説明

施解錠装置及び開閉装置

【課題】2つのシリンダの配置に係る自由度が高く、しかも簡素な構造によって施錠の二重化を実現可能とした施解錠装置を提供する。
【解決手段】主シリンダ71a、デッドボルト72、補助シリンダ71bおよび規制部73を備え、主シリンダ71aが施錠位置P1にあり且つデッドボルト72が第1の進退位置Q1にある状態において、補助シリンダ71bが拘束位置R1に操作されているときには、規制部73をデッドボルト72の軸通過窓72aに係わり合わせてデッドボルト72の第2の進退位置Q2への上動動作を規制するとともに、補助シリンダ71bが非拘束位置R2に操作されたときには規制部73とデッドボルト72の係わりを解除してデッドボルト72の第2の進退位置Q2への上動動作を許容し、この結果、主シリンダ71aの操作を通じてデッドボルト72が第2の進退位置Q2に移動し得るようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の錠前装置を使用せずとも簡易な構造で施錠の二重化、多重化を実現した施解錠装置及び開閉装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、セキュリティ機能を高めるために2つの錠前装置を用いて施錠の二重化を図ることが行われている。しかし、このような2つの錠前装置は、それぞれ独立したユニットとして構成されるため、ユニット同士をある程度離して配置しなければならず、配置の自由度に制約があるほか、錠前装置から出没するデッドボルトの各々が嵌り合う受座が相手方に必要となるなど、コストが嵩む等の欠点がある。
【0003】
このような実情に鑑み、特許文献1等には、鍵の挿入によって回動可能とされる主シリンダと、このシリンダの回動に伴い受座に向かって出没されるデッドボルトと、鍵の挿入によって回動可能とされるとともに、前記鍵で施錠位置に回動された際には前記主シリンダの回動を規制し、かつ解錠位置に回動された際には前記主シリンダの回動を許可する回動規制部を有する拘束シリンダとを備えた錠前装置が提案されている。このものは、主シリンダおよび拘束シリンダが施錠位置にあるときにはデッドボルトを受座に進入させてロックし、拘束シリンダを解錠位置に回動させた上で主シリンダを回動させることによって、始めてデッドボルトを受座から退避させて、ドア等を開放することができるように構成して、1つの錠前装置で2つの鍵を操作しなければドア等が開かない施錠の二重化を実現しているものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3927743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、かかる特許文献のものは、主シリンダの回転を拘束シリンダで拘束するにあたり、主シリンダから突出させた部材に拘束シリンダから突出させた部材を回転方向に係わり合わせて、その回転を規制するように構成されている。すなわち、かかる構造は、拘束シリンダを主シリンダに近い位置に配置できる反面、主シリンダから遠ざかるほど主シリンダの僅かな回転によっても突出部材が大きく移動するため、逆に拘束シリンダと主シリンダとが密接に隣接していなければならない配置に限定され、見方を変えれば配置の自由度が低い構造となっている。また、必ずしも簡易な構造であるとは言い難く、組み付け精度も要求されるため、さらなるコスト削減等の余地が残されていると考えられる。更に、このような構造だと、施錠の三重化など、それ以上の多重化を実現することは一層困難である。
【0006】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、複数のシリンダの配置に係る自由度が高く、しかも簡素な構造によって施錠の二重化、多重化を実現可能とした施解錠装置を、これを利用した開閉装置とともに新たに提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0008】
すなわち、本発明の施解錠装置は、鍵の操作によって施錠位置と解錠位置の間で回転可能な主シリンダと、前記主シリンダの回転に連動して当該主シリンダの施錠位置に対応する第1の進退位置と解錠位置に対応する第2の進退位置の間で施解錠対象に対して進退動作を行う進退部材と、錠の操作によって拘束位置と非拘束位置の間で回転可能な補助シリンダと、前記補助シリンダの回転に連動して前記進退部材の進退方向に位置変更可能な規制部とを具備し、前記主シリンダが施錠位置にあり且つ前記進退部材が第1の進退位置にある状態において、前記補助シリンダが拘束位置に操作されているときには前記規制部を進退部材に直接又は間接に係わり合わせて当該進退部材の第2の進退位置への移動を規制するとともに、前記補助シリンダが非拘束位置に操作されたときには前記規制部と前記進退部材の係わりを解除して当該進退部材の第2の進退位置への移動を伴う主シリンダの施錠位置から解錠位置への操作を許容するように構成したことを特徴とする。
