施肥機
【課題】従来の空気噴流式施肥機においては、圧縮空気を発生させるのにブロア等の発生装置を別途設ける必要があり、施肥機の製造コストが高くなり、組み立て性やメンテナンス性も低下する、という問題があった。更に、肥料の搬送に用いられる圧縮空気にはかなりの風量が要求されるため、駆動に用いられるエンジンやモータにおけるエネルギー消費量が大きく、その分、燃料費等の運転コストが高くなる、という問題があった。
【解決手段】エンジン2の水冷用のラジエータ47を通過した後の冷却風を圧縮空気として供給可能な供給機構10を備えるものであり、この供給機構10は、前記ラジエータ47と、該ラジエータ47に前記冷却風を送風するための送風機48を有し、該送風機48の吸気側に前記ラジエータ47を配置すると共に、前記送風機48の排気口48bを搬送パイプ39に連通させる。
【解決手段】エンジン2の水冷用のラジエータ47を通過した後の冷却風を圧縮空気として供給可能な供給機構10を備えるものであり、この供給機構10は、前記ラジエータ47と、該ラジエータ47に前記冷却風を送風するための送風機48を有し、該送風機48の吸気側に前記ラジエータ47を配置すると共に、前記送風機48の排気口48bを搬送パイプ39に連通させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繰出装置から繰り出される肥料を搬送パイプを流れる圧縮空気によって施肥部まで搬送する空気噴流式の施肥機に関し、特に圧縮空気の供給機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の空気噴流式施肥機においては、エンジン、モータ等によって駆動されるブロアやコンプレッサー等で発生させた圧縮空気を、ホース等を介して肥料の搬送パイプに供給することにより、施肥機の施肥部まで肥料を搬送する技術が公知となっている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3430461号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、圧縮空気を発生させるには、前記ブロアやコンプレッサ等の発生装置を別途設ける必要があり、その分、施肥機の製造コストが高くなり、更に、前記発生装置を配置することによって、施肥機を搭載した田植機等の作業車両における装置設置や作業のための空間が小さくなり、組み立て性やメンテナンス性が低下する、という問題があった。
【0004】
更に、肥料の搬送に用いられる圧縮空気にはかなりの風量が要求されるため、駆動に用いられるエンジンやモータにおけるエネルギー消費量が大きく、その分、燃料費等の運転コストが高くなる、という問題があった。
【0005】
また、施肥機に使用する肥料はその潮解性から付着しやすく、特に、粉末を粒状に成型した粒状肥料を空気噴流式の施肥機に使用すると、肥料表面が外気や圧縮空気中の湿気を吸って、ホッパ、繰出装置、及び搬送パイプ等の各搬送部材の内壁に付着しやすく、はがれた一部がこびり付いて錆等の原因となったり、次の作業で他の肥料がその上に付着して詰まりの原因となったりする、という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
すなわち、請求項1においては、繰出装置から繰り出される肥料を搬送パイプを流れる圧縮空気によって施肥部まで搬送する構成を有する施肥機において、エンジンの水冷用のラジエータを通過した後の冷却風を前記圧縮空気として供給可能な供給機構を備えたものである。
請求項2においては、前記供給機構は、前記ラジエータと、該ラジエータに前記冷却風を送風するための送風機を有し、該送風機の吸気側に前記ラジエータを配置すると共に、前記送風機の排気口を前記搬送パイプに連通させるものである。
請求項3においては、前記ラジエータと送風機との間に、エンジンを介設するものである。
請求項4においては、前記供給機構は、前記ラジエータと、該ラジエータに前記冷却風を送風するための送風機を有し、該送風機の排気側に前記ラジエータを配置すると共に、該ラジエータを挟んで前記送風機と反対側にダクトを設け、該ダクトの排気口を前記搬送パイプに連通させるものである。
請求項5においては、前記送風機とダクトとの間に、該ダクトに前記冷却風を案内する導風ガイドを設けるものである。
請求項6においては、前記送風機とダクトとの間に、エンジンを介設するものである。
請求項7においては、前記排気口から排出される圧縮空気の送出先を、前記搬送パイプ側と前記エンジン側の少なくとも一方に切り換え可能な切換機構を設けるものである。
請求項8においては、前記供給機構には、圧縮空気の発生装置を別途設け、該発生装置の吐出口を前記搬送パイプに連通させるものである。
請求項9においては、前記施肥機には、肥料を貯溜して前記繰出装置に供給するホッパを設け、該ホッパを介して、前記排気口を搬送パイプに連通させるものである。
請求項10においては、前記送風機は、輻流式の送風機とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、以上のように構成したので、以下に示す効果を奏する。
すなわち、請求項1においては、繰出装置から繰り出される肥料を搬送パイプを流れる圧縮空気によって施肥部まで搬送する構成を有する施肥機において、エンジンの水冷用のラジエータを通過した後の冷却風を前記圧縮空気として供給可能な供給機構を備えたので、圧縮空気を発生させるのにブロアやコンプレッサ等の発生装置を別途に設ける必要がなく、施肥機の製造コストを低減することができ、更に、施肥機を搭載した田植機等の作業車両における装置設置や作業のための空間が広くなり、組み立て性やメンテナンス性が向上する。加えて、ラジエータ通過後の冷却風を圧縮空気として再利用できるため、圧縮空気生成に必要な燃料費等の分だけ運転コストを低減することができる。また、ラジエータから熱を奪うことによって冷却風は高温となるため、この高温の圧縮空気が搬送パイプを流れて肥料や前記各搬送部材の内壁を乾燥させ、肥料の付着による錆や詰まりの発生を確実に防止することができる。
請求項2においては、前記供給機構は、前記ラジエータと、該ラジエータに前記冷却風を送風するための送風機を有し、該送風機の吸気側に前記ラジエータを配置すると共に、前記送風機の排気口を前記搬送パイプに連通させるので、ラジエータを通過した冷却風を、送風機で全て集めて、該送風機の排気口から圧縮空気として搬送パイプに送出することができ、ダクト等の集気構造を設けることなく簡単な構成で供給機構を形成することができ、組み立て性やメンテナンス性の向上を図ることができる。
請求項3においては、前記ラジエータと送風機との間に、エンジンを介設するので、冷却風をラジエータだけでなくエンジンをも通過させ、圧縮空気の温度を更に高温にすることができ、肥料や各搬送部材の内壁を十分に乾燥させ、肥料の付着による錆や詰まりの発生を一層確実に防止することができる。
請求項4においては、前記供給機構は、前記ラジエータと、該ラジエータに前記冷却風を送風するための送風機を有し、該送風機の排気側に前記ラジエータを配置すると共に、該ラジエータを挟んで前記送風機と反対側にダクトを設け、該ダクトの排気口を前記搬送パイプに連通させるので、ラジエータを通過した冷却風を送風機ではなくダクトに流れ込ませ、高温の冷却風による送風機の熱損を軽減することができ、送風機の機器寿命の延長を図ることができる。
請求項5においては、前記送風機とダクトとの間に、該ダクトに前記冷却風を案内する導風ガイドを設けるので、冷却風を外部に逃がすことなくダクトに集めることができ、十分な風量の圧縮空気を確保し肥料の搬送効率の向上を図ることができる。
請求項6においては、前記送風機とダクトとの間に、エンジンを介設するので、冷却風をラジエータだけでなくエンジンをも通過させ、圧縮空気の温度を更に高温にすることができ、肥料や各搬送部材の内壁を十分に乾燥させ、肥料の付着による錆や詰まりの発生を一層確実に防止することができる。
請求項7においては、前記排気口から排出される圧縮空気の送出先を、前記搬送パイプ側と前記エンジン側の少なくとも一方に切り換え可能な切換機構を設けるので、施肥機を使用しない場合には、切換機構を操作して冷却風をエンジン側にも送風し、従来のように、ラジエータによる水冷に加えて空冷によってもエンジンを冷却することができ、ラジエータを通った冷却風を無駄にすることなく有効に利用することができる。
