説明

新規抗病原性ペプチド

本発明は、抗病原性活性、特に、抗ウイルス活性または/および抗菌活性を有する単量体および多量体ペプチド化合物に関する。好ましい一態様では、本発明のペプチド化合物は、ウイルスエンベロープを保持しているか否かにかかわらず、広範囲のウイルス、DNAおよびRNAウイルスの両方に関して活性を有する。さらに、本発明は、医学的使用のための、すなわち、病原性感染症、特に、ウイルス感染症または/および細菌感染症の治療または予防のための、前記ペプチド化合物を含む組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗病原性活性、特に、抗ウイルス活性または/および抗菌活性を有する単量体および多量体ペプチド化合物に関する。好ましい一態様では、本発明のペプチド化合物は、ウイルスエンベロープを保持しているか否かにかかわらず、広範囲のウイルス、DNAおよびRNAウイルスの両方に関して活性を有する。さらに、本発明は、医学的使用のための、すなわち、病原性感染症、特に、ウイルス感染症または/および細菌感染症の治療または予防のための、前記ペプチド化合物を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトおよび家畜の細菌およびウイルス感染症には、毎年、何十億ドルもかかる。医学は、細菌およびウイルス感染症を防ぎ、治療するための新しい、より強力な薬剤を常に探索している。細菌感染症に対する広範な薬物が、細菌によって引き起こされる疾患の治療のために利用可能であるにもかかわらず、ウイスル疾患の治療は困難であることが多く、そのうち本当に有効であるものはほとんどない。実際、ウイルスは、哺乳類細胞に侵入し、そこで、ウイルスタンパク質の転写および翻訳ならびにウイルスゲノムの複製などのその機能の多くを実施する。したがって、ウイルスは、宿主の免疫系および宿主に投与される医薬の直接作用の両方をうまく逃れることができる。したがって、新規の有効な抗ウイルス薬を開発することの必要性が非常に高まっている。
【0003】
【表1】

【0004】
単純ヘルペスウイルスI型(HSV-1)は、口の周囲の有痛性再発性水疱(口唇ヘルペス)、および割合が漸増している再発性の性器感染症(性器ヘルペス)を引き起こす、よく見られるヒト病原体である。単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)は、一般に、性器ヘルペスと関係している。性器ヘルペス感染症は、世界で最も多く見られる性感染症(STD)の1種であり、若年成人の間の主要な公衆衛生上の問題である。HSVは、上皮細胞と相互作用し、この細胞種において複製して増殖する。次いで、HSVは、感染部位の知覚神経終末の軸索内から末梢神経節に輸送され、そこで、ウイルスは潜在感染を確立する(Garner、2003年)。ヘルペスのための現在利用可能な局所治療は、ほとんど無効であり、経口(全身)治療は、特に、性器ヘルペスの再発がよく起こる免疫不全患者における薬剤耐性生物の発生における懸念をもたらす。
【0005】
ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)は、ヘルペスウイルスのβサブファミリーのメンバーであり、HCMVはまた、ヒトヘルペスウイルス5(HHV5)とも呼ばれている。HCMVは、広範に分布するウイルス感染症であり、北米および北欧の一部の地域での30%から、アフリカ、アジアおよび南米の発展途上国の小児および成人におけるほぼ100%の血清有病率で世界中に分布している。正常な免疫適格性宿主におけるHCMV感染症は、通常、無症候性であるが、免疫学的に未熟な患者および免疫不全患者におけるような有効な免疫応答の不在下では重篤な疾患を引き起こし得る。HCMVは、3群の免疫不全宿主:1)免疫学的未熟性による胎児;2)細胞傷害性抗拒絶反応剤による同種移植レシピエント;3)CD4+および適応免疫応答を失っているHIV感染患者において疾患と関連してきた。通常、臨床的に影響を受ける主要な臓器系として、中枢神経系(CNS)、肺および消化管がある。網膜炎は、HCMV複製に直接的に起因する最も頻繁なCNS感染症であり、最も視力を脅かすものである。ガンシクロビル(サイトベン)、ホルカルネット(ホスカビル)およびHPMPC(シドホビル)をはじめとする現在の治療はすべて、用量関連毒性および薬物耐性突然変異体の発生に悩まされている(Landolfoら、2003年)。
【0006】
ヒトパピローマウイルス(HPV)は、DNAウイルスのパピローマウイルス科ファミリーのメンバーである。これまでに、100種を超えるHPVが同定されており、そのうち30種を超えるものが生殖器部に感染する(LowyおよびHowley、2001年)。生殖器HPV感染症は、最も一般的な性行為感染症であると推定されている。感染症の大部分は症状を全く引き起こさず、自己限定的であるが、生殖器HPVは、特定の種類の持続感染が、毎年、世界中で約250,000人の女性を死亡させる子宮頸癌を引き起こし得るので、主要な公衆衛生上の問題となってきた(Boschおよびde Sanjose、2003年)。現在の治療は、切除であり、ウイルス自体よりもHPVと関連している異常な細胞に向けられており、直接的な抗ウイルス治療は利用可能でない。生殖器HPV感染症の予防は、性器疣贅およびPap検査における異常ならびに子宮頸癌の有病率を低下させるために不可欠である。男性のコンドームは、HPV感染に対して部分的な保護しか与えないと報告されているので、それらを第一の予防戦略としては推奨できない(ManhartおよびKoutsky、2002年)。
【0007】
最近、高度に有効なワクチンが、世界中で子宮頸癌の約70%(HPV-16およびHPV-18)および性器疣贅の90%(HPV-6およびHPV-11)を一緒になって引き起こす4種のHPVによる感染を防ぐために承認された(Garlandら、2007年)。しかし、女性は、子宮頸癌を引き起こし得るが、現在のワクチンによって標的とされないハイリスクHPVの遺伝子型(HPV-31、HPV-33、HPV-45など)に感染する危険に曝されたままであり得る。さらに、ワクチンは、比較的高価であり、すべての女性、特に、発展途上国の人にとっては最初に利用可能ではない可能性がある。この場合には、局所殺菌剤、生殖器HPV感染症の全範囲を侵入路で阻止できる化合物が、ワクチン接種プログラムの有用な補完物であろう。
【0008】
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)は、レトロウイルス科ファミリーのメンバーであり、主に、CD4+Tリンパ球およびマクロファージに感染する。HIVは、持続的な生涯の感染を誘導し、治療されないと、後天性免疫不全症候群(AIDS)および感染個体の死亡へと進展する(Quinn、2008年)。過去25年にわたって、抗レトロウイルス剤の開発では相当な進歩が達成された。特に、組み合わせて使用される抗レトロウイルス薬によるHIV患者の治療に基づいた高活性抗レトロウイルス療法(HAART)の登場は、ウイルスの複製を強力に抑制でき、感染を完全に根絶できるわけではないものの、AIDへの進行を防ぐことができる(MarsdenおよびZack、2009年)。抗レトロウイルス療法の主な欠点は、HIV個体の長期にわたる治療の間に生じ得る特定の抗レトロウイルス耐性の出現であり、これは、療法の有効性の進行性の欠如を誘発する(WilsonおよびGallant、2009年)。したがって、ウイルス複製周期の種々の相に向けられた「特効薬」の蓄積を増大させて、抗レトロウイルス療法の複雑性および柔軟性を増強するには、新規抗レトロウイルス化合物を見出すことが極めて重要である。
【0009】
天然の抗菌ペプチド(AMP)は、抗細菌活性、抗真菌活性、抗寄生虫活性、抗腫瘍活性および抗ウイルス活性をはじめとする種々の興味深い生物活性を有する(Giulianiら、2007年)。それらは、細胞膜および細胞分裂のプロセスおよび高分子合成をはじめとする複数の標的を有すると考えられている(参考文献3)。AMPの重要性は、その広い生物活性が、それらが、自然免疫系と適応免疫系の間の伝達を提供するエフェクター分子であることを示すように、その直接の抗菌活性を超えて広がる(Yangら、2002年)。
【0010】
単純ヘルペスウイルス1型(HSV)に対する、ならびにタバコモザイク、ムンプス、ニューカッスル病およびインフルエンザを含めた種々のその他のウイルスに対するカチオン性ポリペプチドの抗ウイルス効果は、十分に実証されている(Langelandら、1988年)。別の研究では、マゲイニンクラスのペプチド、アフリカツメガエル(Xenopus laevis)の皮膚および顆粒分泌物から最初に単離された強力な抗菌性カチオン性ペプチド、特に、リシンリッチであり、オクタノイル基を有する誘導体が、HSVに対して直接的な抗ウイルス効果を発揮できる。
【0011】
WO 2006/018431には、in vivoでHSV-2に対して有効である、ヒトβ-ヘモグロビンの配列領域112〜147に相当するヒトヘモグロビンのβ鎖に由来するペプチド配列が開示されている。
【0012】
最近、樹状分子またはデンドリマーは、多くのバイオテクノロジーまたは薬剤的有用性を有することがわかった。デンドリマーは、多官能性コアから合成される大きな高度に分枝した高分子である。表面層中に、細胞またはウイルス受容体と複合体を形成し得る官能基であって、細胞へのウイルスの最初の結合を含めた、正常なウイルス-細胞相互作用を阻害する官能基を含有するデンドリマー分子が合成されている(Bourneら、2000年)。
【0013】
デンドリマーの特定のサブクラスは、ペプチジル分枝コアからなる、および/または表面官能単位と共有結合によって結合しているペプチドデンドリマーまたは楔様分枝高分子によって表される(Niederhafnerら、2005年)。
【0014】
WO 02/079299には、特に、性感染症に関与する広範囲のウイルスおよび微生物病原に対して相当な抗ウイルス活性を示すことがわかっている、ポリアニオン基の明確な外皮を有する新規クラスの多価、高分枝分子が記載されている。これらの化合物は、複数の分枝または樹様構造を有する単量体構成要素から合成される。外表面には、生物学的受容体による認識につながるいくつかの官能基が付与されている。
【0015】
