説明

既設配管を解体する方法

【課題】建物における老朽化した既設配管を解体するための、騒音および振動の発生が可及的に低減され、且つ迅速な施工が可能な方法を提供すること。
【解決手段】上記方法は、建物内の上下階に連通する配管スペース内にスリーブを介して軸方向に連接された配管を解体する方法であって、配管のうち、隣接するスリーブの中間に位置する部分の一部を上階および下階においてそれぞれ切断して除去し、切断した配管をジャッキによって上階方向に押し上げ、そして該切断した配管をスリーブから抜き取る工程を経ることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設配管を解体する方法に関する。さらに詳しくは、建物における老朽化した既設配管を解体するための、騒音および振動の発生が可及的に低減された新規な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
戸建住宅、マンション、ビジネスビルなどにおける給水管、排水管、ガス管などの既設配管が老朽化した場合には、配管の一部またはその全部の更新を要することとなる。かかる更新作業は、建物自体を稼動状態においたまま施工されることが通常である。
これらの配管設備、特に給排水管は、例えば上下階に連通する配管スペース内にスリーブを介して軸方向に連接されている場合が多い。この場合、スリーブ部は、コンクリート製の床板(スラブコンクリート)を貫通して配管外径よりも大きな直径で穿たれた穴であり、該スリーブ部における配管の外周と床板との間隙は例えばモルタルなどで充填されている。通常は、床面上にさらにシンダーコンクリートが敷設されている。
このような構造にある既設の配管を交換する際、一般には、スリーブ間に位置する配管の一部を切断除去した後、スリーブ部のシンダーコンクリートおよびモルタルを破砕してスリーブ部を貫通する配管を抜き取った後に、新規の配管を設置する方法が採用されている。このとき、配管の解体場所から半径2m程度の位置で100dB程度の騒音が一戸あたり約30〜90分間継続し、且つ解体住居の上下階においても80dB程度の騒音が同じ時間だけ発生することとなる。従って、1棟あたり10世帯の共同住宅にある一室を仮定すると、当該住居における施工の際に100dB程度の騒音が約30〜90分間と、上下左右住居における施工の際に80dB程度の騒音が12時間以上継続することとなる。破砕作業に伴う振動の発生時間もこれと同様である。最近のマンションなどの巨大共同住宅においては、日祭日を除く日中に継続して一定以上の騒音および振動が発生することとなり、施工期間中の住民のストレスは大きい。特に幼児や高齢者がいる世帯では、健康上の問題が生ずる場合もある。
【0003】
現存する500万戸を超える共同住宅のうちの70%程度において、今後このような配管の更新作業が必要となってくることを考慮すると、上記の如き騒音および振動を発生しない、あるいは騒音および振動の程度および発生時間が可及的に短縮された配管の更新方法が切望されている。また、特に大規模住宅においては、一棟あたりの工期の短縮の要請が大きい。
この点、例えば特許文献1および2は、既設の老朽管内に新設管を挿入する方法を提案している。この方法によると、スリーブ部の配管を引き抜く必要がないため騒音および振動の発生時間は短縮されるが、新設管の内径が既設管よりも小さくならざるを得ないため、給排水量が不足する懸念がある。また、この方法の問題点を解消すべく、特許文献3ではスリーブ部では既設配管に新設管を挿入するが、他の部分では十分に大きな径の新設管を使用する方法が提案されている。しかしながらこの技術によってもスリーブ部における配管径が既設管よりも小さくなる問題は解消されておらず、この部分における過大な応力の発生の懸念は払拭されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−280538号公報
【特許文献2】特開2003−35381号公報
【特許文献3】特開2005−214376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の現状に鑑みてなされたものであり、その目的は、建物における老朽化した既設配管を解体するための、騒音および振動の発生が可及的に低減され、且つ迅速な施工が可能な方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると、本発明の上記目的および利点は、第一に、
建物の上下階に連通する配管スペース内にスリーブを介して軸方向に連接された配管を解体する方法であって、
配管のうち、隣接するスリーブの中間に位置する部分の一部を上階および下階においてそれぞれ切断して除去し、
切断した配管をジャッキによって上階方向に押し上げ、そして
該切断した配管をスリーブから抜き取る工程を経ることを特徴とする、前記方法によって達成される。
上記の方法が建物内の上下階に連結する配管ばかりではなく、建物内で左右または前後に隣接する部屋間に連結する配管にも適用しうるものであることは、当業者には自明であろう。従って本発明の上記目的および利点は、第二に、
建物の隣接する部屋間に連通する配管スペース内にスリーブを介して軸方向に連接された配管を解体する方法であって、
配管のうち、隣接するスリーブの中間に位置する部分の一部を両部屋においてそれぞれ切断して除去し、
該切断した配管をジャッキによってもう一方の部屋の方向に押し進め、そして該切断した配管をスリーブから抜き取る工程を経ることを特徴とする、前記方法によって達成される。
【発明の効果】
【0007】
本発明の方法によれば、従来の工法に比べて極めて静寂性に優れ、しかも施工時間の短い解体方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明において好ましく使用される配管解体用アタッチメントの斜視図。
【図2】実施例1における給水管の解体方法の施工例(本発明の方法、スリーブ部を破砕する場合)を説明するための工程図。
【図3】実施例2における給水管の解体方法の施工例(本発明の方法)を説明するための工程図。
【図4】比較例1における給水管の解体方法の施工例(従来法)を説明するための工程図。
【図5】実施例3における排水管の解体方法の施工例(本発明の方法)を説明するための工程図。
【図6】実施例4における排水管の解体方法の施工例(本発明の方法)を説明するための工程図。
【図7】比較例2における排水管の解体方法の施工例(従来法)を説明するための工程図。
