説明

旅行中のヘルスケアサポートシステム

【課題】旅行者が安心して旅行先でヘルスケアサポート受けることができるヘルスケアサポートシステムを提供すること。
【解決手段】ヘルスケアを必要とする旅行者のサポートを行うヘルスケアサポートシステムにおいて、旅行者の個人識別情報と本人の基本情報と健康情報の少なくとも1つの情報を記録し、旅行者が旅行中に携帯する読み書き可能な記録媒体11と、前記記録媒体に記録された情報を読み取る前記記録媒体専用の読取装置(13,24)と、を備え、前記読取装置で読み出された前記記録媒体の記録情報に基づいて、旅行先の医療機関で診察を受けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘルスケアを必要とする旅行者の旅行中のヘルスケアサポートに関する。
【背景技術】
【0002】
本人が携帯するIDカードの1種として緊急連絡カードや健康カードなどがあるが、これらは災害や事故時などに本人に関する情報を第3者に知らせることを目的としたものが大半を占めている。たとえば、特許文献1には、交通事故時、非常災害時、個人の健康急変時等に、医師ではない救急隊員が患者に適切な処置のために患者の病歴、治療歴、薬品に対するアレルギーの有無等の健康情報を患者の持つ市民カードから読み出して参照するシステムが開示されている。また、特許文献2には、患者の既往症データをヘルスケアカードに登録し、医師の診察時の参考に供するようにした技術が開示されている。
【0003】
上記のようなカードに記載されている情報は、たとえば、氏名、住所、生年月日、血液型、アレルギーなどが一般的である。また、医療に関する携帯データとしては、たとえば、透析データ(フローシート、血液・HIV・肝炎検査報告、心電図、胸部X線)や、トラベルカルテ(病名、薬、既往症、アレルギー、家族歴)など専門的なカードもあるが、これらは特別に作成されるものである。前記先行例における市民カードやヘルスケアカードなどはほとんどが地方自治体等から住民向けに発行したものであり、発行目的は最初に述べたようなものである。また、自己の体調データや診療・検診・服薬などの記録をまとめて記載した特許文献3のような携帯形健康管理手帳のようなものもあるが、これはとくに読み出しのための機器は必要としないが記載された情報やデータの秘匿性に欠けるという欠点がある。
【0004】
一方、交通機関の発達、高齢者の増加、生活圏の広域化に伴い、人の行動範囲はエリア的にも移動頻度も格段に拡大しており、健康に何らかの不安を抱えている人々も健常者と同様に旅行などを楽しみたいという欲求は強まっている。
このような人々が安心して旅行できるように支援するためには、上記先行例に示したような従来型の市民カードによる個人健康情報照会やヘルスケアカードによる既往症参照や健康管理手帳等を携帯しただけでは旅行者の移動先では十分なヘルスケアサポートに役立てることができず、さらに、日常のかかりつけの医者(本明細書では、「主治医」と称する)とは遠隔地からでは連絡の確実性がなく旅行先での不安感を解消するには不十分であり、これらの不安を取り除くとともに、地理不案内の旅行先でも的確なヘルスケアサポートが受けられることが強くのぞまれている。
【0005】
また、特許文献4に開示されているように、利用者のバイタルデータを測定し、その測定結果をセンタ宛に通信網に送出するようにしたものはあるが、これは在宅端末を前提としており、利用者の旅行など移動先での利用には適用できない。
さらに、特許文献5にも、バイタルセンサを携帯して所持者の健康状態をモニタするものが開示されているが、この技術では、バイタルデータを常時ネットワークを介して監視装置に送信し、監視装置に用意された利用者が健康状態にあると認定される許容基準値を記憶したデータベースと比較して監視装置で受信した検出データを比較して所持者の健康状態の異常を判定するものであるので、所持者の許容基準値を記憶したデータベースを用意する必要がある。
【0006】
【特許文献1】特開平10−334165号公報
【0007】
【特許文献2】特開平7−146893号公報
【0008】
【特許文献3】登録実用新案第3008152号公報
【0009】
【特許文献4】特開2003−210420号公報
【0010】
【特許文献5】特開2003−198759号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、旅行者が安心して旅行先でヘルスケアサポート受けることができるヘルスケアサポートシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の局面に係る発明は、従来の緊急連絡カードや健康カードなどが主として紙などのカードや磁気カード、ICカードなどで実現されることが多いのに対して、本発明は書き込み、読み出し可能でかつ携帯電話等のモバイル通信機器と接続可能な記録媒体を用いることにより、主治医から提供される、旅行者の基本的情報(たとえば、氏名、連絡先、生年月日、血液型など)のほかに健康に関する最新データ(たとえば、血圧、アレルギー、服用薬、診療状況など)を携帯できるようにしたほか、旅行先などにある提携医療機関などに設置された所定の端末により読み出し・書き込みもできるようにしたことを第1の特徴とする。