請求項8においては、前記供給機構には、圧縮空気の発生装置を別途設け、該発生装置の送風口を前記搬送パイプに連通させるので、搬送パイプ内を流れる圧縮空気の風量や温度を適切に調整することができ、肥料状態、施肥量の変化への迅速な対応、及び簡単操作によるホッパ等の清浄化が可能となる。
請求項9においては、前記施肥機には、肥料を貯溜して前記繰出装置に供給するホッパを設け、該ホッパを介して、前記排気口を搬送パイプに連通させるので、圧縮空気をホッパを通って搬送パイプに送ることができ、肥料をホッパやその下の繰出装置内に残留させることなく圧縮空気と一緒に搬送パイプに送出し、肥料の付着による錆や詰まりの発生を確実に防止することができる。
請求項10においては、前記送風機は、輻流式の送風機であるので、羽根出口角に直角またはそれに近い角度を設け、強度としては最も強い形の羽根を備えることができ、高速回転が可能となって、肥料搬送に必要な風量を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、本発明の実施形態を、本発明に係わる施肥機を田植機の測条施肥に適用した実施例によって説明する。なお、図1は本発明に係わる田植機の側面図、図2は施肥機のホッパ側面一部断面図、図3は供給機構を示す、ボンネットの側面図、図4は切換バルブを備えた供給機構を示す、ボンネットの側面図、図5はモータを備えた供給機構を示す、ボンネットの側面図、図6は第二実施例の供給機構を示す、ボンネットの側面図、図7は第三実施例の供給機構を示す、ボンネットの側面図、図8は第三実施例で配置構成の異なる供給機構を示す、ボンネットの側面図、図9はブロワを別途設けた施肥機のホッパ側面一部断面図、図10は分岐型の給気パイプ設けた供給機構を示す、田植機の平面図、図11は給気パイプをホッパに接続した施肥機のホッパ側面一部断面図である。
【0009】
まず、本発明に係わる施肥機を搭載した乗用田植機について、図1により説明する。
作業者が搭乗する走行機体である走行車1においては、エンジン2が車体フレーム3の前部上方に搭載されると共に、ミッションケース4前方にはフロントアクスルケース5を介して水田走行用の前輪6が支持され、前記ミッションケース4の後部にはリヤアクスルケース7が連設され、該リヤアクスルケース7によって水田走行用の後輪8が支持されている。そして、前記車体フレーム3の前後方向略中央には運転席9が取り付けられ、該運転席9の前方に、前記エンジン2と本発明に係わる供給機構10とを被装するボンネット12が配設され、該ボンネット12後部には、操向ハンドル11が設けられている。このような構成において、図示せぬレバーやペダル等を操作すると、エンジン2の駆動力が図示せぬユニバーサルジョイント等を介して前記ミッションケース4に入力され、該ミッションケース4で変速された駆動力が前後輪6・8や植付部15に伝達され、走行車1の走行動作、及び植付部15の植付動作や昇降動作が行われるようにしている。
【0010】
更に、前記植付部15は、走行車1の後部に連結されると共に、該植付部15には、苗載台16、その上部に配設した予備苗載台14、及び複数の植付爪17等が具備されている。このうち、前高後低で傾斜式の前記苗載台16は、下部レール18及びガイドレール19を介して植付ケース20に左右往復摺動自在に支持されると共に、一方向に等速回転するロータリケース21が前記植付ケース20に支持されている。該ロータリーケース21の回転軸心を中心にして対称位置に一対の爪ケース22が配設され、該爪ケース22の先端に前記植付爪17が設けられている。更に、前記植付ケース20の前側には、ローリング支点軸23を介して支持フレーム24に連結され、該支持フレーム24は、トップリンク25及びロワリンク26から成るリンク機構27を介して前記走行車1の後側に連結されると共に、前記ロワリンク26には、リンク機構27を介して植付部15を昇降させる昇降シリンダ28が連結されている。このような構成により、前記前後輪6・8を走行駆動して移動すると同時に、左右に往復摺動する苗載台16から一株分の苗を植付爪17によって取り出し、連続的に苗植え作業を行うようにしている。
【0011】
また、前記運転席9の近傍には、本発明に係わる施肥機36の本体が搭載されている。そして、該施肥機36による施肥作業や、前記植付部15による植付作業が正確に行えるように、前記植付部15の下部には、植付部15を一定の高さに保持する均平用のセンターフロート34とサイドフロート35・35が配設されている。このうちのセンターフロート34は、走行車1の左右中心線上に配置され、このセンターフロート34を挟んで左右対称位置に、前記サイドフロート35・35が配設されており、これによって、前記植付部15の左右のバランスを良好に保って植え付け姿勢を安定させ、施肥や植え付けを正確に行えるようにしている。
【0012】
次に、前記施肥機36について、図1、図2により説明する。
該施肥機36は、肥料を収納するホッパ37と、肥料を一定量ずつ繰り出す肥料繰出部である繰出装置38と、繰り出された肥料を圧縮空気で空気搬送する搬送パイプ39と、該搬送パイプ39の後端に接続する作溝器42と、搬送パイプ39に圧縮空気を送る円筒型のエアチャンバ43と、該エアチャンバ43に圧縮空気を供給するための供給機構10とから構成されている。
【0013】
このうちの搬送パイプ39は、前記繰出装置38の下部に接続されるジョイント部40と、該ジョイント部40後部に接続される搬送部41とから成り、該搬送部41は可撓性の樹脂ホース等で自在に屈曲できるように形成されると共に、この搬送部41の後端は前記作溝器42に接続されている。該作溝器42は、前記植付部15のセンターフロート34とサイドフロート35・35の植付位置前側方の底部にそれぞれ配置され、搬送されてきた肥料を落下させる溝を形成するのである。
【0014】
前記ホッパ37と繰出装置38等は、運転席9の後方で走行車1の後部上方に、前記植付部15と同じ条数分だけ幅方向に複数配置されている。そして、このうちの繰出装置38の繰出ケース31内には、繰出部としての繰出ロール32が回転自在に軸支され、該繰出ロール32の外周には肥料を挿入できる凹部が一定間隔をおいて形成されており、繰出ロール32は図示せぬモータ等で回転駆動され、凹部に入った一定量の肥料がホッパ37側から下方へ搬送して繰り出されようにしている。なお、繰出手段としては、このようなロールに限定するものではなく、目皿式やベルト式等であってもよい。
【0015】
前記繰出装置38の下部は、ロート状となって前記ジョイント部40に接続され、該ジョイント部40の前端は、運転席9と繰出装置38との間に横設された前記エアチャンバ43側面に接続されると共に、該エアチャンバ43の一側端近傍には、前記供給機構10からの圧縮空気を導入するための給気パイプ44が連通されている。
【0016】
このような構成において、繰出装置38から一定量ずつ繰り出された肥料は、ジョイント部40に落下すると、前記供給機構10から給気パイプ44を介して送られてきた圧縮空気によって、前記ジョイント部40から搬送部41を経由して施肥部まで迅速に搬送されるのである。
【0017】
次に、本発明に係わる供給機構10について、図3、図4、図5により説明する。
図3に示すように、ボンネット12内の供給機構10においては、前記車体フレーム3の前部に支持フレーム45が形成され、該支持フレーム45にラジエータステー46が固定され、該ラジエータステー46の上面に、前記エンジン2を冷却するためのラジエータ47が固設されている。そして、該ラジエータ47の後方には、前記支持フレーム45に取付フレーム50によって固定された送風機48と、同じ支持フレーム45に防振ゴム51を介して取り付けられた前記エンジン2が、前から順に配設されている。
【0018】
前記ラジエータ47前方のボンネット12には多数の通気孔12aが開口される一方、ラジエータ47の後部には、導風ガイドとなるシュラウド49が装着され、該シュラウド49は後方に行くほど絞られたロート状を呈し、シュラウド49後端は、前記送風機48の吸気口48aに固定されている。そして、この送風機48の回転軸48cは前記エンジン2の出力軸2aと連結され、エンジン2によって送風機48を駆動できるようにしている。更に、送風機48下部に設けられた排気口48bには、前記給気パイプ44の一端が接続され、この給気パイプ44の他端は、前記エアチャンバ43に接続されており、送風機48で発生した圧縮空気を、給気パイプ44からエアチャンバ43を介して前記搬送パイプ39に送出して供給できるようにしている。
【0019】
