説明

新規製品

その表面に病原性微生物を脱活性化する活性を有するコーティング製剤を有する個人用保護製品、たとえば、保護着衣、複数のユーザーによる順次接触用の製品及びセルロース誘導体製品のような製品であって、コーティングは、酸性ポリマー、好適にはポリマー性酸性物質Gantrez(商標)と、界面活性剤と、酸を含む。そのような製品の作製方法及び好適なコーティング製剤を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規製品に関するものであり、有害な病原性微生物による交差汚染及び/又は感染のリスクを低減するために抗菌コーティングで被覆された製品に関する。本発明はまた、そのようなコーティングを堆積させる方法、及びそのような方法で使用するための製剤にも関する。
【背景技術】
【0002】
前世紀、インフルエンザの3つの世界的な流行に直面したが、そのうち、1918年の「スペイン風邪」は医療科学で知られる感染性疾患の最大の世界的流行であった(Oxford, J. S., 2000)。これら世界的流行の原因となった3株はインフルエンザウイルスのA群に属し、ほかの2群(B及びC)とは異なってこの群は多種多様な動物(鳥類、ブタ、ウマ、ヒト及びそのほかの哺乳類)に感染する。インフルエンザA型ウイルスは、経済的に及び医学的にの双方で世界的な問題を起こし続けている(Hayden, F. G. & Palese, P., 2000)。現在の世界的な懸念は鳥インフルエンザAH5N1ウイルスであり、それは、1997年中国で鳥に感染する能力が初めて示され、以来東南アジア、ヨーロッパ及びアフリカの国々に広がっている(Enserink, M, 2006: Guan, Y. et al., 2004; Peiris, J. S. et al., 2004)。鳥類において重篤な疾患を引き起こすその能力は2003〜2004年の東南アジアにおける穏やかな発生の間に世界保健機構によって明らかにされた。H5N1変異体は迅速且つ高度に病原性である。他の鳥インフルエンザウイルスとの共存は、鳥類における同時感染の可能性を高める。そのような事象は、鳥類種間で伝播し易い十分な鳥類遺伝子を伴った新規の亜型の出現の「混合容器」を提供することになり、インフルエンザ流行の出発点となりうる(WHO事実シート)。さらに最近のインフルエンザ大流行の可能性がある株は、「スイス風邪」と呼ばれるH1N1である。
【0003】
現在市場にある多数の抗インフルエンザ製品(ワクチン及び治療)によって、別の大流行が起きるのを制御し、防ぐように多数のことが行われている。現在、アマンタジンがインフルエンザ感染に対する原則的な抗ウイルス化合物であるが、この活性はインフルエンザA型ウイルスに限定される。ザナミビル(リレンザ)及びオセルタミビル(タミフル)のような抗ノイラミダーゼ阻害剤は、インフルエンザA型及びB型の感染の双方の治療での使用について認可された新しい部類の抗ウイルス剤である(Carr, J., et al., 2002)。製造に関わる時間とコスト及び現在の限定的な供給のために、大流行におけるこれら抗ウイルス剤の役割は限定され得る。可能性のあるH5N1大流行の最近のニュースと共に、鳥類種間のウイルスの伝播の機会を妨げる必要性が生じている。
【0004】
現在のところ、いわゆる「鳥インフルエンザ」H5N1ウイルス又は「スイス風邪」H1N1ウイルスによる感染のリスクが特に懸念されている。有害なウイルス及び/又はそのほかの微生物によって汚染された空気の吸入が、人類、特に健常な労働者への感染の一般的な経路であり、また感染したヒト又は動物と共に生活することが原因となることもある。感染した患者が吐き出す空気は汚染源である。出願者のWO−A−2008/009651は、抗ウイルス活性を有するコーティングで処理した透過性の多孔性基材を含み、酸性ポリマーを含む顔マスクを開示している。
【0005】
そのようなウイルス及び/又はそのほかの微生物を取り除くと考えられる空気フィルターが知られている。そのようなフィルターの1種は、そのような繊維若しくは粒子の表面及び/又は中に堆積された繊維状又は粒子状の基材を含み、基材は、当該のウイルス及び/又はそのほかの微生物を捕捉する及び/又は中和する。そのようなフィルターの開示の例を以下に列記する。
【0006】
US−A−3,871,950及びUS−A−4,181,694は、限外濾過での使用、特に水性媒体を濾過するためのアクリロニトリルの中空繊維を開示している。US−A−4,856,509は、マスクの選択した部分がクエン酸のようなウイルス破壊剤を含有する顔マスクを開示している。US−A−5,767,167は、ウイルス等の微生物の捕捉のために媒体を濾過するのに適したエーロゲル泡状物を開示している。US−A−5,783,502は、繊維に結合した抗ウイルス分子、特に四級アンモニウムカチオン炭化水素基のようなカチオン基を伴った線維性基材を開示している。US−A−5,851,395は、シアル酸(環上にカルボン酸置換基を有する9炭素の単糖類)に基づいたウイルス捕捉物質を堆積するフィルター物質を含むウイルスフィルターを開示している。US−A−6,182,659は、Streptococcus agalactiaeの培養生成物に基づいたウイルス除去フィルターを開示している。US−A−6,190,437は、「ヨウ素樹脂」を含浸させたキャリア基材を含む空気からウイルスを除去するための空気フィルターを開示している。US−A−6,379,794は、硝子とアクリルラテックスを含浸させたほかの高モジュール繊維に基づくフィルターを開示している。US−A−6,551,608は、多孔性熱可塑性の材料基材と熱可塑性物質によって少なくとも1つの抗ウイルス剤を焼結することによって製造した抗ウイルス物質を開示している。US−A−7.029,516は、ポリアクリル酸のような酸性ポリマーを堆積させた不織布ポリプロピレン基材を含む流体から粒子を除去するフィルター方式を開示している。US−A−2004/0250683は、アクリルポリマーであってもよいその上に堆積された酸性物質を伴った繊維のネットワークを含むフィルター材料を開示している。US−A−2005/0247608は、種々の抗ウイルスポリマー、主としてカチオン性ポリマーによって処理されてもよいフィルターブロックを開示している。
【0007】
WO−A−2001/07090は、反応性表面と、微生物を引き付けるためのカチオン基を含むその表面上のポリマーを有する基材を含む微生物を除去するためのフィルターを開示している。WO−A−2002/058812は、マイクロカプセル化殺生剤を伴った空気フィルターを開示している。WO−A−2003/039713は、ウイルスに対する効果を含み、酸性基であってもよいペンダント官能基を含有するポリマーネットワークで部分的に被覆される繊維性基材に基づいた、抗病原性効果を有すると言われるフィルター材料を開示している。WO−A−2005/070242は、電気電荷を付与してウイルスのような粒子を捕捉するように処理された繊維から構成される吸入フィルターを開示している。
【0008】
