説明

旋回屈曲式コネクタ

【課題】ブーツの向きの調整がワンタッチで短時間に行えると共に、光ファイバが直角に曲げられたままの状態で旋回してブーツの向きを変えることによるファイバ芯線材の捻れや過度のストレスの発生を未然に防止することができる旋回屈曲式コネクタを提供する。
【解決手段】ブーツ8を水平軸の廻りに正逆回転方向に旋回可能にすると共に、旋回後のブーツ8の曲げ方向を水平軸に対し一方向に屈曲可能となるように可動手段10を形成する。この可動手段10は、ストップリング5に嵌合固定した回転軸カバー10aと、該回転軸カバー10aに対し水平軸の廻りに正逆回転方向に旋回自在に連繋した旋回カバー10cと、該旋回カバー10c内で水平軸に対し一方向に90度まで屈曲自在に連繋し且つブーツを固定してなる屈曲カバー10bとを備えてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種光通信機器を接続するために室内壁面に設置された光コンセントアダプタに接続する旋回屈曲式コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、FTTH(fiber to the home)が進み、部屋の中に光コンセントを設置するようになってきている。そこで従来では、特許文献1に開示されているように、室内の壁面に設けたアウトレットボックスに複数の光コンセントを取り付け、当該光コンセント内に保持された接続アダプタに、光ファイバコード等の外部光コネクタプラグを壁面に対し垂直に挿入して接続するアウトレット部品なる技術が提案されている。
【0003】
しかしながら、従来の外部光コネクタプラグは、壁面に対し垂直に挿入して接続するため、当該外部光コネクタプラグ自体が壁面から垂直に突出した状態となる。このため、外部光コネクタプラグが邪魔になり、周辺機器がこれにぶつかって破損する等の事故が予想される。
【0004】
そこで、ブーツを直角に屈曲変形させて形成し、この先端を光コネクタプラグのストップリングの末端に装着固定してなる所謂曲げ式コネクタを使用する等の何等かの対策を採ることが必要となってきている。このとき、光コネクタプラグのツマミ片側には、接続アダプタのキー孔に挿入可能なガイド突起が形成されている。
【特許文献1】特開2005−106937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ただ、従来においては、曲げ式コネクタプラグのストップリングの末端にブーツを一度装着すると、別部品への変更が必要となり、このため、作業に手間と時間が掛かるものとなっていた。
【0006】
また、従来の曲げ式コネクタは、ツマミ片側に接続アダプタのキー孔に挿入可能なガイド突起が形成されているため、ブーツをストップリングに装着したまま曲げ式コネクタプラグごと向きを変えることは不可能となる。しかも、光ファイバが直角に曲げられたままの状態で曲げ式コネクタプラグ自体を正逆回転方向に旋回させると、ファイバ芯線材に捻れや過度のストレスが発生してしまう。
【0007】
さらに、ブーツを直角に屈曲変形させて形成した場合には、内部の光ファイバ自体が一箇所で直角となって極端に曲げられてしまい、光ファイバの曲げ半径を十分に採れないものとなることから、伝送損失の増加を招いてしまうという問題点を有していた。
【0008】
そこで、本発明は、叙上のような従来存した諸事情に鑑み案出されたもので、別部品への影響がなく、ブーツの向きの調整がワンタッチで短時間に行えると共に、光ファイバが直角に曲げられたままの状態で旋回させてブーツの向きを変えることによるファイバ芯線材の捻れや過度のストレスの発生を未然に防止することができ、さらに光ファイバの曲げ半径を十分に採れるように屈曲可能とすることで、伝送損失の増加を抑制できるものとした旋回屈曲式コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するため、本発明にあっては、光ケーブルの光ファイバが挿入されて固定されると共に、後端にフランジが圧入保持されるフェルールと、フランジ後端に当接しフェルールを前方に付勢するスプリングの後端を支持するストップリングと、これら各部材を覆うプラグフレームと、光ケーブルのケブラを前記ストップリングに固定するカシメリングと、前記ストップリングに可動手段を介してブーツを装着した旋回屈曲式コネクタであって、前記可動手段は、ブーツを水平軸の廻りに正逆回転方向に旋回可能にすると共に、旋回後のブーツの曲げ方向を水平軸に対し一方向へ屈曲可能に形成されていることを特徴とする。