【0013】
さらに、旅行者に本人の身体状況をモニタ可能なバイタルセンサを携帯させることによって、旅行先でも旅行者のバイタルデータのモニタができるようにしたことを第2の特徴とする。
さらに、当該者が携帯する記録媒体ならびにバイタルセンサは、携帯電話等のモバイル通信機器と組み合わせることによって、本人情報ならびにバイタルデータを、主治医や旅行先にある提携医療機関へ送信できるようにしたことを第3の特徴とする。
【0014】
これらの記録媒体やバイタルセンサの旅行者は、とくに旅行先の提携医療機関に関する情報を持っていなくても、携帯電話等のモバイル通信機器が所定の管理センターに自動アクセスすることによって、当該管理センターがモバイル通信機器の位置情報にもとづいて自動的に当該地域にある直近の提携医療機関を選択し、当該医療機関の医師と旅行者との接続を実現することを第4の特徴とする。
【0015】
さらに、旅行者がバイタルセンサを携帯していなくても、旅行先の駅、空港など公共交通機関の拠点にバイタルセンサを設置しておき、そこで、旅行者が身体状態をモニタすると、その地域にあってあらかじめ提携した医療機関に自動的に接続し、適切な指示を受けられるようにしたことを第5の特徴とする。
【0016】
また、旅行者が携帯電話などのモバイル通信機器を携帯していなくても、駅や空港などの公共交通機関の拠点に設置された通信端末に旅行者が携帯する記録媒体とバイタルセンサを接続することにより、主治医や提携医療機関に接続し、バイタルセンサから得られたデータを自動的に送信できるようにしたことを第6の特徴とする。
【0017】
さらに、管理センターに登録した旅行者については、主治医が保持する当該旅行者に関するカルテ情報などを提携医療機関においても参照できるように構成できることを第7の特徴とする。
具体的には次のような手段で従来の方法の課題を解決している。
【0018】
(1)旅行に際し、個人の基本情報のほかに、最新の健康に関するデータを書き込み・読み出し可能である書き換え可能な記録媒体に主治医が記録することにより、日々変化する個人の最新の身体データを随時更新するとともに携帯できるようにしたこと。
(2)上記(1)項の記録媒体は、携帯電話などのモバイル通信機器に接続可能(内蔵可能)とすることにより、移動先から主治医や提携医療機関や管理センターなどに接続し、情報やデータの送信を随時可能にしたこと。
【0019】
(3)携帯可能でかつ携帯電話などのモバイル通信機器と接続可能なバイタルセンサを利用することにより、体調の変化などをバイタルデータとして随時モニタし、その結果を主治医や提携医療機関や管理センターに送信できるようにしたこと。
(4)上記(2)項に示した構造の記録媒体と携帯電話などのモバイル通信機器の組み合わせにより、あらかじめ登録した管理センターもしくは主治医や提携医療機関に自動的に発信できるようにしたこと。
【0020】
(5)上記(4)項において、携帯電話などのモバイル通信機器から接続された管理センターは、当該携帯電話などのモバイル通信機器を携帯する利用者の現在位置情報から、その近傍にある、あらかじめ提携した医療機関に自動的にデータを転送できるようにしたこと。
【0021】
(6)バイタルセンサを携帯しない場合でも、駅、空港などの公共交通機関の拠点に通信機能を備えたバイタルセンサを設置することにより、そのバイタルセンサにより体調をモニタし、その結果を主治医や提携医療機関や管理センターに送信できるようにしたこと。
【0022】
(7)携帯する記録媒体には個人情報が記録されていることから、個人のプライバシー保護を前提としたセキュリティ機能が装備されていること。
(8)管理センターには、あらかじめ登録した旅行者について、主治医が保持する当該旅行者のカルテ情報などを記憶しておき、当該旅行者に近い提携医療機関からも参照できるようにしたこと。なお、管理センターにおけるこれらの情報の記憶期間は原則として登録した旅行者の旅行期間中とする。
【0023】
(9)提携医療機関は、旅行者からのアクセスがあった場合、主治医との接続を行い、主治医が保持する当該旅行者のカルテ情報を参照できるようにしたこと。
(10)旅行者が携帯する記録媒体に記録する情報やデータの種類ならびに量を最小限に抑えるため、携帯する旅行者本人の認証に必要な情報だけを当該記録媒体に書き込んでおき、旅行者が旅行先の提携医療機関を訪問し、提携医療機関に設置された読み取り装置で記録媒体を読み取り、その読取装置は管理センターに自動的にアクセスし、本人認証を行うようにしておき、本人であることが確認されると、当該旅行者の主治医に接続して、主治医が保有する当該旅行者に関する身体や健康に関する情報やデータを提携医療機関の医師が参照できるように構成すること。