【0009】
このように構成すると、主シリンダ側は、進退部材に対し適宜部位にて連動可能なように関連づけられていればよく、一方の補助シリンダ側は、規制部を進退部材の進退方向に位置変更可能とすること、そして、その規制部の位置変位を通じて進退部材の動作を規制する状態と規制を解除する状態とを切り替える条件を満たせばよく、主シリンダと補助シリンダの間には、両者間の距離や方位に特段の制約は課せられない。このため、両シリンダを極接近させる配置も、進退方向に離間させる配置も、更には進退方向に離間し且つ進退方向と直交する方向に変位させる配置もとることができ、ひいては施解錠対象に適用する際の設計自由度を飛躍的に高めることが可能となる。しかも、2つの錠前装置を採用する場合に比べて、1つの施解錠対象に適用すればよく、集約的でコンパクトな構成も可能になり、特許文献の構成に比べても、構造や組み付けが簡素になるため、一層のコストダウンを追求することができ、更なる多重化を図ることも容易なものとなる。
【0010】
より簡易な構造を実現するためには、進退部材が主シリンダに付随するデッドボルトであり、規制部が前記デッドボルト若しくは当該デッドボルトの隣接位置に設定した遊動領域において補助シリンダに連動して位置変更可能とされその遊動領域の一端側においてデッドボルトに係わり合うように、これら主シリンダ、デッドボルト、補助シリンダおよび規制部が組み付けられることが望ましい。
【0011】
特に、規制部が補助シリンダの回転中心から変位した位置に設けた偏心軸であり、遊動領域がデッドボルトに設けた軸通過窓の内側に形成されているものが一層簡素である。
【0012】
他の簡素な構造としては、進退部材が主シリンダに付随する主デッドボルトであり、規制部が補助シリンダの回転に伴って前記主デッドボルトの進退方向に接離可能な補助デッドボルトであって、遊動領域が両デッドボルト間の間隙であるように、これら主シリンダ、主デッドボルト、補助シリンダおよび補助デッドボルトが組み付けられているものが挙げられる。
【0013】
特に、シリンダ同士を密接に配置する構成と取り扱いの便の向上とを同時に実現するためには、主シリンダ、進退部材、補助シリンダおよび規制部を共通のケース内に組み込んでユニット化していることが望ましい。
【0014】
このような施解錠装置を、把手の操作を通じてラッチを開閉する開閉装置に適用するにあたり、把手からラッチに無理な力が加わることを回避するためには、把手からラッチまでの間の操作力入力経路に設けたクラッチを施解錠対象として、進退部材が第1の進退位置にあるときに前記クラッチを解離し、第2の進退位置に移動したときに前記クラッチを接続するように構成することが好ましい。
【0015】
或いは、上記のような施解錠装置を、把手の操作を通じてラッチを開閉する開閉装置に適用するにあたり、把手からラッチに無理な力が加わることを回避するためには、把手からラッチまでの操作力入力経路の所定部位を施解錠対象として、進退部材が第1の進退位置にあるときに前記操作力入力経路の作動を拘束し、第2の進退位置に移動したときにその拘束を解除するように構成することが望ましい。
【0016】
さらには、上記のような施解錠装置を用い、進退部材を受座に対して突没させることで開閉部材の施解錠を実現する収納家具や建具等の開閉装置に適用することも好適となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、以上説明した構成であるから、複数のシリンダの配置に係る自由度が高く、しかも簡素な構造によって、それらのシリンダ全てに錠を挿し込んで操作しないと解錠状態にならないような施錠の二重化、多重化を有効に実現した施解錠装置、およびこれを利用した開閉装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態に係る施解錠装置を適用した開閉装置を示す斜視図。
【図2】同開閉装置の開扉状態を示す斜視図。
【図3】同実施形態におけるラッチとラッチ受けの関係を示す図。
【図4】同実施形態における把手周辺の構造を示す分解斜視図。
【図5】同実施形態における施解錠装置の構造及び作用を示す斜視図。
【図6】同実施形態におけるクラッチの構成を示す図。
【図7】同実施形態における施解錠装置の作用説明図。
【図8】同実施形態に準じてシリンダに異なる配置を施した変形例を示す図。