このような構成において、エンジン2を始動させると、送風機48が駆動して吸気口48aから空気が吸引されるためにシュラウド49内が負圧となり、低温の外気が通気孔12aから吸引されて冷却風としてラジエータ47を通過し、該ラジエータ47から熱を奪った後に送風機48内に吸い込まれる。この高温の冷却風は、送風機48内で圧縮され、排気口48bから搬送パイプ39に向かって送出されるのである。
【0020】
すなわち、繰出装置38から繰り出される肥料を搬送パイプ39を流れる圧縮空気によって施肥部まで搬送する構成を有する施肥機36において、エンジン2の水冷用のラジエータ47を通過した後の冷却風を前記圧縮空気として供給可能な供給機構10を備えたので、圧縮空気を発生させるのにブロアやコンプレッサ等の発生装置を別途に設ける必要がなく、施肥機36の製造コストを低減することができ、更に、施肥機36を搭載した田植機等の作業車両における装置設置や作業のための空間が広くなり、組み立て性やメンテナンス性が向上する。加えて、ラジエータ47通過後の冷却風を圧縮空気として再利用できるため、圧縮空気生成に必要な燃料費等の分だけ運転コストを低減することができる。また、ラジエータ47から熱を奪うことによって冷却風は高温となるため、この高温の圧縮空気が搬送パイプ39を流れて肥料や前記各搬送部材の内壁を乾燥させ、肥料の付着による錆や詰まりの発生を確実に防止することができる。
【0021】
加えて、前記供給機構10は、前記ラジエータ47と、該ラジエータ47に前記冷却風を送風するための送風機48を有し、該送風機48の吸気側に前記ラジエータ47を配置すると共に、前記送風機48の排気口48bを前記搬送パイプ39に連通させるので、ラジエータ47を通過した冷却風を、送風機48で全て集めて、該送風機48の排気口48bから圧縮空気として搬送パイプ39に送出することができ、ダクト等の集気構造を設けることなく簡単な構成で供給機構10を形成することができ、組み立て性やメンテナンス性の向上を図ることができる。
【0022】
また、図4に示すように、前記給気パイプ44の途中部に切換バルブ52を設ける一方、吐出側が前記エンジン2を臨むように排気フード54を配設し、該排気フード54と前記切換バルブ52とを連結パイプ53を介して連通し、この切換バルブ52により、前記排気口48bの接続先を連結パイプ53と給気パイプ44の少なくとも一方に切換可能な構成としてもよい。これにより、施肥機36を使用しない場合は、切換バルブ52を連結パイプ53側に切り換え、送風機48からの圧縮空気を連結パイプ53経由で排気フード54に送出し、従来のようにエンジン2を空冷することができる。
【0023】
すなわち、前記排気口48bから排出される圧縮空気の送出先を、前記搬送パイプ39側と前記エンジン2側の少なくとも一方に切り換え可能な切換機構である切換バルブ52を設けるので、施肥機36を使用しない場合には、切換バルブ52を操作して冷却風をエンジン2側にも送風し、従来のように、ラジエータ47による水冷に加えて空冷によってもエンジン2を冷却することができ、ラジエータ47を通った冷却風を無駄にすることなく有効に利用することができる。
【0024】
また、図5に示すように、前記送風機48にモータ55を付設し、該モータ55によって送風機48を回転駆動する構成としてもよい。これにより、エンジン2をラジエータ47や送風機48と離間させて配置することが可能となり、各機器や装置のレイアウトの自由度を高めることができる。例えば、ラジエータ47と送風機48はそのままで重いエンジン2のみを運転席9下方に移動させ、これにより、機体重心が前輪6・6と後輪8・8との間に位置するようにして全体の重量バランスを調整し、走行安定性を向上させることもできる。
【0025】
更に、前記モータ55への電力はバッテリ56から供給され、該バッテリ56は、前記エンジン2により駆動される発電機57によって充電される構成としてもよい。これにより、モータ55が、エンジン稼働中に充電されたバッテリ56からの電力で送風機48を回転駆動させることができ、エンジン2の稼働状況に関係なく、圧縮空気を搬送パイプ39に供給することができる。従って、施肥作業を終了した後に圧縮空気を流して搬送パイプ39内部に残留している肥料や粉塵等を清掃するような場合でも、エンジン2を稼働させておく必要がなく、燃料費の低減や作業環境の改善を図ることができるのである。
【0026】
次に、第二実施例の供給機構29について、図6により説明する。
供給機構29においては、前記支持フレーム45上に、ラジエータ47、エンジン58、及び送風機59が前から順に配設され、該送風機59の回転軸59cは前記エンジン58から後方に延出された出力軸58aと連結されている。更に、ラジエータ47の後部から、エンジン58、送風機59の吸気口59aにかけて、シュラウド60が形成されると共に、送風機59下部に設けられた排気口59には、前記給気パイプ44の一端が接続され、該給気パイプ44の他端は、前記エアチャンバ43を介して搬送パイプ39に接続されている。
【0027】
このような構成において、エンジン58を始動させると、送風機59が駆動して吸気口59aから空気が吸引されるためにシュラウド60内が負圧となり、低温の外気がボンネット12の通気孔12aから吸引されて冷却風としてラジエータ47を通過する。該ラジエータ47から熱を奪った冷却風は、表面温度が高くなっているエンジン58を通過して更に熱を奪った後、吸気口59aから送風機59内に吸い込まれる。このようにして、ラジエータ47のみを通過した場合に比べ更に高温となった冷却風は、送風機59内で圧縮され、排気口59bから前記搬送パイプ39に向かって送出されるのである。
【0028】
すなわち、前記ラジエータ47と送風機59との間に、エンジン58を介設するので、冷却風をラジエータ47だけでなくエンジン58をも通過させ、圧縮空気の温度を更に高温にすることができ、肥料や各搬送部材の内壁を十分に乾燥させ、肥料の付着による錆や詰まりの発生を一層確実に防止することができる。
【0029】
次に、第三実施例の供給機構について、図7、図8により説明する。
本供給機構30a、30bにおいては、前記供給機構10、29と異なり、送風機の排気側にラジエータ47を配置すると共に、送風機で発生しラジエータ47通過してきた冷却風は、ラジエータ47後方に設けられたダクト62に集められて前記給気パイプ44に送られる構成となっている。
【0030】
例えば、図7の供給機構30aにおいては、支持フレーム45の上に、送風機61、エンジン2、ラジエータ47、及びダクト62が前から順に配設されると共に、送風機61の排気口61bから、エンジン2、ラジエータ47にかけて、シュラウド63が形成されている。更に、前記ダクト62下端に設けられた排気口62bには、前記給気パイプ44の一端が接続され、該給気パイプ44の他端は前記搬送パイプ39に接続されている。
【0031】
このような構成において、エンジン2を始動させて送風機61を駆動させると、ボンネット12の通気孔12aを通ってきた低温の外気が吸気口61aから吸引され、冷却風として排気口61bから吐出される。吐出した冷却風は、外部に漏れることなくシュラウド63内部でエンジン2とラジエータ47を通過して大量の熱を奪った後、ダクト62のフード62aに流入し、排気口62aによって絞られ、高温の圧縮空気として給気パイプ44を介して前記搬送パイプ39に向かって送出される。
【0032】
すなわち、供給機構30aは、前記ラジエータ47と、該ラジエータ47に前記冷却風を送風するための送風機61を有し、該送風機61の排気側に前記ラジエータ47を配置すると共に、該ラジエータ47を挟んで前記送風機61と反対側にダクト62を設け、該ダクト62の排気口62bを前記搬送パイプ39に連通させるので、ラジエータ47を通過した冷却風を送風機61ではなくダクト62に流れ込ませ、高温の冷却風による送風機61の熱損を軽減することができ、送風機61の機器寿命の延長を図ることができる。
【0033】
更に、前記送風機61とダクト62との間に、該ダクト62に冷却風を案内する導風ガイドであるシュラウド63を設けるので、冷却風を外部に逃がすことなくダクト62に集めることができ、十分な風量の圧縮空気を確保し肥料の搬送効率の向上を図ることができる。
【0034】
その上、前記送風機61とダクト62との間に、エンジン2を介設するので、冷却風をラジエータ47だけでなくエンジン2をも通過させ、圧縮空気の温度を更に高温にすることができ、肥料や各搬送部材の内壁を十分に乾燥させ、肥料の付着による錆や詰まりの発生を一層確実に防止することができるのである。
