説明

新規調製方法、塩、組成物及び使用

【課題】局所投与用新規医薬組成物又は製剤、及び薬物療法(特に、抗菌療法)の提供。
【解決手段】下式で示されるムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートの新規塩又はその溶媒和物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレウロムチリン(pleuromutilin)誘導体を調製するための新規方法、ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートの新規塩又はその溶媒和物、ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテート又はその製薬上許容される塩若しくは溶媒和物を含有している局所投与用新規医薬組成物又は製剤、及び薬物療法(特に、抗菌療法)におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
国際特許出願WO99/21855(SmithKline Beecham plc and SmithKline Beecham Corporation)には、一般式(A)又は一般式(B):
【化1】

【0003】
[式中、
n及びmのそれぞれは、独立して、0、1又は2であり;
Xは、-O-、-S-、-S(O)-、-SO2-、-CO.O-、-NH-、-CONH-、-NHCONH-及び結合から選択され;
R1は、ビニル又はエチルであり;
R2は、1個又は2個の塩基性窒素原子を含み、環炭素原子を介して結合している単環式又は二環式の非芳香族基であり;
R3は、H又はOHであり;
又は
(IA)若しくは(IB)の14位の部分構造R2(CH2)mX(CH2)nCH2COOは、RaRbC=CHCOOで置き換えられており、その際、RaとRbの一方は水素であり且つ他方はR2であるか、又はRaとRbは一緒になってR2を形成している]
で表されるプレウロムチリン誘導体又はその製薬上許容される塩が記載されている。
【0004】
WO99/21855の中で記載されている化合物の1つは、式(C)で表される化合物、即ち、ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートである。
【化2】

【0005】
この化合物を調製するための2つの方法が、WO99/21855の実施例(50)及び実施例(58)に記載されている。第一の調製方法では、エタノール中、カリウムt-ブトキシドの存在下で、エンド-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-3-チオールにムチリン14-メタンスルホニルオキシアセテートを添加して、精製後、プレウロムチリンから誘導された出発物質の量を基準にして17%の収率で該生成物を得ている。上記チオールは、対応するヒドロキシ化合物から対応するチオアセテートを経て調製された。第二の調製方法では、メタンスルホネート脱離基をメチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクチル成分上に配置し、これを、ナトリウムメトキシドの存在下で22-デオキシ-22-スルファニルプレウロムチリンに加えて、精製後、プレウロムチリンから誘導された出発物質の量を基準にして27%の収率で該生成物を得ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第1999/21855号
【発明の概要】
【0007】
本発明は、プレウロムチリン誘導体を調製するための新規方法、ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートの新規塩又はその溶媒和物、ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテート又はその製薬上許容される塩若しくは溶媒和物を含有している局所投与用新規医薬組成物又は製剤、及び薬物療法(特に、抗菌療法)におけるそれらの使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】ATR(減衰全反射)で測定した、結晶質ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートの赤外スペクトルである。
【図2】結晶質ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートのDSCサーモグラムである。
【図3】結晶質ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートのXRPDパターンである。
【図4】ATR(減衰全反射)で測定した、ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートの結晶質ヒドロスクシナート塩の赤外スペクトルである。
【図5】ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートの結晶質ヒドロスクシナート塩のDSCサーモグラムである。
【図6】ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートの結晶質ヒドロスクシナート塩のXRPDパターンである。
【図7】ATR(減衰全反射)で測定した、ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートの結晶質ヒドロフマラート塩の赤外スペクトルである。
【図8】ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートの結晶質ヒドロフマラート塩のDSCサーモグラムである。
【図9】ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートの結晶質ヒドロフマラート塩のXRPDパターンである。
【図10】ATR(減衰全反射)で測定した、ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートの結晶質ヒドロマレアート塩の赤外スペクトルである。
【図11】ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートの結晶質ヒドロマレアート塩のDSCサーモグラムである。
【図12】ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートの結晶質ヒドロマレアート塩のXRPDパターンである。
【図13】ATR(減衰全反射)で測定した、ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートの結晶質トシラート塩の赤外スペクトルである。
【図14】ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートの結晶質トシラート塩のDSCサーモグラムである。
【図15】ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートの結晶質トシラート塩のXRPDパターンである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第一の態様によれば、本発明者らは、相間移動触媒系中でチオールを用いる、プレウロムチリン誘導体の新規調製方法を見いだした。この相間移動触媒による調製方法では、これまでよりも効率がよく、収率が改善された合成が可能となり、反応生成物を精製するためのクロマトグラフィーステップが不要である。
【0010】
従って、一実施形態において、本発明は、式(IA)又は式(IB):
【化3】

【0011】
[式中、
mは、0、1又は2であり;
R1は、ビニル又はエチルであり;
R2は、1個又は2個の塩基性窒素原子を含み、環炭素原子を介して結合している、場合により置換されていてもよい単環式又は二環式の非芳香族基であり;
R3は、H又はOHである]
で表される化合物又はその製薬上許容される誘導体を調製する方法を提供し、ここで、該方法は、式(IIA)又は式(IIB):
【化4】

【0012】
[式中、
Yは、水素又はヒドロキシ保護基であり;
R1A及びR3Aは、式(IA)及び式(IB)に関して定義したR1及びR3であるか、又はR1及びR3に変換可能な基であり;
RLは、脱離基であるか、又はOH若しくはNH2である]
で表される化合物を、相間移動触媒系中で、式(III):
2A-(CH2)m-SH (III)
[式中、
R2Aは、式(IA)及び式(IB)に関して定義したR2であるか、又はR2に変換可能な基であり;
mは、式(IA)及び式(IB)に関して定義したとおりである]
で表されるチオール化合物と反応させること;
並びにその後、必要な場合又は望ましい場合には、
Yを水素に変換すること、
R1A基、R2A基又はR3A基をR1基、R2基又はR3基に変換すること、及び/又は
R1基、R2基又はR3基を別のR1基、R2基又はR3基に変換すること
を含む。
【0013】
好ましくは、mは、0又は1である。特には、mは0である。
【0014】
好ましくは、R1及びR1Aは、ビニルである。
【0015】
好ましくは、R2AはR2である。R2が単環式である場合、それは、典型的には、4個〜8個の環原子を含んでおり、二環式である場合は、それは、典型的には、各環内に5個〜10個の環原子を含んでおり、場合により、3以下の置換基で置換されていてもよい。適切な置換基としては、アルキル、アルキルオキシ、アルケニル及びアルケニルオキシなどがあり、これらは、それぞれ、橋頭原子又は非橋頭原子の何れかにより保持され得る。さらに、該窒素原子又は各窒素原子は、酸素によって置換されてN-オキシドを形成してもよく、又はモノアルキル若しくはジアルキルにより置換されてもよく、その場合、第四級カチオンが形成されることは理解されるであろう。その対イオンは、ハロゲン化物イオンであることができ、例えば、塩化物又は臭化物であり、好ましくは、塩化物である。該アザ環系は、さらに、1以上の二重結合を含んでいてもよい。
【0016】
R2に関する代表的な二環式基及び単環式基としては、ピペリジニル、ピロリジニル、キヌクリジニル(アザビシクロ[2.2.2]オクチル)、アザビシクロ[2.2.1]ヘプチル、アザビシクロ[4.3.0]ノニル、アザビシクロ[3.2.1]オクチル、アザビシクロ[3.3.0]オクチル、アザビシクロ[3.2.1]オクテニル、アザビシクロ[3.3.1]ノニル及びアザビシクロ[4.4.0]デシルなどを挙げることができる。これらは、全て、置換されていてもよく、又は置換されていなくてもよい。
【0017】
好ましくは、R2は、二環式基である。さらに好ましくは、R2は、場合によりアルキルで置換されていてもよいアザビシクロ[3.2.1]オクチルであり、特には、エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルである。
【0018】
好ましくは、R3及びR3Aは、水素である。
【0019】
好ましくは、RLは、脱離基である。適切な脱離基の例としては、4-CH3C6H4SO2O(トシラート)、CH3SO2O(メシラート)、F3CSO2O、I、Br及びClなどを挙げることができる。好ましくは、該脱離基は、CH3SO2Oである。
【0020】
本明細書で使用される場合、用語「製薬上許容される」は、製薬的用途に適している化合物を意味する。医学で使用するのに適している、本発明の調製方法により調製された化合物の塩及び溶媒和物は、対イオン又は結合している溶媒が製薬上許容されるものである塩及び溶媒和物である。しかしながら、製薬上許容されない対イオン又は結合溶媒を有する塩及び溶媒和物も、本発明の範囲内であり、それらは、例えば、本発明の別の化合物及びそれらの製薬上許容される塩及び溶媒和物の製造における中間体として使用される。
【0021】
本明細書で使用される場合、用語「製薬上許容される誘導体」は、レシピエントに投与されたときに、本発明の化合物又はその活性な代謝物若しくは残基を(直接的又は間接的に)提供し得る、化合物の任意の製薬上許容される塩、溶媒和物又はプロドラッグ(例えば、エステル)を意味する。当業者は、過度の実験をすることなく、そのような誘導体を認識することができる。それでもやはり、以下の文献が参照される:Burger's Medicinal Chemistry and Drug Discovery, 5th Edition, Vol 1:Principles and Practice。この文献は、参照により、そのような誘導体について教示している範囲を本明細書に組み入れる。好ましい製薬上許容される誘導体は、塩、溶媒和物、エステル、カルバミン酸エステル及びリン酸エステルである。特に好ましい製薬上許容される誘導体は、塩、溶媒和物及びエステルである。最も好ましい製薬上許容される誘導体は、塩及びエステルであり、特に、塩である。
【0022】
本発明の調製方法で調製した化合物は、製薬上許容される塩の形態であることができ、及び/又は製薬上許容される塩として投与することができる。適切な塩についての概説に関しては、以下の文献を参照されたい:Berge et al., J. Pharm. Sci., 1977, 66, 1-19。
【0023】
典型的には、製薬上許容される塩は、適宜、必要とされる酸又は塩基を用いて、容易に調製することができる。そのような塩は、溶液から沈澱させて濾過により収集することができるか、又は溶媒を蒸発させて回収することができる。
【0024】
本発明の調製方法で調製した化合物の塩は、例えば、式(IA)又は式(IB)で表される化合物内に存在している塩基性窒素原子を酸と反応させて得られる酸付加塩を含んでいる。用語「製薬上許容される塩」に包含される塩は、本発明化合物の無毒性塩である。適切な付加塩は、無毒性の塩を形成する酸から形成される。適切な付加塩の例としては、酢酸塩、p-アミノ安息香酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、ビスメチレンサリチル酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、ホウ酸塩、エデト酸カルシウム塩、カンシル酸塩(camsylate)、炭酸塩、クラブラン酸塩(clavulanate)、クエン酸塩、シクロヘキシルスルファミン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシラート塩(edisylate)、エストラート塩(estolate)、エシラート塩(esylate)、エタンジスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプタート塩(gluceptate)、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコール酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘキシルレゾルシン酸塩、ヒドラバミン塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロフマラート塩(hydrofumarate)、リン酸水素塩、ヒドロヨージド塩(hydroiodide)、ヒドロマレアート塩(hydromaleate)、ヒドロスクシナート塩(hydrosuccinate)、ヒドロキシナフトエ酸塩、イセチオン酸塩、イタコン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシラート塩、メチルブロミド塩、メチル硝酸塩(methylnitrate)、メチル硫酸塩(methylsulfate)、マレイン酸一カリウム塩、粘液酸塩(mucate)、ナプシル酸塩、硝酸塩、N-メチルグルカミン塩、シュウ酸塩、オキサロ酢酸塩、パモ酸塩(エンボン酸塩)、パルマート塩(palmate)、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ピルビン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、プロピオン酸塩、糖酸塩(saccharate)、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩(teoclate)、トシラート塩、トリエチオダイド塩(triethiodide)、トリフルオロ酢酸塩及び吉草
酸塩などを挙げることができる。
【0025】
製薬上許容される塩基塩としては、アンモニウム塩、例えば、トリメチルアンモニウム塩、アルカリ金属塩、例えば、ナトリウム塩及びカリウム塩、アルカリ土類金属塩、例えば、カルシウム塩及びマグネシウム塩、並びに有機塩基との塩、例えば、第一級アミン塩、第二級アミン塩及び第三級アミン塩、例えば、イソプロピルアミン塩、ジエチルアミン塩、エタノールアミン塩、トリメチルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩及びN-メチル-D-グルカミン塩などを挙げることができる。
【0026】
本発明により調製した、塩基性中心と酸性中心(カルボキシ置換基)の両方を有する化合物は、双性イオンの形態、塩基性中心の酸付加塩の形態又は(カルボキシ基の)アルカリ金属塩の形態であり得る。
【0027】
有機化学の当業者は、多くの有機化合物が溶媒と錯体を形成することができ、その溶媒の中で反応するか又はその溶媒から沈澱するか若しくは結晶化するということを理解するであろう。これらの錯体は、「溶媒和物」として知られている。例えば、水との錯体は「水和物」として知られている。本発明化合物の溶媒和物は、本発明の範囲内である。本発明は、その範囲内に、化学量論的な水和物、及び種々の量の水を含んでいる化合物を包含する。
【0028】
本明細書で使用される場合、用語「プロドラッグ」は、体内で、例えば、血中での加水分解により、医学的効果を有するその活性形態に変換される化合物を意味する。製薬上許容されるプロドラッグについては、以下の文献に記述されている:T. Higuchi and V. Stella, Prodrugs as Novel Delivery Systems, Vol. 14 of the A.C.S. Symposium Series, Edward B. Roche, ed.; Bioreversible Carriers in Drug Design, American Pharmaceutical Association and Pergamon Press, 1987; 及び D. Fleisher, S. Ramon and H. Barbra “Improved oral drug delivery: solubility limitations overcome by the use of prodrugs”, Advanced Drug Delivery Reviews (1996) 19(2) 115-130。これら文献のそれぞれは、参照により本明細書に組み入れる。
