説明

既設構造物の耐震補強構造及びその施工方法

【課題】躯体へのアンカーの打設作業の労力を低減し、アンカー打設による騒音、振動を大幅に減少することができると共に、効率的な部分開口の形成を可能とし、施工期間を大幅に短縮する。
【解決手段】躯体10の開口部20の周面に、第1のスタッドジベル71が植設されている基板70を配置して接着材80で固定すると共に、通路用等の部分開口Sに対応する箇所に部分開口用プレート50を配置固定し、基板70よりも内側の開口部20内に、第2のスタッドジベル43が植設されている耐震補強フレーム40を配置し、耐震補強フレーム40の切欠部41bを部分開口用プレート50に対応配置して耐震補強フレーム40と部分開口用プレート50が連結され、耐震補強フレーム40の外周面と躯体10との間に鉄筋が配筋され、スタッドジベル71、43及び鉄筋を埋設するように固結材61が充填固化された既設構造物の耐震補強構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病院、オフィスビル、校舎、共同住宅等の構造物を補強する耐震補強構造に係り、特に通路用等の部分開口が設けられる既設構造物の耐震補強構造及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通路用の部分開口が設けられる既設構造物の耐震補強構造として、特許文献1の耐震補強構造が知られている。この耐震補強構造では、図11に示すように、既設構造物の躯体110である柱111と梁112で囲まれる開口部120において、その周囲の躯体110に周方向に略一定間隔を開けて多数のアンカー130が打設されていると共に、開口部120内に耐震補強フレーム140が設置される。耐震補強フレーム140は、枠状本体141とこれを補強する筋交い142とを有し、枠状本体141の下側フレーム部141aに切欠部141bが設けられていると共に、枠状本体141の外周にアンカー130と略同一の間隔を開けてスタッドジベル143が設けられている。
【0003】
切欠部141bに対応する箇所には、基板151と基板151の両端部から立ち上がるように設けられている連結部152とを有する部分開口用プレート150が設けられている。部分開口用プレート150の基板151は、切欠部141bの下側の梁112に沿うように配置され、プレート固定用アンカー153を打ち込んで固定されており、その連結部152は下側フレーム部141aの端部にそれぞれ溶接して固定されている。
【0004】
耐震補強フレーム140の外周と躯体110との間の隙間にはスパイラル筋(図示省略)が配置されており、その隙間に充填された無収縮モルタルである固結材161が設けられ、アンカー130とスタッドジベル143が固結材161に埋設されるようにして、耐震補強フレーム140が躯体110に固定されている。耐震補強フレーム140の通路用の部分開口S’を除く部分には面材162が敷設され、通路用の部分開口S’が設けられる。
【0005】
この耐震補強構造を施工する際には、図8、図9に示すように、開口部120の周囲の躯体110に対して多数のアンカー130を打設し、アンカー130を打設した開口部120に、スタッドジベル143を有する耐震補強フレーム140を建て込む。この時、アンカー130とスタッドジベル143が交互に咬み合うようにして耐震補強フレーム140を配置する。次いで、耐震補強フレーム140の外周と躯体110との間の隙間にスパイラル筋を配置し、その隙間の両側に型枠を配置して無収縮モルタルである固結材161を充填する。その後、固結材161が硬化すると耐震補強フレーム140が躯体110に固定される。
【0006】
一方、耐震補強フレーム140の切欠部141bに対しては、図10に示すように、切欠部141bに対応する箇所に部分開口用プレート150を配置し、基板151と梁112との間にエポキシ樹脂系接着剤を充填すると共にプレート固定用アンカー153を基板151に打ち込むことにより、基板151を梁112に固定すると共に、連結部152を下側フレーム部141aの端部にそれぞれ溶接する。
【0007】
なお、耐震補強フレーム140が躯体110に固定された後、型枠を取り外し、耐震補強フレーム140の通路用の部分開口S’を除く部分には、面材162を敷設し、通路用の部分開口S’を設けるようにする(図11参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−324342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記耐震補強構造及び工法では、躯体110にアンカー130を150〜200mm程度等の狭いピッチで多数打設する必要があり、躯体110の正確な位置に順次穿孔して多数のアンカー130を打ち込まなければならない。そのため、アンカー130の打設に要する手間が大きくなると共に、アンカー130の打設作業による騒音、振動が長期間に亘って発生し、既設構造物内に人が居たまま施工することは難しい。