【0010】
可動手段は、ストップリングに嵌合固定された回転軸カバーと、該回転軸カバーに対し水平軸の廻りに正逆回転方向に旋回自在に連繋された旋回カバーと、該旋回カバー内で水平軸に対し一方向に90度まで屈曲自在に連繋され且つブーツを後端に固定してなる屈曲カバーとを備えてなる。
【0011】
可動手段は、回転軸カバーが嵌合する旋回カバーの内周に沿って複数の凹部を有し、これら各凹部に、回転軸カバーの開口端前方に向けて突設された複数の凸部がそれぞれ係合して当該旋回カバーを任意の旋回角度位置で固定可能とするよう形成されている。
【0012】
可動手段は、旋回カバー内面に形成された円弧状のガイド溝と、該ガイド溝に係合するよう屈曲カバーに突設した凸部とを備え、屈曲カバーを水平位置および90度の角度位置で固定可能となるよう前記ガイド溝の両端に、屈曲カバーの前記凸部を嵌合可能とした凹部を備えてなる。
【0013】
可動手段は、回転軸カバーおよび屈曲カバーとの間に内部カバーを介装し、該内部カバーは屈曲カバーに押されて90度屈曲位置で回転軸カバーに係止されて当該回転軸カバーに対する旋回カバーの回転を阻止させるよう回転軸カバーに凹凸状の回転制御部を備えてなる。
【0014】
前記回転制御部は、屈曲カバーの90度屈曲位置から水平位置までの復帰移動によって当該屈曲カバーにより内部カバーが押されて回転軸カバーとの係止を解除させることで回転軸カバーに対する旋回カバーの回転を許容させるよう形成されている。
【0015】
ストップリングと回転軸カバーとは、ストップリング外周の円周に沿って凹設された嵌合凹部に、回転軸カバーの開口端における内周に沿って突設された左右一対の嵌合突部を嵌合させると共に、回転軸カバーの開口端に突設した上下一対の係止片を、ストップリング外周を覆うプラグフレームの上下一対のキー溝に係止させることで固定される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、別部品への影響がなく、ブーツの向きの調整がワンタッチで短時間に行えると共に、光ファイバが直角に曲げられたままの状態で旋回させてブーツの向きを変えることによるファイバ芯線材の捻れや過度のストレスの発生を未然に防止することができ、さらに光ファイバの曲げ半径を十分に採れるように屈曲可能とすることで、伝送損失の増加を抑制することができる。
【0017】
すなわち、本発明において可動手段は、ブーツを水平軸の廻りに正逆回転方向に旋回可能にすると共に、旋回後のブーツの曲げ方向を水平軸に対し一方向に屈曲可能に形成されているので、ブーツの向きの変更毎に、旋回屈曲式コネクタのストップリングからブーツをわざわざ取り外す必要が無くなり、したがって、ブーツの向きの調整がワンタッチで容易且つ短時間に行える。これと同時に、光ファイバの曲げ半径を十分に採れることから、伝送損失の増加を抑制することができる。
【0018】
また、可動手段は、ストップリングに嵌合固定された回転軸カバーと、該回転軸カバーに対し水平軸の廻りに正逆回転方向に旋回自在に連繋された旋回カバーと、該旋回カバー内で水平軸に対し一方向に90度まで屈曲自在に連繋され且つブーツを固定してなる屈曲カバーとを備えてなるので、簡単な構成により、ブーツの向きの調整が確実且つスムーズに行える。しかも、簡単な構成によって屈曲されたブーツの向きの確保が容易となる。さらに、内挿されている光ケーブルを隠蔽された状態で水平軸の廻りの回転や水平方向からの屈曲を許容させるよう旋回カバーおよび屈曲カバーの内部に曲げスペースが形成されることから、ブーツの方向調整に際して光ケーブルを損傷させることが無い。
【0019】
そして、可動手段は、回転軸カバーが嵌合する旋回カバーの内周に沿って複数の凹部を有し、これら各凹部に、回転軸カバーの開口端前方に向けて突設された複数の凸部がそれぞれ係合して当該旋回カバーを任意の旋回角度位置で固定可能とするよう形成されているので、回転軸カバーに対する旋回カバーの不用意な回転を防止することができる。
【0020】