【図8】直管を解体する場合におけるジャッキ用架台の好ましい態様を説明するための図。
【図9】集合管継手を有する管を解体する場合におけるジャッキ用架台の好ましい態様を説明するための図。
【図10】本発明において好ましく使用される配管押上用蓋の斜視図。
【図11】図10の配管押上用蓋または図12の筒状止め具と組み合わせて使用されるネジの概略図。
【図12】本発明において好ましく使用される筒状止め具の斜視図。
【図13】実施例5における給水管の解体方法の施工例(本発明の方法)を説明するための工程図。
【図14】実施例6における給水管の解体方法の施工例(本発明の方法)を説明するための工程図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の方法が適用される建物は、その種類を問わない。例えば戸建住宅、共同住宅(例えばマンション、アパート、老人ホームなど)、宿泊施設(旅館、ホテルなど)、公共施設(例えば学校、役所、病院、駅舎など)、商業施設(例えば百貨店、スーパーマーケットなど)、ビジネスビルなど、およそ上下階または隣接室間に連通する配管を有する建物であれば、本発明の方法を適用することができる。
また、本発明の方法が適用される配管も、その種類を問わない。例えば主として直管からなる給水管、集合管継手を介して連接されてなる排水管などのほか、ガス管などにも適用することができる。
配管を構成する材質としては、例えば鋼管、ステンレス鋼管、鋳鉄管などのほか、亜鉛メッキ鋼管、塩化ビニルライニング鋼管、ポリエチレン粉体塗装鋼管など、現在給排水管またはガス管として使用されているあらゆる材質であることができる。
本発明の方法は、配管の呼び径が20〜150Φ程度の管に適用することができ、すなわち、現在給排水管またはガス管として一般に使用されているすべての配管に適用することができる。
【0010】
本発明の方法は、以下の3つの工程に分けて考えることができる。
(1)配管の切断・除去工程
(2)切断した配管の押上工程
(3)配管の抜取工程
以下、建物の上下階に連結する配管の解体を例として、本発明の方法における3工程について、順に詳説する。
(1)配管の切断・除去工程
本発明の方法においては、先ず、上記の如き配管のうち、隣接するスリーブの中間に位置する部分の一部を上階および下階においてそれぞれ切断して除去する。
ここで、切断・除去する箇所は、隣接するスリーブの間隙、すなわちスパン(階高)部分のうちの任意の場所であることができる。切断・除去する配管の長さは、使用するジャッキの機高および切断した配管の押し上げ方法によって適宜に設定されるベきであるが、例えば360mm以上とすることができる。配管の一部を切断・除去するには、公知の方法によることができる。
なお、後の説明から容易に理解されるように、後述のスリーブ部から配管を引き抜く工程を、配管押上用蓋の耳部ネジ穴に装着した雄ネジの捻じ込みによって行う場合には、配管押上げ後の耳部底面と床面との距離ができるだけ短い方が好ましい。このような観点からこの場合には、配管の上階における配管が、上階床面から配管押上用蓋の本体長さに相当する長さ(またはこれに若干の余裕を加えた長さ)だけ残る位置で切断することが好ましい。
また、下階における切断部はできるだけ天井付近とすることが、配管解体の際にスリーブ部を通過する配管の長さを短くすることができる点で好ましい。
【0011】
(2)切断した配管の押上工程
次いで、切断した配管をジャッキ(加圧機)によって上階方向に押し上げる。
本発明において使用されるジャッキの種類としては、例えば公知の油圧ジャッキ、機械式ジャッキ、パンダ式ジャッキなどを挙げることができる。ジャッキは、機高300〜750mm、ジャッキ能力10〜30ton、ストローク(揚程距離)100〜500mm、重圧面積20〜100cmのものを選択して使用することが好ましい。最も好ましくは機高510mm程度、ジャッキ能力20ton程度、ストローク(揚程距離)350mm程度、重圧面積33.2cm程度のジャッキである。
配管の押上工程は、例えば下記の方法1および方法2のいずれかの方法によって行うことができる。
方法1:切断した配管の上階における端部に、筒状本体と、該筒状本体の片端に該筒状本体と一体に形成された蓋部とを有する配管押上用蓋を装着し、
前記配管内に該配管の長さよりも長い配管押上用パイプまたは棒を下方より挿入し、そして
前記配管押上用パイプまたは棒をジャッキによって押し上げることにより、前記配管押上用蓋を装着した配管を間接的に押し上げる方法、および
方法2:切断した配管の下階における端部をジャッキによって押し上げることにより、配管を直接押し上げる方法。
【0012】
上記方法1において使用される配管押上用蓋は、筒状本体と、該筒状本体の片端に該筒状本体と一体に形成された蓋部とを有する。
配管押上用蓋の筒状本体は、除去すべき配管を囲繞しうる内径の円筒状空洞を有する筒状物である。この円筒状空洞の内径は、除去すべき配管の外径よりも5〜10mmの範囲で大きいものであることが好ましい。筒状本体の外側の形状は、例えば円柱状、楕円柱状、多角柱状などであることができる。多角柱としては、4〜12角柱であることが好ましく、4、6、8または12角柱であることがより好ましい。
配管押上用蓋の筒状本体の外壁の肉厚は、3〜15mmであることが好ましく、3.5〜10mmであることがより好ましい。ここで、筒状本体の外側が楕円柱状または多角形状である場合には上記外壁の肉厚はその測定位置によって異なりうるが、本明細書における筒状本体の外壁の肉厚とはその最小値を意味する。
配管押上用蓋の筒状本体の長さは、除去すべき配管の呼び径によって適宜に設定されるべきであるが、例えば50〜200mmとすることができ、100〜150mmとすることが好ましい。
【0013】
配管押上用蓋の筒状本体は、除去すべき配管を蓋に固定するための配管固定用ネジ穴を有することが好ましい。配管固定用ネジ穴は、筒状本体を上から見た場合に該筒状本体を囲繞する円を想定したときに、該想定円の円周上に略均等に離隔して2〜12点の位置、好ましくは3〜8点の位置からそれぞれ前記想定円の中心に向かう方向に筒状本体の外壁を貫通して形成されることができる。配管固定用ネジ穴は、上記2〜12点、好ましく3〜8点の各方向において、筒状本体の長さ方向に沿って複数個、例えば2〜6個、好ましくは2〜4個ずつ形成されていてもよい。例えば、筒状本体の配管固定用ネジ穴が、前記想定円の円周上に略均等に離隔して4点の位置からそれぞれ想定円の中心に向かう方向に、筒状本体の長さ方向に沿って3個ずつ形成されている場合、この筒状本体は12個の配管固定用ネジ穴を有することになる。
