説明

既設垂直循環式駐車装置の改造方法

【課題】ケージを大型化する上で制約となる回転駆動系統の機器とパレットとの干渉をなくして、該ケージを最大限大型化することができ、現在主流となっているさまざまな車種の入庫を可能として顧客の満足度を高め得る既設垂直循環式駐車装置の改造方法を提供する。
【解決手段】上スプロケット2に接続される回転駆動系統6のうち、ケージ5の循環時にそのパレット5c部分が通過する位置の近傍に配置される機器としてのブレーキ7を小型のものに交換すると共に、前記ケージ5を高さの高いものに交換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設垂直循環式駐車装置の改造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、駐車施設の一形態としていわゆるタワーパーキングと呼ばれる垂直循環式駐車装置が知られている。
【0003】
前記垂直循環式駐車装置は、図2に示される如く、建屋(図示せず)の上部に設置された上フレーム1に一対の上スプロケット2をその回転軸方向へ所要間隔をあけて回転自在に配設すると共に、前記建屋の下部に設置された下フレーム1´に一対の下スプロケット3をその回転軸方向へ所要間隔をあけて回転自在に配設し、前記上スプロケット2と下スプロケット3間に主務チェーン4を無端状に掛け回し、該二条の主務チェーン4によって多数のケージ5を支持してなる構成を有している。
【0004】
前記上スプロケット2には、回転駆動系統6としてブレーキ7を備えたモータ8が減速機9を介して接続されており、該モータ8による上スプロケット2の回転駆動によって主務チェーン4を周回させ、前記ケージ5を循環させるようになっている。尚、図2には上下端に位置する二基のケージ5のみ示してあり、他のケージ5は省略してある。
【0005】
前記ケージ5は、水平方向へ延びるケージ吊軸5aの両端部に、リング状のハンガー5bを吊り下げるように設け、該ハンガー5bの下辺間に車載用のパレット5cを掛け渡すように取り付けてなる構成を有し、前記ケージ吊軸5aの両端部を、主務チェーン4に取り付けられたアタッチメント10間に掛け渡すように連結してある。
【0006】
ところで、近年、車高の高いミニバンの販売台数が大幅に増えており、これに対応すべく前記ケージ5自体の収納容積(内寸法)を増大させることへの要望が強くなっている。
【0007】
このため、従来においては、前記ケージ5間の取り付け間隔を広げ、ケージ5自体を大型化して対応することが提案されているが、例えば、特許文献1には既設の垂直循環式駐車装置に対して大型のケージを取り付ける改造方法が開示されており、これは、4リンク間隔で普通車用のケージを取り付けていた主務チェーンを、少なくとも一部において5リンク間隔でハイルーフ車用のケージを取り付けた主務チェーンに交換するようにしたものである。
【特許文献1】特開2001−193301号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述の如く、ミニバン等の入庫要求に対応するために、ケージ5間の取り付け間隔を広げ、ケージ5自体を大型化しようとした場合、実際問題として、図3に示されるように、回転駆動系統6を構成する機器のうち、特に前記ケージ5の循環時にそのパレット5c部分が通過する位置の近傍に配置されるブレーキ7とパレット5cとが干渉することを避ける必要があり、こうした点が前記ケージ5を大型化する上での制約となっており、改善する余地が残されていた。
【0009】
因みに、従来において既設垂直循環式駐車装置を改造した場合、入庫可能な車高は、顧客が充分に満足する高さには至っていないのが現状であった。
【0010】
本発明は、斯かる実情に鑑み、ケージを大型化する上で制約となる回転駆動系統の機器とパレットとの干渉をなくして、該ケージを最大限大型化することができ、現在主流となっているさまざまな車種の入庫を可能として顧客の満足度を高め得る既設垂直循環式駐車装置の改造方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上スプロケットと下スプロケット間に主務チェーンを無端状に掛け回し、該主務チェーンに車載用のパレットが設けられたケージを吊り下げ、前記上スプロケットに回転駆動系統を接続してなる既設垂直循環式駐車装置の改造方法において、