デンドリマーは、その大きさ(ナノモル)、その調製および機能付与の容易性ならびに特に、抗ウイルス適用における生物学的認識方法に対して複数コピーの表面基(多価性)を示すその能力のために、可能性がある新規治療薬として魅力的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】WO 2006/018431
【特許文献2】WO 02/079299
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、ウイルスまたは/および細菌感染症を治療および/または予防するための新規抗病原性ペプチド化合物を使用および製造する方法を提供する。
【0018】
本発明の主題は、一般式(I):
R-V-R-I-K-[K]n-[Q]m
[式中、
Rは、アルギニン側鎖またはN-アルキル置換グアニジン側鎖を有するアミノ酸残基、特に、L-アルギニンであり、
VおよびIは、
(i)バリン側鎖を含むアミノ酸残基、特に、L-バリン、
(ii)イソロイシン側鎖を含むアミノ酸残基、特に、L-イソロイシン、
(iii)少なくとも3個のC原子を含む、好ましくは、3〜10個のC原子を含む直鎖飽和側鎖または不飽和側鎖を有するアミノ酸残基、特に、ノルロイシン、2-アミノペンタン酸、2-アミノオクタン酸、2-アミノデカン酸または2-アミノドデカン酸、
(iv)少なくとも3個のC原子を含む、好ましくは、3〜10個のC原子を含む分枝飽和側鎖または不飽和側鎖を有するアミノ酸残基、特に、tert-ロイシン、5-メチルノルロイシンまたはホモイソロイシン(4-メチルノルロイシン)、
(v)少なくとも3個のC原子を含む、好ましくは、3〜10個のC原子を含む環状飽和または不飽和側鎖を有するアミノ酸残基であって、特に、ノルフラノマイシン、カルバフラノマイシン、シクロペンチルグリシン、シクロペンテニルグリシンまたはシクロヘキセニルグリシンなどの、脂肪族基(好ましくは、1〜10個のC原子、より好ましくは、1〜8個のC原子、さらにより好ましくは、1〜6個のC原子を有する脂肪族基、特に好ましくは、メチル、エチル、イソプロピル、n-プロピル、n-ブチル、イソブチル)で任意の環位置で置換されていてもよい、シクロプロピル、シクロブチル、シクロブテニル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニルなどの、C=C二重結合を含んでもよい、3〜6個の環原子を含む環状残基から選択されるアミノ酸残基、
から独立に選択されるアミノ酸残基であり、
Kは、リシン側鎖を含むアミノ酸残基、特に、L-リシン、または正に帯電している側鎖を含む別のアミノ酸残基、特に、オルニチンもしくは2,4-ジアミノ酪酸であり、
Qは、グルタミン側鎖を含むアミノ酸残基、特に、L-グルタミンであり、
mおよびnは独立に、0または1である]
によって表されるアミノ酸配列を含む最大35アミノ酸残基の長さを有するペプチド化合物である。
【0019】
式(I)のアミノ酸残基Vは、バリン側鎖を含むアミノ酸残基、特に、L-バリンであり、式(I)のアミノ酸残基Iは、イソロイシン側鎖を含むアミノ酸残基、特に、L-イソロイシンであることが好ましい。
【0020】
ペプチド化合物は、L-および/またはD-アミノ酸残基構成要素を含み得る。
【0021】
本発明のペプチド化合物の配列は、左側のN末端から右側のC末端に向けて記載されている。
【0022】
好ましい実施形態では、本発明は、一般式(II):
A-S-L-R-V-R-I-K-[K]n-[Q]m
[式中、R、K、Q、V、I、nおよびmは、上記で定義のとおりであり、
Aは、アラニン側鎖を含むアミノ酸残基、特に、L-アラニンであり、
Sは、ヒドロキシル置換脂肪族または芳香族側鎖を含むアミノ酸残基、特に、セリン側鎖を含むアミノ酸残基、より詳しくは、L-セリンであり、
Lは、
(i)ロイシン側鎖を含むアミノ酸残基、特に、L-ロイシン、
(ii)イソロイシン側鎖を含むアミノ酸残基、特に、L-イソロイシン、
(iii)少なくとも3個のC原子を含む、好ましくは、3〜10個のC原子を含む直鎖飽和側鎖または不飽和側鎖を有するアミノ酸残基、特に、ノルロイシン、2-アミノペンタン酸、2-アミノオクタン酸、2-アミノデカン酸または2-アミノドデカン酸、
(iv)少なくとも3個のC原子を含む、好ましくは、3〜10個のC原子を含む分枝飽和側鎖または不飽和側鎖を有するアミノ酸残基、特に、tert-ロイシン、5-メチルノルロイシンまたはホモイソロイシン(4-メチルノルロイシン)、
(v)少なくとも3個のC原子を含む、好ましくは、3〜10個のC原子を含む環状飽和または不飽和側鎖を有するアミノ酸残基であって、特に、ノルフラノマイシン、カルバフラノマイシン、シクロペンチルグリシン、シクロペンテニルグリシンまたはシクロヘキセニルグリシンなどの、脂肪族基(好ましくは、1〜10個のC原子、より好ましくは、1〜8個のC原子、さらにより好ましくは、1〜6個のC原子を有する脂肪族基、特に、好ましくは、メチル、エチル、イソプロピル、n-プロピル、n-ブチル、イソブチル)で任意の環位置で置換されていてもよい、シクロプロピル、シクロブチル、シクロブテニル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニルなどの、C=C二重結合を含んでいてもよい、3〜6個の環原子を含む環状残基から選択されるアミノ酸残基、
から選択されるアミノ酸残基である]
によって表されるアミノ酸配列を含む最大35アミノ酸残基の長さを有するペプチド化合物に関する。
【0023】
極めて好ましい実施形態では、本発明のペプチド化合物は、
A-S-L-R-V-R-I-K-K (IIa)および
A-S-L-R-V-R-I-K-K-Q (IIb)
[式中、R、K、Q、V、I、A、LおよびSは、上記で定義のとおりであり、特に、Rは、アルギニン側鎖またはN-アルキル置換グアニジン側鎖を含むアミノ酸残基、特に、L-アルギニンであり、
Vは、バリン側鎖を含むアミノ酸残基、特に、L-バリンであり、
Iは、イソロイシン側鎖を含むアミノ酸残基、特に、L-イソロイシンであり、
Lは、ロイシン側鎖を含むアミノ酸残基、特に、L-ロイシンである]
から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0024】
式IIaおよびIIbの極めて好ましい実施形態では、Aはアラニンであり、Sはセリンであり、Lはロイシンであり、Rはアルギニンであり、Vはバリンであり、Iはイソロイシンであり、Kはリシンであり、Qはグルタミンである(配列番号1および配列番号2)。
【0025】
本発明の好ましい実施形態では、抗病原性、特に、抗ウイルス性または/および抗菌性ペプチド化合物は、両親媒性構造を有し得る。
【0026】
さらに好ましい実施形態では、本発明は、個々のペプチド化合物が、例えば、多官能性、例えば、二官能性または三官能性アミノ酸などの二官能性または三官能性部分によって共有結合によって結合している、複数の上記で定義されるペプチド化合物を含む多量体化合物を指す。
【0027】
本発明は、ペプチド化合物を指す。用語「ペプチド化合物」は、共有結合、好ましくは、カルボキサミド結合によって結合しているアミノ酸構成要素またはその類似体を少なくとも部分的に含む化合物を包含する。構成要素は、アミノ-カルボン酸、例えば、α-アミノカルボン酸またはその他の種類のカルボン酸、例えば、β-またはさらにω-アミノカルボン酸から選択されることが好ましい。アミノ酸構成要素は、遺伝的にコードされるL-α-アミノカルボン酸および/もしくはそのD-鏡像異性体から、ならびに/または天然に存在しないアミノ酸構成要素から選択され得る。
【0028】
本発明の主題はまた、単一アミノ酸構成要素が修飾されているペプチド化合物変異体である。特に、前記構成要素修飾は、特に、ペプチドの官能性を変更せずに、アミノ酸が同様の化学構造の別のアミノ酸と置換されている保存的置換による、単一アミノ酸の置換を含む。さらにまた、本発明によれば、単一アミノ酸修飾は、単一アミノ酸のアミノ酸摸倣物での置換を含み得る。
【0029】
アミノ酸構成要素はまた、アミノ酸模倣物から選択され得る。アミノ酸模倣物とは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と同様の方法で機能する化合物を指す。これらの非天然残基は、科学文献および特許文献に十分に記載されており、天然アミノ酸残基の摸倣物として有用であるいくつかの例示的非天然残基およびガイドラインを以下に記載する。芳香族アミノ酸の摸倣物として、例えば、D-またはL-ナフチルアラニン(naphtylalanine)、D-またはL-フェニルグリシン、D-またはL-2チエネイルアラニン(thieneylalanine)、D-またはL-、2,3-または4-ピレネイルアラニン(pyreneylalanine)、D-またはL-3チエネイルアラニン(thieneylalanine)、D-またはL-(2-ピリジニル)-アラニン、D-またはL-(3-ピリジニル)-アラニン、D-またはL-(2-ピラジニル)-アラニン、D-またはL-(4-イソプロピル)-フェニルグリシン、D-(トリフルオロメチル)-フェニルグリシン、D-(トリフルオロメチル)-フェニルアラニン、D-p-フルオロ-フェニルアラニン、D-またはL-p-ビフェニルフェニルアラニン、D-またはL-p-メトキシ-ビフェニルフェニルアラニン、D-またはL-2-インドール(アルキル)アラニンおよびD-またはL-アルキルアラニンがある。これに関連して、用語「アルキル」とは、置換または非置換メチル、エチル、プロピル、ヘキシル、ブチル、ペンチル、イソプロピル、イソブチル、sec-イソブチルまたはイソペンチルを意味する。非天然アミノ酸の芳香環として、例えば、チアゾリル、チオフェニル、ピラゾリル、ベンズイミダゾリル、ナフチル、フラニル、ピロリルおよびピリジル芳香環が挙げられる。
【0030】
上記で定義される本発明のペプチド化合物は、すべての「摸倣物」および「ペプチド摸倣物」の形態も含み得る。用語「摸倣物」および「ペプチド摸倣物」とは、本発明のペプチド化合物の実質的に同じ構造上および/または機能上の特徴を有する合成化合物を指す。摸倣物は、全体に、アミノ酸の合成、非天然類似体からなるか、または部分的に天然のペプチドアミノ酸と部分的にアミノ酸の非天然類似体のキメラ分子のいずれかであり得る。摸倣物はまた、このような置換がまた、摸倣物の構造および/または活性を実質的に変更しない限り、任意の量の天然アミノ酸保存的置換を組み込み得る。
【0031】