【0010】
更に、多数のアンカー130の打設に手間を要することに加え、その後に耐震補強フレーム140の建て込み工程と、部分開口用プレート150の取り付け工程を別々の工程で順次行うため、施工期間が非常に長くなるという問題がある。
【0011】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであり、通路用等の部分開口が設けられる既設構造物の耐震補強構造について、躯体へのアンカーの打設作業の労力を低減し、アンカー打設による騒音、振動を大幅に減少することができると共に、効率的に部分開口を形成することを可能とし、施工期間を大幅に短縮することができる既設構造物の耐震補強構造及びその施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の既設構造物の耐震補強構造は、既設構造物の躯体の開口部の周面に、長手方向に所定間隔で第1のスタッドジベルが植設されている基板を配置して接着材で固定すると共に、部分開口に対応する箇所に部分開口用プレートを配置固定し、前記基板よりも内側の前記開口部内に、外周面に所定間隔で第2のスタッドジベルが植設されている耐震補強フレームを配置し、前記耐震補強フレームの切欠部を前記部分開口用プレートに対応配置して前記耐震補強フレームと前記部分開口用プレートが連結され、前記耐震補強フレームの外周面と前記躯体との間に鉄筋が配筋され、前記第1のスタッドジベル、前記第2のスタッドジベル及び前記鉄筋を埋設するようにして固結材が充填固化されたことを特徴とする。
この構成によれば、多数のアンカーの躯体への打設が不要で、第1のスタッドジベルを有する基板を接着材により躯体に固定することができ、最低本数だけのアンカーの打設で済むことから、アンカーの打設本数を圧倒的に減らして、躯体へのアンカーの打設作業の労力を低減し、アンカー打設による騒音、振動を大幅に減少することができる。また、固結材に埋設される第1のスタッドジベル及びその基板の設置と同時に部分開口用プレートを配置固定することが可能となるから、効率的に部分開口を形成することが可能となり、施工期間を大幅に短縮することができる。
【0013】
本発明の既設構造物の耐震補強構造は、少なくとも前記躯体の前記開口部の上側に沿って配置する前記基板を、長手方向に所定間隔で第1のスタッドジベルが植設されている小割基板の複数で構成することを特徴とする。
この構成によれば、例えば梁に沿って長い単一の基板を配置した場合に生じる、重量で基板の中央部分が垂れることを防止するために中央部分にアンカーを高密度で打設する手間を無くすことができ、接着材の接着力によって小割基板を躯体に一体化することが容易にでき、アンカーをなくす或いはその数を可及的に低減することができると共に、施工性を一層向上することができる。
【0014】
本発明の既設構造物の耐震補強構造の施工方法は、既設構造物の躯体の開口部の周面に、長手方向に所定間隔で第1のスタッドジベルが植設されている基板を配置して接着材で固定すると共に、部分開口に対応する箇所に部分開口用プレートを配置固定する工程と、前記基板よりも内側の前記開口部内に、外周面に所定間隔で第2のスタッドジベルが植設されている耐震補強フレームを配置して、前記耐震補強フレームの切欠部を前記部分開口用プレートに対応配置する工程と、前記耐震補強フレームと前記部分開口用プレートを連結する工程と、前記耐震補強フレームの外周面と前記躯体との間に鉄筋を配筋する工程と、前記耐震補強フレームの外周面と前記躯体との間に前記第1のスタッドジベル、前記第2のスタッドジベル及び前記鉄筋を埋設するように固結材を充填して固化する工程とを備えることを特徴とする。
この構成によれば、多数のアンカーの躯体への打設が不要で、第1のスタッドジベルを有する基板を接着材により躯体に固定することができ、最低本数だけのアンカーの打設で済むことから、アンカーの打設本数を圧倒的に減らして、躯体へのアンカーの打設作業の労力を低減し、アンカー打設による騒音、振動を大幅に減少することができる。また、固結材に埋設される第1のスタッドジベル及びその基板の設置と同時に部分開口用プレートを配置固定することにより、効率的に部分開口を形成することが可能となり、施工期間を大幅に短縮することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、通路用等の部分開口が設けられる既設構造物の耐震補強構造について、躯体へのアンカーの打設作業の労力を低減し、アンカー打設による騒音、振動を大幅に減少することができ、既設構造物内に人が居たまま施工することも可能となる。また、効率的に部分開口を形成することが可能であり、施工期間を大幅に短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明による実施形態の既設構造物の耐震補強構造で開口部内に耐震補強フレームが設置された状態を示す一部断面正面図。