【0029】
プロドラッグは、患者に投与されたときに、インビボで構造(I)の化合物を放出する、共有結合で結合している任意のキャリヤである。プロドラッグは、一般に、所定の操作又はインビボで修飾部分が切断されて本発明化合物を生成するように、官能基に修飾を加えることにより、調製する。プロドラッグとしては、例えば、ヒドロキシ基又はアミン基がいずれかの基に結合しており、患者に投与されたときに切断されてヒドロキシ基又はアミン基を形成する本発明により調製した化合物などがある。かくして、プロドラッグの代表的な例としては(限定するものではないが)、構造(I)で表される化合物のアルコール官能基及びアミン官能基の酢酸誘導体、ギ酸誘導体及び安息香酸誘導体などを挙げることができる。さらに、カルボン酸(-COOH)の場合、メチルエステル及びエチルエステルなどのエステルを用いることもできる。エステルは、それ自体が活性を有し得る、及び/又はヒト体内のインビボ条件下で、加水分解され得る。インビボで加水分解され得る適切な製薬上許容されるエステル基としては、ヒト体内で容易に分解して親酸又はその塩が残るエステルなどがある。
【0030】
本明細書で使用される場合、用語「非芳香族」は、飽和しているか又は不飽和であるが、ピリジン又はキノリンなどの芳香族基を除く基を意味する。
【0031】
本明細書内で言及されているアルキル基には(単独で、又は別の基の一部として)、1個〜6個の炭素原子を含んでいる直鎖基及び分枝鎖基(即ち、C1-6アルキル)が包含される。そのような基の例としては、限定するものではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル及びヘキシルなどを挙げることができる。そのようなアルキル基は、アリール、ヘテロシクリル、(C1-6)アルコキシ、(C1-6)アルキルチオ、アリール(C1-6)アルコキシ、アリール(C1-6)アルキルチオ、アミノ、モノ(C1-6)アルキルアミノ、ジ(C1-6)アルキルアミノ、シクロアルキル、シクロアルケニル、カルボキシ及びそのエステル、カルボキシのアミド、ウレイド、カルバムイミドイル(アミジノ)、グアニジノ、アルキルスルホニル、アミノスルホニル、(C1-6)アシルオキシ、(C1-6)アシルアミノ、アジド、ヒドロキシ及びハロゲンからなる群から選択される1以上の基で場合により置換されていてもよい。
【0032】
本明細書内で言及されているアルケニル基には(単独で、又は別の基の一部として)、2個〜6個の炭素原子を含んでいる直鎖基及び分枝鎖基(即ち、C2-6アルケニル)が包含される。そのような基の例としては、限定するものではないが、ビニル(エテニル)、プロペニル、3-ブテニル、2-ブテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、3-メチル-2-ブテニル、3-メチルブト-2-エニル、3-ヘキセニル及び1,1-ジメチルブト-2-エニルなどを挙げることができる。そのようなアルケニル基は、アリール、ヘテロシクリル、(C1-6)アルコキシ、(C1-6)アルキルチオ、アリール(C1-6)アルコキシ、アリール(C1-6)アルキルチオ、アミノ、モノ(C1-6)アルキルアミノ、ジ(C1-6)アルキルアミノ、シクロアルキル、シクロアルケニル、カルボキシ及びそのエステル、カルボキシのアミド、ウレイド、カルバムイミドイル(アミジノ)、グアニジノ、アルキルスルホニル、アミノスルホニル、(C1-6)アシルオキシ、(C1-6)アシルアミノ、アジド、ヒドロキシ及びハロゲンからなる群から選択される1以上の基で場合により置換されていてもよい。
【0033】
本明細書で言及されているアルキルオキシ基、アルコキシ基及びアルケニルオキシ基は、酸素に結合している上記で定義したアルキル基及びアルケニル基である。
【0034】
本明細書で言及されているシクロアルキル基及びシクロアルケニル基には、3個〜8個の環炭素原子を有する基が包含される。例えば、C3-7シクロアルキルは、3個以上で7個以下の環炭素原子を含んでいる飽和環を意味し、C3-7シクロアルケニルは、3個以上で7個以下の環炭素原子を含んでいる非芳香族不飽和環を意味する。本明細書で使用されるシクロアルキル及びシクロアルケニルの例としては、限定するものではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル及びシクロヘプテニルなどを挙げることができる。そのようなシクロアルキル基及びシクロアルケニル基は、アルキル基及びアルケニル基に関して上記で記載したように場合により置換されていてもよい。
【0035】
本明細書で言及されているアリール基には(単独で、又は別の基の一部として)、各環内に、適切には4個〜7個の環原子、好ましくは、5個又は6個の環原子を含んでいる単環及び縮合環が包含され、ここで、これらの環は、それぞれ、置換されていなくてもよく、又は例えば3以下の置換基で、置換されていてもよい。縮合環系は脂肪族環を含んでいることが可能であり、また、芳香族環を1つのみ含んでいることが必要である。代表的なアリール基には、フェニル及びナフチル(例えば、1-ナフチル又は2-ナフチルなど)などがある。
【0036】
適切には、フェニル及びナフチルなどを包含するアリール基は、いずれも、場合により5以下の置換基で置換されていてもよく、好ましくは、3以下の置換基で置換されていてもよい。適切な置換基としては、ハロゲン、(C1-6)アルキル、アリール、アリール(C1-6)アルキル、(C1-6)アルコキシ、(C1-6)アルコキシ(C1-6)アルキル、ハロ(C1-6)アルキル、アリール(C1-6)アルコキシ、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、アジド、アミノ、モノ-N-(C1-6)アルキルアミノ、ジ-N-(C1-6)アルキルアミノ、アシルアミノ、アリールカルボニルアミノ、アシルオキシ、カルボキシ、カルボキシ塩、カルボキシエステル、カルバモイル、モノ-N-(C1-6)アルキルカルバモイル、ジ-N-(C1-6)アルキルカルバモイル、(C1-6)アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、ウレイド、グアニジノ、スルホニルアミノ、アミノスルホニル、(C1-6)アルキルチオ、(C1-6)アルキルスルフィニル、(C1-6)アルキルスルホニル、ヘテロシクリル及びヘテロシクリル(C1-6)アルキルなどを挙げることができる。さらに、隣接している2つの環炭素原子は、(C3-5)アルキレン鎖で連結されて、炭素環を形成していてもよい。
【0037】
本明細書内で言及されているヘテロシクリル基及びヘテロ環式基には(単独で、又は別の基の一部として)、特に別途定義されていない限り、各環内に、それぞれ酸素、窒素及び硫黄から選択される適切には4個以下のヘテロ原子を含んでいる芳香族及び非芳香族の単環及び縮合環が包含され、ここで、これらの環は、それぞれ、置換されていなくてもよく、又は例えば3以下の置換基で、置換されていてもよい。各ヘテロ環式環は、適切には、4個〜7個の環原子、好ましくは、5個又は6個の環原子を有している。縮合ヘテロ環式環系は炭素環を含んでいることが可能であり、また、ヘテロ環式環を1つのみ含んでいることが必要である。芳香族ヘテロシクリル環の例としては、限定するものではないが、フリル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、チアジアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル及びトリアジニルなどを挙げることができる。縮合芳香族ヘテロシクリル環の例としては、限定するものではないが、インドリル、イソインドリル、アザインドリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、キノリル、イソキノリル、キナゾリニル、シンノリニル及びフタラジニルなどを挙げることができ、特に、ベンゾフラニルである。非芳香族ヘテロシクリル基の例としては、限定するものではないが、アジリジニル、ピロリニル、ピロリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、ピペリジル、ピペラジニル、モルホリノ、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニル及びチオモルホリノなどを挙げることができる。
【0038】
好ましくは、ヘテロシクリル基についての置換基は、ハロゲン、(C1-6)アルキル、アリール(C1-6)アルキル、(C1-6)アルコキシ、(C1-6)アルコキシ(C1-6)アルキル、ハロ(C1-6)アルキル、ヒドロキシ、アミノ、モノ-N-(C1-6)アルキル-アミノ、ジ-N-(C1-6)アルキル-アミノ、アシルアミノ、カルボキシ、カルボキシ塩、カルボキシエステル、カルバモイル、モノ-N-(C1-6)アルキルカルボニル、ジ-N-(C1-6)アルキルカルボニル、アリールオキシカルボニル、(C1-6)アルコキシカルボニル(C1-6)アルキル、アリール、オキシ基、ウレイド、グアニジノ、スルホニルアミノ、アミノスルホニル、(C1-6)アルキルチオ、(C1-6)アルキルスルフィニル、(C1-6)アルキルスルホニル、ヘテロシクリル及びヘテロシクリル(C1-6)アルキルから選択される。
【0039】
本明細書内で言及されているアシル基には(単独で、又は別の基の一部として)、(C1-6)アルキルカルボニルが包含される。そのようなアシル基は、1個〜3個のハロゲン原子で場合により置換されていてもよい。
【0040】
本明細書内で言及されているハロゲン基及びハロ基には(単独で、又は別の基の一部として)、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素が包含される。
【0041】
置換基の結合位置に応じて、2種類以上のジアステレオマーが可能である。そのような状況では、本発明は、個々のジアステレオマー及びそれらの混合物を包含する。
【0042】
式(IA)で表される2-ヒドロキシ化合物は、(2S)立体配置若しくは(2R)立体配置を有し得るか、又はそれらの混合物として提供される。(2S)立体配置が好ましい。
【0043】
相間移動触媒系は、当技術分野では周知されている。例えば、以下の文献を参照されたい: "Phase Transfer Catalysis", editor C M Starks, ACS Symposium Series 326, American Chemical Society, 1987。好ましくは、本発明の調製方法による相間移動触媒系は、有機溶媒(例えば、ジクロロメタン、t-ブチルメチルエーテル、MIBK(4-メチル-2-ペンタノン)又はトルエン)中の式(IIA)又は式(IIB)で表される化合物と相間移動触媒の溶液、式(III)で表されるチオール化合物の酸性水溶液又は式(III)で表されるチオール化合物の酸付加塩の水溶液、及び無機塩基(例えば、水酸化ナトリウム)の水溶液を含んでいる。一般に、本発明の調製方法では、有機溶媒中の式(IIA)又は式(IIB)で表される化合物と相間移動触媒の溶液、及び式(III)で表されるチオール化合物の酸性水溶液又は式(III)で表されるチオール化合物の酸付加塩の水溶液を混合し、次いで、無機塩基の水溶液を添加して、pHを調節する。
【0044】
相間移動触媒は、例えば、第四級アンモニウム塩であり得る。本発明の調製方法で使用するのに適する第四級アンモニウム塩としては、以下のものを挙げることができる:テトラ-C(1-6)アルキルアンモニウム塩、例えば、テトラ-メチルアンモニウム、メチルトリ-エチルアンモニウム、メチルトリ-ブチルアンモニウム又はテトラ-ブチルアンモニウムのハロゲン化物又は硫酸水素塩、例えば、テトラ-ブチルアンモニウムの塩化物又は硫酸水素塩、特に、テトラ-ブチルアンモニウム硫酸水素塩。好ましくは、相間移動触媒は、0.5〜15mol%の範囲で使用し、さらに好ましくは、1〜10mol%の範囲、最も好ましくは、3〜6mol%の範囲で使用する。
【0045】
式(III)で表されるチオール化合物の上記酸性水溶液は、一般に、0.5〜3のpHを有し、好ましくは、0.5〜1.5のpH、さらに好ましくは、約1のpHを有する。該溶液は、塩酸などの適切な無機酸を添加することにより酸性化し得る。
【0046】
式(III)で表される化合物の酸付加塩の上記水溶液は、好ましくは、塩酸塩の水溶液である。
【0047】
無機塩基の上記水溶液(例えば、水酸化ナトリウム水溶液)を添加して、該反応混合物がアルカリ性となるように、そのpHを調節する。該反応混合物のpHは、好ましくは、pH12〜pH14に調節し、好ましくは、12.5〜13.5、さらに好ましくは、約13に調節する。反応の過程において、pHをモニタリングして、pHを望ましいレベルに維持するために無機塩基の溶液をさらに添加することが必要な場合もある。
【0048】
相間移動触媒による該調製方法は、一般に、40℃以下の温度で実施する。一実施形態では、該調製方法は、15℃〜30℃の温度で実施する。別の実施形態では、該調製方法は、0℃〜25℃の温度で、例えば、10℃〜25℃の温度で実施する。
【0049】
当業者は、本発明の調製方法において、該分子内の1以上の感受性基を保護して望ましくない副反応を防止することが必要及び/又は望ましい場合があるということを理解するであろう。本発明で使用するのに適切な保護基は、当業者にはよく知られており、また、それは、該分子の残りの部分を分解することなく、慣習的な条件下で除去することができる。各種基を保護し得る方法及び得られた保護されている誘導体を切断する方法についての包括的な議論は、例えば、以下の文献に記載されている: "Protective Groups in Organic Chemistry" by T.W. Greene (Wiley-Interscience, New York, 2nd edition, 1991) 又は “Protecting Groups” by P.J. Kocienski (Georg Thieme Verlag 1994)。特に適しているヒドロキシ保護基としては、トリオルガノシリル基(例えば、トリアルキルシリル、例えば、トリメチルシリル又はt-ブチルジメチルシリル)、オルガノカルボニル基及びオルガノオキシカルボニル基、例えば、アセチル、アリルオキシカルボニル、4-メトキシベンジルオキシカルボニル及び4-ニトロベンジルオキシカルボニル、並びにアルキルエーテル、例えば、テトラヒドロピラニル又はt-ブチルなどを挙げることができる。特に適しているカルボキシ保護基としては、アルキル基及びアリール基、例えば、メチル、エチル及びフェニルなどを挙げることができる。特に適しているアミノ保護基としては、アシル型保護基(例えば、ホルミル、トリフルオロアセチル又はアセチル)、芳香族ウレタン型保護基(例えば、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)及び置換されているCbz、例えば、4-メトキシベンジルオキシカルボニル又は4-ニトロベンジルオキシカルボニル)、脂肪族ウレタン保護基(例えば、9-フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)、アルコキシカルボニル、例えば、t-ブチルオキシカルボニル(Boc)又はイソプロピルオキシカルボニル、及びシクロヘキシルオキシカルボニル)、及びアルキル型保護基(例えば、ベンジル、トリチル及びクロロトリチル)などを挙げることができる。
【0050】
式(IIA)又は式(IIB)で表される化合物のYの代表的な意味において、ヒドロキシ保護基がアシルを含んでいる場合、例えば、-OYは、トリフルオロアセチルオキシ又はジクロロアセチルオキシであり得る。対象のR3も同様にヒドロキシルである場合、アシルオキシ(例えば、アセチル又はジクロロアセチル)としてのR3Aを有することは有用であり得る。しかしながら、該調製方法を用いて、好ましい化合物であるムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートを調製する場合、Yは、好ましくは、水素である。
【0051】
R1Aは、典型的には、R1基ビニルである。この基は、該ビニル基を水素化してエチル基を形成させることにより、例えば、酢酸エチル、エタノール、ジオキサン又はテトラヒドロフランなどの溶媒中でパラジウム触媒(例えば、炭素担持10%パラジウム)上で水素化してエチル基を形成させることにより、R1の別の基であるエチル基に変換することができる。 R3Aは、典型的には、水素であるか、又は保護されているヒドロキシル、例えば、アシルオキシである。カップリング反応後、加水分解により、例えば、メタノール中で水酸化ナトリウムを用いた加水分解により、アシル保護基を除去してヒドロキシル基とすることができる。
【0052】
式(III)で表される化合物を式(IIA)又は式(IIB)で表される化合物と反応させる前に、式(III)の化合物の置換基を保護することが必要な場合もある。例えば、窒素原子をアルコキシカルボニル(例えば、t-ブトキシカルボニル)で保護することが必要な場合もある。
【0053】
本発明の別の実施形態では、上記調製方法は、式(IIC):
【化5】

【0054】
[式中、R1A及びRLは、式(IIA)及び式(IIB)に関して定義したとおりである]
で表される化合物を、上記で定義した相間移動触媒系中で、上記で定義した式(III)[式中、R2Aは、式(IA)及び式(IB)に関して定義したR2である]で表される化合物と反応させた後、得られた生成物を酸で処理し、その後、必要な場合又は望ましい場合には、R1A基をR1基に変換し、及び/又はR1基を別のR1基に変換することにより、実施することができる。
【0055】
上記で言及した酸処理により、式(IIC)で表されるエピ-ムチリン立体配置が式(IIA)で表される通常のムチリン核に変換される。典型的には、この変換は、ジオキサン中で、濃HCl又はルーカス試薬(ZnCl2で飽和させた濃HCl)で処理することにより実施する。
