説明

既設杭撤去方法及びその装置

【課題】地中に埋設された長さ・重量が大きい既設杭を容易に撤去することが可能な既設杭撤去方法を提供する。
【解決手段】地中G1 に埋設された既設杭30の周囲を掘るための掘削刃1を有するケーシング2を、ケーシング回転昇降装置6にて、回転させつつ下降させて、所定の深度まで掘削し、ケーシング2の下端部2aに設けられた既設杭切断刃3を、下端部2aの内面から突出させて既設杭30を切断し、既設杭切断刃3によって切断された既設杭30のうち切断部より上方の部分を、既設杭切断刃3の受面3aにて掛止してケーシング2と共に地中G1 から引抜く第1工程を繰り返し、その後、杭下端部の周面を、既設杭切断刃3より上方位置の掴持爪7にて掴んで、ケーシング2と共に地中G1 から引抜く第2工程を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設杭撤去方法及びその装置に係り、特に、地中に埋設された不要の杭を撤去するための既設杭撤去方法及びその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建築構造物の立て替え等を行う場合、古い建築構造物を解体撤去するだけでなく、地中に埋設されている不要となった既設杭の撤去を行う必要がある。地中に打ち込まれた既設杭は、長年の間に地盤に固着安定され、その引抜きには巨大な引抜力が必要となる。従来では、このような既設杭を引抜き撤去する場合、杭引抜機のリーダに沿って昇降するオーガマシンにより回転駆動されるケーシングによって、既設杭の周囲をその先端近くまで掘削した後、その既設杭の上端部にワイヤーを縛り付けて、クレーンにより引抜くようにしていた。
【0003】
しかしながら、上記方法では、既設杭の長さ・重量が大きなものになると、クレーンが既設杭の重量に耐えられなくなるという問題点があった。また、杭引抜機及び杭引抜機に取付けるケーシングをより大きなものにする必要があり、既設杭の引抜き撤去作業に必要なコストが増大するという問題点があった。
そこで、従来、このような長さ・重量が大きい既設杭の引抜き撤去を可能とするため、種々の既設杭撤去装置及びその方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1では、ケーシングにより既設杭の周囲を掘削した後、既設杭とケーシングとの間に形成された空間にワイヤーソー装置を挿入し、そのワイヤーソー装置で既設杭を上部より所定の長さに分割して引抜き撤去する既設杭撤去方法及びその装置が開示されている。
【特許文献1】特開2001−262570号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された既設杭撤去方法及びその装置では、ワイヤーソー装置が既設杭を所定の長さに分割する機能を有するのみであるという不都合があった。これにより、分割された既設杭を地中から引抜き撤去するには、従来と同様、既設杭の上端部にワイヤーを縛り付けて、クレーンにより引抜く必要があるという問題点があった。その結果、既設杭を分割せずそのまま地中から引抜く場合と比較して作業工数が大幅に増大するという問題点があった。また、ワイヤーソー装置を既設杭とケーシングとの間に形成された空間に挿入する作業も、既設杭を分割せずそのまま地中から引抜く場合と比較して作業工数が増大する要因となる。
また、分割された既設杭を地中から引抜き撤去する従来の既設杭撤去方法では、短くなった杭下端部を切断しようとする場合、切削抵抗によって刃と杭下端部とが供回りして杭下端部を切断できなくなるという問題もあった。
そこで、本発明は、地中に埋設された長さ・重量が大きい既設杭を容易に撤去することが可能な既設杭撤去方法及びその装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明に係る既設杭撤去方法は、地中に埋設された既設杭の周囲を掘るための掘削刃を有するケーシングを、該ケーシングを把持した状態と開放した状態とに切換え自在なケーシング回転昇降装置にて、回転させつつ下降させて、所定の深度まで掘削し、該ケーシングの下端部の内面から出没自在となるように下端部に設けられた既設杭切断刃を、該下端部の内面から突出させて上記既設杭を切断し、該既設杭切断刃によって切断された該既設杭のうち切断部より上方の部分を、突出状態の該既設杭切断刃の受面にて掛止して上記ケーシングと共に上記地中から引抜く第1工程を繰り返し、その後、最後に残った上記既設杭の杭下端部の周面を、該ケーシング内面から出没自在であると共に上記既設杭切断刃より上方位置の掴持爪にて掴んで、該ケーシングと共に上記地中から引抜く第2工程を行うものである。
【0006】
また、上記ケーシング回転昇降装置を、載置部と該載置部に取り付けられた複数の脚部とを有すると共に地面に設置される架台の該載置部上に載置し、上記既設杭切断刃と上記掴持爪が設けられた部分である基礎ケーシングを、該基礎ケーシングを上記架台に接近離間自在に水平移動させるケーシング移動手段にて、該架台の上記複数の脚部の間から該載置部の下側へ挿入し、継足ケーシングを、上記ケーシング回転昇降装置の上方から、該ケーシング回転昇降装置及び上記載置部に上下貫通状とすると共に該基礎ケーシングと連結して、連結された上記基礎ケーシングと上記継足ケーシングにて、上記ケーシングを構成する。
【0007】
