説明

既設のコンクリート構造物の補修工法

【課題】既設のコンクリート構造物の補修・補強を、美観を損なうことなく、短時間に、簡単な構成で且つ確実に施工することが可能である。
【解決手段】既設のコンクリート構造物の補修工法は、補修しようとする既設のコンクリート構造物20に、レベル調整機構31を有する後施工アンカーボルト30を打設し、複数のコンクリート板1の端部を凹凸係合し、コンクリート構造物20の表面に対して配置し、レベル調整機構31により、複数のコンクリート板1とコンクリート構造物20の表面との間隔を調整して複数のコンクリート板1を固定し、複数のコンクリート板1とコンクリート構造物20の表面との間隔に、グラウト材Gを注入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スラブ、壁などの既設のコンクリート構造物の補修工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、既設のコンクリート構造物として、例えばスラブが劣化すると、劣化した脆弱部を除去してコンクリートやモルタルを吹き付けて補修する工法が行なわれ、吹き付け後に表面の仕上げが必要な場合には、左官工がこて等で仕上げを行なう。また、コンクリートやモルタルの吹き付け部分の剥落を防止するには、吹き付け面に予め配筋する場合、あるいは吹き付け後に炭素繊維などでさらに被覆する場合等がある。
【0003】
さらに、既設のコンクリート構造物の下面と、その下方に設置した枠との間に平板によって空間を設け、この空間に流動コンクリートを流し込み充填し、この流動コンクリートを硬化させることで補修するものがある(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−294211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなコンクリートやモルタルを吹き付けて補修する工法では、後に表面を仕上げることが必要な場合には、左官工がこて等で下塗りとして全体を不陸調整した上に、さらに左官工により仕上用下地としての精度の高い表面補修が必要となる。また、吹き付けたコンクリートやモルタルが硬化するまで補修効果が得られないし、剥落を防止するために内部に補強のための鉄筋を配したり、表面に炭素繊維などで被覆する部材が必要で、施工作業に手数を要するし、美観を損なうことがある。
【0006】
また、既設のコンクリート構造物の下面に平板によって設けた空間に、流動コンクリートを流し込み硬化させて補修する工法では、平板を支持する枠が必要であり、枠が美観を損なうことがあるために施工場所に制限があり、また広い面積の補修には枠で平板を支持することができない等の問題がある。
【0007】
この発明は、このような実情に鑑みてなされたもので、既設のコンクリート構造物の補修・補強を、美観を損なうことなく、短時間に、簡単な構成で且つ容易に施工することが可能な既設のコンクリート構造物の補修工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決し、かつ目的を達成するために、この発明は、以下のように構成した。請求項1に記載の発明は、補修しようとする既設のコンクリート構造物に、レベル調整機構を有する後施工アンカーボルトを打設し、
複数のコンクリート板の端部を凹凸係合し、前記コンクリート構造物の表面に対して配置し、
前記レベル調整機構により、前記複数のコンクリート板と前記コンクリート構造物の表面との間隔を調整して前記複数のコンクリート板を固定し、
前記複数のコンクリート板と前記コンクリート構造物の表面との間隔に、グラウト材を注入することを特徴とする既設のコンクリート構造物の補修工法である。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記コンクリート構造物に、仮設アンカーボルトを打設し、
前記仮設アンカーボルトにより前記レベル調整された前記複数のコンクリート板を補強し、
前記仮設アンカーボルトを、前記グラウト材を注入した後に除去することを特徴とする請求項1に記載の既設のコンクリート構造物の補修工法である。
【0010】
請求項3に記載の発明は、前記コンクリート板は、幅方向の多数の孔部と、表面から前記孔部に連通する連通開口部を有し、
前記連通開口部を有する表面を、前記コンクリート構造物の表面に対して配置し、
前記連通開口部を有する表面と前記コンクリート構造物の表面との間隔に、前記グラウト材を注入し、
前記間隔から前記連通開口部を介して前記多数の孔部にまで前記グラウト材を充填することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の既設のコンクリート構造物の補修工法である。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記コンクリート板は、表面に多数の溝部を有し、