【0035】
また、図8の供給機構30bにおいては、モータ65を付設した送風機67、ラジエータ47、エンジン2、及びダクト62が前から順に配設されると共に、送風機67の排気口67bから、ラジエータ47、エンジン2、ダクト62のフード62a前部にかけて、シュラウド64が形成されている。この場合、低温の外気から成る冷却風が最初にラジエータ47を通過するので、ラジエータ47での熱交換効率は高く、ラジエータ47によるエンジン2の水冷効率を高めることができる。
【0036】
次に、以上のような供給機構における、肥料搬送性能の向上技術について、図9乃至図11により説明する。
図9に示すように、前記エアチャンバ43の一側端近傍には、前述の如く、前記供給機構10、29、30a、30bからの給気パイプ44の後端を接続すると共に、エアチャンバ43近傍には、モータ66aで駆動されるブロワ66を新たに設け、該ブロワ66の送風口66bを前記エアチャンバ43の一側端に接続し連通させてもよい。これにより、通常は、従来のように、このブロワ66からの圧縮空気のみで肥料を搬送するようにしておき、肥料が湿気を吸って、ホッパ37、繰出装置38、及び搬送パイプ39等の各搬送部材の内壁に付着しているような場合に、前記供給機構10、29、30a、30bからの高温の圧縮空気を更に加え、圧縮空気の風量増加と温風化を図ることができる。逆に、通常は、前記供給機構10、29、30a、30bからの高温の圧縮空気で肥料を搬送するようにしておき、施肥量を増やしたり、施肥作業終了後に搬送パイプ39内を負圧にし、繰出装置38やその上のホッパ37内に残留している肥料や粉塵等を搬送パイプ39内に吸引したい場合等に、ブロワ66を駆動させて圧縮空気を更に加え、風量のみを大きく増加させることもできる。
【0037】
すなわち、前記供給機構10、29、30a、30bには、圧縮空気の発生装置であるブロワ66を別途設け、該ブロワ66の送風口66bを前記搬送パイプ39に連通させるので、搬送パイプ39内を流れる圧縮空気の風量や温度を適切に調整することができ、肥料状態、施肥量の変化への迅速な対応、及び簡単操作によるホッパ37等の清浄化が可能となる。
【0038】
また、図10に示すように、前記エアチャンバ43を省略すると共に、途中で一本の基パイプ68aから複数の分岐パイプ68aに分かれる分岐型の給気パイプ68を設け、各分岐パイプ68aの後端を、前記搬送パイプ39のジョイント部40の前端と略同一軸芯上で接続させるようにしてもよい。図1、図2に示すように、搬送パイプ39までの圧縮空気の流路が、単パイプ型の給気パイプ44とエアチャンバ43とから構成される場合は、給気パイプ44とエアチャンバ43との継手部、エアチャンバ43とジョイント部40との継手部での圧力損失が大きい。これに対し、分岐型の給気パイプ68の場合は、給気パイプ68から搬送パイプ39までの継手部が、分岐パイプ68aとジョイント部40との間の一箇所だけであり、しかも、分岐パイプ68aとジョイント部40とは略同一軸芯上にあって圧縮空気の流れ方向の変化も極めて小さい。
【0039】
従って、搬送パイプ39までの圧縮空気の流路における圧力損失を大きく低減することができるのである。なお、この給気パイプ68は、前記基パイプ68aの後部からジョイント部40前端にかけての立ち上がりができるだけ緩やかとなるように構成するのが好ましい。これにより、圧縮空気の流れ方向の変化を一層小さくして、圧縮空気の圧力損失を更に低減することができる。
【0040】
また、図11に示すように、前記分岐パイプ68aをジョイント部40ではなく各ホッパ37の側面に接続し、その先端をホッパ37下部のロート状の内部傾斜面37aに沿うように屈曲して形成してもよい。これにより、高温の圧縮空気を、ホッパ37から繰出装置38を経由して搬送パイプ39に送ることができる。
【0041】
すなわち、前記施肥機36には、肥料を貯溜して前記繰出装置38に供給するホッパ37を設け、該ホッパ37を介して、前記排気口48bを搬送パイプ39に連通させるので、圧縮空気をホッパ37を通って搬送パイプ39に送ることができ、肥料をホッパ37やその下の繰出装置38内に残留させることなく圧縮空気と一緒に搬送パイプ39に送出し、肥料の付着による錆や詰まりの発生を確実に防止することができるのである。
【0042】
また、前記送風機48・59・61・67の形式は特に限定されるものではないが、肥料搬送性能を更に向上させるには、径向きの羽根を有する、いわゆる輻流式の送風機であるのが好ましい。この輻流式においては、羽根出口角が90度又はそれに近い角度を有し、そのため、羽根の強度としては最も強い形が得られ、回転速度を大きくしても羽根が十分に耐えられる構成となっている。
【0043】
すなわち、前記送風機48・59・61・67は、輻流式の送風機であるので、強度としては最も強い形の羽根を備えることができ、高速回転が可能となって、肥料搬送に必要な風量を確保することができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、同様な構成を有する施肥機だけでなく、エンジン水冷用のラジエータと該ラジエータの空冷のための送風機を搭載すると共に、高温の圧縮空気を使用する空気乾燥装置等の機器類にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係わる田植機の側面図である。
【図2】施肥機のホッパの側面一部断面図である。
【図3】供給機構を示す、ボンネットの側面図である。
【図4】切換バルブを備えた供給機構を示す、ボンネットの側面一部断面図である。
【図5】モータを備えた供給機構を示す、ボンネットの側面一部断面図である。
【図6】第二実施例の供給機構を示す、ボンネットの側面一部断面図である。
【図7】第三実施例の供給機構を示す、ボンネットの側面一部断面図である。
【図8】第三実施例で配置構成の異なる供給機構を示す、ボンネットの側面一部断面図である。
【図9】ブロワを別途設けた施肥機におけるホッパの側面一部断面図である。
【図10】分岐型の給気パイプ設けた供給機構を示す、田植機の平面図である。
【図11】給気パイプをホッパに接続した施肥機におけるホッパの側面一部断面図である。
【符号の説明】
【0046】
2・58 エンジン
10・29・30a・30b 供給機構
36 施肥機
37 ホッパ
38 繰出装置
39 搬送パイプ
47 ラジエータ
48・59・61・67 送風機
48b・62b 排気口
52 切換機構
62 ダクト
63 導風ガイド
66 発生装置
66b 送風口
【技術分野】
【0001】
本発明は、繰出装置から繰り出される肥料を搬送パイプを流れる圧縮空気によって施肥部まで搬送する空気噴流式の施肥機に関し、特に圧縮空気の供給機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の空気噴流式施肥機においては、エンジン、モータ等によって駆動されるブロアやコンプレッサー等で発生させた圧縮空気を、ホース等を介して肥料の搬送パイプに供給することにより、施肥機の施肥部まで肥料を搬送する技術が公知となっている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3430461号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、圧縮空気を発生させるには、前記ブロアやコンプレッサ等の発生装置を別途設ける必要があり、その分、施肥機の製造コストが高くなり、更に、前記発生装置を配置することによって、施肥機を搭載した田植機等の作業車両における装置設置や作業のための空間が小さくなり、組み立て性やメンテナンス性が低下する、という問題があった。
【0004】
更に、肥料の搬送に用いられる圧縮空気にはかなりの風量が要求されるため、駆動に用いられるエンジンやモータにおけるエネルギー消費量が大きく、その分、燃料費等の運転コストが高くなる、という問題があった。
【0005】
また、施肥機に使用する肥料はその潮解性から付着しやすく、特に、粉末を粒状に成型した粒状肥料を空気噴流式の施肥機に使用すると、肥料表面が外気や圧縮空気中の湿気を吸って、ホッパ、繰出装置、及び搬送パイプ等の各搬送部材の内壁に付着しやすく、はがれた一部がこびり付いて錆等の原因となったり、次の作業で他の肥料がその上に付着して詰まりの原因となったりする、という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