また、本発明に係る既設杭撤去装置は、地中に埋設された既設杭の周囲を掘るための掘削刃を有すると共にケーシング回転昇降装置にて把持された状態と開放された状態とに切換え自在とされるケーシングと、該ケーシングの下端部の内面から出没自在となるように該下端部に設けられて上記既設杭を切断可能な既設杭切断刃と、該既設杭切断刃を出没させる刃駆動機構と、を備え、上記既設杭切断刃は、突出状態において切断された上記既設杭のうち切断部より上方の部分を掛止して上記ケーシングと共に上記地中から引抜くための受面を有し、さらに、該ケーシング内面から出没自在となるように上記既設杭切断刃より上方に配設され、かつ、上記既設杭の杭下端部の周面を掴持して該ケーシングと共に上記地中から引抜くための掴持爪を備える。
また、上記既設杭の自重にて該既設杭の周面に食い込んで掴持するように、上記掴持爪の先端を上傾状としつつ上下揺動させる爪駆動機構を備える。
【0008】
また、上記既設杭切断刃は、上記ケーシングの上記下端部に、上下方向の枢結軸廻りに揺動自在に枢着され、上記刃駆動機構は、上下移動自在のロッドを有すると共に上記ケーシングの周面に沿って配設されるアクチュエータと、該ロッドの先端に設けられると共に螺旋状の溝部が内周壁に形成された円筒状の動方向変換雌部と、該枢結軸と連動すると共に螺旋状の突条部が外周壁に形成された動方向変換雄部と、を有し、上記動方向変換雌部は、上記突条部が上記溝部に嵌め込まれるようにして上記動方向変換雄部に上下移動自在に外嵌されて、上記アクチュエータの上記ロッドの上下方向の移動を上記既設杭切断刃の揺動に変換するように構成した。
【発明の効果】
【0009】
本発明の既設杭撤去方法及び装置によれば、既設杭切断刃にて、既設杭を所定の長さに分割する作業と、引抜く作業との2種類の作業を行うことができる。これにより、作業工数を増大させることなく、長さ・重量が大きい種々の既設杭を容易に撤去することができる。
また、ケーシングにて既設杭の周囲を掘削する工程と、既設杭切断刃にて既設杭を切断する工程と、を連続して行うことができる。これにより、ワイヤーソー装置を使用する場合と比較して、既設杭の切断装置を既設杭とケーシングとの間に形成された空間に挿入する作業を必要としないので、その分、作業工数を削減することができる。
また、杭下端部を引抜く際に、既設杭切断刃を使用しないようにできる。これにより、杭下端部の一部先端が岩盤に達しているような場合に、硬い岩盤を掘り進む必要なく、杭下端部とケーシングとの供回りの問題もなく、杭下端部を、ケーシングと共に地中から引抜くことができる。
【0010】
また、本発明の既設杭撤去方法によれば、既製のケーシング回転昇降装置を使用することができ、特注サイズのケーシング回転昇降装置を使用しない分、部品コストを削減できる。
また、ケーシングのうち、既設杭切断刃や掴持爪やそれらを駆動させるための機構が設けられて重量が重い部分をケーシング回転昇降装置の上方に持ち上げる必要がなくなるので、作業性を向上させることができる。
【0011】
また、本発明に係る既設杭撤去装置によれば、ケーシングと共に地中から既設杭を引抜く際に、既設杭が途中で脱落して孔の底に落ちてしまうのを防ぐことができ、安定した撤去作業を行い得る。
また、簡単かつコンパクトな構造にて、アクチュエータのロッドの上下方向の動きを、既設杭切断刃の揺動に容易に変換することができる。これにより、刃駆動機構が設けられた部分のケーシングの径を小さくできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、実施の形態を示す図面に基づき、本発明を詳説する。
まず、本発明に係る既設杭撤去装置の構造について説明する。
図1〜図4に於て、本発明に係る既設杭撤去装置は、建築構造物の立て替え等のため、地中G1 に埋設されている既設杭30の撤去を行う際に使用される装置である。
本発明に係る既設杭撤去装置は、地中G1 に埋設された既設杭30の周囲を掘るための掘削刃1を有するケーシング2と、ケーシング2の下端部2aの内面から出没自在となるように下端部2aに設けられて既設杭30を切断可能な既設杭切断刃3…と、既設杭切断刃3…を出没させる刃駆動機構8…と、ケーシング2内面から出没自在となるように既設杭切断刃3…より上方に配設された掴持爪7…と、ケーシング2の下端部2aに水を供給したり刃駆動機構8…に作動油を供給するためのスイベルジョイント部26を有するタワー部27と、を備えている。
【0013】
ケーシング2は、公知のケーシング回転昇降装置6にて把持された状態と開放された状態とに切換え自在とされる。ケーシング2は、筒状であり、着脱自在のボルト・ナット等の固着具にて相互に連結された基礎ケーシング19と継足ケーシング20でもって構成されている。基礎ケーシング19は、ケーシング2の下端部2aに位置し、既設杭切断刃3…と刃駆動機構8…と掴持爪7…が設けられた部分である。また、継足ケーシング20は、連結数を増減させることにより、ケーシング2全体の長さを調節する部分である。
次に、ケーシング2を回転させ、昇降させるケーシング回転昇降装置6は、ケーシング2を把持するチャック部24と、ケーシング2を回転させる図示省略の回転機構部と、ケーシング2を昇降させる複数の昇降シリンダ33…と、を有している。
ケーシング回転昇降装置6は、地面G0 に設置された架台18に載置されている。
架台18は、ベース部34と、載置部17と、ベース部34に立設されると共に載置部17に取り付けられた複数の脚部16…と、を有している。
脚部16は、載置部17の4隅に配設されている。脚部16は、内部に昇降シリンダ37を有して、上下に伸縮自在となっている。脚部16…が伸縮することによって載置部17は昇降され、載置部17とベース部34とは接近離間するようになっている。つまり、昇降シリンダ37にて脚部16を伸縮させることによって、載置部17上のケーシング回転昇降装置6のチャック部24にて把持されたケーシング2を、昇降させることが可能となっている。