【図9】本発明の変形例を示す図。
【図10】本発明の他の変形例を示す図。
【図11】本発明の更に他の変形例を示す図。
【図12】本発明の上記以外の変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0020】
図1〜図3は、本実施形態を適用したキャビネット等の開閉装置を示している。この開閉装置は、収納空間を有する筐体1に一対の扉2をヒンジ部3を介して両開き可能に配置し、ラッチ機構Aを介して扉2を筐体1の閉止位置に係留するようにしたものである。
【0021】
ラッチ機構Aは、筐体1の開口縁に上下にラッチ受け11を形成する一方、筐体2を閉止する扉2の反吊元側の縁部2a近傍に上下に対をなすラッチ21を設けて、扉2を閉じたときにラッチ21を対応するラッチ受け11に係合させてこの扉2を筐体1に係留するものである。
【0022】
また、扉2の反吊元側の縁部2aよりにおいて、扉2の面板部22に把手4を可動に取り付け、さらに把手4と上下のラッチ21とを軸心回りに回転する伝達軸5を介し接続して、把手4に加えられる操作力をラッチ21に伝達し、ラッチ21とラッチ受け11との係合を解除して、扉2を開けることを可能にしている。
【0023】
ラッチ受け11は、図3に示すように、例えば樹脂により作られて開口部11aを有するもので、鉤状あるいは鎌状をなすラッチ21の先端21aがラッチ受け11の開口部11aより進入して開口縁11bに係り合う関係に設定している。ラッチ21にはキックバネ21bが付帯しており、先端21aが常に開口縁11bに係り合う方向に向かって弾性により押し付けられている。
【0024】
そして、本実施形態では、図4及び図5に示すように、把手4の回転軸40を別途、伝達軸5から離間した位置に平行に設けて、把手4の回転をクラッチ6を介して伝達軸5に伝達し得るようにしている。
【0025】
具体的に説明すると、把手4は、図4及び図5に示すように、指を掛ける操作縁部41と、この操作縁部41に隣接して手指挿入空間となる凹所42とを有した把手部材Bからなっている。そして、この把手部材Bを後述する伝達部材7等とともに把手ケースCに収容し、この把手ケースCを扉2の面板22に設けた開口22aに臨む位置に取り付けている。回転軸40は把手部材B上、扉2の反吊元側の縁部2aに近い一端側に、扉2の厚み方向の前端側に変位させて設定され、操作縁部41は前記反吊元側の縁部2aから遠い側に設定されている。把手4の回転方向と扉2の回転方向は逆の関係にある。
【0026】
回転軸40はほぼ扉2の面板22上にあり、伝達軸5は扉2の面板22の裏面に極力近づけた位置に配置されて上下にラッチ21を直付けしていて、把手4は回転軸40と伝達軸5との間で動作する。
【0027】
クラッチ6は、図4及び図5等に示すように、把手4側に設定した係合部61と、伝達軸5側に設定した係合部62とを回転円周上で係合させるようにしたものである。前記把手部材Bには、他端側の回動端b1から伝達軸5に向かう方向に前記係合部61が舌片状をなして突出させてあり、一方、伝達軸5には、樹脂製の伝達部材7が当該伝達軸5と一体回転可能かつ軸心方向にスライド可能に外嵌されて、この伝達部材7の外周から回転軸40に向かう方向に前記係合部62が舌片状をなして突出させてある。そして、伝達軸5側の係合部62が前方に位置し、把手4側の係合部61が後方に位置する関係で、係合部61、62同士を前後方向に重合させている。この実施形態では、伝達軸5は角柱状のもので、伝達部材7に設けた角孔に挿通させてある。
【0028】
ところで、前記伝達部材7は、扉2を閉止位置に選択的に施錠するための施解錠機構Dの構成要素ともなっている。この施解錠機構Dは、上記伝達部材7以外に、把手4の隣接位置において面板部22に設けた主シリンダ71a及び補助シリンダ71bと、これらのシリンダ71a、71bに関連づけられ当該シリンダ71a、71bに所定の操作が行われたときに上下に可動する進退部材たるデッドボルト72とを備え、このデッドボルト72の先端部72aを前記伝達部材7に設けた被係合部7aに係り合わせて、伝達部材7の回転を妨げずにデッドボルト72の上下動に伝達部材7を追従させ得るようにしている。すなわち、この施解錠機構Dは、伝達部材7を、図5(a)に示すように係合部61,62同士が係合して把手4の操作を伝達軸5に伝える解錠位置と、図5(b)に示すように係合部61,62同士が解離して把手4が操作されても空転するだけでその操作を伝達軸5に伝えないようにする施錠位置とに選択的に移動させることで施解錠を実現するものである。
【0029】