【図2】(a)は図1のA部の拡大図、(b)は図2(a)における柱側のスタットジベルを省略したB−B線断面図。
【図3】基板及び部分開口用プレートの躯体への取り付けを説明する斜視説明図。
【図4】(a)〜(c)は基板及び部分開口用プレートの躯体への取付手順を説明する説明図。
【図5】実施形態の既設構造物の耐震補強構造の施工手順を説明する基板及び部分開口用プレートが配置固定された躯体の説明図。
【図6】実施形態の既設構造物の耐震補強構造の施工手順を説明する耐震補強フレームが配置された躯体の説明図。
【図7】実施形態の既設構造物の耐震補強構造の施工手順を説明する固結材が充填固化された躯体の説明図。
【図8】従来例の既設構造物の耐震補強構造の施工手順を説明するアンカーが打設された躯体の説明図。
【図9】従来例の既設構造物の耐震補強構造の施工手順を説明する耐震補強フレームが配置された躯体の説明図。
【図10】従来例の既設構造物の耐震補強構造の施工手順を説明する部分開口用プレートが設置された躯体の説明図。
【図11】従来例の既設構造物の耐震補強構造の施工手順を説明する固結材が充填固化された躯体の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔実施形態の既設構造物の耐震補強構造及びその施工方法〕
次に、本発明による実施形態の既設構造物の耐震補強構造及びその施工方法について説明する。
【0018】
本実施形態の既設構造物の耐震補強構造では、図1、図2及び図7に示すように、既設構造物の躯体10の柱11の側面と梁12の上面及び下面で構成される開口部20の周面に、基板70が配置固定されていると共に、基板70が配置されていない部分開口Sに対応する箇所に部分開口用プレート50が配置固定され、基板70よりも内側の開口部20内には耐震補強フレーム40が配置されている。
【0019】
基板70には、長手方向に所定間隔で第1のスタッドジベル71が植設され、図示例では2列で植設されている。各基板70は、第1のスタッドジベル71が開口部20の内側に向かって突出するようにして、柱11の側面と梁12の上面及び下面に沿って配置され、所定間隔で設けられる複数本のアンカー30と接着材80とを併用して柱11と梁12に固定されている。
【0020】
本例のアンカー30は、図3に示すように、全ねじボルトや異形鉄筋の頭部にねじ加工を施したボルト等のボルト31とナット32とから構成され、基板70の固定に際しては、開口部20の周面から躯体10に下孔13が穿孔され、基板70の取付孔72と下孔13の位置を合わせてボルト31が挿入され、そのボルト31に基板70に当接するまでナット32が螺合される。また、開口部20の周面と基板70との間の隙間や下孔13内には例えばエポキシ樹脂系接着剤等の接着材80が充填される。なお、ナット32は必要に応じ、ダブルナットとする。
【0021】
部分開口用プレート50は、基板51と基板51の両端部から立ち上がるように設けられている連結部52とを有する正面視略コ字形であり、部分開口Sが形成される後述する耐震補強フレーム40の切欠部41bに対応する箇所に設けられる。部分開口用プレート50の基板51は、下側の梁12の上面に沿うように配置され、所定間隔で設けられる複数本のプレート固定用アンカー53と接着材80とを併用して梁12に固定されている。
【0022】
本例のプレート固定用アンカー53は、図3及び図4に示すように、皿ボルト形状をなす特殊ボルトであり、基板51の固定に際しては、開口部20の周面から梁12に下孔13が穿孔され、基板51の皿孔511と下孔13の位置を合わせてプレート固定用アンカー53が挿入され、皿状のボルト頭部が皿孔511内に収容される。また、開口部20の周面である梁12の上面と基板51との間の隙間や下孔13内にはエポキシ樹脂系接着剤等の接着材80が充填される。更に、連結部52は、後述する耐震補強フレーム40の下側フレーム部41aの端部にボルト締め或いは溶接等により固定して連結される。
【0023】
耐震補強フレーム40は、正面視矩形の枠状本体41とこれを補強する筋交い42とを有し、枠状本体41の下側フレーム部41aに中央部周辺を切り欠くようにして切欠部41bが設けられている。枠状本体41の外周面には長手方向に所定間隔で第2のスタッドジベル43が植設されており、図示例では2列で植設されている。第2のスタッドジベル43は、第1のスタッドジベル71と略同一の間隔を開けて設けられ、第2のスタッドジベル43が第1のスタッドジベル71と交互に咬み合うようにして、耐震補強フレーム40が設置される。