ペプチド化合物の個々の構成要素は、天然のアミド結合(「ペプチド結合」)連結またはその他の共有結合、例えば、カルボキサミド、カルバメート、エステル、チオエステル、エーテル、チオエーテル、テトラゾール、チアゾール、レトロアミドおよびチオアミド結合によって結合している。本発明のペプチド化合物は、直鎖であっても環状であってもよい。単量体ペプチド化合物は、最大35アミノ酸残基の長さ、好ましくは、少なくとも8個、より好ましくは、少なくとも9または10個、最大15個のアミノ酸構成要素の長さを有する。
【0032】
好ましい実施形態では、本発明は、上記の複数のペプチド化合物を含む多量体化合物を指す。例えば、本発明の多量体化合物は、2、3、4、5、6、7、8コピーまたはそれ以上のペプチド化合物を含み得る。多量体化合物は、マトリックス、例えば、ポリペプチド、単糖、オリゴ糖もしくは多糖または有機ポリマー、好ましくは、直鎖有機ポリマーをベースとするマトリックス上で多量体化されたペプチド化合物を含み得る。例えば、マトリックスは、ポリ(N-アルキル(メタ)アクリルアミド)、ポリ[N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド)、ポリメラミン、デキストラン、シクロデキストリン、ポリエチレングリコールおよび/またはポリビニルピロリドンから選択され得る。ペプチド化合物のマトリックスとのカップリングは、例えば、マトリックス上の反応性基、例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、チオール基またはカルボキシル基とのカップリングを可能にするホモ二官能性リンカーおよび/またはヘテロ二官能性リンカーを使用し、ペプチド化合物のN末端および/またはC末端を介して起こることが好ましい。
【0033】
さらに好ましい実施形態では、多量体化合物は、分枝構造、特に、樹状構造を有する。
【0034】
なおさらなる実施形態では、多量体化合物は、
(i)R-(Y1-R)m-Y1-(R)m' (IIIa)
[式中、Rは、上記または請求項1から5のいずれか一項で定義されるペプチド化合物であり、Y1は、共有結合または二官能性リンカー、例えば、プロピレングリコールなどのジアルコール、コハク酸などのジカルボン酸、エチレンジアミンなどのジアミン、アミノ酸、ヒドロキシカルボン酸、例えば、ヒドロキシアルカノン酸またはジイソシアネートであり、mは、0または正の整数、特に、1、2、3、4、5または6であり、m’は、0または1である]、
(ii)[[(R)n1Y1']n2]Y2 (IIIb)
[式中、Rは、上記請求項1から5のいずれか一項で定義されるペプチド化合物であり、
Y1'は、各場合において独立に、少なくとも3の官能性を有するリンカー、例えば、リシン、オルニチン、2,4-ジアミノ酪酸、ノル-リシン、アミノアラニン、アスパラギン酸またはグルタミン酸などの三官能性アミノ酸であり、
Y2は、少なくとも2の官能性を有するリンカーであり、
n1およびn2は、各場合において独立に、少なくとも2、好ましくは、2、3または4、より好ましくは、2である整数である]、
(iii){[[(R)n1Y1']n2]Y2'}n3Y3 (IIIc)
[式中、Rは、上記または請求項1から5のいずれか一項で定義されるペプチド化合物であり、
Y1'およびY2'は、各場合において独立に、少なくとも3の官能性を有するリンカー、例えば、リシン、オルニチン、2,4-ジアミノ酪酸、ノル-リシン、アミノアラニン、アスパラギン酸またはグルタミン酸などの三官能性アミノ酸であり、
Y3は、少なくとも2の官能性を有するリンカーであり、
n1、n2およびn3は、各場合において独立に、少なくとも2、好ましくは、2、3または4、より好ましくは、2である整数である]
から選択される。
【0035】
多量体化合物(IIIa)は、複数のペプチド化合物が、共有結合および/またはホモ二官能性リンカーもしくはヘテロ二官能性リンカーY1を介して連結している多量体直鎖化合物である。多量体化合物は、最大8、より好ましくは、最大4単位のペプチド化合物(I)または(II)を含むことが好ましい。
【0036】
多量体化合物(IIIb)および(IIIc)は、個々のペプチド単位Rが、少なくとも3の官能性を有するリンカーを介して連結している分枝化合物である。好ましい実施形態では、多量体化合物(IIIb)は、4つのペプチド単位を含み、以下の構造を有する。
【0037】
【化1】

【0038】
さらに好ましい実施形態では、多量体化合物(IIIc)は、8つのペプチド単位を含み、以下の構造を有する。
【0039】
【化2】

【0040】
多量体化合物(lllb)のリンカーY2および多量体化合物(IIIc)のリンカーY3は、好ましくは、3の官能性を有するリンカー、好ましくは、三官能性アミノ酸リンカー、最も好ましくは、リシンであり得る。さらに好ましい実施形態では、リンカーY2およびY3は、α-、β-またはさらにω-アミノ酸残基から選択され得るさらなるアミノ酸残基との、好ましくは、1、2、3または4個のアミノ酸残基との結合である。極めて好ましい実施形態では、Y2および/またはY3リンカーとのさらなるアミノ酸残基結合は、β-アミノ酸残基、最も好ましくは、β-アラニン残基である。
【0041】
本発明の好ましい実施形態では、多量体化合物(IIIb)は、以下の構造を有する。
[[(R)2Lys]2]Lys-β-Ala
【0042】
本発明の多量体ペプチド化合物の特定の例は、上記のような単量体ペプチド化合物単位、好ましくは、配列番号1または2に定義されるアミノ酸配列を含み、以下の構造によって表される。
(ASLRVRIKKQ)4-Lys2-Lys-β-Ala (IV)
(ASLRVRIKK)4-Lys2-Lys-β-Ala (V)
[式中、β-Alaは、アミノ基が、カルボキシレート基残基からβ位にある天然に存在するβ-アラニンアミノ酸であり、上記のペプチドは、C末端でアミド化されていてもよい]。
【0043】
本発明のなおさらなる実施形態では、ペプチド化合物および多量体化合物は、それと結合している、例えば、N末端基、C末端基および/または側鎖基と結合している脂質、アミド、エステル、アシルおよび/またはアルキル部分から特に選択される、少なくとも1つの修飾を含む。N末端修飾および/またはC末端修飾が好ましい。
【0044】
したがって、本発明はまた、少なくとも1つの修飾から得られる単量体および多量体ペプチド化合物の誘導体、特に、アミド化、アセチル化、硫酸化、脂質付加、リン酸化、グリコシル化、酸化またはポリエチレングリコール修飾された誘導体から選択されるペプチド誘導体に関する。
【0045】
特に好ましい修飾として、3から25個、好ましくは、5から25個のC原子を有する直鎖または環状、飽和または一価不飽和もしくは多価不飽和炭化水素基を含む少なくとも1つのアミノカルボン酸、例えば、5-アミノ吉草酸(5-Ava)、5-アミノペンタン酸、8-アミノオクタン酸(8-Aoa)または2-アミノデカン酸(2-Ada)である少なくとも1つの脂質部分の結合がある。脂質部分は、化合物のN末端および/またはC末端に結合していることが好ましい。脂質部分は、例えば、ペプチド化合物および/または多量体化合物の遊離N末端またはC末端に結合され得る。しかし、脂質部分は、例えば、化合物(IIIa)、(IIIb)および(IIIc)について記載されるように、N末端リンカーおよび/またはC末端リンカーに結合される場合もある。化合物(IIIb)および(IIIc)の好ましい実施形態では、C末端リンカーY2およびY3は、三官能性リンカーであり、これに脂質部分が結合され得る。脂質部分は、アミド結合によってペプチドに結合され得る。
【0046】
さらに好ましい実施形態は、アシル、例えば、アセチル基の、N末端および/もしくはC末端への結合ならびに/または遊離C末端のアミド化である。
【0047】
本発明の化合物は、抗病原活性、特に、抗ウイルス活性または/および抗菌活性を有し得る。
【0048】
特に、本発明のペプチド化合物は、DNAウイルスおよびRNAウイルスの両方から選択される広範囲のウイルスに対して相当な抗ウイルス活性を示す。特に、本発明の抗ウイルス性ペプチド化合物は、標的細胞とのウイルスの結合および/または吸着を防ぐことによって、ウイルスが細胞に入る前にそれらを不活性化し得る。
【0049】
DNAウイルスの例として、特に、エリスロウイルスを含めたパルボウイルス科ファミリー、アデノウイルス科ファミリー、特に、パピローマウイルスおよびポリオーマウイルスを含めたパポバウイルス科ファミリー、特に、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルスおよびエプスタイン-バーウイルスを含めたヘルペスウイルス科ファミリー、特に、痘瘡ウイルスを含めたポックスウイルス科ファミリーおよび特に、B型肝炎ウイルスを含めたヘパドナウイルス科ファミリーがある。
【0050】
RNAウイルスの例として、特に、エンテロウイルス(例えば、ポリオウイルス、コクサッキーウイルスBおよびA)およびヘパトウイルス(例えば、A型肝炎ウイルス)を含めたピコルナウイルス科ファミリー、特に、E型肝炎ウイルスを含めたカリシウイルス科ファミリー、特に、アルファウイルス、フラビウイルスおよび風疹ウイルスを含めたトガウイルス科ならびにフラビウイルス科(アルボウイルス)ファミリー、特に、C型肝炎ウイルスを含めたフラビウイルス科(Flaviviridaef)ファミリー、特に、ヒトコロナウイルスを含めたコロナウイルス科ファミリー、特に、パラインフルエンザウイルス、ムンプスウイルス、モルビリウイルスおよび呼吸器合胞体ウイルスを含めたパラミクソウイルス科ファミリー、特に、水泡性口内炎ウイルスおよび狂犬病ウイルスを含めたラブドウイルス科(Rhadoviridae)ファミリー、特に、マールブルグウイルスおよびエボラウイルスを含めたフィロウイルス科ファミリー、オルトミクソウイルス科ファミリー、特に、リンパ性脈絡髄膜炎(choriomemingitis)ウイルスおよびラッサ熱ウイルスを含めたアレナウイルス科ファミリー、特に、リフトバレー熱ウイルスおよびハンタンウイルスを含めたブニヤウイルス科ファミリー、特に、哺乳類レオウイルス、コロラドダニ熱ウイルスおよびロタウイルスを含めたレオウイルス科ファミリーならびに特に、HIV、ヒトT細胞白血病ウイルス1(HTLV-1)およびHTLV-2を含めたレトロウイルス科ファミリーがある。さらなるウイルスとして、D型肝炎ウイルス(デルタウイルス)があり得る。さらに、ペプチド化合物は、タンパク質性感染粒子(プリオン)に対して活性であり得る。