すなわち、請求項1においては、繰出装置から繰り出される肥料を搬送パイプを流れる圧縮空気によって施肥部まで搬送する構成を有する施肥機において、エンジンの水冷用のラジエータを通過した後の冷却風を前記圧縮空気として供給可能な供給機構を備えたものである。
請求項2においては、前記供給機構は、前記ラジエータと、該ラジエータに前記冷却風を送風するための送風機を有し、該送風機の吸気側に前記ラジエータを配置すると共に、前記送風機の排気口を前記搬送パイプに連通させるものである。
請求項3においては、前記ラジエータと送風機との間に、エンジンを介設するものである。
請求項4においては、前記供給機構は、前記ラジエータと、該ラジエータに前記冷却風を送風するための送風機を有し、該送風機の排気側に前記ラジエータを配置すると共に、該ラジエータを挟んで前記送風機と反対側にダクトを設け、該ダクトの排気口を前記搬送パイプに連通させるものである。
請求項5においては、前記送風機とダクトとの間に、該ダクトに前記冷却風を案内する導風ガイドを設けるものである。
請求項6においては、前記送風機とダクトとの間に、エンジンを介設するものである。
請求項7においては、前記排気口から排出される圧縮空気の送出先を、前記搬送パイプ側と前記エンジン側の少なくとも一方に切り換え可能な切換機構を設けるものである。
請求項8においては、前記供給機構には、圧縮空気の発生装置を別途設け、該発生装置の吐出口を前記搬送パイプに連通させるものである。
請求項9においては、前記施肥機には、肥料を貯溜して前記繰出装置に供給するホッパを設け、該ホッパを介して、前記排気口を搬送パイプに連通させるものである。
請求項10においては、前記送風機は、輻流式の送風機とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、以上のように構成したので、以下に示す効果を奏する。
すなわち、請求項1においては、繰出装置から繰り出される肥料を搬送パイプを流れる圧縮空気によって施肥部まで搬送する構成を有する施肥機において、エンジンの水冷用のラジエータを通過した後の冷却風を前記圧縮空気として供給可能な供給機構を備えたので、圧縮空気を発生させるのにブロアやコンプレッサ等の発生装置を別途に設ける必要がなく、施肥機の製造コストを低減することができ、更に、施肥機を搭載した田植機等の作業車両における装置設置や作業のための空間が広くなり、組み立て性やメンテナンス性が向上する。加えて、ラジエータ通過後の冷却風を圧縮空気として再利用できるため、圧縮空気生成に必要な燃料費等の分だけ運転コストを低減することができる。また、ラジエータから熱を奪うことによって冷却風は高温となるため、この高温の圧縮空気が搬送パイプを流れて肥料や前記各搬送部材の内壁を乾燥させ、肥料の付着による錆や詰まりの発生を確実に防止することができる。
請求項2においては、前記供給機構は、前記ラジエータと、該ラジエータに前記冷却風を送風するための送風機を有し、該送風機の吸気側に前記ラジエータを配置すると共に、前記送風機の排気口を前記搬送パイプに連通させるので、ラジエータを通過した冷却風を、送風機で全て集めて、該送風機の排気口から圧縮空気として搬送パイプに送出することができ、ダクト等の集気構造を設けることなく簡単な構成で供給機構を形成することができ、組み立て性やメンテナンス性の向上を図ることができる。
請求項3においては、前記ラジエータと送風機との間に、エンジンを介設するので、冷却風をラジエータだけでなくエンジンをも通過させ、圧縮空気の温度を更に高温にすることができ、肥料や各搬送部材の内壁を十分に乾燥させ、肥料の付着による錆や詰まりの発生を一層確実に防止することができる。
請求項4においては、前記供給機構は、前記ラジエータと、該ラジエータに前記冷却風を送風するための送風機を有し、該送風機の排気側に前記ラジエータを配置すると共に、該ラジエータを挟んで前記送風機と反対側にダクトを設け、該ダクトの排気口を前記搬送パイプに連通させるので、ラジエータを通過した冷却風を送風機ではなくダクトに流れ込ませ、高温の冷却風による送風機の熱損を軽減することができ、送風機の機器寿命の延長を図ることができる。
請求項5においては、前記送風機とダクトとの間に、該ダクトに前記冷却風を案内する導風ガイドを設けるので、冷却風を外部に逃がすことなくダクトに集めることができ、十分な風量の圧縮空気を確保し肥料の搬送効率の向上を図ることができる。
請求項6においては、前記送風機とダクトとの間に、エンジンを介設するので、冷却風をラジエータだけでなくエンジンをも通過させ、圧縮空気の温度を更に高温にすることができ、肥料や各搬送部材の内壁を十分に乾燥させ、肥料の付着による錆や詰まりの発生を一層確実に防止することができる。
請求項7においては、前記排気口から排出される圧縮空気の送出先を、前記搬送パイプ側と前記エンジン側の少なくとも一方に切り換え可能な切換機構を設けるので、施肥機を使用しない場合には、切換機構を操作して冷却風をエンジン側にも送風し、従来のように、ラジエータによる水冷に加えて空冷によってもエンジンを冷却することができ、ラジエータを通った冷却風を無駄にすることなく有効に利用することができる。
請求項8においては、前記供給機構には、圧縮空気の発生装置を別途設け、該発生装置の送風口を前記搬送パイプに連通させるので、搬送パイプ内を流れる圧縮空気の風量や温度を適切に調整することができ、肥料状態、施肥量の変化への迅速な対応、及び簡単操作によるホッパ等の清浄化が可能となる。
請求項9においては、前記施肥機には、肥料を貯溜して前記繰出装置に供給するホッパを設け、該ホッパを介して、前記排気口を搬送パイプに連通させるので、圧縮空気をホッパを通って搬送パイプに送ることができ、肥料をホッパやその下の繰出装置内に残留させることなく圧縮空気と一緒に搬送パイプに送出し、肥料の付着による錆や詰まりの発生を確実に防止することができる。
請求項10においては、前記送風機は、輻流式の送風機であるので、羽根出口角に直角またはそれに近い角度を設け、強度としては最も強い形の羽根を備えることができ、高速回転が可能となって、肥料搬送に必要な風量を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、本発明の実施形態を、本発明に係わる施肥機を田植機の測条施肥に適用した実施例によって説明する。なお、図1は本発明に係わる田植機の側面図、図2は施肥機のホッパ側面一部断面図、図3は供給機構を示す、ボンネットの側面図、図4は切換バルブを備えた供給機構を示す、ボンネットの側面図、図5はモータを備えた供給機構を示す、ボンネットの側面図、図6は第二実施例の供給機構を示す、ボンネットの側面図、図7は第三実施例の供給機構を示す、ボンネットの側面図、図8は第三実施例で配置構成の異なる供給機構を示す、ボンネットの側面図、図9はブロワを別途設けた施肥機のホッパ側面一部断面図、図10は分岐型の給気パイプ設けた供給機構を示す、田植機の平面図、図11は給気パイプをホッパに接続した施肥機のホッパ側面一部断面図である。
【0009】
まず、本発明に係わる施肥機を搭載した乗用田植機について、図1により説明する。
作業者が搭乗する走行機体である走行車1においては、エンジン2が車体フレーム3の前部上方に搭載されると共に、ミッションケース4前方にはフロントアクスルケース5を介して水田走行用の前輪6が支持され、前記ミッションケース4の後部にはリヤアクスルケース7が連設され、該リヤアクスルケース7によって水田走行用の後輪8が支持されている。そして、前記車体フレーム3の前後方向略中央には運転席9が取り付けられ、該運転席9の前方に、前記エンジン2と本発明に係わる供給機構10とを被装するボンネット12が配設され、該ボンネット12後部には、操向ハンドル11が設けられている。このような構成において、図示せぬレバーやペダル等を操作すると、エンジン2の駆動力が図示せぬユニバーサルジョイント等を介して前記ミッションケース4に入力され、該ミッションケース4で変速された駆動力が前後輪6・8や植付部15に伝達され、走行車1の走行動作、及び植付部15の植付動作や昇降動作が行われるようにしている。
【0010】
