説明

新規メタロポリマー

【課題】サーモクロミズムなどで高機能性を示す有機-無機複合材料を提供する。
【解決手段】2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジアルデヒドとアミンとを反応させ2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジイミンを合成した後、周期表第4周期の亜鉛、銅、ニッケル、コバルト、マンガン、または鉄から選ばれた遷移金属化合物とを反応させ、式(I)で示されるメタロポリマーを簡便に合成する製法、および、その用途。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱応答性を有する新規メタロポリマー、ならびにその製法及び有機材料、有機電子材料、及び有機機能性色素としての用途に関する。
【背景技術】
【0002】
メタロポリマーとは広く金属原子を含む高分子を指し、例えば、配位高分子(coordination polymer)及び高分子金属錯体(macromolecular metal complex)などがある。メタロポリマーに含まれる金属原子の役割は主に以下の三つが挙げられる。
(1) 分子をつなぐ配位結合としての役割
金属イオンとOやNなどのヘテロ原子は配位結合という一種の共有結合を形成する。複数の金属イオンに配位するように有機分子(配位子)を設計すれば、配位結合によって有機分子が重合したメタロポリマーをつくることができる。
(2) 機能を担う金属錯体しての役割
メタロポリマーは金属原子と有機分子が共有結合(配位結合を含む)することによって連結されており、その結合部位は金属錯体としての性質を有する。金属錯体の中には電子的、光学的、光化学的な機能を有するものが多く、金属の種類と有機分子の組み合わせによって、メタロポリマーの性質や機能を調整することができる。
(3) 高次構造を制御する配位結合としての役割
配位結合の特徴は金属イオンの種類に特有の方向性を有する点にある。この特徴により、金属イオンに配位する有機分子中のヘテロ原子が規則的に並び,有機分子のコンホメーションが制御される。例えば柔軟な構造をもつ有機分子でも、金属との配位によって平面に固定することができる。
【0003】
π共役系分子を配位子とするメタロポリマーが、d−π電子系間の相互作用に基づく電子的・光学的機能の観点から注目されている。金属イオンの多くは電子を可逆的に出し入れできるレドックス活性という性質を有する。そこで配位子となる有機分子にもレドックス活性を持つものを用いれば金属−配位子間で電子のやり取りが可能になると考えられる。有機分子を重合することで電子の行動範囲が広がり、コンホメーション制御によって分子の集積状態が変わるので、分子間相互作用によってメタロポリマーの機能が調整され得ると考えられる。例えば、ある特定の電圧をかけると誘電率、磁性、色などが変化するプラスティックを開発できる可能性がある。
【0004】
温度によって物質の吸収スペクトルが変わる現象をサーモクロミズムというが、そのようなサーモクロミズムを示す物質は従来からいくつか開発されており、温度インジケーター、サーモメーター、感熱記録材料などに利用されている(特許文献1〜6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−169215号公報
【特許文献2】特開2005−68091号公報
【特許文献3】特開平11−209339号公報
【特許文献4】特開平8−239473号公報
【特許文献5】特開平7−179040号公報
【特許文献6】特開平5−255363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のサーモクロミズムを示す物質のほとんどは有機分子で構成されており、それゆえ繰り返し耐久性や高温に対する耐久性に問題がある。
また、π共役系分子を配位子とするメタロポリマーには、合成上の取り扱いや系統的な化学修飾が容易ではなく、溶解性も低いとあって、合成が煩雑という問題もある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者らは、鋭意研究を行った結果、サーモクロミズムなどで高機能性を示す有機−無機複合材料を提供する新規メタロポリマーを簡便に合成することができ、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、式(I):
【0009】
【化1】


〔式中、各Rは、互いに独立して、炭素数1〜18の直鎖又は分岐のあるアルキル基であり、ここで、該アルキル基は、非置換であるか又は−OH、−C(=O)OH、−O−C(=O)H、−NH、=NH、−NHC(=O)H、−C(=O)NH、若しくは芳香環で置換されており、ならびに/あるいは該アルキル基は、アルキル鎖の中間に−CH=CH−、−C≡C−、−O−、−C(=O)O−、−O−C(=O)−、−NH−、=N−、−N=、−NHC(=O)−、若しくは−C(=O)NH−を含んでもよく;Mは二価の遷移金属イオンである〕で示されるメタロポリマー、ならびにその製法及び用途に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のメタロポリマーは簡便に合成できる。また、本発明のメタロポリマーは、サーモクロミズムなどの機能性に優れており、しかもメタロポリマーとしての性質上、熱に対して耐久性が高いことから、刺激応答材料、特に熱応答材料として有用である。また、本発明のメタロポリマーの吸収スペクトルの温度依存性が上記式(I)中のR基の種類に依存しているから、ポリマー鎖間の相互作用によってサーモクロミズムの機構を調整することもできる。これは、R基がポリマー鎖間の相互作用に影響を及ぼすことによって、錯結合部分によるサーモクロミズムの機構を調整するためなどと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】メタロポリマーpoly-NiL(Oc)の分光吸収スペクトルである。