【0051】
本発明の化合物は、ヘルペスウイルス科ファミリー、好ましくは、単純ヘルペス、特に、HSV-1およびHSV-2、ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)、パポバウイルス科ファミリー、好ましくは、ヒトパピローマウイルス(HPV)およびレトロウイルス科ファミリー、好ましくは、ヒト免疫不全ウイルスHIVに対して抗ウイルス活性を有することが極めて好ましい。
【0052】
別の態様では、本発明の化合物は、抗菌活性を有する。
【0053】
特に、ペプチド化合物は、クラミジア・トラコマティスまたは/およびナイセリア・ゴノレアなどの細菌に対して活性である。
【0054】
その結果として、本発明のペプチド化合物は、病原体感染症、特に、ウイルス感染症または/および細菌感染症の予防および治療において活性を示す。極めて好ましい実施形態では、本発明の化合物は、単純ヘルペス(例えば、HSV-1およびHSV-2)、サイトメガロウイルス(HCMV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、クラミジア・トラコマティスまたは/およびナイセリア・ゴノレアの群のうち1種または複数から選択される経膣的感染症、経直腸的感染症、経口感染症である性感染症に対して活性である。
【0055】
本発明のさらなる主題は、上記で定義される少なくとも1種の化合物、例えば、上記で定義されるペプチド化合物または多量体化合物を、薬学的に許容される担体、希釈剤および/またはアジュバントと一緒に含む医学用組成物である。ヒト医学または獣医学において使用するためには、組成物は、固体、液体またはゲルおよびそれらの組合せから、例えば、洗眼液、口内洗浄液、軟膏、エアゾールまたは局所製剤として選択される薬剤投与形の形態であることが好ましい。薬剤投与形は、病原生物の存在によって引き起こされる、それと関連している、またはそれに付随して起こる障害の治療および/または予防にとって有効である活性薬剤の一定量を含む。活性薬剤の実際の量は、投与経路ならびに治療される障害の種類および重篤度に応じて変わり得る。
【0056】
所望の効果を達成するには、ペプチド単量体または多量体化合物を、例えば、少なくとも約0.01mg/体重1kg〜約200ないし550mg/体重1kgの、少なくとも約0.01mg/体重1kg〜約100ないし300mg/体重1kgの、少なくとも約0.1mg/kg〜約50ないし100mg/体重1kgの、少なくとも約1mg/体重1kg〜約10ないし50mg/体重1kgのまたは少なくとも約1mg/体重1kg〜約20mg/体重1kgの単回投与量または分割投与量として投与してもよいが、その他の投与量も有益な結果を提供し得る。
【0057】
医薬組成物を調製するには、本発明のペプチドを合成し、そうでなければ、入手し、必要に応じて、または要求どおりに精製し、次いで、好ましくは、凍結乾燥し、安定化する。次いで、ペプチドを、適した濃度に調整してもよく、場合により、その他の薬学的に許容される薬剤と組み合わせてもよい。
【0058】
したがって、本発明の治療用ペプチドを含む、1種または複数の適した単位投与形を、経口、局所、非経口(皮下、静脈内、筋肉内および腹腔内を含む)、経膣、経直腸、皮膚、経皮、胸腔内、肺内および鼻腔内(呼吸器)経路をはじめとする種々の経路によって投与してもよい。
【0059】
局所投与には、活性薬剤は、標的領域、例えば、爪および皮膚への直接適用のために当技術分野で公知のように製剤してもよい。局所適用用に主に調整された形態は、例えば、ラッカー(laquers)、クリーム、ミルク、ゲル、粉末、分散物またはマイクロエマルション、多かれ少なかれ増粘されたローション、含浸パッド、軟膏またはスティック、エアゾール製剤(例えば、スプレーまたは泡)、セッケン、洗浄剤、ローション状セッケンまたは固形状セッケンの形態をとる。この目的のためのその他の従来形態として、創傷包帯、コーティングされた絆創膏またはその他のポリマー被覆剤、軟膏、クリーム、ローションが挙げられる。
【0060】
さらに好ましい実施形態では、本発明の単量体もしくは多量体化合物または組成物は、獣医学適用において使用される。
【0061】
別の態様では、本発明の組成物は、特に、プロテアーゼ阻害剤、ポリメラーゼ阻害剤、インテグラーゼ阻害剤、侵入阻害剤、アセンブリー/分泌阻害剤、翻訳阻害剤、免疫賦活薬またはそれらの任意の組合せである、少なくとも1種のさらなる抗病原性薬剤、特に、抗ウイルス剤または/および抗菌剤を含む。
【0062】
さらに、以下の図および実施例によって、本発明をより詳細に説明する。
【0063】
以下の図および実施例との関連で、本発明の特に好ましい多量体ペプチド化合物、式(VI)および(VII)は、本明細書においてそれぞれ、SB105およびSB105-A10と呼ばれる。陰性対照化合物として、本明細書においてSB104と呼ばれる多量体ペプチド化合物が使用される。前記ペプチド(peptic)化合物の構造は、Table2(表2)に示されており、これでは、Aはアラニンであり、Sはセリンであり、Lはロイシンであり、Rはアルギニンであり、Vはバリンであり、Iはイソロイシンであり、Kはリシンであり、Qはグルタミンであり、Nはアスパラギンである。
【0064】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1A】HSV-1に対するデンドリマーペプチドSB105(VI)およびSB105-A10(VII)の抗ウイルス活性を示す図である。感染の1時間前および感染の間に、漸増濃度のSB105またはSB105-A10ペプチドを用いて前処理および処理されたベロ細胞に、0.1のM.O.I.でHSV-1(パネル1A)を、未処理の対照において広範なウイルスの細胞変性効果が観察されるまで感染させた。次いで、標準プラークアッセイによってベロ懸濁液の上清の感染性を滴定することによって、HSV-1複製の程度を評価した。プラークを顕微鏡的にカウントし、各ペプチド濃度の平均プラークカウントを、対照の平均カウントのパーセンテージとして表した。プラークの数を、薬物濃度の関数としてプロットし、プラーク形成の50%低減をもたらす濃度(IC50)を決定した。示されるデータは、3回の独立した実験の平均±SDを表す(エラーバー)。
【図1B】HSV-2に対するデンドリマーペプチドSB105(VI)およびSB105-A10(VII)の抗ウイルス活性を示す図である。感染の1時間前および感染の間に、漸増濃度のSB105またはSB105-A10ペプチドを用いて前処理および処理されたベロ細胞に、0.1のM.O.I.でHSV-2(パネル1B)を、未処理の対照において広範なウイルスの細胞変性効果が観察されるまで感染させた。次いで、標準プラークアッセイによってベロ懸濁液の上清の感染性を滴定することによって、HSV-2複製の程度を評価した。プラークを顕微鏡的にカウントし、各ペプチド濃度の平均プラークカウントを、対照の平均カウントのパーセンテージとして表した。プラークの数を、薬物濃度の関数としてプロットし、プラーク形成の50%低減をもたらす濃度(IC50)を決定した。示されるデータは、3回の独立した実験の平均±SDを表す(エラーバー)。
【図2】ウイルス吸着後のSB105およびSB105-A10デンドリマーペプチドを用いる処理は、ベロ細胞へのHSV-1およびHSV-2侵入に影響を及ぼさないことを示す図である。予冷したベロ細胞単層に、200PFUのHSV-1またはHSV-2を用いて、4℃で3時間感染させ、洗浄し、種々の濃度のSB105、SB105-A10、SB104またはヘパリンとともに、37℃で2時間インキュベートし、その後、細胞外ウイルスを不活性化した。次いで、細胞に、1.2%メチルセルロースを含有する培地をオーバーレイし、37℃でインキュベートした。48時間後、ウイルスプラークをカウントし、各化合物濃度の平均プラークカウントを、未処理対照の平均カウントのパーセンテージとして表した。示されるデータは、3回の独立した実験の平均±SDを表す(エラーバー)。
【図3】デンドリマーペプチドSB105およびSB105-A10は、ベロ細胞へのHSV-1およびHSV-2結合を阻害することを示す図である。予冷したベロ細胞を、種々の濃度のSB105、SB105-A10、SB104またはヘパリンとともに、また、200PFUのHSV-1またはHSV-2とともに4℃でインキュベートした。ウイルス吸着(4℃で3時間)後、次いで、細胞を冷PBSで3回洗浄して、化合物および吸着していないウイルスを除去し、1.2%メチルセルロースを含有する培地をオーバーレイし、37℃で48時間インキュベートした。次いで、ウイルスプラークを染色し、カウントし、各ペプチド濃度の平均プラークカウントを、対照の平均カウントのパーセンテージとして表した。示されるデータは、3回の独立した実験の平均±SDを表す(エラーバー)。
【図4A】HCMV複製は、デンドリマーペプチドSB105およびSB105-A10によって阻害されることを示す図である。示される場合には、感染の1時間前および感染の間に、漸増濃度の種々のペプチドを用いて前処理および処理されたHELFに、1のM.O.I.でHCMV実験室株AD169を、未処理の対照において広範なウイルスの細胞変性効果が観察されるまで感染させた。次いで、標準プラークアッセイによってHELF懸濁液の上清の感染性を滴定することによってAD169複製の程度を評価した。プラークを顕微鏡的にカウントし、各ペプチド濃度の平均プラークカウントを、対照の平均カウントのパーセンテージとして表した。プラークの数を、薬物濃度の関数としてプロットし、プラーク形成の50%低減をもたらす濃度(IC50)を決定した。示されるデータは、3回の独立した実験の平均±SDを表す(エラーバー)。
【図4B】HCMV複製は、デンドリマーペプチドSB105およびSB105-A10によって阻害されることを示す図である。示される場合には、感染の1時間前および感染の間に、漸増濃度の種々のペプチドを用いて前処理および処理されたHELFに、1のM.O.I.で臨床HCMV単離物AL1を、未処理の対照において広範なウイルスの細胞変性効果が観察されるまで感染させた。HUVECに、内皮向性の、臨床HCMV単離物VR1814を、1のM.O.I.で感染させた。次いで、標準プラークアッセイによってHELF懸濁液の上清の感染性を滴定することによってAL1複製の程度を評価した。VR1814複製の程度は、HCMV IEタンパク質に対して反応性のモノクローナル抗体(mAb)を使用するHUVECでの間接免疫ペルオキシダーゼ染色手順によって、細胞懸濁液の上清の感染性を滴定することによって測定した。プラークを顕微鏡的にカウントし、各ペプチド濃度の平均プラークカウントを、対照の平均カウントのパーセンテージとして表した。プラークの数を、薬物濃度の関数としてプロットし、プラーク形成の50%低減をもたらす濃度(IC50)を決定した。示されるデータは、3回の独立した実験の平均±SDを表す(エラーバー)。
