説明

昇華転写装置

【課題】ノボリやフラッグ等を布によって簡単に製造することのできる昇華転写装置を、簡単な構成によって提供すること。
【解決手段】内部に組み込んだ発熱体21によって表面が所定温度に加熱される発熱駆動ローラ20と、複数の従動ローラ31とを機枠にそれぞれ平行に組み付けて、各従動ローラ31と発熱駆動ローラ20との間に無端ベルト40を掛装し、この無端ベルト40によって、昇華インキを印刷したフィルムFと昇華転写されるべき布Cとを発熱駆動ローラ20に向けて送り込むようにしたこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、昇華転写装置に関し、特に、布に所定の模様を昇華転写するための昇華転写装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年においては、店頭の宣伝媒体として、風によって動きしかも大きな物として形成できて人の目を引くことができることから、布製のノボリやフラッグが大量に使用されてきている。そして、このような布製のノボリやフラッグについては、大型店舗では大量に使用されるようになってきているし、新製品の販売サイクルや宣伝期間が短くなってきている状況に応じて、短期に製造し納入しなければならないものとなってきている。また、このような布製のノボリやフラッグについて、その宣伝効果をより高めるようにするため、例えば製品そのものを多色印刷したものとする要望も高まってきている。
【0003】
従来の布製ノボリやフラッグは、その大きさにあった一枚一枚の布について、単色か精々二色の印刷、あるいはその繰り返しを行って形成していたのであるが、それでは手間も掛かって納期に間に合わず、しかも宣伝したい製品そのものを、「階調印刷(グラデーション)」を含む複雑なカラー印刷するといった高度な印刷はできなかったのである。
【0004】
このため、本発明者は、布製のノボリやフラッグとするためには、印刷すべき材料布として、個々に裁断したものではなく長尺なものを採用すれば連続印刷が行え、単品印刷に較べれば、作業効率が格段に向上すると考えたのである。
【0005】
長尺な布を採用して印刷しようとすると、当然、印刷インクが問題となるが、本発明者は、そのような場合に「昇華インキ」が適していると考えて、これを使用した昇華転写法を採用した印刷機を開発しようとしてきたのである。つまり、この昇華転写インクを採用した昇華転写機は、「昇華インキ」による印刷を施した長尺なフィルムを長尺な布生地に重ねて無端ベルトにより搬入し、これらに熱と圧力を加えて転写印刷するという構想を有したものである。
【0006】
ところが、長尺なフィルムと布とを重ねて機内に搬入するには、これらのフィルム等が蛇行しないようにしなければならない。何故なら、フィルムと布とが蛇行すると、これらは単品のものとは異なって長尺なものであるため、正確な印刷ができなくなるからである。
【0007】
また、昇華転写インクは、布だけに転写されれば全く問題ないが、昇華した染料はガス化しているため、布とは別の方向、例えば搬送のための無端ベルト側にも放散してこれに付着することがある。そうなると、昇華インクが付着した無端ベルトによって布の次の部分を送り込むとき、これに付着していた昇華インクが「汚れ」となって布に付着するおそれもあり得ることが判明したのである。
【0008】
そこで、発明者は、まず、これらの長尺なフィルムや布が蛇行しないようにする技術としてはどのようなものがあるかを検討してきた結果、例えば特許文献1〜特許文献3に示されているような技術を見出した。
【特許文献1】特開平09−110229号公報、要約、代表図
【特許文献2】特開2001−096551号公報、要約、代表図
【特許文献3】特開2004−279523号公報、要約、代表図
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載された発明は、「ベルトの寿命を損なわず、かついかなる仕様のものでもベルトの蛇行を的確に抑制する」ことを目的としてなされた「無端ベルト式搬送装置」に関するもので、本発明に係る昇華転写装置に適用できそうである。
