説明

新電動バリカン刃研磨方法に使用する電動バリカン刃用液体研磨材。

【課題】電動バリカン使用者自らが電動バリカン刃を特別な装置なしに、簡単に切れ味鋭く研磨することができる研磨方法を提供する。
【解決手段】電動式バリカン刃の研磨を誰でも簡単に行うために2枚合わせの電動バリカン刃にファインセラミックス等の微粒子を溶剤と混合したバリカン刃専用液体研磨剤を刃と刃の間に注入して電動バリカン本体などの機械に装着して通常の電動バリカンを使用する状態で電動バリカン本体の駆動力を使う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電動バリカンを電動バリカン刃研磨装置として使用することにより、バリカン使用者が誰でも簡単にバリカン刃を研磨できる新研磨方法を取り入れた。10μm以下のファインセラミックス等の液体研磨剤を使用するが、ただ切れるようにするだけでなく、理美容やペット美容で使用するバリカン刃には人間の毛髪はもとより動物の細く柔らかい毛を切ることを可能にするために、適度な硬度を有し、1.0μm以下の微粒子ファインセラミックス等を使用した電動バリカン刃用液体研磨材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の人間の理美容室では電動バリカンを使用する頻度は減ってきている。ペットブームにより犬猫の美容室が急増してきている。犬猫の美容室では電動バリカンの使用頻度は非常に高く、人間の理美容室の何十倍にも及んでいる。犬猫の毛質は、犬種や猫種の違いで多種多様にあり、細く柔らかい毛質や皮脂の多い犬猫などは新品の電動バリカン刃でないと切ることができない場合もある。
従来の電動バリカン刃の研磨は、メーカーや研ぎ師の特殊技術により行われ、通常固形の砥石でバリカン刃を分解して研磨している。液体研磨剤も使用しているが、やはりバリカン刃を分解して装置や、研磨台の上で研磨されている。この方法は職人技術や高額な装置が必要で電動バリカン使用者には不可能であった。メーカーに研磨依頼した場合は全て正しい研磨が行われるが、仕上がるまでに早くて1ヶ月、遅い場合2ヶ月以上の期間を要する。また、研磨できる回数が3〜5回ぐらいと少ない。研ぎ師に依頼した場合、仕上がりは数日で行われるが、その半数近くが、犬猫の細く柔らかい毛質に対応できない。(切れない)人間の理美容室よりペット美容室の電動バリカン使用者がこの現状に苦慮している。使い捨ての電動バリカン刃においては研磨する発想も無い。
【0003】
特開2001−40334に於ける方法は請求項1にあるケイ石を使った場合硬度が低く研磨力が弱いため長時間を要する。また、粒子の均一性が悪く犬猫の細く柔らかい毛を切れるような正確な研磨ができない。
請求項2にある研磨液の滴下では上刃と下刃の接する面全体に研磨液が浸透しないため先端だけの研磨が進み正確な研磨ができない。
請求項3にある切断刃を上下から軽く保持するようにした方法では、かえって先端だけの研磨が進み電動バリカン刃の正確な研磨ができない。固くて太い人間の毛髪にはある程度の効果は認められるが猫の毛のような柔らかく細い毛には全く効果がない。
この方法の考えは間違っていないが、バリカン刃の構造を正確に認識していないため、かえってバリカン刃を研磨する力が半減してしまう。また、手で押圧することはとても危険である。また、この方法は一部のメーカーのバリカン刃だけの研磨の方法で本発明のような全てのタイプのバリカン刃研磨が明示されていない。
【特許文献1】 特開2001−40334
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は以上のような従来の欠点に鑑み、バリカン刃用液体研磨剤を用いることにより、電動バリカンを電動バリカン刃研磨装置に進化させることができる。電動バリカン使用者自らが電動バリカン刃を特別な装置なしに簡単に切れ味鋭く研磨を行うことを可能にした。
この方法は、電動バリカン刃が本来備えている精密に噛み合わせる能力を利用してその構造に合わせた研磨方法である。電動バリカン刃の材質に合わせたバリカン刃用液体研磨剤を提供することにより、従来の電動バリカン刃と使い捨ての電動バリカン刃までも動物の柔らかく細い毛に対応できる正確で切れ味鋭いバリカン刃研磨を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために電動バリカンを電動バリカン刃研磨装置として使用する。しかし、電動バリカン刃の精密な構造を正しく理解しその構造を利用しなくてはならない。図1aのような押しバネ(2)式の構造では押しバネが垂直に上刃(4)と下刃(5)を適度な力で押さえている。押しバネ(2)の能力が低下した場合、新品の押しバネを使用することで本来の能力に戻し、上刃(4)と下刃(5)の接する面(7)全体に研磨液を浸透させるために図1bのように電動バリカン刃を分解し接地面(7)にバリカン刃用液体研磨剤を滴下させる。
図2aのような板バネ(8)式は上刃(9)と下刃(10)の先端に向かってバネの力が適度に加わっている。このタイプは分解した場合、正確に組み直す事が難しい。そのため図2bのように上刃(9)を左右にスライドさせバリカン刃用液体研磨剤を滴下させる。
図3aのピンバネ(12)構造の電動バリカン刃は接地面が先端だけで分解は不可能である。図3bのように刃と刃の間を開きその間にバリカン刃用液体研磨剤を滴下する。その後電動バリカンに装着して駆動させ電動バリカン刃を研磨させることができる。また、これ以外の電動バリカン刃も上刃と下刃をバネで最適に接地されている。これらの構造を変えないで電動バリカンを駆動することが正確に研磨できる条件になる。
【発明の効果】
【0006】
以上のように本発明は、電動バリカン使用者が自分で簡単に特殊技術が無くとも電動バリカン刃の研磨を可能にした。このことで、時間のロスが無くなり、切れ味が少し悪い時点で研磨ができるようになる。特に理美容やペット美容で使用するバリカン刃には1.0μm以下の微粒子ファインセラミックス等の液体研磨材を使用することで、より正確に、切れ味鋭く研磨できるようになり、細く柔らかい動物の毛を刈ることが可能になる。また、使用する液体研磨材が硬い上、10μm以下の微粒子のため1回の研磨で削り取られる刃先が微量なため研磨できる回数も十数回以上と多い。人間の理美容室はもとより、ペット美容室や動物病院での電動バリカン使用者の一助になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
電動バリカン刃のそれぞれの構造に合わせ、必要に応じ粗砥ぎ、中研ぎ、仕上げ研ぎのための適切なサイズであるファインセラミックスのバリカン刃用液体研磨剤を正しく滴下し、電動バリカンに正しく電動バリカン刃を装着し駆動することで切れ味鋭い研磨をすることができる。
【実施例1】
【0008】
図1aのように押しバネ形式の分解できる電動バリカン刃は電動バリカン刃の中心に押しバネ(2)が配置してあり図1bの分解図の接地面(7)に平均に押しバネ(2)の力がかかっている。このタイプの場合は接地面(7)の面全体にバリカン刃用液体研磨剤を滴下し組み立てる。止めナット(1)と止めボルト(6)で押しバネを押さえている。止めナット(1)は一度締めきってから1回転戻す。電動バリカンに通常使う状態にセットし駆動させる。電動バリカン刃先端に少しバリカン刃用液体研磨剤を滴下する。この実施例でのバリカン刃用液体研磨剤は、サラダオイルと界面活性剤の混合で白色溶融アルミナ(WA)の1μmの微粒子を20重量%で使用した。
[表1]3分を超えた頃に研磨がピークに達し4分を超えてもその差は少ない。このタイプの研磨時間は3分30秒で完成する。この粗研ぎの後中研ぎ仕上げ研ぎを行うと完璧な研磨ができる。この後電動バリカン刃を分解し水洗いをして良く乾かし、専用オイルを滴下して組み立てる。止めナット(1)は締め切ってから1回転戻して使用する。ここで注意することは押しバネ(2)が劣化すると電動バリカン刃の切る能力と研磨する能力が低下するため、定期的に新品に取り替えることが望ましい。また、分解できるこのタイプは、研ぎ師や電動バリカン使用者が手研ぎをする場合がある。正しく研がれていない片減りの電動バリカン刃をこの研磨方式で研磨しても本来の切れ味を取り戻すことができない。必ず、今まで切れていた電動バリカン刃にこの方法は適用されるべきである。このタイプの電動バリカン刃は日本に於けるシェアが80パーセントを越える。
【表1】

