアニリン、マラカイトグリーン、ブリリアントグリーンなどを挙げることができる。
反応培地は、「検出および/または同定培地」、すなわち視覚化培地、または培養及び視覚化培地であってもよい。前者の場合、微生物の培養は接種される前に実施され、後者の場合は検出及び/又は同定培地は更に培養培地も構成する。
【0009】
「生物試料」は、生体液に由来する臨床試料、又は任意の種類の食品に由来する食品試料、又は任意の化粧品又は医薬品調製物に由来する化粧品又は医薬品試料を意味することを目的とする。従って、この試料は液体又は固体でもよく、血液、血漿、尿または糞便、鼻、のど、皮膚、傷又は脳脊髄液試料の臨床試料、水又例えば牛乳または果汁等の飲料の試料;ヨーグルト、肉、卵、野菜、マヨネーズまたはチーズの試料;魚等の試料に由来する食品試料、あるいは、特に動物の餌のような動物飼料に由来する食品試料を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。更に、試料は、臨床環境標本、家畜標本又は食物、化粧品又は医薬品標本由来であってもよい。
環境から得られた試料なる表現は、特に、表面試料、液体試料、生原料試料または製品試料を意味することを目的とする。
試料なる表現は、従って、標本自体(ぬぐい液、大便、食物など)及び前記試料から生じた微生物のコロニー(例えば、ゲル化された培養培地に分離後、または前記標本を接種した濃縮ブロス)の両方を意味することを目的とする。
【0010】
本発明の目的において、「微生物」なる用語は、細菌(特にグラム陰性菌及びグラム陽性菌)、酵母、糸状菌、さらに一般的にいえば、通常は単細胞生物であって、肉眼では見えず、且つ実験室で増殖させ及び操作できる生物を含む。
グラム陰性菌について、以下の属のバクテリアを挙げることができる:シュードモナス属、エシェリヒア属、サルモネラ属、赤痢菌属、エンテロバクター属、クレブシェラ属、セラシア属、プロテウス属、カンピロバクター属、ヘモフィルス属、モルガネラ属、ビブリオ属、エルシニア属、アシネトバクター属、ブランハメラ属、ナイセリア属、バークホルデリア属、シトロバクター属、ハフニア属、エドバルシエラ属、エーロモナス属、モラクセラ属、パスツレラ属、プロビデンシア属、アクチノバチルス属、アルカリゲネス属、ボルデテラ属、セデセア属、エルウィニア属、パントエア属、ラルストニア属、ステノトロホモナス属、キサントモナス属及びレジオネラ属。
グラム陽性菌について、以下の属のバクテリアを挙げることができる:アエロコッカス属、エンテロコッカス属、ストレプトコッカス属、スタフィロコッカス属、桿菌属、乳酸桿菌属、リステリア属、クロストリジウム属、ガルドネレラ属、コクリア属、ラクトコッカス属、ロイコノストック属、ミクロコッカス属、ファルカミア属(Falkamia)、ゲメラ属、ペジオコックス属、マイコバクテリア属及びコリネバクテリウム属。
酵母について、以下の属の酵母を挙げることができる:カンジダ属、クリプトコックス属、サッカロミセス属及びトリコスポロン属。
好ましくは、微生物は、エシェリヒア属、赤痢菌、サルモネラ属、セラシア属、エンテロバクター属、シトロバクター属、クレブシェラ属、プロテウス属、プロビデンシア属、モルガネラ属、エルシニア属、ビブリオ属、シュードモナス属、アシネトバクター属、エンテロコッカス属、ブドウ球菌属、ストレプトコッカス属、リステリア属、バシラス属、カンジダ属、クリプトコックス属、サッカロミケス属に属する。
【0011】
したがって、本発明は、ニトロレダクターゼ活性の検出のための酵素基質としての、以下の式(I)の化合物:

[式中、
・W、W、W及びWは、独立にH、Br、Cl、F、I、アルキル、アルコキシ、チオメチル、ペルフルオロアルキル、ニトロ、シアノ、カルボキシル(そのエステルまたはアミドを含む)またはそれらの任意の組合せである。
・n=0、1または2。
・UはN又はNRであり且つVはCZN又はNRであるか、またはVはN又はNRであり且つUはCZであり、RはH、アルキル、アラルキル、アリール、アルカノイル又はアルキルスルホニルである。
・Z、Z、Z、Z、Z及びZは独立にH、Br、Cl、F、I、アルキル、アリール、アルコキシ、ペルフルオロアルキル、ニトロ、シアノ、カルボキシル、スルホニル(カルボキシルまたはスルホニルのエステルまたはアミドを含む)である。]
及びその塩類の使用に関する。
本発明の他の実施態様によれば、後者は、ニトロレダクターゼ活性の検出及びpH変化の指示薬のための酵素基質としての上記式(I)の化合物の使用に関する。
本発明の好ましい実施態様では、n=1である。
本発明の好ましい実施態様によれば、UはN又はNRであり、VはCZ、好ましくはCHである。
本発明の好ましい実施態様によれば、VはN又はNRであり、UはCZ、好ましくはCHである。
本発明の好ましい実施態様によれば、W、W、W及びWは、独立にHである。
本発明の好ましい実施態様によれば、Z、Z、Z、Z、Z及びZはHである。
本発明の好ましい実施態様によれば、前記化合物は2−(4’−ニトロスチリル)キノリン(2NSQ)、2−(4’−ニトロスチリル)−N−メチルキノリニウム ヨージド(2NSMQI)、2−(4’−ニトロフェニル)ブタジエニル−N−メチルキノリニウム ヨージド(2NPBMQI)、4−(4’−ニトロスチリル)−N−メチルキノリニウム ヨージド(4NSMQI)及び4−(4’−ニトロ−2’−メトキシスチリル)−N−メチルキノリニウム ヨージド(4NMSMQI)、4−(4’−ニトロフェニル)−2−メチルキノリン、2−(4’−ニトロスチリル)−N−メチルキノリニウム TFA、4−(4’−ニトロスチリル)−N−ベンジルキノリニウム TFA、4−(4’−ニトロスチリル)−N−メチルキノリニウム クロリド、4−(4’−ニトロスチリル)キナルジニウム ヒドロブロミド、4−(4’−ニトロスチリル)キナルジニウム メチオジド、4−(4’−ニトロスチリル)キノリン TFA、2−(2’−ピリジル)−4−(4’’−ニトロスチリル)キノリン、4−(4’−ニトロスチリル)−N−メチルキノリニウム TFAから選択される。
本発明の好ましい実施態様によれば、前記化合物は2−(4’−ニトロスチリル)キノリン (2NSQ)、2−(4’−ニトロスチリル)−N−メチルキノリニウム ヨージド(2NSMQI)、2−(4’−ニトロフェニル)ブタジエニル−N−メチルキノリニウム ヨージド(2NPBMQI)、4−(4’−ニトロスチリル)−N−メチルキノリニウム ヨージド(4NSMQI)及び4−(4’−ニトロ−2’−メトキシスチリル)−N−メチルキノリニウム ヨージド(4NMSMQI)から選択される。
【0012】
更に、本発明は、微生物のニトロレダクターゼ活性を検出方法に関しており、
a)式(I)の化合物:

[式中、
・W、W、W及びWは、独立にH、Br、Cl、F、I、アルキル、アルコキシ、チオメチル、ペルフルオロアルキル、ニトロ、シアノ、カルボキシル(そのエステルまたはアミドを含む)またはそれらの任意の組合せである。
・n=0、1または2。
・UはN又はNRであり且つVはCZN又はNRであるか、またはVはN又はNRであり且つUはCZであり、RはH、アルキル、アラルキル、アリール、アルカノイル又はアルキルスルホニルである。
・Z、Z、Z、Z、Z及びZは独立にH、Br、Cl、F、I、アルキル、アリール、アルコキシ、ペルフルオロアルキル、ニトロ、シアノ、カルボキシル、スルホニル(カルボキシルまたはスルホニルのエステルまたはアミドを含む)である。]
及びその塩類を含んで成る検出および/または同定培地を用意し、
b)培地に試験される生物試料を接種し、
c)インキュベーションに置き、及び
d)少なくとも一つのニトロレダクターゼ活性の存在を検出する工程を含むことを特徴とする方法に関する。
【0013】
本発明の他の実施態様によれば、後者は、更に、ニトロレダクターゼ活性及びpH変化を微生物において検出する方法であって、
a)上記の式(I)の化合物を含んでなる検出および/または同定培地を利用可能にし、
b)培地に試験される生物試料を接種し、
c)インキュベーションに置き、
d)検出および/または同定培地の色および/または蛍光の変化を観察し、少なくとも一つのニトロレダクターゼ活性の存在及び前記検出および/または同定培地のpH変化を検出する工程を含むことを特徴とする方法である。
本発明の好ましい実施態様によれば、n=1である。
本発明の好ましい実施態様によれば、UはN又はNRであり、VはCZ、好ましくはCHである。
本発明の好ましい実施態様によれば、VはN又はNRであり、UはCZ、好ましくはCHである。
本発明の好ましい実施態様によれば、W、W、W及びWは、独立にHである。
本発明の好ましい実施態様によれば、Z、Z、Z、Z、Z及びZはHである。
本発明の好ましい実施態様によれば、前記化合物は2−(4’−ニトロスチリル)キノリン(2NSQ)、2−(4’−ニトロスチリル)−N−メチルキノリニウム ヨージド(2NSMQI)、2−(4’−ニトロフェニル)ブタジエニル−N−メチルキノリニウム ヨージド(2NPBMQI)、4−(4’−ニトロスチリル)−N−メチルキノリニウム ヨージド(4NSMQI)及び4−(4’−ニトロ−2’−メトキシスチリル)−N−メチルキノリニウム ヨージド(4NMSMQI)、4−(4’−ニトロフェニル)−2−メチルキノリン、2−(4’−ニトロスチリル)−N−メチルキノリニウム TFA、4−(4’−ニトロスチリル)−N−ベンジルキノリニウム TFA、4−(4’−ニトロスチリル)−N−メチルキノリニウム クロリド、4−(4’−ニトロスチリル)キナルジニウム ヒドロブロミド、4−(4’−ニトロスチリル)キナルジニウム メチオジド、4−(4’−ニトロスチリル)キノリン TFA、2−(2’−ピリジル)−4−(4’’−ニトロスチリル)キノリン、4−(4’−ニトロスチリル)−N−メチルキノリニウム TFAから選択される。
本発明の好ましい実施態様によれば、前記化合物は2−(4’−ニトロスチリル)キノリン (2NSQ)、2−(4’−ニトロスチリル)−N−メチルキノリニウム ヨージド(2NSMQI)、2−(4’−ニトロフェニル)ブタジエニル−N−メチルキノリニウム ヨージド(2NPBMQI)、4−(4’−ニトロスチリル)−N−メチルキノリニウム ヨージド(4NSMQI)及び4−(4’−ニトロ−2’−メトキシスチリル)−N−メチルキノリニウム ヨージド(4NMSMQI)から選択される。
微生物の接種は、当業者に知られている任意の接種技術によって、実施されてもよい。インキュベーション工程は、検出が要求される酵素活性にとって最適な温度で実行されてもよく、検出される酵素活性に応じて、当業者は容易に選択することができる。工程d)は、目視検査によって、比色法または蛍光測定法によって実行できる。工程d)の間、ニトロレダクターゼ活性の存在を、単独で、または少なくとも一つの他の酵素活性との組合わせにより、明らかにしてもよい。
【0014】
更に、本発明は、以下の式(I)の化合物:

[式中、
・W、W、W及びWは、独立にH、Br、Cl、F、I、アルキル、アルコキシ、チオメチル、ペルフルオロアルキル、ニトロ、シアノ、カルボキシル(そのエステルまたはアミドを含む)またはそれらの任意の組合せである。
・n=0、1または2。
・UはN又はNRであり且つVはCZN又はNRであるか、またはVはN又はNRであり且つUはCZであり、RはH、アルキル、アラルキル、アリール、アルカノイル又はアルキルスルホニルである。
・Z、Z、Z、Z、Z及びZは独立にH、Br、Cl、F、I、アルキル、アリール、アルコキシ、ペルフルオロアルキル、ニトロ、シアノ、カルボキシル、スルホニル(カルボキシルまたはスルホニルのエステルまたはアミドを含む)である。]
及びその塩類を含む微生物の検出および/または同定のための培地に関する。