さらに、可動手段は、旋回カバー内面に形成された円弧状のガイド溝と、該ガイド溝に係合するよう屈曲カバーに突設した凸部とを備え、屈曲カバーを水平位置および90度の角度位置で固定可能となるよう前記ガイド溝の両端に、屈曲カバーの前記凸部を嵌合可能とした凹部を備えてなるので、屈曲カバーの旋回カバーに対する過度な回転を未然に防止することができ、これによって光ケーブルを損傷させることが無い。
【0021】
さらにまた、可動手段は、回転軸カバーおよび屈曲カバーとの間に内部カバーを介装し、該内部カバーは屈曲カバーに押されて90度屈曲位置で回転軸カバーに係止されて当該回転軸カバーに対する旋回カバーの回転を阻止させるよう回転軸カバーに凹凸状の回転制御部を備えているので、従来のように、光ファイバが直角に曲げられたままの状態で旋回動作に入ることによってファイバ芯線材に捻れや過度のストレスが発生してしまうのを未然に防止することができる。
【0022】
前記回転制御部は、屈曲カバーの90度屈曲位置から水平位置までの復帰移動によって当該屈曲カバーにより内部カバーが押されて回転軸カバーとの係止を解除させることで回転軸カバーに対する旋回カバーの回転を許容させるよう形成されているので、光ファイバが直角に曲げられたままの状態で旋回してしまうのを未然に防止することができる。
【0023】
ストップリングと回転軸カバーとは、ストップリング外周の円周に沿って凹設された嵌合凹部に、回転軸カバーの開口端における内周に沿って突設された左右一対の嵌合突部を嵌合させると共に、回転軸カバーの開口端に突設した上下一対の係止片を、ストップリング外周を覆うプラグフレームの上下一対のキー溝に係止させることで固定されるので、ストップリングに回転軸カバーを嵌合した際には、プラグフレームのキー溝に嵌合した係止片によって回転軸カバー自体に廻り止め機能を付与させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明に係る旋回屈曲式コネクタを実施するための最良の一形態を詳細に説明する。
本発明に係る旋回屈曲式コネクタ1は、図10(a)および図10(b)に示すように、各種光通信機器を接続するために室内の壁面に設置されたアウトレットボックスMに内装された光コンセントアダプタQに接続するものである。
【0025】
旋回屈曲式コネクタ1は、図1に示すように、光ファイバ芯線aが挿入されて固定されると共に、後端にフランジ21が圧入保持されるフェルール2と、フランジ21後端に当接しフェルール2を前方に付勢するスプリング4の後端を支持するストップリング5と、これら各部材を覆うプラグフレーム3と、光ケーブルPの抗張力線であるケブラP1を前記ストップリング5に固定すると同時に、ストップリング5後端側に配したアイレット7に、光ケーブルPのケブラP1外側を覆う合成樹脂外皮であるシースP2を固定するカシメリング6と、前記ストップリング5の後方に、後述する可動手段10を介して装着されるブーツ8と、プラグフレーム3およびストップリング5の外側に被せられるツマミ9とから概ね構成されている。
【0026】
フェルール2は、光ファイバ芯線aの先端が挿入後、接着剤等で接着されることにより光ファイバ芯線aを固定するものである。また、フェルール2は、プラグフレーム3に覆われることによりその保護がなされている。
【0027】
スプリング4はコイルばねからなり、フランジ21およびストップリング5の間に挟まれるように配置されることにより、その先端がフランジ21後端に当接され、後端がストップリング5に支持されている。このようにストップリング5に後端が支持されることにより、スプリング4はフランジ21と共にフェルール2を前方に付勢するように作用する。
【0028】
プラグフレーム3には、図3および図4に示すように、フェルール2、フランジ21およびスプリング4と共に、ストップリング5の前方部分が挿入されている。この場合、ストップリング5の前方部分における外面上方には凸部5aが形成されており、この凸部5aが、プラグフレーム3に対するストップリング5挿入時のガイドの役割を果たす。一方、ストップリング5の下方に略Cリング状に突設したフック部3aがプラグフレーム3の円弧状の係止孔3bに係止されることで抜け止めの役割を果たす。
【0029】
ストップリング5の後方には、当該ストップリング5に対して旋回可能および屈曲可能としてなる可動手段10を介してブーツ8が取り付けられている。すなわち、この可動手段10によって、ブーツ8を水平軸の廻り方向へ正逆回転方向に、例えば45度間隔毎に旋回可能にすると共に、旋回後のブーツ8の曲げ方向を水平軸に対し一方向に90度だけ屈曲可能となるようにしてある。