【図2】メタロポリマーpoly-NiL(Me)の分光吸収スペクトルである。
【図3】メタロポリマーpoly-NiL(tert-Bu)の分光吸収スペクトルである。
【図4】メタロポリマーpoly-NiL(Bn)の分光吸収スペクトルである。
【図5】メタロポリマーpoly-NiL(Oc)の各温度における分光吸収スペクトルである。
【図6】メタロポリマーpoly-NiL(Me)の各温度における分光吸収スペクトルである。なお、*は温度変化前、**は温度変化後の25℃におけるスペクトルであることをそれぞれ意味する。図7でも同様である。
【図7】メタロポリマーpoly-NiL(Bn)の各温度における分光吸収スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の各Rにおける炭素数1〜18の直鎖又は分岐のあるアルキル基は、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、又はイソプロピル、あるいは直鎖状又は分岐鎖状のブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、又はオクタデシルなどを意味する。
【0013】
本発明の各Rにおけるアルキル基は、非置換であるか又は芳香環などで置換されている。本発明の芳香環には芳香族炭素環及び芳香族複素環が包含される。
上記芳香族炭素環は、環員が、例えば5〜16員、好ましくは6〜10員であってもよく、環の数が、例えば1〜4個、好ましくは1個であってもよい。このような芳香族炭素環として、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ピレン環などが挙げられ、配位子の溶解度の点からベンゼン環、ナフタレン環などが好ましい。
上記芳香族複素環は、例えば、窒素、酸素、及び硫黄から選択されるヘテロ原子を少なくとも1個含み、環員が、例えば5〜16員、好ましくは6〜10員であってもよく、環の数が、例えば、1〜2個、好ましくは1個であってもよい。このような芳香族複素環として、例えば、6員の単環、例えば、ピリジン環、又はキノリン環などが挙げられ、配位子の溶解度の点からピリジン環などが好ましい。
また、本発明の芳香環は、非置換であるか、又は炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のアルコキシ基、炭素数1〜18のアシル基、炭素数1〜8のアミド基、若しくはカルバモイル基で置換されている。
【0014】
本発明の各Rにおけるアルキル基でアルキル鎖の中間に含まれてもよい基として、極性溶媒への溶解度の点から−O−基が好ましい。
また、本発明の各Rにおけるアルキル基でアルキル鎖の末端は、極性溶媒への親和性の点から−OH基で置換されているのが好ましい。
【0015】
本発明の新規なメタロポリマーにおいて、各Rは、互いにすべて異なっていても同一であってもよいし、あるいは一部が同一で一部が異なってもよいが、すべて同一であることが好ましい。
【0016】
本発明の二価の遷移金属イオンは、配位子である式(II)で示される2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジイミン化合物に結合(配位)するものであれば特に制限されないが、好ましくは、周期表第4周期の遷移金属元素から選択されるものであり、特には、亜鉛(II)、銅(II)、ニッケル(II)、コバルト(II)、マンガン(II)、及び鉄(II)、とりわけニッケル(II)である。
【0017】
本発明の新規なメタロポリマーにおいて、各Rがいずれも芳香環で置換された炭素数1〜18の直鎖又は分岐のあるアルキル基、特にベンジル基であり;かつMが、亜鉛(II)、銅(II)、ニッケル(II)又は鉄(III)、特にニッケル(II)であるのが好ましい。
【0018】
本発明の式(I)のnは特に制限されないが、通常1〜30の整数であり、好ましくは3〜10の整数であり、より好ましくは5〜6の整数である。
【0019】
本発明のメタロポリマーの製法は特に制限されないが、以下のスキームに示される工程に従って簡便に製造することができる。
【0020】
【化2】

【0021】
上記スキームの工程1では、2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジアルデヒドを、種々のアルキルアミン又は芳香族アミンといったアミン化合物(R−NH、ここで、Rは前述の式(I)で定義されたとおりである)と、例えばメタノールなどのアルコール中で反応させて、2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジイミン化合物(II)を合成する。出発物質の2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジアルデヒド及びアミン化合物はいずれも市販されているか、公知の方法で製造できる。例えば、2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジアルデヒドは、「H. Houjou, T. Motoyama, S. Banno, I. Yoshikawa, K. Araki, "Experimental and theoretical studies on constitutional isomers of 2,6-dihydroxynaphthalene carbaldehydes. Effects of resonance-assisted hydrogen bonding on the electronic absorption spectra", J. Org. Chem. 74 (2009) 520-529」の記載に基づいて製造することができる。