【実施例2】
【0009】
図2aのような板バネ(8)形式の電動バリカン刃は研ぎ師が分解して研磨する場合もあるが、組み直すときに上刃(9)と下刃(10)のバランスをとる事が非常に難しいため、分解しての研磨は避けるほうが望ましい。図2bのように上刃(9)を左右に大きくスライドさせ液体研磨材を滴下する。その後電動バリカンにセットして駆動させる。電動バリカン刃先端に少しバリカン刃用液体研磨剤を滴下する。この実施例でのバリカン刃用液体研磨剤は、サラダオイルと界面活性剤の混合で白色溶融アルミナ(WA)の1μmの微粒子を20重量%で使用した。
[表2]分を超えた頃に研磨がピークに達し4分を超えてもその差は少ない。このタイプの研磨時間は3分30秒で完成する。この粗研ぎの後中研ぎ仕上げ研ぎを行うと完璧な研磨ができる。この後電動バリカン刃を水洗いして良く乾かし、専用オイルを滴下する。このタイプは板バネの力が先端に向くようにセットされている。上刃と下刃の接点が2カ所あるが刃先の方だけにバリカン刃用液体研磨剤を滴下するだけで正しく研磨される。このタイプは分解されなければ、正しく研磨できる物がほとんどである。このタイプの電動バリカン刃は輸入品で日本に於けるシェアが数パーセント以下である。しかし、性能は非常に良く本発明の研磨方式が浸透すれば多くのペット美容室で導入されると思われる。
【表2】