更に、前記植付部15は、走行車1の後部に連結されると共に、該植付部15には、苗載台16、その上部に配設した予備苗載台14、及び複数の植付爪17等が具備されている。このうち、前高後低で傾斜式の前記苗載台16は、下部レール18及びガイドレール19を介して植付ケース20に左右往復摺動自在に支持されると共に、一方向に等速回転するロータリケース21が前記植付ケース20に支持されている。該ロータリーケース21の回転軸心を中心にして対称位置に一対の爪ケース22が配設され、該爪ケース22の先端に前記植付爪17が設けられている。更に、前記植付ケース20の前側には、ローリング支点軸23を介して支持フレーム24に連結され、該支持フレーム24は、トップリンク25及びロワリンク26から成るリンク機構27を介して前記走行車1の後側に連結されると共に、前記ロワリンク26には、リンク機構27を介して植付部15を昇降させる昇降シリンダ28が連結されている。このような構成により、前記前後輪6・8を走行駆動して移動すると同時に、左右に往復摺動する苗載台16から一株分の苗を植付爪17によって取り出し、連続的に苗植え作業を行うようにしている。
【0011】
また、前記運転席9の近傍には、本発明に係わる施肥機36の本体が搭載されている。そして、該施肥機36による施肥作業や、前記植付部15による植付作業が正確に行えるように、前記植付部15の下部には、植付部15を一定の高さに保持する均平用のセンターフロート34とサイドフロート35・35が配設されている。このうちのセンターフロート34は、走行車1の左右中心線上に配置され、このセンターフロート34を挟んで左右対称位置に、前記サイドフロート35・35が配設されており、これによって、前記植付部15の左右のバランスを良好に保って植え付け姿勢を安定させ、施肥や植え付けを正確に行えるようにしている。
【0012】
次に、前記施肥機36について、図1、図2により説明する。
該施肥機36は、肥料を収納するホッパ37と、肥料を一定量ずつ繰り出す肥料繰出部である繰出装置38と、繰り出された肥料を圧縮空気で空気搬送する搬送パイプ39と、該搬送パイプ39の後端に接続する作溝器42と、搬送パイプ39に圧縮空気を送る円筒型のエアチャンバ43と、該エアチャンバ43に圧縮空気を供給するための供給機構10とから構成されている。
【0013】
このうちの搬送パイプ39は、前記繰出装置38の下部に接続されるジョイント部40と、該ジョイント部40後部に接続される搬送部41とから成り、該搬送部41は可撓性の樹脂ホース等で自在に屈曲できるように形成されると共に、この搬送部41の後端は前記作溝器42に接続されている。該作溝器42は、前記植付部15のセンターフロート34とサイドフロート35・35の植付位置前側方の底部にそれぞれ配置され、搬送されてきた肥料を落下させる溝を形成するのである。
【0014】
前記ホッパ37と繰出装置38等は、運転席9の後方で走行車1の後部上方に、前記植付部15と同じ条数分だけ幅方向に複数配置されている。そして、このうちの繰出装置38の繰出ケース31内には、繰出部としての繰出ロール32が回転自在に軸支され、該繰出ロール32の外周には肥料を挿入できる凹部が一定間隔をおいて形成されており、繰出ロール32は図示せぬモータ等で回転駆動され、凹部に入った一定量の肥料がホッパ37側から下方へ搬送して繰り出されようにしている。なお、繰出手段としては、このようなロールに限定するものではなく、目皿式やベルト式等であってもよい。
【0015】
前記繰出装置38の下部は、ロート状となって前記ジョイント部40に接続され、該ジョイント部40の前端は、運転席9と繰出装置38との間に横設された前記エアチャンバ43側面に接続されると共に、該エアチャンバ43の一側端近傍には、前記供給機構10からの圧縮空気を導入するための給気パイプ44が連通されている。
【0016】
このような構成において、繰出装置38から一定量ずつ繰り出された肥料は、ジョイント部40に落下すると、前記供給機構10から給気パイプ44を介して送られてきた圧縮空気によって、前記ジョイント部40から搬送部41を経由して施肥部まで迅速に搬送されるのである。
【0017】
次に、本発明に係わる供給機構10について、図3、図4、図5により説明する。
図3に示すように、ボンネット12内の供給機構10においては、前記車体フレーム3の前部に支持フレーム45が形成され、該支持フレーム45にラジエータステー46が固定され、該ラジエータステー46の上面に、前記エンジン2を冷却するためのラジエータ47が固設されている。そして、該ラジエータ47の後方には、前記支持フレーム45に取付フレーム50によって固定された送風機48と、同じ支持フレーム45に防振ゴム51を介して取り付けられた前記エンジン2が、前から順に配設されている。
【0018】
前記ラジエータ47前方のボンネット12には多数の通気孔12aが開口される一方、ラジエータ47の後部には、導風ガイドとなるシュラウド49が装着され、該シュラウド49は後方に行くほど絞られたロート状を呈し、シュラウド49後端は、前記送風機48の吸気口48aに固定されている。そして、この送風機48の回転軸48cは前記エンジン2の出力軸2aと連結され、エンジン2によって送風機48を駆動できるようにしている。更に、送風機48下部に設けられた排気口48bには、前記給気パイプ44の一端が接続され、この給気パイプ44の他端は、前記エアチャンバ43に接続されており、送風機48で発生した圧縮空気を、給気パイプ44からエアチャンバ43を介して前記搬送パイプ39に送出して供給できるようにしている。
【0019】
このような構成において、エンジン2を始動させると、送風機48が駆動して吸気口48aから空気が吸引されるためにシュラウド49内が負圧となり、低温の外気が通気孔12aから吸引されて冷却風としてラジエータ47を通過し、該ラジエータ47から熱を奪った後に送風機48内に吸い込まれる。この高温の冷却風は、送風機48内で圧縮され、排気口48bから搬送パイプ39に向かって送出されるのである。
【0020】
すなわち、繰出装置38から繰り出される肥料を搬送パイプ39を流れる圧縮空気によって施肥部まで搬送する構成を有する施肥機36において、エンジン2の水冷用のラジエータ47を通過した後の冷却風を前記圧縮空気として供給可能な供給機構10を備えたので、圧縮空気を発生させるのにブロアやコンプレッサ等の発生装置を別途に設ける必要がなく、施肥機36の製造コストを低減することができ、更に、施肥機36を搭載した田植機等の作業車両における装置設置や作業のための空間が広くなり、組み立て性やメンテナンス性が向上する。加えて、ラジエータ47通過後の冷却風を圧縮空気として再利用できるため、圧縮空気生成に必要な燃料費等の分だけ運転コストを低減することができる。また、ラジエータ47から熱を奪うことによって冷却風は高温となるため、この高温の圧縮空気が搬送パイプ39を流れて肥料や前記各搬送部材の内壁を乾燥させ、肥料の付着による錆や詰まりの発生を確実に防止することができる。
【0021】
加えて、前記供給機構10は、前記ラジエータ47と、該ラジエータ47に前記冷却風を送風するための送風機48を有し、該送風機48の吸気側に前記ラジエータ47を配置すると共に、前記送風機48の排気口48bを前記搬送パイプ39に連通させるので、ラジエータ47を通過した冷却風を、送風機48で全て集めて、該送風機48の排気口48bから圧縮空気として搬送パイプ39に送出することができ、ダクト等の集気構造を設けることなく簡単な構成で供給機構10を形成することができ、組み立て性やメンテナンス性の向上を図ることができる。
【0022】
また、図4に示すように、前記給気パイプ44の途中部に切換バルブ52を設ける一方、吐出側が前記エンジン2を臨むように排気フード54を配設し、該排気フード54と前記切換バルブ52とを連結パイプ53を介して連通し、この切換バルブ52により、前記排気口48bの接続先を連結パイプ53と給気パイプ44の少なくとも一方に切換可能な構成としてもよい。これにより、施肥機36を使用しない場合は、切換バルブ52を連結パイプ53側に切り換え、送風機48からの圧縮空気を連結パイプ53経由で排気フード54に送出し、従来のようにエンジン2を空冷することができる。
【0023】
すなわち、前記排気口48bから排出される圧縮空気の送出先を、前記搬送パイプ39側と前記エンジン2側の少なくとも一方に切り換え可能な切換機構である切換バルブ52を設けるので、施肥機36を使用しない場合には、切換バルブ52を操作して冷却風をエンジン2側にも送風し、従来のように、ラジエータ47による水冷に加えて空冷によってもエンジン2を冷却することができ、ラジエータ47を通った冷却風を無駄にすることなく有効に利用することができる。
【0024】