工程2では、工程1で合成した2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジイミン化合物(II)を、例えばテトラヒドロフラン、クロロホルム、又はジメチルホルムアミドなどの有機溶媒、好ましくはクロロホルムに溶かし、そこに遷移金属化合物(MX)、例えば遷移金属塩をメタノールなどのアルコールに溶解させた溶液を加え、好ましくは加熱下、より好ましくは還流下におくと、2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジイミン化合物(II)の水素イオンと遷移金属イオンが交換されて高分子状の錯体が形成されて沈殿が生じる。ろ過により回収して本発明のメタロポリマー(I)を得る。
特に、工程2では、2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジイミン化合物(II)を、クロロホルムに溶かし、そこに遷移金属化合物(MX)をメタノールに溶解させた溶液を加え、加熱、とりわけ還流させると、より高い分子量で熱的安定性にも優れたメタロポリマー(I)が得られる点で、好ましい。
【0022】
本発明おいて遷移金属化合物:MXは、二価の遷移金属イオン、好ましくは周期表第4周期の遷移金属から選択されるもの、特に好ましくは亜鉛(II)、銅(II)、ニッケル(II)、コバルト(II)、マンガン(II)、又は鉄(II)を式(II)の配位子に供給して式(I)のメタロポリマーを形成させうるものであれば特に制限されない。本発明に使用する遷移金属化合物の例としては、上記遷移金属の塩、例えば上記遷移金属の低価数の無機酸塩、有機酸塩、又は錯塩の形で一般に使用されるものが挙げられる。そのような遷移金属化合物としては、アセチルアセトン亜鉛(II)、アセチルアセトン銅(II)、アセチルアセトンニッケル(II)、アセチルアセトンコバルト(II)、アセチルアセトンマンガン(II)、塩化亜鉛(II)、塩化コバルト(II)、塩化鉄(II)、炭酸亜鉛(II)、炭酸コバルト(II)、炭酸マンガン(II)、酸化コバルト(II)、酢酸亜鉛(II)、酢酸銅(II)、酢酸ニッケル(II)、酢酸コバルト(II)、酢酸マンガン(II)、ステアリン酸亜鉛(II)、ステアリン酸コバルト(II)、ステアリン酸マンガン(II)、乳酸亜鉛(II)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。酢酸亜鉛(II)、酢酸銅(II)、酢酸ニッケル(II)、又は塩化鉄(II)の使用が好ましい。
【0023】
本発明のメタロポリマーの性状、光学的性質、及び熱応答性は以下のとおりである。
(性状)
本発明のメタロポリマーは、Rの種類、Mの種類に応じて、赤色〜黄褐色、ゲル状又は粉末状など様々な性状を示す。本発明のメタロポリマーは乾燥により固体粉末となり、薬匙の裏面等の固いものでガラス板上にこすりつけると、薄膜を形成することができる。
(光学的性質)
本発明のメタロポリマーは、乾燥した粉末状態では暗赤褐色〜黄褐色の固体であるが、厚さ数ミクロン程度の薄膜にすると光を透過する。透過光は赤褐色〜黄褐色で、Rの種類、Mの種類により異なる。
(熱応答性)
本発明のメタロポリマーは−180℃〜210℃の温度範囲において分解することなく、安定である。ガラス基板上に形成した本発明のメタロポリマーは、加熱又は冷却によって、色調が変化する。色調は、温度変化に応じて可逆又は不可逆に変化し、色調と温度の関係及び可逆性はRの種類によって異なる。
【実施例】
【0024】
以下に実施例を示し、本発明の詳細を説明するが、これらの実施例は本発明を限定することを意図するものではない。
【0025】
[実施例1]
2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジアルデヒド(216 mg)を20 mLのメタノールに懸濁させて、その懸濁液にオクチルアミン(258 mg)を加えた。24時間攪拌した後、懸濁液をろ過して2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジオクチルイミンを回収した。2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジオクチルイミン(44 mg)を10 mLのテトラヒドロフランに溶解し、そこに別途調製した酢酸ニッケル四水和物のメタノール溶液を、配位子と金属イオンのモル比が1対1になるように加えた。反応溶液中に生じた暗赤色ゲル状沈殿をろ過によって回収し、減圧下で乾燥してメタロポリマーpoly-NiL(Oc)を得た。
【0026】
[実施例2]
2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジアルデヒド(216 mg)を20 mLのメタノールに懸濁させて、その懸濁液にメチルアミン(62 mg)を加えた。24時間攪拌した後、懸濁液をろ過して2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジメチルイミンを回収した。2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジメチルイミン(24 mg)を10 mLのテトラヒドロフランに溶解し、そこに別途調製した酢酸ニッケル四水和物のメタノール溶液を、配位子と金属イオンのモル比が1対1になるように加えた。反応溶液中に生じた黄褐色粉末状沈殿をろ過によって回収し、減圧下で乾燥してメタロポリマーpoly-NiL(Me)を得た。
【0027】
[実施例3]