【0014】
ベース部34には、ケーシング回転昇降装置6の地面G0 に対する傾きを調整するレベル調整部35…と、補助チャックシリンダ36…とが設けられている。補助チャックシリンダ36…は、脚部16…が最も縮んだ状態までケーシング2を下降させた際に、ケーシング2の深さ位置はそのままにして脚部16…を伸ばした状態にできるようにするために設けられている。具体的には、この補助チャックシリンダ36…は、脚部16…が最も縮んだ状態において、ケーシング2を把持するようになっている。そして、この補助チャックシリンダ36…でケーシング2を把持した状態で、ケーシング回転昇降装置6のチャック部24を開放状態にするようになっている。こうすることで、ケーシング2の深さ位置はそのままにして脚部16…を容易に伸ばすことができ、脚部16…のストロークに関係なく、ケーシング2の下端部2aを所望の深さ位置まで下降できるようになっている。また、逆に、ケーシング2の下端部2aを所望の深さ位置へ上昇させ得るようになっている。
【0015】
また、ベース部34には、ケーシング2のうち基礎ケーシング19を架台18に接近離間自在に水平移動させるケーシング移動手段22が付設されている。
ケーシング移動手段22は、基礎ケーシング19を載置した状態でベース部34から出し入れ自在なケーシング出し入れ部38と、ケーシング出し入れ部38を動かすための出し入れシリンダ39と、を有している。これにより、架台18の脚部16…が最も伸びた状態において、複数の脚部16…の間から載置部17の下側(載置部17とベース部34と複数の脚部16…との間に形成された空間)へ基礎ケーシング19を挿入できるようになっている。
【0016】
次に、タワー部27は、地面G0 に載置された固定架台53と、固定架台53に立設されると共に上下方向のレール部59が付設された柱部56と、レール部59に係合するローラ58…を有すると共にレール部59に沿って昇降する昇降部57と、昇降部57に取り付けられたワイヤーを巻くウインチ54と、柱部56を旋回させる旋回用シリンダ55と、を有している。昇降部57の先端部には、上記スイベルジョイント部26が付設されている。昇降部57は、ウインチ54の作動によって昇降し、ケーシング2を回転させる間、スイベルジョイント部26をケーシング2の上端に接続させた状態に維持するようになっている。言い換えれば、昇降部57は、ケーシング2の昇降に追従して昇降するようになっている。また、旋回用シリンダ55にて柱部56を旋回させる際には、スイベルジョイント部26とケーシング2との接続を解除させるようになっている。
なお、スイベルジョイント部26には、ケーシング2の下端部2aへ供給する、水や刃駆動機構8等の作動油が、外部の機器(図示省略)からケーブルを通じて供給されている。 旋回用シリンダ55は、柱部56を旋回させて、スイベルジョイント部26の位置をケーシング2の真上から移動させるために設けられている。旋回用シリンダ55は、基礎ケーシング19と継足ケーシング20とを連結してケーシング2を構成したり、既設杭切断刃3…で切断された既設杭30を地上へ引き上げたりする際に、柱部56を、90°〜 180°程度旋回させるようになっている。そして、スイベルジョイント部26を作業の邪魔にならない位置に移動させるようにしている
【0017】
次に、ケーシング2について詳しく述べる。
ケーシング2(より詳しくは基礎ケーシング19)には、下端部2aの外周面に、外鍔状に切断刃収納部28が形成されている。このケーシング2の下端部2aに形成された切断刃収納部28の下面側には、掘削刃1…が設けられている。また、切断刃収納部28には、4つの既設杭切断刃3…が、上下方向の枢結軸9廻りに揺動自在に枢着されている。そして、これら4つの既設杭切断刃3…が、ケーシング2の下端部の内面から出没自在となるように設けられている。
既設杭切断刃3…は、所定の深度にてケーシング2の下端部の内面から突出させ、その状態でケーシング2を図4中の矢印A方向に回転させることによって、既設杭30を周面から切断可能となっている。
【0018】
既設杭切断刃3…は、既設杭30の鉄筋30a…(図10参照)を切断するための一対の鉄筋切断刃4, 4と、既設杭30のコンクリート30b(図10参照)を切断するための一対のコンクリート切断刃5, 5と、を有している。これら一対の鉄筋切断刃4, 4及び一対のコンクリート切断刃5, 5は、同種類のものが底面視でケーシング2の中心に対して点対称となるように配置されている。この配置によって、既設杭30をバランスよく切断することができるようになっている。
鉄筋切断刃4, 4及びコンクリート切断刃5, 5は、底面視略鎌状に形成されている。このうち、コンクリート切断刃5, 5は、ケーシング2の内面から下端部を最も突出させた時に、その下端部がケーシング2の中心近傍に位置するような大きさに形成されている。
【0019】
コンクリート切断刃5, 5(既設杭切断刃3, 3)は、突出状態において切断された既設杭30のうち切断部より上方の部分を掛止してケーシング2と共に地中G1 から引抜くための受面3aを有している。
鉄筋切断刃4, 4は、コンクリート切断刃5, 5よりも小さく形成されている。このように、既設杭切断刃3…が、既設杭30の鉄筋30a…を切断するための鉄筋切断刃4, 4と、既設杭30のコンクリート30bを切断するためのコンクリート切断刃5, 5と、を有するように構成することによって、既設杭切断刃3…は、鉄筋30a…とコンクリート30bとのどちらを切断するにも最適な形状となっている。つまり、既設杭切断刃3…の種類が単一である場合と比較して、既設杭30を切断する際の作業時間を短縮することができる構成となっている。