【0030】
具体的には、可動手段10は、図2(a)に示すように、ストップリング5に固定される回転軸カバー10aと、該回転軸カバー10aに回動自在に連繋された旋回カバー10cと、該旋回カバー10c内で回動自在に連繋され且つブーツ8を固定してなる屈曲カバー10bと、旋回カバー10cおよび屈曲カバー10b間に介装させた内部カバー10dとから構成されている。
【0031】
すなわち、旋回カバー10cは、図2(a)に示すように、略左右対称となった2つ割構造となっており、一方の旋回カバー10cの内側に形成した軸部11に、下端が円弧面となった全体略L字片状の内部カバー10dを介して、ブーツ8を後端に固定した屈曲カバー10bが回動自在に枢着され、該左右の旋回カバー10cそれぞれの一端に形成された各半円形状の開口部に前記回転軸カバー10aのフランジを挟み込むようにして、当該左右の旋回カバー10cそれぞれをパッチン爪による嵌合方式によって互いに合致固定させることで図2(b)に示すような可動手段10が形成されるものとしてある。
【0032】
回転軸カバー10aは、図2(a)、図7(a)、図8(a)乃至(h)、図9(a)乃至(e)に示すように、光ケーブルPを挿通させる円筒によって形成され、当該回転軸カバー10aの一端開口側に環状となって形成されたフランジの前面には4つの凹部31を介して4つの円弧形突起状のヒンジ突起部32が前方に向けて一体延設されていることで屈曲カバー10bの回転制御部16が形成されている。また、これらヒンジ突起部32の各中央には凸部33が前方に向けて突設されている。
【0033】
そして、旋回カバー10c内面隅部には、図2(a)、図6(a)乃至(f)、図7(b)、図8(a)に示すように、円弧状のガイド溝34が形成され、該ガイド溝34には屈曲カバー10bの側面に突設した凸部35が係合している。さらに、ガイド溝34の両端には、屈曲カバー10bの前記凸部35を嵌合可能とした係止凹部36が形成されており、屈曲カバー10bを水平位置および90度の角度位置でそれぞれ固定可能となるようにしてある。
【0034】
また、図8(a)乃至(h)に示すように、回転軸カバー10aのヒンジ突起部32の各中央の凸部33に対向すべく、旋回カバー10cの開口部内周に沿って複数の凹部37が形成され、これら各凹部37に、回転軸カバー10aの複数の凸部33がそれぞれ係合される所謂ラッチ嵌合構造とすることで、当該旋回カバー10cを任意の旋回角度位置で固定可能となるようにする。
【0035】
すなわち、図8(a)・(b)に示すように、回転軸カバー10aに対して旋回カバー10cが定位置にある状態から、図8(c)・(d)に示すように、回転軸カバー10aに対して旋回カバー10cが90度旋回した場合、あるいは図8(e)・(f)に示すように、回転軸カバー10aに対して旋回カバー10cが定位置から180度旋回した場合、さらには図8(g)・(h)に示すように、回転軸カバー10aに対して旋回カバー10cが定位置から270度旋回した場合のそれぞれにおいて、旋回カバー10cの各凹部37に、回転軸カバー10aの各凸部33がそれぞれ係合されるものとなっている。
【0036】
この回転軸カバー10aの他端開口側には、図2(a)・(b)、図3、図4に示すように、内周に沿って左右一対の嵌合突部13が対向突設され、ストップリング5外周の円周に沿って凹設された嵌合凹部12に当該嵌合突部13を嵌合させると共に、回転軸カバー10aの他端開口側の上下に対向突設した一対の係止片14を、ストップリング5外周を覆うプラグフレーム3の上下一対のキー溝15に係止させるものとし、これによって回転軸カバー10aはストップリング5およびプラグフレーム3に対して所要の角度で固定保持される。
【0037】
また、屈曲カバー10bは、図1、図2(a)、図5、図6、図9に示すように、光ケーブルPが挿通できる円筒の一端開口側から上下に略円弧状に延びたアーム部41a、41bが形成され、この両アーム部41a、41bの幅間隔および突出長さは、光ケーブルPの90度角度範囲まで屈曲を許容させることが可能となる曲げスペースが旋回カバー10c内部で形成されることが可能な程度に設定されている。また、アーム部41a、41bの片側は円形状に塞がれており、その一部には段差部42を設け、屈曲カバー10bの下側への90度角度の回転に際し、該屈曲カバー10bの段差部42が旋回カバー10cの上側内面で係止されるようにしてある。