【図5】ウイルス吸着後のSB105およびSB105-A10デンドリマーペプチドを用いる処理は、HELF細胞へのHCMV侵入に影響を及ぼさないことを示す図である。予冷したHELF細胞単層に200PFUのHCMV AD169を用いて4℃で3時間感染させ、洗浄し、種々の濃度のSB105、SB105-A10、SB104またはヘパリンとともに37℃で2時間インキュベートし、その後、細胞外ウイルスを不活性化した。次いで、細胞に、1.2%メチルセルロースを含有する培地をオーバーレイし、37℃で6日間インキュベートした。その後、ウイルスプラークをカウントし、各化合物濃度の平均プラークカウントを、未処理対照の平均カウントのパーセンテージとして表した。示されるデータは、3回の独立した実験の平均±SDを表す(エラーバー)。
【図6】標的細胞へのHCMV吸着は、SB105およびSB105-A10デンドリマーペプチドによって阻害されることを示す図である。予冷したHELF細胞を、種々の濃度のSB105、SB105-A10、SB104またはヘパリンとともに、また、200PFUのHCMV AD169とともに4℃でインキュベートした。ウイルス吸着(4℃で3時間)後、細胞を冷PBSで3回洗浄して、化合物および吸着していないウイルスを除去し、1.2%メチルセルロースを含有する培地をオーバーレイし、37℃で6日間インキュベートした。次いで、ウイルスプラークを染色し、カウントし、各ペプチド濃度の平均プラークカウントを、対照の平均カウントのパーセンテージとして表した。示されるデータは、3回独立した実験の平均±SDを表す(エラーバー)。
【図7】精製HPV-16-SEAP PsVの特性決定を示す図である。(A)精製PsV調製物のアリコートを、クマシーブリリアントブルー染色(レーン1)を用いるSDS-PAGEまたは抗L1抗体(B0580 Dako Corporation、Carpinteria、CA、USA)を用いる免疫ブロット法(レーン2)によって分析した。(B)精製PV調製物の電子顕微鏡写真。
【図8】感染後7日での、HIV-1感染C8166細胞培養上清におけるHIV-1 RNA負荷の定量的リアルタイムRT-PCR分析を示す図である。SB105_A10またはSB104処理感染サンプルのデータを、未処理感染対照値(100%)のパーセンテージとして表した。データは、2連で実施された3回の独立した実験の平均±SDとして報告されている。
【図9】感染後7日でのHIV-1感染C8166細胞培養上清におけるELISA HIV-1 p24タンパク質分析を示す図である。SB105_A10またはSB104処理感染サンプルのデータを、未処理感染対照値(100%)のパーセンテージとして表した。データは、2連で実施された3回の独立した実験の平均±SDとして報告されている。
【図10】トリパンブルー排出技術によるC8166細胞生存率決定を示す図である。非感染C8166細胞を未処理のままとするか、またはスカラー濃度のSB105_A10またはSB104によって処理した。7日目にトリパンブルー排出技術による分析を実施した。SB105_A10またはSB104処理サンプルのデータを、未処理対照値(100%)のパーセンテージとして表した。データは、2連で実施された3回の独立した実験の平均±SDとして報告されている。
【実施例】
【0066】
材料
HPLC等級のすべての溶媒は、Sigma Aldrich (St. Louis、MO、US)から入手し、さらなる精製を行わずに使用した。N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)、ピペリジン、トリフルオロ酢酸およびトリイソプロピルシランは、AldrichおよびFluka(St. Louis、MO、US)から購入した。Fmocアミノ酸、HOBT、HBTUおよび樹脂は、Chem-lmpex International (Wooddale、III.)およびMerck (Darmstadt、Germany)から提供された。
【0067】
ペプチド合成
すべてのペプチドは、Fmoc/tBu chemistryを使用してMultiSynTech Syro(Witten、Germany)での固相合成によって合成した。カップリング活性化は、DMF中の、HOBt/DIEA/HBTU(1/2/0.9)によって実施し、アミン上のFmoc保護は、NMP中の40%ピペリジンを使用して除去した。側鎖保護基は、GlnおよびAsnについてはトリチル;Argについては2,2,4,6,7-ペンタメチルジヒドロ-ベンゾフラン-5-スルホニル(Pbf);Serについてはtert-ブチルエーテル;Lys、ProおよびTrpについてはtert-ブチルオキシカルボニル(Boc)とした。Fmoc-Lys(Fmoc)-OHが、二量体ペプチドおよび四量体ペプチドを合成するために使用したアミノ酸であった。四量体ペプチド、二量体ペプチドおよび直鎖ペプチドは、Rinkアミド4-ベンズヒドリルアミン(MBHA)樹脂上で調製し、遊離アミノ基中の最終負荷の分光光度的測定によって評価したのに対し、酸性ペプチドは、2-クロロトリチルクロリド樹脂上で調製した。すべてのペプチドは樹脂から切断し、トリフルオロ酢酸、水およびトリイソプロピルシラン(95:2.5:2.5)を用いる処理によって脱保護した。ジエチルエーテルにおける沈殿によって得られた粗ペプチドをC12PhenomenexカラムでのWaters HPLC-UV(Milford、MA)によって精製し、Bruker MALDI-TOF分光分析(Billerica、Massachusetts)によって特性決定した。
【0068】
(実施例1:四量体ペプチド合成:式(VI)(SB105)、(VII)(SB105-A10)および(VIII)(SB104))
ペプチド合成の基本手順は、先に報告されている。合成後、粗ペプチドを、HPLC-UVによって精製し、MALDI-TOFによって特性決定した。HPLC-UVによって決定した純度等級は、>90%である。
【0069】
特に、得られた質量値(M+H)は以下である:式(VI)計算値は、5194.5(M)、実測値は、5195.5(M+H)であり;式(VII)計算値は4681.9(M)であり、実測値は4682.9(M+H)であり;式(VIII)の計算値は4506.0(M)であり、実測値は、4507.1(M+H)である。
【0070】
(実施例II:HSV-1およびHSV-2に対する、SB105およびSB105-A10ペプチドの抗ウイルス活性)
HSV-1およびHSV-2のin vitro増殖的複製に対するSB105およびSB105-A10デンドリマーペプチドの効果を、ウイルス収率低減アッセイによって分析した。この目的のために、24ウェルプレートに5×104個/ウェルの密度で播種したアフリカミドリザル線維芽細胞(ベロ)を、培養培地に溶解した種々の濃度のSB105(式(VI))またはSB105-A10(式(VII))ペプチドとともに37℃で2連でインキュベートするか、未処理のままとした。1時間後、細胞に、HSV-1またはHSV-2を0.1PFU/細胞のM.O.I.で感染させた。ウイルス吸着(37℃で2時間)後、培養物を、対応するペプチド(処理前および処理後)を含有する培地で維持し、対照培養物が、広範な細胞変性効果を示すまで(感染後48時間)インキュベートした。次いで、抗ウイルスアッセイから得た細胞および上清を回収し、超音波処理によって破壊した。ウイルス複製の程度は、ベロ細胞での標準プラークアッセイによって、2連で細胞溶解物から得た上清の感染性を滴定することによって評価した。細胞生存率を決定するために、ベロ細胞を、漸増濃度のペプチドに曝露した。6日間インキュベートした後、先に記載されたように(Pauwelsら、1988年)、3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)法によって生存細胞数を調べた。
【0071】
HSV-1およびHSV-2複製に対するSB105およびSB105-A10ペプチドの阻害効果は、それぞれ、図1Aおよび1Bに示されている。HSV-1およびHSV-2複製の50%阻害をもたらしたSB105の濃度(IC50)は、それぞれ、1.76および7.6μg/mlであった。HSV-1およびHSV-2複製の50%阻害を引き起こしたSB105-A10の濃度(IC50)は、それぞれ、5.1および4.2μg/mlであった。
【0072】
50μg/mlの最大濃度のペプチドを用いる6日間の処理後に、細胞の>90%が生存していたので(図1A)、分析されたペプチドのうち、試験された濃度の関連範囲では、ベロの生存率に相当に影響を及ぼしたものはなく、このことは、抗ウイルス活性が、標的細胞自体の細胞毒性によるものではなかったことを示す。
【0073】
標的細胞へのHSV-1およびHSV-2侵入に対するSB105およびSB105-A10の効果を評価するために、侵入アッセイを、本質的にはMacLean(1988年)によって記載されるようにではあるが、Shoganら(2006年)によって導入された改変を加えて実施した。簡単に述べると、24ウェルプレート中に5×104個/ウェルの密度で播種したベロ細胞を、4℃に予冷し、200PFUのHSV-1またはHSV-2に4℃で3時間感染させて、ウイルス結合を可能にした。次いで、細胞を、冷リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で3回洗浄して、吸着していないウイルスを除去した。次いで、ウイルス侵入に対するデンドリマーペプチドの効果をアッセイするために、細胞に種々の濃度のSB105、SB105-A10、SB104(ウイルス複製の阻害の陰性対照として)またはヘパリン(ウイルス吸着の阻害の陽性対照として)を加え、温度を37℃に2時間移行し、その後、細胞外ウイルスを不活性化した。細胞外ウイルスを不活性化するために(また、侵入アッセイにおいて任意の試験化合物を除去するために)、細胞を、100mMグリシン-140mM NaCl 1ml、pH3.0とともに、室温で60秒間インキュベートした。次いで、細胞をPBSで3回洗浄して、pHを中性の値に戻し、1.2%メチルセルロースを含有する培地をオーバーレイし、37℃でインキュベートした。48時間後、プレートを固定し、クリスタルバイオレットを用いて染色し、ウイルスプラークをカウントした。並行して、上記と同量のウイルスを、4℃で3時間細胞に結合させ、細胞にメチルセルロース含有培地をオーバーレイした。これらの未処理細胞単層によって生じたプラーク数を100%に設定した。