【0020】
また、鉄筋切断刃4, 4及びコンクリート切断刃5, 5の各々には、水又はセメントミルクを噴出させるための流体噴出孔29が設けられている。
各流体噴出孔29には、タワー部27のスイベルジョイント部26から、水圧ライン32を通じて水が供給されるようになっている。このように、流体噴出孔29を既設杭切断刃3に設けることによって、既設杭30の切断時に、水又はセメントミルクにて既設杭切断刃3…と既設杭30との間の掘削屑を切断部の外へ排出させることができる。また、水又はセメントミルクを、既設杭切断刃3…を冷却するための冷却液として働かせることができる。
なお、柱部56を旋回させるためにスイベルジョイント部26とケーシング2との接続を解除する際、水圧ライン32のうちスイベルジョイント部26とケーシング2との接続部に配設されたカプラーの接続を、解除するようになっている。
【0021】
次に、刃駆動機構8…は、鉄筋切断刃4, 4及びコンクリート切断刃5, 5から成る既設杭切断刃3…をケーシング2の内面から出没させる機能を有するものである。図5及び図6に於て、刃駆動機構8は、上下移動自在のロッド10を有するアクチュエータ11と、ロッド10の先端に設けられる円筒状の動方向変換雌部13と、枢結軸9と連動する動方向変換雄部15と、を有している。
アクチュエータ11は、油圧シリンダであり、各既設杭切断刃3に一つが対応して設けられている。アクチュエータ11は、ケーシング2の周面に沿って上下が長手方向となるように配設されている。このアクチュエータ11は、切断刃収納部28の上面側に設けられた刃駆動機構収納部40に収納されている。また、アクチュエータ11には、タワー部27のスイベルジョイント部26から、油圧ライン52を通じて作動油が供給されるようになっている。
なお、柱部56を旋回させるためにスイベルジョイント部26とケーシング2との接続を解除する際、油圧ライン52のうちスイベルジョイント部26とケーシング2との接続部に配設されたカプラーの接続を、解除するようになっている。
【0022】
動方向変換雄部15は、既設杭切断刃3の枢結軸9と連結されると共に刃駆動機構収納部40内に配設された伝達軸41の上端に設けられている。この動方向変換雄部15は、円柱状の本体部の外周壁に螺旋状の多数本(図例では4本)の突条部14…が形成された形状をしている。動方向変換雄部15を横断面視すると、各突条部14は、中心角度等ピッチ(90°)間隔で配設されている。形成された形状をしている。動方向変換雄部15を横断面視すると、各突条部14は、中心角度等ピッチ(90°)間隔で配設されている。
【0023】
動方向変換雌部13は、その軸心方向(長手方向)の長さが、動方向変換雄部15の軸心方向の長さよりも長く形成されている。動方向変換雌部13は、閉塞された上側がアクチュエータ11のロッド10の先端に枢着され、下側が開口端部46となるように、刃駆動機構収納部40内に配設されている。
動方向変換雌部13の内周壁には、動方向変換雄部15の多数本の突条部14…に対応して、多数本(図例では4本)の螺旋状の溝部12…が形成されている。そして、動方向変換雌部13は、突条部14が溝部12に嵌め込まれるようにして、動方向変換雄部15に上下移動自在に外嵌されている。動方向変換雌部13の動方向変換雄部15の多数本の螺旋状の突条部14…及び溝部12…によって、動方向変換雌部13の上下移動は、動方向変換雄部15の回動に変換される。そして、動方向変換雄部15の回動により、既設杭切断刃3が揺動するようになっている。
【0024】
また、動方向変換雌部13の外周壁には、動方向変換雌部13の長手方向の一対の被ガイド突条部42,42が形成されている。そして、各被ガイド突条部42は、刃駆動機構収納部40の内壁に形成された上下方向のガイド溝部43に係合するようになっている。これにより、動方向変換雌部13は、水平方向への動きが規制されつつ、上下方向にはスムーズに動くことが可能とされている。
また、動方向変換雄部15の開口端部46は、伝達軸41の挿通用の挿通孔44を有する蓋部45にて(パッキン等のシール部材を介して)蓋されている。挿通孔44と伝達軸41との間は、Oリング等のシール部材47にてシールされている。
このようにして、動方向変換雄部15は、動方向変換雌部13と蓋部45とで密閉されているが、この密閉された空間には、機械油等の潤滑剤が満たされている。この潤滑剤により、動方向変換雄部15の突条部14…と動方向変換雌部13の溝部12…の磨耗を防ぎ、スムーズな移動が可能とされている。
【0025】
なお、上述した動方向変換雌部13の上下移動に伴って動方向変換雄部15の突条部14…に過大な負荷がかからないように、かつ、動方向変換雄部15の回転がスムーズになるように、動方向変換雄部15の突条部14…のつるまき角θ(突条部14のつるまき線と、その上の1点を通ると共に動方向変換雄部15の中心軸に直角な平面とのなす角度、図5参照)は、55°〜65°の範囲に設定するのが好ましい。θが55°より小さいと突条部14…に過大な負荷がかかると共に、動方向変換雄部15の回動がぎこちなくなる虞れがある。また、θが65°を超えると、動方向変換雌部13の上下移動を動方向変換雄部15の回動に変換する際の変換効率が非常に悪くなる。
【0026】