【0056】
式(IIA)及び式(IIB)などの場合、R1Aは、典型的には、R1基ビニルであり、これは、該ビニル基を水素化してエチル基を形成させることにより、R1の別の基に変換することができる。
【0057】
R1A基、R2A基又はR3A基をR1基、R2基又はR3基に変換することが必要な場合もあることは理解されるであろう。これらの基は、標準的な官能基トランスフォーメーションを用いて変換することができる。
【0058】
R1基、R2基又はR3基を別のR1基、R2基又はR3基と相互変換することが必要な場合があることも理解されるであろう。これは、典型的には、式(IA/B)の1化合物を式(IA/B)の別の化合物の中間前駆体として用いる場合、又は比較的複雑な若しくは反応性の高い置換基を一連の合成の最後に導入するのが比較的容易である場合に必要となる。R2における置換基は、文献に記載されている官能基トランスフォーメーションの一般的な方法の内の1つを用いて別の置換基に変換することができるが(例えば、カルボン酸エステルは塩基を用いて加水分解してカルボン酸とすることが可能であり; 酸はそのアミドに変換することが可能であり; t-ブトキシカルボニルアミノ基はトリフルオロ酢酸で処理することによりアミンに変換することが可能であり; アミノ基はアルキル化又はアシル化することが可能である)、但し、選択した方法は、該分子内の他の官能基(例えば、プレウロムチリン核のC-3におけるケトン)と適合するものでなければならない。
【0059】
官能基トランスフォーメーションは、当技術分野ではよく知られており、また、例えば、以下の文献に記載されている: Comprehensive Organic Functional Group Transformations, eds. A.R. Katritzky, O. Meth-Cohn, and C.W. Rees (Elsevier Science Ltd., Oxford, 1995), Comprehensive Organic Chemistry, eds. D. Barton and W.D. Ollis (Pergamon Press, Oxford, 1979), 及び Comprehensive Organic Transformations, R.C. Larock (VCH Publishers Inc., New York, 1989)。
【0060】
好ましくは、本発明の調製方法を用いて、式(IA)で表される化合物、特に、ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートを調製する。
【0061】
式(IIA)、式(IIB)及び式(IIC)で表される化合物の調製については、WO99/21855に記載されている。本発明の好ましい実施形態では、プレウロムチリンをメタンスルホニルクロリドと反応させることにより、式(IIA)[式中、RLはCH3SO2Oである]で表される化合物を調製する。
【0062】
式(III)で表されるチオール化合物は、対応する式(IV):
2A-(CH2)m-X (IV)
[式中、
R2Aは、式(IA)及び式(IB)に関して定義したR2であるか、又はR2に変換可能な基であり;
mは、式(IA)及び式(IB)に関して定義したとおりであり、
Xは、直接的又は間接的にチオールに変換可能な官能基である]
で表される対応する化合物から、慣習的な官能基相互変換方法を用いてXをチオール基に変換することにより、容易に調製することができる。
【0063】
適切なX基の例としては、ヒドロキシ基、キサントゲン酸基、チオ酢酸基、及びメシラートなどの脱離基などを挙げることができる。
【0064】
好ましくは、式(III)で表されるチオール化合物は、対応するキサントゲン酸化合物から新規調製方法で調製する。
【0065】
かくして、別の実施形態では、本発明は、上記で定義した式(III)で表される化合物を調製する方法を提供し、ここで、該調製方法は、式(IV)[式中、Xは、-SCSOC(1-6)アルキルである]で表される化合物を加水分解することを含む。
【0066】
好ましくは、該加水分解は、無機塩基(例えば、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム)を溶媒(例えば、エタノール、エタノール/トルエン又はエタノール/MIBK)に溶解させた溶液を用いて実施する。
【0067】
好ましくは、キサントゲン酸基Xは、-SCSOC(1-4)アルキルであり、特に、-SCSOCH2CH3である。
【0068】
あるいは、式(III)で表されるチオール化合物は、対応するチオ酢酸エステルから、アルコール溶媒中のアルカリ金属アルコキシド(例えば、エタノール中のカリウムt-ブトキシド又はナトリウムメトキシド)を用いて加水分解することにより調製することができる。
【0069】
好ましくは、式(III)で表されるチオール化合物は、単離せずに、未精製の反応生成物として次のステップで使用する。必要な場合には、該チオール化合物は、酸付加塩(例えば、塩酸塩)として単離することにより、比較的純粋な形態で調製することができる。該チオール化合物は、ナトリウム塩として単離することも可能である。
【0070】
別の実施形態では、本発明は、上記で定義した式(IA)又は式(IB)で表される化合物を調製する方法を提供し、ここで、該調製方法は、初期段階として、式(IV)[式中、Xは、上記で定義したキサントゲン酸基である]で表される化合物から式(III)で表されるチオール化合物を調製することを含む。得られたチオールは、次いで、上記で定義した相間移動触媒による調製方法で式(IIA/B/C)で表される化合物と反応させることができるか、又はWO99/21855に記載されているように、2-プロパノール、エタノール、メタノール、N,N-ジメチルホルムアミド又はテトラヒドロフランなどの溶媒中で、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、水素化ナトリウム、ナトリウムヘキサメチルジ-シラジド又はリチウムヘキサメチルジ-シラジドなどの無機塩基の存在下、式(IIA/B/C)で表される化合物と反応させることができる。
【0071】
別の実施形態では、本発明は、式(III)で表される化合物の酸付加塩を提供する。好ましくは、該酸付加塩は塩酸塩である。
【0072】
別の実施形態では、本発明は、式(III)で表される化合物のナトリウム塩を提供する。
【0073】
式(IV)[式中、Xは、-SCSOC(1-6)アルキルである]で表されるキサントゲン酸化合物は、式(IV)[式中、Xは、脱離基、例えば、メシラートである]で表される対応する化合物から、トルエン、MIBK、アセトン、エタノール、THF、ジオキサン、DMSO、水又はピリジンなどの溶媒(特に、トルエン)中で、キサントゲン酸ナトリウム又はキサントゲン酸カリウムなどのキサントゲン酸塩と反応させることにより容易に調製することができる。好ましくは、過剰量のキサントゲン酸塩を使用する。一実施形態では、1.1〜3当量(モルによる)、例えば、1.1〜2当量、例えば、約1.2当量のキサントゲン酸塩を使用する。さらに別の実施形態では、1.3〜3当量、例えば、約1.5当量のキサントゲン酸塩を使用する。該反応は、典型的には、25℃〜50℃の温度で実施する。一実施形態では、25℃〜35℃、例えば、約30℃の温度を用いる。さらに別の実施形態では、35℃〜40℃の温度を用いる。式(IV)で表されるメシラート化合物は、ジクロロメタン中で、トリエチルアミン又はヒューニッヒ塩基(ジイソプロピルエチルアミン)の存在下、対応するアルコールをメタンスルホニルクロリドと反応させることにより調製することができる。
【0074】
好ましくは、式(IV)で表されるメシラート化合物は、「ワンポット」合成において、式(IV)で表されるキサンテート中間体を介して式(IA)又は式(IB)のプレウロムチリン化合物へと運ばれる。
【0075】
別の実施形態では、本発明は、上記で定義した式(IA)又は式(IB)で表される化合物を調製する方法を提供し、ここで、該調製方法は、初期段階として、式(IV)[式中、Xは、上記で定義したメシラート基である]で表される化合物から式(IV)[式中、Xは、キサントゲン酸基である]で表される化合物を調製することを含む。
【0076】
別の実施形態では、本発明は、上記で定義した式(IA)又は式(IB)で表される化合物を調製する方法を提供し、ここで、該調製方法は、初期段階として、式(IV)[式中、Xは、上記で定義したヒドロキシ基である]で表される化合物から式(IV)[式中、Xは、メシラート基である]で表される化合物を調製することを含む。
【0077】
別の実施形態では、本発明は、式(IV)[式中、Xは、-SCSOC(1-6)アルキルである]で表される化合物又はその酸付加塩、例えば、トロピンエチルキサンテートの酸付加塩、特に、マレイン酸塩を提供する。
【0078】
式(IV)で表されるチオ酢酸化合物は、対応するメシラートから新規調製方法で容易に調製することができる。従って、別の実施形態では、本発明は、式(IV)[式中、Xは、-SCOC(1-6)アルキルである]で表される化合物を調製する方法を提供し、ここで、該調製方法は、式(IV)[式中、Xは、脱離基(例えば、メシラート)である]で表される化合物を、溶媒(例えば、アセトン、さらに好ましくは、アセトニトリル/水又はピリジン/水)中で、30℃〜60℃の温度(好ましくは、35℃〜50℃の温度)で、チオ酢酸塩(例えば、チオ酢酸カリウム)と反応させることを含む。
【0079】
あるいは、式(IV)で表されるチオ酢酸化合物は、WO99/21855に記載されているように、活性化系(例えば、トリフェニルホスフィン/ジ-イソ-プロピルアゾジカルボキシラート)の存在下でチオール酢酸で処理することにより、式(IV)[式中、Xは、ヒドロキシである]で表される対応する化合物から直接調製することができる。
【0080】
好ましい実施形態では、本発明の調製方法を用いて、ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテート(式(C)で表される化合物)を調製する。最終生成物で必要とされるエキソ立体化学を提供するために、式(III)で表される化合物として、典型的には、トロピン-3-チオールを使用する。本発明者らは、チオアセタート中間体を経由する別の合成経路を用いた場合の約25%(プレウロムチリン由来)及び9%(トロピン由来)と比較して、開発規模において、キサンテート中間体を経由する好ましい合成経路により、約70%(プレウロムチリン由来)及び35%(トロピン由来)の最終化合物の収率が得られるということを見いだした。
【0081】
式(IA)又は式(IB)で表される不純物混入化合物(特に、ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテート)は、有機溶媒(例えば、酢酸エチル)と酸性水相の間で分配させること、該酸性水相を保持すること、有機溶媒(例えば、ジクロロメタン)と混合させること、次いで、該水相を無機塩基(例えば、炭酸ナトリウム)で塩基性とすること、及び最後に、該有機溶媒中に逆抽出することを含むプロセスにより精製することができる。この有機溶液は、次いで、減圧下に濃縮することが可能であり、それにより得られた残渣を、次いで、結晶化させて、純粋な結晶質生成物を得ることができる。ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートに関し、好ましい溶媒系は、イソプロパノール/水である。
【0082】
あるいは、式(IA)又は式(IB)で表される不純物混入化合物は、適切な溶媒(例えば、エタノール/水)、アルコール(例えば、イソプロパノール)又はエステル(例えば、酢酸イソプロピル)から再結晶させることにより精製することができる。
【0083】
WO99/21855には、小規模反応におけるムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートの調製について記述されており、該調製では、生成物はそれ以上精製することなくクロマトグラフィーにより単離している。しかしながら、本発明の調製方法で調製した化合物は、結晶質形態で存在し得、また、場合により、水和又は溶媒和した形態で存在し得る。さらに、本発明の調製方法で調製した式(IA)又は式(IB)で表される化合物の一部の結晶質形態は、多形体として存在し得る。そのような多形体は、本発明に包含される。
【0084】
かくして、別の実施形態では、本発明は、結晶質ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートを提供する。
【0085】
さらに別の実施形態では、本発明は、
(i) ATR(減衰全反射)で測定して、3234cm-1、1735cm-1及び1725cm-1にピークを含んでいる赤外スペクトル;
及び/又は
(ii) 125〜127℃の温度で開始する吸熱を示すDSC(示差走査熱量測定)プロフィール;
及び/又は
(iii) 約9.6、約12.8、約13.9及び約19.6にピークを有するXRPD(X線粉末回折)パターン;
を示すことを特徴とする、結晶質ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートを提供する。
【0086】
好ましい一実施形態では、本発明は、図1に実質的に一致する赤外スペクトルを示すことを特徴とする結晶質ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートを提供する。
【0087】
好ましい別の実施形態では、本発明は、図2に実質的に一致するDSCプロフィールを示すことを特徴とする結晶質ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートを提供する。
【0088】
好ましいさらに別の実施形態では、本発明は、図3に実質的に一致するXRPDパターンを示すことを特徴とする結晶質ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートを提供する。
【0089】
本発明の第二の態様によれば、本発明者らは、ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートの特定の塩が、それらを薬物療法(特に、抗菌療法)で使用するのに特に適したものとし、また、医薬組成物の調製において使用するのに特に適したものとするような利点を有していることを見いだした。特に、ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートのヒドロスクシナート塩は、安定な非吸湿性の結晶質形態で容易に調製され、水に対する溶解度が高く、及び適する局所用製剤として投与された場合に重大な刺激を引き起こすことがない。
【0090】
かくして、本発明の一実施形態では、酢酸塩、p-アミノ安息香酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、ビスメチレンサリチル酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、ホウ酸塩、エデト酸カルシウム塩、カンシル酸塩、炭酸塩、クラブラン酸塩、クエン酸塩、シクロヘキシルスルファミン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシラート塩、エストラート塩、エシラート塩、エタンジスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプタート塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコール酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘキシルレゾルシン酸塩、ヒドラバミン塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロフマラート塩、リン酸水素塩、ヒドロヨージド塩、ヒドロマレアート塩、ヒドロスクシナート塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、イセチオン酸塩、イタコン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシラート塩、メチルブロミド塩、メチル硝酸塩、メチル硫酸塩、マレイン酸一カリウム塩、粘液酸塩、ナプシル酸塩、硝酸塩、N-メチルグルカミン塩、シュウ酸塩、オキサロ酢酸塩、パモ酸塩(エンボン酸塩)、パルマート塩、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ピルビン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、プロピオン酸塩、糖酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシラート塩、トリエチオダイド塩、トリフルオロ酢酸塩及び吉草酸塩から選択されるムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートの製薬上許容される塩又はその溶媒和物が提供される。
【0091】