【0024】
(11)旅行に先立ち、旅行者の主治医から提供される旅行者に関する身体や健康に関する情報やデータを旅行期間中だけ管理センターに記憶しておき、旅行先から携帯電話等のモバイル通信機器によって管理センターにアクセスが行われ、本人認証が得られ、かつ、同じくアクセス権の認証が得られた提携医療間の医師がその記憶された情報やデータを参照できるように構成することも可能である。
【発明の効果】
【0025】
本発明によるヘルスケアサポートシステムによれば、旅行者本人に特段の負担を感じさせることなく、旅行先などにおいても日常生活圏で生活しているときと同じように健康に関して安心して行動できるように支援することができる。ネットワークにより、旅行者と主治医と旅行先などの提携医療機関との連携が実現し、また、バイタルセンサも形態することによって旅行者の身体状態がモニタ可能になり、必要な場合は迅速に必要な対応がとれるようにすることができる。その結果、本人はもちろん、家族など周囲の人にとっても安心して旅行等に送り出すことができ、生活のうるおいを増すという効果が得られる。このようなヘルスケアサポートシステムの整備が進むことにより、健康に不安をかかえる人だけでなく高齢者などもこれまで以上に旅行などを楽しむことができるようになるという効果も生まれる。
【0026】
このようなヘルスケアサポートシステムは、滞在型旅行などにも同じような効果をもたらすことから新しい生活スタイルの変化を促進するという面も期待できる。
また、本発明による管理センターを設置することによって、旅行者は旅行先での提携医療機関をとくに知らなくても安心して旅行できるほか、管理センターに数多くの医療機関の参加が得られるようになり、旅行先の制限が解消されどこでも自由に旅行できるようになる。
【0027】
また、カルテの電子化の進展に合わせて、旅行者本人がカルテ情報を携帯しなくてもネットワークを介して旅行先の提携医療機関などでも本人のカルテ情報等を参照することも出来るようになる。すなわち、旅行に先立って管理センターに旅行者本人の登録と、主治医が保有する当該旅行者の身体や健康に関する情報やデータを、旅行期間中のみ記憶しておき、旅行先で旅行者が訪ねた提携医療機関から管理センターにアクセスし、旅行者が携帯する本人認証を主目的とした記録媒体を用いて管理センターに本人認証の問い合わせを行い、認証が得られると管理センターに記憶されている当該旅行者の身体や健康に関する情報やデータを、同じく管理センターにおいて、当該情報やデータを参照するアクセス権の認証を得た提携医療機関の医師が参照できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1を参照して、第1の実施の形態を説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態に係るヘルスケアサポートシステムの概略構成を示す図である。なお、本明細書において、普段の生活圏から離れた場所への移動をすべて旅行として説明するが、仕事や趣味により、生活圏から離れた場所に移動する場合のすべてを含むものとする。また、日常のかかりつけの医者を、上記のように「主治医」と表現する。なお、ヘルスケアサポートを受けるユーザ(旅行中であることを考慮して、「旅行者」と称する)は主治医によるヘルスケアが必要であるものとする。
【0029】
図1において、ヘルスケアサポートを受ける旅行者10は、旅行中には、旅行者の個人情報や健康情報を記録した書き込み、読み出し可能な記録媒体11と、携帯電話などのモバイル通信機器13とを常時携帯している。モバイル通信機器13は記録媒体11に記録されたデータを読み出したり、データを書き込んだりするためのインターフェースを備えている。この記録媒体11は書き込みや読み出しが可能な媒体であれば、どのようなものであっても良い。記録媒体11が通信によりモバイル通信機器13とデータの授受を行うようなものである場合には、通信用インターフェースを備えていることが好ましい。なお、記録媒体11がモバイル通信機器13に挿脱可能に装着されるようにしても良い。また、旅行に際して、必要に応じて、たとえば血圧計や心拍計などの携帯可能なバイタルセンサ12も携帯するようにしても良い。モバイル通信機器13は、記録媒体11やバイタルセンサ12と通信が可能であり、更に、通信回線(有線、無線を問わない)を介して、他の機器と通信可能な機器であればよく。例えば、携帯電話やパソコン、PDAなどが使用可能である。
【0030】
