説明

日時別推薦アイテムフィルタリング方法及び日時別推薦アイテムフィルタリングプログラム

【課題】ユーザがコンテンツにアクセスしてきた日時情報に重みを付加してアイテム推薦を行う日時別推薦アイテムフィルタリング方法及び日時別推薦アイテムフィルタリングプログラムを提供する。
【解決手段】日時別推薦アイテムフィルタリング方法は、日時情報基に、日時重み算出手段が日時重みを算出するステップと、各ユーザの各アイテムに対する評価値を列化したユーザ・アイテム間評価行列をユーザ・アイテム間評価行列作成手段が作成するステップと、ユーザ・アイテム間評価行列重み付け手段が日時重みテーブル記憶部より取得する日時重みを重み付けするステップと、標本ユーザと推薦ユーザ間の類似度を利用者類似度算出手段が算出するステップと、類似度値及び重み付けされた評価値を含む数値を基にアイテム評価推定値算出手段が推定評価値を算出するステップとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザのアクセス曜日や時間帯等に応じて、ユーザの嗜好に応じたアイテムを推薦するための日時別推薦アイテムフィルタリング方法及び日時別推薦アイテムフィルタリングプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
協調フィルタリングとは、多くのユーザの嗜好情報を蓄積し、あるユーザと嗜好の類似した他のユーザの情報を用いて、該当ユーザにアイテムやコンテンツを推薦する技術である。これらの技術は、利用者間型とアイテム間型に分類される。利用者間型は、推薦を受けるユーザ(以下「推薦ユーザ」と記載)と嗜好パターンが似ているサンプルとなるユーザ(以下「標本ユーザ」と記述する)をまず見つけ、その標本ユーザが好むアイテム群を推薦ユーザへの推薦候補とする技術である。利用者間型の実装では、ユーザ同士の類似度を、同じアイテムにつけた評価をピアソン相関、順位相関等の相関係数を用いて表す。また、嗜好の予測には、推薦ユーザに対して類似度の高い標本ユーザを抽出し、そのアイテムへの評価値を、標本ユーザと推薦ユーザ間の類似度で重みを付けし、それらの評価値の加重平均値を嗜好予測として用いる。嗜好予測値の大きなものから、推薦アイテムとして推薦ユーザへの推薦を行う。アイテム推薦の際には、推薦ユーザに提示する表示画面の広さに制約もあるため、小さな予測値を持つアイテムを削除したり、上位3〜10個程度のアイテムを表示するように画面構成を行う。
【0003】
アイテム間型では、不特定多数利用者に同じような評価を受けているアイテムは似ており、関心があるアイテムの類似アイテムに利用者は関心を持つという仮定を置き、推薦ユーザの直近の利用履歴にあるアイテムに類似しているアイテムを推薦するものである。アイテム間型の実装としては、アイテムの利用ユーザの共起性等でアイテム間の類似度を測り、推薦ユーザの直近の利用履歴にあるアイテムの類似アイテムの推薦を行う(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】上嶌敏弘, “推薦システムのアルゴリズム(2)” 人工知能学会誌 23巻1号, pp.89−103, 2008年1月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の手法では、利用者間型の推薦方法を用いる場合、アイテムへの評価値の加重平均値を利用するため、新規アイテムがコンテンツ登録された場合など、新規アイテムへの評価ログが少ない段階においては、新規アイテム以外の他のアイテムの評価値が新規アイテムに比較して大きな値を持つと考えられるため、推薦アイテムとして表示されないという問題があった。
【0006】
また、評価値への加重平均値を利用するため、推薦を受ける曜日や時間帯に応じて、ユーザの志向が変化することに対応させることができなかった。尚、同様の課題は、アイテム間型の推薦方法をとる場合でも起こっていた。
【0007】