GB−A−2035133は、その表面に水不溶性ポリマー、好ましくはPVAを伴った膜フィルターを開示している。気体マスクカートリッジにおけるそのようなフィルター材料の使用が提案されている。
【0009】
JP−A−2001/162116は、繊維性基材に銀有機ヨウ素抗菌剤を結合させるのに自己架橋性アクリル樹脂が使用される抗菌濾過媒体を開示している。JP−A−2550/198676は、抗菌顔マスクにクエン酸を結合させるのに水硬化性樹脂エマルションの使用を開示している。
【0010】
Journal of Virology:Sept.1968,p878−885;March 1970,p313−320及びp321−328における3つの論文は、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸及びポリアセタールカルボン酸を含む種々のポリカルボン酸の抗ウイルス活性を開示している。その中で報告された抗ウイルス活性は、細胞が介在する効果であると思われ、結論は「PMAA(ポリメタクリル酸)は細胞外の状態ではウイルス粒子を不活化しなかった」と表現されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そのような空気フィルターに加えて、他の手段、たとえば、他の環境を介した及びヒトからヒトへと手渡される感染製品を介した有害な微生物による交差汚染及び感染を防ぐという課題に対処する進行中のニーズがある。抗菌コーティングによって被覆された製品、そのようなコーティングを堆積する方法の提供によって少なくとも部分的にこの課題に対処し、本明細書で開示されるそのような方法での使用のための製剤に対処することが本発明の目的である。本発明者らは、特定の酸性ポリマーが多種多様な応用にて抗ウイルス活性を提供し、ウイルス感染と闘う課題に少なくとも部分的に解決を提供することを思いがけなく発見した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様によれば、実質的に水及び/又は空気に対して不透過性であり、かつ、人体と望ましくない接点との間で物理的バリアを提供するように適合させるバリア層を含む個人用保護バリア製品が提供され、バリア層はその表面に病原性微生物を脱活性化する活性を有するコーティング製剤を有し、コーティングは、酸性ポリマーと、界面活性剤と、酸を含む。
【0013】
そのようなバリア層を製造することができる材料の例には、軟質及び硬質のプラスチック材料、合成及び天然のゴムのようなエラストマー、ガラス及び金属が挙げられる。
【0014】
バリア製品の例には、人体着衣、柔らかい伸縮性の頭髪覆い、たとえば、不透過性の布、たとえば、医療関係者や軍人のためのヘルメット、眼の覆い、たとえば、眼鏡及びゴーグルを含む頭部の覆い、ゴム手袋のような手袋、保護用遮蔽器具、靴、ブーツ、子供用長靴、オムツ、コンドーム、遺体袋、及び遺体用のその他の容器が挙げられる。
【0015】
本発明の本態様のバリア製品は、たとえば、以下の分野での使用を見つけてもよい。たとえば、病院環境、又は、たとえば、流行又は大流行の間、感染した又は汚染した人と働く分野における予防医療又はパラメディカルの従事者。感染した又は汚染した人に責任を負う両親又はそのほかのような保護的介護人。たとえば、生物学的福祉シナリオの間、又は流行若しくは大流行の間、援助を提供する場合、病原性微生物で汚染された地域に入る必要がある事象における保護的軍人。小児と共に働く又は小児を世話する保護的な人々。信頼するパートナー以外と性的関係を持った保護する人々。遺体の輸送及び配置に関与する保護する人々。
【0016】
本発明はまた、そのような個人用保護バリア製品を製造する方法も提供するが、方法では、バリア層の材料の表面は、液体ビヒクルに酸性ポリマーと界面活性剤と酸を含み、液体ビヒクルを蒸発させ、それによってコーティング製剤を堆積させる流体負荷溶液と接触させる。そのような方法は、バリア層がバリア製品に組み込まれる前又は後のいずれで実施されてもよい。
【0017】
本発明の別の態様によれば、布の層を含む個人用着衣の製品が提供され、布は、病原性微生物を脱活性化する活性を有するコーティング製剤がその表面に堆積され、コーティングは酸性ポリマーと界面活性剤と酸を含む。
【0018】
そのような着衣の製品を製造することができる布の例には、綿、レーヨン、ナイロン、ポリエステル及び着衣に従来使用されている布が挙げられ、そのような布は空気に対して、又は空気と水の双方に対して透過性であってもよく、又は空気に透過性であるが水には透過性でなくてもよい。
【0019】
そのような着衣は、着用者の上部胴体及び/又は下部胴体、及び/又は着用者の腕、脚、手及び足に合うように適合させてもよい。そのような着衣の例には、下着、上着、脚に着けるもの、コート及びヘッドギアが挙げられる。そのような着衣の例には、医療関係者、たとえば、医師、看護師などのユニフォーム及びそのほかの衣類が挙げられる。有利なことに、そのような着衣は、その上にコーティング製剤が堆積する、従来の着衣と視覚的に区別できない従来の市販の着衣を含んでもよい。
【0020】
好適には、布はそのような着衣の外層を含んでもよい。着衣の外層は普通、汚染された環境との着用者の最初の接触が生じる層であり、外層として布を提供することは、表面に接触する病原体を中和するのに役立ち得る。
【0021】
本発明の本態様の着衣は、たとえば、以下の分野で使用を見つけてもよい。たとえば、大流行の間に、又は感染した若しくは汚染した人と働く間、感染した若しくは汚染した人との接触を予想する又はそれとの密接な関わりを予想する環境における保護する着用者。
感染した又は汚染した人に責任を負う両親又はそのほかのような保護的介護人。流行又は大流行の間、支援を提供する場合、病原性微生物で汚染された地域に入る必要がある事象における保護する人々。小児と共に働く又は小児を世話する保護的な人々。遺体の取り扱い及び配置に関与する保護する人々。
【0022】
本発明はまたそのような着衣製品を製造する方法も提供するが、方法では、布の表面は、液体ビヒクルに酸性ポリマーと界面活性剤と酸を含み、液体ビヒクルを蒸発させ、それによってコーティング製剤を堆積させる流体負荷溶液と接触させる。そのような方法は、布が着衣製品に組み込まれる前又は後のいずれで実施されてもよい。
【0023】
本発明の別の態様によれば、そのうちの少なくとも1人が病原性微生物に汚染されている可能性がある複数の人によって順に取り扱われることが意図される、その表面に、病原性微生物を脱活性化する活性を有するコーティング製剤を有する製品が提供され、コーティングは酸性ポリマーと界面活性剤と酸を含む。
【0024】
「複数の人によって順に取り扱われることが意図される製品」は、複数の人による普通の使用、接触、取り扱い又は交換を意図する製品とする。そのような接触、取り扱い又は交換は、たとえば、人から人へ移される製品自体によって、又は順に製品に接触する複数の人によって生じる。
【0025】