【0074】
図2は、ウイルス吸着後のペプチドのインキュベーションが、標的細胞へのウイルス侵入に影響を及ぼさなかったことを示す。
【0075】
SB105およびSB105-A10ペプチドが、ウイルス吸着段階(MacLean、1988年;Shoganら、2006年)で作用するかどうか調べるために、24ウェルプレート中に5×104個/ウェルの密度で播種したベロ細胞を、4℃に予冷し、種々の濃度のSB105、SB105-A10、SB104(ウイルス複製の阻害の陰性対照として)またはヘパリン(ウイルス吸着の阻害の陽性対照として)とともに、また、200PFUのHSV-1またはHSV-2とともに4℃で2連でインキュベートした。ウイルス吸着(4℃で3時間、ウイルス吸着のみを可能にすると知られている条件)後、次いで、細胞を冷PBSで3回洗浄して、化合物および吸着していないウイルスを除去し、1.2%メチルセルロースを含有する培地をオーバーレイし、37℃でインキュベートした。48時間後、プレートを固定し、クリスタルバイオレットを用いて染色し、ウイルスプラークをカウントした。図3に示されるように、SB105およびSB105-A10ペプチドは、ベロ細胞へのHSV-1およびHSV-2両方の結合を濃度依存的に防いだ。予想通り、ヘパリン処理は、ウイルス吸着を防いだ。対照的に、SB104は、ベロ細胞へのHSV-1およびHSV-2ウイルス粒子の結合を大幅には低減しなかった。したがって、これらの結果は、SB105およびSB105-A10が、標的細胞へのHSV-1およびHSV-2吸着を阻害することを示す。
【0076】
(実施例III:HCMVに対するSB105およびSB105-A10ペプチドの抗ウイルス活性)
ウイルス収率低減アッセイを使用して、HCMVのin vitro複製に対するSB105およびSB105-A10デンドリマーペプチドの阻害活性を調査した(Luganiniら、2008年)。この目的のために、24ウェルプレート中に5×104個/ウェルの密度で播種した低継代ヒト胚性肺線維芽細胞(HELF)、細胞を、培養培地に溶解した種々の濃度のSB105またはSB105-A10ペプチドとともに37℃で2連でインキュベートするか、または未処理のままとした。1時間後、それらにHCMV AD169またはHCMV AL1を1PFU/細胞の.M.O.I.で感染させた。ウイルス吸着(37℃で2時間)後、培養物を対応するペプチドを含有する培地で維持し、次いで、対照培養物が、広範な細胞変性効果を示すまで(感染後6日)インキュベートした。次いで、抗ウイルスアッセイから細胞および上清を回収し、超音波処理によって破壊した。ウイルス複製の程度は、HELFでの標準プラークアッセイによって、細胞懸濁液の上清の感染性を滴定することによって評価した。
【0077】
内皮向性HCMV VR1814株のin vitro複製に対するSB105およびSB105-A10デンドリマーペプチドの効果を評価するために、臍帯静脈のトリプシン処理によって得られた低継代(2〜6)ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を、24ウェルプレートに5×104個/ウェルの密度で播種した。24時間後、細胞を、培養培地に溶解した種々の濃度のSB105またはSB105-A10ペプチドとともに37℃で2連でインキュベートするか、未処理のままとした。1時間後、それらにHCMV VR1814を1PFU/細胞のM.O.I.で感染させた。ウイルス吸着(37℃で2時間)後、培養物を、対応するペプチドを含有する培地で維持し、対照培養物が、広範な細胞変性効果を示すまで(感染後6日)インキュベートした。次いで、抗ウイルスアッセイから細胞および上清を回収し、超音波処理によって破壊した。ウイルス複製の程度は、HCMV IE1およびIE2タンパク質(クローンE13; Argene Biosoft)に対して反応性のモノクローナル抗体(mAb)を使用し、HUVECでの間接免疫ペルオキシダーゼ染色手順によって細胞溶解物から得た上清の感染性を滴定することによって評価した(Revelloら、2001年)。
【0078】
細胞生存率を決定するために、HELFまたはHUVECを、漸増濃度のペプチドに曝露した。6日間インキュベートした後、先に記載されたように(Pauwelsら、1988年)、3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)法によって生存細胞数を調べた。
【0079】
図4Aに示されるように、感染の1時間前のSB105およびSB105-A10ペプチドを用いるHELFの前処理は、感染の6日後にHCMV実験室株AD169のin vitro複製に対して大幅な濃度依存性阻害効果を引き起こした。HCMV AD169複製の50%阻害をもたらすSB105およびSB105-A10の濃度(IC50)は、それぞれ、1.17および1.36μg/mlであった。SB105およびSB105-A10の阻害効果は、臨床単離物AL1(肺移植レシピエントの気管支肺胞洗浄液から回収された臨床単離物)を感染させたHELFにおいても(SB105およびSB105-A10について1.2μg/mlのIC50)または内皮向性VR1814株(妊婦から得た子宮頸部スワブから回収され、内皮細胞における成長に適応した臨床単離物)を感染させたHUVECにおいても(Revelloら、2001年)(SB105およびSB105-A10について、それぞれ、1.1および1.3μg/mlのIC50)観察されたので、ウイルス株特異的でも、細胞種特異的でもなかった(図4B)。
【0080】
50μg/mlの最大濃度のペプチドを用いる6日間の処理後に、細胞の>90%が生存していたので(図4A)、分析されたペプチドのうち、関連範囲の濃度において、HELFおよびHUVECの生存率に大幅に影響を及ぼしたものがないことは注目に値し、このことは、HCMVに対する抗ウイルス活性が、標的細胞自体の細胞毒性によるものではなかったことを示す。
【0081】
標的細胞へのHCMV侵入に対するSB105およびSB105-A10の効果を調査するために、24ウェルプレート中に5×104個/ウェルの密度で播種したHELF細胞を、4℃に予冷し、200PFUのHCMV AD169を4℃で3時間感染させて、ウイルス結合を可能にした。次いで、細胞を、冷リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で3回洗浄して、吸着していないウイルスを除去した。侵入に対するデンドリマーペプチドの効果をアッセイするために、細胞に種々の濃度のSB105、SB105-A10、SB104(ウイルス複製の阻害の陰性対照として)またはヘパリン(ウイルス吸着の阻害の陽性対照として)を加え、温度を37℃に2時間移行し、その後、細胞外ウイルスを不活性化した。細胞外ウイルスを不活性化するために(また、侵入アッセイにおいて任意の試験化合物を除去するために)、細胞を、100mMグリシン-140mM NaCl 1ml、pH3.0とともに、室温で60秒間インキュベートした。次いで、細胞をPBSで3回洗浄して、pHを中性の値に戻し、1.2%メチルセルロースを含有する培地をオーバーレイし、37℃でインキュベートした。6日後、プレートを固定し、クリスタルバイオレットを用いて染色し、ウイルスプラークをカウントした。並行して、上記と同量のHCMVを、4℃で3時間細胞に結合させ、細胞にメチルセルロース含有培地をオーバーレイし、これらの未処理細胞単層によって生じたプラーク数を100%に設定した。
【0082】
図5は、ウイルス吸着後のペプチドのインキュベーションは、標的細胞へのウイルス侵入に影響を及ぼさなかったことを示す。
【0083】
SB105およびSB105-A10ペプチドが、標的細胞とのHCMV結合を干渉し得るか否かを試験するために、HELF細胞を24ウェルプレート中に5×104個/ウェルの密度で播種した。24時間後、それらを4℃に予冷し、種々の濃度のSB105、SB105-A10、SB104(ウイルス複製の阻害の陰性対照として)またはヘパリン(ウイルス吸着の阻害の陽性対照として)とともに、また、200PFUのHCMV AD169とともに4℃で2連でインキュベートした。ウイルス吸着(4℃で3時間、ウイルス吸着のみを可能にすると知られている条件)後、次いで、細胞を冷PBSで3回洗浄して、化合物および吸着していないウイルスを除去し、1.2%メチルセルロースを含有する培地をオーバーレイし、37℃で6日間インキュベートした。次いで、プレートを固定し、クリスタルバイオレットを用いて染色し、ウイルスプラークをカウントした。図6に示されるように、SB105およびSB105_A10ペプチドは、HELF細胞へのHCMVの結合を濃度依存的に強力に阻害した。予想通り、ヘパリン処理は、ウイルス吸着を防いだ。対照的に、SB104は、HELF細胞へのHCMVウイルス粒子の吸着を大幅には低減しなかった。総合すると、これらの結果は、SB105およびSB105_A10が、標的細胞へのウイルスの結合を防ぐことによってHCMVの複製を阻害することを実証する。
【0084】
(実施例IV:ヒトパピローマウイルスに対する活性)
細胞培養
SV40ラージT抗原を用いて形質転換されたヒト胚性腎細胞に由来する293TT細胞株を、熱不活性化10%ウシ血清(Gibco/BRL)、Glutamax-I(Invitrogen、Carlsbad、CA、USA)および非必須アミノ酸を補給したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(Gibco/BRL、Gaithersburg、MD、USA)で培養した。この細胞株によって、発現プラスミドの過剰複製によって高レベルのタンパク質が、SV40起点を含有するベクターから発現されることが可能となる(Buckら、2004年)。
【0085】
偽ウイルス粒子製造
