説明

昇華転写プリント繊維製品

【課題】高吸水性を保持すると共に、繊維製品の表面に立体視現象が発現できる3次元ステレオグラムを含む絵柄を細部に至るまで鮮明且つ明確に絵付け可能とする。
【解決手段】マイクロファイバー1を用いた生地2に平行法や交差法により裸眼で立体視現象を発現する絵柄や、アナグリフ画像の3次元ステレオグラムを含む絵柄3を昇華転写プリントして表現している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明はマイクロファイバーよりなる繊維製品の表面又は/及び裏面に3次元ステレオグラムを含む絵柄が昇華転写プリントされた昇華転写プリント繊維製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
3次元ステレオグラムの絵柄は、焦点の遠近操作(平行法)や見方(交差法)で見えなかった立体像が浮き上るように脳に認識させたり、アナグリフ画像を左右のレンズに異なる方向の偏向フィルターが取り付けられた3D眼鏡(青赤メガネ)を通して脳で立体映像が再現されるようにしている。
従来、3次元ステレオグラムを含む絵柄は紙面に施されて書籍やポスターとして、また、テレホンカード、ネクタイ、皿、団扇等の模様として製品化されていた。これら製品の3次元ステレオグラムを含む絵柄は一般的にはグラビア印刷法、スクリーン印刷法等を用いて印刷されていた。
電気製品、化粧品容器、文房具等の立体物の平滑な表面に3次元ステレオグラムの絵柄を設けることに関し、ベースフィルム、剥離層、3次元ステレオグラムを含む絵柄が印刷された印刷層、及びアクリル樹脂系接着層が重合された転写シートを使用し、立体物表面にアクリル樹脂系接着層側を密着し、80℃〜260℃の温度及び圧力50〜200Kg/mに条件設定した耐熱弾性体によりベースフィルム側から転写シートを加熱及び加圧し冷却後、ベースフィルムを剥離することで立体物表面に3次元ステレオグラムを含む絵柄を転写することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に開示の3次元ステレオグラムを含む絵柄が絵付けされた立体物であると、複数層からなる転写シートを加圧及び加熱手段により立体物表面に転写しているので、合成樹脂製板等の平滑面には3次元ステレオグラムを含む絵柄の絵付けが可能である。一般的に、繊維製品は撚糸を織成或は編んで成るため表面に毛羽や起伏を有する。特許文献1に開示の3次元ステレオグラムを含む絵柄の転写方法を繊維製品に適用すると、接着層が繊維表面に完全に密着できない。3次元ステレオグラムの絵柄は多数のドットや繰り返される細かい線図等からなり、繊維製品の表面に緻密な絵柄が表現できなければ立体視が発現することは困難であり、仮に転写できたとしても洗濯により転写部が部分的に剥離するという問題点があった。
3次元ステレオグラムの絵柄を起こした型紙を敷物の表面に当て、染料をなぞって絵柄を出す捺染方法により3次元ステレオグラムの絵柄を表現した敷物や、生地に対し直接機械から染料をジェット式に噴射して3次元ステレオグラムの絵柄を表現した敷物が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特許文献2に開示の発明は、繊維の表面に染料を付着させているため、繊維の凹凸により図柄が不鮮明になり、実際には立体視現象が発現できないという問題点があった。
【特許文献1】特開平8−258497号公報
【特許文献2】実開平7−25885号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本願発明は上記従来技術の有する問題点に鑑みて創案されたものであって、繊維製品の表面に立体視現象が発現できる3次元ステレオグラムを含む絵柄を細部に至るまで鮮明且つ明確に絵付け可能で、絵柄が洗濯によっても退色、変色することなく、しかも絵付けされた繊維製品が高吸水性を有し繊維製品としての実用性を有する昇華転写プリント繊維製品提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載の発明は、マイクロファイバーよりなる繊維製品の表面又は/及び裏面に、3次元ステレオグラムを含む絵柄を昇華転写プリントして立体視現象を発現してなることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、マイクロファイバーが、断面放射状に複数の突条を長さ方向に沿って有してなるシック部と、前記突条間に形成された条溝に対応する形状のシン部とよりなり、シン部が前記突条間に隙間を介して配設され、シック部とシン部とよりなる単糸の細さが0.005〜0.60デニールの複合糸であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本願発明は単に染料を生地に染み込ませた従来のプリントと異なり、マイクロファイバーの隙間にインクを定着させているため緻密で高解像度の3次元ステレオグラムを含む絵柄を生地表面に表現でき、紙面に印刷した3次元ステレオグラムを含む絵柄と同様に立体視現象が発現できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
繊維製品をシック部とシン部とを隙間を介して構成された複合糸を用いた繊維製品に昇華転写することで、転写紙上の染料が隙間に入り込んで封じ込められることで、インクを繊維製品に定着させ、繊細な絵図である3次元ステレオグラムを含む絵柄を繊維製品の表面に表現することを実現した。
【実施例1】
【0007】