本発明の別の実施形態では、酢酸塩、p-アミノ安息香酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、ビスメチレンサリチル酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、ホウ酸塩、エデト酸カルシウム塩、カンシル酸塩、炭酸塩、クラブラン酸塩、クエン酸塩、シクロヘキシルスルファミン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシラート塩、エストラート塩、エシラート塩、エタンジスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプタート塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコール酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘキシルレゾルシン酸塩、ヒドラバミン塩、臭化水素酸塩、ヒドロフマラート塩、リン酸水素塩、ヒドロヨージド塩、ヒドロマレアート塩、ヒドロスクシナート塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、イセチオン酸塩、イタコン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マンデル酸塩、メチルブロミド塩、メチル硝酸塩、メチル硫酸塩、マレイン酸一カリウム塩、粘液酸塩、ナプシル酸塩、硝酸塩、N-メチルグルカミン塩、シュウ酸塩、オキサロ酢酸塩、パモ酸塩(エンボン酸塩)、パルマート塩、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ピルビン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、プロピオン酸塩、糖酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシラート塩、トリエチオダイド塩、トリフルオロ酢酸塩及び吉草酸塩から選択されるムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートの製薬上許容される塩又はその溶媒和物が提供される。
【0092】
本発明により好ましい塩としては、ヒドロスクシナート塩、ヒドロフマラート塩、ヒドロマレアート塩及びトシラート塩などを挙げることができ、特に、ヒドロスクシナート塩、ヒドロフマラート塩及びトシラート塩を挙げることができる。
【0093】
本発明により特に好ましい塩は、ヒドロスクシナート塩である。
【0094】
疑念を回避するために、本明細書で使用される場合、ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートのヒドロスクシナート塩は、1:1の化学量論的な比のムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートとコハク酸の間で形成された塩である。同様に、ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートのヒドロフマラート塩及びヒドロマレアート塩は、1:1の化学量論的な比のムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートとそれぞれフマル酸又はマレイン酸の間で形成された塩である。
【0095】
本発明の塩は、結晶質形態又は非結晶質形態であり得る。また、本発明の塩は、場合により、水和又は溶媒和していてもよい。上記で論じたように、有機化学の当業者は、多くの有機化合物が溶媒と錯体を形成することができ、その溶媒の中で反応するか又はその溶媒から沈澱するか若しくは結晶化するということを理解するであろう。これらの錯体は、「溶媒和物」として知られている。例えば、水との錯体は「水和物」として知られている。本発明の塩の溶媒和物は、本発明の範囲内である。本発明は、その範囲内に、化学量論的な水和物、及び種々の量の水を含んでいる塩を包含する。
【0096】
さらに、本発明の塩の一部の結晶質形態は、多形体として存在することができ、それらは、本発明に包含される。
【0097】
かくして、本発明の別の実施形態では、結晶質形態にある、酢酸塩、p-アミノ安息香酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、ビスメチレンサリチル酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、ホウ酸塩、エデト酸カルシウム塩、カンシル酸塩、炭酸塩、クラブラン酸塩、クエン酸塩、シクロヘキシルスルファミン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシラート塩、エストラート塩、エシラート塩、エタンジスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプタート塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコール酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘキシルレゾルシン酸塩、ヒドラバミン塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロフマラート塩、リン酸水素塩、ヒドロヨージド塩、ヒドロマレアート塩、ヒドロスクシナート塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、イセチオン酸塩、イタコン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシラート塩、メチルブロミド塩、メチル硝酸塩、メチル硫酸塩、マレイン酸一カリウム塩、粘液酸塩、ナプシル酸塩、硝酸塩、N-メチルグルカミン塩、シュウ酸塩、オキサロ酢酸塩、パモ酸塩(エンボン酸塩)、パルマート塩、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ピルビン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、プロピオン酸塩、糖酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシラート塩、トリエチオダイド塩、トリフルオロ酢酸塩及び吉草酸塩から選択されるムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートの製薬上許容される塩又はその溶媒和物が提供される。
【0098】
本発明による好ましい結晶質塩としては、ヒドロスクシナート塩、ヒドロフマラート塩、ヒドロマレアート塩及びトシラート塩などを挙げることができ、特に、ヒドロスクシナート塩、ヒドロフマラート塩及びトシラート塩を挙げることができる。
【0099】
本発明による特に好ましい結晶質塩は、ヒドロスクシナート塩である。
【0100】
別の実施形態では、本発明は、
(i) ATR(減衰全反射)で測定して、3470cm-1、1731cm-1及び1711cm-1にピークを含んでいる赤外スペクトル;
及び/又は
(ii) 168〜170℃の温度で開始する吸熱を示すDSC(示差走査熱量測定)プロフィール;
及び/又は
(iii) 約13.4、約14.4及び約20.7にピークを有するXRPD(X線粉末回折)パターン;
を示すことを特徴とする、ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートの結晶質ヒドロスクシナート塩を提供する。
【0101】
別の実施形態では、本発明は、
(i) ATR(減衰全反射)で測定して、3487cm-1、1731cm-1及び1710cm-1にピークを含んでいる赤外スペクトル;
及び/又は
(ii) 243〜245℃の温度で開始する吸熱を示すDSC(示差走査熱量測定)プロフィール;
及び/又は
(iii) 約13.5、約14.4及び約20.5にピークを有するXRPD(X線粉末回折)パターン;
を示すことを特徴とする、ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートの結晶質ヒドロフマラート塩を提供する。
【0102】
別の実施形態では、本発明は、
(i) ATR(減衰全反射)で測定して、3368cm-1、1729cm-1及び1709cm-1にピークを含んでいる赤外スペクトル;
及び/又は
(ii) 186〜188℃の温度で開始する吸熱を示すDSC(示差走査熱量測定)プロフィール;
及び/又は
(iii) 約13.5及び約20.7にピークを有するXRPD(X線粉末回折)パターン;
を示すことを特徴とする、ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートの結晶質ヒドロマレアート塩を提供する。
【0103】
別の実施形態では、本発明は、
(i) ATR(減衰全反射)で測定して、3394cm-1、1735cm-1及び1715cm-1にピークを含んでいる赤外スペクトル;
及び/又は
(ii) 122〜124℃の温度で開始する吸熱を示すDSC(示差走査熱量測定)プロフィール;
及び/又は
(iii) 約14.0、約16.2、約18.5及び約22.1にピークを有するXRPD(X線粉末回折)パターン;
を示すことを特徴とする、ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートの結晶質トシラート塩を提供する。
【0104】
好ましい一実施形態では、本発明は、図4に実質的に一致する赤外スペクトルを示すことを特徴とするムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートの結晶質ヒドロスクシナート塩を提供する。
【0105】
好ましい別の実施形態では、本発明は、図5に実質的に一致するDSCプロフィールを示すことを特徴とするムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートの結晶質ヒドロスクシナート塩を提供する。
【0106】
好ましいさらに別の実施形態では、本発明は、図6に実質的に一致するXRPDパターンを示すことを特徴とするムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートの結晶質ヒドロスクシナート塩を提供する。
【0107】
本発明の塩は、適切には、実質的に純粋な形態で提供され、例えば、少なくとも50%純粋、適切には、少なくとも60%純粋、有利には、少なくとも75%純粋、好ましくは、少なくとも85%純粋、さらに好ましくは、少なくとも95%純粋、特に、少なくとも98%純粋な形態で提供される。ここで、全てのパーセンテージは、重量/重量で計算されている。不純であるか又はあまり純粋でない形態の本発明の塩は、例えば、同じ塩のさらに純粋な形態を調製するのに用いることができるか、又は製薬用途に適する異なった塩を調製するのに用いることができる。
【0108】
本発明の塩は、慣習的な方法で調製することができる。
【0109】
本発明のさらに別の実施形態では、上記で定義したムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートの製薬上許容される塩又はその溶媒和物を調製する方法が提供され、ここで、該調製方法は、対応する酸の溶液又は懸濁液を、ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートを適切な溶媒に溶解させた溶液と混合することを含む。
【0110】
本発明の調製方法で使用するのに適する溶媒としては、イソプロパノールなどのアルコール類、及び酢酸エチルなどのエステル類などがある。
【0111】
好ましい実施形態では、該酸とムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートを別々にイソプロパノールに溶解させ、必要な場合には45℃〜55℃に加熱し、次いで、それらの溶液を混合する。得られた混合物を、典型的には、結晶化が起こるまで撹拌する。
【0112】
ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートは、WO99/21855に記載されている手順により調製することができる。好ましくは、該ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートは、上記で記載した調製方法で調製する。
【0113】
本発明の塩は、抗菌特性を有しており、従って、治療において有用であり、特に、動物、特に、ヒトを包含する哺乳動物、特に、ヒト及び家畜(農業用家畜を包含する)における微生物感染を治療するのに有用である。本発明の塩を用いて、例えば、Staphylococcus aureusStaphylococcus epidermidisEnterococcus faecalisStreptococcus pyogenesStreptococcus agalactiaeStreptococcus pneumoniaeHaemophilus sp.Neisseria sp.Legionella sp.Chlamydia sp.Moraxella catarrhalisMycoplasma pneumoniae、及びMycoplasma gallisepticum などを包含するグラム陽性及びグラム陰性の細菌及びマイコプラズマにより引き起こされる感染を治療することができる。
【0114】
本発明は、さらにまた、動物における微生物感染、特に、ヒトにおける微生物感染及び家畜哺乳動物における微生物感染を治療する方法も提供し、ここで、該方法は、そのような治療が必要な患者に、本発明の塩若しくはその溶媒和物を投与することを含むか、又は本発明の塩若しくは溶媒和物を含んでいる組成物を投与することを含む。
【0115】
本発明は、さらに、微生物感染の治療において使用するための薬剤の製造における、本発明の塩又はその溶媒和物の使用を提供する。
【0116】
本発明の塩を用いて、局所適用により、皮膚感染及び軟組織感染、例えば、二次的に感染した皮膚疾患(dermotoses)又は外傷性障害及び膿痂疹及び座瘡などを治療することができる。従って、別の実施形態では、本発明は、皮膚感染及び軟組織感染の治療、並びにヒトにおける座瘡の治療において使用するための局所投与に適合させた薬剤の製造における、本発明の塩又はその溶媒和物の使用を提供する。
【0117】
治療について言及されている場合、それが、急性期治療又は予防を包含し、また、確定した症状の緩和も包含することは理解されるであろう。
【0118】
典型的には、医師は、個々の被験者に最も適するであろう正確な投与量を決定する。任意の特定の個体についての特定の用量レベル及び投与回数は変わり得るが、それらは、用いる特定の化合物の活性、該化合物の代謝安定性及び作用時間の長さ、年齢、体重、一般的な健康状態、性、規定食、投与方法及び投与時間、排泄速度、薬物の組合せ、特定の状態の重症度及び該個体が受けている療法などを包含するさまざまな要因に依存する。
【0119】
本発明の塩は、適切には、体重1kg当たり、1.0〜50mgの1日用量で患者に投与し得る。ヒト成人(体重約70kg)については、50〜3000mg、例えば、約1500mgの本発明化合物を毎日投与し得る。適切には、ヒト成人に対する投与量は、1日当たり、5〜20mg/kgである。しかしながら、標準的な臨床的実施に従い、さらに多い投与量又はさらに少ない投与量も用い得る。
【0120】
治療において使用するために、本発明の塩は、原料の化学薬品として投与することもできるが、例えば、薬物を意図されている投与経路及び標準的な薬務に関連して選択された製薬上許容される適切な賦形剤、希釈剤又は担体と混合して、該活性成分を医薬製剤として供するのが好ましい。
【0121】
より詳細には、本発明の塩及び組成物は、他の抗生物質から類推して、ヒト用医薬又は獣医薬としての使用に関して都合のよい何れかの方法で投与するために製剤し得る。
【0122】
従って、一実施形態では、本発明は、製薬上許容される担体及び/又は賦形剤と一緒に本発明の少なくとも1種類の塩又はその溶媒和物を含んでいる医薬組成物又は製剤を提供する。該担体及び/又は賦形剤は、当該製剤中の他の成分と適合性であり且つ当該製剤を受けるレシピエントに対して有害ではないという意味において、「許容される」ものでなくてはならない。
【0123】
別の実施形態では、本発明は、製薬上許容される担体及び/又は賦形剤と一緒に活性成分として本発明の少なくとも1種類の塩又はその溶媒和物を含んでいる、治療で使用するための、特に、抗菌活性化合物により改善され得る状態を患っているヒト又は動物の患者の治療で使用するための医薬組成物を提供する。
【0124】
別の実施形態では、本発明は、治療上有効量の本発明の塩又はその溶媒和物及び製薬上許容される賦形剤、希釈剤又は担体(それらの組合せを包含する)を含んでいる医薬組成物を提供する。
【0125】
さらに、本発明により、医薬組成物を調製する方法が提供され、ここで、該方法は、製薬上許容される賦形剤、希釈剤及び/又は担体と一緒に本発明の少なくとも1種類の塩又はその溶媒和物を混合することを含む。
【0126】
本発明の医薬組成物は、ヒト用医薬又は獣医薬としてヒト又は動物に用いるためのものであることができ、典型的には、任意の1種類以上の製薬上許容される賦形剤、希釈剤又は担体を含んでいる。治療用途に許容される担体又は希釈剤は、製薬技術分野ではよく知られており、また、例えば、以下の文献に記載されている: Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co. (A.R. Gennaro edit. 1985)。製薬用の希釈剤、賦形剤又は担体は、意図されている投与経路及び標準的な薬務に関連して選択することができる。本発明の医薬組成物は、賦形剤、希釈剤若しくは担体として、又は賦形剤、希釈剤若しくは担体に加えて、適切な任意の1種類以上の結合剤、1種類以上の滑沢剤、1種類以上の懸濁化剤、1種類以上のコーティング剤、1種類以上の可溶化剤、1種類以上の保存剤、1種類以上の安定剤、1種類以上の染料、1種類以上の矯味矯臭薬及び1種類以上の抗酸化剤を含有し得る。保存剤の例としては、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸及びp-ヒドロキシ安息香酸エステルなどを挙げることができる。
【0127】
一部の実施形態では、本発明の薬剤は、シクロデキストリンと組み合わせて用いることもできる。シクロデキストリンは、薬物分子と包接錯体及び非包接錯体を形成することが知られている。薬物-シクロデキストリン錯体が形成されると、薬物分子の溶解性、溶出速度、生物学的利用能及び/又は安定性が改変され得る。薬物-シクロデキストリン錯体は、大部分の投与形態及び投与経路にとって一般に有用である。シクロデキストリンは、薬物と直接的に錯体を形成するのに代わる手段として、補助的な添加剤、例えば、担体、希釈剤又は可溶化剤などとして用いることができる。α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン及びγ-シクロデキストリンは、最も一般的に使用されており、適切な例は、WO91/11172、WO94/02518及びWO98/55148に記載されている。
【0128】