ここで、図8に於て、掴持爪7について述べる。掴持爪7…は、各既設杭切断刃3の上方に配設されている。つまり、ケーシング2の中心角度等ピッチで配設され、多数本(4本)となっている。各掴持爪7は、ケーシング2(より詳しくは基礎ケーシング19)に設けられた窓部51からケーシング2の内面側へ出没自在とされている。掴持爪7は、突出状態で、既設杭30の周面に食い込むことが可能に形成されている。
また、本実施形態では、既設杭30の自重にてより既設杭30の周面に食い込んで掴持するように、掴持爪7の先端を上傾状としつつ上下揺動させる爪駆動機構23を備えている。この爪駆動機構23は、油圧シリンダから成るアクチュエータ48と、リンクアーム50と、を有している。
【0027】
アクチュエータ48は、ケーシング2(より詳しくは基礎ケーシング19)の周面に沿って上下が長手方向となるように配設されている。アクチュエータ48は、油圧シリンダであり、各掴持爪7に一つが対応して設けられている。アクチュエータ48には、タワー部27のスイベルジョイント部26から、油圧ライン52を通じて作動油が供給されるようになっている。
リンクアーム50は、その一端が、アクチュエータ48が有する上下伸縮自在のロッド49の先端部と連結され、他端が、掴持爪7とアーム連結部60にて連結されている。このアーム連結部60は、掴持爪7の中央寄りに設けられている。
アクチュエータ48とリンクアーム50は、ケーシング2に付設されると共に刃駆動機構収納部40の上方近傍に位置する爪駆動機構収納部62に収納されている(図1参照)。
また、掴持爪7は、基端部が爪駆動機構収納部62内にて枢着されている。そして、アクチュエータ48の動きがアーム連結部60を介して伝えられることによって、上下に揺動できるようになっている。このようにして、掴持爪7の先端は、基礎ケーシング19に設けられた窓部51から基礎ケーシング19の内面側へ出没自在とされている。
【0028】
次に、図8〜図14を参照して、本発明に係る既設杭撤去方法について説明する。
まず、図8に示すように、ベース部34と載置部17と載置部17に取り付けられた複数の脚部16…とを有する架台18を、地面G0 に設置すると共に、ケーシング回転昇降装置6を架台18の載置部17上に載置する。また、架台18の横にタワー部27(図9参照)を設置する。 そして、架台18のベース部34に付設されたケーシング移動手段22のケーシング出し入れ部38を出した状態にして、その上に、(既設杭切断刃3と刃駆動機構8と掴持爪7が設けられた部分である)基礎ケーシング19を載置する。また、架台18の脚部16…は、最も伸ばした状態にしておく。
そして、ケーシング移動手段22のケーシング出し入れ部38にて、基礎ケーシング19を架台18の複数の脚部16の間から載置部17の下側へ挿入する。
さらに、クレーン63で継足ケーシング20を吊り上げ、継足ケーシング20をケーシング回転昇降装置6の上方から、ケーシング回転昇降装置6及び載置部17に上下貫通状とする。そして、継足ケーシング20と基礎ケーシング19とを連結して、連結された基礎ケーシング19と継足ケーシング20にて、ケーシング2を構成する(図9参照)。
【0029】
次に、図9に示すように、ケーシング回転昇降装置6のチャック部24にてケーシング2を把持し、ケーシング2の上端にスイベルジョイント部26を接続した状態にして、ケーシング回転昇降装置6の図示省略の回転機構部にて、ケーシング2を回転させつつ(図9の矢印D方向)、ケーシング回転昇降装置6の昇降シリンダ33…及び架台18の脚部16…を縮めて(図9の矢印B,C方向)、ケーシング2を下降させる。これにより、ケーシング2の下端部2aに形成された掘削刃1…が既設杭30の周囲を掘り、ケーシング2は下降していく。この際、タワー部27の昇降部57は、ケーシング2の動きに追従して下降していく。ケーシング回転昇降装置6の昇降シリンダ33…のみならず、架台18の脚部16…を縮めてケーシング2を下降させるので、下降ストロークが大きくでき、効率的な作業を行い得る。なお、脚部16…が最も縮んだ状態になれば、補助チャックシリンダ36…を使用して、ケーシング2の深さ位置はそのままにして脚部16…を伸ばした状態にする。また、深く掘り進むに従って、継足ケーシング20を継ぎ足していき、ケーシング2の長さを長くしていく。
【0030】
次に、図10に示すように、所定の深度Hまで掘削すると、ケーシング2を下降させるのを止める。そして、ケーシング2を回転させながら(図10の矢印D方向)、ケーシング2の下端部2aの内面から出没自在となるように下端部2aに設けられた既設杭切断刃3…のうち、一対の鉄筋切断刃4, 4を下端部2aの内面から突出させて既設杭30の鉄筋30a…を周面側から切断する。
次に、図11に示すように、ケーシング2を回転させながら(図11の矢印D方向)一対のコンクリート切断刃5, 5をケーシング2の下端部2aの内面から突出させて既設杭30のコンクリート30bを周面側から切断する。
【0031】
次に、図12に示すように、一対のコンクリート切断刃5, 5がケーシング2の下端部2aの内面から突出した状態にしたまま、スイベルジョイント部26とケーシング2との接続を解除し、タワー部27の柱部56を旋回させる(図12の矢印E方向)。
そして、ケーシング回転昇降装置6の昇降シリンダ33…及び架台18の脚部16…を伸ばして、ケーシング2を上昇させる(図12の矢印F,J方向)。これにより、既設杭切断刃3…によって切断された既設杭30のうち切断部より上方の部分が、突出状態のコンクリート切断刃5, 5(既設杭切断刃3,3)の受面3a,3aにて掛止され、ケーシング2と共に地中G1 から引抜かれる。