配管固定用ネジ穴のネジ径は、例えば8〜20mmとすることができる。配管固定用ネジ穴と契合して用いられる雄ネジは、配管をより確実に固定するとの観点から、先端が尖ったネジであることが好ましい。
上記筒状本体と一体に形成された蓋部は、後述の配管押上用パイプまたは棒を、除去すべき配管に挿入してこれをジャッキで押し上げる際の「押さえ」としての機能を有し、ジャッキによって発生するパイプまたは棒の移動力を配管へ伝達するためのものである。この蓋部の厚さは、例えば5〜10mmとすることができ、6〜10mmとすることが好ましい。蓋部の形状は、筒状本体の断面と同じ形状であることが好ましい。
配管押上用蓋およびこれとともに使用される雄ネジを構成する材料としては、後述のジャッキによる押し上げの圧力に耐えるものである限り、当業者に公知のものを使用することができ、例えば鉄製、鋼製、アルミニウム製、硬質樹脂製などであることができる。
【0014】
上記配管押上用蓋はさらに、筒状本体の長さ方向に対して垂直に伸び、且つ筒状本体の長さ方向と平行に貫通したネジ穴を有する耳部を有していてもよい。上記耳部のネジ穴にこれと契合する雄ネジを装着することにより、後述の、切断した配管をスリーブから抜き取る工程をより容易、静粛に行うことができることとなる。従ってこの耳部の幅、長さおよび厚さは、上記のような使用に耐える程度の大きさを有するものとすべきである。かかる観点から、耳部の幅としては30〜80mmであることが好ましく、40〜80mmであることがより好ましく;
耳部の長さとしては30〜50mmであることが好ましく;
耳部の厚さとしては15〜50mmであることが好ましい。耳部の底面は、筒状本体の底面と共通面を形成する位置にあることが好ましい。
上記耳部は、筒状本体の長さ方向と平行に貫通したネジ穴を有する。このネジ穴のネジ径は、例えば8〜30mmとすることができ、好ましくは20〜25mmである。耳部の有するネジ穴を契合して用いられる雄ネジは、これを上階の床面に当接させつつ捻じ込んで配管押上用蓋を装着した配管を上方に移動させる機能を有するものである。従ってその長さは、耳部の厚さ、施工箇所のスリーブの厚さ、シンダーコンクリートの厚さ、配管押上げ前の耳部底面と床面との距離および配管押上げ距離の合計よりも長いものであるべきであり、例えば100〜300mmとすることができる。
耳部は、筒状本体を上から見た場合に該筒状本体を囲繞する円を想定したときに、該想定円の円周上に略均等に離隔して2〜8点の位置、好ましくは2〜4点の位置から想定円の外側に向かう方向で形成されることができる。
この耳部を構成する材料は、配管押上用蓋と同じ材料であることができ、配管押上用蓋と一体に形成されていることが好ましい。
【0015】
本発明で用いられる配管押上用蓋の好ましい態様につき、以下に図を参照しつつ説明する。
図10は、本発明において好ましく使用される配管押上用蓋の一例を示す斜視図である。図10の配管押上用蓋は、断面が略八角柱形状を有する筒状の本体と、該本体と一体に形成された蓋部とを有し、さらに筒状本体の長さ方向に対して垂直に伸び、且つ本体の長さ方向と平行に貫通したネジ穴(耳部ネジ穴)を有する耳部を、本体両側の対称位置に2つ有している。これら耳部の底面は、筒状本体の底面と共通面を形成している。
図には示されていないが、本体の底面には除去すべき配管の外径を囲繞しうる内径を有する空洞を有しており、従ってこの本体は筒状である。
図10の配管押上用蓋の筒状本体には、配管固定用ネジ穴が形成されている。図10における配管形成用ネジ穴は、略八角柱状本体の1面おきの4面に本体の長さ方向に沿って各3個ずつ、計12個形成されている。
図11に、図10の配管押上用蓋と組み合わせて使用されるネジの概略図を示した。図11(a)は筒状本体の配管固定用ネジ穴と契合して使用される雄ネジであり、先端が尖ったネジである。図11(b)は耳部ネジ穴と契合して使用される雄ネジであり、耳部の厚さ、施工箇所のスリーブの厚さ、シンダーコンクリートの厚さ、配管押上げ前の耳部底面と床面との距離および配管押上げ距離の合計を超える長さを有する。
【0016】
本発明における方法1においては、切断した配管の上階における端部に、上記のような配管押上用蓋を装着した後、前記配管内に該配管の長さよりも長い配管押上用パイプまたは棒を挿入する。ここで、上記配管押上用パイプまたは棒の外径は、除去すべき配管の内径に対して、40〜80%であることが好ましい。配管押上用パイプまたは棒の長さは、除去すべき配管の長さ、スリーブ部の厚さおよびその他の施工環境によって適宜に設定すべきものであることは当業者には容易に理解できるであろうが、例えば500〜2,000mmとすることができ、1,000〜1,500mmとすることが好ましい。
上記配管押上用パイプまたは棒のうち、強度が高く、軽量である点で、パイプであることが好ましい。この場合、パイプの壁厚は、好ましくは2〜5mmであり、より好ましくは2.5〜4.0mmである。
配管押上用パイプまたは棒の材質としては、後述のジャッキによる押し上げの圧力に耐えるものである限り、当業者に公知のものを使用することができ、例えば鉄製、鋼製、アルミニウム製、ステンレス製、硬質樹脂製などであることができる。
押し上げられる配管が炭素鋼鋼管(SGP)管およびステンレス管(SUS)である場合における、配管押上用パイプの呼び径および壁厚の最も好ましいサイズについて、押し上げられる配管のサイズ(呼び径)ごとに表1に示した。
【0017】
【表1】

【0018】
そして前記配管押上用パイプまたは棒をジャッキによって押し上げることにより、前記配管押上用蓋を装着した配管を間接的に押し上げる。このとき、ジャッキの載置台が配管押上用パイプまたは棒の下端に直接接するように配置して押し上げることで足りるが、適当なアダプターを介してもよい。
【0019】
一方、上記方法2では、切断した配管の下階における端部をジャッキによって押し上げることにより、配管を直接押し上げる。
ここで、ジャッキの載置台が配管端部に直接接するように配置してもよいが、
ジャッキの載置台が、
基部と
上記配管の下端部を支持する支持部と
を有する、配管解体用アタッチメントを介して配管端部に接することとすることが、安定的なジャッキ操作の観点から好ましい。このアタッチメントの基部は、例えば多角形板状、円板状などであることができる。支持部は、配管の下端を効率的に支持しうる形状、例えば円柱形、円筒形などであることができる。ここで、支持部の外径を、旧配管の内径を超え且つ旧配管の外径以下とすることにより、かかる配管解体用アタッチメントを後述のスリーブ非破砕用治具としても機能させることができることとなる。