前記多数の溝部を有する表面を、前記コンクリート構造物の表面に対して配置し、
前記多数の溝部を有する表面と前記コンクリート構造物の表面との間隔に、前記グラウト材を注入し、
前記間隔から前記多数の溝部にまで前記グラウト材を充填することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の既設のコンクリート構造物の補修工法である。
【発明の効果】
【0012】
前記構成により、この発明は、以下のような効果を有する。
【0013】
請求項1に記載の発明では、複数のコンクリート板とコンクリート構造物の表面との間隔に、グラウト材を注入することで、コンクリートの養生や成形などがなくなり、手間や施工期間を短縮できる。また、複数のコンクリート板の端部を凹凸係合し、複数のコンクリート板の連結が簡単な構造であり、広い面積の補修を、美観を損なうことなく、容易に施工することができる。また、施工された複数のコンクリート板によってコンクリート構造物を補強することもできる。
【0014】
請求項2に記載の発明では、コンクリート構造物に、仮設アンカーボルトによりレベル調整された複数のコンクリート板を補強することで、広い面積の補修を強固に行なうことができる。
【0015】
請求項3に記載の発明では、コンクリート板の連通開口部を有する表面とコンクリート構造物の表面との間隔に、グラウト材を注入し、間隔から連通開口部を介して多数の孔部にまでグラウト材を充填することで、連通開口部内に広がったグラウト材がコッター形状となり、投錨効果によって物理的に固定され一体化されることによりコンクリート板の脱落防止と共に剛性を増し断面性能を向上させることとなり、施工された複数の複数のコンクリート板によってコンクリート構造物を補強することができる。
【0016】
請求項4に記載の発明では、コンクリート板の多数の溝部を有する表面とコンクリート構造物の表面との間隔に、グラウト材を注入し、間隔から多数の溝部にまでグラウト材を充填することで梁状になり、施工された複数のコンクリート板によってコンクリート構造物を補強することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1の実施の形態のコンクリート板の正面図である。
【図2】第1の実施の形態のコンクリート板の斜視図である。
【図3】第2の実施の形態のコンクリート板の斜視図である。
【図4】第3の実施の形態のコンクリート板の正面図である。
【図5】第3の実施の形態のコンクリート板の斜視図である。
【図6】補修する領域を示す正面図である。
【図7】補修状態を第1の実施の形態のコンクリート板の長方向から示す断面図である。
【図8】補修状態を第1の実施の形態のコンクリート板の幅方向から示す断面図である。
【図9】第1の実施の形態のコンクリート板を用い後施工アンカーボルトを打設した状態を示す断面図である。
【図10】第1の実施の形態のコンクリート板を用い施工完了状態を示す一部の断面図である。
【図11】第2の実施の形態のコンクリート板を用い後施工アンカーボルトを打設した状態を示す断面図である。
【図12】第2の実施の形態のコンクリート板を用い施工完了状態を示す一部の断面図である。
【図13】第3の実施の形態のコンクリート板を用い後施工アンカーボルトを打設した状態を示す断面図である。
【図14】第3の実施の形態のコンクリート板を用い施工完了状態を示す一部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の既設のコンクリート構造物の補修工法の実施の形態について説明する。この発明の実施の形態は、発明の最も好ましい形態を示すものであり、この発明はこれに限定されない。この実施の形態では、既設のコンクリート構造物としてスラブについて説明するが、壁などの既設のコンクリート構造物にも同様に適用できる。
【0019】
まず、この実施の形態の既設のコンクリート構造物の補修工法に用いるコンクリート板について説明する。図1及び図2に示す第1の実施の形態のコンクリート板について説明すると、図1は第1の実施の形態のコンクリート板の正面図、図2は第1の実施の形態のコンクリート板の斜視図である。
【0020】
この第1の実施の形態のコンクリート板1の成形は、従来の一般的な成形セメント板と同様に、セメントと適宜の繊維とに水を加えた材料を図示しないセメント押し出し機に入れ、その口金から高圧で押し出して、幅方向に矩形状に多数の孔部2を一定間隔で形成し、一端に凸部3を突出すると共に、他端に凹部4を形成し、さらに圧さT1を約50mm程度に形成している。このコンクリート板1の幅W1は、約490mm程度であり、長さL1は例えば梁と梁との間の長さとする。このコンクリート板1の一端に形成した凸部3と、他端に形成した凹部4とは、複数のコンクリート板1の端部を凹凸係合できる形状に形成されている。
