説明

方位測定装置及び方位測定方法

【課題】物体が向いている方位を高い精度で正確に計測可能で、簡便かつ小型の方位測定装置を提供する。
【解決手段】位置情報を測定するGPSセンサ11、GPSセンサ11を長手方向に直線的に移動させるレール12を備え、計算機13がGPSセンサ11の移動前後で測定した2つの位置情報からGPSセンサ11の移動方向の方位を算出することで、レール12の長手方向の方位を簡便かつ高い精度で計測することが可能となる。また、レール12の先端にGPSセンサ11を取り付け、レール12を伸縮可能とすることで、方位測定装置の小型化を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、方位を測定する技術に関し、特に無線アンテナのメインビームの方向を測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ミリ波無線においては、送信機の出力が低く、また受信感度も悪い。そのため、1km程度離れた位置でデータ伝送を行うには、アンテナのビーム幅が1度以下の非常に指向性が高いアンテナを使用する必要がある。ところが、このようなビーム幅が狭いアンテナを使用する場合、送信機−受信機のアンテナ方位が互いに高い精度で一致しない限り、受信機の最小感度以上の受信電力を得ることが出来ないことが多く、感度が得られるアンテナ方位を探すために時間がかかる。
【0003】
無線通信の位置合わせについては、GPS(Global Positioning System)から得られる位置情報を使用してアンテナの水平方向を決めるシステムが実用化されている(非特許文献1参照)。また、磁石等を用いて北の方位を探し、絶対角度を求めてアンテナの水平方向を決める方法もある。しかしながら、非特許文献1の方法や磁石等を用いる方法では、ミリ波無線の初期の位置合わせに使用するには精度が不足している。
【0004】
他方、例えば、非特許文献2のGPSコンパスを用いることで正確な方位情報を得ることが可能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】"Transmission PRO 360 〜ヘリ自動追尾雲台(遠隔制御仕様)〜", [online], 株式会社松浦機械製作所, [平成21年11月2日検索], インターネット〈URL:http://www.matsuura-kikai.com/a/index_interbee1.html〉
【非特許文献2】"ヘミスフィアDGPSコンパス VS100/VS110", [online], 株式会社GISupply, [平成21年11月2日検索], インターネット〈URL:http://www.gisup.com/product/pr_hemis_vs100.html〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、非特許文献2のGPSコンパスは、GPSセンサを2つ必要とするため高額であるという問題がある。また、方位精度を0.1度以下にするためには2つのGPSセンサの距離を2m以上にする必要があるため、装置が大型化し、無線機に取り付けられないという問題がある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、物体が向いている方位を高い精度で正確に計測可能で、簡便かつ小型の方位測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の本発明に係る方位測定装置は、自身の位置情報を取得して出力する位置取得手段と、位置取得手段を取り付け、当該位置取得手段を直線的に移動させる移動手段と、位置取得手段の移動前後それぞれにおける位置情報を入力する入力手段と、入力した2つの位置情報に基づいて位置取得手段の移動方向の方位を算出する算出手段と、を有しており、移動距離は必要とする方位精度を得るために必要な長さ以上であることを特徴とする。例えば、0.1 度以上の方位精度を得るためには移動距離は 2 m 以上とする必要がある。
【0009】
上記方位測定装置において、移動手段は伸縮可能な棒状体であり、位置取得手段は当該棒状体の端に取り付けられていることを特徴とする。
【0010】
上記方位測定装置において、移動手段に取り付けられ、移動方向を回転可能にする回転手段を有することを特徴とする。
【0011】
上記方位測定装置において、移動手段はアンテナに取り付けるものであり、移動手段をアンテナに取り付けた際に、移動方向が当該アンテナのメインビームの放射方向に対して平行であることを特徴とする。
【0012】
第2の本発明に係る方位測定方法は、自身の位置情報を取得して出力する位置取得手段により、第1の位置情報を取得するステップと、位置取得手段を取り付けた移動手段により、位置取得手段を必要とする方位精度を得るために必要な長さ以上、直線的に移動させるステップと、位置取得手段を移動後に、第2の位置情報を取得するステップと、第1、第2の位置情報に基づいて位置移動手段の移動方向の方位を算出するステップと、を有することを特徴とする。
【0013】
上記方位測定方法において移動手段は伸縮可能な棒状体であり、位置取得手段は当該棒状体の端に取り付けらており、移動させるステップは、棒状体を伸縮させることで位置取得手段を直線的に移動させることを特徴とする。
【0014】
上記方位測定方法において方位を算出するステップの後に、移動方向を第2の移動方向へ回転させるステップと、移動方向を回転後に、位置取得手段により第3の位置情報を取得するステップと、第3の位置情報を取得後に、位置取得手段を直線的に移動させるステップと、位置取得手段を移動後に、第4の位置情報を取得するステップと、第3、第4の位置情報に基づいて位置移動手段の第2の移動方向の方位を算出するステップと、を有することを特徴とする。