本発明の目的は、上記の問題を解決する為になされたものであり、新規アイテムへの評価ログが少ない段階においても、ユーザが推薦を受ける曜日や時間帯等を加味し、新規アイテムについて発見性に富み、かつ的確な推薦を行うことができる日時別推薦アイテムフィルタリング方法及び日時別推薦アイテムフィルタリングプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決する為、本発明の第1の特徴は、(イ)コンテンツにアクセスするユーザの嗜好情報を蓄積し、嗜好情報の類似した標本ユーザの情報を用いて、推薦サーバがアイテムを推薦すべき推薦ユーザにアイテムを推薦する推薦アイテムフィルタリング方法であって、ユーザがコンテンツにアクセスしてきた日、時間帯を含む日時情報を取得し、日時情報基に、日時重み算出手段が日時重みを算出し、日時重みテーブル記憶部に格納するステップと、(ロ)各ユーザの各アイテムに対する評価値を列化したユーザ・アイテム間評価行列をユーザ・アイテム間評価行列作成手段が作成するステップと、(ハ)ユーザ・アイテム間評価行列の評価値に対し、ユーザ・アイテム間評価行列重み付け手段が、日時重みテーブル記憶部より取得する日時重みを重み付けするステップと、(ニ)標本ユーザと推薦ユーザ間の類似度を利用者類似度算出手段が算出するステップと、(ホ)類似度値及び重み付けされた評価値を含む数値を基に、推薦ユーザへの各アイテムの推定評価値をアイテム評価推定値算出手段が算出するステップとを備える日時別推薦アイテムフィルタリング方法であることを要旨とする。
【0009】
本発明の第1の特徴は、更に(ヘ)日時重みを算出し日時重みテーブル記憶部に格納するステップは、ユーザがコンテンツにアクセスしてきた時間が、予め設定される時間に近いほど大きな値となる関数を用いて時間重み算出手段が時間重みを算出するステップと、(ト)ユーザがコンテンツにアクセスしてきた曜日が、予め設定される曜日であれば大きな値となる関数を用いて曜日重み算出手段が曜日重みを算出するステップの少なくともいずれか一つを含み、(チ)日時重みを重み付けするステップは、ユーザがコンテンツにアクセスしてきた時間が、現在時刻に近いほど大きな値となる関数を用いて直近重み算出手段が直近重みを算出するステップを更に備える。
【0010】
本発明の第2の特徴は、請求項1乃至3に記載の日時別推薦アイテムフィルタリング方法を推薦サーバに実行させるための日時別推薦アイテムフィルタリングプログラムであることを要旨とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の日時別推薦アイテムフィルタリング方法及び日時別推薦アイテムフィルタリングプログラムによると、ユーザが推薦を受ける時間帯・平日・休日を加味し、古くから存在するコンテンツの影響を考慮しながら、新規コンテンツに対してでもユーザの嗜好に合わせた的確なアイテムの推薦を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態に係る日時別推薦アイテムフィルタリングシステムの構造を示すシステム図である。
【図2】コンテンツサーバの内部構造を示す図である。
【図3】アクセスログのデータ構造を示す図である。
【図4】推薦サーバの内部構造を示す図である。
【図5】日時重みテーブル記憶装置の内部を示す図である。
【図6】ユーザ・アイテム間評価行列記憶部の内部を示す図である。
【図7】利用者類似度表記憶部の内部を示す図である。
【図8】日時別推薦アイテムフィルタリングシステムの全体動作を示すフロー図である。
【図9】日時重み算出処理の動作を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであることに留意すべきである。
【0014】
(実施の形態)
(日時別推薦アイテムフィルタリングシステム)
本発明の第1の実施の形態に係る日時別推薦アイテムフィルタリングシステム100は、図1に示すように、コンテンツサーバ1、推薦サーバ2、ユーザ端末3a、3b、3c、インターネット回線網4等を備えている。
【0015】
コンテンツサーバ1は、ユーザ端末3a〜3cからコンテンツ要求を受信し、要求されたコンテンツをユーザ端末3a〜3cに返信するサーバである。更に、本発明の実施の形態においてはコンテンツサーバ1は、コンテンツ要求をユーザ端末3a〜3cより受信した際に、推薦サーバ2に当該コンテンツ要求受信の旨を送信し、推薦サーバ2は、当該ユーザが好むと思われる推薦アイテムのデータを当該ユーザのユーザ端末3a〜3cに送信する。