配管解体用アタッチメントの基部が円板状である場合、その直径は、支持部の直径よりも大きく、さらに解体すべき配管の外径よりも大きいものであることが好ましい。この基部の直径は、配管の外径に対して、1倍を超えて5倍以下であることが好ましく、1.2〜3倍であることがより好ましい。
配管解体用アタッチメントを構成する材料としては、後述のジャッキによる押し上げの圧力に耐えるものである限り、当業者に公知のものを使用することができ、例えば鉄製、鋼製、アルミニウム製、硬質樹脂製などであることができる。
【0020】
本発明において方法2を採用する場合において好ましく使用される配管解体用アタッチメントの態様につき、以下に図を参照して説明する。図1のアタッチメントは、基部1と、支持部2とからなる。基部1は支持部2よりも大きい直径を有する。図1のアタッチメントは、支持部2が円筒形であるが、解体すべき配管が小径のものである場合には、この支持部は図1において直径aで示される中空部分を有さない円柱形状であってもよい。
図1のアタッチメントにおける支持部の高さcに相当する部分は、該アタッチメントを、後述のスリーブ非破砕用治具として機能させる場合に、床板内部に侵入してスリーブ部から配管を押出す役目を有する部分である。従って支持部の高さcは、愉快体におけるスリーブ部の厚さ(スリーブの厚さおよびシンダーコンクリートの厚さの合計値)よりも大きいことが好ましく、例えば15〜30mmとすることができる。基部の高さ(厚さ)は、例えば15〜150mmとすることができる。
配管解体用アタッチメントの各部のサイズおよび形状は、解体すべき配管の種類およびサイズによって適宜に設定すべきである。例えば配管が炭素鋼鋼管(SGP管)またはビニールライニング鋼管(VLP管)であって呼び径が20〜25Φ程度の管を解体する場合、配管解体用アタッチメントの支持部は円柱形であることが好ましい。一方呼び径がこれより大きく、例えば32Φ程度以上である場合、配管解体用アタッチメントの支持部は円筒形であることが好ましい。
SGP管およびVLP管の場合におけるアタッチメント各部の最も好ましいサイズについて、配管サイズ(呼び径)ごとに表2に示した。表2における配管のサイズa〜dは、それぞれ、図1に示したサイズa〜dに対応する。
【0021】
【表2】

【0022】
表2において、呼び径20Φおよび25Φの場合におけるサイズaが0であるとは、支持部が中空部を有さない円柱形であることを意味する。この場合の支持部は2×b(mm)で計算される直径を有する円柱形である。この支持部直径は配管の呼び径以下である。また、aが0ではなく、円筒形である場合についても、支持部の外径(a+(2×b)(mm))は配管の呼び径以下であり、従って表1に示されたサイズを有する配管解体用アタッチメントは、いずれも後述の配管抜取工程において、スリーブ非破砕用治具としても機能することができる。
なお、配管の押上げが配管解体用アタッチメントを介して行われる場合であっても、該方法につき、配管押上用パイプまたは棒を介して押上げを行う方法1との比較において、配管を「直接」押し上げるものと理解することは、当業者の通常の感覚に沿うものであろう。
切断した配管を直接的に、または配管押上用パイプもしくは棒を介して間接的に押上げるに先立って、
上記方法1を採用した場合には、配管に挿入した配管押上用パイプまたは棒の下端に、
方法2を採用した場合には切断した配管の下階における端部に、
それぞれジャッキを装着する。ここで、方法2の場合の配管の下階における端部とは、下階において、配管のうち切断・除去した部分の上側部分、すなわち天井部分から下方へ伸びた配管の端部をいう。
【0023】
方法1および2のいずれの場合であっても、ジャッキの装着に際しては、配管の切断・除去した部分にジャッキを挿入して配管除去部分の下側に残存する部分をジャッキの支持台として利用してもよく、あるいは床面上に適当な架台を設置し、この架台をジャッキの支持台としてもよい。前者の場合には、配管除去部分の下側に残存する配管(下側残存配管)のうちの床面近傍に、下側残存配管がジャッキの加圧によって下方へ押しやられることを防止するための筒状止め具を装着して行ってもよい。安定的な操作を可能とする観点から、ジャッキを適当な架台上に設置するか、あるいは下側残存配管のうちの床面近傍に筒状止め具を装着したうえで残存配管をジャッキの支持台として利用することが好ましい。
ここでジャッキ用架台としては、上記配管除去部分の下側部分を跨いで床上に安定に設置され、さらにジャッキの動作に耐える頑丈さを有しているものであれば、支障なく使用することができる。かかる架台としては、例えば少なくとも天板と、3〜5本程度の脚とを有するものであることができる。これら以外に1枚以上の補強横板を有していてもよい。このジャッキ用架台を構成する材料としては、ジャッキによる押し上げの圧力に耐えるものである限り、当業者に公知のものを使用することができ、例えば鉄製、鋼製、アルミニウム製、硬質樹脂製などであることができる。
図8に、解体される配管が給水管に代表される直管である場合に好ましく使用されるジャッキ用架台の一例を示した。図8(A)の架台は、天板と、3本の脚と、2枚の補強用横板とを有する。3本の脚は、いずれも高さ調整機能を有する。図9には、排水管に代表される、集合管継手を有する管を解体する場合におけるジャッキ用架台の好ましい一例を示した。図8(B)の架台は、図8(A)の架台において、狭い施工場所での作業を容易化する目的で、天板および補強用横板の一部に切り欠きを形成したものである。図9の架台は、天板と、4本の脚とを有する。4本の脚は、いずれも高さ調整機能を有する。図8および図9において、「アルミシリンダー」とは、これらの架台上に設置されたジャッキの下部である。
【0024】
下側残存配管をジャッキの支持台として利用する場合に好ましく使用される筒状止め具は、除去すべき配管の外側を囲繞しうる内径を有する。この筒状止め具の好ましい内径については、配管押上用蓋の筒状本体の内径として上記に説明したところと同様である。筒状止め具の外側の形状は、例えば円柱状、楕円柱状、多角柱状などであることができる。多角柱としては、4〜12角柱であることが好ましく、4、6、8または12角柱であることがより好ましい。
この筒状止め具は、下側残存配管がジャッキの加圧によって下方へ押しやられることを防止するためのものであるから、その外径がスリーブ径よりも大きいものであるか、あるいは配管押上用蓋と略同様の耳部を有しており、該耳部を含めた最大径がスリーブ径よりも大きいものであることが好ましい。
