説明

新規材料およびその製造方法

本発明は、リンを含むシリコン材料を製造する新規の方法に関する。本方法は、高レベルのリンがシリコンと化合することを可能にする。本発明の1つの態様では、リンサンプルは、シリコンサンプルで包囲される。次いで、リンの少なくとも一部は蒸発され、シリコンとの反応が引き起こされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の複合材料および複合材料を製造する新規の方法に関する。より詳細には、本発明は、シリコンおよびリンを含む新規の複合材料、およびシリコンとリンを化合する新規の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンへの不純物原子の導入は、一般的には、シリコン集積回路を製造するプロセスの重要な部分を形成する。シリコンにドーパントを導入する最も一般に用いられる方法は、(a)シリコンから空間的に離れているソースからシリコンへの不純物の拡散、(b)シリコンの表面上に形成された酸化層からの拡散、および(c)後に拡散とアニールが続くシリコンのイオン注入による。
【0003】
リンは、半導体接合を形成するために一般にドーパントとして使用される。POCl源からシリコンへのリンの拡散については、890℃から1050℃の拡散温度が一般的に必要である。PBrおよび他のソースからのリンの拡散も可能である。
【0004】
イオン注入によるシリコンへのドーパントの導入は、ドーパント原子源を蒸発させ、原子を帯電させ、原子から形成されたイオンを加速し、シリコン基板にイオンを向けることにより、達成できる。イオンとの相互作用の結果のシリコン格子の乱れは、後の熱処理によって取り除かれることができる。このように、リンは、1020cm−3の濃度でシリコンに導入されることができる。イオン注入は、シリコンの薄い表層中のドーパントの濃度を変更するために使用されることができ、シリコン層の厚さは、一般的に1ミクロン未満である。
【0005】
シリコン合金は、ある元素とシリコンを溶解することにより製造されており、溶融合金は、次いで、ブロックの形態で鋳造される。シリコン粉末は、そのようなブロックを粉砕することにより形成されることができる。しかし、このように形成された合金中に存在する非シリコン元素は、しばしば、鋳造中に偏析する傾向がある。これは、そのようなブロックから形成された粉末が、この偏析の結果不均一になることを意味する。
【0006】
純粋なシリコンの融点は、比較的高く(1420℃)、これは、溶融シリコンを低い沸点の元素と化合することを困難にする。例えば、赤リンの沸点は、417℃であり、その結果、赤リンが溶融シリコンと接触される場合、赤リンは蒸発してしまい、リンを含みかつシリコンと赤リンを化合することを困難にする。
【0007】
米国特許第5,926,727号明細書は、本発明に適切な背景情報を提供する。文献には、半導体にリンを導入する方法について記載されている。その方法は、リン酸アンモニウム水溶液の調製を含み、半導体粒子は、リン酸アンモニウム水溶液中に投入され、リン酸アンモニウムで粒子が覆われる。次いで、被覆された粒子が乾燥され、リンは、次いでシリコン中に拡散可能となる、または拡散させられる。拡散プロセスは、一般的に950℃で行なわれる。
【0008】
米国特許第5,094,832号明細書は、また、本発明に適切な背景情報を含む。これは、溶融シリコンのガス霧化について記載している。この種の霧化に起因する粒子サイズは、0.1ミクロンから1000ミクロンである。リンは、0%から0.5%の量でシリコン粒子中に存在する。しかし、リンは、ナトリウム、リチウム、カリウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウムおよびベリリウムなどの、多くの不純物のうちの1つである。霧化は、溶融シリコンの流れを破壊する不活性ガスの流れを使用することにより達成され、シリコンの小さな液滴を形成し、冷却されて凝固する。
【0009】
シリコンおよびリンを含む物質は、癌の治療に有用であることも分かった。シリコンを含むそのような物質は、国際公開第02/067998号パンフレットに記載されている。
【0010】
癌は、種々の多くの方法によって治療することができる。これらの方法の1つは、放射線治療であり、その方法では、腫瘍は、ガンマ線またはベータ線に曝される。放射線源は、患者の身体の外部であってもよく、または身体内にあってもよい。
【0011】
ある場合には、放射線源は腫瘍の範囲に位置してもよく、この種の治療は、近接照射療法として知られている。腫瘍の範囲に放射線源を置き、放射線源の適切な選択によって、健康な組織に対する照射を比較的小さくして、放射線を腫瘍に照射することが可能である。
【0012】
国際公開第02/067998号パンフレットには、ベータ放射体である32Pを含むいくつかの放射線ヌクレオチドの使用について記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、シリコンおよびリンを含み、実質的に均一な化学組成および高濃度のリンを有する、粉体状の新規の複合材料を提供することである。本発明のさらなる目的は、シリコンおよびリンを含み、不純物レベルが低く、高濃度のリンを有する粉体状の新規の複合材料を提供することである。本発明のさらなる目的は、シリコンおよび高濃度のリンを含む固体複合材料を製造し、固体複合材料に対してシリコンを大きく変換することを可能にする新規の方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