そのような製品の例には、たとえば、包装紙や気泡シートのような郵便封筒及び郵便や包装材料、たとえば、公共の建物、バス、電車、タクシー、飛行機、小型船舶及び船、ホテル、病院における公共の座席、及び医師の手術、金(紙幣及びコイン)、公共図書館で利用できる本及びCD、子供のおもちゃ、たとえば、食堂、食物アウトレット、スーパーマーケット及び食品店における調理台表面、まな板及びチーズ板;公衆電話及びオフィスの固定電話のような電話、キーボード、たとえば、銀行や公共事務所などにおける固定されたペンのような公共使用のペン、明かりのスイッチ、ドアノブ、手すり、エレベータのコントロール、ホテル、空港、鉄道の駅、客船、航空機のような公共のトイレにおけるトイレの表面、シャワーのカーテン、便座、給水栓、湯船、シャワー室及びシンク、運動器具、ウエイトトレーニング用具、運動用ボールのようなジム機器、ホテルのベッド用具、タオルなどのような複数回使用のリンネル(linen)が挙げられる。
【0026】
本発明の本態様の製品は日常活動と公共生活のあらゆる形態で使用を見つけてもよい。それらは、病原性微生物に感染した又はそれに汚染された人との以前の接触、その人による取り扱い又は使用において流行又は大流行の間、それらを用いる者を保護してもよい。
【0027】
本発明はまた、液体ビヒクルに酸性ポリマーと界面活性剤と酸を含む流体負荷溶液に製品の表面を接触させ、液体ビヒクルを蒸発させることによって、そのような製品を製造する方法も提供するが、病原性微生物を脱活性化する活性を有するコーティングが、多数の人による逐次取り扱いが意図される製品に堆積され、コーティングは酸性ポリマーと界面活性剤と酸を含む。
【0028】
本発明の別の態様によれば、吸収性セルロース誘導体、たとえば、病原性微生物を脱活性化する活性を有する含浸性製剤で含浸させた紙基材を含む個人用ケア製品が提供され、コーティングは酸性ポリマーと界面活性剤と酸を含む。
【0029】
そのような個人用製品の例には、紙タオル、トイレットペーパー、赤ちゃんのおしり拭きのような手、顔及び体を拭くもの等が挙げられる。製剤は、たとえば、液体ビヒクルに溶解された又は懸濁された酸性ポリマーと界面活性剤と酸を伴った、乾燥製剤又は湿潤製剤であってもよい。
【0030】
本発明の本態様の製品は個別の衛生及び健康管理のあらゆる形態で使用を見つけてもよい。それらは、病原性微生物に感染した又はそれに汚染された人との以前の接触、その人による取り扱い又は使用において流行又は大流行の間、それらを用いる者を保護してもよい。
【0031】
本発明はまた、病原性微生物を脱活性化する活性を有する製剤が吸収性紙基材を含む個人用ケア製品に含浸される方法も提供し、製剤は病原性微生物を脱活性化する活性を有し、含浸製剤は、酸性ポリマーと界面活性剤と酸を含む。
【0032】
酸性ポリマーは、そのようなコーティングに接触するウイルスを捕捉する又は中和する点で有効であることが見い出されている。作用の特定の理論に限定されないで、コーティングとの接触の際、ウイルスはポリマーと相互作用し、捕捉され、酸性ポリマーの局在化した低pH環境(たとえば、約pH2.8〜5)がウイルスを不活化し、それによってそれらを中和すると考えられている。本発明のコーティングは、風邪、インフルエンザ、SARS、RSV、鳥インフルエンザを引き起こすウイルス及びこれら変異血清型に対してこのように有効であり得ると考えられる。
【0033】
本明細書で使用されるとき、用語「酸性ポリマー」には、主鎖と共に、たとえば、側基として酸性基を有するポリマーが含まれる。好適な酸性基はカルボン酸基である。酸性ポリマーは架橋されてもよく、又は直鎖であってもよい。本出願には一般に、非架橋の、たとえば、直鎖ポリマーが好まれる。これは、とりわけ、架橋ポリマーに比べて、非架橋の直鎖構造はさらに利用可能なCOOH基を提供することができ、また、非架橋ポリマーはさらに溶解しやすく、その結果、本明細書で開示される調製用の方法で使用しやすいからである。
【0034】
酸性ポリマーはポリ−(カルボン酸)ポリマーを含んでもよい。
【0035】
ポリ−(カルボン酸)ポリマーは通常、その構造に−COOH基を含む、又は、たとえば、酸無水基、容易に切断可能なカルボン酸エステル基若しくは容易に切断して−COOH基が得られる塩化−COOH基のような誘導体基を含むポリマーである。
【0036】
ポリ−(カルボン酸)ポリマーは、主鎖に直接結合するその−COOH基(又は誘導体基)を有してもよく、又はポリマーは、−COOH基(又は誘導体基)が主鎖から枝分かれした側鎖に連結されるいわゆるグラフトポリマー若しくは樹状ポリマーであってもよい。
【0037】
たとえば、ポリ−(カルボン酸)ポリマーは、その構造中に−[−CR.COOH−]−を含んでもよく、式中、Rは好ましくは、水素、C1〜3アルキル、C1〜3アルコキシ又はC1〜3ヒドロキシアルキルである。
【0038】
そのようなポリ−(カルボン酸)ポリマーの1つの種類は、その構造に−[−CR−CR.COOH−]−を有するポリマーを含み、R及びRはそれぞれ独立して水素であるか、又はC1〜3アルキル若しくはC1〜3アルコキシであってもよい。たとえば、そのようなポリマーは、ポリ−(カルボキシビニル)ポリマー、たとえば、置換基が上記と同義である式CR=CR.COOHのモノマー化合物のポリマーを含んでもよい。そのようなポリマーは、アクリル酸又はメタクリル酸のポリマー、すなわち、ポリアクリル酸又はポリメタクリル酸、たとえば、直鎖ポリアクリル酸及びポリメタクリル酸のホモポリマー及びコポリマーを含んでもよい。そのようなポリマーの一例はカルボキシポリメタクリレートである。市販のポリアクリル酸の一例は、約30,000の分子量を有する物質Good−Rite(商標)K−702である。そのナトリウム塩としての市販のポリアクリル酸の一例は、約30,000の分子量を有する物質Good−Rite(商標)K−765である。ポリアクリル酸は合成ポリマーとして分類される商品名Carbomer(商標)のもとで市販されており、水性粘度上昇剤と同様にエマルション安定剤として使用される。
【0039】
この種のポリマーは、たとえば、US−A−2,798,053、すなわち、「分子当たり1を超えるアルケニルエステル基を含有する多価アルコール、少なくとも4つの炭素原子と少なくとも3つのヒドロキシル基を含有する親の多価アルコールのポリアルケニルポリエーテルの特定の比率で共重合される、アクリル酸、マレイン酸又はその無水物などのようなカルボン酸モノマー」にて開示されている。
【0040】
架橋されたポリ−(カルボン酸)ポリマーの例には、たとえば、ペンタエリスリトールの、スクロースの又はプロピレンのアリルエーテルと架橋されたアクリル酸のホモポリマー、たとえば、B.F.Goodrich社から「Carbopol」の商品名で利用可能な物質が挙げられ、そのような特定のCarbopolにはCarbopol934、940、980、1382、CarbopolETD2020、ETD2050、Ultrez20及び21が挙げられる。
【0041】
そのようなポリ−(カルボン酸)ポリマーの別の種類は、その構造、たとえば、通常−[−CH.COOH−CH.COOH−]−単位、及び/又はそのような単位の塩若しくはエステル、又は隣接炭素原子上のCOOH基が環化されて
【化1】

