説明

施錠部材あるいは施錠部周辺に設置する装置

【課題】 コンパクトで、かつ防犯機能が高い施錠部材あるいは施錠部材周辺に設置する装置を提供する。
【解決手段】 化学反応によって発生する現象の中で熱、ガス膨張、音、光、衝撃波、衝撃力の1つあるいは複数の現象を利用する機能をもつことを特徴とする施錠部材あるいは施錠部周辺に設置する装置。例えば、ドアノブ6のシリンダー5底部に圧力センサー4を設置し、異常な圧力を感知した場合に、収納容器2に収容されている火薬3を爆発させることにより瞬間的に大音量を発生する施錠部材とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種施錠類の防犯技術に関する。詳しくは、防犯機能を強化した施錠部材あるいは施錠部周辺に設置する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
施錠は主に個人資産の保護や使用者制限としての機能を果たすものであり、建物や自動車、保管庫等のドア、扉部分等に設置されている。近年特に建物あるいは車へのピッキング被害が増加しており、防犯機能を強化した各種施錠が開発されている。それらの開発内容としては、施錠自体の強度を向上、施錠部構造の複雑化、施錠数の複数化あるいは施錠自体あるいは施錠近くに設置させるセンサー付の警告音発生装置などが挙げられるが、充分な防犯機能には達していない。
例えば、特許文献1には戸口または窓口付近に不審人物が通過した際に液体を噴射させる装置が記載されている。また特許文献2には現金輸送用のキャリーケースにおいて煙を出すことで持ち去られた場合の目印にすることが記載されている。
【特許文献1】実公昭62−19821号公報
【特許文献2】特開平11−253220号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、コンパクトで、かつ防犯機能を更に高めた施錠部材あるいは施錠部周辺に設置する装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者等は、前記課題を解決するために鋭意検討を行なった結果、化学反応によって発生する現象を施錠部の防犯機能に活用することで、コンパクトで、かつ防犯機能を更に高めることができることを見出し、本発明をなすに至った。
即ち、本発明は以下のとおりである。
(1)化学反応によって発生する現象の中で熱、ガス膨張、音、光、衝撃波、衝撃力の1つあるいは複数の現象を利用する機能をもつことを特徴とする施錠部材あるいは施錠部周辺に設置する装置。
(2)前記化学反応によって発生する現象を利用するために、火薬類またはガス発生剤類を使用することを特徴とする前記(1)記載の施錠部材あるいは施錠部周辺に設置する装置。
(3)施錠部を無理に解除あるいは破壊しようとした場合に衝撃音を発生させることを特徴とする前記(1)または(2)記載の施錠部材あるいは施錠部周辺に設置する装置。
(4)施錠部を無理に解除あるいは破壊しようとした場合にガス膨張を発生させることを特徴とする前記(1)または(2)記載の施錠部材あるいは施錠部周辺に設置する装置。
(5)施錠部を無理に解除あるいは破壊しようとした場合に爆薬の力により施錠内部を破壊することを特徴とする前記(1)または(2)記載の施錠部材あるいは施錠部周辺に設置する装置。
(6)建築構造物の施錠部、輸送機械の施錠部、あるいは保管を目的とした物品の施錠部で使用されることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか一項に記載の施錠部材あるいは施錠部周辺に設置する装置。
【発明の効果】
【0005】
本発明では、化学反応によって発生する現象を利用しているため、発生源自体に電源の必要がなく、かつ非常にコンパクトにすることが出来る。また発生する現象は比較的容易にコントロールでき、かつ現象そのものを非常に大きくすることも可能であり、防犯のための不審者撃退、周囲への異常報知として高い効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明について、以下具体的に説明する。
本発明で用いられる化学反応とは化学物質を化学的、機械的、電気的に反応させることで、化学物質を急激に反応させることである。化学反応によって発生する現象の中で、熱、ガス膨張、音、光、衝撃波、衝撃力の1つあるいは複数の現象を施錠部の防犯機能に活用することにより、防犯機能を更に高めることが可能となる。これらの現象は、比較的容易にコントロールでき、かつ現象そのものを非常に大きくすることも可能であり、防犯のための不審者撃退、周囲への異常報知として高い効果が得られる。また、化学反応によって発生する現象を利用しているため、発生源自体に電源の必要がなく、かつ非常にコンパクトにすることが出来る。
【0007】
例えば、火薬類、またはガス発生剤類を用いることにより衝撃音、ガス膨張を発生させることができる。
具体的にはPETN(ペンタエリスリトールテトラナイトレート)、TNT(トリニトロトルエン)、シクロトリメチレントリニトラミン、シクロテトラメチレンテトラニトラミンといった火薬類や、アジ化ナトリウム、硝酸アンモニウム系といったガス膨張剤などの反応が挙げられる。化学物質はこれらの単独を用いてもよく、2種以上の混合物を用いてもよい。またこれらの反応を開始させるためには各種センサーや機械的駆動部材といったものの使用も可能であり、好ましくは力学的な力から電気エネルギーに変換させることで反応を開始させることである。
【0008】
また、酸化物の還元反応を利用したテルミット反応により高熱を発生させることもできる。具体的には、酸化鉄とアルミニウム粉末とMgの混合物等が挙げられる。
また、光を発生させるには、上述した火薬類単独あるいは火薬類に活性金属類を混在させたものによる発光現象や、サリチル酸ナトリウムを触媒にしたシュウ酸ビス2,4,6−トリクロロフェニルと過酸化水素による蛍光発光やルミノールと過酸化水素によるルミノール発光等が挙げられる。