旅行者10は、モバイル通信機器13を介して旅行者の主治医14、及び管理センター16と通信可能になっている。なお、旅行者10は、管理センター16を介して旅行中の旅行者からの要請にもとづいて医療支援を行う提携医療機関15とも通信可能になっている。なお、直接旅行者10と提携医療機関15が通信可能になっていても良い。提携医療機関15は、予め管理センター16に登録されている医療機関である。また、管理センター16は健康管理サーバを備え、旅行者10の登録管理(認証を含む)、健康情報管理や、提携医療機関15の登録管理(認証も含む)を行い、旅行中の旅行者10からの要請があったときに、旅行先に直近の提携医療機関などへのアクセスを支援する。以下の各実施の形態において、特に記載しないが、旅行者及び提携医療機関は、双方とも管理センターに登録されているものとする。
【0031】
上記のように構成された第1の実施の形態に係るヘルスケアサポートシステムの動作の流れを説明する。
図1において、旅行者10は旅行に先立って主治医14に赴き、最近の診療歴(治療状況を含む)、服用薬、血液型、アレルギーなどの健康情報や血圧、心拍数などの最新の身体データを記録媒体11に書き込んでもらう。記録媒体11には本人の基本的個人情報として、氏名、生年月日、連絡先などの情報が予め書き込まれているものとする。この記録媒体11は、管理センター16から主治医14を介して旅行者10に貸し出してもよいし、旅行者10が購入して常時携帯していても良い。
【0032】
旅行者10は、この記録媒体11を携帯して旅行に出かけた場合において、旅行先で健康状態になんらかの不安を感じたりした場合には、記録媒体11とモバイル通信機器13とを接続し、モバイル通信機器13を介して主治医14あるいは提携医療機関15あるいは管理センター16(以下、「管理センター」という場合は、特に断らない限り、主治医14及び提携医療機関15を含むものとする)にアクセスする。なお、記録媒体11がモバイル通信機器13に着脱式で内蔵できる場合には、常時モバイル通信機器13と接続された状態になるので、いつでも管理センターへのアクセスが可能になる。このアクセス先は、本人が任意に選択することが可能であるほか、選択順位を予め定めておき自動的にアクセスできるようにすることも可能である。いずれかの方法で選択された相手にアクセスすると旅行者10とアクセス先の医師との通信が可能になる。管理センター16にアクセスした場合には、管理センター16に用意されたデータに基づき旅行者10が現在いる場所に最も近い提携医療機関15に自動的に転送できるように構成することが好ましい。これにより、旅行者10が提携医療機関15の場所を知らなくても直近の提携医療機関15にアクセスできるようになる。
【0033】
図1において、旅行者10がバイタルセンサ12を携帯している場合には、バイタルセンサ12と携帯電話等のモバイル通信機器13とを接続した時点で、管理センターに自動的にアクセスするとともに、バイタルセンサ12で計測したバイタルデータがアクセス先の医師に自動的に送信される。更に、記録媒体11に書き込まれた旅行者10に関する情報ならびにデータも自動的に送信される。また、バイタルセンサ12がモバイル通信機器13に内蔵されている場合には、所定の操作、例えば、バイタルセンサ12に用意されたスイッチをオンにすること、により、管理センターにアクセスするようにしても良い。なお、記録媒体11に代えて、バイタルセンサ12のみを携帯していても良い。
【0034】
上記ように、旅行者10は、旅行中に所望の管理センターとの間で通信できることになる。加えて、例えば、提携医療機関15の医師は旅行者10に関するデータも参照しながら必要な指示を旅行者10に与えることができるので、旅行者10は安心して旅行先でヘルスケアサポートを受けることができる。
【0035】
なお、上記の実施形態では、旅行者10のデータをすべて記録媒体11に記録するようにしたが、その一部を記録するようにしてもよいし、旅行者10の識別データのみを記録しておいても良い。その場合には、予め主治医14から管理センター16へ当該旅行者10のデータが送信され、旅行者10から管理センター16へアクセスがあった時点で、所定の提携医療機関15を旅行者10に紹介すると共に、旅行者10のデータを当該医療機関に送信しても良い。
【0036】
図2を参照して、第2の実施の形態を説明する。図2は、旅行先等において、通信拠点21から提携医療機関15へのアクセス方法を示す図である。図2において、図1と同じ部分には同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
図2に示す実施形態では、図示しない旅行者が記録媒体11のみを携帯しているものとする。この場合において、例えば、高齢者等であって、携帯電話等のモバイル通信機器13を所有していない旅行者を対象としている。ここで、旅行者が提携医療機関15にアクセスしたい場合に、旅行先の鉄道の駅、空港などの公共交通機関などに設置された通信拠点21から、管理センターを介さずに自動的に近傍の提携医療機関15に接続できるようにしている。ここで、通信拠点21は、読取装置24と固定通信設備23とを備えている。旅行者が記録媒体11を、前記記録媒体11専用の読取装置24に挿入(セット)することにより、記録媒体11から旅行者の情報を読み取り、固定通信設備23を介して、当該情報を通信拠点21に近い提携医療機関15にデータを送信する。