環系を形成してもよい無水形態におけるそのような単位を含むマレイン酸部分に基づくポリマーにおいて隣接単位:−[−CR.COOH−]−(Rは上記と同義)を含んでもよく、そのような誘導体は加水分解に感受性であり相当する遊離の酸を形成する。
【0042】
ポリ−(カルボン酸)ポリマーの1種は、隣接ポリマーの炭素原子上に対のカルボン酸基を伴った単位を含んでもよい。たとえば、そのようなポリマーは、その構造に単位:−[−CR−CR−CR.COOH−CR.COOH−]−を含んでもよく、式中、R、R、R、R、R及びRは、独立して水素又はC1〜3アルキル又はC1〜3アルコキシであり、好ましくはR及びRは水素であり、Rは水素であり、Rはメトキシであり、R及びRは水素又はその構造にCOOH基を保持するその誘導体、又はCOOH基に容易に加水分解される基である。そのようなポリ−(カルボン酸)ポリマーは、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸のコポリマーに基づくポリマーである。そのようなポリマーは商品名Gantrez(商標)のもとで市販されている。
【0043】
そのようなポリマーの例は、その構造に−[−CH−CH.OCH−CH.COOH−CH.COOH−]−単位を含む。
【0044】
そのようなポリマーは直鎖ポリマー又は架橋ポリマーであってもよい。この種の直鎖で非架橋のポリマーは、商品名Gantrez(商標)S(CAS#25153−4−69)、たとえば、約700,000の分子量を有するGantrez(商標)S−96、約1,200,000の分子量を有するGantrez(商標)S−97のもとで市販されている。そのようなGantrezポリマーが好まれる。実験では、そのようなGantrezポリマーを含む製剤は、水中での浸漬の24時間後でさえウイルスを殺傷するのに好適であるpH3.5未満の表面pHを保持することが分かった。
【0045】
この種の架橋ポリマーもGantrez(商標)商品名のもとで市販されている。
【0046】
そのような酸の誘導体の例は、無水物、すなわち、2つの隣接する−COOH基が環化して
【化2】

環系を形成する無水物であり、そのような無水物は加水分解に感受性で相当する遊離の酸を形成する。そのようなポリマーは、商品名Gantrez(商標)AN(CAS#9011−16−9)、たとえば、Gantrez(商標)AN−119、Gantrez(商標)AN−903、Gantrez(商標)AN−139、Gantrez(商標)AN−169のもとで市販されている。
【0047】
誘導体の別の例は、部分塩、たとえば、遊離のCOOH基の一部が、たとえばそれぞれナトリウム又はカルシウムのようなI族又はII族の金属の金属塩、又は混合ナトリウム−カルシウム塩に変換される部分塩である。そのようなポリマーは、商品名Gantrez(商標)MS、たとえば、Gantrez(商標)MS−955(CAS#62386−95−2)のもとで市販されている。
【0048】
そのような酸の誘導体の別の例は、遊離の−COOH基の一部がC1〜6アルキル、たとえば、エチル又はn−ブチルによってエステル化される部分エステルである。そのようなポリマーは、商品名Gantrez(商標)ES、たとえば、Gantrez(商標)ES−225(CAS#25087−06−03)又はGantrez(商標)ES−425(CAS#25119−68−0)のもとで市販されている。通常、この第2の型のポリマーは200,000〜2,000,000の範囲で分子量を有する。
【0049】
この型のそのほかのポリ−(カルボン酸)ポリマーには、アクリル酸C10〜30アルキルと式RC=CR−COORの1以上のモノマー化合物のコポリマーが挙げられ、式中、R、R、R及びRは独立して水素、C1〜5アルキル、特にメチル、エチル又はプロピルから選択される。そのようなモノマー化合物の例にはアクリル酸及びメタクリル酸のエステルが挙げられる。
【0050】
そのほかの好適なポリ−(カルボン酸)ポリマーには、式RC=CR−COORの化合物に基づくアニオン系ポリマーが挙げられ、式中、R、R、R及びRは、独立して水素又はC1〜5アルキル、特にメチル、エチル又はプロピルから選択される。そのようなポリマーの例は、商品名「Eudragit」のもとでRohm社から市販されているカルボン酸官能基を伴ったメタクリル酸及びエチルアクリレートに基づいたものである。特定の等級には、EudragitL100−55、L30−D−55、L100、S100及びFS30Dが挙げられる。
【0051】
ほかの好適な酸性ポリマーは、たとえば、スルホン酸基のようなそのほかの酸基を取り込むポリマーであってもよい。スルホン酸基を取り込む酸性ポリマーの例は、アクリル酸又はメタクリル酸のスルホン酸とのコポリマー、たとえば、直鎖コポリマーである。スルホン酸基を取り込むそのようなポリマーは、その塩、たとえば、ナトリウム塩の形態で使用されてもよい。アクリル酸とスルホン酸のコポリマーの例は、商品名Good−Rite(商標)K−776のもとで市販されている。そのほかの酸性ポリマーはアクリル酸とスルホン酸のコポリマーを含んでもよい。たとえば、酸性ポリマーは、マレイン酸とのコポリマー及びターポリマー、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)(「ポリAMPS」)、及びアクリル酸と2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸のコポリマーを含んでもよい。
【0052】
ポリスチレンスルホン酸が好適であってもよく、たとえば、120,000前後の分子量を持ち、Flexan(商標)IIの名称のもとで入手可能なそのナトリウム塩の形態での市販のポリスチレンスルホン酸が好適であってもよい。
【0053】
そのほかの好適な酸性ポリマーにはポリビニルホスホン酸が挙げられると考えられる。
【0054】
本明細書の目的に有用であると分かった酸性ポリマーは30,000〜2,000,000の範囲での分子量を有することが分かっているが、分子量は決定的であるとは思われず、これは単に例示の範囲であってもよい。
【0055】
本発明の製剤は1以上の酸性ポリマーを含有してもよい。
【0056】
本発明のコーティング製剤及び含浸製剤は、1以上の界面活性剤を含む。界面活性剤は、本発明の製品の濡れ、及びコーティング製剤及び含浸製剤と製品自体の間の接触を円滑にすることができる。ウイルスのような空気に浮遊する病原体は小さな水滴で運ばれることが知られており、その結果、製品の濡れを高めることは、病原体と製品上の活性物質の間の効果的な接触を高めることができる。さらに界面活性剤は、ウイルス及び細菌の膜を破壊するのに効果的であることが知られている。
【0057】
本発明の製剤では種々の型の界面活性剤を使用してもよい。
【0058】
たとえば、非イオン性界面活性剤を使用してもよい。非イオン性界面活性剤の例は、界面活性剤のTween(商標)及びPolysorbate(商標)ファミリー(すなわち、たとえば、モノラウレートのようなポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸に基づいた)から選択されるものである。好ましい非イオン性界面活性剤には、Tween20(商標)及びPolysorbate20(商標)が挙げられる。