【0024】
そして、図2(b)に示すように、耐震補強フレーム40の枠状本体41の外周面と躯体10との間の隙間に割フープ筋或いはスパイラル筋等の鉄筋91が配筋され、図7に示すように、その隙間に充填された無収縮モルタルである固結材61が設けられる。尚、図7では鉄筋91を省略して図示している。固結材61は、第1のスタッドジベル71、第2のスタッドジベル43及び鉄筋91を埋設するようにして充填固化され、これにより耐震補強フレーム40が躯体10に固定されている。更に、耐震補強フレーム40の通路用の部分開口Sを除く部分には面材62が敷設され、通路用の部分開口Sが設けられる。
【0025】
尚、開口部20の上側の梁12の下面に沿って設けられる基板70、下側の梁12の上面に沿って部分開口用プレート50の両側にそれぞれ設けられる基板70・70、左右両側の柱11の側面に沿ってそれぞれ設けられる基板70・70は、それぞれ一枚板の基板70とする構成の他、それぞれを長手方向に所定間隔で第1のスタッドジベル71が植設されている小割基板70aの複数で構成することも可能である。特に、躯体10の開口部20の上側の梁12に沿って配置する基板70を小割基板70aの複数で構成すると好適であり、これにより、梁12に沿って長い単一の基板70を配置した場合に、重量で基板70の中央部分が垂れることを防止するために中央部分にアンカー30を高密度で打設する手間を無くすことができ、アンカー30をなくす或いはその数を可及的に低減することができると共に、施工性を一層向上することができる。
【0026】
上記実施形態の既設構造物の耐震補強構造を施工する際には、図5に示すように、躯体10の開口部20の周面に、部分開口Sに対応する箇所を除く箇所において、第1のスタッドジベル71が開口部20の内側に突出するようにして基板70を配置し、図示例においてはアンカー30の打ち込みと接着材80の塗布及び充填とを併用して基板70を躯体10に固定すると共に、部分開口Sに対応する箇所に部分開口用プレート50を配置し、プレート固定用アンカー53の打ち込みと接着材80の塗布及び充填とを併用して部分開口用プレート50を躯体10に固定する。
【0027】
部分開口用プレート50の固定では、例えば図4に示すように、躯体10の梁12の上面の下孔13以外の領域に接着材80を塗布し、下孔13と皿孔511との位置を合わせるようにして部分開口用プレート50を配置し、部分開口用プレート50を梁12に接着する。その後、皿孔511と下孔13内に接着材80を充填し、そこに皿ボルトのプレート固定用アンカー53を挿入するようにして固定する。尚、基板70も同様の工程で固定することが可能であり、又、部分開口用プレート50、基板70ともプレート固定用アンカー50、アンカー30の打設後に、接着材80を所定箇所に充填するようにして固定することも可能である。
【0028】
次いで、図6に示すように、基板70よりも内側の開口部20内に、第2のスタッドジベル43が第1のスタッドジベル71と略等間隔で交互に咬み合うようにし、且つ切欠部41bが部分開口用プレート50に対応する位置となるようにして、耐震補強フレーム40を配置し、図示省略する支持具等でその状態で保持する。そして、耐震補強フレーム40の下側フレーム部41aの端部と部分開口用プレート50の連結部52とをボルト締め或いは溶接等により固定して、耐震補強フレーム40と部分開口用プレート50とを連結する。
【0029】
その後、耐震補強フレーム40の枠状本体41の外周面と躯体10との間の隙間に鉄筋91を配筋し、その隙間の両側に型枠92を配置して無収縮モルタルである固結材61を充填し、枠状本体41の外周面と躯体10との間に第1のスタッドジベル71、前記第2のスタッドジベル43及び鉄筋91を埋設するようにして固結材61を固化させる(図2(b)、図7参照)。固結材61が固化して耐震補強フレーム40が躯体10に固定された後、必要に応じて型枠92を取り外し、耐震補強フレーム40の通路用の部分開口Sを除く部分に面材62を貼り付け、通路用の部分開口Sを設ける(図7参照)。
【0030】
本実施形態の既設構造物の耐震補強構造及びその施工方法は、多数のアンカーの躯体10への打設が不要で、第1のスタッドジベル71を有する基板70を躯体10に固定する本数だけのアンカー30の打設で済むことから、アンカー30の打設本数を圧倒的に減らして、躯体10へのアンカー30の打設作業の労力を低減し、アンカー打設による騒音、振動を大幅に減少することができる。また、固結材61に埋設される第1のスタッドジベル71及びその基板70の設置と同時に部分開口用プレート50を配置固定することが可能となるから、効率的に部分開口Sを形成することが可能となり、施工期間を大幅に短縮することができる。
【0031】