【0037】
これにより、旅行先の通信拠点21に最も近い提携医療機関15にアクセスすることができるようになるので、例えば、旅行先に長期にわたって滞在する滞在型の旅行においても特に有効である。
図3を参照して、第3の実施の形態を説明する。図3において、図1及び図2と同じ部分には同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。図2では、通信拠点21に最も近い提携医療機関15にデータを送信するようにしたが、図3では、管理センター16が、提携医療機関15への案内等の補助を行う実施形態を示している。なお、この場合において、通信拠点21は所定の提携医療機関15ではなく、管理センター16に接続されている。
【0038】
図3において、旅行先等で、提携医療機関15の所在が不明な場合において、旅行者10が管理センター16にアクセスすると、管理センター16は旅行者10の現在位置情報をもとに、旅行者10に最も近い場所にある提携医療機関15や通信拠点21(複数であっても良い)を旅行者10に提示すると共に、当該提携医療機関15に旅行者10のデータを送信するようにしている。なお、管理センター16は、旅行者10からアクセスがあった時点で、旅行者10のデータを提携医療機関15に転送するようにしても良い。
【0039】
上記のような構成により、地理が不案内であるようなはじめての場所に旅行した場合において、ヘルスケアサポートに関する不安を取り除くことができる。また、旅行者10の近くの通信拠点21や提携医療機関15がすぐにわかるので、安心して旅行することができる。
【0040】
図4を参照して、第4の実施の形態を説明する。図4において、図1から図3と同じ部分には同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。本第4の実施形態では、通信拠点21に据置型バイタルセンサ22を設けている。また、この場合において、通信拠点21は管理センター16に接続されている。
【0041】
バイタルセンサ12を携帯していない旅行者10が、旅行先で身体の調子に不安を感じたり或いは定期的にチェックしたりする場合に、旅行先の駅や空港などの公共交通機関の通信拠点21に設置された読取装置24に記録媒体11を挿入(セット)し、据置型バイタルセンサ22で計測を行うと、自動的に管理センター16にアクセスするようになっている。このアクセスに基づいて、管理センター16は、主治医14あるいは直近の提携医療機関15に旅行者10のデータや据置型バイタルセンサ22で計測したデータを、転送し、必要な医師の指示などをもらうことができる。
【0042】
図4において、据置型バイタルセンサ22で計測したデータを記録媒体11に書き込み、記録媒体11と携帯電話等のモバイル通信機器13と接続したうえで、主治医14あるいは提携医療機関15あるいは管理センター16にアクセスすることも可能である。このように、旅行者10が据置型バイタルセンサ22を携帯しなくても旅行先でもバイタルデータのモニタができることになり、据置型バイタルセンサ22を携帯する煩わしさや負担を感じることなく旅行できるという安心感を旅行者10に与えることができる。さらに、旅行者10毎に据置型バイタルセンサ22を携帯する必要がなくなり、通信拠点21で据置型バイタルセンサ22を共通利用できるため、据置型バイタルセンサ22の経費を軽減できるという利点もある。
【0043】
図5を参照して、第5の実施の形態を説明する。図5において、図1から図4と同じ部分には同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。本第5の実施形態では、提携医療機関15と主治医14とが通信する場合を示す例である。
図5において、読取装置24は提携医療機関15に設置されているものとする。この場合において、旅行者10が携帯する記録媒体11に記録する情報やデータの種類やデータ量を最小限に抑えるために、記録媒体11には本人認証に必要な情報のみを書き込んでおくものとする。ここで、旅行先で管理センター16へのアクセスが必要になった場合、旅行者10は、提携医療機関15に設置された読取装置24に記録媒体11を挿入(セット)して、その記録媒体11の記録内容を読み取らせる。読取装置24で読み込まれた旅行者10のデータに基づいて、管理センター16は、本人の認証を行う。本人の認証が得られると、管理センター16は当該旅行者10の主治医14にアクセスして主治医14が保有する当該旅行者に関する身体や健康に関する情報やデータを提携医療機関15の医師が参照できるように転送するように指示する。これに応じて、主治医14から提携医療機関15にデータが送信される。