筒状止め具の外径が、スリーブ径よりも大きいものである場合、スリーブ径よりも10〜30mm大きいものであることが好ましく、スリーブ径よりも10〜20mm大きいものであることがより好ましい。
【0025】
筒状止め具が耳部を有するものである場合、該耳部は、筒状止め具の長さ方向に対して垂直に伸びるものであることが好ましい。耳部の数は、2〜8個であることが好ましく、2〜4個であることがより好ましい。この耳部は、筒状止め具を上から見た場合に該筒状止め具を囲繞する円を想定したときに、該想定円の円周上に略均等に離隔した位置から想定円の外側に向かう法線方向に形成されていることが好ましい。複数の耳部の最外端によって規定される仮想の円の直径は、スリーブ径よりも10〜30mm大きいものであることが好ましく、スリーブ径よりも10〜20mm大きいものであることがより好ましい。筒状耳部のその余の好ましい寸法は、配管押上用蓋の耳部について上記したところと同様である。
筒状止め具の耳部は、配管押上用蓋の耳部と同様の耳部ネジ穴を有していてもよい。ネジ穴付きの耳部を有する筒状止め具は、上述の配管押上用蓋と同様に、配管をスリーブから抜き取る工程に有利に適用することができる。筒状止め具を用いるスリーブ抜き取り工程の詳細は後述する。
筒状止め具の長さは、除去すべき配管の呼び径によって適宜に設定されるべきであるが、例えば100〜200mmとすることができ、この範囲でできるだけ長くすることが好ましい。
筒状止め具は、除去すべき配管を筒状止め具に固定するための配管固定用ネジ穴を有することが好ましい。この配管固定用ネジ穴およびこれと契合して使用される雄ネジについては、配管押上用蓋の筒状本体が有するネジ穴およびこれと契合して使用される雄ネジについて上記に説明したところと同様である。
【0026】
このような筒状止め具を、配管の下階における切断・除去部分の下側に残存する配管のうちの床面近傍に装着することにより、配管の残存部分をジャッキの支持台として使用してジャッキを加圧した場合であっても配管の残存部分が下方へ押しやられることがないから、上方の配管の上方向への押上げが効率的且つ確実に行うことができる。
図12に本発明で好ましく使用される筒状止め具の一例を示した。
図12の筒状止め具は、断面が略八角柱形状を有する筒状の本体と、該筒状本体の長さ方向に対して垂直に伸び、且つ本体の長さ方向と平行に貫通したネジ穴(耳部ネジ穴)を有する耳部を、本体両側の対称位置に2つ有している。これら耳部の底面は、筒状本体の底面と共通面を形成している。筒状本体はパイプ状であり、中心孔は等しい直径で上下に貫通している。
図12の筒状止め具の本体には、配管固定用ネジ穴が形成されている。図12における配管形成用ネジ穴は、略八角柱状本体の1面おきの4面に本体の長さ方向に沿って各3個ずつ、計12個形成されている。
図12の筒状止め具と組み合わせて使用されるネジは、図11に示したものと同じである。
【0027】
このようにして配管下端部または架台上にジャッキを設置した後、該ジャッキによって切断した配管を上階方向に押し上げる。ここで、配管を、下階方向ではなく上階方向に押し上げる理由は、排水管においては径の大きい集合管および横方向に向かう配管が床上に位置し、給水管においては床上で横方向に向かう配管があるため、いずれの場合も下方向への抜き取りには適しないからである。
配管を押し上げる速度は、ジャッキの能力およびこれを加圧するポンプの能力に応じて例えば20〜100mm/分とすることができる。
そして、少なくとも切断した配管の最下端部が天井の近傍に達するまで配管をジャッキによって押し上げる。ここで、ストロークの限界までジャッキを延長しても配管の最下端部が所望の高度にまで達しない場合には、ジャッキの載置台と配管との間に適当なジャッキ延長用の補助治具を配置することにより、ジャッキのストロークを超えて配管を押し上げることができる。
【0028】
(3)配管の抜取工程
このようにして、切断された配管は、その下端部が下階の天井近傍に来るまで押し上げることができる。次いで、未だその一部がスリーブ内に存在する配管をスリーブから抜き取ることにより、当該階における配管の解体が完了する。
ここで、当該階の配管解体に先立って行われる上階の配管を解体する際の、「(2)切断した配管の押上工程」において、ネジ穴付きの耳部を有する筒状止め具を使用したか否かによって、配管の抜取方法として取り得る工程が異なる。
上階の配管解体の際の押上工程においてネジ穴付きの耳部を有する筒状止め具を使用した場合には、その下階である当該階の配管解体において該筒状留め具を利用して配管を抜き取ることができる。すなわち、筒状止め具を使用して上階の配管を押し上げ、該配管を抜き取った後、当該階の配管について上記方法1または2のいずれかによって配管押上を行う。次いで、必要に応じて上階に位置する筒状留め具の縦方向の位置を調節したうえ、耳部ネジ穴に装着された雄ネジを上階の床面に当接させつつ捻じ込んで筒状留め具を装着した配管を上方に移動させることによって、配管をスリーブ部から抜き取ることができる。この方法による場合、筒状留め具の耳部ネジ穴には、これと契合する雄ネジを予め(上階における配管への装着前に)装着しておくことが好ましい。
【0029】
一方、「(2)切断した配管の押上工程」においてネジ穴付きの耳部を有する筒状止め具を使用しなかった場合、押上工程において採用した方法によってさらに2つの抜取方法が可能である。なお、押上工程において、ネジ穴付きの耳部を有する筒状止め具を使用した場合であっても、下記のいずれかの方法を採用することが禁止されるものではないことは、明らかであろう。
上記「(2)切断した配管の押上工程」において方法1を採用した場合、切断した配管をスリーブ部から抜き取る工程は、配管が完全にスリーブ部から抜けるまで配管押上用パイプまたは棒の押し上げを継続することによって行ってもよく、あるいは上記配管押上用蓋として耳部を有する配管押上用蓋を使用し、耳部ネジ穴に装着された雄ネジを上階の床面に当接させつつ捻じ込んで配管押上用蓋を装着した配管を上方に移動させることによって行ってもよい。上記いずれの方法によってもスリーブ部は破壊されずに維持される。安定的且つ静寂な施工を可能にする観点から、後者の方法によることが好ましい。
【0030】
上記(2)切断した配管の押上工程において方法2を採用した場合には、配管の最下端部が天井の近傍に達した後、配管をさらに押し上げることによりスリーブ部から抜き取るのであるが、ここでスリーブ部のモルタルをそのまま残すか、あるいはこれを破砕または引き抜き(本明細書において、以下、破砕と引き抜きをまとめて「破砕」という語で表現する。)をするかによって、異なる種類の配管抜き取り用治具を選択し、使用する。