【0016】
推薦サーバ2は、コンテンツサーバ1がユーザ端末3a〜3cからコンテンツ要求を受信した際に、当該ユーザが好むと思われる推薦アイテムを選出し、ユーザ端末3a〜3cに送信する。
【0017】
ユーザ端末3a〜3cは、コンテンツサーバ1や推薦サーバ2と通信を行うユーザが使用するパーソナルコンピュータ等の端末である。ユーザ端末3a〜3cは、コンテンツサーバ1へのコンテンツ要求送信、又コンテンツサーバ1または推薦サーバ2から提供されるコンテンツの表示や再生を行う為の入力装置、出力装置、通信制御装置、CPU、記憶装置、表示装置等を備えている。
【0018】
インターネット回線網4は、アナログ回線、ディジタル回線、PHS回線、携帯電話回線、ケーブル回線等の公衆通信回線網である。インターネット回線網4は、コンテンツサーバ1、推薦サーバ2及びユーザ端末3a〜3c間を接続する。尚、コンテンツサーバ1と推薦サーバ2はインターネット回線網4の他、有線無線の高速専用回線で接続されていても構わない。
【0019】
(コンテンツサーバ)
コンテンツサーバ1は、図2に示すように、入力装置11、出力装置12、通信制御装置13、一時記憶装置14、中央制御装置(以下「CPU」と記載)15、アクセス記憶部16等を備える。
【0020】
アクセス記憶部16は、ユーザ端末3a〜3cからコンテンツサーバ1へのアクセス記録を格納する。アクセス記録部では図3に示すように、コンテンツへのアクセスの一回分が一レコードとして記録し、アクセスのあった「日時」、アクセスしてきたユーザの「ユーザID」、当該ユーザがアクセスした「コンテンツID」等をアクセス記録テーブルとして記憶する。
【0021】
CPU15は、アクセス記録生成手段15a、コンテンツ要求受信手段15b、推薦アイテム要求送信手段15c、要求コンテンツ送信手段15dを備える。CPU15がこれらの手段を適宜実行することでプログラムは実行される。
【0022】
アクセス記録生成手段15aは、ユーザ端末3a〜3cからコンテンツサーバ1へのアクセスがあった際に、そのアクセス記録を作成しアクセス記憶部16に格納する。
【0023】
コンテンツ要求受信手段15bは、ユーザ端末3a〜3cからコンテンツサーバ1へのコンテンツ要求を受信する。
【0024】
推薦アイテム要求送信手段15cは、コンテンツ要求を受信後、要求のあったユーザに適した推薦アイテムを、当該ユーザのユーザ端末に送信するように推薦サーバ2に依頼する。
【0025】
要求コンテンツ送信手段15dは、当該ユーザに要求されたコンテンツを、当該ユーザのユーザ端末3a〜3cに送信する。
【0026】
入力装置11は、キーボード、マウス、又はハードディスク等の外部記憶装置からの入力信号を受信するインタフェースである。出力装置12は、処理結果等を出力するための装置であり、具体的には液晶ディスプレイ、CRTディスプレイ、プリンタ等を指す。通信制御装置13は、外部の装置間においてデータを送受信する為の制御信号を生成する。一時記憶装置14は、演算処理等を行う際に使用する作業用メモリである。
【0027】
(推薦サーバ)
推薦サーバ2は、図4に示すように、入力装置21、出力装置22、通信制御装置23、一時記憶装置24、CPU25、日時重みテーブル記憶部26、ユーザ・アイテム間評価行列記憶部27、重み付けユーザ・アイテム間評価行列記憶部28、利用者類似度表記憶部29等を備える。CPU25は、推薦アイテム要求受信手段25a、ユーザ・アイテム間評価行列作成手段25c、日時重み算出手段25b、ユーザ・アイテム間評価行列重み付け手段25d、利用者類似度算出手段25e、アイテム評価推定値算出手段25f、推薦アイテム回答手段25g等を備える。尚、CPU25がこれらの手段を適宜実行することでプログラムは実行される。
【0028】
日時重みテーブル記憶部26は、図5に示すように、アクセスの「日時」、ユーザを特定する「ユーザID」、コンテンツを特定する「コンテンツID」、日時にて算出される「日時重み」等から構成される日時重みテーブルを格納する。
【0029】