1つの態様によれば、本発明は、
(ai)シリコンサンプルの少なくとも一部を900℃から1500℃のシリコン反応温度に加熱するステップと、
(bi)リンサンプルの少なくとも一部を加熱して、リン蒸気が生成され、かつリンサンプルの少なくとも一部が100℃から800℃のリン蒸発温度に加熱されるステップと、
(ci)リン蒸気の少なくとも一部をシリコン反応温度に加熱されたシリコンサンプルの少なくとも一部と接触させることを可能にする、および/または引き起こすステップとを含み、
ステップ(ai)、(bi)、(ci)が行なわれて、シリコンおよびリンを含む溶融複合材料が形成される、シリコンおよびリンを含む複合材料を製造する方法を提供する。
【0015】
ステップ(ai)は、シリコンサンプルの少なくとも一部を1000℃から1250℃のシリコン反応温度に加熱するステップを含み、ステップ(bi)は、リンサンプルの少なくとも一部を380℃から700℃のリン蒸発温度に加熱するステップを含むことが好ましい。ステップ(ai)は、シリコンサンプルの少なくとも一部を1100℃から1200℃のシリコン反応温度に加熱するステップを含み、ステップ(bi)は、リンサンプルの少なくとも一部を400℃から450℃のリン蒸発温度に加熱するステップを含むことが、より好ましい。
【0016】
ステップ(ai)は、シリコンサンプルの少なくとも一部を1131℃±30℃の反応温度に加熱するステップを含んでいてもよい。
【0017】
ステップ(bi)は、リンサンプルの少なくとも一部を417℃±10℃のリン蒸発温度に加熱するステップを含んでいてもよい。
【0018】
ステップ(ci)は、リンサンプルの80%から100%がシリコンの少なくとも一部と接触することを可能にするおよび/または引き起こすステップを含んでいてもよい。
【0019】
ステップ(ci)は、リンサンプルの80%から99%がシリコンの少なくとも一部と接触することを可能にするおよび/または引き起こすステップを含んでいてもよい。
【0020】
ステップ(ci)は、リンサンプルの80%から95%がシリコンの少なくとも一部と接触することを可能にするおよび/または引き起こすステップを含んでいてもよい。
【0021】
各ステップ(ai)、(bi)、(ci)は、700mmHgから800mmHgの圧力で行われてもよい。
【0022】
リンを加熱するステップ(bi)が開始される前に、シリコンを加熱するステップ(ai)が開始されてもよい。
【0023】
シリコンサンプルの一部のみがシリコン反応温度に加熱されている場合、かつリンの一部のみが蒸発される場合、本方法中にインターバルがあってもよい。
【0024】
本方法は、さらに、溶融複合材料をシリコン反応温度より高い温度に加熱するステップを含んでいてもよい。本方法は、さらに、固体となるまで溶融複合材料を冷却するステップを含んでいてもよい。
【0025】
一旦、リンの実質的な割合(例えば80%以上)が変換された場合、あるインターバルの間、シリコン反応温度より複合材料の温度を高くすると、複合材料の均質性を向上することができる。
【0026】
シリコンサンプルは、1gから100kgの質量としてもよく、リンサンプルは、1gから100kgの質量としてもよい。
【0027】
シリコンサンプルは、1kgから100kgの質量としてもよく、リンサンプルは、100gから10kgの質量としてもよい。
【0028】
シリコンの少なくとも一部をシリコン溶融温度未満(1420℃)である1131℃あたりの温度に加熱し、リン蒸気をシリコンと接触させることによって、シリコンリン化物が形成されると考えられる。シリコンリン化物は、1131℃で液相が存在し、液状のシリコンリン化物は、リン蒸気を固体シリコンよりも効率的に吸収すると考えられる。リン蒸気の損失を低減することにより、シリコンリン化物は、シリコンとリンの効率的な変換を可能にすると考えられる。シリコンの温度が、シリコンの溶融温度より低い1131℃あたりであることは、リンの蒸発の割合を低減し、従って、シリコンと化合することができる前のリンの損失を低減することに役立つ。
【0029】
シリコンとリンの温度差を維持することによって、少なくとも最初に、リンの一部のみをその沸点(417℃)あたりの温度に加熱することを可能にする。このように、リン蒸気を比較的徐々に解放することが達成できる。固体のリンが、すべてシリコン反応温度に加熱される場合、リン蒸気は非常に迅速に形成され、リンが変換される前に損失をもたらす。
【0030】
ステップ(ai)は、有利には、熱源を使用して、シリコンサンプルの少なくとも一部を加熱するステップを含み、ステップ(bi)は、同じ熱源を使用して、リンサンプルの少なくとも一部を加熱するステップを含む。シリコンの少なくとも一部は、より有利には、熱源からリンを熱的に隔離するように配置される。
【0031】
シリコンは、上記温度において熱伝導率が比較的低いので、断熱材としてシリコンを使用することは有利であり、リンとシリコンの間で温度差が設定されることが可能となる。
【0032】
熱源は、溶融炉を含む炉であってもよい。溶融炉は、石英を含んでいてもよい。溶融炉は、アルミナを含んでいてもよい。
【0033】
高純度石英を含む炉構成要素を使用すると、金属元素からの汚染を最小にして、リンを含むシリコン合金を形成することを可能にすると考えられる。
【0034】