また、図5に示すように、前記送風機48にモータ55を付設し、該モータ55によって送風機48を回転駆動する構成としてもよい。これにより、エンジン2をラジエータ47や送風機48と離間させて配置することが可能となり、各機器や装置のレイアウトの自由度を高めることができる。例えば、ラジエータ47と送風機48はそのままで重いエンジン2のみを運転席9下方に移動させ、これにより、機体重心が前輪6・6と後輪8・8との間に位置するようにして全体の重量バランスを調整し、走行安定性を向上させることもできる。
【0025】
更に、前記モータ55への電力はバッテリ56から供給され、該バッテリ56は、前記エンジン2により駆動される発電機57によって充電される構成としてもよい。これにより、モータ55が、エンジン稼働中に充電されたバッテリ56からの電力で送風機48を回転駆動させることができ、エンジン2の稼働状況に関係なく、圧縮空気を搬送パイプ39に供給することができる。従って、施肥作業を終了した後に圧縮空気を流して搬送パイプ39内部に残留している肥料や粉塵等を清掃するような場合でも、エンジン2を稼働させておく必要がなく、燃料費の低減や作業環境の改善を図ることができるのである。
【0026】
次に、第二実施例の供給機構29について、図6により説明する。
供給機構29においては、前記支持フレーム45上に、ラジエータ47、エンジン58、及び送風機59が前から順に配設され、該送風機59の回転軸59cは前記エンジン58から後方に延出された出力軸58aと連結されている。更に、ラジエータ47の後部から、エンジン58、送風機59の吸気口59aにかけて、シュラウド60が形成されると共に、送風機59下部に設けられた排気口59には、前記給気パイプ44の一端が接続され、該給気パイプ44の他端は、前記エアチャンバ43を介して搬送パイプ39に接続されている。
【0027】
このような構成において、エンジン58を始動させると、送風機59が駆動して吸気口59aから空気が吸引されるためにシュラウド60内が負圧となり、低温の外気がボンネット12の通気孔12aから吸引されて冷却風としてラジエータ47を通過する。該ラジエータ47から熱を奪った冷却風は、表面温度が高くなっているエンジン58を通過して更に熱を奪った後、吸気口59aから送風機59内に吸い込まれる。このようにして、ラジエータ47のみを通過した場合に比べ更に高温となった冷却風は、送風機59内で圧縮され、排気口59bから前記搬送パイプ39に向かって送出されるのである。
【0028】
すなわち、前記ラジエータ47と送風機59との間に、エンジン58を介設するので、冷却風をラジエータ47だけでなくエンジン58をも通過させ、圧縮空気の温度を更に高温にすることができ、肥料や各搬送部材の内壁を十分に乾燥させ、肥料の付着による錆や詰まりの発生を一層確実に防止することができる。
【0029】
次に、第三実施例の供給機構について、図7、図8により説明する。
本供給機構30a、30bにおいては、前記供給機構10、29と異なり、送風機の排気側にラジエータ47を配置すると共に、送風機で発生しラジエータ47通過してきた冷却風は、ラジエータ47後方に設けられたダクト62に集められて前記給気パイプ44に送られる構成となっている。
【0030】
例えば、図7の供給機構30aにおいては、支持フレーム45の上に、送風機61、エンジン2、ラジエータ47、及びダクト62が前から順に配設されると共に、送風機61の排気口61bから、エンジン2、ラジエータ47にかけて、シュラウド63が形成されている。更に、前記ダクト62下端に設けられた排気口62bには、前記給気パイプ44の一端が接続され、該給気パイプ44の他端は前記搬送パイプ39に接続されている。
【0031】
このような構成において、エンジン2を始動させて送風機61を駆動させると、ボンネット12の通気孔12aを通ってきた低温の外気が吸気口61aから吸引され、冷却風として排気口61bから吐出される。吐出した冷却風は、外部に漏れることなくシュラウド63内部でエンジン2とラジエータ47を通過して大量の熱を奪った後、ダクト62のフード62aに流入し、排気口62aによって絞られ、高温の圧縮空気として給気パイプ44を介して前記搬送パイプ39に向かって送出される。
【0032】
すなわち、供給機構30aは、前記ラジエータ47と、該ラジエータ47に前記冷却風を送風するための送風機61を有し、該送風機61の排気側に前記ラジエータ47を配置すると共に、該ラジエータ47を挟んで前記送風機61と反対側にダクト62を設け、該ダクト62の排気口62bを前記搬送パイプ39に連通させるので、ラジエータ47を通過した冷却風を送風機61ではなくダクト62に流れ込ませ、高温の冷却風による送風機61の熱損を軽減することができ、送風機61の機器寿命の延長を図ることができる。
【0033】
更に、前記送風機61とダクト62との間に、該ダクト62に冷却風を案内する導風ガイドであるシュラウド63を設けるので、冷却風を外部に逃がすことなくダクト62に集めることができ、十分な風量の圧縮空気を確保し肥料の搬送効率の向上を図ることができる。
【0034】
その上、前記送風機61とダクト62との間に、エンジン2を介設するので、冷却風をラジエータ47だけでなくエンジン2をも通過させ、圧縮空気の温度を更に高温にすることができ、肥料や各搬送部材の内壁を十分に乾燥させ、肥料の付着による錆や詰まりの発生を一層確実に防止することができるのである。
【0035】
また、図8の供給機構30bにおいては、モータ65を付設した送風機67、ラジエータ47、エンジン2、及びダクト62が前から順に配設されると共に、送風機67の排気口67bから、ラジエータ47、エンジン2、ダクト62のフード62a前部にかけて、シュラウド64が形成されている。この場合、低温の外気から成る冷却風が最初にラジエータ47を通過するので、ラジエータ47での熱交換効率は高く、ラジエータ47によるエンジン2の水冷効率を高めることができる。
【0036】
次に、以上のような供給機構における、肥料搬送性能の向上技術について、図9乃至図11により説明する。
図9に示すように、前記エアチャンバ43の一側端近傍には、前述の如く、前記供給機構10、29、30a、30bからの給気パイプ44の後端を接続すると共に、エアチャンバ43近傍には、モータ66aで駆動されるブロワ66を新たに設け、該ブロワ66の送風口66bを前記エアチャンバ43の一側端に接続し連通させてもよい。これにより、通常は、従来のように、このブロワ66からの圧縮空気のみで肥料を搬送するようにしておき、肥料が湿気を吸って、ホッパ37、繰出装置38、及び搬送パイプ39等の各搬送部材の内壁に付着しているような場合に、前記供給機構10、29、30a、30bからの高温の圧縮空気を更に加え、圧縮空気の風量増加と温風化を図ることができる。逆に、通常は、前記供給機構10、29、30a、30bからの高温の圧縮空気で肥料を搬送するようにしておき、施肥量を増やしたり、施肥作業終了後に搬送パイプ39内を負圧にし、繰出装置38やその上のホッパ37内に残留している肥料や粉塵等を搬送パイプ39内に吸引したい場合等に、ブロワ66を駆動させて圧縮空気を更に加え、風量のみを大きく増加させることもできる。
【0037】
すなわち、前記供給機構10、29、30a、30bには、圧縮空気の発生装置であるブロワ66を別途設け、該ブロワ66の送風口66bを前記搬送パイプ39に連通させるので、搬送パイプ39内を流れる圧縮空気の風量や温度を適切に調整することができ、肥料状態、施肥量の変化への迅速な対応、及び簡単操作によるホッパ37等の清浄化が可能となる。
【0038】
また、図10に示すように、前記エアチャンバ43を省略すると共に、途中で一本の基パイプ68aから複数の分岐パイプ68aに分かれる分岐型の給気パイプ68を設け、各分岐パイプ68aの後端を、前記搬送パイプ39のジョイント部40の前端と略同一軸芯上で接続させるようにしてもよい。図1、図2に示すように、搬送パイプ39までの圧縮空気の流路が、単パイプ型の給気パイプ44とエアチャンバ43とから構成される場合は、給気パイプ44とエアチャンバ43との継手部、エアチャンバ43とジョイント部40との継手部での圧力損失が大きい。これに対し、分岐型の給気パイプ68の場合は、給気パイプ68から搬送パイプ39までの継手部が、分岐パイプ68aとジョイント部40との間の一箇所だけであり、しかも、分岐パイプ68aとジョイント部40とは略同一軸芯上にあって圧縮空気の流れ方向の変化も極めて小さい。
【0039】