【0044】
上記の構成により、記録媒体11に記録された旅行者のデータが、例えば、旅行者のIDのみであったものとしても、管理センター16に対する正規の登録者であることが確認されれば、当該旅行者に関するデータが提携医療機関15に送信されてくるので、旅行者10は、安心して提携医療機関15でヘルスケアサポートを得ることができる。また、記録媒体11に具体的な旅行者のデータが入っていないので、記録媒体11を紛失や盗難によって他人が取得した場合であっても、当該旅行者のデータが取得者に知られるようなことがない。
【0045】
図6を参照して、第6の実施の形態を説明する。図6において、図1から図5と同じ部分には同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。本第5の実施形態では、管理センター16がデータベース25を備えており、当該データベース25に予め旅行者のデータを記憶する例を示している。
【0046】
旅行者10から主治医14に旅行の申し出があった場合に、主治医14から旅行者10の旅行期間や旅行者10のデータが、管理センター16に送信されて、データベース25に、一時的に(すなわち、該旅行者10の旅行期間中)記憶される。旅行者10が、旅行先で管理センター16へのアクセスが必要になった場合、旅行者10は、提携医療機関15に設置された読取装置24に記録媒体11を挿入(セット)して、その記録媒体11の記録内容を読み取らせる。読取装置24で読み込まれた旅行者10のデータに基づいて、管理センター16は、本人の認証を行う。そして、提携医療機関15から当該旅行者10の身体や健康に関する情報やデータの参照要求があった場合には、管理センター16のデータベース25から当該旅行者のデータが提携医療機関15に転送される。なお、管理センター16に一時記憶された旅行者のデータは当該旅行者の予定旅行期間経過後に自動的に削除しても良いし、旅行者10から主治医14に削除の要求があった場合や主治医14の受けたときに削除しても良い。
【0047】
本実施形態においても、旅行者のデータが、旅行者の認証が終了した時点で、提携医療機関15の要求によって転送されるので、旅行者に携帯する記録媒体11には、旅行者の認証データ以外の情報を入れる必要がなくなり、第5の実施形態と同様に、記録媒体11が第3者の手にわたった場合でも、旅行者のデータが漏洩するおそれがない。
【0048】
上記のように、本発明の実施の形態では、従来の市民カードやヘルスケアカードなどのように、非常時などに携帯している本人情報を確認する補助手段として使われることが多かった情報に加えて、旅行者の健康状況に関する最新の情報やデータを記録した、読み出し、書き込み可能な記録媒体を旅行者に携帯させるようにしている。この記録媒体と携帯電話などのモバイル通信機器とを組み合わせることによって、主治医や旅行先にある提携医療機関と接続して健康に関する情報やデータの送信を行い、それらをもとにした処置が適切に行われるようにすることによって、旅行者のヘルスケアサポートの格段の充実と広域化をはかることができる。さらに、旅行者が適切なバイタルセンサを携帯することによって、旅行者のリアルタイムの身体データをモニタし、そのデータを主治医や提携医療機関に送信して適切な処置を受けることもできるようにしている。
【0049】
また、上記の実施の形態では、通信機器を直接主治医や提携医療機関に接続せず、管理センターに接続して、管理センターから旅行者が現在所在する場所に最も近い提携医療機関に自動的に転送する例を示している。これにより、地理不案内な場所でも的確に医療機関との連絡が取れるようにすることも可能になる。
【0050】
上記の実施形態では、バイタルセンサによって何らかの異常を感じたときのみ、主治医や提携医療機関にアクセスすればよいので、とくに所持者の許容基準値を記憶したデータベースを用意する必要もなく、かつ所持者と監視装置間の不要な通信を必要とせず所持者の余分な心理的負担を回避できる。また、バイタルセンサを携帯していなくても、主治医や提携医療機関などと必要なときに連絡をとったり、旅行先の駅や空港など公共交通機関の拠点に設置されたバイタルセンサを利用して健康状態をモニタできるなど実用上の自由度を有する。さらに、携帯電話等のモバイル通信機器の操作に不慣れであったり、携帯していない場合でも、携帯している記録媒体から、提携医療機関などにおいて本人の健康に関する情報を読み出すことができるため、とくにデータベースの参照など行わなくても必要な対応をとることができる。
【0051】
上記したように、人々の旅行などによる行動範囲はますます広域化しつつあり、健常者に劣らず、健康に何らかの不安を抱えた人々でも旅行に対する欲求は高まりつつある。本実施形態では、このような要求を医療面でサポートし健常者にかわらず安心して旅行できるように支援することができる。
【0052】