ステップ(ci)は、リンサンプルの少なくとも一部をシリコンサンプルの少なくとも一部で実質的に包囲して、形成されたリン蒸気の少なくとも一部が、シリコンサンプルの少なくとも一部の中におよび/または上におよび/またはこれを介して通過することを、引き起こす、および/または可能とするステップを含むことが好ましい。
【0035】
シリコンサンプルは、多数のシリコン粒子を含むことが好ましい。シリコンサンプルの平均サイズは、0.5mmから5mmであることがより好ましい。
【0036】
シリコン粒子の一部は、リンサンプルが設置される基盤に形成されてもよい。その後、リンサンプルは、さらなる量のシリコン粒子中で覆われて、シリコン層によって実質的に包囲される。したがって、シリコン粒子を使用すると、リンサンプルを包囲する便利な方法が提供される。
【0037】
ステップ(ai)は、リン蒸気の少なくとも一部によって占められた範囲に、シリコン粒子を添加するステップを含んでいてもよい。ステップ(ai)は、リン蒸気の少なくとも一部によっておよびシリコン反応温度に加熱されたシリコンサンプルの一部によって占められた範囲に、シリコン粒子を添加するステップを含むことがさらに好ましい。ステップ(ai)は、リン蒸気の少なくとも一部およびリンサンプルの少なくとも一部を包囲するシリコン層によって占められた範囲に、シリコン粒子を添加するステップを含むことがさらに好ましい。
【0038】
リンサンプルがシリコン層に包囲される場合、リン蒸気が抜ける前に、リン蒸気がすべてシリコン層によって捕捉されるとは限らない。リン蒸気によって占められた範囲に、シリコン粒子を添加することによって、シリコン粒子の一部は、リン蒸気の一部と反応し、それによって、その抜けを防ぐ。シリコン粒子の質量が小さく、したがって、シリコン反応温度に急速に加熱されることができるため、シリコン粒子を使用することは有利であり、シリコン粒子の表面積は比較的高いため、シリコン粒子の使用はさらに有利である。
【0039】
シリコンサンプルは、有利には、多結晶シリコンを含む。シリコンサンプルは、より有利には、太陽電池用多結晶シリコンを含む。シリコンサンプルは、さらに有利には、電子機器用多結晶シリコンを含む。
【0040】
リンサンプルの純度は、より有利には、99.99質量%以上である。リンサンプルの純度は、さらに有利には、99.9999質量%以上である。
【0041】
リンサンプルは、白リンを含んでいてもよい。
【0042】
赤リン、白リンおよび黒リンを含む、リンのいくつかの形態がある。白リンは、4面体P分子を含む固体である。白リンは、標準状態下で、他の固体相より熱力学的に安定していない。白リンは、密度が1.8gcm−3、沸点が280℃である。
【0043】
リンサンプルは、有利には、赤リンを含む。
【0044】
赤リンは、数日間、不活性雰囲気で、300℃で白リンを加熱することにより得られる。赤リンは、通常、無定形固体として得られるが、非常に複雑な3次元ネットワーク構造を有する結晶材料が調製されてもよい。赤リンは、密度が2.2gcm−3、沸点が417℃である。
【0045】
赤リンは、一般に白リンほど反応性を示さず、揮発性ではないので、赤リンを使用することは有利である。
【0046】
リンサンプルは、黒リンを含んでいてもよい。
【0047】
赤リンが高圧下で加熱される場合、黒リンの連続相が形成される。これらの相の1つは、ピラミッド形の3つの配位P原子を有する襞のある層からなる。
【0048】
シリコンサンプルの純度は、99.99質量%以上であってもよい。シリコンサンプルの純度は、99.99999%質量以上であってもよい。
【0049】
本方法は、有利には、ステップ(ci)によって生成された溶融複合材料を霧化するさらなるステップ(di)を含む。
【0050】
ステップ(di)は、ステップ(ci)によって生成された溶融複合材料をガス霧化するステップを含んでいてもよい。ステップ(di)は、ステップ(ci)によって生成された溶融複合材料を液体霧化するステップを含んでいてもよい。ステップ(di)は、ステップ(ci)によって生成された溶融複合材料を水霧化するステップを含んでいてもよい。ステップ(di)は、霧化された溶融複合材料を冷却するステップを含んでいてもよい。
【0051】
ステップ(ai)、(bi)、(ci)および(di)は、複合材料が、0.1ミクロンから300ミクロンの平均粒子径の粉末を含むように行なわれてもよい。
【0052】
ステップ(ai)、(bi)、(ci)および(di)は、複合材料が、0.1ミクロンから100ミクロンの平均粒子径の粉末を含むように行なわれてもよい。
【0053】
ステップ(ai)、(bi)、(ci)および(di)は、複合材料が、粉末を含むように行なわれてもよく、該粉末は、多数の均一な組成粒子を有し、各均一な組成粒子は、実質的に均一な化学組成を有する。
【0054】
多孔性の多結晶シリコンのある形態は、有利な生物学的特性を有し、これらの特性は、PCT/GB96/01863号明細書に記載されている。例えば、多孔質シリコンおよび多結晶シリコンは、再吸収可能な生体活性形態を有する。
【0055】
ステップ(ai)、(bi)、(ci)および(di)は、多結晶シリコンおよびリンを含む粉末が形成されるように行われてもよい。
【0056】
シリコンおよびシリコンを含む材料は、参照により本明細書に組み込まれる、「多孔質シリコンの特性(Properties of Porous Silicon)」EMIS Datareviews Series18,Institute of Electrical Engineers,ISBN0852969325,12〜29ページに記載されたステインエッチング法およびアノード酸化技術を含む多くの技術によって、多孔化されてもよい。