【0038】
さらに、図6(c)乃至(f)、図9(a)乃至(e)に示すように、屈曲カバー10bの段差部42には、回転軸カバー10aおよび屈曲カバー10bとの間に介装した内部カバー10dに係合連繋させるための凸部43を形成してあり、該内部カバー10dは屈曲カバー10bに押されて90度屈曲位置で回転軸カバー10aのヒンジ突起部32相互間の凹部31に係止され、当該回転軸カバー10aに対する旋回カバー10cの回転を阻止させることで既述の回転制御部16を形成している。
【0039】
また、この回転制御部16は、屈曲カバー10bの90度屈曲位置から水平位置までの復帰移動によって当該屈曲カバー10bの凸部43により内部カバー10dが押されて回転軸カバー10aの凹部31との係止を解除させることで回転軸カバー10aに対する旋回カバー10cの回転を許容させるものとしてある。
【0040】
これによって、図5(a)に示すように、ブーツ8の向きが水平位置にある場合は、回転軸カバー10aに対して旋回カバー10cが旋回可能な状態となる。そして、この状態において、図5(b)に示すように、屈曲カバー10bを介してブーツ8の向きを下側90度方向に屈曲させると、該屈曲カバー10bによって内部カバー10dが押される。これによって内部カバー10dは回転軸カバー10aのヒンジ突起部32相互間の凹部31に係止されることから、当該回転軸カバー10aに対する旋回カバー10cの旋回が阻止される。
【0041】
また、ブーツ8の向きを水平方向に復帰回転させると、図9(a)乃至(d)に示すように、屈曲カバー10bによって内部カバー10dが逆方向に押し戻され、再び回転軸カバー10aに対して旋回カバー10cが旋回可能な状態となる。
【0042】
そして、図5(c)に示すように、旋回カバー10cを例えば180度旋回させた後に、図5(d)に示すように、屈曲カバー10bを介してブーツ8の向きを上側90度方向に屈曲させると、該屈曲カバー10bによって内部カバー10dが押される。これによって内部カバー10dは回転軸カバー10aのヒンジ突起部32相互間の凹部31に係止されることから、当該回転軸カバー10aに対する旋回カバー10cの旋回が阻止される。
【0043】
ストップリング5の後部には、前記したとおり、共に金属からなるカシメリング6およびアイレット7が配置されている。すなわち、図1に示したように、カシメリング6は、大径の前側筒部6aと小径の後側筒部6bとが略中央の段差部6cを介して連設されて成り、前側筒部6aは、光ケーブルPの切断されたシースP2内側のケブラP1と共にストップリング5の後部外周に嵌着される。また、後側筒部6bは、シースP2の切断端部を被せた状態にしてから外側からアイレット7側にかしめることにより当該シースP2は固定される。こうして、カシメリング6の後側筒部6bのカシメを介してアイレット7と外皮であるシースP2は固定される。
【0044】
また、プラグフレーム3は、丸型構造に形成されると共に、当該プラグフレーム3の上下対称位置には、ツマミ9に形成された上下対称位置のキー孔に対応して一対のガイド部を形成してある。このガイド部は、プラグフレーム3にツマミ9を装着する際に、当該ツマミ9に形成された上下対称位置のキー孔に対し1方向で嵌挿されるよう当該ガイド部は互いに異なった幅員となるように形成されている。
【0045】
さらに、図1および図4に示すように、ツマミ9の片側には、光コンセントアダプタQに対して一方向からの接続を可能とするようにガイドさせるために、接続アダプタのキー孔に挿入可能なガイド突起9aが形成されている。
【0046】
図10(a)および図10(b)は旋回屈曲式コネクタの使用の一例を示すもので、Mは光分岐ボックスBに可撓性パイプ17を介して連結されたアウトレットボックス、QはアウトレットボックスMの正面板に取り付けられた光コンセントアダプタである。
【0047】
同図において、光コンセントアダプタQは後端において光分岐ボックスBに光ケーブルPを介して接続される。一方、前端においてパソコンRに光ケーブルPを介して接続された旋回屈曲式コネクタ1が着脱自在に接続される。
【0048】
次に、以上のように構成された本発明旋回屈曲式コネクタの組立・使用の一例について詳細に説明する。