【0059】
たとえば、イオン性、たとえば、アニオン性界面活性剤を使用してもよい。そのような界面活性剤は、親水性アニオン基と会合するカチオンとを有する化合物である。そのようなカチオンは、アルカリ金属のような金属性であってもよいし、又はアンモニウム若しくは四級アンモニウムのような非金属性であってもよい。通常、そのようなアニオン性界面活性剤は、親水性アニオン基と塩の形態でのカチオンを含む。好ましくは、アニオン性界面活性剤は有機親水性アニオン基のナトリウム塩を含む。好適な有機親水性アニオン基はスルホン酸基又はカルボン酸基であってもよい。
【0060】
そのようなアニオン性界面活性剤化合物は、式(I)
2n+1−Z (I)を有し、
式中、nは8〜20、好ましくは10〜15であり、ZはSO又はSOであり、Mはナトリウム又はカリウムである。この種の好ましいアニオン性界面活性剤は、ラウリル硫酸ナトリウム(nが12、ZがSO、Mがナトリウムである)である。
【0061】
好適であってもよいそのほかのアニオン性界面活性剤は、式(II)
2n+1−X−C2m−Z (II)
のものであり、式中、n+mは8〜20であり、Xは−O−又は−CO.O−であり、ZはSO又はSOであり、Mはナトリウム又はカリウムである。この種の好ましいアニオン性界面活性剤は、ココイルイセチオン酸ナトリウム(n=9、m=2、XがCO.O、ZがSO3、Mがナトリウムである)である。式(II)の別のアニオン性界面活性剤はラウレス硫酸ナトリウムである。
【0062】
好適であってもよいそのほかのアニオン性界面活性剤は、式(III)
2n+1−CO.NR.−C2m−Z (III)
のものであり、式中、n及びmはそれぞれ1以上であり、n+mは8〜20であり、RはC1〜3アルキルであり、ZはCO.O、SO又はSOであり、Mはナトリウム又はカリウムである。この種のアニオン性界面活性剤の例は、メチルココイルタウリン酸ナトリウム(Rがメチル、m=2,ZがSO、Mがナトリウムである)である。
【0063】
そのほかのアニオン性界面活性剤は、たとえば、C1416スルホネートのナトリウム塩である市販物Bioterge(商標)As−40のようなアルファ−オレフィンのようなオレフィンスルホネートである。
【0064】
好適であってもよいそのほかのアニオン性界面活性剤には、メチルラウロイルタウリン酸ナトリウム、メチルステアロイルタウリン酸ナトリウム及びメチルパルミトイルタウリン酸ナトリウム(及び異なったアルキル鎖長のそれらの類似体)、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウレス硫酸アンモニウム、ココイルサルコシン酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウレス硫酸トリエタノールアミン、オレアミドスルホコハク酸二ナトリウム、ラウレススルホコハク酸二ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸二ナトリウムが挙げられる。好適であってもよいそのほか部類のアニオン性界面活性剤には、スルホン酸アルカリル、コハク酸アルキル、スルホコハク酸アルキル、サルコシン酸N−アルコイル、リン酸アルキル、リン酸アルキルエーテル、スルホン酸αオレフィン及びタウリン酸アシルメチル、特にナトリウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩、モノ−、ジ−及びトリ−エタノールアミン塩が挙げられる。前述のアルキル基は8〜20の炭素原子を含有してもよい。硫酸アルキルエーテル及びリン酸アルキルエーテルは分子当たり1〜10の酸化エチレン単位又は酸化プロピレン単位を含有してもよい。
【0065】
本発明の製剤では1以上の界面活性剤を使用してもよい。
【0066】
本発明のコーティング製剤及び含浸製剤は、1以上の酸を含む。好適には、1以上の酸は、有機カルボン酸、好ましくは固形のそのような酸から選択されてもよい。そのような固形のカルボン酸の例には、クエン酸、サリチル酸、フマル酸、グルタル酸、乳酸、マロン酸、酢酸、グリコール酸、リンゴ酸、アジピン酸、コハク酸、アスパラギン酸、フタル酸、酒石酸、グルタミン酸、ピログルタミン酸、グルコン酸、及びこれらの2以上の混合物が挙げられる。
【0067】
たとえば、上記で概説された最新技術から、抗ウイルス剤として、たとえば、クエン酸のような酸を使用することが知られており、そのような酸の存在は、製剤の抗ウイルス活性を高めることができる。しかしながら、クエン酸と基材の間の乏しい付着性のために製品上にクエン酸を堆積させるのは困難であることが分かっている。本発明で使用される型の酸性ポリマーはそのような酸の表面への結合を高めるように作用することができることが有利に見い出されている。
【0068】
本発明のコーティング製剤及び含浸製剤における酸性ポリマーと界面活性剤と酸の好ましい組み合わせは、たとえば、GantrezS97のような、その構造に−[−CH−CH.OCH−CH.COOH−CH.COOH−]−;非イオン性界面活性剤Polysorbate20若しくはTween20(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート)、又はアニオン性界面活性剤BiotergeAS−40(酸性pHで安定である水溶性αオレフィン界面活性剤)又は非イオン性界面活性剤とイオン性界面活性剤の組み合わせ、たとえば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートと水溶性αオレフィン界面活性剤;及び酸、クエン酸を含む直鎖ポリマーである。
【0069】
本発明のコーティング製剤及び含浸製剤では、好適な重量:酸性ポリマー:界面活性剤:酸の重量比は、1:0.3〜2.5:1〜2の範囲内である。
【0070】
Gantrez(商標)、Bioterge(商標)Tween(商標)のような物質は水溶液として市販されることが多いことに留意すること、たとえば、Gantrez(商標)は13%溶液として供給され、Bioterge(商標)は有効成分直鎖αオレフィンスルホネートの約40%溶液として供給され、Tween(商標)は、10%溶液として供給され、これらは、コーティング製剤にてこの形態で使用されてもよい。比率は示した。
【0071】
本発明のコーティング製剤及び含浸製剤はまた、1以上の抗微生物化合物を組み入れてもよい。そのような化合物の好適な例には、ソルビン酸、安息香酸、チモール、抗微生物油、四級アンモニウム化合物(たとえば、塩化ベンザルコニウム、セルトリミド)、フェノール化合物(たとえば、トリクロサン、安息香酸)、ビグアニド(たとえば、クロロヘキシジン、アレキシジン)、及びこれらの混合物が挙げられる。好適な四級アンモニウム化合物は、塩化n−(C12〜16)アルキルジメチルベンジルアンモニウムであるHyamine3500NF(商標)である。
【0072】