【0010】
ところが、この特許文献1の「無端ベルト式搬送装置」では、図6に示すように、「転写ベルト10が巻き掛けられた駆動ローラ11、張力付与ローラ12および2つの従動ローラの13うち、駆動ローラ11を除く3つのローラ12、13、13を軸方向に対して傾動可能に支持し、その傾動によってローラ12、13、13に対する転写ベルト10の接触圧を軸方向の一端側に偏らせることにより、転写ベルト10の蛇行を修正するようにした」ものであり、「複数のローラが傾動するので蛇行調整幅が広くなり、かつベルト寿命を損なうことがない」といった効果が得られると考えられるが、「ローラ12、13、13を軸方向に対して傾動可能に支持」することは、装置全体の構成を複雑にしてしまうと考えられる。
【0011】
また、特許文献2には、「感光体ベルトや中間転写ベルトなどの無端状ベルトに対して寄り止め部材を容易に精度良く位置決めして配設させることができる無端状ベルトの製造方法及び無端状ベルト、並びに、該無端状ベルトを用いた画像形成装置を提供すること」を目的としてなされた「無端状ベルト」が提案さている。
【0012】
この特許文献2に示された発明は、図7にも示すように、「回転する円筒状型の内周面上に液状樹脂を供給して遠心成形法により無端状ベルトを成形した後、該無端状ベルトの内周面上に、該無端状ベルトの回転時における蛇行を防止するための寄り止め部材6を配設して構成された無端状ベルトの製造方法であって、上記無端状ベルトの内周面上に設けられる被嵌合部に嵌合して、該無端状ベルトに対する上記寄り止め部材6の配設位置を位置決めするための嵌合部を、該寄り止め部材6に設ける一方、上記円筒状型により該無端状ベルトを成形する際に、該円筒状型に形成した該無端状ベルトの被嵌合部に対応する形状の雌型によって、該無端状ベルトの内周面上に設けられる被嵌合部を同時に成形すること」を特徴とするものであり、この「無端状ベルト」は「蛇行を防止するための寄り止め部材6を配設して構成された」ものであるが、この「寄り止め部材6」の断面形状が図7に示すような複雑形状のものであるため、長尺な布の搬送を阻害し却って蛇行を起こす可能性があると考えられる。
【0013】
さらに、特許文献3には、「縁部を補強する補強部材が貼付された合成樹脂製中間転写ベルトにおいて、補強部材の貼付部分がラッパ状に拡がらず、蛇行することもない耐久性に優れた中間転写ベルト」を提供することを目的とした「転写ベルト及びその製造方法」が提案されている。
【0014】
この特許文献3の「転写ベルト」は、図8に示すように、「環状のシームレスベルトである中間転写ベルト1は、その円筒軸方向の左右縁部付近に画像形成領域の直径に対して一方の直径を縁端に向かって次第に縮小した細径部である内折れ部1aと、他方の直径を縁端に向かって次第に拡大した太径部である外折れ部1bとが形成され、内折れ部1aの外側表面に補強部材2が貼付され、この部分の内側表面には蛇行防止用のガイドゴム3が貼付される。製造方法は内折れ部1a、外折れ部1bに対応する形状の成形型の内部に環状のベルト中間体を装着し、ベルト中間体を構成する樹脂のガラス転移点の直上の温度に加熱して成形型の形状をベルト中間体に転写する」ものであり、「内折れ部1a」や「外折れ部1b」を「環状のシームレスベルトである中間転写ベルト1」に形成しなければならず、大きな型を要するものと考えられる。つまりこの特許文献3の「中間転写ベルト1」は、その「環状のシームレスベルト」としての一体製造が極めて困難であると考えられる。
【0015】
また、これらの特許文献1〜特許文献3の技術では、前述した昇華インクによる汚れの問題は、全く解決されていない。
【0016】
そこで、本発明者等は、ノボリやフラッグ等を布によって簡単に製造することができて、無端ベルトの蛇行が防止できるようにするにはどうしたらよいか、について種々検討を重ねてきた結果、本発明を完成したのである。
【0017】
すなわち、本発明の目的とするところは、ノボリやフラッグ等を布によって簡単に製造することのできる昇華転写装置を、簡単な構成によって提供することにある。また、本発明の別の目的は、昇華インクによる汚れ発生を未然に防止することである。さらに、本発明の目的は、無端ベルトの蛇行が防止できる昇華転写装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