2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジアルデヒド(216 mg)を20 mLのメタノールに懸濁させて、その懸濁液にイソプロピルアミン(118 mg)を加えた。24時間攪拌した後、懸濁液をろ過して2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジイソプロピルイミンを回収した。2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジイソプロピルイミン(30 mg)を10 mLのテトラヒドロフランに溶解し、そこに別途調製した酢酸ニッケル四水和物のメタノール溶液を、配位子と金属イオンのモル比が1対1になるように加えた。反応溶液中に生じた黄褐色粉末状沈殿をろ過によって回収し、減圧下で乾燥してメタロポリマーpoly-NiL(i-Pr)を得た。
【0028】
[実施例4]
2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジアルデヒド(216 mg)を20 mLのメタノールに懸濁させて、その懸濁液にtert-ブチルアミン(146 mg)を加えた。24時間攪拌した後、懸濁液をろ過して2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジtert-ブチルイミンを回収した。2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジtert-ブチルイミン(33 mg)を10 mLのテトラヒドロフランに溶解し、そこに別途調製した酢酸ニッケル四水和物のメタノール溶液を、配位子と金属イオンのモル比が1対1になるように加えた。反応溶液中に生じた黄褐色粉末状沈殿をろ過によって回収し、減圧下で乾燥してメタロポリマーpoly-NiL(tert-Bu)を得た。
【0029】
[実施例5]
2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジアルデヒド(216 mg)を20 mLのメタノールに懸濁させて、その懸濁液にペンチルアミン(176 mg)を加えた。24時間攪拌した後、懸濁液をろ過して2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジペンチルイミンを回収した。2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジペンチルイミン(35 mg)を10 mLのテトラヒドロフランに溶解し、そこに別途調製した酢酸ニッケル四水和物のメタノール溶液を、配位子と金属イオンのモル比が1対1になるように加えた。反応溶液中に生じた暗赤色ゲル状沈殿をろ過によって回収し、減圧下で乾燥してメタロポリマーpoly-NiL(Pen)を得た。
【0030】
[実施例6]
2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジアルデヒド(216 mg)を20 mLのメタノールに懸濁させて、その懸濁液にヘキシルアミン(202 mg)を加えた。24時間攪拌した後、懸濁液をろ過して2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジヘキシルイミンを回収した。2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジヘキシルイミン(38 mg)を10 mLのテトラヒドロフランに溶解し、そこに別途調製した酢酸ニッケル四水和物のメタノール溶液を、配位子と金属イオンのモル比が1対1になるように加えた。反応溶液中に生じた暗赤色ゲル状沈殿をろ過によって回収し、減圧下で乾燥してメタロポリマーpoly-NiL(Hex)を得た。
【0031】
[実施例7]
2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジアルデヒド(216 mg)を20 mLのメタノールに懸濁させて、その懸濁液にセチルアミン(483 mg)を加えた。24時間攪拌した後、懸濁液をろ過して2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジセチルイミンを回収した。2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジセチルイミン(66 mg)を10 mLのクロロホルムに溶解し、そこに別途調製した酢酸ニッケル四水和物のメタノール溶液を、配位子と金属イオンのモル比が1対1になるように加えた。反応溶液中に生じた暗赤色ゲル状沈殿をろ過によって回収し、減圧下で乾燥してメタロポリマーpoly-NiL(Cet)を得た。
【0032】
[実施例8]
2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジアルデヒド(216 mg)を20 mLのメタノールに懸濁させて、その懸濁液にベンジルアミン(214 mg)を加えた。24時間攪拌した後、懸濁液をろ過して2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジベンジルイミンを回収した。2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジベンジルイミン(39 mg)を10 mLのテトラヒドロフランに溶解し、そこに別途調製した酢酸ニッケル四水和物のメタノール溶液を、配位子と金属イオンのモル比が1対1になるように加えた。反応溶液中に生じた黄褐色ゲル状沈殿をろ過によって回収し、減圧下で乾燥してメタロポリマーpoly-NiL(Bn)を得た。
【0033】
[実施例9]
2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジアルデヒド(216 mg)を20 mLのメタノールに懸濁させて、その懸濁液にR-1-フェネチルアミン(242 mg)を加えた。24時間攪拌した後、懸濁液をろ過して2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジR-1-フェネチルイミンを回収した。2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジR-1-フェネチルイミン(42 mg)を10 mLのテトラヒドロフランに溶解し、そこに別途調製した酢酸ニッケル四水和物のメタノール溶液を、配位子と金属イオンのモル比が1対1になるように加えた。反応溶液中に生じた黄褐色ゲル状沈殿をろ過によって回収し、減圧下で乾燥してメタロポリマーpoly-NiL(R-PhE)を得た。