本発明の塩は、既知製粉方法(例えば、湿式粉砕)を用いて製粉して、錠剤の形成及び他の剤型に適した粒径とすることができる。本発明化合物の微粉砕(ナノ粒子状)調製物は、当技術分野で既知の調製方法により調製することができる。例えば、国際出願WO02/00196(SmithKline Beecham)を参照されたい。
【0129】
投与(送達)の経路としては、限定するものではないが、以下のものの1種類以上が包含される:経口(例えば、錠剤若しくはカプセル剤として、又は摂取可能な溶液として)、局所、粘膜(例えば、吸入用の鼻内噴霧又はエーロゾルとして)、鼻、非経口(例えば、注射可能な形態で)、胃腸、髄腔内、腹腔内、筋肉内、静脈内、子宮内、眼内、皮内、頭蓋内、気管内、腟内、脳室内、脳内、皮下、眼(硝子体内又は房内)、経皮、直腸、口腔、硬膜外及び舌下。好ましくは、投与経路は局所である。
【0130】
本発明の塩の全てが同じ経路で投与される必要がないことは理解されるべきである。同様に、該組成物が2種類以上の活性成分を含んでいる場合、それらの成分は異なった経路で投与することができる。例えば、一部の用途に関しては、該薬剤は経口で投与するのが好ましく、別の用途に関しては、該薬剤は、局所投与するのが好ましい。
【0131】
種々の送達系に応じて、組成物/製剤の種々の要件が存在し得る。一例として、本発明の医薬組成物は、ミニポンプを用いて送達されるように製剤し得るか、又は粘膜経路で送達されるように、例えば、吸入用の鼻内噴霧若しくはエーロゾル又は摂取可能な溶液として製剤し得るか、又は非経口的に送達されるように製剤し得る(その場合、該組成物は、例えば、静脈内経路、筋肉内経路若しくは皮下経路により送達されるように、注射可能な形態で製剤される)。あるいは、該製剤は、両方の経路で送達されるようにデザインすることもできる。好ましい実施形態では、本発明の薬剤は局所投与する。従って該薬剤は、好ましくは、局所的に送達するのに適した形態にある。
【0132】
本発明の塩及び組成物は、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、ロゼンジ剤、クリーム剤、シロップ剤、スプレー剤、オブル剤(ovules)、エリキシル剤又は液体調製物(例えば、溶液剤若しくは懸濁液剤)の形態で投与することができる(例えば、経口的に又は局所的に)。ここで、該液体調製物は、経口的に使用するために製剤し得るか、又は注射若しくは注入により非経口的に投与するための無菌形態で製剤することができ、また、それらは、即時放出、遅延放出、調節放出、持続放出、パルス放出又は制御放出により適用するための矯味矯臭剤又は着色剤を含有し得る。
【0133】
局所投与用の本発明組成物は、例えば、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、溶液剤、散粉剤、眼軟膏剤、点眼剤、点耳剤、点鼻薬、鼻内スプレー剤、含浸包帯剤及びエーロゾル剤の形態で投与することができ、例えば、保存剤、薬物の浸透を補助する溶媒、並びに軟膏剤及びクリーム剤における皮膚軟化剤などの適切な慣習的な添加剤を含有し得る。そのような局所用製剤は、さらにまた、適合性の慣習的な担体、例えば、クリーム基剤又は軟膏基剤、ローション剤用のエタノール又はオレイルアルコール、及びスプレー剤用の水性基剤なども含有し得る。そのような担体は、該製剤の約1重量%〜約98重量%を構成することができ、より一般的には、該製剤の約80重量%までを構成する。例えば、本発明の薬剤は、例えば、鉱油、流動パラフィン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン化合物、乳化ろう及び水の内の1種類以上の混合物中に懸濁又は溶解させた状態で本発明の活性化合物を含んでいる適切な軟膏剤として製剤することができる。あるいは、本発明の薬剤は、例えば、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリエチレングリコール、流動パラフィン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリールアルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコール及び水の内の1種類以上の混合物に懸濁又は溶解している適切なローション剤又はクリーム剤として、製剤することができる。
【0134】
局所投与用の本発明組成物は、上記のものに加えて、ステロイド系抗炎症薬(例えば、ベタメサゾン)も含有し得る。
【0135】
本発明の組成物は、例えば皮膚用パッチを用いて、皮膚に投与することができるか又は経皮的に投与することもできる。しかしながら、好ましくは、本発明の組成物は、全身感染よりはむしろ局在性の非全身感染を治療するために、局所的に使用する。
【0136】
本発明の組成物は、さらにまた、 眼内経路でも投与することができる。眼での使用に関しては、本発明化合物は、pHを調節した等張性の無菌生理的食塩水中の微粒懸濁液として製剤することができるか、又は好ましくは、pHを調節した等張性の無菌生理的食塩水中の溶液として、場合により塩化ベンザルコニウムなどの保存剤と組み合わせて、製剤することができる。あるいは、それらは、ペトロラタムなどの軟膏として製剤することもできる。
【0137】
本発明の塩又は組成物は、適切には、抗菌有効量で患者に投与する。
【0138】
本発明の組成物は、適切には、投与方法に応じて、0.001重量%〜60重量%(該組成物の総重量基準)、好ましくは、(スプレー剤組成物以外について)10重量%〜60重量%(該組成物の総重量基準)の本発明の塩を含有し得る。
【0139】
本発明の組成物を単位投与形態で(例えば、錠剤として)供する場合、各単位用量は、適切には、25〜1000mgの本発明の塩、好ましくは、50〜500mgの本発明の塩を含有し得る。
【0140】
本発明の塩は、さらにまた、別の治療薬と組み合わせて用いることも可能である。かくして、本発明は、さらに別の態様において、本発明化合物又はその製薬上許容される誘導体とさらに別の治療薬を一緒に含む組合せを提供する。
【0141】
本発明化合物又はその製薬上許容される誘導体を、同一の疾患状態に対して活性を示す第二の治療薬と組み合わせて用いる場合、各化合物の用量は、該化合物を単独で使用した場合の用量とは異なり得る。当業者は、適切な投与量を容易に認識し得る。治療で用いるのに必要とされる本発明化合物の量は、治療対象の状態の種類、及び患者の年齢と状態に応じて変わり、最終的には、担当する医師又は獣医師の裁量であるということは理解されるであろう。本発明の化合物は、別の抗菌薬、例えば、ペニシリン、セファロスポリン、スルホンアミド又はエリスロマイシンなどと組み合わせて用いることができる。
【0142】
上記で言及した組合せは、好都合には、医薬製剤の形態で使用するために供することができる。従って、製薬上許容される担体又は賦形剤と一緒に上記で定義した組合せを含んでいる医薬製剤は、本発明のさらなる態様を構成する。そのような組合せの個々の成分は、別々の医薬製剤に含ませるか又は複合医薬製剤(combined pharmaceutical formulation)に含ませて、慣習的な何れかの経路で、順次投与することができるか又は同時に投与することができる。
【0143】
投与を順次に行う場合、本発明化合物又は第二の治療薬のいずれかを最初に投与し得る。投与を同時に行う場合、該組合せは、同一の医薬製剤に含ませて投与することができるか、又は異なった医薬製剤に含ませて投与することができる。
【0144】
2種類の当該成分を同一の製剤中で組み合わせる場合、それらの成分は、安定でなければならないこと、また、互いに適合しなくてはならないこと、及び製剤中の他の成分と適合しなくてはならないことは理解されるであろう。それらは、別々に製剤される場合、好都合にはそのような化合物について当技術分野で知られているような方法で、都合のよい任意の製剤として供することができる。
【0145】
本発明の第三の態様によれば、本発明者らは、ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテート又はその製薬上許容される塩若しくは溶媒和物が、特に局在性の非全身感染を治療するために、局所投与に特に適しているということを見いだした。
【0146】
かくして、一実施形態では、本発明は、ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテート又はその製薬上許容される塩若しくは溶媒和物及び製薬上許容される賦形剤、希釈剤又は担体を含んでいる、局所投与用医薬組成物を提供する。
【0147】
適切な局所用組成物については、上記で定義したとおりである。
【0148】
本発明組成物中での使用に適する塩及び溶媒和物についても、上記で説明したとおりである。好ましくは、該組成物は、ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテート、又はムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートのヒドロスクシナート塩、又はそれらの溶媒和物を含有する。
【0149】
別の実施形態では、本発明は、動物における微生物感染、特に、ヒトにおける微生物感染及び家畜哺乳動物における微生物感染を治療する方法を提供し、ここで、該方法は、ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテート又はその製薬上許容される塩若しくは溶媒和物を局所投与することを含む。
【0150】
さらに、本発明は、微生物感染の治療において使用するための薬剤(ここで、該薬剤は局所投与される)の製造における、ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテート又はその製薬上許容される塩若しくは溶媒和物の使用を提供する。
【0151】
本発明の第四の態様によれば、本発明者らは、有利な化粧品特性を有し、ザラザラしておらず、むしろ滑らかであり、それらの治療効果を発揮するのに充分な放出速度を示す、ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテート又はその製薬上許容される塩若しくは溶媒和物を含有する局所投与用の医薬組成物又は製剤を見いだした。
【0152】
かくして、一実施形態では、本発明は、
(a) D90が15〜40μmである粒子形態にあるムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテート又はその製薬上許容される塩若しくは溶媒和物、
及び
(b) 軟膏基剤
を含んでいる、局所投与用医薬組成物を提供する。
【0153】
本発明の組成物は、ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテート又はその製薬上許容される塩若しくは溶媒和物の粒子を含有する。本発明の組成物中での使用に適する塩及び溶媒和物については、上記で説明したとおりである。好ましくは、本発明の組成物は、ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテート又はムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートのヒドロスクシナート塩又はそれらの溶媒和物の粒子を含有する。
【0154】
本明細書で使用される場合、用語「D90」は、粒子の90%の粒径がそれよりも小さな値を示す粒径を意味する。好ましくは、本発明組成物中の粒子のD90は、15〜25μmである。
【0155】
好ましい実施形態では、本発明組成物中の粒子は、5〜15μmのD50も有する。本明細書で使用される場合、用語「D50」は、メジアン粒径(median particle diameter)を意味する。
【0156】
粒径分布の測定方法は、よく知られている。好ましくは、本発明組成物中の粒子の粒径分布は、レーザー回折法を用いて測定する。適切なレーザー回折装置としては、例えば、Sympatec UK and Ireland, Bury Business Centre, Kay Street, Bury BL9 6BU, United Kingdom (email:sympatec.uk@btinternet.com.)から入手可能な Sympatec HELOS/QUIXEL 又は Malvern Instruments, Malvern, UK.から入手可能な Malvern Mastersizer などがある。レーザー回折による粒径分布の測定についての一般的な説明は、以下の文献中に見られる: Physical Characterization of Pharmaceutical Solids, Drugs and Pharmaceutical Sciences, Volume 70, pages 175 to 178。
【0157】
本発明の組成物で使用するのに適する軟膏基剤は当技術分野では知られており、そのような軟膏基剤としては、例えば、以下のものを挙げることができる: White Petrolatum USP, Hydrophilic Petrolatum USP, Anhydrous Lanolin USP, Lanolin USP, Hydrous lanolin USP, Aquaphor(登録商標)(Beiersdorfの登録商標), Eucerin(登録商標)(Beiersdorfの登録商標), ACTIBASE(登録商標)(Santeの登録商標) 及び Polyethylene Glycol Ointment USP。好ましくは、該軟膏基剤は、ペトロラタムであり(例えば、以下の文献を参照されたい: Handbook of Pharmaceutical Excipients, Fourth Edition, Edited by R.C. Rowe, P.J. Sheskey and P.J. Weller, Published by Pharmaceutical Press and the American Pharmaceutical Association, page 421 to 423)、特に、White Petrolatum USPである。
【0158】
本発明の組成物は、典型的には、該軟膏基剤中に、5%w/wまでの粒子を含んでおり、好ましくは、0.5〜2%w/w、さらに好ましくは、0.5〜1%w/w、最も好ましくは、約1%w/wの粒子を含んでいる。
【0159】
別の実施形態では、本発明は、上記で定義した局所投与用医薬組成物を調製する方法を提供し、ここで、該調製方法は、
(a) D90が15〜40μmである粒子形態にあるムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテート又はその製薬上許容される塩若しくは溶媒和物、及び
(b) 軟膏基剤
を混合することを含む。
【0160】
該軟膏基剤としてペトロラタムを使用する場合、該ペトロラタムは、好ましくは、60℃〜70℃の温度に加熱した後、混合する。
【0161】
ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートは、WO99/21855に記載されている手順により調製することができる。好ましくは、ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートは、上記で記述した調製方法で調製する。ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートの製薬上許容される塩及び溶媒和物も、同様に、好ましくは、上記で記載したとおりである。
【0162】
ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテート又はその製薬上許容される塩若しくは溶媒和物の粒子は、例えば、既知製粉手順を用いて粉砕して、本発明組成物中での使用に適する粒径を得ることにより調製し得る。本発明により使用するのに適する製粉機のタイプは、当技術分野では知られており、そのような製粉機としては、例えば、分級式製粉機(classifer mills)(ZPS Mill, Alpine)、流動床空気ジェット式製粉機(fluid bed air jet mills)(AFG Mill, Alpine)、渦状空気ジェット式製粉機(spiral air jet mills)(AS Mill, Alpine)及び高速衝撃式製粉機(high speed impact mills)(USP Mill, Alpine)などを挙げることができる。
【0163】
本発明の組成物は、抗菌特性を有しており、従って、治療において有用であり、特に、動物、特に、ヒトを包含する哺乳動物、特に、ヒト及び家畜(農業用家畜を包含する)における微生物感染を治療するのに有用である。本発明の組成物を用いて、例えば、Staphylococcus aureusStaphylococcus epidermidisEnterococcus faecalisStreptococcus pyogenesStreptococcus agalactiaeStreptococcus pneumoniaeHaemophilus sp.Neisseria sp.Legionella sp.Chlamydia sp.Moraxella catarrhalisMycoplasma pneumoniae、及びMycoplasma gallisepticum などを包含するグラム陽性及びグラム陰性の細菌及びマイコプラズマにより引き起こされる感染を治療することができる。
【0164】
本発明は、さらにまた、動物における微生物感染、特に、ヒトにおける微生物感染及び家畜哺乳動物における微生物感染を治療する方法も提供し、ここで、該方法は、そのような治療が必要な患者に、本発明の組成物を投与することを含む。
【0165】
本発明は、さらに、微生物感染の治療において使用するための薬剤の製造における、本発明の組成物の使用を提供する。
【0166】
本発明の組成物を用いて、局所適用により、皮膚感染及び軟組織感染、例えば、二次的に感染した皮膚疾患(dermotoses)又は外傷性障害及び膿痂疹及び座瘡などを治療することができる。従って、別の実施形態では、本発明は、皮膚感染及び軟組織感染の治療、並びにヒトにおける座瘡の治療において使用するための局所投与に適合させた薬剤の製造における、本発明の組成物の使用を提供する。
【0167】