【実施例3】
【0010】
図3aのようなピンバネ(11)形式の使い捨て電動バリカン刃は研ぎ師が分解して研磨する事はできない。図3bのように指でつまんで上刃と下刃が開くようになっている。上刃と下刃を開いた状態でバリカン刃用液体研磨剤を間に滴下する。電動バリカンにセットして駆動させる。このタイプの電動バリカン刃は材質がステンレスで柔らかい。この実施例でのバリカン刃用液体研磨剤は、サラダオイルと界面活性剤の混合で白色溶融アルミナ(WA)の1μmの微粒子を20重量%で使用した。
[表3]60秒を越えた頃に研磨がピークに達し2分を超えてもその差は少ない。このタイプの研磨時間は1分30秒で完成する。この粗研ぎの後中研ぎ仕上げ研ぎを行うと完璧な研磨ができる。この後電動バリカン刃を水洗いして良く乾かし、専用オイルを滴下する。このタイプは分解することができない。ピンバネの力が先端に向くようにセットされていて上刃と下刃が先端だけの接点になっている。バリカン刃用液体研磨剤の優れた性能で使い捨ての電動バリカン刃でさえ研磨できるようになった。このタイプの電動バリカン刃は、家庭で人間に使用される事が多く、ペット用にも多く見られる。このタイプも性能は非常に良く本発明の研磨方式が浸透すれば多くのペット美容室で導入されると思われる。
【表3】

【実施例4】
【0011】
[表4]バリカン刃用液体研磨剤は代表的なファインセラミックスでテストをした結果、硬度が高く微粒子の大きさが均一な白色溶融アルミナ(WA)、酸化チタン、緑色炭化ケイ素(GC)、等の全てのファインセラミックスとダイヤモンド粒子でその効果が見られた。酸化チタンは硬度が低いが研磨後にチタン皮膜が少しだけ付くため、動物のタンパク質や、皮脂の汚れなどの付着が防止でき、長切れが期待できる。仕上げ材に適す。
【表4】

[表5]微粒子の大きさは0.01μmでは粒子が小さすぎて研磨力に劣る。仕上げ材で使用すると切れ味は最も良いが研磨時間が長くかかる。0.1μmから1μmでは研磨時間、研磨力においても最適な状態である。5μmでは研磨時間は短いが切れ味が低下する。10μmでは芝刈り機のような物に適していると考えられる。理美容に使う電動バリカンでは0.1μmが仕上げ材として最適である。0.3μmは中研ぎに適用され、1μm以上の大きさは粗砥ぎに適用される。
【表5】

[表6]ファインセラミックスに使用される溶剤は、表6に見られるように機械油、エンジンオイルともに沈殿がほとんど無い。食用油では時間とともに沈殿が認められる。水などではほとんど分離する。水に中性洗剤を混入すると分離が収まるが時間とともに沈殿が認められる。全ての溶剤は容器を振ることで良く混ざりその研磨力の差はほとんど見られない。分散剤を使用すると沈殿は全くない。
【表6】