本発明の好ましい実施態様によれば、n=1である。
本発明の好ましい実施態様によれば、UはN又はNRであり、VはCZ、好ましくはCHである。
本発明の好ましい実施態様によれば、VはN又はNRであり、UはCZ、好ましくはCHである。
本発明の好ましい実施態様によれば、W、W、W及びWは、独立にHである。
本発明の好ましい実施態様によれば、Z、Z、Z、Z、Z及びZはHである。
本発明の好ましい実施態様によれば、前記化合物は2−(4’−ニトロスチリル)キノリン(2NSQ)、2−(4’−ニトロスチリル)−N−メチルキノリニウム ヨージド(2NSMQI)、2−(4’−ニトロフェニル)ブタジエニル−N−メチルキノリニウム ヨージド(2NPBMQI)、4−(4’−ニトロスチリル)−N−メチルキノリニウム ヨージド(4NSMQI)及び4−(4’−ニトロ−2’−メトキシスチリル)−N−メチルキノリニウム ヨージド(4NMSMQI)、4−(4’−ニトロフェニル)−2−メチルキノリン、2−(4’−ニトロスチリル)−N−メチルキノリニウム TFA、4−(4’−ニトロスチリル)−N−ベンジルキノリニウム TFA、4−(4’−ニトロスチリル)−N−メチルキノリニウム クロリド、4−(4’−ニトロスチリル)キナルジニウム ヒドロブロミド、4−(4’−ニトロスチリル)キナルジニウム メチオジド、4−(4’−ニトロスチリル)キノリン TFA、2−(2’−ピリジル)−4−(4’’−ニトロスチリル)キノリン、4−(4’−ニトロスチリル)−N−メチルキノリニウム TFAから選択される。
本発明の好ましい実施態様によれば、前記化合物は2−(4’−ニトロスチリル)キノリン (2NSQ)、2−(4’−ニトロスチリル)−N−メチルキノリニウム ヨージド(2NSMQI)、2−(4’−ニトロフェニル)ブタジエニル−N−メチルキノリニウム ヨージド(2NPBMQI)、4−(4’−ニトロスチリル)−N−メチルキノリニウム ヨージド(4NSMQI)及び4−(4’−ニトロ−2’−メトキシスチリル)−N−メチルキノリニウム ヨージド(4NMSMQI)から選択される。
好ましくは、前記反応培地は、微生物の検出及び/又は同定のための培地であって、前記培地は酵素基質として使用される少なくとも一つの分子を含む。
好ましくは、前記化合物は、1から1000mg/l、好ましくは10から500mg/lの濃度である。
好ましくは、微生物の検出および/または同定のための培地は、その代謝がpH変化を生じる少なくとも一つの化合物を追加的に含む。好ましくは、前記化合物は、糖、アミノ酸または有機酸である。好ましくは、前記化合物は、ペントース、ヘキソース、二糖類、三糖類または多糖類である。
好ましくは、前記化合物は、濃度0.1から100g/lであり、好ましくは1から50g/lである。好ましくは、前記化合物は、濃度5から30g/lである。
本発明の特定の実施態様によれば、本発明の前記検出および/または同定のための培地は、少なくとも一つの他の酵素基質であって、本発明の分子によって検出されるニトロレダクターゼ活性とは異なった酵素活性に特異的な酵素基質を追加的に含む。他の基質の酵素代謝は、検出可能な信号を生み出し、それは酵素基質として使用される本発明による化合物によって生み出される信号とは異なっており(例えば異なる色又は蛍光の生成物)、一つ以上の微生物の検出および/または同定および/または定量の視覚化を可能にするためである。
他の特異的な基質として、従来微生物の検出に使用されている任意の他の基質を使用してもよい。他の特異的な酵素基質の濃度は、通常は0.01から1g/lである。当業者は、使用する基質に従って上記の濃度を容易に決定することができる。例えば、ペプチダーゼ、オシダーゼ、エステラーゼまたはレダクターゼ酵素基質と本発明の化合物を組合わせることが可能である。
【0015】
本発明のある特定の実施態様によれば、本発明の前記検出および/または同定培地は、ニトロレダクターゼ活性に特異的な少なくとも一つの別の酵素基質を追加的に含む。従って、基質の特定の選択によって、同じ酵素活性を発現している微生物のグループを同定することが可能である。他の特異的な酵素基質の濃度は、通常0.01から1g/lである。当業者は、使用する基質に従って、上記の濃度を容易に決定することが可能である。
本発明のある特定の実施態様によれば、本発明の前記検出および/または同定培地は、本発明の化合物によって検出されるものとは異なるの代謝活性に特異的な、少なくとも一つの代謝指示薬を追加的に含む。
この代謝指示薬は、特に炭素または窒素源であってもよく、場合によりその代謝を検出する試薬と組合わせられる。
下記の実施例は説明として与えられるものであり、全く限定するものではない。それらはよりよく本発明を理解することを可能にする。
【実施例】
【0016】
実施例1−基質の合成
2−(4’−ニトロスチリルキノリン)は、Skidmore and Tidd (S. Skidmore and E. Tidd, Journal of the Chemical Society, 1959, 1641-1645)の方法に従って調製した。ヨード化N−メチル−4−(4’ニトロスチリルキノリニウム)は、ヨード化N−メチル−4−メチルキノリニウムからBahner et al. (C. Bahner, J. Dale, J. Fain, E. Franklin, J. Goan, W. Stump, M. West and J. Wilson, Journal of Organic Chemistry, 1957, 22, 1110)の方法に従って調製された。ヨード化N−メチル−2−(4’−ニトロスチリルキノリニウム)は類似の方法で得られた[1H-NMR (d6-DMSO): d 9.20 (1H, d, J=7 Hz, ArH), 8.62 (2H, m, ArH), 8.42-8.18 (9H, m, ArH and >CH=), 4.62 (3H, s, NCH3)]。