本発明のコーティング製剤及び含浸製剤はまた、1以上の金属(特に鉄又は銅)のキレート剤、たとえば、EDTA又はその塩若しくは誘導体を組み入れてもよい。たとえば、Gantrez(商標)ポリマーは安定剤としてのEDTA二ナトリウム塩の存在から利益を得てもよい。
【0073】
本発明のコーティング製剤及び含浸製剤はまた、1以上の可塑剤も組み入れてもよい。そのような可塑剤を用いて基材物質の繊維上での酸性ポリマーの膜の形成を促進してもよい。特に、可塑剤物質は、たとえば、上述の「Eudragit」ポリマーのような上述された式RC=CR−COORの化合物に基づいたアニオン系ポリマーとの組み合わせにて有用であってもよい。好適な可塑剤には、たとえば、Triacetin(トリ酢酸グリセロール、トリ酢酸1,2,3−プロパンチオール)、クエン酸トリエチル及びフタル酸ジエチル又はフタル酸ジブチルが挙げられる。特定の非イオン性界面活性剤、たとえば、Tween20(商標)も、たとえば、酸性ポリマーGantrez(商標)のための可塑剤として作用することもできる。使用するのであれば、酸性ポリマーの重量の約1〜40重量%、たとえば、1〜20重量%の可塑剤の比率が好適であると思われる。
【0074】
本発明のコーティング製剤及び含浸製剤はまた、1以上の可塑剤も組み入れてもよい。
【0075】
好適には、基材に堆積させる本発明の製剤は平方メートル当たり約10〜50g、たとえば、20〜30gが適切であると考えられる。
【0076】
本発明の上述の方法は、たとえば、上記比率を達成する好適な量にてコーティング製剤又は含浸製剤の成分を液体ビヒクルに、上述のように組み入れる、たとえば、溶解して又は懸濁して、それによって液状のコーティング製剤又は含浸製剤を形成し、たとえば、浸漬、スプレー又はそのほかの従来の手段によってこの液体製剤を製品上に塗布し、必要に応じて過剰の液体製剤を製品から取り除き、次いで液体ビヒクルを蒸発させ、それによって製品上にコーティング製剤又は含浸製剤を残すことによって好適に実施される。液体ビヒクルの蒸発は、周囲空気中又は加熱した空気中の蒸発であってもよい。好適な加熱空気温度は100℃未満である。
【0077】
液体ビヒクルは、水性であってもよく、たとえば、水又は水とアルコール(たとえば、メタノール、エタノール、プロパノール)の混合物、好適にはエタノールであってもよい。
【0078】
好適には、たとえば、コーティング製剤又は含浸製剤を含有するそのような液体は、GantrezS−97のような酸性ポリマーの1〜6重量%、好適には2〜4重量%を構成してもよい。そのような酸性ポリマーは、水溶液の形態で、たとえば、上述の市販の水溶液の形態で液状のコーティング製剤又は含浸製剤で使用されてもよい。
【0079】
好適には、たとえば、そのような液状のコーティング製剤又は含浸製剤は、BiotergeAS−40(商標)のような界面活性剤、又はBiotergeAS−40(商標)とTween20(商標)のような界面活性剤の混合物の3〜6重量%を構成してもよい。そのような界面活性剤は、水溶液の形態で、たとえば、上述の市販の水溶液の形態で液状のコーティング製剤又は含浸製剤にて使用されてもよい。
【0080】
好適には、たとえば、そのような液状のコーティング製剤又は含浸製剤は、たとえば、クエン酸のような酸の2〜6重量%を構成してもよい。
【0081】
好適には、たとえば、そのような液状のコーティング製剤又は含浸製剤は、たとえば、1以上の抗微生物物質、保存剤等のような上述の成分を好適な量で含有してもよい。
【0082】
そのような液状のコーティング製剤又は含浸製剤は、0〜1重量%のたとえば、安息香酸のような抗微生物剤も含有してもよい。
【0083】
そのような液状のコーティング製剤又は含浸製剤はまた、通常0〜0.3重量%でたとえば、EDTAナトリウム塩のようなキレート剤も含有してもよい。そのような液状のコーティング製剤又は含浸製剤はまた、通常0〜2重量%のトリアセチンのような可塑剤も含有してもよい。
【0084】
そのような液状のコーティング製剤又は含浸製剤は好適には、水又はエタノールのようなアルコール又は水とアルコールの混合物で100重量%にしてもよい。
【0085】
そのような液状のコーティング製剤又は含浸製剤は好適には、必要に応じて、たとえば、水酸化ナトリウム又は塩酸のような塩基又は酸によってpH2〜3に調整されてもよい。
【0086】
そのような液状のコーティング製剤又は含浸製剤は透明な溶液の形態で製造され得る。
【0087】
この液状のコーティング製剤又は含浸製剤は、必要に応じて、たとえば、pH2〜3、通常約2.5のような好適なpHに調整されてもよい。たとえば、塩酸のような酸、水酸化ナトリウムのような塩基、又はクエン酸、たとえば、クエン酸ナトリウムのような緩衝液を負荷溶液に含めてそのようなpHを達成してもよい。
【0088】
本発明の方法を用いた本発明の製品を製造する方法にて使用するのに好適な液状のコーティング製剤又は含浸製剤は、本発明のさらなる態様である。
【0089】
本発明は今や例証としてのみ説明される。
【0090】
1.製剤
液状のコーティング製剤又は含浸製剤の例を以下に示す。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【0091】
【表5】

【0092】
製剤溶液5A〜5DのpHは2.3に調整した。表から、製剤5Aを「基本」製剤とみなすと、製剤B、C及びDは、それぞれエタノール、ソルビン酸及びHyamineの存在で基本的に異なることが理解できる。
【0093】
2.基材
製剤5A〜5Dを水溶液の形態で調製し、以下の4つの基材すべてに塗布した。
ポリエステル(不織布材/プラスチックを代表する)
ガラス(一般的な不活性硬質表面)
綿(洗濯したTシャツジャージー、着衣を代表する)
紙(セルロース材を代表する)
溶液5A、5C及び5Dをポリエステル、紙及び綿の基材に沁みこませ、乾燥させた。溶液5Bを表面積の平方メートル当たり約25gでガラスの表面に塗布し、乾燥させた。
【0094】
3.活性試験
各基材コーティング及び行った試験を以下の表2に要約する
【表6】

【0095】
殺菌有効性試験
1.試験微生物
異なったカテゴリーを代表するように生物を選択し、標準法での試験生物として列記した。Enterococcus hirae(以前のStreptococcus faecalis)を当初計画書で提案したが、この生物は口中の高酸環境に認容性であるとみなされたのでS.mutansと置き換えたが、E.hiraeの要件に類似する。以下の表3は試験生物を列記する。
【表7】

【0096】
2.殺菌有効性試験法
試験表面+コーティングを調べるのに標準プロトコールMD027−10を用いた。この方法は、AATCC試験法100〜2004織物材料における抗菌仕上げの評価に基づき、約6log10の各、別々に試験される接種材料を含有するpH7のリン酸緩衝液0.1mlと共に2.5cmの各試料を負荷することによって実施した。
【0097】
5分間の暴露時間の後、生き残った生物を含有する切れ端を100mlの中和ブロス(TSB+0.5%レシチン及び4%Tween80)に加えることによって活性を停止させた。次いで10倍の連続希釈を行い、その後、−2〜−5の希釈の1mlをTSAに入れ、従来の培地にてコロニー形成まで少なくとも4日間30〜35℃でインキュベートすることによって生き残った生物を数えた。