【0057】
本方法は、シリコンおよびリンを含む複合材料をアノード酸化するさらなるステップを含んでいてもよい。本方法は、シリコンおよびリンを含む複合材料をステインエッチングするさらなるステップ(ei)を含んでいてもよい。ステップ(ei)は、ステップ(di)後に行なわれてもよい。
【0058】
このように、複合材料の多孔化は、生物学的用途のための使用を可能とし、例えば、多孔化は、シリコン埋め込み形成における複合材料の使用を可能とする。
【0059】
ステップ(bi)は、炉中でリンサンプルの少なくとも一部を加熱するステップを含むことが好ましい。
【0060】
さらなる態様によれば、本発明は、リンおよびシリコンを含む複合材料を製造する方法を提供し、該方法は、
(aii)リンサンプルを取るステップと、
(bii)リンサンプルをシリコン層で実質的に包囲するステップと、
(cii)シリコン層の少なくとも一部とリンサンプルの間で温度差が設定され、かつリンの少なくとも一部が蒸発されるように、シリコンに熱を加えるステップと、
(dii)シリコンおよびリンを含む溶融複合材料が形成されるように、リン蒸気の少なくとも一部をシリコン層の少なくとも一部と接触させることを可能にする、および/または引き起こすステップとを含む。
【0061】
シリコン層は、シリコン粒子の層を含んでいてもよい。シリコン層は、シリコン粒子の層を含んでいてもよく、各シリコン粒子は、多結晶シリコンを含む。
【0062】
ステップ(aii)、(bii)および(cii)は、シリコン層の少なくとも一部が、900℃から1500℃のシリコン反応温度に加熱されるように行なわれることが好ましい。ステップ(aii)、(bii)および(cii)は、シリコン層の少なくとも一部が、900℃から1500℃のシリコン反応温度に加熱され、かつリンの少なくとも一部が、100℃から1000℃のリン蒸発温度に加熱されるように行なわれることが、より好ましい。
【0063】
ステップ(aii)、(bii)および(cii)は、シリコン層の少なくとも一部が、1131℃以上のシリコン反応温度に加熱されるように行なわれてもよい。
【0064】
シリコン反応温度は、有利には、1000℃から1250℃であり、リン蒸発温度は、380℃から500℃である。シリコン反応温度は、より有利には、1050℃から1200℃であり、リン蒸発温度は、400℃から450℃である。シリコン反応温度は、さらに有利には、1100℃から1150℃であり、リン蒸発温度は、400℃から450℃である。シリコン反応温度は、さらに有利には、1131℃±5℃であり、リン蒸発温度は、417℃±5℃である。
【0065】
ステップ(cii)および(dii)は、両方とも、700mmHgから800mmHgの圧力で行なわれてもよい。
【0066】
シリコンサンプルの質量は、1gから100kgであってもよく、リンサンプルの質量は、1gから100kgであってもよい。
【0067】
シリコンサンプルの質量は、1kgから100kgであってもよく、リンサンプルの質量は、100gから10kgであってもよい。
【0068】
ステップ(cii)は、シリコン層の少なくとも一部を、溶融炉を含む炉で加熱することにより行なわれてもよい。溶融炉は、石英を含んでいてもよい。溶融炉は、アルミナを含んでいてもよい。
【0069】
高純度石英を含む炉構成要素を使用すると、クロム、コバルト、マンガン、セリウム、銀、ナトリウム、リチウム、カリウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウムおよびベリリウムなどの元素による汚染を最小にして、リンおよびシリコンを含む複合材料を形成することが可能になると考えられる。
【0070】
シリコンサンプルは、有利には、多結晶シリコンを含む。シリコンサンプルは、より有利には、太陽電池用多結晶シリコンを含む。シリコンサンプルは、さらに有利には、電子機器用多結晶シリコンを含む。
【0071】
シリコンサンプルは、多数のシリコン粒子を含むことが好ましい。シリコンサンプルの平均サイズは、0.5mmから5mmであることがより好ましい。
【0072】
リンのサンプルは、有利には、赤リンを含む。
【0073】
本方法は、有利には、ステップ(dii)によって生成された溶融複合材料を霧化するさらなるステップ(eii)を含む。
【0074】
ステップ(eii)は、ステップ(dii)によって生成された溶融複合材料をガス霧化するステップを含んでいてもよい。ステップ(eii)は、ステップ(dii)によって生成された溶融複合材料を液体霧化するステップを含んでいてもよい。ステップ(eii)は、ステップ(dii)によって生成された溶融複合材料を水霧化するステップを含んでいてもよい。ステップ(eii)は、霧化された溶融複合材料を冷却するステップを含んでいてもよい。
【0075】
ステップ(aii)、(bii)、(cii)、(dii)および(eii)は、シリコンおよびリンを含む粉末が形成され、かつ粉末が、多数の均一な組成粒子を含むように行なわれてもよく、各均一な組成粒子は、他の均一な組成粒子の化学組成と実質的に同じ化学組成を有する。
【0076】
本方法は、ステップ(dii)によって形成された複合材料を冷却するさらなるステップを含んでいてもよい。
【0077】
本方法は、複合材料を多孔化するさらなるステップを含んでいてもよい。
【0078】