典型的な基質の他の例は、上記のものと類似の方法で得られた。

ヨード化N−メチル-4-(4’-ニトロ-2’-メトキシスチリルキノリニウム):この化合物はヨード化N-メチル-4-メチルキノリニウム及び4-ニトロ-2-メトキシ-ベンズアルデヒドから調製された。
1H-NMR (d6-DMSO): d 9.40 (1H, d, J 6 Hz, ArH), 8.88 (1H, d, J=8 Hz, ArH), 8.58-7.90 (9H, m, ArH and >CH=), 4.58 (3H, s, NCH3), 4.08 (3H, s, -OCH3).

ヨード化N−メチル−2−(4’−ニトロフェニル−1,3−ブタジエニル)−キノリニウム:この化合物はヨード化N−メチル−2−メチルキノリニウム及び4−ニトロシンナムアルデヒドから調製される。
1H-NMR (d6-DMSO): d 9.80 (1H, d, J=8 Hz, ArH), 8.52 (2H, m), 8.38-7.86 (8H, m, ArH and >CH=), 7.70 (2H, m >CH=), 7.35 (1H, d, J=18 Hz, >CH=), 4.50 (3H, s, NCH3).
【0017】
実施例2−ニトロレダクターゼ活性を検出するための本発明の式Iの基質の使用
a)ニトロレダクターゼ基質
化合物2−(4’−ニトロスチリル)キノリン(2NSQ)、2−(4’−ニトロスチリル)−N−メチルキノリニウム ヨージド(2NSMQI)、2−(4’−ニトロフェニル)ブタジエニル−N−メチルキノリニウム ヨージド(2NPBMQI)、4−(4’−ニトロスチリル)−N−メチルキノリニウム ヨージド(4NSMQI)及び4−(4’−ニトロ−2’−メトキシスチリル)−N−メチルキノリニウム ヨージド(4NMSMQI)は実施例1に記載のとおりに合成した。
b)培地の調製
40mgの各基質は、4mlのジメチルスルホキシドに溶解し、前もってオートクレーブされた400mlのコロンビア培地に加えた。5つの培地は、皿につき20mlの割合で直径90mmのシャーレに分配された。
c)接種とインキュベーション
コレクションから得た微生物の17の菌株であって、細菌と酵母の様々な種に属するものは、約10000のコロニー形成単位のスポットとして接種をされる。培地は37℃で24時間インキュベートされ、次に形成されたコロニーは視覚的に及び365nmのUVランプ下で調べられる。
d)結果の読みとり
得られた結果を表1に示す。