前記上スプロケットに接続される回転駆動系統のうち、前記ケージの循環時にそのパレット部分が通過する位置の近傍に配置される機器を小型のものに交換すると共に、前記ケージを高さの高いものに交換することを特徴とする既設垂直循環式駐車装置の改造方法にかかるものである。
【0012】
上記手段によれば、以下のような作用が得られる。
【0013】
前述の如く、上スプロケットに接続される回転駆動系統のうち、前記ケージの循環時にそのパレット部分が通過する位置の近傍に配置される機器を小型のものに交換すると共に、前記ケージを高さの高いものに交換すると、回転駆動系統の機器にパレットが干渉することを避けてケージを最大限高さの高いものに交換することが可能となり、現在主流となっている車高の高いミニバン等も入庫を行えるようになる。
【0014】
又、本発明は、上スプロケットと下スプロケット間に主務チェーンを無端状に掛け回し、該主務チェーンに車載用のパレットが設けられたケージを吊り下げ、前記上スプロケットに回転駆動系統を接続してなる既設垂直循環式駐車装置の改造方法において、
前記上スプロケットに接続される回転駆動系統のうち、前記ケージの循環時にそのパレット部分が通過する位置の近傍に配置される機器を小型のものに交換すると共に、前記ケージのパレットを幅の広いものに交換することを特徴とする既設垂直循環式駐車装置の改造方法にかかるものである。
【0015】
前述の如く、上スプロケットに接続される回転駆動系統のうち、前記ケージの循環時にそのパレット部分が通過する位置の近傍に配置される機器を小型のものに交換すると共に、前記ケージのパレットを幅の広いものに交換すると、回転駆動系統の機器にパレットが干渉することを避けてケージのパレットを最大限幅の広いものに交換することが可能となり、入庫を行える車種を増やす上で有効となる。
【0016】
前記既設垂直循環式駐車装置の改造方法においては、前記機器がブレーキであって、該ブレーキを小型のものに交換することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の既設垂直循環式駐車装置の改造方法によれば、ケージを大型化する上で制約となる回転駆動系統の機器とパレットとの干渉をなくして、該ケージを最大限大型化することができ、現在主流となっているさまざまな車種の入庫を可能として顧客の満足度を高め得るという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0019】
図1は本発明を実施する形態の一例であって、図中、図2及び図3と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、基本的な構成は図2及び図3に示す従来のものと同様であるが、本図示例の特徴とするところは、図1に示す如く、上スプロケット2に接続される回転駆動系統6のうち、ケージ5の循環時にそのパレット5c部分が通過する位置の近傍に配置される機器としてのブレーキ7を小型のものに交換すると共に、前記ケージ5を高さの高いものに交換するようにした点にある。
【0020】
本図示例の場合、前記ブレーキ7は、従来、図2に示されるようにモータ8の前側にのみ一基配置されていたものを、該モータ8の後側にももう一基配置して、合計二基設けるようにすることにより、それぞれを小型化する方式を採用することができるが、小型で且つ一基のみで充分な制動能力が得られるものであれば、必ずしも二基或いは複数基設ける必要がないことは言うまでもない。
【0021】
尚、前記ケージ5を高さの高いものに交換するには、特許文献1に開示されている既設の垂直循環式駐車装置の改造方法と同様、4リンク間隔で普通車用のケージ5を取り付けていた主務チェーン4を、少なくとも一部において5リンク間隔でミニバン用のケージ5を取り付けた主務チェーン4に交換すれば良い。
【0022】
次に、上記図示例の作用を説明する。
【0023】
前述の如く、上スプロケット2に接続される回転駆動系統6のうち、ケージ5の循環時にそのパレット5c部分が通過する位置の近傍に配置される機器としてのブレーキ7を小型のものに交換すると共に、前記ケージ5を高さの高いものに交換すると、回転駆動系統6のブレーキ7にパレット5cが干渉することを避けてケージ5を最大限高さの高いものに交換することが可能となり、現在主流となっている車高の高いミニバン等も入庫を行えるようになる。