旧配管を解体した後に新たに敷設する配管の径が撤去する配管の径よりも大きい場合には、スリーブ部のモルタルを破砕して大径の新配管のためのスペースを確保する必要がある。かかる場合には、配管の最下端部とジャッキの載置台またはジャッキ延長補助治具の最上部との間に、配管抜き取り用治具として、旧配管の外径を超え且つモルタル部の施工径よりも小さな直径を有するスリーブ破砕用治具を配置して配管を押し上げることにより、スリーブ部から配管を引き抜くと同時にモルタル部を破砕することができる。このスリーブ破砕用治具は、配管の下端部またはその近傍に設置して押し上げの後期にモルタルを破砕することとしてもよく、あるいは配管のうちの天井近傍に設置して押し上げの初期にモルタルを破砕することとしてもよい。
新配管の径が旧配管の径と同じであるか、あるいはこれよりも小さい場合には、スリーブ部のモルタルを破砕する必要はない。かかる場合には、配管の最下端部とジャッキの載置台またはジャッキ延長補助治具の最上部との間に、旧配管の内径を超え且つ旧配管の外径よりも小さな直径を有するスリーブ非破砕用治具を配置して配管を押し上げることにより、モルタル部を破砕することなくスリーブ部から配管を引き抜くことができる。
これらの場合、ジャッキ延長補助治具の直径を上記治具と同等のものとすることにより、特別の治具を使用しなくとも、該ジャッキ延長補助治具自体をスリーブ破砕用または非破砕用の治具として機能させてもよい。また、上述のような好ましいサイズを有する配管解体用アタッチメントを使用することにより、これをスリーブ非破砕用治具として機能させてもよい。
【0031】
以上は、共同住宅の中間階における作業を想定して説明したものであるが、最上階および最下階における配管の解体作業は、上記に説明したところに当業者に自明の変更を加えたうえで、同様にして行うことができる。
このような本発明の方法によって、長時間の騒音および振動の発生を伴うことなく、既設配管を解体することができる。すなわち、本発明の方法においては、配管を切断する際に65〜85dB程度の音および振動が5分間程度発生するほかは、実質的にはジャッキの作動音が発生するのみであり、従来の工法に比べて極めて静寂性に優れるものである。また、施工時間も一戸あたり20〜30分程度であり、従来の工法に比べて工期が大幅に短縮されたものである。
以上、建物の上下階に連結する配管の解体を例として、本発明の方法について説明してきたが、上記した本発明の方法は、「上下階」を「隣接する部屋間」と読み替え、さらに当業者に自明な若干の変更を加えたうえで、建物内の左右または前後に隣接する部屋間に連結する配管にも適用することができる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例によって本発明の方法についてさらに具体的に説明する。
以下の実施例および比較例における音量の測定は、施工場所から2m離れた場所において行った。
なお、以下の実施例においては、説明の便宜上、上階、中央階および下階からなる三層の階を図示して説明したが、実施例における「中央階」が前項までの説明における「下階」に相当する階であることは、当業者には容易に理解されよう。
【0033】
<「(2)切断した配管の押上工程」において方法2を採用した場合の施工例>
実施例1
本実施例は、スリーブ部を破砕する場合の給水管(呼び径50Φ、給水用内面ライニング鋼管)の解体方法の施工例である。
本実施例における工程図を図2に示した。
図2の給水管は、床板に形成されたスリーブ部を介して、上階、中央階および下階に連接していた。スリーブ部において、配管はスリーブモルタルによって床板に固定されており、その上にシンダーコンクリートが敷設されていた(「既存」)。
この配管を解体するにあたっては、先ず中央階および上階において配管中間部分の一部(長さ各約360mm)をそれぞれ切断して除去した。これにより、中央階において切断した配管の下端部と上階において切断した配管の上端部が生成した。ここで、配管に接続されていた横方向に向かう配管も切断して除去すべき配管と予め分離した(「仮設切り替え・配管切断」)。ここで室内横方向への配管は、仮設給水管に接続した。
次いで、切断した配管の中央階における下端部にジャッキ(加圧機)を装着した。ここで、図8に示した如き加圧機設置架台を中央階の床上に配置し、これを支持台としてその上にジャッキを装着した(「加圧機セット・加圧開始」)。図2の「加圧機セット・加圧開始」の図は、ジャッキの加圧を開始し、配管をすでに若干の距離を押し上げた時点の図である。
引き続きジャッキによって配管を押し上げて行き、ジャッキのストロークが不足した後には、ジャッキ延長補助治具を使用して、配管をさらに押し上げた(「ジャッキ延長補助治具セット・加圧開始」)。ここで使用したジャッキ延長補助治具は、旧配管の外径を超え且つモルタル部の施工径よりも小さな直径を有するものであり、スリーブ破砕用の治具として機能した。
そして、配管を引き抜いた後にジャッキ、ジャッキ設置架台およびジャッキ延長補助治具を除去することにより、新規配管スペースを得た(「配管撤去」)。
上記施工の際の、施工時間および各時点における音の発生状況を、図2に合わせて示した。これによると、施工開始からわずか25分で施工が完了し、音の発生の最大値は配管切断の際に90dB未満の音が約5分間発生したほかはジャッキの作動による60dBに満たない音が発生したにすぎなかったことが理解される。
【0034】
実施例2
本実施例は、スリーブ部を破砕しない場合の給水管(呼び径50Φ、給水用内面ライニング鋼管)の解体方法の施工例である。
本実施例における工程図を図3に示した。
図3における「既存」および「仮設切換え・配管切断」は、図2における「既存」および「仮設切換え・配管切断」とそれぞれ同じである。
次いで、スリーブ解体治具を設置しなかったほかは実施例1と同様にジャッキ(加圧機)を設置し(「加圧機セット・加圧開始」)、配管を押し上げて抜き取って新規配管スペースを得た(「ジャッキ延長治具セット・加圧開始」および「配管撤去」)。
上記施工の際の、施工時間および各時点における音の発生状況を、図3に合わせて示した。これによると、施工開始からわずか25分で施工が完了し、音の発生の最大値は配管切断の際に90dB未満の音が約5分間発生したほかはジャッキの作動による60dB未満の音が発生したにすぎなかったことが理解される。