〔実施形態の変形例等〕
本明細書開示の発明は、各発明や実施形態の構成の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な構成を本明細書開示の他の構成に変更して特定したもの、或いはこれらの構成に本明細書開示の他の構成を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な構成を部分的な作用効果が得られる限度で削除して特定した上位概念化したものを含むものである。そして、下記変形例も包含する。
【0032】
例えば本発明における躯体の開口部は、図示例の柱11と梁12で囲まれる正面視矩形の開口部20に限定されず適宜であり、例えば円形、楕円形或いは三角形、六角形等の四角形以外の多角形等とすることが可能である。開口部を円形、楕円形等の曲面を有する形状とする場合には、これに応じて、基板や部分開口用プレートを曲面形状にするとよい。
【0033】
また、基板70の躯体10への固定と部分開口用プレート50を躯体10に固定する工程は、同時に行うことによって工程数を減らし施工期間を短縮することができるが、作業手順の都合により、基板70を先に取り付けるか、或いは、部分開口用プレート50を先に取り付けても構わず、その他の施工手順や、構成は上記例以外にも適宜である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、例えば病院、オフィスビル、校舎等の既設構造物の耐震補強に利用することができる。
【符号の説明】
【0035】
10…躯体 11…柱 12…梁 13…下孔 20、120…開口部 30、130…アンカー 31…ボルト 32…ナット 40、140…耐震補強フレーム 41、141…枠状本体 41a、141a…下側フレーム部 41b、141b…切欠部 42、142…筋交い 43、143…第2のスタッドジベル 50、150…部分開口用プレート 51、151…基板 511…皿孔 52、152…連結部 53、153…プレート固定用アンカー 61、161…固結材 62、162…面材 70…基板 70a…小割基板 71…第1のスタッドジベル 72…取付孔 80…接着材 91…鉄筋 92…型枠 110…躯体 111…柱 112…梁 S、S’…部分開口



【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設構造物の躯体の開口部の周面に、
長手方向に所定間隔で第1のスタッドジベルが植設されている基板を配置して接着材で固定すると共に、
部分開口に対応する箇所に部分開口用プレートを配置固定し、
前記基板よりも内側の前記開口部内に、外周面に所定間隔で第2のスタッドジベルが植設されている耐震補強フレームを配置し、
前記耐震補強フレームの切欠部を前記部分開口用プレートに対応配置して前記耐震補強フレームと前記部分開口用プレートが連結され、
前記耐震補強フレームの外周面と前記躯体との間に鉄筋が配筋され、
前記第1のスタッドジベル、前記第2のスタッドジベル及び前記鉄筋を埋設するようにして固結材が充填固化されたことを特徴とする既設構造物の耐震補強構造。
【請求項2】
少なくとも前記躯体の前記開口部の上側に沿って配置する前記基板を、
長手方向に所定間隔で第1のスタッドジベルが植設されている小割基板の複数で構成することを特徴とする請求項1記載の既設構造物の耐震補強構造。
【請求項3】
既設構造物の躯体の開口部の周面に、長手方向に所定間隔で第1のスタッドジベルが植設されている基板を配置して接着材で固定すると共に、部分開口に対応する箇所に部分開口用プレートを配置固定する工程と、
前記基板よりも内側の前記開口部内に、外周面に所定間隔で第2のスタッドジベルが植設されている耐震補強フレームを配置して、前記耐震補強フレームの切欠部を前記部分開口用プレートに対応配置する工程と、
前記耐震補強フレームと前記部分開口用プレートを連結する工程と、
前記耐震補強フレームの外周面と前記躯体との間に鉄筋を配筋する工程と、
前記耐震補強フレームの外周面と前記躯体との間に前記第1のスタッドジベル、前記第2のスタッドジベル及び前記鉄筋を埋設するように固結材を充填して固化する工程と、
を備えることを特徴とする既設構造物の耐震補強構造の施工方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−180721(P2012−180721A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45946(P2011−45946)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000129758)株式会社ケー・エフ・シー (120)
【Fターム(参考)】