【0015】
上記方位測定方法において第1の位置情報を取得する前に、移動方向がアンテナのメインビームの放射方向に対して平行となるように移動手段を当該アンテナに取り付けるステップを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、物体が向いている方位を高い精度で正確に計測可能で、簡便かつ小型の方位測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施の形態における方位測定装置の構成を示す概略構成図である。
【図2】上記方位測定装置を用いて方位を測定する処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】上記方位測定装置をアンテナに設置し、アンテナの方位を測定する実施例を説明するための説明図である。
【図4】本実施の形態における別の方位測定装置の構成を示す概略構成図である。
【図5】本実施の形態におけるさらに別の方位測定装置の構成を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0019】
図1は、本実施の形態における方位測定装置の構成を示す概略構成図である。同図に示す方位測定装置は、伸縮可能な棒状のレール12、レール12の先端に配置されたGPSセンサ11、および計算機13を備える。図1(a)は、レール12を縮めた状態を示し、図1(b)は、レール12を延ばした状態を示す。
【0020】
図1(a),(b)に示すように、レール12は振り出し構造で2m以上伸縮可能である。レール12を伸縮させることでGPSセンサ11を直線的に移動させることができ、GPSセンサ11は、レール12を縮めた状態におけるレール12先端の位置情報とレール12を延ばした状態におけるレール12先端の位置情報を取得することが可能となる。つまり、GPSセンサ11は、レール12の伸縮方向に2m以上離れた位置における位置情報を取得することができ、この結果、この装置の方位精度は 0.1 度以上となる。
【0021】
計算機13は、入力部131と算出部132を備える。入力部131は、GPSセンサ11が測定した位置情報を入力し、計算機13の備える記憶手段に記憶させる。算出部132は、GPSセンサ11が移動前後において測定した2つの位置情報を記憶手段から読み出し、GPSセンサ11の移動方向、つまり、レール12の伸縮方向の方位を算出する。より具体的には、2つの位置情報の各成分の差分を取ってGPSセンサ11の移動ベクトルを求め、GPSセンサ11の移動方向の方位を算出する。水平方向の方位は、位置情報の水平方向の成分から求めることができる。
【0022】
図2は、本実施の形態における方位測定装置を用いて方位を測定する処理の流れを示すフローチャートである。
【0023】
まず、レール12の伸縮方向と測定したい方位が平行になるように方位測定装置を配置し、レール12を縮めた状態でGPSセンサ11により位置情報を測定する(ステップS11)。そして、測定した位置情報を計算機13に伝送して記録する(ステップS12)。ここで測定した位置情報を第1センサ位置とする。
【0024】
続いて、レール12を延ばし、レール12を延ばした状態でGPSセンサ11により位置情報を測定する(ステップS13)。そして、測定した位置情報を計算機13に伝送して記録する(ステップS14)。ここで測定した位置情報を第2センサ位置とする。
【0025】
そして、算出部132は、第1、第2センサ位置を記憶手段から読み出し、第1、第2センサ位置からレール12の伸縮方向の方位を算出する(ステップS15)。
【0026】
次に、無線機におけるアンテナの方位を測定するために本方位測定装置を使用する実施例について説明する。
【0027】
図3は、本方位測定装置を用いてアンテナの方位を測定する方法を説明するための説明図である。なお、図3では、方位測定装置が備える計算機13を図示していない。
【0028】
図3(a)に示すように、アンテナ51は無線機52に取り付けられており、アンテナ51はレール取付治具53を備え、方位測定装置のレール12はレール取付治具53に取付可能である。
【0029】
まず、図3(b)に示すように、アンテナ51のメインビームの放射方向と方位測定装置のレール12の伸縮方向が平行になるように方位測定装置を取り付け、GPSセンサ11をレール12に取り付けてアンテナ51上に配置する。そして、GPSセンサ11により、位置情報を測定する。ここで測定した位置情報は、第1センサ位置であると同時に、アンテナ51の位置情報でもある。
【0030】
続いて、図3(c)に示すように、レール12を延ばしてGPSセンサ11の位置を直線的に移動させ、GPSセンサ11により位置情報を測定し、第2センサ位置を取得する。
【0031】
そして、計算機13により、第1、第2センサ位置を用いてレール12の伸縮方向、つまり、アンテナ51の向いている方向を算出する。レール12の伸縮により2m以上離れた位置においてGPSセンサ11が位置情報を測定する場合、0.1度の分解能で方位を測定することができる。
【0032】
図4は、本実施の形態における別の方位測定装置の構成を示す概略構成図である。
【0033】
図4に示す方位測定装置は、図1で示した構成に加えて、レール12の伸縮方向を正確に90度回転させる蝶番14を備える。
【0034】
まず、図4(a),(b)に示すように、レール12を水平に配置して、レール12を縮めた状態とレール12を延ばした状態でGPSセンサ11により位置情報を測定し、水平方向の方位を測定する。
【0035】