従って、搬送パイプ39までの圧縮空気の流路における圧力損失を大きく低減することができるのである。なお、この給気パイプ68は、前記基パイプ68aの後部からジョイント部40前端にかけての立ち上がりができるだけ緩やかとなるように構成するのが好ましい。これにより、圧縮空気の流れ方向の変化を一層小さくして、圧縮空気の圧力損失を更に低減することができる。
【0040】
また、図11に示すように、前記分岐パイプ68aをジョイント部40ではなく各ホッパ37の側面に接続し、その先端をホッパ37下部のロート状の内部傾斜面37aに沿うように屈曲して形成してもよい。これにより、高温の圧縮空気を、ホッパ37から繰出装置38を経由して搬送パイプ39に送ることができる。
【0041】
すなわち、前記施肥機36には、肥料を貯溜して前記繰出装置38に供給するホッパ37を設け、該ホッパ37を介して、前記排気口48bを搬送パイプ39に連通させるので、圧縮空気をホッパ37を通って搬送パイプ39に送ることができ、肥料をホッパ37やその下の繰出装置38内に残留させることなく圧縮空気と一緒に搬送パイプ39に送出し、肥料の付着による錆や詰まりの発生を確実に防止することができるのである。
【0042】
また、前記送風機48・59・61・67の形式は特に限定されるものではないが、肥料搬送性能を更に向上させるには、径向きの羽根を有する、いわゆる輻流式の送風機であるのが好ましい。この輻流式においては、羽根出口角が90度又はそれに近い角度を有し、そのため、羽根の強度としては最も強い形が得られ、回転速度を大きくしても羽根が十分に耐えられる構成となっている。
【0043】
すなわち、前記送風機48・59・61・67は、輻流式の送風機であるので、強度としては最も強い形の羽根を備えることができ、高速回転が可能となって、肥料搬送に必要な風量を確保することができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、同様な構成を有する施肥機だけでなく、エンジン水冷用のラジエータと該ラジエータの空冷のための送風機を搭載すると共に、高温の圧縮空気を使用する空気乾燥装置等の機器類にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係わる田植機の側面図である。
【図2】施肥機のホッパの側面一部断面図である。
【図3】供給機構を示す、ボンネットの側面図である。
【図4】切換バルブを備えた供給機構を示す、ボンネットの側面一部断面図である。
【図5】モータを備えた供給機構を示す、ボンネットの側面一部断面図である。
【図6】第二実施例の供給機構を示す、ボンネットの側面一部断面図である。
【図7】第三実施例の供給機構を示す、ボンネットの側面一部断面図である。
【図8】第三実施例で配置構成の異なる供給機構を示す、ボンネットの側面一部断面図である。
【図9】ブロワを別途設けた施肥機におけるホッパの側面一部断面図である。
【図10】分岐型の給気パイプ設けた供給機構を示す、田植機の平面図である。
【図11】給気パイプをホッパに接続した施肥機におけるホッパの側面一部断面図である。
【符号の説明】
【0046】
2・58 エンジン
10・29・30a・30b 供給機構
36 施肥機
37 ホッパ
38 繰出装置
39 搬送パイプ
47 ラジエータ
48・59・61・67 送風機
48b・62b 排気口
52 切換機構
62 ダクト
63 導風ガイド
66 発生装置
66b 送風口
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繰出装置から繰り出される肥料を搬送パイプを流れる圧縮空気によって施肥部まで搬送する構成を有する施肥機において、エンジンの水冷用のラジエータを通過した後の冷却風を前記圧縮空気として供給可能な供給機構を備えたことを特徴とする施肥機。
【請求項2】
前記供給機構は、前記ラジエータと、該ラジエータに前記冷却風を送風するための送風機を有し、該送風機の吸気側に前記ラジエータを配置すると共に、前記送風機の排気口を前記搬送パイプに連通させることを特徴とする請求項1記載の施肥機。
【請求項3】
前記ラジエータと送風機との間に、エンジンを介設することを特徴とする請求項2記載の施肥機。
【請求項4】
前記供給機構は、前記ラジエータと、該ラジエータに前記冷却風を送風するための送風機を有し、該送風機の排気側に前記ラジエータを配置すると共に、該ラジエータを挟んで前記送風機と反対側にダクトを設け、該ダクトの排気口を前記搬送パイプに連通させることを特徴とする請求項1記載の施肥機。
【請求項5】
前記送風機とダクトとの間に、該ダクトに前記冷却風を案内する導風ガイドを設けることを特徴とする請求項4記載の施肥機。
【請求項6】
前記送風機とダクトとの間に、エンジンを介設することを特徴とする請求項4又は請求項5記載の施肥機。
【請求項7】
前記排気口から排出される圧縮空気の送出先を、前記搬送パイプ側と前記エンジン側の少なくとも一方に切り換え可能な切換機構を設けることを特徴とする請求項2又は請求項4又は請求項5に記載の施肥機。
【請求項8】
前記供給機構には、圧縮空気の発生装置を別途設け、該発生装置の送風口を前記搬送パイプに連通させることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の施肥機。
【請求項9】
前記施肥機には、肥料を貯溜して前記繰出装置に供給するホッパを設け、該ホッパを介して、前記排気口を搬送パイプに連通させることを特徴とする請求項2乃至請求項8のいずれか一項に記載の施肥機。
【請求項10】
前記送風機は、輻流式の送風機であることを特徴とする請求項2乃至請求項9のいずれか一項に記載の施肥機。
【請求項1】
繰出装置から繰り出される肥料を搬送パイプを流れる圧縮空気によって施肥部まで搬送する構成を有する施肥機において、エンジンの水冷用のラジエータを通過した後の冷却風を前記圧縮空気として供給可能な供給機構を備えたことを特徴とする施肥機。
【請求項2】
前記供給機構は、前記ラジエータと、該ラジエータに前記冷却風を送風するための送風機を有し、該送風機の吸気側に前記ラジエータを配置すると共に、前記送風機の排気口を前記搬送パイプに連通させることを特徴とする請求項1記載の施肥機。
【請求項3】
前記ラジエータと送風機との間に、エンジンを介設することを特徴とする請求項2記載の施肥機。
【請求項4】
前記供給機構は、前記ラジエータと、該ラジエータに前記冷却風を送風するための送風機を有し、該送風機の排気側に前記ラジエータを配置すると共に、該ラジエータを挟んで前記送風機と反対側にダクトを設け、該ダクトの排気口を前記搬送パイプに連通させることを特徴とする請求項1記載の施肥機。
【請求項5】
前記送風機とダクトとの間に、該ダクトに前記冷却風を案内する導風ガイドを設けることを特徴とする請求項4記載の施肥機。
【請求項6】
前記送風機とダクトとの間に、エンジンを介設することを特徴とする請求項4又は請求項5記載の施肥機。
【請求項7】
前記排気口から排出される圧縮空気の送出先を、前記搬送パイプ側と前記エンジン側の少なくとも一方に切り換え可能な切換機構を設けることを特徴とする請求項2又は請求項4又は請求項5に記載の施肥機。
【請求項8】
前記供給機構には、圧縮空気の発生装置を別途設け、該発生装置の送風口を前記搬送パイプに連通させることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の施肥機。
【請求項9】
前記施肥機には、肥料を貯溜して前記繰出装置に供給するホッパを設け、該ホッパを介して、前記排気口を搬送パイプに連通させることを特徴とする請求項2乃至請求項8のいずれか一項に記載の施肥機。
【請求項10】
前記送風機は、輻流式の送風機であることを特徴とする請求項2乃至請求項9のいずれか一項に記載の施肥機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−104923(P2007−104923A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−296756(P2005−296756)
【出願日】平成17年10月11日(2005.10.11)
【出願人】(597041747)アグリテクノ矢崎株式会社 (56)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月11日(2005.10.11)
【出願人】(597041747)アグリテクノ矢崎株式会社 (56)
【Fターム(参考)】
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