【0098】
試験はすべて2つ組で実行し、試料からの生き残りは、コーティングなしでの同一材料の切れ端上の生き残りと比較した。次いで対照からの対数低下を算出し、最小検出限界は</=2log10だった。布試料はすべて試験の前に生物汚染度について調べた。
【0099】
3.表面殺菌試験の結果
試験前生物汚染度の結果
以下の表4に示す結果は、綿を除く試験飼料はすべて<100cfu/2.5sq.cmで清潔であることを示しているが;綿試料は、<100〜1000cfu/sq.cmの回収を示した。興味深いことに、コーティングなしの対照試料が1,100cfu/切れ端の最高レベルの汚染を示し;塩基試料は950cfu/切れ端を含有し;ソルビン酸試料は300cfu/切れ端を示し;Hyamine試料上では回収がなかった(<100)。これらの試験結果は2つ組試料からではなかった。
【表8】

【0100】
表面殺菌有効性の結果
表5に示す結果は、5分間の間、ポリエステル、紙、ガラス及び綿に適用した試験製剤すべての殺菌有効性を示している。紙、ポリエステル及びガラスに適用した製剤は、5分間で検出限界(2log10)まで殺傷した。しかしながら、綿における結果は、低下した及び/又は変動する結果を示した。綿は表4に記載された最高の生物汚染度を示したので、コーティングの適用前の試料の取り扱いに関して若干疑問がある。これらの試料はその先、試験の前に煮沸して化学的な又は微生物学的な汚染を除くことが提案される。
【表9】

データは絶対数が利用可能な場合、2つ組試験の平均を表し、そうでなければ低い方の値を報告する。
E.coliは、当初試料の混合があったと考えられたので再試験した。
【0101】
4.表面殺ウイルス有効性試験
方法及び結果
種々の表面を代表する基材に適用された選択した製剤を、2種のウイルス、インフルエンザA型ウイルス香港8/68とヒトリノウイルス42について調べた。試験は標準のプロトコールに従ってGibraltar研究室で実施した。
【0102】
各1インチ×1インチの被覆した試料及びそれぞれの対照を選択したウイルスそれぞれとの5分間の接触に供した。各試料、及び各対照の被覆していない基材は2つ組で調べた。算出されたLog10TCID50/mLに基づいて最終的な対数低下の結果を算出した。
【0103】
各被覆していない対照基材に対する被覆した表面の殺ウイルス有効性の平均結果を以下の表6に要約する。
【表10】

【0104】
すべての製剤で被覆された表面基材すべてが、双方のウイルスRV−42とHKに対して有意な表面有効性を示した。RV−42に対して表面有効性を示さないが、インフルエンザウイルスに対して非常に有意に有効だった唯一の例外は、製剤5Cで被覆されたポリエステル基材だった。
【0105】
5.細胞傷害性試験
方法及び結果
選択された基材表面すべてに適用された4種の開発された製剤すべてを、試験管内USP、一般章<87>生物反応性試験に基づいてNAMSAにて細胞傷害性について評価した。被覆試料と対照基材すべてを、陽性対照製品ラテックスと陰性対照製品、高密度ポリエチレン(HDPE)の双方に対して評価した。
【0106】
細胞傷害性のスコア化は、検体の周り又は下に検出可能ゾーンがない、無しから、ゾーンが検体を10mmより超えて広がる、重度までの範囲での培養の条件について確立された基準に基づいた。結果を以下の表7に要約する。
【表11】

【0107】
中程度の細胞傷害性は、製剤5Aで被覆したポリエステルと製剤5Bで被覆したガラスについて示された。被覆しなかった綿基材は軽い細胞傷害性を示したが、他の基材は何も示さなかった。製剤5A、C及びDでそれぞれ被覆されたそのほかの基材についてはすべて重度の傷害性が示された。
【0108】
6.クエン酸アッセイ
方法及び結果
ガラスを除く被覆した試料すべて及び対照すべてをクエン酸含量についてアッセイし、結果を基材表面の平方cm当たりの無水クエン酸の量でmgにて表す。
【0109】
クエン酸アッセイについて開発され、検証された確立した分析試験法を適合させて試験試料及び基材におけるクエン酸を測定した。被覆された残量と対照の利用性のために試料の試験面積は変化した。従って、抽出した溶媒の体積を調整して方法の直線範囲内で試料すべての類似した濃度を確保した。0.08mg/mL〜0.8mg/mLのクエン酸濃度の関数としての反応の直線性は方法の検証の間に確立した。対照、ポリエステル、綿及び紙の被覆しなかった基材は、被覆した試料濃度に対して2倍濃度で調製した。ガラス基材は不活性であると想定され、クエン酸アッセイを妨害しそうになかった。方法の条件下でクエン酸のクロマトグラフィ分離を妨害する無関係なピークは見られなかった。
【0110】
ポリエステル、綿及び紙の基材を材料全体に浸して、乾燥させたが、ガラスは一方の表面上で被覆した。目標の負荷は、表面の平方メートル当たり大まかに25gの乾燥コーティングを得ることだった。アッセイ結果を以下の表8に要約し、基材すべての上で均一なコーティング負荷を示す。
【表12】

【0111】
このデータに基づいて、選択された製剤5A〜5Dは、ポリエステル、紙、ガラス及び綿に被覆した場合、殺菌有効性を示した。綿ジャージでは低下した殺菌有効性の証拠が若干あるが、これは試験試料の混入のせいかも知れない。4種の最適化された製剤5A〜5Dで被覆した精選の4種の基材は、インフルエンザA型ウイルス香港8/68に対して有意な有効性を示した。さらに、4種の製剤5A〜5Dすべてで被覆された精選基材は、製剤5Cで被覆したポリエステルを除いてヒトリノウイルス42に対して有意な有効性を示した。製剤5Bで被覆した不活性基材ガラスは、ヒトリノウイルス42に対して並外れて高い有効性を示した。許容できる細胞傷害性は、製剤5Aで被覆したポリエステルと製剤5Bで被覆したガラスで示された。平方メートル当たり約25gでの製剤5A〜5Dの標的表面負荷は、4つの精選基材すべてにて達成された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個人用の保護バリア製品であって、水及び/又は空気に対して実質的に不透過性でありかつ人体と望ましくない接点との間に物理的バリアを提供するように適合してなるバリア層を含み、該バリア層は、病原性微生物を脱活性化する活性を有するコーティング製剤をその表面に有し、前記コーティングは酸性ポリマーと界面活性剤と酸とを含む、製品。
【請求項2】
前記バリア層が、軟質及び硬質のプラスチック材、エラストマー及び金属から選択される材料から構成される、請求項1に記載の製品。
【請求項3】
前記バリア層がガラスからから構成される、請求項1に記載の製品。
【請求項4】
人体着衣、頭部の覆い、眼鏡及びゴーグルのような眼の覆い、手袋、保護遮蔽機器、靴、ブーツ、子供の長靴、オムツ、コンドーム、遺体袋及びその他の遺体用容器を含む、請求項1,2又は3に記載の製品。
【請求項5】