本発明の第五の態様によれば、本発明者らは、ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテート又はその製薬上許容される塩若しくは溶媒和物は、1日に2回(bid)投与し得ることを見いだした。
【0168】
かくして、一実施形態では、本発明は、動物における微生物感染、特に、ヒトにおける微生物感染及び家畜哺乳動物における微生物感染を治療する方法を提供し、ここで、該方法は、ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテート又はその製薬上許容される塩若しくは溶媒和物を1日に2回投与することを含む。
【0169】
本発明は、さらに、微生物感染の治療で使用するための薬剤(ここで、該薬剤は、1日に2回投与される)の製造における、ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテート又はその製薬上許容される塩若しくは溶媒和物の使用を提供する。
【0170】
適切には、上記の1日に2回の投与は、12時間の間隔で行うが、12時間より長い投与間隔又は12時間より短い投与間隔も用いることができる。
【0171】
好ましくは、ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテート又はその製薬上許容される塩若しくは溶媒和物は、上記で定義した医薬組成物の形態で、局所的に投与する。
【0172】
本発明により使用するのに適する塩及び溶媒和物は、上記で説明したとおりである。好ましくは、ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートは、遊離塩基又はヒドロスクシナート塩又はそれらの溶媒和物の形態にある。
【0173】
本発明の第六の態様によれば、本発明者らは、ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテート又はその製薬上許容される塩若しくは溶媒和物を使用することにより、慣習的な抗菌療法と比較して、治療期間を短くすることができることを見いだした。
【0174】
かくして、一実施形態では、本発明は、動物における微生物感染、特に、ヒトにおける微生物感染及び家畜哺乳動物における微生物感染を治療する方法を提供し、ここで、該方法は、ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテート又はその製薬上許容される塩若しくは溶媒和物を5〜7日間投与することを含む。
【0175】
本発明は、さらに、微生物感染の治療で使用するための薬剤(ここで、該薬剤は、5〜7日間投与される)の製造における、ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテート又はその製薬上許容される塩若しくは溶媒和物の使用を提供する。
【0176】
好ましくは、ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテート又はその製薬上許容される塩若しくは溶媒和物は、上記で定義した医薬組成物の形態で、局所的に投与する。
【0177】
本発明により使用するのに適する塩及び溶媒和物は、上記で説明したとおりである。好ましくは、ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートは、遊離塩基又はヒドロスクシナート塩又はそれらの溶媒和物の形態にある。
【0178】
以下の実施例により、本発明を例証する。
【実施例】
【0179】
本明細書に記載してある赤外スペクトル、XRPDパターン及びDSCプロフィールは、当業者によく知られている技術を用いて記録することができる。例えば、赤外スペクトル、XRPDパターン及びDSCプロフィールは、以下のように記録することができる。
【0180】
赤外分光法
固体生成物の赤外スペクトルは、Diamond/ZnSe Universal ATR Accessory が取り付けられている Perkin Elmer Spectrum One FT-IR 分光計を用いて、2cm-1の分解能で記録した。データは、1cm-1間隔でデジタル化した。
【0181】
本明細書において、ある化合物がその赤外スペクトル内に任意の値のピークを有することが示されている場合、それは、典型的には、そのピークが±2cm-1の範囲内にあることを意味している。
【0182】
XRPD
生成物のX線粉末ディフラクトグラムパターンは、Philips X'Pert Pro, Model PW3040/60 で、以下の取得条件を用いて記録した:管アノード:Cu, Kα1 及び Kα2 放射, 発生器電圧:40kV, 発生器電流:45 mA, 開始角:2.0度 2θ, 終了角:45.0度 2θ, ステップサイズ:0.02度 2θ , ステップ当たりの時間:4.0秒。
【0183】
本明細書において、ある化合物がそのXRPDパターン内に任意の値のピークを有することが示されている場合、それは、典型的には、そのピークが±0.1の範囲内にあることを意味している。
【0184】
DSC
生成物のDSCサーモグラムは、TA Instruments Q1000 カロリメーターを用いて得た。サンプルをアルミニウム製天秤皿で秤量した。皿の蓋を上に置いて、皿を密封することなく軽くクリンプした。実験は、10℃/分の加熱速度で実施した。
【0185】
本明細書において、ある化合物がそのDSCプロフィール内に任意の値のピークを有することが示されている場合、それは、典型的には、そのピークが±2℃の範囲内にあることを意味している。
【0186】
プレウロムチリン類似体の命名についての注記
実施例において、IUPACシステムにおいて系統的名称「(1S,2R,3S,4S,6R,7R,8R,14R)-3,6-ジヒドロキシ-2,4,7,14-テトラメチル-4-ビニル-トリシクロ[5.4.3.01,8]テトラデカン-9-オン」を有する化合物(a)は、慣用名「ムチリン」を用いて言及されており、また、ナンバリング方法は、H Berner、G Schulz 及び H Schneider (Tetrahedron, 1981, 37, 915-919)により記載されてものを用いている。
【化6】

【0187】
同様に、系統的名称「(1R,2R,4S,6R,7R,8S,9R,14R)-6-ヒドロキシ-9-メトキシ-2,4,7,14-テトラメチル-4-ビニル-トリシクロ[5.4.3.01,8]テトラデカン-3-オン」を有する化合物(b)は、「(3R)-3-デオキソ-11-デオキシ-3-メトキシ-11-オキソ-4-エピ-ムチリン」と称されている。
【化7】

【0188】
参考例(1): ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテート
【化8】

【0189】
標題化合物は、WO99/21855の実施例(15)に記載されている調製方法を用いて、エンド-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-3-オールとムチリン14-メタンスルホニルオキシアセテートから調製した(0.09g, 17%)。
【0190】
1H NMR(CDCl3) inter alia 0.74(3H, d, J 6.7Hz), 0.99(3H, d, J 7.5Hz), 1.18(3H, s), 1.63(3H, s), 2.28(3H, s), 3.0(1H, m), 3.13(2H, s), 3.16(2H, m), 3.36(1H, m), 5.15〜5.37(2H, m), 5.77(1H, d, J 8.3Hz), 6.49(1H, m); MS(+ve イオンエレクトロスプレー)m/z 518(MH+, 100%)。
【0191】
参考例(2): ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテート
エタノール(4mL)中の22-デオキシ-22-スルファニルプレウロムチリン(米国特許第4130709号, 1978)(0.1g, 0.00025モル)をナトリウムメトキシド(0.014g, 0.0026モル)で処理し、得られた混合物を30分間撹拌した。次いで、エンド-3-メタンスルホニルオキシ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン(エンド-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン-3-オールとメタンスルホニルクロリドから調製したもの)(0.061g, 0.00028モル)をエタノール(1mL)に溶解させた溶液を添加した。68時間撹拌を継続した。次いで、さらに、エンド-3-メタンスルホニルオキシ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクタン(0.061g, 0.00028モル)を添加し、さらに18時間撹拌を継続した。この混合物を、次いで、ジクロロメタンで希釈し、水性炭酸カリウムで2回洗浄し、ブラインで1回洗浄し、硫酸マグネシウムで脱水し、減圧下に濃縮した。クロロホルム/メタノール/35%アンモニア溶液(9:1:0:1)で溶離させるシリカゲルクロマトグラフィーに付して、0.035g(27%)の標題化合物を得た。これは、参考例(1)で記述した化合物と同一である。
【0192】
(A)調整法
特に別途示されていない限り、以下の実施例において、中間体及び最終化合物のそれぞれが、記載してある代替的な手順のいずれで調製してもよいことは理解されるであろう。
【0193】
実施例(1A): ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテート
ステップ(1a): プレウロムチリン-22-メシラートの調製
プレウロムチリン(222.0g, 0.59mol)を、窒素下、ジクロロメタン(2.25L)に溶解させ、周囲温度で、トリエチルアミン(92mL, 66.45g、0.66mol)を15分間かけて添加した。そのトリエチルアミンを添加している間に僅かな発熱(16.5℃〜18.5℃)が観察された。30分間撹拌した後、その溶液を20分間かけて-15℃に冷却した。メタンスルホニルクロリド(52mL, 77.5g、0.68mol)をジクロロメタン(430mL)に溶解させた溶液を、-9℃〜15℃で、1.28時間かけて添加した。その混合物を、初期温度約-9℃の氷/塩浴内で撹拌した。その混合物を合計で1.5時間撹拌したが、その撹拌中に、該混合物の温度が1℃まで上昇した。温度を12℃未満に維持しながら、脱イオン水(1.15L)をゆっくりと添加した。その混合物を20分間撹拌し、相を分離させた。標題化合物(267.8g, 収率100%)を含んでいるジクロロメタン相(wt=3.70kg)をステップ(5a)で直接使用した。
【0194】
ステップ(1b): プレウロムチリン-22-メシラートの代替的調製
ジクロロメタン(0.55L)中のプレウロムチリン(69.95g, 純度90%)及びトリエチルアミン(26mL, 18.33g)を-10℃に冷却した。ジクロロメタン(0.12L)中のメタンスルホニルクロリド(14.5mL, 20.87g)を、-5℃〜-10℃で、0.5時間かけて添加した。0.5時間経過した後、その混合物を15℃〜20℃に昇温させ、水(0.25L)を添加した。相を分離させ、水相をジクロロメタン(0.06L)でさらに抽出した。ジクロロメタン溶液を合して蒸留により濃縮して、0.5Lを回収した。プロパン-2-オール(0.3L)をゆっくりと添加しながら蒸留を継続し、さらに、0.3Lを回収して、溶液の温度が78℃に達した。温度を75℃〜80℃に維持しながら、n-ヘプタン(0.29L)をゆっくりと添加した。生成物が結晶化して、溶液が濁った。その混合物を0℃に冷却し、1時間撹拌した。生成物を濾過し、冷却した2:1のn-ヘプタン/プロパン-2-オール(0.075L)で洗浄し、減圧下に乾燥させて、標題化合物(75.33g, 95.6%)を得た。
【0195】
ステップ(1c): プレウロムチリン-22-メシラートの代替的調製
メチルイソブチルケトン(0.21L)中のプレウロムチリン(20.1g)及びトリエチルアミン(6.86g)を-10℃に冷却した。メチルイソブチルケトン(0.04L)中のメタンスルホニルクロリド(7.91g)を、-5℃〜-10℃で添加した。1時間経過した後、水(0.12L)を添加し、その混合物を20℃〜22℃に昇温させた。相を分離させ、メチルイソブチルケトン相を、水(0.09L)及び10%ブライン(0.05L)で、順次洗浄した。そのメチルイソブチルケトン溶液を、減圧下で蒸留することにより濃縮して、57.4gの残渣が残った。残渣に、76℃〜78℃でヘプタン(0.06L)を添加して、標題化合物を結晶化させた。さらに、ヘプタン(0.04L)を添加し、得られた混合物を-5℃〜-8℃に冷却し、1時間撹拌した。標題化合物を濾過し、冷却したヘプタン/メチルイソブチルケトン(3:1, 0.028L)で洗浄し、40℃未満で乾燥させて、21.94g(収率90.5%)を得た。
【0196】
ステップ(2a): トロピン-3-メシラートの調製
ジクロロメタン(10L)中でトロピン(500g, 3.54mol)とトリエチルアミン(590mL, 430g, 4.25mol)を混合し、窒素流下、-5℃未満に冷却した。メタンスルホニルクロリド(329mL, 487g, 4.25mol)をジクロロメタン(2L)に溶解させた溶液を、-10.4℃〜-4.9℃で、4.33時間かけて添加した。その混合物を15分間撹拌し、冷浴を除去し、炭酸カリウム溶液(2.5L, GB98596-043))及び脱イオン水(1.25L)を添加した。その添加は4分間かけて行い、発熱して温度が2.8℃に上昇した。その混合物を15℃〜20℃に昇温させ、濾過し、相を分離させた。水相をジクロロメタン(2.5L)でさらに抽出した。合した有機相を大気圧下で加熱してジクロロメタンを留去した。1.75時間かけて10Lを回収し、42.8℃の基準温度及び42℃の気相温度に達した。ヘキサン(7.5L)を添加し、得られた混合物を(一晩)冷却した後、その混合物を濾過し、濾液を汚れていないフラスコに戻した。その溶液を大気圧下で再度加熱して蒸留した。7.5Lを回収し、基準温度及び気相温度が、それぞれ、60.5℃及び62℃になった。その混合物を、0℃〜5℃に冷却し、1時間撹拌した。生成物を濾過し、ヘキサン(1.5L)で洗浄した。その生成物をデシケーター内で減圧下で乾燥させた。酢酸エチル/ヘキサン又はジクロロメタン/ヘキサンから結晶化させて、結晶質の標題化合物を得た。これは、次いで、ステップ(3)で使用した。
【0197】
ステップ(2b): トロピン-3-メシラートの代替的調製
ジクロロメタン(1L)中のトロピン(50g)とトリエチルアミン(60mL, 43.56g)を-10℃に冷却した。ジクロロメタン(0.2L)中のメタンスルホニルクロリド(36mL, 53.28g)を-5+/-2℃で1時間かけて添加した。0.5時間経過した後、炭酸カリウム(150g)を水(0.4L)に溶解させた溶液を添加し、得られた混合物を20℃に加熱した。相を分離し、水相をジクロロメタン(1×0.2L)でさらに抽出した。ジクロロメタン溶液を合して蒸留により濃縮し、1Lを回収した。n-ヘプタン(0.875L)を添加し、その混合物を0.5時間撹拌した。その溶液をデカントし、次いで、溶液の温度が63℃に達するまで610〜650mbarでの蒸留により濃縮した。その溶液を0℃に冷却したが、冷却している間に結晶化が起こった。その混合物を1時間撹拌した。濾過により生成物を単離し、洗浄し、30℃未満で乾燥させて、標題化合物(60.62g, 78.1%)を得た。
【0198】
ステップ(2c): トロピン-3-メシラートの代替的調製
ジクロロメタン(0.5L)中のトロピン(50g)とジイソプロピルエチルアミン(48.05g)を-10℃に冷却した。ジクロロメタン(0.125L)中のメタンスルホニルクロリド(44.7g)を-5℃未満で0.75時間かけて添加した。0.5時間経過した後、炭酸カリウム(75g)を水(0.2L)に溶解させた溶液を添加し、得られた混合物を20℃に昇温させた。相を分離し、ジクロロメタン溶液を20℃未満で減圧下に蒸留することで濃縮し、残渣が残った。ジクロロメタン含有量は51%w/wであった。ヘプタン(0.05L)を添加し、その溶液を0℃に冷却して、標題化合物を結晶化させた。さらに、ヘプタン(0.45L)を添加し、その混合物を、ジクロロメタン含有量が8%w/wになるまで、減圧下(350mbar)、20℃〜25℃に維持した。その混合物を0℃に冷却し、1時間撹拌した。濾過により生成物を単離し、洗浄し、30℃未満で乾燥させて、標題化合物(68.5g, 88.1%)を得た。
【0199】
ステップ(3a): トロピン-3-キサンテートの調製
窒素下36℃でトルエン(1.25L)を撹拌し、それに、トロピン-3-メシラート(243.6g, 1.11mol)及びエチルキサントゲン酸ナトリウム(245.1g, 1.70mol)を添加した。その混合物を(30℃から)35℃〜37℃まで再加熱し、一晩(約18時間)維持した。油浴を除去し、水(500mL)を添加した。2時間撹拌した後、その混合物を濾過し、相を分離させた。トルエン相を脱イオン水(1×500mL, 1×300mL)で洗浄した。収率は、14.42%w/w溶液であることに基づいて、標準品に対するLC分析により、192.36g, 70.6%であることが分かった。その溶液は、4℃で保存した後、ステップ(4)で使用した。
【0200】
ステップ(3b): トロピン-3-キサンテートの代替的調製
窒素下でトルエン(0.075L)を撹拌し、それに、トロピン-3-メシラート(25g, 0.114mol)及びエチルキサントゲン酸ナトリウム(19.7g, 0.137mol)を添加した。その撹拌されている混合物を30℃で6時間維持した。水(0.05L)を添加し、15分間撹拌した後、相を分離させた。標題化合物を含んでいるトルエン相を、ステップ(4b)において、トロピン-3-チオールの調製に直接使用した。
【0201】
ステップ(4a): トロピン-3-チオールの調製
キサンテートのトルエン溶液(ステップ(3a))を、水酸化ナトリウム(94.88g, 2.37mol)をエタノール(950mL)に溶解させた溶液と混合し、30分間にわたり、32℃〜33℃に加熱した。サンプルを、定期的に、LC及びLC/MSにより分析した。4時間経過した後、反応が完結したことが分かった(キサンテートの消失に関して)。その混合物を25℃に冷却し、12.8を超えていた初期pHを、2M HClを添加して、pH1未満に調節した。この1時間にわたる添加により、多少発熱した(24℃〜28℃)。相を分離し、水相(2.87L, 2.83kg)を減圧下に蒸留した(Buchi ロータリーエバポレータ)。浴温度35℃〜37℃でEdwards ポンプを用いて、1.4Lを除去した。残留した標題化合物の溶液は、4℃で保存した後、ステップ(5)で使用した。