具体的には、旅行などに際して、当該者本人の健康に関する最新データを主治医から提供してもらい、書き込み、読み出し可能で携帯可能な記録媒体に記録し、1種のポータブルカルテとしての機能を持たせるとともに、携帯電話などのモバイル通信機器と接続可能(或いは内蔵可能)にすることによって、当該記録媒体に記録した情報やデータを主治医や、旅行先にある提携医療機関に送信できるようにして、医師による必要な処置の指示等が得られるようにする。さらに、必要に応じて適切なバイタルセンサを携帯して継続的に身体状況をモニタし、そのデータを携帯電話などのモバイル通信機器を通して主治医や旅行先にある提携医療機関に送信することにより、医師の診断や指示を受けられるようにすることが可能になる。また、管理センターを設置することによって、旅行者はどこにいてもこの管理センターにアクセスすることが可能であって、これにより現在地にある提携医療機関が不明の場合でも管理センターが本人にもっとも近い提携医療機関に転送して迅速に必要な処置が受けられるようにすることも可能である。
【0053】
また、旅行者が携帯する記録媒体に記録する情報ならびにデータを最小限に抑えるため、その記録媒体には本人認証に必要な情報だけを書き込んでおき、旅行者が提携医療機関においてあるいは管理センターにアクセスすることによって、該記録媒体の内容を読み取り本人認証を行い、そのあとで、当該旅行者の主治医が保有している本人の身体や健康に関する情報やデータを提携医療機関の医師が参照できるようにすることを可能とすることもできる。また、旅行に先立って管理センターに当該旅行者の身体や健康に関する情報やデータを予め記憶しておき、前述のようなアクセスがあった場合に提携医療機関の医師がその情報やデータを参照できるように構成することも可能である。
【0054】
携帯可能で、かつ携帯電話などのモバイル通信機器に接続可能な記録媒体を利用し、当該記録媒体を携帯する人の健康に関する基本的情報やデータを記憶し、旅行先等で必要な場合には主治医や旅行先にある提携医療機関や管理センターと自動的に接続が行われ、健康情報やデータの転送ならびに参照が主治医や提携医療機関において行うことができ、その結果、必要な医療処置が迅速に行えるようにした。さらに、バイタルセンサを携帯することによって得られる旅行者のバイタルデータを携帯電話などのモバイル通信機器を通して主治医や提携医療機関に送信することによって、主治医や提携医療機関と連携して必要な処置がとれるようにした。
【0055】
また、携帯する記録媒体には携帯する本人認証に必要な情報を記録しておき、当該記録媒体の内容を読み出し可能な端末で読み取らせると自動的に管理センターに接続し、本人の認証が管理センターで確認されると、当該本人の健康に関する情報やデータが提携医療機関に転送され参照することが可能になる。
【0056】
本発明は、上記各実施の形態に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。
例えば、上記の実施形態は、各実施形態を別々に説明したが、適宜組み合わせて構成することが可能である。例えば、第3の実施形態では、旅行者が管理センターに連絡を取ってから、例えば、通信拠点を探すような記載になっているが、第1の実施形態のように、旅行者が、モバイル通信機器を携帯していて、記録媒体の読み取りやデータの転送が可能とした構成でも良い。また、上記の実施形態には記載しなかったが、管理センターで記録のログを取って、そのログも主治医が管理するようにしても良い。
更に、旅行者から連絡をとる場合に、通信環境に応じて、管理センターのみでなく、主治医に連絡しても良いし、予め旅行先の提携医療機関を決定しておいて、体調に不安等を感じたときに、当該提携医療機関に直接連絡をしても良い。また、旅行者が記録媒体を読取装置に挿入した場合や、データ送信をした場合にそのログをとって、記録媒体に記録しておくようにしても良い。なお、このログも他人に容易に見られないように、暗号化などをするのが好ましい。
また、旅行者の認証は、暗号によるもの、生体データ(指紋、声紋等)等、本人を特定できるものであれば、どのような認証方法を用いても構わない。また、記録媒体に記録されたデータの秘匿性については、例えば、正規の読取装置以外のもので読み取ろうとしたときに、強制的にデータをすべて削除するようにしても良い。
さらに、上記各実施形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより種々の発明が抽出され得る。
【0057】
また、例えば各実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るヘルスケアサポートシステムの概略構成を示す図。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係るヘルスケアサポートシステムの概略構成を示す図。
【図3】本発明の第3の実施の形態に係るヘルスケアサポートシステムの概略構成を示す図。