本方法は、シリコンおよびリンを含む複合材料をアノード酸化するさらなるステップを含んでいてもよい。本方法は、シリコンおよびリンを含む複合材料をステインエッチングするさらなるステップを含んでいてもよい。
【0079】
本方法は、さらに、ステップ(cii)の後および/または間に、リン蒸気の少なくとも一部によって占められた範囲にシリコン粒子を添加するステップを行ってもよい。
【0080】
さらなる態様によれば、本発明は、シリコンおよびリンを含む複合材料を製造する方法を提供し、該方法は、
(aiii)液状シリコンリン化物が形成されるような温度および圧力で、固体シリコンの第1のサンプルとリン蒸気の第1のサンプルを化合するステップと、
(biii)シリコンおよびリンを含む複合材料が形成されるように、液状のシリコンリン化物をシリコンの第2のサンプルおよび/またはリンの第2のサンプルと化合させることを可能にする、および/または引き起こすステップとを含む。
【0081】
本明細書の目的で、シリコンリン化物は、化学式SiPを有する化合物である。
【0082】
ステップ(aiii)は、1000℃から1250℃の温度で、固体シリコンの第1のサンプルとリン蒸気の第1のサンプルを化合するステップを含んでいてもよい。ステップ(aiii)は、1131℃±5℃の温度で、固体シリコンの第1のサンプルとリン蒸気の第1のサンプルを化合するステップを含んでいてもよい。
【0083】
本方法は、ステップ(biii)によって生成された複合材料を霧化するさらなるステップ(ciii)を含んでいてもよい。
【0084】
ステップ(aiii)、(biii)および(ciii)は、シリコンおよびリンを含む粉末が形成され、かつ粉末が、多数の均一な組成粒子を含むように行なわれてもよく、各均一な組成粒子は、他の均一な組成粒子と実質的に同じ化学組成を有する。
【0085】
ステップ(aiii)、(biii)および(ciii)は、複合材料が、多結晶シリコンを含むように行なわれてもよい。
【0086】
本方法は、ステップ(biii)によって形成された複合材料を冷却するさらなるステップを含んでいてもよい。
【0087】
本方法は、複合材料を多孔化するさらなるステップを含んでいてもよい。
【0088】
本方法は、シリコンおよびリンを含む複合材料をアノード酸化するさらなるステップを含んでいてもよい。本方法は、シリコンおよびリンを含む複合材料をステインエッチングするさらなるステップを含んでいてもよい。
【0089】
本方法は、さらに、リン蒸気の少なくとも一部によって占められた範囲にシリコン粒子を添加するステップを含んでいてもよい。
【0090】
さらなる態様によれば、本発明は、シリコンおよびリンを含む複合材料を製造する方法を提供し、該方法は、
(aiv)熱源とリンサンプルの間にシリコンの第1のサンプルを配置し、リンサンプルが、シリコンの第1のサンプルによって熱源から隔離されるステップと、
(biv)熱源を使用して、リンサンプルの少なくとも一部を加熱して、リンのサンプルの少なくとも一部が蒸発されるステップと、
(civ)シリコンおよびリンを含む溶融複合材料が形成されるように、リン蒸気の少なくとも一部をシリコンの第1のサンプルの少なくとも一部および/またはシリコンの第2のサンプルと化合させるステップとを含む。
【0091】
ステップ(civ)は、1000℃から1250℃の温度で行なわれてもよい。ステップ(civ)は、1131℃±20℃の温度で行なわれてもよい。
【0092】
本方法は、ステップ(civ)によって生成された複合材料を霧化するさらなるステップ(div)を含んでいてもよい。
【0093】
ステップ(aiv)、(biv)、(civ)および(div)は、シリコンおよびリンを含む粉末が形成され、かつ粉末が多数の均一な組成粒子を含むように行なわれてもよく、各均一な組成粒子は、他の均一な組成粒子と実質的に同じ化学組成を有する。
【0094】
ステップ(aiv)、(biv)、(civ)および(div)は、複合材料が多結晶シリコンを含むように行なわれてもよい。
【0095】
本方法は、ステップ(civ)によって形成された複合材料を冷却するさらなるステップを含んでいてもよい。
【0096】
本方法は、複合材料を多孔化するさらなるステップを含んでいてもよい。
【0097】
本方法は、シリコンおよびリンを含む複合材料をアノード酸化するさらなるステップを含んでいてもよい。本方法は、シリコンおよびリンを含む複合材料をステインエッチングするさらなるステップを含んでいてもよい。
【0098】
本方法は、さらに、リン蒸気の少なくとも一部によって占められた範囲にシリコン粒子を添加するステップを含んでいてもよい。
【0099】
さらなる態様によれば、本発明は、シリコンおよびリンを含む複合材料を製造する方法を提供し、該方法は、
(av)リンサンプルの少なくとも一部を蒸発させるステップと、
(bv)リン蒸気の少なくとも一部が位置する範囲に、リンの複数の粒子を添加するステップと、
(cv)シリコンおよびリンを含む溶融複合材料が形成されるように、900℃から1500℃の温度にシリコン粒子を加熱するステップとを含む。
【0100】
ステップ(cv)は、1000℃から1250℃の温度で行なわれてもよい。ステップ(cv)は、1131℃±20℃の温度で行なわれてもよい。
【0101】
本方法は、ステップ(cv)によって生成された溶融複合材料を霧化するさらなるステップ(dv)を含んでいてもよい。
【0102】