そして、「地中G1 に埋設された既設杭30の周囲を掘るための掘削刃1…を有するケーシング2を、ケーシング2を把持した状態と開放した状態とに切換え自在なケーシング回転昇降装置6にて、回転させつつ下降させて、所定の深度まで掘削し、ケーシング2の下端部2aの内面から出没自在となるように下端部2aに設けられた既設杭切断刃3…を、下端部2aの内面から突出させて既設杭30を切断し、既設杭切断刃3…によって切断された既設杭30のうち切断部より上方の部分を、突出状態の既設杭切断刃3,3の受面3a,3aにて掛止してケーシング2と共に地中G1 から引抜く」という上記の第1工程を繰り返す。
【0032】
次に、図13に示すように、最後に残った既設杭30の杭下端部31は、一部先端が岩盤G2 に達している。この杭下端部31を引抜く場合、第1工程のような方法をとることはできない。なぜなら、既設杭切断刃3,3の受面3a,3aにて杭下端部31を掛止させるのは、硬い岩盤G2 を掘り進む必要があって困難であるし、既設杭切断刃3,3にて杭下端部31を切断しようとしても、切削抵抗により杭下端部31がケーシング2と供回りするので切断できないからである。
そこで、この杭下端部31を引抜く場合、以下の第2工程を行う。
【0033】
即ち、まず、ケーシング2の下端部2aが岩盤G2 の近傍に達するまで、ケーシング2を回転させつつ掘り進む。次に、ケーシング2の回転を止めた状態で、既設杭切断刃3…より上方位置の掴持爪7…をケーシング2の内面側へ突出状態とし、杭下端部31の周面に掴持爪7…を食い込ます(図13の矢印I方向)。
次に、図14に示すように、杭下端部31を掴持爪7…にて掴んだまま、スイベルジョイント部26とケーシング2との接続を解除し、タワー部27の柱部56を旋回させる(図14の矢印E方向)。
そして、ケーシング回転昇降装置6の昇降シリンダ33…及び架台18の脚部16…を伸ばして、ケーシング2を上昇させる(図14の矢印F,J方向)。このようにして、硬い岩盤G2 を掘り進む必要なく、杭下端部31とケーシング2との供回りの問題もなく、杭下端部31は、ケーシング2と共に地中G1 から引抜かれる。また、この際、杭下端部31(既設杭30)の自重Wが掴持爪7…に加わり、掴持爪7…は、杭下端部31の周面に、より深く食い込んで、杭下端部31をしっかり掴持する。
【0034】
なお、本発明は、上述の実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。例えば、本実施形態では、既設杭切断刃3…は、コンクリート切断刃5, 5と鉄筋切断刃4, 4との2種類の形状の切断刃を有する場合を例示したが、本発明はこれに限らず、既設杭切断刃は、1種類の切断刃にて構成してもよい。
また、掴持爪7…は、ケーシング2の中心角度等ピッチで配設するだけなく上下方向に高さを違えて配設してもよい。
また、本実施形態では、ケーシング回転昇降装置6は、伸縮自在の脚部16…を有する架台18に載置される場合を例示したが、本発明はこれに限らず、伸縮しない脚部を有する架台にケーシング回転昇降装置を載置するようにしてもよい。
また、本実施形態では、基礎ケーシング19を載置した状態でベース部34から出し入れ自在なケーシング出し入れ部38を有するケーシング移動手段22を備える場合を例示したが、本発明はこれに限らず、ケーシング移動手段として、一般的なフォークリフトを使用してもよい。
【0035】
以上のように、本発明の既設杭撤去方法は、地中G1 に埋設された既設杭30の周囲を掘るための掘削刃1を有するケーシング2を、ケーシング2を把持した状態と開放した状態とに切換え自在なケーシング回転昇降装置6にて、回転させつつ下降させて、所定の深度まで掘削し、ケーシング2の下端部2aの内面から出没自在となるように下端部2aに設けられた既設杭切断刃3…を、下端部2aの内面から突出させて既設杭30を切断し、既設杭切断刃3…によって切断された既設杭30のうち切断部より上方の部分を、突出状態の既設杭切断刃3,3の受面3a,3aにて掛止してケーシング2と共に地中G1 から引抜く第1工程を繰り返し、その後、最後に残った既設杭30の杭下端部31の周面を、ケーシング2内面から出没自在であると共に既設杭切断刃3,3より上方位置の掴持爪7…にて掴んで、ケーシング2と共に地中G1 から引抜く第2工程を行うので、既設杭切断刃3…にて、既設杭30を所定の長さに分割する作業と、引抜く作業との2種類の作業を行うことができる。これにより、既設杭30を所定の長さに分割して地中G1 から順次取り出す作業を容易に行うことができるので、作業工数を増大させることなく、長さ・重量が大きい種々の既設杭30を容易に撤去することができる。
【0036】
また、ケーシング2の下端部2aに設けた既設杭切断刃3…により、ケーシング2にて既設杭30の周囲を掘削する工程と、既設杭切断刃3…にて既設杭30を切断する工程と、を連続して行うことができる。これにより、ワイヤーソー装置を使用する場合と比較して、既設杭30の切断装置を既設杭30とケーシング2との間に形成された空間に挿入する作業を必要としないので、その分、作業工数を削減することができる。その結果、地中に埋設された長さ・重量が大きい既設杭30を容易に撤去することができる。
【0037】
また、最後に残った既設杭30の杭下端部31の周面を掴持爪7…にて掴んで杭下端部31を引抜くので、杭下端部31を引抜く際に、既設杭切断刃3…を使用しないようにできる。これにより、杭下端部31の一部先端が岩盤G2 に達しているような場合に、硬い岩盤G2 を掘り進む必要なく、杭下端部31とケーシング2との供回りの問題もなく、杭下端部31を、ケーシング2と共に地中G1 から引抜くことができる。