図1〜図3に基いて昇華転写プリント繊維製品を説明する。図1は昇華転写プリント繊維製品の表面図、図2は昇華転写プリント繊維製品に使用する繊維の斜視図、図3は昇華転写プリント繊維製品に使用する繊維の断面図である。これらの図において、マイクロファイバー1を用いた生地2に3次元ステレオグラムを含む絵柄3を昇華転写プリントして表現している。3次元ステレオグラムを含む絵柄3は、平行法や交差法により裸眼で立体視現象を発現する絵柄や、アナグリフ画像をいう。
【0008】
製造方法について説明する。図2及び図3に示すように、シック部4はナイロンよりなり、断面から視て糸の軸心を中心として周方向に複数の突条5が所定間隔離隔して配設されている。シン部6はポリエステルよりなり、シック部4の隣り合う突条5、5間の形状に対応した楔状に形成されている。マイクロファイバー1は、シック部4の突条5、5間にシン部6が隙間7を介して配設され、シック部4とシン部6とでナイロンとポリエステルからなる複合糸を構成している。ナイロンとポリエステルからなる複合糸であるマイクロファイバー1は、単糸の細さが0.05〜0.1デニールの超々極細糸であることが好適である。実施例1では、ナイロンが20%でポリエステルが80%の複合糸であるマイクロファイバー1を用いて織成した織物を生地2として用いている。より詳しくは、生地2は、0.1デニールのナイロンとポリエステルの複合マイクロファイバー1を用いて1平方インチ当たり200万本のパイルが表面及び裏面に表出したタオル織物を使用している。尚、生地2はタオル織物に限定せず、ナイロンとポリエステルの複合マイクロファイバー1を用いていれば平織り、綾織、朱子織等の織物であると、編物であるとを問わない。
スキャナーで3次元ステレオグラムを含む図柄をコンピュータに取り込み、取り込まれた画像をデジタルデータに変換し、取り込んだ画像をプリンターでインクジェットによりインク出力360dpiでインク出力60%の画像が反転した転写紙を製造する。生地2の表面に転写紙の印刷層側を当接し、ゴム板及び金属板を重合載置して約200℃の温度と圧力50〜200Kg/mを加えたる後、常温環境下に放置して自然冷却し、転写紙を生地2の表面から剥離する。生地2の表面にはスキャナーで取り込んだ3次元ステレオグラムを含む絵柄3が鮮明に印刷されている。生地2の周縁は縁飾り用レースや解れ止め縫い等の解れ防止手段8を施している。尚、生地2の表面若しくは裏面に3次元ステレオグラムの絵柄の他に、2次元バーコードを印刷することで使用者が携帯電話からアクセス可能にすることができる。
【0009】
両面に3次元ステレオグラムを含む絵柄3を表現する場合は、金属板上に印刷層が上側になるように転写紙を載置し、転写紙上に生地2を載置し、生地2の表面側に別の転写紙の印刷層側を当接して重合載置し、更に金属板を載置する。このように、生地2を2枚の転写紙と金属板とでサンドイッチ状に挟持した状態下で、約200℃の温度と圧力50〜200Kg/mを加え、その後常温下に放置して自然冷却し2枚の転写紙を生地2の表裏面から夫々剥離する。生地2の表面及び裏面にはスキャナーで取り込んだ3次元ステレオグラムを含む絵柄3が夫々鮮明に印刷されている。
【0010】
次に作用及び効果について説明する。
複合糸であるマイクロファイバー1はシック部4とシン部6との間に設けられた隙間7に気化した転写紙の印刷層のインクが入り込み、冷却により隙間にインクを封着するため3次元ステレオグラムに不可欠な緻密な絵柄が生地2の表面に表現できる。又、生地2は0.1デニールのナイロンとポリエステルの複合糸を使用して1平方インチ当たり200万本以上のパイルを表裏面に密生させているので柔らかく肌触りが滑らかで表裏面が平坦で、ナイロンの親水性と密生したパイルの毛細管現象により綿100%タオルの2倍以上(ラローズ法で実験)の吸水量と速度で水分を素早く多量に吸収し、しかも3次元ステレオグラムで遊びにも使用することが出来るという効果がある。
【0011】
上述の実施例では織物に転写する場合を例に説明したが、ナイロンとポリエステルの複合マイクロファイバー1を用いて形成された編物を身頃の全体若しくは一部に用いたスウエットシャツに3次元ステレオグラムを含む絵柄を昇華転写プリントすることも本願発明には包含される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】3次元ステレオグラムの絵柄をプリントした昇華転写プリント繊維製品の表面図である。(実施例1)
【図2】マイクロファイバーの斜視説明図である。(実施例1)
【図3】マイクロファイバーの拡大断面図である。(実施例1)
【符号の説明】
【0013】
1 マイクロファイバー
3 3次元ステレオグラムを含む絵柄
5 突条
7 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロファイバーよりなる繊維製品の表面又は/及び裏面に、3次元ステレオグラムを含む絵柄を昇華転写プリントして立体視現象を発現してなることを特徴とする昇華転写プリント繊維製品。
【請求項2】
上記マイクロファイバーが、断面放射状に複数の突条を長さ方向に沿って有してなるシック部と、前記突条間に形成された条溝に対応する形状のシン部とよりなり、
該シン部が前記突条間に隙間を介して配設され、
前記シック部と前記シン部とよりなる単糸の細さが0.005〜0.60デニールの複合糸であることを特徴とする請求項1に記載の昇華転写プリント繊維製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−256511(P2011−256511A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145583(P2010−145583)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【出願人】(503078346)織江株式会社 (2)
【Fターム(参考)】