ステップ(av)、(bv)、(cv)および(dv)は、シリコンおよびリンを含む粉末が形成され、かつ粉末が多数の均一な組成粒子を含むように行なわれてもよく、各均一な組成粒子は、他の均一な組成粒子と実質的に同じ化学組成を有する。
【0103】
ステップ(av)、(bv)、(cv)および(dv)は、複合材料が多結晶シリコンを含むように行なわれてもよい。
【0104】
本方法は、ステップ(cv)によって形成された複合材料を冷却するさらなるステップを含んでいてもよい。
【0105】
本方法は、複合材料を多孔化するさらなるステップを含んでいてもよい。
【0106】
本方法は、シリコンとリンを含む複合材料をアノード酸化するさらなるステップを含んでいてもよい。本方法は、シリコンおよびリンを含む複合材料をステインエッチングするさらなるステップを含んでいてもよい。
【0107】
本方法は、さらに、リン蒸気の少なくとも一部によって占められた範囲にシリコン粒子を添加するステップを含んでいてもよい。
【0108】
さらなる態様によれば、本発明は、シリコンおよびリンを含む複合材料を提供し、該複合材料は上記態様のいずれの方法によって得られる。
【0109】
さらなる態様によれば、本発明は、シリコンおよびリンを含む複合材料を提供し、該複合材料は、0.001から30原子百分率のリンを含む。
【0110】
複合材料は、1から15原子百分率のリンを含んでいてもよい。複合材料は、1.5から15原子百分率のリンを含んでいてもよい。複合材料は、1.5から10原子百分率のリンを含んでいてもよい。複合材料は、2から10原子百分率のリンを含んでいてもよい。複合材料は、1.5から5原子百分率のリンを含んでいてもよい。複合材料は、2から5原子百分率のリンを含んでいてもよい。複合材料は、3から10原子百分率のリンを含んでいてもよい。
【0111】
複合材料は、85から99原子百分率のシリコンを含んでいてもよい。複合材料は、85から98.5原子百分率のシリコンを含んでいてもよい。複合材料は、90から98.5原子百分率のシリコンを含んでいてもよい。複合材料は、90から98原子百分率のシリコンを含んでいてもよい。複合材料は、95から98.5原子百分率のシリコンを含んでいてもよい。複合材料は、95から98原子百分率のシリコンを含んでいてもよい。複合材料は、90から97原子百分率のシリコンを含んでいてもよい。
【0112】
本明細書の目的で、材料サンプルは、x原子百分率で存在する元素を含み、ここで、材料100原子ごとに元素がx原子ある。
【0113】
複合材料は、シリコンおよびリンを90質量%から100質量%含んでいてもよい。複合材料は、シリコンおよびリンを99質量%から100質量%含んでいてもよい。複合材料は、シリコンおよびリンを99.9質量%から100質量%含んでいてもよい。複合材料は、シリコンおよびリンを99.99質量%から100質量%含んでいてもよい。複合材料は、実質的に完全にシリコンおよびリンからなってもよい。
【0114】
複合材料は、粉末を含んでいてもよく、該粉末は、多数の均一な組成粒子を有し、各均一な組成粒子は、他の均一な組成粒子と実質的に同じ化学組成を有する。
【0115】
複合材料は、多数の均一な組成粒子を含んでいてもよく、0.1ミクロンから500ミクロンの平均粒子径を有していてもよい。
【0116】
複合材料は、多孔質シリコン、多結晶シリコン、バルク結晶シリコン、アモルファスシリコン、再吸収可能シリコン、生体活性シリコンおよび生体適合性シリコンのうち、1つ以上を含んでいてもよい。
【0117】
本明細書の目的では、再吸収可能シリコンは、少なくとも1つの生理環境に置かれた場合、浸食可能なシリコンであり、生体活性シリコンは、被検者に埋め込まれた場合、人または動物の組織との結合を形成することが可能なシリコンであり、生体適合性シリコンは、特定の用途に生物学的に受け入れられることが可能であり、例えば、抗癌治療の目的のために生物学的に受け入れ可能であることが分かった。
【0118】
複合材料が部分的に形成されるリンは、32Pを含んでいてもよい。
【0119】
複合材料は、32Pを含んでいてもよく、32Pは、複合材料の活性が、1グラム当たり0.1から50GBqレベルであるような濃度で存在する。複合材料は、32Pを含んでいてもよく、32Pは、複合材料の活性が、1グラム当たり0.5から20GBqレベルであるような濃度で存在する。複合材料は、32Pを含んでいてもよく、32Pは、複合材料の活性が、1グラム当たり2.5から10GBqレベルであるような濃度で存在する。
【0120】
32Pを含む複合材料は、放射線治療の用途に使用されてもよい。32Pから放射されたベータ粒子のエネルギーおよび32Pの半減期は、近接照射療法による癌の治療に特に適切であると考えられる。
【0121】
複合材料は、0.1原子百分率未満の金属元素を含んでいてもよい。複合材料は、クロム、コバルト、マンガン、セリウム、銀、ナトリウム、リチウム、カリウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウムおよびベリリウムのうち1つ以上の、0.1原子百分率未満を含んでいてもよい。
【0122】
32Pを含む複合材料が形成されることができる1つの方法は、31Pを含む複合材料の中性子変換による。複合材料中の金属元素などの不純物の存在は、放射線治療の用途にそれほど役立たない放射線ヌクレオチドの形成を引き起こす。したがって、複合材料中に不純物が存在しないことは有利とすることができる。
【0123】
疑義が生じないために述べておくと、32Sは32Pの崩壊生成物の1つであり、金属元素ではない。複合材料は、0.1原子百分率を超える硫黄を含んでいてもよい。