【0034】
[実施例10]
2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジアルデヒド(216 mg)を20 mLのメタノールに懸濁させて、その懸濁液にS-1-フェネチルアミン(42 mg)を加えた。24時間攪拌した後、懸濁液をろ過して2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジS-1-フェネチルイミンを回収した。2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジS-1-フェネチルイミン(42 mg)を10 mLのテトラヒドロフランに溶解し、そこに別途調製した酢酸ニッケル四水和物のメタノール溶液を、配位子と金属イオンのモル比が1対1になるように加えた。反応溶液中に生じた黄褐色ゲル状沈殿をろ過によって回収し、減圧下で乾燥してメタロポリマーpoly-NiL(S-PhE)を得た。
【0035】
[実施例11]
2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジアルデヒド(216 mg)を20 mLのメタノールに懸濁させて、その懸濁液にピコリルアミン(216 mg)を加えた。24時間攪拌した後、懸濁液をろ過して2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジピコリルイミンを回収した。2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジピコリルイミン(40 mg)を10 mLのクロロホルムに溶解し、そこに別途調製した酢酸ニッケル四水和物のメタノール溶液を、配位子と金属イオンのモル比が1対1になるように加えた。反応溶液中に生じた黄褐色ゲル状沈殿をろ過によって回収し、減圧下で乾燥してメタロポリマーpoly-NiL(Pic)を得た。
【0036】
[実施例12]
2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジアルデヒド(216 mg)を20 mLのメタノールに懸濁させて、その懸濁液にメチルアミンの50%水溶液(メチルアミン62 mg含有)を加えた。24時間攪拌した後、懸濁液をろ過して2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジメチルイミンを回収した。2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジメチルイミン(120 mg)を12.5 mLのテトラヒドロフランに溶解し、そこに別途調製した酢酸ニッケル四水和物のメタノール溶液1 mLを、配位子と金属イオンのモル比が1対1になるように加え、24時間還流した。反応溶液中に生じた黄褐色ゲル状沈殿をろ過によって回収し、減圧下で乾燥してメタロポリマーpoly-NiL(Me)を得た。
【0037】
[実施例13]
2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジアルデヒド(216 mg)を20 mLのメタノールに懸濁させて、その懸濁液にヘキシルアミン(202 mg)を加えた。24時間攪拌した後、懸濁液をろ過して2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジヘキシルイミンを回収した。2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジヘキシルイミン(190 mg)を12.5 mLのクロロホルムに溶解し、そこに別途調製した酢酸ニッケル四水和物のメタノール溶液1 mLを、配位子と金属イオンのモル比が1対1になるように加え、24時間還流した。反応溶液中に生じた暗赤色ゲル状沈殿をろ過によって回収し、減圧下で乾燥してメタロポリマーpoly-NiL(Hx)を得た。
【0038】
[実施例14]
2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジアルデヒド(216 mg)を20 mLのメタノールに懸濁させて、その懸濁液にへプチルアミン(230 mg)を加えた。24時間攪拌した後、懸濁液をろ過して2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジへプチルイミンを回収した。2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジへプチルイミン(205 mg)を12.5 mLのクロロホルムに溶解し、そこに別途調製した酢酸ニッケル四水和物のメタノール溶液1 mLを、配位子と金属イオンのモル比が1対1になるように加え、24時間還流した。反応溶液中に生じた暗赤色ゲル状沈殿をろ過によって回収し、減圧下で乾燥してメタロポリマーpoly-NiL(Hp)を得た。
【0039】
[実施例15]
2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジアルデヒド(216 mg)を20 mLのメタノールに懸濁させて、その懸濁液にオクチルアミン(258 mg)を加えた。24時間攪拌した後、懸濁液をろ過して2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジオクチルイミンを回収した。2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジオクチルチルイミン(220 mg)を12.5 mLのクロロホルムに溶解し、そこに別途調製した酢酸ニッケル四水和物のメタノール溶液1 mLを、配位子と金属イオンのモル比が1対1になるように加え、24時間還流した。反応溶液中に生じた暗赤色ゲル状沈殿をろ過によって回収し、減圧下で乾燥してメタロポリマーpoly-NiL(Oc)を得た。