【0202】
ステップ(4b): トロピン-3-チオールの代替的調製
キサンテートのトルエン溶液(ステップ(3b))及び水酸化ナトリウム(11.17g, 0.279mol)及びエタノール(0.05L)を30℃で6時間加熱した。その混合物を25℃に冷却し、4M HCl(必要とされた量 0.095L)を添加して、pHを1.5未満に調節した。相を分離し、水相を減圧下に蒸留して、容積を約0.09Lとした。残留した標題化合物の溶液は、4℃で保存した後、ステップ(5d)で使用した。
【0203】
ステップ(5a): 未精製ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートの調製
チオール(ステップ(4a))とメシラートのジクロロメタン溶液(ステップ(1a))とテトラ-n-ブチルアンモニウムクロリド(10.59g, 38.1mmol)を、窒素下で混合した(混合後の温度は、15℃であった)。980mLの水酸化ナトリウム溶液(140gを1.75Lの水に入れて調製したもの)を添加して、pHを13.05に調節した。その1時間にわたる添加期間中、温度は15℃に維持した。その混合物を12℃〜15℃で撹拌した。40分間、1時間及び2時間経過した後、さらに水酸化ナトリウム溶液を添加して、pHを約12.7から13.05に調節した。2時間経過した後、LC分析により、0.6%(PAR)のメシラートが残留しているのが示された。その混合物を、さらに1.58時間撹拌し、相を分離し、ジクロロメタン溶液に水(2L)を添加した(得れらた水相のpHは11.75であった)。1M HCl(490mL)を添加して、pHを6.29に調節した。相を分離し、ジクロロメタン溶液を、2Lの飽和重炭酸ナトリウム溶液(200.gを2Lの脱イオン水にいれて調製したもの)と一緒に撹拌(15分間)することにより、洗浄した。分離後、ジクロロメタン溶液(2.88kg)を、Buchi ロータリーエバポレータ(浴温度 34℃〜36℃)を用いて濃縮し、307.26gの黄色の泡状の残渣が残った。
【0204】
ステップ(5b): 未精製ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートの代替的調製
プレウロムチリン-22-メシラート(11g, 24.09mMol)と、MIBK(130mL)中のn-Bu4NHSO4(360.3mg, 1.3mMol)と、HCl中のトロピン-3-チオール(6.3%w/w, 73.9g, 約4.65g トロピン-3-チオール, 29.58mMol)を、窒素下、20℃〜22℃で混合した。撹拌下にあるその混合物のpH(約1)を、2M NaOH溶液(37mL)を約20分間かけて添加して、12.8に調節した。1時間経過した後、2M NaOH(1mL)を添加して、pHを12.4から12.8に再度調節した。反応は、完結するまで、クロマトグラフィーで追跡した。水相を分離し、破棄した。水(60mL)を添加し、2M HCl(9.5mL)を添加して、pHを(11.4から)、7.3〜7.5に調節した。水相を分離し、破棄した。水(60mL)を添加し、2M HCl(13mL)を添加して、pHを1.25に調節した。分離後、下にある水相のpHを、12mLの2M NaOHを用いて7.25に調節した。この時点で、混合物は濁り、結晶種の添加後、結晶化した。20分間撹拌した後、さらに、2M NaOHを添加してpHを9.5〜10に調節して、残りの生成物を沈澱させた。30分間撹拌した後、濾過により生成物を単離し、水(25mL)で洗浄し、乾燥させた(10.8g, 86.6重量%)。
【0205】
ステップ(5c): 未精製ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートの代替的調製
プレウロムチリン-22-メシラート(40g)及び硫酸水素テトラ-ブチルアンモニウム(1.4g)を、20℃〜25℃で、メチル-イソ-ブチルケトン(200mL)に溶解させた。トロピン-3-チオール(塩酸塩)(20.36g @100%)を水溶液として加えた。4M 水酸化ナトリウム溶液(約100mL)を用いて、pHを13〜13.5に調節し、得られた混合物を、反応が完結するまで撹拌した。水相を破棄し、水(100mL)を添加した。4M 塩酸溶液(約11mL)を添加して、pHを8.3±0.2に調節した。水相を破棄し、さらに水(200mL)を添加し、4M 塩酸溶液(約25mL)を添加してpHを4未満に調節した。MIBK相を破棄し、4M 水酸化ナトリウムを添加して、水相のpHを7.5に調節した。ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートの結晶種(40mg)を添加し、得られた混合物を結晶化が起こるまで撹拌した(典型的には、30分未満)。さらに、4M 水酸化ナトリウム溶液(両方の調節で合計26mLを使用した)を1時間かけて添加した。そのスラリーを1時間撹拌した。生成物を単離し、水(80mL)で洗浄し、減圧下に乾燥させて(50℃)、44.83gのムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテート(アッセイの92.9%, プレウロムチリン-22-メシラートからの収率 92.0%)を得た。
【0206】
ステップ(5d): 未精製ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートの代替的調製
プレウロムチリン-22-メシラート(50g)及び硫酸水素テトラ-ブチルアンモニウム(1.75g)を、20℃〜25℃で、メチル-イソ-ブチルケトン(250mL)に溶解させた。トロピン-3-チオール(塩酸塩)(28.65g @100%)(ステップ(4b)で調製したもの)を水溶液として加えた。5M 水酸化ナトリウム溶液(約95mL)を用いてpHを13〜13.5に調節し、得られた混合物を、反応が完結するまで撹拌した。5.5M 塩酸溶液(約24mL)を添加して、pHを8.3±0.2に調節した。水相を破棄し、さらに水(200mL)を添加した。5.5M 塩酸溶液(約25mL)を添加して、pHを4未満に調節した。MIBK相を破棄し、5M 水酸化ナトリウム(約6.5mL)を添加して、水相のpHを7.5に調節した。ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートの結晶種(50mg)を添加し、得られた混合物を結晶化が起こるまで撹拌した(典型的には、30分未満)。さらに、5M 水酸化ナトリウム溶液(約12.5mL)を、1時間かけて添加した。そのスラリーを1時間撹拌した。生成物を単離し、水(100mL)で洗浄し、減圧下に乾燥させて(40℃〜50℃)、標題化合物をアッセイに基づいて90〜95%の収率で得た。
【0207】
ステップ(6a): ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートの精製
酢酸エチル(2.5L)と濾過して脱イオン化した水(2L)の混合物を撹拌し、それに、ステップ(5a)で得た未精製生成物(626.54g)を懸濁させた。2M 塩酸(430mL)を添加して、pHを8.35から1.05に調節した。約15分間撹拌した後、相を分離した。酸性水相をさらに酢酸エチル(650mL)で洗浄した。分離後、水相をジクロロメタン(1.5L)及び重炭酸ナトリウム溶液(200gを2Lの脱イオン水に溶解させたもの)と一緒に15分間撹拌した。相を分離し、水相を、さらにジクロロメタン(1L)で抽出した。合したジクロロメタン抽出物をBuchi ロータリーエバポレータを用いて濃縮して(浴温度 40℃, Edwards ポンプ)、266.33gの残渣が残った。これを、60℃に加熱することにより2-プロパノール(900mL)に溶解させ、その溶液を濾過した。濾液を加熱還流し、脱イオン水(1.23L)を添加して、僅かに濁っている60℃の溶液を得た。これは、62℃まで再加熱することにより透明になった。その溶液を室温まで一晩冷却して、結晶質の生成物を得た。さらに、その混合物に、濾過して脱イオン化した水(200mL)をゆっくりと添加した。次いで、その混合物を5℃に冷却し、1.25時間撹拌した。生成物を濾過し、水/2-プロパノール(3:2)の冷混合物(250mL)で洗浄し、デシケーター内で高真空下に64時間乾燥させて、201.5g(プレウロムチリンから66.5%)の標題化合物を得た。
【0208】
ステップ(6b): ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートの代替的精製
ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテート(10.5g)(ステップ(5b)、ステップ(5c)又はステップ(5d)と同様に調製したもの)を酢酸イソプロピル(41mL)中で80℃に加熱して(溶液は、55℃〜60℃で得られる)、濁った溶液を得た。その溶液を濾過し(約0.78gの固体を収集した)、50℃に冷却した。次いで、その溶液に結晶種を加え、47℃〜48℃に冷却した。溶液が濁り、結晶化が起こった。その溶液を0℃に冷却し、その温度を2時間維持した。生成物を濾過し、(1)冷酢酸イソプロピル(5mL)で洗浄し、(2)酢酸イソプロピル/ヘプタン(10mL)で洗浄し、(3)ヘプタン(10mL)で洗浄し、乾燥させた(6.72g, 64%)。
【0209】
ステップ(6c): ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートの代替的精製
ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテート(96.2g)(ステップ(5b)、ステップ(5c)又はステップ(5d)と同様に調製したもの)をプロパン-2-オール(335mL)中で溶液が得られるまで65℃〜70℃に加熱した。その溶液を濾過し、35℃〜38℃に冷却した。次いで、その溶液に結晶種を加え、35℃〜38℃で30分間撹拌して、結晶化させた。その溶液を、3時間にわたり、-5℃〜-10℃に冷却した。濾過により標題化合物を単離し、ヘプタン/プロパン-2-オール(2:1)及びヘプタンで順次洗浄し、減圧下、35℃〜40℃で乾燥させて、72g(75%)を得た。
【0210】
実施例(1B): ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテート
ステップ(1): 未精製ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートの調製
トロピン-3-メシラート(6.0kg)及びチオ酢酸カリウム(9.4kg)を、ピリジン(24.0kg)と水(1.2kg)の混合物中で、35℃〜40℃で37.75時間加熱した。その混合物を20℃〜25℃に冷却し、t-ブチルメチルエーテル(35.5kg)を添加し、得られた混合物を0.5時間撹拌した。それを、洗浄液として加えたさらなるt-ブチルメチルエーテル(18.0kg)を用いて濾過した。水(50kg)を添加し、相を分離させた。水相をt-ブチルメチルエーテル(4×14.5kg)で洗浄し、有機相を合して飽和塩化ナトリウム溶液(14.5kg)で洗浄した。その有機溶液を蒸留により濃縮し、80Lの留出物を回収した。エタノール(35.5kg)を添加し、次いで、その混合物を8℃に冷却した。ナトリウムメトキシド(2.2kg)を添加し、温度を20℃まで上昇させた。約0.5時間経過した後、プレウロムチリン-22-メシラート(4.3kg)を添加し、温度を24℃に調節した。0.5〜1.5時間経過した後、反応を完結させるために、プレウロムチリン-22-メシラート(典型的には、0.34kg)をさらに添加してもよい。その溶液を減圧下で蒸留することにより濃縮し、40Lの留出物を回収し、次いで、24℃に冷却した。ジクロロメタン(80.0kg)及び飽和塩化ナトリウム溶液(96.0kg)及び水(15.0kg)を添加した。分離後、水相をジクロロメタン(32.0kg)で洗浄した。合した有機相に水(25.0kg)を添加した。希塩酸(25L)を添加して、pHを5.68に調節した。分離後、有機相を、水(25.0kg)及び9%w/w重炭酸ナトリウム溶液(26.4kg)で洗浄した。有機相を減圧下で蒸留することにより濃縮し、50Lの留出物を回収した。エタノール(60.0kg)を添加し、蒸留を継続し、さらに55Lの留出物を回収した。水(22.0kg)を添加し、得られた混合物を4〜5時間撹拌して、生成物を結晶化させた。結晶化しなかった場合、その溶液をさらに濃縮して23Lの留出物を回収した。それを、22℃に冷却し、水(80.0kg)及び酢酸エチル(72.0kg)を添加した。さらに8℃に冷却した後、希塩酸(20L)を添加してpHを1.5に調節した。分離後、酸性相をさらなる酢酸エチル(36.0kg)で洗浄し、これは、破棄した。その酸性相にジクロロメタン(66.6kg)を添加し、約10%w/w重炭酸ナトリウム溶液(50.9kg)を添加してpHを7.26に調節した。水相をさらるジクロロメタン(33.3kg)で洗浄し、合したジクロロメタン溶液を減圧下に蒸留することにより濃縮して、55Lを回収した。エタノール(58.4kg)を添加し、蒸留を継続して、60Lの留出物を回収した。水(17.0kg)を5.58時間かけて添加したが、5時間後には結晶化が起こった。さらに水(14.0kg)を添加し、その混合物を10℃〜15℃で3.5時間撹拌した。生成物を単離し、洗浄し(水[5.0kg]とエタノール[4.0kg]の混合物)、乾燥させて、未精製ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテート(74.8%アッセイで3.1kg)を得た。
【0211】
ステップ(2): ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートの精製
未精製ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテート(74.8%で3.1kg, 100%で2.3kg)をエタノール(10.0kg)に溶解させた。水(11.8kg)を0.8時間かけて添加したが、0.2時間後には結晶化が起こった。その混合物を12℃〜19℃で18時間撹拌した。生成物を単離し、水(12.0kg)とエタノール(6.4kg)の混合物で洗浄し、減圧下に乾燥させて、ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテート(96.2%で1.6kg, 100%で1.5kg, トロピン-3-メシラートからの収率10.6%)を得た。
【0212】
特徴を示すデータ
結晶質ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートについての赤外スペクトル、DSCサーモグラム及びXRPDパターンを記録した(図1〜図3)。
【0213】
(B)塩
一般的方法
窒素下、18℃〜20℃で、酢酸エチル(1300mL)に、当該酸(約180mM)を懸濁させ、撹拌した。ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテート(88.6g, 171.11mM)を酢酸エチル(900mL)に溶解させて濾過した溶液を、18℃〜21℃で、4時間かけて添加した。得られた混合物を、さらに、周囲温度で19時間撹拌し、次いで、2℃〜5℃に冷却した。1時間経過した後、生成物を濾過し、冷酢酸エチル(175mL)で洗浄し、漏斗に注いでできるだけ脱水し、次いで、減圧下、45℃〜50℃で68時間乾燥させた。
【0214】
実施例(1B)
上記で記載した「一般的方法」を用いて、窒素下、18℃〜20℃で、酢酸エチル(1300mL)に、コハク酸(21.24g, 179.86mM)を懸濁させ、撹拌した。ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテート(88.6g, 171.11 mM)を酢酸エチル(900mL)に溶解させ濾過した溶液を、18℃〜21℃で、4時間かけて添加した。得られた混合物を、さらに、周囲温度で19時間撹拌し、次いで、2℃〜5℃に冷却した。1時間経過した後、生成物を濾過し、冷酢酸エチル(175mL)で洗浄し、漏斗に注いでできるだけ脱水し、次いで、減圧下、45℃〜50℃で68時間乾燥させて、ヒドロスクシナート塩(103.5g, 95.1%)を得た。
【0215】
実施例(2B)〜実施例(4B)
上記で記載した「一般的方法」を用いて、ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートのヒドロフマラート塩、ヒドロマレアート塩及びトシラート塩を調製した。
【0216】
実施例(5B)
コハク酸(2.42g, 20.49mM)をイソプロパノール(25mL)中で加熱して、均質な溶液を得た(これは、52℃〜54℃で達成された)。ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテート(14.4g, 20.08mM)も同様に、48℃〜50℃に加熱してイソプロパノール(83mL)に溶解させた。この溶液を、50℃〜52℃の温度を維持しながら、上記コハク酸溶液に20分間かけて添加した。55℃でさらに45分間撹拌した後、塩が結晶化した。その混合物を1.5時間にわたり0℃〜5℃に冷却し、さらに1.5時間撹拌した。生成物を濾過し、冷イソプロパノール(15mL)で洗浄し、風乾して、ヒドロスクシナート塩(11.9g, 93.26%)を得た。
【0217】
特徴を示すデータ
当該塩の赤外スペクトル、DSCサーモグラム及びXRPDパターンを記録した(図4〜図15)。
【0218】
(C)組成物
実施例(1C)
ステップ(1): ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテート又はその製薬上許容される塩若しくは溶媒和物の製粉
目標の粒径を得るために、30PSI(207kPa)の粉砕圧で操作する4インチ(10.2cm)渦状空気ジェット式製粉機を用いた。ムチリン化合物は、1kg/時間の速度で該製粉機の中に給送した。
【0219】