【0035】
比較例1
本比較例は、従来法における給水管(呼び径50Φ、給水用内部ライニング鋼管)の解体方法の施工例である。
本比較例における工程図を図4に示した。
図4における「既存」は図2における「既存」と同じである。図4における「仮設切換え・配管切断」は、配管を切り取った長さが図2の場合よりも長いほかは、図2における「仮設切換え・配管切断」と同じである。
従来法においては、切断した配管をジャッキによって押し上げる代わりに、はつり工具によってスリーブ部のモルタルおよびシンダーコンクリートを破砕して(「ハツリ」)、配管を引き抜いた(「配管撤去」)。
上記施工の際の、施工時間および各時点における音の発生状況を、図4に合わせて示した。これによると、施工に合計45分を要し、その間約36分間にわたって断続的に90dBを超える大音量が発生した(最大99.5dB)。
【0036】
実施例3
本実施例は、スリーブ部を破砕する場合の排水管(呼び径100Φ、排水用内面ライニング鋼管、および特殊集合継手)の解体方法の施工例である。
本実施例における工程図を図5に示した。
図5の排水管は、床板近傍に集合管継手およびこれに接続された専用横引き配管を有し、床板に形成されたスリーブ部を介して、上階、中央階および下階に連接していた(「既存」)。
次いで、中央階および上階において配管の一部(長さ各約360mm)をそれぞれ切断して除去した。これにより、中央階において切断した配管の下端部が生成した。このとき、上階における専用横引き配管も切断して除去した(「配管切断」)。本実施例の場合、配管の切断・除去部分は、集合管継手の直近の上部とした。
次いで、切断した配管の中央階における下端部にジャッキ(加圧機)を装着した。ここで、図9に示した如き加圧機設置架台を中央階の床上に配置し、これを支持台としてその上にジャッキを装着した(「加圧機セット・加圧開始」)。次いで、配管のうちの天井近傍の位置に、スリーブ解体治具を設置し、押し上げ工程の初期においてスリーブを破砕することとした。
そして押し上げ(加圧)を開始して押し上げ初期にスリーブ部のモルタルを破砕し、さらに押し上げを継続してジャッキのストロークが不足した後にはジャッキ延長補助治具およびアタッチメント(配管解体用アタッチメント)を介して配管を押し上げ(「ジャッキ延長補助治具セット・加圧開始」)、配管をスリーブ部から引き抜くことにより、新規配管スペースを得た(「配管撤去」)。
上記施工の際の、施工時間および各時点における音の発生状況を、図5に合わせて示した。これによると、施工開始からわずか25分で施工が完了し、音の発生の最大値は配管切断の際に90dB未満の音が約5分間発生したほかはジャッキの作動による60dB程度の音が発生したにすぎなかったことが理解される。
【0037】
実施例4
本実施例は、スリーブ部を破砕しない場合の排水管(呼び径100Φ、排水用内面ライニング鋼管)の解体方法の施工例である。
本実施例における工程図を図6に示した。
図6における「既存」および「配管切断」は、図5における「既存」および「配管切断」とそれぞれ同じである。
次いで、スリーブ解体治具を設置しなかったほかは実施例3と同様にジャッキ(加圧機)を設置し(「加圧機セット・加圧開始」)、配管を押し上げて抜き取って新規配管スペースを得た(「ジャッキ延長治具セット・加圧開始」および「配管撤去」)。
上記施工の際の、施工時間および各時点における音の発生状況を、図6に合わせて示した。これによると、施工開始からわずか25分で施工が完了し、音の発生の最大値は配管切断の際に90dB未満の音が約5分間発生したほかはジャッキの作動による60dB未満の音が発生したにすぎなかったことが理解される。
【0038】
比較例2
本比較例は、従来法における排水管(呼び径100Φ、排水用ライニング鋼管)の解体方法の施工例である。
本比較例における工程図を図7に示した。
図7における「既存」は、図5における「既存」と同じである。「配管切断」においては、上階における配管のみを切断除去した。
従来法においては、切断した配管をジャッキによって押し上げる代わりに、はつり工具によってスリーブ部のモルタルおよびシンダーコンクリートを破砕して(「ハツリ」)、配管を引き抜いた(「配管撤去」)。
上記施工の際の、施工時間および各時点における音の発生状況を、図7に合わせて示した。これによると、施工に合計45分を要し、その間約36分間にわたって断続的に90dBを超える大音量が発生した(最大98.6dB)。
【0039】
<「(2)切断した配管の押上工程」において方法1を採用した場合の施工例>
実施例5
本実施例は、(2)切断した配管の押上工程において方法1を採用した場合の解体方法の施工例である。
本実施例における工程図を図13に示した。
図13の給水管は、床板に形成されたスリーブ部を介して、上階、中央階および下階に連接していた。スリーブ部において、配管(呼び径40Φ、給水用ライニング管)はスリーブモルタルによって床板に固定されており、その上にシンダーコンクリートが敷設されていた(「既存吸水立管状況」)。
この配管を解体するにあたっては、先ず中央階および上階において配管中間部分の一部(長さ各約2,000mm)をそれぞれ切断して除去した。これにより、中央階において切断した配管の下端部と上階において切断した配管の上端部が生成した。ここで、配管に接続されていた横方向に向かう配管も切断して除去すべき配管と予め分離した(「仮設切り替え・立管切断」)。ここで室内横方向への配管は、仮設給水管に接続した。
次いで、切断した配管の上階における端部に、図10に示した如き配管押上用蓋(トップ治具)を装着した。このとき、配管押上用蓋耳部ネジ穴には雄ネジを装着したが、該雄ネジの下端部は、配管押上用蓋の下部平面から突出しないようにした。さらに、中央階において上方に残存する配管内に下方より配管押上用パイプ(パイプ治具、ステンレス製、呼び径25Φ、壁厚3.0mm、長さ1,500mm)を挿入したうえ、ジャッキ(加圧機)を装着した。ここで、図8に示した如き加圧機設置架台(アンダー治具)を中央階の床上に配置し、これを支持台としてその上にジャッキを装着した(「加圧機・アンダー治具・パイプ治具・トップ治具セット」)。
ジャッキを稼動して配管押上用パイプを押し上げることにより、間接的に配管を押し上げた(「加圧」)。
除去すべき配管の下端が下階の天井付近となるまで押し上げた後、配管押上用蓋の有する耳部のネジ穴に装着された雄ネジを上階の床面(シンダーコンクリート面)に当接させつつ捻じ込み、これにより配管押上用蓋を装着した配管を上方に移動した(「トップ治具による立管引き抜き」)。この操作を継続してスリーブ部から配管を引き抜いた。