以上の課題を解決するために、まず、請求項1に係る発明の採った手段は、後述する最良の形態の説明中において使用する符号を付して説明すると、
「内部に組み込んだ発熱体21によって表面が所定温度に加熱される発熱駆動ローラ20と、複数の従動ローラ31とを機枠にそれぞれ平行に組み付けて、各従動ローラ31と発熱駆動ローラ20との間に無端ベルト40を掛装し、この無端ベルト40によって、昇華インキを印刷したフィルムFと昇華転写されるべき布Cとを発熱駆動ローラ20に向けて送り込むようにした昇華転写装置100」
である。
【0019】
すなわち、この請求項1に係る昇華転写装置100は、図1〜図3に示すように、1本の発熱駆動ローラ20と複数本の従動ローラ31とを、互いに平行となるように機枠10に組み込んで構成したものであり、これらの発熱駆動ローラ20及び従動ローラ31には、例えば図1中の実線にて示した無端ベルト40を掛装して構成したものである。なお、この昇華転写装置100の前面側及び背面側はその殆どを開放したものであり、この開放部分から、昇華インキを印刷したフィルムFと、フラッグやノボリとなるべき布Cとを重ねて、例えば図1中の矢印にして示した方向から搬入し、あるいは転写印刷完了後の布Cや、昇華インキがなくなったフィルムFを、図1中の矢印にして示した方向に搬出するものである。
【0020】
勿論、この昇華転写装置100は、これを稼働させるにあたっては、図2に示した発熱駆動ローラ20内の発熱体21を発熱させて、当該発熱駆動ローラ20の表面温度が所定以上、つまりフィルムF上の転写インキが昇華し得る温度以上になるようにウォーミングアップされる。転写作業中においても、発熱駆動ローラ20の表面温度は下がるから、その温度管理は、ウォーミングアップ時と同様に、機枠10内の図示しない温度センサーや制御装置によってなされる。
【0021】
ウォーミングアップ完了した昇華転写装置100に対して、重ねられたフィルムFと布Cとを無端ベルト40によって発熱駆動ローラ20に向けて送り込むと、これらのフィルムF及び布Cは、搬送駆動されている無端ベルト40によって発熱駆動ローラ20の表面側に送り込まれるとともに、無端ベルト40と発熱駆動ローラ20との間で圧接されることになる。そうすると、フィルムF上にインクジェットプリター等によって印刷されていた昇華インクが加熱され、その中に含まれたいた昇華成分が昇華することになり、昇華インク内にあった染料が布Cに転写されることになる。このとき、昇華成分は加熱によって気化して空気中に放散してしまうから、布Cに転写された染料がフィルムFに再び戻ることはない。
【0022】
この昇華転写時において、無端ベルト40にも発熱駆動ローラ20からの熱が加えられるのであるが、後述する実施形態の無端ベルト40は、耐熱性があって熱変化の少ない「シリコンゴム」を採用して形成してあるから、何らの問題も発生しない。つまり、この昇華転写装置100は、簡単な構成であって耐熱性に優れたものとなっており、メンテナンスがし易く耐久性にも優れたものとなっている。
【0023】
昇華転写が済んだフィルムFや布Cは、図1中の矢印にて示すように、搬入方向とは別方向である上方あるは反対側に搬出される。その理由は、布C等の搬入方向とは別方向に搬出するようにすることによって、長尺な布Cを製品化するための次の工程装置の設置場所確保が容易になるからである。このとき、フィルムFと布Cを別々に搬出するようにすると、長尺な布Cを製品化するための次の工程に移すのに便利である。
【0024】
転写が完了した布Cについては、これを別工程で裁断することにより、必要な製品、つまりフラッグやノボリに仕立てられるのであるが、これらのフラッグやノボリに転写された文字や図形は非常に綺麗に仕上がっており、宣伝効果の非常に高いフラッグやノボリとなった。
【0025】
特に、この昇華転写装置100によれば、最初の材料であるフィルムFや布Cを長尺なものとして採用することができるから、印刷作業を連続して行えるのであり、従来個々の布に対して行っていた非効率的な作業を、格段の効率アップによって行うことができるのである。