e)結論
本発明の培地において、コロニーの蛍光又は色を用いて、微生物のニトロレダクターゼ活性を検出することが可能である。
多くの場合、基質は、本発明の任意の種類の微生物(グラム陰性菌、グラム陽性菌、酵母など)の増殖を可能にする。
本発明のニトロレダクターゼ基質の構造の様々な変化を用いて、微生物のさまざまなグループを区別すること及びコロニーのさまざまな色を得ることが可能である。さらに、色が反応培地中に拡散にしないので、ニトロレダクターゼ活性を発現する細胞またはコロニーを、独立にそれを発現していないものから区別してカウントすることが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニトロレダクターゼ活性の検出のための酵素基質としての、以下の式(I)の化合物:

[式中、
・W、W、W及びWは、独立にH、Br、Cl、F、I、アルキル、アルコキシ、チオメチル、ペルフルオロアルキル、ニトロ、シアノ、カルボキシル(そのエステルまたはアミドを含む)またはそれらの任意の組合せである。
・n=0、1または2。
・UはN又はNRであり且つVはCZN又はNRであるか、またはVはN又はNRであり且つUはCZであり、RはH、アルキル、アラルキル、アリール、アルカノイル又はアルキルスルホニルである。
・Z、Z、Z、Z、Z及びZは独立にH、Br、Cl、F、I、アルキル、アリール、アルコキシ、ペルフルオロアルキル、ニトロ、シアノ、カルボキシル、スルホニル(カルボキシルまたはスルホニルのエステルまたはアミドを含む)である。]
及びその塩類の使用。
【請求項2】
ニトロレダクターゼ活性の検出及びpH変化の指示薬のための酵素基質としての、以下の式(I)の化合物:

[式中、
・W、W、W及びWは、独立にH、Br、Cl、F、I、アルキル、アルコキシ、チオメチル、ペルフルオロアルキル、ニトロ、シアノ、カルボキシル(そのエステルまたはアミドを含む)またはそれらの任意の組合せである。
・n=0、1または2。
・UはN又はNRであり且つVはCZN又はNRであるか、またはVはN又はNRであり且つUはCZであり、RはH、アルキル、アラルキル、アリール、アルカノイル又はアルキルスルホニルである。
・Z、Z、Z、Z、Z及びZは独立にH、Br、Cl、F、I、アルキル、アリール、アルコキシ、ペルフルオロアルキル、ニトロ、シアノ、カルボキシル、スルホニル(カルボキシルまたはスルホニルのエステルまたはアミドを含む)である。]
及びその塩類の使用。
【請求項3】
n=1である、請求項1又は2に記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項4】
、W、W及びWは独立にHである、請求項1から3の何れか一項に記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項5】
UはN又はNRであり、VはCZである、請求項1から4の何れか一項に記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項6】
VはN又はNRであり、UはCZである、請求項1から4の何れか一項に記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項7】
、Z、Z、Z、Z及びZはHである、請求項1から6の何れか一項に記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項8】
前記化合物は、前記化合物は2−(4’−ニトロスチリル)キノリン(2NSQ)、2−(4’−ニトロスチリル)−N−メチルキノリニウム ヨージド(2NSMQI)、2−(4’−ニトロフェニル)ブタジエニル−N−メチルキノリニウム ヨージド(2NPBMQI)、4−(4’−ニトロスチリル)−N−メチルキノリニウム ヨージド(4NSMQI)及び4−(4’−ニトロ−2’−メトキシスチリル)−N−メチルキノリニウム ヨージド(4NMSMQI)、4−(4’−ニトロフェニル)−2−メチルキノリン、2−(4’−ニトロスチリル)−N−メチルキノリニウム TFA、4−(4’−ニトロスチリル)−N−ベンジルキノリニウム TFA、4−(4’−ニトロスチリル)−N−メチルキノリニウム クロリド、4−(4’−ニトロスチリル)キナルジニウム ヒドロブロミド、4−(4’−ニトロスチリル)キナルジニウム メチオジド、4−(4’−ニトロスチリル)キノリン TFA、2−(2’−ピリジル)−4−(4’’−ニトロスチリル)キノリン、4−(4’−ニトロスチリル)−N−メチルキノリニウム TFAから選択される、請求項1又は2に記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項9】
ニトロレダクターゼ活性を微生物において検出する方法であって、
a)式(I)の化合物:

[式中、
・W、W、W及びWは、独立にH、Br、Cl、F、I、アルキル、アルコキシ、チオメチル、ペルフルオロアルキル、ニトロ、シアノ、カルボキシル(そのエステルまたはアミドを含む)またはそれらの任意の組合せである。
・n=0、1または2。
・UはN又はNRであり且つVはCZN又はNRであるか、またはVはN又はNRであり且つUはCZであり、RはH、アルキル、アラルキル、アリール、アルカノイル又はアルキルスルホニルである。
・Z、Z、Z、Z、Z及びZは独立にH、Br、Cl、F、I、アルキル、アリール、アルコキシ、ペルフルオロアルキル、ニトロ、シアノ、カルボキシル、スルホニル(カルボキシルまたはスルホニルのエステルまたはアミドを含む)である。]
及びその塩類を含んでなる検出および/または同定培地を利用可能にし、
b)培地に試験される生物試料を接種し、
c)インキュベーションに置き、及び
d)少なくとも一つのニトロレダクターゼ活性の存在を検出する工程
を含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
ニトロレダクターゼ活性及びpH変化を微生物において検出する方法であって、
a)式(I)の化合物:

[式中、
・W、W、W及びWは、独立にH、Br、Cl、F、I、アルキル、アルコキシ、チオメチル、ペルフルオロアルキル、ニトロ、シアノ、カルボキシル(そのエステルまたはアミドを含む)またはそれらの任意の組合せである。
・n=0、1または2。
・UはN又はNRであり且つVはCZN又はNRであるか、またはVはN又はNRであり且つUはCZであり、RはH、アルキル、アラルキル、アリール、アルカノイル又はアルキルスルホニルである。
・Z、Z、Z、Z、Z及びZは独立にH、Br、Cl、F、I、アルキル、アリール、アルコキシ、ペルフルオロアルキル、ニトロ、シアノ、カルボキシル、スルホニル(カルボキシルまたはスルホニルのエステルまたはアミドを含む)である。]
及びその塩類を含んでなる検出および/または同定培地を利用可能にし、
b)培地に試験される生物試料を接種し、
c)インキュベーションに置き、
d)少なくとも一つのニトロレダクターゼ活性の存在を検出する工程
を含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
式(I)の化合物:

[式中、
・W、W、W及びWは、独立にH、Br、Cl、F、I、アルキル、アルコキシ、チオメチル、ペルフルオロアルキル、ニトロ、シアノ、カルボキシル(そのエステルまたはアミドを含む)またはそれらの任意の組合せである。
・n=0、1または2。
・UはN又はNRであり且つVはCZN又はNRであるか、またはVはN又はNRであり且つUはCZであり、RはH、アルキル、アラルキル、アリール、アルカノイル又はアルキルスルホニルである。
・Z、Z、Z、Z、Z及びZは独立にH、Br、Cl、F、I、アルキル、アリール、アルコキシ、ペルフルオロアルキル、ニトロ、シアノ、カルボキシル、スルホニル(カルボキシルまたはスルホニルのエステルまたはアミドを含む)である。]
及びその塩類を含む微生物の検出および/または同定のための培地。
【請求項12】
少なくとも一つの化合物であって、その代謝が前記培地のpH変化を生じさせる化合物を更に含む、請求項11に記載の微生物の検出および/または同定のための培地。

【公表番号】特表2013−500039(P2013−500039A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522236(P2012−522236)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際出願番号】PCT/FR2010/051621
【国際公開番号】WO2011/012824
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(304043936)ビオメリュー (26)
【氏名又は名称原語表記】BIOMERIEUX
【Fターム(参考)】