【0024】
因みに、本図示例の方法によって既設垂直循環式駐車装置を改造した場合、入庫可能な車高は、顧客が充分に満足する高さとなる。
【0025】
こうして、ケージ5を大型化する上で制約となる回転駆動系統6の機器としてのブレーキ7とパレット5cとの干渉をなくして、該ケージ5を最大限大型化することができ、現在主流となっているさまざまな車種の入庫を可能として顧客の満足度を高め得る。
【0026】
一方、最近の車では、シャーシの共通化や高速走行安定性向上を図る目的で、左右のタイヤ間の幅が広くなる傾向があり、ケージ5のパレット5cの幅に関しても、ケージ5の高さと同様、既設垂直循環式駐車装置を改造する上で重要な要件となっている。
【0027】
このため、図1に示す例の場合と同様、上スプロケット2に接続される回転駆動系統6のうち、ケージ5の循環時にそのパレット5c部分が通過する位置の近傍に配置される機器としてのブレーキ7を小型のものに交換すると共に、前記ケージ5を高さの高いものに交換する代わりに、前記ケージ5のパレット5cを幅の広いものに交換することもできる。
【0028】
前述の如く、上スプロケット2に接続される回転駆動系統6のうち、ケージ5の循環時にそのパレット5c部分が通過する位置の近傍に配置される機器としてのブレーキ7を小型のものに交換すると共に、前記ケージ5のパレット5cを幅の広いものに交換すると、回転駆動系統6のブレーキ7にパレット5cが干渉することを避けてケージ5のパレット5cを最大限幅の広いものに交換することが可能となり、入庫を行える車種を増やす上で有効となる。
【0029】
尚、本発明の既設垂直循環式駐車装置の改造方法は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明を実施する形態の一例におけるケージの移動軌跡と回転駆動系統との位置関係を示す正面図である。
【図2】従来における既設垂直循環式駐車装置の一例を示す全体概要斜視図である。
【図3】従来例におけるケージの移動軌跡と回転駆動系統との位置関係を示す正面図である。
【符号の説明】
【0031】
2 上スプロケット
3 下スプロケット
4 主務チェーン
5 ケージ
5a ケージ吊軸
5b ハンガー
5c パレット
6 回転駆動系統
7 ブレーキ(機器)
8 モータ
9 減速機
10 アタッチメント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上スプロケットと下スプロケット間に主務チェーンを無端状に掛け回し、該主務チェーンに車載用のパレットが設けられたケージを吊り下げ、前記上スプロケットに回転駆動系統を接続してなる既設垂直循環式駐車装置の改造方法において、
前記上スプロケットに接続される回転駆動系統のうち、前記ケージの循環時にそのパレット部分が通過する位置の近傍に配置される機器を小型のものに交換すると共に、前記ケージを高さの高いものに交換することを特徴とする既設垂直循環式駐車装置の改造方法。
【請求項2】
上スプロケットと下スプロケット間に主務チェーンを無端状に掛け回し、該主務チェーンに車載用のパレットが設けられたケージを吊り下げ、前記上スプロケットに回転駆動系統を接続してなる既設垂直循環式駐車装置の改造方法において、
前記上スプロケットに接続される回転駆動系統のうち、前記ケージの循環時にそのパレット部分が通過する位置の近傍に配置される機器を小型のものに交換すると共に、前記ケージのパレットを幅の広いものに交換することを特徴とする既設垂直循環式駐車装置の改造方法。
【請求項3】
前記機器がブレーキである請求項1又は2記載の既設垂直循環式駐車装置の改造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−321406(P2007−321406A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−151670(P2006−151670)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(000198363)石川島運搬機械株式会社 (292)