ユーザ・アイテム間評価行列記憶部27は、どのユーザがどのアイテムを何回閲覧したか等によりユーザ毎の各アイテムの評価を保有するユーザ・アイテム間評価行列テーブルを格納する。ユーザ・アイテム間評価行列テーブルは、図6に示すように、各「ユーザID」と各「アイテムID」から構成される表であり、この表内には特定ユーザの特定アイテムに対する評価値が格納される。尚、新規に追加されたアイテムで、当該行列のユーザから未だ評価がなされていないアイテムに対しては「Null」値が格納される。
【0030】
重み付けユーザ・アイテム間評価行列記憶部28は、ユーザ・アイテム間評価行列記憶部27のユーザ・アイテム間評価行列テーブルに格納される各評価値に、日時毎の重み付けを行った結果値(重み付けユーザ・アイテム間評価値)を重み付けユーザ・アイテム間評価行列テーブルとして格納する。
【0031】
利用者類似度表記憶部29は、図7に示すように、ユーザ・ユーザ間の類似度値を格納する利用者類似度テーブルを格納する。
【0032】
推薦アイテム要求受信手段25aは、コンテンツサーバ1より所定ユーザに対する推薦アイテムの送信要求を受信する。
【0033】
日時重み算出手段25bは、ユーザがコンテンツにアクセスしてきた曜日、時間等の日時情報を基に重みを算出し、図5の日時重みテーブル記憶部26内の日時重みテーブルの日時毎に「日時重み」を格納する。日時重み算出手段25bは、時間重み算出手段41、曜日重み算出手段42、直近重み算出手段43を備える。時間重み算出手段41は、ユーザがコンテンツにアクセスしてきた時間が、予め設定される時間に近いほど大きな値となる関数を用いて時間重みを算出する。曜日重み算出手段42は、ユーザがコンテンツにアクセスしてきた曜日が、予め設定される曜日であれば大きな値となる関数を用いて曜日重みを算出する。直近重み算出手段43は、ユーザがコンテンツにアクセスしてきた時間が、現在時刻に近いほど大きな値となる関数を用いて直近重みを算出する。
【0034】
ユーザ・アイテム間評価行列作成手段25cは、図6のユーザ・アイテム間評価行列記憶部27内のユーザ・アイテム間評価行列テーブルを作成する。ユーザ・アイテム間評価値は、どのユーザがどのアイテムを何回閲覧したか等により決定する。
【0035】
ユーザ・アイテム間評価行列重み付け手段25dは、ユーザ・アイテム間評価行列テーブル内のユーザ・アイテム間評価値に重み付け処理を行う。重み付け処理は図5の日時重みテーブル記憶部26に格納される日時重み値をユーザ・アイテム間評価値に対して加算、乗算等することで行われ、この結果、重み付きユーザ・アイテム間評価値が算出される。
【0036】
利用者類似度算出手段25eは、二人のユーザが共通に評価したアイテムにはピアソン相関関係があるとの前提により、二人のユーザ間の類似度を所定数式を用いて算出し、利用者類似度表記憶部29内の利用者類似度テーブル内に格納する。所定数式については後述する。
【0037】
アイテム評価推定値算出手段25fは、ユーザ類似度値や重み付きユーザ・アイテム間評価値を基に、所定数式を用いて、推薦ユーザへの各アイテムの推定評価値を算出する。各アイテムとは、新規アイテムも含めた全てのアイテムを指す。
【0038】
推薦アイテム回答手段25gは、算出された各アイテムの推定評価値を昇順ソートし、推定評価値の高いもの、すなわち推薦ユーザが好むと推測されるものの上位いくつかを推薦アイテムとしてユーザ端末3a〜3cに対して送信する。
【0039】
尚、その他の装置21〜24についてはコンテンツサーバ1と同様であるため説明を省略する。
【0040】
(日時別推薦アイテムフィルタリングシステムの動作)
次に、日時別推薦アイテムフィルタリングシステム100の動作について図8のフローチャートを用いて説明する。
【0041】
(a)ステップS101においては、コンテンツサーバ1がユーザ端末3a〜3cの内のあるユーザaよりコンテンツ要求を受けると、当該ユーザaに相応しい推薦アイテムを送信するよう推薦サーバ2へ要求する。推薦サーバ2の推薦アイテム要求受信手段25aは、コンテンツサーバ1からのこのユーザaに対する推薦アイテムの要求を受信する。
【0042】