【0040】
[実施例16]
2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジアルデヒド(216 mg)を20 mLのメタノールに懸濁させて、その懸濁液にノニルアミン(286 mg)を加えた。24時間攪拌した後、懸濁液をろ過して2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジノニルイミンを回収した。2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジノニルイミン(235 mg)を12.5 mLのクロロホルムに溶解し、そこに別途調製した酢酸ニッケル四水和物のメタノール溶液1 mLを、配位子と金属イオンのモル比が1対1になるように加え、24時間還流した。反応溶液中に生じた暗赤色ゲル状沈殿をろ過によって回収し、減圧下で乾燥してメタロポリマーpoly-NiL(No)を得た。
【0041】
[実施例17]
2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジアルデヒド(216 mg)を20 mLのメタノールに懸濁させて、その懸濁液にデシルアミン(314 mg)を加えた。24時間攪拌した後、懸濁液をろ過して2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジデシルイミンを回収した。2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジデシルイミン(245 mg)を12.5 mLのクロロホルムに溶解し、そこに別途調製した酢酸ニッケル四水和物のメタノール溶液を、配位子と金属イオンのモル比が1対1になるように加え、24時間還流した。反応溶液中に生じた暗赤色ゲル状沈殿をろ過によって回収し、減圧下で乾燥してメタロポリマーpoly-NiL(Dec)を得た。
【0042】
[実施例18]
2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジアルデヒド(216 mg)を20 mLのメタノールに懸濁させて、その懸濁液にドデシルアミン(370 mg)を加えた。24時間攪拌した後、懸濁液をろ過して2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジドデシルイミンを回収した。2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジドデシルイミン(275 mg)を12.5 mLのクロロホルムに溶解し、そこに別途調製した酢酸ニッケル四水和物のメタノール溶液1 mLを、配位子と金属イオンのモル比が1対1になるように加え、24時間還流した。反応溶液中に生じた暗赤色ゲル状沈殿をろ過によって回収し、減圧下で乾燥してメタロポリマーpoly-NiL(Dod)を得た。
【0043】
[実施例19]
2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジアルデヒド(216 mg)を20 mLのメタノールに懸濁させて、その懸濁液にトリデシルアミン(398 mg)を加えた。24時間攪拌した後、懸濁液をろ過して2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジトリデシルイミンを回収した。2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジトリデシルイミン(290 mg)を12.5 mLのクロロホルムに溶解し、そこに別途調製した酢酸ニッケル四水和物のメタノール溶液1 mLを、配位子と金属イオンのモル比が1対1になるように加え、24時間還流した。反応溶液中に生じた暗赤色ゲル状沈殿をろ過によって回収し、減圧下で乾燥してメタロポリマーpoly-NiL(Trd)を得た。
【0044】
[実施例20]
2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジアルデヒド(216 mg)を20 mLのメタノールに懸濁させて、その懸濁液にテトラデシルアミン(426 mg)を加えた。24時間攪拌した後、懸濁液をろ過して2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジテトラデシルイミンを回収した。2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジテトラデシルイミン(305 mg)を12.5 mLのクロロホルムに溶解し、そこに別途調製した酢酸ニッケル四水和物のメタノール溶液1 mLを、配位子と金属イオンのモル比が1対1になるように加え、24時間還流した。反応溶液中に生じた暗赤色ゲル状沈殿をろ過によって回収し、減圧下で乾燥してメタロポリマーpoly-NiL(Ttd)を得た。
【0045】
[実施例21]
2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジアルデヒド(216 mg)を20 mLのメタノールに懸濁させて、その懸濁液にヘキサデシルアミン(482 mg)を加えた。24時間攪拌した後、懸濁液をろ過して2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジヘキサデシルイミンを回収した。2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジヘキサデシルイミン(330 mg)を12.5 mLのクロロホルムに溶解し、そこに別途調製した酢酸ニッケル四水和物のメタノール溶液1 mLを、配位子と金属イオンのモル比が1対1になるように加え、24時間還流した。反応溶液中に生じた暗赤色ゲル状沈殿をろ過によって回収し、減圧下で乾燥してメタロポリマーpoly-NiL(Hxd)を得た。