その後、ジャッキおよび各種治具を除去することにより、新規配管スペースを得た(「配管撤去」)。
【0040】
実施例6
本実施例は、筒状止め具を使用した場合の解体方法の施工例である。
本実施例における工程図を図14に示した。
図14における「既存給水立管状況」および「仮設切替え・立管切断」は、図13における「既存給水立管状況」および「仮設切替え・立管切断」とそれぞれ同じである。
切断した配管の上階における端部に、図10に示した如き配管押上用蓋(トップ治具)および図12に示した如き筒状止め具(サポート治具)を装着した。さらに、中央階において上方に残存する配管内に下方より、実施例5において使用したのと同様の配管押上用パイプを挿入したうえ、ジャッキ(加圧機)を装着した。このジャッキは、中央階において下方に残存する配管上に直接設置した(「サポート治具・加圧機・パイプ治具・トップ治具セット」)。
そしてジャッキを稼動して配管押上用パイプを押し上げることにより、間接的に配管を押し上げた(「加圧」)。その後は実施例5と同様の操作を行うことにより、新規配管スペースを得た(「トップ治具による立管引き抜き」および「配管撤去」)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の上下階に連通する配管スペース内にスリーブを介して軸方向に連接された配管を解体する方法であって、
配管のうち、隣接するスリーブの中間に位置する部分の一部を上階および下階においてそれぞれ切断して除去し、
切断した配管をジャッキによって上階方向に押し上げ、そして
該切断した配管をスリーブから抜き取る工程
を経ることを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
上記切断した配管をジャッキによって上階方向に押し上げる工程が、
切断した配管の上階における端部に、筒状本体と、該筒状本体の片端に該筒状本体と一体に形成された蓋部とを有する配管押上用蓋を装着し、
前記配管内に該配管の長さよりも長い配管押上用パイプまたは棒を下方より挿入し、そして
前記配管押上用パイプまたは棒をジャッキによって押し上げることにより、前記配管押上用蓋を装着した配管を間接的に押し上げる工程
からなるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記配管押上用蓋が、さらに筒状本体の長さ方向に対して垂直に伸び、且つ筒状本体の長さ方向と平行に貫通したネジ穴を有する耳部を有し、該ネジ穴にはこれと契合する雄ネジが装着されており、そして
前記切断した配管をスリーブから抜き取る工程が、前記配管押上用蓋の有する耳部のネジ穴に装着された雄ネジを上階の床面に当接させつつ捻じ込んで配管押上用蓋を装着した配管を上方に移動させることによって行われるものである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
上記切断した配管をジャッキによって上階方向に押し上げる工程が、
前記切断した配管の下階における端部をジャッキによって押し上げることにより、配管を直接押し上げる工程
からなるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
上記ジャッキの載置台が、
基部と
上記配管の下端部を支持する支持部と
を有するアタッチメントを介して配管端部に接する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
上記ジャッキが、下階の床面上に設置した架台上に設置される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
上記ジャッキが、配管の下階における除去部分の下側に残存する配管の端部上に設置される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
上記切断した配管をジャッキによって上階方向に押し上げ、そして該切断した配管をスリーブから抜き取る工程が、
配管の下階における除去部分の下側に残存する配管のうちの床面近傍に、下側に残存する配管がジャッキの加圧によって下方へ押しやられることを防止するための筒状止め具を装着して行われるものである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
建物の隣接する部屋間に連通する配管スペース内にスリーブを介して軸方向に連接された配管を解体する方法であって、
配管のうち、隣接するスリーブの中間に位置する部分の一部を両部屋においてそれぞれ切断して除去し、
該切断した配管をジャッキによってもう一方の部屋の方向に押し進め、そして該切断した配管をスリーブから抜き取る工程を経ることを特徴とする、前記方法。
【請求項10】
筒状本体と
該筒状本体の片端に筒状本体と一体に形成された蓋部と
を有し、そして請求項2の方法に用いられることを特徴とする、配管押上用蓋。
【請求項11】
筒状本体と
該筒状本体の片端に筒状本体と一体に形成された蓋部と
筒状本体の長さ方向に対して垂直に伸び、且つ筒状本体の長さ方向と平行に貫通したネジ穴を有する耳部と
を有し、そして請求項3の方法に用いられることを特徴とする、配管押上用蓋。
【請求項12】
基部と
除去すべき配管の下端部を支持する支持部と
を有し、そして請求項5に記載の方法に用いられることを特徴とする、配管解体用アタッチメント。
【請求項13】
除去すべき配管の外側を囲繞しうる内径と
スリーブ径よりも大きな外径または
筒状止め具の長さ方向に対して垂直に伸びる2〜8個の耳部と
を有し、そして請求項8の方法に用いられることを特徴とする、筒状止め具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図13】
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【図14】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−256998(P2011−256998A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257102(P2010−257102)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(504273988)株式会社ジャパンリフォーム (3)
【Fターム(参考)】