(b)ステップS102においては、日時重み算出手段25bが日時の重みを算出する。本算出処理については後に詳述する。次に、ステップS103において、ユーザ・アイテム間評価行列作成手段25cが、図6に示すユーザ・アイテム間評価値行列Sを作成する。ユーザ・アイテム間評価値行列Sとは、n人の全ユーザの集合(x={1,2,…,n})を行、m種類の全アイテムの集合(y={1,2,…,m})を列としたもので、ユーザiのアイテムjへの評価値Sijを要素とする行列である。ユーザ・アイテム間評価行列作成手段25cは、図3のアクセス記憶部16に格納されるアクセス記録テーブルレコードをコンテンツサーバ1から送信してもらい、アクセス記録テーブルレコード一行毎に、Sijの値を、ユーザiがアイテムjを閲覧済みならば「+1」とし、未閲覧ならば「Null」とする。複数回の閲覧についてもその回数に応じて、Sijの値を増加させる。また、すべてのSijに対して、対数関数等の増加関数を適用し、閲覧回数の極端に大きなアイテムSijについては、圧縮を行うようにしてもよい。
【0043】
(c)ステップS104においては、ユーザ・アイテム間評価行列重み付け手段25dが、ユーザ・アイテム間評価値行列Sに対して、図5の日時重みテーブル記憶部26の日時重みを式1のように付加する処理を行う。
【0044】
Sij =Sij+wj …(式1)
このように重みを付加することで、ユーザ・アイテム間評価値行列Sに対して、日時重みを反映させることができる。尚、本計算では重みの加算を行っているが、未閲覧Sijの値を「1」等とし、重みを乗算して求めることも可能である。
【0045】
(d)ステップS105においては、利用者類似度算出手段25eが、下記のピアソン相関係数を用いた式2を用いて推薦ユーザaと標本ユーザi間の類似度値ρaiを算出する。
【数1】

【0046】
ただし、式2において、Yaiはユーザaとユーザiの二人が共通に評価したアイテムの集合、即ち下記の式3を満たすものとする。式4はYaiにおけるユーザa及びユーザiの評価値の平均である。
【0047】
Yai =Ya ∩ Yi …(式3)
【数2】

【0048】
尚、|Yai|≦1、即ちユーザaとユーザiが共通に評価したアイテムが1つ以下ならば、ピアソン相関は計算できないので、ρai=0とする。またsi’はYaiにおけるユーザiの評価値の平均値である。
【0049】
(e)ステップS106においては、アイテム評価推定値算出手段25fが、推薦アイテムを受けるユーザaのアイテムjへの評価値の推定値Sajを、式2で求めた類似度値ρaj等を用いて下記の式5を用いて算出する。
【数3】

【0050】
ただし、Xjはアイテムjを評価済みのユーザの集合である。ここで

はYiにおけるユーザiの評価値の平均であり、次式で計算できる。
【数4】

【0051】
尚、a∈Xjなる状況では、Sajの推定が不要になるので想定しなくてもよい。
【0052】
(f)ステップS107においては、推薦アイテム回答手段25gが、アイテムj毎の推定値Sajを昇順ソートし、ステップS108において、推定値Sajが高い、上位の数アイテムからユーザaの推薦アイテムを選択し、推薦アイテム要求の回答結果として、ユーザaのユーザ端末3a〜3cに対して返信する。
【0053】
尚、本実施の形態においてはユーザ・アイテム間評価行列を用いて推薦アイテムへの評価値を求めているが、アイテム・アイテム間評価行列を用いて推薦アイテムへの評価値を求めるようにすることも可能である。
【0054】
(日時重み算出処理)
次にステップS102の日時重み算出手段25bによる日時重み算出処理について図10のフローチャートを参照して詳細に説明する。
【0055】
(a)ステップS201において、コンテンツサーバ1に図2のアクセス記憶部16に格納されるアクセス記録データを送信依頼し、当該アクセス記録データを受信する。ステップS202においては、時間重み算出手段41が時間の重みwhを算出する。時間の重みwhは、ユーザに対する当該アイテムを推薦すべき時間帯であり、コンテンツ経営者等のサービス側が予め設定しておくものとする。例えば、ある推薦アイテムの推薦時間帯を平日午前10〜12時と設定しているとすると、アクセス記録データ毎にこの時間の重みwhを算出する。まず、式7を用いて正規化された時刻xの値を求める。xの値域は、0≦x≦1となる。
【0056】
x=(アクセス時刻hh時 −11)/24+0.5 …(式7)