【0021】
次に、図3に示す第2の実施の形態のコンクリート板について説明すると、図3は第2の実施の形態のコンクリート板の斜視図である。この第2の実施の形態のコンクリート板1は、図1及び図2に示す第1の実施の形態のコンクリート板と同様に構成されるから同じ符号を付して説明を省略するが、この第2の実施の形態のコンクリート板1は、表面から孔部2に連通する連通開口部5を有する。この連通開口部5は、全ての孔部2に形成しても良いし、所定間隔の孔部2に形成しても良い。また、1つの孔部2に1個形成しても良く、複数個形成しても良い。
【0022】
次に、図4及び図5に示す第3の実施の形態のコンクリート板について説明すると、図3は第3の実施の形態のコンクリート板の正面図、図4は第3の実施の形態のコンクリート板の斜視図である。
【0023】
この第3の実施の形態のコンクリート板10の成形は、図1及び図2に示すコンクリート板1のように、従来の一般的な成形セメント板と同様に高圧で押し出して、幅方向に多数の溝部12を形成し、この多数の溝部12は長さ方向に延びている。
【0024】
この第3の実施の形態のコンクリート板10は、一端に凸部13を突出すると共に、他端に凹部14を形成し、圧さT2を約25mm程度に形成している。このコンクリート板1の幅W2は、約490mm程度であり、長さL2は例えば梁と梁との間の長さとする。このコンクリート板10の一端に形成した凸部13と、他のコンクリート板10の他端に形成した凹部14とは、凹凸係合できる形状に形成されている。
【0025】
この実施の形態の既設のコンクリート構造物の補修工法に用いるコンクリート板は、このコンクリート板1,10に限定されることなく、内部に鋼線を有するコンクリート板などを用いることができる。
【0026】
次に、この実施の形態の既設のコンクリート構造物の補修工法の手順を、図5乃至図10に基づいて説明する。図6は補修する領域を示す正面図、図7は補修状態を第1の実施の形態のコンクリート板の長方向から示す断面図、図8は補修状態を第1の実施の形態のコンクリート板の幅方向から示す断面図、図9は第1の実施の形態のコンクリート板を用い後施工アンカーボルトを打設した状態を示す断面図、図10は第1の実施の形態のコンクリート板を用い施工完了状態を示す一部の断面図である。
【0027】
補修しようとする既設のコンクリート構造物20は、図6に示すように、コンクリートの梁21で格子状に囲まれた部分のスラブ22であり、このスラブ22がコンクリートであり、劣化しているために複数枚のコンクリート板1によって補修する。
【0028】
補修工法の手順は、例えばスラブ22の下面の脆弱した部分のコンクリートを除去し、発錆している場合には鉄筋のさび止めの処理を行なう。そして、スラブ22の下面に、コンクリート板1を取り付ける位置の墨出しを行ない、その後に、例えばスラブ22の下面に、吸水調整剤を塗布する。
【0029】
次に、コンクリート板1を取り付ける位置の墨出しにしたがって、図6及び図7(a)に示すように、スラブ22の下面に、レベル調整機構31を有する後施工アンカーボルト30を所定箇所に打設する。この実施の形態では、スラブ22の所定位置に、後施工アンカーボルト30をそれぞれ打設する。そして、1枚目のコンクリート板1を、図7(b)及び図8(a)に示すように、一方側の梁21の側部側に配置し、この1枚目のコンクリート板1を後施工アンカーボルト30によってスラブ22に固定する。
【0030】
後施工アンカーボルト30は、図9に示すように、ボルト部30aがスラブ22に打設され、頭部のねじ30bにレベル調整ナット31aを螺着し、コンクリート板1とスラブ22の下面との間隔Kの調整を行い、その後、コンクリート板1の取付孔1aに頭部のねじ30bを挿入し、頭部のねじ30bにコンクリート板1の開口孔1bからナット31bを螺着して、コンクリート板1をスラブ22に所定の間隔を保って固定する。この頭部のねじ30b、レベル調整ナット31a、ナット31bなどがレベル調整機構31を構成している。
【0031】
次に、2枚目のコンクリート板1の凸部3を、図8(b)に示すように、1枚目のコンクリート板1の凹部4に嵌め込み、この2枚目のコンクリート板1を後施工アンカーボルト30によってスラブ22に固定する。この2枚目のコンクリート板1と、スラブ22の下面との間隔Kの調整は、1枚目のコンクリート板1と同様に行なう。
【0032】