【0046】
[実施例22]
2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジアルデヒド(216 mg)を20 mLのメタノールに懸濁させて、その懸濁液にオクタデシルアミン(538 mg)を加えた。24時間攪拌した後、懸濁液をろ過して2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジオクタデシルイミンを回収した。2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジオクタデシルイミン(360 mg)を12.5 mLのクロロホルムに溶解し、そこに別途調製した酢酸ニッケル四水和物のメタノール溶液1 mLを、配位子と金属イオンのモル比が1対1になるように加え、24時間還流した。反応溶液中に生じた暗赤色ゲル状沈殿をろ過によって回収し、減圧下で乾燥してメタロポリマーpoly-NiL(Ocd)を得た。
【0047】
[実施例23]
2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジアルデヒド(430 mg)を100 mLのエタノールに懸濁させて、その懸濁液にω-アミノドデカン酸(860 mg)を加えた。24時間攪拌した後、懸濁液をろ過してエタノールとテトラヒドロフランでそれぞれ十分に洗浄し、2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジウンデシルイミン-12,12’-ジカルボン酸(以下「H2L(UndCO2H)」ともいう)を回収した(黄色固体1.13g, 93%)。H2L(UndCO2H)(2.44 g)とトリエチルアミン(0.81 g)を90 mLのジメチルホルムアミドに溶解し、そこに別途調製した酢酸ニッケル四水和物のメタノール溶液10 mLを、配位子と金属イオンのモル比が1対1になるように加え、24時間還流した。反応溶液中に生じた黄褐色ゲル状沈殿をろ過によって回収し、減圧下25℃で24時間乾燥してメタロポリマーpoly-NiL(UndCO2H)を得た(2.19 g, 82%)。
【0048】
[実施例24]
実施例18で製造した2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジドデシルイミン(2.18 g)と、H2L(UndCO2H)(0.024 g)とを、クロロホルム90 mlに懸濁させ、そこに別途調製した酢酸ニッケル四水和物のメタノール溶液10 mLを、配位子と金属イオンのモル比が1対1になるように加え、24時間還流した。反応溶液中に生じた赤褐色の沈殿をろ過し、メタノールおよびクロロホルムでそれぞれ十分に洗浄した。減圧下25℃で24時間乾燥して、メタロポリマーpoly-NiL(Dod)-co-1%-NiL(UndCO2H)(2.15 g, 88%)を得た。
【0049】
[実施例25]
実施例18で製造した2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジドデシルイミン(2.09 g)と、H2L(UndCO2H)(0.12 g)とを、クロロホルム90 mlに懸濁させ、そこに別途調製した酢酸ニッケル四水和物のメタノール溶液10 mLを、配位子と金属イオンのモル比が1対1になるように加え、24時間還流した。反応溶液中に生じた赤褐色の沈殿をろ過し、メタノールおよびクロロホルムでそれぞれ十分に洗浄した。減圧下25℃で24時間乾燥して、メタロポリマーpoly-NiL(Dod)-co-5%-NiL(UndCO2H)体(2.29 g, 94%)を得た。
【0050】
[実施例26]
実施例1のメタロポリマーpoly-NiL(Oc)を薬匙に適量とり、スライドガラス上に散布した。薬匙の裏面でpoly-NiL(Oc)をガラス表面にこすりつけることにより、薄膜を作成した。薄膜を光学顕微鏡で観察し、薄膜の色調が暗赤色であることを目視で確認するとともに、透過光を光ファイバーで分光器に導入して分光吸収スペクトルを記録した。スペクトルを図1に示した。
【0051】
[実施例27]
実施例2のメタロポリマーpoly-NiL(Me)を薬匙に適量とり、スライドガラス上に散布した。薬匙の裏面でpoly-NiL(Me)をガラス表面にこすりつけることにより、薄膜を作成した。薄膜を光学顕微鏡で観察し、薄膜の色調が黄褐色であることを目視で確認するとともに、透過光を光ファイバーで分光器に導入して分光吸収スペクトルを記録した。スペクトルを図2に示した。
【0052】
[実施例28]
実施例4のメタロポリマーpoly-NiL(tert-Bu)を薬匙に適量とり、スライドガラス上に散布した。薬匙の裏面でpoly-NiL(tert-Bu)をガラス表面にこすりつけることにより、薄膜を作成した。薄膜を光学顕微鏡で観察し、薄膜の色調が黄褐色であることを目視で確認するとともに、透過光を光ファイバーで分光器に導入して分光吸収スペクトルを記録した。スペクトルを図3に示した。
【0053】
[実施例29]
実施例8のメタロポリマーpoly-NiL(Bn)を薬匙に適量とり、スライドガラス上に散布した。薬匙の裏面でpoly-NiL(Bn)をガラス表面にこすりつけることにより、薄膜を作成した。薄膜を光学顕微鏡で観察し、薄膜の色調が黄褐色であることを目視で確認するとともに、透過光を光ファイバーで分光器に導入して分光吸収スペクトルを記録した。スペクトルを図4に示した。
【0054】
[実施例30]