先ず、本発明における可動手段10を形成するに際し、図2(a)に示すように、一方の旋回カバー10cの内側に形成した軸部11に、内部カバー10dを介して、ブーツ8を後端に固定した屈曲カバー10bを回動自在に枢着すると共に、左右の旋回カバー10cそれぞれの一端開口部に回転軸カバー10aのフランジを挟み込むようにして、当該左右の旋回カバー10cそれぞれをパッチン爪による嵌合方式によって互いに合致固定させる(図2(b)参照)。
【0049】
このとき、図3に示すように、ブーツ8に予め挿入されている光ケーブルPの切断端部は、旋回カバー10c内の屈曲カバー10b、回転軸カバー10aそれぞれを通って当該回転軸カバー10aの先端から外方へ引き出しておく。
【0050】
そして、光ケーブルPの切断端部からシースP2およびケブラP1を剥き出し状態にしてから、カシメリング6の後側筒部6bに配したアイレット7にシースP2の切断端部を被せておき、該後側筒部6bをかしめることでアイレット7とシースP2を挟み固定する。
【0051】
そして、カシメリング6の前側筒部6aを、シースP2の切断端部から拡げられたケブラP1と共にストップリング5の後部外周に嵌着する。
【0052】
しかる後、前記ブーツ8と共に可動手段10を光ケーブルPの切断端部側に移動させ、ストップリング5の嵌合凹部12に、回転軸カバー10aの嵌合突部13を自らの撓曲によって嵌合させる。そして、ストップリング5外周の嵌合凹部12に、回転軸カバー10aの先端の嵌合突部13を嵌合させると共に、上下一対の係止片14を、ストップリング5外周を覆うプラグフレーム3の上下一対のキー溝15に係止させる(図1、図3および図5参照)。
【0053】
また、光ファイバ芯線aの先端はフェルール2に挿入され、接着剤等で接着されることにより光ファイバ芯線aが固定される。フェルール2はその後端にフランジ21が圧入保持されている。
【0054】
そして、フェルール2のフランジ21後端からスプリング4が挿入され、さらにプラグフレーム3およびストップリング5が所定の位置にそれぞれ挿入配置される。このとき、ストップリング5の上方に設けられた凸部5aがプラグフレーム3に対する挿入用ガイドとなり、一方、ストップリング5の下方に設けられたフック部3aがプラグフレーム3の係止孔3bに係止されることで抜け止めの役割を果たす。
【0055】
このとき、スプリング4は、フェルール2後端のフランジ21およびストップリング5の間に挟まれるように配置され、フェルール2を前方に常時付勢させるように作用する。
【0056】
最後に、ツマミ9がプラグフレーム3およびストップリング5の外側に被せられる。このとき、ツマミ9に形成された上下対称位置のキー孔に対し、プラグフレーム3が1方向で嵌挿される(図4参照)。
【0057】
旋回屈曲式コネクタ1の使用に際しては、図10(a)に示すように、各種光通信機器を接続するために室内の壁面に設置されたアウトレットボックスMに内装された光コンセントアダプタQに当該旋回屈曲式コネクタ1を接続する。
【0058】
例えば、パソコンRからの相手側の光コネクタプラグ1を光コンセントアダプタQの相手側端子に接続させるに際し、図10(b)に示すように、前記パソコンRが光コンセントアダプタQの下方側に配置されている場合には、可動手段10における旋回カバー10cを回転軸カバー10aに対して旋回させ、屈曲カバー10bを旋回カバー10cに対して下側90度まで回転させる。
【0059】
このとき、図5(a)に示すように、ブーツ8が水平位置にある場合は、回転軸カバー10aに対して旋回カバー10cが旋回可能な状態となっている。そして、図5(b)に示すように、屈曲カバー10bを介してブーツ8を下側90度方向に屈曲させると、該屈曲カバー10bによって内部カバー10dが押されて、内部カバー10dは回転軸カバー10aのヒンジ突起部32相互間の凹部31に係止されることから、当該回転軸カバー10aに対する旋回カバー10cの旋回が阻止される。こうして、ブーツ8および光ケーブルPが下向きに延長されるように回転される。
【0060】
一方、前記パソコンRが光コンセントアダプタQの上方側に配置されている場合には、
ブーツ8を水平方向に復帰回転させると、図9(a)乃至(d)に示すように、屈曲カバー10bによって内部カバー10dが逆方向に押し戻され、再び回転軸カバー10aに対して旋回カバー10cが旋回可能な状態となる。
【0061】