【0038】
また、ケーシング回転昇降装置6を、載置部17と載置部17に取り付けられた複数の脚部16…とを有すると共に地面G0 に設置される架台18の載置部17上に載置し、既設杭切断刃3…と掴持爪7…が設けられた部分である基礎ケーシング19を、基礎ケーシング19を架台18に接近離間自在に水平移動させるケーシング移動手段22にて、架台18の複数の脚部16の間から載置部17の下側へ挿入し、継足ケーシング20を、ケーシング回転昇降装置6の上方から、ケーシング回転昇降装置6及び載置部17に上下貫通状とすると共に基礎ケーシング19と連結して、連結された基礎ケーシング19と継足ケーシング20にて、ケーシング2を構成するので、ケーシング2を、既設杭切断刃3…や掴持爪7…やそれらを駆動させるための機構が設けられて他よりも径が大きくなった部分と、筒状の部分とに分けて、ケーシング2のうち他よりも径が大きくなった部分を、ケーシング回転昇降装置6に通さなくてもよいようにできる。これにより、既製のケーシング回転昇降装置6を使用することができ、特注サイズのケーシング回転昇降装置を使用しない分、コストを削減できる。
また、ケーシング2のうち、既設杭切断刃3と掴持爪7やそれらを駆動させるための機構が設けられて重量が重い部分をケーシング回転昇降装置6の上方に持ち上げる必要がなくなるので、作業性を向上させることができる。
【0039】
また、本発明に係る既設杭撤去装置は、地中G1 に埋設された既設杭30の周囲を掘るための掘削刃1を有すると共にケーシング回転昇降装置6にて把持された状態と開放された状態とに切換え自在とされるケーシング2と、ケーシング2の下端部2aの内面から出没自在となるように下端部2aに設けられて既設杭30を切断可能な既設杭切断刃3…と、既設杭切断刃3…を出没させる刃駆動機構8と、を備え、既設杭切断刃3は、突出状態において切断された既設杭30のうち切断部より上方の部分を掛止してケーシング2と共に地中G1 から引抜くための受面3aを有し、さらに、ケーシング2内面から出没自在となるように既設杭切断刃3…より上方に配設され、かつ、既設杭30の杭下端部31の周面を掴持してケーシング2と共に地中G1 から引抜くための掴持爪7…を備えるので、既設杭切断刃3…にて、既設杭30を所定の長さに分割する作業と、引抜く作業との2種類の作業を行うことができる。これにより、既設杭30を所定の長さに分割して地中G1 から順次取り出す作業を容易に行うことができるので、作業工数を増大させることなく、長さ・重量が大きい種々の既設杭30を容易に撤去することができる。
【0040】
また、ケーシング2の下端部2aに設けた既設杭切断刃3…により、ケーシング2にて既設杭30の周囲を掘削する工程と、既設杭切断刃3…にて既設杭30を切断する工程と、を連続して行うことができる。これにより、ワイヤーソー装置を使用する場合と比較して、既設杭30の切断装置を既設杭30とケーシング2との間に形成された空間に挿入する作業を必要としないので、その分、作業工数を削減することができる。その結果、地中に埋設された長さ・重量が大きい既設杭30を容易に撤去することができる。
【0041】
また、既設杭30の杭下端部31の周面を掴持してケーシング2と共に地中G1 から引抜くための掴持爪7…を備えるので、杭下端部31を引抜く際に、既設杭切断刃3…を使用しないようにできる。これにより、杭下端部31の一部先端が岩盤G2 に達しているような場合に、硬い岩盤G2 を掘り進む必要なく、杭下端部31とケーシング2との供回りの問題もなく、杭下端部31を、ケーシング2と共に地中G1 から引抜くことができる。
【0042】
また、既設杭30の自重にて既設杭30の周面に食い込んで掴持するように、掴持爪7の先端を上傾状としつつ上下揺動させる爪駆動機構23を備えるので、ケーシング2と共に地中G1 から既設杭30を引抜く際に、既設杭30が途中で脱落して孔の底に落ちてしまうのを防ぐことができ、安定した撤去作業を行い得る。
【0043】
また、既設杭切断刃3は、ケーシング2の下端部2aに、上下方向の枢結軸9廻りに揺動自在に枢着され、刃駆動機構8は、上下移動自在のロッド10を有すると共にケーシング2の周面に沿って配設されるアクチュエータ11と、ロッド10の先端に設けられると共に螺旋状の溝部12が内周壁に形成された円筒状の動方向変換雌部13と、枢結軸9と連動すると共に螺旋状の突条部14が外周壁に形成された動方向変換雄部15と、を有し、動方向変換雌部13は、突条部14が溝部12に嵌め込まれるようにして動方向変換雄部15に上下移動自在に外嵌されて、アクチュエータ11のロッド10の上下方向の移動を既設杭切断刃3の揺動に変換するように構成したので、簡単かつコンパクトな構造にて、アクチュエータ11のロッド10の上下方向の動きを、既設杭切断刃3の揺動に容易に変換することができる。これにより、アクチュエータ11の長手方向を上下方向とすることができ、刃駆動機構8が設けられた部分のケーシング2の径を小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施の一形態に係る既設杭撤去装置を示す正面図である。
【図2】要部側面図である。
【図3】タワー部の要部断面平面図である。
【図4】ケーシングの底面図である。
【図5】刃駆動機構周辺の要部断面側面図である。
【図6】刃駆動機構周辺の要部断面平面図である。
【図7】爪駆動機構周辺を示す要部断面側面図であって、(イ)は掴持爪を収納した状態を示す要部断面側面図、(ロ)は掴持爪を突出させた状態を示す要部断面側面図である。