このように、本実施形態の開閉装置は、把手4に入力される操作を伝達軸5を介してラッチ21に伝え、ラッチ受け11に対して係留位置にあるラッチ21を解除位置に移動させて開閉部材である扉2の開成を許容するとともに、施解錠機構Dによって把手4の操作によらずに扉2を閉止位置に施錠するようにしたものである。
【0030】
そして、本実施形態は、前記施解錠装置を構成する2つのシリンダ71a、71bによって、単一の施解錠装置Dで施錠の二重化を実現している。この施解錠装置Dは、前記クラッチ6を施錠対象とし、鍵の操作によって図7(a)、(b)に示す施錠位置P1と同図(c)に示す解錠位置P2の間で回転可能な前記主シリンダ71aと、この主シリンダ71aの回転に伴って施錠対象に対し図7(a)、(b)に示す第1の進退位置Q1と同図(c)に示す第2の進退位置Q2の間で進退動作を行う進退部材たる前記デッドボルト72と、錠の操作によって図7(a)に示す拘束位置R1と同図(b)、(c)に示す非拘束位置R2の間で回転可能な前記補助シリンダ71bと、前記補助シリンダ71bの回転に連動して前記デッドボルト72の進退方向に位置変更可能な規制部73とを、図4に示すようにケースCC内に一体的に組み込んでユニット化したものである。このケースCCは前記把手ケースCと一体に成型されても別体に成型されてもよい。
【0031】
図7に示すように主シリンダ71aは、回転中心から変位した位置に設けた偏心軸74aを、デッドボルト72の進退方向と直交する方向に沿って当該デッドボルト72に設けた長孔72bに、同進退方向に対して極力遊びがないように係わり合わせたもので、偏心軸74aが図7(a)、(b)に示すように下に偏心した位置を施錠位置、同図(c)に示すように上に偏心した位置を解錠位置として設定されている。一方、規制部73は、補助シリンダ71bの回転中心から変位した位置に設けた偏心軸73aであり、デッドボルト72にはこの偏心軸73aを遊動させる遊動領域Sを形成する軸通過窓72aが設けてあって、偏心軸73aは遊動領域Sにおいてデッドボルト72の進退方向に沿って例えば図7(a)に示す位置と同図(b)に示す位置との間で位置変更可能とされ、その遊動領域Sの一端側において同図(a)に示すようにデッドボルト72に係わり合う関係に設定されている。すなわち、図7(a)に示すように偏心軸73aが下に偏心した位置をデッドボルト72に対する拘束位置、同図(b)に示すように上に偏心した位置をデッドボルト72に対する非拘束位置として設定されている。デッドボルト72については、図7(a)、(b)に示すように偏心軸73aが下に偏心したときの進退位置を第1の進退位置Q1、偏心軸73aが上に偏心したときの進退位置を第2の進退位置Q2と呼ぶことにする。
【0032】
そして、主シリンダ71aが図7(a)に示す施錠位置P1にあり且つ前記デッドボルト72が第1の進退位置Q1にある状態において、前記補助シリンダ71bが拘束位置R1に操作されているときには、前記規制部73をデッドボルト72の軸通過窓72aに係わり合わせて当該デッドボルト72の第2の進退位置Q2への上動動作を規制するとともに、前記補助シリンダ71bが同図(b)に示す非拘束位置R2に操作されたときには前記規制部73と前記デッドボルト72の係わりを解除して当該デッドボルト72の第2の進退位置Q3への上動動作を許容し、この結果、同図(c)に示すように主シリンダ71aの操作を通じて当該デッドボルト72が第2の位置Q2に移動し得るようにしている。そして、デッドボルト72が図5(b)に示す第1の進退位置Q1にあるときに前記クラッチ6を解離し、同図(a)に示す第2の進退位置Q2に移動したときに前記クラッチ6を接続するようにしている。
【0033】
以上のように施解錠装置Dを構成すると、主シリンダ71a側は、進退部材であるデッドボルト72に対し適宜部位にて連動可能なように関連づけられていればよく、一方の補助シリンダ71b側は、規制部73をデッドボルト72の進退方向に位置変更可能とすること、そして、その規制部73の位置変位を通じてデッドボルト72の動作を規制する状態と規制を解除する状態とを切り替える条件を満たせばよく、主シリンダ71aと補助シリンダ71bの間には、両者間の距離や方位に特段の制約は課せられない。このため、両シリンダ71a、71bを図8(a)に示すように極接近させるも同図(b)に示すように進退方向に離間させるも自由であり、更には同図(c)に示すように進退方向に離間すると同時に進退方向と直交する方向に変位する配置も可能となる。勿論、これらの図において両シリンダ71a、71bの上下関係を入れ替える構成も可能である。したがって、施解錠対象であるクラッチ6を有する開閉装置に適用する際に、把手4との位置関係や操作性等を考慮して両シリンダ71a、71bの配置の適正化を図るなど、設計自由度を飛躍的に高めることが可能となる。しかも、2つの錠前装置を採用する場合に比べて1つの施解錠対象に適用すればよく、集約的でコンパクトな組み付けも可能になり、特許文献の構成に比べても構造や組み付けが簡素になるため、一層のコストダウンを追求することができる。