例えば、図3のアクセス記録データ内のアクセスログ31「2010-0320-20:13:50」について説明すると、アクセス時間が20時であるため、x=0.875となる。次に正規化された時刻xを式8の窓関数に投入し数値解析を単純化する。
【0057】
wh(x) = 0.355768−0.487396 cos2πx +0.144232 cos4πx−0.012604 cos6πx …(式8)
式8により時間の重みwhが算出される。尚、アクセスログ31の20時の場合の時間の重みwh (0.875)は0.02となる。wh(x)はナットール窓関数で、x=0.5で最大値1.0であり、x=0.5を中心になだらかに減少する関数である。xの値域は、0≦x≦1となる。尚、本実施の形態では窓関数としてナットール窓関数を例示したが、他にも、ハミング窓、ハニング窓等を選択可能である。選択においては、時間帯において、アクセスログ同士の重みの差をつけたい場合は急激に減衰する窓関数を用いればよいし、あまり重み差をつけたくない場合は、なだらかな減衰を持つ窓関数を用いればよい。
【0058】
(b)次にステップS203において曜日重み算出手段42が曜日単位の重みを算出する。曜日hの算出には式9のツェラーの公式を用いる。
【数5】

【0059】
式9では、求めたい日の年の千位と百位の連続の数字(例えば2310年ならば23)をJ、年の下2桁(年 mod 100)をK、月をm、日をq、と代入することで曜日hが得られる。ただし、求めたい日の月が1月、2月の場合はそれぞれ前年の13月、14月とする(例えば、2007年1月1日なら2006年13月1日とする)。この結果、hが0なら土曜日、1なら日曜日、2なら月曜日、3なら火曜日、4なら水曜日、5なら木曜日、6なら金曜日と西暦から曜日を算出することができる。式3にアクセスログ31「2010-0320-20:13:50」を代入すると、h=0となり、土曜日であることが分かる。
【0060】
曜日の重みwdayとしては、例えば平日を重く、休日を軽く設定する場合には、
wday =1 (if h=2,…,6) …(式10)
wday =0.25 (if h=0,1) …(式11)
式10のように平日の重みを1、式11のように休日の重みを0.25とする。重み値wdayは自由に設定可能であり、各国の祭日・休日についても考慮に入
れて、たとえ平日であっても休日として重みを付けても良い。また、休日・平日で更に重み差をつけたい場合は、平日=1、休日=0.01のように設定する。尚、アクセスログ31だと土曜日なので重みwdayは0.25となる。
【0061】
(c)次にステップS204において、直近重み算出手段43が直近アクセスに対する重みw_nowを設定する。直近重みw_nowにはまず式12を用いて正規化されたxを算出する。
【0062】
x = (該当タイムスタンプ‐最古タイムスタンプ)/(最新タイムスタンプ‐最古タイムスタンプ) …(式12)
式12は、アクセスログの各タイムスタンプについてもっとも古いタイムスタンプだと0、もっとも最新のタイムスタンプであると1.0となるよう正規化された時刻xを求める。たとえば、図3のアクセスログ31が該当タイムスタンプ、アクセスログ32が最古タイムスタンプ、アクセスログ33が最新タイムスタンプだとすると、
x =24時間5秒÷25時間42分≒0.93となる。このxを式13の増加関数に投入する。
【0063】
w_now=f(x) (0≦x≦1)…(式13)
尚、fは適当な増加関数であり、直近のログを重視する場合はx^3などの関数を用いればよい。例えば、f(x^3)である場合、図3のアクセスログ31の場合、w_now=(0.93)^3≒0.8となる。
【0064】
(d)次にステップS205において、求められたすべての重みを式14のように乗算し、ログの重みwを求める。
【0065】
w= wh*wday*w_now …(式14)
図3のアクセスログ31の場合w= 0.02*0.25*0.8=0.004となる。
【0066】
尚、本発明の実施の形態においては時間重み、曜日重み及び直近重みの全てを用いて重み計算をしているが、アイテム推薦の設定に応じて使用する重みの種類は適宜選択可能である。
【0067】
最後にステップS206において、算出された重みwは、図5の日時重みテーブル記憶部26に格納される。