【図4】本発明の第4の実施の形態に係るヘルスケアサポートシステムの概略構成を示す図。
【図5】本発明の第5の実施の形態に係るヘルスケアサポートシステムの概略構成を示す図。
【図6】本発明の第6の実施の形態に係るヘルスケアサポートシステムの概略構成を示す図。
【符号の説明】
【0059】
10…旅行者
11…記録媒体
12…バイタルセンサ
13…モバイル通信機器
14…主治医
15…提携医療機関
16…管理センター
21…通信拠点
22…据置型バイタルセンサ
23…固定通信設備
24…読取装置
25…データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘルスケアを必要とする旅行者のサポートを行うヘルスケアサポートシステムにおいて、
旅行者の個人識別情報と本人の基本情報と健康情報の少なくとも1つの情報を記録し、旅行者が旅行中に携帯する読み書き可能な記録媒体と、
通信拠点或いは提携医療機関に設置され、前記記録媒体に記録された情報を読み取る前記記録媒体専用の読取装置と、を備え、
前記記録媒体の情報は、前記旅行者の主治医や前記旅行者の現在地に近い提携医療機関に、直接或いは管理センターを介して送信され、
送信された前記記録媒体の記録情報に基づいて、旅行先の医療機関で診察を受けることができることを特徴とするヘルスケアサポートシステム。
【請求項2】
ヘルスケアを必要とする旅行者のサポートを行うヘルスケアサポートシステムにおいて、
旅行者のバイタルデータを取得するバイタルセンサと、
前記バイタルデータを、主治医や提携医療機関や管理センターなどに自動的に送信する手段と、を備え、
前記バイタルデータに基づいて、旅行先の医療機関でヘルスケアを受けることができることを特徴とするヘルスケアサポートシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のヘルスケアサポートシステムにおいて、管理センターが、旅行者が携帯するバイタルセンサからのデータを受信した場合に、前記旅行者が現在所在する地域にあり、あらかじめ提携した医療機関に自動的に当該バイタルデータを転送し、前記医療機関と前記旅行者との間の通信を実現することを特徴とするヘルスケアサポートシステム。
【請求項4】
ヘルスケアを必要とする旅行者のサポートを行うヘルスケアサポートシステムにおいて、
前記旅行者のバイタルデータを取得するために、あらかじめ提携医療機関や駅、空港など公共交通機関の拠点に設置されたバイタルセンサと、
前記バイタルセンサによって取得したバイタルデータを記録する携帯記録媒体と、を備え、
前記記録媒体に記録されたバイタルデータに基づいて、旅行先の医療機関で、或いは主治医により診察を受けることができることを特徴とするヘルスケアサポートシステム。
【請求項5】
請求項4に記載のヘルスケアサポートシステムにおいて、前記バイタルセンサによってバイタルデータを取得すると、バイタルセンサ設置場所近傍の提携医療機関に自動的にバイタルデータが送信されることを特徴とするヘルスケアサポートシステム。
【請求項6】
請求項4に記載のヘルスケアサポートシステムにおいて、
前記読取装置は、駅や空港などの公共交通機関の拠点に設置された通信端末に設置されており、
前記旅行者が携帯する記録媒体を前記読取装置にセットし、前記バイタルセンサを前記通信端末に接続することにより、主治医や提携医療機関に、バイタルセンサから得られたデータが自動的に送信されることを特徴とするヘルスケアサポートシステム。
【請求項7】
請求項6に記載のヘルスケアサポートシステムにおいて、
前記記録媒体を前記読取装置にセットすると、該読取装置は自動的に管理センターに接続し、管理センターに記憶された認証データに基づいて認証が行われ、
アクセス許可の認証が得られた提携医療機関の医師により、管理センターに予め記憶された当該者に関する身体ならびに健康に関する情報ならびにデータが参照可能であることを特徴とするヘルスケアサポートシステム。
【請求項8】
請求項7に記載のヘルスケアサポートシステムにおいて、
前記記録媒体を前記読取装置にセットすると、該読取装置は自動的に管理センターに接続し、管理センターに記憶された認証データに基づいて認証が行われ、
管理センターは本人の主治医に自動的に接続し、主治医が保有する本人に関する身体ならびに健康に関する情報ならびにデータを提携医療機関に転送することを特徴とするヘルスケアサポートシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−323468(P2006−323468A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−143832(P2005−143832)
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】