【0034】
特に、この実施形態では進退部材が主シリンダ71aに付随するデッドボルト72であり、規制部73が前記デッドボルト72に設定した遊動領域Sにおいて補助シリンダ71bに連動して位置変更可能とされその遊動領域Sの一端側においてデッドボルト72に係わり合うように、これら主シリンダ71a、デッドボルト72、補助シリンダ71bおよび規制部73を組み付けるものであり、主シリンダ71aに付随するデッドボルト72に対して、その適宜部位に遊動領域Sを設定して規制部73及び補助シリンダ71bを組み付ければ足りるので、組み付けが一層簡素なものとなる。
【0035】
とりわけ、規制部73が補助シリンダ71bの回転中心から変位した位置に設けた偏心軸73aであり、遊動領域Sがデッドボルト72に設けた軸通過窓72aの内側に形成されたものであって、デッドボルト72に切欠や貫通孔等を設けて偏心軸73aを挿し込むだけでよいので、構造および組み付けを更に簡素にすることができる。
【0036】
さらに、主シリンダ71a、進退部材たるデッドボルト72、補助シリンダ71bおよび規制部73を共通のケースCC内に組み込んでユニット化しているので、両シリンダ71a、71bを含めて取り扱い上の一体性を確保した上で、必要に応じてケースCC内で両シリンダ71a、71bを密接に配置することや適宜方向に変位させて配置するなど、設計自由度も確保することが可能となる。
【0037】
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0038】
例えば、上記実施形態では補助シリンダ71bに付随する規制部73が偏心軸73aであって、この偏心軸73aが主シリンダ71aに付随する進退部材たるデッドボルト72に直接規制を加えるものであったが、図9に示すように、進退部材が主シリンダ71aに付随する主デッドボルト72であるのに対して、規制部を、補助シリンダ71bの回転に伴って前記主デッドボルト72の進退方向に接離可能な補助デッドボルト75として、遊動領域が両デッドボルト72、75間の間隙Δであるように、これら主シリンダ71a、主デッドボルト72、補助シリンダ71bおよび補助デッドボルト75が組み付けられてもよい。このようにしても、主シリンダ71aが施錠位置Pにあり且つ進退部材たる72主デッドボルト72が第1の進退位置Q1にある状態において、補助シリンダ71bが同図(a)に示す拘束位置に操作されているときには規制部である補助デッドボルト75を進退部材である主デッドボルト72に係わり合わせて当該主デッドボルト72の第2の進退位置Q2への移動を規制するとともに、補助シリンダ71bが同図(b)に示す非拘束位置に操作されたときには両デッドボルト72、75の係わりを解除して、同図(c)に示すように主デッドボルト72の第2の進退位置Q2への移動を伴う主シリンダ71aの施錠位置P1から解錠位置への操作を許容することができる。
【0039】
また、図10に示すように、1つの主シリンダ71a及びこれに連動する進退部材72に対して、これを規制する2つの補助シリン71b、71b´および規制部73、73´、更にはそれ以上の数のシリンダ及び規制部を設けることも容易にできるため、更なる多重化を通じてセキュリティ機能を無理なく有効に高めることも可能である。
【0040】
さらに、図11に示すように、施解錠装置Dを、把手4を含み把手4からラッチ21までの操作力入力経路の所定部位(図では把手4側に設定した上記実施形態と同様の係合部61)を直接的な施解錠対象として、進退部材たるデッドボルト72が同図(a)に示す第1の進退位置T1にあるときにデッドボルト72を係合部61に係合させて前記操作力入力経路の作動を拘束し、同図(b)に示す第2の進退位置(T2)に移動したときにデッドボルト72を係合部61から解離させて前記操作力入力経路の拘束を解除するように組み付けて開閉装置を構成することもできる。このような適用の態様によれば、操作力入力経路に対して後付けで施解錠装置Dを組み込み易くなる利点等が得られる。
【0041】
その他、本発明の施解錠装置を扉以外に引出しや引き戸等の様々な開閉装置に適用するなど、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0042】