【0026】
従って、この請求項1に係る昇華転写装置100は、文字や図形を多色で非常に美しいものとした布製品を簡単に製造できるものとなっているのである。
【0027】
また、上記課題を解決するために、請求項2に係る発明の採った手段は、上記請求項1に記載の昇華転写装置100について、
「機枠10に、発熱駆動ローラ20と連動して回転駆動される捨て紙巻取りローラ60を組み付けて、この捨て紙巻取りローラ60によって、昇華転写完了後のフィルムF、あるいはこれに重ねられていた捨て紙61を巻き取るようにしたこと」
である。
【0028】
すなわち、この請求項2の昇華転写装置100では、図1にも示すように、機枠10に捨て紙巻取りローラ60を組み付けたものであり、この捨て紙巻取りローラ60は発熱駆動ローラ20と連動させるべく、タイミングベルトあるいはチェーンによって回転駆動されるようにしたものである。
【0029】
図1に示した昇華転写装置100では、無端ベルト40上に載置される布CにフィルムFを重ね、このフィルムFの上にさらに捨て紙61を重ねてから発熱駆動ローラ20に送り込むようにしたものであるが、捨て紙巻取りローラ60は、発熱駆動ローラ20の斜め上方に位置するように設けてある。そして、この捨て紙巻取りローラ60は、昇華転写完了後のフィルムFに重ねられていた捨て紙61を巻き取るのであるが、材料としてフィルムF及び布Cしか使用しない場合には、昇華転写完了後のフィルムFを巻き取るように実施しても良いことは言うまでもない。
【0030】
以上の捨て紙61を使用する場合には、昇華したインクをこの捨て紙61によって捕捉するから、無端ベルト40側には付着しないことになり、次に搬送されてくる布Cを汚すことはないのである。
【0031】
従って、この請求項2に係る昇華転写装置100によれば、上記請求項1に係るそれと同様な機能を発揮する他、捨て紙巻取りローラ60によって使用後のフィルムFあるいは捨て紙61を、製品には邪魔にならないように巻き取ることができるのである。
【0032】
さらに、上記課題を解決するために、請求項3に係る発明の採った手段は、上記請求項1または請求項2に記載の昇華転写装置100について、
「従動ローラ31の内の少なくとも1本について、その表面の中央部分に、無端ベルト40との間に摩擦力を発生する材料からなる蛇行防止部材50を取り付けたこと」
である。
【0033】
すなわち、この請求項3の昇華転写装置100では、上記請求項1または請求項2のそれについて、例えば図1の図示右上方に示した従動ローラ31について、図4の(イ)または(ロ)に示すように、その表面の中央部分に蛇行防止材50を取り付けるようにしたものであるが、この蛇行防止材50上には無端ベルト40が掛装されるのである。
【0034】
蛇行防止材50は、無端ベルト40との間に摩擦力を発生するものであるから、発熱駆動ローラ20によって搬送されている無端ベルト40との間に蛇行の一つの原因である「滑り」が防止される。そして、この蛇行防止材50は、従動ローラ31の全幅にわたって設けたものではなく、図4にも示すように、従動ローラ31の中央部分にのみ設けたのであるから、無端ベルト40が滑りやすい従動ローラ31の左右両側部分には無端ベルト40の裏面が直接接触するものであり、蛇行修正の際の無端ベルト40の動きを許容することになる。
【0035】
特に、蛇行防止材50は、従動ローラ31の表面中央部分のみに接着などの手段によって設けたのであるから、その取付が簡単であるだけでなく、この部分における無端ベルト40の張力を増大することになる。このため、この蛇行防止材50は、無端ベルト40の左右へのズレを常に修正し、無端ベルト40の蛇行を防止するのである。
【0036】
なお、この蛇行防止材50は、図4の(イ)に示すように、従動ローラ31の中央部の全体に存在するように実施してもよいが、図4の(ロ)に示すように、従動ローラ31の中央部で二つに分割されたものを採用して実施してもよいものである。
【0037】