【0009】
一般家庭用のドア部材において、内部に火薬を有する装置を持つことにより、施錠部を無理に解除あるいは破壊しようとすると火薬が爆発し瞬間的に大音量を発生する施錠部材ができる。
部材例を図1を用いて説明する。図1は、一般家庭用のドア部材の概要図で、施錠部材内部に火薬を有する装置を持っており、火薬の爆発により瞬間的に大音量を発生する施錠部材である。図1において、ドアノブ6のシリンダー5底部に圧力センサー4を設置し、異常な圧力を感知した場合に、収納容器2に収容されている火薬3を爆発させる構造になっている。用いる火薬の種類、火薬の量を調整することにより爆発音をコントロールすることができ、また周囲への影響を極力抑制して実質的にドア等の損傷を防止するようにコントロールすることができる。防犯の目的で用いる場合、音量は侵入者の警告及び周知への報知が充分である大きさが好ましいが、ドア等の損傷は起こさないようにすることが好ましい。火薬の種類及び量は、施錠が設置されているものの耐久性、目的、安全性等を考慮し、適宜選択することができる。
爆薬等により施錠内部を破壊する場合も、火薬は、シリンダー部分又はロック部分(ロックさせるときの稼動部分)のみを破壊し、その他の部分は概観上で変形、異常が認められない程度が好ましい。
【0010】
また、いわゆるピッキングを防止するために、ドア内部に振動センサーを設置することによりピッキング時に異常な振動を感知し、火薬を爆発させる構造とすることもできる。
また、いわゆるサムターン回しを防止するために、ドア内部にセンサーを設置することにより、ドアに穴をあけようとした場合等の異常を感知し、火薬を爆発させる構造とすることもできる。
【0011】
また、ガス膨張剤を用いることで、ドア内部のシリンダー部分を変形あるいはシリンダー内部に膨張させた袋、容器等を生じさせることでシリンダーを固定させたり、ロック部分に膨張力を利用した機械的圧力を発生させることでロック部分を固定させることもできる。
また、テルミット反応のような高温発生材の場合は、発生した熱を利用し、シリンダーあるいはロック部分の破壊、溶接、溶融により施錠解除を防止することができる。
【0012】
本発明の施錠部材あるいは施錠部周辺に設置する装置は、コンパクトにすることができ、また発生する現象は比較的容易にコントロールできるので、建築構造物の施錠部、輸送機械の施錠部、あるいは保管を目的とした物品の施錠部等で用いることができる。
【実施例】
【0013】
本発明を実施例に基づいて説明する。
[実施例1]
図1に示す一般家庭用ドアの施錠部材内の収納容器にPETN爆薬0.1gを持つ大音量発生装置をセットし爆発させた場合の、爆発音音量及びドア内部の部材状態を調査した。結果、音量は非常に大きく侵入者への警告および周囲への報知が充分である事が確認された。またドア部材に実質的な損傷はなくロックも解除されていなかった。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明の防犯施錠部材あるいは施錠部周辺に設置する装置は、化学反応によって発生する現象を利用しているため、発生源自体に電源の必要がなく、かつ非常にコンパクトにすることが出来る。また発生する現象は比較的容易にコントロールでき、かつ現象そのものを非常に大きくすることも可能であり、防犯のための不審者撃退、周囲への異常報知として高い効果がある。建築構造物の各種ドア、窓、シャッター類あるいは輸送機械である自動車等あるいは保管を目的とした金庫、カバン類といった物品等の施錠部で使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】一般家庭用のドアの施錠部材に本発明の衝撃音を利用する機能を持つ施錠部材を用いた概要図である。
【符号の説明】
【0016】
1 ドア本体
2 化学物質収納容器
3 火薬
4 センサー
5 シリンダー(鍵穴)
6 ドアノブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学反応によって発生する現象の中で熱、ガス膨張、音、光、衝撃波、衝撃力の1つあるいは複数の現象を利用する機能をもつことを特徴とする施錠部材あるいは施錠部周辺に設置する装置。
【請求項2】
前記化学反応によって発生する現象を利用するために、火薬類またはガス発生剤類を使用することを特徴とする請求項1記載の施錠部材あるいは施錠部周辺に設置する装置。
【請求項3】
施錠部を無理に解除あるいは破壊しようとした場合に衝撃音を発生させることを特徴とする請求項1または2記載の施錠部材あるいは施錠部周辺に設置する装置。
【請求項4】
施錠部を無理に解除あるいは破壊しようとした場合にガス膨張を発生させることを特徴とする請求項1または2記載の施錠部材あるいは施錠部周辺に設置する装置。
【請求項5】
施錠部を無理に解除あるいは破壊しようとした場合に爆薬の力により施錠内部を破壊することを特徴とする請求項1または2記載の施錠部材あるいは施錠部周辺に設置する装置。
【請求項6】
建築構造物の施錠部、輸送機械の施錠部、あるいは保管を目的とした物品の施錠部で使用されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の施錠部材あるいは施錠部周辺に設置する装置。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2006−283427(P2006−283427A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−105774(P2005−105774)
【出願日】平成17年4月1日(2005.4.1)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】