そして、3枚目のコンクリート板1の凸部3を、図8(c)に示すように、2枚目のコンクリート板1の凹部4に嵌め込むが、この3枚目のコンクリート板1の取付は、梁21との間に隙間が少ないが、2枚目のコンクリート板1の凹部4に3枚目のコンクリート板1の凸部3を嵌め込み、この嵌め込み部分を支点に回転するようにして3枚目のコンクリート板1を取り付け、後施工アンカーボルト30によってスラブ22に固定する。この3枚目のコンクリート板1と、スラブ22の下面との間隔Kの調整は、1枚目のコンクリート板1と同様に行なう。
【0033】
このようにして、図7(b)及び図8(d)に示すように、補修しようとする既設のコンクリート構造物であるスラブ22に、レベル調整機構31を有する後施工アンカーボルト30を打設し、複数のコンクリート板1の端部を順次凹凸係合し、スラブ22の下面である表面に対して配置する。このとき、後施工アンカーボルト30に設けたレベル調整機構31により、複数のコンクリート板1とスラブ22の下面である表面にとの間隔Kを調整する。
【0034】
また、コンクリート板1は長いために、図7(c)に示すように、仮設アンカーボルト50をスラブ22に打設し、この仮設アンカーボルト50によりレベル調整された複数のコンクリート板1を補強する。そして、図7(c)及び図8(d)に示すように、それぞれの梁21とスラブ22の角部にシール材40を取り付け、このシール材40によって梁21とコンクリート板1との間の隙間を塞ぐ。
【0035】
その後に、複数のコンクリート板1とスラブ22の下面との間隔Kに、注入パイプ60からグラウト材Gを注入し、図7(e)に示すように、仮設アンカーボルト50を、グラウト材Gを注入した後に除去して施工を完了する。
【0036】
このように、複数のコンクリート板1とスラブ22の下面との間隔Kに、グラウト材Gを注入することで、図10に示すように、複数のコンクリート板1とスラブ22の下面とをグラウト材Gによって一体化し、スラブ22が劣化している部分の補修ができ、従来の工法のようなコンクリートの養生や成形などによる手間を省き、施工期間を短縮できる。また、複数のコンクリート板1は、端部を凹凸係合する簡単且つ確実な連結であり、しかもコンクリート構造物20の表面に対して配置することによって、広い面積の補修を、美観を損なうことなく、簡単な構成で且つ確実に施工することができる。また、施工された複数のコンクリート板1によってコンクリート構造物20を補強することもできる。
【0037】
また、コンクリート構造物20に、注入するときのグラウト材Gによって生じる高圧力に対しては、レベル調整された複数のコンクリート板1を仮設アンカーボルト50により補強することで、注入圧によるコンクリート板1の膨らみなどの変形や割れなどの破損を防ぎ、コンクリート板1の表面に不陸の少ない補修を行うことができ、広い面積の補修を平坦かつ強固に行うことができる。
【0038】
また、複数のコンクリート板1とスラブ22の下面との間隔Kに、鉄筋を配したり、コンクリート板1にPC鋼線を有するものを用いることで、容易にスラブ22を補強することができる。
【0039】
図11は第2の実施の形態のコンクリート板を用い後施工アンカーボルトを打設した状態を示す断面図、図12は第2の実施の形態のコンクリート板を用い施工完了状態を示す一部の断面図である。この実施の形態では、図9及び図10に示す実施の形態と同様に構成されるが、この実施の形態では、図3に示す複数の第2の実施の形態のコンクリート板1を用いている。この第2の実施の形態のコンクリート板1は、幅方向の多数の孔部2と、表面から孔部2に連通する連通開口部5を有しており、図11に示すように、連通開口部5を有する表面を、コンクリート構造物20の表面に対して配置する。そして、図12に示すように、第2の実施の形態のコンクリート板1の連通開口部5を有する表面とコンクリート構造物20の表面との間隔Kに、グラウト材Gを注入する。このグラウト材Gは、間隔Kから連通開口部5を介して多数の孔部2にまで充填される。この孔部2は幅方向に伸びており、グラウト材Gは幅方向の孔部2内に沿って充填されることで、連通開口部内に広がったグラウト材がコッター形状となり、投錨効果によって物理的に固定され一体化されることによりコンクリート板の脱落防止と共に剛性を増し断面性能を向上させることとなり、施工された複数のコンクリート板1によってコンクリート構造物20を補強することができる。
【0040】
図13は第3の実施の形態のコンクリート板を用い後施工アンカーボルトを打設した状態を示す断面図、図14は第3の実施の形態のコンクリート板を用い施工完了状態を示す一部の断面図である。この実施の形態では、図13及び図14に示す第3の実施の形態のコンクリート板10を固定する後施工アンカーボルト70を打設した状態を示している。この後施工アンカーボルト70は、頭部にねじ70aが形成され、この頭部のねじ70aにレベル調整ナット71aを螺着し、コンクリート板10の取付孔10aに頭部のねじ70aを挿入し、ワッシャー71bを介してナット71cを螺着し、コンクリート板10と、スラブ22の下面との間隔Kの調整を行なう。この頭部のねじ70a、レベル調整ナット71a、ワッシャー71b、ナット71cなどがレベル調整機構71を構成している。