この場合、蛇行防止材50の中心と従動ローラ31の中心とは略一致しており、しかも、蛇行防止材50の両端間の寸法L2は、従動ローラ31の全長L1に対して、1/2〜1/5程度となるようにするのが最も好ましい。
【0038】
従って、この請求項3に係る昇華転写装置100によれば、上記請求項1または請求項2に係るそれと同様な機能を発揮する他、無端ベルト40、従ってフィルムFや布Cの蛇行が防止されて、常に安定した昇華転写ができるのである。
【0039】
そして、上記課題を解決するために、請求項4に係る発明の採った手段は、上記請求項1〜請求項3のいずれかに記載の昇華転写装置100について、
「無端ベルト40は、その搬送方向に多数配列されて互いに平行な非伸縮線材41を内部に一体化したものであること」
である。
【0040】
すなわち、この請求項3の昇華転写装置100において使用している無端ベルト40は、図5にも示すように、シリコンゴム等の基材の中に、糸やテグス等からなる非伸縮線材41が埋め込んであるものであり、これにより、無端ベルト40自体の搬送方向に対する伸縮が防止されているのである。
【0041】
従って、この請求項4の昇華転写装置100では、上記請求項1〜請求項3のいずれかのそれと同様な機能を発揮する他、無端ベルト40の熱や張力による収縮が防止され、布Cの搬送精度が非常に高くなっているのである、
【発明の効果】
【0042】
以上、詳述した通り、本発明においては、
「内部に組み込んだ発熱体21によって表面が所定温度に加熱される発熱駆動ローラ20と、複数の従動ローラ31とを機枠にそれぞれ平行に組み付けて、各従動ローラ31と発熱駆動ローラ20との間に無端ベルト40を掛装し、この無端ベルト40によって、昇華インキを印刷したフィルムFと昇華転写されるべき布Cとを発熱駆動ローラ20に向けて送り込むようにした昇華転写装置100」
にその構成上の主たる特徴があり、これにより、ノボリやフラッグ等を布によって簡単かつ効率的に製造することのできる昇華転写装置100を、簡単な構成によって提供することができるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
次の上記のように構成した各請求項に係る昇華転写装置100を、図面に示した最良の形態に従って説明すると、図1には、本発明に係る昇華転写装置100の側面図が示してある。この昇華転写装置100は、昇華インクで所定の印刷を施したフィルムFと、このフィルムF側からの転写がされて製品となるべき布Cと、フィルムFから発生した昇華インクが無端ベルト40に付着するのを防止する捨て紙61を採用するものである。
【0044】
まず、この最良形態の昇華転写装置100は、内部に組み込んだ発熱体21によって表面が所定温度に加熱される発熱駆動ローラ20と、複数の従動ローラ31とを機枠にそれぞれ平行に組み付けて、各従動ローラ31と発熱駆動ローラ20との間に無端ベルト40を掛装し、この無端ベルト40によって、昇華インキを印刷したフィルムFと昇華転写されるべき布Cとを発熱駆動ローラ20に向けて送り込むようにしたものである。
【0045】
すなわち、この昇華転写装置100は、図1〜図3に示したように、1本の発熱駆動ローラ20と複数本の従動ローラ31とを、互いに平行となるように機枠10に組み込んで構成したものであり、これらの発熱駆動ローラ20及び従動ローラ31には、例えば図1中の実線にて示した無端ベルト40を掛装して構成したものである。そして、この昇華転写装置100においては、図2及び図3に示したように、その前面側、背面側、そして上面の殆どを開放したものであり、この開放部分から、昇華インキを印刷したフィルムFと、フラッグやノボリとなるべき布C、及び捨て紙61を重ねて、例えば図1中の矢印にして示した方向から搬入し、あるいは転写印刷完了後の布Cや、昇華インキがなくなったフィルムFを、図1中の矢印にして示した方向に搬出するものである。
【0046】
発熱駆動ローラ20は、図2に示したように、内部に発熱体21を有するものであり、この発熱体21は、当該昇華転写装置100の作動開始時に発熱させて、発熱駆動ローラ20の表面温度が所定以上、つまりフィルムF上の転写インキが昇華し得る温度以上になるようにウォーミングアップされる。