例えば、図12に示すように、進退部材であるデッドボルト72を建物や部屋の出入口等の開口に設けた受座100に対して突没させることで施解錠状態の切り替えを行う開閉部材たる引戸110の施解錠装置として適用し、上記実施形態と同様、主シリンダ71a及び補助シリンダ71bの双方が操作された場合のみ、デッドボルト72が移動して、同図(b)に示す施錠状態から同図(a)に示す解錠状態に切り替え得るようにしたものである。そして、この場合にも、上記実施形態に準じて施解錠装置を構成することで、複数のシリンダ71a、71bの配置に係る自由度が高く、しかも簡素な構造によって、それらのシリンダ71a、71bの全てに錠を挿し込んで操作しないと解錠状態にならない施錠の多重化を有効に実現することが可能となる。
【符号の説明】
【0043】
4…把手
6…クラッチ
21…ラッチ
71a…主シリンダ
71b…補助シリンダ
72…進退部材(デッドボルト)
72a…軸通過窓
73…規制部
73a…偏心軸
75…規制部(補助デッドボルト)
CC…ケース
P1…施錠位置
P2…解錠位置
Q1…第1の進退位置
Q2…第2の進退位置
R1…拘束位置
R2…非拘束位置
S…遊動領域
Δ…遊動領域



【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍵の操作によって施錠位置と解錠位置の間で回転可能な主シリンダと、前記主シリンダの回転に連動して当該主シリンダの施錠位置に対応する第1の進退位置と解錠位置に対応する第2の進退位置の間で施解錠対象に対して進退動作を行う進退部材と、錠の操作によって拘束位置と非拘束位置の間で回転可能な補助シリンダと、前記補助シリンダの回転に連動して前記進退部材の進退方向に位置変更可能な規制部とを具備し、前記主シリンダが施錠位置にあり且つ前記進退部材が第1の進退位置にある状態において、前記補助シリンダが拘束位置に操作されているときには前記規制部を進退部材に直接又は間接に係わり合わせて当該進退部材の第2の進退位置への移動を規制するとともに、前記補助シリンダが非拘束位置に操作されたときには前記規制部と前記進退部材の係わりを解除して当該進退部材の第2の進退位置への移動を伴う主シリンダの施錠位置から解錠位置への操作を許容するように構成したことを特徴とする施解錠装置。
【請求項2】
進退部材が主シリンダに付随するデッドボルトであり、規制部が前記デッドボルト若しくは当該デッドボルトの隣接位置に設定した遊動領域において補助シリンダに連動して位置変更可能とされその遊動領域の一端側においてデッドボルトに係わり合うように、これら主シリンダ、デッドボルト、補助シリンダおよび規制部が組み付けられる請求項1記載の施解錠装置。
【請求項3】
規制部が補助シリンダの回転中心から変位した位置に設けた偏心軸であり、遊動領域がデッドボルトに設けた軸通過窓の内側に形成されたものである請求項2記載の施解錠装置。
【請求項4】
進退部材が主シリンダに付随する主デッドボルトであり、規制部が補助シリンダの回転に伴って前記主デッドボルトの進退方向に接離可能な補助デッドボルトであって、遊動領域が両デッドボルト間の間隙であるように、これら主シリンダ、主デッドボルト、補助シリンダおよび補助デッドボルトが組み付けられる請求項2記載の施解錠装置。
【請求項5】
主シリンダ、進退部材、補助シリンダおよび規制部を共通のケース内に組み込んでユニット化している請求項1〜4記載の施解錠装置。
【請求項6】
請求項1〜5記載の施解錠装置を、把手からラッチまでの間の操作力入力経路に設けたクラッチを施解錠対象として、進退部材が第1の進退位置にあるときに前記クラッチを解離し、第2の進退位置に移動したときに前記クラッチを接続するように構成したことを特徴とする開閉装置。
【請求項7】
請求項1〜5記載の施解錠装置を、把手からラッチまでの操作力入力経路の所定部位を施解錠対象として、進退部材が第1の進退位置にあるときに前記操作力入力経路の作動を拘束し、第2の進退位置に移動したときにその拘束を解除するように構成したことを特徴とする開閉装置。
【請求項8】
請求項1〜5記載の施解錠装置を用い、進退部材を受座に対して突没させることで開閉部材の施解錠を実現していることを特徴とする開閉装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−174343(P2011−174343A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−41023(P2010−41023)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000001351)コクヨ株式会社 (961)