【産業上の利用可能性】
【0068】
このように、本発明によると、ユーザが推薦を受ける時間帯・平日・休日を加味し、古くから存在するコンテンツの影響を考慮しながら、新規コンテンツに対してでもユーザの嗜好に合わせた的確なアイテムの推薦を行うことができる。
【符号の説明】
【0069】
1…コンテンツサーバ
2…推薦サーバ
3a、3b、3c…ユーザ端末
4…インターネット回線網
11…入力装置
12…出力装置
13…通信制御装置
14…一時記憶装置
15…CPU
15a…アクセス記録生成手段
15b…コンテンツ要求受信手段
15c…推薦アイテム要求送信手段
15d…要求コンテンツ送信手段
16…アクセス記憶部
21…入力装置
22…出力装置
23…通信制御装置
24…一時記憶装置
25…CPU
25a…推薦アイテム要求受信手段
25b…日時重み算出手段
25c…ユーザ・アイテム間評価行列作成手段
25d…ユーザ・アイテム間評価行列重み付け手段
25f…アイテム評価推定値算出手段
25g…推薦アイテム回答手段
25i…利用者類似度算出手段
26…日時重みテーブル記憶部
27…ユーザ・アイテム間評価行列記憶部
28…ユーザ・アイテム間評価行列記憶部
29…利用者類似度表記憶部
31、32、33…アクセスログ
41…時間重み算出手段
42…曜日重み算出手段
43…直近重み算出手段
100…日時別推薦アイテムフィルタリングシステム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテンツにアクセスするユーザの嗜好情報を蓄積し、前記嗜好情報の類似した標本ユーザの情報を用いて、推薦サーバがアイテムを推薦すべき推薦ユーザにアイテムを推薦する推薦アイテムフィルタリング方法であって、
前記ユーザがコンテンツにアクセスしてきた日、時間帯を含む日時情報を取得し、前記日時情報基に、日時重み算出手段が日時重みを算出し、日時重みテーブル記憶部に格納するステップと、
各ユーザの各アイテムに対する評価値を列化したユーザ・アイテム間評価行列をユーザ・アイテム間評価行列作成手段が作成するステップと、
前記ユーザ・アイテム間評価行列の前記評価値に対し、ユーザ・アイテム間評価行列重み付け手段が、前記日時重みテーブル記憶部より取得する前記日時重みを重み付けするステップと、
前記標本ユーザと前記推薦ユーザ間の類似度を利用者類似度算出手段が算出するステップと、
前記類似度値及び重み付けされた前記評価値を含む数値を基に、前記推薦ユーザへの各アイテムの推定評価値をアイテム評価推定値算出手段が算出するステップと、
算出された前記各アイテムの推定評価値の内、推薦アイテム回答手段が前記推定評価値の高いものを推薦アイテムとして前記推薦ユーザに回答するステップ
とを備えることを特徴とする日時別推薦アイテムフィルタリング方法。
【請求項2】
前記日時重みを算出し日時重みテーブル記憶部に格納するステップは、
前記ユーザがコンテンツにアクセスしてきた時間が、予め設定される時間に近いほど大きな値となる関数を用いて時間重み算出手段が時間重みを算出するステップと、
前記ユーザがコンテンツにアクセスしてきた曜日が、予め設定される曜日であれば大きな値となる関数を用いて曜日重み算出手段が曜日重みを算出するステップ
の少なくともいずれか一つを含むことを特徴とする請求項1に記載の日時別推薦アイテムフィルタリング方法。
【請求項3】
前記日時重みを重み付けするステップは、
前記ユーザがコンテンツにアクセスしてきた時間が、現在時刻に近いほど大きな値となる関数を用いて直近重み算出手段が直近重みを算出するステップ
を更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の日時別推薦アイテムフィルタリング方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の日時別推薦アイテムフィルタリング方法を推薦サーバに実行させるための日時別推薦アイテムフィルタリングプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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