【0047】
ウォーミングアップ完了した昇華転写装置100に対して、純にしたから重ねられている布C、フィルムF、及び捨て紙61を無端ベルト40によって発熱駆動ローラ20に向けて送り込むと、これらのフィルムFや布C、及び捨て紙61は、搬送駆動されている無端ベルト40によって発熱駆動ローラ20の表面側に送り込まれるとともに、無端ベルト40と発熱駆動ローラ20との間で圧接されることになる。そうすると、フィルムF上にインクジェットプリター等によって印刷されていた昇華インクが加熱され、その中に含まれたいた昇華成分が昇華し、昇華インク内にあった染料が布Cに転写されることになる。このとき、無端ベルト40の表面は捨て紙61のよって保護されているから、昇華成分が無端ベルト40側に付着することはなく、また布Cに転写された染料がフィルムFに再び戻ることはない。
【0048】
本最良形態の無端ベルト40は、耐熱性があって熱変化の少ない「シリコンゴム」を採用して形成してあるから、何らの熱的問題は発生しない。特に、本最良形態の昇華転写装置100においては、その無端ベルト40は、図5に示したように、その搬送方向に多数配列されて互いに平行な非伸縮線材41を内部に一体化したもの、つまり、シリコンゴム等の基材の中に、糸やテグス等からなる非伸縮線材41が埋め込んであるものであるから、無端ベルト40自体の搬送方向に対する伸縮が防止されている。
【0049】
昇華転写が済んだフィルムFや布Cは、図1中の矢印にて示したように、搬入方向とは別方向である上方あるは反対側に搬出されるが、これによって、長尺な布Cを製品化するための次の工程装置の設置場所確保が容易になるようにしてある。転写が完了した布Cについては、これを別工程で裁断することにより、必要な製品、つまりフラッグやノボリに仕立てられる。
【0050】
また、この昇華転写装置100については、図1に示したように、機枠10に発熱駆動ローラ20と連動して回転駆動される捨て紙巻取りローラ60を組み付けて、この捨て紙巻取りローラ60によって、昇華転写完了後のフィルムF、あるいはこれに重ねられていた捨て紙61を巻き取るようにしてある。この捨て紙巻取りローラ60は発熱駆動ローラ20と連動させるべく、タイミングベルトあるいはチェーンによって回転駆動されるようにしてある。
【0051】
図1に示した最良形態の昇華転写装置100では、無端ベルト40上に載置される布CにフィルムFを重ね、このフィルムFの上にさらに捨て紙61を重ねてから発熱駆動ローラ20に送り込むようにしたものであるが、捨て紙巻取りローラ60は、発熱駆動ローラ20の斜め上方に位置するように設けてある。そして、この捨て紙巻取りローラ60は、昇華転写完了後のフィルムFに重ねられていた捨て紙61を巻き取るのであるが、材料としてフィルムF及び布Cしか使用しない場合には、昇華転写完了後のフィルムFを巻き取るように実施しても良い。この捨て紙61は、昇華したインクを捕捉するから、無端ベルト40側には付着させないことになり、次に搬送されてくる布Cを汚すことはないのである。
【0052】
さらに、この昇華転写装置100は、従動ローラ31の内の少なくとも1本について、その表面の中央部分に、無端ベルト40との間に摩擦力を発生する材料からなる蛇行防止部材50が取り付けてある。
【0053】
すなわち、この昇華転写装置100では、例えば図1の図示右上方に示した従動ローラ31について、図4の(イ)または(ロ)に示したように、その表面の中央部分に蛇行防止材50を取り付けるようにしたものであるが、この蛇行防止材50上には無端ベルト40が掛装されるのである。
【0054】
蛇行防止材50は、無端ベルト40との間に摩擦力を発生するものであるから、発熱駆動ローラ20によって搬送されている無端ベルト40との間に蛇行の一つの原因である「滑り」を防止するものである。そして、この蛇行防止材50は、従動ローラ31の全幅にわたって設けたものではなく、図4にも示したように、従動ローラ31の中央部分にのみ設けたのであるから、無端ベルト40が滑りやすい従動ローラ31の左右両側部分には無端ベルト40の裏面が直接接触するものであり、蛇行修正の際の無端ベルト40の動きを許容することになる。