そして、図5(c)に示すように、旋回カバー10cを例えば180度旋回させた後に、図5(d)に示すように、屈曲カバー10bを介してブーツ8を上側90度方向に屈曲させる。このとき、屈曲カバー10bによって内部カバー10dが押されて、内部カバー10dは回転軸カバー10aのヒンジ突起部32相互間の凹部31に係止されることから、当該回転軸カバー10aに対する旋回カバー10cの旋回が阻止される。こうして、ブーツ8および光ケーブルPが上向きに延長されるように回転される。
【0062】
このようにしてブーツ8は可動手段10を介して180度旋回後に90度だけ屈曲回転されることから、光コンセントアダプタQが壁面の下側もしくは上側、あるいは天井等の如何なる場所に設置されていても、光コンセントアダプタQに接続された外部の旋回屈曲式コネクタ1自体が周辺機器の障害とはならないのである。しかも、ブーツ8はこの可動手段10を介して90度に屈曲されることから、光ケーブルPの曲げ半径(例えばR15)を十分に採れるものとなって伝送損失の増加を抑制する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明を実施するための最良の形態における旋回屈曲式コネクタの一例を示す側面側から見た断面図である。
【図2】同じく旋回屈曲式コネクタの可動手段の内部構造を示すもので、(a)は分解斜視図、(b)は可動手段の組み付け状態の斜視図である。
【図3】同じくプラグフレーム、ストップリング、カシメリング、可動手段(回転軸カバー、旋回カバー、ブーツと一体の屈曲カバー、内部カバー)を分解した状態の斜視図である。
【図4】同じくプラグフレーム、ストップリング、カシメリング、可動手段(回転軸カバー、旋回カバー、ブーツと一体の屈曲カバー、内部カバー)を組み付け、さらにツマミを取り付ける状態の斜視図である。
【図5】同じく可動手段の動作を説明するもので、(a)はブーツが直線上に延びている状態の断面図、(b)はブーツを可動手段により下方向に90度だけ屈曲した状態の断面図、(c)は可動手段によりブーツを180度旋回させた状態の断面図、(d)は旋回後のブーツを可動手段により上方向に90度だけ屈曲した状態の断面図である。
【図6】同じく可動手段の動作を説明するもので、(a)は旋回カバーの側面図、(b)は内部カバーを有する屈曲カバーの側面図、(c)は旋回カバーに対して屈曲カバーが水平位置にある状態の断面図、(d)は旋回カバーに対して屈曲カバーが45度だけ下側に回転させた状態の断面図、(e)は旋回カバーに対して屈曲カバーが90度だけ下側に回転させた状態の断面図、(f)は(e)の位置から屈曲カバーが45度だけ上側に回転復帰させた状態の断面図である。
【図7】同じく可動手段における回転制御部の構成の一例を示すもので、(a)は回転軸カバーの側面図、(b)は旋回カバーの側面図、(c)は旋回カバーの側面から見た断面図である。
【図8】同じく可動手段における旋回角度固定動作を説明するもので、(a)は回転軸カバーに対して旋回カバーが定位置にある状態の一部切欠側面図、(b)は同じく背面図、(c)は回転軸カバーに対して旋回カバーが定位置から90度旋回した状態の一部切欠側面図、(d)は同じく背面図、(e)は回転軸カバーに対して旋回カバーが定位置から180度旋回した状態の一部切欠側面図、(f)は同じく背面図、(g)は回転軸カバーに対して旋回カバーが定位置から270度旋回した状態の一部切欠側面図、(h)は同じく背面図である。
【図9】同じく可動手段における回転制御部の動作を説明するもので、(a)は屈曲カバーが旋回カバー内で下側に90度屈曲している状態の断面図、(b)は(a)の状態から45度上側に復帰回転した状態の断面図、(c)は屈曲カバーが水平方向に復帰回転した状態の断面図、(d)は屈曲カバーが水平方向に復帰回転した後に旋回カバーを180度旋回した状態の断面図、(e)は(a)の状態における回転制御部の拡大断面図である。
【図10】旋回屈曲式コネクタの使用状態の一例を示すもので、(a)は旋回屈曲式コネクタを壁面に設置されたアウトレットボックス内に設けられた光コンセントアダプタに接続する状態の一部切欠断面図、(b)はパソコンが光コンセントアダプタの下方側に配置されている場合での使用状態を示す一部切欠断面図である。
【符号の説明】
【0064】
P 光ケーブル
P1 ケブラ
P2 シース
Q 光コンセントアダプタ
R パソコン
M アウトレットボックス
B 光分岐ボックス
a 光ファイバ芯線
1 旋回屈曲式コネクタ