【0041】
この第3の実施の形態のコンクリート板10は、表面に多数の溝部12を有し、図13に示すように、多数の溝部12を有する表面を、コンクリート構造物20の表面に対して配置する。そして、図14に示すように、第3の実施の形態のコンクリート板10の多数の溝部12を有する表面とコンクリート構造物20の表面との間隔Kに、グラウト材Gを注入する。このグラウト材Gは、間隔Kから多数の溝部12にまで充填される。この溝部12は幅方向に伸びており、グラウト材Gは幅方向の溝部12内に沿って充填されることで梁状になり、施工された複数のコンクリート板10によってコンクリート構造物20を補強することができる。
【0042】
なお、この実施の形態では、コンクリート板10の下面からねじ70aの頭部、ワッシャー71b、ナット71cが出っ張っているが、コンクリート板10の取り付け部分に凹み部を形成し、この凹み部にねじ70aの頭部、ワッシャー71b、ナット71cが納まるようにしてコンクリート板1の下面から出っ張らない納まりにすることが外観上好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
この発明は、スラブ、壁などの既設のコンクリート構造物の補修工法に適用可能であり、既設のコンクリート構造物の補修・補強を、美観を損なうことなく、短時間に、簡単な構成で且つ確実に施工することが可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 コンクリート板
2 孔部
3 凸部
4 凹部
10 コンクリート板
12 溝部
13 凸部
14 凹部
21 梁
22 スラブ
30 後施工アンカーボルト
31,71 レベル調整機構
50 仮設アンカーボルト
70 後施工アンカーボルト
K コンクリート板1とスラブ22の下面との間隔
G グラウト材



【特許請求の範囲】
【請求項1】
補修しようとする既設のコンクリート構造物に、レベル調整機構を有する後施工アンカーボルトを打設し、
複数のコンクリート板の端部を凹凸係合し、前記コンクリート構造物の表面に対して配置し、
前記レベル調整機構により、前記複数のコンクリート板と前記コンクリート構造物の表面との間隔を調整して前記複数のコンクリート板を固定し、
前記複数のコンクリート板と前記コンクリート構造物の表面との間隔に、グラウト材を注入することを特徴とする既設のコンクリート構造物の補修工法。
【請求項2】
前記コンクリート構造物に、仮設アンカーボルトを打設し、
前記仮設アンカーボルトにより前記レベル調整された前記複数のコンクリート板を補強し、
前記仮設アンカーボルトを、前記グラウト材を注入した後に除去することを特徴とする請求項1に記載の既設のコンクリート構造物の補修工法。
【請求項3】
前記コンクリート板は、幅方向の多数の孔部と、表面から前記孔部に連通する連通開口部を有し、
前記連通開口部を有する表面を、前記コンクリート構造物の表面に対して配置し、
前記連通開口部を有する表面と前記コンクリート構造物の表面との間隔に、前記グラウト材を注入し、
前記間隔から前記連通開口部を介して前記多数の孔部にまで前記グラウト材を充填することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の既設のコンクリート構造物の補修工法。
【請求項4】
前記コンクリート板は、表面に多数の溝部を有し、
前記多数の溝部を有する表面を、前記コンクリート構造物の表面に対して配置し、
前記多数の溝部を有する表面と前記コンクリート構造物の表面との間隔に、前記グラウト材を注入し、
前記間隔から前記多数の溝部にまで前記グラウト材を充填することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の既設のコンクリート構造物の補修工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−99216(P2011−99216A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253014(P2009−253014)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(303056368)東急建設株式会社 (225)
【Fターム(参考)】