【0055】
特に、蛇行防止材50は、従動ローラ31の表面中央部分のみに接着などの手段によって設けたのであるから、その取付が簡単であるだけでなく、この部分における無端ベルト40の張力を増大することになる。このため、この蛇行防止材50は、無端ベルト40の左右へのズレを常に修正し、無端ベルト40の蛇行を防止するものである。
【0056】
図示した最良形態の昇華転写装置100では、図1に示したように、その機枠10の下側前面部分に、布ストックロール71、フィルムストックロール72、及び捨て紙ストックロール73がそれぞれ設けてある。これらのロール71〜73は、所謂「オプション」で付加されるものであり、それぞれには、名称の通り、材料である布C、フィルムF、及び捨て紙61を巻回したロールが取り付けられるものである。
【0057】
これらの布ストックロール71、フィルムストックロール72、及び捨て紙ストックロール73には、それぞれの材料の量を検知するセンサーが取り付けてあり、このセンサーからの信号によって、次の材料の追加が瞬時に行えるようにしてある。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明に係る昇華転写装置の側面図である。
【図2】同昇華転写装置の部分正面図である。
【図3】同昇華転写装置の概略平面図である。
【図4】従動ローラとその上に取り付けた蛇行防止材を示すもので、(イ)は一体型の蛇行防止材の拡大平面図、(ロ)は分割型の蛇行防止材の拡大平面図である。
【図5】無端ベルトの部分平面図である。
【図6】従来の技術を示す側面図である。
【図7】従来の別の技術を示す部分拡大断面図である。
【図8】従来のさらに別の技術を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0059】
100 昇華転写装置
10 機枠
20 発熱駆動ローラ
21 発熱体
31 従動ローラ
40 無端ベルト
41 非伸縮線材
50 蛇行防止材
60 捨て紙巻取りローラ
61 捨て紙
71 布ストックロール
72 フィルムストックロール
73 捨て紙ストックロール
F フィルム
C 布
M モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に組み込んだ発熱体によって表面が所定温度に加熱される発熱駆動ローラと、複数の従動ローラとを機枠にそれぞれ平行に組み付けて、前記各従動ローラと発熱駆動ローラとの間に無端ベルトを掛装し、この無端ベルトによって、昇華インキを印刷したフィルムと昇華転写されるべき布とを前記発熱駆動ローラに向けて送り込むようにした昇華転写装置。
【請求項2】
前記機枠に、前記発熱駆動ローラと連動して回転駆動される捨て紙巻取りローラを組み付けて、この捨て紙巻取りローラによって、昇華転写完了後の前記フィルム、あるいはこれに重ねられていた捨て紙を巻き取るようにしたことを特徴とする請求項1に記載の昇華転写装置。
【請求項3】
前記従動ローラの内の少なくとも1本について、その表面の中央部分に、前記無端ベルトとの間に摩擦力を発生する材料からなる蛇行防止部材を取り付けたことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の昇華転写装置。
【請求項4】
前記無端ベルトは、その搬送方向に多数配列されて互いに平行な非伸縮線材を内部に一体化したものであることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の昇華転写装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−321056(P2006−321056A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−143723(P2005−143723)
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【出願人】(000140096)株式会社ハシマ (10)
【Fターム(参考)】