布の層を含み、該布は、病原性微生物を脱活性化する活性を有するコーティング製剤をその表面に有し、コーティングは酸性ポリマーと界面活性剤と酸とを含む、個人用着衣製品。
【請求項6】
前記着衣製品の製造に用いられる布がレーヨン及びナイロンから選択される、請求項5に記載の製品。
【請求項7】
着衣の製品の製造に用いられる布が綿及びポリエステルから選択される、請求項5に記載の製品。
【請求項8】
着用者の上部胴体及び/又は下部胴体、及び/又は着用者の腕、脚、手及び足に合うように適合させる請求項5、6又は7に記載の製品。
【請求項9】
下着、上着、脚に着けるもの、コート及びヘッドギアから選択される、請求項7に記載の製品。
【請求項10】
少なくとも1人が病原性微生物に汚染されている可能性がある複数の人によって順に取り扱われることが意図される製品であって、その表面に、病原性微生物を脱活性化する活性を有するコーティング製剤を有し、前記コーティングは酸性ポリマーと界面活性剤と酸とを含む、製品。
【請求項11】
郵便封筒及び郵便包装材料、公共の座席、金(紙幣及びコイン)、公共図書館で利用可能な本及びCD、子供のおもちゃ、調理用製品、電話、キーパッド、公共使用のペン、明かりのスイッチ、ドアノブ、手すり、エレベータコントロール、トイレの表面、シャワーのカーテン、便座、給水栓、湯船、公衆浴場(public wash room)のシャワー室及びシンク、ジム機器、及び複数回使用のリンネル(linen)から選択される、請求項10に記載の製品。
【請求項12】
病原性微生物を脱活性化する活性を有する含浸製剤を含浸させた吸収性セルロース誘導体基材を含む個人用ケア製品であって、コーティングは酸性ポリマーと界面活性剤と酸とを含む、製品。
【請求項13】
紙タオル、トイレットペーパー、手、顔及び体を拭くものから選択される、請求項12に記載の製品。
【請求項14】
前記酸性ポリマーが、その構造中に単位:−[−CR−CR−CR.COOH−CR.COOH−]−を含むポリ−(カルボン酸)ポリマー(式中、R、R、R、R、R及びRは、独立して水素又はC1〜3アルキル又はC1〜3アルコキシであり、好ましくはR及びRは水素であり、Rは水素であり、Rはメトキシであり、R及びRは水素である)、又はその構造中にCOOH基を保持するその誘導体、又はCOOH基に容易に加水分解される基を含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の製品。
【請求項15】
前記酸性ポリマーが、約700,000の分子量を有するGantrez(商標)S−96及び約1,200,000の分子量を有するGantrez(商標)S−97から選択される、請求項14に記載の製品。
【請求項16】
前記界面活性剤が非イオン性界面活性剤を含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の製品。
【請求項17】
前記界面活性剤がアニオン性界面活性剤を含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載の製品。
【請求項18】
前記酸が有機カルボン酸から選択される、請求項1〜17のいずれか1項に記載の製品。
【請求項19】
前記酸がクエン酸である、請求項20に記載の製品。
【請求項20】
前記製品がその表面に又はその中に含浸された20〜30g/mを有する、請求項1〜19のいずれか1項に記載の製品。
【請求項21】
酸性ポリマー:界面活性剤:酸の重量比が1:0.3〜2.5:1〜2である、請求項1〜20のいずれか1項に記載の製品。
【請求項22】
製剤が可塑剤を含む、請求項1〜21のいずれか1項に記載の製品。
【請求項23】
前記製剤が、非イオン性界面活性剤である可塑剤を含む、請求項14に記載の製品。
【請求項24】
請求項1、2、3又は4に記載の製品を製造する方法であって、前記酸性ポリマーと前記界面活性剤と前記酸とを液体ビヒクル中に含む流体負荷溶液に、前記バリア層の物質の表面を接触させ、液体ビヒクルを蒸発させ、それによってコーティング製剤を堆積させる、方法。
【請求項25】
請求項5,6,7又は8に記載の製品を製造する方法であって、前記酸性ポリマーと前記界面活性剤と前記酸とを液体ビヒクル中に含む流体負荷溶液に、前記布の表面を接触させ、液体ビヒクルを蒸発させ、それによってコーティング製剤を堆積させる方法であり、前記着衣の製品に前記布を組み入れる前又は後のいずれかで実施される、方法。
【請求項26】
請求項10又は11に記載の製品を製造する方法であって、酸性ポリマーと界面活性剤と前記酸とを液体ビヒクル中に含む流体負荷溶液に、前記製品の表面を接触させ、液体ビヒクルを蒸発させることにより、複数の人が順次取り扱うことが意図される製品上に、病原性微生物を脱活性化する活性を有するコーティングを堆積させる方法であり、前記コーティングは酸性ポリマーと界面活性剤と酸とを含む、方法。
【請求項27】
請求項12又は13に記載の製品を製造する方法であって、吸収性紙基材を含む個人用ケア製品に、病原性微生物を脱活性化する活性を有する製剤を含浸させる方法であり、前記製剤は、病原性微生物を脱活性化する活性を有し、前記含浸製剤は、液体ビヒクルに酸性ポリマーと界面活性剤と酸とを含む、方法。
【請求項28】
請求項24〜26に記載の方法であって、液体ビヒクル中に前記コーティング製剤又は含浸製剤の成分を含浸させて液体のコーティング製剤又は含浸製剤を形成し、該液体製剤を前記製品に適用し、必要に応じて過剰な液体製剤を前記製品から取り除き、液体ビヒクルを蒸発させ、それによって前記製品上に前記コーティング製剤又は含浸製剤を残すことにより実施される、方法。
【請求項29】
前記液体ビヒクルが水性である、請求項24〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記液体ビヒクルが水とアルコールとの混合物を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記アルコールがエタノールである、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記液体のコーティング製剤又は含浸製剤がpH2〜3を有する、請求項24〜30のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2012−529577(P2012−529577A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515121(P2012−515121)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際出願番号】PCT/US2010/038073
【国際公開番号】WO2010/144643
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(591002957)グラクソスミスクライン・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (341)
【氏名又は名称原語表記】GlaxoSmithKline LLC
【Fターム(参考)】