ステップ(2): 製剤
ペトロラタムを溶融させて、65℃±5℃とした。その溶融ペトロラタムに、高剪断下(4000rpm)、適切な粒径を有する薬物物質の粒子を均質に分散させた。その分散液を、低剪断下(1500rpm)、45℃±5℃に冷却した。次いで、その分散液を、混合することなく、25℃±5℃に冷却して、滑らかな軟膏を得た。製造規模は8.5kgであった。
【0220】
実施例(2C)
ステップ(1): ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテート又はその製薬上許容される塩若しくは溶媒和物の製粉
目標の粒径を得るために、10PSIの粉砕圧と10PSIのベンチュリ圧で操作する対向空気ジェット式製粉機(opposed air jet mill)を用いた。ムチリン化合物は、10kg/時間の速度で、該製粉機に二重に通過させた。
【0221】
ステップ(2): 製剤
45℃で開始するカウンタースイープ混合(countersweep mixing)(20rpm)を用いて、ペトロラタムを溶融させて、65℃〜70℃とした。その溶融ペトロラタムを均質化し、カウンタースイープ混合機(countersweep mixer)を停止させた。その溶融ペトロラタムに、高剪断下(1000rpm)、適切な粒径を有する薬物物質の粒子を均質に分散させた。カウンタースイープ混合機(20rpm)を再作動させて、上記分散液を30分間混合した。その分散液を、均質化(1000rpm)及びカウンタースイープ混合(20rpm)を実施しながら、50℃〜56℃に冷却した。その分散液を貯蔵タンク内に投入し、混合することなく、20℃〜30℃に冷却して、滑らかな軟膏を得た。製造規模は150kgであった。
【0222】
実施例(3C)
ステップ(1): ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテート又はその製薬上許容される塩若しくは溶媒和物の製粉
14,000rpmで操作する、ピンを備えた高速衝撃式製粉機に二重に通過させることにより、ムチリン化合物の粒径を適切な粒径になるまで低減させた。製粉後、薬物物質を90μmスクリーンに通した。
【0223】
ステップ(2): 製剤
ペトロラタムを、ドラム内で、誘導ドラム加熱炉を用いて予め溶融させた。その溶融ペトロラタムをプロセス容器内に移し、加熱及び撹拌(30rpm)を開始させた。温度が65℃〜70℃に達したとき、高剪断均質化(3000rpm)を開始させ、再循環ループを作動させた。5分間混合した後、再循環ループを閉鎖し、撹拌及び均質化を終了させた。低速(1500rpm)での均質化を開始させた。渦が形成された後、その溶融ペトロラタムに、適切な粒径を有する薬物粒子を均質に分散させた。そのバッチを、高剪断均質化(3000rpm)及び撹拌(30rpm)を行いながら、20〜30分間混合し、再循環ループを作動させた。次いで、生成物を冷却した。48℃〜50℃で、均質化速度を1500rpmに減じた。再循環ループ内に残っていた生成物は、容器内に戻した。再循環ループを閉鎖し、均質化を停止させた。生成物を34℃〜40℃に冷却し、30rpmでの撹拌を維持した。その分散液を、均質化下及び撹拌下にある円錐形の貯蔵容器の中に送出して、滑らかな軟膏を得た。製造規模は250kgであった。
【0224】
上記方法を用いて、以下の組成物を調製することができる。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(IA)又は式(IB):
【化1】


[式中、
mは、0、1又は2であり;
R1は、ビニル又はエチルであり;
R2は、1個又は2個の塩基性窒素原子を含み、環炭素原子を介して結合している、場合により置換されていてもよい単環式又は二環式の非芳香族基であり;
R3は、H又はOHである]
で表される化合物又はその製薬上許容される誘導体を調製する方法であって、
式(IIA)又は式(IIB):
【化2】


[式中、
Yは、水素又はヒドロキシ保護基であり;
R1A及びR3Aは、式(IA)及び式(IB)に関して定義したR1及びR3であるか、又はR1及びR3に変換可能な基であり;
RLは、脱離基であるか、又はOH若しくはNH2である]
で表される化合物を、相間移動触媒系中で、式(III):
2A-(CH2)m-SH (III)
[式中、
R2Aは、式(IA)及び式(IB)に関して定義したR2であるか、又はR2に変換可能な基であり;
mは、式(IA)及び式(IB)に関して定義したとおりである]
で表されるチオール化合物と反応させること;
並びにその後、必要な場合又は望ましい場合には、
Yを水素に変換すること、
R1A基、R2A基又はR3A基をR1基、R2基又はR3基に変換すること、及び/又は
R1基、R2基又はR3基を別のR1基、R2基又はR3基に変換すること
を含む、前記方法。
【請求項2】
mが、0又は1である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
R2が、場合によりアルキルで置換されていてもよいアザビシクロ[3.2.1]オクチルである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
RLが、4-CH3C6H4SO2O(トシラート)、CH3SO2O(メシラート)、F3CSO2O、I、Br及びClから選択される脱離基である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記相間移動触媒系が、式(IIA)又は式(IIB)で表される化合物と相間移動触媒を有機溶媒に加えた溶液、式(III)で表されるチオール化合物の酸性水溶液又は式(III)で表されるチオール化合物の酸付加塩の水溶液、及び無機塩基の水溶液を含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
請求項1で定義されている式(III)で表される化合物を調製する方法であって、
式(IV):
2A-(CH2)m-X (IV)
[式中、
R2Aは、請求項1で式(IA)及び式(IB)に関して定義したR2であるか、又はR2に変換可能な基であり;
mは、請求項1で式(IA)及び式(IB)に関して定義したとおりであり、
Xは、-SCSOC(1-6)アルキルである]
で表される化合物を加水分解することを含む、前記方法。
【請求項7】
Xが、-SCSOCH2CH3である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
請求項6で定義されている式(IV)で表される化合物を調製する方法であって、式(IV)[式中、Xは脱離基である]で表される化合物をキサントゲン酸塩と反応させることを含む、前記方法。
【請求項9】
請求項6で定義されている式(IV)で表される化合物を調製する方法であって、式(IV)[式中、Xは脱離基である]で表される化合物をチオ酢酸塩と反応させることを含む、前記方法。
【請求項10】
請求項1で定義されている式(IA)又は式(IB)で表される化合物を調製する方法であって、初期段階として、式(IV)[式中、Xは、キサントゲン酸基である]で表される化合物から式(III)で表されるチオール化合物を調製することを含む、前記方法。
【請求項11】
請求項1で定義されている式(IA)又は式(IB)で表される化合物を調製する方法であって、初期段階として、式(IV)[式中、Xは、メシラートである]で表される化合物から式(IV)[式中、Xは、キサントゲン酸基である]で表される化合物を調製することを含む、前記方法。
【請求項12】
請求項1で定義されている式(IA)又は式(IB)で表される化合物を調製する方法であって、初期段階として、式(IV)[式中、Xは、ヒドロキシである]で表される化合物から式(IV)[式中、Xは、メシラート基である]で表される化合物を調製することを含む、前記方法。
【請求項13】
ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートを調製するための、請求項1に記載の調製方法。
【請求項14】
請求項1で定義されている式(III)で表される化合物の酸付加塩。
【請求項15】
式(IV)[式中、Xは、-SCSOC(1-6)アルキルである]で表される化合物又はその酸付加塩。
【請求項16】
(i) ATR(減衰全反射)で測定して、3234cm-1、1735cm-1及び1725cm-1にピークを含んでいる赤外スペクトル;
及び/又は
(ii) 125〜127℃の温度で開始する吸熱を示すDSC(示差走査熱量測定)プロフィール;
及び/又は
(iii) 約9.6、約12.8、約13.9及び約19.6にピークを有するXRPD(X線粉末回折)パターン;
を示すことを特徴とする、結晶質ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテート。
【請求項17】
酢酸塩、p-アミノ安息香酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、ビスメチレンサリチル酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、ホウ酸塩、エデト酸カルシウム塩、カンシル酸塩、炭酸塩、クラブラン酸塩、クエン酸塩、シクロヘキシルスルファミン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシラート塩、エストラート塩、エシラート塩、エタンジスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプタート塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコール酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘキシルレゾルシン酸塩、ヒドラバミン塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロフマラート塩、リン酸水素塩、ヒドロヨージド塩、ヒドロマレアート塩、ヒドロスクシナート塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、イセチオン酸塩、イタコン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシラート塩、メチルブロミド塩、メチル硝酸塩、メチル硫酸塩、マレイン酸一カリウム塩、粘液酸塩、ナプシル酸塩、硝酸塩、N-メチルグルカミン塩、シュウ酸塩、オキサロ酢酸塩、パモ酸塩(エンボン酸塩)、パルマート塩、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ピルビン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、プロピオン酸塩、糖酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシラート塩、トリエチオダイド塩、トリフルオロ酢酸塩及び吉草酸塩から選択される、ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートの製薬上許容される塩又はその溶媒和物。
【請求項18】
ヒドロスクシナート塩、ヒドロフマラート塩、ヒドロマレアート塩及びトシラート塩から選択される、請求項17に記載の塩。
【請求項19】
ヒドロスクシナート塩である、請求項17に記載の塩。
【請求項20】
結晶質形態にある、請求項17に記載の塩。
【請求項21】
(i) ATR(減衰全反射)で測定して、3470cm-1、1731cm-1及び1711cm-1にピークを含んでいる赤外スペクトル;
及び/又は
(ii) 168〜170℃の温度で開始する吸熱を示すDSC(示差走査熱量測定)プロフィール;
及び/又は
(iii) 約13.4、約14.4及び約20.7にピークを有するXRPD(X線粉末回折)パターン;
を示すことを特徴とする、ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートの結晶質ヒドロスクシナート塩である、請求項18に記載の塩。
【請求項22】
請求項18に記載の塩又はその溶媒和物、及び製薬上許容される賦形剤、希釈剤又は担体を含んでいる、医薬組成物。
【請求項23】
治療で使用するための、請求項18に記載の塩又はその溶媒和物。
【請求項24】
微生物感染の治療において使用するための薬剤の製造における、請求項18に記載の塩又はその溶媒和物の使用。
【請求項25】
前記微生物感染が皮膚感染又は軟組織感染である、請求項24に記載の使用。
【請求項26】
動物における微生物感染、特に、ヒトにおける微生物感染及び家畜哺乳動物における微生物感染を治療する方法であって、そのような治療が必要な患者に、請求項18に記載の塩若しくはその溶媒和物又は本発明の組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項27】
ヒトにおける皮膚感染及び軟組織感染を治療する方法であって、そのような治療が必要な患者に、請求項18に記載の塩若しくはその溶媒和物又は本発明の組成物を局所投与することを含む、前記方法。
【請求項28】
請求項18に記載の塩又はその溶媒和物を調製する方法であって、該酸の溶液又は懸濁液をムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートの溶液と混合することを含む、前記方法。
【請求項29】
ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテート又はその製薬上許容される塩若しくは溶媒和物、及び製薬上許容される賦形剤、希釈剤又は担体を含んでいる、局所投与用医薬組成物。
【請求項30】
動物における微生物感染、特に、ヒトにおける微生物感染及び家畜哺乳動物における微生物感染を治療する方法であって、ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテート又はその製薬上許容される塩若しくは溶媒和物を局所投与することを含む、前記方法。
【請求項31】
微生物感染の治療において使用するための、局所投与される薬剤の製造における、ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテート又はその製薬上許容される塩若しくは溶媒和物の使用。
【請求項32】
局所投与するための医薬組成物であって、
(a) D90が15〜40μmである粒子形態にあるムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテート又はその製薬上許容される塩若しくは溶媒和物、
及び
(b) 軟膏基剤
を含んでいる、前記医薬組成物。
【請求項33】
ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテート、又はムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテートのヒドロスクシナート塩、又はそれらの溶媒和物を含んでいる、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
D50が5〜15μmである、請求項32に記載の組成物。
【請求項35】
D90が15〜25μmである、請求項32に記載の組成物。
【請求項36】
前記軟膏基剤がペトロラタムである、請求項32に記載の組成物。
【請求項37】
軟膏基剤中に0.5〜2%w/wの粒子を含んでいる、請求項32に記載の組成物。
【請求項38】
治療で使用するための、請求項32に記載の組成物。
【請求項39】
微生物感染の治療で使用するための薬剤の製造における、請求項32に記載の組成物の使用。
【請求項40】
前記微生物感染が皮膚感染又は軟組織感染である、請求項39に記載の使用。
【請求項41】
動物における微生物感染、特に、ヒトにおける微生物感染及び家畜哺乳動物における微生物感染を治療する方法であって、そのような治療を必要としている患者に請求項32に記載の組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項42】
ヒトにおける皮膚感染及び軟組織感染を治療する方法であって、そのような治療を必要としている患者に請求項32に記載の組成物を局所投与することを含む、前記方法。
【請求項43】
請求項29に記載の組成物を調製する方法であって、前記粒子を軟膏基剤と混合することを含む、前記方法。
【請求項44】
微生物感染の治療で使用するための、1日に2回投与される薬剤の製造における、ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテート又はその製薬上許容される塩若しくは溶媒和物の使用。
【請求項45】
動物における微生物感染、特に、ヒトにおける微生物感染及び家畜哺乳動物における微生物感染を治療する方法であって、ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテート又はその製薬上許容される塩若しくは溶媒和物を1日に2回投与することを含む、前記方法。
【請求項46】
動物における微生物感染、特に、ヒトにおける微生物感染及び家畜哺乳動物における微生物感染を治療する方法であって、ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテート又はその製薬上許容される塩若しくは溶媒和物を5〜7日間投与することを含む、前記方法。
【請求項47】
微生物感染の治療で使用するための、5〜7日間投与される薬剤の製造における、ムチリン14-(エキソ-8-メチル-8-アザビシクロ[3.2.1]オクト-3-イルスルファニル)アセテート又はその製薬上許容される塩若しくは溶媒和物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−236850(P2012−236850A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−175530(P2012−175530)
【出願日】平成24年8月8日(2012.8.8)
【分割の表示】特願2011−153221(P2011−153221)の分割
【原出願日】平成16年8月30日(2004.8.30)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】