溶剤に於けるファインセラミックスの混合比率は、溶剤に対して5重量%では研磨力に弱く良い結果が見られない。10重量%では研磨力研磨時間ともに良い結果が得られ30重量%でも良い結果が得られる。40重量%から60重量%でもその研磨力に差はない。最適な混合比率は、15重量%から30重量%が最適と思われる。
このバリカン刃用液体研磨剤を実用的に使用するためには、バリカン刃には潤滑油が付着しているため油に混ざり、簡単に洗い流すためには水にも混ざる溶液が理想である。今回の実験では食用油100にたいし、洗剤50と白色溶融アルミナ(WA)20重量%を混合し加熱をした。水分を蒸発させ溶剤の粘度を調節した。この方法で垂れ落ちない理想的な粘度のバリカン刃用液体研磨剤を作成できた。
【産業上の利用可能性】
【0012】
本発明は、ペット美容室及び動物病院、人間の理美容室、家庭用などで使われる電動バリカンの使用者が利用する物である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を実施するための押しバネ式電動バリカン刃を研磨するための図である。
【図2】本発明を実施するための板バネ式電動バリカン刃を研磨するための図である。
【図3】本発明を実施するためのピンバネ式電動バリカン刃を研磨するための図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動式バリカン刃の研磨を誰でも簡単に行うために図4のように2枚合わせの電動バリカン刃の上刃と下刃の間に液体研磨剤を注入して、電動バリカン本体に装着して通常の電動バリカンを使用する状態で固定刃(下刃)に対してスライド刃(上刃)を左右に動く力を利用した電動バリカン本体の駆動力を使い研磨する。新たに何の設備も必要としない新しいバリカン刃研磨方法に必要なバリカン刃用液体研磨剤を提供する物である。
従来の電動バリカン刃の研磨は、メーカーや研ぎ師の特殊技術により行われ電動バリカン使用者には不可能であった。この職人技術の習得やバリカン刃研磨装置等の設備なしに簡単な方法で切れ味鋭く研磨できることはバリカン使用者にとって夢のようなことである。
切れ味が鋭いバリカン刃を研磨するために図4の研磨剤の形状と大きさが最重要となる。形状は流れ落ちない程度の粘性を持った液体で、大きさは1.0μm以下であることが望ましい。1.0μm以上でもある程度の切れ味は出せるが動物の細く柔らかい毛を楽に切るためには不向きである。
理美容室やペット美容室で使う2枚合わせの電動バリカン刃の構造は図1aのような押しバネ(2)形式と図2aのような板バネ(8)形式や図3aのようなピンバネ(11)形式で上刃と下刃を精密に押し合わせて成り立つ。この精密な噛み合わせが正確でないと切れない。この精密に押し合わせている力を利用して電動バリカン刃を正確に研磨する。バリカン刃用液体研磨剤を電動バリカン刃のそれぞれの構造に合わせて滴下する。
押しバネ式の電動バリカン刃は分解し上刃と下刃の接する面全体に滴下し、もう一度組み直し電動バリカンに装着し駆動させる。
板バネ式の電動バリカン刃は上刃を左右にずらし上刃と下刃の接する面全体に滴下して電動バリカンに装着し駆動させる。
ピンバネ式は刃を開き上刃と下刃の接する面全体に滴下し電動バリカンに装着し駆動させる。これ以外の電動バリカン刃もほぼ同様な仕組みで構成されている。
この全ての形を持った電動バリカン刃の研磨を可能にした。特に図3のような使い捨ての電動バリカン刃を新品同様に研磨することを可能にした。ここで言う電動バリカン刃とは、理美容で使用する電動バリカン(クリッパー)及び電動眉毛そり、電動芝刈り機等の固定刃(下刃)とスライド刃(上刃)の2枚の刃をバネの力で合わせた形の全ての刃の総称を指す。この新しい研磨方法に使用する電動バリカン刃用液体研磨剤は、正確な研磨と新品同様に切れ味鋭く研ぎあげるために、硬度が高く微粒子の大きさが均一な白色溶融アルミナ(WA)、酸化チタン、緑色炭化ケイ素(GC)、等の全てのファインセラミックス及びダイヤモンド粒子を電動バリカン刃の材質及び状態に応じて使い分けて使用する。その大きさは0.01μmから10μmの微粒子を電動バリカン刃の材質や状態に応じて粗研ぎ、中研ぎ、仕上げ研ぎに使用する。このファインセラミックスやダイヤモンド粒子を食用油、工業用オイル、エンジンオイル等の全ての油及び水、蒸留水、分散剤、界面活性剤等の全ての液体に5重量%から60重量%の割合で混合するものである。この発明は電動バリカン本来の能力である切ること、刈ることの他に電動バリカン刃の構造に合わせバリカン刃用液体研磨材を使用することで電動バリカンを電動バリカン刃研磨装置に変えることができる。この新方式専用を特徴とする電動バリカン刃用液体研磨材。

【図3】本発明を実施するための液体研磨剤とバリカン刃接地面の関係図である。
【符号の説明】
【0013】
1 止めナット
2 押しバネ
3 カバー
4 上刃(スライド刃)
5 下刃(固定刃)
6 止めボルト
7 接地面
8 板バネ
9 上刃(スライド刃)
10 下刃(固定刃)
11 接地面
12 ピンバネ
13 上刃(スライド刃)
14 下刃(固定刃)
15 接地面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−194810(P2008−194810A)
【公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−62562(P2007−62562)
【出願日】平成19年2月13日(2007.2.13)
【出願人】(507079323)
【Fターム(参考)】