続いて、図4(c)に示すように、蝶番14によりレール12を90度回転させ、レール12の伸縮方向が地面に対して垂直方向となるようにする。そして、レール12を縮めた状態で位置情報を測定する。ここで測定した位置情報を第3センサ位置とする。
【0036】
続いて、図4(d)に示すように、レール12を地面に対して垂直方向に延ばし、レール12を延ばした状態で位置情報を測定する。ここで測定した位置情報を第4センサ位置とする。また、レール12を延ばした距離、つまり、GPSセンサ11の移動距離も測定する。
【0037】
そして、算出部132は、第3、第4センサ位置とGPSセンサ11の移動距離から、レール12を水平位置から90度回転させたときの地面の鉛直方向に対するレール12の傾きを算出する。
【0038】
図5は、本実施の形態におけるさらに別の方位測定装置の構成を示す概略構成図である。
【0039】
図5に示す方位測定装置は、伸縮可能なレールに替えて、直線状に伸びたレール22を備え、GPSセンサ21をレール22上で長手方向に可動としたものである。GPSセンサ21を可動とするには、GPSセンサ21に車輪を付けたり、レール22にベルトコンベアを備えてGPSセンサ21をベルトコンベアに配置する方法など考えられる。レール22の一端でGPSセンサ21により位置情報を測定した後、GPSセンサ21をレール22の他端に移動させて位置情報を取得することで、レール22の両端の位置情報に基づいてレール22の長手方向の方位を算出することができる。
【0040】
以上説明したように、本実施の形態によれば、位置情報を測定するGPSセンサ11、GPSセンサ11を長手方向に直線的に移動させるレール12を備え、計算機13がGPSセンサ11の移動前後で測定した2つの位置情報からGPSセンサ11の移動方向の方位を算出することで、レール12の長手方向の方位を簡便かつ高い精度で計測することが可能となる。また、レール12の先端にGPSセンサ11を取り付け、レール12を伸縮可能とすることで、方位測定装置の小型化を図ることができる。
【符号の説明】
【0041】
11…GPSセンサ
12…レール
13…計算機
131…入力部
132…算出部
14…蝶番
51…アンテナ
52…無線機
53…レール取付治具
21…GPSセンサ
22…レール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自身の位置情報を取得して出力する位置取得手段と、
前記位置取得手段を取り付け、当該位置取得手段を直線的に移動させる移動手段と、
前記位置取得手段の移動前後それぞれにおける前記位置情報を入力する入力手段と、
入力した2つの前記位置情報に基づいて前記位置取得手段の移動方向の方位を算出する算出手段と、
を有しており、移動距離は必要とする方位精度を得るために必要な長さ以上であることを特徴とする方位測定装置。
【請求項2】
前記移動手段は伸縮可能な棒状体であり、前記位置取得手段は当該棒状体の端に取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の方位測定装置。
【請求項3】
前記移動手段に取り付けられ、前記移動方向を回転可能にする回転手段を有することを特徴とする請求項1又は2記載の方位測定装置。
【請求項4】
前記移動手段はアンテナに取り付けるものであり、前記移動手段を前記アンテナに取り付けた際に、前記移動方向が当該アンテナのメインビームの放射方向に対して平行であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の方位測定装置。
【請求項5】
自身の位置情報を取得して出力する位置取得手段により、第1の位置情報を取得するステップと、
前記位置取得手段を取り付けた移動手段により、前記位置取得手段を必要とする方位精度を得るために必要な長さ以上、直線的に移動させるステップと、
前記位置取得手段を移動後に、第2の位置情報を取得するステップと、
第1、第2の位置情報に基づいて前記位置移動手段の移動方向の方位を算出するステップと、
を有することを特徴とする方位測定方法。
【請求項6】
前記移動手段は伸縮可能な棒状体であり、前記位置取得手段は当該棒状体の端に取り付けらており、
前記移動させるステップは、前記棒状体を伸縮させることで前記位置取得手段を直線的に移動させることを特徴とする請求項5記載の方位測定方法。
【請求項7】
前記方位を算出するステップの後に、前記移動方向を第2の移動方向へ回転させるステップと、
前記移動方向を回転後に、前記位置取得手段により第3の位置情報を取得するステップと、
前記第3の位置情報を取得後に、前記位置取得手段を直線的に移動させるステップと、
前記位置取得手段を移動後に、第4の位置情報を取得するステップと、
第3、第4の位置情報に基づいて前記位置移動手段の第2の移動方向の方位を算出するステップと、
を有することを特徴とする請求項5又は6に記載の方位測定方法。
【請求項8】
前記第1の位置情報を取得する前に、前記移動方向がアンテナのメインビームの放射方向に対して平行となるように前記移動手段を当該アンテナに取り付けるステップを有することを特徴とする請求項5乃至7のいずれかに記載の方位測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−153854(P2011−153854A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14282(P2010−14282)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、総務省、「電波資源拡大のための研究開発」のうち、「ミリ波帯高精細映像伝送技術の研究開発」に係る委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】