実施例1のメタロポリマーpoly-NiL(Oc)を薬匙に適量とり、15mmφのカバーガラス上に散布した。薬匙の裏面でpoly-NiL(Oc)をガラス表面にこすりつけることにより、薄膜を作成した。カバーガラスを温度可変ステージにセットして、25℃において薄膜を光学顕微鏡で観察し、薄膜の色調が暗赤色であることを目視で確認するとともに、透過光を光ファイバーで分光器に導入して分光吸収スペクトルを記録した。ステージを-180℃に冷却し、次いで+180℃に加熱した。各温度におけるスペクトルを図5に示した。-180℃のスペクトルにおいては、波長530 nmのピークが25℃のスペクトルに比べて著しく尖鋭化した一方、180℃に加熱してもこのピーク形状はほとんど変化しなかった。
【0055】
[実施例31]
実施例2のメタロポリマーpoly-NiL(Me)を薬匙に適量とり、15mmφのカバーガラス上に散布した。薬匙の裏面でpoly-NiL(Me)をガラス表面にこすりつけることにより、薄膜を作成した。カバーガラスを温度可変ステージにセットして、25℃において薄膜を光学顕微鏡で観察し、薄膜の色調が暗赤色であることを目視で確認するとともに、透過光を光ファイバーで分光器に導入して分光吸収スペクトルを記録した。ステージを-180℃に冷却し、次いで+180℃に加熱した。各温度におけるスペクトルを図6に示した。-180℃のスペクトルは25℃のものと比べて大きな差異はみられなかった。180℃に加熱したところ、波長480 nmと500nmのピーク強度が小さくなった。再度25℃に降温したところ、スペクトルの形状は温度変化前の25℃のものに復元した。
【0056】
[実施例32]
実施例8のメタロポリマーpoly-NiL(Bn)を薬匙に適量とり、15mmφのカバーガラス上に散布した。薬匙の裏面でpoly-NiL(Bn)をガラス表面にこすりつけることにより、薄膜を作成した。カバーガラスを温度可変ステージにセットして、25℃において薄膜を光学顕微鏡で観察し、薄膜の色調が黄褐色であることを目視で確認するとともに、透過光を光ファイバーで分光器に導入して分光吸収スペクトルを記録した。ステージを-180℃に冷却し、次いで+180℃に加熱した。各温度におけるスペクトルを図7に示した。-180℃のスペクトルは25℃のものと比べて大きな差異はみられなかった。180℃に加熱したところ、波長480 nmのピーク強度が小さくなり、500nmのピークが消失した一方、530nmに鋭いピークが現れた。再度25℃に降温したところ、スペクトルの形状は温度変化前の25℃のものには復元せず、480nmと530nmにピークをもつスペクトルとなった。
【0057】
上記実施例で示したとおり、本発明のメタロポリマーを基板上に塗布して薄膜化したサンプルについて、顕微鏡下で観察し分光分析を行ったところ、紫外可視領域における吸収スペクトルが温度依存性を示すことが認められた。スペクトルの変化が温度の変化に対して可逆的なものと不可逆的なものとがあり、それは用いたアルキルアミンの種類に依存することも見出された。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のメタロポリマーは有機材料,有機電子材料,有機機能性色素材料に利用できる。例えば、温度インジケーター、サーモメーター、感熱記録材料、及び車外からの光の遮光等を目的として設置される車両用サンバイザなどに使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化3】


〔式中、各Rは、互いに独立して、炭素数1〜18の直鎖又は分岐のあるアルキル基であり、ここで、該アルキル基は、非置換であるか又は−OH、−C(=O)OH、−O−C(=O)H、−NH、=NH、−NHC(=O)H、−C(=O)NH、若しくは芳香環で置換されており、ならびに/あるいは該アルキル基は、アルキル鎖の中間に−CH=CH−、−C≡C−、−O−、−C(=O)O−、−O−C(=O)−、−NH−、=N−、−N=、−NHC(=O)−、若しくは−C(=O)NH−を含んでもよく;Mは二価の遷移金属イオンである〕で示されるメタロポリマー。
【請求項2】
Rが、オクチル、メチル、又はベンジルである、請求項1記載のメタロポリマー。
【請求項3】
二価の遷移金属イオンが、周期表第4周期の遷移金属から選択されるものである、請求項1又は2記載のメタロポリマー。
【請求項4】
二価の遷移金属イオンが、亜鉛(II)、銅(II)、ニッケル(II)、コバルト(II)、マンガン(II)、又は鉄(II)である、請求項3記載のメタロポリマー。
【請求項5】
請求項1記載の式(I):
【化4】


(式中、R及びMは、請求項1で定義されたとおりである)で示されるメタロポリマーの製造方法であって、
(工程1)2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジアルデヒド:
【化5】


に、式:R-NH(式中、Rは請求項1で定義されたとおりである)で示されるアミン化合物を反応させて、式(II):
【化6】


で示される2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジイミン化合物を合成する工程;及び
(工程2)工程1で合成された2,6-ジヒドロキシナフタレン-1,5-ジイミン化合物を遷移金属化合物と反応させて、式(I)で示されるメタロポリマーを得る工程
を含む方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項記載のメタロポリマーを含有する、有機機能性色素材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−74369(P2011−74369A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−194560(P2010−194560)
【出願日】平成22年8月31日(2010.8.31)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】