HPV-16 PsVを、先に記載された方法に従って製造した(Buckら、2005年)。手短には、293TT細胞を、パピローマウイルス主要および微量カプシドタンパク質(L1およびL2)を発現するプラスミドp16sheLLを、それぞれ、pYSEAPまたはpfwBと名づけられた分泌アルカリホスファターゼ(SEAP)または緑色蛍光タンパク質(GFP)を発現するリポータープラスミドと一緒に用いてトランスフェクトした。カプシドを細胞溶解物中で一晩成熟させ、次いで、清澄化した上清を、27-33-39% Optiprep(Sigma-Aldrich、St. Louis、MO、USA)密度勾配の頂部に、室温で4時間載せた。材料を、SW50.1ローター(Beckman Coulter、Inc. Fullerton、CA、USA)中で、234000×g、16℃で3.30時間遠心分離し、チューブの底の穿刺によって回収した。画分を10% SDS-Tris-グリシンゲルで純度について調査し、293TT細胞で滴定してSEAPまたはGFP検出によって感染性について検査し、次いで、プールし、必要になるまで-80℃で凍結した。PsVストックのL1タンパク質含量は、クマシー染色したSDS-PAGEゲルにおけるウシ血清アルブミン標準との比較によって測定した。
【0086】
阻害アッセイ
分泌胚性アルカリホスファターゼ(SEAP)ベースのアッセイのために、293TT細胞を、100μlの中和バッファー(フェノールレッド不含DMEM、10%熱不活性化FBS、1%グルタミン酸、1%非必須アミノ酸、1%ペニシリン-ストレプトマイシン-ファンギゾンおよび10mM HEPES)中、30,000個細胞/ウェルの密度で、96ウェル組織培養処理平底プレートに3〜4時間先立ってプレプレーティングした。用量反応曲線を作成するために、希釈したPsVストック(80μl/ウェル)を、96ウェル未処理滅菌、ポリスチレンプレート(Nalge-Nunc、Roskilde、Denmark)上に置き、段階希釈したペプチド20μlと組み合わせ、氷上に1時間置いた。100μlのPsV-化合物混合物を、プレプレーティングした細胞上に移し、68〜72時間インキュベートした。PsVの終濃度は、約1ng/ml L1とした。インキュベーション後、50μlの上清を回収し、1500×gで5分間清澄化した。清澄化した上清中のSEAP含量を、製造業者によって指示されるとおりにGreat ESCAPE SEAP化学発光キット(BD Clontech、Mountain View、CA、USA)を使用して測定した。10分後、基質を加え、Luminoルミノメーター(Stratec Biomedical System、Birkenfeld、Germany)を使用してサンプルを読み取った。
【0087】
50%阻害濃度(IC50)値は、Prism(GraphPad Software、San Diego、CA、USA)を使用して測定した。
【0088】
緑色蛍光タンパク質(GFP)ベースのアッセイを、上記のように実施した。GFP陽性細胞を蛍光顕微鏡下でカウントし、処理細胞および未処理細胞の比較によって、感染のパーセンテージを算出した。
【0089】
細胞生存率アッセイ
細胞を、24ウェルプレート中に5×104個/ウェルの密度で播種し、翌日、それらを段階希釈したペプチドで処理して、用量反応曲線を作成した。処理の48時間または72時間後、3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)法によって細胞生存率を調べ、50%細胞傷害性濃度(CC50)値は、Prismを使用して調べた。
【0090】
電子顕微鏡法
希釈したHPV-PsV調製物のアリコートを、グリッド上に置き、風乾させ、その後、検査した。顕微鏡検査は、Philips CM10透過型電子顕微鏡を使用して実施し;ランダム部位の顕微鏡写真を種々の倍率で撮った。
【0091】
精製HPV-16 PsVの特性決定
最も発癌性の性器HPV種である(LowyおよびHowley、2001年)ので、HPV-16をモデルとして選択した。その後のアッセイにおいて使用されるHPV-16-SEAP PsV調製物の品質を調べるために、アリコートをSDS-PAGEに付した。図7Aに示されるように、クマシーブリリアントブルー染色によって55kDに移動する主要なバンドが検出され(レーン1)、ウエスタンブロッティングによってL1主要カプシドタンパク質であると確認した(レーン2)。55kD未満の分子量には、L1反応性タンパク質分解生成物は全く観察されず、これは、良質の調製物を示した。図7Bは、同じPsVストックの電子顕微鏡写真を示す。PsVは、真正のHPVカプシドのものと同様である50〜60nmの平均直径を常に示し、最小の凝集しか含まない、個々の、明確に定義された粒子のように見えた。
【0092】
HPV-PsV感染に対する合成ペプチドの阻害効果
PsVは、真正のHPVカプシドのように、2種のウイルスカプシドタンパク質(L1およびL2)から構成されるカプシドによってカプシド形成されているリポータープラスミドからなるので、PsV感染の初期事象は、天然HPV感染のものと似ている。PsVが細胞と結合し、細胞へ侵入した後、リポータープラスミドがリポーター遺伝子の発現のために核に輸送される(Buckら、2004年)。本発明者らは、PsVベースのアッセイを利用して、HPV-16感染のアンタゴニストとして合成ペプチドのパネルをスクリーニングした。用量反応曲線を作成するために、ペプチドの段階希釈物を、HPV-16-SEAP PsVのアリコートとともにプレインキュベートし、次いで、293TT細胞培養物に加えた。感染の72時間後のSEAPリポータープラスミドのPsV媒介性送達の阻害を、細胞上清の化学発光(chemioluminescence)分析によって測定した。Table3(表3)に示されるように、合成ペプチドSB105-A10は、最も活性であるとわかった。2,8μg/mlの50%阻害濃度(IC50)でHPV-16-SEAP PsV感染を強力に阻害した。CC50は、すべての試験した化合物について>100μg/mlであり、これは、阻害活性が、細胞毒性の結果ではないことを示した。GFPベースのアッセイが使用された場合も同様の結果が得られた。
【0093】
【表3】

【0094】
(実施例V:ヒト免疫不全ウイルスに対する活性)
HIVに対するSB105-A10ペプチドの抗ウイルス活性
HIV-1に対するSB105_A10の抗ウイルス活性を評価するために、T-向性HIV-1IIIb株によって感染したC8166 Tリンパ芽球様細胞培養物の上清中のHIV-1 RNAウイルス負荷およびHIV-1 gag p24含量を調べた。
【0095】
HIV-1IIIb(300pg p24/ml)を、スカラー濃度(0.1、1、5、10、20μg/ml)のSB105_A10またはSB104とともに37℃で60分間プレインキュベートし、次いで、C8166細胞に加え、37℃で120分間1×106個細胞/mlの最終密度に調整した。PBS中で4回洗浄した後、細胞を、スカラー濃度のSB105-A10またはSB104を含むRPMI 1640(Gibco、Paisley、UK)および10% FCS(Gibco)に、5x105個細胞/mlで播種した。SB105_A10またはSB104を用いずに、感染の4日後に、培地の半量を新鮮培地で置換した。
【0096】
2連で実施した3回の独立した実験において、感染の7日後に、培養上清中のHIV-1 RNAウイルス負荷およびHIV-1 gag p24含量を決定した。200μlの培養上清からRoche高純度ウイルス核酸キット(Roche、Mannheim、Germany)によってHIV-1 RNAを抽出し、次いで、先に記載されたように(Gibelliniら、2004年)定量的リアルタイムRT-PCRによってRNA負荷を評価した。並行して、ELISA HIV-1 p24抗原キット(Biomerieux Marcy L'Etoile、France)によって、HIV-1 gag p24タンパク質量を調べた。SB105_A10処理は、HIV-1 RNA負荷およびHIV-1 p24含量の両方を大幅に低減させるが、SB104は、HIV-1複製活性の大幅な阻害は誘導しなかった(図8および9)。HIV-1IIIb複製の50%阻害を引き起こすSB105_A10の濃度(IC50)は、2.5μg/mlであった。抗レトロウイルス活性は、試験された化合物のあり得る細胞毒性と関連している可能性があるので、本発明者らは、トリパンブルー排出技術によって細胞生存率を分析し、これは、SB105_A10が、細胞生存に大きく影響を及ぼさなかったことを実証した(図10)。これらの結果全部で、HIV-1IIIb複製は、これらの実験条件下でSB105_A10によって大幅に損なわれ、次いで、この分子が新規抗レトロウイルス薬として考えられ得るということを示した。
【0097】
(参考文献)





【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
R-V-R-I-K-[K]n-[Q]m
[式中、
Rは、アルギニン側鎖またはN-アルキル置換グアニジン側鎖を有するアミノ酸残基、特に、L-アルギニンであり、
VおよびIは、
(i)バリン側鎖を含むアミノ酸残基、特に、L-バリン、
(ii)イソロイシン側鎖を含むアミノ酸残基、特に、L-イソロイシン、
(iii)少なくとも3個のC原子を含む、好ましくは、3〜10個のC原子を含む直鎖飽和側鎖または不飽和側鎖を有するアミノ酸残基、特に、ノルロイシン、2-アミノペンタン酸、2-アミノオクタン酸、2-アミノデカン酸または2-アミノドデカン酸、
(iv)少なくとも3個のC原子を含む、好ましくは、3〜10個のC原子を含む分枝飽和側鎖または不飽和側鎖を有するアミノ酸残基、特に、tert-ロイシン、5-メチルノルロイシンまたはホモイソロイシン(4-メチルノルロイシン)、
(v)少なくとも3個のC原子を含む、好ましくは、3〜10個のC原子を含む環状飽和側鎖または不飽和側鎖を有するアミノ酸残基であって、特に、ノルフラノマイシン、カルバフラノマイシン、シクロペンチルグリシン、シクロペンテニルグリシンまたはシクロヘキセニルグリシンなどの、脂肪族基(好ましくは、1〜10個のC原子、より好ましくは、1〜8個のC原子、さらにより好ましくは、1〜6個のC原子を有する脂肪族基、特に好ましくは、メチル、エチル、イソプロピル、n-プロピル、n-ブチル、イソブチル)で任意の環位置で置換されていてもよい、シクロプロピル、シクロブチル、シクロブテニル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニルなどの、C=C二重結合を含んでもよい、3〜6個の環原子を含む環状残基から選択されるアミノ酸残基、