2 フェルール
3 プラグフレーム
3a フック部
3b 係止孔
4 スプリング
5 ストップリング
5a 凸部
6 カシメリング
6a 前側筒部
6b 後側筒部
6c 段差部
7 アイレット
8 ブーツ
9 ツマミ
10 可動手段
10a 回転軸カバー
10b 屈曲カバー
10c 旋回カバー
10d 内部カバー
11 軸部
12 嵌合凹部
13 嵌合突部
14 係止片
15 キー溝
16 回転制御部
17 可撓性パイプ
21 フランジ
31 凹部
32 ヒンジ突起部
33 凸部
34 ガイド溝
35 凸部
36 係止凹部
37 凹部
41a、41b アーム部
42 段差部
43 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ケーブルの光ファイバが挿入されて固定されると共に、後端にフランジが圧入保持されるフェルールと、フランジ後端に当接しフェルールを前方に付勢するスプリングの後端を支持するストップリングと、これら各部材を覆うプラグフレームと、光ケーブルのケブラを前記ストップリングに固定するカシメリングと、前記ストップリングに可動手段を介してブーツを装着した旋回屈曲式コネクタであって、前記可動手段は、ブーツを水平軸の廻りに正逆回転方向に旋回可能にすると共に、旋回後のブーツの曲げ方向を水平軸に対し一方向へ屈曲可能に形成されていることを特徴とする旋回屈曲式コネクタ。
【請求項2】
可動手段は、ストップリングに嵌合固定された回転軸カバーと、該回転軸カバーに対し水平軸の廻りに正逆回転方向に旋回自在に連繋された旋回カバーと、該旋回カバー内で水平軸に対し一方向に90度まで屈曲自在に連繋され且つブーツを後端に固定してなる屈曲カバーとを備えてなる請求項1記載の旋回屈曲式コネクタ。
【請求項3】
可動手段は、回転軸カバーが嵌合する旋回カバーの内周に沿って複数の凹部を有し、これら各凹部に、回転軸カバーの開口端前方に向けて突設された複数の凸部がそれぞれ係合して当該旋回カバーを任意の旋回角度位置で固定可能とするよう形成されている請求項1または2記載の旋回屈曲式コネクタ。
【請求項4】
可動手段は、旋回カバー内面に形成された円弧状のガイド溝と、該ガイド溝に係合するよう屈曲カバーに突設した凸部とを備え、屈曲カバーを水平位置および90度の角度位置で固定可能となるよう前記ガイド溝の両端に、屈曲カバーの前記凸部を嵌合可能とした凹部を備えてなる請求項1乃至3のいずれかに記載の旋回屈曲式コネクタ。
【請求項5】
可動手段は、回転軸カバーおよび屈曲カバーとの間に内部カバーを介装し、該内部カバーは屈曲カバーに押されて90度屈曲位置で回転軸カバーに係止されて当該回転軸カバーに対する旋回カバーの回転を阻止させるよう回転軸カバーに凹凸状の回転制御部を備えてなる請求項1乃至4のいずれかに記載の旋回屈曲式コネクタ。
【請求項6】
前記回転制御部は、屈曲カバーの90度屈曲位置から水平位置までの復帰移動によって当該屈曲カバーにより内部カバーが押されて回転軸カバーとの係止を解除させることで回転軸カバーに対する旋回カバーの回転を許容させるよう形成されている請求項5に記載の旋回屈曲式コネクタ。
【請求項7】
ストップリングと回転軸カバーとは、ストップリング外周の円周に沿って凹設された嵌合凹部に、回転軸カバーの開口端における内周に沿って突設された左右一対の嵌合突部を嵌合させると共に、回転軸カバーの開口端に突設した上下一対の係止片を、ストップリング外周を覆うプラグフレームの上下一対のキー溝に係止させることで固定される請求項1乃至6のいずれかに記載の旋回屈曲式コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−210894(P2009−210894A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−54941(P2008−54941)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(391005581)三和電気工業株式会社 (66)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(000102739)エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ株式会社 (265)
【Fターム(参考)】