【0124】
複合材料は、複数の均一な組成の微小粒子を含み、各均一な組成粒子は、0.5から20原子百分率のPを含むことが好ましい。
【0125】
複合材料は、粉末からなってもよく、粉末の平均粒子径は、0.1ミクロンから500ミクロンである。
【0126】
さらなる態様によれば、本発明は、上記態様のいずれかに記載されるようにシリコンおよびリンを含む複合材料、および賦形剤を含む、組成物を提供する。
【0127】
賦形剤は、液体からなってもよい。賦形剤は、油からなってもよい。賦形剤は、非経口賦形剤であってもよい。賦形剤は、落花生油、ゴマ油、微小セルロース化合物、ポリエチレングリコール誘導体およびトウィーン(TWEEN)添加物のうち、1つ以上を含んでいてもよい。
【0128】
複合材料は、32Pおよび多数の微小粒子を含んでいてもよく、微小粒子の少なくとも一部は、液状賦形剤中に懸濁されている。
【0129】
さらなる態様によれば、本発明は、近接照射療法によって癌を治療する方法を提供し、上記態様のいずれかで定義されるように、該方法は、32Pおよびおよびシリコンを含む複合材料を腫瘍に埋め込むステップを含む。
【0130】
さらなる態様によれば、本発明は、揮発性元素およびシリコンを含む複合材料を製造する方法を提供し、該方法は、
(avi)揮発性元素のサンプルを取るステップと、
(bvi)揮発性元素のサンプルをシリコン層で実質的に包囲するステップと、
(cvi)シリコン層の少なくとも一部と揮発性元素のサンプルとの間に温度差が設定され、かつ揮発性元素の少なくとも一部が蒸発されるように、シリコンに熱を加えるステップと、
(dvi)シリコンおよび揮発性元素を含む複合材料が形成されるように、揮発性元素の蒸気の少なくとも一部をシリコン層の少なくとも一部と接触させることを可能にする、および/または引き起こすステップとを含む。
【0131】
本発明は、以下の図面を参照して、例示としてのみ説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0132】
(A)シリコンおよびリンを含む複合材料の製造
本発明の実施において、傾斜炉(図示せず)、および図1に示される改質された炉の、2つの異なる炉が使用される。
【0133】
シリコンおよびリンを含む複合材料は、傾斜炉でシリコンを加熱し、加熱されたシリコンをリン蒸気と接触させることにより製造された。傾斜炉は、35kWの電源および約5kgのシリコン容量を有する誘導炉であった。加熱は、黒鉛サセプタによって行われた。
【0134】
傾斜炉は、溶融炉、タンディッシュ、断熱材、炉吐水口およびタンディッシュ蓋を含む多くの構成要素を備えている。溶融炉およびタンディッシュは、それぞれ、高純度石英を備えている。断熱材は、炉の上端に位置され、石英ガラスブランケットを備えている。炉吐水口およびタンディッシュ蓋は、それぞれアルミナおよび/またはシリカを含む。
【0135】
傾斜炉は、微粒子の形態の電子機器用多結晶シリコン4.8kgと、純粋な赤リン200gとを化合するために使用された。
【0136】
シリコン粒子は、タンディッシュに加えられて、シリコン基盤を形成する。次いで、リン(200g)は、基盤へ加えられ、残りのシリコンの一部で覆われた。
【0137】
タンディッシュは、5分間から10分間、1000℃から1150℃に加熱され、その後、温度を上げて10分から1時間、完全に炉の内容物を溶解した。
【0138】
その微粒子の性質のために、溶解された場合、固体相である場合よりも、シリコンで占められた体積は少ない。一旦、炉の内容物が溶解され始めると、シリコン4.8kgの残りが加えられた。
【0139】
次いで、生じたシリコンおよびリン合金は、脱イオン水を使用して、標準技術によって霧化され、約1.5から2原子百分率のリン含有量のシリコン粉末を生成する。仮にあったとしても、金属元素などの不純物は、0.1原子百分率未満のレベルで存在した。
【0140】
第2に、改質された炉も開発されており、図1に示されている。炉は、黒鉛サセプタ1、石英るつぼ2、雲母シート3、トップシール4、ラミングMgO材料5、マッド(mud)を備えた誘導コイル6、熱電対7、石英窓8、アルミナ繊維ガスケット9、アルミナ繊維ブランケット11および窒化ホウ素プラグ13を含む。
【0141】
石英るつぼ2の下位部は、シリコン粒子12の層で満たされ、チューブ(図示せず)は、シリコン粒子12の層の表面に置かれ、シリコン粒子12の残りは、次いで、チューブを包囲するように、るつぼ2に添加される。リン粒子10は、次いで、チューブ中のリン10の上端が、るつぼ2中でシリコン12の上端より著しく低くなるように、チューブを介して添加される。チューブは、シリコン粒子12の一部が、予めチューブで占められていた体積の一部に移動されて取り除かれ、それによって、リンを被覆する。このように、リン10は、シリコン12で完全に包囲される。
【0142】
シリコン粒子12は、多結晶シリコンからなり、リン10は、赤リンからなる。
【0143】
図1で示される構成を使用して、黒鉛サセプタは、11分で1100℃に加熱されることができる。温度の上昇によって、シリコン12とリン10が化合され、溶解される。溶解物は、次いで、上述されるように、窒化ホウ素プラグによって炉から解放され霧化される。
【0144】
疑義が生じないために述べておくと、このセクションに記載された傾斜炉は、一種の大だる炉である。
【0145】
(B)32Pの生成