から独立に選択されるアミノ酸残基であり、
Kは、リシン側鎖を含むアミノ酸残基、特に、L-リシン、または正に帯電している側鎖を含む別のアミノ酸残基、特に、オルニチンもしくは2,4-ジアミノ酪酸であり、
Qは、グルタミン側鎖を含むアミノ酸残基、特に、L-グルタミンであり、
mおよびnは独立に、0または1である]
によって表されるアミノ酸配列を含む最大35アミノ酸残基の長さを有するペプチド化合物であって、L-および/またはD-アミノ酸残基構成要素を含み得るペプチド化合物。
【請求項2】
一般式(II):
A-S-L-R-V-R-I-K-[K]n-[Q]m
[式中、R、K、Q、V、I、nおよびmは、請求項1に定義のとおりであり、
Aは、アラニン側鎖を含むアミノ酸残基、特に、L-アラニンであり、
Sは、ヒドロキシル置換脂肪族または芳香族側鎖を含むアミノ酸残基、特に、セリン側鎖を含むアミノ酸残基、より詳しくは、L-セリンであり、
Lは、
(i)ロイシン側鎖を含むアミノ酸残基、特に、L-ロイシン、
(ii)イソロイシン側鎖を含むアミノ酸残基、特に、L-イソロイシン、
(iii)少なくとも3個のC原子を含む、好ましくは、3〜10個のC原子を含む直鎖飽和側鎖または不飽和側鎖を有するアミノ酸残基、特に、ノルロイシン、2-アミノペンタン酸、2-アミノオクタン酸、2-アミノデカン酸または2-アミノドデカン酸、
(iv)少なくとも3個のC原子を含む、好ましくは、3〜10個のC原子を含む分枝飽和側鎖または不飽和側鎖を有するアミノ酸残基、特に、tert-ロイシン、5-メチルノルロイシンまたはホモイソロイシン(4-メチルノルロイシン)、
(v)少なくとも3個のC原子を含む、好ましくは、3〜10個のC原子を含む環状飽和側鎖または不飽和側鎖を有するアミノ酸残基であって、特に、ノルフラノマイシン、カルバフラノマイシン、シクロペンチルグリシン、シクロペンテニルグリシンまたはシクロヘキセニルグリシンなどの、脂肪族基(好ましくは、1〜10個のC原子、より好ましくは、1〜8個のC原子、さらにより好ましくは、1〜6個のC原子を有する脂肪族基、特に好ましくは、メチル、エチル、イソプロピル、n-プロピル、n-ブチル、イソブチル)で任意の環位置で置換されていてもよい、シクロプロピル、シクロブチル、シクロブテニル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニルなどの、C=C二重結合を含んでいてもよい、3〜6個の環原子を含む環状残基から選択されるアミノ酸残基、
から選択されるアミノ酸残基である]
によって表されるアミノ酸配列を含む最大35アミノ酸残基の長さを有する、請求項1に記載のペプチド化合物。
【請求項3】
A-S-L-R-V-R-I-K-K(IIa)
A-S-L-R-V-R-I-K-K-Q(IIb)
[式中、R、K、Q、V、I、A、LおよびSは、請求項1または2に定義のとおりである]
から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1または2に記載のペプチド化合物。
【請求項4】
最大30アミノ酸残基、好ましくは、最大15アミノ酸残基の長さを有する、請求項1から3のいずれか一項に記載のペプチド化合物。
【請求項5】
直鎖または環状形態を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のペプチド化合物。
【請求項6】
複数の、請求項1から5のいずれか一項に記載のペプチド化合物を含む多量体化合物。
【請求項7】
ポリ(N-アルキル(メタ)アクリルアミド)、ポリ(N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド)、ポリメラミン、デキストラン、シクロデキストリン、ポリエチレングリコールおよび/またはポリビニルピロリドンから特に選択されるマトリックス上で多量体化される、請求項6に記載の多量体化合物。
【請求項8】
分枝構造、特に、デンドリマー構造を有する、請求項6に記載の多量体化合物。
【請求項9】
(i)R-(Y1-R)m-Y1-(R)m' (IIIa)
[式中、Rは、請求項1から5のいずれか一項に定義されるペプチド化合物であり、
Y1は、共有結合または二官能性リンカー、例えば、プロピレングリコールなどのジアルコール、コハク酸などのジカルボン酸、エチレンジアミンなどのジアミン、アミノ酸、ヒドロキシカルボン酸、またはジイソシアネートであり、mは、0または正の整数、好ましくは、1、2、3、4、5または6であり、m’は、0または1である]、
(ii)[[(R)n1Y1']n2]Y2 (IIIb)
[式中、Rは、請求項1から5のいずれか一項に定義されるペプチド化合物であり、
Y1'は、各場合において独立に、少なくとも3の官能性を有するリンカー、例えば、リシン、オルニチン、2,4-ジアミノ酪酸、ノル-リシン、アミノアラニン、アスパラギン酸またはグルタミン酸などの三官能性アミノ酸であり、
Y2は、少なくとも2の官能性を有するリンカーであり、
n1およびn2は、各場合において独立に、少なくとも2、好ましくは、2、3または4、より好ましくは、2である整数である]、
(iii){[[(R)n1Y1']n2]Y2'}n3Y3 (IIIc)
[式中、Rは、請求項1から5のいずれか一項に定義されるペプチド化合物であり、
Y1'およびY2'は、各場合において独立に、少なくとも3の官能性を有するリンカー、例えば、リシン、オルニチン、2,4-ジアミノ酪酸、ノルリシン、アミノアラニン、アスパラギン酸またはグルタミン酸などの三官能性アミノ酸であり、
Y3は、少なくとも2の官能性を有するリンカーであり、
n1、n2およびn3は、各場合において独立に、少なくとも2、好ましくは、2、3または4、より好ましくは、2である整数である]
から選択される、請求項6または8に記載の多量体化合物。
【請求項10】
多量体化合物(IIIb)が、4つのペプチド単位を含み、以下の構造:
【化1】

を有する、請求項9に記載の多量体化合物。
【請求項11】
多量体化合物(IIIb)が、構造[[(R)2Lys2]2]-Lys-β-Alaを有する、請求項10に記載の多量体化合物。
【請求項12】
Rが、請求項3に定義される式(IIa)または(IIb)のペプチド化合物、特に、
(ASLRVRIKKQ)4-Lys2-Lys-β-Ala (IV)および
(ASLRVRIKK)4-Lys2-Lys-β-Ala (V)
から選択される多量体化合物である、請求項9から11のいずれか一項に記載の多量体化合物。
【請求項13】
結合している、脂質、アミド、エステル、アシルおよび/またはアルキル部分から特に選択される少なくとも1つの修飾を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
3から25個のC原子を有する、直鎖または環状の飽和、一価不飽和または多価不飽和炭化水素基を含む少なくとも1つのアミノカルボン酸、例えば、5-アミノ吉草酸、5-アミノペンタン酸、8-アミノオクタン酸または2-アミノデカン酸である少なくとも1つの脂質部分を含み、好ましくは、該脂質部分が、N末端および/またはC末端に結合している、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
抗病原性活性、特に、DNAおよび/またはRNAウイルスに対する、特に、単純ヘルペス、サイトメガロウイルス、ヒトパピローマウイルスおよびヒト免疫不全ウイルスに対する抗ウイルス活性を有する、請求項1から14のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項16】
病原性感染症、特に、ウイルス感染症または/および細菌感染症の予防および治療のための、請求項1から15のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
単純ヘルペス、サイトメガロウイルス、ヒトパピローマウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、クラミジア・トラコマティスおよびナイセリア・ゴノレアの群のうち1種または複数から選択される経膣的、経直腸的、経口性行為感染症の予防および治療のための、請求項16に記載の化合物。
【請求項18】
請求項1から13のいずれか一項に定義される少なくとも1種の化合物を、薬学的に許容される担体、希釈剤および/またはアジュバントと一緒に含む、医学用組成物。
【請求項19】
ヒト医学において使用するための、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
獣医学において使用するための、請求項18に記載の組成物。
【請求項21】
固体、液体またはゲルおよびそれらの組合せから、例えば、洗眼液、口内洗浄液、軟膏、エアゾールまたは局所製剤として選択される薬剤投与形の形態の、請求項8から20のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項22】
少なくとも1種のさらなる抗病原性剤、特に、抗ウイルス剤または/および抗菌剤をさらに含む、請求項18から21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
さらなる抗ウイルス剤が、プロテアーゼ阻害剤、ポリメラーゼ阻害剤、インテグラーゼ阻害剤、侵入阻害剤、アセンブリー/分泌阻害剤、翻訳阻害剤、免疫賦活薬またはそれらの組合せである、請求項22に記載の組成物。

【図7】
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【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2013−501030(P2013−501030A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523341(P2012−523341)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際出願番号】PCT/EP2010/061424
【国際公開番号】WO2011/015628
【国際公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(512021553)
【Fターム(参考)】