【図8】既設杭の引抜き撤去工程説明用の断面側面図である。
【図9】既設杭の引抜き撤去工程説明用の断面側面図である。
【図10】既設杭の引抜き撤去工程説明用の断面側面図である。
【図11】既設杭の引抜き撤去工程説明用の断面側面図である。
【図12】既設杭の引抜き撤去工程説明用の断面側面図である。
【図13】既設杭の引抜き撤去工程説明用の断面側面図である。
【図14】既設杭の引抜き撤去工程説明用の断面側面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 掘削刃
2 ケーシング
2a 下端部
3 既設杭切断刃
3a 受面
6 ケーシング回転昇降装置
7 掴持爪
8 刃駆動機構
9 枢結軸
10 ロッド
11 アクチュエータ
12 溝部
13 動方向変換雌部
14 突条部
15 動方向変換雄部
16 脚部
17 載置部
18 架台
19 基礎ケーシング
20 継足ケーシング
22 ケーシング移動手段
23 爪駆動機構
26 スイベルジョイント部
30 既設杭
31 杭下端部
0 地面
1 地中
2 岩盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中(G1 )に埋設された既設杭(30)の周囲を掘るための掘削刃(1)を有するケーシング(2)を、該ケーシング(2)を把持した状態と開放した状態とに切換え自在なケーシング回転昇降装置(6)にて、回転させつつ下降させて、所定の深度まで掘削し、該ケーシング(2)の下端部(2a)の内面から出没自在となるように該下端部(2a)に設けられた既設杭切断刃(3)を、該下端部(2a)の内面から突出させて上記既設杭(30)を切断し、該既設杭切断刃(3)によって切断された該既設杭(30)のうち切断部より上方の部分を、突出状態の該既設杭切断刃(3)の受面(3a)にて掛止して上記ケーシング(2)と共に上記地中(G1 )から引抜く第1工程を繰り返し、その後、最後に残った上記既設杭(30)の杭下端部(31)の周面を、該ケーシング(2)内面から出没自在であると共に上記既設杭切断刃(3)より上方位置の掴持爪(7)にて掴んで、該ケーシング(2)と共に上記地中(G1 )から引抜く第2工程を行うことを特徴とする既設杭撤去方法。
【請求項2】
上記ケーシング回転昇降装置(6)を、載置部(17)と該載置部(17)に取り付けられた複数の脚部(16)とを有すると共に地面( G0 )に設置される架台(18)の該載置部(17)上に載置し、
上記既設杭切断刃(3)と上記掴持爪(7)が設けられた部分である基礎ケーシング(19)を、該基礎ケーシング(19)を上記架台(18)に接近離間自在に水平移動させるケーシング移動手段(22)にて、該架台(18)の上記複数の脚部(16)の間から該載置部(17)の下側へ挿入し、
継足ケーシング(20)を、上記ケーシング回転昇降装置(6)の上方から、該ケーシング回転昇降装置(6)及び上記載置部(17)に上下貫通状とすると共に該基礎ケーシング(19)と連結して、連結された上記基礎ケーシング(19)と上記継足ケーシング(20)にて、上記ケーシング(2)を構成する請求項1記載の既設杭撤去方法。
【請求項3】
地中(G1 )に埋設された既設杭(30)の周囲を掘るための掘削刃(1)を有すると共にケーシング回転昇降装置(6)にて把持された状態と開放された状態とに切換え自在とされるケーシング(2)と、該ケーシング(2)の下端部(2a)の内面から出没自在となるように該下端部(2a)に設けられて上記既設杭(30)を切断可能な既設杭切断刃(3)と、該既設杭切断刃(3)を出没させる刃駆動機構(8)と、を備え、
上記既設杭切断刃(3)は、突出状態において切断された上記既設杭(30)のうち切断部より上方の部分を掛止して上記ケーシング(2)と共に上記地中(G1 )から引抜くための受面(3a)を有し、
さらに、該ケーシング(2)内面から出没自在となるように上記既設杭切断刃(3)より上方に配設され、かつ、上記既設杭(30)の杭下端部(31)の周面を掴持して該ケーシング(2)と共に上記地中(G1 )から引抜くための掴持爪(7)を備えることを特徴とする既設杭撤去装置。
【請求項4】
上記既設杭(30)の自重にて該既設杭(30)の周面に食い込んで掴持するように、上記掴持爪(7)の先端を上傾状としつつ上下揺動させる爪駆動機構(23)を備える請求項3記載の既設杭撤去装置。
【請求項5】
上記既設杭切断刃(3)は、上記ケーシング(2)の上記下端部(2a)に、上下方向の枢結軸(9)廻りに揺動自在に枢着され、
上記刃駆動機構(8)は、上下移動自在のロッド(10)を有すると共に上記ケーシング(2)の周面に沿って配設されるアクチュエータ(11)と、該ロッド(10)の先端に設けられると共に螺旋状の溝部(12)が内周壁に形成された円筒状の動方向変換雌部(13)と、該枢結軸(9)と連動すると共に螺旋状の突条部(14)が外周壁に形成された動方向変換雄部(15)と、を有し、
上記動方向変換雌部(13)は、上記突条部(14)が上記溝部(12)に嵌め込まれるようにして上記動方向変換雄部(15)に上下移動自在に外嵌されて、上記アクチュエータ(11)の上記ロッド(10)の上下方向の移動を上記既設杭切断刃(3)の揺動に変換するように構成した請求項3又は4記載の既設杭撤去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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