セクション(A)に記載された上記方法に起因する、シリコン粉末の形態のシリコンおよびリンを含む複合材料は、31Pの中性子変換をもたらす原子炉中で熱中性子照射にさらされた。放射条件は、合金内で32Pの生成を最大限にするために選択される。中性子の捕捉によって、32Pの形成がもたらされる。
31P+n32
【0146】
このように、1cmから3cmの肝臓癌腫瘍の治療に適切な、1グラム当たり2.5から10GBqレベルが得られる。存在する32P(放射線ヌクレオチド)の量は、主として、中性子束と同様にもともと存在するPの量に依存する。
【0147】
(C)本発明による、患者に対する放射線治療製品の投与
本発明による放射線治療製品は、皮下、筋肉内、腹腔内または表皮技術による投与に適切な、様々な形態を有してもよい。
【0148】
本発明による放射線治療製品は、シリコンおよびリンを含み、より詳細には、放射線治療製品は、シリコンおよび32Pを含む。放射線治療製品は、球状、菱形形状、棒形状、ストリップ状の形態、または円筒状であってもよい。放射線治療製品は、粉末、懸濁液、コロイド、凝集体および/または塊の一部または少なくとも一部を形成してもよい。放射線治療製品は、1つのインプラントまたは多くのインプラントを含んでいてもよく、該インプラントまたは各インプラントは、シリコンおよび32Pを含む。そのような1つのインプラントまたは多くのインプラントは、32P成分の治療効果を最適化するように、腫瘍が位置する器官に埋め込まれてもよい。
【0149】
本発明の1つの態様では、治療方法は、近接照射療法を含んでいてもよく、近接照射療法を受ける器官は、外科的にデバルクされてもよく、残りの空隙は、放射線治療製品で満たされる。別の態様では、治療される器官は、多数の注射針で中心を抜かれ(cored)、中心は本発明の放射線治療製品で埋め戻され、そのような手順は、前立腺の近接照射療法に適切である。
【0150】
放射線治療製品は、複数のシリコン微小粒子を含んでいてもよく、各粒子は、シリコンおよびリンを含む。微小粒子は、方法Aによって製造されたシリコン粉末の形態であってもよく、リンは、方法Bによって製造された32Pを含んでいてもよい。微小粒子は、微小セルロースおよびポリエチレングリコール製剤を含む賦形剤などの、賦形剤中に懸濁されていてもよい。懸濁液は、次いで、カテーテルによって腫瘍の部位に送られてもよい。この最後に記載された方法は、肝臓癌、膵臓癌または脳腫瘍などの癌の近接照射療法による治療に適している。
【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1】シリコンおよびリンを含む複合材料の、本発明による、製造のための改質された炉の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンおよびシリコンを含む複合材料を製造する方法であって、
(a)リンサンプルを取るステップと、
(b)リンサンプルを、多数のシリコン粒子を含むシリコン層で実質的に包囲するステップと、
(c)シリコン層の少なくとも一部とリンサンプルの間で温度差が設定され、かつリンの少なくとも一部が蒸発するように、シリコンに熱を加えるステップと、
(d)シリコンおよびリンを含む溶融複合材料が形成されるように、リン蒸気の少なくとも一部をシリコン層の少なくとも一部と接触させることを可能にする、および/または引き起こすステップと
を含む、方法。
【請求項2】
ステップ(a)、(b)、(c)が、シリコン層の少なくとも一部が900℃から1500℃のシリコン反応温度に加熱されるように行なわれることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
リンサンプルが赤リンを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
さらに、ステップ(d)によって生成された溶融複合材料の少なくとも一部を霧化する、ステップ(e)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
さらに、ステップ(e)で形成された複合材料の少なくとも一部を、(fi)冷却するステップと(fii)多孔化するステップとを含むことを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
さらに、(fii)で製造された複合材料の少なくとも一部に中性子を照射して、リンの少なくとも一部が32Pに変換されるステップ(g)を含むことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法によって得られる、放射線治療製品。
【請求項8】
癌の治療に使用される、請求項7に記載の放射線治療製品。

【図1】
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【公表番号】特表2007−517758(P2007−517758A)
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−548369(P2006−548369)
【出願日】平成16年12月15日(2004.12.15)
【国際出願番号】PCT/GB2004/005243
【国際公開番号】WO2005/066073
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(504235883)サイメデイカ リミテツド (16)
【Fターム(参考)】